説明

ディスク走査型共焦点観察装置

【課題】高い照明効率を有するディスク走査型共焦点観察装置を提供することを課題とする。
【解決手段】蛍光顕微鏡10は、レーザー11から射出された照明光のうち標本Sとレーザー11の間の標本Sと共役な面に配置されたスピニングディスク15の反射面15aで反射した照明光を、反射面12aで反射して再びスピニングディスク15に導くように配置されたミラー12を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリットやピンホールなどが形成されたスピニングディスクの駆動により標本を走査するディスク走査型共焦点観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
共焦点顕微鏡などの共焦点観察装置は、Z軸方向に高い分解能を有し優れたセクショニング効果を発揮することから、半導体基板の検査や生体標本の観察など、さまざまな分野で広く用いられている。
【0003】
共焦点顕微鏡は、標本を走査することにより標本上の各点からの光を検出して標本の画像を生成するため、標本を走査するための走査手段を備えている。共焦点顕微鏡の走査手段は、ガルバノミラーや音響光学素子などに代表される光を偏向することにより標本を走査する走査手段(以降、偏向走査手段と記す。)と、スリットやピンホールが形成されたスピニングディスクなどに代表される光を選択的に通過させることにより標本を走査する走査手段(以降、ディスク走査手段と記す。)と、に大別される。前者の偏向走査手段は、対物レンズの瞳と共役な位置またはその近傍に配置されるのに対して、後者のディスク走査手段は、共焦点絞りを兼ねていて、標本と共役な位置に配置される。
共焦点顕微鏡で用いられるディスク走査手段は、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−218677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、ディスク走査手段は、多点走査が可能であり、且つ、高速な回転を行うに当たり機械的な制約が少ないことから、偏向走査手段を用いた場合に比べて、高速に標本を走査することが可能である。
【0006】
しかしながら、ディスク走査手段を備えた共焦点観察装置(以降、ディスク走査型共焦点観察装置と記す。)では、ディスク走査手段が照明光の一部を遮断することで照明効率が低下するため、単位時間当たりに検出される光量が少なくなり、暗い画像が生成されやすい。また、明るい画像を得るためには、露出時間を長くする必要があるが、露出時間を長くすると走査速度が制限されるため、画像生成に時間がかかってしまう。
以上のような実情を踏まえ、本発明は、高い照明効率を有するディスク走査型共焦点観察装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、標本を照明する照明光を射出する光源と、前記標本と前記光源の間の前記標本と共役な面に配置され、前記光源側に反射面を有する、開口が形成された回転部材と、前記回転部材の前記反射面で反射した照明光を反射して前記回転部材へ導くように配置された反射部材と、を含むディスク走査型共焦点観察装置を提供する。
【0008】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載のディスク走査型共焦点観察装置において、さらに、前記光源と前記回転部材との間で、且つ、前記反射部材と前記回転部材との間の光路上に配置された集光レンズを含むディスク走査型共焦点観察装置を提供する。
【0009】
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載のディスク走査型共焦点観察装置において、前記光源は、前記集光レンズの光軸に対して偏心した位置に配置されるディスク走査型共焦点観察装置を提供する。
【0010】
本発明の第4の態様は、第3の態様に記載のディスク走査型共焦点観察装置において、前記反射部材は、前記回転部材の前記反射面で反射した照明光を反射する平面からなる反射面を有し、前記反射部材の前記反射面の法線が前記反射部材に入射する照明光に対して傾斜するように配置されるディスク走査型共焦点観察装置を提供する。
