ディスク駆動用モータ及び情報記録再生装置
【課題】主としてHDD用モータにおいて、高速回転しても高い振れ精度を維持し、耐外力性に優れるモータを提供することを目的とする。
【解決手段】急峻な段差ががなく気流を抑制し、一定方向に傾斜させるモーメントが働くように、磁気シールド板9が軸方向に傾斜hを有して固定されており、ディスク1が回転することにより回転体に動圧を作用させて、側圧を流体軸受に作用させることにより、回転体の挙動を安定させることが出来る。
【解決手段】急峻な段差ががなく気流を抑制し、一定方向に傾斜させるモーメントが働くように、磁気シールド板9が軸方向に傾斜hを有して固定されており、ディスク1が回転することにより回転体に動圧を作用させて、側圧を流体軸受に作用させることにより、回転体の挙動を安定させることが出来る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクの回転に伴い発生する気流の動圧を利用して、ディスクの振れ周りを防ぐことができる、主としてディスク駆動装置(以下HDDと略す)に用いられるディスク駆動用モータ、およびそれを搭載した情報記録再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、HDDの大容量化、高速化、低騒音化、低電力化等の要求はますます強くなってきている。これに伴い、記録再生ヘッドにおけるノイズ抑制技術やディスクを安定して回転駆動する技術が特に重視されてきている。
【0003】
近年、HDDの記憶容量は加速度的に増加し、装置の記憶容量の増加に伴いディスクのトラックピッチも狭くなっている。この狭まるトラックピッチ上を確実にトレースするため、HDDに搭載されるモータには高精度回転が要求されている。特にモータのNRRO(非再現性繰り返し振れ)特性は、回転するディスク上の狭いトラックピッチを確実に読み込むことに欠かせない代表的特性の1つでありサブミクロンの高精度が要求され、HDDの記憶容量高密度化に大きな影響を及ぼす。
【0004】
またHDDの一部は、パーソナルコンピュータ(以下、PCと略す)やAV機器に搭載されて、動画を録画・再生するために使用され始めた。HDDが動画を扱う場合、PCやAV機器の使用者が快適に動画を再生するためにHDDのアクセススピードを早くすることが必須であり、アクセススピードを増加させるためにはモータの高速回転化が要求されている。
【0005】
また、HDDが小型化・薄型化されて2.5インチ以下のディスクを搭載する場合、モバイル機器などに組み込まれて携帯されることがある。このような場合、車中で使用したり衣服のポケットなどに携帯してモバイル機器を使用したりすることが想定される。そのような場合でも、機器を正常に動作させるためには、HDDの振動などに対する耐外力性を向上させることが必要であり、ディスクを駆動させるモータに耐外力性が要求されている。
【0006】
ノイズ抑制技術に関しては、モータ部とディスクとの間に磁気シールド板を配置するものがあった(例えば特許文献1参照)。図13は、前記特許文献1に記載された従来構成1のHDDにおけるモータ部の分解斜視図を示したものである。また図14は同モータの断面図である。両図において、ベース7上には複数相からなるコア巻線8が施されたステータコア24が固定されている。このステータコア24の内周には、ハブ2に固定された磁石23が2個の玉軸受21によって回転自在に支承されている。さらにステータコア24とコア巻線8の上には磁気シールド板9が固定されている。このように構成することにより、ヘッド11へのモータ部からの漏洩磁束を防止し、ヘッド11における再生信号に対するノイズ重畳を抑制するものである。
【0007】
またディスクを安定的に回転させる技術としては、気流案内板をディスクに近接させて、ディスクの回転によって気流をHDD筐体内部で発生させて、その気流による圧力がハブ側面に加わるように気流を導入する事で、ラジアル軸受に側圧Fを掛けて軸受の安定的回転を狙うもの(例えば特許文献2参照)があった。図15(a)は従来構成2におけるHDDの平面図、同図(b)はその断面図である。同図に示すように複数枚のディスク1の間には気流案内板32が配設されている。気流案内板32の回転方向後方側の面を、ハブ2に近接するように弧状をなすように湾曲した案内面32aとする。これによって、回転部の回転中心を一定の向きに偏心させることによりNRRO及びRROを効果的に防いで回転精度を高めることができるものである。
【0008】
さらに、ディスクに、円周方向と半径方向に広がった部分的に環状の平滑面をもつスクイーズ空気軸受板を0.3mm以下のすきまでディスク面に対向させて設置固定して、ディスクの空力励振されるフラッタ振動を制振するもの(例えば特許文献3参照)があった。図16は従来構成3のHDDの斜視図である。同従来構成3において、スクイーズ空気軸受板33をディスク1に近接させて配置して、ディスク1周辺の空気の流れの乱れを低減する事でディスク1の回転を安定化するものである。また気流がスクイーズ空気軸受板33の周辺でスムーズに流れるようにその端面に傾斜面34を設けて断面が流線型になるようにしている。
【特許文献1】米国特許第6,486,578号明細書
【特許文献2】特開2001−076459号公報
【特許文献3】特開2000−331460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来構成1では、図13、図14に示すようにコア巻線8の引き出し線22を処理するために磁気シールド板9には突出部9aが設けられている。一方、ヘッド11が進入する位相付近において磁気シールド板9はベース7に近付くように平坦部9bを有している。ここで突出部9aと平坦部9bとの間の段差は角部を有して急峻に立ち上がっていることが特許文献1に記載された図よりわかる。また磁気シールド板9の内周部は磁石23に近接しているが、従来構成1では内周部も急峻に立ち上がっていることになる。
【0010】
しかしながら、上記のように急峻な段差を有していると下記のような課題が発生する。すなわち、前記段差が急峻に立ち上がっているので、図5(a)に示すように、前記段差のコーナ部にて渦12を発生する恐れがある。この渦12によりディスクと磁気シールド板の間に発生する動圧が乱れて乱流を生じ、ディスクに不安定な動圧が作用し、回転体の挙動を乱す恐れがある。この現象は回転速度が3000rpm程度でも生じ得、さらに回転数が高速になるほど渦の影響は大きくなる。
【0011】
ディスク1を含む回転体に対して外乱振動が加わると、図11(a),(b)に示すように、ヘッド11とディスク1の間で相対的な角度ずれが生ずる。ヘッド11は、アクチュエータアーム19に固定され柔軟性を有したフレクシャ20上にジンバル機構(図示せず)を介して取り付けられている。ヘッド11はディスク1に対して所定のピッチ角度θp、ロール角度θrをもって浮上量FHで浮上する。ここでディスク1が振動すると、ディスク1の表面は同図(a)に示すように、ピッチ方向に1a,1bと傾斜が変わってしまう。またロール方向に同図(b)に示すように1c、1dと傾斜方向が変わってしまう。その結果ディスク1に対するヘッド11の姿勢が変化してしまい、ヘッドの浮上量FHが変動し、ヘッド11がディスク1に接触して、ディスク1条に記録したデータを破壊したり、場合によってはディスク1上に塗布された潤滑剤(図示せず)とヘッド11がスティクションを生じてヘッドクラッシュしたりして、HDDが致命的なダメージを受けうる。そのようなことが生じないように浮上量FHを十分に大きくすると、ヘッド11とディスク1上の磁性膜との磁気的空隙が大きくなるのでヘッド再生出力が十分に得られないことになり、HDDに記録可能なデータ容量が著しい制約を受けることになる。したがってHDDに外乱振動などが加わってもディスク1が振動することを避ける必要がある。
【0012】
また磁石23に近接した磁気シールド板9の内周部分も急峻に立ち上がっているので、磁石9からの漏洩磁界が磁気シールド板9に鎖交したときに、その急峻な立ち上がり部分で磁束の集中が生じやすく、これがヘッド11に対しての外乱磁界となり、ヘッド11における再生信号にノイズが重畳しやすくなる。さらに磁気シールド板9は磁性材料製であるので、コギングトルクを発生してモータの回転体に対しての加振源となり、NRRO,RROにつながる。このような現象は低消費電力化のためにネオジウム鉄ボロン系等のようにエネルギー積が大きい磁石を用いた場合に顕著であり、とりわけ樹脂磁石よりも焼結磁石を用いた場合により影響が大きくなる。そのようにエネルギー積が大きな磁石を用いた場合は更にコギングトルクだけではなく、磁気シールド板9が振動することで騒音も発生する。
【0013】
また上記従来構成2においては案内面32aを有した気流案内板32をディスク1の上下に配置する構成としている。しかし、1.8インチサイズ以下の小型HDDは薄型化を求められることが多く、その結果搭載可能なディスク枚数は通常1枚に限られる。従って複数のディスクの間に気流案内板32を配置することはできない。
【0014】
また1.8インチサイズ以下の小型HDDはディスク1上にハブ2が突出する高さは1mm以下で、ハブ2は単純な円筒面で構成されない場合が多い。そのためディスク1の上面側に気流案内板32を配置してもハブ2に十分に気流が当たらないため、気流案内効果が十分に得られないことが多い。更に1.8インチサイズ以下の小型HDDはディスク1の下面と磁気シールド板9との間には1mm程度の空間しかない場合が多い。この様な場合、磁気シールド板9の上に気流案内板32を配置するには、気流案内板32の厚さは1mm以下にする必要がある。このように気流案内板32が薄い状態では、気流案内そのものが十分に行うことが困難である。その結果、気流案内板32は少なくとも1.8インチサイズ以下のHDDにおいては十分な効果を発することができない。また気流案内板32の案内面32aは、図15(b)に示すようにディスク1に対して垂直になるように形成されているため、気流案内板32の上下には渦を発生ししてしまうことになる。この渦はディスクに対して加振源となり、ディスクのNRRO、RROにつながる。
【0015】
また上記従来構成3においては、1.8インチサイズ以下のHDDに適用した場合、上記従来構成2と同様にスクイーズ空気軸受板33の厚さは1mm以下にする必要があるが、スクイーズ空気軸受板33が薄いために反りが発生しやすくなり、磁気シールド板9の上に設置固定した場合、公差の積み重ねによってはディスク1の下面に擦れてしまう場合がある。またたとえHDDに外乱G等が加わらない状態で擦れなくても、1.8インチサイズ以下のHDDのようにモバイル用途に展開される機種の場合は、動作中に大きな衝撃を受ける場合がある。そのようなときにディスク1もしくはスクイーズ空気軸受板33が変形して擦れてしまう場合がある。
【0016】
そのようなことが生じないように、磁気シールド板9とスクイーズ空気軸受板33の高さ公差、平面度等を十分に考慮して設計する必要があるが、擦れが発生しないようにスクイーズ空気軸受板33とディスク1との間の隙間を設定すると、十分なスクイーズ空気軸受効果を発生することができない。また1.8インチサイズ以下のHDDのように小型化/薄型化を要求される場合、スクイーズ空気軸受板33をディスク1の上方に設置するのは、スクイーズ空気軸受板33を固定するための取り付け面積の確保が困難である。
【0017】
またディスク1より上側のスペースも限られるので、スクイーズ空気軸受板33の平面度や高さ公差バラツキの点で現実的には困難である。またスクイーズ空気軸受板33は形状が複雑になるので、樹脂あるいは鍛造などのプレス可能な材料を用いる必要があるが、一般にそのような材料は表面硬さが低く、些細なことで傷つきやすい。スクイーズ空気軸受板33には、その周囲で気流がスムーズに動くことができるように傾斜面34を設けているが、これによってスクイーズ空気軸受板33はシャープにすることができる一方で、上記のように比較的柔らかい材料で作られるので、このシャープな端面は極めて傷つきやすくなる。スクイーズ空気軸受板33に傷が付いた場合は、かえってその傷の周囲で気流が大きく乱されて渦を発生するので、ディスク1のフラッタ振動がかえって増大したり、騒音発生の原因となったりする。したがってスクイーズ空気軸受板33の製造や、取り扱いにおいてドライブを組み立てる上でも、極めて慎重な取り扱いを必要としたり、もしくはニッケルメッキなどの表面硬化処理を行ったりする必要が生ずる。これはコストアップの一因となる。
【0018】
尚、ディスク1の下面側にスクイーズ空気軸受板33を配置する構成も考えられるが、1.8インチサイズ以下のHDDにおいては厚さ方向の余裕が小さく、モータ部とディスク1との間に配設する事は不可能である。さらに、スクイーズ空気軸受板33と同様の形状をベース7上に設ける事も考えられるが、ディスク1の外径が小さい小型HDDではモータ部の外径を小さくする必要があり、モータ部の消費電力の増大につながってしまう。
