説明

ディスク装置

【課題】クランパが内包された密閉型ディスクカートリッジと、ディスク単体またはクランパが内包されていないディスクカートリッジの両方に対応可能で、かつ装置全体の薄型化に適したクランプ機構を具備するディスク装置を提供する。
【解決手段】クランプ機構60は、トレイ70が第1の位置と第2の位置の間を移動することにより、クランプアーム63が回動して、クランパホルダ62のクランパ支持面62pをディスクの信号記録面に対して略平行な状態に維持しながら、クランパホルダ62を昇降することを特徴とするディスク装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク等のディスク状記憶媒体にデータを記録することおよび/またはディスク状記憶媒体からデータを再生することを行うディスク装置に関し、詳細には、ディスク状記録媒体を回転可能な状態で収納したカートリッジを装填することが可能なディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ビームを用いて記録あるいは再生を行う、CDやDVD等、また、磁気を用いて記録あるいは再生を行うフレキシブルディスク等、さらに光ビームと磁気を用いて記録あるいは再生を行うMOやMD等の、ディスク状の記録/再生媒体がすでに広く世の中に普及している。そして特に、DVD−RAM、MOなどの記録型の媒体においては、その記録された信号の保護の観点より、例えば特許文献1に開示されるようなカートリッジ型の収納ケースに収納されている。
【0003】
図18は、本例のディスクカートリッジの概念を表す図である。図18において、従来型ディスクカートリッジ100は、記録および/または再生可能なディスク10を収納し、従来型ディスクカートリッジ100の外殻をなすカートリッジ本体101を備える。
【0004】
カートリッジ本体101は、スピンドルモータなどのディスク10を回転させる手段および記録および/または再生する手段がカートリッジ本体101に侵入し、ディスク10に接近するための開口101wをカートリッジ本体101の上面および下面に有し、カートリッジ本体101の外面には位置決め穴102a、102bが設けられている。
【0005】
また、従来型ディスクカートリッジ100は、カートリッジ本体101の上面および下面にある開口101wを覆い、開口101wより露出したディスク10の面を保護するために、カートリッジ本体101をコの字断面で挟持するカートリッジシャッタ103を備えている。
【0006】
カートリッジシャッタ103は、図18に示す矢印P方向へ平行移動可能で、また、バネにより開口101wが閉じられた状態に戻るように付勢されており、特に外力が加わらない時にはディスク10が露出しないように構成されている。
【0007】
また、カートリッジ本体101は、開口101wの外周部分に架橋されたブリッジ部104を有する。ブリッジ部104は、カートリッジ本体101の剛性を保ち、かつ、カートリッジシャッタ103のガイド機能を有する。
【0008】
このような従来型ディスクカートリッジ100に収納されたディスク10の記録および/または再生するディスク装置としては、ユーザーにわかりやすく、比較的簡単な構造であることから、一般的にトレイを用いたローディング機構が多く採用されている。特許文献2に、このようなトレイを用いたディスク装置の構成が開示されている。
【0009】
図19は、従来型ディスクカートリッジ100を装填可能な従来のディスク装置600の構成を示す斜視図で、図20は、従来型ディスクカートリッジ100を装填可能な従来のディスク装置600のクランプ動作を説明する動作図である。
【0010】
図19および図20に示すように、ディスク装置600は、ベースシャーシ610と、トレイ620と、アッパーベース630を備える。ベースシャーシ610は、トラバースベース640を支持し、トレイ620を矢印620A方向および矢印620B方向へ移動可能にガイドする。トラバースベース640には、従来型ディスクカートリッジ100に収納されたディスク10を回転駆動し、ディスク10を載置するディスク載置面650aを有するスピンドルモータ650が取り付けられ、記録および/または再生を行う光ピックアップ660が支持されている。また、ベースシャーシ610に取り付けられた駆動モータ(図示せず)により、トレイ620を矢印620A方向および矢印620B方向に駆動する。
【0011】
アッパーベース630には、ディスク10をスピンドルモータ650のディスク載置面650aとで挟持するクランパ631と、クランパ631を回転可能に支持し、トレイ620の移動に連動してクランパ631を昇降動作させるクランプアーム632と、クランプアーム632をアッパーベース630に対して付勢し、かつ、クランプアーム632をアッパーベース630に線分630aを中心に回動自在に保持する付勢バネ633とが設けられ、ベースシャーシ610に取り付けられる。
【0012】
トレイ620には、従来型ディスクカートリッジ100を載置する際のガイド機能を有するガイド壁621a、621bが設けられている。また、トレイ620には、従来型ディスクカートリッジ100に収納されていないディスク10を直接載置するために円形状の凹部620rが設けられている。凹部620rの底部には、スピンドルモータ650および光ピックアップ660がディスク10に接近するための開口部620wが設けられている。
【0013】
このようなディスク装置600におけるクランプ動作について図20を参照しながら説明する。
【0014】
図20(a)に示すように、クランパ631は、付勢バネ633の付勢力により、回動支点630aを中心に矢印632A方向に回動しているクランプアーム632によって、矢印631A方向に持ち上げられる。これにより、トレイ620に従来型ディスクカートリッジ100を装填した状態で、トレイ620を矢印620A方向に挿入すると、クランパ631が従来型ディスクカートリッジ100と接触することなく、トレイ620は矢印620A方向に挿入される。そして、トレイ620がさらに矢印620A方向に移動すると、トレイ620に設けられたカム部622とクランプアーム632に設けられた当接部632aが当接し、付勢バネ633の付勢力に抗して、クランプアーム632は矢印632B方向に回動する。クランパ631は、クランプアーム632の回動動作にともなって、矢印631B方向に下降し、トレイ620が完全に挿入され、退避していたトラバースベース640が上昇すると、図20(b)に示すように、スピンドルモータ650のディスク載置面650aに設けられたマグネットとクランパ631に設けられた鉄板による磁力によってディスク10をクランプする。
【0015】
カートリッジを排出するときは、上述した動作の逆動作を行い、クランプアーム632が付勢バネ633の付勢力によって、矢印632A方向に回動することによって、クランパ631が矢印631A方向に退避し、従来型ディスクカートリッジ100を載置したトレイ620を矢印620B方向に排出する。
【0016】
以上のように、トレイ620の移動動作とクランプアーム632の回動動作によって、クランパ631を退避させ、従来型ディスクカートリッジ100に対応した機構を構成している。
【0017】
しかしながら、従来型ディスクカートリッジ100のカートリッジシャッタ103が上記のようなコの字断面で挟持するだけの構成では、カートリッジ本体101との間に存在する隙間を詰めるのに不向きである。このため、ディスクカートリッジ内への塵埃の侵入防止が困難となり、ディスク10への記録あるいは再生への悪影響が発生する可能性が高まる。したがって、近年の動向として高密度化を試みるには、ディスクカートリッジに対する防塵性の向上は重要な課題である。
【0018】
このような課題を解決する構造を備えたディスクカートリッジの一例として、特許文献3には、複数のシャッタにより開口部を開閉する構造を備え、ディスク10全体を完全に覆ってしまう密閉型のディスクカートリッジを開示している。
【0019】
図21は、密閉型ディスクカートリッジ200の外観を示す斜視図であり、図22は、密閉型ディスクカートリッジ200の構成部品を分解して示す斜視図である。
【0020】
図21および図22に示すように、密閉型ディスクカートリッジ200は、上部カートリッジ本体211および下部カートリッジ本体212からなるカートリッジ本体210と、カートリッジ本体210に収納されたディスク10と、下部カートリッジ本体212に設けられた開口212wと、開口212wを外部に対して開閉するシャッタ部220と、回転体230とを備えている。
【0021】
図に示すように、上部カートリッジ本体211がディスク10の上面全体を覆うため、密閉型ディスクカートリッジ200においては、ディスク10をクランプするための内部クランパ240が内包されている。
【0022】
下部カートリッジ本体212の内面には、シャッタ部220の開閉動作持の支軸となる第1のリンク支軸212aおよび第2のリンク支軸212bが設けられている。また、下部カートリッジ本体212の外面には、ディスク装置(図示せず)内におけるディスク10と平行な面内における密閉型ディスクカートリッジ200の位置を決定するための位置決め穴215aおよび215bが設けられている。
【0023】
カートリッジ本体210の内部には、開口212wを閉塞するためのシャッタ部220と、ディスク10の中心とほぼ一致する点を中心として回動する回転体230と、ロック部材225とが備えられている。
【0024】
シャッタ部220は、第1のシャッタ221と第2のシャッタ222とで構成される。
【0025】
回転体230は、円板形状を有し、シャッタ部220が完全に開放状態になったとき、開口部212wと一致するような位置および形状を備えた開口部230wを有している。また、回転体230の側面には、外部から回転体230を回転駆動させるための第1の切り欠き部231と、第2の切り欠き部232と、これらの間に位置するギア部233が設けられている。回転体230のシャッタ部220と対向する面には、第1のシャッタ221および第2のシャッタ222のための回転支軸230aおよび230bが設けられている。
