説明

ディスク装置

【課題】光ピックアップを十分に冷却することが可能なディスク装置を提供する。
【解決手段】この光ディスク装置100(ディスク装置)は、光ディスク110を載置可能なトレイ1と、光ディスク110をトレイ1の載置面から離間するように支持するとともに、支持した光ディスク110を回転させるディスク回転部6と、光ディスク110の載置面側に配置され、光ディスク110に光を照射する光ピックアップ5とを備え、トレイ1は、光ディスク110が載置される載置領域においてディスク回転部6による光ディスク110の回転方向(R方向)の上流側から光ピックアップ5に向かって延びるとともに回転方向の上流側から下流側に向かって載置領域の外側から内側に延びるように形成され、トレイ1の載置面とは反対の裏面側からトレイ1の載置面側に空気を取り込むための空気取込開口部14を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ディスク装置に関し、ディスクに光を照射する光ピックアップを備えるディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスクに光を照射する光ピックアップを備えるディスク装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、ディスクにレーザ光を照射する光ピックアップと、ディスクを支持して回転させる駆動機構(回転部)と、光ピックアップをディスクの半径方向に移動させるメカ本体と、メカ本体をカバーするメカカバーとを備えた光ディスク装置が開示されている。この光ディスク装置では、光ピックアップの移動領域に沿って光ピックアップの移動方向と平行に延びる開口部がメカカバーに形成されている。また、この光ディスク装置は、ディスクの回転によりディスクとメカカバーとの間に生じる空気流を開口部から光ピックアップが配置されるメカカバーの下方に取り込むことによって、光ピックアップを冷却するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−251058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の光ディスク装置では、光ピックアップの移動領域に沿って光ピックアップの移動方向と平行に延びる開口部からメカカバーの下方に空気流が取り込まれるので、メカカバーの下方に取り込んだ空気流が光ピックアップの移動領域全体に分散してしまい、その結果、光ピックアップに集中的に導くことができないと考えられる。このため、光ピックアップを十分に冷却することができないという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、光ピックアップを十分に冷却することが可能なディスク装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
この発明の一の局面によるディスク装置は、ディスクを載置可能なトレイと、トレイに載置されるディスクをトレイの載置面から離間するように支持するとともに、支持したディスクを回転させる回転部と、ディスクの載置面側に配置され、ディスクに光を照射する光ピックアップとを備え、トレイは、ディスクが載置される載置領域において回転部によるディスクの回転方向の上流側から光ピックアップに向かって延びるとともに回転方向の上流側から下流側に向かって載置領域の外側から内側に延びるように形成され、トレイの載置面とは反対の裏面側からトレイの載置面側に空気を取り込むための空気取込開口部を有している。
【0008】
この発明の一の局面によるディスク装置では、上記のように、ディスクが載置される載置領域においてトレイの裏面側から載置面側に空気を取り込むための空気取込開口部を設けることによって、ディスクの回転に起因してディスクとトレイの載置面との間に生じる空気流により、空気取込開口部を介してトレイの裏面側から載置面側に空気を取り込む(引き込む)ことができる。また、空気取込開口部を、ディスクが載置される載置領域において回転部によるディスクの回転方向の上流側から光ピックアップに向かって延びるとともに回転方向の上流側から下流側に向かって載置領域の外側から内側に延びるように形成することによって、光ピックアップに向かって延びる空気取込開口部から取り込まれた空気が空気取込開口部よりも下流側に位置する光ピックアップに集中的に導かれるので、たとえば、空気取込開口部を光ピックアップの移動方向と平行に延びるように形成した場合など、空気取込開口部から取り込まれた空気が分散されてしまう場合と異なり、光ピックアップを十分に冷却することができる。なお、この光ピックアップを冷却することができるという効果は、後述する発明者が行ったシミュレーションにより確認済みである。
【0009】
