説明

ディスプレイ用フィルタ及びこれを用いた画像表示装置

【課題】プライマー層中の残存光反応開始剤が粘着剤層へ移行して吸収剤(色素)を劣化させるという問題がなく、また、パターンの線幅の細線化が求められている電磁波シールド材において、より低い表面抵抗率とすることができる構成の電磁波シールド材を含むディスプレイ用フィルタを提供する。
【解決手段】透明基材1と、該透明基材1上に形成されたプライマー層2と、該プライマー層2上に所定のパターンで形成された導電性組成物からなる凸状パターン層3を有する電磁波シールド材10と色素含有粘着剤層4Pとを含むディスプレイ用フィルタ20であって、該導電性組成物は導電性粒子3aとバインダー樹脂3bを含んで成り、該凸状パターン層3中の該導電性粒子3aの分布が、相対的に、該プライマー層2近傍において分布が疎であり、又該凸状パターン層3の頂部近傍において密であることを特徴とするディスプレイ用フィルタ20。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置(ディスプレイ)の前面に配置して、ディスプレイから発生する電磁波を遮蔽するディスプレイ用フィルタ及びこれを用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビやパーソナルコンピュータのモニター等の画像表示装置(ディスプレイ装置ともいう)として、例えば、陰極線管(CRT)ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置(LCD)、プラズマディスプレイ装置(PDP)、電場発光(EL)ディスプレイ装置等が知られている。これらのディスプレイ装置のうち、大画面ディスプレイ装置の分野で注目されているプラズマディスプレイ装置は、発光にプラズマ放電を利用するため、30MHz〜1GHz帯域の不要な電磁波が外部に漏洩して他の機器(例えば、遠隔制御機器、情報処理装置等)に影響を与えるおそれがある。そのため、プラズマディスプレイ装置に用いられるプラズマディスプレイパネルの前面側(観察者側)に、可視光線は透過し且つ漏洩する電磁波はシールドするためのフィルム状の電磁波シールド材を設けるのが一般的である。
なお、本願明細書中において、「電磁波」とは広義の電磁波の中で、周波数30MHz〜1GHz帯域を中心とするkHz〜GHz帯域のもの(所謂電波)を意味する。より高周波数の赤外線、可視光線、紫外線等は、各々、赤外線、可視光線、紫外線等と呼称する。
【0003】
プラズマディスプレイの前面などに用いることができる電磁波シールド部材用材料としては、銀スパッタ薄膜、銅メッシュなどがあるが、銀スパッタ薄膜はコストが高く、また全面を被覆しているため可視光(線)透明性と電磁波遮蔽性との両立性に劣る。銅メッシュは開口部分があるため透明性は高いが、銅箔をフォトリソグラフィー法でエッチングしてメッシュ形状を作成するため、捨てる材料が多く低コスト化が難しかった。
一方、例えば、特許文献1には、導電性インキ組成物をメッシュパターンで透明基材に直接凹版印刷し、その透明基材上のメッシュパターンに金属層を電気めっきしてなる電磁波シールド材が提案されており、銅箔エッチング法などよりも経済性、生産性にすぐれた方法といえる。
しかしながら、導電性インキを転写する際、微細な凹版凹部内に充填された低流動性で高粘度の導電性インキは通常の凹版印刷方式では該凹部内に多く残留して、透明基材上に未転写部が発生したり、密着性に劣る転写不良が発生したりする。それ故、十分な厚みがあり十分な電気伝導度のパターンを形成することが困難となり、十分な電磁波シールド性を得ることは困難であった。
【0004】
そこで、本出願人は、凹版印刷により導電性材料組成物を透明基材上に転写し、導電性を有するパターンを形成してなる電磁波シールド材において、導電性材料組成物の転写不良に基づくパターンの断線、形状不良、転移率不足や低密着性等の不具合が生じない電磁波シールド材を特許文献2で提案している。これは、凹部内に充填された導電性インキ組成物を、紫外線硬化性樹脂から成り硬化するまで流動性を保持できるプライマー層が形成された透明基材と圧着することによって、プライマー層と凹部内の導電性インキとを空隙なく密着する圧着工程を経て、プライマー層を硬化し、透明基材を版面から剥がすことで、凹部内の導電性インキ組成物のほとんどを硬化したプライマー層上に転写するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−174174号公報
【特許文献2】WO2008/149969号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の新規な方法(以下、「引き抜きプライマー法」ともいう。)による電磁波シールド材においても、なお、以下のような課題がある。
(課題1)
特許文献2の方法による電磁波シールド材は、プライマー層として紫外線硬化樹脂を用いることが特徴である。
図2(A)に上記従来技術による電磁波シールド材10Aを構成層として含むディスプレイ用フィルタ20Aの代表的1形態を概念的断面図で図示する。この図にも示すように、ディスプレイ用フィルタ20Aの層構成として、電磁波シールド材の導電パターン層上に粘着剤層を設けることが多く、かつ、通常、粘着剤層中には近赤外線吸収剤、ネオン光吸収剤、調色光吸収剤などの吸収剤即ち色素を含有させて色素含有粘着剤層4Pとする。なお、該ディスプレイフィルタ20Aの層構成としては、透明基材1上に紫外線硬化樹脂から成るプライマー層2を介して導電性組成物から成る凸状パターン層3を積層した電磁波シールド材10Aを有する。そして、該電磁波シールド材10Aの導電体パターン層3上に、順次、色素含有粘着剤層4P、透明基材5、及び反射防止層6をこの順に積層して成る。かかる構成のディスプレイフィルタ20Aにおいては、電磁波シールド材10Aのプライマー層2も色素含有粘着剤層4Pと直接接触するが、紫外線硬化樹脂からなるプライマー層2には、不可避的に光反応開始剤が残存している。このプライマー層2中の残存光反応開始剤が色素含有粘着剤層4Pへ移行して色素を劣化させ、色素含有粘着剤層の吸収能力が低下し、変褪色、或いは近赤外線吸収率の低下等を生じることとなる。このような色素の吸収能力低下は、特に、有機化合物からなる色素(有機系色素)の場合に顕著である。例えば、ジイモニウム化合物からなる近赤外線吸収剤は、紫外線硬化樹脂からなるプライマー層の残存光反応開始剤による吸収能力の低下を生じることが知られている。又、このような色素の吸収能力低下は、日光等に含まれる紫外線が照射されたり、高温(厚いは高温且つ高湿度)の環境下におかれた場合に促進されることも知られている。
かかる色素の吸収能力低下を改善する手段として、従来、図2(B)に示す如く、電磁波シールド材10Aの導電体パターン層3上に、色素無添加粘着剤層4T、及びポリエチレンテレフタレートから成る透明基材5を介して、色素含有粘着剤層4Pを積層した構成(その他は図1(A)のディスプレイ用フィルタ20Aと同様)のディスプレイ用フィルタ20Bも提案されている。ディスプレイ用フィルタ20Bにおいては、色素含有粘着剤層4P中の色素が透明基材5及び色素無添加粘着剤層4Tによってプライマー層2から遮断、隔離されている為、色素と残存光反応開始剤との接触による反応を防止し、かかる色素の吸収能力低下を防止するものである。
