説明

ディスク装置

【課題】 筐体に挿入されるディスクに帯電している電荷が、光学検知素子や導電部に放電されるのを防止できるディスク装置を提供する。
【解決手段】 搬送ローラ15とでディスクDを挟持する摺動部材20が、筐体2の天井板2dの下側に固定されている。天井板2dには、摺動部材20を保持する突起部8が折り曲げられており、突起部8の先端部8aが、光学検知素子31aよりも下に突出し、先端部8aが光学検知素子31aよりも挿入部2eに近い位置にある。挿入部2eから挿入されたディスクDは、光学検知素子31aに至る前に先端部8aの下を通過する。よって、ディスクDに帯電している電荷は、光学検知素子31aに放電されることなく、突起部8から筐体2へ逃げやすくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体の内部で搬送されるディスクに帯電している電荷を逃がすことができる導電性の突起部を備えたディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクなどのディスクが装填されるディスク装置では、静電気によって帯電した手が接近したときや、帯電したディスクが挿入されたときの対策が必要とされている。
【0003】
以下の特許文献1に記載されているディスク装置は、ディスク装置の底面を形成している導電性のロアベースに前面アースが一体に形成されている。操作者の指が前面ベゼルに接近したときに、静電気で指に帯電している電荷が、前面アースからロアベースに逃がされて、装置内の記録媒体や電子部品が保護される。
【0004】
特許文献2に記載されたディスクプレーヤは、筐体内に設けられたディスク搬送機構が、金属製のアーム部材と、このアーム部材に支持された金属製のシャフトと、シャフトの外周に設けられた導電性ゴム材で形成されたローラとで構成されている。この発明は、ディスクに帯電している電荷を、ディスク搬送機構を介して筐体に逃がすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−109371号公報
【特許文献2】特開2007−305172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたディスク装置は、前面アースが装置の前面に設けられているため、操作者の指に帯電している電荷を逃がすことは可能であるが、帯電したディスクが装置内に挿入されたときに、ディスクの電荷を前面アースから逃がすことが難しい。
【0007】
特許文献2に記載されたディスクプレーヤは、帯電したディスクがローラに至るまで電荷を除去することができない。そのため、筐体の内部の挿入口からローラまでの間の領域に、光学検知素子などの電子素子やこの電子素子の端子または端子が接続される配線層が設けられ、これらが搬送中のディスクに対向して露出していると、ディスクがローラに到達する以前に、電荷が電子部品や端子または配線層に伝達されて、ディスクプレーヤに搭載されている集積回路などが破損するおそれがある。
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、筐体の内部を移動するディスクが帯電している場合に、その電荷を効果的に除去することができるディスク装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、筐体に、挿入部と、前記挿入部から挿入されたディスクを搬送する搬送機構と、前記搬送機構によって筐体の内部に搬送されたディスクの中心部が設置される回転駆動部とが設けられたディスク装置において、
前記筐体内に、移動中のディスクに対向する電子素子または導電部と、移動中のディスクに対向する導電性の突起部とが設けられており、前記回転駆動部に向かうディスクが、前記電子素子または導電部よりも先に前記突起部と対向する位置を通過することを特徴とするものである。
【0010】
本発明のディスク装置は、筐体内を移動するディスクが、電子素子または導電部よりも先に突起部と対向するため、ディスクが帯電している場合に、電荷を突起部に逃がすことができ、電荷によって電子素子または導電部に影響が与えられるのを阻止しやすくなる。
【0011】
本発明は、ディスクの中心部が前記回転駆動部に設置されたときに、前記突起部が、ディスクの面に対向する位置にあることが好ましい。
【0012】
このディスク装置では、ディスクが回転中に帯電した場合にも、その電荷を突起部に逃がすことが可能になる。
【0013】
例えば、前記電子素子は、ディスクの通過を検知する光学検知素子であり、前記導電部は、前記光学検知素子の端子または前記端子が接続される配線層である。