【0026】
第1のシャッタ221および第2のシャッタ222は、それぞれ、回転支軸230aおよび230bが挿入される回動中心穴221aおよび222aと、第1のリンク支軸212aおよび第2のリンク支軸212bがそれぞれ挿入されるリンク溝221bおよび222bとを有する。このため、第1のシャッタ221および第2のシャッタ222は、回転支軸230aおよび230bを中心にそれぞれ回転する。
【0027】
ロック部材225は、下本体212に設けられている回転支軸212cに回動自在に支持されており、開口部212wが閉じている時、ロック部材225の凸部225aと回転体230の第2の切り欠き部232とが係合する。これにより、回転体230の回転をロックする。
【0028】
シャッタ部220が、上述したように回転体230および下部カートリッジ本体212と係合しているので、回転体230を回転させることにより、シャッタ部220が開口212wを閉塞した状態および開放した状態にすることができる。
【0029】
このように密閉型カートリッジ200は、複数のシャッタにより開口部を開閉する構造を備えることで、ディスク10全体を完全に覆い、防塵性能を向上を実現している。しかしながら、ディスクカートリッジに内部クランパ240を内蔵しているため、ディスクカートリッジ自体のコストが高くなるという課題を有する。
【0030】
この点を鑑み、特許文献4には、防塵性能を向上し、かつ、クランパを内蔵しない開放型のディスクカートリッジの一例が開示されている。
【0031】
図23は、開放型ディスクカートリッジ300の外観を示す斜視図であり、図24は、開放型ディスクカートリッジ300の構成部品を分解して示す斜視図である。
【0032】
図23および図24に示すように、開放型ディスクカートリッジ300は、上部カートリッジ本体311および下部カートリッジ本体312からなるカートリッジ本体310と、カートリッジ本体310に収納されたディスク10と、下部カートリッジ本体312に設けられた開口312wと、開口312wを外部に対して開閉するシャッタ部320と、回転体330とを備えている。
【0033】
図に示すように、上部カートリッジ本体311には、ディスク10の上面のほぼ全体を露出するディスク開放部300wが設けられている。このため、ディスク10がカートリッジ本体310に収納されている状態において、ディスク10の上面、例えばラベル面が上部カートリッジ本体311のディスク開放部300wから露出する。
【0034】
下部カートリッジ本体312の内面には、シャッタ部320の回転軸となる回転支軸312a、312bが設けられている。また、下部カートリッジ本体312の外面には位置決め穴315a、315bが設けられている。
【0035】
シャッタ部320は、第1のシャッタ321および第2のシャッタ322とで構成される。第1のシャッタ321および第2のシャッタ322には案内溝321b、322bおよび回転支軸312a、312bが挿入される回動孔321a、322aがそれぞれ設けられている。
【0036】
回転体330は、平坦なリング状部およびリング状部の外側に形成された円筒状の側面を有している、リング状部のシャッタ部320と対向する面には案内溝321b、322bに挿入されるリンク支軸330a、330bが設けられている。リング状部にはさらに切り欠き部330wが設けられている。また、側面には第1の切り欠き部331、第2の切り欠き部332およびこれらに挟まれたギア部333が形成されている。
【0037】
開放型ディスクカートリッジ300はロック部材325をさらに備え、支軸312cの周りに回転可能なように支持される。ロック部材325は凸部325aを有し、シャッタ部320が閉塞している状態において、凸部325aは第2の切り欠き部332と係合し、回転体330が回転するのを防止する。
【0038】
回転体330は案内溝321b、322bおよびリンク支軸330a、330bによってシャッタ部320と係合しており、回転体330を回転させることにより、シャッタ部320が開口312wを閉塞した状態および開放した状態にすることができる。
【0039】
現在、大容量光ディスクとして、青色光源を用いたBD(blu−ray disc)が市場に投入されているが、上述した密閉型ディスクカートリッジ200と開放型ディスクカートリッジ300の両方のカートリッジが採用されている。
【特許文献1】特開平9−153264号公報
【特許文献2】特開平10−312628号公報
【特許文献3】特開2002−50148号公報
【特許文献4】特開2004−94996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0040】
しかしながら、特許文献3および特許文献4に示すようなBD用ディスクカートリッジに対応するディスク装置において、密閉型ディスクカートリッジ200は、内部に内部クランパ240を備えているために、開放型ディスクカートリッジ300およびディスク10単体に装填し、クランプするためのクランパを必要としない。このため、従来のディスク装置600のように、トレイ620の挿入動作に連動して、クランプアーム632を下降させると、密閉型ディスクカートリッジ200が装填された場合では、密閉型ディスクカートリッジ200が障害となり、クランプアーム632がクランプ位置まで完全に回動することができず、密閉型ディスクカートリッジ200を正しくディスク装置内部へローディングすることができないという問題が生じる。
【0041】
また、従来のディスク装置600では、クランプアーム632を回動することによってクランパ631の昇降を行っているが、クランパ631の上昇時には、回動したクランプアーム632の傾斜によって、クランパ631が傾いて退避するため、ディスク装置600内におけるクランパ631の退避スペースが大きくなり、ディスク装置600の薄型化を行うには問題が生じる。
【0042】
また、従来のディスク装置600では、クランパ631を上昇させた時に、回動したクランプアーム632によって、ディスク装置600の高さが増加しないように、クランプアーム632の先端は短く構成されている。このため、クランパ631を下降させた時には、クランプアーム632の先端部がアッパーベース630と当接できず、クランプアーム632の回動軸である線分630a側のみアッパーベース630と当接して支持される構成となる。このため、クランパ631を下降させた時には、クランプアーム632はアッパーベース630によって片持ち状態で支持されて、クランパ631を保持するので、トラバースベース640を下降して、クランパ631をスピンドルモータ650から引き剥がす場合、このクランパ631を引き剥がす力を片持ち状態のクランプアーム632で受けることになるので、クランプアーム632が変形しないように、板厚を大きくして剛性を高める必要があり、クランパ631の薄型化、言い換えれば、ディスク装置600の薄型化を行うことが困難であるという問題が生じる。
【0043】
また、従来のディスク装置600のように、クランプアーム632を線分630aを中心にトレイ620のカム部622により回動する構成では、クランパ631を保持するクランプアーム632の先端部の高さ方向の位置決めを行うためには、関連する部品が多く、位置精度を向上することが困難である。
【0044】
本発明は上記の課題の少なくとも1つを解決し、クランパが内包された密閉型ディスクカートリッジとディスク単体、さらには、クランパを内包していないディスクカートリッジにも対応可能で、かつ、装置全体の薄型化に適したクランプ機構を具備するディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0045】
本発明のディスク装置は、信号記録面を有するディスクと、前記ディスクを載置するターンテーブルを有するディスクモータと、前記ディスクを載置し、前記ディスクを装填または取り出しを行う第1の位置と、前記ディスクモータが前記ディスクを回転させることができる第2の位置との間を移動するトレイと、前記ディスクに信号を記録および/または再生するヘッドと、前記ディスクを前記ターンテーブルとの間でクランプするためのクランパと、前記ターンテーブルから離れた退避位置と前記ターンテーブル上に前記ディスクをクランプするクランプ位置との間で前記クランパを昇降動作させるクランプ機構と
を備えたディスク装置であって、前記クランプ機構は、前記クランパを回転可能に支持するクランパ支持面を有するクランパホルダと、前記トレイの移動に連動して回動し、前記クランパホルダを前記信号記録面に対して直交する方向に昇降するクランプアームと、前記クランパホルダおよび前記クランプアームを支持するアッパーベースと、前記クランパホルダを前記クランパが下降する方向へ付勢するホルダ付勢バネと、前記クランプアームを前記クランパが上昇する方向へ付勢するアーム付勢バネとを備え、前記クランプ機構は、前記トレイが前記第1の位置と前記第2の位置の間を移動することにより、前記クランプアームが回動して、前記クランパホルダの前記クランパ支持面を前記ディスクの前記信号記録面に対して略平行な状態に維持しながら、前記クランパホルダを昇降する。
【0046】
ある好ましい実施の形態において、前記クランパが前記退避位置に上昇した状態における前記クランパホルダの位置を前記アッパーベースによって位置決めする。
【0047】
ある好ましい実施の形態において、前記クランパが前記クランプ位置に下降した状態における前記クランパホルダの下降位置を前記アッパーベースによって位置決めする。
【0048】
ある好ましい実施の形態において、前記クランパが前記退避位置に上昇した状態において、前記アーム付勢バネの付勢力によって、前記クランパホルダの一部を前記アッパーベースに付勢することで、前記クランパホルダの上昇を停止し、前記クランパホルダを高さ方向に位置決めする。
【0049】
ある好ましい実施の形態において、前記クランパが前記クランプ位置に下降した状態において、前記ホルダ付勢バネの付勢力によって、前記クランパホルダの一部を前記アッパーベースに付勢することで、前記クランパホルダの下降を停止し、前記クランパホルダを高さ方向に位置決めする。
