説明

ディスク装置

【課題】ディスク搬送動作とディスク装着動作とを連続して行う際に駆動ギア等の部品が破損することを抑えることができるディスク装置を提供する。
【解決手段】ディスク搬送機構によりディスクが再生可能位置に搬送されて駆動ギア(10g)とラック(30)とが噛み合うようにスライドカム部材(16)が移動されたとき、当該ディスクの搬送によって移動するスライドカム部材の移動方向(A2)に対し、少なくとも前記駆動ギアと噛み合う噛み合い始めのラックを逆方向(A1)に相対移動可能とする緩衝部(31,31a,30b)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク装置に関し、特に、ディスクを再生可能位置に搬送するディスク搬送動作と、当該再生可能位置に搬送されたディスクを再生可能なクランプ状態にするためにターンテーブル上に装着するディスク装着動作とを連続して行うディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のディスク装置として、ディスク搬送動作とディスク装着動作とを1つの駆動源で行うように構成された装置が知られている。この種のディスク装置は、例えば、駆動源により駆動される駆動ギアと、当該駆動ギアによりディスク搬送手段を駆動する第1の伝達手段と、当該駆動ギアによりディスク装着手段を駆動する第2の伝達手段とを備えている。第2の伝達手段は、駆動ギアと噛み合うラックを有するスライドカム部材により構成されている。前記ディスク装置は、駆動源の駆動力により駆動ギアを回転させることによりスライドカム部材を移動させ、このスライドカム部材の移動を利用して、ディスク搬送の第1の動作とディスク装着の第2の動作とを切り換えるように構成されている。
【0003】
前記構成を有するディスク装置においては、ディスク搬送の第1の動作とディスク装着の第2の動作とを連続して行う場合、駆動源が連続的に駆動されるので、駆動ギアとラックとが噛み合う前から駆動ギアが回転している。このため、第1の動作から第2の動作に切り換える際に、駆動ギアとラックとが噛み合うようにスライドカム部材が移動する速度と、駆動ギアの回転速度とに差がある場合、駆動ギアとラックとが噛み合った瞬間から第1の動作と第2の動作が同時に行われている間で、それらに過大な負荷がかかり、それらが破損するなどの問題が発生する。
【0004】
このような駆動ギアとラックとの噛み合いによって駆動伝達を行う場合の緩衝手段の破損等を抑制する方法としては、例えば、特許文献1(特開平9−7268号公報)、特許文献2(特開2004−348782号公報)に開示された方法がある。
【0005】
特許文献1には、ラックの長手方向の両端部に切り欠きを設け、その駆動伝達の終端において、ラックの駆動ギアと噛み合う部分が駆動ギアから離れるように弾性変形できるように構成されたディスク装置が開示されている。
【0006】
特許文献2には、ラックと駆動ギアとの噛み合い部分に過大な力が加わると、ラックと駆動ギアと噛み合いが外れるように構成されたディスク装置が開示されている。
【0007】
また、特許文献3(特開2008−181603号公報)には、ディスクトレイの排出動作終了時において、駆動ギアと噛み合うラックの移動が停止する一方で駆動源の駆動力が駆動ギアに継続して伝達されることにより生じる駆動ギアの破損等を防止する方法が開示されている。
【0008】
特許文献3には、ラックの移動方向の下流側の端部にサブラックを摺動可能に設け、ディスクトレイの排出停止と同時に駆動ギアがサブラックのみと噛み合うように構成されたディスク装置が開示されている。特許文献3のディスク装置においては、ディスクトレイの排出停止と同時に駆動ギアとサブラックとを噛み合わせることで、駆動ギアの回転力が停止したラックには伝達されることなく、サブラックのみに伝達されるようにし、駆動ギアの停止が遅れても、当該サブラックが摺動することで駆動ギアにかかる負荷を軽減するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−7268号公報
【特許文献2】特開2004−348782号公報
【特許文献3】特開2008−181603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1のディスク装置においては、駆動ギアとラックとの噛み合いによって駆動伝達を行う場合の緩衝手段として、ラックそのものの端部を弾性変形可能に構成している。従って、駆動ギアとラックとは継続して噛み合うものではなく、第1の動作後に第2の動作を連続して行う場合の緩衝手段としては適用できない。また、特許文献2のディスク装置においては、ラックとギアとの噛み合いそのものが外れるように構成しているので、過大な力が加わった場合に、ラックと駆動ギアとの噛み合いがディスク搬送動作とディスク装着動作とを行う間で外れることがある。このため、特許文献2のディスク装置では、第1の動作後に第2の動作を連続して行うことができない。従って、このような特許文献1及び特許文献2のものでは、第1の動作から第2の動作に切り換える際において、その緩衝を行うというものではなく、駆動ギアやラックが破損するなどの問題が発生することについては解決できない。
【0011】
また、特許文献3のディスク装置では、サブラックを構成して衝撃力を吸収、緩和するように構成しているが、サブラックは、ディスクトレイ排出停止時に、駆動モータが停止するまでピニオンを回転させるためのものである。このため、ディスクトレイの排出動作終了時の駆動ギアとラックとが破損等することは防止できるものの、ディスク搬送動作とディスク装着動作とを連続して行う際における、伝達切換時の駆動伝達手段としてはそのまま適用できない。すなわち、特許文献3のディスク装置は、駆動ギアによるラックの駆動の終端でディスクトレイの排出停止と同時に駆動ギアがサブラックのみと噛み合うように構成されているのみであり、このサブラックによる緩衝手段は駆動伝達の停止時に作用するものであり、その緩衝作用後、駆動源の駆動力停止により駆動ギアは停止されるだけである。また、ディスク搬送の第1の動作とディスク装着の第2の動作とを1つの駆動源で連続して行うためには、その動作切り換え時に駆動源の駆動力を停止することなく、駆動ギアを継続して駆動し、スライドカム部材を移動させる必要がある。特許文献3のディスク装置は、この切り換え時に駆動ギアを継続して駆動するものではないので、このままでは適用できない。したがって、この特許文献3のディスク装置でも、駆動ギアやラックが破損するなどの問題が発生することについては解決できない。
【0012】
従って、本発明の目的は、前記問題を解決することにあって、ディスク搬送動作とディスク装着動作とを連続して行う際に駆動ギア等の部品が破損することを抑えることができるディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明によれば、ディスクを再生可能位置に搬送するディスク搬送機構と、
前記再生可能位置に搬送されたディスクを、再生可能なクランプ状態にするためにターンテーブル上に装着するディスク装着機構と、
前記ディスク搬送機構及びディスク装着機構を駆動する駆動力を発生する駆動源と、
前記駆動源で発生した駆動力が前記ディスク搬送機構又は前記ディスク装着機構に伝達されるように前記駆動力の伝達経路を切り換える伝達経路切換機構と、
を備え、
前記ディスク装着機構は、
前記駆動源で発生した駆動力が伝達されることにより回転する駆動ギアと、
前記駆動ギアと噛み合うラックを有し、前記駆動ギアと前記ラックとが噛み合った状態で前記駆動ギアが回転することによって移動されるスライドカム部材と、
前記ディスク搬送機構により前記ディスクが前記再生可能位置に搬送されて前記駆動ギアと前記ラックとが噛み合うように前記スライドカム部材が移動されたとき、当該ディスクの搬送によって移動するスライドカム部材の移動方向に対し、少なくとも前記駆動ギアと噛み合う噛み合い始めのラックを逆方向に相対移動可能とする緩衝部と、を有する、
ディスク装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかるディスク装置によれば、前記緩衝部を有しているので、ディスク搬送動作後にディスク装着動作を連続して行う際に駆動ギア等の部品が損傷することを抑えることができる
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるディスク装置の本体とディスクを示す外観斜視図である。
【図2】図1のディスク装置の分解斜視図である。
【図3】メカシャーシに取り付けられる各部品の取付状態を示す上面図である。
【図4】図1のディスク装置内に大径ディスクを挿入した直後の状態を示す上面図である。
【図5】図1のディスク装置内に挿入された大径ディスクを再生可能位置へ搬送する途中の状態を示す上面図である。
【図6】図1のディスク装置内に挿入された大径ディスクが再生可能位置に搬送された状態を示す上面図である。
【図7】一対のローラアームと一対のリンクアームとの取付状態を示す上面図である。
【図8A】一対のローラアームが互い近づく方向に回転した状態を示す下面図である。
【図8B】一対のローラアームが互いに遠ざかる方向に回転した状態を示す下面図である。
【図9】アッパーベースに関連する部品の構成を示す分解斜視図である。
【図10】図9の各部品をアッパーベースに取り付けた状態を示す下面図である。
【図11】大径ディスク挿入時の、スライドカム部材に形成された係合部に対するトリガレバーのスライドカム押圧部の相対的な移動軌跡を示す上面図である。
【図12】大径ディスクがセンタリング部材の位置決め当接部に当接した状態を示す上面図である。
【図13】図12に示す状態から、トリガレバーが大径ディスクに押圧されてディスク搬送方向に対して直角方向に移動した状態を示す上面図である。
【図14】図13に示す状態から、トリガレバーが更に大径ディスクに押圧されて回動し、トリガレバーのスライドカム押圧部がスライドカム部材の第2係合部に当接した状態を示す上面図である。
【図15】大径ディスクが再生可能位置まで搬入された状態を示す上面図である。
【図16】大径ディスクの装着動作が完了した状態を示す上面図である。
【図17】小径ディスク挿入時の、スライドカム部材に形成された係合部に対するトリガレバーのスライドカム押圧部の相対的な移動軌跡を示す上面図である。
【図18】小径ディスクがセンタリング部材の位置決め当接部に当接した状態を示す上面図である。
【図19】図18に示す状態から、センタリング部材が小径ディスクに押圧され、小径ディスクがトリガレバーの当接部に当接した状態を示す上面図である。
【図20】小径ディスクが再生可能位置まで搬入された状態を示す上面図である。
【図21】小径ディスクの装着動作が完了した状態を示す上面図である。
【図22】再生可能位置に搬送された大径ディスクに対するスライドカム部材とセンタリング部材とトリガレバーの位置関係と、再生可能位置に搬送された小径ディスクに対するスライドカム部材とセンタリング部材とトリガレバーの位置関係を示す図である。
【図23】スライドカム部材の斜視図である。
【図24A】ターンテーブルが下降した状態にあるときの中間シャーシと一対のスライドカム部材との位置関係を示す斜視図である。
【図24B】ターンテーブルが下降した状態にあるときの中間シャーシと一対のスライドカム部材との位置関係を示す斜視図である。
【図25】ターンテーブルが下降した状態にあるときの一対のスライドカム部材とリンクアームとの位置関係を示す上面図である。
【図26A】ターンテーブルが上昇した状態にあるときの中間シャーシと一対のスライドカム部材との位置関係を示す斜視図である。
【図26B】ターンテーブルが上昇した状態にあるときの中間シャーシと一対のスライドカム部材との位置関係を示す斜視図である。
【図27】ターンテーブルが上昇した状態にあるときの一対のスライドカム部材とリンクアームとの位置関係を示す上面図である。
【図28】ターンテーブルが下降した状態にあるときの一対のスライドカム部材とリンクアームとクラッチプレートの位置関係を示す下面図である。