【0014】
本発明は、前記搬送機構は、搬送ローラと、前記搬送ローラとでディスクを挟む合成樹脂材料製の摺動部材とで構成されており、前記突起部が、前記摺動部材を支持する金属板から折り曲げられ、前記突起部で前記摺動部材が保持されているものとして構成できる。
【0015】
摺動部材を保持するための突起部を利用してディスクに帯電した電荷を逃がすことで、突起部の数を少なくして構造を簡単にできるようになる。
【0016】
本発明は、前記突起部の先端が、前記摺動部材のディスクに対向する対向面よりも、ディスクの面から離れる位置にあることが好ましい。これにより、ディスクが突起部に当たるのを避けることができる。
【0017】
また、前記電子素子または導通部は、前記摺動部材に形成された窓部を介して前記ディスクに対向可能とされており、前記電子素子または導通部が、前記突起部の先端よりも、ディスクの面から離れる位置にあることが好ましい。
【0018】
これにより、ディスクに帯電した静電気が、突起部に逃げやすく、電子素子または導通部に逃げにくくなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のディスク装置は、筐体内に挿入されるディスクが、電子素子または導通部よりも先に導電性の突起部と対向するため、ディスクに帯電している電荷が、電子素子または導通部よりも突起部に逃げやすくなる。そのため、電子素子を保護でき、さらにはディスク装置に搭載されている集積回路なども保護できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態のディスク装置を示す平面図、
【図2】ディスク装置の搬送機構と検知基板および筐体の一部を示す分解斜視図、
【図3】ディスク装置の搬送機構と検知基板が筐体に組み付けられた状態を示す部分斜視図、
【図4】図3をIV−IV線で切断した部分断面図、
【図5】突起部および光学検知素子とディスクとの位置関係を示す説明図、
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示すディスク装置1は、金属製の筐体2を有している。筐体2は立方体形状であり、Y1方向に向く前側板2aと、Y2方向に向く後側板2bと、左右両側(X1方向およびX2方向)に位置する両側板2c,2cと、底面および天井板2dを有している。図2には、筐体2の前側板2aの一部と、天井板2dの前方部分が示されており、図3にも、天井板2dの前方部分のさらに一部が示されている。
【0022】
図1に示すように、筐体2の前側板2aに操作パネル3が固定されている。操作パネル3のY1方向に向く前側面3aには、横方向に細長く延びる挿入口が開口している。挿入口は、図2と図4に示すように、筐体2の前側板2aに開口する挿入部2eを経て筐体2の内部空間に通じている。操作パネル3の前側面3aには、液晶表示パネルなどのディスプレイが設けられ、また、操作部4a,4b,4c,4dが設けられている。
【0023】
筐体2は1DINなどの大きさであり、自動車の車室内のインストルメントパネルなどに埋設される。操作パネル3は、インストルメントパネルの表面に露出するように設置される。
【0024】
図1に示すように、筐体2の内部では、挿入部2eよりも内側に搬送機構10が配置され、挿入部2eと搬送機構10との間に、検知基板30が配置されている。
【0025】
図1に示すように、筐体2の内部に、金属板で形成された機構シャーシ41が設けられている。機構シャーシ41は、筐体2の内部で、複数のダンパー42によって弾性支持されている。ダンパー42はオイルダンパーやエアーダンパーまたはスプリングなどで構成されている。
【0026】
機構シャーシ41の中央部に回転駆動部43が設けられている。回転駆動部43は、機構シャーシ41の下側に固定されたスピンドルモータと、機構シャーシ41の上面側に突出するスピンドルモータの回転軸と、前記回転軸に固定されたターンテーブルと、ターンテーブルに設置されたディスクDの中央部を上方からターンテーブルに向けて押圧するクランパ44とを有している。
【0027】
クランパ44は、クランプアーム45のY1側の回転支持部45aに回転自在に支持されている。クランプアーム45は金属板で形成されており、装置奥側(Y2側)の両側部に設けられた軸受部45b,45bが、機構シャーシ41に設けられた支持軸に回動自在に支持されている。クランプアーム45の左側(X2側)の側部にトーションばねで構成されたクランプばね46が設けられている。クランプばね46の一方の腕部46aがクランプアーム45に掛けられ、他方の腕部46bが機構シャーシ41に掛けられて、クランプアーム45は、軸受部45b,45bを支点として、クランパ44をターンテーブルに圧接する方向へ付勢されている。