【0019】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、簡単な構成でありながら、ディスクの振れ周りを防ぐことができ、かつ低騒音化と低消費電力化も図りうる、主としてHDDに用いられるディスク駆動用モータ、およびそれを搭載した情報記録再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記従来の課題を解決するために、請求項1に記載のディスク駆動用モータは、ベースと、ディスクを搭載可能なリング状のディスク受け面を有するハブと、前記ハブを回転自在に支承する流体動圧軸受と、前記ベース上に載置され、前記ディスク受け面の外径よりも大きな外径を有し、前記ハブに対して回転力を与えるモータ部と、前記ディスク受け面に前記ディスクが搭載された時に形成される前記ディスクと前記モータ部との間の軸方向空隙部に配設された磁気シールド板とを有してなり、前記ディスクが搭載され前記ディスクが回転したときに、前記ディスクとの間の気流による圧力が円周方向位置によって異なるように、前記磁気シールド板を前記ディスク受け面に対して傾斜して固定している。これによって、磁気シールド板は急激に折れ曲がる段差を有しないので、磁石との間で発生するコギング力も極小にすることが可能であり、またコギングに付随して発生する振動騒音も抑制できる。またディスクを搭載したときに、ディスク下面に対向する磁気シールド板はディスクに対して傾斜して固定されているので、ディスクが回転したときにディスクと磁気シールド板との間に発生する気流に関して渦の発生はほとんどなく、また圧力もなめらかに変化する。その結果ディスクに対して、磁気シールド板との隙間が狭い部分で軸方向に荷重がかかり、回転体全体を一定方向に傾斜させる力が発生する。また同時に流体軸受部において軸受剛性も上昇するのでNRRO、RROを抑制させることができる。
【0021】
請求項2に記載の情報記録再生装置は、ディスクと、前記ディスクに対向して配置され、前記ディスク上の任意位置を走査して情報を記録または再生するヘッドと、前記ディスクを回転駆動するディスク駆動用モータとを備えた情報記録再生装置であって、前記ディスク駆動用モータは請求項1に記載のディスク駆動用モータである。これによって、ディスクと磁気シールド板との間の軸方向空隙がほぼ正弦波状になめらかに変化するので、ディスクが回転したときにディスクと磁気シールド板との間に発生する気流に関して渦の発生はほとんどなく、また圧力もなめらかに変化する。その結果ディスクに対して、磁気シールド板との隙間が狭い部分で軸方向に荷重がかかり、回転体全体を一定方向に傾斜させる力が発生し、回転体の挙動が安定する。また同時に流体軸受部において軸受剛性も上昇するのでNRRO,RROを抑制させることができる。
【0022】
請求項3に記載の情報記録再生装置は、前記磁気シールド板と前記ディスクとで形成される軸方向空隙部は、前記ヘッドが走査する領域以外でその軸方向距離が小さくなるように、前記磁気シールド板を傾斜させたものである。これによって、磁気ヘッド走査領域以外の前記隙間を小さくすることができるので、発生する動圧をより向上させることが出来、より安定的にディスクを回転させることが可能になる。
【0023】
請求項4に記載の情報記録再生装置は、磁気シールド板とディスクとで形成される軸方向空隙部を、ヘッドの走査軌跡円弧に対してディスクの回転中心から引いた接線とほぼ直交する方向でその軸方向距離が小さくなるように、磁気シールド板を傾斜させたものである。これによって、ディスクに対するヘッドのピッチ方向の姿勢の安定化を図ることができるので、ヘッド浮上量の安定化ができ、より小さな浮上量でヘッドのスライダ設計を行ってもヘッドがディスクに接触する頻度を下げることが可能になる。このことでより高密度記録が可能になり、機器の小型化や記憶容量の増大に大きく寄与することができる。
【0024】
請求項5に記載のディスク駆動用モータは、ベースと、ディスクを搭載可能なリング状のディスク受け面を有するハブと、前記ハブを回転自在に支承する流体動圧軸受と、前記ベース上に載置され、前記ディスク受け面の外径よりも大きな外径を有し、前記ハブに対して回転力を与えるモータ部と、前記ディスク受け面に前記ディスクが搭載された時に形成される前記ディスクと前記モータ部との間の第1の軸方向空隙部に配設された磁気シールド板とを有してなり、前記ディスクが搭載されたときに形成される前記磁気シールド板と前記ディスクの間の第2の軸方向空隙部の前記磁気シールド板側の形状は、前記モータ部が回転したときに前記ディスクとの間の気流による圧力が円周方向位置によって異なるように、前記ディスク受け面に対してその軸方向高さもしくは傾斜方向が異なりかつ、互いに円周方向に滑らかに繋がる少なくとも二つの平面部を有している。
【0025】
これによって、磁気シールド板は急激に折れ曲がる段差を有しないので、磁石との間で発生するコギング力も極小にすることが可能であり、またコギングに付随して発生する振動騒音も抑制できる。またディスクを搭載したときに、ディスク下面に対向する磁気シールド板はディスクに対して軸方向隙間が円周方向位置によって異なるように軸方向高さもしくは傾斜が異なる二つ以上の平面部を有しているので、ディスクが回転したときにディスクと磁気シールド板との間に発生する気流に関して渦の発生はほとんどなく、また圧力もなめらかに変化する。その結果ディスクに対して、磁気シールド板との隙間が狭い部分で軸方向に荷重がかかり、回転体全体を一定方向に傾斜させる力が発生する。また同時に流体軸受部において軸受剛性も上昇するのでNRRO,RROを抑制させることができる。
【0026】
請求項6に記載のディスク駆動用モータは、ディスクを搭載したときに、ディスクと磁気シールド板との間の第2の軸方向空隙部の前記磁気シールド板側の形状は、互いに軸方向高さが異なり、かつコーナR形状により円周方向に滑らかに繋がる段差を有するので、ディスクが回転したときにディスクと磁気シールド板との間に発生する気流に関して流路抵抗の変化が小さいので渦の発生はほとんどなく、また圧力もなめらかに変化する。その結果ディスクに対して磁気シールド板との隙間が狭い部分で軸方向に荷重がかかり、回転体全体を一定方向に傾斜させる力が発生する。また同時に流体軸受部において軸受剛性も上昇するのでNRRO,RROを抑制させることができる。さらに磁気シールド板は急激に折れ曲がる段差を有しないので、磁石との間で発生するコギング力も極小にすることが可能であり、またコギングに付随して発生する振動騒音も抑制できる。
【0027】
請求項7に記載のディスク駆動用モータにおける磁気シールド板とディスクと間の第2の軸方向空隙部の磁気シールド板側の形状は、2つ以上の平面の接続部分が、R1>R2(R1はディスク受け面に軸方向で近い側にある正曲率のコーナR、R2はディスク受け面より軸方向で遠い側にある負曲率のコーナR)なる関係を満たすコーナR形状とする。これによって、急激に折れ曲がる段差を有しないので、磁石との間で発生するコギング力も極小にすることが可能であり、またコギングに付随して発生する振動騒音も抑制できる。またディスクが搭載されたときに流路が狭くなる入り口に当たるコーナR半径であるR1を大きく設定することにより、絞りを緩やかにして流路抵抗を小さくし、渦発生を防止して回転体の挙動を安定させることが出来る。
【0028】
請求項8に記載のディスク駆動用モータにおける磁気シールド板の最内周部は単一のリング状平面部からなる。これによって、磁気シールド板を深絞り形状とすることができ、磁気シールド板の剛性が向上し、磁気シールド板の振動が低減でき、低騒音化低振動化に寄与する。
【0029】
請求項9に記載のディスク駆動用モータは、前記ディスク受け面に前記ディスクを搭載した状態で、前記磁気シールド板と前記ディスクとの間の軸方向隙間が狭い領域は87度以上248度以下の範囲にわたるので、発生する動圧が十分に高くかつ安定するので、ディスクの回転が安定化する。
【0030】
請求項10に記載の情報記録再生装置は、ディスクと、前記ディスクに対向して配置され、前記ディスク上の任意位置を走査して情報を記録または再生するヘッドと、前記ディスクを回転駆動するディスク駆動用モータとを備え、前記ディスク駆動用モータは請求項5,請求項6,請求項7,請求項8,請求項9のいずれか1項に記載のディスク駆動用モータである。これによって、ディスクを搭載したときに、ディスク下面に対向する磁気シールド板はディスクに対して軸方向隙間が円周方向位置によって異なるように軸方向高さもしくは傾斜が異なる二つ以上の平面部を有している。これにより、ディスクが回転したときにディスクと磁気シールド板との間に発生する気流に関して渦の発生はほとんどなく、また圧力もなめらかに変化する。その結果ディスクに対して、磁気シールド板との隙間が狭い部分で軸方向に荷重がかかり、回転体全体を一定方向に傾斜させる力が発生する。また同時に流体軸受部において軸受剛性も上昇するのでNRRO,RROを抑制させることができる。
【0031】
請求項11に記載の情報記録再生装置は、前記磁気シールド板と前記ディスクとで形成される軸方向空隙部は、前記ヘッドが走査する領域以外でその軸方向距離が小さくなるように、前記磁気シールド板を構成したものである。これによって、磁気ヘッド走査領域以外の前記隙間を小さくすることができるので、発生する動圧を更に向上させることが出来、より安定的にディスクを回転させることが可能になる。
【0032】
請求項12に記載の情報記録再生装置は、磁気シールド板とディスクとで形成される軸方向空隙部を、ヘッドの走査軌跡円弧に対してディスクの回転中心から引いた接線とほぼ直交する方向でその軸方向距離が小さくなるように、磁気シールド板形状を設定したものである。これによって、ディスクに対するヘッドのピッチ方向の相対姿勢の安定化を図ることができ、ヘッド浮上量の安定化ができ、より小さな浮上量でヘッドのスライダ設計を行ってもヘッドがディスクに接触する頻度を下げることが可能になる。このことでより高密度記録が可能になり、機器の小型化や記憶容量の増大に大きく寄与することができる。
【0033】
請求項13に記載の情報記録再生装置は、磁気シールド板とディスクとで形成される軸方向空隙部は、ヘッドの走査軌跡円弧上よりも、ディスクの回転中心から見てそのほぼ反対の方向位置でその軸方向距離が小さくなるように、磁気シールド板の形状を構成したものである。これにより、ディスクに対するヘッドのロール方向の相対姿勢の安定化を図ることができ、ヘッド浮上量の安定化ができ、より小さな浮上量でヘッドのスライダ設計を行ってもヘッドがディスクに接触する頻度を下げることが可能になる。このことでより高密度記録が可能になり、機器の小型化や記憶容量の増大に大きく寄与することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明のディスク駆動用モータおよびそれを搭載した情報記録再生装置は、モータの磁気シールド板形状を適切に設定することで、ディスクが高速回転した時にも回転体の挙動を安定させることができる上、振動などに対する耐外力性も向上する。またディスクを安定回転させて記憶容量の増大と高密度化に寄与するモータを提供することができる。さらに磁気シールド板の形状を変えるだけで上記回転体の挙動安定化を図る事が出来、新たな部品追加を行う必要が無くコスト増大を抑制し、また薄型化をはかる事も可能という顕著な効果を得る事が出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
【0036】
図1(a)は本発明の実施の形態1におけるHDDのモータ部の断面図である。
【0037】
ディスク1はクランパ(図示せず)によりハブ2に搭載されている。ハブ2の下端には複数局に着磁した磁石23が固着されている。ハブ2はシャフト3に支承され、更にシャフト3の端部にフランジ4が固定されている。フランジ4は、シャフト3にレーザ溶接,カシメ,圧入接着等により固定されている。シャフト3はスリーブ5に挿入されており、スリーブ5の端面にはフランジ4に対向する位置にスラスト板6が固定されている。スラスト板6はスリーブ5にカシメ等により固定されている。
【0038】
シャフト3とスリーブ5が対向する円周面には、シャフト3もしくはスリーブ5のどちらか一方に動圧溝を配置することよりラジアル動圧軸受を構成している。また、フランジ4とスラスト板6の対向する面には、フランジ4もしくはスラスト板6のどちらか一方に動圧溝を配置することによりスラスト動圧軸受を構成している。軸受内部には潤滑剤(図示せず)を充填しており、モータが回転することにより潤滑剤によって動圧を発生して回転体を支持する。
【0039】
スリーブ5はベース7に接着固定されており、また磁石23と半径方向隙間を介して対向するようにステータコア24がベース7に接着固定されて、さらにコア巻線23が巻回され、いわゆるインナーロータ型モータを構成している。コア巻線8の上には、コア巻線8との絶縁を保つための絶縁シール10が貼り付けられた磁気シールド板9が接着固定されている。磁気シールド板9は打抜き加工(プレス加工)により形成されており、その材質としては、モータ磁気回路からの漏洩磁束を防ぐ役割と、防錆の面からフェライト系ステンレス材あるいはマルテンサイト系ステンレス材を使用している。磁気シールド板9について、磁気ヘッド11が走査する領域以外はディスク1との隙間を小さくするように傾斜hを有してコア巻線8の上に接着固定されている。
【0040】
図2(a)は本実施の形態1のディスク1と磁気シールド板9とが相対的傾斜hを有している状態を示す斜視図である。ハブ2に搭載されたディスク1と磁気シールド板9の隙間について、磁気ヘッド走査領域以外が小さくなるように、磁気シールド板9が傾斜している。磁気シールド板9の磁気ヘッド進入方向にある傾斜の最低点をA点とし、傾斜の最高点をB点とする。図2(b)は、図2(a)において回転するディスク1と磁気シールド板9の位置と圧力差の関係を表わした模式図である。横軸は磁気シールド板9の位置を表わし、縦軸はディスク1と磁気シールド板9の間の圧力差Pを表わしている。B点にて圧力差Pが最大となる。