但し、図2(B)の構成のディスプレイ用フィルタ20Bは、図1(A)の構成のディスプレイ用フィルタ20Aに比べて、透明基材5及び色素無添加粘着剤層4Tの分だけ総厚みが増し、その分製造原価も高くなると云う問題があった。且つ、近赤外線吸収剤、ネオン光吸収剤、調色光吸収剤などの色素を含有させることができる層が制限され、ディスプレイ用フィルタの層構成の自由度を小さくするという問題があった。
また、その他に、図示は略すが、色素含有粘着剤層4P中にヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤等のラジカル捕捉剤を添加して残存光反応開始剤から発生して色素の吸収能力低下の引き金となる(と考えられる)ラジカルを捕捉すること、或いは色素含有粘着剤層4P中又はこれよりも外側(日光の入射側)の層に紫外線吸収剤を添加して、紫外線によって残存光反応開始剤から発生するラジカルを捕捉することも検討された。
但し、これらの仕様においては、紫外線照射で発生するラジカル以外の機構(紫外線照射によらない経時的なラジカル発生や残存光重合開始剤との直接反応)による劣化には有効でなく改善効果も限られるといった問題があった。
【0007】
(課題2)
最近の傾向として、高電磁波シールド性と高透明性との両立性を要求される各種利用分野、特に、ディスプレイ装置の画面前面用途の場合においては、より高透明のものを得る為には、パターンの線幅を、より一層微細化することが求められている。具体的には、線幅30μm以下、より好ましくは15〜20μm以下の細線化が求められてきている。
一方で、導電性粒子とバインダー樹脂を含む導電性組成物から成る凸状パターン層の線幅がこのように細くなると;
(1)一般に物体の電気抵抗Rは、その長さL及び体積抵抗率ρに比例し、その断面積Sに反比例する。即ち、R=ρL/Sとなる。その為、同じ導電性組成物(ρ一定)で同じ平面視パターン形状(L一定)且つ同じ厚みのパターンを印刷形成する場合、線幅の減少に比例して断面積Sも減少し、導電パターン部分の電気抵抗Rは高くなる。これに伴い、電磁波シールド性の指標である、シールド部材としての表面抵抗率も増大する。
(2)印刷厚みを一定として、パターン線幅が狭くなり、線幅と導電性粒子径とが近づいてくると、同じ粒子径及び粒子形状の導電性粒子であっても、該細線パターンの単位断面積中における該導電性粒子同士が接触する部分の総面積の比率は低下する。その結果、幾何学的断面積SGEOに比べて、現実の電流通路となり得る導電性粒子(群)の有効総断面積SAVは低下し(SAV<SGEO)、導電パターン部分の電気抵抗Rは、線幅減少による幾何学的要因(断面積S)の影響以上に高くなるため、電磁波シールド材の表面抵抗率も線幅から単純計算した値以上に上昇してしまう。その結果、電磁波シールド性は低下する。この状況は、線幅を変えずに厚みを薄くした場合でも同様に生じるため、印刷厚みが薄くなり導電性粒子径と近づいた場合も、急激に表面抵抗率が増大するという結果となる。
勿論、該凸状パターン層上に、電解めっき等によって、低体積抵抗率の金属層を形成すれば、この電気抵抗の上昇分は相殺し得る。しかし、その場合は、工程数及び材料費の増加と歩留まりの低下を生じる為、好ましい形態とは言えない。
このように、従来においては、導電性材料組成物からなる凸状メッシュパターンにおいて、線幅を減少しても低い表面抵抗率(高い導電率)が達成できる凸状メッシュパターンの構成は提案されていない。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、プライマー層中の残存光反応開始剤が粘着剤層へ移行して吸収剤(色素)を劣化させるという問題がなく、また、パターンの線幅を、より一層微細化、具体的には、線幅30μm以下、より好ましくは15〜20μm以下の細線化が求められている電磁波シールド材において、より低い表面抵抗率とすることができる構成の電磁波シールド材を含むディスプレイ用フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため鋭意検討した結果、透明基材上に形成された紫外線硬化樹脂からなるプライマー層と、該プライマー層上に所定のパターンで形成された導電性組成物からなる凸状パターン層を有する電磁波シールド材において、プライマー層中の残存光反応開始剤量を一定量以下とし、かつ、その凸状パターン層を構成する導電性組成物中の導電性粒子の分布が、相対的に、プライマー層近傍において分布が疎に、又凸状パターンの頂部近傍において密であるよう構成することで解決し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づき完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)透明基材と、該透明基材上に形成されたプライマー層と、該プライマー層上に所定のパターンで形成された導電性組成物からなる凸状パターン層を有する電磁波シールド材と色素含有粘着剤層とを含むディスプレイ用フィルタであって、
該導電性組成物は導電性粒子とバインダー樹脂を含んで成り、該凸状パターン層中の該導電性粒子の分布が、相対的に、該プライマー層近傍において分布が疎であり、又該凸状パターン層の頂部近傍において密であり、
該プライマー層は紫外線硬化樹脂からなり、該紫外線硬化樹脂中の残存光反応開始剤量が20μg/cm2以下であり、
かつ、電磁波シールド材の凸状パターン層形成側に隣接して近赤外線吸収剤、ネオン光吸収剤、調色光吸収剤のいずれか1種以上を含有する色素含有粘着剤層を積層して成る
ことを特徴とするディスプレイ用フィルタ、
(2)上記(1)に記載のディスプレイ用フィルタを、ディスプレイパネルの前面側に設置した画像表示装置、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により得られるディスプレイ用フィルタは、電磁波シールド材の紫外線硬化樹脂からなるプライマー層中の残存光反応開始剤量を一定量以下とすることで、隣接する粘着剤層へ移行する残存光反応開始剤が実質的に無視できるものとなり、変褪色や吸収能力の低下を生じることなく粘着剤層中に近赤外線吸収剤、ネオン光吸収剤、調色光吸収剤などの色素(吸収剤)を含有させることができるようになる。
また、電磁波シールド材における凸状パターン層の導電性粒子の分布が、相対的に、プライマー層近傍において分布が疎であり、又凸状パターン層頂部近傍において密であるよう構成したため、凸状パターン層頂部近傍で集中的に各導電性粒子同士の電気的接触が確保されるので、限られた導電性粒子の添加量であるにもかかわらず、該パターンの線幅を微細化した場合においても、高い電磁波シールド性を示すという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による電磁波シールド材を構成層として含むディスプレイ用フィルタの1形態を示す模式的な断面図である。
【図2】図2(A)は、従来技術による電磁波シールド材を構成層として含むディスプレイ用フィルタの1形態を示す模式的な概念的断面図であり、図2(B)は、従来技術による電磁波シールド材を構成層として含むディスプレイ用フィルタの別の1形態を示す模式的な概念的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
〔電磁波シールド材〕
