説明

ディスプレイ用透明保護シート及び透明導電シート

【課題】剛性及び耐熱性に優れ、ディスプレイパネルの加工工程や製品段階での問題を解消することができるディスプレイ用透明保護シート、及び該透明保護シートを基材として使用した透明導電シートを提供する。
【解決手段】スチレンとα−メチルスチレンとの共重合体を含む透明な樹脂組成物シートの少なくとも片面にハードコート層を有するディスプレイ用透明保護シート、及び該透明保護シートの少なくとも片面に透明導電膜2が形成された透明導電シート1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剛性及び耐熱性に優れたディスプレイ用透明保護シートに関する。更に、本発明は、上記透明保護シートを基材として使用した透明導電シート、及び該透明導電シートを備えたタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイをはじめとする各種のディスプレイ装置にはその目的に応じた透明なシートが使用されているが、これら透明なシートの使用例として、例えばタッチパネル用導電シート、表面保護シート(ウインドウ用シートともいわれる)などが挙げられる。これらの透明なシートには、ガラスシートが使用されてきたが、切削加工性の向上、安全性の向上、軽量性の改善などの目的でプラスチックスシートも使用されるようになってきている。
【0003】
これまで携帯電話では、ディスプレイ装置のウインドウは文字や画像を表示するためであり、操作は別に取り付けられたキーボタンを押すことにより行われていた。近年、携帯電話をはじめとして、各種のディスプレイ装置の操作用にタッチパネルが採用されることが多くなってきており、これらのディスプレイ装置では、ディスプレイ画面に直接タッチして信号を入力することができる。これらの画面操作用タッチパネルとしては、抵抗膜方式のタッチパネルが使用されることが多かったが、多様な操作性を持つことから、最近は静電容量方式のタッチパネルの使用が増加しつつある。
【0004】
静電容量方式のタッチパネルは、指でタッチしたときの微少な電気的変化すなわち、静電容量の変化を捉えて位置を検出する方式であり、指がセンサに直接触れることなく近づくだけで検出可能であるため、入力表面にガラスシートのカバーを取り付けて、デザイン性に優れた、しかも傷にも強く耐久性や耐環境性に優れたディスプレイ表示装置の提供が可能となってきた。
【0005】
このように、ディスプレイを構成する透明シートとしては、ガラスシート、特に強化ガラスシートが使用されることが多いが、切削加工が難しく、割れたときの飛散防止対策も必要となり、コストが高いという問題があった。
【0006】
そのため、各種のディスプレイ用透明シートには、ガラスに比較して軽量且つ加工性に優れているポリメチルメタクリレートやポリカーボネートなどの透明プラスチックスシートが使用されるようになってきたが、タッチパネル方式、特に静電容量方式のタッチパネルに使用されるディスプレイ用シートでは指などでタッチしたときに撓みの発生の少ない材料が求められるようになってきた。
【0007】
しかしながら、ポリカーボネートシートの場合、耐熱性、低吸湿性の点ではポリメチルメタクリレートに勝るものの、材料の弾性率が低いことに起因して、シート表面をタッチしたときに変形が大きいため実用上問題となっていた。また、ポリメチルメタクリレート(メタクリル系樹脂)シートの場合、材料の弾性率はポリカーボネートに勝るものの、耐熱性が100℃程度と低く、吸湿性が高いことから、加工工程のみならず、製品の使用環境においての変形の問題があった。
【0008】
また、タッチパネルの透明導電シートとしても上記の通りガラスシートが使用されることが多いが、ガラスシートは剛性、耐熱性、耐薬品性などの点で優れている反面、耐衝撃性を改善し、安全性を高めるために、強化ガラスシートとして使用されるが、加工が難しく、コストが高いという欠点を有していた。
【0009】
そのため、ディスプレイ用の保護シートや導電シートに使用されているガラスシートをプラスチックに代替する研究が行われてきたものの、要求される耐熱性、剛性、低吸湿性などの要求特性をすべて満足することができないため、容易に代替することができなかった。
【0010】
前述の通り、ポリカーボネート樹脂は吸湿性が低く、耐熱性も高いため、タッチパネル基板に加工するため、その表面に直接透明導電膜を形成する過程で熱を受けたり、タッチパネルを組み立てる過程で加熱操作が行われたりしても、その耐熱性のゆえに外観、寸法、表面特性などの問題を起こさないため、安定したパネル加工ができ、タッチパネル用基板として使用が可能であることは知られている。しかし、ポリカーボネートはその弾性率が約2.4GPaと低いため、その変形しやすさゆえに、耐熱性、耐衝撃性、低吸湿性に優れているにもかかわらず、静電容量式タッチパネルの導電シートとして十分に普及するには至っていないのが現状である。
【0011】
また、メチルメタクリレートを主成分とするメタクリル系樹脂は、材料の弾性率が高いため、実用的に求められる剛性には到達するものの、通常その熱変形温度が約100℃前後であるため、その表面に直接透明導電膜を形成する過程で熱を受けたり、タッチパネルを組み立てる過程での加熱操作を受けたりすると変形が起こり、安定したパネル加工ができなかった。更に、メタクリル系樹脂を使用すると、その吸湿性に起因して製品としての使用段階でパネルの伸び縮みに起因する変形や反りが発生しやすく、実用上問題があった。
