説明

ディスク装置

【課題】 ターンテーブルの凸部をディスクの中心穴に挿入してから移送機構でディスクを排出するものにおいて、ディスクがターンテーブルで持ち上げられた状態であっても、移送機構でディスクを排出する確率を高くできる「ディスク装置」を提供することを目的とする。
【解決手段】 ターンテーブル82を上昇させたときに、凸部82cがディスクDの中心穴Daに入り込まない状態で、移送ユニット17がY1方向へ移動してディスクDに当たったときに、ターンテーブル82を下降させてディスクDを下降させる。その後に、移送ユニット17をY1方向へ移動させる。ディスクDが下がることで、移送ローラ113と挟持部106でディスクDを挟持しやすくなり、ディスクDを排出させることが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体の下側に支持されているディスクを、案内部材と移送ローラとで挟持して排出するディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスク交換式のディスク装置では、筐体の内部にディスクを支持する複数の支持体が設けられ、それぞれの支持体にディスクが支持される。支持体に支持されているディスクを排出するときには、支持体に支持されたディスクを、移送ローラと案内部材とで挟持し、移動ローラの回転力で排出させるのが一般的である。
【0003】
しかし、支持体に支持されているディスクが、移送ローラと案内部材とで確実に挟持できないことがあると、ディスクが筐体内で動けなくなり、筐体内の機構がロック状態となる現象が生じる。
【0004】
以下の特許文献1に記載のディスク装置では、支持体の下側に支持されているディスクを排出する必要があるときは、ターンテーブルを上昇させ、ターンテーブルに設けられた凸部をディスクの中心穴に入り込ませてから、このディスクを移送ローラと案内部材とで挟持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−66350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に記載のディスク装置は、ターンテーブルを上昇させて、ディスクの中心穴にターンテーブルの凸部を嵌入させ、支持体の下側に支持されているディスクの姿勢を安定させてから排出動作に移行するため、移送ローラと案内部材とでディスクを挟持しやすくなる。
【0007】
しかしながら、ターンテーブルとディスクの中心穴とが一致しないとき、またはターンテーブルに設けられたクランプ部材が正常に動作できずクランプ部材がディスクの中心穴内に入れない状態で、ターンテーブルが上昇したときなどに、ターンテーブルによってディスクが正常な位置よりもさらに上側へ持ち上げられてしまう。この場合には、案内部材と移送ローラとでディスクを挟持しようとしたときに、案内部材がディスクの縁部に当たるなどして、ディスクの排出動作に支障をきたすことがありえる。
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、ターンテーブルを持ち上げて、ターンテーブルの凸部をディスクの中心穴に嵌入させてから、案内部材をディスクと重なる位置まで移動させるディスク装置において、ディスクが誤って高く持ち上げられたときにも、その後にディスクを排出させる確率を高くできるディスク装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下側にディスクを支持する支持体と、前記支持体の下側にディスクを供給する移送機構と、ディスクの中心穴に挿入される凸部を有するターンテーブルと、前記ターンテーブルを前記支持体の下側に支持されたディスクから離れる下降位置から前記凸部が前記中心穴に入る上昇位置へ移動させる昇降切換え機構と、が設けられており、
前記移送機構は、モータで回転駆動される移送ローラと、前記移送ローラよりも上側に位置して前記移送ローラとでディスクを挟持する案内部材と、前記案内部材を、前記支持体の下側に支持されたディスクの外周縁から離れる退避位置から、前記支持体の下側に支持されたディスクの上側に重なる移送動作位置へ移動させる移送切換え機構とが設けられており、
前記支持体の下側に支持されたディスクを排出するディスク排出動作では、前記ターンテーブルを前記上昇位置へ移動させた後に、前記案内部材を前記退避位置から前記移送動作位置に向けて移動させ、このときに前記案内部材が前記移送動作位置まで移動できないときに、前記ターンテーブルを前記下降位置へ移動させてから前記案内部材を前記移送動作位置へ向けて移動させる処理動作が行われることを特徴とするものである。
【0010】
本発明のディスク装置は、ディスク排出処理において、ターンテーブルの凸部をディスクの中心穴に入れてから、案内部材を、ディスクを排出する移送動作位置へ移動させているために、支持体の下側に支持されているディスクを移送機構によって確実に排出させることができる。また、ターンテーブルを持ち上げたときに、凸部が中心穴に入れないことがあったとしても、ターンテーブルを下降させることで、案内部材を移送動作位置に向けて確実に移動させることが可能になる。
【0011】
本発明は、前記ディスク排出動作では、前記案内部材と共に前記移送ローラが前記退避位置から前記移送動作位置に向けて移動し、前記移送動作位置へ移動した前記案内部材と前記移送ローラとでディスクを挟持可能となるものが好ましい。
【0012】
ただし、案内部材が退避位置から移送動作位置に移動してディスクの上側へ移動したとき、またはその後に、移送ローラがディスクの下面に当たる位置まで上昇して、移送ローラと案内部材とでディスクが挟持されてもよい。
【0013】
本発明は、前記ターンテーブルには、前記凸部が前記中心穴に挿入された状態でディスクの中心穴を内側から保持するクランプ部材が設けられており、
前記ターンテーブルを前記上昇位置へ移動させ、前記クランプ部材でディスクの中心穴を保持できたときは、ディスクを前記支持体の下側から離して、前記ターンテーブルでディスクを回転させて再生動作または記録動作に移行し、
前記ターンテーブルを前記上昇位置へ移動させたときに、前記クランプ部材でディスクの中心穴を保持できないときに前記ディスク排出動作に移行するものである。
【0014】
上記ディスク装置では、ターンテーブルに設けられたクランプ部材でディスクの中心穴を保持するいわゆるセルフクランプ機構が設けられたものにおいて、セルフクランプ機構がうまく動作できないときに、ディスクを排出できるようになり、セルフクランプ動作が不十分な状態で、筐体内にディスクが残ることを防止しやすくなる。
【0015】
