ディスク記憶装置、ディスク記憶装置のコントローラ、ディスク記憶装置による制御方法及び電子機器
【課題】仮想円制御を行う際の、サーボパターンからの復調位置の誤差を改善することを可能とする。
【解決手段】ディスク記憶装置は、ディスクの仮想円軌道に位置制御する際に、ディスクから読み出されたデータに含まれる複数の位置信号を読み出すタイミングを示す第1のタイミング信号に対し、複数の位置信号のそれぞれを読み出す期間を短くするとともに、それぞれの期間の中心時刻を複数の位置信号が記録された記録領域の中心に相当する復調中心時刻に近づけた第2のタイミング信号を生成し、生成されたタイミング信号に従って読み出された複数の位置信号をもとに、ヘッドの位置を復調する。
【解決手段】ディスク記憶装置は、ディスクの仮想円軌道に位置制御する際に、ディスクから読み出されたデータに含まれる複数の位置信号を読み出すタイミングを示す第1のタイミング信号に対し、複数の位置信号のそれぞれを読み出す期間を短くするとともに、それぞれの期間の中心時刻を複数の位置信号が記録された記録領域の中心に相当する復調中心時刻に近づけた第2のタイミング信号を生成し、生成されたタイミング信号に従って読み出された複数の位置信号をもとに、ヘッドの位置を復調する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、仮想円制御を行うディスク記憶装置、ディスク記憶装置のコントローラ、ディスク記憶装置による制御方法及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスクなどへの読み書きをヘッドで行うディスク記憶装置では、ディスクの偏心に追従しない円軌道(仮想円)でヘッドの位置を制御する仮想円制御を行うものがある。この仮想円制御では、ディスクの偏心を無視するように位置軌道(仮想円軌道)を与え、トラック中心からのオフセット位置を検出するためのサーボパターンから復調したヘッドの位置(復調位置)からディスクの偏心に起因する位置揺れを差し引いた値を元に、ヘッドの制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−39116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、仮想円制御では、ディスクの偏心を無視するように制御することから、ヘッドとディスクとの間に相対速度が生じる。したがって、ヘッドがサーボパターンを斜めに横切ることとなるために復調位置に誤差が生じることから、仮想円制御においては、復調位置の誤差の改善が望まれていた。
【0005】
本発明の実施形態は、仮想円制御を行う際にサーボパターンからの復調位置の誤差を改善することを可能とするディスク記憶装置、ディスク記憶装置のコントローラ、ディスク記憶装置の制御方法及び電子機器を得ることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態のディスク記憶装置は、トラックごとに、トラック中心からのオフセット位置を検出するための複数の位置信号が記録された記録領域を有するサーボパターンが記録されたディスクと、回転する前記ディスクから当該ディスクに記録されたデータの読み出しを行うヘッドと、前記ヘッドを前記ディスクの半径方向に駆動する駆動手段と、読み出された前記データから複数の前記位置信号を読み出すタイミングを示す第1のタイミング信号を生成する信号生成手段と、生成された第1のタイミング信号に従って読み出された複数の前記位置信号をもとに、前記ヘッドの位置を復調する復調手段と、復調された前記ヘッドの位置を参照して前記駆動手段を制御する制御手段と、を備え、前記信号生成手段は、前記制御手段が前記ディスクの仮想円軌道に位置制御する際に、前記第1のタイミング信号に対して複数の前記位置信号のそれぞれを読み出す期間を短くするとともに、それぞれの期間の中心時刻を前記記録領域の中心に相当する復調中心時刻に近づけた第2のタイミング信号を生成することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、仮想円制御の説明図である。
【図2】図2は、仮想円制御の復調位置の説明図である。
【図3】図3は、ディスクに記録されるサーボパターンの一例を示す概念図である。
【図4】図4は、ディスクに記録されるサーボパターンの一例を示す概念図である。
【図5−1】図5−1は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。
【図5−2】図5−2は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置と復調位置との関係を示すグラフである。
【図6−1】図6−1は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。
【図6−2】図6−2は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置と復調位置との関係を示すグラフである。
【図6−3】図6−3は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、相対速度起因の位置誤差を示すグラフである。
【図7−1】図7−1は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。
【図7−2】図7−2は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置と復調位置との関係を示すグラフである。
【図8−1】図8−1は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。
【図8−2】図8−2は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置と復調位置との関係を示すグラフである。
【図8−3】図8−3は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、相対速度起因の位置誤差を示すグラフである。
【図9】図9は、実施形態にかかるディスク記憶装置の上面図である。
【図10】図10は、実施形態にかかるディスク記憶装置の断面図である。
【図11】図11は、実施形態にかかるディスク記憶装置の構成を示すブロック図である。
【図12】図12は、位置決め制御系にかかるブロック図である。
【図13】図13は、サーボ復調回路のブロック図である。
【図14】図14は、ゲート信号のタイムチャート図である。
【図15】図15は、ピークのタイミングが異なる様子を説明する概念図である。
【図16】図16は、NULLパターンの場合のゲート信号を例示する概念図である。
【図17】図17は、位置復調部の構成を示すブロック図である。
【図18】図18は、速度オフセット補正の説明図である。
【図19】図19は、仮想円軌道テーブルの説明図である。
【図20】図20は、サーボコントローラの動作説明図である。
【図21】図21は、ゲート選択信号の出力にかかる動作の一例を示すフローチャートである。
【図22−1】図22−1は、実施形態にかかるディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。
【図22−2】図22−2は、実施形態にかかるディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置と復調位置との関係を示すグラフである。
【図22−3】図22−3は、実施形態にかかるディスク記憶装置のシミュレーション結果において、相対速度起因の位置誤差を示すグラフである。
【図23−1】図23−1は、実施形態にかかるディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。
【図23−2】図23−2は、実施形態にかかるディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置と復調位置との関係を示すグラフである。
【図23−3】図23−3は、実施形態にかかるディスク記憶装置のシミュレーション結果において、相対速度起因の位置誤差を示すグラフである。
【図24】図24は、仮想円軌道、物理軌道、相対速度との関係を示すグラフである。
【図25】図25は、相対速度に応じたゲート信号の切り替えにかかる動作の一例を示すフローチャートである。
【図26】図26は、磁気ヘッドごとにゲート信号を切り替える場合の動作の一例を示すフローチャートである。
【図27】図27は、実施形態にかかるディスク記憶装置を備える電子機器を例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかるディスク記憶装置、ディスク記憶装置のコントローラ、ディスク記憶装置の制御方法及び電子機器を詳細に説明する。以下の実施形態では、磁気ディスクへの読み書きを磁気ヘッドで行うディスク記憶装置を例に説明する。なお、ディスク記憶装置は、DVD(Digital Versatile Disc)、MO(Magneto-Optic)等の光ディスク装置や、リードオンリーの装置(再生装置)であってもよいことは言うまでもないことである。
【0009】
<仮想円制御について>
先ず、仮想円制御について説明する。図1は、仮想円制御の説明図である。
【0010】
図1に示すように、ディスク記憶装置において、ディスク6を回転駆動させるスピンドルモータの軸中心401と、ディスク6の回転中心601とを完全に一致させることは極めて困難である。このため、軸中心401と回転中心601との間には微細なずれ(偏心)が生じている。
【0011】
この偏心に、磁気ヘッド4を追従することは、常時、磁気ヘッド4が揺れている(駆動電流が流れている)ことになり、消費電力が増大する。また磁気ヘッド4が複数ある場合、切り換え時の動作が不安定となりやすい。この問題を解決するために、偏心に追従するのではなく、偏心に追従しないでアクチュエータを制御する方法が提案されている。例えば、特開平9−128915号公報(平成9年(1997年)5月16日公開)で提案されている。磁気ヘッド4が偏心に追従しない場合は、スピンドルモータの軸中心401を中心とする真円(仮想円)に磁気ヘッド4の軌跡400が一致するため、磁気ヘッド4の揺れが無くなる。
【0012】
この提案においては、図2に示すように、偏心を無視するように位置軌道(仮想円軌道)を与え、ヘッドの復調信号から除去し、復調位置を得て、アクチュエータを制御することを記載する。これにより、図1に示すように、ディスク6の円周上に記録されたサーボパターン60の円軌道600に対し、位置信号を利用して、磁気ヘッド4が、スピンドルモータの軸中心401を中心とする軌跡400(円軌道)に位置決めされる。この場合、磁気ヘッド4はサーボパターン60を斜めに横切ることとなる(図3、4の矢印を参照)。
【0013】
<ディスクについて>
次に、ディスク6の詳細について説明する。図3は、ディスク6に記録されるサーボパターン60の一例を示す概念図である。図3に示すように、ディスク記憶装置が読み書きを行うディスク6には、回転中心から半径方向に円弧状に延びるサーボパターン60が記録されている。サーボパターン60は、磁気ヘッドを位置決めするために使用される情報である。
【0014】
ディスク6は、金属又はガラス製の円盤(ディスク)状の基板に磁性膜を形成した記憶媒体である。ディスク6へデータの記録を行う場合には、ディスク6のデータを記録する記録領域に磁気ヘッドから磁界をかけ、表面上の磁性体の磁化状態を変化させることによってデータを記録する。また、ディスク6からデータを読み出して再生する場合には、再生対象となるディスク6上の記録領域に磁気ヘッドを移動させ、ディスク6の磁性体の磁化状態を読み取ってデータを再生する。なお、ディスク6の記録方式は、垂直磁気記録方式、水平磁気記録方式のいずれであってもよい。
【0015】
サーボパターン60は、サーボマーク、グレイコード、バースト部を有する構成である。サーボマークは、サーボパターン60の先頭を示し、読み出しの基準となる基準マークである。グレイコードは、トラックごとのトラック番号(「2N」、「2N+1」、「2N+2」…)がデジタルデータで記録される。ディスク記憶装置では、グレイコードに記録されたトラック番号を復調することで、磁気ヘッドがどのトラック番号のトラックに位置しているかを検出できる。バースト部は、各トラックにおいてトラック中心からのオフセット位置を検出するため、位相の90度ずれた4相の面積パターンを示す位置信号PosA、PosB、PosC、PosDが記録される記録領域である。ディスク記憶装置では、バースト部に記録された位置信号PosA、PosB、PosC、PosDの振幅(面積に相当)を得て、検出されたトラック番号のトラック中心からの磁気ヘッドの位置(オフセット位置)を復調する。
【0016】
図4はディスク6に記録されるサーボパターン60の一例を示す概念図であり、より具体的にはサーボパターン60のバースト部に2相のNULLパターンが形成される場合を示す図である。図4に示すように、NULLパターンの場合は、位相の180度ずれた2相の位置信号PosN、PosQがバースト部に記録される。このNULLパターンは、図3の場合と類似するが、バースト部の幅を半分とすることができる。ディスク記憶装置では、バースト部に記録された位置信号PosN、PosQの振幅(面積に相当)ならびに位相が変化することを得て、検出されたトラック番号のトラック中心からの磁気ヘッドの位置(オフセット位置)を復調する。なお、特に図示しないが、NULLパターンと形状が類似するDCパターンの場合も同様であることは言うまでもないことである。
【0017】
<磁気ヘッドの位置の復調について>
ここで、位置信号PosA、PosB、PosC、PosDによる磁気ヘッドの位置の復調について説明する。まず、位置信号PosA、PosB、PosC、PosDを得ることで、以下の(1)、(2)式よりPosN、PosQを計算する。なお、NULLパターンの場合は、位置信号PosN、PosQが(1)、(2)式の結果に相当するので、この計算を省くことができる。
【0018】
PosN=PosA−PosB(1)
PosQ=PosC−PosD(2)
この位置信号の直線部分を使用して、復調位置(磁気ヘッドの現在位置)が復調される。この復調位置は、計算によって得られる。例えば、復調位置(Position)は、下記の式で計算する(たとえば、特開平8−195044号公報)。即ち、PosNの絶対値abs(PosN)と、PosQの絶対値abs(PosQ)との大きさを比較し、abs(PosN)≦abs(PosQ)である時は、下記(3)式により、復調位置を得る。