【0011】
本発明の第5の態様は、第3の態様に記載のディスク走査型共焦点観察装置において、前記反射部材は、前記回転部材の前記反射面で反射した照明光を反射する平面からなる反射面を有し、前記反射部材の前記反射面の法線が前記集光レンズの光軸に対して傾斜するように配置されるディスク走査型共焦点観察装置を提供する。
【0012】
本発明の第6の態様は、第3の態様に記載のディスク走査型共焦点観察装置において、前記反射部材は、曲面からなる反射面を有するディスク走査型共焦点観察装置を提供する。
【0013】
本発明の第7の態様は、第3の態様乃至第6の態様のいずれか1つに記載のディスク走査型共焦点観察装置において、さらに、前記集光レンズと前記光源との間に配置され、入射光を波長に応じて反射または透過させる光路分割素子を含むディスク走査型共焦点観察装置を提供する。
【0014】
本発明の第8の態様は、第3の態様乃至第7の態様のいずれか1つに記載のディスク走査型共焦点観察装置において、前記回転部材は、前記集光レンズの前側焦点面に配置され、前記反射部材は、前記集光レンズの後側焦点面に配置されるディスク走査型共焦点観察装置を提供する。
【0015】
本発明の第9の態様は、第3の態様乃至第8の態様のいずれか1つに記載のディスク走査型共焦点観察装置において、前記回転部材の前記反射面は、平面からなるディスク走査型共焦点観察装置を提供する。
【0016】
本発明の第10の態様は、第9の態様に記載のディスク走査型共焦点観察装置において、前記回転部材の前記反射面の法線は、前記集光レンズの光軸に対して傾斜しているディスク走査型共焦点観察装置を提供する。
【0017】
本発明の第11の態様は、第3の態様乃至第10の態様のいずれか1つに記載のディスク走査型共焦点観察装置において、前記反射部材は、ミラーであるディスク走査型共焦点観察装置を提供する。
【0018】
本発明の第12の態様は、第3の態様乃至第10の態様のいずれか1つに記載のディスク走査型共焦点観察装置において、前記反射部材は、プリズムであるディスク走査型共焦点観察装置を提供する。
【0019】
本発明の第13の態様は、第3の態様乃至第12の態様のいずれか1つに記載のディスク走査型共焦点観察装置において、前記反射部材を複数含むディスク走査型共焦点観察装置を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高い照明効率を有するディスク走査型共焦点観察装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来技術に係る蛍光顕微鏡の構成を例示する図である。
【図2】実施例1に係る蛍光顕微鏡の構成を例示する図である。
【図3】図2に例示する蛍光顕微鏡の照明光のリサイクル方式について説明するための図である。
【図4】図2に例示される蛍光顕微鏡のスピニングディスクに入射する照明光の光束について例示した図である。
【図5】図2に例示される蛍光顕微鏡のスピニングディスクの構成について例示した図である。
【図6】実施例1に係る蛍光顕微鏡の変形例の構成を例示する図である。
【図7】実施例1に係る蛍光顕微鏡の他の変形例の構成を例示する図である。
【図8】実施例2に係る蛍光顕微鏡の構成を例示する図である。
【図9】実施例3に係る蛍光顕微鏡の構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
まず、本発明の各実施例に係るディスク走査型共焦点観察装置の特徴の理解を容易にするために、従来技術に係るディスク走査型共焦点観察装置について簡単に説明する。
【0023】
図1は、従来技術に係る蛍光顕微鏡の構成を例示する図である。図1に例示される蛍光顕微鏡100は、標本Sと共役な面に配置されたスピニングディスク105を含むディスク走査型共焦点観察装置であり、スピニングディスク105は、走査手段及び共焦点絞り手段として機能する。
【0024】
