説明

ディスク記憶装置及びディフェクト管理方法

【課題】ディスク上の記録エリアの使用効率の低下を防止できると共に、信頼性の高いディスク記憶装置を提供することにある。
【解決手段】実施形態によれば、ディスク記憶装置は、ヘッドと、検出モジュールと、コントローラと、メモリとを具備する。検出モジュールは、前記ヘッドを使用して前記ディスク上の凸状欠陥部を検出する。コントローラは、前記検出モジュールにより検出された凸状欠陥部の周辺エリアの範囲を示す補助的ディフェクト情報を作成する。メモリは、前記凸状欠陥部を含む前記ディスク上の欠陥エリアを示す主要ディフェクト情報及び前記補助的ディフェクト情報をそれぞれ記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ディスク記憶装置のディフェクト管理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハードディスクドライブを代表とするディスク記憶装置(以下、ディスクドライブと表記する場合がある)では、ディスクの表面上にスパッタ方法(sputtering)などにより磁性薄膜を形成することにより、ディスク上にデータを磁気的に記録できる記録エリアが構成される。
【0003】
このようなディスクの製造工程において、ディスクの表面上には、最大で幅が数百nm〜数um、高さが数十nm程度の凸状欠陥部(突起物)が形成されることがある。ディスクの表面上には、凸状欠陥部以外にも、磁気的記録が不可能な欠陥エリア(ディフェクトエリア:defect area)が発生することがある。
【0004】
ディスクドライブでは、磁気的記録が不可能な欠陥エリアを、欠陥トラック又は欠陥セクタとして管理するディフェクト管理が行なわれている。このディフェクト管理により、データの書き込み動作では、ディフェクト情報として登録されている欠陥エリアがデータの書き込み対象から除外されて、正常な記録エリアにデータの書き込みが行なわれる。
【0005】
また、ディスク上の凸状欠陥部とヘッド(ヘッドスライダ)との接触を回避するために、凸状欠陥部の周辺ではヘッドの浮上量を高くする制御を行なう技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−252593号公報
【特許文献2】特開2008−77751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のディスクドライブでは、データの記録が不可能な欠陥エリアを特定できる場合には、ディフェクト情報を登録することによりディフェクト管理が可能である。しかしながら、前述のディスク上の凸状欠陥部を検知した場合に、その周辺エリアについては欠陥の種類が判別できないため欠陥エリアとして管理することはできない。
【0008】
周辺エリアは、凸状欠陥部の近傍であるため、ヘッドとの軽度の接触などのHDI(head disk interface)障害が起きる可能性がある。このため、ディスクドライブの信頼性の低下を招く可能性がある。なお、HDIとはヘッドスライダとディスク間に起こる事象を示す。また、単に周辺エリアを欠陥エリアとして登録した場合には、記録エリアの使用効率の低下を招き、結果として記録容量の減少を招くことになる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、ディスク上の記録エリアの使用効率の低下を防止できると共に、信頼性の高いディスク記憶装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態によれば、ディスク記憶装置は、ヘッドと、検出手段と、制御手段と、記憶手段とを具備する。検出手段は、前記ヘッドを使用して前記ディスク上の凸状欠陥部を検出する。制御手段は、前記検出手段により検出された凸状欠陥部の周辺エリアの範囲を示す補助的ディフェクト情報を作成する。記憶手段は、前記凸状欠陥部を含む前記ディスク上の欠陥エリアを示す主要ディフェクト情報及び前記補助的ディフェクト情報をそれぞれ記憶する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に関するディスクドライブの構成を説明するためのブロック図。
【図2】実施形態に関するS−リストの登録エリアの具体例を説明するための図。
【図3】実施形態に関するS−リストの登録エリアの具体例を説明するための図。
【図4】実施形態に関するS−リストの登録エリアの具体例を説明するための図。
【図5】実施形態に関するスライダの構造を示す図。