【図29】ターンテーブルが上昇した状態にあるときの一対のスライドカム部材とリンクアームとクラッチプレートの位置関係を示す下面図である。
【図30】クラッチプレートの斜視図である。
【図31】ディスク搬送動作前におけるクラッチプレートに関連する部品の位置関係を示す上面図である。
【図32】ディスク装着動作中におけるクラッチプレートに関連する部品の位置関係を示す上面図である。
【図33】ディスク装着動作完了後におけるクラッチプレートに関連する部品の位置関係を示す上面図である。
【図34A】スライドカム部材のラック及び緩衝ラックの構成を示す斜視図であって、緩衝ラックが形成された補助ラック体がバネにより付勢された状態を示す図である。
【図34B】スライドカム部材のラック及び緩衝ラックの構成を示す斜視図であって、緩衝ラックが形成された補助ラック体がバネの付勢力に抗して移動した状態を示す図である。
【図35】スライドカム部材が摺動し、緩衝ラックのラック歯がピニオンの歯に当接した瞬間の状態を示す上面図である。
【図36】補助ラック体がバネの付勢力に抗して移動することにより、緩衝ラックのラック歯とピニオンの歯との衝突を吸収した瞬間の状態を示す上面図である。
【図37】緩衝ラックのラック歯がピニオンの歯と噛み合い、スライドカム部材が摺動し始める瞬間の状態を示す上面図である。
【図38A】ディスク挿入阻止部材が下降した状態にあるときのディスク挿入阻止部材とクラッチプレートとの位置関係を示す斜視図である。
【図38B】ディスク挿入阻止部材が上昇した状態にあるときのディスク挿入阻止部材とクラッチプレートとの位置関係を示す斜視図である。
【図39】本発明の第2実施形態にかかるディスク装置のスライドカム部材の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1態様によれば、ディスクを再生可能位置に搬送するディスク搬送機構と、
前記再生可能位置に搬送されたディスクを、再生可能なクランプ状態にするためにターンテーブル上に装着するディスク装着機構と、
前記ディスク搬送機構及びディスク装着機構を駆動する駆動力を発生する駆動源と、
前記駆動源で発生した駆動力が前記ディスク搬送機構又は前記ディスク装着機構に伝達されるように前記駆動力の伝達経路を切り換える伝達経路切換機構と、
を備え、
前記ディスク装着機構は、
前記駆動源で発生した駆動力が伝達されることにより回転する駆動ギアと、
前記駆動ギアと噛み合うラックを有し、前記駆動ギアと前記ラックとが噛み合った状態で前記駆動ギアが回転することによって移動されるスライドカム部材と、
前記ディスク搬送機構により前記ディスクが前記再生可能位置に搬送されて前記駆動ギアと前記ラックとが噛み合うように前記スライドカム部材が移動されたとき、当該ディスクの搬送によって移動するスライドカム部材の移動方向に対し、少なくとも前記駆動ギアと噛み合う噛み合い始めのラックを逆方向に相対移動可能とする緩衝部と、を有する、
ディスク装置を提供する。
【0017】
本発明の第2態様によれば、前記ディスク搬送機構により搬送されるディスクに当接して押圧されることにより回動し、当該回動により前記駆動ギアと前記ラックとが噛み合うように前記スライドカム部材を移動させるトリガ部材を有し、
前記伝達経路切換機構は、前記トリガ部材により前記スライドカム部材が移動されるとき、前記駆動源の駆動力が前記ディスク装着機構に伝達される状態から前記ディスク装着機構に伝達されるように前記駆動力の伝達経路を切り換える、第1態様に記載のディスク装置を提供する。
【0018】
本発明の第3態様によれば、前記緩衝部は、
前記スライドカム部材に摺動可能に設けられた補助ラック体と、
前記スライドカム部材に設けられた本体ラックと共に前記ラックを構成するように前記補助ラック体に設けられた緩衝ラックと、
前記駆動ギアの歯と最初に噛み合うラック歯が前記緩衝ラックのラック歯となるように前記補助ラック体を付勢する弾性部材と、
を有し、
前記駆動ギアと前記緩衝ラックとが噛み合うように前記スライドカム部材が移動されたとき、前記補助ラック体が前記弾性部材の付勢力に抗して当該スライドカム部材の移動方向とは逆方向に摺動することにより、前記駆動ギアと前記ラックとの噛み合い始めに発生する速度差を吸収して衝撃を緩和する、第1又は2態様に記載のディスク装置を提供する。
【0019】
本発明の第4態様によれば、前記駆動ギアの歯と最初に噛み合うラック歯の厚みが、当該最初に噛み合うラック歯以外のラック歯の厚みと当該ラック歯と対向する前記本体ラックに形成したラック歯の厚みとを合計した厚みとなるように構成されている、第3態様に記載のディスク装置を提供する。
【0020】
本発明の第5態様によれば、前記補助ラック体は、前記ラックの歯の配置ピッチの整数倍のストロークで摺動する、第4態様に記載のディスク装置を提供する。
【0021】
本発明の第6態様によれば、前記スライドカム部材は、前記トリガ部材に押圧される第1スライドカム部と、前記ラックが形成された第2スライドカム部とで構成され、当該両スライドカム部が前記緩衝部により連結されており、
前記緩衝部は、前記第2スライドカム部のラックが前記駆動ギアと噛み合う噛み合い始めに、前記ディスクの搬送によって移動する第1スライドカム部の移動方向に対し、前記第2スライドカム部を逆方向に相対移動可能とする、第2態様に記載のディスク装置を提供する。
【0022】
本発明の第7態様によれば、前記緩衝部は、弾性部材で構成されている、第6態様に記載のディスク装置を提供する。
【0023】
本発明の記述を続ける前に、添付図面において同じ部品については同じ参照符号を付している。
【0024】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態にかかるディスク装置について説明する。図1は、本第1実施形態にかかるディスク装置とディスクを示す外観斜視図である。図2は、図1のディスク装置の分解斜視図である。図3は、図1のディスク装置が備えるメカシャーシに取り付けられる各部品の取付状態を示す上面図である。ここでは、便宜上、図1の上側を本ディスク装置の上側とし、図1の下側を本ディスク装置の下側として説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本ディスク装置は90°傾けて配置されてもよいものである。すなわち、本ディスク装置は、図1に示すように水平配置されることに限定されるものではなく、垂直配置等されてもよい。
【0025】
図1において、本ディスク装置は、装置の外郭となる筐体300を構成する上カバー1と下カバー2とを備えている。上カバー1の正面には、ディスク挿入及び排出用開口部1aが設けられている。開口部1aは、防塵カバー3により塞がれている。防塵カバー3は、フェルト等の弾性シート3aを備えている。弾性シートのほぼ中央部(開口部1aと対向する位置)には、大径ディスク100及び小径ディスク200が通過可能なスリット3bが形成されている。大径ディスク100又は小径ディスク200の先端部が防塵カバー3を弾性変形させながらスリット3b及び開口部1aを通じて筐体300内に挿入されることにより、筐体300内に配置された後述するディスク搬送機構が駆動し、大径ディスク100又は小径ディスク200が再生可能位置まで搬送される。ここで、大径ディスク100とは、例えば、規格直径12cmのディスクである。小径ディスク200とは、例えば、規格直径8cmのディスクである。以下、大径ディスクと小径ディスクとに共通する事項の説明であり、それらを特に区別する必要がないときは、それらを『ディスク』と記載する。
【0026】
筐体300の内部において開口部1aの近傍には、ディスクの上側をガイドする上ガイド4と、ディスクの下側をガイド部5aでガイドするローラベース5とが設けられている。ローラベース5は、ディスクを筐体300の内部に搬送する、ガイド及び駆動力伝達部として機能する一対のローラアーム7a,7bを回動自在に保持している(図4参照)。ローラアーム7aには、一対のゴムローラ6a,6bが回動自在に設けられている。ローラアーム7bには、一対のゴムローラ6c,6dが固定されている。ゴムローラ6aは、ローラギア6eと一体的に設けられている(図2参照)。ゴムローラ6bは、ローラギア6fと一体的に設けられている。
【0027】
また、ローラアーム7aには、ギア8a〜8cで構成されるギア列8が設けられている(図7参照)。ギア8cは、図3に示すギア10a〜10eで構成されるギア列10のうちのギア10aと噛み合っている。ギア10eは、駆動源の一例であるモータ9が備えるウォームギア9aと噛み合っている。従って、モータ9の駆動力は、ウォームギア9a及びギア列10のギア10e−10d−10c−10b及びギア10aを介してギア列8に伝達されるようになっている。また、ギア10fはギア10dの下側歯車と噛み合っているため、駆動力は同時に伝達されるようになっており、このギア10fと同軸にピニオン10gが一体的に形成されている。ピニオン10gは、後述するスライドカム部材16に設けられたラック30と噛み合い可能に構成されているが、ディスクが挿入されていない初期状態ではピニオン10gはラック30と噛み合っていない状態である。また、ギア10cは、クラッチプレート11に回動自在に軸支されており、クラッチプレート11は、上下方向(厚み方向ともいう)を回動軸として回動可能に設けられている。このクラッチプレート11の回動は、後述するように、スライドカム部材16が矢印A2方向に摺動することにより行われるようになっている。そして、クラッチプレート11の回動により、ギア10cが移動してギア10bとの噛み合いが切り離され、駆動力の伝達はギア10f及び同軸のピニオン10gにのみ伝達されるようになっている。ローラベース5、ギア列8、モータ9、及びギア列10は、筐体300内に配置されるメカシャーシ12に、必要に応じて回動自在又は摺動可能に保持されている。
【0028】
また、図2に示すように、筐体300の内部には、ディスクを載置するターンテーブル13と、光ピックアップ14を有するトラバース15とが配置されている。ターンテーブル13は、ディスクを回転させる回転力を発生させるスピンドルモータ(図示せず)と一体的に構成されている。トラバース15は、上下方向に回動可能に構成されるとともに、メカシャーシ12に一定の弾性をもってフローティング支持されている。トラバース15の回動により、再生可能位置に搬送されたディスクをターンテーブル13に装着することができる。
【0029】
また、図3に示すように、メカシャーシ12の右側には、スライドカム部材16が矢印A1又はA2方向に摺動自在に設けられている。メカシャーシ12の左側には、スライドカム部材18が矢印A1又はA2方向に摺動自在に設けられている。スライドカム部材16とスライドカム部材18とは、メカシャーシ12の下部に回動自在に軸支されたリンクアーム17(図2参照)により連結され、リンクアーム17の回動により相互に逆方向に摺動するように構成されている。また、メカシャーシ12には、トラバース15を支持する中間シャーシ19が、ピン19a,19bとにより軸支されることにより回動自在に設けられている。中間シャーシ19には、スライドカム部材16,18に形成された昇降カム16a,18a(図2参照)と係合するピン19c,19dが設けられている。スライドカム部材16,18が相互に逆方向に摺動することによって、ピン19c,19dが昇降カム16a,18aに沿って移動することで昇降し、中間シャーシ19がピン19a,19bを回動軸として回動する。
【0030】
トラバース15の前部(開口部1a側)は、中間シャーシ19の前方部分に、フローティングゴム20a,20bを介して左右それぞれ1ヶ所固定されている。トラバース15の後部は、フローティングゴム20c,20dを介してメカシャーシ12にフローティング支持されている。中間シャーシ19がピン19a,19bを回動軸として回動することにより、トラバース15がフローティングゴム20d,20c側を回動軸として回動する。このトラバース15の回動動作に伴って、ターンテーブル13が昇降する。
【0031】