【0028】
筐体2の左側の側板2cの内側に、切換え部材50が設けられている。切換え部材50は切換えモータによってY1−Y2方向へ往復駆動される。切換え部材50には、クランプ制御突起51が上方(図1の紙面手前方向)に向けて突出している。図1において、切換え部材50がY2方向へ移動すると、クランプ制御突起51によって、クランプアーム45の持ち上げ部45cが持ち上げられ、クランパ44がターンテーブルから離れてクランプ解除状態となる。切換え部材50がY1方向へ移動して、クランプ制御突起51が持ち上げ部45cから外れると、クランプばね46によってクランプアーム45が回動させられ、クランパ44がターンテーブルに圧接させられてクランプ状態に設定される。
【0029】
図2に示すように、筐体2の前方に設けられた搬送機構10は、ローラ機構部11と摺動部材20とを有している。
【0030】
ローラ機構部11はローラ支持部材12を有している。ローラ支持部材12は金属板で形成されている。ローラ支持部材12はガイド板部12aとその両側部から折り曲げられた支持板部12b,12bを有している。それぞれの支持板部12bに支持軸13が固定されている。この支持軸13が、筐体2の左右の側板2c,2cに支持されて、ローラ支持部材12は支持軸13,13を支点として回動自在である。
【0031】
ローラ支持部材12の後方(Y2方向)では、左右の支持板部12b,12bにローラ軸14が回転自在に支持されている。ローラ軸14の外周に合成ゴム製の搬送ローラ15が装着されている。搬送ローラ15は左右方向(X1−X2方向)に分かれて一対設けられている。支持板部12b,12bのY1側の先端部にばね掛け部12c,12cが一体に設けられ、それぞれのばね掛け部12cと筐体2の底板との間に付勢ばね16が掛けられている。この付勢ばね16によって、ローラ支持部材12は、搬送ローラ15を図2において上向きに押し上げる方向へ付勢されている。
【0032】
図1に示した切換え部材50にローラ制御カムが設けられ、ローラ軸14の左側の端部がローラ制御カムに係合し、切換え部材50の移動力で、ローラ支持部材12の回動姿勢が制御される。切換え部材50が図1においてY2方向へ移動すると、ローラ支持部材12に対する拘束力が解除され、図4に示すように、搬送ローラ15が付勢ばね16の力で持ち上げられて、搬送ローラ15と摺動部材20とで、ディスクDを挟めるようになる。切換え部材50がY1方向へ移動すると、搬送ローラ15が摺動部材20から下方へ離れた位置で保持される。
【0033】
図2に示すように、ローラ軸14の一方の端部にピニオン歯車17が固定されている。搬送ローラ15と摺動部材20とでディスクDを挟める状態のときに、モータの動力がピニオン歯車17に与えられ、ローラ軸14が回転駆動される。
【0034】
図2に示す摺動部材20は合成樹脂材料で形成されている。摺動部材20の下面(対向面)20aに搬送ローラ15に対向する凹部21が形成されている。凹部21は、一対の搬送ローラ15,15の外形に倣う形状に形成されている。
【0035】
摺動部材20の上面20bに、検知基板30が取り付けられている。検知基板30はプリント配線基板であり、その下面30aの三箇所に、電子素子である光学検知素子31a,31b,31cが実装されている。検知基板30の下面30aに配線層が形成されており、光学検知素子31a,31b,31cの端子がそれぞれの配線層に半田付けされている。
【0036】
検知基板30に一対の位置決め穴32a,32bが形成されている。摺動部材20には、上面20bから突出する一対の位置決め突起22a,22bが一体に形成されている。また、摺動部材20の上面20bの3箇所から突出する掛止爪23a,23b,23cとその後方の2箇所から突出する掛止爪24a,24bが一体に形成されている。位置決め穴32a,32bに位置決め突起22a,22bが挿入されることで、検知基板30が摺動部材20の上面20bに位置決めされる。また、検知基板30の前縁部33a,33b,33cが、掛止爪23a,23b,23cにそれぞれ掛止され、検知基板30の後縁部34が掛止爪24a,24bにそれぞれ掛止されて、検知基板30が、摺動部材20の上面20bに固定される。
【0037】
図3には、位置決め突起22aが位置決め穴32aに挿入されている状態と、前縁部33aが掛止爪23aに掛止され、後縁部34が掛止爪24aに掛止された構造が拡大されて示されている。
【0038】