【図6】実施形態に関するHDIセンサを使用するディフェクト検査プロセスを説明するための図。
【図7】実施形態に関するS−リストの具体例を示す図。
【図8】実施形態に関するP−リストの具体例を示す図。
【図9】実施形態に関するヘッド浮上量と凸状欠陥部との関係を説明するための図。
【図10】実施形態に関する凸状欠陥部とS−リストの登録範囲との関係を説明するための図。
【図11】実施形態に関するディフェクト検査プロセスを説明するためのフローチャート。
【図12】実施形態に関するディフェクト検査プロセスを説明するためのフローチャート。
【図13】実施形態に関するディフェクト検査プロセスを説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面を参照して、実施形態を説明する。
【0013】
[ディスクドライブの構成]
図1は、本実施形態に関するディスクドライブの要部を示すブロック図である。
【0014】
図1に示すように、ディスクドライブは、ヘッド・ディスクアセンブリ(head-disk assembly:HDA)1及び回路基板10を有する。HDA1は、磁気記録媒体であるディスク2と、複数の磁気ヘッド(以下単にヘッドと表記する)3と、ヘッドアンプ集積回路(以下、ヘッドICと表記する)7とを有する。
【0015】
ディスク2は、図示しないスピンドルモータにより回転される。ディスク2は、複数の記録面を有し、各記録面には磁性薄膜が形成されている。後述するように、ディスク2には、凸状欠陥部(突起物)500が形成される場合がある(図6を参照)。
【0016】
ヘッド3は、図示しないアクチュエータに搭載されており、ディスク2の半径方向に移動されて、指定の位置(目標トラック)に位置決めされるように構成されている。ヘッド3は、スライダと呼ぶ本体に実装されているライトヘッド素子4W及びリードヘッド素子4Rを有する。ライトヘッド素子4Wは、ディスク2上にデータを書き込む。リードヘッド素子4Rは、ディスク3上からデータを読み出すMR(magnetoresistive)素子系からなる。
【0017】
さらに、ヘッド3は、スライダに実装されているヒータ素子5及び接触検知センサ6を有する。ヒータ素子5は、加熱用コイルであり、ヘッド3の浮上量(flying height)を制御するために使用される。浮上量とは、ディスク2の表面とスライダの先端部間の距離である。即ち、浮上量は、ヘッド3が浮上している状態でのディスク2の表面からの高さである。
【0018】
ヒータ素子5は、ヘッド加熱ドライバ8から供給される電流に応じてスライダを加熱する。スライダは加熱に応じて、ディスク2の記録面に対応する先端部が膨張し、相対的に浮上量が低下する。逆に、ヒータ素子5からの加熱量が低下することにより、スライダ3はその先端部が収縮し、相対的に浮上量が増大する。
【0019】
接触検知センサ6は、HDI(head disk interface)センサとも呼ばれており、後述するように、ディスク2上の凸状欠陥部(突起物)500を検出する。ここで、HDIとはヘッド(スライダ)3とディスク2との間に起こる接触(衝突)などの事象を示す。HDIセンサ6は、例えばMR(magnetoresistive)素子からなり、いわゆるサーマル・アスペリティ(thermal asperity : TA)現象を応用した接触検知センサである。即ち、図5に示すように、接触検知センサ6は、スライダ3の先端部に実装されており、凸状欠陥部500と接触したときに、スパイク状の波形を含む検知信号を出力する。
【0020】
ヘッド加熱ドライバ8は、ヘッドIC7に搭載されており、後述する加熱制御モジュール14により制御される加熱用電流をヒータ素子5に供給する。ヘッドIC7は、ヘッド加熱ドライバ8以外に、HDIモジュール9、リードアンプ及びライトドライバを有する。リードアンプは、リードヘッド素子4Rにより読み出されたリード信号を増幅して、リード/ライト(R/W)チャネル15に伝送する。一方、ライトドライバは、R/Wチャネル15から出力されるライトデータに応じたライト電流をライトヘッド素子4Wに伝送する。
【0021】
HDIモジュール9は、HDIセンサ6から出力される検知信号を処理する検知信号処理モジュールである。具体的には、HDIモジュール9は、増幅、ハイパスフィルタリング(HPF)、オフセット調整、ローパスフィルタリング(LPF)、及び波形整形などの信号処理を実行する。HDIモジュール9は、信号処理後の検知信号波形及びHDIセンサ6により凸状欠陥部(突起物)を検知したことを示すフラグ情報を、R/Wチャネル15に伝送する。検知信号波形及びフラグ情報は、R/Wチャネル15及び及びディスクコントローラ13を介してCPU12に転送される。