【0012】
他方、スチレンを主成分とするスチレン系樹脂などの透明硬質樹脂は、材料の弾性率は比較的高く、実用的に求められる剛性には到達し、吸湿性も低いので、変形や反りが発生し難い。しかし、通常その熱変形温度が約100℃以下であるため、その表面に直接透明導電膜を形成する過程で熱を受けたり、タッチパネルを組み立てる過程で加熱操作が行われたりすると、その耐熱性の不足ゆえに外観、寸法、表面特性などの問題を起こし、安定してパネルに加工することができなかった。
【0013】
それに対して、特許文献1−3では無機ガラスの代替用途に用いられるシリコーン樹脂共重合体の成形体が報告されている。特許文献4では耐熱性等に優れ光学用途に適したフィルム積層体が報告されており、当該フィルム積層体は所定のガラス転移温度の透明プラスチックフィルムの表面に、光硬化性を有するかご型のシルセスキオキサン樹脂を含有した光硬化性樹脂組成物を塗布流延し、この光硬化性樹脂組成物を光硬化させて得られたことが記載されている。しかしながら、特許文献1−4に記載されている成形体やフィルム積層体には、加工時に割れ易いと言った問題や、全体の厚さを1.0 mm以上にするのが難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第4381636号公報
【特許文献2】特許第4142385号公報
【特許文献3】特開2006-89685号公報
【特許文献4】特開2008-37101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、剛性及び耐熱性に優れ、ディスプレイパネルの加工工程や製品段階での問題を解消することができるディスプレイ用透明保護シートを提供することを目的とする。更に、本発明は、上記透明保護シートを基材として使用した透明導電シート及び該透明導電シートを備えたタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、上記の従来技術の問題点を解決するために鋭意検討した結果、スチレンとα−メチルスチレンの共重合体を含む耐熱樹脂組成物をシート状に加工して使用することにより、上記目的を達成することができるという知見を得た。発明者は、更に検討を加えることにより本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明は以下のディスプレイ用透明保護シート、透明導電シート及びタッチパネルを提供する。
【0018】
(I) ディスプレイ用透明保護シート
(I-1)スチレンとα−メチルスチレンとの共重合体を含む透明な樹脂組成物シートの少なくとも片面にハードコート層を有するディスプレイ用透明保護シート。
(I-2)前記樹脂組成物シートの少なくとも片面に反射防止処理、防眩処理及び指紋防止処理からなる群から選択される少なくとも一種が施されている、(I-1)に記載のディスプレイ用透明保護シート。
(I-3)前記共重合体がリビング重合法によって得られるものであり、且つ前記共重合体中のα−メチルスチレンの含有量が30〜60重量%である、(I-1)又は(I-2)に記載のディスプレイ用透明保護シート。
(I-4) 前記樹脂組成物のビカット軟化温度(ISO306)が110℃以上である、(I-1)〜(I-3)のいずれかに記載のディスプレイ用透明保護シート。
(I-5) 曲げ弾性率(ISO178)が2.8GBa以上である、(I-1)〜(I-4)のいずれかに記載のディスプレイ用透明保護シート。
(I-6) 前記樹脂組成物シートの少なくとも片面にメタクリル酸エステル共重合体樹脂組成物層を有し、その面上に前記ハードコート層を有する、(I-1)〜(I-5)のいずれかに記載のディスプレイ用透明保護シート。
(I-7) 片面にハードコート処理が施された二軸延伸ポリエステルフィルムが、非ハードコート処理面を介し、前記樹脂組成物シートに積層されている、(I-1)〜(I-5)のいずれかに記載のディスプレイ用透明保護シート。
【0019】
(II) 透明導電シート
(II-1) (I-1)〜(I-7)のいずれかに記載の透明保護シートの少なくとも片面に透明導電膜が形成された透明導電シート。
(II-2) 前記透明導電膜がITO(インジウム・スズ・オキサイド)膜である、(II-1)に記載の透明導電シート。
【0020】
(III) タッチパネル
(II-1)又は(II-2)に記載の透明導電シートを備えたタッチパネル。
【発明の効果】
【0021】
本発明のディスプレイ用透明保護シート及び透明導電シートは、加工工程で求められる耐熱特性を十分満足するとともに、実用上十分な剛性を有し、しかも、ガラスシートに比べて軽量且つ割れにくく、切削加工特性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】投影静電容量方式タッチパネルの一例を示す模式図である。
【図2】タッチパネルの一例の断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0024】
ディスプレイ用透明保護シート
本発明のディスプレイ用透明保護シートは、スチレンとα−メチルスチレンとの共重合体を含む透明な樹脂組成物シートの少なくとも片面にハードコート層を有することを特徴とする。
【0025】