蛍光顕微鏡100では、アーク光源101から射出された照明光ILは、コリメータレンズ102で平行光に変換されて、ダイクロイックミラー103に入射する。ダイクロイックミラー103は照明光ILを反射し蛍光FLを透過する特性を有しているため、照明光ILはダイクロイックミラー103で反射されて、集光レンズ104を介してスピニングディスク105に入射する。スピニングディスク105に入射した照明光ILのうちスピニングディスク105に形成されたスリットに入射した照明光ILは、スピニングディスク105を通過し、結像レンズ106により平行光に変換されて対物レンズ107により標本Sに集光する。
【0025】
照明光ILが照射された標本Sでは、照明光ILの集光位置にある蛍光物質が励起されて、蛍光FLが放射される。蛍光FLは対物レンズ107及び結像レンズ106によりスピニングディスク105に集光し、スピニングディスク105のスリットと共役な位置から生じた蛍光FLのみがスピニングディスク105を通過する。スピニングディスク105を通過した蛍光FLは、集光レンズ104、ダイクロイックミラー103、レンズ108を介して、CCD109に入射して検出される。
【0026】
このように、従来の蛍光顕微鏡100では、スピニングディスク105に入射した照明光のうちスリット位置に入射した照明光のみが標本Sに照射される構成を有している。
【0027】
なお、従来の蛍光顕微鏡100では、しばしば、スピニングディスク105の光源側の面105aに反射防止膜が形成され、スピニングディスク105のスリット以外の位置に入射した照明光の反射が抑制されている。
以下、本発明の各実施例に係るディスク走査型共焦点観察装置について説明する。
【実施例1】
【0028】
図2は、本実施例に係る蛍光顕微鏡の構成を例示する図である。図3は、図2に例示する蛍光顕微鏡の照明光のリサイクル方式について説明するための図である。図4は、図2に例示される蛍光顕微鏡のスピニングディスクに入射する照明光の光束について例示した図である。
【0029】
図2に例示される蛍光顕微鏡10は、標本Sとレーザー11の間にある標本Sと共役な面に配置された回転部材であるスピニングディスク15を含むディスク走査型共焦点観察装置であり、スピニングディスク15が走査手段及び共焦点絞り手段として機能する点については、図1に例示される蛍光顕微鏡100と同様である。
【0030】
蛍光顕微鏡10は、主に、スピニングディスク15がレーザー11側に平面からなる高い反射率を有する反射面15aを有する点、及び、スピニングディスク15の反射面15aで反射した照明光を反射して再びスピニングディスク15へ導くように配置された反射部材であるミラー12を含む点が、図1に例示される蛍光顕微鏡100と異なっている。
【0031】
蛍光顕微鏡10は、標本Sを照明する照明光(レーザー光)を射出するレーザー11と、反射面15aで反射した照明光を反射する反射面12aを有する反射部材であるミラー12と、照明光を反射し標本Sからの蛍光を透過する光路分割素子であるダイクロイックミラー13と、レーザー11とスピニングディスク15の間で、且つ、ミラー12とスピニングディスク15の間の光路上に配置された集光レンズ14と、照明光を通過させるスリットが形成されたスピニングディスク15と、結像レンズ16と、対物レンズ17と、レンズ18と、CCD19と、を含んでいる。
【0032】
レーザー11は、集光レンズ14の光軸OAに対して偏心した位置に配置されていて、集光レンズ14は、その前側焦点面にスピニングディスク15が位置し、その後側焦点面にミラー12が位置するように配置されている。なお、本明細書では、集光レンズ14の光軸には、図2に示されるように、集光レンズ14の主面に直交する光軸OAだけではなく、ダイクロイックミラー13で90度偏向した光軸OAも含まれるものとする。
【0033】
次に、レーザー11、ミラー12、ダイクロイックミラー13、集光レンズ14、及び、スピニングディスク15が、照明光を再利用するリサイクル光学系として構成されていることについて、説明する。
【0034】