図1は、本発明で使用する電磁波シールド材の一例を示す模式的な断面図である。なお、図1は説明の便宜上、縦横の縮尺の比率は、適宜、実物よりも増減してある。また、凸状パターン層3内の導電性粒子も実物よりも誇張して図示している。本発明で使用する電磁波シールド材10は、透明基材1と、透明基材1上に形成されたプライマー層2と、プライマー層2上に所定のパターンで形成された、導電性粒子とバインダー樹脂を含む導電性組成物からなる凸状パターン層3とを有する。そして、紫外線硬化樹脂からなるプライマー層中の残存光反応開始剤量は一定量以下であり、凸状パターン層の導電性粒子の分布が、相対的に、プライマー層近傍において分布が疎であり、又凸状パターン層頂部近傍において密であるよう構成した。
以下、本発明で使用する電磁波シールド材10の構成を詳しく説明する。
【0014】
(透明基材)
透明基材1は、可視光線領域での透明性(光透過性)、耐熱性、機械的強度等の要求物性を考慮して、公知の材料及び厚みを適宜選択すればよく、特に制限はないが、生産性に優れるロール・トゥ・ロールでの連続加工適性を考慮すると、フレキシブルな樹脂フィルム(乃至シート)が好ましい。なお、ロール・トゥ・ロールとは、巻取(ロール)から巻き出して供給し、適宜加工を施し、その後、巻取に巻き取って保管する加工方式をいう。
【0015】
樹脂フィルム乃至シートの樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレングリコール−1,4シクロヘキサンジメタノール−テレフタール酸共重合体、エチレングリコール−テレフタール酸−イソフタール酸共重合体、ポリエステル系熱可塑性エラストマーなどのポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリプロピレン、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド(ナイロン)系樹脂等である。なかでも、ポリエチレンテレフタレートはその2軸延伸フィルムが耐熱性、機械的強度、光透過性、コスト等の点で好ましい透明基材である。
なお、電磁波シールド材及びディスプレイ用フィルタに可撓性を要求しない場合は、透明基材1として、硝子、石英等の透明な無機材料の板を使用することもできる。
【0016】
透明基材の厚みは基本的には特に制限はなく用途等に応じ適宜選択し、フレキシブルな樹脂フィルムを利用する場合、例えば12〜500μm、好ましくは25〜200μm程度である。
また、以下に述べるプライマー層2との密着性を確保するために、透明基材表面に別途密着性改善のための表面処理や、易接着層、下地層などが設けられていてもよい。
【0017】
(プライマー層)
プライマー層2は、導電性組成物と被印刷物との密着性を向上させるための層である。すなわち、透明基材及び凸状パターン層の双方に密着性が良く、また開口部(凸状パターン層非形成部)の光透過性確保のために透明な層でもある。
更に、特許文献2の新規な電磁波シールド材製造方法においては、このプライマー層2は、その主目的が凸状パターン層3の印刷形成時に、版から被印刷物(透明基材)へのインキ(導電性組成物)転移性を向上させ、転移後の導電性組成物と被印刷物との密着性を向上させるための層であり、流動性を保持できる状態で透明基材1上に設けられ、凹版印刷時の凹版に接触している間に液状から固化させる層である。
【0018】
かかるプライマー層を構成する材料としては、本発明では、未硬化状態において液状(流動性)の紫外線硬化性化合物を含む紫外線硬化性樹脂組成物を塗工、紫外線照射により硬化(固体化)してなる層が用いられる。なお、紫外線照射により、架橋反応乃至重合反応により硬化する性能を有する樹脂の未硬化物を紫外線硬化性樹脂、該紫外線硬化性樹脂を硬化してなるもの(硬化物)を紫外線硬化樹脂と呼称する。
該紫外線硬化性化合物としては、紫外線で重合、架橋等の反応により硬化するモノマー及び/又はプレポリマーが用いられる。
かかるモノマーとしては、ラジカル重合性モノマーとして、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートなどの単官能(メタ)アクリレート類、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート類等の各種(メタ)アクリレートが挙げられる。なお、ここで(メタ)アクリレートとの表記は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。カチオン重合性モノマーとして、例えば、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートなどの脂環式エポキシド類、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどグリシジルエーテル類、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルなどビニルエーテル類、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンなどオキセタン類等が挙げられる。
また、かかるプレポリマー(乃至オリゴマー)としては、ラジカル重合性プレポリマーとして、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコン(メタ)アクリレート等の各種(メタ)アクリレートプレポリマー、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオール系プレポリマー、不飽和ポリエステルプレポリマー等が挙げられる。その他、カチオン重合性プレポリマーとして、例えば、ノボラック系型エポキシ樹脂プレポリマー、芳香族ビニルエーテル系樹脂プレポリマー等が挙げられる。
これらモノマー、或いはプレポリマーは、要求される性能、塗布適性等に応じて、1種類単独で用いる他、モノマーを2種類以上混合したり、プレポリマーを2種類以上混合したり、或いはモノマー1種類以上とプレポリマー1種類以上とを混合して用いたりすることができる。
【0019】
紫外線硬化のためには、光重合開始剤を添加する。光重合開始剤としては、ラジカル重合性のモノマー又はプレポリマーの場合には、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン系、アセトフェノン系等の化合物が、またカチオン重合系のモノマー又はプレポリマーの場合には、メタロセン系、芳香族スルホニウム系、芳香族ヨードニウム系等の化合物が用いられる。具体的には、反応波長帯域が光重合開始剤の通常の吸収波長である400nm未満の波長帯域にあるものとして、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア184」]、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「ダロキュア1173」]などが挙げられ、反応波長帯域が通常よりも長波長にあり、400nm以上にも分光感度を有する光重合開始剤としては2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア907」]などが挙げられる。
【0020】
本発明においては、プライマー層は紫外線硬化樹脂中の残存光反応開始剤量を、プライマー層の単位(表)面積当たり20μg/cm2以下、好ましくは16μg/cm2以下、更に好ましくは10μg/cm2以下とすることを特徴とする。なお、本発明者らが調査、検討したところ、残存光重合開始剤が色素と反応してその吸収スペクトルを変化(変褪色や吸収能力の低下)を生じる程度は、残存光重合開始剤の濃度(単位体積当たりの含有量)ではなく、単位面積当たりの残存光重合剤の含有量(面密度)と相関関係があることが判明した。ここではμg/cm2の単位で評価することにする。