【0022】
回路基板10は、フラッシュメモリ(FROM)11と、マイクロプロセッサ(CPU)12と、ディスクコントローラ13と、R/Wチャネル15とを有する。ディスクコントローラ13は、ホストシステム(図示せず)とR/Wチャネル15との間のデータ転送を制御するインターフェース制御を実行する。また、ディスクコントローラ13は、加熱制御モジュール14から出力される加熱制御信号を、ヘッドIC7のヘッド加熱ドライバ8に伝送する。R/Wチャネル15は、リードデータの信号処理を実行するリードチャネルと、ライトデータの信号処理を実行するライトチャネルとを含む。
【0023】
CPU12は、ドライブのメインコントローラであり、ヘッド3の位置決めを行なうサーボ制御、データのリード/ライト制御及びディフェクト管理を実行する。さらに、CPU12は、加熱制御モジュール14と連携して、ヘッド3の浮上量制御を実行する。CPU12は、HDIセンサ6の検知信号を使用して、後述するディフェクト管理処理を実行する。
【0024】
フラッシュメモリ11は、主要ディフェクト情報(primary defect information)情報及び補助的ディフェクト情報(secondary defect information)を保存する。主要ディフェクト情報は、ディスクドライブの製造工程に含まれるディスク2の欠陥検査工程により検出された欠陥エリア(欠陥トラック又は欠陥セクタ)を示す情報であり、本実施形態ではP−リスト(P-list)と表記する。また、補助的ディフェクト情報は、本実施形態のディスク2上の凸状欠陥部(突起物)の検査処理により検出された凸状欠陥部の周辺エリアを示す情報であり、S−リスト(S-list)と表記する。
【0025】
[ディフェクト管理]
次に、図2から図13を参照して、本実施形態のディフェクト管理を説明する。
【0026】
図11のフローチャートは、本実施形態のディフェクト検査プロセスを説明するためのフローチャートである。ディフェクト検査プロセスは、ディスクドライブの検査工程に含まれている。
【0027】
本実施形態では、ディスクドライブに組み込まれたCPU12は、ディフェクト検査処理を実行する。また、本実施形態では、1枚のディスク2の片方の記録面に対するディフェクト検査を行なう場合を想定する。実際には、全てのディスク2の全記録面に対してディフェクト検査が行なわれる。
【0028】
CPU12は、ヘッド3をディスク2上の半径方向にシークさせて、ディスク2上の全記録エリアに対して検査データを書き込み、かつ当該検査データを読み出す。このとき、CPU12は、正常に検査データを書き込みできない記録エリアや、正常に読み出しできない記録エリアを欠陥エリアとして検出する。CPU12は、検出した欠陥エリアをP−リストに登録し、フラッシュメモリ11に格納する(ブロック100)。
【0029】
P−リストに登録される欠陥エリアは、ディスク2の表面に発生した物理的な傷や磁気特性上の欠陥などの要因により、正常にデータの記録又は再生ができないエリアあるいは記録再生特性上のマージンを満たさないエリアである。
【0030】
図8は、P−リストの具体例を示す図である。P−リストには、欠陥エリアを特定するために、トラックアドレス(シリンダアドレス:CYL)700、ヘッド番号(HEAD)701、セクタアドレス(SCT)702、ブロック長(BLOCK)703、及びトラック単位での欠陥エリアを意味する情報(Track Slip)704が記録される。ブロック長(BLOCK)703は、セクタアドレス(例えば1638)を中央とする欠陥セクタ群の範囲(欠陥セクタ数)を意味する。
【0031】
本実施形態のディフェクト検査プロセスは、前述のP−リストの登録プロセスに加えて、HDIセンサ6を使用するS−リストの登録プロセス(ブロック101〜109)を含むものである。以下、具体的に説明する。
【0032】
CPU12は、ディスク2上の全記録エリアに対して、HDIセンサ6を使用したディフェクト検査を実行する(ブロック101)。このディフェクト検査は、凸状欠陥部(突起物)を検知する検査である。なお、検査処理時間の削減のために、HDIセンサ6を使用したディフェクト検査の範囲を、P−リストの登録されたエリア周辺に限定してもよい。
【0033】