ターンテーブル13の上方には、トラバース15の上部を覆うようにアッパーベース22が配置されている。アッパーベース22のターンテーブル13と対向する位置には、開口部22aが設けられている。アッパーベース22には、開口部22aを挟んで対向する一対のクランパリフタ23a,23bが、互いに近づく又は離れる方向に摺動可能に設けられている。また、ターンテーブル13の上方には、ディスクをターンテーブル13上にクランプするためのクランパ21が設けられている。
【0032】
クランパ21は、一対のクランパリフタ23a,23bが互いに近づいて位置するとき、クランパリフタ23a,23bのそれぞれの端部に支持される。このとき、クランパ21は、ターンテーブル13上に載置されたディスクと非接触の状態にある。この状態から一対のクランパリフタ23a,23bが互いに離れる方向に移動されると、クランパ21は、開口部22aを通じてターンテーブル13に近づくように移動する。
【0033】
クランパ21には、鉄製のヨーク21aが設けられている。ターンテーブル13にディスクが載置された状態で、鉄製のヨーク21aがターンテーブル13に設けられたマグネットに磁力により引っ張られることにより、ディスクがクランパ21とターンテーブル13との間に挟み込まれる。これにより、ターンテーブル13上にディスクが装着され、再生可能なクランプ状態となる。また、このクランプ状態から、一対のクランパリフタ23a,23bが互いに近づく方向に移動されると、当該移動により一対のクランパリフタ23a,23bに押圧されたクランパ21は、磁力に抗してターンテーブル13から離れるように移動する。これにより、クランプ状態が解除される。
【0034】
アッパーベース22の下面には、ディスクが再生可能位置に向かうようにセンタリングを行うセンタリング部材24が摺動自在に設けられる。また、アッパーベース22の下面には、再生可能に位置に搬送されるディスクに当接して押圧されることにより回動するトリガ部材の一例であるトリガレバー25が、回動自在に設けられている(図9及び図10参照)。また、アッパーベース22の下面には、筐体300内に挿入されたディスクをターンテーブル13とクランパ21との間で安定して保持するためのガイドレバー26が、回動自在に設けられている。アッパーベース22は、メカシャーシ12に固定されている。メカシャーシ12は、上カバー1と下カバー2との間に挟み込まれて固定されている。
【0035】
また、メカシャーシ12には、検出スイッチ27a〜27cが実装された基板27が取り付けられている(図3参照)。検出スイッチ27aは、開口部1aを通じて挿入されたディスクを検出するスイッチである。検出スイッチ27aは、図7に示すように、ローラアーム7bに設けられたディスク検出レバー29により作動される。検出スイッチ27bは、ディスクの排出時にローディング終了を検出するスイッチである。検出スイッチ27bは、ディスクの挿入及び排出時に回動するローラアーム7bの下面により作動される。検出スイッチ27cは、ディスクを再生可能位置に搬送され装着が完了したことを検出するスイッチである。検出スイッチ27cは、スライドカム部材18によって作動される。基板27は、ローラベース5に取り付けられたローラアーム7bと対向する位置に設けられている。
【0036】
また、ローラベース5には、図7、図8A、及び図8Bに示すように、リンクアーム28a,28bが回動自在に設けられている。リンクアーム28a,28bは、ローラアーム7a,7bと係合し、ローラアーム7a,7bを互いに同期して回動させるように構成されている。ローラアーム7aは、回動軸7a−1を中心として矢印A5及び矢印A7方向に回動可能に設けられている。このローラアーム7aは、ねじりコイルバネ7a−2により、矢印A7方向に付勢されている。また、ローラアーム7bは、回動軸7b−1を中心として矢印A6及び矢印A8方向に回動可能に設けられている。このローラアーム7bは、ねじりコイルバネ7a−2により、矢印A8方向に付勢されている。
【0037】
なお、本第1実施形態においては、ギア列10、ギア列8、ゴムローラ6a〜6d、ローラギア6e,6f、ローラアーム7a,7b、及びリンクアーム28a,28bにより、ディスクを再生可能位置に搬送するディスク搬送機構が構成されている。また、本第1実施形態においては、ギア10d〜10f,ピニオン10g、スライドカム部材16、リンクレバー17、スライドカム部材18、中間シャーシ19、トラバース15、フローティングゴム20a〜20d、クランパ21、アッパーベース22、及びクランパリフタ23a,23bにより、再生可能位置に搬送されたディスクを再生可能なクランプ状態にするためにターンテーブル13上に装着するディスク装着機構が構成されている。また、本第1実施形態においては、クラッチプレート11と、これを駆動するスライドカム部材16、トリガレバー25により、駆動源で発生した駆動力がディスク搬送機構又はディスク装着機構のいずれか一方のみに伝達されるように駆動力の伝達経路を切り換える伝達経路切換機構が構成されている。ここで、各々の機構の駆動に関連する共通的な構成部品として、駆動源であるモータ9やウォームギア9aがあり、ギア列10のように一部が複数の機構の駆動に供されるものもある。なお、本発明のディスク搬送機構、ディスク装着機構、及び伝達経路切換部が前記構成に限定されるものではないことは、言うまでもない。
【0038】
次に、図3を用いて、本ディスク装置の構成を更に詳細に説明する。図3は、図2に示す全体構成の中で、上カバー1、下カバー2、ローラベース5に関連する部品、及びアッパーベース22に関連する部品を除いた各部品を、メカシャーシ12に取り付けた状態を示す上面図である。
【0039】
図3に示すように、ターンテーブル13と光ピックアップ14とは、トラバース15上においてディスク装置のほぼ中央に配置されている。トラバース15の前部及び両側部を囲むように略U字状の中間シャーシ19が配置されている。中間シャーシ19の右側には、スライドカム部材16が配置されている。中間シャーシ19の左側には、スライドカム部材18が配置されている。スライドカム部材16とスライドカム部材18とは、ディスク搬送方向と同じ前後方向(矢印A1及びA2方向)に摺動自在に配置されている。ディスクが搬送されていない初期状態では、メカシャーシ12とスライドカム部材16との間に張設されたバネ16jにより、スライドカム部材16は矢印A1方向に付勢されている。リンクアーム17を介してスライドカム部材16と接続されるスライドカム部材18は、矢印A2方向に付勢されている。中間シャーシ19の前部の両端部に設けられたピン19c,19dは、スライドカム部材16,18に形成された昇降カム16a,18a(図2参照)に摺動可能に係合している。中間シャーシ19の後部の両端部に設けられたピン19a,19bは、メカシャーシ12に形成された軸受部12a,12bに回動自在に保持されている。この構成により、中間シャーシ19は、スライドカム部材16,18が相互に逆方向に摺動することによって、ピン19a,19bを回動軸として回動し、中間シャーシ19の前部が昇降する。
【0040】
ここで、スライドカム部材16,18の相互に逆方向への摺動は、スライドカム部材16のラック30とピニオン10gとが噛み合った状態で、モータ9の駆動力がウォームギア9a、ギア10e,10d,10fを介してピニオン10gに伝達されることにより行われる。ピニオン10gは、ターンテーブル13上の再生可能位置へ搬送されるディスクに押圧されてトリガレバー25が回動し、当該トリガレバー25に押圧されてスライドカム部材16が矢印A2方向に若干摺動することによって、ラック30と噛み合う。
【0041】
すなわち、モータ9の駆動によってディスクが再生可能位置まで搬送されると、トリガレバー25の作用とモータ9の駆動力の伝達切換によって、スライドカム部材16,18が相互に逆方向に摺動する。これにより、中間シャーシ19及びトラバース15が上昇し、ターンテーブル13上にディスクが装着され、ディスクが再生可能なクランプ状態となる。
【0042】
次に、図4〜図8Bを用いて、筐体300内に挿入された大径ディスク100を再生可能位置まで搬送する大径ディスク100の搬送動作について説明する。図4〜図6は、大径ディスクの搬送状態を示す上面図である。図7は、一対のローラアーム7a,7bと一対のリンクアーム28a,28bとの取付状態を示す上面図である。図8A及び図8Bは、一対のローラアーム7a,7bが互い近づく方向又は遠ざかる方向に回動した状態を示す下面図である。
【0043】
図4は、筐体300内に大径ディスク100を挿入した直後の状態を示している。このとき、大径ディスク100は、右側の一対のゴムローラ6a,6b及び左側の一対のゴムローラ6c,6dに当接している。また、このとき、ローラアーム7bに設けられたディスク検出レバー29が大径ディスク100に押圧されて回動することにより、検出スイッチ27aが作動し、開口部1aを通じて大径ディスク100が挿入されたことを検出する。検出スイッチ27aが作動すると、モータ9が駆動を開始する。モータ9の駆動力は、ギア列10及びギア列8を介して、ゴムローラ6a,6bに伝達される。これにより、ゴムローラ6a,6bが矢印A3方向に回転し、ゴムローラ6bの回転駆動力及び摩擦力と、当該ゴムローラ6bと大径ディスク100を挟んで対向する回転しないゴムローラ6dの摩擦力とによって、大径ディスク100がゴムローラ6d(より詳細には大径ディスク100との当接点)を回動中心として矢印A4方向に回動する。この矢印A4方向の回動により、大径ディスク100は、矢印A1方向に搬送される。
【0044】
図4に示す状態から、大径ディスク100が矢印A1方向に搬送されると、当該大径ディスク100によってゴムローラ6bとゴムローラ6dとの間が押し広げられる。これにより、図8で説明したねじりコイルバネ7a−2,7b−2の付勢力に抗して、ローラアーム7aが矢印A5方向に回動し、ローラアーム7bが矢印A6方向に回動する。すなわち、一対のローラアーム7a,7bは、互いに遠ざかる方向(開く方向)に回動する。このローラアーム7a,7bの回動により、ゴムローラ6a,6cが、一旦、ディスク100の周縁部から離れる。その後、大径ディスク100が更に矢印A1方向に搬送され、ディスク100の左右最大径であるディスク100の中心部がゴムローラ6b,6d間を通り過ぎると、図8で説明したねじりコイルバネ7a−2,7b−2の付勢力により、ローラアーム7aが矢印A7方向に回動し、ローラアーム7bが矢印A8方向に回動する。すなわち、一対のローラアーム7a,7bは、互いに近づく方向(閉じる方向)に回動する。これにより、ゴムローラ6a,6cは、再び、ディスク100の周縁部と当接することとなり、図5に示す状態となる。
【0045】
図5は、ゴムローラ6a〜6dの全てが大径ディスク100と当接した状態を示している。図6は、大径ディスク100が、再生可能位置まで搬送された状態を示している。大径ディスク100は、筐体300内に挿入された直後のディスク位置100A(図4参照)から、再生可能位置であるディスク位置100C(図6参照)まで搬入される過程で、図5に示すディスク位置100Bを通過する。このディスク位置100Bは、大径ディスク100の回動力が、ゴムローラ6b,6dから伝達されるのに代えてゴムローラ6a,6cから伝達されるように切り換えられる位置である。すなわち、このディスク位置100Bからディスク位置100Cまでは、大径ディスク100は、ゴムローラ6aの回転駆動力によって、ゴムローラ6cを回動中心として矢印A4方向に回動する。このゴムローラ6cを回動中心とする矢印A4方向の回動により、大径ディスク100は、更に矢印A1方向に搬送される。大径ディスク100が図6に示すディスク位置100Cまで搬送される。この位置でディスク100の搬送動作は終了する。そして、この搬送を検出することにより、後述するディスク100のターンテーブル13上にクランプする装着動作が行われ、その装着動作が完了したことを検出スイッチ27cが検出すると、モータ9が駆動を停止する。これにより、大径ディスク100の搬送動作と装着動作が完了する。
【0046】
次に、大径ディスク100の排出動作について説明する。なお、ここでは、大径ディスク100は、図6に示すディスク位置100Cに位置し、クランプ状態を解除され、且つゴムローラ6a,6cによって挟持されているものとする。
【0047】