本発明は、前記案内部材に検知部材が搭載されており、前記案内部材が前記移送動作位置に向けて移動するときに、前記検知部材がディスクを検知したら、前記案内部材と前記移送ローラとでディスクを挟持して、前記移送ローラの回転力でディスクを排出し、前記検知部材がディスクを検知できなかったら、前記ターンテーブルを前記下降位置へ移動させる処理動作が行われることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、前記移送機構には、前記案内部材よりも下側に位置する下側案内部材が設けられており、前記案内部材の前記支持体に向く端部と前記下側案内部材の前記支持体に向く端部には、上下方向に互いに対向する案内傾斜面がそれぞれ形成されており、前記案内部材に形成された前記案内傾斜面の上下方向の寸法が、前記下側案内部材に形成された前記案内傾斜面の上下方向の寸法よりも短いものとして構成できる。
【0017】
上記構成では、下側案内部材に形成された案内傾斜面の上下方向の寸法が広いため、案内部材が移送動作位置に移動できないときに、ターンテーブルを下降させることで、支持体の下側に位置するディスクが、下側案内部材の案内傾斜面に対向でき、ディスクを移送ローラと案内部材とで挟持しやすくなる。
【0018】
また、上側に位置する案内部材の案内傾斜面の上下方向の寸法を狭くしているために、移送機構を薄型に構成しやすくなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、ディスクを排出するときに、ターンテーブルの凸部をディスクの中心穴に入れた状態で案内部材が移送動作位置に移動するディスク装置において、凸部が中心穴に入ることができずにターンテーブルによってディスクが高く持ち上げられたときであっても、移送機構でディスクを排出しやすくなる。
【0020】
そのために、排出されるべきディスクが筐体内部にロックされて残るなどの不都合が生じにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態のディスク装置の全体構造を示す分解斜視図、
【図2】ターンテーブルとスピンドルモータおよびクランプ切換え手段の側面図であり、ディスク非クランプ状態を示す、
【図3】ターンテーブルとスピンドルモータおよびクランプ切換え手段の側面図であり、ディスククランプ状態を示す、
【図4】移送ユニットをターンテーブル側から見た斜視図、
【図5】移送ユニットがディスクを保持する移送動作位置へ移動した状態の平面図、
【図6】移送ユニットが移送動作位置まで移動できないときの平面図、
【図7】移送ユニットが移送動作位置まで移動できないときの一部側面図、
【図8】ディスク排出動作を説明するフローチャート、
【図9】ディスク排出動作を説明するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に示すディスク装置1は箱型の筐体2を有している。図1において、筐体2の基準方向は、図示Z1側が下側、Z2側が上側、X1側が左側、X2側が右側、Y1側が手前側、Y2側が奥側である。また、図示X1−X2方向が横方向、Y1−Y2方向が奥行き方向(前後方向)である。
【0023】
筐体2は下側から上側に向けて下部筐体3、中間筐体4および上部筐体5が順に重ねられて組み立てられている。下部筐体3は筐体2の底面6を有し、中間筐体4は筐体2の前面7と右側面8を有している。上部筐体5は筐体2の左側面9と後面10および天井面11を有している。
【0024】
下部筐体3の底面6の上面には第1の動力伝達部12が設けられている。第1の動力伝達部12の上にはユニット支持ベース13が支持され、ユニット支持ベース13の上に駆動ユニット14が搭載されている。中間筐体4の上部には、底面6と平行な機構ベース15が設けられ、機構ベース15の上に第2の動力伝達部16が設けられている。
【0025】
上部筐体5は、左側面9と後面10および天井面11で囲まれた領域がディスク収納領域20となっており、ディスク収納領域20に、それぞれがディスクDを支持可能な複数の支持体21が厚み方向(図示Z1−Z2方向)に6枚重ねられて配置されている。
【0026】
上部筐体5には支持体選択手段を構成するスクリュー軸22が設けられており、それぞれの支持体21はスクリュー軸22に摺動自在に支持されている。スクリュー軸22の回転動作により、6枚の支持体21がそれぞれ上下に移動させられて、いずれかの支持体21が選択されて選択位置に移動させられる。選択位置に停止した支持体21とその下に隣接する支持体21との間に、駆動ユニット14を介入させるための間隔が広げられる。
【0027】
ディスクDは、直径が12cmであり、例えばCD(コンパクト・ディスク)、CD−ROM、DVD(ディジタル・バーサタイル・ディスク)などである。
【0028】
図1に示すように、筐体2の前面7には挿入口23が開口している。挿入口23はスリット状であり、上下方向の幅寸法がディスクDの厚み寸法よりもわずかに大きく、横方向の開口幅寸法WがディスクDの直径よりもわずかに広い。
【0029】
中間筐体4には、機構ベース15の下側で且つ前面7の内側に、移送機構を搭載した移送ユニット17が設けられている。図1に示すように、移送ユニット17の図示X1側の端部と、下部筐体3の底面6との間に、第3の動力伝達部19が設けられている。第3の動力伝達部19はローラ駆動手段として機能している。
【0030】
移送ユニット17は挿入口23と同じ高さ位置にあり、挿入口23から挿入されたディスクDが、移送ユニット17によってディスク収納領域20に向けて移送される。複数枚の支持体21のうちの、選択位置に至った支持体21は、挿入口23と同じ高さ位置となり、挿入口23から挿入されたディスクDは、移送ユニット17で移送されて、選択位置にある支持体21の下面に供給されて保持される。選択位置にある支持体21にディスクDが保持されたときが、ディスクDの装填完了位置である。
【0031】
図1に示すように、下部筐体3の底面6上の3箇所に、弾性支持部材であるダンパー71,72,73が固定されている。ダンパー71,72,73は、ゴムなどの可撓性の袋体の内部に、オイルなどの液体または気体が封入されているものである。
【0032】
ユニット支持ベース13の底面には支持軸が下方に向けて垂直に固定されており、各支持軸がダンパー71,72,73に支持されて、ユニット支持ベース13は、各ダンパー71,72,73によって、筐体2の底面6上で弾性支持可能となっている。
【0033】
図1に示すように、ユニット支持ベース13にはY2方向へ突出する1本の拘束軸77が設けられており、拘束軸77が、下部筐体3のY2側に設けられた昇降切換え部材54の制御穴56内に挿入されている。ユニット支持ベース13には図示Y1方向へ突出する一対の拘束軸78,78が設けられており、それぞれの拘束軸78は、下部筐体3のY1側に設けられた他の昇降切換え部材の制御穴(図示せず)に挿入されている。
【0034】
