説明

ディスク装置

【課題】 ディスクの挿入を待機するときに閉鎖姿勢となる可動部材が設けられており、車体振動などで前記可動部材ががたつき音を発生するのを防止できる「ディスク装置」を提供することを目的とする。
【解決手段】 ディスクの搬入経路を閉鎖する閉鎖姿勢から搬入経路から外れる退避姿勢となる可動部材50が設けられている。可動部材50の軸体52は、中空部52bを有するとともに、外周面52aに回動側突部53が形成されている。軸受板60に軸受穴61が開口しており、軸受穴61には内周面61aから突出する固定側突部62が形成されている。可動部材50が閉鎖姿勢に回動しているとき、回動側突部53が固定側突部62に乗り上がって、軸体52のがたつきが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿入口から筐体内にディスクが挿入されるディスク装置に係り、特に、筐体内に、ディスクの検知を行い、あるいは挿入口を閉鎖する可動部材が設けられているディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用などとして使用されるいわゆるスロットインタイプのディスク装置は、筐体にスリット状に開口する挿入口が設けられ、挿入口から一枚ずつディスクが挿入される。挿入口から挿入されたディスクは、搬送機構によって搬送され、筐体の内部に設けられたターンテーブルにクランプされて、ターンテーブルと共に回転駆動可能となる。あるいは、筐体の内部に複数枚のディスクを収納するディスク収納部が設けられており、搬送機構によって搬入されたディスクがディスク収納部内に保持される。
【0003】
以下の特許文献1に記載されたディスク装置は、筐体に設けられた挿入口と搬送機構との間に可動部材が設けられている。ディスクが挿入されていないときは、可動部材がディスクの搬入経路を塞ぐ閉鎖姿勢となっており、挿入口からディスクが挿入されると、可動部材がディスクに押されて退避姿勢へ回動させられる。退避姿勢に回動した可動部材によって検知スイッチが動作させられて、ディスクが挿入されたことが検知される。その後、切換え機構が動作し、可動部材が前記退避姿勢で保持される。
【0004】
また、ディスク装置として、筐体の挿入口の内側に可動部材である蓋体が設けられているものがある。ディスクが挿入されていないときは、挿入口が蓋体で塞がれており、ディスクが挿入口から挿入されると、ディスクに押されて蓋体が筐体の内側に向けて回動し、挿入口が開放される。あるいはディスクを挿入する前に操作釦を押すと、筐体内の切換え機構が動作して、蓋体が開放させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−3334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ディスクの挿入を検知するための可動部材や、挿入口を閉鎖するための可動部材は、ディスクの挿入を待機するときに、ディスクの搬送経路を塞ぐ閉鎖姿勢となっており、通常はばね部材によって閉鎖姿勢に付勢されている。
【0007】
可動部材が閉鎖姿勢のときに、車体振動などの外部振動が与えられると、可動部材の軸体を支持する軸受部において、軸体がラジアル方向やスラスト方向に振動してがたつき音を発生しやすくなり、使用者にとって耳障りとなる。
【0008】
このがたつき音を抑制するには、可動部材を閉鎖姿勢に設定するばね部材のばね力を大きく設定すればよい。しかし、ばね力を大きくすると、可動部材を退避姿勢に向けて回動させる際に過大な力が必要になり、また、過大なばね力によって可動部材が変形しやすくなるなどの不都合が生じる。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、可動部材が閉鎖状態のときに軸受部で発生する振動を抑制することができるディスク装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、挿入口を有する筐体と、前記挿入口から挿入されたディスクを筐体の内部へ搬送する搬送機構と、が設けられたディスク装置において、
前記筐体内で、ディスクの搬送経路を遮る閉鎖姿勢と搬送経路から外れる退避姿勢の間で回動する可動部材が設けられ、前記可動部材は、両端部に設けられた軸体が軸受穴に挿入されて、閉鎖姿勢から退避姿勢へ回動できるように支持されており、
