説明

ディスプレイ用電磁波シールド材ロール体

【課題】高い透明性を有し、電磁波シールド性能に優れ、電磁波シールド性能の部分的なばらつきが少なく、生産性が高い、ロール状態で供給されるディスプレイ用電磁波シールド材ロール体を提供することにある。
【解決手段】金属メッシュパターンが透明基材の長手方向に一定の間隔で設けられ、かつロールの状態で供給されるディスプレイ用電磁波シールド材ロール体であって、前記金属メッシュパターンは、導電性メッシュパターン及びその上に少なくとも電解メッキしたメッキ層を有し、前記金属メッシュパターンの周囲には金属メッシュまたは金属薄膜からなるシールド枠が配置され、前記シールド枠の幅方向の両外側に接し、前記シールド枠の長手方向の少なくとも前後一方に、前記シールド枠から突出した電解メッキ用の給電層が設けられていることを特徴とするディスプレイ用電磁波シールド材ロール体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ用電磁波シールド材ロール体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やパソコン、TV等に用いられるディスプレイ装置等に代表されるような電子機器の使用機会が増加しているが、これらの電子機器からは一般に電磁波が放出され、それにより、電子、電気機器の誤動作、障害あるいは人体に対しても害を与える可能性がある等、いわゆる電磁波障害(Electro−Magnetic Interference:EMI)が生じることが知られている。それに伴い、このようなEMIを低減する必要性が高まっており、欧米を中心に電磁波放出の強さに関する規格または規制が設けられ、最近の電子機器にはこれらの基準を満たすことが求められている。特に、CRTやフラットパネルディスプレイ、あるいは窓ガラスのように視認性を必要とする機材には電磁波遮蔽性能と、透明性を両立させることが必要である。
【0003】
これらは、透明樹脂フィルム上に導電性の金属パターンを設けたものが一般的であり、その生産効率向上のために、長尺ロールの透明樹脂フィルム上に連続する金属メッシュパターンを形成し、必要なサイズに裁断して電磁波シールドパネルに供される(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0004】
導電性の金属メッシュによる電磁波シールド材の作製方法としては、下記の(1)〜(3)に示す方法が挙げられる。
(1)透明基材に金属箔を貼り合わせ、または透明基材に金属の薄膜を蒸着した後、フォトリソグラフ法により導電性金属パターンを形成するエッチング法。
(2)透明基材の上に導電性の金属ペーストをメッシュパターンに印刷した後にメッキして導電性金属パターンを形成する印刷−メッキ法。
(3)細線パターンを写真製法により現像された金属銀で形成した後、この金属銀を物理現像及び/またはメッキすることにより導電性金属パターンを形成する写真銀−メッキ法(例えば、特許文献2及び特許文献3参照)。
【0005】
上記(1)のエッチング法においては、エッチングにより細線部分となるほんのわずかな部分のみを残し、それ以外のほとんど大部分の金属を溶解除去するのは資源を節減するという観点から問題である。また、市販されている金属箔の最大規格寸法幅が約600mm以下であるから、金属箔を貼り合わせる方法ではこれ以上の寸法幅が広い電磁波シールド材は製造できない。また、金属の薄膜を蒸着する場合は、膨大な設備費が必要となることから簡単に製造を行うことができないという問題があった。
【0006】
上記(2)の印刷−メッキ法においては、メッシュパターンの線幅を30μm以下にするのが困難であり、また、透明基材とメッシュパターンの密着性が悪く剥がれやすいという問題があった。
【0007】
上記(3)の写真銀−メッキ法においては、高い電磁波シールド性が得られ、また、透明基材の寸法に制約を受けることがなく、ロールtoロールで製造でき非常に生産性が高いことから好ましい製造方法である。
【0008】
ところで、写真銀−メッキ法において、現像されたメッシュパターンの金属銀に、無電解メッキ及び/または電解メッキして細線パターンを形成する場合、無電解メッキではメッキの速度が遅いこと、さらに、無電解メッキ液の品質管理が困難でかつ製造コストが高いこと等の問題があった。
【0009】
また、電解メッキする場合は、無電解メッキに比べてメッキ速度が速いが、従来技術においては、電解メッキするのにステップ送りにて電解槽に移送して1つのメッシュパターン毎に電解メッキを間欠送りにて行うので生産性が低いという問題があった。
【0010】
また、電解メッキを連続工程で行う場合は、電解電流を供給する給電を均一に安定して行うことが技術的に困難であって、メッシュパターンの一部分にメッキ厚みのばらつきが出る「メッキむら」が生じ易く、結果としてメッシュパターンの一部分に電磁波シールド性能の部分的なばらつきが生じるという問題があった。