上記一の局面によるディスク装置において、好ましくは、光ピックアップは、ディスクの半径方向に移動可能に構成されており、トレイの空気取込開口部は、光ピックアップの移動方向に対してディスクの回転方向に鋭角の角度でディスクの回転方向の上流側から光ピックアップに向かって延びるように形成されている。このように構成すれば、空気取込開口部を、容易に、回転部によるディスクの回転方向の上流側から光ピックアップに向かって延びるとともに回転方向の上流側から下流側に向かって載置領域の外側から内側に延びるように形成することができるので、容易に、光ピックアップの冷却効果を十分に向上させることができる。
【0010】
上記一の局面によるディスク装置において、好ましくは、トレイは、回転部および光ピックアップをトレイの載置面側に露出させるための露出開口部をさらに有し、トレイの空気取込開口部は、空気取込開口部の下流側の部分において露出開口部に接続される切欠形状に形成されている。このように構成すれば、空気取込開口部と露出開口部とが分離されている場合と異なり、空気取込開口部と露出開口部との間に分離部(分離壁)がない分、空気取込開口部から取り込まれた空気が露出開口部に露出される光ピックアップにより多く導かれるので、光ピックアップをより十分に冷却することができる。
【0011】
上記一の局面によるディスク装置において、好ましくは、光ピックアップは、ディスクの半径方向に移動可能に構成されており、空気取込開口部は、光ピックアップの移動経路上の所定位置に向かって延びるように形成されている。このように構成すれば、空気取込開口部から取り込まれた空気が移動経路上の所定位置に位置する光ピックアップに対して集中的に導かれるので、所定位置に位置する光ピックアップを効率よく冷却することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、光ピックアップは、ディスクの中心部近傍に光を照射する際に配置される第1の位置およびディスクの外周部近傍に光を照射する際に配置される第2の位置の間をディスクの半径方向に移動可能に構成されており、トレイの空気取込開口部は、少なくとも、回転部によるディスクの回転方向の上流側から所定位置としての第1の位置に配置された光ピックアップに向かって延びるように形成された第1空気取込開口部を含む。このように構成すれば、第1の位置に位置する光ピックアップに空気が集中的に導かれるので、光ピックアップがディスクの中心部近傍に光を照射する際に高温となるディスク装置において、光ピックアップを効率よく冷却することができる。
【0013】
上記光ピックアップが第1の位置および第2の位置の間を移動可能な構成において、好ましくは、トレイの空気取込開口部は、第1空気取込開口部に加えて、回転部によるディスクの回転方向の上流側から所定位置としての第2の位置に配置された光ピックアップに向かって延びるように形成された第2空気取込開口部をさらに含む。このように構成すれば、光ピックアップがディスクの中心部近傍に光を照射する際およびディスクの外周部近傍に光を照射する際の両方で高温となるディスク装置において、光ピックアップを効率よく冷却することができる。
【0014】
上記一の局面によるディスク装置において、好ましくは、トレイの載置領域には、第1のディスクを載置するための第1領域と第1のディスクよりも大きい第2のディスクを載置するための第2領域とが設けられており、トレイの空気取込開口部は、載置領域において第1領域よりも外側から内側に延びるように形成されている。このように構成すれば、空気取込開口部を第1領域の領域内に形成する場合に比べて、空気取込開口部の大きさがより大きくなるので、空気取込開口部からより多くの空気を取り込んで光ピックアップをさらに冷却することができる。
【0015】
上記一の局面によるディスク装置において、好ましくは、トレイは、樹脂により形成された樹脂部を含み、空気取込開口部は、トレイの樹脂部に形成されている。このように構成すれば、加工が容易な樹脂部に容易に空気取込開口部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態による光ディスク装置の全体構成を示した斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態による光ディスク装置の全体構成を示した分解斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態による光ディスク装置の全体構成を示した平面図である。
【図4】本発明の第1実施形態による光ディスク装置のカバー部を取り外した状態の斜視図である。
【図5】図3の300−300線に沿った断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態による光ディスク装置の光ピックアップの温度分布を示した図である。
【図7】本発明の第1実施形態の比較例による光ディスク装置の光ピックアップの温度分布を示した図である。
【図8】本発明の第1実施形態による光ディスク装置の光ピックアップの上面上における空気流の流速分布を示した図である。
【図9】本発明の第1実施形態の比較例による光ディスク装置の光ピックアップの上面上における空気流の流速分布を示した図である。
【図10】本発明の第2実施形態による光ディスク装置の全体構成を示した平面図である。