そのための第1の方法としては、反応波長帯域が光重合開始剤の通常の吸収波長である400nm未満の波長帯域にあるものを用いて、通常添加量よりも少ない0.1〜1.5質量部を紫外線硬化性組成物へ添加し、紫外線露光量を通常の照射線量500〜600mJ/cm2よりも大きい600〜700mJ/cm2として硬化させることである。
第2の方法としては、反応波長帯域が前記光重合開始剤の通常の吸収波長にあるものを用いて、通常添加量である2〜5質量部を紫外線硬化性組成物へ添加し、通常の紫外線照射線量500〜600mJ/cm2で硬化させた後に、100℃以上の温度で10分間以上加熱し、残存する光反応開始剤を蒸発させることである。
第3の方法としては、反応波長帯域が通常よりも長波長にあり、400nm以上にも分光感度を有する光重合開始剤を用いて、通常添加量の2〜5質量部を紫外線硬化性組成物へ添加し、通常の紫外線照射線量500〜600mJ/cm2で硬化させることである。紫外線照射はPETフィルム等透明基材側から行うため、PETフィルムで吸収されない400nm以上の光で光重合開始剤を反応分解させることができるものである。
【0021】
当該紫外線硬化性組成物は、溶剤を含んでもよいが、その場合塗布後に乾燥工程が必要となるため、コストを考えれば溶剤を含まないタイプ(ノンソルベントタイプ乃至無溶剤型)であることが好ましい。外観改善や塗工適性改善などのために溶剤を添加する場合には乾燥が必要となるが、溶剤の添加量が数%程度の量であるならば、硬化後に乾燥させてもよい。残留溶剤量はなるべく少ない方が好ましいが、物性、耐久性に影響が無ければ完全にゼロでなくてもよい。
【0022】
プライマー層2の厚さ(凸状パターン層3の非形成部の中央部近傍における厚みで評価)は特に限定されないが、通常は硬化後の厚さで1μm〜100μm程度となるように形成される。また、プライマー層2の厚さは、通常は、凸状パターン層3とプライマー層2との合計値(総厚。凸状パターン層3の頂部と透明基材1の表面との高度差)の1〜50%程度である。
【0023】
(導電性組成物からなる凸状パターン層)
本発明における電磁波シールド材10は、導電性組成物からなる凸状パターン層3が、プライマー層2上に所定のパターンで設けられたものである。該パターン形状としてはメッシュ(網目乃至格子)形状が代表的なものであるが、その他、ストライプ(平行線群乃至縞模様)形状、螺旋形状等も用いられる。メッシュ形状の場合、単位格子形状は、正3角形、不等辺3角形等の3角形、正方形、長方形、台形、菱形等の4角形、6角形、8角形等の多角形、円、楕円等が用いられる。また、モアレを軽減する目的で、ランダム網目状、又は擬似ランダム網目状のパターンなども使用可能である。その線幅と線間ピッチも通常採用されている寸法であればよい。例えば、線幅は5〜50μmとすることができ、線間ピッチは100〜500μmとすることができる。開口率(電磁波シールドパターンの全面積中における開口部の合計面積の占める比率)は、通常、50〜95%程度である。またメッシュの電磁波シールドパターンとは別に、その周辺部の全周又はその一部にそれと導通を保ちつつ隣接した全ベタ等の接地パターンが設けられる場合もある。
なお、線幅は、より高透明のものを得る為により一層微細化することが求められている。この観点から、30μm以下、特に20μm以下とすることが好ましい。
【0024】
また、凸状パターン層3の厚さは、その凸状パターン層3の抵抗値によっても異なるが、電磁波シールド性能と該凸状パターン層上への他部材の接着適性との兼ね合いから、その中央部(突起パターンの頂部)での測定において、通常、2μm以上50μm以下であり、好ましくは、5μm以上20μm以下である。
【0025】
導電性組成物を構成する導電性粒子3aとしては、金、銀、白金、銅、ニッケル、錫、アルミニウムなどの低抵抗率金属の粒子、或いは芯材粒子としての高抵抗率金属粒子、樹脂粒子、非金属無機粒子等の表面が金や銀などの低抵抗率金属で被覆された粒子、黒鉛粒子、導電性高分子粒子、導電性セラミックス粒子等を挙げることができる。
導電性粒子の形状は、正多面体状、截頭多面体状等の各種の多面体状、球状、回転楕円体状、鱗片状、円盤状、樹枝状、繊維状等から選ぶことができる。特に、多面体状、球状、又は回転楕円体状が好ましい。これらの材料や形状は適宜混合して用いてもよい。
導電性粒子の大きさは種類に応じて任意に選択されるので一概に特定できないが、好ましくは、平均粒子径が0.01〜10μm程度のものを用いることができる。得られる凸状パターン層の電気抵抗を低く(好ましくは、表面抵抗率が0.8Ω/□以下)して良好な電磁波シールド性を得る為には、平均粒子径は小さい方が好ましく、この観点からは平均粒子径0.1〜1μmが好ましい。また、粒子径の分布については、得られる凸状パターンの電気抵抗を低くする為には、分布幅が狭く単一粒子径に近いよりも、相対的に大粒子径の粒子と相対的に小粒子径の粒子との混合系からなる方がよい。
導電性組成物中の導電性粒子の含有量は、導電性粒子の導電性や粒子の形態に応じて任意に選択されるが、例えば導電性組成物の固形分100質量部のうち、導電性粒子を40〜99質量部の範囲で含有させることができる。なお、本明細書において、平均粒子径というときは、粒度分布計、またはTEM(透過型電子顕微鏡)観察で測定した値を指している。
【0026】
本発明の電磁波シールド材の凸状パターン層内における導電性粒子3aの分布は、図1の断面図において概念的に図示するように、該凸状パターン層の頂部近傍(プライマー層から遠ざかる方向)においては、相対的に、粒子間の間隔が小さく、粒子数密度、即ち単位体積当りの粒子数が高く(密に)なり、一方、該凸状パターン層の底部近傍(プライマー層に近付く方向)においては、相対的に、粒子間の間隔が大きく、粒子数密度が低く(疎に)なる分布である。
かかる分布であるため、凸状パターン層の頂部近傍では、導電性粒子は、緻密に集合し、各粒子間の電気的接触も良好になり、電気抵抗が下がり、電磁波シールド効果も高まる。
なお、導電性の凸状パターン層3が特に、メッシュ、ストライプ等の線條パターンから成る場合は、凸状パターン層3中における導電性粒子3aの分布状態は線條パターンの延在方向には依存性を持たない(延在方向には単位体積中の粒子数密度は一定)。その為、かかる線條パターンを含む凸状パターン層3の場合には、単位体積中の導電性粒子3aの数密度は、該線條パターンの主切断面(延在方向に直交する断面)における単位面積中の導電性粒子3aの数密度(面密度)で評価できる。即ち図1の如く、主切断面内において、導電性粒子3aの数の面密度がプライマ層2近傍に比べて頂部近傍の方が大きくなる分布であれば、すなわち、導電性粒子3aの数の体積密度もプライマ層2近くに比べて頂部近くの方が大きくなる分布であると判断してよい。
【0027】
凸状パターン層中における導電性粒子3aの密度分布を制御し、相対的に、該プライマー層近傍において分布が疎であり、凸状パターンの頂部近傍において密であるようにする為には、例えば、後述の如くの凹版印刷法を応用した電磁波シールド材の製造方法において、版面凹部内に充填された導電性組成物上面の凹みに、透明基材上の流動状態のプライマー層を押圧する圧力を高めに設定すると共に、未硬化状態における該導電性組成物の粘度を低めに設定し、更に該導電性組成物を凹版凹部内で固化させずに、版面から離型後固化せしめることが有効である。