【0019】
Position=-sgn(PosQ)*PosN+Track(3)
但し、sgn(PosQ)*even(Track)>0.0である時は、下記(4)式を(3)式に加算する。
【0020】
Position+=sgn(PosQ)*sgn(PosN)*1.0 (4)
逆に、abs(PosN)≦abs(PosQ)でないときは、下記式(5)を使用する。
【0021】
Position=sgn(PosN)*(PosQ+even(Track)*0.5 )+Track (5)
ここで、sgn()は、()の符号、Trackは、トラック番号、even(Track)は、トラック番号が、偶数の時、「1」、奇数の時、「0」である。これを、C言語プログラムで記述すると、下記の如くなる。
【0022】
if(abs(PosN)≦abs(PosQ)){
Position=-sgn(PosQ)*PosN+Track;
if(sgn(PosQ)*even(Track)>0.0)
Position+=sgn(PosQ)*sgn(PosN)*1.0;
}else{
Position=sgn(PosN)*(PosQ+even(Track)*0.5)+Track;
【0023】
<従来のディスク記憶装置によるシミュレーション>
ここで、実際の磁気ヘッドの位置と、復調位置との関係を見るため、従来のディスク記憶装置をモデルにシミュレーションしてみる。なお、このシミュレーションは、例えば面積パターンの場合であり、バースト部から4相の位置信号PosA、PosB、PosC、PosDを得て復調位置を復調している。
【0024】
図5−1、6−1は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。また、図5−2、6−2は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置と復調位置との関係を示すグラフである。図6−3は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、相対速度起因の位置誤差を示すグラフである。
【0025】
図5−1、図5−2では、磁気ヘッドの半径方向の速度が0トラック/サンプルのシミュレーション結果を示している。図5−1に示すように、磁気ヘッドの半径方向の速度が0トラック/サンプルである場合は、PosNとPosQとの間の位相関係は0.5トラックずれた関係であり、バースト部の記録と合致している。したがって、図5−2に示すように、磁気ヘッドの実位置と復調位置と間には誤差が生じていない。
【0026】
図6−1、6−2、6−3では、偏心が50umのディスクを7200rpmで回転させて仮想円制御を実施した場合のシミュレーション結果を示している。このシミュレーションでは、磁気ヘッドとディスクとの間の最大相対速度は10.5トラック/サンプルとなる。
【0027】
上述した条件で仮想円制御を行う場合、図6−1に示すように、PosNとPosQとの間の位相関係は図5−1に示した状態からずれたものとなる。より具体的には、PosNが図の右方向(トラック増加方向)に、PosQが図の左方向(トラック減少方向)にシフトしている。したがって、図6−2に示すように、磁気ヘッドの実位置と復調位置と間には誤差が生じている。この誤差は、図6−3に示すように、0.13トラック相当(波形の山と谷との差分)になる。
【0028】
同様に、例えばNULLパターンの場合であり、バースト部から2相の位置信号PosN、PosQを得て復調位置を復調する場合の、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果を例示する。図7−1、8−1は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。また、図7−2、8−2は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置と復調位置との関係を示すグラフである。図8−3は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、相対速度起因の位置誤差を示すグラフである。
【0029】
図7−1、図7−2では、磁気ヘッドの半径方向の速度が0トラック/サンプルのシミュレーション結果を示している。図7−1に示すように、NULLパターンの場合も、磁気ヘッドの半径方向の速度が0トラック/サンプルである場合は、PosNとPosQとの間の位相関係は0.5トラックずれた関係であり、バースト部の記録と合致している。したがって、図7−2に示すように、磁気ヘッドの実位置と復調位置と間には誤差が生じていない。
【0030】
図8−1、8−2、8−3では、偏心が50umのディスクを7200rpmで回転させて仮想円制御を実施した場合のシミュレーション結果を示している。このシミュレーションでは、磁気ヘッドとディスクとの間の最大相対速度は10.5トラック/サンプルとなる。
【0031】
上述した条件で仮想円制御を行う場合、NULLパターンの場合も同様、図8−1に示すように、PosNとPosQとの間の位相関係は図7−1に示した状態からずれたものとなる。より具体的には、PosNが図の右方向(トラック増加方向)に、PosQが図の左方向(トラック減少方向)にシフトしている。したがって、図8−2に示すように、磁気ヘッドの実位置と復調位置と間には誤差が生じている。この誤差は、図8−3に示すように、0.06トラック相当(波形の山と谷との差分)になる。以上のように、仮想円制御を行う場合には復調位置に誤差が生じることとなる。
【0032】
<実施形態にかかるディスク記憶装置>
ここで、実施形態にかかるディスク記憶装置について説明する。図9は、実施形態のディスク記憶装置100にかかる上面図である。図10は、実施形態にかかるディスク記憶装置100の断面図である。この実施形態では、ディスク記憶装置100としてハードディスク装置を例にしてある。
【0033】
図9及び図10に示すように、ディスク6は、基板(円板)に磁気記録層を設けて構成される。ディスク6は、例えば2.5インチの大きさであり、ドライブ内に、3枚設けられている。スピンドルモータ5は、ディスク6を支持し、且つ回転する。磁気ヘッド4は、アクチュエータに設けられている。この磁気ヘッド4は、3枚のディスク6の表面や裏面に対応して複数設けられている。アクチュエータは、VCM3(ボイスコイルモータ)と、アーム8と、フレクシャ9(サスペンション)を有する。フレクシャ9の先端に、磁気ヘッド4が取り付けられている。
【0034】
磁気ヘッド4は、ディスク6のデータを読み取り、データを書き込む。磁気ヘッド4は、MR素子(再生素子)と、ライト素子とを有する。VCM3は、磁気ヘッド4をディスク6の半径方向に駆動し、ディスク6の所望のトラックに位置付ける。VCM3及びスピンドルモータ5は、ドライブベース2に設けられる。カバー1は、ドライブベース2を覆い、ドライブ内部を外部から隔離する。プリント板7は、ドライブベース2の下に設けられ、ドライブの制御回路を搭載する。コネクタ10は、ドライブベース2の下に設けられ、制御回路と外部とを接続する。このドライブは、小型であり、例えばノートパソコン等の内蔵ディスクとして使用される。
【0035】
図11は、実施形態にかかるディスク記憶装置100の構成を示すブロック図である。HDC18(ハードディスクコントローラ)は、ホストCPU(Central Processing Unit)との間での各種コマンドの授受、データの授受等のホストCPUとのインターフェース制御及び磁気ディスク媒体上の記録再生フォーマットを制御するための磁気ディスク装置内部の制御信号の発生等を行う。バッファ17は、ホストCPUよりのライトデータの一時的な記憶及び磁気ディスク媒体よりのリードデータの一時的な記憶に使用される。
【0036】
MCU19(マイクロコントローラ)は、マイクロプロセッサ(MPU)、メモリ、DAコンバータ、ADコンバータ等で構成されている。MCU19は、磁気ヘッド4の位置決めのためのサーボ制御(位置決め制御)等を行う。MCU19は、メモリに記憶されたプログラムを実行して、サーボ復調回路16よりの位置信号を認識し、位置決めのためのVCM3のVCM制御電流の制御値を計算する。更に、MCU19は、SPM駆動回路14の駆動電流の制御を行う。
【0037】
VCM駆動回路13は、VCM3に駆動電流を流すためのパワーアンプで構成される。SPM駆動回路14は、ディスク6を回転するスピンドルモータ5に駆動電流を流すためのパワーアンプで構成される。
【0038】
リードチャネル15は、記録再生を行うための回路である。リードチャネル15は、ホストCPUよりのライトデータをディスク6に記録するための変調回路、パラレルシリアル変換回路、ディスク6よりデータを再生するための復調回路、シリアルパラレル変換回路等を有する。サーボ復調回路16は、図13にて後述するように、ディスク6に記録されたサーボパターン60を復調する回路であり、MCU19に復調した位置信号を出力する。
【0039】
尚、図示されていないが、ドライブHDA内には、磁気ヘッド4に記録電流を供給するライトアンプと、磁気ヘッド4よりの再生電圧を増幅するプリアンプとを内蔵したヘッドICが設けられている。
【0040】
ここで、MCU19が実行する位置決め制御系について説明する。図12は、位置決め制御系にかかるブロック図である。
【0041】
図12に示すように、位置決め制御系は、MCU19と、VCM駆動回路13と、SPM駆動回路14と、サーボ復調回路16とで構成されている。MCU19は、サーボ復調回路16よりの位置信号をもとに、VCM駆動回路13、SPM駆動回路14の駆動を制御する制御信号を出力する。また、MCU19は、サーボ復調回路16で生成されるゲート信号を選択するゲート選択信号を出力する(詳細は後述する)。
【0042】
図13は、サーボ復調回路16のブロック図である。図13に示すように、サーボ復調回路16は、プリアンプ30、AGC回路31、サーボマーク検出器32、ゲート信号生成器33、トラック番号検出器34、PosA検出器35、PosB検出器36、PosC検出器37、PosD検出器38を備える。
【0043】
プリアンプ30は、リードチャネル15からの読み取り信号を増幅する。AGC回路31(自動ゲイン制御)は、読み取り信号のゲインを調整して、読み取り信号の振幅を一定に制御する。サーボマーク検出器32は、読み取り信号からサーボマーク(図3、4参照)を検出する。
【0044】
ゲート信号生成器33は、サーボマークの検出に応じて、入力される基準クロックに同期したタイミングでトラック番号検出器34、PosA検出器35、PosB検出器36、PosC検出器37、PosD検出器38のゲート信号を生成する。図14は、ゲート信号のタイムチャート図である。図14に示すように、ゲート信号生成器33は、サーボマークの検出に応じて、読み取り信号に含まれるトラック番号の読み取りタイミングに合わせたピークP1を有するゲート信号G1を生成する。また、ゲート信号生成器33は、サーボマークの検出に応じて、読み取り信号に含まれる位置信号PosAの読み取りタイミングに合わせたピークP2を有するゲート信号G2を生成する。また、ゲート信号生成器33は、サーボマークの検出に応じて、読み取り信号に含まれる位置信号PosBの読み取りタイミングに合わせたピークP3を有するゲート信号G3を生成する。また、ゲート信号生成器33は、サーボマークの検出に応じて、読み取り信号に含まれる位置信号PosCの読み取りタイミングに合わせたピークP4を有するゲート信号G4を生成する。また、ゲート信号生成器33は、サーボマークの検出に応じて、読み取り信号に含まれる位置信号PosDの読み取りタイミングに合わせたピークP5を有するゲート信号G5を生成する。
【0045】
トラック番号検出器34は、ゲート信号G1に従って読み取り信号に含まれるトラック番号を検出(読み出し)し、そのトラック番号を出力する。PosA検出器35は、ゲート信号G2に従って読み取り信号に含まれる位置信号PosAを検出(読み出し)し、その振幅をPosAとして出力する。PosB検出器36は、ゲート信号G3に従って読み取り信号に含まれる位置信号PosBを検出(読み出し)し、その振幅をPosBとして出力する。PosC検出器37は、ゲート信号G4に従って読み取り信号に含まれる位置信号PosCを検出(読み出し)し、その振幅をPosCとして出力する。PosD検出器38は、ゲート信号G5に従って読み取り信号に含まれる位置信号PosDを検出(読み出し)し、その振幅をPosDを出力する。
【0046】
なお、ゲート信号生成器33は、MCU19より出力されるゲート選択信号に応じて設定される動作モードに従って、ピークP2〜P5のタイミングが異なるゲート信号G2〜G5を生成する。
【0047】
図15は、ピークP2〜P5のタイミングが異なる様子を説明する概念図である。図15に示すように、ゲート選択信号に応じてモードM1が設定される場合、ゲート信号生成器33が生成するゲート信号G2〜G5に含まれるピークP2〜P5の中心時刻Ta1、Tb1、Tc1、Td1は、サーボマークに応じた位置信号PosA〜PosDの位置の中心と一致する。また、ピークP2〜P5の期間は、サーボマークに応じた位置信号PosA〜PosDの幅と略一致する。このモードM1が設定された場合のピークP2〜P5のタイミングは、サーボマークを基準に位置信号PosA〜PosDの位置として見積もられる時刻に対応して予めレジスタなどに書きこまれた値を参照して生成される。
【0048】
また、ゲート選択信号に応じてモードM2が設定される場合、ゲート信号生成器33が生成するゲート信号G2〜G5に含まれるピークP2〜P5は、モードM1の場合と比較して、読み出し期間を短く(幅を短く)している。具体的には、読み出し期間をモードM1の場合の約半分にしている。また、ピークP2〜P5の中心時刻Ta2、Tb2、Tc2、Td2は、サーボマークに応じた位置信号PosA〜PosDの中心、すなわちバースト部の中心に相当する時刻(復調中心時刻)に近づけている。より具体的には、モードM2の場合のピークP2〜P5は、モードM1の場合のピークP2〜P5の立ち上がり及び立ち下がりタイミングにおいて、上述した復調中心時刻に近い側の立ち上がり又は立ち下がりタイミングを基準に、遠い側の立ち上がり又は立ち下がりタイミングをその基準に近づけたものである。
【0049】