前記軸体の外周面に回動側突部が、前記軸受穴の内周面に固定側突部が設けられ、前記可動部材が閉鎖姿勢のときに、前記回動側突部と前記固定側突部とが当接して、前記軸体のラジアル方向のがたつきが規制されることを特徴とするものである。
【0011】
さらに、本発明は、前記回動側突部と前記固定側突部との少なくとも一方に、前記軸体の軸方向に向かって徐々に突出量が低下する軸方向傾斜部が設けられており、前記可動部材が閉鎖姿勢のときに、前記回動側突部と前記固定側突部とが前記軸方向傾斜部を介して当接して、前記軸体のラジアル方向のがたつきとスラスト方向のがたつきの双方が規制されるものである。
【0012】
本発明では、前記回動側突部と前記固定側突部は、軸体の回転方向に向けて複数個設けられているものが好ましい。
【0013】
本発明は、前記可動部材を閉鎖姿勢に付勢するばね部材が設けられているものとして構成できる。
【0014】
この場合に、前記可動部材が閉鎖姿勢に回動したときに、前記ばね部材の付勢力によって、前記回動側突部が前記固定側突部に乗り上がる構造とすることが好ましい。
【0015】
また、前記回動側突部を有する部分の厚さ寸法が、前記軸体の他の部分よりも薄く形成されていると、軸体の一部が弾性変形しやすくなって、回動側突部が固定側突部に乗り上がりやすくなる。
【0016】
本発明は、前記可動部材が退避姿勢となったときに動作する検知部が設けられ、この検知部の動作によって、挿入口からディスクが挿入されたことを認識するものである。あるいは、前記可動部材は、閉鎖姿勢のときに前記挿入口を塞ぐ蓋体である。
【発明の効果】
【0017】
本発明のディスク装置は、筐体に回動自在に設けられた可動部材の軸受部に回動側突部と固定側突部を設けることで、閉鎖姿勢の可動部材が外部振動でがたつくのを抑制できるようになる。そのため、ディスクの挿入を待機しているときなどに、可動部材の振動音が発生するのを防止できる。
【0018】
軸受部の構造だけで可動部材のがたつきを抑制できるので、筐体内に特別な機構部品を配置する必要がなく、機構が複雑になることもない。また、可動部材を閉鎖姿勢に付勢するために大きなばね力を与えることが不要になるので、可動部材を回動させる際の負荷を低減でき、過大なばね力で部品が変形するのを防ぐこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態のディスク装置の全体構造を示す斜視図、
【図2】図1に示すディスク装置の右側面図、
【図3】可動部材の動作を示す拡大断面図であり、(A)は可動部材が閉鎖姿勢であり、(B)は可動部材が退避姿勢、
【図4】可動部材の軸受部を拡大して示す斜視図、
【図5】可動部材の軸体を拡大して示す斜視図、
【図6】軸受穴と軸体との挿入部を拡大して示す側面図、
【図7】軸受穴と軸体との挿入部を拡大して示す断面図、
【図8】本発明の第2の実施の形態のディスク装置を示す側面図、
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1以下に示す第1の実施の形態のディスク装置は、DVD(デジタルバーサタイルディスク)やCD(コンパクトディスク)などの直径が12cmの真円形のディスクDが装填可能である。
【0021】
図3に示すように、ディスク装置は、金属板から形成された筐体1を有している。車載用のディスク装置の場合、筐体1の大きさは、例えば1DINサイズまたは1/2DINサイズであり、筐体1は自動車の車室内のインストルメントパネルに埋設して設置される。
【0022】
筐体1は、Y1側に向く前面板2と、天井板3および底板4と、Y2側に向く後面板と、図3の紙面に直交するX1側とX2側に向く側面板を有している。前面板2には、左右方向(X1−X2方向)に向けて細長い挿入口5が開口している。筐体1の前面板2の前方に、合成樹脂で形成された化粧ノーズが取り付けられており、この化粧ノーズの前面に各種操作部材や表示装置が設けられている。化粧ノーズには、挿入口5に連通するノーズ部挿入口が開口しており、このノーズ部挿入口と前面板2に形成された挿入口5を経て、ディスクDが筐体1の内部に向けて挿入される。
【0023】