【0041】
ディスク1と磁気シールド板9の構成する隙間をΔH、気体の粘度をρ、モータの回転数をSとした時、ディスク1と磁気シールド板9の間に発生する圧力pは次式(数1)をのような関係になる。
【0042】
【数1】
磁気シールド板9が傾斜hを有して固定されて、ディスク1と磁気シールド板9が構成する最大隙間をΔHA、最小隙間をΔHBとした場合、ディスク1と磁気シールド板9の間に発生する圧力差Pは次式(数2)をのような関係になる。
【0043】
【数2】
図2(b)の圧力差はA点を基準としており、傾斜hにより生じるディスク1と磁気シールド板9により構成される隙間が最小となるB点にて圧力差Pが最大となる。傾斜h=0の場合、ΔHB=ΔHAとなるため、式(2)からも明らかなように圧力差は発生せずにP=0となる。
【0044】
図3はモータの回転体を模式的に表現した図である。ディスク1が搭載されたハブ2がシャフト3に固定されており、シャフト3の端部にはフランジ4が固定されている。本実施の形態1による圧力pが発生した時、略180度反対側の位置に向けて半径方向に側圧Qが回転体の上部に作用する。また同時に回転体を傾斜させようとするモーメントMが発生する。この側圧QとモーメントMは圧力pにほぼ比例する。側圧Qが半径方向に作用することにより、シャフト3の回転中心が一定の方向に偏心して、その状態が維持される。ラジアル軸受の軸受剛性は一般に偏心率ゼロの状態よりも、偏心率が大きくなった方が増大するので、側圧Qが印加されることで、ラジアル軸受の軸受剛性が増加する。また同時に、スラスト軸受においても傾斜が生ずることで、スラスト軸受の耐モーメント剛性が増大する。
【0045】
上記構成により、ディスクが回転した時、磁気シールド板9が傾斜を有してコア巻線8に接着固定されているため、ディスク1と磁気シールド板9が構成する隙間が最小となる位置にて圧力差Pが最大となる。前記圧力差Pにより側圧Qが半径方向に回転体へ作用し、モーメントMが回転体を一定方向に傾斜させようとするため、ラジアル動圧軸受部に側圧Qが作用すると共に、スラスト軸受にもモーメントが作用してラジアル軸受とスラスト軸受の軸受剛性が高まる。これにより、回転体の挙動を安定させることができるためNRROおよびRRO(繰り返し振れ)の増加を効果的に抑制し、振動などに対する耐外力性も向上させることが出来る。式(2)からも明らかなように、特に回転体が高速回転化するほど、圧力差Pが高まり側圧Qが大きくなるため、ラジアル軸受の軸受剛性が高くなり効果が顕著に現れる。また磁気シールド板9は円周方向に急峻な段差を有しないので、従来構成1のように、渦を発生することもなく、ディスク1の回転を不安定にする気流の乱れもほとんど無い。
【0046】
また、磁石23との間で発生するコギング力も極小にすることが可能であり、またコギングに付随して発生する磁気シールド板9や回転体の振動騒音も抑制できる。
【0047】
尚、上記説明において、磁気シールド板9は絶縁シール10を介してコア巻線8上に固定されていたが、図1(b)に示すように、ステータコア24の外周側のベースを軸方向に傾斜して延伸させて接着傾斜台7bを形成し、この接着傾斜台7bの上に接着固定しても良い。これによって、磁気シールド板9の外周が固定されるので、磁気シールド板9の振動を抑制することができる。また図1(c)に示すように磁気シールド板9の外周をプレス加工により絞って、ツバ部9dを形成して、このツバ部9dをベース7に接着固定しても良い。これにより、磁気シールド板9自体の強度が高くなり、振動抑制を図ることが可能になる。
【0048】
尚、磁気シールド板9の傾斜方向は、必ずしもディスク1と磁気シールド板9との軸方向距離が最大になる方向にする必要はない。ヘッド11に対するディスク1のピッチ角度方向の振動を抑制するために、図2(c)に示すようにヘッド走査軌跡円弧16に対して、ディスクの回転中心から引いた接線、すなわちヘッド走査軌跡接線17に直交する方向、すなわちヘッド走査軌跡直交線18の方向がディスク1と磁気シールド板9との軸方向距離が最大になるようにするとより好ましい。一般にヘッド11はピッチ角度方向の振動に対して浮上量FHの変動が大きくなるが、このように磁気シールド板9の傾斜方向を設定する事で、ヘッド11の浮上量FHの変動を抑制でき、より高密度記録が可能になる。
(実施の形態2)
【0049】
図4(a)は本発明の実施の形態2におけるHDDのモータ部の平面図である。同実施の形態2において、磁気シールド板9は、図4(b)のC−C断面に示すように、磁気ヘッドの走査領域以外の部位について軸方向に段差kを有しており、コーナR半径R1およびR2により、前記段差は滑らかに繋がっている。またディスク1と磁気シールド板9との間の軸方向隙間が狭くなる領域の開角θは本実施の形態2においては約180度とした。
【0050】
図5は、磁気シールド板の段差によってディスクの回転時に生じる気流の流れに渦が発生した状態の模式図である。図5(a)は磁気シールド板の段差が急峻であり、滑らかに繋がっていない場合である。段差部に急峻な角部があるため、角部前後にて渦12が発生し、動圧が高い段差kの上側部分においても渦12を発生している。前記渦12は乱流を誘発し、ディスクと磁気シールド板間の気流の流れを乱し、回転体の挙動を不安定にする要因となる。図5(b)は磁気シールド板の段差kにテーパ形状を配置することにより、渦12の発生を抑制している。また図5(c)は、磁気シールド板の段差kを2つのコーナR形状により滑らかに繋ぐことにより渦12の発生を抑えるものである。段差の上面側で正曲率のコーナR半径をR1とし、下面側で負曲率のコーナR半径をR2としたときに、R1>R2の関係とすることにより、狭い流路への入り口部を緩やかな軸方向隙間変化にして渦12の発生を抑えて乱流発生を防止し、ディスクに作用する動圧を安定させる。その結果、回転体の挙動を安定させることが出来る。
【0051】
図6は、図4において回転するディスク1と磁気シールド板9の位置と圧力差の関係を表わした模式図である。横軸は磁気シールド板9の位置を表わし、縦軸はディスク1と磁気シールド板9の間の圧力差Pを表わしている。段差kの入り口部には、コーナR半径R1、R2を有している。段差kによりディスク1と磁気シールド板9の隙間が小さくなる領域において、圧力差Pが大きくなる。実施の形態1では圧力差の大きい部位はディスク1の上に線として作用していたが、本実施の形態ではディスク1の上に面となって作用する。
そのため、ラジアル軸受に作用する側圧Qがより増加するため、回転体の軸受剛性も増加する。
【0052】
ディスク1と磁気シールド板9の構成する隙間をΔH、気体の粘度をρ、モータの回転数をSとした時、ディスク1と磁気シールド板9の間に発生する圧力pは前記式(1)のような関係であらわされる。
【0053】
ここで磁気シールド板9は、段差kを有して固定されて、ディスク1と磁気シールド板9が構成する最小隙間をΔHBとする。また最小隙間の領域の開角をθとする。最小隙間部における圧力pBと最大隙間部における圧力pAはそれぞれ次の式(数3)(数4)
【0054】
【数3】
【0055】
【数4】
となる。ここで図7(a)において、圧力pA,pBによるX軸周りのモーメントMXは、磁気シールド板9の代表平均半径をrとすると、次の式(数5)をで表される。
【0056】
【数5】
従って、ディスク1と磁気シールド板9の間に発生する動圧によるモーメントMXは図7(b)に示すように、θ=180゜の時に最大値MXmaxになる。ここでθを90度から270度にする事でMXはMXmaxの71%以上に、さらに106度から254度にする事でMXはMXmaxの80%以上に、さらには128度から232度にする事でMXはMXmaxの約90%以上にすることが出来る。したがってθを90度以上270度以下にする事が望ましい。さらに望ましくは106度から254度、最も望ましいのは128度から232度にすることである。
【0057】
尚、後述する実施の形態3の計算結果(図9(b)参照)を加味して、実施形態に依存せずにθを90度〜248度にすればMXはMXmaxの71%以上に、さらに106度から227度にする事でMXはMXmaxの80%以上に、さらに125度から198度にする事でMXはMXmaxの約90%以上にすることが出来る。
【0058】
本実施の形態2のように構成することにより、図6に示すように、ディスク1に作用する高いピークを保持した動圧を得ることが出来る。そのため、ラジアル軸受への側圧QおよびモーメントMを大きくすると共に、動圧のピークを平らにすることができるのでより側圧を安定させることが出来る。この結果、回転体の挙動を安定させることができるためNRROおよびRROの増加を効果的に抑制し、振動などに対する耐外力性も向上させることが出来る。
【0059】
また磁気シールド板9の段差部は円周方向に滑らかに接続されているので、磁石23からの漏洩磁界が大きなコギング力を発生しないので、回転体が振動したり、磁気シールド板9が騒音を発生したりする事もない。またエッジ部における磁束集中がないのでヘッドに対して悪影響を及ぼすノイズ磁界を発生する事もない。
【0060】
尚、上述の説明において、図12(a)に示すように、磁気シールド板9の段差はその半径位置によらず、同一位相においては同じ高さを有した一例を説明したが、図12(b),(c)のようにその最内周部9iにおいては平坦部9bと同一の高さである単一のリング状平面部を形成しても良い。このように構成する事で、上記コギングや磁気ノイズ発生を完全にゼロにする事が可能になる。
(実施の形態3)
【0061】
図8(a)に本発明の実施の形態3の平面図を、図8(b)に同実施の形態3の斜視図をそれぞれ示す。本実施の形態において、磁気シールド板9はディスク1に対して平行な突出部9aと、傾斜した傾斜面9dの二つの平面からなる。ここで二つの平面は互いに滑らかに接続されている。このように構成する事で、ディスク1に与えられるモーメントを大きくする事が出来ると共に、乱流を発生することが無いので、回転体の挙動を安定させることができるためNRROおよびRROの増加を効果的に抑制し、振動などに対する耐外力性も向上させることが出来る。
【0062】
ここで前記実施の形態3と同様に、図9(a)を用いて、ディスク1に加わるモーメントMXを求める。図8(b)において最も低い位置に当たるA点と最も高い位置に当たるB点との段差をhとする。またB点におけるディスク1と磁気シールド板9との間の軸方向距離をΔHBとする。傾斜面9dにおける軸方向距離ΔHは式(数6)で表され、
【0063】
【数6】
モーメントMXは式(数7)で表される。
【数7】
式(数7)を計算した結果を図9(b)に示す。開角θに対するMX/MXmaxは段差hとΔHBの比に依存して定まることがわかる。同図によると、h/ΔHBの影響を受けるが、θはほぼ150度から180度の範囲でモーメントMXが最大になる。ここでθを87度から248度にする事でMXはMXmaxの71%以上に、さらに103度から227度にする事でMXはMXmaxの80%以上に、さらには125度から198度にする事でMXはMXmaxの約90%以上にすることが出来る。したがってθを87度以上248度以下にする事が望ましい。さらに望ましくは103度から227度、最も望ましいのは125度から198度にすることである。
【0064】
尚、図7(b)に示す前記実施の形態2の計算結果を加味して、θを90度〜248度にすればMXはMXmaxの71%以上に、さらに106度から227度にする事でMXはMXmaxの80%以上に、さらに125度から198度にする事でMXはMXmaxの約90%以上にすることが出来る。
【0065】
本実施の形態3のように構成することにより、ラジアル軸受への側圧QおよびモーメントMを大きくすると共に、動圧のピークを平らにすることができるのでより側圧を安定させることが出来る。この結果、回転体の挙動を安定させることができるためNRROおよびRROの増加を効果的に抑制し、振動などに対する耐外力性も向上させることが出来る。
【0066】
さらに、コア巻線8上側と磁気シールド板との間に空隙部を設けることが可能になるので、この部分で、コア巻線8の端線処理のためのフレキシブル基板を配設することも可能になる。
【0067】
またプレスのよる絞り加工で突出部を設けたので、薄板の磁気シールド板でも大幅な剛性向上が期待でき、磁気シールド板9の反りなども発生しない。
(実施の形態4)
【0068】
図10(a)に本発明の実施の形態4のディスク駆動用モータの平面図を示す。また図10(b)は磁気シールド板9とディスク1とが形成する第2の軸方向空隙を展開した模式図である。ただし、この展開図は、突出部9a,9cの突出部半径方向中央部9rに相当する部分である。同図(b)において横軸はモータ回転方向位相τである。ここでτの原点位相は、ヘッド走査軌跡円弧16に対して、ディスクの回転中心から引いた接線、すなわちヘッド走査軌跡接線17の方向である。またτの符号は原点位相より反時計方向に回転する方向を正とする。
【0069】
同図(b)に示すように、ディスク1に最も近接する突出部9aはτ=90゜位相、すなわちヘッド走査軌跡直交線18を中心に、θa≒100゜の範囲内で突出させている。