【0050】
ある好ましい実施の形態において、前記クランパが前記クランプ位置に下降した状態において、前記クランプアームは、前記クランパホルダと離間する。
【0051】
ある好ましい実施の形態において、前記クランパホルダが前記退避位置に上昇した状態において、前記クランパホルダに設けられた位置決め当接部を、前記アッパーベースに設けられた位置規制部に係合させることにより、前記クランパホルダの位置決めを行う。
【0052】
ある好ましい実施の形態において、前記クランパホルダが前記クランプ位置に下降した状態において、前記クランパホルダに設けられた位置決め穴に、前記アッパーベースに設けられた位置決めピンを挿入させることにより、前記クランパホルダの位置決めを行う。
【0053】
ある好ましい実施の形態において、前記クランパホルダは、前記クランパが前記クランプ位置に下降した状態において、前記トレイの移動する方向に直交し、かつ、前記クランパの回転中心軸を含む平面を境界とするそれぞれの領域に少なくとも1ヶ所以上当接して前記アッパーベースに支持される。
【0054】
ある好ましい実施の形態において、前記ホルダ付勢バネは、線バネで構成される。
【0055】
ある好ましい実施の形態において、前記クランパホルダは、前記ホルダ付勢バネの付勢力を受け、前記ホルダ付勢バネと係合する第1の係合部と第2の係合部を有する。
【0056】
ある好ましい実施の形態において、前記第1および第2の係合部は、前記トレイの移動する方向に平行で、かつ、前記クランパの回転中心軸を含む平面に対して、対称に配置される。
【0057】
ある好ましい実施の形態において、前記第1および第2の係合部は、前記トレイの移動する方向に直交で、かつ、前記クランパの回転中心軸を含む平面近傍部に設けられる。
【0058】
ある好ましい実施の形態において、前記トレイは、前記ディスクを収納したディスクカートリッジを載置可能である。
【0059】
ある好ましい実施の形態において、前記ディスクカートリッジは、前記ディスクカートリッジの内部に前記ディスクを前記ターンテーブルとの間でクランプするための内部クランパを有している。
【0060】
ある好ましい実施の形態において、前記内部クランパを有する前記ディスクカートリッジを装填し、前記トレイを前記第2の位置に移動した際、前記クランパが前記クランプ位置まで下降せず、前記ディスクは前記内部クランパによって前記ターンテーブルにクランプされる。
【0061】
ある好ましい実施の形態において、前記クランパは、前記ディスクカートリッジの上面に当接することによって、下降しない。
【0062】
ある好ましい実施の形態において、前記内部クランパを有する前記ディスクカートリッジが装填された際、前記クランパホルダは、前記クランパに当接し、前記ディスクカートリッジ上面で停止する。
【0063】
ある好ましい実施の形態において、前記クランパの外周面には、円錐状のテーパ面が設けられており、前記トレイが前記第1の位置と前記第2の位置との間を移動する際に、前記トレイに載置された前記ディスクカートリッジと前記テーパ面が当接することにより、前記クランパが前記ディスクカートリッジの上面を接触しながら通過する。
【0064】
ある好ましい実施の形態において、前記トレイは、前記トレイが前記第1の位置と前記第2の位置との間を移動する際に、前記クランプアームと当接し、前記クランプアームを回動させるカム部を有する。
【0065】
ある好ましい実施の形態において、前記トレイには、前記ディスクカートリッジのシャッタを開閉するオープナーが設けられており、前記トレイが前記第1の位置と前記第2の位置との間を移動する際に、前記クランプアームと当接し、前記クランプアームを回動させるカム部が前記オープナーに構成されている。
【0066】
ある好ましい実施の形態において、前記アーム付勢バネは、前記クランプアームの一部で構成される。
【0067】
ある好ましい実施の形態において、前記クランプアームは、前記ホルダ付勢バネを前記アッパーベースに取り付けることによって、前記アッパーベースに回動自在に保持される。
【0068】
ある好ましい実施の形態において、前記クランパホルダは、前記クランパが前記クランプ位置に下降した状態において、弾性部材を介して、前記アッパーベースに前記ホルダ付勢バネによって付勢される。
【0069】
ある好ましい実施の形態において、前記弾性部材は、振動を緩和する制振部材である。
【発明の効果】
【0070】
本発明のディスク装置によれば、クランパを昇降動作させるクランプ機構を、クランパを保持するクランパホルダと、トレイにより駆動されるクランプアームとに分割して構成することで、クランパが内包された密閉型ディスクカートリッジが載置された場合には、クランパとクランパホルダをカートリッジ上方へ退避させることによって、クランパが内包された密閉型ディスクカートリッジと、ディスク単体またはクランパが内包されていないディスクカートリッジの両方に適合し、安定、確実なクランプ動作を行うことができる。
【0071】
また、クランパをクランプ位置に下降した場合において、クランパを支持するクランパホルダに、クランパの回転中心を境にしてディスク装置前後(トレイ挿入/排出方向)でアッパーベースに支持される当接部を構成することで、クランパホルダを両持ち状態で支持し、クランプ解除時にクランパを引き剥がす力を分散して受けることができるため、従来の片持ち状態でクランパを引き剥がす力を受ける構成に比べ、クランパホルダの剛性は緩和され、クランパホルダの板厚を薄く構成することができる。これにより、クランパの薄型化、さらにはディスク装置の薄型化を図ることができる。
【0072】
また、トレイの高さ精度の影響を受けて駆動されるクランプアームと、クランパを保持するクランパホルダとを分割して構成し、クランパがクランプ位置に下降した時に、アッパーベースに付勢バネで押圧されて高さ規制されるクランパホルダからクランプアームを離間させる構成とすることにより、関連する部品が多いトレイの高さ精度の影響を受けずに、クランパホルダの高さ位置決めを精度良く行うことができる。加えて、下降時において、クランパホルダに設けられた位置決め穴にアッパーベースに設けられた位置決めピンを挿入することで平面方向におけるクランパホルダの位置決め精度の向上を図ることができる。
【0073】
また、クランパホルダを付勢する付勢バネの係合部を、トレイの移動する方向に直交し、かつ、クランパの回転中心軸を含む平面による境界近傍に構成することによって、クランパホルダがアッパーベースによって両持ち状態で高さ規制された際に、クランパホルダとアッパーベースの当接部に均等に付勢力が働くため、クランパホルダの耐振動特性の向上およびクランパホルダの高さ位置精度の向上を図ることができる。
【0074】
また、クランパホルダを付勢する付勢バネを線バネで構成して、クランパホルダを付勢するとともにワイヤー構造でクランパホルダの左右を支持することにより、クランパホルダのクランパ支持面をディスク面に対してほぼ平行な姿勢を維持しながら昇降させる構成を実現し、加えて、上昇時、下降時におけるクランパホルダをアッパーベースとの係合によって位置決めすることにより、クランパホルダの昇降動作を安定して行うことができる。これにより、クランパおよびクランパホルダを必要最小限の昇降量で昇降することができ、ディスク装置の薄型化を図ることができる。
【0075】
また、クランパホルダをワイヤー構造で支持する付勢バネをクランパの回転中心軸から左右に離して構成することにより、ワイヤー支持する左右の付勢バネのばらつきに対して、昇降動作中におけるクランパホルダの姿勢ばらつきを低減できるため、クランパおよびクランパホルダの昇降動作を安定して行うことができる。
【0076】
また、クランパの外周面に円錐状のテーパ面を形成し、挿入/排出動作中のカートリッジとの接触時に、このテーパ面によりクランパをカートリッジ上面に退避させる構成とすることで、クランパをカートリッジ上面に接触しながら通過させ、必要最小限の退避量でクランパを退避させることができ、ディスク装置の薄型化を図ることができる。
【0077】
また、クランプアームの一部にバネ部を構成し、さらに、クランパホルダを付勢する付勢バネをアッパーベースに取り付けることによって、クランプアームがアッパーベースに回動自在に保持される構成とすることで、クランプ機構の部品点数の大幅な削減ができ、ディスク装置の組立性の向上と低コスト化を実現できる。
【0078】
また、クランパホルダ下降時に、クランパホルダとアッパーベースの間に、弾性部材(例えば、ゴムシートなど)を介在させることにより、ディスクの高速回転時の振動による金属部品同士の接触音を低減させ、動作中のディスク装置の静音化を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0079】
以下、本発明のディスク装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態におけるディスク装置に装填されるディスクカートリッジについては、すでに前述した図18および図21〜図24で示す従来型ディスクカートリッジ100、密閉型ディスクカートリッジ200、開放型ディスクカートリッジ300と同一構成のものである。なお、実施形態の説明では図18および図21〜図24で示す従来型ディスクカートリッジ100、密閉型ディスクカートリッジ200、開放型ディスクカートリッジ300と同一の符号のものは同一の構成要素を示し、前述で説明を行っているため、ここでの説明は省略する。
【0080】
まず、図1〜図5を用いて、本発明の実施形態のディスク装置500の構成について説明する。
【0081】
図1は、本発明の実施形態におけるディスク装置500の構成を示す分解斜視図である。 図1に示すように、ディスク装置500は、トラバースベース20と、ディスク10を回転駆動するスピンドルモータ30と、記録および/または再生を行う光ヘッド40とを備える。
【0082】