【0011】
これらの対策として、特許文献5では、金属メッシュパターンが透明基材の長手方向に一定の間隔を介して設けられ、前記金属メッシュパターンは、写真製法により生成された現像銀メッシュパターン及びその上に少なくとも電解メッキしたメッキ層を有し、前記金属メッシュパターンの周囲には金属メッシュまたは金属薄膜からなるシールド枠が配置され、前記シールド枠の幅方向両外側に接する一定幅の電解メッキ用給電層が前記透明基材の長手方向に連続して設けられたディスプレイ用電磁波シールド材ロール体、すなわち、連続送り、連続メッキ、給電ロールにより連続給電層に給電してディスプレイ用電磁波シールド材ロール体を得る方法が開示されている。
【0012】
この方法は、連続給電層の形成で給電ローラによる連続メッキが可能になり、生産性が向上するが、現像銀メッシュパターンは導電性のバラツキが大きいために、一定幅の連続電解メッキ導電層を用いると、隣接するメッシュパターンにメッキをする電解電流の影響を受け、かえって「メッキむら」が大きくなることが分かった。
【特許文献1】国際公開第01/051276号パンフレット
【特許文献2】特開2004−221564号公報
【特許文献3】国際公開第04/007810号パンフレット
【特許文献4】国際公開第06/088059号パンフレット
【特許文献5】特開2007−67269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は高い透明性を有し、電磁波シールド性能に優れ、電磁波シールド性能の部分的なばらつきが少なく、生産性が高い、ロール状態で供給されるディスプレイ用電磁波シールド材ロール体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
【0015】
1.長尺の透明基材の少なくとも一方の面に、ディスプレイの画面サイズの金属メッシュパターンが前記透明基材の長手方向に一定の間隔で設けられ、かつロールの状態で供給されるディスプレイ用電磁波シールド材ロール体であって、前記金属メッシュパターンは、導電性メッシュパターン及びその上に少なくとも電解メッキしたメッキ層を有し、前記金属メッシュパターンの周囲には金属メッシュまたは金属薄膜からなるシールド枠が配置され、前記シールド枠の幅方向の両外側に接し、前記シールド枠の長手方向の少なくとも前後一方に、前記シールド枠から突出した電解メッキ用の給電層が設けられていることを特徴とするディスプレイ用電磁波シールド材ロール体。
【0016】
2.長尺の透明基材の少なくとも一方の面に、ディスプレイの画面サイズの金属メッシュパターンが前記透明基材の長手方向に一定の間隔で設けられ、かつロールの状態で供給されるディスプレイ用電磁波シールド材ロール体であって、前記金属メッシュパターンは、導電性メッシュパターン及びその上に少なくとも電解メッキしたメッキ層を有し、前記金属メッシュパターンの周囲には金属メッシュまたは金属薄膜からなるシールド枠が配置され、前記シールド枠に、前記シールド枠から長手方向の少なくとも前後一方に、前記シールド枠から突出した給電層が設けられていることを特徴とするディスプレイ用電磁波シールド材ロール体。
【0017】
3.前記給電層は、金属薄膜または金属メッシュからなることを特徴とする前記1または2に記載のディスプレイ用電磁波シールド材ロール体。
【0018】
4.前記給電層の長さは、電解メッキ時に電解メッキ装置の給電ローラと前記ディスプレイ用電磁波シールド材ロール体とが接している面の最下部からメッキ液面までの距離より長いことを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載のディスプレイ用電磁波シールド材ロール体。
【0019】
5.前記導電性メッシュパターン、前記シールド枠及び前記給電層が写真製法により生成された現像銀であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載のディスプレイ用電磁波シールド材ロール体。