したがって、モードM2が設定された場合のピークP2〜P5では、モードM1の場合と比較して、(Ta2+Tb2)/2として見積もられるPosNの中心と、(Tc2+Td2)/2として見積もられるPosQの中心とが復調中心時刻側にシフトする。このため、モードM2が設定された場合のピークP2〜P5では、上述したシミュレーションで示したように、磁気ヘッド4の半径方向の速度増加に伴ったPosN、PosQのシフトに対応していることから、磁気ヘッド4の実位置と復調位置との誤差の改善が見込まれる。
【0050】
なお、このモードM2が設定された場合のピークP2〜P5のタイミングも、モードM1の場合と同様に、サーボマークを基準に位置信号PosA〜PosDの位置として見積もられる時刻に対応して予めレジスタなどに書きこまれた値を参照して生成される。
【0051】
ここで、2相のNULLパターンに対応したゲート信号について説明する。図16は、NULLパターンの場合のゲート信号を例示する概念図である。図16に示すように、NULLパターンの場合も上述した4相の場合と同様に、位置信号PosNの読み出しに対応したピークPNと、位置信号PosQの読み出しに対応したピークPQとを含むゲート信号が生成される。
【0052】
具体的には、ゲート選択信号に応じてモードM1が設定される場合、ピークPN、PQの中心時刻Tn1、Tq1は、サーボマークに応じた位置信号PosN、PosQの位置の中心と一致する。また、ピークPN、PQの期間は、サーボマークに応じた位置信号PosN、PosQの幅と略一致する。このモードM1が設定された場合のピークPN、PQのタイミングは、サーボマークを基準に位置信号PosN、PosQの位置として見積もられる時刻に対応して予めレジスタなどに書きこまれた値を参照して生成される。
【0053】
また、ゲート選択信号に応じてモードM2が設定される場合、ピークPN、PQは、モードM1の場合と比較して、読み出し期間が短く(幅を短く)されている。具体的には、読み出し期間がモードM1の場合の約半分にされている。また、ピークPN、PQの中心時刻Tn2、Tq2は、サーボマークに応じた位置信号PosN、PosQの中心、すなわちバースト部の中心に相当する時刻(復調中心時刻)に近づけている。より具体的には、モードM2の場合のピークPN、PQは、モードM1の場合のピークPN、PQの立ち上がり及び立ち下がりタイミングにおいて、上述した復調中心時刻に近い側の立ち上がり又は立ち下がりタイミングを基準に、遠い側の立ち上がり又は立ち下がりタイミングをその基準に近づけたものである。
【0054】
したがって、モードM2が設定された場合のピークPN、PQでは、モードM1の場合と比較して、PosNの中心と、PosQの中心とが復調中心時刻側にシフトする。このため、モードM2が設定された場合のピークPN、PQでは、上述したシミュレーションで示したように、磁気ヘッド4の半径方向の速度増加に伴ったPosN、PosQのシフトに対応していることから、磁気ヘッド4の実位置と復調位置との誤差の改善が見込まれる。
【0055】
なお、このモードM2が設定された場合のピークPN、PQのタイミングも、モードM1の場合と同様に、サーボマークを基準に位置信号PosN、PosQの位置として見積もられる時刻に対応して予めレジスタなどに書きこまれた値を参照して生成される。
【0056】
図12に戻り、MCU19は、位置復調部20と、誤差演算器21と、ゲイン補正部22と、サーボコントローラ23とを有する。この各部は、MCU19の機能をブロック化したものである。位置復調部20は、上述した計算式に従い、サーボ復調回路16からのトラック番号、PosA、PosB、PosC、PosDから復調位置(Position)を算出する。また、位置復調部20は、サーボコントローラ23の制御の元で仮想円制御が行われる場合、ディスク6の偏心を無視するように位置軌道(仮想円軌道)を与えて、PosA、PosB、PosC、PosDから除去し、復調位置を得ている。
【0057】
ここで、位置復調部20の構成について詳細に説明する。図17は、位置復調部20の構成を示すブロック図である。図17に示すように、演算器42、44は、サーボ復調回路16から出力されるPosA〜PosDをもとに、上述した式(1)、(2)によりPosN、PosQを算出する。乗算器48、50では、算出されたPosN、PosQにポジション感度ゲインテーブル46からのポジション感度ゲインを乗算する。
【0058】
ポジション感度ゲインは、PosN、PosQを使用して、位置を求める際の変換係数であり、トラック位置に応じて変化する。ポジション感度ゲインテーブル46は、ゾーン毎のポジション感度ゲインを保持し、復調されたトラック位置に応じたゾーンのポジション感度ゲインが読み出される。尚、このポジション感度ゲインの補正については、例えば、特開平8−195044号公報(平成8年(1996年)7月30日公開)等で詳細に説明されている。
【0059】
次に、速度オフセットの補正を行なう。速度オフセット補正については、後述する。速度オフセット補正されたPosN、PosQは、位置選択部52でいずれかが選択され、位置を示すPosEが得られる。
【0060】
位置加算部68は、復調されたトラック番号に、オフセット(リード、ライト素子の位置の差)と、位置を示すPosEを加算する。仮想円制御では、仮想円軌道テーブル62が設けられている。仮想円軌道は、ディスク6上のセクタに同期して生成され、かつその位相・振幅は、装置個体およびヘッド毎にさまざまである。そのような位置軌道を生成するために、
位置軌道=S[Head]×sin(ωt) + C[Head]×cos(ωt) (6)
の式で表現する。尚、ωは、ディスクの回転角周波数である。この係数SおよびCの値を、ヘッド毎に、仮想円軌道テーブル62に格納する。図19は、仮想円軌道テーブル62の説明図である。図19に示すように、仮想円軌道テーブル62は、ヘッド0、1…n毎に、正弦波の係数Sと余弦波の係数Cを格納したテーブルである。
【0061】
仮想円軌道テーブル62を、ヘッド番号Headで索引し、対応する正弦波の係数Sと余弦波の係数Cを引き出し、前述の位置軌道の式で位置軌道を生成する。位置加算部68は、前述のトラック番号、オフセット、位置を示すPosEの加算値から位置軌道を差し引き、復調位置を出力する。
【0062】
次に、前述の速度オフセット補正について説明する。アクチュエータの速度Vは、磁気ヘッド4が追従している円軌道基準の速度である。このため、回転するディスク6の円軌道600に追従せず、仮想円軌道上で位置決めしている場合には、位置決めしている仮想円軌道とディスク6の円軌道600との相対速度分の誤差ΔVが生じる。
【0063】
図18に示すように、仮想円軌道に位置決めするための補正軌道は正弦波(サイン)を示すので、相対速度は、余弦波(コサイン)になり、簡単に計算できる。実際には、前述のように、仮想円軌道は、ディスク6上のセクタに同期して生成され、かつその位相・振幅は装置個体およびヘッド毎にさまざまである。そのような位置軌道を生成するために、ωを、ディスクの回転角周波数とすると、
位置軌道=S[Head]×sin(ωt) + C[Head]×cos(ωt)
の式で表現して、仮想円軌道テーブル62に、正弦波の係数Sおよび余弦波の係数Cの値をヘッド毎に格納する。場合によっては、係数SおよびCの値のテーブルを、ディスクの半径方向の場所毎に持っても良い。
【0064】
このとき、仮想円軌道の速度(相対速度)は、この位置軌道を微分することによって、得られる。即ち、
軌道の速度={S[Head]×cos(ωt) − C[Head]×sin(ωt)}/ω (7)
で表現できる。したがって、位置軌道から軌道の速度は、位置軌道を微分する微分器64により計算する。位置軌道は、サンプルごとに変化するのであるから、この速度もサンプルごとに変化する。したがって、それに伴うPosNおよびPosQの速度オフセットも、サンプルごとに変化する。仮想円軌道上に誤差「0」で位置決めできていたとしても、この速度オフセットはサンプルごとに計算して加えつづけなければならない。
【0065】
また、シーク動作を実行しているときには、アクチュエータにはさらに速度が発生している。この速度Vは、シーク制御中には常に計算されており、現在の速度および次のサンプルでの速度は、常に把握されている。そのため、このシーク制御に伴う速度Vを、先の軌道に起因した誤差ΔVと加算器66であわせて、PosN、PosQの速度オフセット補正に用いる。
【0066】
PosN、PosQの速度オフセット補正は、加算器54、56で速度オフセットの値を、PosN、PosQに加算する。この速度オフセット値は次の式で求まる。速度に掛ける係数は、図3、4に示したサーボパターンの仕様(グレイコードのビット0からPosAとPosBの境界、及びPosCとPosDの境界)から一意に求めることができ、各々アンプ58、61のゲインとして設定する。
【0067】
PosNオフセット=速度×(グレイコード ビット0〜PosAとPosB境界の時間)/サンプル周期 (8)
PosQオフセット=速度×(グレイコード ビット0〜PosCとPosD境界の時間)/サンプル周期 (9)
即ち、係数は、図3、4のグレイコード(トラック番号)のビット0からPosAとPosBの境界の時間、PosCとPosDの境界の時間から決定される。
【0068】
このように、仮想円制御では、既知の正弦波位置軌道から相対速度を計算できる(位置がSin→速度はCos)ので、トラッキング時のPosNおよびPosQのオフセットは一意に求まる。
【0069】
図17に示したように、仮想円軌道の仮想円軌道テーブル62の出力からは、位置軌道と速度軌道の2つが得られる。このうちの誤差ΔVは、アクチュエータの仮想円軌道からの相対速度Vと加算され、PosNおよびPosQの復調位置の算出の際に入力される。入力された(誤差ΔV+相対速度V)は、加算器54、56でPosNおよびPosQに合成されて復調位置として計算される。
【0070】
図12に戻り、誤差演算器21は、復調位置yから目標位置rを差し引き、位置誤差を出力する第1の演算器と、トラック位置から目標位置を差し引き、位置誤差を出力する第2の演算器とを有する(図示しない)。ゲイン補正部22は、実速度と予め設定された制限速度とを比較し、速度を判定する。また、ゲイン補正部22は、サーボコントローラ23へ出力する位置誤差を、第1の演算器の位置誤差と、第2の演算器の位置誤差とから選択して、サーボコントローラ23に出力する。
【0071】
サーボコントローラ23は、位置誤差に応じて制御量を算出する周知のサーボコントローラである。また、サーボコントローラ23は、位置誤差に応じて、コアース制御、整定制御、フォロイング制御を実行する。図20は、サーボコントローラ23の動作説明図である。
【0072】
図20に示すように、コアース制御は、目標位置への速度制御である。コアース制御は、速度制御、PD制御、又は定常バイアス推定を含まないオブザーバ制御等により構成されている。また、コアース制御は、加速、定速、減速と、制御モードを切り替える。この加速モードは、電流を流し、速度を速くする制御である。定速モードは、電流を「0」にして、速度を一定速度に保つ制御である。減速モードは、電流を加速時とは反対方向に流し、速度を目標位置付近でゼロに近くする制御である。距離が小さい場合には、定速モードは含まれない。
【0073】
フォロイング制御は、磁気ヘッドを目標位置に追従する制御である。フォロイング制御は、PID制御、PI×LeadLag、定常バイアス推定を含むオブザーバ制御等で構成される。整定制御は、コアース制御とフォロイング制御とのつなぎを行うための制御モードである。整定制御では、制御系に積分要素を含む。
【0074】
また、サーボコントローラ23は、HDC18からのコマンドに応じて、上述した仮想円制御の制御量を算出する。具体的には、サーボコントローラ23は、磁気ヘッド4をディスク6の偏心に追従させず(アクチュエータの駆動を停止させ)、スピンドルモータ5の軸中心401を中心とする真円(仮想円)に磁気ヘッド4の軌跡400を一致させる。また、サーボコントローラ23は、仮想円制御の有無に応じたゲート選択信号を出力する。
【0075】
図21は、ゲート選択信号の出力にかかる動作の一例を示すフローチャートである。図21に示すように、サーボコントローラ23は、HDC18からのコマンドをもとに、仮想円制御を行うか否かを判定する(S1)。仮想円制御を行う場合(S1:YES)、サーボコントローラ23は、モードM2の設定を行うゲート選択信号をサーボ復調回路16へ出力する(S2)。シーク動作を行わない場合(S1:NO)、サーボコントローラ23は、モードM1の設定を行うゲート選択信号をサーボ復調回路16へ出力する(S3)。したがって、ディスク記憶装置100では、仮想円制御を行う際には、モードM2の設定に応じたゲート信号が生成されて、サーボマークから位置信号が読み出されることとなる。
【0076】
<実施形態にかかるディスク記憶装置によるシミュレーション>
ここで、実際の磁気ヘッド4の位置と、復調位置との関係を見るため、実施形態にかかるディスク記憶装置100をモデルに仮想線制御を行っている場合をシミュレーションしてみる。なお、このシミュレーションは、例えば面積パターンの場合であり、バースト部から4相の位置信号PosA、PosB、PosC、PosDを得て復調位置を復調している。
【0077】
図22−1は、実施形態にかかるディスク記憶装置100のシミュレーション結果において、磁気ヘッド4の実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。また、図22−2は、実施形態にかかるディスク記憶装置100のシミュレーション結果において、磁気ヘッド4の実位置と復調位置との関係を示すグラフである。図22−3は、実施形態にかかるディスク記憶装置100のシミュレーション結果において、相対速度起因の位置誤差を示すグラフである。
【0078】
図22−1、22−2、22−3では、偏心が50umのディスク6を7200rpmで回転させて仮想円制御を実施した場合のシミュレーション結果を示している。このシミュレーションでは、磁気ヘッド4とディスク6との間の最大相対速度は10.5トラック/サンプルとなる。すなわち、図6−1、6−2、6−3の場合と同一の条件でシミュレーションを行っている。
【0079】
図22−1、図22−2、22−3に示すように、実施形態にかかるディスク記憶装置100では、磁気ヘッド4の実位置と復調位置との間の誤差は、0.08トラック相当(波形の山と谷との差分)になる。すなわち、従来の場合と比較して、約12.5パーセントの改善となっている。