【図11】本発明の第1実施形態の変形例を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
(第1実施形態)
図1を参照して、本発明の第1実施形態による光ディスク装置100の構成について説明する。なお、光ディスク装置100は、本発明の「ディスク装置」の一例である。
【0019】
本発明の一実施形態による光ディスク装置100は、図1および図2に示すように、CDやDVDなどの光ディスク110(図5参照)を載置するためのトレイ1と、トレイ1を上方から覆うように配置されるカバー部2と、トレイ1を収納するローダシャーシ3と、トレイ1とローダシャーシ3との間に配置されるトラバースシャーシ4(図2参照)とを備えている。また、トラバースシャーシ4には、光ディスク110にレーザ光を照射する光ピックアップ5と光ディスク110を回転させるディスク回転部6とが搭載されている。なお、ディスク回転部6は、本発明の「回転部」の一例であり、光ディスク110は、本発明の「ディスク」の一例である。
【0020】
トレイ1は、図示しない移動機構により、カバー部2、ローダシャーシ3およびトラバースシャーシ4に対してX方向に移動可能に構成されている。具体的には、トレイ1は、ユーザが光ディスク110を出し入れする際には、カバー部2、ローダシャーシ3およびトラバースシャーシ4に対してX1方向に突出するように移動する。また、光ディスク110を再生または光ディスク110に情報を記録する際には、トレイ1はローダシャーシ3に収納されて全体がカバー部2に覆われる位置に配置される。また、トレイ1は、全体が樹脂により一体的に形成されている。また、トレイ1の上面(Z1方向側の表面)には、図2に示すように、小型の光ディスク110(直径約80mmの光ディスク)を載置するための第1領域11と、大型の光ディスク110(直径約120mmの光ディスク)を載置するための第2領域12とが設けられている。第1領域11および第2領域12は、図3に示すように、平面的に見て略円形形状を有し、互いに同心円上に形成されている。また、第1領域11は、第2領域12に対して凹形状に形成されている。また、第2領域12は、第2領域12よりも外側の領域に対して凹形状に形成されている。
【0021】
また、トレイ1には、略矩形形状の露出開口部13が設けられている。露出開口部13は、図3および図4に示すように、光ピックアップ5およびディスク回転部6をトレイ1の上面側(Z1方向側)に露出させるために設けられている。また、露出開口部13は、第1領域11および第2領域12の中心(光ディスク110の回転中心110a)よりもX1方向側から第2領域12の外側の領域までX2方向に延びるように形成されている。
【0022】
ここで、第1実施形態では、トレイ1には、光ディスク110の回転に起因して生じる空気流によりトレイ1の下側(Z2方向側)から上側(Z1方向側)に空気を引き込む(取り込む)ための空気取込開口部14が設けられている。また、空気取込開口部14は、Y2方向側の端部が露出開口部13に接続される切欠形状に形成されている。
【0023】
また、空気取込開口部14は、光ディスク110の回転方向(R方向)(平面的に見て時計回り方向)の上流側から光ピックアップ5に向かって延びるように形成されている。具体的には、空気取込開口部14は、平面的に見て、光ディスク110の最も内側に記録された情報を読み出す際(または、光ディスク110の最も内側に情報を書き込む際)の最内位置120に配置された光ピックアップ5に向かって延びるように形成されている。また、空気取込開口部14は、光ピックアップ5の近傍まで延びるように形成されている。また、空気取込開口部14は、後述する光ピックアップ5の移動方向(X方向)に沿うように配置されている。詳細には、空気取込開口部14は、図3に示すように、平面的に見て、光ピックアップ5の移動方向(X方向)に対する光ディスク110の回転方向(時計回り方向)に鋭角の角度Aだけ傾斜するように形成されている。また、空気取込開口部14は、光ディスク110の回転方向の上流側から下流側に向かって光ディスク110の載置領域の外側から内側に延びるように形成されている。
【0024】
より詳細には、空気取込開口部14は、第1領域11および第2領域12の中心(光ディスク110の回転中心110a)に対してY1方向側に配置されている。すなわち、空気取込開口部14は、光ピックアップ5に対して光ディスク110の回転方向の上流側に配置されている。また、空気取込開口部14は、Y1方向の端部14aが回転中心110aに対して光ピックアップ5が配置される側とは反対のX1方向側に配置されている。また、空気取込開口部14は、平面的に見て、光ピックアップ5の中央部よりもX1方向側に設けられている。また、Y1方向の端部14aは、第1領域11よりも外側で、第2領域12の外縁よりも内側(第2領域12内)に位置している。また、Y1方向の端部14aは、光ピックアップ5の移動方向(X方向)に略平行に形成されている。また、空気取込開口部14は、略一定の幅(約10mm)で形成されている。