図2に示すように、摺動部材20に検知窓部25a,25b,25cが開口しており、摺動部材20の上面20bに検知基板30が固定されると、光学検知素子31aが検知窓部25aの内部に挿入され、光学検知素子31b,31cが検知窓部25b,25cに挿入される。
【0039】
図2に示すように、ローラ支持部材12の3箇所に透過穴18a,18b,18cが開口しており、透過穴18aが検知窓部25aに対向し、透過穴18b,18cが検知窓部25b,25cにそれぞれ対向している。
【0040】
前記光学検知素子31a,31b,31cは受光素子であり、ローラ支持部材12よりも下側の3箇所に発光素子が設けられている。それぞれの発光素子から発せられた検知光は、透過穴18a,18b,18cと検知窓部25a,25b,25cを通過して光学検知素子31a,31b,31cに受光される。挿入部2eから挿入されたディスクDが光学検知素子31a,31b,31cのいずれかを遮る位置に移動すると、その光学検知素子での受光出力が低下し、ディスク検知状態となる。
【0041】
なお、光学検知素子31a,31b,31cが発光素子であり、ローラ支持部材12の下側に、光学検知素子31a,31b,31cのそれぞれに対向する受光素子が設けられていてもよい。また、ディスクDの表面が反射面を有するものである場合は、光学検知素子31a,31b,31cが、発光素子と、この発光素子から発せられて反射面で反射された光を検知する受光素子とを有するものであってもよい。
【0042】
摺動部材20は、上面20bに検知基板30が取り付けられた状態で、筐体2の天井板2dの下面に取り付けられる。
【0043】
図2に示すように、筐体2の天井板2dの前方部分に、位置決め凹部6が形成されており、それより後方(Y2方向)に離れた位置に支持片7が下向きに折り曲げられている。天井板2dの前方部分に、突起部8が下向きに折り曲げられており、それよりも後方(Y2側)の3箇所に、突起部9a,9b,9cが下向きに折り曲げられている。
【0044】
摺動部材20の上面20bに、位置決め突起26が一体に突出形成され、その後方に掛止部27が一体に設けられている。さらに、摺動部材20の上面20bでは、前方にフック構造の掛止突起28が一体に形成され、それよりも後方の3箇所に同じくフック構造の掛止突起29a,29b,29cが一体に形成されている。
【0045】
摺動部材20の位置決め突起26が天井板2dの位置決め凹部6に挿入されて、掛止部27が天井板2dの支持片7に掛止される。また、摺動部材20の掛止突起28が天井板2dの突起部8の上に掛止され、3箇所の掛止突起29a,29b,29cが、天井板2dの突起部9a,9b,9cの上に掛止される。これにより、摺動部材20が天井板2dの下面に位置決めされて固定される。
【0046】
図3には、摺動部材20の位置決め突起26が天井板2dの位置決め凹部6に掛止されている構造と、摺動部材20の掛止突起28が天井板2dの突起部8の上に掛止された構造が拡大されて示されている。
【0047】
図3と図4には、摺動部材20と検知基板30とが天井板2dの下面に取り付けられた構造が示されている。
【0048】
図2と図3に示すように、摺動部材20には、掛止突起28に隣接する位置に上下に貫通する穴28aが形成されている。図4に示すように、天井板2dの前方部分で下向きに曲げられた突起部8は、掛止突起28の下側に掛止されているとともに、前記穴28aの内部に入り込んでいる。その結果、突起部8の先端部8aは、挿入部2eから挿入されて搬送ローラ15に向かうディスクDの上面に直接に対向できるようになっている。
【0049】
図4に示すように、突起部8の先端部8aは、摺動部材20の穴28aの内部に位置し、先端部8aは、摺動部材20の下面(対向面)20aよりも下側へ突出しておらず、下面20aよりも高さαだけ上に位置している。そのため、挿入部2eから筐体2の内部に挿入されるディスクDのY2方向に向く縁部d1が突起部8の先端部8aに当たることがない。
【0050】
光学検知素子31aは、摺動部材20に形成された検知窓部25aの内部に位置して、挿入部2eから挿入されて搬送ローラ15に向かうディスクDの上面に対向できるようになっている。ただし、図4に示すように、突起部8の先端部8aは、光学検知素子31aの下面よりも距離βだけ下側に位置しており、ディスクDの上面と先端部8aとの距離が、ディスクDの上面と光学検知素子31aの下面との距離よりも短くなっている。
【0051】
図1に示すように、検知基板30に実装された3個の光学検知素子31a,31b,31cのうち、中央に位置する光学検知素子31aが、最もY1側に位置し、最も挿入部2eに近い位置にある。そして、天井板2dから折り曲げられた突起部8,9a,9b,9cのうち、突起部8が最もY1側に位置し、最も挿入部2eに近い位置にある。