【0080】
同様に、例えばNULLパターンの場合であり、バースト部から2相の位置信号PosN、PosQを得て復調位置を復調する場合の、実施形態にかかるディスク記憶装置100のシミュレーション結果を例示する。図23−1は、実施形態にかかるディスク記憶装置100のシミュレーション結果において、磁気ヘッド4の実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。また、図23−2は、実施形態にかかるディスク記憶装置100のシミュレーション結果において、磁気ヘッド4の実位置と復調位置との関係を示すグラフである。図23−3は、実施形態にかかるディスク記憶装置100のシミュレーション結果において、相対速度起因の位置誤差を示すグラフである。
【0081】
図23−1、23−2、23−3では、偏心が50umのディスク6を7200rpmで回転させて仮想円制御を実施した場合のシミュレーション結果を示している。このシミュレーションでは、磁気ヘッド4とディスク6との間の最大相対速度は10.5トラック/サンプルとなる。すなわち、図8−1、8−2、8−3の場合と同一の条件でシミュレーションを行っている。
【0082】
図23−1、図23−2、23−3に示すように、実施形態にかかるディスク記憶装置100では、磁気ヘッド4の実位置と復調位置との間の誤差は、0.02トラック相当(波形の山と谷との差分)になる。すなわち、従来の場合と比較して、約20パーセントの改善となっている。
【0083】
なお、仮想円制御では、1周内で相対速度が正弦波状に変化する。すなわち、1周内において相対速度は一定ではない。仮想円制御を行った時には、平均的には最大と最小との中間値分の相対オフセットが存在する。この相対オフセットも正弦波状に変化するので、偏心補正によりオフセットが補正され、オフセットは見かけ上は解消される。したがって、最大値と最小値の中間値からのずれ、すなわち最大値と最小値の差分の半分の値が、実際に制御を行なったときの位置誤差とみなせる。
【0084】
この観点からすると、本実施形態にかかるディスク記憶装置100では、従来面積パターンの場合と比較して約38パーセントの改善が見込まれる。また、NULLパターンの場合では、約73パーセントの改善が見込まれる。上述したように、実施形態にかかるディスク記憶装置100では、仮想円制御を行っている際の復調位置の誤差が改善されることから、例えば仮想円制御からシーク動作などを開始する際の応答性能を向上させることが可能となる。
【0085】
<相対速度に応じたゲート信号の切替>
次に、磁気ヘッド4の半径方向における移動速度と、ディスク6との間の相対速度に応じて、ゲート信号生成器33が生成するゲート信号を切替える場合について説明する。図24は、仮想円軌道、物理軌道、相対速度との関係を示すグラフである。
【0086】
図24に示すように、ディスク6のサーボトラック(物理軌道)と、仮想円軌道とは、ディスク6の偏心により、ディスク6の1周を1周期とする正弦状波形の関係にある。したがって、仮想円軌道をめぐる磁気ヘッド4と物理軌道との相対速度は、余弦状波形を示す。この相対速度には、波形からも明らかなように、復調位置の誤差を十分に小さく見積もれる低速な期間が存在する。この期間を相対速度の絶対値と、所定の判定基準値とを比較して求め、相対速度が低速な期間については、モードM1の設定に応じたゲート信号を生成するように切り替える。この切り替えにより、復調位置の誤差を十分に小さく見積もれる場合には、位置信号の読み出し期間を長くして対ノイズ性能を向上させる。
【0087】
図25は、相対速度に応じたゲート信号の切り替えにかかる動作の一例を示すフローチャートである。図25に示すように、処理が開始されると、算出手段としてのサーボコントローラ23は、磁気ヘッド4の半径方向における移動速度と、ディスク6との間の相対速度(Vest)を計算する(S10)。具体的には、仮想円制御を行っている際は、復調位置の微分が相対速度に該当することから、サーボコントローラ23は、サーボマークの読み出しに応じて位置復調部20により算出した復調位置を一つのサンプルとしてスタックし、次のサンプルと比較する(微分する)ことで相対速度を計算する。
【0088】
次いで、サーボコントローラ23は、Vestの絶対値が予め設定された基準速度(V1)以下、すなわち相対速度の大きさが基準速度(V1)以下であるか否かを判定する(S11)。相対速度の大きさが基準速度(V1)以下である場合(S11:YES)、サーボコントローラ23は、モードM1の設定を行うゲート選択信号をサーボ復調回路16へ出力する(S13)。
【0089】
相対速度の大きさが基準速度(V1)より大きい場合(S11:NO)、サーボコントローラ23は、モードM2の設定を行うゲート選択信号をサーボ復調回路16へ出力する(S12)。したがって、サーボ復調回路16では、相対速度が基準速度(V1)より大きい場合にモードM2の設定に応じたゲート信号が生成され、相対速度が基準速度(V1)以下である場合にモードM1の設定に応じたゲート信号が生成される。
【0090】
<磁気ヘッドごとにゲート信号を切り替える場合>
次に、磁気ヘッド4ごとにゲート信号を切り替える場合について説明する。図11に示すように、複数の磁気ヘッド4でディスク6の読み書きを行う場合には、製造上の誤差などにより、例え同じ仮想円制御を行ったとしても磁気ヘッド4同士で仮想円軌道の振幅が異なる。すなわち、磁気ヘッド4ごとに、仮想円軌道の振幅の大小で相対速度の大きさが異なり、復調位置の誤差の大きさも異なる。したがって、仮想円制御を行った際に、復調位置の誤差が大きい磁気ヘッド4についてはモードM2の設定に応じたゲート信号を生成させ、復調位置の誤差が小さい磁気ヘッド4についてはモードM1の設定に応じたゲート信号を生成させる。このように、磁気ヘッド4ごとにゲート信号を切替えることで、サーボパターンに含まれる位置信号の読み取りを適切に行うことができる。
【0091】
図26は、磁気ヘッド4ごとにゲート信号を切り替える場合の動作の一例を示すフローチャートである。図26に示すように、処理が開始されると、サーボコントローラ23は、HDC18からのコマンドをもとに、切り替え先のヘッド番号を取得する(S20)。
【0092】
次いで、サーボコントローラ23は、取得したヘッド番号に該当する対象磁気ヘッド4の仮想円軌道の振幅を求める(S21)。この振幅は、ヘッド番号ごとの振幅が工場出荷時などに設定されたROMまたはディスク上の記憶域の読み出しや、対象磁気ヘッド4を仮想円制御下で数周回転させた際に取得した復調位置の大きさなどから取得してよい。
【0093】
次いで、サーボコントローラ23は、取得した振幅が予め設定された閾値(L)以下であるか否かを判定する(S22)。振幅が閾値(L)以下である場合(S22:YES)、サーボコントローラ23は、モードM1の設定を行うゲート選択信号をサーボ復調回路16へ出力する(S24)。振幅が閾値(L)より大きい場合(S22:NO)、サーボコントローラ23は、モードM2の設定を行うゲート選択信号をサーボ復調回路16へ出力する(S23)。S23、S24に次いで、HDC18はヘッドの切り替えを行う。
【0094】
<実施形態にかかるディスク記憶装置を備える電子機器>
次に、実施形態にかかるディスク記憶装置100を備える電子機器を説明する。図27は、実施形態にかかるディスク記憶装置100を備える電子機器1000を例示するブロック図である。
【0095】
図27に示すように、電子機器1000は、ディスク記憶装置100、CPU110、ROM120(Read Only Memory)、RAM130(Random Access Memory)、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示部140、キーボードやポインティングデバイス等の操作部150、インターネット等と接続するための通信I/F160を備える。ディスク記憶装置100を含めた各部は、バス170により互いに接続され、CPU110の制御の元に動作する。電子機器1000の具体例としては、PC(Personal Computer)、ノートPC、HDDレコーダ、HDDを内蔵するテレビジョン受信装置等がある。
【0096】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0097】
100…ディスク記憶装置、3…VCM、4…磁気ヘッド、6…ディスク、5…スピンドルモータ、8…アーム、9…フレクシャ、13…VCM駆動回路、14…SPM駆動回路、15…リードチャネル、16…サーボ復調回路、17…バッファ、18…HDC、19…MCU、20…位置復調部、21…誤差演算器、22…ゲイン補正部、23…サーボコントローラ、30…プリアンプ、31…AGC回路、32…サーボマーク検出器、33…ゲート信号生成器、34…トラック番号検出器、35…PosA検出器、36…PosB検出器、37…PosC検出器、38…PosD検出器、60…サーボパターン、G1〜G5…ゲート信号、PosA〜PosQ…位置信号、P1〜PQ…ピーク、M1、M2…モード、1000…電子機器、400…軌跡、401…軸中心、600…円軌道、601…回転中心
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、仮想円制御を行うディスク記憶装置、ディスク記憶装置のコントローラ、ディスク記憶装置による制御方法及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスクなどへの読み書きをヘッドで行うディスク記憶装置では、ディスクの偏心に追従しない円軌道(仮想円)でヘッドの位置を制御する仮想円制御を行うものがある。この仮想円制御では、ディスクの偏心を無視するように位置軌道(仮想円軌道)を与え、トラック中心からのオフセット位置を検出するためのサーボパターンから復調したヘッドの位置(復調位置)からディスクの偏心に起因する位置揺れを差し引いた値を元に、ヘッドの制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−39116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、仮想円制御では、ディスクの偏心を無視するように制御することから、ヘッドとディスクとの間に相対速度が生じる。したがって、ヘッドがサーボパターンを斜めに横切ることとなるために復調位置に誤差が生じることから、仮想円制御においては、復調位置の誤差の改善が望まれていた。
【0005】
本発明の実施形態は、仮想円制御を行う際にサーボパターンからの復調位置の誤差を改善することを可能とするディスク記憶装置、ディスク記憶装置のコントローラ、ディスク記憶装置の制御方法及び電子機器を得ることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態のディスク記憶装置は、トラックごとに、トラック中心からのオフセット位置を検出するための複数の位置信号が記録された記録領域を有するサーボパターンが記録されたディスクと、回転する前記ディスクから当該ディスクに記録されたデータの読み出しを行うヘッドと、前記ヘッドを前記ディスクの半径方向に駆動する駆動手段と、読み出された前記データから複数の前記位置信号を読み出すタイミングを示す第1のタイミング信号を生成する信号生成手段と、生成された第1のタイミング信号に従って読み出された複数の前記位置信号をもとに、前記ヘッドの位置を復調する復調手段と、復調された前記ヘッドの位置を参照して前記駆動手段を制御する制御手段と、を備え、前記信号生成手段は、前記制御手段が前記ディスクの仮想円軌道に位置制御する際に、前記第1のタイミング信号に対して複数の前記位置信号のそれぞれを読み出す期間を短くするとともに、それぞれの期間の中心時刻を前記記録領域の中心に相当する復調中心時刻に近づけた第2のタイミング信号を生成することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、仮想円制御の説明図である。
【図2】図2は、仮想円制御の復調位置の説明図である。
【図3】図3は、ディスクに記録されるサーボパターンの一例を示す概念図である。
【図4】図4は、ディスクに記録されるサーボパターンの一例を示す概念図である。
【図5−1】図5−1は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。
【図5−2】図5−2は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置と復調位置との関係を示すグラフである。
【図6−1】図6−1は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。
【図6−2】図6−2は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置と復調位置との関係を示すグラフである。
【図6−3】図6−3は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、相対速度起因の位置誤差を示すグラフである。
【図7−1】図7−1は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。
【図7−2】図7−2は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置と復調位置との関係を示すグラフである。
【図8−1】図8−1は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。
【図8−2】図8−2は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置と復調位置との関係を示すグラフである。
【図8−3】図8−3は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、相対速度起因の位置誤差を示すグラフである。
【図9】図9は、実施形態にかかるディスク記憶装置の上面図である。
【図10】図10は、実施形態にかかるディスク記憶装置の断面図である。
【図11】図11は、実施形態にかかるディスク記憶装置の構成を示すブロック図である。
【図12】図12は、位置決め制御系にかかるブロック図である。
【図13】図13は、サーボ復調回路のブロック図である。
【図14】図14は、ゲート信号のタイムチャート図である。
【図15】図15は、ピークのタイミングが異なる様子を説明する概念図である。