【0070】
また突出部9aに連続して突出部9cが配置されている。ここで突出部9cの開角θcはほぼ80°であり、θcの中心位相は180°位相である。またθaとθcの関係は次式が成立するように設定してある。
θa+θc=180° ・・・・・・・・・・・・・・・・ 式(8)
【0071】
また、それ以外の平坦部9bにおいて、ディスク1との軸方向隙間は最も大きくなる。
【0072】
また磁気シールド板9の突出部半径方向中央部9rは上述のように、位相によってディスク1との軸方向隙間は異なるように設定してあるが、最内周部9iは単一のリング状平面部で構成されている。すなわち最内周部9iは図12(b),(c)に示すように、平坦部9bと同一の軸方向高さである平面の一部を構成する。いずれの構成も、突出部9a,9cと平坦部9bの円周方向接続部はなめらかなR形状で接続されている。なお、同図(b)において、最内周部9iと突出部9aの間で半径方向に急峻に立ち上がっているが、半径方向の急峻な立ち上がりは渦を発生しないので問題ない。
【0073】
以下、本実施の形態4における作用と効果を説明する。
【0074】
本実施の形態4において、軸方向隙間が最も狭い突出部9aの中心位相はヘッド走査軌跡円弧16の接線(ヘッド走査軌跡接線17)に直交するヘッド走査軌跡直交線18と同一方向である。従って、突出部9aによる動圧は主にヘッド走査軌跡接線17周りのモーメントとして作用することになる。その結果、ディスク1を含む回転体はヘッド走査軌跡接線17周りに傾斜するモーメントを受けることになる。また突出部9bの中心位相はヘッド走査軌跡接線17と180°反対側の位相であるので、突出部9bで発生した動圧は、ヘッド走査軌跡直交線18周りのモーメントとして回転体に作用する。その結果、ディスク1を含む回転体はヘッド走査軌跡直交線18周りに傾斜するモーメントを受けることになる。
【0075】
ここで、このようなモーメントがディスク1に対して働くと、ディスク1を含む回転体はヘッド走査軌跡接線17周りにわずかに定常的に傾斜する。そしてこのモーメントはラジアル軸受、スラスト軸受の軸受反力が変化することでバランスをとる。このとき軸受の剛性も向上するので、回転体に外乱が加わっても、振動が抑制されることになる。
【0076】
一般にヘッド11の姿勢に関して最も重要とされるのはピッチ角の変動であり、ピッチ角変動を抑制するようにすることが望ましい。本実施の形態4においては、ヘッド走査軌跡接線17周りのモーメントが最も大きくなるように設定しているので、ピッチ角変動を効率的に抑制することが可能になる。またヘッド走査軌跡直交線18周りにもモーメントが働くように構成しているので、ロール角変動に関しても抑制することが可能である。以上の構成により、ディスク1の振動を効率的に抑制することが可能になる。
【0077】
尚、ヘッド11の下面に形成されたスライダパッド(図示せず)の設計によっては、ピッチ角度よりもロール角度変動の余裕度が小さい場合は、ディスク1と磁気シールド板9の軸方向距離の最も小さくなる領域を突出部9cとしても良い。また突出部9aと突出部9cの高さを等しくしてもよい。
【0078】
また突出部9a、突出部9cの中心位相は、必ずしもヘッド走査軌跡接線17にそれぞれ直交,平行である必要はなく、20゜程度ずれていても構わない。位相角度が20゜ずれてもヘッド11から見たピッチ角度方向およびロール角度方向のモーメントはcos20≒0.94であり、ほとんど影響を受けないからである。
【0079】
また磁気シールド板9の最内周部9iは単一のリング状平面部を構成しているので、その内周部が磁石23に対して軸対象形状を成しており、磁石23との間でコギング力を発生することもなく、より低振動化、低騒音化を図ることが可能になる。
【0080】
尚、以上実施形態1、2,3,4の説明では動圧軸受を軸回転型で構成した例で説明したが、流体軸受を用いるものならばすべて適用可能である。またモータ部の構成に関してインナーロータ型の磁気回路に関して説明したが、必ずしもそれに限定されるものでではなく、磁石外周を円筒状のヨーク部内周円筒面に固定して、この磁石内周面に対向するように、放射状に歯部を有するステータコアを配置したいわゆるアウターロータ型であっても適用可能である。
【0081】
またスラスト軸受とラジアル軸受の構成も上記実施の形態1,2,3,4にて記述した内容に限定されるものではなく、たとえばハブの下端とスリーブの上端面の間にスラスト軸受を設けた構成や、スラストフランジを設けずにシャフトの下端に直接、スパイラル形状の動圧溝を配置したもの等であっても良い。
【0082】
さらに、上記実施の形態の説明においては磁気シールド板とディスクの間で軸方向隙間を狭くするために、磁気シールド板をプレス加工した構成を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、磁気シールド板上にディスクとの隙間が小さくなるような突起部を例えば樹脂一体成形などによって設けたものであっても良い。
その他、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明にかかるディスク駆動用モータおよび情報記録再生装置は、ディスク下面に対向して、ディスクとの軸方向隙間が狭い領域を有した磁気シールド板を有して、ディスクとの間で所定の位相方向で高いアキシャル方向の動圧を発生させて、その結果側圧を流体軸受に作用させることにより、回転体の挙動を安定させることが出来、HDDなどの磁気記録再生装置のディスク駆動用モータとして有用である。また光ディスク装置などのスピンドルモータとしても応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】(a)本発明の実施の形態1におけるHDDのモータ部を示す断面図、(b)、(c)本発明の実施の形態1の他の変形例におけるHDDのモータ部を示す断面図
【図2】(a)本発明の実施の形態1を示す斜視図(b)本発明の実施の形態1の圧力差を説明する模式図、(c)本発明の実施の形態1のディスク駆動用モータの平面図
【図3】本発明の実施の形態1の回転体を表す模式図
【図4】(a)本発明の実施の形態2を示す平面図、(b)本発明の実施の形態2における磁気シールド板の段差部の横断面図
【図5】磁気シールド板の段差部において発生する渦を表わす模式図、(a)段差に角部がある場合の模式図、(b)段差をテーパ形状にて繋ぐ場合の模式図、(c)段差をコーナR形状にて繋ぐ場合の模式図
【図6】本発明の実施の形態2の圧力を説明する模式図
【図7】(a)本発明の実施の形態2の動圧によるX軸周りのモーメントの説明図、(b)本発明の実施の形態2の動圧によるX軸周りのモーメントと開角θの関係図
【図8】(a)本発明の実施の形態3のディスク駆動用モータの平面図、(b)本発明の実施の形態3を示す斜視図
【図9】(a)本発明の実施の形態3の動圧によるX軸周りのモーメントの説明図、(b)本発明の実施の形態3の動圧によるX軸周りのモーメントと開角θの関係図
【図10】(a)本発明の実施の形態4のディスク駆動用モータの平面図、(b)本発明の実施の形態4における磁気シールド板とディスクとが形成する第2の軸方向空隙部を展開した模式図
【図11】(a)ディスクに対するヘッドピッチ角度の説明図(b)ディスクに対するヘッドロール角度の説明図
【図12】(a)、(b)、(c)本願発明の実施形態2における磁気シールド板の突出部変形例の斜視図(d)、(e)本願発明の実施形態4における磁気シールド板の突出部変形例の斜視図(f)従来構成1における磁気シールド板の突出部の斜視図
【図13】従来構成1におけるHDDのモータ部の分解斜視図
【図14】従来構成1におけるHDDのモータ断面図
【図15】(a)従来構成2におけるHDDの平面図、(b)従来構成2におけるHDDの断面図
【図16】従来構成3におけるHDDの斜視図
【符号の説明】
【0085】
1 ディスク
1a、1b、1c、1d 振動時ディスク面
2 ハブ
3 シャフト
4 フランジ
5 スリーブ
6 スラスト板
7 ベース
7a 円弧状内周壁部
8 コア巻線
9 磁気シールド板
9a、9c 突出部
9b 平坦部
9d 傾斜面
10 絶縁シール
11 磁気ヘッド
12 渦
15 ヘッド回転中心
16 ヘッド走査軌跡円弧
17 ヘッド走査軌跡接線
18 ヘッド走査軌跡直交線
19 アクチュエータアーム
20 フレクシャ
21 玉軸受
22 引出線
23 磁石
24 ステータコア
32 気流案内板
32a 案内面
33 スクイーズ空気軸受板
34 傾斜面
h 傾斜
k 段差
R1、R2 段差のコーナR半径
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクの回転に伴い発生する気流の動圧を利用して、ディスクの振れ周りを防ぐことができる、主としてディスク駆動装置(以下HDDと略す)に用いられるディスク駆動用モータ、およびそれを搭載した情報記録再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、HDDの大容量化、高速化、低騒音化、低電力化等の要求はますます強くなってきている。これに伴い、記録再生ヘッドにおけるノイズ抑制技術やディスクを安定して回転駆動する技術が特に重視されてきている。
【0003】
近年、HDDの記憶容量は加速度的に増加し、装置の記憶容量の増加に伴いディスクのトラックピッチも狭くなっている。この狭まるトラックピッチ上を確実にトレースするため、HDDに搭載されるモータには高精度回転が要求されている。特にモータのNRRO(非再現性繰り返し振れ)特性は、回転するディスク上の狭いトラックピッチを確実に読み込むことに欠かせない代表的特性の1つでありサブミクロンの高精度が要求され、HDDの記憶容量高密度化に大きな影響を及ぼす。
【0004】
またHDDの一部は、パーソナルコンピュータ(以下、PCと略す)やAV機器に搭載されて、動画を録画・再生するために使用され始めた。HDDが動画を扱う場合、PCやAV機器の使用者が快適に動画を再生するためにHDDのアクセススピードを早くすることが必須であり、アクセススピードを増加させるためにはモータの高速回転化が要求されている。
【0005】
また、HDDが小型化・薄型化されて2.5インチ以下のディスクを搭載する場合、モバイル機器などに組み込まれて携帯されることがある。このような場合、車中で使用したり衣服のポケットなどに携帯してモバイル機器を使用したりすることが想定される。そのような場合でも、機器を正常に動作させるためには、HDDの振動などに対する耐外力性を向上させることが必要であり、ディスクを駆動させるモータに耐外力性が要求されている。
【0006】
ノイズ抑制技術に関しては、モータ部とディスクとの間に磁気シールド板を配置するものがあった(例えば特許文献1参照)。図13は、前記特許文献1に記載された従来構成1のHDDにおけるモータ部の分解斜視図を示したものである。また図14は同モータの断面図である。両図において、ベース7上には複数相からなるコア巻線8が施されたステータコア24が固定されている。このステータコア24の内周には、ハブ2に固定された磁石23が2個の玉軸受21によって回転自在に支承されている。さらにステータコア24とコア巻線8の上には磁気シールド板9が固定されている。このように構成することにより、ヘッド11へのモータ部からの漏洩磁束を防止し、ヘッド11における再生信号に対するノイズ重畳を抑制するものである。
【0007】
またディスクを安定的に回転させる技術としては、気流案内板をディスクに近接させて、ディスクの回転によって気流をHDD筐体内部で発生させて、その気流による圧力がハブ側面に加わるように気流を導入する事で、ラジアル軸受に側圧Fを掛けて軸受の安定的回転を狙うもの(例えば特許文献2参照)があった。図15(a)は従来構成2におけるHDDの平面図、同図(b)はその断面図である。同図に示すように複数枚のディスク1の間には気流案内板32が配設されている。気流案内板32の回転方向後方側の面を、ハブ2に近接するように弧状をなすように湾曲した案内面32aとする。これによって、回転部の回転中心を一定の向きに偏心させることによりNRRO及びRROを効果的に防いで回転精度を高めることができるものである。
【0008】
さらに、ディスクに、円周方向と半径方向に広がった部分的に環状の平滑面をもつスクイーズ空気軸受板を0.3mm以下のすきまでディスク面に対向させて設置固定して、ディスクの空力励振されるフラッタ振動を制振するもの(例えば特許文献3参照)があった。図16は従来構成3のHDDの斜視図である。同従来構成3において、スクイーズ空気軸受板33をディスク1に近接させて配置して、ディスク1周辺の空気の流れの乱れを低減する事でディスク1の回転を安定化するものである。また気流がスクイーズ空気軸受板33の周辺でスムーズに流れるようにその端面に傾斜面34を設けて断面が流線型になるようにしている。
【特許文献1】米国特許第6,486,578号明細書
【特許文献2】特開2001−076459号公報
【特許文献3】特開2000−331460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来構成1では、図13、図14に示すようにコア巻線8の引き出し線22を処理するために磁気シールド板9には突出部9aが設けられている。一方、ヘッド11が進入する位相付近において磁気シールド板9はベース7に近付くように平坦部9bを有している。ここで突出部9aと平坦部9bとの間の段差は角部を有して急峻に立ち上がっていることが特許文献1に記載された図よりわかる。また磁気シールド板9の内周部は磁石23に近接しているが、従来構成1では内周部も急峻に立ち上がっていることになる。