【0052】
図4と図5に、突起部8と光学検知素子31aとの配置関係が示されている。図4に示すように、突起部8の先端部8aは、光学検知素子31aよりもY1側に位置しており、さらには光学検知素子31aの端子ならびにこの端子が半田付けされる配線層などの導電部よりもY1側に位置している。そして、図5(A)に示すように、挿入部2eから筐体2の内部にディスクDが挿入されるときに、ディスクDの挿入方向の前方(Y2方向)に向く縁部d1が、最初に突起部8の先端部8aと対向する位置を通過し、その後に、光学検知素子31aと対向する位置さらには端子や配線層などの導電部と対向する位置を通過するようになる。
【0053】
図1に示すように、ディスクDの中心部が回転駆動部43に装着され、ディスクDが装填完了位置(i)に至ったときに、図5(B)に示すように、突起部8の先端部8aが、ディスクDのY1側に向く縁部d2よりもY2側に位置しており、先端部8aが、装填完了位置(i)のディスクDの上面に常に対向している。
【0054】
次に、前記ディスク装置1の動作を説明する。
ディスク装置1がディスクDの挿入を待機しているとき、モータの動力によって切換え部材50がY2方向へ移動させられており、回転駆動部43ではクランパ44がターンテーブルから離れており、搬送機構10では、図4に示すように、搬送ローラ15が摺動部材20の下面20aに接近して、搬送ローラ15と摺動部材20とでディスクDを挟むことが可能となっている。
【0055】
また、検知基板30の3箇所に設けられた光学検知素子31a,31b,31cに通電されて、これら光学検知素子によってディスクDの通過を検知できるようになっている。
【0056】
挿入部2eから挿入されたディスクDのY2方向に向く縁部d1が、最もY1側に位置する光学検知素子31aの検知領域を通過すると、図示しない制御部においてディスクDが挿入されたと判断し、モータが始動して、ローラ軸14が搬入方向へ回転し始める。ディスクDの縁部d1が搬送ローラ15に触れると、搬送ローラ15の回転力で、縁部d1が搬送ローラ15と摺動部材20の下面20aとの間に導かれ、ディスクDが搬送ローラ15と摺動部材20とで挟まれ、搬送ローラ15の回転力によってY2方向へ搬入される。
【0057】
ここで、図4に示すように、挿入部2eから挿入されたディスクDのY2方向に向く縁部d1は、光学検知素子31aやその端子さらには配線層を通過する前に、突起部8の先端部8aを横切る。このとき、静電気によってディスクDに電荷が帯電していると、その電荷が金属板で形成された突起部8に放電しやすくなり、電荷を天井板2dに逃がすことができる。
【0058】
図5(A)に示すように、Y2方向へ搬入されるディスクDが、光学検知素子31aやその端子ならびに配線層などの導通部に接近する前に突起部8の先端部8aを横切り、これに加えて、図4に示すように、突起部8の先端部8aが光学検知素子31aよりも下側に位置しているため、ディスクDの電荷が突起部8に逃げやすく、電荷が光学検知素子31aやその端子または配線層などの導電部に放電される現象が生じにくくなる。そのために、光学検知素子31aを保護でき、さらに配線層を介して導通されている集積回路や他の電子部品が放電電流により損傷を受けるのを防止しやすくなる。
【0059】
搬送ローラ15と摺動部材20とで挟まれたディスクDが搬送ローラ15の回転力で搬入される際に、制御部では、3箇所に設けられた光学検知素子31a,31b,31cからの検知出力の組み合わせを監視して、正規のディスクDが搬入されているか、または正規のディスクDと異なる形状の異物が搬入されているかの判定が行われる。正規のディスクDが搬入されていると判定されると、そのディスクDが図1に示す装填完了位置(i)まで搬入され、異物であると判断されると、ローラ軸14に逆向きの回転が与えられて、ディスクDが挿入部2eから外へ排出される。
【0060】
正規のディスクDが装填完了位置(i)まで搬入されたことが図示しない搬送完了検知スイッチで検知されると、切換えモータの動力によって、図1に示す切換え部材50がY1方向へ移動させられる。このときの切換え部材50の移動力によって、クランプアーム45がターンテーブルに向けて下降させられ、ディスクDの中心部がターンテーブルとクランパ44とで挟持される。また、切換え部材50のY1方向への移動力によって、ローラ軸14が下降させられて、搬送ローラ15がディスクDから離れる。さらに、切換え部材50のY1方向への移動力により、筐体2内での機構シャーシ41のロックが解除されて、機構シャーシ41がダンパー42で弾性支持された状態となる。