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、高い透明性を有し、電磁波シールド性能に優れ、電磁波シールド性能の部分的なばらつきが少なく、生産性が高い、ロール状態で供給されるディスプレイ用電磁波シールド材ロール体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、長尺の透明基材の少なくとも一方の面に、ディスプレイの画面サイズの金属メッシュパターンが前記透明基材の長手方向に一定の間隔で設けられ、かつロールの状態で供給されるディスプレイ用電磁波シールド材ロール体であって、前記金属メッシュパターンは、導電性メッシュパターン及びその上に少なくとも電解メッキしたメッキ層を有し、前記金属メッシュパターンの周囲には金属メッシュまたは金属薄膜からなるシールド枠が配置され、前記シールド枠の幅方向の両外側に接し、前記シールド枠の長手方向の少なくとも前後一方に、前記シールド枠から突出した電解メッキ用の給電層が設けられているディスプレイ用電磁波シールド材ロール体により、高い透明性を有し、電磁波シールド性能に優れ、電磁波シールド性能の部分的なばらつきが少なく、生産性が高い、ロール状態で供給されるディスプレイ用電磁波シールド材ロール体が得られることを見出し、本発明に至った次第である。
【0022】
また、長尺の透明基材の少なくとも一方の面に、ディスプレイの画面サイズの金属メッシュパターンが前記透明基材の長手方向に一定の間隔で設けられ、かつロールの状態で供給されるディスプレイ用電磁波シールド材ロール体であって、前記金属メッシュパターンは、導電性メッシュパターン及びその上に少なくとも電解メッキしたメッキ層を有し、前記金属メッシュパターンの周囲には金属メッシュまたは金属薄膜からなるシールド枠が配置され、前記シールド枠に、前記シールド枠から長手方向の少なくとも前後一方に、前記シールド枠から突出した給電層が設けられているディスプレイ用電磁波シールド材ロール体により、同様な特徴を有するディスプレイ用電磁波シールド材ロール体が得られることを見出した。
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0024】
(給電層)
本発明では、透明基材の長手方向にシールド枠から突出した電解メッキ用の給電層がシールド枠の幅方向の両外側に接し、不連続で設けられていることが特徴である。ディスプレイ用電磁波シールド材ロール体は、金属メッシュ部分の導電性は比較的低く、長手方向の位置によって導電性のバラツキが大きいため、一定幅の連続した給電層を用いると、隣接するメッシュパターンにメッキする電解電流の影響を受け、メッキムラが大きくなる。本発明ではシールド枠毎に独立した給電層を設けることで、隣接するメッシュパターンにメッキする電解電流の影響を受けにくくし、シールド枠の長手方向に給電層を伸ばすことで、少なくともシールド枠のメッキ液浸透時までは給電ローラによって給電され、連続メッキ処理が可能となり、高い生産性が得られる。突出の長さはメッキムラが最小となるよう実験的に決める。
【0025】
また、別の形態として、シールド枠の幅方向両外側に給電層を設けずに、シールド枠を給電層として用い、給電層として用いられるシールド枠の長手方向に突出部を設けることも可能である。
【0026】
給電層、導電性メッシュパターン及びシールド枠は、印刷法により導電ペーストでも作製できるが、写真製法により生成された現像銀が好ましい。写真製法は前述のように、高い電磁波シールド性が得られ、また、透明基材の寸法に制約を受けることがなく、ロールtoロールで製造でき非常に生産性が高い。
【0027】
以下、図面を参照して本発明を説明する。
【0028】
図1は、本発明のディスプレイ用電磁波シールド材ロール体のメッキ処理に好適に用いられる電解メッキ槽の一例を示す模式図である。図2は、本発明のディスプレイ用電磁波シールド材ロール体におけるメッシュパターン及び給電層の配置の一例を示す部分平面図で、図2(A)はシールド枠の幅方向の両外側に接し、シールド枠の長手方向の少なくとも前後一方に、シールド枠から突出した電解メッキ用の給電層が設けられているディスプレイ用電磁波シールド材ロール体におけるメッシュパターン及び給電層の配置の一例、図2(B)はシールド枠の幅方向両外側に給電層を設けずに、シールド枠を給電層として用い、給電層として用いられるシールド枠の長手方向に突出部が設けられているディスプレイ用電磁波シールド材ロール体におけるメッシュパターン及び給電層の配置の一例を示す部分平面図ある。図3は、従来のディスプレイ用電磁波シールド材におけるメッシュパターン及び給電層の配置の一例を示す部分平面図である。
【0029】
図1に示す電解メッキ装置10は、長尺のロールシート16に連続してメッキ処理を施すことができるものである。矢印はフィルム16の搬送方向を示している。電解メッキ装置10は、メッキ液15を貯留する電解槽11を備えている。電解槽11内には、一対のアノード板13が平行に配置され、アノード板13の内側には、一対のガイドローラ14がアノード板13と平行に回動可能に配置されている。ガイドローラ14は垂直方向に移動可能で、これによりフィルム16のメッキ処理時間を調整できる。
【0030】