昇降切換え部材54と、Y1側に設けられた他の昇降切換え部材とで、ユニット支持ベース13および駆動ユニット14をZ1−Z2方向へ昇降させる昇降切換え機構が構成されている。
【0035】
図1に示すように、昇降切換え部材54に形成されている制御穴56には、X1側に延びて且つ底面6に近づく拘束部56aと、この拘束部56aからX2側に連続して底面6から離れた位置に形成された持ち上げ部56bと、この持ち上げ部56bのX2側にさらに連続して拘束軸77よりも十分に大きい面積で開口する逃げ部56cとが形成されている。Y1側に設けられた他の昇降切換え部材の制御穴にも、同様に、拘束部と持ち上げ部と逃げ部とが形成されている。
【0036】
昇降切換え部材54および他の昇降切換え部材が共にX2側に移動しているときは、拘束軸77が拘束部56aに保持され、拘束軸78,78が他の昇降切換え部材の拘束部に保持されて、ユニット支持ベース13が筐体2の底面6に接近する下降位置に押し下げられている。このとき、ダンパー71,72,73が底面6に向けて押しつぶされた状態となる。
【0037】
昇降切換え部材54および他の昇降切換え部材がX1側に移動すると、持ち上げ部56bによって拘束軸77が持ち上げられ、他の昇降切換え部材の持ち上げ部によって拘束軸78,78が持ち上げられて、ユニット支持ベース13が上昇位置に至る。昇降切換え部材54および他の昇降切換え部材がさらにX1側に移動すると、拘束軸77が逃げ部56c内に移動し、拘束軸78,78が他の昇降切換え部材の逃げ部内に移動して、ユニット支持ベース13の拘束が解除され、ユニット支持ベース13が、ダンパー71,72,73によって弾性支持される。
【0038】
図1に示すように、駆動ユニット14は、細長い駆動ベース81を有している。ユニット支持ベース13の奥側には支持軸84が上向きに垂直に突出しており、駆動ベース81が支持軸84に支持されて、駆動ユニット14がX−Y平面に沿って回動自在となっている。
【0039】
下部筐体3の底面6には、第1の動力伝達部12を動作させる第1のモータM1(図示せず)が設けられている。第1の動力伝達部12では、第1のモータM1の動力がピニオン歯車86を介してラック部材87に伝達されて、ラック部材87がY1−Y2方向へ移動する。ラック部材87のY1−Y2方向への移動力はユニット駆動部材89に伝達される。ユニット駆動部材89にはZ2方向へ起立した駆動ピン88が設けられている。
【0040】
ラック部材87およびユニット駆動部材89と共に駆動ピン88がY1方向へ移動するときに、駆動ピン88の移動力によって、駆動ユニット14が、図1に示すように、X2側に位置する退避位置から、図5に示す介入位置まで回動させられる。退避位置の駆動ユニット14は、ディスク収納領域20に保持されているディスクDの外周縁から離れる位置にあり、介入位置へ回動した駆動ユニット14は、ディスク収納領域20の支持体21に保持されたディスクDの中心穴の下側に対向する。
【0041】
駆動ユニット14が、退避位置から図5に示す介入位置へ移動するまでは、昇降切換え部材54および他の昇降切換え部材が共にX2側に移動しており、制御穴56の拘束部56aで拘束軸77が下降させられ、他の昇降切換え部材の昇降穴の拘束部で拘束軸78,78が下降させられて、駆動ユニット14が下降位置に拘束されている。
【0042】
駆動ユニット14が介入位置まで回動した後に、さらにラック部材87がY1方向へ移動すると、その移動力が連結アーム43を介して切換え部材42に伝達されて、切換え部材42がY1方向へ移動させられる。切換え部材42の移動力は反転機構44を介して昇降切換え部材54に与えられ、切換え部材42のY1方向への移動に伴って昇降切換え部材54がX1方向へ移動させられる。また、切換え部材42のY1方向への移動に伴って、Y1側に設けられた他の昇降切換え部材もX1方向へ移動させられる。
【0043】
駆動ユニット14が介入位置へ回動した後の切換え部材42のY1方向への移動力によって、昇降切換え部材54と他の昇降切換え部材がX1方向へ移動し、制御穴56の持ち上げ部56bと他の制御穴の持ち上げ部によって、ユニット支持ベース13が筐体2の底面6から離れる昇降位置へ持ち上げられる。
【0044】
図2と図3に示すように、駆動ベース81の上面にスピンドルモータMsが固定されて設けられている。スピンドルモータMsには、上方へ延びる回転軸82a(図5参照)が設けられており、回転軸82aにターンテーブル82が固定されている。ターンテーブル82は合成樹脂製であり、ディスクDの下面が設置される円盤状のディスク支持部82bと、ディスク支持部82bの中心部において上方(Z2方向)へ突出する凸部82cとが一体に形成されている。
【0045】
図2と図3に示すように、凸部82cの周面には、下方(Z1方向)に向かうにしたがって直径が徐々に大きくなるテーパ面82dが形成されている。凸部82cの下端部の直径は、ディスクDの中心穴Daの内径とほぼ一致し、あるいは中心穴Daの内径よりもわずかに小さく設定されている。凸部82cの内部は空洞部であり、この凸部82cの周囲には、前記空洞部に通じる切欠き部82eが形成されている。この切欠き部82eは、回転軸82aを中心とする120度の角度間隔で3箇所に形成されている。
【0046】
ターンテーブル82には、ディスクDをディスク支持部82bの上面にクランプするためのクランプ機構200が搭載されている。このクランプ機構200は、いわゆるセルフクランプ機構である。このクランプ機構200では、ターンテーブル82の凸部82cの空洞部内に、3個のクランプ部材201が回転自在に支持されている。それぞれのクランプ部材201は、クランプばねの弾性力によって、切欠き部82eから外側へ突出する方向へ回動付勢されている。
【0047】
クランプ機構200には、ディスク支持部82bの下に切換え回転部203が設けられている。切換え回転部203は、スピンドルモータMsの回転軸82aに、ターンテーブル82とは独立して回転できるように支持されている。ターンテーブル82の凸部82cの内部には、前記クランプばねの付勢力に対抗してクランプ部材201を凸部82cの内部に後退する方向へ回動させるカム機構が設けられている。このカム機構は切換え回転部203の回転力によって動作させられる。切換え回転部203の外周には周方向に連続して一定ピッチで突出形成された歯部203aが形成されている。
【0048】
ターンテーブル82の一部であるディスク支持部82bの下面には、ロック歯部82hが一体に形成されている。このロック歯部82hには、円周方向に一定のピッチで配列する歯が突出形成されている。
【0049】
図2と図3に示すように、駆動ユニット14には、クランプ切換え部材213が設けられている。クランプ切換え部材213は、駆動ユニット14の駆動ベース81の長手方向に平行な方向へ移動自在に設けられている。このクランプ切換え部材213は、図1に示す第1の動力伝達部12の動力によって往復駆動させられる。