本発明のディスプレイ用透明保護シートは、剛性及び耐熱性に優れ、ディスプレイパネルの加工工程や製品段階での問題を解消することができる。
【0026】
本発明におけるディスプレイとは、いわゆるフラットパネルディスプレイを意味し、例えば、TN方式・VA方式・IPS方式などの各種の液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)パネルなどを挙げることができる。
【0027】
本発明におけるスチレンとα−メチルスチレンとの共重合体を含む透明な樹脂組成物としては、耐熱性が高く、透明性に優れ、吸水性が低く、しかも曲げ弾性率の高い合成樹脂組成物であれば特に限定されない。本発明の樹脂組成物としては、その耐熱性の指標としてビカット軟化温度がIS0 306法による測定値として110℃以上、好ましくは115℃以上のものが好適である。ビカット軟化温度が110℃以上であると、ディスプレイ用ウインドウ又はディスプレイ用タッチパネルの加工工程で加熱操作が行われたときに変形が起こる危険性がなく、更にモバイル機器などにおいては、使用環境温度が高いときに変形をおこす危険性もない。
【0028】
本発明の透明保護シートはその弾性率が高くなるほどガラスシートの特性に近づくため好ましく、その曲げ弾性率としてはISO 178法による測定値として2.8GPa以上、特に3.0GPa以上であることが望ましい。本発明の透明保護シートの透明性は高い方が好ましく、少なくともその全光線透過率がISO 13468-1法による測定値として85%以上、特に88%以上であることが望ましい。また、本発明の透明保護シートの吸水性については、できるだけ低いことが望ましく、ASTM D-570の試験方法による測定値が0.2%以下、特に0.1%以下であることが望ましい。
【0029】
本発明におけるスチレンとα−メチルスチレンとの共重合体を含む透明な樹脂組成物としては、これらに限定されるものではないが、例えば、スチレンとα−メチルスチレンとを共重合することにより得られる共重合体、スチレンとα−メチルスチレンとを共重合することにより得られる共重合体をポリスチレンと混合した組成物、スチレンとα−メチルスチレンとを共重合することにより得られる共重合体を耐衝撃性ポリスチレン、例えば旭化成ケミカル(株)が製造しているタフプレン、アサプレンや、電気化学工業(株)が製造しているクリアレンなどのスチレン・ブタジエン・ブロック共重合体、と混合した組成物などを挙げることができる。本発明の樹脂組成物に使用するスチレンとα−メチルスチレンとの共重合体としては、スチレン及びα−メチルスチレンと共重合可能なモノマーを共重合した多元共重合体であっても良く、そのような多元共重合体としては、例えば、メタクリル酸、無水マレイン酸などとの共重合体を挙げることができる。
【0030】
スチレンとα−メチルスチレンとの共重合をラジカル溶液共重合法で行うと、高分子量化が困難なため、十分な機械的物性を得ることが難しい、α−メチルスチレンの共重合体中への含有量に限界があり目的の耐熱性が得られない、熱安定性が悪い、黄色に着色するなどの問題があり、工業的に利用されることはまれであった。また、ブチルリチウムなどの開始剤の存在下、リビングアニオン重合により製造されることも提案されているが(特公平6-10219号公報参照)、黄色化や熱安定性が悪い等の問題があり工業的には利用されていなかった。これら着色の問題、溶融時の熱安定性の問題などを解決するための方法として、特定の重合方法によりスチレンとα−メチルスチレンとを共重合させることによって、特定の性能因子が所定の範囲を満足することで、着色の問題、溶融時の熱安定性の問題などが解決されたスチレン系共重合体及びそれらを混合した組成物が提案されている(特許第4306682号公報、特開2006-306901号公報、特開2006-306902号公報参照)。
【0031】
本発明における機械的物性、溶融時の熱安定性や黄色着色などの点で優れたスチレンとα−メチルスチレンとの共重合体を含む透明な樹脂組成物は、これら公知の製造方法により作製することができる。
【0032】
本発明におけるスチレンとα−メチルスチレンとの共重合体としては、リビング重合法によって得られるものが、その無色透明性、熱安定性などの点で好適である。リビング重合法としては、リビングアニオン重合、リビングラジカル重合、リビングカチオン重合が挙げられるが、いずれも使用することができる。中でもリビングアニオン重合法が好ましいが、極性基を含有する単量体を共重合する場合は、リビングラジカル重合法が望ましい。
【0033】
スチレンとα−メチルスチレンとの共重合体中のα−メチルスチレン含有率は適宜選択することができるが、加工特性と耐熱性の両方を満足する含有率としては20〜60重量%が望ましい。更に耐熱性を十分向上させるためのα−メチルスチレン含有率としては30〜60重量%が好適である。
【0034】
すなわち、耐熱性や加工特性のバランスから、α−メチルスチレンの含有量が30〜60重量%であるスチレンとα−メチルスチレンとの共重合体を含む樹脂組成物が特に好適に使用される。
【0035】
本発明におけるスチレンとα−メチルスチレンとの共重合体を含む透明な樹脂組成物には、必要に応じて、その他の添加剤を配合することが出来る。添加剤の種類は特に限定されるものではなく、通常の熱可塑性樹脂に用いられるいずれの添加剤も用いることができる。具体的には、紫外線吸収剤、選択波長吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、各種染料、蛍光増白剤、滑剤、難燃剤等が挙げられる。これらの添加剤は、単独又は2種類以上を併用して使用することが出来、添加量も適宜設定することが出来る。