筐体1の内部に図1と図2に示す機構ユニット10が収納されている。機構ユニット10は底部側にドライブベース11を有し、上部側にクランプベース12を有している。ドライブベース11とクランプベース12は共に金属板を折り曲げて形成されている。ドライブベース11には、Y2側においてX1方向とX2方向へ延びる連結軸13が設けられており、クランプベース12のY2側の端部が、連結軸13に回動自在に支持されている。
【0024】
図1と図2に示すように、筐体1の内部には、ドライブベース11を弾性的に支持する複数のダンパー15aが設けられている。これらダンパー15aは、弾性体の袋の内部にオイルが封入されて構成されている。ダンパー15aは、筐体1の内面に固定されており、ドライブベース11に固定された支持軸がそれぞれのダンパー15aに支持されている。機構ユニット10にディスクDが装填された後は、ドライブベース11が、ダンパー15aに弾性支持された状態で、ディスクDが回転駆動される。
【0025】
図2に示すように、ドライブベース11のY1側には、回転駆動部20が設けられている。回転駆動部20は、ドライブベース11の上に固定されたスピンドルモータと、スピンドルモータの回転軸に固定された合成樹脂製のターンテーブル23を有している。
【0026】
図1に示すように、ドライブベース11には光ヘッド25が搭載されている。光ヘッド25は、ドライブベース11に設けられたガイド機構によって移動自在に支持されているとともに、光ヘッド25を前記ガイド機構に沿って往復移動させるスレッド機構が設けられている。光ヘッド25は、スレッド機構によって、ターンテーブル23にクランプされたディスクDの記録面に沿って、ディスクDの半径方向に向けて移動させられる。
【0027】
図1に示すように、クランプベース12のY1側の端部には、合成樹脂製のクランパ27が回動自在に支持されているとともに、クランパ27の回転軸を下方(Z2方向)へ押圧する板ばね26が設けられている。
【0028】
図1と図2に示すように、ドライブベース11のY2側の端部にはX1方向へ突出する突出片12aが一体に形成され、この突出片12aに、トーションコイルばね17が取り付けられている。トーションコイルばね17の一方の腕部は、ドライブベース11に掛けられ、他方の腕部がクランプベース12に掛けられて、クランプベース12が、連結軸13を支点として、反時計方向へ常に付勢されている。すなわち、クランプベース12は、クランパ27がターンテーブル23に押圧されるように常に回動付勢されている。
【0029】
図2に示すように、クランプベース12のY1側の端部には、X1方向へ突出する持ち上げ軸18が固定されている。この持ち上げ軸18に上方(Z1方向)への力を与えると、クランプベース12がトーションコイルばね17の付勢力に対抗して時計方向へ回動させられ、クランパ27がターンテーブル23から離れる。
【0030】
図1や図5などに示すように、クランプベース12の左右の側方には、下方に向けて突出する一対のストッパ部材16a,16bが形成されている。ストッパ部材は、金属製のピンであり、筐体1の内部に搬入されたディスクDの外周縁が、ストッパ部材16a,16aに当たったときに、ディスクDはその中心がターンテーブル23の中心に一致するように位置決めされて装填完了位置に至る。
【0031】
図1に示すように、ドライブベース11には、X1側に右側方スライダ30aが設けられ、X2側に左側方スライダ30bが設けられている。図1に示すように、右側方スライダ30aには前後方向(Y1−Y2方向)に延びる案内長穴31が開口し、ドライブベース11に案内軸19が固定されている。案内長穴31と案内軸19は、ひとつの右側方スライダ30aに複数組設けられているが、図1では1組のみ図示している。案内長穴31が案内軸19を摺動することで、右側方スライダ30aがY1−Y2方向へ往復移動可能である。同様に、左側方スライダ30bも、ドライブベース11のX2側の側部において前後方向へ往復移動可能に支持されている。
【0032】
ドライブベース11の左後方にモータMが設けられており、このモータMの動力によって左側方スライダ30bが前後方向へ駆動される。左側方スライダ30bと右側方スライダ30aはリンク機構で連結されており、左側方スライダ30bがモータMの動力によってY1−Y2方向に移動させられると、その移動力が右側方スライダ30aに伝達され、右側方スライダ30aと左側方スライダ30bとが同期してY1−Y2方向の同じ方向へ移動させられる。図1と図2に示す待機状態では、右側方スライダ30aと左側方スライダ30bが、共に後方(Y2方向)へ移動させられている。