まず、モータ9はクランプ状態解除のため既に逆駆動されており、ゴムローラ6a,6bが大径ディスク100の搬入動作時とは逆方向に回転する。これにより、大径ディスク100がゴムローラ6cを回動中心として矢印A4方向とは逆方向に回動する。この矢印A4方向とは逆方向への回動により、大径ディスク100は、矢印A1方向とは逆方向(すなわち矢印A2方向)に搬送される。
【0048】
矢印A1方向とは逆方向の搬送により、大径ディスク100が図5に示すディスク位置5Bに達すると、大径ディスク100の回動力が、ゴムローラ6a,6cから伝達されるのに代えてゴムローラ6b,6dから伝達されるように切り換えられる。これにより、大径ディスク100は、ゴムローラ6dを回動中心として矢印A4方向とは逆方向に回動する。この矢印A4方向とは逆方向に回動により、大径ディスク100は、更に矢印A1方向とは逆方向に搬送される。この矢印A1方向とは逆方向の搬送により大径ディスク100が図4に示すディスク位置100Aまで搬送されたことを検出スイッチ27bが検出すると、モータ9が駆動を停止する。これにより、大径ディスク100の排出動作が完了する。
【0049】
なお、図4に示すディスク位置100Aまで排出された大径ディスク100は、ユーザの手指によって取り出しが可能となる。また、このとき、大径ディスク100は、ゴムローラ6a〜6dによる挟持力及び摩擦力と、防塵カバー3の弾性力及び摩擦力とにより、開口部3aから筐体300の外部へ飛び出すことなく保持される。
【0050】
次に、図9及び図10を用いて、アッパーベース22の下面に摺動又は回動可能に取り付けられたセンタリング部材24、トリガレバー25、及びガイドレバー26の構成について、更に詳細に説明する。図9は、アッパーベース22に関連する部品の構成を示す分解斜視図である。図10は、図9の各部品がアッパーベース22に取り付けられた状態を示す下面図である。
【0051】
センタリング部材24は、大径ディスク100に当接してセンタリングを行う位置決め当接部24a,24bと、小径ディスク200に当接してセンタリングを行う位置決め当接部24c,24dとを備えている。また、センタリング部材24は、トリガレバー25と係合して当該トリガレバー25を回動させるガイド部の一例であるガイドカム24eと、ディスクの厚み方向の位置を規制する複数の位置規制用ガイド24fとを備えている。ガイドカム部24eは、ディスク搬送方向に対して平行に設けられた第1直線カム部24e−1及び第2直線カム部24e−3と、ディスク搬送方向に対して交差方向に設けられ、第1直線カム部24e−1と第2直線カム部24e−3とを連結する傾斜カム部24e−2とを有している。
【0052】
センタリング部材24は、ピンや爪片などの複数のスライド用ガイド24gを備えている。センタリング部材24は、スライド用ガイド24gがアッパーベース22に形成されたガイド孔22b〜22fに係合することにより、アッパーベース22の下面に沿ってディスク搬送方向に摺動可能に構成されている。また、センタリング部材24は、図10に示すように、アッパーベース22との間に張設されたバネ24hにより、矢印A9方向(ディスク排出方向)に付勢されている。これにより、センタリング部材24は、筐体300内に挿入されたディスクに対して矢印A9方向に付勢力を付与し、当該ディスクのセンタリングを行う。
【0053】
トリガレバー25は、再生可能位置まで搬送されるディスクと当接して回動することにより、スライドカム部材16に初期のスライドを付与するものである。スライドカム部材16は、この初期のスライドによりディスク装着機構を駆動させる。また、トリガレバー25は、ディスクと当接するディスク当接部(検出部ともいう)25aと、スライドカム部材16に係合してスライドカム部材16を矢印A2方向(図3参照)に押圧するスライドカム押圧部25bと、トリガレバー25の回動中心となる回動軸部25cとを備えている。
【0054】
トリガレバー25の回動軸部25cは、アッパーベース22に形成された長円形の軸孔22gと係合するとともに、センタリング部材24のガイドカム24eと係合している。これにより、トリガレバー25は、軸孔22gとガイドカム24eとの交点部を中心として矢印A10方向又はその逆方向に回動する。
【0055】
また、トリガレバー25は、アッパーベース22に保持された状態を維持したまま、回動することができるように、弧状凸部25dを備えている。アッパーベース22には、弧状凸部25dが配置される凹部22hと、弧状凸部25dが凹部22hから外れないように弧状凸部25dと係合する係合爪部22jとが設けられている。凹部22hの大きさは、回動軸部25cが軸孔22g内を矢印A11又はその逆方向に移動してもトリガレバー25が回動することができるように、弧状凸部25dに比べて大きく形成されている。
【0056】
また、トリガレバー25には、センタリング部材24の複数のスライド用ガイド24gの1つであるスライド用ガイド24g−1が貫通する孔25eが形成されている。この孔25eには、リンク溝25e−1が形成されている。
【0057】
ガイドレバー26は、筐体300内に挿入されたディスクを、ターンテーブル13とクランパ21との間の高さ位置で保持するためのものである。ガイドレバー26は、アッパーベース22に回動自在に軸支される回動軸26aと、ディスクの高さ位置を保持するための位置決め用ガイド26bとを備えている。
【0058】
また、ガイドレバー26は、当該ガイドレバー26自体の高さ方向の位置を安定させるため、アッパーベース22に形成された弧状孔22kに係合する係合爪片26cを備えている。また、ガイドレバー26は、ねじりコイルバネ26dにより矢印A12方向に付勢され、通常は図10に示す状態で保持されている。筐体300内に挿入されたディスクは、位置決め用ガイド26bに当接し、バネ26dの付勢力に抗してガイドレバー26を矢印A12とは逆方向に回動させながら、再生可能位置へ搬送される。
【0059】
次に、図11〜図22を用いて、ディスク搬送動作及びディスク装着動作について説明する。
【0060】
まず、図11〜図16を用いて、大径ディスク100が筐体300内に挿入されたときの各部品の動作について説明する。図11は、大径ディスク挿入時の、スライドカム部材16に形成された係合部に対するトリガレバー25のスライドカム押圧部25bの相対的な移動軌跡を示す上面図である。図12〜図16は、筐体300内に挿入された大径ディスク100が再生可能位置へ搬送されるときの、スライドカム部材16とセンタリング部材24とトリガレバー25とガイドレバー26の位置関係を示す上面図である。なお、これらの図においては、便宜上、一部を透視図で示している。
【0061】
スライドカム部材16には、図11に示すように、トリガレバー25のスライドカム押圧部25bが係合する係合部として、第1係合部16bと、第2係合部16cとが設けられている。第1係合部16bは、小径ディスク200に押圧されてトリガレバー25が回動したときに、スライドカム押圧部25bに押圧される部分である。第2係合部16cは、大径ディスク100に押圧されてトリガレバー25が回動したときに、スライドカム押圧部25bに押圧される部分である。また、スライドカム部材16には、カム部16d〜16fが設けられている。カム部16dは、第1係合部16bと第2係合部16cとを接続するように形成されている。カム部16は、大径ディスク100が筐体300内に挿入されてトリガレバー25の回動軸部25cが移動するときに、スライドカム押圧部25bの第1係合部16bから第2係合部16cへの移動をガイドする部分である。カム部16eは、大径ディスク100が再生可能位置に搬送された後ターンテーブル13上に装着される際に、スライドカム押圧部25bを第2係合部16cから離れるように移動させる部分である。カム部16fは、センタリング部材24の位置決め部当接部24a,24b等を大径ディスク100から離すための部分である。トリガレバー25のスライドカム押圧部25bは、図12〜図16に示すように各部品の位置関係が変化することにより、位置25b−1〜25b−6の軌跡を辿ることとなる。
【0062】
大径ディスク100が筐体300内に挿入されると、まず、大径ディスク100の先端部の近傍がガイドレバー26の位置決め用ガイド26bに当接して、大径ディスク100の厚み方向の高さ位置が位置決めされる。
【0063】
次いで、図4を用いて前述したように、大径ディスク100が、矢印A4方向に回動しながら矢印A1方向に搬送される。これにより、ガイドレバー26が大径ディスク100に押圧されてねじりコイルバネ24hの付勢力に抗して回動軸26aを中心に回動し、図12に示すように、大径ディスク100がセンタリング部材24の位置決め当接部24a,24bに当接する。大径ディスク100の周縁部が位置決め当接部24a,24bの両方に当接することで、大径ディスク100がセンタリングされる。すなわち、大径ディスク100の中心が、平面視においてディスク搬送方向と平行で且つターンテーブル13の中心を通る直線上に位置するように位置決めされる。
【0064】
なお、図12に示す状態では、トリガレバー25のディスク当接部25aは、大径ディスク100と当接していない初期状態にあり、スライドカム押圧部25bは、図11に示すようなスライドカム部材16の第1係合部16bに当接する位置25b−1に位置する。また、図12に示す状態では、トリガレバー25の回動軸部25cは、センタリング部材24のガイドカム24eにはガイドされていない状態にある。
【0065】
図12に示す状態から更に、大径ディスク100が矢印A1方向に搬送されると、大径ディスク100が、センタリング部材24をバネ24hの付勢力に抗して矢印A1方向に移動させるとともに、ガイドレバー26を矢印A12方向の付勢力に抗して回動させる。これにより、トリガレバー25の回動軸部25cが、ガイドカム24eの第1直線カム部24e−1を通過した後、傾斜カム部24e−2にガイドされる。このとき、回動軸部25cは、軸孔22g(図9,図10参照)によりディスク搬送方向の移動が規制されているので矢印A11方向に移動する。すなわち、トリガレバー25全体が矢印A11方向に(第1位置から第2位置へ)移動する。この矢印A11方向の移動により、回動軸部25cが、図13に示すように、傾斜カム部24e−2から第2直線カム部24e−3まで移動する。このとき、トリガレバー25は、弧状凸部25dが図9,10を用いて前述したアッパーベース22の凹部22hにガイドされて移動する。
【0066】
なお、図13に示す状態では、トリガレバー25のディスク当接部25aは、大径ディスク100と未だ当接していない状態にある。また、スライドカム押圧部25bは、図11に示すようなスライドカム部材16の第1係合部16bに当接する位置25b−1から外れた位置25b−2に位置する。また、スライドカム部材16は、未だ移動していない状態にある。
【0067】
図13に示す状態から更に、大径ディスク100が矢印A1方向に搬送されると、大径ディスク100がトリガレバー25のディスク当接部25aに当接してトリガレバー25を押圧する。このとき、トリガレバー25は、回動軸部25cが軸孔22g(図9,図10参照)と係合していることにより、ディスク搬送方向の移動が規制される。一方、センタリング部材24は、大径ディスク100に押圧されて矢印A1方向に移動する。これにより、傾斜カム部24e−2がトリガレバー25の回動軸部25cから離れるように移動し、図14に示すように、トリガレバー25が回動軸部25cを中心として矢印A10方向に回動する。このとき、回動軸部25cは第2直線カム部24e−3内(第2位置)に位置して矢印A11方向及びその逆方向の移動を規制され、スライドカム押圧部25bはスライドカム部材16のカム部16dによって阻害されることなく回動する。これにより、スライドカム押圧部25bは、図11に示すようなスライドカム部材16の第2係合部16cに当接する位置25b−3に移動する。
【0068】