蛍光顕微鏡10では、レーザー11が光軸OAから偏心した位置に配置されているため、図3(a)に例示されるように、レーザー11から射出された照明光L1は、ダイクロイックミラー13の中心からずれた位置に入射する。ダイクロイックミラー13の中心からずれた位置で反射した照明光L1は、光軸OAに対して偏心した光束として集光レンズ14に入射する。このため、集光レンズ14により略平行光に変換された照明光ILは、光軸OAに対して傾いた状態でスピニングディスク15に入射する。
【0035】
スピニングディスク15に入射した照明光L1は、スピニングディスク15のスリットに入射した照明光を除き、反射面15aで反射する。図3(b)に例示されるように、反射面15aの法線と光軸OAが平行になるようにスピニングディスク15が配置されている場合であれば、照明光L1が光軸OAに対して傾いて入射するため、反射面15aを反射した照明光L2は、照明光L1が入射する方向とは異なる方向に向かって反射される。これにより、照明光L2は、照明光L1とはわずかに異なる光路を通って集光レンズ14に入射して、ダイクロイックミラー13を介してレーザー11とは異なる位置に配置されたミラー12に集光する。なお、上述した条件下では、ミラー12は、光軸OAを中心として、レーザー11と略対称な位置に配置される。
【0036】
ミラー12は、図3(a)に例示されるように、反射面12aの法線が光軸OAに対して傾斜するように配置されている。即ち、照明光L2が光軸OAと略平行な光束としてミラー12に入射することを考慮すると、ミラー12は、反射面12aの法線が照明光L2に対して傾斜するように配置されていることになる。従って、図3(c)に例示されるように、反射面12aを反射した照明光L3は、照明光L2とはわずかに異なる光路を通ってダイクロイックミラー13を介して集光レンズ14に入射して、集光レンズ14により光軸OAに対して傾いた略平行光に変換されてスピニングディスク15に入射する。
【0037】
これにより、図4に例示されるように、スピニングディスク15と照明光L1との相対的な位置関係(図4(a)を参照)と、スピニングディスク15と照明光L3との相対的な位置関係(図4(b)を参照)とが異なることになる。このため、反射面15aで反射した照明光L1の一部は、照明光L3として再びスピニングディスク15に入射する際にはスリットSLに入射してスピニングディスク15を通過することが可能となる。
【0038】
以上、本実施例に係る蛍光顕微鏡10によれば、リサイクル光学系がスピニングディスク15と照明光との位置関係を変更しながら照明光を複数回スピニングディスク15に導くことにより、スピニングディスク15を通過する照明光の光量を増加させることができる。このため、従来技術に係る蛍光顕微鏡100に比べて、蛍光顕微鏡10の照明効率を改善することが可能であり、高い照明効率を有する蛍光顕微鏡10を提供することができる。
【0039】
本実施例に係る蛍光顕微鏡10で用いられるスピニングディスク15は、光源側の面が反射面として構成されている点を除き、従来のスピニングディスクと同様である。従って、スピニングディスクに対して特殊な加工は必要とされないため、従来のスピニングディスクを本実施例に係るスピニングディスク15に容易に改良することができる。また、スピニングディスク15を安価に製造することができる。
【0040】
また、本実施例に係る蛍光顕微鏡10では、照明光を再利用して照明効率を向上させるために、反射部材であるミラー12が追加で必要となる。しかしながら、ミラー12は、反射面15aで反射した照明光がミラー12に入射し、また、ミラー12の反射面12aを反射した照明光がスピニングディスク15に入射するように配置されればよく、その配置に高い位置決め精度が要求されるものではない。従って、高い精度が要求される設定作業等を行うことなく、照明効率を容易に改善することができる。
【0041】
また、本実施例に係る蛍光顕微鏡10では、図5に例示されるような共焦点開口としてスリットが形成されたスピニングディスク15を用いる場合について説明したが、共焦点開口としてピンホールが形成されてもよく、共焦点開口の形状は特に限定されない。なお、図5では、長手方向の異なるスリットが形成された領域A1と領域A2を含むスピニングディスクが例示されている。
【0042】