その他、これら導電性粒子3aの密度分布や配向状態は、導電性組成物のバインダー樹脂3bの種類、導電性粒子の材料と粒子径と粒子形状、バインダー樹脂と導電性粒子との配合比、導電性粒子と樹脂バインダーとの比重差、及び該導電性組成物の塗工条件や固化条件等に依存する。現実には、これら導電性粒子の密度分布や配向状態に影響する各種条件から実験的に、求める導電性粒子の密度分布及び配向に合致する条件を決定することになる。導電性粒子3aと樹脂バインダー3bとの比重差については、一般には、導電性粒子として金属を用い、樹脂バインダーとして有機高分子化合物を用いる場合には、「導電性粒子の比重>樹脂バインダーの比重」となる為、比重差のみを利用して導電性粒子の数密度を前記の如くの分布にする場合は、頂部が重力の向きと同じ向き(下向き)にして導電性凸状パターン層3を流動状態から固化せしめることが有効である。
【0028】
導電性組成物を構成するバインダー樹脂3bとしては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が使用可能である。熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、ポリエステル−メラミン樹脂、エポキシ−メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂等の樹脂を挙げることができ、これらを1種単独で、或いは2種以上混合して用いる。熱可塑性樹脂としては、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の樹脂を挙げることができ、これらを1種単独で、或いは2種以上混合して用いる。なお、熱硬化性樹脂を使用する場合、必要に応じて硬化触媒を添加してもよい。
また、版の凹部への充填に適した流動性を得るために、これら樹脂は通常、溶剤に溶けたワニスとして使用する。導電性ペーストとして用いる溶剤の種類には特に制限はなく、一般的に印刷インキに用いられる溶剤の中から適宜選択して使用できる。溶剤の含有量は通常、10〜70質量%程度であるが、必要な流動性が得られる範囲でなるべく少ないほうが好ましい。
【0029】
(導電性組成物からなる凸状パターン層の形成方法)
所定のパターンの導電性組成物からなる凸状パターン層3を形成するには、導電性組成物をシルクスクリーン印刷、フレキソ印刷、凹版印刷等で印刷する。なかでも、次のような所謂「引き抜きプライマー方式の凹版印刷」が好ましい。
かかる「引き抜きプライマー方式の凹版印刷」はWO2008/149969号パンフレットに開示の印刷法であり、凹版の凹部のみにドクターブレードなどを利用して導電性組成物を充填し、これに液状プライマー層を片面に形成済みの透明基材を、該プライマー層が凹版に接する向きで加圧ローラで圧着するなどして該プライマー層を接触させて、接触している状態でプライマー層を液状から固体状に固化させた後、透明基材を凹版から離して離版させることで、透明基材上の固化したプライマー層上に導電性組成物を転移させて、印刷することができる。
【0030】
印刷後、つまり離版後、まだ液状である凸状パターン層3に対しては、乾燥操作、加熱操作、冷却操作、化学反応操作などを適宜行い、固化せしめて導電性の導電パターン層3を完成させる。例えば、乾燥操作は、導電性組成物中の溶剤など不要な揮発成分を除去するため、加熱操作は、該乾燥や導電性組成物の熱硬化などの必要な化学反応を促進させるため、冷却操作は、加熱溶融した熱可塑性樹脂の導電性組成物やプライマー層の固化促進のため、化学反応操作は、加熱によらない電離放射線照射などのその他の手段による導電性組成物やプライマー層の化学反応を進行させるために行う。
また、導電性組成物は、版上で半硬化固化させ離版後に完全硬化させてもよい。
【0031】
また、導電性組成物の固化は凹版接触中に行ってもよい。版接触中に導電性組成物を固化させるときは、凹版は導電性組成物に対しても賦形型として機能し、プライマー層も含めて凹版は完全な賦形型として用いることになる。
【0032】
一般に、凹版印刷では、導電性組成物を版面に供給し、ドクターブレード等で余剰の該組成物を掻き取って版凹部に該組成物を充填する際、充填された該組成物の表面に凹みが発生する。この凹みは、該組成物中の溶剤乾燥による体積收縮、掻き取り時の該組成物のレオロジー的挙動等に起因するものと考えられる。該凹部の為、透明基材との密着不良、透明基材上への該組成物の転移率低下という不具合を生じていた。
一方、引き抜きプライマー方式の凹版印刷では、凹版凹部内に充填された導電性組成物の上部に窪み(凹み)が生じても、液状で流動性のプライマー層を介して印刷するので、印刷中にプライマー層を該窪みに流し込み隙間なく密着させた状態にでき、その後、プライマー層を固化させてから透明基材を凹版から離すので、透明基材上に固化したプライマー層2を介して所定パターンの導電パターン層3を、細線でも、転移不足による断線や形状不良、インキ密着性不足などの印刷不良の発生なく形成できる。凹版印刷工程において、かくの如く凹版凹部内に充填されたインキの表面に生じる窪みをプライマー層が流入、充填する結果、得られた電磁波シールド材は、プライマー層の厚みが、前記導電パターン層が形成されている部分の厚みが前記導電パターン層が形成されていない部分の厚みよりも厚くなる(WO2008/149969号パンフレット参照)。なお、本願の図1においては、図示の便宜上、プライマー層2の厚みが全面均一であるように図示してある。
【0033】
導電性組成物を凹版凹部内から該プライマー層を介して透明基材上に転写させて凸状パターン層とした後、更に、(i)水分存在下、且つ比較的高温下にて処理する及び/又は(ii)酸に接触させることによって、該凸状パターンの体積抵抗率、更には表面抵抗率が低下し、電磁波シールド性能が向上する。かかる(i)及び/又は(ii)の処理を電気抵抗低減化処理工程とも呼称する。
(i)の水分存在下での電気抵抗低減化処理工程においては、該電磁波シールド材を水分と接触した状態の下で室温(30℃未満)よりも高温状態に適宜時間放置するものである。水分接触下の条件としては、水蒸気を含む空気中への放置、水滴の吹付け(噴霧)、或いは液体の水中への浸漬のいずれでもよい。水蒸気を含む空気中への放置の場合、放置する空気(雰囲気)の相対湿度は70%RH以上、好ましくは85%以上とする。かかる高温状態の温度(水蒸気を含む空気中への放置の場合は雰囲気温度、水中浸漬の場合は水温)は摂氏30℃以上、好ましくは60℃以上である。但し、余り高温になると樹脂バインダーや透明基材の変質、変更を生じることになる為、通常の材料の場合、120℃以下とする。処理時間は、48時間程度とするのがよい。
かかる高温湿熱処理又は温水処理によって、凸状パターン全体の表面抵抗率は処理前の80〜50%程度に減少する。
【0034】
(ii)の酸による電気抵抗低減化処理工程とは、導電性組成物を凹版凹部内から該プライマー層を介して透明基材上に転写させて凸状パターン層とした後、酸と接触させることによって、凸状パターンの体積抵抗率を低下させる処理をいう。
酸としては、特に限定されず、種々の無機酸、有機酸から選択することができ、好ましくは酢酸、塩酸、硫酸、およびその水溶液であり、より好ましくは塩酸、硫酸、およびその水溶液である。
酸による処理時間は数分以下で十分であり、好ましくは15秒から2分であり、さらに好ましくは15秒〜1分である。
酸の処理温度は、常温で十分であり、好ましくは40℃以下であり、より好ましくは30℃以下であり、さらに好ましくは25℃以下である。