【0036】
本発明におけるスチレンとα−メチルスチレンとの共重合体を含む透明な樹脂組成物をシート状に加工する方法は限定されるものではなく、射出成形加工法、プレス法、溶剤キャスト法、押出加工法等を挙げることができる。連続的に安定した品質のシートに加工できることを考慮すると、押出加工法が好ましい。
【0037】
押出加工法とは、樹脂組成物を押出機で加熱溶融押出し、シート状に拡幅するダイによりシート状に形状を整え、更にカレンダー・ロール等を介してシート状に成形する方法である。
【0038】
押出成形時の温度条件としては、押出機の温度を150℃〜300℃の範囲に設定することが好ましく、180℃〜280℃の範囲であることが更に好ましい。シートダイの温度は200℃〜300℃の範囲に設定することが好ましく、220℃〜280℃の範囲であることが更に好ましい。また、通常、3本〜6本用いられるカレンダー・ロールの温度は50℃〜180℃の範囲に設定することが好ましく、60℃〜160℃の範囲であることが更に好ましい。
【0039】
本発明の樹脂組成物シートの厚さは特に限定されるものではなく、ディスプレイの製品仕様の求めに応じた最適の厚さを選択することができる。そして、押出加工法におけるシートの板厚調整は、上記、押出成形時にカレンダー・ロールの間隙を調整し、引き取り速度を調整することにより自由に設定することが可能である。また、カレンダー・ロールの表面に微細な凹凸を設けることで、樹脂組成物シートの表面に微細な凹凸形状を転写することも出来、樹脂組成物の種類に関係なく微細マット状のシートを得ることも出来る。
【0040】
本発明の透明保護シートは、樹脂組成物シートの少なくとも片面に反射防止処理、防眩処理及び指紋防止処理からなる群から選択される少なくとも一種が施されていても良い。本発明の透明保護シートの表面にハードコート処理、反射防止処理、防眩処理、及び指紋防止処理のいずれか一つ以上を施すことにより、耐傷つき性、反射によるギラツキ性、反射による眩しさ、指で触った時に起こる指紋付着性などを防止することができ、より機能の向上した透明保護シートとすることができる。また、樹脂組成物シートにハードコート処理を施した後、導電コートを行うことで、より耐久性の向上した透明導電シートを得ることができる。
【0041】
本発明における樹脂組成物シートの少なくとも片面にハードコート処理、反射防止処理、防眩処理、又は指紋防止処理を施す方法としては、透明保護シートの表面に直接コーティングを施す方法、予め片面にハードコート処理、反射防止処理、防眩処理、又は指紋防止処理が施された透明プラスチックスフィルムを透明保護シートの少なくとも片面に積層する方法を挙げることができる。
【0042】
本発明における樹脂組成物シートの少なくとも片面にハードコート処理、反射防止処理、防眩処理、又は指紋防止処理を直接コーティングする方法には、透明保護シートの表面にメタクリル酸エステル共重合体樹脂組成物層を予め積層した後、そのメタクリル酸エステル共重合体樹脂組成物層表面にコーティングを施す方法を含めることができる。このような目的に好適なメタクリル酸エステル共重合体樹脂組成物としては、メチルメタクリレートと共重合可能な1種類以上のモノマーが共重合された樹脂を挙げることができる。メチルメタクリレートと共重合可能なモノマーの例として、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、スチレンなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。また、共重合されたメタクリル酸エステル共重合体樹脂組成物に、グラフト重合されたゴム粒子を含有させることにより、本発明における樹脂組成物シートの割れやすさ、割れたときの破片の飛散しやすさを改善することも可能である。このようにして本発明の樹脂組成物シートにメタクリル酸エステル共重合体樹脂組成物を積層することにより、表面の硬さを向上することが可能となるとともに、その表面に施すコーティング層との密着性などの特性を改善することができる。
【0043】
本発明の樹脂組成物シートにメタクリル酸エステル共重合体樹脂組成物層を積層する方法としては、共押出によりシートを同時に積層する方法でも良いし、それぞれの層を作製しておいて、熱プレス等により積層する方法でも良い。
【0044】
上述のとおり、本発明の樹脂組成物シートにメタクリル酸エステル共重合体樹脂組成物を積層することにより、表面の硬さを向上することが可能となるとともに、その表面に施すコーティング層との密着性などの特性を改善することができるが、スチレンとα−メチルスチレンとの共重合体を含む透明な樹脂組成物シート上に直接積層されたメタクリル酸エステル共重合体樹脂組成物の表面に当該メタクリル酸エステル共重合体樹脂組成物よりもメタクリル酸エステル含有量の高いメタクリル酸エステル共重合体樹脂組成物を積層することにより、さらに表面の硬さを向上させ、その表面に施すコーティング層との密着性などの特性を改善させることができる。
【0045】