【0050】
図2と図3に示すように、クランプ切換え部材213には、ラック歯形状の拘束歯部213aが設けられており、この拘束歯部213aは、切換え回転部203に形成された歯部203aと噛み合うことが可能となっている。
【0051】
駆動ベース81の上面には、板ばね材料で形成されたロック部材215が設けられている。ロック部材215の先端にロック片215aが折り曲げ形成されており、図2に示すように、ロック部材215のロック片215aが、ディスク支持部82bの下面に形成されたロック歯部82hと噛み合うことが可能である。
【0052】
駆動ユニット14が図1に示す退避位置にあるときから、図5に示す介入位置へ回動し、さらに、昇降切換え部材54の制御穴56の持ち上げ部56bと他の昇降切換え部材の制御穴の持ち上げ部によって、ユニット支持ベース13が筐体2の底面6から離れる昇降位置へ持ち上げられるまでの間、クランプ機構200は、図2に示すように、クランプ部材201が凸部82cの内部に後退したクランプ解除状態に設定されている。
【0053】
図2に示すクランプ解除状態では、クランプ切換え部材213に設けられた拘束歯部213aが、切換え回転部203に形成された歯部203aと噛み合っており、切換え回転部203が回転することなく拘束されている。また、ロック部材215の先端のロック片215aが、ディスク支持部82bの下面に形成されたロック歯部82hと噛み合っており、ターンテーブル82も回転しないように拘束されている。切換え回転部203はクランプ部材201を回動させるカム機構と連動しているが、図2では、ターンテーブル82に対して切換え回転部203がクランプばねの付勢力に対抗する向きに回転させられて保持されている。そのため、それぞれのクランプ部材201は、クランプばねの弾性力に対抗して、凸部82cの内部に引き込む向きに回動させられて拘束されている。
【0054】
駆動ユニット14が上昇位置に至った後に、さらに第1の動力伝達部12のラック部材87がY1方向へ移動させられ、ユニット駆動部材89がY1方向へ移動すると、その動力によってクランプ切換え部材213が、図2と図3の紙面手前側へ移動させられて、図3に示すクランプ動作状態となる。
【0055】
図3のクランプ動作状態では、クランプ切換え部材213の先端部によってロック部材215が下側へ押し下げられ、ロック片215aがロック歯部82hから外れて、ターンテーブル82に対する拘束が外れる。その結果、回転軸82aに固定されたターンテーブル82が、切換え回転部203と無関係に回転できるようになり、クランプばねの弾性力で、それぞれのクランプ部材201が回動させられて切欠き部82eから外方へ突出する。図3に示すように、ディスク支持部82b上にディスクDが設置された状態で、それぞれのクランプ部材201が、クランプばねの弾性力によって、ディスクDの中心穴Daの周縁部に圧接されて、ターンテーブル82上でディスクDがクランプされて保持される。
【0056】
図1に示すように、駆動ユニット14には光ヘッド83が設けられており、光ヘッド83の上面に対物レンズ83aが設けられている。光ヘッド83は互いに平行に配置された一対の案内部材(図示せず)によって案内されて移動し、このとき対物レンズ83aが、ターンテーブル82に支持されたディスクDの記録面に沿って移動する。
【0057】
図1に示す第2の動力伝達部16は、機構ベース15の上に、円弧形状の切換え部材91が設けられている。切換え部材91には、円弧軌跡に沿って延びる一対の案内長穴91a,91aが形成されている。機構ベース15上には一対の案内軸92,92が上向きに突出して固定されており、それぞれの案内軸92が案内長穴91a内に挿入されている。この支持機構により、切換え部材91は円弧軌跡に沿って図示(d)方向および(e)方向へ摺動自在に案内されている。
【0058】
機構ベース15上には第2のモータM2(図示せず)が設けられ、第2のモータM2の回転動力は、歯車群を経てピニオン歯車97に減速して伝達される。切換え部材91にはラック歯91cが形成されており、ピニオン歯車97がラック歯91cと噛み合っている。第2のモータM2の回転動力によって、切換え部材91は(d)方向および(e)方向へ摺動される。
【0059】
移送機構を搭載した移送ユニット17は、機構ベース15の下側に設けられている。図4に示すように、移送ユニット17は、図示X1−X2方向へ向けて細長く延びる金属製のユニット枠100を有している。
【0060】
ユニット枠100は、上面101と下面102および支点側の側面103と自由端側の側面104を有し、ユニット枠100の内部は図示Y1−Y2方向に貫通している。ユニット枠100の上面101の下側には、低摩擦係数の合成樹脂で形成された上側案内部材105が設けられている。
【0061】
ユニット枠100の内部にローラ軸111が設けられている。ローラ軸111は、ユニット枠100の上面101と平行に延び、その両端は支点側の側面103と自由端側の側面104に回転自在に支持されている。ローラ軸111の外周に合成ゴムや天然ゴムなどの摩擦係数の高い材料で形成された第1の移送ローラ112と第2の移送ローラ113が設けられている。移送ローラ112と113は、軸方向に間隔を空けて配置されている。
【0062】
第1の移送ローラ112と第2の移送ローラ113との中間に位置する中間部114は、ディスクDに対して実質的に移送力を与えない部分である。中間部114は、ローラ軸111が直接に露出して形成されている。
【0063】
上側案内部材105の下面に挟持部106が形成されており、第1の移送ローラ112と第2の移送ローラ113は、挟持部106に対向している。移送ローラ112,113と挟持部106の少なくとも一方がばねで付勢されて、移送ローラ112,113と挟持部106とが互いに弾性的に圧接されている。よって、移送ローラ112と挟持部106、および移送ローラ113と挟持部106とでディスクDを挟持可能である。
【0064】
図4に示すように、ユニット枠100の下面102上で、且つ第2の移送ローラ113よりもY2側には、低摩擦係数の合成樹脂で形成された下側案内部材115が設けられている。図7に示すように、上側案内部材105の下面の先部には案内傾斜面105aが形成され、下側案内部材115の上面の先部に案内傾斜面115aが形成されている。ディスクDの縁部は、上側の案内傾斜面105aと下側の案内傾斜面115aとの対向部からユニット枠100の内部に導かれて、移送ローラ112,113と挟持部106で挟持される。
【0065】