電解槽11の上方には、ロールシート16を電解槽11に案内するとともにロールシート16に電流を供給する給電ローラ(カソード)12a、12bがそれぞれ一対回転自在に配置されている。また、電解槽11の上方には、出口側の給電ローラ12bの下方に液切りローラ17が回動可能に配置されている。
【0031】
アノード板13は、電線(図示せず)を介して電源装置(図示せず)のプラス端子に接続され、給電ローラ12a、12bは、電源装置(図示せず)のマイナス端子に接続されている。
【0032】
ロールシート16を繰り出しリール(図示せず)に巻かれた状態でセットして、ロールシート16のメッキを形成すべき側の面が給電ローラ12a、12bと接触するように、ロールシート16を搬送ローラ(図示せず)に巻き掛ける。
【0033】
アノード板13及び給電ローラ12a、12bに電圧を印加し、ロールシート16を給電ローラ12a、12bに接触させながら搬送する。ロールシート16を電解槽11に導入し、メッキ液15に浸せきしてメッキを形成する。液切りローラ17間を通過する際に、ロールシート16に付着したメッキ液15を拭い取り、電解槽11に回収する。これを複数の電解メッキ槽で繰り返し、最後に水洗した後、巻取りリール(図示せず)に巻き取る。
【0034】
ロールシート16の搬送速度は、1〜30m/分の範囲で設定される。ロールシート16の搬送速度は、好ましくは、1〜10m/分であり、より好ましくは、2〜5m/分である。電解メッキ槽の数は特に限定されないが、2〜10槽が好ましく、3〜6槽がより好ましい。印加電圧は、0.5〜100Vであることが好ましく、1〜60Vであることがより好ましい。
【0035】
給電ローラ12a、12bはフィルム全面(接触している面積のうちの実質的に電気的に接触している部分が80%以上)と接触していることが好ましい。
【0036】
上記メッキ処理によりメッキされる導電性金属部の厚さは、ディスプレイの電磁波シールド材の用途としては、薄いほどディスプレイの視野角が広がるため好ましい。さらに、導電性配線材料の用途としては、高密度化の要請から薄膜化が要求される。このような観点から、メッキされた導電性金属からなる層の厚さは、9μm未満であることが好ましく、0.1μm以上、5μm未満であることがより好ましく、0.1μm以上、3μm未満であることがさらに好ましい。
【0037】
ここで本発明では、電解メッキ槽10における電解メッキの際には、ロールシート16上において長手方向に、不連続でシールド枠から突出して設けられた電解メッキ用の給電層25(図2)を通じ、メッシュパターン22に対して給電を行う。
【0038】
従来技術においては、図3に示すロールシート30のように、長尺の透明基材31の上に一定の間隔34でディスプレイの画面サイズのメッシュパターン32及びメッシュパターン32の周囲のシールド枠33が配置され、それぞれのシールド枠33の幅方向両外側に給電層35が設けられたものが用いられている。従来技術は、移送ロールによりロールシート30をステップ送りにて移送して、ロールシート30を間欠的に電解メッキ槽10に導入し、電解メッキ槽10内で1つの画面サイズに対応するメッシュパターン32毎に電解メッキを行う、間欠方式によるものである。このため、従来技術では、各メッシュパターン32を電解メッキしている各メッキ工程の一定時間は、ロールシート30の供給及び移送が停止してしまうため、生産性が低く制限されるという問題があった。
【0039】
そこで本発明では、露光・現像済みのロールシート16を原反ロール(図示せず)から連続的に繰り出し、移送ロール(図示せず)の連続送りにて電解メッキ槽15に移送し、電解メッキを行うため、図2に示すロールシート20のように、長尺の透明基材21の少なくとも一方の面に一定の間隔24でディスプレイの画面サイズのメッシュパターン22及びメッシュパターン22の周囲には金属メッシュまたは金属薄膜からなるシールド枠23が配置され、シールド枠23の幅方向の両外側に接し、シールド枠23の長手方向の少なくとも前後一方に、シールド枠23からLbだけ突出した電解メッキ用の給電層25が設けられている。
【0040】
不連続の給電層25を設けてシールド枠23ごとに独立した電解メッキ用の給電層25を形成することで、給電ロールを用いた連続電解メッキを可能にする。シールド枠23の前後にLbだけ給電層25を伸ばすことで、少なくともシールド枠23のメッキ液浸透時までは給電ローラ12a、12bによって給電され、連続電解メッキが可能になる。給電層25の前記シールド枠から突出した長さLbは、給電ローラ12a、12bとロールシート20とが接している面の最下部からメッキ液面までの距離Laより長い。
【0041】
給電層25は、ロールシート20が電解メッキ槽10に導入された箇所の前後において陰極となる給電ローra12a、12bに接触する。これにより、電解メッキの際には、給電層25を通じて電解電流がメッシュパターン22に給電され、メッシュパターン及び/またはその上に形成された無電解メッキ層の上に、電解メッキによるメッキ層が形成される。