図14に示す状態から更に、大径ディスク100が矢印A1方向に搬送されると、当該大径ディスク100に押圧されたトリガレバー25が更に矢印A10方向に回動し、スライドカム押圧部25bがスライドカム部材16の第2係合部16cを矢印A2方向に押圧する。これにより、スライドカム部材16全体が矢印A2方向に摺動して、図15に示すように、スライドカム部材16のラック30とピニオン10gとが噛み合う。これにより、大径ディスク100の搬送動作が完了し、装着動作が開始される。
【0069】
なお、図15に示す状態では、スライドカム押圧部25bは、図11に示すようなスライドカム部材16の第2係合部16cに当接する位置25b−4に位置する。また、図15に示す状態は、大径ディスク100が再生可能位置まで搬送された状態である。
【0070】
図15に示す状態でモータ9の駆動力がギア列10を介して伝達されてピニオン10gは回転しているので、噛み合ったラック30が駆動され、スライドカム部材16が更に矢印A2方向に摺動する。この摺動に伴い、スライドカム部材16にリンクアーム17を介して接続されているスライドカム部材18が、矢印A1方向に摺動する。このスライドカム部材16,18の互いに逆方向の摺動により、前述したように、大径ディスク100のターンテーブル13上への装着動作が行われる。また、スライドカム部材16の矢印A2方向への摺動により、第2係合部16cがスライドカム押圧部25bから離れ、スライドカム押圧部25bがカム部16eにガイドされて、図11に示す位置25b−5に移動する。
【0071】
スライドカム押圧部25bが位置25b−5に位置する状態から更に、スライドカム部材16が矢印A2方向に摺動されると、スライドカム押圧部25bがカム部16eから傾斜部を介してカム部16f上の図11に示す位置25b−6に移動する。このとき、トリガレバー25は、回動軸部25cを中心として若干矢印A10方向へ回動する。この回動により、トリガレバー25のリンク溝25e−1に係合しているセンタリング部材24のガイド24g−1が押圧されて、センタリング部材24が矢印A1方向へ摺動する。これにより、図16に示すように、大径ディスク100から、センタリング部材24の位置決め当接部24a,24b、位置決め用ガイド24f、トリガレバー25のディスク当接部25a、及びガイドレバー26の位置決め用ガイド26bが離れ、大径ディスク100の回転が阻害されなくなる。
以上により、大径ディスク100の装着動作が完了する。
【0072】
次に、図17〜図21を用いて、小径ディスク200が筐体300内に挿入されたときの各部品の動作について説明する。図17は、小径ディスク挿入時の、スライドカム部材16に形成した係合部に対するトリガレバー25のスライドカム押圧部25bの相対的な移動軌跡を示す上面図である。図18〜図21は、筐体300内に挿入された小径ディスク200が再生可能位置へ搬送されるときの、スライドカム部材16とセンタリング部材24とトリガレバー25とガイドレバー26の位置関係を示す上面図である。なお、これらの図においても、便宜上、一部を透視図で示している。
【0073】
スライドカム部材16には、図11を用いて説明した第1係合部16b、第2係合部16c、及びカム部16d〜16f以外に、カム部16g,16hが設けられている。カム部16gは、小径ディスク200が再生可能位置に搬送された後ターンテーブル13上に装着される際に、スライドカム押圧部25bを第1係合部16bから離れるように移動させる部分である。カム部16hは、センタリング部材24の位置決め部当接部24a,24b等を小径ディスク200から離すための部分である。トリガレバー25のスライドカム押圧部25bは、図18〜図21に示すように各部品の位置関係が変化することにより、位置25b−1〜25b−7への軌跡を辿ることになる。
【0074】
小径ディスク200が筐体300内に挿入されると、まず、小径ディスク200の先端部の近傍がガイドレバー26の位置決め用ガイド26bに当接して、小径ディスク200の厚み方向の高さ位置が位置決めされる。この状態で小径ディスク200が更に再生可能位置へ搬送されると、ガイドレバー26が小径ディスク200に押圧されてねじりコイルバネ24hの付勢力に抗して回動軸26aを中心に回動し、図18に示すように、小径ディスク200がセンタリング部材24の位置決め当接部24c,24dに当接する。小径ディスク200の周縁部が位置決め当接部24c,24dに当接することで、小径ディスク200がセンタリングされる。すなわち、小径ディスク200の中心が、平面視においてディスク搬送方向と平行で且つターンテーブルの中心を通る直線上に位置するように位置決めされる。
【0075】
なお、図18に示す状態では、トリガレバー25のディスク当接部25aは、小径ディスク200と当接していない初期状態にあり、トリガレバー25のスライドカム押圧部25bは、図17に示すようなスライドカム部材16の第1係合部16bに当接する位置25b−1に位置する。また、図18に示す状態では、トリガレバー25の回動軸部25cは、センタリング部材24のガイドカム24eにはガイドされていない状態にある。
【0076】
図18に示す状態から更に、小径ディスク200が矢印A1方向に搬送されると、小径ディスク200が、センタリング部材24をバネ24hの付勢力に抗して矢印A1方向に移動させるとともに、ガイドレバー26を矢印A1方向に移動させる。これにより、図19に示すように、トリガレバー25の回動軸部25cがガイドカム24eの第1直線カム部24e−1内に移動するとともに、小径ディスク200がトリガレバー25のディスク当接部25aに当接する。なお、この時点では、スライドカム部材16のラック30とピニオン10gとは未だ噛み合っていない。
【0077】
図19に示す状態から更に、小径ディスク200が矢印A1方向に搬送されると、トリガレバー25が小径ディスク200に矢印A1方向に押圧される。このとき、トリガレバー25の回動軸部25cは、軸孔22g(図9,図10参照)と係合していることによりディスク搬送方向の移動が規制され、且つ第1直線カム部24e−1内(第1位置)に位置することにより矢印A11方向及びその逆方向の移動を規制される。一方、センタリング部材24は、小径ディスク200に押圧されて矢印A1方向に移動する。これにより、小径ディスク200に押圧されたトリガレバー25は、回動軸部25cを中心として矢印A10方向に回動する。このトリガレバー25の回動により、スライドカム押圧部25bがスライドカム部材16の第1係合部16bを矢印A2方向に押圧する。これにより、スライドカム部材16全体が矢印A2方向に摺動して、図20に示すように、スライドカム部材16のラック30とピニオン10gとが噛み合う。これにより、小ディスク200の搬送動作が完了し、装着動作が開始される。なお、図20に示す状態は、小径ディスク200が再生可能位置まで搬入された状態である。
【0078】
図20に示す状態でモータ9の駆動力がギア列10を介して伝達されてピニオン10gは回転しているので、噛み合ったラック30が駆動され、スライドカム部材16が更に矢印A2方向に摺動する。この摺動に伴い、スライドカム部材16にリンクアーム17を介して接続されているスライドカム部材18が、矢印A1方向に摺動する。このスライドカム部材16,18の互いに逆方向の摺動により、前述したように、小径ディスク200のターンテーブル13上への装着動作が行われる。また、スライドカム部材16の矢印A2方向への摺動により、第1係合部16bがスライドカム押圧部25bから離れ、スライドカム押圧部25bがカム部16gにガイドされて移動する。
【0079】
スライドカム押圧部25bがカム部16gに位置する状態から更に、スライドカム部材16が矢印A2方向に摺動されると、スライドカム押圧部25bがカム部16gから傾斜部を介してカム部16h上の図17に示す位置25b−7に移動する。このとき、トリガレバー25は、回動軸部25cを中心として若干矢印A10方向へ回動する。この回動により、トリガレバー25のディスク当接部25aに当接状態にあるセンタリング部材24の縁部24hが、当該ディスク当接部25aに押圧されて、センタリング部材24が矢印A1方向へ摺動する。これにより、図21に示すように、小径ディスク200から、センタリング部材24の位置決め当接部24c,24d、位置決め用ガイド24f、トリガレバー25のディスク当接部25a、及びガイドレバー26の位置決め用ガイド26bが離れ、小径ディスク200の回転が阻害されなくなる。
以上により、小径ディスク200の搬送動作が完了する。
【0080】
小径ディスク200の搬送動作においては、大径ディスク100の搬送動作と比べて、ディスクがセンタリング部材24の位置決め当接部24c,24dに当接してから再生可能位置に搬送されるまでの距離が短い。このため、トリガレバー25の回動軸部25cは、ガイドカム24eの傾斜カム部24e−2に移動することなく、第1直線カム部24e−1内のみを移動することになる。
【0081】
図22は、再生可能位置に搬送された大径ディスク100に対するスライドカム部材16とセンタリング部材24とトリガレバー25の位置関係と、再生可能位置に搬送された小径ディスク200に対するスライドカム部材16とセンタリング部材24とトリガレバー25の位置関係を示す図である。図22において、大径ディスク100の中心と小径ディスク200の中心は、ディスク搬送方向と直交し且つターンテーブル13の中心を通る直線21b上に位置している。図22から明らかなように、大径ディスク100と小径ディスク200のいずれを筐体300内に挿入した場合においても、トリガレバー25のスライドカム押圧部25bによって、スライドカム部材16を矢印A2方向に摺動させることができる。
【0082】
次に、図23〜図27を用いて、ターンテーブル13を昇降動作させる構成について、より詳細に説明する。
【0083】
図23は、スライドカム部材16の斜視図である。スライドカム部材16には、前述したように、中間シャーシ19の前部を昇降させるために、中間シャーシ19に設けられた係合ピン19cと係合する昇降カム16aが形成されている。この昇降カム16aは、低面カム部16a−1と傾斜カム部16a−2と高面カム部16a−3とで構成されている。低面カム部16a−1は、中間シャーシ19の前部を下降させた状態で保持するための部分である。傾斜カム部16a−2は、中間シャーシ19の前部を昇降させるための部分である。高面カム部16a−3は、中間シャーシ19の前部を上昇させた状態で保持するための部分である。
【0084】
また、スライドカム部材18には、図2に示すように、中間シャーシ19の係合ピン19dと係合する昇降カム18aが形成されている。この昇降カム18aは、スライドカム部材16と同様に、低面カム部と傾斜カム部と高面カム部とで構成されている。昇降カム18aの各カム部と昇降カム16aの各カム部16a−1〜16a−3とは、傾斜方向が逆方向になっている。
【0085】
従って、昇降カム16aに係合ピン19cが係合すると共に、昇降カム18aに係合ピン19cが係合した状態で、前述したようにスライドカム部材16とスライドカム部材18とが互いに逆方向に摺動することにより、中間シャーシ19の前部が昇降する。すなわち、中間シャーシ19の前部に設けられるターンテーブル13は、スライドカム部材16が矢印A2方向に摺動することによって上昇し、スライドカム部材16が矢印A1方向に摺動することによって下降する。
【0086】
図24A及び図24Bは、ターンテーブル13が下降した状態(ディスクが挿入されていない待機状態)にあるときの中間シャーシ19とスライドカム部材16,18との位置関係を示す斜視図である。図25は、ターンテーブル13が下降した状態にあるときのスライドカム部材16,18とリンクアーム17との位置関係を示す上面図である。この状態では、スライドカム部材16は、図3を用いて前述したようにバネ16jにより矢印A1方向に付勢されている。このスライドカム部材16は、リンクアーム17を介してスライドカム部材18と連結されている。リンクアーム17は、回動軸17aを中心として回動自在に設けられている。このため、スライドカム部材18は、バネ16jにより、スライドカム部材16とは逆向きの矢印A2方向に付勢されている。この状態では、ターンテーブル13が下降状態にあるため、ディスクが挿入可能となっている。
【0087】