また、本実施例に係る蛍光顕微鏡10では、図2及び図3で例示されるように、スピニングディスク15の反射面15aの法線と光軸OAが平行である例を示したが、スピニングディスク15の配置は特にこれに限られない。反射面15aを反射した照明光が反射面15aに入射する方向とは異なる方向に進行する限り、例えば、図6に例示されるように、スピニングディスク15の反射面15aの法線が集光レンズ14の光軸OAに対して傾斜していてもよい。
【0043】
また、本実施例に係る蛍光顕微鏡10では、図2及び図3で例示されるように、スピニングディスク15を反射した照明光を1回だけスピニングディスク15に導いて再利用する例を示したが、照明光を再利用する回数は1回に限られず、複数回再利用しても良い。この場合、蛍光顕微鏡10は、図7に例示されるように、必要に応じて、異なる位置に配置された複数のミラー12を含んでもよい。
【0044】
また、本実施例に係る蛍光顕微鏡10では、図2及び図3で例示されるように、光路分割素子として、照明光を反射し蛍光を透過するダイクロイックミラー13を例示したが、ダイクロイックミラーの特性は特にこれに限られない。照明光を透過し蛍光を反射するダイクロイックミラーを用いても良い。なお、光路分割素子は、集光レンズ14とレーザー11の間に配置され、入射光を波長に応じて反射または透過させるものであれば、ダイクロイックミラーに限られない。
【0045】
また、本実施例に係る蛍光顕微鏡10では、図2及び図3で例示されるように、光源としてレーザー11を例示したが、光源はレーザーに限られず、例えば、LED光源などを用いても良い。また、レーザー光源、LED光源や水銀ランプ光源等の光をファイバーやリレー光学系にて伝送しても良い。なお、反射部材には光源が拡大された光源像が投影されるため、リサイクル光学系により複数回照明光が再利用される場合を考慮すると、光源は点光源または点光源とみなすことができる程度に小さな光源であることが望ましい。リレー光学系を用いる場合は、射出端で十分に点光源とみなせる様に縮小変倍することが望ましい。
【0046】
また、本実施例では、ディスク走査型共焦点観察装置として蛍光顕微鏡を例示したが、ディスク走査型共焦点観察装置は、蛍光顕微鏡に限られない。ただし、蛍光顕微鏡の場合、標本からの検出対象とされる光とスピニングディスクを反射した光とでは波長が異なるため、その分離が比較的容易である。従って、蛍光顕微鏡は、リサイクル光学系を用いて照明効率を向上させる本願の技術の適用に特に好適である。
【0047】
なお、本実施例に係る蛍光顕微鏡10は、照明光を再利用するために、光軸OAに対して傾いた照明光がスピニングディスク15に入射するように構成されているが、スピニングディスク15を通過した照明光は、スリットでの散乱により、スリット位置に配置された点光源から生じた照明光とみなすことができる点については、従来技術に係る蛍光顕微鏡100と同様である。このため、本実施例に係る蛍光顕微鏡10によれば、照明の角度や位置などを変更することなく、照明効率だけを向上させることが可能である。
【実施例2】
【0048】
図8は、本実施例に係る蛍光顕微鏡の構成を例示する図である。図8に例示される蛍光顕微鏡20は、標本Sとレーザー11の間にある標本Sと共役な面に配置された回転部材であるスピニングディスク15を含むディスク走査型共焦点観察装置である。
【0049】
蛍光顕微鏡20は、スピニングディスク15の反射面15aで反射した照明光を反射して再びスピニングディスク15へ導くように配置された反射部材として、ミラー12の代わりにプリズム21を含む点が、実施例1に係る蛍光顕微鏡10と異なっている。その他の点については、実施例1に係る蛍光顕微鏡10と同様であるため、同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0050】