【図16】図16は、NULLパターンの場合のゲート信号を例示する概念図である。
【図17】図17は、位置復調部の構成を示すブロック図である。
【図18】図18は、速度オフセット補正の説明図である。
【図19】図19は、仮想円軌道テーブルの説明図である。
【図20】図20は、サーボコントローラの動作説明図である。
【図21】図21は、ゲート選択信号の出力にかかる動作の一例を示すフローチャートである。
【図22−1】図22−1は、実施形態にかかるディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。
【図22−2】図22−2は、実施形態にかかるディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置と復調位置との関係を示すグラフである。
【図22−3】図22−3は、実施形態にかかるディスク記憶装置のシミュレーション結果において、相対速度起因の位置誤差を示すグラフである。
【図23−1】図23−1は、実施形態にかかるディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。
【図23−2】図23−2は、実施形態にかかるディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置と復調位置との関係を示すグラフである。
【図23−3】図23−3は、実施形態にかかるディスク記憶装置のシミュレーション結果において、相対速度起因の位置誤差を示すグラフである。
【図24】図24は、仮想円軌道、物理軌道、相対速度との関係を示すグラフである。
【図25】図25は、相対速度に応じたゲート信号の切り替えにかかる動作の一例を示すフローチャートである。
【図26】図26は、磁気ヘッドごとにゲート信号を切り替える場合の動作の一例を示すフローチャートである。
【図27】図27は、実施形態にかかるディスク記憶装置を備える電子機器を例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかるディスク記憶装置、ディスク記憶装置のコントローラ、ディスク記憶装置の制御方法及び電子機器を詳細に説明する。以下の実施形態では、磁気ディスクへの読み書きを磁気ヘッドで行うディスク記憶装置を例に説明する。なお、ディスク記憶装置は、DVD(Digital Versatile Disc)、MO(Magneto-Optic)等の光ディスク装置や、リードオンリーの装置(再生装置)であってもよいことは言うまでもないことである。
【0009】
<仮想円制御について>
先ず、仮想円制御について説明する。図1は、仮想円制御の説明図である。
【0010】
図1に示すように、ディスク記憶装置において、ディスク6を回転駆動させるスピンドルモータの軸中心401と、ディスク6の回転中心601とを完全に一致させることは極めて困難である。このため、軸中心401と回転中心601との間には微細なずれ(偏心)が生じている。
【0011】
この偏心に、磁気ヘッド4を追従することは、常時、磁気ヘッド4が揺れている(駆動電流が流れている)ことになり、消費電力が増大する。また磁気ヘッド4が複数ある場合、切り換え時の動作が不安定となりやすい。この問題を解決するために、偏心に追従するのではなく、偏心に追従しないでアクチュエータを制御する方法が提案されている。例えば、特開平9−128915号公報(平成9年(1997年)5月16日公開)で提案されている。磁気ヘッド4が偏心に追従しない場合は、スピンドルモータの軸中心401を中心とする真円(仮想円)に磁気ヘッド4の軌跡400が一致するため、磁気ヘッド4の揺れが無くなる。
【0012】
この提案においては、図2に示すように、偏心を無視するように位置軌道(仮想円軌道)を与え、ヘッドの復調信号から除去し、復調位置を得て、アクチュエータを制御することを記載する。これにより、図1に示すように、ディスク6の円周上に記録されたサーボパターン60の円軌道600に対し、位置信号を利用して、磁気ヘッド4が、スピンドルモータの軸中心401を中心とする軌跡400(円軌道)に位置決めされる。この場合、磁気ヘッド4はサーボパターン60を斜めに横切ることとなる(図3、4の矢印を参照)。
【0013】
<ディスクについて>
次に、ディスク6の詳細について説明する。図3は、ディスク6に記録されるサーボパターン60の一例を示す概念図である。図3に示すように、ディスク記憶装置が読み書きを行うディスク6には、回転中心から半径方向に円弧状に延びるサーボパターン60が記録されている。サーボパターン60は、磁気ヘッドを位置決めするために使用される情報である。
【0014】
ディスク6は、金属又はガラス製の円盤(ディスク)状の基板に磁性膜を形成した記憶媒体である。ディスク6へデータの記録を行う場合には、ディスク6のデータを記録する記録領域に磁気ヘッドから磁界をかけ、表面上の磁性体の磁化状態を変化させることによってデータを記録する。また、ディスク6からデータを読み出して再生する場合には、再生対象となるディスク6上の記録領域に磁気ヘッドを移動させ、ディスク6の磁性体の磁化状態を読み取ってデータを再生する。なお、ディスク6の記録方式は、垂直磁気記録方式、水平磁気記録方式のいずれであってもよい。
【0015】
サーボパターン60は、サーボマーク、グレイコード、バースト部を有する構成である。サーボマークは、サーボパターン60の先頭を示し、読み出しの基準となる基準マークである。グレイコードは、トラックごとのトラック番号(「2N」、「2N+1」、「2N+2」…)がデジタルデータで記録される。ディスク記憶装置では、グレイコードに記録されたトラック番号を復調することで、磁気ヘッドがどのトラック番号のトラックに位置しているかを検出できる。バースト部は、各トラックにおいてトラック中心からのオフセット位置を検出するため、位相の90度ずれた4相の面積パターンを示す位置信号PosA、PosB、PosC、PosDが記録される記録領域である。ディスク記憶装置では、バースト部に記録された位置信号PosA、PosB、PosC、PosDの振幅(面積に相当)を得て、検出されたトラック番号のトラック中心からの磁気ヘッドの位置(オフセット位置)を復調する。
【0016】
図4はディスク6に記録されるサーボパターン60の一例を示す概念図であり、より具体的にはサーボパターン60のバースト部に2相のNULLパターンが形成される場合を示す図である。図4に示すように、NULLパターンの場合は、位相の180度ずれた2相の位置信号PosN、PosQがバースト部に記録される。このNULLパターンは、図3の場合と類似するが、バースト部の幅を半分とすることができる。ディスク記憶装置では、バースト部に記録された位置信号PosN、PosQの振幅(面積に相当)ならびに位相が変化することを得て、検出されたトラック番号のトラック中心からの磁気ヘッドの位置(オフセット位置)を復調する。なお、特に図示しないが、NULLパターンと形状が類似するDCパターンの場合も同様であることは言うまでもないことである。
【0017】
<磁気ヘッドの位置の復調について>
ここで、位置信号PosA、PosB、PosC、PosDによる磁気ヘッドの位置の復調について説明する。まず、位置信号PosA、PosB、PosC、PosDを得ることで、以下の(1)、(2)式よりPosN、PosQを計算する。なお、NULLパターンの場合は、位置信号PosN、PosQが(1)、(2)式の結果に相当するので、この計算を省くことができる。
【0018】
PosN=PosA−PosB(1)
PosQ=PosC−PosD(2)
この位置信号の直線部分を使用して、復調位置(磁気ヘッドの現在位置)が復調される。この復調位置は、計算によって得られる。例えば、復調位置(Position)は、下記の式で計算する(たとえば、特開平8−195044号公報)。即ち、PosNの絶対値abs(PosN)と、PosQの絶対値abs(PosQ)との大きさを比較し、abs(PosN)≦abs(PosQ)である時は、下記(3)式により、復調位置を得る。
【0019】
Position=-sgn(PosQ)*PosN+Track(3)
但し、sgn(PosQ)*even(Track)>0.0である時は、下記(4)式を(3)式に加算する。
【0020】
Position+=sgn(PosQ)*sgn(PosN)*1.0 (4)
逆に、abs(PosN)≦abs(PosQ)でないときは、下記式(5)を使用する。
【0021】
Position=sgn(PosN)*(PosQ+even(Track)*0.5 )+Track (5)
ここで、sgn()は、()の符号、Trackは、トラック番号、even(Track)は、トラック番号が、偶数の時、「1」、奇数の時、「0」である。これを、C言語プログラムで記述すると、下記の如くなる。
【0022】
if(abs(PosN)≦abs(PosQ)){
Position=-sgn(PosQ)*PosN+Track;
if(sgn(PosQ)*even(Track)>0.0)
Position+=sgn(PosQ)*sgn(PosN)*1.0;
}else{
Position=sgn(PosN)*(PosQ+even(Track)*0.5)+Track;
【0023】
<従来のディスク記憶装置によるシミュレーション>
ここで、実際の磁気ヘッドの位置と、復調位置との関係を見るため、従来のディスク記憶装置をモデルにシミュレーションしてみる。なお、このシミュレーションは、例えば面積パターンの場合であり、バースト部から4相の位置信号PosA、PosB、PosC、PosDを得て復調位置を復調している。
【0024】
図5−1、6−1は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。また、図5−2、6−2は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置と復調位置との関係を示すグラフである。図6−3は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、相対速度起因の位置誤差を示すグラフである。
【0025】
図5−1、図5−2では、磁気ヘッドの半径方向の速度が0トラック/サンプルのシミュレーション結果を示している。図5−1に示すように、磁気ヘッドの半径方向の速度が0トラック/サンプルである場合は、PosNとPosQとの間の位相関係は0.5トラックずれた関係であり、バースト部の記録と合致している。したがって、図5−2に示すように、磁気ヘッドの実位置と復調位置と間には誤差が生じていない。
【0026】
図6−1、6−2、6−3では、偏心が50umのディスクを7200rpmで回転させて仮想円制御を実施した場合のシミュレーション結果を示している。このシミュレーションでは、磁気ヘッドとディスクとの間の最大相対速度は10.5トラック/サンプルとなる。
【0027】
上述した条件で仮想円制御を行う場合、図6−1に示すように、PosNとPosQとの間の位相関係は図5−1に示した状態からずれたものとなる。より具体的には、PosNが図の右方向(トラック増加方向)に、PosQが図の左方向(トラック減少方向)にシフトしている。したがって、図6−2に示すように、磁気ヘッドの実位置と復調位置と間には誤差が生じている。この誤差は、図6−3に示すように、0.13トラック相当(波形の山と谷との差分)になる。
【0028】
同様に、例えばNULLパターンの場合であり、バースト部から2相の位置信号PosN、PosQを得て復調位置を復調する場合の、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果を例示する。図7−1、8−1は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。また、図7−2、8−2は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置と復調位置との関係を示すグラフである。図8−3は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、相対速度起因の位置誤差を示すグラフである。
【0029】
図7−1、図7−2では、磁気ヘッドの半径方向の速度が0トラック/サンプルのシミュレーション結果を示している。図7−1に示すように、NULLパターンの場合も、磁気ヘッドの半径方向の速度が0トラック/サンプルである場合は、PosNとPosQとの間の位相関係は0.5トラックずれた関係であり、バースト部の記録と合致している。したがって、図7−2に示すように、磁気ヘッドの実位置と復調位置と間には誤差が生じていない。
【0030】
図8−1、8−2、8−3では、偏心が50umのディスクを7200rpmで回転させて仮想円制御を実施した場合のシミュレーション結果を示している。このシミュレーションでは、磁気ヘッドとディスクとの間の最大相対速度は10.5トラック/サンプルとなる。
【0031】
上述した条件で仮想円制御を行う場合、NULLパターンの場合も同様、図8−1に示すように、PosNとPosQとの間の位相関係は図7−1に示した状態からずれたものとなる。より具体的には、PosNが図の右方向(トラック増加方向)に、PosQが図の左方向(トラック減少方向)にシフトしている。したがって、図8−2に示すように、磁気ヘッドの実位置と復調位置と間には誤差が生じている。この誤差は、図8−3に示すように、0.06トラック相当(波形の山と谷との差分)になる。以上のように、仮想円制御を行う場合には復調位置に誤差が生じることとなる。
【0032】
<実施形態にかかるディスク記憶装置>
ここで、実施形態にかかるディスク記憶装置について説明する。図9は、実施形態のディスク記憶装置100にかかる上面図である。図10は、実施形態にかかるディスク記憶装置100の断面図である。この実施形態では、ディスク記憶装置100としてハードディスク装置を例にしてある。
【0033】
図9及び図10に示すように、ディスク6は、基板(円板)に磁気記録層を設けて構成される。ディスク6は、例えば2.5インチの大きさであり、ドライブ内に、3枚設けられている。スピンドルモータ5は、ディスク6を支持し、且つ回転する。磁気ヘッド4は、アクチュエータに設けられている。この磁気ヘッド4は、3枚のディスク6の表面や裏面に対応して複数設けられている。アクチュエータは、VCM3(ボイスコイルモータ)と、アーム8と、フレクシャ9(サスペンション)を有する。フレクシャ9の先端に、磁気ヘッド4が取り付けられている。