【0042】
原反ロール(図示せず)は、長尺の透明基材21の少なくとも一方の面に、ディスプレイの画面サイズとされたメッシュパターン22と、金属メッシュまたは金属薄膜からなるシールド枠23と、透明基材21の長手方向に一定幅の給電層25を形成したものである。また、電磁波シールド材ロール体におけるメッシュパターン22は、原反のメッシュパターン22の上に少なくとも電解メッキによりメッキ層が形成されたものである。給電層25は、金属メッシュまたは金属薄膜からなり、幅が15〜80mmであることが好ましい。
【0043】
(透明基材)
本発明において長尺の透明基材(以下、単に支持体ともいう)としては、通常の合成樹脂フィルムを用いることができる。
【0044】
例えば、セルロースエステル系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルムまたはアクリルフィルム等を用いることができる。また、これらプラスチックフィルム以外に、石英ガラス、ソーダガラス等も用いることが可能である。
【0045】
中でも、セルローストリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンを含む)、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムが好ましく用いられる。本発明においては、透明性、等方性、接着性、耐久性等の観点から、支持体としてはポリエステル系フィルムであるポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムを用いることが特に好ましい。
【0046】
本発明のディスプレイ用電磁波シールド材ロール体をディスプレイの表示画面に用いる場合には、高い透明性が要求されるため、支持体自体の透明性も高いことが望ましい。この場合における支持体であるプラスチックフィルムまたはガラス板の可視光域の平均透過率は、好ましくは85〜100%であり、より好ましくは90〜100%である。また、本発明では、色調調節剤として前記プラスチックフィルムまたはガラス板を本発明の目的を妨げない程度に着色したものを用いることもできる。可視光域の平均透過率とは、400〜700nmの可視光領域の透過率を、少なくとも5nm毎に測定して求めた可視光域の各透過率を積算し、その平均値として求めたものと定義する。測定においては、測定アパチャーを、前述のメッシュパターンより十分大きくとっておく必要があり、少なくともメッシュの格子面積より100倍以上大きな面積で測定して求める。
【0047】
本発明に用いる支持体は、長尺ロール状として連続搬送しながら生産するために、100m以上、より好ましくは500m以上、さらに好ましくは1000m以上、2000m以下である。
【0048】
本発明に用いる支持体の幅は、より大画面のディスプレイパネル用の要望から1m以上、好ましくは1.5m以上、さらに好ましくは、2m以上、5m以下である。
【0049】
本発明に用いる支持体の厚さには特に制限はないが、透過率の維持及び取り扱い性の観点から、5〜200μmであることが好ましく、30〜150μmであることがさらに好ましい。
【0050】
(メッシュ部)
電磁波を遮蔽するために形成される導電性の金属メッシュ部の線幅は、通常20μm以下であり、メッシュを目立たせなくする観点からは、18μm以下が好ましく、15μm以下がさらに好ましく、3μm以上、10μm以下が最も好ましい。3μm未満では導電性がやや不足する。
【0051】
メッシュ部の線間隔は150μm以上であることが好ましく、180μm以上がより好ましく、200μm以上が特に好ましい。また、メッシュ細線の厚さは、0.1μm以上、25μm以下が好ましく、0.2以上、20μm以下がより好ましく、0.5μm以上、15μm以下が特に好ましい。
【0052】
本発明におけるメッシュ部は、可視光透過率の観点から開口率は80%より大きいことが好ましく、85%以上がさらに好ましく、90%以上が最も好ましい。開口率とは、メッシュをなす細線のない部分が全体に占める割合であり、例えば、線幅10μm、ピッチ200μmの正方形の格子状メッシュの開口率は90%である。
【0053】
本発明においては、高い透光性と高い電磁波遮蔽性能を付与するために、格子状の細線メッシュパターンを露光により描画し、次いで現像処理等を行うことで、導電性のメッシュパターンを形成し、ディスプレイ用電磁波シールド材ロール体とすることが好ましい。
【0054】
(シールド枠)