CPU12は、ディスク2上の半径方向にヘッド(スライダ)3をシークさせて、ヘッド3に搭載されているHDIセンサ6からの検知信号に基づいて、凸状欠陥部(突起物)の有無及びその位置を検出する。ここで、後述するように、CPU12は、加熱制御モジュール14を介してヘッド3の浮上量を制御する。
【0034】
図6に示すように、HDIセンサ6は、凸状欠陥部500と接触したときに、スパイク状の波形を含む検知信号を出力する。図6は、スライダ3の先端部の突き出し形状530(幅が例えば数十um)と、HDIセンサ6(幅が例えば1um)の位置関係を示す。CPU12は、HDIモジュール9から、HDIセンサ6から出力される検知信号及び凸状欠陥部500を検知したことを示すフラグ情報を、R/Wチャネル15及び及びディスクコントローラ13を介して受信する。
【0035】
CPU12は、HDIセンサ6を使用して検知された凸状欠陥部500が存在するエリア510が、既にP−リストに登録されているか否かを判定する(ブロック102)。CPU12は、P−リストに登録されていない場合には、当該検知エリア510を欠陥エリアとしてP−リストに登録する(ブロック103)。
【0036】
ここで、当該検知エリア510の周辺でリード/ライト動作を行なうと、ヘッド(スライダ)3と凸状欠陥部500とが接触するが、ディスクドライブのリトライ・リカバリ機能により、データのリード/ライト動作が可能である。しかし、実際には、ヘッド3が検知エリア510をアクセスした場合に、凸状欠陥部500に接触する頻度が高くなるため、記録エリアとしては不適切である。なお、P−リストに登録する場合に、ヘッド3のリードヘッド素子4Rとライトヘッド素子4Wとの位置関係によるオフセット(半径方向のオフセット)と同様に、HDIセンサ6とリードヘッド素子4Rとのオフセットが考慮されることが望ましい。
【0037】
CPU12は、HDIセンサ6により検知されたエリア510を、図示しないRAMに格納している一時リストに登録する(ブロック104)。次に、CPU12は、加熱制御モジュール14を介してヘッド3の浮上量を変更する(ブロック105)。通常では、CPU12は、ヘッド3の浮上量を上げて、スライダの先端部とディスク2の表面との間隔を高くする。CPU12は、再度、HDIセンサ6を使用したディフェクト検査を実行する(ブロック106)。ここで、CPU12は、再度のディフェクト検査の範囲をディスク2上の全記録エリアではなく、検査処理時間の削減のために、一時リストに登録されたエリアの周辺に限定してもよい。
【0038】
CPU12は、再度のディフェクト検査により凸状欠陥部が検知されたエリアが、一時リストに登録されているか否かを判定する(ブロック107)。CPU12は、一時リストに登録されている場合には、当該検知エリアの周辺エリアをS−リストに登録する(ブロック108)。即ち、一時リストに登録されているエリアで、再度の検査でも検知されたエリアは、高い浮上量のヘッド(スライダ)3でも接触する程の大きな凸状欠陥部が存在することになる。
【0039】
なお、CPU12は、一時リストに登録されていないエリアを検知した場合に、当該エリアを一時リストに登録し、ヘッド3の浮上量を変更してさらにディフェクト検査を実行してもよい(ブロック109)。
【0040】
S−リストの登録プロセスでは、CPU12は、図6に示すように、凸状欠陥部500が存在するエリア510の周辺エリア520をS−リストに登録し、フラッシュメモリ11に格納する。S−リストに登録される周辺エリア520は、ディスク2上の半径方向540の範囲であり、記録エリアとして有効なエリアである。但し、周辺エリア520は、凸状欠陥部500の近傍であるため、中長期的にHDI障害が発生しやすいエリアであると想定される。
【0041】
CPU12は、S−リストに登録された周辺エリア520の使用優先度を低くする。具体的には、例えばディスク2上の正常な記録エリアの全てが使用されている場合に、S−リストに登録された周辺エリア520を、暫定的に記録エリアとして使用する。CPU12は、正常で使用可能な記録エリア(オーバーライト可能なエリア)を確保したときに、暫定的に周辺エリア520に記録されたデータを当該記録エリアに移動させる。
【0042】
以下、S−リストの登録プロセスの具体例を説明する。
【0043】
図2は、ディスク2上の凸状欠陥部が存在する検知箇所200の周辺エリアを登録エリア220として、所定のトラック範囲(トラック数Nとする)210をS−リストに登録する場合を示す。この場合、検知箇所200に対して内周側と外周側をそれぞれN/2のトラック数分を登録することが望ましい。
【0044】