プリズム21は、反射面15aで反射した照明光を反射する反射面21a、21bを有する直角(反射)プリズムであり、照明光が光軸OAと略平行な光束としてプリズム21の反射面21aに入射するように配置されている。プリズム21は、照明光の進行方向を反対向きに変換し、且つ、照明光をその進行方向と直交する方向に平行移動させる機能を有する。従って、照明光が反射面21aに入射すると、入射方向と正反対方向でありながら、照明光が反射面21aから反射面21bに到達する距離分だけズレた、わずかに異なる光路を通って、ダイクロイックミラー13、集光レンズ14を介してスピニングディスク15に入射する。これにより、スピニングディスク15との相対的な位置関係が変化することになる。このため、スピニングディスク15に最初に入射した際には反射された照明光の一部がスリットに入射してスピニングディスク15を通過することが可能となる。
【0051】
以上、本実施例に係る蛍光顕微鏡20によっても、実施例1に係る蛍光顕微鏡10と同様に、リサイクル光学系がスピニングディスク15と照明光との位置関係を変更しながら照明光を複数回スピニングディスク15に導くことにより、スピニングディスク15を通過する照明光の光量を増加させることができる。このため、従来技術に係る蛍光顕微鏡100に比べて、蛍光顕微鏡20の照明効率を改善することが可能であり、高い照明効率を有する蛍光顕微鏡20を提供することができる。
【実施例3】
【0052】
図9は、本実施例に係る蛍光顕微鏡の構成を例示する図である。図9に例示される蛍光顕微鏡30は、標本Sとレーザー11の間にある標本Sと共役な面に配置された回転部材であるスピニングディスク15を含むディスク走査型共焦点観察装置である。
【0053】
蛍光顕微鏡30は、スピニングディスク15の反射面15aで反射した照明光を反射して再びスピニングディスク15へ導くように配置された反射部材として、ミラー12の代わりに楕円ミラー31を含む点が、実施例1に係る蛍光顕微鏡10と異なっている。その他の点については、実施例1に係る蛍光顕微鏡10と同様であるため、同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0054】
楕円ミラー31は、反射面15aで反射した照明光を反射する反射面31aを有している。楕円ミラー31は、照明光が入射する位置によってその法線の方向が異なるが、光軸OA上に楕円ミラー31の中心を合わせて配置することで、光軸OA上を除き、その反射面31aの法線は光軸OAに対して傾斜している。即ち、照明光が光軸OAと略平行な光束として楕円ミラー31に入射することを考慮すると、楕円ミラー31は、反射面31aの法線が照明光に対して傾斜するように配置されている。これにより、反射面31aを反射した照明光は、反射面31aに入射する照明光とはわずかに異なる光路を通って、ダイクロイックミラー13、集光レンズ14を介してスピニングディスク15に入射することで、スピニングディスク15との相対的な位置関係が変化することになる。このため、スピニングディスク15に最初に入射した際には反射された照明光の一部がスリットに入射してスピニングディスク15を通過することが可能となる。
なお、楕円ミラー31は、図9に例示されるように、レーザー11からの照明光を通過するスリットを有していてもよい。
また、楕円ミラー31の代わりに凹レンズに反射コートを施した球面ミラーを用いてもよく、楕円ミラー31と同様に、光軸OA上に球面ミラーの中心を合わせて配置することで、同様の効果を得ることができる。
【0055】
以上、本実施例に係る蛍光顕微鏡30によっても、実施例1に係る蛍光顕微鏡10と同様に、リサイクル光学系がスピニングディスク15と照明光との位置関係を変更しながら照明光を複数回スピニングディスク15に導くことにより、スピニングディスク15を通過する照明光の光量を増加させることができる。このため、従来技術に係る蛍光顕微鏡100に比べて、蛍光顕微鏡30の照明効率を改善することが可能であり、高い照明効率を有する蛍光顕微鏡30を提供することができる。
【符号の説明】
【0056】
10、20、30、100・・・蛍光顕微鏡
11・・・レーザー
12・・・ミラー
12a、15a、21a、31a・・・反射面
13、103・・・ダイクロイックミラー
14、104・・・集光レンズ
15、105・・・スピニングディスク
16、106・・・結像レンズ
17、107・・・対物レンズ
18、108・・・レンズ