スピンドルモータ30は、ディスク10を保持するためのディスク載置面30aを有し、トラバースベース20に固定されている。光ヘッド40は、ガイド軸41および42に沿って移動可能なように、トラバースベース20上に支持されている。トラバースベース20上には送りモータ43が設けられており、光ヘッド40をガイド軸41および42に沿って移動させる。光ヘッドの移動方向は、ディスク10の半径方向とおおよそ一致している。
【0083】
ディスク装置500は、ベースシャーシ50と、クランプ機構60と、トレイ70をさらに備える。ベースシャーシ50は、トラバースベース20を支持し、トレイ70を矢印70Aの方向および70Bの方向へ移動可能にガイドする。また、ベースシャーシ50には、トレイ70を矢印70Aの方向および70Bの方向に移動させる駆動モータ51と、駆動モータ51の駆動力を減速および伝達するためのギア列52が設けられている。駆動モータ51およびギア列52は、トレイ70の下方に位置しており、トレイ70の裏面に構成されるラック部(図示せず)とギア列52とが係合することにより、トレイ70を矢印70A方向および70B方向に駆動する。
【0084】
クランプ機構60は、ディスク10をスピンドルモータ30のディスク載置面30aとで挟持するクランパ61と、クランパ61を回転可能に支持するクランパホルダ62と、クランパホルダ62を昇降動作させるクランプアーム63と、クランパホルダ62およびクランプアーム63を支持するアッパーベース64と、クランパホルダ63をアッパーベース64に対して付勢する付勢バネ65とにより構成され、ベースシャーシ50に取り付けられる。なお、クランプ機構60の詳細な説明については、後述する。
【0085】
トレイ70は、従来型ディスクカートリッジ100、密閉型ディスクカートリッジ200、開放型ディスクカートリッジ300およびディスク10単体が載置可能であり、ディスクカートリッジおよびディスク10をディスク装置500の外部へ排出する位置と、スピンドルモータ30のディスク載置面30aに各ディスクカートリッジ内のディスク10を載置することができる位置との間で各ディスクカートリッジ100、200、300およびディスク10を搬送する。
【0086】
トレイ70には、各ディスクカートリッジ100、200、300を載置する際のガイド機能を有するガイド壁71a、71bが設けられている。また、トレイ70にはカートリッジの位置決め穴と係合する位置決めピン72a、72bが設けられており、この位置決めピン72a、72bがカートリッジの位置決め穴と係合することで、トレイ70上でカートリッジが位置決めされる。
【0087】
また、トレイ70には、カートリッジに収納されていないディスク10を直接載置するために円形状の凹部70rが設けられている。凹部70rの底部には、スピンドルモータ30および光ピックアップ40がディスク10に接近するための開口部70wが設けられている。
【0088】
また、トレイ70に載置されたカートリッジを取り出しやすくするために、カートリッジの側面の一部を露出させるための切り欠き70sをトレイ70の前面に設けられている。
【0089】
トレイ70には、従来型ディスクカートリッジ100のカートリッジシャッタ103を開閉するオープナー75が矢印75Aならびに矢印75B方向に移動可能に設けられている。オープナー75は、後述するアッパーベース61の裏面に設けられるオープナーカム66(図2)と係合し、トレイ70の挿入/排出動作に応じて、カートリッジシャッタ103の開閉を行う。
【0090】
また、ディスク装置500は、トレイ70の挿入/排出動作に応じて、密閉型ディスクカートリッジ200および開放型ディスクカートリッジ300の回転体230、330を回転することでカートリッジのシャッタを開閉するシャッタ開閉機構80を備える。
【0091】
ベースシャーシ50は、装置への衝撃を緩衝するための、ゴムなどの弾性部材で構成されるダンパを介してフレーム510に支持される。フレーム510に、ディスク装置500の外殻をなす上部筐体520および下部筐体530が取り付けられ、ディスク装置500の外殻が構成される。
【0092】
次に、図2〜図5を用いて、クランプ機構60の構成について説明する。
【0093】
図2は、本発明の実施形態におけるクランプ機構60の構成を示す分解斜視図であり、図3は、本発明の実施形態におけるクランプ機構60の構成を示す平面図である。
【0094】
図4は、本発明の実施形態におけるクランパホルダ62の位置決め状態を説明する図で、(a)は下降時のクランパホルダ62とアッパーベース64の位置決め状態を示し、(b)は上昇時のクランパホルダ62とアッパーベース64の位置決め状態を示す。
【0095】
図5は、本発明の実施形態におけるクランプ機構60の昇降動作を説明する動作図で、
(a)はトレイ70のローディング途中の状態を示し、(b)はトレイ70のローディング完了状態を示す。
【0096】
クランプ機構60は、トレイ70の矢印70A方向および矢印70B方向への挿入/排出動作に連動して、クランパ61を矢印60A方向および矢印60B方向へ上昇/下降させる昇降動作を行う。図2に示すように、クランプ機構60は、ディスク10をスピンドルモータ30のディスク載置面30aとで挟持するクランパ61と、クランパ61をスピンドルモータ30に対して回転可能に支持するクランパホルダ62と、トレイ70の挿入/排出動作と連動して、クランパホルダ62を矢印60A方向および矢印60B方向へ昇降動作させるクランプアーム63と、クランパホルダ62およびクランプアーム63を支持するアッパーベース64と、クランプホルダ62をアッパーベース64対して付勢する付勢バネ65と、トレイ70に支持されるオープナー75と係合するオープナーカム66とを備えている。
【0097】
クランパ61は、上部クランパ61aと、下部クランパ61bと、ディスク載置面30aに設けられたマグネット(図示せず)と磁気で引き合う磁性体プレート61cとから構成され、上部クランパ61aと下部クランパ61bとでクランパホルダ62を挟むことで、クランパ61は、クランパホルダ62に、回転自在に支持される。また、下部クランパ61bの外周面には、円錐状のテーパ面61dが形成されており、後述するクランプ動作の説明において、カートリッジと接触した場合に、クランパ61を矢印60A方向に退避させる働きがある。
【0098】
クランパホルダ62は、クランパ61を回転可能に支持するクランパ支持面62pを有し、クランプアーム63の昇降用当接部63bと当接することによって、クランプアーム63の回動に伴い、矢印60A方向および矢印60B方向に上昇/下降する。また、クランパホルダ62には、図3および図4に示すように、矢印60A方向へ上昇した時および矢印60B方向に下降した時に、アッパーベース64と係合してクランパホルダ62の位置決めを行う位置決め穴62a、昇降ガイド部62b、第1の位置決め当接部62cおよび第2の位置決め当接部62dの各位置決め部位が設けられている。
【0099】
また、クランパホルダ62は、クランパ61の下降時において、図3に示すように、トレイ70の挿入/排出方向(矢印70A方向/矢印70B方向)に直交し、かつ、クランパ61の回転中心軸を含む線分Lを境界に、アッパーベース64と当接部S1、S2(図中の斜線領域)で当接してアッパーベース64に支持される。これによって、後述するように、クランパホルダ62は、クランパ61をディスク載置面30aから引き剥がす力を両持ち状態で受ける構成となる。
【0100】
クランプアーム63は、アッパーベース64に設けられた保持部64eに付勢バネ65を取り付けることにより、付勢バネ65で抜け止めされ、かつ、線分64fを中心に矢印63A方向および矢印63B方向に回動自在に保持される。また、クランプアーム63には、バネ部63cが一体的に構成されており、バネ部63cの付勢力により、クランプアーム63が矢印63A方向に回動し、クランパホルダ62を矢印60A方向に上昇させる。
【0101】
アッパーベース64は、クランパホルダ62およびクランプアーム63を支持し、クランパホルダ62の上昇時および下降時の位置決めを行う。また、アッパーベース64には、図3および図4に示すように、クランパホルダ62の位置決め部位である位置決め穴62a、昇降ガイド部62b、第1の位置決め当接部62cおよび第2の位置決め当接部62dとそれぞれ係合する位置決めピン64a、ガイド部64b、第1の位置規制部64cおよび第2の位置規制部64dが設けられている。
【0102】
アッパーベース64によるクランパホルダ62の位置決めについて説明すると、図3および図4(a)に示すように、クランパホルダ62が矢印60B方向に下降している時は、クランパホルダ62の位置決め穴62aにアッパーベース64の位置決めピン64aが挿入されることにより、矢印70A方向および矢印70B方向の位置決めが行われる。さらに、クランパホルダ62の昇降ガイド部62bとアッパーベース64のガイド部64bの係合により、矢印75A方向および矢印75B方向の位置決めが行われ、下降時のクランパホルダ62がアッパーベースに64によって位置決めが行われる。
【0103】
一方、図3および図4(b)に示すように、クランパホルダ62が矢印60A方向に上昇している時は、クランパホルダ62の昇降ガイド部62bおよび第1の位置決め当接部62cとアッパーベース64のガイド部64bおよび第1の位置規制部64cがそれぞれ係合することにより、矢印75A方向および矢印75B方向の位置決めが行われる。さらに、クランパホルダ62の第2の位置決め当接部62dとアッパーベース64の第2の位置規制部64dが係合することで、矢印70Aおよび矢印70B方向の位置決めが行われ、上昇時のクランパホルダ62がアッパーベースに64によって位置決めが行われる。
【0104】
なお、本実施形態では、クランパホルダ62の第2の位置決め当接部62dをディスク装置の幅方向(矢印75A方向および矢印75B方向)に離して2ヶ所構成して、アッパーベース64の第2の位置規制部64dと係合することで、ディスク10と平行な面内での回転による位置ずれの影響を抑制している。また、クランパホルダ62の昇降ガイド部62bとアッパーベース64のガイド部64bは、クランパホルダ62の昇降動作において常に係合しており、昇降動作中、クランパホルダ62を幅方向に(矢印75A方向および矢印75B方向)ガイドする。