酸で処理する方法は特に限定されないが、酸の溶液の中への凸状パターン層の浸漬、酸の液滴の吹付け(噴霧)、酸や、酸の溶液の凸状パターン層上への塗布など、凸状パターン層と酸の液体を接触させる方法が、導電性向上効果に優れるため好ましい。
酸の濃度は、好ましくは10mol/L以下であり、より好ましくは5mol/L以下であり、さらに好ましくは1mol/L以下である。また、酸の濃度が低すぎる場合にも、酸による処理の効果が得られないため、好ましくは0.05mol/L以上、より好ましくは0.1mol/L以上であることが好ましい。
酸処理によって、体積抵抗率は該処理を行う前に比べて、80〜50%の値に低減する。
なお、酸の溶液を用いる場合は酸の残渣による悪影響が懸念されるため、処理後に水によるすすぎ、乾燥工程が必要となる。温水や蒸気を用いる場合はすすぎ工程は省略できる。
【0035】
高温湿熱処理、あるいは酸による処理によって凸状パターン層の体積抵抗率、更には表面抵抗率が低下する理由は、かかる処理によって、隣接する導電性粒子が融合して連結した構造(クラスター)を形成する為である。高温湿熱処理或いは酸による処理で導電粒子間の融合がなぜ起こるかについては、粒子表面が洗浄されることによる銀粒子同士の金属拡散の促進、水分あるいは酸による樹脂バインダーの収縮、溶媒成分の減少、或いは一旦溶解した金属が隣接する複数個の粒子表面間を包絡し、或は各粒子間の隙間を充填するような形態で再度固体化することなども考えられるが、真の理由は未だ確認できていない。
【0036】
(金属層)
本発明において、電磁波シールド材は、導電性組成物からなる凸状パターン層3のみでは所望の導電性に不足する場合に、高導電性の導電性を更に向上せしめるために、金属層を、必要に応じ形成することができ、凸状パターン層3上にめっきにより形成される。めっきの方法としては電解めっき、無電解めっきなどの方法があるが、電解めっきは無電解めっきに比べて通電量を増やすことでめっき速度を数倍に上げることができ、生産性を著しく向上させることができるため好ましい。
電解めっきの場合、凸状パターン層3への給電は凸状パターン層3が形成された面に接触させた通電ロール等の電極から行われるが、凸状パターン層3が電解めっき可能な程度の導電性(例えば、100Ω/□以下)を有するので、電解めっきを問題なく行うことができる。金属層を構成する材料としては、導電性が高く容易にめっき可能な、銅、銀、金、クロム、ニッケル等を挙げることができる。該金属層の厚みは0.1〜5μm程度とする。
金属層は凸状パターン層3に比べると一般的に体積抵抗率が1桁以上小さいため、凸状パターン層単体で電磁波シールド性を確保する場合に比べて、必要な導電性材料の量を減らせるという利点がある。
【0037】
〔色素含有粘着剤層〕
本発明において、上記のようにして得られた電磁波シールド材10の凸状パターン層3上には色素含有粘着剤層4Pが設けられる。粘着剤層は、その上に例えば図2の如く、反射防止層/PETフィルムなどの光学機能層を設けることができ(凸状パターン層は観察者側)、或いは、画像表示装置用前面フィルタを画像表示装置本体又は画像表示装置基板に接着する役割を担ってもよい(凸状パターン層は表示装置側)。
そして、本発明における色素含有粘着剤層4Pには、近赤外線吸収剤、ネオン光吸収剤、調色光吸収剤のいずれか1種以上を含有させる。本発明においては、色素含有粘着剤層4Pに隣接する電磁波シールド材の紫外線硬化樹脂からなるプライマー層の残存光反応開始剤量が20μg/cm2以下であるので、各種吸収剤を劣化させることはない。
【0038】
色素含有粘着剤層4Pに用いる粘着剤としては、基本的には特に制限はなく、公知の粘着剤の中から、粘着性(接着力)、透明性、塗工適性などを有し、またそれ自体好ましくは無着色のものを適宜選択する。このような粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤などが挙げられる。
ここで、アクリル系粘着剤について更に詳述する。
アクリル系粘着剤としては、モノマーとして少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステルのモノマー(単量体)を重合させた重合体を用いることができる。該重合体としては、炭素原子数1〜18程度のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとカルボキシル基を有するモノマーとの共重合体を用いるのが粘着剤としては一般的である。なお、本願明細書において(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。また、同じように、以下の(メタ)アクリレートなどもアクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0039】
上記のようなモノマーを利用した重合体として、単独重合体や共重合体の具体例を挙げれば、次の様なものを挙げることができる。
例えば、(メタ)アクリル酸エステル単独重合体としては、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸オクチル等が挙げられる。
また、(メタ)アクリル酸エステルモノマー2種以上からなる共重合体としては、たとえば、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等が挙げられる。
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー1種以上とその他モノマー1種以上との共重合体を用いることもできる。その他モノマーとしては、(メタ)アクリル酸2ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2ヒドロキシ3フェニルオキシプロピル等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸等のカルボキシル基を有するビニルモノマー、エチレン、スチレン等が挙げられる。
【0040】
本発明の色素含有粘着剤層4Pは、前記粘着剤及び所定の色素を適当な溶剤に溶解させた粘着剤溶液からなる塗工液を凸状パターン層3の上に塗工し、塗膜を形成させた後、乾燥させることにより形成される。
溶剤としては、例えばヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;塩化メチレン、塩化エチレンなどのハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノールなどのアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、メチルイソブチルケトン、イソホロンなどのケトン;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル;エチルセロソルブなどのセロソルブ系溶剤などが挙げられる。
【0041】
これら色素含有粘着剤層4Pの厚さとしては、5〜800μmの範囲が好ましい。厚さが5μm以上であると、粘着剤としての機能を十分に果たし、所定の吸収剤を添加することによって近赤外線等の所定の不要輻射を十分に吸収することができる。色素含有粘着剤層の厚さは10〜500μmの範囲がさらに好ましく、20〜300μmの範囲が特に好ましい。なお、色素含有粘着剤層の厚さを変えることで近赤外線等の所定の不要輻射の吸収効率を制御することができる。なお、色素含有粘着剤層は、被着体と充分な接着力を確保する、及び凸状パターン層3の凹部内に気泡を残留させないという観点から、導電性組成物の凸状パターン層3の凹凸を完全に充填し、該粘着剤層の表面が平坦面となるように塗工することが好ましい。