スライドカム部材18には、図25に示すように、検出スイッチ27cと当接可能な突出部18bが形成されている。突出部18bは、ディスクが再生可能位置に搬送されて、スライドカム部材18が矢印A1方向に摺動した際、検出スイッチ27cに当接し、検出スイッチ27cを作動させるものである。
【0088】
なお、図24A,図24B、及び図25に示す状態は、前述したように、ディスクが再生可能に位置に搬送され、トリガレバー25のスライドカム押圧部25bによりスライドカム部材16が押圧されてラック30がピニオン10gに噛み合い、スライドカム部材16が矢印A2方向に摺動を開始するまで継続される。スライドカム16が矢印A2方向に摺動するとともに、スライドカム部材18が矢印A1方向に摺動することにより、中間シャーシ19の係合ピン19c,19dが昇降カム16a及び昇降カム18aに沿って移動する。これにより、中間シャーシ19の前部が上昇してターンテーブル13が上昇し、ディスクがターンテーブルとクランパ21との間に挟持される。その後、前述したスライドカム部材18の突出部18bが検出スイッチ27cに当接することにより、モータ9の駆動が停止される。これにより、ディスクの装着完了状態となる。
【0089】
図26A及び図26Bは、ターンテーブル13が上昇した状態(ディスクの装着完了状態:大径ディスク100については図16参照、小径ディスク200については図21参照)にあるときの中間シャーシ19とスライドカム部材16,18との位置関係を示す斜視図である。図27は、ターンテーブル13が上昇した状態にあるときのスライドカム部材16とスライドカム部材18とリンクアーム17の位置関係を示す上面図である。なお、このとき、ラック30とピニオン10gとは、噛み合ったままである。この状態は、ディスクの排出のために、イジェクト操作によりモータ9が逆駆動され、スライドカム部材16がディスクの搬入時とは逆方向である矢印A1方向に移動するまで維持される。
【0090】
なお、スライドカム部材16には、図23に示すように、スライドカム部材16を矢印A1方向に付勢するためのバネ16jを支持する係合部16kが形成されている。また、スライドカム部材16の上面には、クランパリフタ23aを移動させるためのカム溝16mが形成されている。同様に、スライドカム部材18の上面には、図25及び図27に示すように、クランパリフタ23bを移動させるためのカム溝18cが形成されている。
【0091】
図28は、ターンテーブル13が下降した状態にあるときのスライドカム部材16,18とリンクアーム17とクラッチプレート11の位置関係を示す下面図である。図29は、ターンテーブル13が上昇した状態にあるときのスライドカム部材16,18とリンクアーム17とクラッチプレート11の位置関係を示す下面図である。これらの図に示すように、リンクアーム17の両端部には係合ピン17b,17cが形成されている。係合ピン17bはスライドカム部材16に形成された係合凹部16nに係合し、係合ピン17cはスライドカム部材18に形成された係合凹部18dに係合している。これにより、リンクアーム17は、スライドカム部材16,18を互いに連動して動作するように連結している。なお、リンクアーム17の係合ピン17b,17cは、回動軸17aを中心として円弧状に移動するのに対し、スライドカム部材16,18は、矢印A1又はA2方向に直線状に移動する。すなわち、リンクアーム17の回動に伴い、リンクアーム17の回動軸17aから係合凹部16n,18dまでの距離が変化する。このため、係合凹部16n,18dは、前記距離の変化によってリンクアーム17の回動が妨げられないように、矢印A1及びA2方向に対して直角方向に長い溝形状に形成されている。
【0092】
また、スライドカム部材16の下面には、図28及び図29に示すように、スライドカム部材16の摺動に連動してクラッチプレート11を回動させることができるようにカム16pが形成されている。このカム16pは、第1カム部16p−1と第2カム部16p−2とで構成されている。第1カム部16p−1は、スライドカム部材16の摺動方向(矢印A1又はA2方向)に対して直角方向に延在するように形成されている。第2カム部16p−2は、スライドカム部材16の摺動方向に延在し、第1カム部16p−1と連結されるように形成されている。
【0093】
図30は、クラッチプレート11を上面側から見た斜視図である。クラッチプレート11は、メカシャーシ12に形成された軸に回動自在に支持される軸受け部11aと、スライドカム部材16のカム16pに係合する係合ピン11bと、ギア10cを回動自在に支持する軸部11cと、ディスク挿入阻止部材33を昇降させるカム11dとを備えている。クラッチプレート11は、軸受け部11aがモータ9の駆動力を伝達するギア10dの回動軸と同軸上に配置され、ギア10cを軸部11cの周囲で支持した状態で回動可能に構成されている。カム11dは、下面カム部11d−1と、傾斜カム部11b−2と、上面カム部11b−3を有している。
【0094】
クラッチプレート11は、係合ピン11bがスライドカム部材16のカム16pに係合した状態でスライドカム部材16が摺動することにより回動する。すなわち、図28に示す状態からスライドカム部材16が矢印A2方向に摺動することにより、係合ピン11bが第1カム部16p−1に当接する。この状態から更に、スライドカム部材16が矢印A2方向に摺動すると、クラッチプレート11が軸受け部11aを中心として矢印A13方向に回動し、係合ピン11bが第1カム部16p−1から第2カム部16p−2に移動する。これにより、クラッチプレート11の回動が停止する。この状態から更に、スライドカム部材16が矢印A2方向に摺動すると、係合ピン11bが第2カム部16p−2にガイドされて移動する。図29は、前述したディスク装着動作が完了し、スライドカム部材16の摺動が停止した状態を示している。この状態では、係合ピン11bは第2カム部16p−2に保持され、クラッチプレート11は回動が規制されている。
【0095】
次に、図31〜図33を用いて、クラッチプレート11を回動させることによりモータ9の駆動力の伝達経路を切り換える動作、すなわちディスク搬送動作とディスク装着動作とを切り換える動作について説明する。
【0096】
図31は、ディスク搬送動作前におけるクラッチプレートに関連する部品の位置関係を示す上面図である。図31に示す状態では、モータ9の駆動力がウォームギア9a、ギア10e、ギア10d、ギア10c、及びギア10bを介して、ギア10aに伝達可能になっている。また、ギア10aは、図2及び図7を用いて前述したように、モータ9の駆動力を、ギア列8を介して、ゴムローラ6a,6bと一体的に形成されたローラギア6e,6fに伝達可能となっている。一方、この状態において、ギア10fは、ギア10dの下側歯車と噛み合って駆動力を伝達可能になっているが、ギア10fに一体的に形成されたピニオン10gは、ラック30と噛み合っていない状態にある。
【0097】
図31に示す状態でモータ9が駆動されると、モータ9の駆動力がローラギア6e,6fに伝達され、ゴムローラ6a,6bが回転する。このゴムローラ6a,6bの回転により、ディスクを再生可能位置に搬送することができる。このとき、モータ9の駆動力は、ディスク搬送力として働くことになる。また、このとき、モータ9の駆動力は、ピニオン10gにも伝達されて回転するが、ラック30とは未だ噛み合っていない状態にある。
【0098】
ディスクが再生可能位置まで矢印A1方向に搬送されると、前述したように、スライドカム部材16が矢印A2方向に摺動する。これにより、ラック30とピニオン10gとが噛み合う。このとき、ピニオン10gは、モータ9の駆動力が伝達されて回転しているので、スライドカム部材16は矢印A2方向に更に摺動されることになる。このスライドカム部材16の摺動により、クラッチプレート11は、図28及び図29を用いて前述したように、矢印A13方向に回動する。この回動によって、クラッチプレート11上に設けられたギア10cも同時に矢印A13方向に移動する。これにより、図32に示すように、メカシャーシ12上に設けられたギア10bとギア10cとの噛み合いが切り離され、ゴムローラ6a,6bの回転が停止する。
【0099】
図32は、ディスク装着動作中におけるクラッチプレートに関連する部品の位置関係を示す上面図である。このとき、モータ9の駆動力は、ウォームギア9a、ギア10e、ギア10d、及びギア10fを介してピニオン10gのみに伝達される。ラック30と噛み合うピニオン10gの回転により、スライドカム部材16が更に矢印A2方向に摺動すると、前述したように、クラッチプレート11の係合ピン11bがカム16pの第2カム部16p−2に移動し、クラッチプレート11の回動が規制される。係合ピン11bが第2カム部16p−2内に位置する状態では、スライドカム部材16の矢印A2方向への更なる移動が許容される。スライドカム部材16が図29に示す位置まで摺動すると、モータ9の駆動が停止される。この第1カム部16p−1から第2カム部16p−2によるクラッチプレート11の回動の過程で、ディスクがターンテーブル13上に装着され、図33に示すディスク装着完了状態となる。
【0100】
図33と図26と図27とは、同じディスク装着動作完了後の状態を示している。この状態では、ピニオン10gとラック30との噛み合いが保持されている。この状態は、ディスクの排出のために、モータ9が逆駆動され、ラック30にディスクの搬入時とは逆方向の駆動力が伝達されるまで維持される。なお、図33におけるクラッチプレート11の状態は、図32の状態と比較して、若干矢印A13方向に回動した状態となっている。
【0101】
次に、図34A及び図34Bを用いて、ラック30の構成について詳細に説明する。図34A及び図34Bは、ラック30の構成を示す斜視図である。ラック30は、スライドカム16に一体に形成された本体ラック30aと、補助ラック体31に形成された緩衝ラック30bと、弾性アーム部32に形成した弾性ラック30cとで構成されている。本体ラック30a、緩衝ラック30b及び弾性ラック30cは、ピニオン10gからモータ9の駆動力を伝達される際に、それぞれ異なる機能を有する。また、本体ラック30a、緩衝ラック30b及び弾性ラック30cは、それらの歯の配置ピッチが同一となるように形成されている。
【0102】
本体ラック30aは、スライドカム部材16の本体に一体的に形成されている。本体ラック30aは、モータ9の駆動力をスライドカム部材16に伝達する主要部分である。本体ラック30aは、ラック歯a1〜a5を備えている。ラック歯a2〜a5は、厚み方向の幅が、矢印A2方向の最も上流側に位置するラック歯(ディスクが装着された図33の状態から排出を行う際に、ピニオン10gの歯と最初に噛み合うラック歯)a1よりも小さく(例えば1/2)なるように形成されている。また、ラック歯a2〜a5は、図34A及び図34Bに示すように、下側に偏って形成されている。ラック歯a1〜a5のうち両端部に配置されたラック歯a1とラック歯a5は、頂部に平坦部が形成されていない急峻な山形に形成されている。これにより、ピニオン10gとラック30とが噛み合い始める際に、それらが備える歯の頂部同士が当接し、その反力によりピニオン10gの回転が阻害されることが防止されている。
【0103】
また、本体ラック30aの近傍には、ディスク搬送方向(A1又はA2方向)に延在するようにリブ部16rが設けられている。このリブ部16rには、補助ラック体31が、摺動可能に嵌合している。補助ラック体31は、スライドカム部材16に形成された空間16sに設けられた弾性部材の一例であるバネ31aによって矢印A2方向に付勢されている。この補助ラック体31には、前述した緩衝ラック30bが形成されており、当該緩衝ラック30bは、ラック歯b1〜b6を備えている。ラック歯b3〜b6は、厚み方向の幅が、矢印A2方向の下流側に位置するラック歯b1及びラック歯b2よりも小さく(例えば1/2)なるように形成されている。また、ラック歯b3〜b6は、図34A及び図34Bに示すように、上側に偏って形成されている。また、ラック歯b1〜b6のうち両端部に配置されたラック歯b1とラック歯b6は、頂部に平坦部が形成されていない急峻な山形に形成されている。これにより、ピニオン10gとラック30とが噛み合い始める際に、それらが備える歯の頂部同士が当接し、その反力によりピニオン10gの回転が阻害されることが防止されている。