【0033】
機構ユニット10のY2側には、図示しないトリガー部材が設けられている。直径が12cmのディスクDがストッパ部材16a,16bに当たる装填完了位置まで搬入されると、このディスクDの外周縁でトリガー部材が押し込まれる。このときのトリガー部材の回動力で、歯車機構が動作し、モータMの動力が、左側方スライダ30bにY1方向への直線移動力として伝達され、右側方スライダ30aと左側方スライダ30bが同期してY1方向へ移動させられる。
【0034】
右側方スライダ30aと左側方スライダ30bは同じ機能を発揮するものであり、左側方スライダ30bの形状および構造は、右側方スライダ30aと同等である。
【0035】
図1に示すように、右側方スライダ30aにはクランプ制御カム部32が設けられている。クランプ制御カム部32は、前方(Y1方向)に向かうにしたがって上方(Z1方向)へ向けられるカム長穴32aと、このカム長穴32aとY2側で連続する大きな直径の逃げ穴部32bを有している。クランプベース12に設けられた持ち上げ軸18は、カム長穴32aと逃げ穴部32bの内部を移動できるように挿入されている。
【0036】
図1に示す待機状態では、右側方スライダ30aが後方(Y2方向)へ移動しているため、カム長穴32aによって持ち上げ軸18がZ1方向へ持ち上げられている。このとき、クランプベース12が時計方向へ回動させられ、クランパ27がターンテーブル23から上方へ離れたクランプ解除状態に設定されている。ディスクDが装填完了位置まで搬送され、右側方スライダ30aが前方(Y1方向)へ移動させられると、持ち上げ軸18が、逃げ穴部32b内に移動する。このとき、クランプベース12がトーションコイルばね17の弾性力によって反時計方向へ回動し、クランパ27によってディスクDの中心部がターンテーブル23に押し付けられ、ディスクDがターンテーブル23にクランプされる。
【0037】
図1に示すように、右側方スライダ30aにはロックカム部33が設けられている。このロックカム部33は、前後方向に延びるロック長穴33aと、ロック長穴33aのY2側に連続する大きな直径の逃げ穴部33bとを有している。
【0038】
図1に示す待機状態では、右側方スライダ30aがY2方向へ移動しているため、筐体1の左右の側面板の内面に固定された拘束軸(図示せず)が、ロック長穴33a内に保持されている。よって、機構ユニット10は、筐体1の内側において動くことなく拘束されている。右側方スライダ30aがY1方向へ移動すると、クランパ27が下降してディスクDの中心部がクランプされるとともに、ロック長穴33aが前記拘束軸から外れ、拘束軸が逃げ穴部33bに移動する。その結果、機構ユニット10は筐体1内で拘束されずに、ダンパー15aによって弾性支持される。ターンテーブル23にクランプされたディスクDが回転駆動される間に、外部振動がダンパー15aの振動として吸収されやすくなり、機構ユニット10に直接に影響を及ぼすことが防止される。
【0039】
図1ないし図3に示すように、挿入口5と回転駆動部との間に搬送機構40が設けられている。
【0040】
搬送機構40は、搬送ローラ41と、搬送ローラ41のZ1側に対向する固定部材43とを有している。固定部材43は、摩擦係数の小さい合成樹脂材料で形成されて、筐体1の天井板3の下面に動かないように固定されている。
【0041】
搬送ローラ41は、合成ゴムなどの摩擦係数の大きな材料で形成されている。
搬送ローラ41はX1側とX2側に分かれて2個設けられており、それぞれの搬送ローラ41,41が、金属製のローラ軸42の外周に装着されている。図3に示すように、左右の搬送ローラ41,41の中間部分は搬送ローラが設けられておらず、ローラ軸42が露出している。
【0042】
図1と図2に示すように、機構ユニット10のY1側にローラブラケット44が設けられている。ローラブラケット44は金属板で形成され、Y1側の端部に支持穴44eが開口している。筐体1の左右の側面板のそれぞれの内面に短い一対の支持軸45,45が固定されており、支持穴44eがそれぞれの支持軸45,45に支持されて、ローラブラケット44が支持軸45,45を支点として回動自在に支持されている。ローラブラケット44と筐体の底板との間に引っ張りコイルばね(図示せず)が掛けられており、ローラブラケット44が常に図2において反時計方向へ付勢されている。
【0043】