図3は、図2と同様であるが、HDIセンサ6による検知エリア300がトラック単位の場合に、その周辺エリアを登録エリア220として所定のトラック範囲(トラック数Nとする)210をS−リストに登録する場合を示す。このようなHDIセンサ6によるディフェクト検査をトラック単位で行なう場合には、検知エリアのセクタアドレスまで特定する必要はない。このため、検査処理時間の削減化を図ることが可能となる。
【0045】
図4は、検知箇所200の周辺エリアを登録エリア220として、所定のトラック範囲(トラック数Nとする)210及び所定のセクタ範囲(セクタ数M)で特定し、S−リストに登録する場合を示す。
【0046】
図7は、S−リストの具体例を示す図である。S−リストには、周辺エリアを特定するために、開始トラックアドレス(Start)600、終了トラックアドレス(End)601、ヘッド番号(Head)602、及び推定欠陥高さ(Height)603が記録される。即ち、S−リストは、P−リストと比較してトラック単位で登録せずに、トラック範囲で登録される。
【0047】
次に、図9、図10、図12及び図13を参照して、ヘッド(スライダ)3の浮上量制御とS−リストの登録プロセスとの関連を説明する。
【0048】
図12のフローチャートに示すように、CPU12は、1回目のHDIセンサ6を使用したディフェクト検査を実行する。このとき、CPU12は、ディスク2上の外周側からヘッド(スライダ)3をシークさせて、検査処理時間の削減のために、検知対象のトラックを特定する(ブロック110)。
【0049】
CPU12は、HDIセンサ6からの検知信号波形に基づいて、凸状欠陥部(突起物)又は凹欠陥部の有無及びその位置を検出する(ブロック112)。ここで、CPU12は、加熱制御モジュール14を介して、ヘッド3の浮上量を例えば1nmに調整する。CPU12は、HDIセンサ6からの検知信号波形が例えば正レベル(positive level)の場合に、凹状欠陥部を検知し、当該欠陥セクタを特定する(ブロック113)。CPU12は、当該欠陥セクタを検知対象のトラックアドレスと共にP−リストに登録する(ブロック114)。
【0050】
一方、CPU12は、検知信号波形が例えば負レベル(negative level)の場合に、凸状欠陥部を検知し、当該検知エリアをP−リストに登録する(ブロック115)。さらに、CPU12は、当該検知エリアの周辺エリアをS−リストに登録する(ブロック116)。CPU12は、1回目のHDIセンサ6を使用したディフェクト検査を、指定の検知対象トラックについて終了するまで繰り返す(ブロック117)。
【0051】
次に、図13のフローチャートに示すように、CPU12は、2回目、3回目以降のHDIセンサ6を使用したディフェクト検査を実行する。
【0052】
2回目以降では、CPU12は、加熱制御モジュール14を介して、ヘッド3の浮上量を上げるように変更する(ブロック120)。具体的には、2回目では、ヘッド3の浮上量を例えば3nmに調整する。さらに、CPU12は、ディスク2上の外周側からヘッド(スライダ)3を検知対象エリアまでシークさせる(ブロック121)。このときに、CPU12は、検知対象エリアとして、検査処理時間の削減のために、1回目でP−リストに登録した凸状欠陥部の検知エリアの周辺に限定する。
【0053】
CPU12は、HDIセンサ6からの検知信号波形に基づいて、凸状欠陥部(突起物)を検知する(ブロック122)。CPU12は、凸状欠陥部を検知した検知エリアの周辺エリアをS−リストに登録し、1回目のS−リストを更新する(ブロック123,124)。
【0054】
さらに、CPU12は、3回目のディフェクト検査を実行する(ブロック125のNO)。ここで、3回目では、ヘッド3の浮上量を上げて、例えば6nmに調整する(ブロック120)。その後、2回目と同様に、CPU12は、ヘッド(スライダ)3を検知対象エリアまでシークさせて、HDIセンサ6からの検知信号波形に基づいて凸状欠陥部を検知する(ブロック121,122)。CPU12は、凸状欠陥部を検知した検知エリアの周辺エリアをS−リストに登録し、2回目のS−リストを更新する(ブロック123,124)。
【0055】
ここで、本実施形態のディフェクト検査は、凸状欠陥部を検知したときに、その検知エリアの周辺エリアをS−リストに登録する登録プロセスを実行する。この登録プロセスにおいて、S−リストの登録範囲(周辺エリアの範囲)は、凸状欠陥部の高さとの関係で決定される。以下、図9及び図10を参照して具体的に説明する。
【0056】