【0042】
(色素)
本発明における色素含有粘着剤層4P中には、近赤外線吸収剤、ネオン光吸収剤、調色光吸収剤のいずれか1種以上の色素(吸収剤)を含有させる。
近赤外線吸収剤としては、フタロシアニン系、イモニウム系、ジイモニウム系、ジチオール金属錯体、シアニン系化合物、アゾ化合物、ポリメチン系化合物、キノン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、トリフェニルメタン系化合物系等の有機系化合物からなる有機系近赤外線吸収剤、或いは金属酸化物、金属ホウ(硼)化物、金属窒化物などの無機系化合物から成る無機系近赤外線吸収剤が挙げられる。これらの中で、本発明の効果の1つである、残存光重合開始剤による色素の劣化防止効果を奏する余地が十分にあるという面からは、有機系近赤外線吸収剤が好ましい。また、色素劣化を防止し色素の耐久性をより極限迄追求するという面からは、それ自体の耐久性の堅牢な無機系近赤外線吸収剤が好ましい。
上記近赤外線吸収剤の含有量は、吸収層(粘着剤層)中に0.1〜15質量%程度であることが好ましい。
ネオン光吸収剤としては、シアニン系、オキソノール系、メチン系、サブフタロシアニン系もしくはポルフィリン系等が挙げられる。これらの中でもポルフィリン系が好ましく、中でも、テトラアザポルフィリン系色素が、分散性が良好で、且つ耐熱性、耐湿性、耐光性が良好な点から好ましい。
ネオン光吸収剤の含有量は、ネオン光吸収層(粘着剤層)中に、0.05〜5質量%であることが好ましい。含有量が0.05質量%以上であれば充分なネオン光吸収機能を発現でき、5質量%以下であれば、充分な量の可視光線を透過できる。
調色光吸収剤としては、アントラキノン系、ナフタレン系、アゾ系、フタロシアニン系、ピロメテン系、テトラアザポルフィリン系、スクアリリウム系、シアニン系等の色素が挙げられる。
調色光吸収剤の含有量は、補正すべき色に合わせて適宜調整され、特に限定されない。通常、調色層(粘着剤層)中に0.01〜10質量%程度含有する。
なお、必要に応じて、色素含有粘着剤層の紫外線による劣化を防止する為に、色素含有粘着剤層4P中には、更に、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン化合物、微粒子状酸化亜鉛、微粒子状酸化セリウム等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤等のラジカル捕捉剤、或いはこれらの両方を添加してもよい。
【0043】
〔ディスプレイ用フィルタ〕
こうして得られた電磁波シールド材10の凸状パターン層3上に色素含有粘着剤層4P(近赤外線吸収層、ネオン光吸収層、調色光吸収層でもある。)を設けた図1の如き積層体は、単品で、或いは更に各種の他の機能層を積層したものをディスプレイ用フィルタ20として、ディスプレイパネルの前面に設置される。
他の機能層としては、従来公知のものが用いられ、紫外線吸収層、反射防止層、防眩層、特開2007−272161号公報等記載の所謂薄膜ミクロルーバ層などの他の光学機能層、耐衝撃層、帯電防止層、ハードコート層、防汚層、抗菌層、防黴層などのその他機能層を挙げることができる。
かかるディスプレイ用フィルタ20の具体的な積層構成としては、例えば、図2(A)の如きものが挙げられる。但し、勿論、本発明に於けるディスプレイ用フィルタ20においては、図2(A)の従来技術の電磁波シールド材10Aに代えて本発明の電磁波シールド材10を用いる。
【0044】
〔用途〕
本発明のディスプレイ用フィルタは、各種用途に使用可能である。特に、各種の、テレビジョン受像装置、測定機器や計器類、事務用機器、医療機器、遊戯機器、電算機器、電話機、電飾看板(照明広告板)等の表示部等に用いられるPDP、CRT、LCD、ELなどの画像表示装置の前面フィルタ用として好適であり、特にPDP用として好適である。また、その他、住宅、学校、病院、事務所、店舗等の建築物の窓、車輛、航空機、船舶等の乗物の窓、電子レンジ等の各種家電製品の窓等の電磁波遮蔽用途にも使用可能である。
【実施例】
【0045】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
【0046】
実施例1
(1)色素含有粘着剤層形成用塗工液の調製
酸価6.8のアクリル系粘着剤(商品名:SK2094、綜研化学(株)製)に、近赤外線吸収剤としてセシウムタングステン酸化物(Cs0.33WO3)含有量18.5質量%のMIBK分散液(商品名:YMF−01、平均分散粒径44nm、住友金属鉱山(株)製)を10質量%添加し、ネオン光吸収剤としてテトラアザポルフィリン系色素(商品名TAP−2 山田化学株式会社製)を0.009質量%、調色光吸収剤として着色色素(商品名Plast red 8320 有本化学株式会社製)0.005質量%添加し、及び紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール系化合物を0.4質量%添加した。更にMIBKを40質量%添加し撹拌、混合する。これに硬化剤(商品名:E‐5XM、綜研化学(株)製)を添加して、色素含有粘着剤層形成用の塗工液を調製した。
(2)電磁波シールド材の作製
先ず、透明基材1として、片面にメラミン樹脂系の易接着層が形成された幅1000mmで厚さ100μmの長尺ロール巻の無色透明2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意した。供給部にセットしたPETフィルムを繰り出し、易接着層面にプライマー層用の紫外線硬化性樹脂組成物を厚さ5μmとなるように塗布形成した。塗布方式は、通常のグラビアリバースコート法を採用し、紫外線硬化性樹脂組成物としては、エポキシアクリレートプレポリマー35質量部、ウレタンアクリレートプレポリマー12質量部、フェノキシエチルアクリレートからなる単官能アクリレートモノマー44質量部、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸トリアクリレートからなる3官能アクリレートモノマー9質量部、さらに光開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名:イルガキュア184)1質量部添加したものを使用した。
次に、未硬化のプライマー層が形成されたPETフィルムを転写工程を行う凹版ロールに供するが、それに先だって、開口部の線幅が20μmで線ピッチが300μm、版深20μmの格子状のメッシュパターンとなる凹部が形成された凹版ロールの版面に、導電性組成物をピックアップロールで塗布し、ドクターブレードで凹部内以外の導電性組成物を掻き取って凹部内のみに導電性組成物を充填させた。凹部に充填された導電性組成物の表面には凹部が生じていた。導電性組成物を凹部内に充填させた状態の凹版ロールと、ニップロールとの間に、未硬化で液状のプライマー層が形成されたPETフィルムを供給し、凹版ロールに対するニップロールの押圧力(付勢力)によって、プライマー層を凹部内に存在する導電性組成物の凹みに流入させ、導電性組成物とプライマー層とを隙間なく密着させると共に、該プライマーの一部を凹部内の該導電性組成物内に浸透せしめた。なお、用いた導電性組成物は、以下の組成の銀ペーストを用いた。
導電性粉末3aとして平均粒径約2μmの鱗片状銀粉末93質量部、バインダー樹脂として熱可塑性のポリエステルウレタン樹脂7質量部、溶剤としてブチルカルビトールアセテート25質量部を配合し、十分に攪拌混合した後、3本ロールで混練りして導電性組成物を作製した。