【0105】
付勢バネ65は、線バネで構成されており、クランパホルダ62に設けられた第1および第2の係合部62s、62tと係合し、クランパホルダ62を付勢するとともにワイヤー構造でクランパホルダ62を支持する。このワイヤー支持構造により、従来のような回動軸を必要としない昇降動作が可能となり、後述するように、クランパホルダ62のクランパ支持面62pをディスク10の面に対してほぼ平行な姿勢を維持しながら昇降させる機構を構成している。
【0106】
また、付勢バネ65は、前述したように、アッパーベース64の保持部64eに取り付けられることにより、クランプアーム63を矢印63A方向および矢印63B方向に回動自在に保持する。また、線バネで構成されている付勢バネ65は、アッパーベース64の保持部64eとクランパホルダ62の第1および第2の係合部62s、62tの間をクランプアーム63によって押圧されることによって付勢力を発生し、クランパホルダ62を矢印60B方向に付勢する。
【0107】
また、クランパホルダ62の第1および第2の係合部62s、62tは、図3に示すようにクランパホルダ62とアッパーベース64の当接部S1、S2の境界である線分L近傍に構成されている。これにより、クランパホルダ62をアッパーベース64に付勢する際に、当接部S1、S2に均等に付勢力を働かせる。さらに、クランパホルダ62の第1および第2の係合部62s、62tを、線分Lに直交し、クランパ61の回転中心を含んだ平面に対して、対称的に離れた位置に構成することで、付勢バネ65のばらつきにより、昇降動作時における第1および第2の係合部62s、62tに働く付勢バネ65の付勢力に不均衡が生じた場合においても、クランパホルダ62の姿勢ばらつきを低減する。
【0108】
オープナーカム66は、アッパーベース64の裏面に取り付けられ、オープナー75に設けられたローラ部76と係合し、トレイ70の矢印70A方向および70B方向の移動に同期して、オープナー75を矢印75A方向および75B方向へ移動させる。このオープナー75の移動により、前述した図18に示す従来型ディスクカートリッジ100を、トレイ70に載置した場合には、オープナー75とカートリッジシャッタ103が係合して、トレイ70の挿入/排出動作に応じて、カートリッジシャッタ103の開閉を行う。また、オープナー75には、クランプアーム63の当接部63aと当接するカム部75aが設けられており、図5に示すように、カム部75aがクランプアーム63の当接部63aと当接することにより、クランプアーム63は、バネ部63cの付勢力に抗して、矢印63B方向に回動し、クランプアーム63により、上昇していたクランパホルダ62は付勢バネ65の付勢力により、矢印60B方向に下降する。
【0109】
また、本実施形態におけるクランプ機構60では、図5(a)に示すように、クランパホルダ62が矢印60A方向に上昇している場合には、付勢バネ65の付勢力がクランパホルダ62の第1および第2の係合部62s、62tに働くことにより、クランパホルダ62は、クランプアーム63の昇降用当接部63bを中心に矢印63B方向に回転するので、アッパーベース64に設けられた第1の位置規制部64cとクランパホルダ62の第1の位置決め当接部62cを当接させることにより、クランパホルダ62の上昇時の姿勢をディスク10の面に対して、略平行にしている。言い換えると、上昇時のクランパホルダ62のクランパ支持面62pをディスク10の面に対して、略平行にすることで、クランパ61をディスク10の面に対して、略平行に上昇させることができる。したがって、クランパホルダ62をディスク10の面に対して略平行に昇降することにより、必要最小限の昇降量でクランパ61およびクランパホルダ62を昇降することができ、ディスク装置500の薄型化を図ることができる。
【0110】
また、図5(b)に示すように、クランパホルダ62が矢印60B方向に下降している場合には、前述したようにクランパホルダ62に設けられた位置決め穴62aおよびガイド部62bと、アッパーベース64に設けられた位置決めピン64aおよびガイド部64bがそれぞれ係合することにより、クランパホルダ62はアッパーベース64に対して位置決めされ、さらに、付勢バネ65の付勢力によって、クランパホルダ62はアッパーベース64に押圧されるので、アッパーベース64によって、クランパホルダ62は高さ方向(矢印60A方向および矢印60B方向)に位置決めされる。そして、ディスク10をクランパ61とスピンドルモータ30のディスク載置面30aとで挟持することで、クランパ61は、クランパホルダ62のクランパ支持面62pに対して所定のクリアランスを確保し、回転自在となる。
【0111】
以上のような構成により、本実施形態におけるクランプ機構60は、図5に示すように、クランプアーム63の回動によって、クランパホルダ62をディスク10の面に対してほぼ平行な姿勢を維持しながら、矢印60A方向および矢印60B方向へ上昇/下降させることで、クランパ61を矢印60A方向および矢印60B方向へ上昇/下降させる。
【0112】
なお、クランパ61の位置精度が必要なのは、クランパホルダ62が下降した場合であるが、図20に示す従来のディスク装置600のように、クランプアーム632の回動でクランパ631を昇降する動作とは異なり、本実施形態におけるクランパホルダ62は、付勢バネ65によるワイヤー支持構造で支持されており、従来のディスク装置600のような昇降動作の基準となる回動軸を持たないため、昇降動作中におけるクランパホルダ62のガイドが従来のディスク装置600に比べ極めて不十分となる。このため、本実施形態におけるクランプ機構60では、クランパホルダ62が下降するときに、アッパーベース64の位置決めピン64aとクランパホルダ62の位置決め穴62aが上昇時の位置ずれによって係合できなくなるのを防止するため、クランパホルダ62が上昇しているときにも位置決めを行い、下降した際のクランパホルダ62がアッパーベース64に正しく位置決めされる構成としている。
【0113】
したがって、本実施形態のクランプ機構60は、上述したように上昇時、下降時におけるクランパホルダ62をアッパーベース64との係合によって位置決めすることで、クランパホルダ62をディスク10の面に対してほぼ平行な姿勢を維持しながら昇降させる構成を実現し、これにより、クランパ61およびクランパホルダ62を必要最小限の昇降量で昇降することができ、ディスク装置500の薄型化を図ることができる。
【0114】
次に、以上のように構成されるクランプ機構60の動作について説明する。ディスク装置500は、図18および図21〜図24で示す従来型ディスクカートリッジ100、密閉型ディスクカートリッジ200、開放型ディスクカートリッジ300の3種類のディスクカートリッジを装填可能な装置である。ここで、従来型ディスクカートリッジ100と開放型ディスクカートリッジ300はクランパを備えていないが、密閉型ディスクカートリッジ200はカートリッジ内部にクランパを有する。このため、クランプ機構60は、従来型ディスクカートリッジ100および開放型ディスクカートリッジ300がディスク装置500に装填された場合には、図2に示すクランパ61を用いてディスク10をクランプし、密閉型ディスクカートリッジ200が装填された場合には、クランパ61を使用せずに、クランパ61をカートリッジ外部に退避させる動作を行う。
【0115】
以下、クランパ61を使用しない密閉型ディスクカートリッジ200、クランパ61によってディスク10をクランプする開放型ディスクカートリッジ300および従来型ディスクカートリッジ100を装填した場合のクランプ機構60の動作について、それぞれ動作図を参照しながら説明する。
【0116】
まず、カートリッジ内部に内部クランパ240を有する密閉型ディスクカートリッジ200がトレイ70に載置された場合のクランプ機構60の動作について、図6〜図9を用いて説明する。
【0117】
図6〜図9は、密閉型ディスクカートリッジ200を載置したトレイ70をローディングした場合におけるクランプ機構60の動作状態を示しており、図6および図7は、トレイ70がローディング途中の状態で、図8は、トレイ70がディスク装置500内に挿入された状態、図9は、トレイ70が挿入されディスク10がクランプされたローディング完了状態をそれぞれ示す。なお、トレイ70に載置された密閉型ディスクカートリッジ200が矢印70A方向に挿入されるにつれて、シャッタ開閉機構80(図1参照)によって、シャッタ部220が開放し、開口212wが露出する。また、逆に矢印70B方向にトレイ70が排出されるにつれて、シャッタ部220は閉塞し、開口212wは閉じられる。
【0118】
トレイ70に密閉型ディスクカートリッジ200を載置して、トレイ70を矢印70A方向に挿入すると、図6に示すように、矢印60A方向に上昇しているクランパホルダ62のクランパ支持面62pに支持されているクランパ61のテーパ面61と密閉型ディスクカートリッジ200とが当接する。
【0119】
さらに、トレイ70を矢印70A方向に挿入すると、クランパ61は、テーパ面61dの傾斜によって、矢印60A方向に押し上げられ、図7に示すように、クランパ61が密閉型ディスクカートリッジ200の上面に乗り上げる。このとき、クランパホルダ62は、クランプアーム63によって、矢印60A方向に上昇したままで、クランパホルダ62の中でクランパ61のみ、矢印60A方向に上昇する。
【0120】
さらに、トレイ70を矢印70A方向に挿入すると、クランパ61は密閉型ディスクカートリッジ200の上面を接触しながら通過し、オープナー75のカム部75aがクランプアーム63の当接部63aに当接すると、図8に示すように、クランプアーム63の当接部63aが、オープナー75のカム部75aによって、矢印60A方向に持ち上げられ、クランプアーム63は、クランプアーム63のバネ部63c(図2参照)の付勢力に抗して、矢印63B方向に回動する。このとき、クランパ61が密閉型ディスクカートリッジ200の上面に退避しているため、クランパホルダ62は、付勢バネ65の付勢力によって、クランプアーム63の回動に伴って、クランパ61に当接するまで矢印60B方向に下降し、当接後は、クランパ61と同様に、密閉型ディスクカートリッジ200の上方で停止する。つまり、クランプアーム63のみ回動し、クランパ61およびクランパホルダ62は、付勢バネ65の付勢力を受けた状態で、密閉型ディスクカートリッジ200の上面に退避する。