ローラブラケット44のY2側の端部に保持穴44gが形成され、ローラ軸42の左右両端部が、それぞれ保持穴44gに回転自在に挿入されている。図1に示すように、ディスクDの挿入を待つ待機状態では、引っ張りコイルばねの弾性力でローラブラケット44が反時計方向へ付勢されており、この付勢力によって、ローラ軸42が固定部材43に押し付けられている。
【0044】
ローラ軸42のX2側の端部にピニオン歯車が固定され、筐体1の左側(X2側)の側面板の内側に、モータMからの回転動力をピニオン歯車に伝達する歯車機構が設けられている。図1と図2に示すディスクDの挿入待機状態から、ディスクDが所定の装填完了位置まで搬入されるまでの間は、モータMの回転力がピニオン歯車に伝達されて、ローラ軸42がディスクDを搬入する方向へ連続回転する。
【0045】
挿入口5を有する前面板2と搬送機構40との間に、可動部材50が設けられている。可動部材50は、固定部材43と同じ低摩擦係数の合成樹脂材料で形成されており、その下面は平滑な可動案内部51である。
【0046】
筐体1を構成する金属板の一部または筐体1の内部に設けられた金属板によって、図4に示す軸受板60が形成されている。軸受板60は、X1側とX2側の双方に互いに対称に設けられているが、図4では、X1側に位置する軸受板60のみが示されている。軸受板60に軸受穴61が形成されている。可動部材50の先部(Y1側)に、X1方向とX2方向へ突出する短い軸体52,52が一体に形成されており、軸体52,52が、X1側とX2側に設けられた軸受穴61,61にそれぞれ回動自在に支持されている。
【0047】
可動部材50は、軸体52,52を支点として図3(A)に示す閉鎖姿勢と図3(B)に示す退避姿勢との間で回動自在である。図3(A)に示す閉鎖姿勢では、挿入口5から挿入されるディスクDの搬送経路が可動部材50で遮られており、図3(B)に示す退避姿勢では、可動部材50が搬送経路から外れ、ディスクDを筐体1の内部に搬入できるようになる。
【0048】
図1に示すように、固定部材43の上面に板ばねで形成されたばね部材58が設けられ、可動部材50が、ばね部材58の弾性押圧部58aによってZ2方向へ付勢されている。可動部材50は、外力が与えられていないときに、図3(A)に示す閉鎖姿勢に向けて常に付勢されていることになる。
【0049】
図6に示すように、軸体52の外周面52aは円筒面であり、軸受穴61の内周面61aも円筒面である。軸体52の外周面52aの直径寸法は、軸受穴61の内周面61aの内径寸法よりもわずかに短く、軸体52が軸受穴61の内部で自由に回転できるようになっている。
【0050】
軸体52は、合成樹脂材料によって可動部材50の一部として一体に形成されている。図4ないし図6に示すように、軸体52は、中空部52bを有して薄肉に形成されている。さらに、軸体52には、軸方向に延びる一対のスリット状の切欠き部52c,52cが設けられている。
【0051】
切り欠き部52c,52cで分離された2つの部分のそれぞれに、外周面52aから半径方向へ隆起する回動側突部53,53が形成されている。2つの回動側突部53,53は互いに180度の角度に配置されている。それぞれの回動側突部53,53は合成樹脂材料によって軸体52と一体に形成されている。回動側突部53,53は、軸方向に延びる突条である。回動側突部53,53の端部、すなわち軸体52の端面に向けられた端部に、軸方向傾斜部54,54が形成されている。軸方向傾斜部54,54は、軸体52の軸方向に向けて外周面52aからの隆起高さが徐々に低くなる傾斜面である。この傾斜面は、平面的な傾斜面であってもよいし、曲面形状の傾斜面であってもよい。
【0052】
図4と図6に示すように、軸受穴61の内周面61aに一対の固定側突部62,62が形成されている。軸受穴61は、軸受板60を構成する金属板を打ち抜いて形成されるが、この打ち抜きの際に金属板の一部が残されて固定側突部62,62が一体に形成される。固定側突部62,62は打ち抜き工程で形成されるので、軸受穴61の内周面61aにおいて穴の軸方向の全長にわたって延びている。
【0053】
図7の断面図に示すように、軸体52が軸受穴61に挿入されると、回動側突部53,53の軸方向傾斜部54,54の部分が軸受穴61の内部に入り込んでいる。
【0054】