メタクリル酸エステル共重合体樹脂組成物層の厚さは、特に限定されることはないが、好適な厚さとしては、1〜150μm、より好ましくは5〜80μmが挙げられる。この範囲の厚さであれば、本発明における樹脂組成物シートが有する特性が維持され、均一な厚さに制御することも可能である。ここで、メタクリル酸エステル共重合体樹脂組成物層の厚さは、メタクリル酸エステル共重合体樹脂組成物層が2層ある場合は、その1層についての厚さを意味する。
【0046】
予め片面にハードコート処理、反射防止処理、防眩処理、及び指紋防止処理のいずれか一つ以上が施された透明プラスチックスフィルムを透明保護シートの少なくとも片面に積層する方法としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの二軸延伸されたポリエステルフィルム、ポリカーボネート系樹脂よりなるフィルム、TACなどのセルロース系フィルム、メタクリル樹脂系フィルムなどの透明なフィルムの片面にハードコート等の処理を行った後、コートされていない面を本発明の透明保護シートに透明な接着剤、透明な粘着剤を介して積層する方法を例として挙げることができる。このような目的に使用される透明なフィルムの厚さは特に限定されるものではないが、25〜500μmの厚さが望ましい。この範囲の厚さであれば、コーティング処理や積層するときの作業性に優れる。ここで、当該フィルムの厚さは、当該フィルムが2層ある場合は、その1層についての厚さを意味する。
【0047】
本発明の透明保護シートの少なくとも片面にハードコート処理、反射防止処理、防眩処理、及び指紋防止処理を施す方法は、耐傷つき性、反射によるギラツキ性、反射による眩しさ、指で触った時に起こる指紋付着性などを防止することができる方法であれば、何れの方法であっても良い。
【0048】
直接、樹脂組成物シートの少なくとも片面に、又は予め透明プラスチックスフィルムの少なくとも片面に、ハードコート処理を施す方法としては、メラミン樹脂系、ウレタン樹脂系、アルキッド樹脂系、フッ素系、多官能アクリレート系、オルガノシリコーン系などのいわゆる有機系の溶液をコーティングし、熱又は活性エネルギー線により硬化させる方法、シリカと多官能アクリレートのハイブリッドよりなる、いわゆる有機・無機ハイブリッドタイプ溶液を塗装し、熱又は活性エネルギー線により硬化させる方法などいずれも使用できる。
【0049】
コート層を硬化させる方法としては、上述の通り熱又は活性エネルギー線により硬化させる方法を適用することができるが、硬化時間を短縮するためには、活性エネルギー線により硬化させる方法が好都合である。
【0050】
活性エネルギー線により硬化させる樹脂の例としては、これに限定されるものではないが、例えば、活性エネルギー線硬化型アクリル樹脂が挙げられる。活性エネルギー線硬化型アクリル樹脂は、モノマー、オリゴマー、光重合開始剤、光増感剤、その他成分からなる。上記アクリル樹脂に使用されるモノマーの例としては、1,4-ブタンジオールジア(メタ)クリレート、1,4-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレートなどの2官能(メタ)アクリレート類、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの3官能(メタ)アクリレート類、及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートなどの4官能以上の(メタ)アクリレート類を挙げることができる。
【0051】
上記アクリル樹脂に使用されるオリゴマーの例としては、ポリエステルアクリレート類、エポキシアクリレート類、ウレタンアクリレート類などを挙げることができる。
【0052】
また、ポリエステルアクリレート類のポリエステル部分の例としては、フタル酸やアジピン酸等の二塩基酸とグリコールの縮合物、カプロラクトンの開環重合によって得られたポリオールにアクリル酸を反応させたものなどを挙げることができる。エポキシアクリレート類の例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型のものなどさまざまな分子量のものを挙げることができる。ウレタンアクリレート類に使用されるヒドロキシアクリレートとしては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどを挙げることができる。また、ウレタンアクリレート類に使用されるイソシアネートとしては、脂肪族や脂環族ジイソシアネート、それらの3量体であるイソシアヌレート環を有するポリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0053】
なお、上記において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタアクリレートの両者を意味する。
【0054】
上記の活性エネルギー線硬化型樹脂は電子線を照射すれば十分に硬化するが、紫外線を照射して硬化させる場合には、光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、ミヒラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、ジエチルオキサイド、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピル−N,N−ジメチルアミノベンゾエート等、光増感剤として、n−ブチルアミン、トリエチリルアミン、ポリ−n−ブチルホソフィン等を単独又は混合物として用いることが好ましい。光重合開始剤や光増感剤の添加量は、一般に、活性エネルギー線硬硬化型樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部程度である。