図9は、ヘッド(スライダ)3の先端部の突き出し形状800と、凸状欠陥部の高さ810,820との関係を示す図である。なお、図9の横軸は、スライダ3の先端部の幅方向の範囲を示す。図9に示すように、ヘッド(スライダ)3の浮上量が例えば1nmの場合に、相対的に低い例えば9nm程度の凸状欠陥部820の場合には、スライダ3が凸状欠陥部820と接触する範囲は突き出し部分である。これに対して、例えば24nm程度の高い凸状欠陥部810が存在すると、スライダ3が接触する範囲が広くなる。
【0057】
図10は、凸状欠陥部の高さに対するS−リストの登録範囲(ディスク2の半径方向)の関係900を示す図である。即ち、図9の関係から明白であるように、凸状欠陥部が高いほど、周辺エリアの広い範囲をS−リストに登録することが必要となる。なお、図10の関係910は、ヘッド3のリードヘッド素子4Rとライトヘッド素子4Wとのオフセットによるスキュ(skew)角を考慮した場合のS−リストの登録範囲を示す。
【0058】
具体例として、前述の登録プロセスにおける1回目のHDIセンサ6を使用したディフェクト検査において、ヘッド(スライダ)3の浮上量を1nm程度に調整したときに、例えば±6um程度の範囲に相当するトラック数分をS−リストに登録する。ここで、CPU12は、調整したヘッド(スライダ)3の浮上量に基づいて、検知した凸状欠陥部の高さを推定する。CPU12は、図10に示すような関係900を参照することにより、推定した凸状欠陥部の高さに対して、S−リストの登録範囲を決定する。
【0059】
また、2回目のディフェクト検査において、ヘッド(スライダ)3の浮上量を3nm程度に調整したときに、例えば±14um程度の範囲に相当するトラック数分をS−リストに登録する。さらに、3回目のディフェクト検査において、ヘッド(スライダ)3の浮上量を6nm程度に調整したときに、例えば±18um程度の範囲に相当するトラック数分をS−リストに登録する。
【0060】
以上のように本実施形態のディフェクト管理は、ディスク2上の記録エリアとして使用不可能な欠陥エリアを主要ディフェクト情報として登録するP−リスト登録プロセスと共に、S−リストの登録プロセスを有する。S−リストの登録プロセスでは、HDIセンサ6を使用するディフェクト検査により検知された凸状欠陥部(突起物)の周辺エリアがS−リストに登録される。
【0061】
S−リストに登録される周辺エリアは、使用不可能な欠陥エリアではなく、記録エリアとして有効なエリアである。従って、ディスク2上の記録容量の損失を抑制することができる。一方、凸状欠陥部の近傍にある周辺エリアを、S−リストに登録することで、通常の記録エリアとして使用制限する。これにより、中長期的にHDI障害が発生しやすい周辺エリアの使用を制限することにより、データ記録再生での障害が発生する可能性を抑制できる。
【0062】
周辺エリアの使用制限の具体的方法としては、例えばディスク2上の正常な記録エリアの全てが使用されている場合に、S−リストに登録された周辺エリアを暫定的な記録エリアとして使用する。そして、正常で使用可能な記録エリアを確保したときに、周辺エリアに記録されたデータを当該記録エリアに移動させる。
【0063】
換言すれば、本実施形態のディフェクト管理により、凸状欠陥部とヘッド(スライダ)との接触を最小限に抑制することで、ディスクドライブの信頼性を高めることができる。また、凸状欠陥部の周辺エリアをS−リストの管理で使用制限することにより、ドライブの記録容量の損失を抑制できると共に、故障率の低下を図ることが可能となる。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1…ヘッド・ディスクアセンブリ(HDA)、2…ディスク、
3…磁気ヘッド(スライダ)、4R…リードヘッド素子、4W…ライトヘッド素子、
5…ヒータ素子、6…HDIセンサ、7…ヘッドアンプ集積回路(ヘッドIC)、
8…ヘッド加熱ドライバ、9…HDIモジュール、
10…回路基板、11…フラッシュメモリ(FROM)、
12…マイクロプロセッサ(CPU)、13…ディスクコントローラ、
14…加熱制御モジュール、15…リード/ライト(R/W)チャネル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクに対してデータの書き込み及び読み出しを行なうヘッドと、
前記ヘッドを使用して前記ディスク上の凸状欠陥部を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された凸状欠陥部の周辺エリアの範囲を示す補助的ディフェクト情報を作成する制御手段と、