【0104】
ラック歯b4〜b6とラック歯a3〜a5とは、図34Aに示すように補助ラック体31がバネ31aによって矢印A2方向に付勢されているとき、ラック30の厚み方向に互いに対向するように配置されている。すなわち、この場合、ラック歯b4とラック歯a5、ラック歯b5とラック歯a4、及びラック歯b6とラック歯a3が重なることにより、ラック歯a1、b1、b2と略同じ大きさの3つのラック歯が形成されることになる。言い換えれば、ラック歯a1、b1、b2の厚みは、例えば、ラック歯b4の厚みとラック歯a5の厚みとを合計した厚みとなるように構成されている。また、ラック歯b3〜b6とラック歯a2〜a5とは、図34Bに示すように補助ラック体31がバネ31aの付勢力に抗して矢印A1方向に移動してリブ部16r端部に当接した状態で、ラック30の厚み方向に互いに対向するように配置されている。すなわち、この場合、ラック歯b3とラック歯a5、ラック歯b4とラック歯a4、ラック歯b5とラック歯a3、及びラック歯b6とラック歯a2が重なることにより、ラック歯a1、b1、又はb2と略同じ大きさの4つのラック歯が形成されることになる。すなわち、緩衝ラック30bが形成された補助ラック体31は、バネ31aが弾性変形することにより、本体ラック30aのラック歯の1ピッチ分移動する。
【0105】
また、弾性ラック30cは、スライドカム部材16に形成された弾性アーム32に設けられている。弾性アーム32は、ピニオン10gから遠ざかる方向に変形可能に構成されている。弾性ラック30cは、ラック30の矢印A2方向の最も上流側の歯となるラック歯c1を備えている。ラック歯c1は、本体ラック30aのラック歯a1と同様に、頂部に平坦部が形成されていない急峻な山形に形成されている。これにより、ピニオン10gとラック30とが噛み合い始める際に、それらが備える歯の頂部同士が当接し、その反力によりピニオン10gの回転が阻害されることが防止されている。
【0106】
また、ラック歯c1は、ディスクの装着完了時点で停止されるモータ9の停止指令から実際の停止までのタイムラグにより駆動される場合や、モータ9の駆動が何らかのトラブル等で停止されることなく駆動される場合等に、ピニオン10gに回転力が伝達された場合に、ピニオン10gとラック30との噛み合いを外すように機能する。例えば、図33に示すディスク装着完了時の状態において、更にピニオン10gが矢印A14方向に回転すると、ピニオン10gの歯の頂部とラック歯c1の頂部とが当接するように、弾性アーム32が、図34Aに示す空間32a側、すなわち矢印A15方向に変形する。これにより、ピニオン10gの歯とラック歯c1との噛み合いが外れる。この状態から更にピニオン10が矢印A14方向に回転すると、ピニオン10gの歯とラック歯c1とが噛み合う。このピニオン10gの歯とラック歯c1との噛み合いが外れた状態と噛み合った状態とが、ピニオン10gの回転が停止するまで交互に繰り返される。この構成により、モータ9の駆動停止が正常に行われず、ピニオン10gとラック30との噛み合い部分に過大な負荷が加えられた際に、モータ9の駆動力が伝達されるウォームギア9a、ギア列10、又はラック30が破損するなどの事故を防止することができる。
【0107】
なお、本第1実施形態においては、スライドカム部材16に摺動可能に構成した補助ラック体31、補助ラック体31を一方に付勢するバネ31a、及び補助ラック体31に形成した緩衝ラック30bにより、ピニオン10gとラック30との噛み合い始めに速度差等により発生する衝撃を吸収して緩和する緩衝部が構成されている。なお、本発明の緩衝部が前記構成に限定されるものではないことは、言うまでもない。
【0108】
次に、図35〜図37を用いて、補助ラック体31、バネ31a、及び緩衝ラック30bによる部品の破損防止等の効果について、更に詳細に説明する。
【0109】
図35は、スライドカム部材16が矢印A2方向に摺動し、緩衝ラック30bのラック歯b1がピニオン10gの歯に当接した瞬間の状態を示す上面図である。図35に示す状態では、緩衝ラック30bは、図34Aに示す状態と同様に、バネ31aにより矢印A2方向に付勢されている。この状態で、スライドカム部材16が矢印A2方向に摺動するとともに、ピニオン10が矢印A14方向に回転することにより、ラック30とピニオン10gとが噛み合う。しかしながら、スライドカム部材16の摺動速度とピニオン10gの回転速度とに差があるような場合や、ピニオン10gとラック30の歯の山と谷における噛み合い関係が円滑に行かない場合等、特にラック30とピニオン10gとの噛み合い始めがうまく行かないことが起こり得る。この場合、ピニオン10g又はラック30が破損するなどの事故が発生する。
【0110】
これに対して、本第1実施形態では、ピニオン10gの歯と最初に噛み合うラック歯を緩衝ラック30bのラック歯b1とし、緩衝ラック30bが形成された補助ラック体31がバネ31aの付勢力に抗して矢印A1方向に移動することができるようにしている。これにより、ピニオン10gとラック30との噛み合い始めに、両者の速度差等により発生する衝撃を吸収してこれを緩和することができ、ピニオン10g又はラック30が破損するなどの事故を防止することができる。
【0111】
図36は、ピニオン10gの回転速度に比べてスライドカム16の移動速度が早い場合、補助ラック体31がバネ31aの付勢力に抗して矢印A2方向に移動することにより、緩衝ラック30bのラック歯b1がピニオン10gの歯との衝突を吸収した瞬間の状態を示す上面図である。図36に示すように、補助ラック体31の当接面31bは、スライドカム部材16のリブ部16rを形成する段部16tから離れて位置している。このとき、ラック30は、図34Bに示す状態にある。この状態でピニオン10gはモータ9の駆動で回転しているので、次の段階で、ピニオン10gの歯と緩衝ラック30bのラック歯b1とが噛み合い、補助ラック体31が矢印A2方向に移動することとなる。これにより、補助ラック体31の当接面31bがスライドカム部材16の段部16tに当接する。その当接した状態が図37の状態である。
【0112】
図37は、緩衝ラック30bのラック歯がピニオン10gの歯と噛み合い、このピニオン10gの駆動によってスライドカム部材16が摺動し始める瞬間の状態を示す上面図である。図37に示す状態において、ピニオン10gの歯は、緩衝ラック30のラック歯b1及びラック歯b2と噛み合っている。この状態でピニオン10gが回転すると、補助ラック体31の当接面31bが段部16tに当接していることにより、緩衝ラック30bがスライドカム部材16と一体となって、矢印A2方向に移動する。
【0113】
また、スライドカム部材16は、図31に示す状態から図32に示す状態へ遷移する一定の期間、ディスクに押圧されて回動するトリガレバー25の回動力と、ピニオン10gの回転力の2つの力を同時に受ける。この期間において、スライドカム部材16は、トリガレバー25の回動力により摺動される速度と、ピニオン10gの回転力により摺動される速度のうちいずれか速い方の速度で矢印A2方向に移動する。また、前記期間において、ピニオン10gは補助ラック体31の緩衝ラック30bのみと噛み合っている。すなわち、補助ラック体31は、ピニオン10gの回転力のみにより矢印A2方向に移動される。このため、トリガレバー25の回動力によりスライドカム部材16が摺動される速度が、ピニオン10gの回転力によりスライドカム部材16が摺動される速度よりも速い場合、スライドカム部材16の移動速度とピニオン10gに噛み合っている補助ラック体31の移動速度との間に速度差が生じる。補助ラック体31がスライドカム部材16に対して相対的に移動することができない場合、前記速度差によりピニオン10gとラック30との噛み合い部分に過大な負荷が加わり、当該噛み合い部分が破損するおそれがある。また、前記噛み合い部分が破損しなかったとしても、スライドカム部材16の摺動方向と逆方向に働く反力がスライドカム部材16及びトリガレバー25を介してディスクに伝達され、ディスクの搬送動作が阻害される。この場合、駆動しているモータ9に負荷がかかる場合や、ディスクを搬送するゴムローラ6aが空回りしてゴムローラ6aが摩耗する場合が発生する。
【0114】
これに対して、本第1実施形態では、補助ラック体31がバネ31aの付勢力に抗して矢印A1方向に移動することができるので、前記速度差によりピニオン10gとラック30との噛み合い部分に過大な負荷が加わるようなことを抑えることができる。また、駆動源であるモータ9への負荷を軽減できると共に、ディスクを搬送するゴムローラ6aの空回りを抑えることができ、ゴムローラ6aの磨耗を軽減することができる。
【0115】
なお、前記では、バネ31aが弾性変形することにより、緩衝ラック30bが本体ラック30aのラック歯の1ピッチ分移動するものとしたが、本発明はこれに限定されない。補助ラック体31は、本体ラック30aのラック歯の配置ピッチの整数倍のストロークで摺動するように構成すればよい。この構成によっても、ピニオン10gとラック30との噛み合い始めに発生する衝撃を効果的に緩和することができる。
【0116】
次に、図38A及び図38Bを用いて、クラッチプレート11とディスク挿入阻止部材33との関係について説明する。図38Aは、ディスク挿入阻止部材33が下降した状態にあるときのディスク挿入阻止部材33とクラッチプレート11との位置関係を示す斜視図である。図38Bは、ディスク挿入阻止部材33が上昇した状態にあるときのディスク挿入阻止部材33とクラッチプレート11との位置関係を示す斜視図である。
【0117】
ディスク挿入阻止部材33は、図2及び図3より明らかなように、ディスク挿入及び排出用開口部1aの近傍に配置されている。ディスク挿入阻止部材33は、図38に示すように、先端部にディスクの挿入を阻止する阻止片33aを備えている。また、ディスク挿入阻止部材33は、他端部に回動軸33bを備え、回動軸33bを中心として回動可能に取り付けられている。また、ディスク挿入阻止部材33は、クラッチプレート11のカム11dに係合する係合ピン33cを備えている。クラッチプレート11のカム11dは、図30を用いて前述したように、下面カム部11d−1と、傾斜カム部11d−2と、上面カム部11d−3とを有している。
【0118】
ディスク挿入阻止部材33の阻止片33aは、ディスクがターンテーブル13上に装着されていない状態では、図38Aに示すように、下降した状態にある。スライドカム部材16が図38Aに示す状態から矢印A2方向に摺動して、クラッチプレート11が矢印A13方向に回動したとき、ディスク挿入阻止部材33は、係合ピン33cがカム11dにガイドされることより、回動軸33bを中心として矢印A16方向に回動する。図38Bは、ディスク挿入阻止部材33の係合ピン33cが、下面カム部11d−1から傾斜カム部11d−2を通じて上面カム部11d−3まで移動した状態を示している。
【0119】
ディスク挿入阻止部材33の図38Aに示す状態から図38Bに示す状態への状態変化のタイミングは、図31〜図33を用いて前述したスライドカム部材16の摺動によるクラッチプレート11の回動動作に影響される。係合ピン33cは、カム11dにより、図31〜図33に示すように状態が変化する。図38Bは、ディスクがターンテーブル13上に装着された状態を示している。ディスク挿入阻止部材33は、図38Bに示すように上昇した状態にあるとき、他のディスクが開口部1aから筐体300内に挿入されることを阻止する。
【0120】
本第1実施形態にかかるディスク装置によれば、緩衝部として補助ラック体31、バネ31a、及び緩衝ラック30bを有しているので、ピニオン10gとラック30との噛み合い始めに発生する衝撃を緩和することができる。従って、ディスク搬送動作後とディスク装着動作とを連続して行う際にピニオン10g及びラック30などの部品が損傷することを抑えることができる。
【0121】
また、本第1実施形態のディスク装置によれば、伝達経路切換部としてクラッチプレート11を備えているので、トリガレバー25によりスライドカム部材16が移動されるときに、モータ9の駆動力の伝達経路を前記ディスク搬送機構から前記ディスク装着機構により確実に切り換えることができる。