【0025】
カバー部2は、図1および図2に示すように、トレイ1、ローダシャーシ3、トラバースシャーシ4、光ピックアップ5およびディスク回転部6を上方から覆うために設けられている。具他的には、カバー部2は、略矩形形状を有する平板状の天板部21と、天板部21のY方向の両側から下方(Z2方向)に延びる側部22と、天板部21の後端部(X2方向の端部)から下方に延びる図示しない背面部とを含んでいる。これにより、光ディスク装置100の内部にチリやホコリなどが侵入するのを抑制することが可能である。また、カバー部2は、天板部21、側部22および背面部が板金により一体的に形成されている。
【0026】
ローダシャーシ3は、トレイ1およびトラバースシャーシ4を保持するために設けられている。また、ローダシャーシ3は、図2に示すように、箱型に形成されている。具体的には、ローダシャーシ3は、略矩形形状を有する平板状の底面部31と、Y方向の両側に設けられ、上方(Z2方向)に延びる側部32と、底面部31の後端部(X2方向の端部)から上方に延びる背面部33と、底面部31の前端部(X1方向の端部)から上方に延びる前面部34とを含んでいる。また、前面部34は、側部32および背面部33の高さの略半分の高さを有している。上記の構成により、ローダシャーシ3は、トレイ1、トラバースシャーシ4、光ピックアップ5およびディスク回転部6を内部に収納することが可能である。また、ローダシャーシ3は、底面部31、側部32、背面部33および前面部34が板金により一体的に形成されている。
【0027】
トラバースシャーシ4は、図2に示すように、光ピックアップ5およびディスク回転部6を搭載するために設けられている。また、トラバースシャーシ4は、図示しない移動機構により、上面側に搭載された光ピックアップ5およびディスク回転部6を上下方向に移動させる機能を有している。
【0028】
光ピックアップ5は、トラバースシャーシ4上に配置されている。また、光ピックアップ5は、光ディスク110(図5参照)の下側表面(載置面)にレーザ光を照射することによって、光ディスク110に記録された情報の読み取り、および、光ディスク110への情報の書き込みを行うように構成されている。具体的には、光ピックアップ5は、図2および図3に示すように、CD用の照射レンズ51およびDVD用の照射レンズ52の2つの照射レンズを有している。これにより、光ディスク装置100は、CDおよびDVDの両方の光ディスク110に対応可能である。
【0029】
また、光ピックアップ5は、図3および図4に示すように、ディスク回転部6のX2方向側に配置されている。また、光ピックアップ5は、ディスク回転部6のX2方向側において、一対のガイドレール7に沿ってX方向に移動可能に構成されている。具体的には、光ピックアップ5は、図3に示すように、光ディスク110の最も内側に記録された情報を読み出す際(または、光ディスク110の最も内側に情報を書き込む際)の最内位置120、および、最も外側に記録された情報を読み出す際(または、光ディスク110の最も外側に情報を書き込む際)の最外位置130の間をX方向に直線移動するように構成されている。なお、最内位置120は、本発明の「第1の位置」の一例であり、最外位置130は、本発明の「第2の位置」の一例である。また、第1実施形態の光ディスク装置100では、光ピックアップ5は、最内位置120に位置する場合に最も高温となる。
【0030】
ディスク回転部6は、トラバースシャーシ4の上面上に配置されている。また、ディスク回転部6は、第1領域11および第2領域12の中心部に配置されている。また、ディスク回転部6は、光ディスク110の中心部を支持してR方向(平面的に見て時計回り方向)に回転させる機能を有している。具体的には、ディスク回転部6は、光ディスク110の内縁に係合する係合部61を有し、係合部61により光ディスク110を固定支持するように構成されている。また、ディスク回転部6は、光ディスク110を支持した状態で、トラバースシャーシ4の上方(Z1方向)への移動に伴って光ディスク110を上方に持ち上げるように構成されている。これにより、ディスク回転部6により支持された光ディスク110は、トレイ1の載置面(Z1方向側の表面)から離間される。この状態において、ディスク回転部6は、光ディスク110をR方向(平面的に見て時計回り方向)に回転させるように構成されている。すなわち、光ディスク110は、トレイ1から離間した状態でR方向に回転される。
【0031】
次に、図5を参照して、第1実施形態の光ディスク装置100における光ディスク110の回転時の状態について説明する。
【0032】
光ディスク110は、上述のとおり、ディスク回転部6により、トレイ1から離間された状態でR方向(平面的に見て時計回り方向)(図3参照)に回転される。この際、光ディスク110の回転により、光ディスク110とトレイ1の載置面(Z1方向側の表面)との間に光ディスク110の回転方向(R方向)と略同じ方向の空気流が生じる。この空気流は、トレイ1の露出開口部13に露出された光ピックアップ5の表面上を通過して光ピックアップ5を冷却する。