図7に示すように、上側案内部材105に形成された案内傾斜面105aの上下方向の開き寸法h1は、下側案内部材115に形成された案内傾斜面115aの上下方向の開き寸法h2よりも狭くなっている。そのため、移送ユニット17は、移送ローラ112,113よりも上側の構造部分を薄くでき、薄型のディスク装置を実現しやすくなる。その反面、ディスクDが正規の位置よりも上側に持ち上げられていると、ディスクDの縁部が、ユニット枠100の上面101などに当たりやすい。一方、下側案内部材115の案内傾斜面115aの上下の開き寸法h2が広いため、ディスクDの位置が下がったとしても、ディスクDを、移送ローラ112,113と挟持部106との間に導きやすくなる。
【0066】
図1に示すように、移送ユニット17の回動支点となる支点軸131は、下部筐体3の底面6において、上方へ垂直に延びて固定されている。移送ユニット17には、X1側の端部に合成樹脂で形成された軸受部が保持されており、この軸受部が支点軸131に回動自在に支持されている。
【0067】
図4に示すように、ユニット枠100のX2側の上面には、駆動ピン133が固定されている。図1に示すように、駆動ピン133は、機構ベース15に形成された切欠き部を通過して上方に延びている。機構ベース15の上面には、駆動アーム93が回動自在に支持されており、この駆動アーム93は、切換え部材91に形成されたカム91bによって駆動される。そして、駆動ピン133は、駆動アーム93に形成された長穴の内部に摺動自在に挿通されている。
【0068】
図1に示すように、機構ベース15上の切換え部材91が(d)方向へ移動していると、カム91bによって駆動アーム93が時計方向へ回動させられ、移送ユニット17は、筐体2の前面7の内側に沿う待機位置に停止している。このとき、移送ユニット17は、支持体21に保持されたディスクDの外周縁から外れた位置にある。
【0069】
第2のモータM2の動力によって、切換え部材91が(e)方向へ移動させられると、カム91bによって駆動アーム93が反時計方向へ回動させられる。この駆動アーム93の回動力によって、移動ユニット17が、図5に示す移送動作位置へ向けて回動させられる。
【0070】
切換え部材91と第2のモータM2および駆動アーム93によって、移送ユニット17を回動させる移送切換え機構が構成されている。
【0071】
図5と図6に示すように、移送ユニット17のユニット枠100には、検知部材である一対の光学検知素子F1,F2が設けられている。光学検知素子F1,F2は、移送ユニット17の内部に導かれるディスクDの一方の側に発光素子が対向し、他方の側に受光素子が対向する。図5に示すように、移送ローラ112,113と挟持部106とでディスクDが挟持されると、このディスクDによって発光素子から発せられる光が遮断され、受光素子が光を検知しなくなる。図示しない制御部では、受光素子が光を検知しなくなったときに、光学検知素子F1,F2がディスクDを検知したと判断する。
【0072】
図1に示すように、第3の動力伝達部19では、下部筐体3の底面6に固定された支点軸131の下方に、一体ギヤ141が回転自在に挿通されている。一体ギヤ141は、上方部分が垂直に延びるウォーム歯車141aであり、下方部分が下部歯車141bである。底面6には中間歯車142が回転自在に設けられ、中間歯車142が下部歯車141bに噛み合っている。底面6には第3のモータM3(図示せず)が設けられており、その回転軸に固定されたウォーム歯車が中間歯車142と噛み合っている。
【0073】
図4に示すように、移送ユニット17は、ローラ軸111の一端が、ユニット枠100の支点側の側面103から外方へ突出しており、側面103から突出したローラ軸111の端部に平歯車であるローラ歯車144が固定されている。側面103には軸145が固定され、軸145に一体ギヤ146が回転自在に支持されている。一体ギヤ146は、小径平歯車146aと大径平歯車146bとが一体化されたものであり、小径平歯車146aがローラ歯車144と噛み合っている。
【0074】
ユニット枠100の下面102に、下方へ突出する支持片102aが一体に折り曲げ形成されており、支持片102aに軸148が固定されている。軸148はローラ軸111と平行に延びている。軸148には一体ギヤ147が回転自在に支持されている。一体ギヤ147は平歯車147aとウォームホイール147bとが一体化されたものである。平歯車147aが大径平歯車146bと噛み合っている。
【0075】
移送ユニット17に設けられた軸受部が支点軸131に回動自在に挿通された状態で、ウォームホイール147bとウォーム歯車141aとが噛み合う。第3のモータM3の回転動力は、中間歯車142から下部歯車141bおよびウォーム歯車141aに伝達され、さらにウォーム歯車141aからウォームホイール147bに伝達される。その動力は、平歯車147aから一体ギヤ146の大径平歯車146bに伝達され、さらに小径平歯車146aからローラ歯車144に伝達される。
【0076】
第3のモータM3の回転動力が、支点軸131と同軸に回転する一体ギヤ141を介してローラ歯車144に伝達されるため、移送ユニット17を、支点軸131を支点として待機位置から移送動作位置へ回動させる動作と独立させて、ローラ軸111を駆動することができる。
【0077】
図6に示すように、ディスク収納領域20に上下に並べて設けられている支持体21はそれぞれが軸受151,152,153を有している。それぞれの軸受151,152,153が、支持体選択手段を構成するスクリュー軸22に摺動自在に支持されており、また軸受151,152,153に設けられた摺動突起が、スクリュー軸22に形成された螺旋溝に摺動自在に係合している。これにより、スクリュー軸22の回転に伴って、それぞれの支持体21が上下に移動し、いずれかの支持体21を選択位置に移動させることが可能となっている。
【0078】
支持体21には、保持爪155,156,157が設けられている。この保持爪155,156,157は、軸受151,152,153の周囲を回動できるように支持されている。保持爪155,156,157は支持体21の下面に設けられ、それぞれが、図6に示すようなディスクDを保持できる保持姿勢に向けてばねで付勢されている。挿入口23から挿入され、移送ユニット17によって移送されたディスクDは、選択位置にある支持体21の下面に供給され、この下面と保持爪155,156,157とで保持される。筐体2の内部には保持解除機能が設けられており、選択位置の支持体21に支持されたディスクDの中心穴Daが、駆動ユニット14のターンテーブル82にクランプされると、前記保持解除機構によってそれぞれの保持爪155,156,157が退避位置に回動させられて、支持体21でのディスクDの保持が解除される。
【0079】