【0010】
しかしながら、上記のように急峻な段差を有していると下記のような課題が発生する。すなわち、前記段差が急峻に立ち上がっているので、図5(a)に示すように、前記段差のコーナ部にて渦12を発生する恐れがある。この渦12によりディスクと磁気シールド板の間に発生する動圧が乱れて乱流を生じ、ディスクに不安定な動圧が作用し、回転体の挙動を乱す恐れがある。この現象は回転速度が3000rpm程度でも生じ得、さらに回転数が高速になるほど渦の影響は大きくなる。
【0011】
ディスク1を含む回転体に対して外乱振動が加わると、図11(a),(b)に示すように、ヘッド11とディスク1の間で相対的な角度ずれが生ずる。ヘッド11は、アクチュエータアーム19に固定され柔軟性を有したフレクシャ20上にジンバル機構(図示せず)を介して取り付けられている。ヘッド11はディスク1に対して所定のピッチ角度θp、ロール角度θrをもって浮上量FHで浮上する。ここでディスク1が振動すると、ディスク1の表面は同図(a)に示すように、ピッチ方向に1a,1bと傾斜が変わってしまう。またロール方向に同図(b)に示すように1c、1dと傾斜方向が変わってしまう。その結果ディスク1に対するヘッド11の姿勢が変化してしまい、ヘッドの浮上量FHが変動し、ヘッド11がディスク1に接触して、ディスク1条に記録したデータを破壊したり、場合によってはディスク1上に塗布された潤滑剤(図示せず)とヘッド11がスティクションを生じてヘッドクラッシュしたりして、HDDが致命的なダメージを受けうる。そのようなことが生じないように浮上量FHを十分に大きくすると、ヘッド11とディスク1上の磁性膜との磁気的空隙が大きくなるのでヘッド再生出力が十分に得られないことになり、HDDに記録可能なデータ容量が著しい制約を受けることになる。したがってHDDに外乱振動などが加わってもディスク1が振動することを避ける必要がある。
【0012】
また磁石23に近接した磁気シールド板9の内周部分も急峻に立ち上がっているので、磁石9からの漏洩磁界が磁気シールド板9に鎖交したときに、その急峻な立ち上がり部分で磁束の集中が生じやすく、これがヘッド11に対しての外乱磁界となり、ヘッド11における再生信号にノイズが重畳しやすくなる。さらに磁気シールド板9は磁性材料製であるので、コギングトルクを発生してモータの回転体に対しての加振源となり、NRRO,RROにつながる。このような現象は低消費電力化のためにネオジウム鉄ボロン系等のようにエネルギー積が大きい磁石を用いた場合に顕著であり、とりわけ樹脂磁石よりも焼結磁石を用いた場合により影響が大きくなる。そのようにエネルギー積が大きな磁石を用いた場合は更にコギングトルクだけではなく、磁気シールド板9が振動することで騒音も発生する。
【0013】
また上記従来構成2においては案内面32aを有した気流案内板32をディスク1の上下に配置する構成としている。しかし、1.8インチサイズ以下の小型HDDは薄型化を求められることが多く、その結果搭載可能なディスク枚数は通常1枚に限られる。従って複数のディスクの間に気流案内板32を配置することはできない。
【0014】
また1.8インチサイズ以下の小型HDDはディスク1上にハブ2が突出する高さは1mm以下で、ハブ2は単純な円筒面で構成されない場合が多い。そのためディスク1の上面側に気流案内板32を配置してもハブ2に十分に気流が当たらないため、気流案内効果が十分に得られないことが多い。更に1.8インチサイズ以下の小型HDDはディスク1の下面と磁気シールド板9との間には1mm程度の空間しかない場合が多い。この様な場合、磁気シールド板9の上に気流案内板32を配置するには、気流案内板32の厚さは1mm以下にする必要がある。このように気流案内板32が薄い状態では、気流案内そのものが十分に行うことが困難である。その結果、気流案内板32は少なくとも1.8インチサイズ以下のHDDにおいては十分な効果を発することができない。また気流案内板32の案内面32aは、図15(b)に示すようにディスク1に対して垂直になるように形成されているため、気流案内板32の上下には渦を発生ししてしまうことになる。この渦はディスクに対して加振源となり、ディスクのNRRO、RROにつながる。
【0015】
また上記従来構成3においては、1.8インチサイズ以下のHDDに適用した場合、上記従来構成2と同様にスクイーズ空気軸受板33の厚さは1mm以下にする必要があるが、スクイーズ空気軸受板33が薄いために反りが発生しやすくなり、磁気シールド板9の上に設置固定した場合、公差の積み重ねによってはディスク1の下面に擦れてしまう場合がある。またたとえHDDに外乱G等が加わらない状態で擦れなくても、1.8インチサイズ以下のHDDのようにモバイル用途に展開される機種の場合は、動作中に大きな衝撃を受ける場合がある。そのようなときにディスク1もしくはスクイーズ空気軸受板33が変形して擦れてしまう場合がある。
【0016】
そのようなことが生じないように、磁気シールド板9とスクイーズ空気軸受板33の高さ公差、平面度等を十分に考慮して設計する必要があるが、擦れが発生しないようにスクイーズ空気軸受板33とディスク1との間の隙間を設定すると、十分なスクイーズ空気軸受効果を発生することができない。また1.8インチサイズ以下のHDDのように小型化/薄型化を要求される場合、スクイーズ空気軸受板33をディスク1の上方に設置するのは、スクイーズ空気軸受板33を固定するための取り付け面積の確保が困難である。
【0017】
またディスク1より上側のスペースも限られるので、スクイーズ空気軸受板33の平面度や高さ公差バラツキの点で現実的には困難である。またスクイーズ空気軸受板33は形状が複雑になるので、樹脂あるいは鍛造などのプレス可能な材料を用いる必要があるが、一般にそのような材料は表面硬さが低く、些細なことで傷つきやすい。スクイーズ空気軸受板33には、その周囲で気流がスムーズに動くことができるように傾斜面34を設けているが、これによってスクイーズ空気軸受板33はシャープにすることができる一方で、上記のように比較的柔らかい材料で作られるので、このシャープな端面は極めて傷つきやすくなる。スクイーズ空気軸受板33に傷が付いた場合は、かえってその傷の周囲で気流が大きく乱されて渦を発生するので、ディスク1のフラッタ振動がかえって増大したり、騒音発生の原因となったりする。したがってスクイーズ空気軸受板33の製造や、取り扱いにおいてドライブを組み立てる上でも、極めて慎重な取り扱いを必要としたり、もしくはニッケルメッキなどの表面硬化処理を行ったりする必要が生ずる。これはコストアップの一因となる。
【0018】
尚、ディスク1の下面側にスクイーズ空気軸受板33を配置する構成も考えられるが、1.8インチサイズ以下のHDDにおいては厚さ方向の余裕が小さく、モータ部とディスク1との間に配設する事は不可能である。さらに、スクイーズ空気軸受板33と同様の形状をベース7上に設ける事も考えられるが、ディスク1の外径が小さい小型HDDではモータ部の外径を小さくする必要があり、モータ部の消費電力の増大につながってしまう。
【0019】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、簡単な構成でありながら、ディスクの振れ周りを防ぐことができ、かつ低騒音化と低消費電力化も図りうる、主としてHDDに用いられるディスク駆動用モータ、およびそれを搭載した情報記録再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記従来の課題を解決するために、請求項1に記載のディスク駆動用モータは、ベースと、ディスクを搭載可能なリング状のディスク受け面を有するハブと、前記ハブを回転自在に支承する流体動圧軸受と、前記ベース上に載置され、前記ディスク受け面の外径よりも大きな外径を有し、前記ハブに対して回転力を与えるモータ部と、前記ディスク受け面に前記ディスクが搭載された時に形成される前記ディスクと前記モータ部との間の軸方向空隙部に配設された磁気シールド板とを有してなり、前記ディスクが搭載され前記ディスクが回転したときに、前記ディスクとの間の気流による圧力が円周方向位置によって異なるように、前記磁気シールド板を前記ディスク受け面に対して傾斜して固定している。これによって、磁気シールド板は急激に折れ曲がる段差を有しないので、磁石との間で発生するコギング力も極小にすることが可能であり、またコギングに付随して発生する振動騒音も抑制できる。またディスクを搭載したときに、ディスク下面に対向する磁気シールド板はディスクに対して傾斜して固定されているので、ディスクが回転したときにディスクと磁気シールド板との間に発生する気流に関して渦の発生はほとんどなく、また圧力もなめらかに変化する。その結果ディスクに対して、磁気シールド板との隙間が狭い部分で軸方向に荷重がかかり、回転体全体を一定方向に傾斜させる力が発生する。また同時に流体軸受部において軸受剛性も上昇するのでNRRO、RROを抑制させることができる。
【0021】
請求項2に記載の情報記録再生装置は、ディスクと、前記ディスクに対向して配置され、前記ディスク上の任意位置を走査して情報を記録または再生するヘッドと、前記ディスクを回転駆動するディスク駆動用モータとを備えた情報記録再生装置であって、前記ディスク駆動用モータは請求項1に記載のディスク駆動用モータである。これによって、ディスクと磁気シールド板との間の軸方向空隙がほぼ正弦波状になめらかに変化するので、ディスクが回転したときにディスクと磁気シールド板との間に発生する気流に関して渦の発生はほとんどなく、また圧力もなめらかに変化する。その結果ディスクに対して、磁気シールド板との隙間が狭い部分で軸方向に荷重がかかり、回転体全体を一定方向に傾斜させる力が発生し、回転体の挙動が安定する。また同時に流体軸受部において軸受剛性も上昇するのでNRRO,RROを抑制させることができる。
【0022】
請求項3に記載の情報記録再生装置は、前記磁気シールド板と前記ディスクとで形成される軸方向空隙部は、前記ヘッドが走査する領域以外でその軸方向距離が小さくなるように、前記磁気シールド板を傾斜させたものである。これによって、磁気ヘッド走査領域以外の前記隙間を小さくすることができるので、発生する動圧をより向上させることが出来、より安定的にディスクを回転させることが可能になる。
【0023】
請求項4に記載の情報記録再生装置は、磁気シールド板とディスクとで形成される軸方向空隙部を、ヘッドの走査軌跡円弧に対してディスクの回転中心から引いた接線とほぼ直交する方向でその軸方向距離が小さくなるように、磁気シールド板を傾斜させたものである。これによって、ディスクに対するヘッドのピッチ方向の姿勢の安定化を図ることができるので、ヘッド浮上量の安定化ができ、より小さな浮上量でヘッドのスライダ設計を行ってもヘッドがディスクに接触する頻度を下げることが可能になる。このことでより高密度記録が可能になり、機器の小型化や記憶容量の増大に大きく寄与することができる。
【0024】
請求項5に記載のディスク駆動用モータは、ベースと、ディスクを搭載可能なリング状のディスク受け面を有するハブと、前記ハブを回転自在に支承する流体動圧軸受と、前記ベース上に載置され、前記ディスク受け面の外径よりも大きな外径を有し、前記ハブに対して回転力を与えるモータ部と、前記ディスク受け面に前記ディスクが搭載された時に形成される前記ディスクと前記モータ部との間の第1の軸方向空隙部に配設された磁気シールド板とを有してなり、前記ディスクが搭載されたときに形成される前記磁気シールド板と前記ディスクの間の第2の軸方向空隙部の前記磁気シールド板側の形状は、前記モータ部が回転したときに前記ディスクとの間の気流による圧力が円周方向位置によって異なるように、前記ディスク受け面に対してその軸方向高さもしくは傾斜方向が異なりかつ、互いに円周方向に滑らかに繋がる少なくとも二つの平面部を有している。
【0025】
これによって、磁気シールド板は急激に折れ曲がる段差を有しないので、磁石との間で発生するコギング力も極小にすることが可能であり、またコギングに付随して発生する振動騒音も抑制できる。またディスクを搭載したときに、ディスク下面に対向する磁気シールド板はディスクに対して軸方向隙間が円周方向位置によって異なるように軸方向高さもしくは傾斜が異なる二つ以上の平面部を有しているので、ディスクが回転したときにディスクと磁気シールド板との間に発生する気流に関して渦の発生はほとんどなく、また圧力もなめらかに変化する。その結果ディスクに対して、磁気シールド板との隙間が狭い部分で軸方向に荷重がかかり、回転体全体を一定方向に傾斜させる力が発生する。また同時に流体軸受部において軸受剛性も上昇するのでNRRO,RROを抑制させることができる。
【0026】