前記凸状欠陥部を含む前記ディスク上の欠陥エリアを示す主要ディフェクト情報及び前記補助的ディフェクト情報をそれぞれ記憶する記憶手段と
を具備するディスク記憶装置。
【請求項2】
前記検出手段は、
前記ヘッドに搭載された接触検知センサを使用し、
前記接触検知センサからの検知信号及び前記ヘッドの浮上量に基づいて前記凸状欠陥部を検出するように構成されている請求項1に記載のディスク記憶装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記検出手段により検出された前記凸状欠陥部の状態に基づいて、前記周辺エリアの範囲を設定した補助的ディフェクト情報を作成する請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のディスク記憶装置。
【請求項4】
前記ディスクの表面に対する前記ヘッドの浮上量を制御する浮上量制御手段を有し、
前記検出手段は、
前記ヘッドに搭載された接触検知センサを使用し、
前記浮上量制御手段により変化させる前記ヘッドの浮上量及び前記接触検知センサからの検知信号に基づいて前記凸状欠陥部を検出するように構成されている請求項3に記載のディスク記憶装置。
【請求項5】
前記検出手段は、
前記浮上量制御手段により基準値より高くした前記ヘッドの浮上量及び前記接触検知センサからの検知信号に基づいて前記凸状欠陥部を検出するように構成されている請求項4に記載のディスク記憶装置。
【請求項6】
前記ヘッドを使用して前記ディスク上の記録エリアにデータを書き込む場合に、前記主要ディフェクト情報で示す欠陥エリア及び前記補助的ディフェクト情報で示す前記周辺エリアを書き込み可能な記録エリアの範囲から除くデータ書き込み制御手段を有し、
前記データ書き込み制御手段は、
前記書き込み可能な記録エリアの全てが使用されている場合に、前記補助的ディフェクト情報で示す周辺エリアを記録エリアとしてデータの書き込みを実行する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のディスク記憶装置。
【請求項7】
前記ヘッドを使用して前記周辺エリアからデータを読み出したときに、前記書き込み可能な記録エリアに前記読み出しデータを書き込むように制御する手段を有する請求項6に記載のディスク記憶装置。
【請求項8】
前記検出手段は、前記ディスク上のトラック毎に前記凸状欠陥部を検出し、
前記制御手段は、
前記周辺エリアの範囲として、前記凸状欠陥部が検出されたトラックの周辺トラックの範囲を示す補助的ディフェクト情報を作成する請求項1に記載のディスク記憶装置。
【請求項9】
前記制御手段は、
前記検出手段により前記凸状欠陥部が検出されたときに、前記凸状欠陥部のエリアを欠陥エリアとして前記主要ディフェクト情報として前記記憶手段に記憶する請求項1に記載のディスク記憶装置。
【請求項10】
前記ヘッドを使用して前記ディスク上の凹状欠陥部を検出する検出手段を有し、
前記制御手段は、
前記検出手段により検出された前記凹状欠陥部のエリアを欠陥エリアとして前記主要ディフェクト情報として前記記憶手段に記憶する請求項1に記載のディスク記憶装置。
【請求項11】
ディスク上の欠陥エリアを示す主要ディフェクト情報を記憶する記憶手段を有するディスク記憶装置に適用するディフェクト管理方法であって、
ヘッドを使用してディスク上の凸状欠陥部を検出し、
前記検出された凸状欠陥部の周辺エリアの範囲を示す補助的ディフェクト情報を作成し、
前記凸状欠陥部を含む欠陥エリアを前記主要ディフェクト情報として記憶し、かつ前記補助的ディフェクト情報を前記記憶手段に記憶するディフェクト管理方法。
【請求項12】
前記ヘッドを使用して前記ディスク上の記録エリアにデータを書き込む場合に、前記主要ディフェクト情報で示す欠陥エリア及び前記補助的ディフェクト情報で示す前記周辺エリアを書き込み可能な記録エリアの範囲から除き、
前記書き込み可能な記録エリアの全てが使用されている場合に、前記補助的ディフェクト情報で示す周辺エリアを記録エリアとして設定する請求項11に記載のディフェクト管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−89219(P2012−89219A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237452(P2010−237452)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】