ディスクDがターンテーブル82にクランプされ、保持爪155,156,157によるディスクDの保持が解除されると、図1に示す第1の動力伝達部12の第1のモータM1が始動し、ラック部材87とユニット駆動部材89がさらにY1方向へ移動させられる。その移動力によって、切換え部材42がY1方向へ移動させられて、昇降切換え部材54がさらにX1方向へ移動させられ、他の昇降切換え部材もさらにX1方向へ移動させられる。その結果、拘束軸77が制御穴56の逃げ部56c内に移動し、拘束軸78,78が他の昇降切換え部材の制御穴の逃げ部内に移動して、ユニット支持ベース13の拘束が解除され、ユニット支持ベース13が、ダンパー71,72,73によって弾性支持される。この状態で、スピンドルモータMsが始動し、ターンテーブル82が回転させられて、ディスクDに対する再生動作や記録動作が可能になる。
【0080】
次に、ディスク装置1の動作について説明する。
(ディスク挿入動作)
ディスクDの挿入を待機する挿入待機モードでは、いずれかの選択された支持体21が選択位置に移動して停止しており、図6に示すように、保持爪155,156,157は支持体21の下面に対向する位置に回動している。
【0081】
図5に示すように、駆動ユニット14はディスク収納領域20内に介入する介入位置にある。介入位置に移動した駆動ユニット14は、ターンテーブル82が、ディスク収納領域20内に収納されているディスクDの中心穴Daと上下において一致している。また、移送ユニット17は、図1に示すように、筐体2の前面7の内側に沿う待機位置にある。また、昇降切換え部材54および他の昇降切換え部材によって、ユニット支持ベース13は、筐体2の底面6に接近する下降位置に拘束されている。ターンテーブル82に設けられたクランプ機構200は、図2に示すクランプ解除状態である。
【0082】
ディスクDが挿入口23から挿入され、光学検知素子F1,F2がこれを検知すると、第3のモータM3が始動し、この動力は第3の動力伝達部19によってローラ軸111に伝達され、ローラ軸111がディスクDを搬入する方向へ始動する。挿入口23から挿入されたディスクDは、移送ローラ112,113と挟持部106とで挟持されて、筐体2の内部に向けて搬入される。ディスクDが所定の距離だけ搬入されたことが図示しない検知部材で検知されると、図1に示す第2の動力伝達部16の第2のモータM2が始動し、切換え部材91が(d)方向へ移動して、移送ユニット17が待機位置から図5に示す移送動作位置に向けて回動させられる。ディスクDは、移送ローラ112,113の回転力と、移送ユニット17の回動力の双方の力によって、選択位置に停止している支持体21の下面に向けて搬入される。
【0083】
図5に示すように、選択位置で停止している支持体21の下面にディスクDが供給され、ディスクDが支持体21の面と保持爪155,156,157とで保持されると、ローラ軸111の回転が停止し、ディスクDは移送ローラ112,113と挟持部106とで挟持された状態で停止する。
【0084】
そして、昇降切換え部材54と他の昇降切換え部材とでユニット支持ベース13と駆動ユニット14が持ち上げられ上昇位置へ移動する。反りなどの無い正常なディスクDが選択位置の支持体21に正常に保持されて、ディスクDの中心穴Daとターンテーブル82の中心とが一致していれば、駆動ユニット14の上昇に伴って、凸部82cがディスクDの中心穴Da内に入り込む。
【0085】
その後、第1の動力伝達部12の動作によって、図3に示すように、クランプ機構200がクランプ動作状態となり、3個のクランプ部材201でディスクDの中心穴Daが内側から保持され、ディスクDがターンテーブル82にクランプされる。
【0086】
クランプが完了すると、第3のモータM3が始動し、第3の動力伝達部19によってローラ軸111がディスクDを搬入する向きに回動させられ、さらに第2のモータM2が始動し、第2の動力伝達部16によって、駆動ユニット17が図5に示す移送動作位置から図1に示す待機位置へ向けて移動させられる。このとき、移送ローラ112,113が、ターンテーブル82にクランプされているディスクDの表面を転動しながら、移送ユニット17が待機位置へ復帰する。
【0087】
さらに、図6に示す保持爪155,156,157が回動してディスクDの下面から外れる。そして、図1に示す拘束軸77が制御穴56の逃げ部56c内に移動し、拘束軸78,78が他の昇降切換え部材の制御穴の逃げ部内に移動して、ユニット支持ベース13の拘束が解除され、ユニット支持ベース13が、ダンパー71,72,73によって弾性支持される。そして、スピンドルモータMsが始動し、ターンテーブル82が回転させられて、ディスクDに対する再生動作や記録動作が行われる。
【0088】
ディスクDに対する再生や記録動作が完了した後に、ディスクDをディスク収納領域20内に収納するときは、駆動ユニット14を持ち上げて、ディスクDを選択位置の支持体21の下面に押し付け、図6に示す保持爪155,156,157を回動させてディスクを保持させる。クランプ機構200によるクランプを解除し、駆動ユニット14を下降させ、さらに駆動ユニット14を退避位置へ回動させる。そして、スクリュー軸22を回転させて、ディスクDを支持した支持体21を上下いずれかへ移動させて収納する。
【0089】
(ディスク排出動作)
ディスクDを排出するときは、スクリュー軸22を回転させて、排出しようとするディスクDを保持した支持体21を選択位置に移動させる。そして、駆動ユニット14を退避位置から図5に示す介入位置へ回動させ、さらに駆動ユニット14を上昇位置へ移動させて、ターンテーブル82の凸部82cをディスクDの中心穴Da内に介入させる。さらに、クランプ機構200を動作させ、図3に示すように、クランプ部材201をクランプ動作状態とし、ディスクDの中心穴Daの内側からディスクDを保持する。
【0090】
ディスクDがターンテーブル82に保持された後に、移送ユニット17が、待機位置から図5に示す移送動作位置へ向けて回動させられる。このとき、移送ユニット17のローラ軸111がディスク排出方向へ回転駆動され、図5に示すように、ディスクDの縁部が移送ローラ112,113と挟持部106とで挟持される。移送ローラ112,113と挟持部106とでディスクDが正常に挟持されたときは、ディスクDが光学検知素子F1,F2を横切る。よって、制御部において光学検知素子F1,F2の出力を監視することで、図5に示すように、移送ユニット17が移送動作位置まで移動できたか否かを確認できる。
【0091】
移送ユニット17が移送動作位置まで回動できたことが確認されたら、クランプ機構200によるディスククランプが解除される。そして、図1に示す昇降切換え部材54に形成された制御穴56の拘束部56aで拘束軸77が下降させられ、他の昇降切換え部材の制御穴の拘束部で拘束軸78,78が下降させられて、駆動ユニット14が下降位置へ移動させられ、ターンテーブル82の凸部82cがディスクDの中心穴Daから抜け出される。そして、ローラ軸111が排出方向は回転させられると共に、移送ユニット17が待機位置へ向けて回動し、ディスクDが挿入口23から排出される。
【0092】
(排出動作が異常のときのリカバリー処理)