請求項6に記載のディスク駆動用モータは、ディスクを搭載したときに、ディスクと磁気シールド板との間の第2の軸方向空隙部の前記磁気シールド板側の形状は、互いに軸方向高さが異なり、かつコーナR形状により円周方向に滑らかに繋がる段差を有するので、ディスクが回転したときにディスクと磁気シールド板との間に発生する気流に関して流路抵抗の変化が小さいので渦の発生はほとんどなく、また圧力もなめらかに変化する。その結果ディスクに対して磁気シールド板との隙間が狭い部分で軸方向に荷重がかかり、回転体全体を一定方向に傾斜させる力が発生する。また同時に流体軸受部において軸受剛性も上昇するのでNRRO,RROを抑制させることができる。さらに磁気シールド板は急激に折れ曲がる段差を有しないので、磁石との間で発生するコギング力も極小にすることが可能であり、またコギングに付随して発生する振動騒音も抑制できる。
【0027】
請求項7に記載のディスク駆動用モータにおける磁気シールド板とディスクと間の第2の軸方向空隙部の磁気シールド板側の形状は、2つ以上の平面の接続部分が、R1>R2(R1はディスク受け面に軸方向で近い側にある正曲率のコーナR、R2はディスク受け面より軸方向で遠い側にある負曲率のコーナR)なる関係を満たすコーナR形状とする。これによって、急激に折れ曲がる段差を有しないので、磁石との間で発生するコギング力も極小にすることが可能であり、またコギングに付随して発生する振動騒音も抑制できる。またディスクが搭載されたときに流路が狭くなる入り口に当たるコーナR半径であるR1を大きく設定することにより、絞りを緩やかにして流路抵抗を小さくし、渦発生を防止して回転体の挙動を安定させることが出来る。
【0028】
請求項8に記載のディスク駆動用モータにおける磁気シールド板の最内周部は単一のリング状平面部からなる。これによって、磁気シールド板を深絞り形状とすることができ、磁気シールド板の剛性が向上し、磁気シールド板の振動が低減でき、低騒音化低振動化に寄与する。
【0029】
請求項9に記載のディスク駆動用モータは、前記ディスク受け面に前記ディスクを搭載した状態で、前記磁気シールド板と前記ディスクとの間の軸方向隙間が狭い領域は87度以上248度以下の範囲にわたるので、発生する動圧が十分に高くかつ安定するので、ディスクの回転が安定化する。
【0030】
請求項10に記載の情報記録再生装置は、ディスクと、前記ディスクに対向して配置され、前記ディスク上の任意位置を走査して情報を記録または再生するヘッドと、前記ディスクを回転駆動するディスク駆動用モータとを備え、前記ディスク駆動用モータは請求項5,請求項6,請求項7,請求項8,請求項9のいずれか1項に記載のディスク駆動用モータである。これによって、ディスクを搭載したときに、ディスク下面に対向する磁気シールド板はディスクに対して軸方向隙間が円周方向位置によって異なるように軸方向高さもしくは傾斜が異なる二つ以上の平面部を有している。これにより、ディスクが回転したときにディスクと磁気シールド板との間に発生する気流に関して渦の発生はほとんどなく、また圧力もなめらかに変化する。その結果ディスクに対して、磁気シールド板との隙間が狭い部分で軸方向に荷重がかかり、回転体全体を一定方向に傾斜させる力が発生する。また同時に流体軸受部において軸受剛性も上昇するのでNRRO,RROを抑制させることができる。
【0031】
請求項11に記載の情報記録再生装置は、前記磁気シールド板と前記ディスクとで形成される軸方向空隙部は、前記ヘッドが走査する領域以外でその軸方向距離が小さくなるように、前記磁気シールド板を構成したものである。これによって、磁気ヘッド走査領域以外の前記隙間を小さくすることができるので、発生する動圧を更に向上させることが出来、より安定的にディスクを回転させることが可能になる。
【0032】
請求項12に記載の情報記録再生装置は、磁気シールド板とディスクとで形成される軸方向空隙部を、ヘッドの走査軌跡円弧に対してディスクの回転中心から引いた接線とほぼ直交する方向でその軸方向距離が小さくなるように、磁気シールド板形状を設定したものである。これによって、ディスクに対するヘッドのピッチ方向の相対姿勢の安定化を図ることができ、ヘッド浮上量の安定化ができ、より小さな浮上量でヘッドのスライダ設計を行ってもヘッドがディスクに接触する頻度を下げることが可能になる。このことでより高密度記録が可能になり、機器の小型化や記憶容量の増大に大きく寄与することができる。
【0033】
請求項13に記載の情報記録再生装置は、磁気シールド板とディスクとで形成される軸方向空隙部は、ヘッドの走査軌跡円弧上よりも、ディスクの回転中心から見てそのほぼ反対の方向位置でその軸方向距離が小さくなるように、磁気シールド板の形状を構成したものである。これにより、ディスクに対するヘッドのロール方向の相対姿勢の安定化を図ることができ、ヘッド浮上量の安定化ができ、より小さな浮上量でヘッドのスライダ設計を行ってもヘッドがディスクに接触する頻度を下げることが可能になる。このことでより高密度記録が可能になり、機器の小型化や記憶容量の増大に大きく寄与することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明のディスク駆動用モータおよびそれを搭載した情報記録再生装置は、モータの磁気シールド板形状を適切に設定することで、ディスクが高速回転した時にも回転体の挙動を安定させることができる上、振動などに対する耐外力性も向上する。またディスクを安定回転させて記憶容量の増大と高密度化に寄与するモータを提供することができる。さらに磁気シールド板の形状を変えるだけで上記回転体の挙動安定化を図る事が出来、新たな部品追加を行う必要が無くコスト増大を抑制し、また薄型化をはかる事も可能という顕著な効果を得る事が出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
【0036】
図1(a)は本発明の実施の形態1におけるHDDのモータ部の断面図である。
【0037】
ディスク1はクランパ(図示せず)によりハブ2に搭載されている。ハブ2の下端には複数局に着磁した磁石23が固着されている。ハブ2はシャフト3に支承され、更にシャフト3の端部にフランジ4が固定されている。フランジ4は、シャフト3にレーザ溶接,カシメ,圧入接着等により固定されている。シャフト3はスリーブ5に挿入されており、スリーブ5の端面にはフランジ4に対向する位置にスラスト板6が固定されている。スラスト板6はスリーブ5にカシメ等により固定されている。
【0038】
シャフト3とスリーブ5が対向する円周面には、シャフト3もしくはスリーブ5のどちらか一方に動圧溝を配置することよりラジアル動圧軸受を構成している。また、フランジ4とスラスト板6の対向する面には、フランジ4もしくはスラスト板6のどちらか一方に動圧溝を配置することによりスラスト動圧軸受を構成している。軸受内部には潤滑剤(図示せず)を充填しており、モータが回転することにより潤滑剤によって動圧を発生して回転体を支持する。
【0039】
スリーブ5はベース7に接着固定されており、また磁石23と半径方向隙間を介して対向するようにステータコア24がベース7に接着固定されて、さらにコア巻線23が巻回され、いわゆるインナーロータ型モータを構成している。コア巻線8の上には、コア巻線8との絶縁を保つための絶縁シール10が貼り付けられた磁気シールド板9が接着固定されている。磁気シールド板9は打抜き加工(プレス加工)により形成されており、その材質としては、モータ磁気回路からの漏洩磁束を防ぐ役割と、防錆の面からフェライト系ステンレス材あるいはマルテンサイト系ステンレス材を使用している。磁気シールド板9について、磁気ヘッド11が走査する領域以外はディスク1との隙間を小さくするように傾斜hを有してコア巻線8の上に接着固定されている。
【0040】
図2(a)は本実施の形態1のディスク1と磁気シールド板9とが相対的傾斜hを有している状態を示す斜視図である。ハブ2に搭載されたディスク1と磁気シールド板9の隙間について、磁気ヘッド走査領域以外が小さくなるように、磁気シールド板9が傾斜している。磁気シールド板9の磁気ヘッド進入方向にある傾斜の最低点をA点とし、傾斜の最高点をB点とする。図2(b)は、図2(a)において回転するディスク1と磁気シールド板9の位置と圧力差の関係を表わした模式図である。横軸は磁気シールド板9の位置を表わし、縦軸はディスク1と磁気シールド板9の間の圧力差Pを表わしている。B点にて圧力差Pが最大となる。
【0041】
ディスク1と磁気シールド板9の構成する隙間をΔH、気体の粘度をρ、モータの回転数をSとした時、ディスク1と磁気シールド板9の間に発生する圧力pは次式(数1)をのような関係になる。
【0042】
【数1】
磁気シールド板9が傾斜hを有して固定されて、ディスク1と磁気シールド板9が構成する最大隙間をΔHA、最小隙間をΔHBとした場合、ディスク1と磁気シールド板9の間に発生する圧力差Pは次式(数2)をのような関係になる。
【0043】
【数2】
図2(b)の圧力差はA点を基準としており、傾斜hにより生じるディスク1と磁気シールド板9により構成される隙間が最小となるB点にて圧力差Pが最大となる。傾斜h=0の場合、ΔHB=ΔHAとなるため、式(2)からも明らかなように圧力差は発生せずにP=0となる。
【0044】
図3はモータの回転体を模式的に表現した図である。ディスク1が搭載されたハブ2がシャフト3に固定されており、シャフト3の端部にはフランジ4が固定されている。本実施の形態1による圧力pが発生した時、略180度反対側の位置に向けて半径方向に側圧Qが回転体の上部に作用する。また同時に回転体を傾斜させようとするモーメントMが発生する。この側圧QとモーメントMは圧力pにほぼ比例する。側圧Qが半径方向に作用することにより、シャフト3の回転中心が一定の方向に偏心して、その状態が維持される。ラジアル軸受の軸受剛性は一般に偏心率ゼロの状態よりも、偏心率が大きくなった方が増大するので、側圧Qが印加されることで、ラジアル軸受の軸受剛性が増加する。また同時に、スラスト軸受においても傾斜が生ずることで、スラスト軸受の耐モーメント剛性が増大する。
【0045】
上記構成により、ディスクが回転した時、磁気シールド板9が傾斜を有してコア巻線8に接着固定されているため、ディスク1と磁気シールド板9が構成する隙間が最小となる位置にて圧力差Pが最大となる。前記圧力差Pにより側圧Qが半径方向に回転体へ作用し、モーメントMが回転体を一定方向に傾斜させようとするため、ラジアル動圧軸受部に側圧Qが作用すると共に、スラスト軸受にもモーメントが作用してラジアル軸受とスラスト軸受の軸受剛性が高まる。これにより、回転体の挙動を安定させることができるためNRROおよびRRO(繰り返し振れ)の増加を効果的に抑制し、振動などに対する耐外力性も向上させることが出来る。式(2)からも明らかなように、特に回転体が高速回転化するほど、圧力差Pが高まり側圧Qが大きくなるため、ラジアル軸受の軸受剛性が高くなり効果が顕著に現れる。また磁気シールド板9は円周方向に急峻な段差を有しないので、従来構成1のように、渦を発生することもなく、ディスク1の回転を不安定にする気流の乱れもほとんど無い。
【0046】
また、磁石23との間で発生するコギング力も極小にすることが可能であり、またコギングに付随して発生する磁気シールド板9や回転体の振動騒音も抑制できる。
【0047】
尚、上記説明において、磁気シールド板9は絶縁シール10を介してコア巻線8上に固定されていたが、図1(b)に示すように、ステータコア24の外周側のベースを軸方向に傾斜して延伸させて接着傾斜台7bを形成し、この接着傾斜台7bの上に接着固定しても良い。これによって、磁気シールド板9の外周が固定されるので、磁気シールド板9の振動を抑制することができる。また図1(c)に示すように磁気シールド板9の外周をプレス加工により絞って、ツバ部9dを形成して、このツバ部9dをベース7に接着固定しても良い。これにより、磁気シールド板9自体の強度が高くなり、振動抑制を図ることが可能になる。
【0048】
尚、磁気シールド板9の傾斜方向は、必ずしもディスク1と磁気シールド板9との軸方向距離が最大になる方向にする必要はない。ヘッド11に対するディスク1のピッチ角度方向の振動を抑制するために、図2(c)に示すようにヘッド走査軌跡円弧16に対して、ディスクの回転中心から引いた接線、すなわちヘッド走査軌跡接線17に直交する方向、すなわちヘッド走査軌跡直交線18の方向がディスク1と磁気シールド板9との軸方向距離が最大になるようにするとより好ましい。一般にヘッド11はピッチ角度方向の振動に対して浮上量FHの変動が大きくなるが、このように磁気シールド板9の傾斜方向を設定する事で、ヘッド11の浮上量FHの変動を抑制でき、より高密度記録が可能になる。
(実施の形態2)
【0049】
図4(a)は本発明の実施の形態2におけるHDDのモータ部の平面図である。同実施の形態2において、磁気シールド板9は、図4(b)のC−C断面に示すように、磁気ヘッドの走査領域以外の部位について軸方向に段差kを有しており、コーナR半径R1およびR2により、前記段差は滑らかに繋がっている。またディスク1と磁気シールド板9との間の軸方向隙間が狭くなる領域の開角θは本実施の形態2においては約180度とした。
【0050】
図5は、磁気シールド板の段差によってディスクの回転時に生じる気流の流れに渦が発生した状態の模式図である。図5(a)は磁気シールド板の段差が急峻であり、滑らかに繋がっていない場合である。段差部に急峻な角部があるため、角部前後にて渦12が発生し、動圧が高い段差kの上側部分においても渦12を発生している。前記渦12は乱流を誘発し、ディスクと磁気シールド板間の気流の流れを乱し、回転体の挙動を不安定にする要因となる。図5(b)は磁気シールド板の段差kにテーパ形状を配置することにより、渦12の発生を抑制している。また図5(c)は、磁気シールド板の段差kを2つのコーナR形状により滑らかに繋ぐことにより渦12の発生を抑えるものである。段差の上面側で正曲率のコーナR半径をR1とし、下面側で負曲率のコーナR半径をR2としたときに、R1>R2の関係とすることにより、狭い流路への入り口部を緩やかな軸方向隙間変化にして渦12の発生を抑えて乱流発生を防止し、ディスクに作用する動圧を安定させる。その結果、回転体の挙動を安定させることが出来る。