【0122】
また、本第1実施形態にかかるディスク装置によれば、ピニオン10gの歯と最初に噛み合う緩衝ラック30bのラック歯b1,b2の厚みが、当該ラック歯b1,b2以外のラック歯b3〜b6の厚みとピニオン10gの歯a2〜a5の厚みとを合計した厚みとなるように構成されている。この構成により、ラック歯b3〜b6とピニオン10gの歯a2〜a5とが重なりあってそれぞれ1つの大きなラック歯となることができ、モータ9の駆動力を円滑にスライドカム部材16に伝達することができる。
【0123】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態にかかるディスク装置について、図39を用いて説明する。図39は、本発明の第2実施形態にかかるディスク装置のスライドカム部材の上面図である。本第2実施形態にかかるディスク装置が前記第1実施形態にかかるディスク装置と異なる点は、以下の通りである。
【0124】
本第2実施形態のディスク装置は、スライドカム16、補助ラック体31、バネ31a、及び緩衝ラック30bに代えて、スライドカム部材41と弾性部材の一例であるバネ44とを有している。スライドカム部材41は、トリガレバー25のスライドカム押圧部25bにより直接押圧される第1スライドカム体42と、ピニオン10gと噛み合うラック30Aが形成された第2スライドカム体43とを有している。第1スライドカム体42には、第2スライドカム体43に向けて突出するガイド42a,42bが形成されている。ガイド42aの先端部には、突起42cが形成されている。第2スライドカム体43には、ガイド42aの突起42cが係合可能なガイド溝43aが形成されている。第1スライドカム体42と第2スライドカム体43とは、突起42cがガイド溝43aに係合することにより、ガイド溝43aの長さYの範囲で互いに移動可能に嵌合されている。また、第1スライドカム体42と第2スライドカム体43との間には、バネ44を介在させている。バネ44は、第1スライドカム体42と第2スライドカム体43とを互いに離れる方向に付勢している。これにより、第1スライドカム体42と第2スライドカム体43との間には、隙間45が形成されている。
【0125】
第2スライドカム体43のラック30Aは、本体ラック30Aaと、弾性ラック30Acとを有している。本体ラック30Aaは、第2スライドカム体43の本体に一体的に形成されている。本体ラック30Aaの各ラック歯は、ほぼ同一の大きさに形成されている。弾性ラック30Acは、前記第1実施形態の弾性ラック30cと同様に形成されている。
【0126】
なお、スライドカム41は、前述した部分以外は、スライドカム16と同様の構成を有している。すなわち、カム部16mなどの各部16a〜16pが、第1スライドカム体42又は第2スライドカム体43の何れかに形成されている。
【0127】
次に、前記のように構成されるスライドカム41の動作について説明する。
再生可能位置に搬送されるディスクに押圧されてトリガレバー25が回動することにより、トリガレバー25のスライドカム押圧部25bが第1スライドカム体42に形成された第1係合部16b又は第2係合部16cを押圧する。これにより、第1スライドカム体42が矢印A2方向へ移動する。この第1スライドカム体42の移動力は、バネ44を介して第2スライドカム体43に伝達される。図39に示すように第2スライドカム体43の本体ラック30Aaとピニオン10gとが噛み合っていない状態では、第1スライドカム体42と第2スライドカム体43とは、隙間45を維持したまま矢印A2方向にほぼ一体的に移動する。
【0128】
その後、さらに、第1及び第2スライドカム体43が矢印A2方向に移動すると、第2スライドカム体43の本体ラック30Aaがピニオン10gに当接するが、トリガレバー25から伝達される第1スライドカム体42の移動速度が、ピニオン10gから伝達される第2スライドカム体43の移動速度より大きい場合、第2スライドカム体43に矢印A1方向に反力が発生する。この反力がバネ44の付勢力より大きくなると、バネ44が圧縮され、第1スライドカム体42に対して第2スライドカム体43が隙間45を狭めるように矢印A1方向に相対移動する。すなわち、バネ44の第2スライド体43側の部分が第1スライドカム体42の移動方向とは逆方向に第1スライドカム体42に対して相対移動する。この第2スライドカム体43の相対移動により、ピニオン10gとラック30Aとの噛み合い始めに速度差により発生する衝撃を吸収して緩和される。すなわち、バネ44が、ピニオン10gとラック30との噛み合い始めに発生する衝撃を緩和する緩衝部として機能する。
【0129】
なお、第2スライドカム体43の本体ラック30Aaは、ピニオン10gと噛み合わないとき、矢印A1方向に移動する。この移動により、本体ラック30Aaとピニオン10gとが噛み合うと、第2スライド体43は、第1スライドカム体42と一体となって、矢印A2方向に移動する。
【0130】
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、この技術に熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【0131】
2010年3月30日に出願された日本国特許出願No.2010−078337号の明細書、図面、及び特許請求の範囲の開示内容は、全体として参照されて本明細書の中に取り入れられるものである。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明にかかるディスク装置は、ディスク搬送動作とディスク装着動作とを連続して行う際に駆動ギア等の部品が破損することを抑えることができるので、特に、CDやDVD等のディスク状の記録媒体を、トレイを用いずに装置内にローディングするスロットインローディング機構を備えるディスク装置に有用である。
【符号の説明】
【0133】
1 上カバー
2 下カバー
3 防塵カバー
5 ローラベース
6a〜6d ゴムローラ
6e,6f ローラギア
7a,7b ローラアーム
8a〜8c ギア
9 モータ
10a〜10f ギア
10g ピニオン(駆動ギア)
11 クラッチプレート
12 メカシャーシ
13 ターンテーブル
15 トラバース
16,18 スライドカム部材
16a,18a 昇降カム
16b 第1係合部
16c 第2係合部
17 リンクアーム
19 中間シャーシ
21 クランパ
22 アッパーベース
22g 軸孔
24 センタリング部材
24a,24b 大径ディスク用位置決め当接部
24c,24d 小径ディスク用位置決め当接部
24e ガイドカム
25 トリガレバー
25a ディスク検出部
25b スライドカム押圧部
25c 回動軸部
26 ガイドレバー
30 ラック
30a 本体ラック
30c 弾性ラック
31 補助ラック体
31a バネ
30b 緩衝ラック
a1〜a5 本体ラックのラック歯
b1〜b6 緩衝ラックのラック歯
c1 弾性ラックのラック歯
41 スライドカム部材
42 第1スライドカム体
43 第2スライドカム体
44 バネ(弾性部材)
100 大径ディスク
200 小径ディスク
300 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクを再生可能位置に搬送するディスク搬送機構と、
前記再生可能位置に搬送されたディスクを、再生可能なクランプ状態にするためにターンテーブル上に装着するディスク装着機構と、
前記ディスク搬送機構及びディスク装着機構を駆動する駆動力を発生する駆動源と、
前記駆動源で発生した駆動力が前記ディスク搬送機構又は前記ディスク装着機構に伝達されるように前記駆動力の伝達経路を切り換える伝達経路切換機構と、
を備え、
前記ディスク装着機構は、
前記駆動源で発生した駆動力が伝達されることにより回転する駆動ギアと、
前記駆動ギアと噛み合うラックを有し、前記駆動ギアと前記ラックとが噛み合った状態で前記駆動ギアが回転することによって移動されるスライドカム部材と、
前記ディスク搬送機構により前記ディスクが前記再生可能位置に搬送されて前記駆動ギアと前記ラックとが噛み合うように前記スライドカム部材が移動されたとき、当該ディスクの搬送によって移動するスライドカム部材の移動方向に対し、少なくとも前記駆動ギアと噛み合う噛み合い始めのラックを逆方向に相対移動可能とする緩衝部と、を有する、
ディスク装置。
【請求項2】
前記ディスク搬送機構により搬送されるディスクに当接して押圧されることにより回動し、当該回動により前記駆動ギアと前記ラックとが噛み合うように前記スライドカム部材を移動させるトリガ部材を有し、
前記伝達経路切換機構は、前記トリガ部材により前記スライドカム部材が移動されるとき、前記駆動源の駆動力が前記ディスク搬送機構に伝達される状態から前記ディスク装着機構に伝達されるように前記駆動力の伝達経路を切り換える、請求項1に記載のディスク装置。
【請求項3】
前記緩衝部は、
前記スライドカム部材に摺動可能に設けられた補助ラック体と、
前記スライドカム部材に設けられた本体ラックと共に前記ラックを構成するように前記補助ラック体に設けられた緩衝ラックと、
前記駆動ギアの歯と最初に噛み合うラック歯が前記緩衝ラックのラック歯となるように前記補助ラック体を付勢する弾性部材と、
を有し、
前記駆動ギアと前記緩衝ラックとが噛み合うように前記スライドカム部材が移動されたとき、前記補助ラック体が前記弾性部材の付勢力に抗して当該スライドカム部材の移動方向とは逆方向に摺動することにより、前記駆動ギアと前記緩衝ラックとの噛み合い始めに発生する速度差を吸収して衝撃を緩和する、請求項1又は2に記載のディスク装置。
【請求項4】
前記緩衝ラックは、前記駆動ギアの歯と最初に噛み合うラック歯の厚みが、当該最初に噛み合うラック歯以外のラック歯の厚みと当該ラック歯と対向する前記本体ラックに形成したラック歯の厚みとを合計した厚みとなるように構成されている、請求項3に記載のディスク装置。
【請求項5】
前記補助ラック体は、前記ラックの歯の配置ピッチの整数倍のストロークで摺動する、請求項4に記載のディスク装置。
【請求項6】
前記スライドカム部材は、前記トリガ部材に押圧される第1スライドカム部と、前記ラックが形成された第2スライドカム部とで構成され、当該両スライドカム部が前記緩衝部により連結されており、
前記緩衝部は、前記第2スライドカム部のラックが前記駆動ギアと噛み合う噛み合い始めに、前記ディスクの搬送によって移動する第1スライドカム部の移動方向に対し、前記第2スライドカム部を逆方向に相対移動可能とする、請求項2に記載のディスク装置。
【請求項7】
前記緩衝部は、弾性部材で構成されている、請求項6に記載のディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24A】
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【図24B】
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【図25】
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【図26A】
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【図26B】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34A】
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【図34B】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38A】
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【図38B】
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【図39】
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