【0034】
磁気ヘッド4は、ディスク6のデータを読み取り、データを書き込む。磁気ヘッド4は、MR素子(再生素子)と、ライト素子とを有する。VCM3は、磁気ヘッド4をディスク6の半径方向に駆動し、ディスク6の所望のトラックに位置付ける。VCM3及びスピンドルモータ5は、ドライブベース2に設けられる。カバー1は、ドライブベース2を覆い、ドライブ内部を外部から隔離する。プリント板7は、ドライブベース2の下に設けられ、ドライブの制御回路を搭載する。コネクタ10は、ドライブベース2の下に設けられ、制御回路と外部とを接続する。このドライブは、小型であり、例えばノートパソコン等の内蔵ディスクとして使用される。
【0035】
図11は、実施形態にかかるディスク記憶装置100の構成を示すブロック図である。HDC18(ハードディスクコントローラ)は、ホストCPU(Central Processing Unit)との間での各種コマンドの授受、データの授受等のホストCPUとのインターフェース制御及び磁気ディスク媒体上の記録再生フォーマットを制御するための磁気ディスク装置内部の制御信号の発生等を行う。バッファ17は、ホストCPUよりのライトデータの一時的な記憶及び磁気ディスク媒体よりのリードデータの一時的な記憶に使用される。
【0036】
MCU19(マイクロコントローラ)は、マイクロプロセッサ(MPU)、メモリ、DAコンバータ、ADコンバータ等で構成されている。MCU19は、磁気ヘッド4の位置決めのためのサーボ制御(位置決め制御)等を行う。MCU19は、メモリに記憶されたプログラムを実行して、サーボ復調回路16よりの位置信号を認識し、位置決めのためのVCM3のVCM制御電流の制御値を計算する。更に、MCU19は、SPM駆動回路14の駆動電流の制御を行う。
【0037】
VCM駆動回路13は、VCM3に駆動電流を流すためのパワーアンプで構成される。SPM駆動回路14は、ディスク6を回転するスピンドルモータ5に駆動電流を流すためのパワーアンプで構成される。
【0038】
リードチャネル15は、記録再生を行うための回路である。リードチャネル15は、ホストCPUよりのライトデータをディスク6に記録するための変調回路、パラレルシリアル変換回路、ディスク6よりデータを再生するための復調回路、シリアルパラレル変換回路等を有する。サーボ復調回路16は、図13にて後述するように、ディスク6に記録されたサーボパターン60を復調する回路であり、MCU19に復調した位置信号を出力する。
【0039】
尚、図示されていないが、ドライブHDA内には、磁気ヘッド4に記録電流を供給するライトアンプと、磁気ヘッド4よりの再生電圧を増幅するプリアンプとを内蔵したヘッドICが設けられている。
【0040】
ここで、MCU19が実行する位置決め制御系について説明する。図12は、位置決め制御系にかかるブロック図である。
【0041】
図12に示すように、位置決め制御系は、MCU19と、VCM駆動回路13と、SPM駆動回路14と、サーボ復調回路16とで構成されている。MCU19は、サーボ復調回路16よりの位置信号をもとに、VCM駆動回路13、SPM駆動回路14の駆動を制御する制御信号を出力する。また、MCU19は、サーボ復調回路16で生成されるゲート信号を選択するゲート選択信号を出力する(詳細は後述する)。
【0042】
図13は、サーボ復調回路16のブロック図である。図13に示すように、サーボ復調回路16は、プリアンプ30、AGC回路31、サーボマーク検出器32、ゲート信号生成器33、トラック番号検出器34、PosA検出器35、PosB検出器36、PosC検出器37、PosD検出器38を備える。
【0043】
プリアンプ30は、リードチャネル15からの読み取り信号を増幅する。AGC回路31(自動ゲイン制御)は、読み取り信号のゲインを調整して、読み取り信号の振幅を一定に制御する。サーボマーク検出器32は、読み取り信号からサーボマーク(図3、4参照)を検出する。
【0044】
ゲート信号生成器33は、サーボマークの検出に応じて、入力される基準クロックに同期したタイミングでトラック番号検出器34、PosA検出器35、PosB検出器36、PosC検出器37、PosD検出器38のゲート信号を生成する。図14は、ゲート信号のタイムチャート図である。図14に示すように、ゲート信号生成器33は、サーボマークの検出に応じて、読み取り信号に含まれるトラック番号の読み取りタイミングに合わせたピークP1を有するゲート信号G1を生成する。また、ゲート信号生成器33は、サーボマークの検出に応じて、読み取り信号に含まれる位置信号PosAの読み取りタイミングに合わせたピークP2を有するゲート信号G2を生成する。また、ゲート信号生成器33は、サーボマークの検出に応じて、読み取り信号に含まれる位置信号PosBの読み取りタイミングに合わせたピークP3を有するゲート信号G3を生成する。また、ゲート信号生成器33は、サーボマークの検出に応じて、読み取り信号に含まれる位置信号PosCの読み取りタイミングに合わせたピークP4を有するゲート信号G4を生成する。また、ゲート信号生成器33は、サーボマークの検出に応じて、読み取り信号に含まれる位置信号PosDの読み取りタイミングに合わせたピークP5を有するゲート信号G5を生成する。
【0045】
トラック番号検出器34は、ゲート信号G1に従って読み取り信号に含まれるトラック番号を検出(読み出し)し、そのトラック番号を出力する。PosA検出器35は、ゲート信号G2に従って読み取り信号に含まれる位置信号PosAを検出(読み出し)し、その振幅をPosAとして出力する。PosB検出器36は、ゲート信号G3に従って読み取り信号に含まれる位置信号PosBを検出(読み出し)し、その振幅をPosBとして出力する。PosC検出器37は、ゲート信号G4に従って読み取り信号に含まれる位置信号PosCを検出(読み出し)し、その振幅をPosCとして出力する。PosD検出器38は、ゲート信号G5に従って読み取り信号に含まれる位置信号PosDを検出(読み出し)し、その振幅をPosDを出力する。
【0046】
なお、ゲート信号生成器33は、MCU19より出力されるゲート選択信号に応じて設定される動作モードに従って、ピークP2〜P5のタイミングが異なるゲート信号G2〜G5を生成する。
【0047】
図15は、ピークP2〜P5のタイミングが異なる様子を説明する概念図である。図15に示すように、ゲート選択信号に応じてモードM1が設定される場合、ゲート信号生成器33が生成するゲート信号G2〜G5に含まれるピークP2〜P5の中心時刻Ta1、Tb1、Tc1、Td1は、サーボマークに応じた位置信号PosA〜PosDの位置の中心と一致する。また、ピークP2〜P5の期間は、サーボマークに応じた位置信号PosA〜PosDの幅と略一致する。このモードM1が設定された場合のピークP2〜P5のタイミングは、サーボマークを基準に位置信号PosA〜PosDの位置として見積もられる時刻に対応して予めレジスタなどに書きこまれた値を参照して生成される。
【0048】
また、ゲート選択信号に応じてモードM2が設定される場合、ゲート信号生成器33が生成するゲート信号G2〜G5に含まれるピークP2〜P5は、モードM1の場合と比較して、読み出し期間を短く(幅を短く)している。具体的には、読み出し期間をモードM1の場合の約半分にしている。また、ピークP2〜P5の中心時刻Ta2、Tb2、Tc2、Td2は、サーボマークに応じた位置信号PosA〜PosDの中心、すなわちバースト部の中心に相当する時刻(復調中心時刻)に近づけている。より具体的には、モードM2の場合のピークP2〜P5は、モードM1の場合のピークP2〜P5の立ち上がり及び立ち下がりタイミングにおいて、上述した復調中心時刻に近い側の立ち上がり又は立ち下がりタイミングを基準に、遠い側の立ち上がり又は立ち下がりタイミングをその基準に近づけたものである。
【0049】
したがって、モードM2が設定された場合のピークP2〜P5では、モードM1の場合と比較して、(Ta2+Tb2)/2として見積もられるPosNの中心と、(Tc2+Td2)/2として見積もられるPosQの中心とが復調中心時刻側にシフトする。このため、モードM2が設定された場合のピークP2〜P5では、上述したシミュレーションで示したように、磁気ヘッド4の半径方向の速度増加に伴ったPosN、PosQのシフトに対応していることから、磁気ヘッド4の実位置と復調位置との誤差の改善が見込まれる。
【0050】
なお、このモードM2が設定された場合のピークP2〜P5のタイミングも、モードM1の場合と同様に、サーボマークを基準に位置信号PosA〜PosDの位置として見積もられる時刻に対応して予めレジスタなどに書きこまれた値を参照して生成される。
【0051】
ここで、2相のNULLパターンに対応したゲート信号について説明する。図16は、NULLパターンの場合のゲート信号を例示する概念図である。図16に示すように、NULLパターンの場合も上述した4相の場合と同様に、位置信号PosNの読み出しに対応したピークPNと、位置信号PosQの読み出しに対応したピークPQとを含むゲート信号が生成される。
【0052】
具体的には、ゲート選択信号に応じてモードM1が設定される場合、ピークPN、PQの中心時刻Tn1、Tq1は、サーボマークに応じた位置信号PosN、PosQの位置の中心と一致する。また、ピークPN、PQの期間は、サーボマークに応じた位置信号PosN、PosQの幅と略一致する。このモードM1が設定された場合のピークPN、PQのタイミングは、サーボマークを基準に位置信号PosN、PosQの位置として見積もられる時刻に対応して予めレジスタなどに書きこまれた値を参照して生成される。
【0053】
また、ゲート選択信号に応じてモードM2が設定される場合、ピークPN、PQは、モードM1の場合と比較して、読み出し期間が短く(幅を短く)されている。具体的には、読み出し期間がモードM1の場合の約半分にされている。また、ピークPN、PQの中心時刻Tn2、Tq2は、サーボマークに応じた位置信号PosN、PosQの中心、すなわちバースト部の中心に相当する時刻(復調中心時刻)に近づけている。より具体的には、モードM2の場合のピークPN、PQは、モードM1の場合のピークPN、PQの立ち上がり及び立ち下がりタイミングにおいて、上述した復調中心時刻に近い側の立ち上がり又は立ち下がりタイミングを基準に、遠い側の立ち上がり又は立ち下がりタイミングをその基準に近づけたものである。
【0054】
したがって、モードM2が設定された場合のピークPN、PQでは、モードM1の場合と比較して、PosNの中心と、PosQの中心とが復調中心時刻側にシフトする。このため、モードM2が設定された場合のピークPN、PQでは、上述したシミュレーションで示したように、磁気ヘッド4の半径方向の速度増加に伴ったPosN、PosQのシフトに対応していることから、磁気ヘッド4の実位置と復調位置との誤差の改善が見込まれる。
【0055】
なお、このモードM2が設定された場合のピークPN、PQのタイミングも、モードM1の場合と同様に、サーボマークを基準に位置信号PosN、PosQの位置として見積もられる時刻に対応して予めレジスタなどに書きこまれた値を参照して生成される。
【0056】
図12に戻り、MCU19は、位置復調部20と、誤差演算器21と、ゲイン補正部22と、サーボコントローラ23とを有する。この各部は、MCU19の機能をブロック化したものである。位置復調部20は、上述した計算式に従い、サーボ復調回路16からのトラック番号、PosA、PosB、PosC、PosDから復調位置(Position)を算出する。また、位置復調部20は、サーボコントローラ23の制御の元で仮想円制御が行われる場合、ディスク6の偏心を無視するように位置軌道(仮想円軌道)を与えて、PosA、PosB、PosC、PosDから除去し、復調位置を得ている。
【0057】
ここで、位置復調部20の構成について詳細に説明する。図17は、位置復調部20の構成を示すブロック図である。図17に示すように、演算器42、44は、サーボ復調回路16から出力されるPosA〜PosDをもとに、上述した式(1)、(2)によりPosN、PosQを算出する。乗算器48、50では、算出されたPosN、PosQにポジション感度ゲインテーブル46からのポジション感度ゲインを乗算する。
【0058】
ポジション感度ゲインは、PosN、PosQを使用して、位置を求める際の変換係数であり、トラック位置に応じて変化する。ポジション感度ゲインテーブル46は、ゾーン毎のポジション感度ゲインを保持し、復調されたトラック位置に応じたゾーンのポジション感度ゲインが読み出される。尚、このポジション感度ゲインの補正については、例えば、特開平8−195044号公報(平成8年(1996年)7月30日公開)等で詳細に説明されている。
【0059】
次に、速度オフセットの補正を行なう。速度オフセット補正については、後述する。速度オフセット補正されたPosN、PosQは、位置選択部52でいずれかが選択され、位置を示すPosEが得られる。
【0060】
位置加算部68は、復調されたトラック番号に、オフセット(リード、ライト素子の位置の差)と、位置を示すPosEを加算する。仮想円制御では、仮想円軌道テーブル62が設けられている。仮想円軌道は、ディスク6上のセクタに同期して生成され、かつその位相・振幅は、装置個体およびヘッド毎にさまざまである。そのような位置軌道を生成するために、
位置軌道=S[Head]×sin(ωt) + C[Head]×cos(ωt) (6)
の式で表現する。尚、ωは、ディスクの回転角周波数である。この係数SおよびCの値を、ヘッド毎に、仮想円軌道テーブル62に格納する。図19は、仮想円軌道テーブル62の説明図である。図19に示すように、仮想円軌道テーブル62は、ヘッド0、1…n毎に、正弦波の係数Sと余弦波の係数Cを格納したテーブルである。
【0061】
仮想円軌道テーブル62を、ヘッド番号Headで索引し、対応する正弦波の係数Sと余弦波の係数Cを引き出し、前述の位置軌道の式で位置軌道を生成する。位置加算部68は、前述のトラック番号、オフセット、位置を示すPosEの加算値から位置軌道を差し引き、復調位置を出力する。
【0062】
次に、前述の速度オフセット補正について説明する。アクチュエータの速度Vは、磁気ヘッド4が追従している円軌道基準の速度である。このため、回転するディスク6の円軌道600に追従せず、仮想円軌道上で位置決めしている場合には、位置決めしている仮想円軌道とディスク6の円軌道600との相対速度分の誤差ΔVが生じる。
【0063】