次いで行われる転写工程は以下の通りである。先ず、プライマー層が形成されたPETフィルムを、そのプライマー層が凹版ロールの版面側に対向した状態で、凹版ロールとニップロールとの間に挟む。その凹版ロールとニップロールとの間でPETフィルムのプライマー層は版面に押し付けられる。未硬化のプライマー層は流動性を有しているので、版面に押し付けられた未硬化のプライマー層は、導電性組成物が充填した凹部内にも流入し、凹部内表面に生じた導電性組成物の凹みを充填する。
その後、さらに凹版ロールが回転してフュージョンUVシステムズ・ジャパン社製DバルブからなるUVランプによって紫外線が照射され(照射線量700mJ/cm2)、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる未硬化プライマー層が硬化する。プライマー層の硬化により、凹版ロールの凹部内の導電性組成物はプライマー層に密着し、その後、出口側のニップロールによってフィルムが凹版ロールから剥離され、硬化したプライマー層2上には導電性組成物層が転写形成される。このようにして得られた転写フィルムを、110℃の乾燥ゾーンを通過させて銀ペーストの溶剤を蒸発させて固化せしめ、プライマー層2上にメッシュパターンからなる凸状パターン層3を形成した。このときの凸状パターン層3が存在するパターン部分の厚さ(凸状パターン層が形成されているメッシュパターン部分とそれ以外の部分との厚さの差)は19μmで、版の深さの95%の厚さで転移しており、版の凹部内の銀ペーストが高い転移率で転移していた。転移後の凹部内を観察したところ、ペーストの版残りは見られず、また、メッシュパターンの断線や形状不良も見られなかった。
凸状パターン層の断面を電子顕微鏡で拡大撮影して観察した結果、凸状パターン層中の導電性粒子(銀粒子)の分布は、該凸状パターン層の頂部に行くほど密になり、逆にプライマー層側に行くほど疎になる様な疎密で分布していることが認められた。また、凸状パターン層中の導電性粒子がプライマー層との界面において上下に不規則に乱雑分布して該界面を構成することが認められた。
得られた電磁波シールド材10の凸状パターン層3の表面電気抵抗を測定(室温雰囲気(気温23℃、相対湿度50%)中で実施)したところ、表面抵抗率は1.0Ω/□であった。
【0047】
(3)ディスプレイ用フィルタの作製
(2)で作製した電磁波シールド材10の凸状パターン層3上に、上記(1)で調製した色素含有粘着剤層形成用の粘着剤形成用塗工液を、乾燥後の厚さが25μmとなるように、マイヤーバーNo.16で塗布した。次いで、90℃で1分間熱乾乾燥して、近赤外線吸収剤、ネオン光吸収剤、調色光吸収剤、及び紫外線吸収剤を含有してなる色素含有粘着剤層4Pとした。
以上により、図1の断面図の如くの構成の、実施例1のディスプレイ用フィルタ20を得た。
プライマー層2中に残存する光反応開始剤量をGCMS分析により測定したところ、
プライマー層中9μg/cm2であった。
【0048】
(4)耐光性試験
実施例1のディスプレイ用フィルタ20の耐光性試験[光源:カーボンアーク灯、500W/m2(λmax:380nm)、照射時間:48時間]を行ったところ、目視で識別可能な程度の褪色がなかった。
【0049】
実施例2
実施例1において、光反応開始剤の量を4質量部とし、照射線量600mJ/cm2でプライマー層2を硬化した後、さらに120℃、30分加熱処理し、残存する光反応開始剤を蒸発させる操作を行った以外は実施例1と同様にして、実施例2の電磁波シールド材10及びディスプレイ用フィルタ20を得た。
プライマー層中に残存する光反応開始剤量は2μg/cm2であった。
また、耐光性試験では目視で識別可能な程度の褪色がなかった。
【0050】
実施例3
実施例1において、光反応開始剤として2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア907」]を2質量部添加し、照射線量600mJ/cm2でプライマー層を硬化した以外は実施例1と同様にして、実施例3の電磁波シールド材10及びディスプレイ用フィルタ20を得た。
プライマー層2中に残存する光反応開始剤量は0.5μg/cm2であった。
また、耐光性試験では目視で識別可能な程度の褪色がなかった。
【0051】
比較例1
実施例1において、光反応開始剤の量を4質量部とし、照射線量600mJ/cm2でプライマー層を硬化した以外は実施例1と同様にして、比較例1の電磁波シールド材10及びディスプレイ用フィルタ20を得た。
プライマー層2中に残存する光反応開始剤量は36μg/cm2であった。
また、耐光性試験では目視で識別可能な程度の褪色があった。
比較例2
実施例1において、光反応開始剤の量を2質量部とし、実施例1と同様にして、比較例1の電磁波シールド材10及びディスプレイ用フィルタ20を得た。
プライマー層2中に残存する光反応開始剤量は23μg/cm2であった。
また、耐光性試験では目視で識別可能な程度の褪色が僅かに確認された
比較例3
実施例2において、追加加熱処理時間を5分にした以外は実施例1と同様にして、比較例1の電磁波シールド材10及びディスプレイ用フィルタ20を得た。
プライマー層2中に残存する光反応開始剤量は26μg/cm2であった。
また、耐光性試験では目視で識別可能な程度の褪色が極く僅かに確認された。
【符号の説明】
【0052】
1 透明基材
2 プライマー層
3 凸状パターン層(導電体パターン層)
3a 導電性粒子
3b 樹脂バインダー
4P 色素含有粘着剤層
4T 色素無添加粘着剤層
5 透明基材
6 反射防止層
7 透明基材
10 本発明による電磁波シールド材
20 本発明によるディスプレイ用フィルタの1形態
10A 従来技術による電磁波シールド材
20A、20B 従来技術による電磁波シールド材を構成層として含むディスプレイ用フィルタの1形態

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、該透明基材上に形成されたプライマー層と、該プライマー層上に所定のパターンで形成された導電性組成物からなる凸状パターン層を有する電磁波シールド材と色素含有粘着剤層とを含むディスプレイ用フィルタであって、
該導電性組成物は導電性粒子とバインダー樹脂を含んで成り、該凸状パターン層中の該導電性粒子の分布が、相対的に、該プライマー層近傍において分布が疎であり、又該凸状パターン層の頂部近傍において密であり、
該プライマー層は紫外線硬化樹脂からなり、該紫外線硬化樹脂中の残存光反応開始剤量が20μg/cm2以下であり、
かつ、電磁波シールド材の凸状パターン層形成側に隣接して近赤外線吸収剤、ネオン光吸収剤、調色光吸収剤のいずれか1種以上を含有する色素含有粘着剤層を積層して成る
ことを特徴とするディスプレイ用フィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載のディスプレイ用フィルタを、ディスプレイパネルの前面側に設置した画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−176176(P2011−176176A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39838(P2010−39838)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】