電磁波シールド材料のシールド能は導電性部分のアースを取ることによって向上することが知られている。ディスプレイ用電磁波シールド材料ではメッシュ部分のアースを取りやすくするために、いわゆる枠縁と呼ばれるメッシュ部分に電気的に接続したベタ部分をメッシュ部分の周囲に設けることが一般的に行われている。ベタ部分の巾は2cmから15cmで、アース(グランド電位)につながる金属板と電気的に接触する際の接触面積を拡大する目的で設けられている。
【0055】
本発明においては、金属メッシュまたは金属薄膜からなるシールド枠を用いる。金属メッシュの場合は、幾何学パターンであることが好ましい。幾何学パターンとは、多角形、円、楕円、星形等の基本図形を連続的に配列したものをいう。シールド枠の導電性がメッシュ部よりも高くするためには、メッシュ部よりも開口率を小さくすること、メッシュ部よりもピッチを小さくすること、メッシュ部よりも線幅を大きくすること、メッシュ部よりも細線の厚さを大きくすること等がある。
【0056】
(メッシュの形成方法)
本発明のディスプレイ用電磁波シールド材ロール体においては、電磁波シールド機能を有する導電性メッシュの形成方法は、公知の方法すなわち、蒸着法、各種印刷法(グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷等)、エッチング法、フォトリソグラフィック法等を利用できるが、ハロゲン化銀感光材料を露光、現像処理、必要に応じて補力処理等を行って形成する銀塩写真法が好ましい。
【0057】
本発明のディスプレイ用電磁波シールド材ロール体を銀塩写真法を用いて形成する場合は、後述する感光性ハロゲン化銀及びバインダーを含有するハロゲン化銀乳剤層が支持体上に設けられるが、ハロゲン化銀乳剤層は、この他に、硬膜剤、硬調化剤、活性剤等を含有することができる。
【0058】
(感光性ハロゲン化銀)
本発明において、感光性ハロゲン化銀の含有量は、銀換算で0.05g/m2以上、3g/m2未満であることが好ましく、特に好ましくは銀換算で0.3g/m2以上、1g/m2未満である。感光性ハロゲン化銀の含有量が0.05g/m2未満の場合、電磁波遮蔽性能を十分に得ることが困難になりやすい。これは、後述する物理現像または金属メッキ処理の触媒となる現像銀核の量が不十分となり、有効な導電性メッシュを形成しにくくなるためと推定される。また、感光性ハロゲン化銀の含有量が3g/m2以上である場合、バインダーに対するハロゲン化銀の量が相対的に多くなるため、被膜が脆弱になりやすく、十分な被膜強度を維持することが困難となる。
【0059】
被膜物性を維持するためにバインダー量を増やした場合、感光性ハロゲン化銀の粒子間距離が大きくなるため、現像銀ネットワークが形成されにくくなり、有効な導電性メッシュを形成しにくくなるとともに、温度、湿度変化に対する耐久性も不十分となり本発明の効果が得られ難くなる。
【0060】
本発明において、ハロゲン化銀感光材料のバインダー量は10mg/m2以上、0.2g/m2以下の場合が、導電性と被膜物性の両立という観点から特に好ましい。バインダー量が10mg/m2未満の場合、バインダーに対するハロゲン化銀の量が相対的に多くなるため、被膜が脆弱になりやすく、十分な被膜強度を維持することが困難となる。また、バインダー量が0.1g/m2より多い場合には、感光性ハロゲン化銀粒子の粒子間距離が大きくなるため、現像銀ネットワークが形成されにくくなり、有効な導電性メッシュを形成しにくくなるとともに、温度、湿度変化に対する耐久性も不十分となり本発明の効果が得られなくなる。
【0061】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子の組成は、塩化銀、臭化銀、塩臭化銀、沃臭化銀、塩沃臭化銀、塩沃化銀等、任意のハロゲン組成を有するものであってもよいが、導電性のよい金属銀を得るためには、感度の高い微粒子が好ましく、沃臭化銀粒子が好ましく用いられる。沃素を多く含むようにすると感度も高く微粒子にすることができる。
【0062】
ハロゲン化銀粒子が現像され金属銀粒子になった後の表面比抵抗を下げ、電磁波を効率的に遮蔽するためには、現像銀粒子同士の接触面積ができるだけ大きくなる必要がある。そのためには表面積比を高めるためにハロゲン化銀粒子サイズが小さい程よいが、小さすぎる粒子は凝集して大きな塊状になりやすく、その場合接触面積は逆に少なくなってしまうので最適な粒子径が存在する。本発明において、ハロゲン化銀粒子の平均粒子サイズは、球相当径で0.01〜0.5μmが好ましく、より好ましくは0.03〜0.3μmである。なお、ハロゲン化銀粒子の球相当径とは、粒子形状が球形の同じ体積を有する粒子の直径を表す。ハロゲン化銀粒子の平均粒子サイズは、ハロゲン化銀粒子の調製時の温度、pAg、pH、銀イオン溶液とハロゲン溶液の添加速度、粒子径コントロール剤(例えば、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、ベンズトリアゾール、テトラザインデン化合物類、核酸誘導体類、チオエーテル化合物類等)を適宜組み合わせて制御することができる。