【0121】
したがって、図19に示す従来型のディスク装置600のような一体型のクランプアーム632では、密閉型ディスクカートリッジ200が障害となり、クランプアーム632がクランプ位置まで完全に回動することができないが、本実施形態のクランプ機構60では、クランパ61を保持するホルダ部であるクランパホルダ62と、クランパ61を昇降する駆動部であるクランプアーム63とに分割して構成することにより、密閉型ディスクカートリッジ200の場合でも問題なくクランパ61を退避させることができる。
【0122】
そして、トレイ70の挿入が完了すると、図9に示すように、トラバースベース20が、矢印60A方向に上昇し、スピンドルモータ30のディスク載置面30aと、密閉型ディスクカートリッジ200に内包されている内部クランパ240とで、ディスク10をクランプし、密閉型ディスクカートリッジ200の挿入動作が完了する。
【0123】
密閉型ディスクカートリッジ200を排出するときは、図6〜図9の逆手順で動作する。つまり、図9の状態から、トラバースベース20が矢印60B方向に下降することにより、ディスク10のクランプが解除され、図8の状態になると、トレイ70が矢印70B方向に移動を開始し、クランプアーム63の当接部63aとオープナー75のカム部75aが離間することによって、図7に示すように、クランプアーム63が矢印63A方向に回動し、クランパホルダ62が矢印60A方向に上昇した状態に保持される。そして、クランパ61が密閉型ディスクカートリッジ200の上面を接触しながら通過し、トレイ70がさらに矢印70B方向に排出されて、クランパ61が密閉型ディスクカートリッジ200から離れ、図6の状態を経て、所定の位置までトレイ70が排出されて、密閉型ディスクカートリッジ200の排出動作が完了する。
【0124】
次に、カートリッジ上面が開放されディスク10の上面が露出している開放型ディスクカートリッジ300がトレイ70に載置された場合のクランプ機構60の動作について、図10〜図13を用いて説明する。
【0125】
図10〜図13は、開放型ディスクカートリッジ300を載置したトレイ70をローディングした場合におけるクランプ機構60の動作状態を示しており、図10および図11は、トレイ70がローディング途中の状態で、図12は、トレイ70がディスク装置500内に挿入された状態、図13は、トレイ70が挿入されディスク10がクランプされたローディング完了状態をそれぞれ示す。なお、トレイ70に載置された開放型ディスクカートリッジ300が矢印70A方向に挿入されるにつれて、シャッタ開閉機構80(図1参照)によって、シャッタ部320が開放し、開口312wが露出する。また、逆に矢印70B方向にトレイ70が排出されるにつれて、シャッタ部320は閉塞し、開口312wは閉じられる。
【0126】
トレイ70に開放型ディスクカートリッジ300を載置して、トレイ70を矢印70A方向に挿入すると、図10に示すように、矢印60A方向に上昇しているクランパホルダ62のクランパ支持面62pに支持されているクランパ61のテーパ面61と開放型ディスクカートリッジ300とが当接する。
【0127】
さらに、トレイ70を矢印70A方向に挿入すると、クランパ61は、テーパ面61dの傾斜によって、矢印60A方向に押し上げられた後、図11に示すように、開放型ディスクカートリッジ300のディスク開放部300w内に到達すると、クランパ61は、矢印60B方向に下降して、上昇しているクランパホルダ62のクランパ支持面62pに支持された元の状態にもどる。なお、クランパホルダ62がクランプアーム63によって上昇している状態では、クランパ61はディスク10の上面とは当接していない。
【0128】
さらに、トレイ70を矢印70A方向に挿入すると、クランパ61は、開放型ディスクカートリッジ300のディスク開放部330w内をクランパホルダ62に保持されてディスク10の上方を通過し、オープナー75のカム部75aがクランプアーム63の当接部63aに当接すると、図12に示すように、クランプアーム63の当接部63aが、オープナー75のカム部75aによって、矢印60A方向に持ち上げられ、クランプアーム63は、クランプアーム63のバネ部63c(図2参照)の付勢力に抗して、矢印63B方向に回動する。このとき、前述した密閉型ディスクカートリッジ200の場合とは異なり、クランパホルダ62は、付勢バネ65の付勢力によって、クランプアーム63の回動に伴って、矢印60B方向に下降し、前述したように位置決めピン64aによって位置決めされてアッパーベース64に支持される。それに伴って、クランパ61も下降する。このとき、クランパホルダ62とクランプアーム63の昇降用当接部63bの当接は解除され、クランプアーム63はクランパホルダ62から離間し、クランパホルダ62はアッパーベース64によってのみ、高さ方向(矢印60A方向/矢印60B方向)に支持される。
【0129】
したがって、図19および図20に示すように従来のディスク装置600では、クランプアーム632を線分630aを中心にトレイ620のカム部622により回動するため、クランパ631を保持するクランプアーム632の先端部の高さ方向の位置決めを行うには、関連する部品が多く、位置精度を向上することが困難であったが、本実施形態のクランプ機構60では、クランパホルダ62が下降した際に、オープナー75のカム部75aの高さ精度の影響を受けて駆動されるクランプアーム63が、クランパホルダ62から離間するため、クランパホルダ62をアッパーベース64に付勢バネ65によって押圧して高さ規制をすることで、関連する部品が多いオープナー75のカム部75aの高さ精度の影響を受けずに、クランパホルダ62の高さ位置決めを精度良く行うことができ、従来のディスク装置600に比べ、クランパホルダ62の高さ位置精度の向上を図ることができる。
【0130】
また、本実施形態のクランプ機構60では、クランパ61を保持するホルダ部であるクランパホルダ62と、クランパ61を昇降する駆動部であるクランプアーム63とに分割して構成しているが、付勢バネ65によって、2つの部材を連動させることにより、図19および図20に示す従来のディスク装置600のような一体型のクランプアーム632と同様な動作を実現している。
【0131】
そして、トレイ70の挿入が完了すると、図13に示すように、トラバースベース20が、矢印60A方向に上昇し、スピンドルモータ30のディスク載置面30aと、クランパ61とで、ディスク10をクランプし、開放型ディスクカートリッジ200の挿入動作が完了する。
【0132】
開放型ディスクカートリッジ300を排出するときは、図10〜図13の逆手順で動作する。つまり、図13の状態から、トラバースベース20が矢印60B方向に下降することにより、ディスク10のクランプが解除される。このとき、図19および図20に示すように、従来のディスク装置600では、クランプアーム632はアッパーベース630によって片持ち状態で支持されて、クランパ631を保持する構成となるため、トラバースベース640を下降することにより、クランパ631をスピンドルモータ650から引き剥がす場合、このクランパ631を引き剥がす力を片持ち状態のクランプアーム632が受けることになるので、クランプアーム632が変形しないように、板厚を大きくして剛性を高める必要があったが、本実施形態では、図3に示すように、クランパ61の回転中心に対して、ディスク装置前方側(トレイ70の排出側)にもアッパーベース64によるクランパホルダ62の支持部を構成しているので、クランパホルダ62は、線分Lを境に当接部S1、S2によって両持ち状態でアッパーベース64に支持される構成となる。
【0133】
このため、クランパ631を引き剥がす力を分散して受けることができるので、従来のディスク装置600の片持ち状態の支持構造に比べ、クランパホルダ62の剛性は緩和される。したがって、クランパホルダ62の板厚を従来のディスク装置600のクランプアーム632より、薄く構成することができる。さらに、本実施形態では、クランパホルダ62を円錐状に絞った形状(図2参照)に構成することによっても、クランパホルダ62の剛性向上を図れるため、クランパホルダ62の板厚の薄型化が可能となる。したがって、上部クランパ61aと下部クランパ61bの間に介在するクランパホルダ62が薄くなるため、クランパ61の薄型化、言い換えれば、ディスク装置500の薄型化を図ることが可能となる。
【0134】
そして、トラバースベース20の下降が完了し、図12の状態になると、トレイ70が矢印70B方向に移動を開始し、クランプアーム63の当接部63aとオープナー75のカム部75aが離間することによって、図11に示すように、クランプアーム63が矢印63A方向に回動し、クランパホルダ62が矢印60A方向に上昇した状態に保持され、クランパ61がディスク10の上面から離間する位置へ上昇する。そして、トレイ70が矢印70B方向に排出され、クランパ61が開放型ディスクカートリッジ300のディスク開放部300w内のディスク10上方を通過し、クランパ61のテーパ面61と開放型ディスクカートリッジ300とが当接し、クランパ61は、テーパ面61dの傾斜によって、矢印60A方向に押し上げられた後、図10に示すように、再びクランパホルダ62に保持され、所定の位置までトレイ70が排出されて、開放型ディスクカートリッジ300の排出動作が完了する。
【0135】
次に、本実施形態のディスク装置500はコの字断面のシャッタを有する従来型ディスクカートリッジ100にも対応しているため、この従来型ディスクカートリッジ100がトレイ70に載置された場合のクランプ機構60の動作について、図14〜図17を用いて説明する。
【0136】