図3に示すように、可動部材50が閉鎖姿勢のときに、図6(A)に示すように、軸体52に形成された回動側突部53が、軸受穴61の固定側突部62に当接している。可動部材50には、図1に示すばね部材58のばね力が作用しており、軸体52に時計方向への付勢力が作用している。その結果、図6(A)および図7に示すように、回動側突部53の主に軸方向傾斜部54が、固定側突部62の内側端部62aに乗り上がる。
【0055】
軸体52は合成樹脂材料で形成され、回動側突部53が形成された部分が薄肉になっているため、回動側突部53の主に軸方向傾斜部54が固定側突部62に当たったときに、薄肉部部がやや弾性変形でき、軸方向傾斜部54が固定側突部62に乗り上がりやすくなる。
【0056】
図3(A)に示すように、可動部材50には、Y2方向へ突出するストッパ56が一体に形成されている。図6(A)と図7に示すように、回動側突部53が固定側突部62に乗り上がったときに、ストッパ56が、搬送機構40の左右の搬送ローラ41の間に露出しているローラ軸42の表面に接触するか、わずかに対向する。すなわち、ストッパ56がローラ軸42にわずかに接触している。なお、ローラ軸42以外に、ストッパ56がわずかに接触する当接部を設けてもよい。
【0057】
そのため、図6(A)の状態から、軸体52がさらに時計方向へ回動するのを防止でき、回動側突部53が固定側突部62に乗り上がった状態を維持できるように構成されている。
【0058】
図6(A)に示すように、回動側突部53が固定側突部62に乗り上がるように当接することにより、軸受穴61の内部において軸体52がラジアル方向へがたつきを生じるのを防止できる。また、図7に示すように、回動側突部53の軸方向傾斜部54が固定側突部62の内側端部62aに乗り上がるように当接することにより、軸体52のスラスト方向のがたつきが発生するのを防止できる。
【0059】
したがって、図1ないし図3に示すように、ディスクDの挿入を待機しているときに、車体振動などの外部振動が作用したとしても、可動部材50が軸受穴61の内部でラジアル方向とスラスト方向へ振動するのを防止でき、がたつき音の発生を抑制できる。
【0060】
軸体52の外周面52aからの回動側突部53の突出高さ寸法と、軸受穴61の内周面61aからの固定側突部62の突出高さ寸法はわずかであり、高さ寸法は1mm以下、好ましくは0.5mm以下である。そのため、図1に示すばね部材58のばね力を過大にしなくても、図6(A)と図7に示すように、回動側突部53を固定側突部62に乗り上げさせて、軸体52のラジアル方向とスラスト方向のがたつきを抑制することが可能になる。
【0061】
したがって、可動部材50を図3(B)に示す退避位置へ回動させるときのばね力による回動負荷を最小にでき、図6(B)に示すように、軸体52に設けられた回動側突部53を固定側突部62から軽い力で容易に離脱させることができるようになる。
【0062】
なお、前記実施の形態とは逆に、軸受穴61に形成された固定側突部62の端部に、軸方向に向かうに従って内周面61aからの隆起高さが徐々に低くなる軸方向傾斜部が形成され、図6(A)に示す閉鎖姿勢のときに、回動側突部53の端部が、前記軸方向傾斜部に乗り上がってもよい。
【0063】
また、回動側突部53は図4と図5に示すように軸方向に長く形成することは必ずしも必要ではなく、ほぼ軸方向傾斜部54のみから成る短い突部を形成してもよい。
【0064】
図3に示すように、筐体1の天井板3の下面に検知部材である検知スイッチS1が固定されている。検知スイッチS1のアクチュエータSaは、斜め下向きに延びて、可動部材50の上面に対向している。図3(A)に示すように、可動部材50が時計方向へ回動した閉鎖姿勢のときは、アクチュエータSaが押されておらず、検知スイッチS1がOFFである。図3(B)に示すように、可動部材50が反時計方向へ回動して退避姿勢になると、可動部材50の上面によってアクチュエータSaが押されて、検知スイッチS1がONに切り換えられる。
【0065】
図1に示すように、可動部材50の後端部(Y2側の端部)には、X1方向とX2方向へ突出する持ち上げ突部55,55が一体に形成されている。
【0066】
図1に示すように、右側方スライダ30aのY1側には、ローラ制御カム部34が設けられている。ローラ制御カム部34は、上側に形成された上側案内部34aと、それよりもY2側で且つ下側に形成された下側拘束部34bと、上側案内部34aと下側拘束部34bとに連続する傾斜案内穴34cとを有している。ローラ軸42のX1側の端部は、ローラ制御カム部34に摺動自在に挿入されている。