【0033】
ここで、第1実施形態では、図5の太矢印で示すように、トレイ1の上方(Z1方向)に生じる空気流により、トレイ1の下方(Z2方向)の空気が空気取込開口部14を介してトレイ1の上方(Z1方向)に引き込まれる。すなわち、光ディスク110の回転による空気流は、トレイ1の下方の空気も巻き込んで(取り込んで)より多くの空気により形成されている。
【0034】
第1実施形態では、上記のように、光ディスク110が載置される載置領域においてトレイ1の裏面側(Z2方向側)から載置面側(Z1方向側)に空気を取り込むための空気取込開口部14を設けることによって、光ディスク110の回転に起因して光ディスク110とトレイ1の載置面(Z1方向側の表面)との間に生じる空気流により、空気取込開口部14を介してトレイ1の裏面側から載置面側に空気を取り込む(引き込む)ことができる。また、空気取込開口部14を、光ディスク110が載置される載置領域においてディスク回転部6による光ディスク110の回転方向(R方向)の上流側から光ピックアップ5に向かって延びるとともに回転方向の上流側から下流側に向かって載置領域の外側から内側に延びるように形成することによって、光ピックアップ5に向かって延びる空気取込開口部14から取り込まれた空気が空気取込開口部14よりも下流側に位置する光ピックアップ5に集中的に導かれるので、たとえば、空気取込開口部14を光ピックアップ5の移動方向と平行に延びるように形成した場合など、空気取込開口部14から取り込まれた空気が分散されてしまう場合と異なり、光ピックアップ5を十分に冷却することができる。なお、この光ピックアップ5を冷却することができるという効果は、後述する発明者が行ったシミュレーションにより確認済みである。
【0035】
また、第1実施形態では、トレイ1の空気取込開口部14を、空気取込開口部14の下流側の部分において露出開口部13に接続される切欠形状に形成することによって、空気取込開口部14と露出開口部13とが分離されている場合と異なり、空気取込開口部14と露出開口部13との間に分離部(分離壁)がない分、空気取込開口部14から取り込まれた空気が露出開口部13に露出される光ピックアップ5により多く導かれるので、光ピックアップ5を十分に冷却することができる。
【0036】
また、第1実施形態では、トレイ1の空気取込開口部14を、ディスク回転部6による光ディスク110の回転方向(R方向)の上流側から最内位置120に配置された光ピックアップ5に向かって延びるように形成することによって、移動経路上の最内位置120に位置する光ピックアップ5に空気が集中的に導かれるので、光ピックアップ5が最内位置120で高温となる光ディスク装置100において、光ピックアップ5を効率よく冷却することができる。
【0037】
また、第1実施形態では、小型の光ディスク110を載置するための第1領域11と大型の光ディスク110を載置するための第2領域12とをトレイ1に設け、空気取込開口部14を、第1領域11よりも外側から内側に延びるように形成することによって、空気取込開口部14を第1領域11の領域内だけに形成する場合に比べて、空気取込開口部14の大きさがより大きくなるので、空気取込開口部14からより多くの空気を取り込んで光ピックアップ5をより冷却することができる。
【0038】
また、第1実施形態では、トレイ1全体を樹脂により形成することによって、加工が容易な樹脂部に容易に空気取込開口部14を形成することができる。
【0039】
次に、上記第1実施形態による光ディスク装置100を用いることによる効果を確認するために行ったシミュレーション結果について詳細に説明する。
【0040】
図6には、本発明の第1実施形態による光ディスク装置の光ピックアップの温度分布が示されており、図7には、トレイに空気取込開口部を有さない比較例による光ディスク装置の光ピックアップの温度分布が示されている。また、このシミュレーションでは、比較例による光ディスク装置が空気取込開口部を有さないこと以外、本発明の第1実施形態による光ディスク装置100および比較例による光ディスク装置のシミュレーション条件を同様に設定した。詳細には、本発明の第1実施形態による光ディスク装置100および比較例による光ディスク装置ともに、光ピックアップに1Wsの熱量を付与した状態で光ディスクを回転させた。また、本発明の第1実施形態による光ディスク装置100および比較例による光ディスク装置ともに、光ピックアップの材質を鉄に設定した。また、本発明の第1実施形態による光ディスク装置100および比較例による光ディスク装置ともに、温度分布が安定するまでシミュレーションを継続した。また、本発明の第1実施形態による光ディスク装置100の空気取込開口部14の光ピックアップ5の移動方向(X方向)に対する角度A(図3参照)を30度に設定した。
【0041】