【0063】
本発明においては、塗布銀量(g/m2)を粒径(μm)で除した値が6〜25となることが好ましい。比較的粒径の小さい感光性ハロゲン化銀を多量に用いた場合に、この値が25より大きくなりやすく、この場合、フィルム断裁時のエッジ部分において、被膜からハロゲン化銀粒子の滑落等が生じやすくなる傾向にある。また、比較的粒径の大きい感光性ハロゲン化銀を少量用いた場合にこの値が6より小さくなりやすく、この場合、単位面積中の感光性ハロゲン化銀の粒子個数が少なくなるため、導電性が低下しやすい傾向となるためである。
【0064】
本発明においては、ハロゲン化銀粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、立方体状、平板状(6角平板状、3角形平板状、4角形平板状等)、8面体状、14面体状等、さまざまな形状であることができる。感度を高くするためにアスペクト比が2以上や4以上、さらに8〜16であるような平板粒子も好ましく使用することができる。粒子サイズの分布には特に限定はないが、露光によるパターン形成時に、パターンの輪郭をシャープに再現させ、高い導電性を維持しながら透明性を高めるという観点からは、狭い分布が好ましい。本発明に係るハロゲン化銀感光材料に用いられるハロゲン化銀粒子の粒径分布は、好ましくは変動係数が0.22以下、さらに好ましくは0.15以下の単分散ハロゲン化銀粒子である。ここで変動係数は、粒径分布の広さを表す係数であり、次式によって定義される。
【0065】
変動係数=S/R
(式中、Sは粒径分布の標準偏差、Rは平均粒径を表す。)
本発明で用いられるハロゲン化銀粒子は、さらに他の元素を含有していてもよい。例えば、写真乳剤において、硬調な乳剤を得るために用いられる金属イオンをドープすることも有用である。特に鉄イオン、ロジウムイオン、ルテニウムイオンやイリジウムイオン等の第8〜10族金属イオンは、金属銀像の生成の際に露光部と未露光部の差が明確に生じやすくなるため好ましく用いられる。
【0066】
これらの金属イオンは、塩や錯塩の形でハロゲン化銀乳剤に添加することができる。ロジウムイオン、イリジウムイオンに代表される遷移金属イオンは、各種の配位子を有する化合物であることもできる。そのような配位子としては、例えば、シアン化物イオンやハロゲンイオン、チオシアナートイオン、ニトロシルイオン、水、水酸化物イオン等を挙げることができる。具体的な化合物の例としては、臭化ロジウム酸カリウムやイリジウム酸カリウム等が挙げられる。
【0067】
本発明において、ハロゲン化銀に含有される前記金属イオン化合物の含有率は、ハロゲン化銀1モル当たり、10-10〜10-2モル/モルAgであることが好ましく、10-9〜10-3モル/モルAgであることがさらに好ましい。
【0068】
ハロゲン化銀粒子に上述の金属イオンを含有させるためには、該金属化合物をハロゲン化銀粒子の形成前、ハロゲン化銀粒子の形成中、ハロゲン化銀粒子の形成後等、物理熟成中の各工程における任意の場所で添加すればよい。また、添加においては、重金属化合物の溶液を粒子形成工程の全体あるいは一部にわたって連続的に行うことができる。
【0069】
本発明では、さらに感度を向上させるため、写真乳剤で行われる化学増感を施したり、分光増感を施したりすることができる。
【0070】
(バインダー)
本発明に係るハロゲン化銀感光性層(少なくとも感光性ハロゲン化銀及びバインダーからなる層)において、ハロゲン化銀粒子を均一に分散させ、かつハロゲン化銀粒子を支持体上に担持し、ハロゲン化銀感光性層と他の層、または支持体との接着性を確保する目的でバインダーを用いる。本発明に用いることができるバインダーには、特に制限がなく、非水溶性ポリマー及び水溶性ポリマーのいずれも用いることができるが、現像性向上の観点からは、水溶性ポリマーを用いることが好ましい。
【0071】
本発明に係るハロゲン化銀感光材料には、バインダーとしてゼラチンを用いることが有利であるが、必要に応じてゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子のグラフトポリマー、ゼラチン以外のタンパク質、糖誘導体、セルロース誘導体、単一あるいは共重合体のごとき合成親水性高分子物質等の親水性コロイドも用いることができる。
【0072】
本発明においては、ハロゲン化銀感光性層の銀/バインダー質量比は0.5〜20が好ましい。これは前述の、現像銀粒子同士の接触面積を大きくするためであり、より好ましくは1.0〜10、さらに好ましくは3.0〜8.0である。
【0073】
(ハロゲン化銀感光材料の層構成)