【0055】
ハードコート層を形成させるための塗料組成物には、上記以外のシラン化合物、溶媒、硬化触媒、濡れ性改良剤、可塑剤、消泡剤、増粘剤等の無機、有機系の各種添加剤を必要に応じて添加することができる。本発明の透明保護シート表面に、帯電防止性を付与したり、指紋付着防止又は付着を目立ちにくくさせるなどの表面の傷つきを防止すること以外の機能を持たせるため、ハードコート層の組成にそれら機能を付与するために必要な添加剤などを加えることができる。
【0056】
本発明の樹脂組成物シートの表面にハードコート処理などの処理を施す前に、シート表面にコロナ処理、紫外線照射処理、常圧プラズマ処理などを行うことにより、密着性を向上させたり、適切なプライマーをコートした後に、ハードコート処理などの処理を施すことは有効である。
【0057】
本発明のハードコート層の厚さは薄すぎると十分な硬さが出にくくなり、厚すぎると樹脂組成物シートと被膜との弾性率や熱膨張係数などの特性の差により、クラック等が発生し易くなるため、適切に選択する必要がある。有機系架橋樹脂や有機・無機ハイブリッドタイプのハードコート層の厚さは、1〜10μm、特に2〜8μmが望ましい。この範囲の厚さであれば、十分な硬さが得られる上に、クラック等も発生し難くなる。ここで、ハードコートの厚さは、ハードコート層が2層ある場合は、その1層についての厚さを意味する。
【0058】
透明導電シート
本発明の透明導電シートは、上記透明保護シートの表面に透明導電膜が形成されていることを特徴とする。上記透明保護シートの表面に透明導電膜を形成させる方法としては、上記透明保護シートの表面に直接透明導電膜を形成させる方法でも良く、又は予め透明導電膜が形成されたプラスチックスフィルムを上記透明保護シートの表面に積層することにより透明導電膜を形成させる方法でも良い。
【0059】
予め透明導電膜が形成されたプラスチックフィルムのフィルム基材としては、透明なフィルムで透明導電膜を形成することができる基材であれば良く、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリアミド、これらの混合物又は積層物などを挙げることができる。また、透明導電膜を形成させる前に、表面硬さの改良、ニュートンリングの防止、帯電防止性の付与などを目的として、上記フィルムにコーティングを施しておくことは有効である。
【0060】
予め透明導電膜が形成されたフィルムを上記透明保護シートの表面に積層する方法としては、常温又は加熱、紫外線若しくは可視光線により硬化する接着剤を使用して積層する方法を用いても良いし、透明な粘着テープにより張り合わせても良い。
【0061】
透明導電膜の成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、スプレー法などが知られており、必要とする膜厚に応じて、これらの方法を適宜用いることができる。
【0062】
スパッタリング法の場合、例えば、酸化物ターゲットを用いた通常のスパッタリング法、金属ターゲットを用いた反応性スパッタリング法等が用いられる。この時、反応性ガスとして、酸素、窒素等を導入したり、オゾン添加、プラズマ照射、イオンアシスト等の手段を併用したりしても良い。また、必要により、基板に直流、交流、高周波などのバイアスを印加しても良い。透明導電膜に使用する透明導電性の金属酸化物としては、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、インジウム−スズ複合酸化物、スズ−アンチモン複合酸化物、亜鉛−アルミニウム複合酸化物、インジウム−亜鉛複合酸化物などが挙げられる。これらのうち、環境安定性や回路加工性の観点から、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)が好適である。
【0063】
また、本発明における透明導電膜を形成する方法として、透明導電性被膜を形成することができる各種の導電性高分子を含むコーティング剤を塗布し、熱又は紫外線などの電離放射線を照射することにより硬化させることにより形成させる方法なども適用できる。導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール等が知られており、これらの導電性高分子を用いることができる。
【0064】
透明導電膜の厚さとしては、特に限定されるものではないが、透明導電性の金属酸化物を使用する場合、通常50Å〜2000Å、好ましくは70Å〜1000Åである。この範囲であれば導電性及び透明性の両方に優れる。
【0065】
本発明の透明導電シートの厚さは特に限定されるものではなく、ディスプレイの製品仕様の求めに応じた最適の厚さを選択することができる。
【0066】
タッチパネル
本発明の透明保護シート及び透明導電シートは、ディスプレイパネル面板、タッチパネルなどの透明電極として好適に用いることができる。具体的には、本発明の透明保護シートをディスプレイ用ウインドウシートとして、本発明の透明導電シートを抵抗膜方式や静電容量方式のタッチパネルの電極基板として用いることができ、このタッチパネルを液晶ディスプレイの前面に配置することでタッチパネル機能を有する表示装置が得られる。