図14〜図17は、従来型ディスクカートリッジ100を載置したトレイ70をローディングした場合におけるクランプ機構60の動作状態を示しており、図14および図15は、トレイ70がローディング途中の状態で、図16は、トレイ70がディスク装置500内に挿入された状態、図17は、トレイ70が挿入されディスク10がクランプされたローディング完了状態をそれぞれ示す。なお、トレイ70に載置された従来型ディスクカートリッジ100が矢印70A方向に挿入されるにつれて、オープナー75がオープナーカム66のカム面に沿って、矢印75A方向(図2参照)に移動することによって、カートリッジシャッタ103が開放し、開口101wが露出する。また、逆に矢印70B方向にトレイ70が排出されるにつれて、カートリッジシャッタ103は閉塞し、開口101wは閉じられる。
【0137】
トレイ70に従来型ディスクカートリッジ100を載置して、トレイ70を矢印70A方向に挿入すると、図14に示すように、矢印60A方向に上昇しているクランパホルダ62のクランパ支持面62pに支持されているクランパ61は、従来型ディスクカートリッジ100の開口101wに進入し、ブリッジ部104の上方を通過する。なお、カートリッジシャッタ103が開放途中であった場合は、クランパ61のテーパ面61dがカートリッジシャッタ103に当接し、前述の開放型ディスクカートリッジ300の場合と同様に、クランパ61が矢印60A方向に押し上げられる。
【0138】
さらに、トレイ70を矢印70A方向に挿入すると、図15に示すように、クランパ61は、従来型ディスクカートリッジ100の開口101w内を上昇しているクランパホルダ62に支持された状態で通過する。なお、図14のときに、カートリッジシャッタ103が開放途中であった場合は、カートリッジシャッタ103が開放した時点で、矢印60A方向に押し上げられていたクランパ61は、矢印60B方向に下降して、上昇しているクランパホルダ62に支持され図15に示す状態になる。なお、クランパホルダ62がクランプアーム63によって上昇している状態では、クランパ61はディスク10の上面とは当接していない。
【0139】
さらに、トレイ70を矢印70A方向に挿入すると、クランパ61は、従来型ディスクカートリッジ100の開口101w内をクランパホルダ62に支持されてディスク10の上方を通過し、オープナー75のカム部75aがクランプアーム63の当接部63aに当接すると、図16に示すように、クランプアーム63の当接部63aが、オープナー75のカム部75aによって、矢印60A方向に持ち上げられ、クランプアーム63は、クランプアーム63のバネ部63c(図2参照)の付勢力に抗して、矢印63B方向に回動し、前述した開放型ディスクカートリッジ300の場合と同様に、クランパホルダ62は、付勢バネ65の付勢力によって、クランプアーム63の回動に伴って、矢印60B方向に下降し、前述したように位置決めピン64aによって位置決めされてアッパーベース64に支持される。それに伴って、クランパ61も下降する。このとき、クランパホルダ62とクランプアーム63の昇降用当接部63bの当接は解除され、クランプアーム63はクランパホルダ62から離間し、クランパホルダ62はアッパーベース64によってのみ、高さ方向に支持される。
【0140】
そして、トレイ70の挿入が完了すると、図17に示すように、トラバースベース20が、矢印60A方向に上昇し、スピンドルモータ30のディスク載置面30aと、クランパ61とで、ディスク10をクランプし、従来型ディスクカートリッジ100の挿入動作が完了する。
【0141】
従来型ディスクカートリッジ100を排出するときは、図14〜図17の逆手順で動作する。つまり、図17の状態から、トラバースベース20が矢印60B方向に下降することにより、前述した開放型ディスクカートリッジ300の場合と同様に、ディスク10のクランプが解除され、図16の状態になると、トレイ70が矢印70B方向に移動を開始し、クランプアーム63の当接部63aとオープナー75のカム部75aが離間することによって、図15に示すように、クランプアーム63が矢印63A方向に回動し、クランパホルダ62が矢印60A方向に上昇した状態に保持される。そして、トレイ70が矢印70B方向に排出され、クランパ61が従来型ディスクカートリッジ100の開口101w内のディスク10の上方を通過し、図14に示すように、ブリッジ部104の上方を通過し、所定の位置までトレイ70が排出されて、開放型ディスクカートリッジ300の排出動作が完了する。なお、図14のときに、カートリッジシャッタ103が開放途中であった場合は、カートリッジシャッタ103の閉塞時に、クランパ61のテーパ部61dが当接することで、クランパ61は矢印60A方向に押し上げられ、カートリッジシャッタ103上面を摺接しながら、トレイ70が矢印70B方向に排出される。
【0142】
なお、ディスク10単体をトレイ70に載置した場合は、図5に示すように、カートリッジが存在しないため、トレイ70の挿入/排出動作中によるクランパ61がカートリッジと当接して昇降する動作がないだけで、ディスク10をクランプまたはクランプ解除するクランプ機構60の動作自体は、前述した従来型ディスクカートリッジ100の場合と同様であるので、説明は省略する。
【0143】
以上の説明から、本発明のディスク装置によれば、クランパが内包された密閉型ディスクカートリッジ200であっても、クランパを内包しない開放型ディスクカートリッジ300およびコの字断面のシャッタを有する従来型ディスクカートリッジ100であっても正しくディスク装置500内でディスク10をディスク載置面30aにクランプすることができる。
【0144】
また、クランパ61を支持するクランパホルダ62を、クランパ61の回転中心を境に両持ち状態で安定してアッパーベース64によって支持することで、クランパホルダ62を薄く構成することができ、クランパ61自体の薄型化を図ることができる。
【0145】
また、クランパ61を支持するクランパホルダ62を、付勢バネ65によるワイヤー支持構造により、クランパホルダ62をディスク10の面に対してほぼ平行に昇降させる機構を実現し、加えて、必要最小限の昇降量でクランパ61を昇降できるため、装置全体の薄型化を図ることができる。
【0146】
なお、本実施形態では、従来型ディスクカートリッジ100のカートリッジシャッタ103を開閉するオープナー75によって、クランプアーム63を回動させて、クランプ機構60を構成しているが、これに限定されることなく、トレイ70にクランプアーム63を回動する当接部を構成しても同様な効果を得ることができる。
【0147】
また、本実施形態では、クランパ61を必要とする従来型カートリッジ100、開放型カートリッジ300およびディスク10単体に対応する構成としているが、これに限定されることなく、上記のカートリッジおよびディスク10単体のうち少なくとも一つに対応した装置であっても、本発明のクランプ機構60が適用できる。
【0148】
また、本実施形態では、クランパホルダ62が下降した状態の時にアッパーベース64で直接支持する構成としたが、これに限定されることなく、例えば、クランパホルダ62とアッパーベース64の当接部S1、S2の間に、弾性部材(例えば、ゴムシートなど)を設けて、ディスクの高速回転時の振動による金属部品同士の接触音の静音化を行っても良い。
【0149】
また、本実施形態では、付勢バネ65が、クランプアーム63をアッパーベース64に保持する働きと、クランパホルダ62を付勢する働きを兼ねていたが、これに限定されることなく、組立性改善などの目的で、クランプアーム63の保持を別部材で行っても良い。
【0150】
また、本実施形態では、トレイ70上に位置決めピン72a、72bを構成することにより、カートリッジをトレイ70に対して位置決めを行っているが、カートリッジの位置穴に係合する位置決めピンはトレイ70上に固定されていなくてもよい。例えば、トラバースベース20に位置決めピンを構成して、トレイ70上には位置決めピンが通過できる穴が空いている構造としてカートリッジの位置決めをしてもよい。
【0151】
また、この上部筐体520と下部筐体530とで構成されるディスク装置500の外形寸法の高さが、例えば41.3mmであってもよい。外形寸法の幅は、例えば146mmであってもよい。外形寸法の奥行きは、例えば190mmであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明のディスク装置は、クランパが内包された密閉型ディスクカートリッジ、ディスク単体およびクランパが内包されていないディスクカートリッジに対応したディスク装置に適合し、簡単な構成で安定、確実にディスクのクランプ動作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】本発明の実施形態におけるディスク装置の構成を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態におけるクランプ機構の構成を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の実施形態におけるクランプ機構の構成を示す平面図である。
【図4】本発明の実施形態におけるクランパホルダの位置決め状態を説明する図で、(a)は、クランパホルダ下降時を示し、(b)はクランパホルダ上昇時を示す。
【図5】本発明の実施形態におけるクランプ機構のクランプ動作を説明する動作図で、(a)はトレイのローディング途中の状態を示し、(b)はトレイのローディング完了状態を示す。
【図6】密閉型ディスクカートリッジをトレイに装填した場合におけるクランプ機構のクランプ動作を説明する動作図である。
【図7】密閉型ディスクカートリッジをトレイに装填した場合におけるクランプ機構のクランプ動作を説明する動作図である。
【図8】密閉型ディスクカートリッジをトレイに装填した場合におけるクランプ機構のクランプ動作を説明する動作図である。
【図9】密閉型ディスクカートリッジをトレイに装填した場合におけるクランプ機構のクランプ動作を説明する動作図である。