図18に示すように、仮想円軌道に位置決めするための補正軌道は正弦波(サイン)を示すので、相対速度は、余弦波(コサイン)になり、簡単に計算できる。実際には、前述のように、仮想円軌道は、ディスク6上のセクタに同期して生成され、かつその位相・振幅は装置個体およびヘッド毎にさまざまである。そのような位置軌道を生成するために、ωを、ディスクの回転角周波数とすると、
位置軌道=S[Head]×sin(ωt) + C[Head]×cos(ωt)
の式で表現して、仮想円軌道テーブル62に、正弦波の係数Sおよび余弦波の係数Cの値をヘッド毎に格納する。場合によっては、係数SおよびCの値のテーブルを、ディスクの半径方向の場所毎に持っても良い。
【0064】
このとき、仮想円軌道の速度(相対速度)は、この位置軌道を微分することによって、得られる。即ち、
軌道の速度={S[Head]×cos(ωt) − C[Head]×sin(ωt)}/ω (7)
で表現できる。したがって、位置軌道から軌道の速度は、位置軌道を微分する微分器64により計算する。位置軌道は、サンプルごとに変化するのであるから、この速度もサンプルごとに変化する。したがって、それに伴うPosNおよびPosQの速度オフセットも、サンプルごとに変化する。仮想円軌道上に誤差「0」で位置決めできていたとしても、この速度オフセットはサンプルごとに計算して加えつづけなければならない。
【0065】
また、シーク動作を実行しているときには、アクチュエータにはさらに速度が発生している。この速度Vは、シーク制御中には常に計算されており、現在の速度および次のサンプルでの速度は、常に把握されている。そのため、このシーク制御に伴う速度Vを、先の軌道に起因した誤差ΔVと加算器66であわせて、PosN、PosQの速度オフセット補正に用いる。
【0066】
PosN、PosQの速度オフセット補正は、加算器54、56で速度オフセットの値を、PosN、PosQに加算する。この速度オフセット値は次の式で求まる。速度に掛ける係数は、図3、4に示したサーボパターンの仕様(グレイコードのビット0からPosAとPosBの境界、及びPosCとPosDの境界)から一意に求めることができ、各々アンプ58、61のゲインとして設定する。
【0067】
PosNオフセット=速度×(グレイコード ビット0〜PosAとPosB境界の時間)/サンプル周期 (8)
PosQオフセット=速度×(グレイコード ビット0〜PosCとPosD境界の時間)/サンプル周期 (9)
即ち、係数は、図3、4のグレイコード(トラック番号)のビット0からPosAとPosBの境界の時間、PosCとPosDの境界の時間から決定される。
【0068】
このように、仮想円制御では、既知の正弦波位置軌道から相対速度を計算できる(位置がSin→速度はCos)ので、トラッキング時のPosNおよびPosQのオフセットは一意に求まる。
【0069】
図17に示したように、仮想円軌道の仮想円軌道テーブル62の出力からは、位置軌道と速度軌道の2つが得られる。このうちの誤差ΔVは、アクチュエータの仮想円軌道からの相対速度Vと加算され、PosNおよびPosQの復調位置の算出の際に入力される。入力された(誤差ΔV+相対速度V)は、加算器54、56でPosNおよびPosQに合成されて復調位置として計算される。
【0070】
図12に戻り、誤差演算器21は、復調位置yから目標位置rを差し引き、位置誤差を出力する第1の演算器と、トラック位置から目標位置を差し引き、位置誤差を出力する第2の演算器とを有する(図示しない)。ゲイン補正部22は、実速度と予め設定された制限速度とを比較し、速度を判定する。また、ゲイン補正部22は、サーボコントローラ23へ出力する位置誤差を、第1の演算器の位置誤差と、第2の演算器の位置誤差とから選択して、サーボコントローラ23に出力する。
【0071】
サーボコントローラ23は、位置誤差に応じて制御量を算出する周知のサーボコントローラである。また、サーボコントローラ23は、位置誤差に応じて、コアース制御、整定制御、フォロイング制御を実行する。図20は、サーボコントローラ23の動作説明図である。
【0072】
図20に示すように、コアース制御は、目標位置への速度制御である。コアース制御は、速度制御、PD制御、又は定常バイアス推定を含まないオブザーバ制御等により構成されている。また、コアース制御は、加速、定速、減速と、制御モードを切り替える。この加速モードは、電流を流し、速度を速くする制御である。定速モードは、電流を「0」にして、速度を一定速度に保つ制御である。減速モードは、電流を加速時とは反対方向に流し、速度を目標位置付近でゼロに近くする制御である。距離が小さい場合には、定速モードは含まれない。
【0073】
フォロイング制御は、磁気ヘッドを目標位置に追従する制御である。フォロイング制御は、PID制御、PI×LeadLag、定常バイアス推定を含むオブザーバ制御等で構成される。整定制御は、コアース制御とフォロイング制御とのつなぎを行うための制御モードである。整定制御では、制御系に積分要素を含む。
【0074】
また、サーボコントローラ23は、HDC18からのコマンドに応じて、上述した仮想円制御の制御量を算出する。具体的には、サーボコントローラ23は、磁気ヘッド4をディスク6の偏心に追従させず(アクチュエータの駆動を停止させ)、スピンドルモータ5の軸中心401を中心とする真円(仮想円)に磁気ヘッド4の軌跡400を一致させる。また、サーボコントローラ23は、仮想円制御の有無に応じたゲート選択信号を出力する。
【0075】
図21は、ゲート選択信号の出力にかかる動作の一例を示すフローチャートである。図21に示すように、サーボコントローラ23は、HDC18からのコマンドをもとに、仮想円制御を行うか否かを判定する(S1)。仮想円制御を行う場合(S1:YES)、サーボコントローラ23は、モードM2の設定を行うゲート選択信号をサーボ復調回路16へ出力する(S2)。シーク動作を行わない場合(S1:NO)、サーボコントローラ23は、モードM1の設定を行うゲート選択信号をサーボ復調回路16へ出力する(S3)。したがって、ディスク記憶装置100では、仮想円制御を行う際には、モードM2の設定に応じたゲート信号が生成されて、サーボマークから位置信号が読み出されることとなる。
【0076】
<実施形態にかかるディスク記憶装置によるシミュレーション>
ここで、実際の磁気ヘッド4の位置と、復調位置との関係を見るため、実施形態にかかるディスク記憶装置100をモデルに仮想線制御を行っている場合をシミュレーションしてみる。なお、このシミュレーションは、例えば面積パターンの場合であり、バースト部から4相の位置信号PosA、PosB、PosC、PosDを得て復調位置を復調している。
【0077】
図22−1は、実施形態にかかるディスク記憶装置100のシミュレーション結果において、磁気ヘッド4の実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。また、図22−2は、実施形態にかかるディスク記憶装置100のシミュレーション結果において、磁気ヘッド4の実位置と復調位置との関係を示すグラフである。図22−3は、実施形態にかかるディスク記憶装置100のシミュレーション結果において、相対速度起因の位置誤差を示すグラフである。
【0078】
図22−1、22−2、22−3では、偏心が50umのディスク6を7200rpmで回転させて仮想円制御を実施した場合のシミュレーション結果を示している。このシミュレーションでは、磁気ヘッド4とディスク6との間の最大相対速度は10.5トラック/サンプルとなる。すなわち、図6−1、6−2、6−3の場合と同一の条件でシミュレーションを行っている。
【0079】
図22−1、図22−2、22−3に示すように、実施形態にかかるディスク記憶装置100では、磁気ヘッド4の実位置と復調位置との間の誤差は、0.08トラック相当(波形の山と谷との差分)になる。すなわち、従来の場合と比較して、約12.5パーセントの改善となっている。
【0080】
同様に、例えばNULLパターンの場合であり、バースト部から2相の位置信号PosN、PosQを得て復調位置を復調する場合の、実施形態にかかるディスク記憶装置100のシミュレーション結果を例示する。図23−1は、実施形態にかかるディスク記憶装置100のシミュレーション結果において、磁気ヘッド4の実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。また、図23−2は、実施形態にかかるディスク記憶装置100のシミュレーション結果において、磁気ヘッド4の実位置と復調位置との関係を示すグラフである。図23−3は、実施形態にかかるディスク記憶装置100のシミュレーション結果において、相対速度起因の位置誤差を示すグラフである。
【0081】
図23−1、23−2、23−3では、偏心が50umのディスク6を7200rpmで回転させて仮想円制御を実施した場合のシミュレーション結果を示している。このシミュレーションでは、磁気ヘッド4とディスク6との間の最大相対速度は10.5トラック/サンプルとなる。すなわち、図8−1、8−2、8−3の場合と同一の条件でシミュレーションを行っている。
【0082】
図23−1、図23−2、23−3に示すように、実施形態にかかるディスク記憶装置100では、磁気ヘッド4の実位置と復調位置との間の誤差は、0.02トラック相当(波形の山と谷との差分)になる。すなわち、従来の場合と比較して、約20パーセントの改善となっている。
【0083】
なお、仮想円制御では、1周内で相対速度が正弦波状に変化する。すなわち、1周内において相対速度は一定ではない。仮想円制御を行った時には、平均的には最大と最小との中間値分の相対オフセットが存在する。この相対オフセットも正弦波状に変化するので、偏心補正によりオフセットが補正され、オフセットは見かけ上は解消される。したがって、最大値と最小値の中間値からのずれ、すなわち最大値と最小値の差分の半分の値が、実際に制御を行なったときの位置誤差とみなせる。
【0084】
この観点からすると、本実施形態にかかるディスク記憶装置100では、従来面積パターンの場合と比較して約38パーセントの改善が見込まれる。また、NULLパターンの場合では、約73パーセントの改善が見込まれる。上述したように、実施形態にかかるディスク記憶装置100では、仮想円制御を行っている際の復調位置の誤差が改善されることから、例えば仮想円制御からシーク動作などを開始する際の応答性能を向上させることが可能となる。
【0085】
<相対速度に応じたゲート信号の切替>
次に、磁気ヘッド4の半径方向における移動速度と、ディスク6との間の相対速度に応じて、ゲート信号生成器33が生成するゲート信号を切替える場合について説明する。図24は、仮想円軌道、物理軌道、相対速度との関係を示すグラフである。
【0086】
図24に示すように、ディスク6のサーボトラック(物理軌道)と、仮想円軌道とは、ディスク6の偏心により、ディスク6の1周を1周期とする正弦状波形の関係にある。したがって、仮想円軌道をめぐる磁気ヘッド4と物理軌道との相対速度は、余弦状波形を示す。この相対速度には、波形からも明らかなように、復調位置の誤差を十分に小さく見積もれる低速な期間が存在する。この期間を相対速度の絶対値と、所定の判定基準値とを比較して求め、相対速度が低速な期間については、モードM1の設定に応じたゲート信号を生成するように切り替える。この切り替えにより、復調位置の誤差を十分に小さく見積もれる場合には、位置信号の読み出し期間を長くして対ノイズ性能を向上させる。
【0087】
図25は、相対速度に応じたゲート信号の切り替えにかかる動作の一例を示すフローチャートである。図25に示すように、処理が開始されると、算出手段としてのサーボコントローラ23は、磁気ヘッド4の半径方向における移動速度と、ディスク6との間の相対速度(Vest)を計算する(S10)。具体的には、仮想円制御を行っている際は、復調位置の微分が相対速度に該当することから、サーボコントローラ23は、サーボマークの読み出しに応じて位置復調部20により算出した復調位置を一つのサンプルとしてスタックし、次のサンプルと比較する(微分する)ことで相対速度を計算する。
【0088】
次いで、サーボコントローラ23は、Vestの絶対値が予め設定された基準速度(V1)以下、すなわち相対速度の大きさが基準速度(V1)以下であるか否かを判定する(S11)。相対速度の大きさが基準速度(V1)以下である場合(S11:YES)、サーボコントローラ23は、モードM1の設定を行うゲート選択信号をサーボ復調回路16へ出力する(S13)。
【0089】
相対速度の大きさが基準速度(V1)より大きい場合(S11:NO)、サーボコントローラ23は、モードM2の設定を行うゲート選択信号をサーボ復調回路16へ出力する(S12)。したがって、サーボ復調回路16では、相対速度が基準速度(V1)より大きい場合にモードM2の設定に応じたゲート信号が生成され、相対速度が基準速度(V1)以下である場合にモードM1の設定に応じたゲート信号が生成される。
【0090】
<磁気ヘッドごとにゲート信号を切り替える場合>
次に、磁気ヘッド4ごとにゲート信号を切り替える場合について説明する。図11に示すように、複数の磁気ヘッド4でディスク6の読み書きを行う場合には、製造上の誤差などにより、例え同じ仮想円制御を行ったとしても磁気ヘッド4同士で仮想円軌道の振幅が異なる。すなわち、磁気ヘッド4ごとに、仮想円軌道の振幅の大小で相対速度の大きさが異なり、復調位置の誤差の大きさも異なる。したがって、仮想円制御を行った際に、復調位置の誤差が大きい磁気ヘッド4についてはモードM2の設定に応じたゲート信号を生成させ、復調位置の誤差が小さい磁気ヘッド4についてはモードM1の設定に応じたゲート信号を生成させる。このように、磁気ヘッド4ごとにゲート信号を切替えることで、サーボパターンに含まれる位置信号の読み取りを適切に行うことができる。
【0091】
図26は、磁気ヘッド4ごとにゲート信号を切り替える場合の動作の一例を示すフローチャートである。図26に示すように、処理が開始されると、サーボコントローラ23は、HDC18からのコマンドをもとに、切り替え先のヘッド番号を取得する(S20)。
【0092】
次いで、サーボコントローラ23は、取得したヘッド番号に該当する対象磁気ヘッド4の仮想円軌道の振幅を求める(S21)。この振幅は、ヘッド番号ごとの振幅が工場出荷時などに設定されたROMまたはディスク上の記憶域の読み出しや、対象磁気ヘッド4を仮想円制御下で数周回転させた際に取得した復調位置の大きさなどから取得してよい。
【0093】