【0067】
また、図1に、本発明の透明導電シートを用いた一般的な投影静電容量方式のタッチパネルの模式図を示す。図1に示すようなマトリクス状の導電パターンを用いた静電容量方式のタッチパネルとすることで、上の導電パターンは縦に接続されているので縦位置を検出し、下の導電パターンは横に接続されているので横位置を検出して、交点を押された位置として認識できる。
【0068】
図2は、本発明の透明保護シート及び透明導電シートを用いた一般的な静電容量式タッチパネルの断面を示す模式図である。図中、3は透明保護シートによるウインドウシートを、4は光学粘着層を、1は透明導電シートを、5は液晶表示装置をそれぞれ示す。駆動時にはユーザーがウインドウシート上の任意の位置に指を接触させると、透明導電シートを介して、端子位置から接触位置までの距離が検出され、接触位置が検知される仕組みとなる。これにより、パネル上の接触部分の座標を認識し、適切なインターフェース機能が図られるようになっている。
【実施例】
【0069】
以下、実施例をあげて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は実施例により制約を受けるものではない。
【0070】
[分析及び物性測定方法]
(1) メルトフローレート
ISO 1133に準拠して、230℃、3.8 kgの条件で測定した。
【0071】
(2) ビカット軟化温度
ISO 306に準拠して、ビカット軟化温度を測定した。
【0072】
(3) スチレン系共重合体中のα−メチルスチレンの組成(重量%)
BRUKER社製のNMR (DPX-400)を使用して、スチレン系共重合体の1H-NMRを測定し、メチル、メチレン、メチンのピーク面積比から計算で求めた。
【0073】
(4) 吸水率
ASTM D-570に準拠して、23℃の水中、24時間で測定した。
【0074】
(5) 全光線透過率
ISO 13468-1に準拠して、全光線透過率を測定した。
【0075】
(6) 曲げ弾性率
ISO 178に準拠して曲げ弾性率を測定した。
【0076】
(7) 表面抵抗率
低抵抗率計(三菱化学製 ロレスターGP MCP-600)を用い、ASPプローブを使用して4端子法にて測定した。
【0077】
(8) アニール及び外観観察
試験片を120℃の熱風循環炉にて、60分間加熱し、徐冷後に取り出した。試験片を十分に冷却した後、試験片の変形及び表面の異常を肉眼にて観察した。
【0078】
実施例1
押出機(田辺プラスチックス製単軸押出機、押出機スクリュウ径 φ40 mm L/D=32)と単層シートダイを用い、押出機にスチレン−αメチルスチレン共重合体樹脂(ビカット軟化点;129℃、メルトフローレート;1.1、スチレンとαメチルスチレンとの比率;50/50)を投入し、シリンダー温度;200℃、ダイ温度;250℃にて、厚さ0.8 mmの透明な耐熱樹脂シートを作製した。
【0079】
多官能アクリル樹脂からなる紫外線硬化型ハードコート塗料(日本合成化学工業(株) UV-1700B 100 g)、シリカ(日産化学(株) シリカゾルIPA-ST 150 g)、開始剤(BASF社製 イルガキュア184 4 g)、及び溶剤(PGM 150 g)を溶解・混合し架橋樹脂塗料を調製した。この架橋樹脂塗料をフローコート法によりこの透明な耐熱樹脂のシートの両面に塗装し、紫外線により硬化させ、架橋樹脂層約4μmを形成させ、ハードコート処理された透明保護シートを得た。
【0080】
比較例1
押出機(田辺プラスチックス製の単軸押出機、押出機スクリュウ径;40 mm、L/D=32)と単層シートダイを用い、押出機にポリカーボネート樹脂(製造元:住友ダウ株式会社、品種:カリバー301-10)を投入し、シリンダー温度280℃、ダイ温度280℃にて、厚さ0.8 mmのポリカーボネートシートを作製した。
【0081】
多官能アクリル樹脂からなる紫外線硬化型ハードコート塗料(日本合成化学工業(株) UV-1700B 100 g)、シリカ(日産化学(株) シリカゾルIPA-ST 150 g)、開始剤(BASF社製 イルガキュア184 4 g)、及び溶剤(PGM 150 g)を溶解・混合し架橋樹脂塗料を調製した。この架橋樹脂塗料をフローコート法により透明ポリカーボネートシートの両面に塗装し、紫外線により硬化させ、架橋樹脂層約4μmを形成させ、ハードコート処理されたポリカーボネートシートを得た。
【0082】
比較例2
押出機(田辺プラスチックス製の単軸押出機、押出機スクリュウ径;40 mm、L/D=32)と単層シートダイを用い、押出機にメタクリル樹脂(製造元:三菱レイヨン株式会社、品種:アクリペットVH)を投入し、シリンダー温度250℃、ダイ温度260℃にて、厚さ0.8 mmのメタクリル樹脂シートを作製した。
【0083】
多官能アクリル樹脂からなる紫外線硬化型ハードコート塗料(日本合成化学工業(株) UV-1700B 100 g)、シリカ(日産化学(株) シリカゾルIPA-ST 150 g)、開始剤(BASF社製 イルガキュア184 4 g)、及び溶剤(PGM 150 g)を溶解・混合し架橋樹脂塗料を調製した。この架橋樹脂塗料をフローコート法により透明メタクリル樹脂シートの両面に塗装し、紫外線により硬化させ、架橋樹脂層約4μmを形成させ、ハードコート処理されたメタクリル樹脂シートを得た。