19、109・・・CCD
21・・・プリズム
31・・・楕円ミラー
101・・・アーク光源
102・・・コリメータレンズ
105a・・・面
S・・・標本
OA・・・光軸
IL、L1、L2、L3・・・照明光
FL・・・蛍光
A1、A2・・・領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標本を照明する照明光を射出する光源と、
前記標本と前記光源の間の前記標本と共役な面に配置され、前記光源側に反射面を有する、開口が形成された回転部材と、
前記回転部材の前記反射面で反射した照明光を反射して前記回転部材へ導くように配置された反射部材と、を含む
ことを特徴とするディスク走査型共焦点観察装置。
【請求項2】
請求項1に記載のディスク走査型共焦点観察装置において、さらに、
前記光源と前記回転部材との間で、且つ、前記反射部材と前記回転部材との間の光路上に配置された集光レンズを含む
ことを特徴とするディスク走査型共焦点観察装置。
【請求項3】
請求項2に記載のディスク走査型共焦点観察装置において、
前記光源は、前記集光レンズの光軸に対して偏心した位置に配置される
ことを特徴とするディスク走査型共焦点観察装置。
【請求項4】
請求項3に記載のディスク走査型共焦点観察装置において、
前記反射部材は、
前記回転部材の前記反射面で反射した照明光を反射する平面からなる反射面を有し、
前記反射部材の前記反射面の法線が前記反射部材に入射する照明光に対して傾斜するように配置される
ことを特徴とするディスク走査型共焦点観察装置。
【請求項5】
請求項3に記載のディスク走査型共焦点観察装置において、
前記反射部材は、
前記回転部材の前記反射面で反射した照明光を反射する平面からなる反射面を有し、
前記反射部材の前記反射面の法線が前記集光レンズの光軸に対して傾斜するように配置される
ことを特徴とするディスク走査型共焦点観察装置。
【請求項6】
請求項3に記載のディスク走査型共焦点観察装置において、
前記反射部材は、曲面からなる反射面を有する
ことを特徴とするディスク走査型共焦点観察装置。
【請求項7】
請求項3乃至請求項6のいずれか1項に記載のディスク走査型共焦点観察装置において、さらに、
前記集光レンズと前記光源との間に配置され、入射光を波長に応じて反射または透過させる光路分割素子を含む
ことを特徴とするディスク走査型共焦点観察装置。
【請求項8】
請求項3乃至請求項7のいずれか1項に記載のディスク走査型共焦点観察装置において、
前記回転部材は、前記集光レンズの前側焦点面に配置され、
前記反射部材は、前記集光レンズの後側焦点面に配置される
ことを特徴とするディスク走査型共焦点観察装置。
【請求項9】
請求項3乃至請求項8のいずれか1項に記載のディスク走査型共焦点観察装置において、
前記回転部材の前記反射面は、平面からなる
ことを特徴とするディスク走査型共焦点観察装置。
【請求項10】
請求項9に記載のディスク走査型共焦点観察装置において、
前記回転部材の前記反射面の法線は、前記集光レンズの光軸に対して傾斜している
ことを特徴とするディスク走査型共焦点観察装置。
【請求項11】
請求項3乃至請求項10のいずれか1項に記載のディスク走査型共焦点観察装置において、
前記反射部材は、ミラーである
ことを特徴とするディスク走査型共焦点観察装置。
【請求項12】
請求項3乃至請求項10のいずれか1項に記載のディスク走査型共焦点観察装置において、
前記反射部材は、プリズムである
ことを特徴とするディスク走査型共焦点観察装置。
【請求項13】
請求項3乃至請求項12のいずれか1項に記載のディスク走査型共焦点観察装置において、
前記反射部材を複数含む
ことを特徴とするディスク走査型共焦点観察装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−15681(P2013−15681A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148463(P2011−148463)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】