排出しようとするディスクDを保持した支持体21が選択位置に移動して停止し、駆動ユニット14を上昇させたときに、車体振動などで支持体21の下側のディスクDが位置ずれするなどして、上昇するターンテーブル82の凸部82cがディスクDの中心穴Daに入り込むことができないことがありえる。
【0093】
この場合、ターンテーブル82の凸部82cによってディスクDが上向きに押され、選択位置の支持体21が上向きに撓んで、ディスクDが正常な保持位置よりも上側へ移動したままの状態で、図7に示すように、ディスクDの下側でクランプ部材201が突出して、クランプ動作完了状態に至ってしまう。
【0094】
このような状態で、移送ユニット17を移送動作位置に向けて回動させると、図7に示すように、移送ユニット17のユニット枠100の上面101がディスクDの縁部に当たり、図6に示すように、移送ユニット17が移送動作位置まで移動できなくなる。
【0095】
また、挿入口23から挿入されたディスクDが、移送ユニット17で、選択位置の支持体21の下側に供給された後に、介入位置に移動した駆動ユニット14が上昇したときに、図7に示すように、ターンテーブル82の凸部82cがディスクDの中心穴Da内に入らないうちに、クランプ部材201が突出することがある。このような現象は、搬入されたディスクDの外径が規格よりもやや大きすぎて、中心穴Daの位置と介入位置に移動している駆動ユニット14のターンテーブル82の中心とが位置ずれしていたとき、あるいは、搬入されたディスクDの中心穴Daの周囲部分が上向きに湾曲しており、上昇したターンテーブル82の凸部82cが中心穴Daに確実に入り込む前に、クランプ部材201が突出してクランプ動作状態となったときなどに発生しやすい。
【0096】
この場合、制御部はディスクDがクランプされたと判断し、移送ユニット17がディスクDから離れて待機位置に移動して、ディスクDがターンテーブル82上でクランプされないまま残されてしまう。よって、再生動作や記録動作に移行しようとしても、ディスクDを回転させることができず、また光ヘッド83とディスクDとの距離が開きすぎて、正常な再生動作に移行できない。
【0097】
このようなときは、制御部ではディスクDを排出させる指令を出し、再び駆動ユニット14が上昇し、ディスクDが選択位置の支持体21に押し付けられた状態で、移送ユニット17が待機位置から移送動作位置へ向けて回動させられる。
【0098】
このときも、図7に示すように、移送ユニット17のユニット枠100の上面101がディスクDの縁部に当たってしまい、図6に示すように、移送ユニット17が移送動作位置まで移動できないことがありえる。
【0099】
図8と図9は、図7の状態が発生したときのリカバリーが可能とされた排出動作制御を示すフローチャートである。このフローチャートでは各ステップを「S」で示している。
【0100】
図8に示すS1においてディスク排出動作に移行すると、S2において介入位置の駆動ユニット14が上昇させられ、S3において、図3または図7に示すように、ターンテーブル82内のクランプ部材201が突出してクランプ動作完了となる。さらに、S4において、第3のモータM3が始動し、ローラ軸111が排出方向へ回転させられ、S5において、第2のモータM2が始動して、待機位置の移送ユニット17が移送動作位置へ向けて回動させられる。
【0101】
S6では、S1の排出動作開始からタイマーを始動し、所定時間以内に、ディスクDが光学検知素子F1,F2の双方の光を遮ったか否か監視する。図5に示すように、移送ユニット17が移送動作位置まで回動でき、移送ローラ112,113と挟持部106とでディスクDの縁部が挟持されると、光学検知素子F1と光学検知素子F2の双方の検知出力が切り換わる。S6において、光学検知素子F1,F2の検知出力が切り換わったら、S7に移行し、ローラ軸111をディスク排出方向へ回転させ、さらに移送ユニット17を待機位置へ向けて回動させ、ディスクDを挿入口23から排出する。
【0102】
一方、図7に示すように、ターンテーブル82の凸部82cがディスクDの中心穴Daに入り込めない状態でクランプ部材201が突出してクランプ動作完了になると、凸部82cでディスクDが押し上げられてしまう。移送ユニット17は薄型に構成されており、上側案内部材105の案内傾斜面105aの上下の開き寸法h1が短いため、図7の状態において、移送ユニット17を移送動作位置へ移動させようとすると、ユニット枠100の上面101などがディスクDの縁部に当たって、それ以上は移送ユニット17が回動できなくなる。
【0103】
このような現象が生じると、S6において所定時間を経過しても光学検知素子F1,F2の検知出力が切換わらない。この場合は、図9のS8に移行してリトライ動作を行う。このリトライ動作は、移送ユニット17を待機位置へ向けて回動させて、ユニット枠100をディスクDの縁部から一旦離し、その後、ローラ軸111をディスク排出方向へ回動させながら、再び移送ユニット17を移送動作位置に向けて回動させる。
【0104】
S9では、S8のリトライ動作の開始からタイマーを始動し、所定時間以内に光学検知素子F1,F2の双方の検知出力が切換わるか否かを監視する。光学検知素子F1,F2の検知出力が共に切換わったら、S10に移行する。S10は、S7と同じであり、移送ローラ112,113の回転と、移送ユニット17の待機位置へ向けての回動によりディスクDを排出させる。
【0105】
S9において、所定時間以内に光学検知素子F1,F2の検知出力が共に切換わらないときは、S11に移行する。S11では、リトライ回数が所定回数を越えたか否かを判断し、まだ所定回数を越えていないときには、S8に移行してリトライ動作を繰り返す。S11において所定のリトライ回数を越えたときは、S12に移行する。
【0106】
S12では、図1に示す第1の動力伝達部12の第1のモータM1を始動し、ピニオン歯車86を始動して、ラック部材87およびユニット駆動部材89をY2方向へ移動させる。この動作により、クランプ機構200が動作して、クランプ部材201がターンテーブル82の内部に後退して非クランプ状態に切換えられる。
【0107】
さらに、S13において、ラック部材87をY2方向へ移動させ、切換え部材42をY2方向へ移動させて、昇降切換え部材54をX2方向へ移動させ、またY1側の他の昇降切換え部材をX2方向へ移動させる。これにより、図1に示す昇降切換え部材54に形成された制御穴56の拘束部56aで拘束軸77が下降させられ、他の昇降切換え部材の制御穴の拘束部で拘束軸78,78が下降させられて、駆動ユニット14が下降位置へ移動させられる。S14では、再び、ローラ軸111をディスク排出方向へ回転させながら、移送ユニット17を移送動作位置に向けて回動させる。
【0108】