【0084】
実施例1、比較例1及び2で得られた合成樹脂シートについて、吸水率、全光線透過率、及び曲げ弾性率について試験を行い、得られた結果を表1に示した。
【0085】
【表1】

【0086】
表1に示した通り、実施例1の透明保護シートは比較例1のポリカーボネート基材のシートに比べて、50%以上も曲げ弾性率が向上し、撓み試験での変形が極めて小さく、ディスプレイ用透明シートとしての特性に優れている。また、実施例1の透明保護シートは比較例2のメタクリル樹脂基材のシートに比べて、熱変形温度が高く、吸水性も低いため、寸法安定性に優れ、ディスプレイ用透明シートとしての特性に優れる。
【0087】
実施例2
実施例1で得られた、透明保護シートにDCマグネトロン・スパッタ法によって真空圧力4.0×10-5 Torrの真空圧のもとで、150〜200Åの物理的膜厚を有するITO薄膜を成膜した。さらに、アニーリングのために、120℃で60分加熱した後、徐冷し、透明導電シートを得た。
【0088】
比較例3
比較例1で得られた、ハードコート処理されたポリカーボネートシートにDCマグネトロン・スパッタ法によって真空圧力4.0×10-5 Torrの真空圧のもとで、150〜200Åの物理的膜厚を有するITO薄膜を成膜した。さらに、アニーリングのために、120℃で60分加熱した後、徐冷し、ポリカーボネート導電シートを得た。
【0089】
比較例4
比較例2で得られた、ハードコート処理されたメタクリル樹脂シートにDCマグネトロン・スパッタ法によって真空圧力4.0×10-5 Torrの真空圧のもとで、150〜200Åの物理的膜厚を有するITO薄膜を成膜した。さらに、アニーリングのために、120℃で60分加熱した後、徐冷し、メタクリル樹脂導電シートを得た。
【0090】
実施例2、比較例3及び4で得られた透明導電シートについて、表面抵抗率及び外観観察の試験を行い、得られた結果を表2に示した。
【0091】
【表2】

【0092】
表2に示した通り、実施例2の透明導電シートは比較例3のポリカーボネート基材の導電シートと同様に透明導電膜を形成することができる。しかもポリカーボネートシートと対比して、曲げ弾性率が飛躍的に向上し、タッチパネルの下部基板として非常に優れたサポート性能を有することから、タッチパネル基材用シートとして好適である。
【0093】
また、比較例4のメタクリル樹脂基材の導電シートでは、アニーリングの過程でシートがアニールにより反り変形が発生するとともに、表面に凹凸が生じるため、導電シートとして使用することができない。それに対して、実施例2の透明導電シートは高い曲げ弾性率を有しつつ透明導電シートとして機能し、タッチパネルの下部基板として非常に優れたサポート性能を有することから、タッチパネル基材用シートとして好適である。
【0094】
(タッチパネル)
実施例1の透明保護シートをディスプレイ用ウインドウシートとして、実施例2の透明導電シートを静電容量式のタッチパネル基板として使用することにより、図2に示す構成のタッチパネルを作ることができる。
【符号の説明】
【0095】
1 透明導電シート
2 透明導電膜
3 ウインドウシート
4 光学粘着層
5 液晶表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレンとα−メチルスチレンとの共重合体を含む透明な樹脂組成物シートの少なくとも片面にハードコート層を有するディスプレイ用透明保護シート。
【請求項2】
前記樹脂組成物シートの少なくとも片面に反射防止処理、防眩処理及び指紋防止処理からなる群から選択される少なくとも一種が施されている、請求項1に記載のディスプレイ用透明保護シート。
【請求項3】
前記共重合体がリビング重合法によって得られるものであり、且つ前記共重合体中のα−メチルスチレンの含有量が30〜60重量%である、請求項1又は2に記載のディスプレイ用透明保護シート。
【請求項4】
前記樹脂組成物シートの少なくとも片面にメタクリル酸エステル共重合体樹脂組成物層を有し、その面上に前記ハードコート層を有する、請求項1〜3のいずれかに記載のディスプレイ用透明保護シート。
【請求項5】
片面にハードコート処理が施された二軸延伸ポリエステルフィルムが、非ハードコート処理面を介し、前記樹脂組成物シートに積層されている、請求項1〜3のいずれかに記載のディスプレイ用透明保護シート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の透明保護シートの少なくとも片面に透明導電膜が形成された透明導電シート。
【請求項7】
前記透明導電膜がITO(インジウム・スズ・オキサイド)膜である、請求項6に記載の透明導電シート。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の透明導電シートを備えたタッチパネル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−230666(P2012−230666A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−38422(P2012−38422)
【出願日】平成24年2月24日(2012.2.24)
【出願人】(597051757)名阪真空工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】