【0067】
右側方スライダ30aのY1側の端部には、案内制御カム部35が形成されている。案内制御カム部35は、Y1側の持ち上げ案内部35aとY2側に延びる保持案内部35bとを有している。持ち上げ案内部35aは、後方(Y2方向)へ向かうにしたがって徐々に上向きになる傾斜面であり、保持案内部35bは、Y1−Y2方向へ延びる水平な平面である。可動部材50に設けられた持ち上げ突部55が案内制御カム部35で案内されて、可動部材50の姿勢が制御される。
【0068】
次に、上記ディスク装置の動作を説明する。
図1と図2および図3(A)に示すように、ディスクDが挿入される前のディスク挿入待機状態では、右側方スライダ30aと左側方スライダ30bの双方がY2方向へ移動している。右側方スライダ30aに設けられたクランプ制御カム部32のカム長穴32aによって持ち上げ軸18が持ち上げられ、クランプベース12が時計方向へ回動させられて、クランパ27がターンテーブル23から上方へ離れている。
【0069】
ローラ軸42の右端部は、右側方スライダ30aに形成されたローラ制御カム部34の上側案内部34aに案内され、引っ張りコイルばねからローラブラケット44に作用する弾性力により、搬送ローラ41が固定部材43に圧接させられている。また、右側方スライダ30aのY1側の端部の持ち上げ案内部35aが持ち上げ突部55から離れており、可動部材50が自重およびばね部材58のばね力によって時計方向へ回動して、図3(A)に示す閉鎖姿勢となっている。
【0070】
このとき、図6(A)および図7に示すように、回動側突部53,53の軸方向傾斜部54,54が、固定側突部62,62に乗り上がっており、軸体52のラジアル方向とスラスト方向のがたつきが防止されている。
【0071】
挿入口からディスクDがY2方向へ挿入されると、ディスクDのY2側に向く周縁部によって可動部材50が押され、可動部材50が図3(B)に示す退避姿勢へ回動させられる。このとき、可動部材50の上面でアクチュエータSaが持ち上げられて、検知部材である検知スイッチS1の出力がOFFからONに切り替えられる。
【0072】
図示しない制御回路では、検知スイッチS1の出力がOFFからONに切り替えられると、モータMを始動する。モータMの動力はローラ軸42に伝達され、ローラ軸42と搬送ローラ41がディスク搬入方向へ回転し始める。
【0073】
ディスクDのY2側の周縁部は、搬送ローラ41と固定部材43との間に導かれ、ローラ軸42の回転力によって筐体1の内方へ向けて搬入される。
【0074】
ディスクDが一対のストッパ部材16a,16bに当たって正常な搬入完了位置に至ると、ディスクDによってトリガー部材が動作させられ、モータMの動力が左側方スライダ30bに伝達されて、右側方スライダ30aと左側方スライダ30bが同期してY1方向へ移動しはじめる。
【0075】
この過程で、図1に示す右側方スライダ30aに設けられたクランプ制御カム部32のカム長穴32aによって持ち上げ軸18が下方へ案内されて逃げ穴部32bに移動させられる。よって、クランプベース12が、トーションコイルばね17の付勢力によって、連結軸13,13を支点として反時計方向へ回動させられ、クランパ27がターンテーブル23に向けて下降する。
【0076】
上記のクランプベース12の反時計方向への回動動作とほぼ同時に、ローラ軸42の右端部が、右側方スライダ30aに設けられたローラ制御カム部34の上側案内部34aから傾斜案内穴34cへ案内され、さらに下側拘束部34bで拘束される。これにより、ローラブラケット44が時計方向へ回動させられて、ローラ軸42および搬送ローラ41が下降させられる。搬送ローラ41の上に乗っているディスクDは、搬送ローラ41と共に下降し、ディスクDの中心穴が、ターンテーブル23とクランパ27とで挟持されて、ディスクDがクランプされる。
【0077】
ローラ制御カム部34の下側拘束部34bによって、搬送ローラ41がディスクDから下側へ離れた位置に拘束された後に、さらに右側方スライダ30aがY1方向へ移動すると、右側方スライダ30aのY1側の端部に設けられた案内制御カム部35の持ち上げ案内部35aで持ち上げ突部55が持ち上げられさらに保持案内部35bで保持される。その結果、可動部材50が反時計方向へ回動させられ図3(A)に示す退避姿勢で保持される。