S13において、駆動ユニット14がZ1方向へ下降するため、図7に示すようにターンテーブル82の凸部82cよって上方へ押し上げられていたディスクDが、ターンテーブル82と共に下降する。移送ユニット17に設けられた下側案内部材115の案内傾斜面115aは上下の開き幅h2が広いため、駆動ユニット14を下降させ、クランプが不十分な図7の状態のディスクDを下降させることで、S14で移送ユニット17を移送動作位置に向けて移動させたときに、ディスクDが移送ローラ112,113と挟持部106との間に導かれやすくなる。
【0109】
S15では、S14の動作が開始してから所定時間を経過するまでに光学検知素子F1,F2の検知出力が共に切換わるか否かを監視し、切換わったらS16に移行する。S16は、S7およびS10と同じであり、移送ローラ112,113がディスク排出方向へ回転し、移送ユニット17が待機位置へ向けて回動して、ディスクDが挿入口23から排出される。
【0110】
S15において、所定時間以内に光学検知素子F1,F2の検知出力が共に切換わらないときは、図7に示すように、ディスクDの縁部が移送ユニット17のユニット枠100に当たっている状態が解消されていないと判断し、S17に移行して動作を停止する。なお、S15で所定時間以内に光学検知素子F1,F2の検知出力が共に切換わらないときは、移送ユニット17を待機位置へ戻してからS14に移行するリトライ動作を所定回数実行し、所定回数のリトライ動作においても、S16に至らないときに、S17に移行して動作を停止させてもよい。
【0111】
前記実施の形態では、ディスク排出動作の際に、駆動ユニット14が上昇し、図7に示すように、クランプ部材201が突出するクランプ動作状態が完了してから、移送ユニット17が移送動作位置に向けて回動するものとして説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。
【0112】
例えば、ディスクDを排出するときに、駆動ユニット14が上昇し、ターンテーブル82の凸部82cがディスクDの中心穴Da内に入り込んだ後に、クランプ部材201が突出することなく、移送ユニット17が移送動作位置に移動して排出動作を行うものであってもよい。この場合も、凸部82cが中心穴Daにうまく入り込むことができず、凸部82cによって、ディスクDが持ち上げられた状態で、移送ユニット17が移送動作位置に移動したときも、図7と同様となる。この場合も駆動ユニット14を下降させてから、移送ユニット17を移送動作位置へ向けて移動させることで、ディスクDを排出させやすくなる。
【0113】
また、筐体内に複数のディスクが収納されるものに限られず、1枚のディスクが1つの支持体の下側に供給されるディスク装置であっても実施可能である。
【符号の説明】
【0114】
1 ディスク装置
12 第1の動力伝達部
14 駆動ユニット
13 ユニット支持ベース
16 第2の動力伝達部
17 移送ユニット
19 第3の動力伝達部
21 支持体
22 スクリュー軸
23 挿入口
82 ターンテーブル
82a 回転軸
82b ディスク支持部
82c 凸部
111 ローラ軸
112 第1の移送ローラ
113 第2の移送ローラ
105 上側案内部材
105a 案内傾斜面
115 下側案内部材
115a 案内傾斜面
200 クランプ機構
201 クランプ部材
213 クランプ切換え部材
215 ロック部材
F1,F2 光学検知素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下側にディスクを支持する支持体と、前記支持体の下側にディスクを供給する移送機構と、ディスクの中心穴に挿入される凸部を有するターンテーブルと、前記ターンテーブルを前記支持体の下側に支持されたディスクから離れる下降位置から前記凸部が前記中心穴に入る上昇位置へ移動させる昇降切換え機構と、が設けられており、
前記移送機構は、モータで回転駆動される移送ローラと、前記移送ローラよりも上側に位置して前記移送ローラとでディスクを挟持する案内部材と、前記案内部材を、前記支持体の下側に支持されたディスクの外周縁から離れる退避位置から、前記支持体の下側に支持されたディスクの上側に重なる移送動作位置へ移動させる移送切換え機構とが設けられており、
前記支持体の下側に支持されたディスクを排出するディスク排出動作では、前記ターンテーブルを前記上昇位置へ移動させた後に、前記案内部材を前記退避位置から前記移送動作位置に向けて移動させ、このときに前記案内部材が前記移送動作位置まで移動できないときに、前記ターンテーブルを前記下降位置へ移動させてから前記案内部材を前記移送動作位置へ向けて移動させる処理動作が行われることを特徴とするディスク装置。
【請求項2】
前記ディスク排出動作では、前記案内部材と共に前記移送ローラが前記退避位置から前記移送動作位置に向けて移動し、前記移送動作位置へ移動した前記案内部材と前記移送ローラとでディスクを挟持可能となる請求項1記載のディスク装置。
【請求項3】
前記ターンテーブルには、前記凸部が前記中心穴に挿入された状態でディスクの中心穴を内側から保持するクランプ部材が設けられており、
前記ターンテーブルを前記上昇位置へ移動させ、前記クランプ部材でディスクの中心穴を保持できたときは、ディスクを前記支持体の下側から離して、前記ターンテーブルでディスクを回転させて再生動作または記録動作に移行し、
前記ターンテーブルを前記上昇位置へ移動させたときに、前記クランプ部材でディスクの中心穴を保持できないときに前記ディスク排出動作に移行する請求項1または2記載のディスク装置。
【請求項4】
前記案内部材に検知部材が搭載されており、前記案内部材が前記移送動作位置に向けて移動するときに、前記検知部材がディスクを検知したら、前記案内部材と前記移送ローラとでディスクを挟持して、前記移送ローラの回転力でディスクを排出し、前記検知部材がディスクを検知できなかったら、前記ターンテーブルを前記下降位置へ移動させる処理動作が行われる請求項1ないし3のいずれか1項に記載のディスク装置。
【請求項5】
前記移送機構には、前記案内部材よりも下側に位置する下側案内部材が設けられており、前記案内部材の前記支持体に向く端部と前記下側案内部材の前記支持体に向く端部には、上下方向に互いに対向する案内傾斜面がそれぞれ形成されており、前記案内部材に形成された前記案内傾斜面の上下方向の寸法が、前記下側案内部材に形成された前記案内傾斜面の上下方向の寸法よりも短い請求項1ないし4のいずれか1項に記載のディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−272173(P2010−272173A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123963(P2009−123963)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】