【0061】
そして、回転駆動部43のスピンドルモータが回転駆動されてディスクDが回転駆動され、機構シャーシ41に設けられた光ヘッドが始動して、ディスクDに記録されたデータの再生や記録が行われる。
【0062】
図5(B)に示すように、突起部8の先端部8aは、装填完了位置(i)に設置されたディスクDの上面に対向している。また、図4に示すように、突起部8の先端部8aは、光学検知素子31aやその端子さらには端子が半田付けされる導電パターンなどの導通部よりも下側に位置し、突起部8の先端部8aから装填完了位置(i)のディスクDの上面までの距離が、前記光学検知素子31aや導通部からディスクDの上面までの距離よりも短くなっている。よって、回転中にディスクDに帯電した電荷が、前記光学検知素子31aや導通部ではなく突起部8に向けて放電されやすくなる。
【0063】
ディスク装置1からディスクDを搬出するときは、切換えモータの動力で、切換え部材50が搬入方向と逆向きであるY2方向へ移動させられる。このときの切換え部材50の移動力により、筐体2の内部で機構シャーシ41が拘束されてロックされ、クランプアーム45が持ち上げられ、クランパ44がディスクDの中央部から離れてディスクDに対するクランプが解除される。また、搬送ローラ15が付勢ばね16の力で持ち上げられ、ターンテーブルに設置されているディスクDが搬送ローラ15で持ち上げられるとともに搬送ローラ15と摺動部材20とで挟まれる。このとき、搬送ローラ15は搬出方向へ回転させられ、ディスクDが挿入部2eから筐体2の外部に向けて搬出される。
【0064】
ディスクDがターンテーブルから持ち上げられるときやディスクの搬出が開始された後も、このディスクDに突起部8が対向しているので、搬出されるディスクDに帯電している電荷が、光学検知素子31aや導通部ではなく、突起部8に向けて放電されやすくなる。
【0065】
なお、本発明では、突起部8で保護する電子素子が光学検知素子31a以外の回路素子であってもよい。
【0066】
また、突起部8は、筐体2の天井板2dとは異なる金属板から折り曲げられていてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 ディスク装置
2 筐体
2d 天井板
2e 挿入部
8 突起部
8a 先端部
10 搬送機構
12 ローラ支持部材
14 ローラ軸
15 搬送ローラ
20 摺動部材
25a,25b,25c 検知窓部
28 掛止突起
28a 穴
30 検知基板
31a 光学検知素子
41 機構シャーシ
43 回転駆動部
50 切換え部材
D ディスク
d1,d2 縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に、挿入部と、前記挿入部から挿入されたディスクを搬送する搬送機構と、前記搬送機構によって筐体の内部に搬送されたディスクの中心部が設置される回転駆動部とが設けられたディスク装置において、
前記筐体内に、移動中のディスクに対向する電子素子または導電部と、移動中のディスクに対向する導電性の突起部とが設けられており、前記回転駆動部に向かうディスクが、前記電子素子または導電部よりも先に前記突起部と対向する位置を通過することを特徴とするディスク装置。
【請求項2】
ディスクの中心部が前記回転駆動部に設置されたときに、前記突起部が、ディスクの面に対向する位置にある請求項1記載のディスク装置。
【請求項3】
前記電子素子は、ディスクの通過を検知する光学検知素子であり、前記導電部は、前記光学検知素子の端子または前記端子が接続される配線層である請求項1または2記載のディスク装置。
【請求項4】
前記搬送機構は、搬送ローラと、前記搬送ローラとでディスクを挟む合成樹脂材料製の摺動部材とで構成されており、
前記突起部が、前記摺動部材を支持する金属板から折り曲げられ、前記突起部で前記摺動部材が保持されている請求項1ないし3のいずれかに記載のディスク装置。
【請求項5】
前記突起部の先端が、前記摺動部材のディスクに対向する対向面よりも、ディスクの面から離れる位置にある請求項4記載のディスク装置。
【請求項6】
前記電子素子または導通部は、前記摺動部材に形成された窓部を介して前記ディスクに対向可能とされており、前記電子素子または導通部が、前記突起部の先端よりも、ディスクの面から離れる位置にある請求項4または5記載のディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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