【0078】
図8に示す第2の実施の形態のディスク装置は、筐体1の内部に、搬送ローラ41とローラ軸42および固定部材43を有する搬送機構40が設けられている。
【0079】
筐体1に開口する挿入口5と搬送機構40の間に可動部材150が設けられている。可動部材150の軸体152は、筐体1側に設けられた軸受穴に回動自在に支持されているが、軸体152と軸受穴の構造は、図4ないし6に示す軸体52および軸受穴61と同じである。
【0080】
可動部材150は、挿入口5を閉鎖する蓋体であり、ディスクDの挿入を待機するときは、図8に示すように、挿入口5を内側から閉鎖する閉鎖姿勢となっている。この閉鎖姿勢のときに、図6(A)と図7に示すように、回動側突部53が固定側突部62に乗り上がって、軸体152のラジアル方向とスラスト方向のがたつきが防止されている。
【0081】
ディスクDによって可動部材150が押されると、可動部材150が内側へ回動して退避姿勢となり、ディスクDの搬入が可能になる。または、外部からディスクを挿入するための操作釦を押したときに、切換え機構が動作して、可動部材150が図8に示す閉鎖姿勢から退避姿勢へ回動させられてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 筐体
5 挿入口
20 回転駆動部
23 ターンテーブル
27 クランパ
30a 左側方スライダ
30b 右側方スライダ
40 搬送機構
41 搬送ローラ
43 固定部材
50 可動部材
51 可動案内部
52 軸体
52a 外周面
53 回動側突部
54 軸方向傾斜部
60 軸受板
61 軸受穴
61a 内周面
62 固定側突部
S1 検知スイッチ(検知部材)
D ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入口を有する筐体と、前記挿入口から挿入されたディスクを筐体の内部へ搬送する搬送機構と、が設けられたディスク装置において、
前記筐体内で、ディスクの搬送経路を遮る閉鎖姿勢と搬送経路から外れる退避姿勢の間で回動する可動部材が設けられ、前記可動部材は、両端部に設けられた軸体が軸受穴に挿入されて、閉鎖姿勢から退避姿勢へ回動できるように支持されており、
前記軸体の外周面に回動側突部が、前記軸受穴の内周面に固定側突部が設けられ、前記可動部材が閉鎖姿勢のときに、前記回動側突部と前記固定側突部とが当接して、前記軸体のラジアル方向のがたつきが規制されることを特徴とするディスク装置。
【請求項2】
前記回動側突部と前記固定側突部との少なくとも一方に、前記軸体の軸方向に向かって徐々に突出量が低下する軸方向傾斜部が設けられており、前記可動部材が閉鎖姿勢のときに、前記回動側突部と前記固定側突部とが前記軸方向傾斜部を介して当接して、前記軸体のラジアル方向のがたつきとスラスト方向のがたつきの双方が規制される請求項1記載のディスク装置。
【請求項3】
前記回動側突部と前記固定側突部は、軸体の回転方向に向けて複数個設けられている請求項1または2記載のディスク装置。
【請求項4】
前記可動部材を閉鎖姿勢に付勢するばね部材が設けられている請求項1ないし3のいずれかに記載のディスク装置。
【請求項5】
前記可動部材が閉鎖姿勢に回動したときに、前記ばね部材の付勢力によって、前記回動側突部が前記固定側突部に乗り上がる請求項4記載のディスク装置。
【請求項6】
前記回動側突部を有する部分の厚さ寸法が、前記軸体の他の部分よりも薄く形成されている請求項4または5記載のディスク装置。
【請求項7】
前記可動部材が退避姿勢となったときに動作する検知部が設けられ、この検知部の動作によって、挿入口からディスクが挿入されたことを認識する請求項1ないし6のいずれかに記載のディスク装置。
【請求項8】
前記可動部材は、閉鎖姿勢のときに前記挿入口を塞ぐ蓋体である請求項1ないし6のいずれかに記載のディスク装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−119036(P2012−119036A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268354(P2010−268354)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】