【0051】
図6は、図4において回転するディスク1と磁気シールド板9の位置と圧力差の関係を表わした模式図である。横軸は磁気シールド板9の位置を表わし、縦軸はディスク1と磁気シールド板9の間の圧力差Pを表わしている。段差kの入り口部には、コーナR半径R1、R2を有している。段差kによりディスク1と磁気シールド板9の隙間が小さくなる領域において、圧力差Pが大きくなる。実施の形態1では圧力差の大きい部位はディスク1の上に線として作用していたが、本実施の形態ではディスク1の上に面となって作用する。
そのため、ラジアル軸受に作用する側圧Qがより増加するため、回転体の軸受剛性も増加する。
【0052】
ディスク1と磁気シールド板9の構成する隙間をΔH、気体の粘度をρ、モータの回転数をSとした時、ディスク1と磁気シールド板9の間に発生する圧力pは前記式(1)のような関係であらわされる。
【0053】
ここで磁気シールド板9は、段差kを有して固定されて、ディスク1と磁気シールド板9が構成する最小隙間をΔHBとする。また最小隙間の領域の開角をθとする。最小隙間部における圧力pBと最大隙間部における圧力pAはそれぞれ次の式(数3)(数4)
【0054】
【数3】
【0055】
【数4】
となる。ここで図7(a)において、圧力pA,pBによるX軸周りのモーメントMXは、磁気シールド板9の代表平均半径をrとすると、次の式(数5)をで表される。
【0056】
【数5】
従って、ディスク1と磁気シールド板9の間に発生する動圧によるモーメントMXは図7(b)に示すように、θ=180゜の時に最大値MXmaxになる。ここでθを90度から270度にする事でMXはMXmaxの71%以上に、さらに106度から254度にする事でMXはMXmaxの80%以上に、さらには128度から232度にする事でMXはMXmaxの約90%以上にすることが出来る。したがってθを90度以上270度以下にする事が望ましい。さらに望ましくは106度から254度、最も望ましいのは128度から232度にすることである。
【0057】
尚、後述する実施の形態3の計算結果(図9(b)参照)を加味して、実施形態に依存せずにθを90度〜248度にすればMXはMXmaxの71%以上に、さらに106度から227度にする事でMXはMXmaxの80%以上に、さらに125度から198度にする事でMXはMXmaxの約90%以上にすることが出来る。
【0058】
本実施の形態2のように構成することにより、図6に示すように、ディスク1に作用する高いピークを保持した動圧を得ることが出来る。そのため、ラジアル軸受への側圧QおよびモーメントMを大きくすると共に、動圧のピークを平らにすることができるのでより側圧を安定させることが出来る。この結果、回転体の挙動を安定させることができるためNRROおよびRROの増加を効果的に抑制し、振動などに対する耐外力性も向上させることが出来る。
【0059】
また磁気シールド板9の段差部は円周方向に滑らかに接続されているので、磁石23からの漏洩磁界が大きなコギング力を発生しないので、回転体が振動したり、磁気シールド板9が騒音を発生したりする事もない。またエッジ部における磁束集中がないのでヘッドに対して悪影響を及ぼすノイズ磁界を発生する事もない。
【0060】
尚、上述の説明において、図12(a)に示すように、磁気シールド板9の段差はその半径位置によらず、同一位相においては同じ高さを有した一例を説明したが、図12(b),(c)のようにその最内周部9iにおいては平坦部9bと同一の高さである単一のリング状平面部を形成しても良い。このように構成する事で、上記コギングや磁気ノイズ発生を完全にゼロにする事が可能になる。
(実施の形態3)
【0061】
図8(a)に本発明の実施の形態3の平面図を、図8(b)に同実施の形態3の斜視図をそれぞれ示す。本実施の形態において、磁気シールド板9はディスク1に対して平行な突出部9aと、傾斜した傾斜面9dの二つの平面からなる。ここで二つの平面は互いに滑らかに接続されている。このように構成する事で、ディスク1に与えられるモーメントを大きくする事が出来ると共に、乱流を発生することが無いので、回転体の挙動を安定させることができるためNRROおよびRROの増加を効果的に抑制し、振動などに対する耐外力性も向上させることが出来る。
【0062】
ここで前記実施の形態3と同様に、図9(a)を用いて、ディスク1に加わるモーメントMXを求める。図8(b)において最も低い位置に当たるA点と最も高い位置に当たるB点との段差をhとする。またB点におけるディスク1と磁気シールド板9との間の軸方向距離をΔHBとする。傾斜面9dにおける軸方向距離ΔHは式(数6)で表され、
【0063】
【数6】
モーメントMXは式(数7)で表される。
【数7】
式(数7)を計算した結果を図9(b)に示す。開角θに対するMX/MXmaxは段差hとΔHBの比に依存して定まることがわかる。同図によると、h/ΔHBの影響を受けるが、θはほぼ150度から180度の範囲でモーメントMXが最大になる。ここでθを87度から248度にする事でMXはMXmaxの71%以上に、さらに103度から227度にする事でMXはMXmaxの80%以上に、さらには125度から198度にする事でMXはMXmaxの約90%以上にすることが出来る。したがってθを87度以上248度以下にする事が望ましい。さらに望ましくは103度から227度、最も望ましいのは125度から198度にすることである。
【0064】
尚、図7(b)に示す前記実施の形態2の計算結果を加味して、θを90度〜248度にすればMXはMXmaxの71%以上に、さらに106度から227度にする事でMXはMXmaxの80%以上に、さらに125度から198度にする事でMXはMXmaxの約90%以上にすることが出来る。
【0065】
本実施の形態3のように構成することにより、ラジアル軸受への側圧QおよびモーメントMを大きくすると共に、動圧のピークを平らにすることができるのでより側圧を安定させることが出来る。この結果、回転体の挙動を安定させることができるためNRROおよびRROの増加を効果的に抑制し、振動などに対する耐外力性も向上させることが出来る。
【0066】
さらに、コア巻線8上側と磁気シールド板との間に空隙部を設けることが可能になるので、この部分で、コア巻線8の端線処理のためのフレキシブル基板を配設することも可能になる。
【0067】
またプレスのよる絞り加工で突出部を設けたので、薄板の磁気シールド板でも大幅な剛性向上が期待でき、磁気シールド板9の反りなども発生しない。
(実施の形態4)
【0068】
図10(a)に本発明の実施の形態4のディスク駆動用モータの平面図を示す。また図10(b)は磁気シールド板9とディスク1とが形成する第2の軸方向空隙を展開した模式図である。ただし、この展開図は、突出部9a,9cの突出部半径方向中央部9rに相当する部分である。同図(b)において横軸はモータ回転方向位相τである。ここでτの原点位相は、ヘッド走査軌跡円弧16に対して、ディスクの回転中心から引いた接線、すなわちヘッド走査軌跡接線17の方向である。またτの符号は原点位相より反時計方向に回転する方向を正とする。
【0069】
同図(b)に示すように、ディスク1に最も近接する突出部9aはτ=90゜位相、すなわちヘッド走査軌跡直交線18を中心に、θa≒100゜の範囲内で突出させている。
【0070】
また突出部9aに連続して突出部9cが配置されている。ここで突出部9cの開角θcはほぼ80°であり、θcの中心位相は180°位相である。またθaとθcの関係は次式が成立するように設定してある。
θa+θc=180° ・・・・・・・・・・・・・・・・ 式(8)
【0071】
また、それ以外の平坦部9bにおいて、ディスク1との軸方向隙間は最も大きくなる。
【0072】
また磁気シールド板9の突出部半径方向中央部9rは上述のように、位相によってディスク1との軸方向隙間は異なるように設定してあるが、最内周部9iは単一のリング状平面部で構成されている。すなわち最内周部9iは図12(b),(c)に示すように、平坦部9bと同一の軸方向高さである平面の一部を構成する。いずれの構成も、突出部9a,9cと平坦部9bの円周方向接続部はなめらかなR形状で接続されている。なお、同図(b)において、最内周部9iと突出部9aの間で半径方向に急峻に立ち上がっているが、半径方向の急峻な立ち上がりは渦を発生しないので問題ない。
【0073】
以下、本実施の形態4における作用と効果を説明する。
【0074】
本実施の形態4において、軸方向隙間が最も狭い突出部9aの中心位相はヘッド走査軌跡円弧16の接線(ヘッド走査軌跡接線17)に直交するヘッド走査軌跡直交線18と同一方向である。従って、突出部9aによる動圧は主にヘッド走査軌跡接線17周りのモーメントとして作用することになる。その結果、ディスク1を含む回転体はヘッド走査軌跡接線17周りに傾斜するモーメントを受けることになる。また突出部9bの中心位相はヘッド走査軌跡接線17と180°反対側の位相であるので、突出部9bで発生した動圧は、ヘッド走査軌跡直交線18周りのモーメントとして回転体に作用する。その結果、ディスク1を含む回転体はヘッド走査軌跡直交線18周りに傾斜するモーメントを受けることになる。
【0075】
ここで、このようなモーメントがディスク1に対して働くと、ディスク1を含む回転体はヘッド走査軌跡接線17周りにわずかに定常的に傾斜する。そしてこのモーメントはラジアル軸受、スラスト軸受の軸受反力が変化することでバランスをとる。このとき軸受の剛性も向上するので、回転体に外乱が加わっても、振動が抑制されることになる。
【0076】
一般にヘッド11の姿勢に関して最も重要とされるのはピッチ角の変動であり、ピッチ角変動を抑制するようにすることが望ましい。本実施の形態4においては、ヘッド走査軌跡接線17周りのモーメントが最も大きくなるように設定しているので、ピッチ角変動を効率的に抑制することが可能になる。またヘッド走査軌跡直交線18周りにもモーメントが働くように構成しているので、ロール角変動に関しても抑制することが可能である。以上の構成により、ディスク1の振動を効率的に抑制することが可能になる。
【0077】
尚、ヘッド11の下面に形成されたスライダパッド(図示せず)の設計によっては、ピッチ角度よりもロール角度変動の余裕度が小さい場合は、ディスク1と磁気シールド板9の軸方向距離の最も小さくなる領域を突出部9cとしても良い。また突出部9aと突出部9cの高さを等しくしてもよい。
【0078】
また突出部9a、突出部9cの中心位相は、必ずしもヘッド走査軌跡接線17にそれぞれ直交,平行である必要はなく、20゜程度ずれていても構わない。位相角度が20゜ずれてもヘッド11から見たピッチ角度方向およびロール角度方向のモーメントはcos20≒0.94であり、ほとんど影響を受けないからである。
【0079】
また磁気シールド板9の最内周部9iは単一のリング状平面部を構成しているので、その内周部が磁石23に対して軸対象形状を成しており、磁石23との間でコギング力を発生することもなく、より低振動化、低騒音化を図ることが可能になる。
【0080】
尚、以上実施形態1、2,3,4の説明では動圧軸受を軸回転型で構成した例で説明したが、流体軸受を用いるものならばすべて適用可能である。またモータ部の構成に関してインナーロータ型の磁気回路に関して説明したが、必ずしもそれに限定されるものでではなく、磁石外周を円筒状のヨーク部内周円筒面に固定して、この磁石内周面に対向するように、放射状に歯部を有するステータコアを配置したいわゆるアウターロータ型であっても適用可能である。
【0081】
またスラスト軸受とラジアル軸受の構成も上記実施の形態1,2,3,4にて記述した内容に限定されるものではなく、たとえばハブの下端とスリーブの上端面の間にスラスト軸受を設けた構成や、スラストフランジを設けずにシャフトの下端に直接、スパイラル形状の動圧溝を配置したもの等であっても良い。
【0082】
さらに、上記実施の形態の説明においては磁気シールド板とディスクの間で軸方向隙間を狭くするために、磁気シールド板をプレス加工した構成を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、磁気シールド板上にディスクとの隙間が小さくなるような突起部を例えば樹脂一体成形などによって設けたものであっても良い。
その他、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明にかかるディスク駆動用モータおよび情報記録再生装置は、ディスク下面に対向して、ディスクとの軸方向隙間が狭い領域を有した磁気シールド板を有して、ディスクとの間で所定の位相方向で高いアキシャル方向の動圧を発生させて、その結果側圧を流体軸受に作用させることにより、回転体の挙動を安定させることが出来、HDDなどの磁気記録再生装置のディスク駆動用モータとして有用である。また光ディスク装置などのスピンドルモータとしても応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】(a)本発明の実施の形態1におけるHDDのモータ部を示す断面図、(b)、(c)本発明の実施の形態1の他の変形例におけるHDDのモータ部を示す断面図