図6および図7に示すように、本発明の光ピックアップ5の方が比較例の光ピックアップよりも全体的に温度が低いことが分かる。特に、光ピックアップの中央部近傍(太線枠の部分)において、本発明の方が比較例に比べて温度が低いことが顕著である。また、比較例の光ピックアップの最高温度が45.3℃であるのに対して、本発明の光ピックアップ5の最高温度は42.6℃であり、本発明の最高温度が比較例の最高温度に対して2.7℃も低い温度になっている。上記のように、トレイ1に空気取込開口部14を設けることによって、光ピックアップ5の冷却効果が高まることが分かる。
【0042】
また、図8には、本発明の第1実施形態による光ディスク装置の光ピックアップの上面上における空気流の流速分布が示されており、図9には、トレイに空気取込開口部を有さない比較例による光ディスク装置の光ピックアップの上面上における空気流の流速分布が示されている。なお、図8および図9では、4m/s以上の比較的大きい流速を太矢印で示している。
【0043】
図8および図9に示すように、本発明の光ピックアップ5の上面上の方が比較例の光ピックアップの上面上よりも全体的に流速が大きい(太矢印が多い)ことが分かる。特に、光ピックアップの中央部近傍(太線枠の部分)において、本発明の方が比較例に比べて流速が大きいことが顕著である。これにより、本発明の光ディスク装置100の方が比較例による光ディスク装置よりも冷却効果が高まったと考えられる。また、本発明の光ディスク装置100では、光ディスク110の回転に伴う空気流により、トレイ1の下方の空気が空気取込開口部14からトレイ1の上方に引き込まれて(取り込まれて)光ピックアップ5の上面上における空気流の流速が大きくなったと考えられる。
【0044】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、上記第1実施形態と異なり、図10に示すように、トレイ201に2つの空気取込開口部14、214が設けられた光ディスク装置200について説明する。なお、光ディスク装置200は、本発明の「ディスク装置」の一例である。
【0045】
本発明の第2実施形態による光ディスク装置200は、図10に示すように、2つの空気取込開口部14および214を有するトレイ201を備えている。具体的には、トレイ201には、最内位置120に位置する光ピックアップ5に向かって延びるように形成された上記第1実施形態と同様の空気取込開口部14と、最外位置130に位置する光ピックアップ5に向かって延びるように形成された空気取込開口部214とが設けられている。2つの空気取込開口部14および214は、互いに同様の形状を有している。また、空気取込開口部214は、空気取込開口部14を最内位置120と最外位置130との距離分だけX2方向に平行移動した位置に配置されている。なお、空気取込開口部14は、本発明の「第1空気取込開口部」の一例であり、空気取込開口部214は、本発明の「第2空気取込開口部」の一例である。
【0046】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0047】
第2実施形態では、上記のように、ディスク回転部6による光ディスク110の回転方向(R方向)の上流側から最内位置120に配置された光ピックアップ5に向かって延びるように形成された空気取込開口部14と、ディスク回転部6による光ディスク110の回転方向の上流側から最外位置130に配置された光ピックアップ5に向かって延びるように形成された空気取込開口部214とをトレイ201に設けることによって、光ピックアップ5が最内位置120および最外位置130の両方で高温となる光ディスク装置200において、光ピックアップ5を効率よく冷却することができる。
【0048】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0049】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0050】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、空気取込開口部を切欠形状に形成する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図11に示すように、空気取込開口部314をスリット形状(露出開口部に接続されていない形状)に形成する構成であってもよい。
【0051】
また、上記第1および第2実施形態では、空気取込開口部14のY1方向の端部14aを第1領域よりも外側で第2領域内に配置する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、空気取込開口部のY1方向の端部を第1領域内に配置する構成であってもよいし、空気取込開口部のY1方向の端部を第2領域よりも外側に配置する構成であってもよい。
【0052】
また、上記第1および第2実施形態では、トレイ全体を樹脂により形成する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、トレイの一部のみを樹脂により形成してもよい。この場合、樹脂により形成された部分に空気取込開口部を形成するのが好ましい。
【0053】