【図10】開放型ディスクカートリッジをトレイに装填した場合におけるクランプ機構のクランプ動作を説明する動作図である。
【図11】開放型ディスクカートリッジをトレイに装填した場合におけるクランプ機構のクランプ動作を説明する動作図である。
【図12】開放型ディスクカートリッジをトレイに装填した場合におけるクランプ機構のクランプ動作を説明する動作図である。
【図13】開放型ディスクカートリッジをトレイに装填した場合におけるクランプ機構のクランプ動作を説明する動作図である。
【図14】従来型ディスクカートリッジをトレイに装填した場合におけるクランプ機構のクランプ動作を説明する動作図である。
【図15】従来型ディスクカートリッジをトレイに装填した場合におけるクランプ機構のクランプ動作を説明する動作図である。
【図16】従来型ディスクカートリッジをトレイに装填した場合におけるクランプ機構のクランプ動作を説明する動作図である。
【図17】従来型ディスクカートリッジをトレイに装填した場合におけるクランプ機構のクランプ動作を説明する動作図である。
【図18】従来型ディスクカートリッジの外観を示す斜視図である。
【図19】従来型ディスクカートリッジを装填可能な従来のディスク装置の構成を示す斜視図である。
【図20】従来型ディスクカートリッジを装填可能な従来のディスク装置のクランプ動作を説明する動作図で、(a)はトレイのローディング途中の状態を示し、(b)はトレイのローディング完了状態を示す。
【図21】密閉型ディスクカートリッジの外観を示す斜視図である。
【図22】密閉型ディスクカートリッジの構成を示す分解斜視図である。
【図23】開放型ディスクカートリッジの外観を示す斜視図である。
【図24】開放型ディスクカートリッジの構成を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0154】
10 ディスク
20 トラバースベース
30 スピンドルモータ
40 光ピックアップ
50 ベースシャーシ
60 クランプ機構
61 クランパ
62 クランパホルダ
63 クランプアーム
64 アッパーベース
65 付勢バネ
66 オープナーカム
70 トレイ
75 オープナー
80 シャッタ開閉機構
100 従来型ディスクカートリッジ
200 密閉型ディスクカートリッジ
240 クランパ
300 開放型ディスクカートリッジ
510 フレーム
520 上部筐体
530 下部筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号記録面を有するディスクと、
前記ディスクを載置するターンテーブルを有するディスクモータと、
前記ディスクを載置し、前記ディスクを装填または取り出しを行う第1の位置と、前記ディスクモータが前記ディスクを回転させることができる第2の位置との間を移動するトレイと、
前記ディスクに信号を記録および/または再生するヘッドと、
前記ディスクを前記ターンテーブルとの間でクランプするためのクランパと、
前記ターンテーブルから離れた退避位置と前記ターンテーブル上に前記ディスクをクランプするクランプ位置との間で前記クランパを昇降動作させるクランプ機構と
を備えたディスク装置であって、
前記クランプ機構は、前記クランパを回転可能に支持するクランパ支持面を有するクランパホルダと、前記トレイの移動に連動して回動し、前記クランパホルダを前記信号記録面に対して直交する方向に昇降するクランプアームと、前記クランパホルダおよび前記クランプアームを支持するアッパーベースと、前記クランパホルダを前記クランパが下降する方向へ付勢するホルダ付勢バネと、前記クランプアームを前記クランパが上昇する方向へ付勢するアーム付勢バネとを備え、
前記クランプ機構は、前記トレイが前記第1の位置と前記第2の位置の間を移動することにより、前記クランプアームが回動して、前記クランパホルダの前記クランパ支持面を前記ディスクの前記信号記録面に対して略平行な状態に維持しながら、前記クランパホルダを昇降することを特徴とするディスク装置。
【請求項2】
前記クランパが前記退避位置に上昇した状態における前記クランパホルダの位置を前記アッパーベースによって位置決めする請求項1に記載のディスク装置。
【請求項3】
前記クランパが前記クランプ位置に下降した状態における前記クランパホルダの下降位置を前記アッパーベースによって位置決めする請求項1または2のいずれかに記載のディスク装置。
【請求項4】
前記クランパが前記退避位置に上昇した状態において、前記アーム付勢バネの付勢力によって、前記クランパホルダの一部を前記アッパーベースに付勢することで、前記クランパホルダの上昇を停止し、前記クランパホルダを高さ方向に位置決めする請求項1から3のいずれかに記載のディスク装置。
【請求項5】
前記クランパが前記クランプ位置に下降した状態において、前記ホルダ付勢バネの付勢力によって、前記クランパホルダの一部を前記アッパーベースに付勢することで、前記クランパホルダの下降を停止し、前記クランパホルダを高さ方向に位置決めする請求項1から4のいずれかに記載のディスク装置。
【請求項6】
前記クランパが前記クランプ位置に下降した状態において、前記クランプアームは、前記クランパホルダと離間する請求項5に記載のディスク装置。
【請求項7】
前記クランパホルダが前記退避位置に上昇した状態において、前記クランパホルダに設けられた位置決め当接部を、前記アッパーベースに設けられた位置規制部に係合させることにより、前記クランパホルダの位置決めを行う請求項1から6のいずれかに記載のディスク装置。
【請求項8】
前記クランパホルダが前記クランプ位置に下降した状態において、前記クランパホルダに設けられた位置決め穴に、前記アッパーベースに設けられた位置決めピンを挿入させることにより、前記クランパホルダの位置決めを行う請求項1から7のいずれかに記載のディスク装置。
【請求項9】
前記クランパホルダは、前記クランパが前記クランプ位置に下降した状態において、前記トレイの移動する方向に直交し、かつ、前記クランパの回転中心軸を含む平面を境界とするそれぞれの領域に少なくとも1ヶ所以上当接して前記アッパーベースに支持される請求項1から8のいずれかに記載のディスク装置。
【請求項10】
前記ホルダ付勢バネは、線バネで構成される請求項1から9のいずれかに記載のディスク装置。
【請求項11】
前記クランパホルダは、前記ホルダ付勢バネの付勢力を受け、前記ホルダ付勢バネと係合する第1の係合部と第2の係合部を有する請求項1から10のいずれかに記載のディスク装置。
【請求項12】
前記第1および第2の係合部は、前記トレイの移動する方向に平行で、かつ、前記クランパの回転中心軸を含む平面に対して、対称に配置される請求項11に記載のディスク装置。
【請求項13】
前記第1および第2の係合部は、前記トレイの移動する方向に直交で、かつ、前記クランパの回転中心軸を含む平面近傍部に設けられる請求項11および12に記載のディスク装置。
【請求項14】
前記トレイは、前記ディスクを収納したディスクカートリッジを載置可能である請求項1から13のいずれかに記載のディスク装置。
【請求項15】
前記ディスクカートリッジは、前記ディスクカートリッジの内部に前記ディスクを前記ターンテーブルとの間でクランプするための内部クランパを有している請求項14に記載のディスク装置。
【請求項16】
前記内部クランパを有する前記ディスクカートリッジを装填し、前記トレイを前記第2の位置に移動した際、前記クランパが前記クランプ位置まで下降せず、前記ディスクは前記内部クランパによって前記ターンテーブルにクランプされる請求項15に記載のディスク装置。
【請求項17】
前記クランパは、前記ディスクカートリッジの上面に当接することによって、下降しないことを特徴とする請求項16に記載のディスク装置。
【請求項18】
前記内部クランパを有する前記ディスクカートリッジが装填された際、前記クランパホルダは、前記クランパに当接し、前記ディスクカートリッジ上面で停止する請求項17に記載のディスク装置。
【請求項19】
前記クランパの外周面には、円錐状のテーパ面が設けられており、前記トレイが前記第1の位置と前記第2の位置との間を移動する際に、前記トレイに載置された前記ディスクカートリッジと前記テーパ面が当接することにより、前記クランパが前記ディスクカートリッジの上面を接触しながら通過する請求項14から18のいずれかに記載のディスク装置。
【請求項20】
前記トレイは、前記トレイが前記第1の位置と前記第2の位置との間を移動する際に、前記クランプアームと当接し、前記クランプアームを回動させるカム部を有する請求項1から19のいずれかに記載のディスク装置。
【請求項21】
前記トレイには、前記ディスクカートリッジのシャッタを開閉するオープナーが設けられており、前記トレイが前記第1の位置と前記第2の位置との間を移動する際に、前記クランプアームと当接し、前記クランプアームを回動させるカム部が前記オープナーに構成されている請求項14から19のいずれかに記載のディスク装置。
【請求項22】
前記アーム付勢バネは、前記クランプアームの一部で構成される請求項1から21のいずれかに記載のディスク装置。
【請求項23】
前記クランプアームは、前記ホルダ付勢バネを前記アッパーベースに取り付けることによって、前記アッパーベースに回動自在に保持される請求項1から22のいずれかに記載のディスク装置。
【請求項24】
前記クランパホルダは、前記クランパが前記クランプ位置に下降した状態において、弾性部材を介して、前記アッパーベースに前記ホルダ付勢バネによって付勢される請求項1から23のいずれかに記載のディスク装置。
【請求項25】
前記弾性部材は、振動を緩和する制振部材である請求項24に記載のディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2008−90930(P2008−90930A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−270540(P2006−270540)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】