【図2】(a)本発明の実施の形態1を示す斜視図(b)本発明の実施の形態1の圧力差を説明する模式図、(c)本発明の実施の形態1のディスク駆動用モータの平面図
【図3】本発明の実施の形態1の回転体を表す模式図
【図4】(a)本発明の実施の形態2を示す平面図、(b)本発明の実施の形態2における磁気シールド板の段差部の横断面図
【図5】磁気シールド板の段差部において発生する渦を表わす模式図、(a)段差に角部がある場合の模式図、(b)段差をテーパ形状にて繋ぐ場合の模式図、(c)段差をコーナR形状にて繋ぐ場合の模式図
【図6】本発明の実施の形態2の圧力を説明する模式図
【図7】(a)本発明の実施の形態2の動圧によるX軸周りのモーメントの説明図、(b)本発明の実施の形態2の動圧によるX軸周りのモーメントと開角θの関係図
【図8】(a)本発明の実施の形態3のディスク駆動用モータの平面図、(b)本発明の実施の形態3を示す斜視図
【図9】(a)本発明の実施の形態3の動圧によるX軸周りのモーメントの説明図、(b)本発明の実施の形態3の動圧によるX軸周りのモーメントと開角θの関係図
【図10】(a)本発明の実施の形態4のディスク駆動用モータの平面図、(b)本発明の実施の形態4における磁気シールド板とディスクとが形成する第2の軸方向空隙部を展開した模式図
【図11】(a)ディスクに対するヘッドピッチ角度の説明図(b)ディスクに対するヘッドロール角度の説明図
【図12】(a)、(b)、(c)本願発明の実施形態2における磁気シールド板の突出部変形例の斜視図(d)、(e)本願発明の実施形態4における磁気シールド板の突出部変形例の斜視図(f)従来構成1における磁気シールド板の突出部の斜視図
【図13】従来構成1におけるHDDのモータ部の分解斜視図
【図14】従来構成1におけるHDDのモータ断面図
【図15】(a)従来構成2におけるHDDの平面図、(b)従来構成2におけるHDDの断面図
【図16】従来構成3におけるHDDの斜視図
【符号の説明】
【0085】
1 ディスク
1a、1b、1c、1d 振動時ディスク面
2 ハブ
3 シャフト
4 フランジ
5 スリーブ
6 スラスト板
7 ベース
7a 円弧状内周壁部
8 コア巻線
9 磁気シールド板
9a、9c 突出部
9b 平坦部
9d 傾斜面
10 絶縁シール
11 磁気ヘッド
12 渦
15 ヘッド回転中心
16 ヘッド走査軌跡円弧
17 ヘッド走査軌跡接線
18 ヘッド走査軌跡直交線
19 アクチュエータアーム
20 フレクシャ
21 玉軸受
22 引出線
23 磁石
24 ステータコア
32 気流案内板
32a 案内面
33 スクイーズ空気軸受板
34 傾斜面
h 傾斜
k 段差
R1、R2 段差のコーナR半径
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
ディスクを搭載可能なリング状のディスク受け面を有するハブと、
前記ハブを回転自在に支承する流体動圧軸受と、
前記ベース上に載置され、前記ディスク受け面の外径よりも大きな外径を有し、前記ハブに対して回転力を与えるモータ部と、
前記ディスク受け面に前記ディスクが搭載された時に形成される前記ディスクと前記モータ部との間の軸方向空隙部に配設された磁気シールド板とを有してなり、
前記ディスクが搭載され前記ディスクが回転したときに、前記ディスクとの間の気流による圧力が円周方向位置によって異なるように、前記磁気シールド板を前記ディスク受け面に対して傾斜して固定したことを特徴とするディスク駆動用モータ。
【請求項2】
ディスクと、
前記ディスクに対向して配置され、前記ディスク上の任意位置を走査して情報を記録または再生するヘッドと、
前記ディスクを回転駆動するディスク駆動用モータとを備えた情報記録再生装置であって、
前記ディスク駆動用モータは請求項1に記載のディスク駆動用モータであることを特徴とする情報記録再生装置。
【請求項3】
前記磁気シールド板と前記ディスクとで形成される軸方向空隙部は、前記ヘッドが走査する領域以外でその軸方向距離が小さくなるように、前記磁気シールド板を傾斜させてなることを特徴とする請求項2に記載の情報記録再生装置。
【請求項4】
前記磁気シールド板と前記ディスクとで形成される軸方向空隙部は、前記ヘッドの走査軌跡円弧に対して前記ディスクの回転中心から引いた接線とほぼ直交する方向でその軸方向距離が小さくなるように、前記磁気シールド板を傾斜させてなることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の情報記録再生装置。
【請求項5】
ベースと、
ディスクを搭載可能なリング状のディスク受け面を有するハブと、
前記ハブを回転自在に支承する流体動圧軸受と、
前記ベース上に載置され、前記ディスク受け面の外径よりも大きな外径を有し、前記ハブに対して回転力を与えるモータ部と、
前記ディスク受け面に前記ディスクが搭載された時に形成される前記ディスクと前記モータ部との間の第1の軸方向空隙部に配設された磁気シールド板とを有してなり、
前記ディスクが搭載されたときに形成される前記磁気シールド板と前記ディスクの間の第2の軸方向空隙部の前記磁気シールド板側の形状は、前記モータ部が回転したときに前記ディスクとの間の気流による圧力が円周方向位置によって異なるように、前記ディスク受け面に対してその軸方向高さもしくは傾斜方向が異なりかつ、互いに円周方向に滑らかに繋がる少なくとも二つの平面部を有することを特徴とするディスク駆動用モータ。
【請求項6】
前記第2の軸方向空隙部の前記磁気シールド板側の形状は、互いに軸方向高さが異なり、かつコーナR形状により円周方向に滑らかに繋がる段差を有することを特徴とする請求項5に記載のディスク駆動用モータ。
【請求項7】
前記第2の軸方向空隙部の前記磁気シールド板側の形状は、前記ディスク受け面に軸方向上で近い側にある正曲率のコーナR半径をR1とし、前記ディスク受け面から軸方向上で遠い側にあり負曲率のコーナRをR2としたとき、R1>R2の関係を有する請求項6に記載のディスク駆動用モータ。
【請求項8】
前記磁気シールド板の最内周部は単一のリング状平面部からなることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれかに記載のディスク駆動用モータ。
【請求項9】
前記第2の軸方向空隙部の形状は、その軸方向厚みが小さい領域は87度以上248度以下の範囲にわたることを特徴とする請求項5から請求項8のいずれか1項に記載のディスク駆動用モータ。
【請求項10】
ディスクと、
前記ディスクに対向して配置され、前記ディスク上の任意位置を走査して情報を記録または再生するヘッドと、
前記ディスクを回転駆動するディスク駆動用モータとを備えた情報記録再生装置であって、
前記ディスク駆動用モータは請求項5から,請求項9のいずれか1項に記載のディスク駆動用モータであることを特徴とする情報記録再生装置。
【請求項11】
前記第2の軸方向空隙部の形状は、前記ヘッドが走査する領域以外でその軸方向厚みが小さくなるようにしたことを特徴とする請求項10に記載の情報記録再生装置。
【請求項12】
前記第2の軸方向空隙部の形状は、前記ヘッドの走査軌跡円弧に対して前記ディスクの回転中心から引いた接線とほぼ直交する方向でその軸方向厚みが最も小さくなるように、前記磁気シールド板側の形状を定めたことを特徴とする請求項10または請求項11に記載の情報記録再生装置。
【請求項13】
前記第2の軸方向空隙部の形状は、前記ヘッドの走査軌跡円弧上よりも、前記ディスクの回転中心から見てそのほぼ反対の方向位置でその軸方向厚みが小さくなるように、前記磁気シールド板側の形状を構成したことを特徴とする請求項10から請求項12のいずれかに記載の情報記録再生装置。
【請求項1】
ベースと、
ディスクを搭載可能なリング状のディスク受け面を有するハブと、
前記ハブを回転自在に支承する流体動圧軸受と、
前記ベース上に載置され、前記ディスク受け面の外径よりも大きな外径を有し、前記ハブに対して回転力を与えるモータ部と、
前記ディスク受け面に前記ディスクが搭載された時に形成される前記ディスクと前記モータ部との間の軸方向空隙部に配設された磁気シールド板とを有してなり、
前記ディスクが搭載され前記ディスクが回転したときに、前記ディスクとの間の気流による圧力が円周方向位置によって異なるように、前記磁気シールド板を前記ディスク受け面に対して傾斜して固定したことを特徴とするディスク駆動用モータ。
【請求項2】
ディスクと、
前記ディスクに対向して配置され、前記ディスク上の任意位置を走査して情報を記録または再生するヘッドと、
前記ディスクを回転駆動するディスク駆動用モータとを備えた情報記録再生装置であって、
前記ディスク駆動用モータは請求項1に記載のディスク駆動用モータであることを特徴とする情報記録再生装置。
【請求項3】
前記磁気シールド板と前記ディスクとで形成される軸方向空隙部は、前記ヘッドが走査する領域以外でその軸方向距離が小さくなるように、前記磁気シールド板を傾斜させてなることを特徴とする請求項2に記載の情報記録再生装置。
【請求項4】
前記磁気シールド板と前記ディスクとで形成される軸方向空隙部は、前記ヘッドの走査軌跡円弧に対して前記ディスクの回転中心から引いた接線とほぼ直交する方向でその軸方向距離が小さくなるように、前記磁気シールド板を傾斜させてなることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の情報記録再生装置。
【請求項5】
ベースと、
ディスクを搭載可能なリング状のディスク受け面を有するハブと、
前記ハブを回転自在に支承する流体動圧軸受と、
前記ベース上に載置され、前記ディスク受け面の外径よりも大きな外径を有し、前記ハブに対して回転力を与えるモータ部と、
前記ディスク受け面に前記ディスクが搭載された時に形成される前記ディスクと前記モータ部との間の第1の軸方向空隙部に配設された磁気シールド板とを有してなり、
前記ディスクが搭載されたときに形成される前記磁気シールド板と前記ディスクの間の第2の軸方向空隙部の前記磁気シールド板側の形状は、前記モータ部が回転したときに前記ディスクとの間の気流による圧力が円周方向位置によって異なるように、前記ディスク受け面に対してその軸方向高さもしくは傾斜方向が異なりかつ、互いに円周方向に滑らかに繋がる少なくとも二つの平面部を有することを特徴とするディスク駆動用モータ。
【請求項6】
前記第2の軸方向空隙部の前記磁気シールド板側の形状は、互いに軸方向高さが異なり、かつコーナR形状により円周方向に滑らかに繋がる段差を有することを特徴とする請求項5に記載のディスク駆動用モータ。
【請求項7】
前記第2の軸方向空隙部の前記磁気シールド板側の形状は、前記ディスク受け面に軸方向上で近い側にある正曲率のコーナR半径をR1とし、前記ディスク受け面から軸方向上で遠い側にあり負曲率のコーナRをR2としたとき、R1>R2の関係を有する請求項6に記載のディスク駆動用モータ。
【請求項8】
前記磁気シールド板の最内周部は単一のリング状平面部からなることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれかに記載のディスク駆動用モータ。
【請求項9】
前記第2の軸方向空隙部の形状は、その軸方向厚みが小さい領域は87度以上248度以下の範囲にわたることを特徴とする請求項5から請求項8のいずれか1項に記載のディスク駆動用モータ。
【請求項10】
ディスクと、
前記ディスクに対向して配置され、前記ディスク上の任意位置を走査して情報を記録または再生するヘッドと、
前記ディスクを回転駆動するディスク駆動用モータとを備えた情報記録再生装置であって、
前記ディスク駆動用モータは請求項5から,請求項9のいずれか1項に記載のディスク駆動用モータであることを特徴とする情報記録再生装置。
【請求項11】
前記第2の軸方向空隙部の形状は、前記ヘッドが走査する領域以外でその軸方向厚みが小さくなるようにしたことを特徴とする請求項10に記載の情報記録再生装置。
【請求項12】
前記第2の軸方向空隙部の形状は、前記ヘッドの走査軌跡円弧に対して前記ディスクの回転中心から引いた接線とほぼ直交する方向でその軸方向厚みが最も小さくなるように、前記磁気シールド板側の形状を定めたことを特徴とする請求項10または請求項11に記載の情報記録再生装置。
【請求項13】
前記第2の軸方向空隙部の形状は、前記ヘッドの走査軌跡円弧上よりも、前記ディスクの回転中心から見てそのほぼ反対の方向位置でその軸方向厚みが小さくなるように、前記磁気シールド板側の形状を構成したことを特徴とする請求項10から請求項12のいずれかに記載の情報記録再生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−252167(P2007−252167A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−76326(P2006−76326)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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