また、上記第1実施形態では、空気取込開口部を最内位置に位置する光ピックアップに向かって延びるように形成する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、空気取込開口部を、最内位置以外のたとえば、最外位置に位置する光ピックアップに向かって延びるように形成する構成であってもよいし、最内位置および最外位置以外の位置に位置する光ピックアップに向かって延びるように形成する構成であってもよい。
【0054】
また、上記第2実施形態では、トレイに2つの空気取込開口部を設ける構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、トレイに3つ以上の空気取込開口部を設ける構成であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 トレイ
5 光ピックアップ
6 ディスク回転部(回転部)
11 第1領域
12 第2領域
13 露出開口部
14、314 空気取込開口部(第1空気取込開口部)
100、200 光ディスク装置(ディスク装置)
110 光ディスク(ディスク)
120 最内位置(第1の位置)
130 最外位置(第2の位置)
214 空気取込開口部(第2空気取込開口部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクを載置可能なトレイと、
前記トレイに載置される前記ディスクを前記トレイの載置面から離間するように支持するとともに、支持した前記ディスクを回転させる回転部と、
前記ディスクの載置面側に配置され、前記ディスクに光を照射する光ピックアップとを備え、
前記トレイは、前記ディスクが載置される載置領域において前記回転部による前記ディスクの回転方向の上流側から前記光ピックアップに向かって延びるとともに前記回転方向の上流側から下流側に向かって前記載置領域の外側から内側に延びるように形成され、前記トレイの載置面とは反対の裏面側から前記トレイの載置面側に空気を取り込むための空気取込開口部を有している、ディスク装置。
【請求項2】
前記光ピックアップは、前記ディスクの半径方向に移動可能に構成されており、
前記トレイの前記空気取込開口部は、前記光ピックアップの移動方向に対して前記ディスクの回転方向に鋭角の角度で前記ディスクの回転方向の上流側から前記光ピックアップに向かって延びるように形成されている、請求項1に記載のディスク装置。
【請求項3】
前記トレイは、前記回転部および前記光ピックアップを前記トレイの載置面側に露出させるための露出開口部をさらに有し、
前記トレイの前記空気取込開口部は、前記空気取込開口部の下流側の部分において前記露出開口部に接続される切欠形状に形成されている、請求項1または2に記載のディスク装置。
【請求項4】
前記光ピックアップは、前記ディスクの半径方向に移動可能に構成されており、
前記空気取込開口部は、前記光ピックアップの移動経路上の所定位置に向かって延びるように形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のディスク装置。
【請求項5】
前記光ピックアップは、前記ディスクの中心部近傍に光を照射する際に配置される第1の位置および前記ディスクの外周部近傍に光を照射する際に配置される第2の位置の間を前記ディスクの半径方向に移動可能に構成されており、
前記トレイの前記空気取込開口部は、少なくとも、前記回転部による前記ディスクの回転方向の上流側から前記所定位置としての前記第1の位置に配置された前記光ピックアップに向かって延びるように形成された第1空気取込開口部を含む、請求項4に記載のディスク装置。
【請求項6】
前記トレイの前記空気取込開口部は、前記第1空気取込開口部に加えて、前記回転部による前記ディスクの回転方向の上流側から前記所定位置としての前記第2の位置に配置された前記光ピックアップに向かって延びるように形成された第2空気取込開口部をさらに含む、請求項5に記載のディスク装置。
【請求項7】
前記トレイの前記載置領域には、第1のディスクを載置するための第1領域と前記第1のディスクよりも大きい第2のディスクを載置するための第2領域とが設けられており、
前記トレイの前記空気取込開口部は、前記載置領域において前記第1領域よりも外側から内側に延びるように形成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載のディスク装置。
【請求項8】
前記トレイは、樹脂により形成された樹脂部を含み、
前記空気取込開口部は、前記トレイの前記樹脂部に形成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載のディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−165283(P2011−165283A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28561(P2010−28561)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】