次いで、サーボコントローラ23は、取得した振幅が予め設定された閾値(L)以下であるか否かを判定する(S22)。振幅が閾値(L)以下である場合(S22:YES)、サーボコントローラ23は、モードM1の設定を行うゲート選択信号をサーボ復調回路16へ出力する(S24)。振幅が閾値(L)より大きい場合(S22:NO)、サーボコントローラ23は、モードM2の設定を行うゲート選択信号をサーボ復調回路16へ出力する(S23)。S23、S24に次いで、HDC18はヘッドの切り替えを行う。
【0094】
<実施形態にかかるディスク記憶装置を備える電子機器>
次に、実施形態にかかるディスク記憶装置100を備える電子機器を説明する。図27は、実施形態にかかるディスク記憶装置100を備える電子機器1000を例示するブロック図である。
【0095】
図27に示すように、電子機器1000は、ディスク記憶装置100、CPU110、ROM120(Read Only Memory)、RAM130(Random Access Memory)、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示部140、キーボードやポインティングデバイス等の操作部150、インターネット等と接続するための通信I/F160を備える。ディスク記憶装置100を含めた各部は、バス170により互いに接続され、CPU110の制御の元に動作する。電子機器1000の具体例としては、PC(Personal Computer)、ノートPC、HDDレコーダ、HDDを内蔵するテレビジョン受信装置等がある。
【0096】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0097】
100…ディスク記憶装置、3…VCM、4…磁気ヘッド、6…ディスク、5…スピンドルモータ、8…アーム、9…フレクシャ、13…VCM駆動回路、14…SPM駆動回路、15…リードチャネル、16…サーボ復調回路、17…バッファ、18…HDC、19…MCU、20…位置復調部、21…誤差演算器、22…ゲイン補正部、23…サーボコントローラ、30…プリアンプ、31…AGC回路、32…サーボマーク検出器、33…ゲート信号生成器、34…トラック番号検出器、35…PosA検出器、36…PosB検出器、37…PosC検出器、38…PosD検出器、60…サーボパターン、G1〜G5…ゲート信号、PosA〜PosQ…位置信号、P1〜PQ…ピーク、M1、M2…モード、1000…電子機器、400…軌跡、401…軸中心、600…円軌道、601…回転中心
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラックごとに、トラック中心からのオフセット位置を検出するための複数の位置信号が記録された記録領域を有するサーボパターンが記録されたディスクと、
回転する前記ディスクから当該ディスクに記録されたデータの読み出しを行うヘッドと、
前記ヘッドを前記ディスクの半径方向に駆動する駆動手段と、
読み出された前記データから複数の前記位置信号を読み出すタイミングを示す第1のタイミング信号を生成する信号生成手段と、
生成された第1のタイミング信号に従って読み出された複数の前記位置信号をもとに、前記ヘッドの位置を復調する復調手段と、
復調された前記ヘッドの位置を参照して前記駆動手段を制御する制御手段と、を備え、
前記信号生成手段は、前記制御手段が前記ディスクの仮想円軌道に位置制御する際に、前記第1のタイミング信号に対して複数の前記位置信号のそれぞれを読み出す期間を短くするとともに、それぞれの期間の中心時刻を前記記録領域の中心に相当する復調中心時刻に近づけた第2のタイミング信号を生成するディスク記憶装置。
【請求項2】
前記第2のタイミング信号は、前記位置信号ごとの前記第1のタイミング信号の立ち上がり及び立ち下がりタイミングにおいて、前記復調中心時刻に近い側の立ち上がり又は立ち下がりタイミングを基準に、遠い側の立ち上がり又は立ち下がりタイミングを前記基準に近づけた信号である、
請求項1に記載のディスク記憶装置。
【請求項3】
前記ヘッドと前記ディスクとの相対速度を算出する算出手段を更に備え、
前記信号生成手段は、算出された前記相対速度が予め設定された基準速度より大きい場合に前記第2のタイミング信号を生成し、前記基準速度以下である場合に前記第1のタイミング信号を生成する、
請求項1又は2に記載のディスク記憶装置。
【請求項4】
前記算出手段は、前記ヘッドの位置が復調される度に、前記相対速度を算出する、
請求項3に記載のディスク記憶装置。
【請求項5】
複数の前記ヘッドと、
前記ヘッドごとの仮想円軌道の振幅を取得する取得手段とを更に備え、
前記信号生成手段は、読み出しを行う前記ヘッドの仮想円軌道の振幅が予め設定された閾値より大きい場合に前記第2のタイミング信号を生成し、前記振幅が前記閾値以下である場合に前記第1のタイミング信号を生成する、
請求項1又は2に記載のディスク記憶装置。
【請求項6】
前記記録領域に記録された複数の前記位置信号は、当該記録領域で4相のパターンを示す信号である、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のディスク記憶装置。
【請求項7】
前記記録領域に記録された複数の前記位置信号は、当該記録領域で2相のパターンを示す信号である、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のディスク記憶装置。
【請求項8】
トラックごとに、トラック中心からのオフセット位置を検出するための複数の位置信号が記録された記録領域を有するサーボパターンが記録されたディスクと、回転する前記ディスクから当該ディスクに記録されたデータの読み出しを行うヘッドと、前記ヘッドを前記ディスクの半径方向に駆動する駆動手段とを有するディスク記憶装置のコントローラであって、
読み出された前記データから複数の前記位置信号を読み出すタイミングを示す第1のタイミング信号を生成する信号生成手段と、
生成された第1のタイミング信号に従って読み出された複数の前記位置信号をもとに、前記ヘッドの位置を復調する復調手段と、
復調された前記ヘッドの位置を参照して前記駆動手段を制御する制御手段と、を備え、
前記信号生成手段は、前記制御手段が前記ディスクの仮想円軌道に位置制御する際に、前記第1のタイミング信号に対して複数の前記位置信号のそれぞれを読み出す期間を短くするとともに、それぞれの期間の中心時刻を前記記録領域の中心に相当する復調中心時刻に近づけた第2のタイミング信号を生成するディスク記憶装置のコントローラ。
【請求項9】
トラックごとに、トラック中心からのオフセット位置を検出するための複数の位置信号が記録された記録領域を有するサーボパターンが記録されたディスクと、回転する前記ディスクから当該ディスクに記録されたデータの読み出しを行うヘッドと、前記ヘッドを前記ディスクの半径方向に駆動する駆動手段とを有するディスク記憶装置による制御方法であって、
読み出された前記データから複数の前記位置信号を読み出すタイミングを示す第1のタイミング信号を生成する信号生成ステップと、
生成された第1のタイミング信号に従って読み出された複数の前記位置信号をもとに、前記ヘッドの位置を復調する復調ステップと、
復調された前記ヘッドの位置を参照して前記駆動手段を制御する制御ステップと、を含み、
前記信号生成ステップは、前記制御ステップが前記ディスクの仮想円軌道に位置制御する際に、前記第1のタイミング信号に対して複数の前記位置信号のそれぞれを読み出す期間を短くするとともに、それぞれの期間の中心時刻を前記記録領域の中心に相当する復調中心時刻に近づけた第2のタイミング信号を生成するディスク記憶装置による制御方法。
【請求項10】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のディスク記憶装置を備える電子機器。
【請求項1】
トラックごとに、トラック中心からのオフセット位置を検出するための複数の位置信号が記録された記録領域を有するサーボパターンが記録されたディスクと、
回転する前記ディスクから当該ディスクに記録されたデータの読み出しを行うヘッドと、
前記ヘッドを前記ディスクの半径方向に駆動する駆動手段と、
読み出された前記データから複数の前記位置信号を読み出すタイミングを示す第1のタイミング信号を生成する信号生成手段と、
生成された第1のタイミング信号に従って読み出された複数の前記位置信号をもとに、前記ヘッドの位置を復調する復調手段と、
復調された前記ヘッドの位置を参照して前記駆動手段を制御する制御手段と、を備え、
前記信号生成手段は、前記制御手段が前記ディスクの仮想円軌道に位置制御する際に、前記第1のタイミング信号に対して複数の前記位置信号のそれぞれを読み出す期間を短くするとともに、それぞれの期間の中心時刻を前記記録領域の中心に相当する復調中心時刻に近づけた第2のタイミング信号を生成するディスク記憶装置。
【請求項2】
前記第2のタイミング信号は、前記位置信号ごとの前記第1のタイミング信号の立ち上がり及び立ち下がりタイミングにおいて、前記復調中心時刻に近い側の立ち上がり又は立ち下がりタイミングを基準に、遠い側の立ち上がり又は立ち下がりタイミングを前記基準に近づけた信号である、
請求項1に記載のディスク記憶装置。
【請求項3】
前記ヘッドと前記ディスクとの相対速度を算出する算出手段を更に備え、
前記信号生成手段は、算出された前記相対速度が予め設定された基準速度より大きい場合に前記第2のタイミング信号を生成し、前記基準速度以下である場合に前記第1のタイミング信号を生成する、
請求項1又は2に記載のディスク記憶装置。
【請求項4】
前記算出手段は、前記ヘッドの位置が復調される度に、前記相対速度を算出する、
請求項3に記載のディスク記憶装置。
【請求項5】
複数の前記ヘッドと、
前記ヘッドごとの仮想円軌道の振幅を取得する取得手段とを更に備え、
前記信号生成手段は、読み出しを行う前記ヘッドの仮想円軌道の振幅が予め設定された閾値より大きい場合に前記第2のタイミング信号を生成し、前記振幅が前記閾値以下である場合に前記第1のタイミング信号を生成する、
請求項1又は2に記載のディスク記憶装置。
【請求項6】
前記記録領域に記録された複数の前記位置信号は、当該記録領域で4相のパターンを示す信号である、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のディスク記憶装置。
【請求項7】
前記記録領域に記録された複数の前記位置信号は、当該記録領域で2相のパターンを示す信号である、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のディスク記憶装置。
【請求項8】
トラックごとに、トラック中心からのオフセット位置を検出するための複数の位置信号が記録された記録領域を有するサーボパターンが記録されたディスクと、回転する前記ディスクから当該ディスクに記録されたデータの読み出しを行うヘッドと、前記ヘッドを前記ディスクの半径方向に駆動する駆動手段とを有するディスク記憶装置のコントローラであって、
読み出された前記データから複数の前記位置信号を読み出すタイミングを示す第1のタイミング信号を生成する信号生成手段と、
生成された第1のタイミング信号に従って読み出された複数の前記位置信号をもとに、前記ヘッドの位置を復調する復調手段と、
復調された前記ヘッドの位置を参照して前記駆動手段を制御する制御手段と、を備え、
前記信号生成手段は、前記制御手段が前記ディスクの仮想円軌道に位置制御する際に、前記第1のタイミング信号に対して複数の前記位置信号のそれぞれを読み出す期間を短くするとともに、それぞれの期間の中心時刻を前記記録領域の中心に相当する復調中心時刻に近づけた第2のタイミング信号を生成するディスク記憶装置のコントローラ。
【請求項9】
トラックごとに、トラック中心からのオフセット位置を検出するための複数の位置信号が記録された記録領域を有するサーボパターンが記録されたディスクと、回転する前記ディスクから当該ディスクに記録されたデータの読み出しを行うヘッドと、前記ヘッドを前記ディスクの半径方向に駆動する駆動手段とを有するディスク記憶装置による制御方法であって、
読み出された前記データから複数の前記位置信号を読み出すタイミングを示す第1のタイミング信号を生成する信号生成ステップと、
生成された第1のタイミング信号に従って読み出された複数の前記位置信号をもとに、前記ヘッドの位置を復調する復調ステップと、
復調された前記ヘッドの位置を参照して前記駆動手段を制御する制御ステップと、を含み、
前記信号生成ステップは、前記制御ステップが前記ディスクの仮想円軌道に位置制御する際に、前記第1のタイミング信号に対して複数の前記位置信号のそれぞれを読み出す期間を短くするとともに、それぞれの期間の中心時刻を前記記録領域の中心に相当する復調中心時刻に近づけた第2のタイミング信号を生成するディスク記憶装置による制御方法。
【請求項10】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のディスク記憶装置を備える電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5−1】
【図5−2】
【図6−1】
【図6−2】
【図6−3】
【図7−1】
【図7−2】
【図8−1】
【図8−2】
【図8−3】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22−1】
【図22−2】
【図22−3】
【図23−1】
【図23−2】
【図23−3】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5−1】
【図5−2】
【図6−1】
【図6−2】
【図6−3】
【図7−1】
【図7−2】
【図8−1】
【図8−2】
【図8−3】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22−1】
【図22−2】
【図22−3】
【図23−1】
【図23−2】
【図23−3】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2012−138143(P2012−138143A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288845(P2010−288845)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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