本発明のディスプレイ用電磁波シールド材ロール体の形成に用いられるハロゲン化銀感光材料の層構成については、基本的には、支持体とハロゲン化銀感光性層からなる。さらにディスプレイ用電磁波シールド材ロール体としての高機能化、加工特性、耐久性のみならず、ハロゲン化銀感光材料の製造効率、製造安定性等を考慮して、種々の層を設けることが好ましい。
【0074】
例えば、支持体とハロゲン化銀感光性層の間に非感光性中間層を設けたり、透明基材に対してハロゲン化銀感光性層とは反対側に、バッキング層を設けたり、ハロゲン化銀感光性層の上に保護層を設けたりすることが好ましい。これらの層は複数層から構成されてもよい。
【0075】
本発明においては、支持体を挟んだ両側に各々ハロゲン化銀感光性層を設け、それぞれに導電性パターンを形成することも好ましく行われる。この場合、各々の面に塗設されるハロゲン化銀乳剤は、分光増感等により、それぞれ異なる波長に感度を有することが好ましい。表裏面で異なる波長に感度を持たせることにより、各々の面に異なる導電性パターンを作成することが可能となり、例えば表裏面で各々異なる周波数の電磁波に対して選択的に遮蔽効果を有するように導電性パターンを形成することも可能となる。
【0076】
(ディスプレイ用電磁波シールド材ロール体の製造方法)
本発明のディスプレイ用電磁波シールド材ロール体の製造方法は、長尺の透明基材上に、少なくとも感光性ハロゲン化銀及びバインダーからなる層を塗布したハロゲン化銀感光材料を、パターン露光後、現像処理及びメッキを行って、連続する導電性のメッシュ部と、幾何学パターンのシールド枠とを形成するものである。
【0077】
従って、基本的には、(1)透明基材上にハロゲン化銀乳剤を塗布してハロゲン化銀感光材料を形成する工程、(2)ハロゲン化銀感光材料にパターン露光する工程、(3)露光済みハロゲン化銀感光材料を現像処理する工程、(4)現像処理済みのハロゲン化銀感光材料をメッキ処理する工程、からなるが、ハロゲン化銀乳剤を塗布する前の透明基材の前処理や下塗り工程、塗布したハロゲン化銀感光材料を乾燥したりエージングする工程、現像処理済みのハロゲン化銀感光材料をメッキ処理する前に物理現像する工程、メッキ処理後に加圧加熱等の安定化処理する工程等を設けてもよい。
【0078】
これらの各工程は、それぞれ独立してバッチ処理してもよいが、支持体の繰り出しから、各工程が連続するウェブに対して連動していることが好ましい。最後は、形成されたディスプレイ用電磁波シールド材ロール体が長尺巻として得られてもよいし、必要なサイズに裁断されてシート状にて集積されてもよい。
【0079】
(塗布工程)
塗布工程は、支持体上に前記構成層を塗布する工程である。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビヤコート法、インクジェットコート法あるいは米国特許第2,681,294号明細書に記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法等が挙げられる。また、必要に応じて、米国特許第2,761,791号、同第3,508,947号、同第2,941,898号及び同第3,526,528号明細書、原崎勇次著「コーティング工学」253頁(1973年朝倉書店発行)等に記載された2層以上の層を同時に塗布する方法も、好ましく用いることができる。
【0080】
なお、本発明においては、シールド枠をメッシュ部よりも導電性を高くするために、ハロゲン化銀乳剤塗布時にシールド枠相当領域を厚く塗布することによって、厚さが大きい額縁メッシュ部を形成することができる。
【0081】
(露光工程)
本発明では、後述する現像処理、物理現像及びメッキ処理から選ばれる少なくともいずれかを施して、導電性パターンを形成するために、ハロゲン化銀感光材料の露光を行う。露光に用いられる光源としては、例えば、紫外線、可視光線、赤外線等の光、電子線、X線等の放射線等が挙げられるが、ハロゲン化銀の特性を活用する点で、可視光線を用いることが好ましい。特に波長分布の狭い光源を利用することによって、ディスプレイ用電磁波シールド材ロール体形成を効率よくコントロールでき、安定に製造できるので好ましい。
【0082】
特に本発明では、レーザー光を用いて露光することが好ましい。種々のレーザー光の中でも、ハロゲン化銀の感光特性から、青色レーザーが好ましい。その発光波長が370〜450nm、特に415〜440nmが好ましい。
【0083】
具体的には、ヘリウム・カドミウムレーザー(約442nm)、InGaN系材料を用いた発振波長が400〜430nmの青色半導体レーザー、GaAlAs系(発振波長850nm)の半導体レーザーを、MgO:LiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出したレーザー(425nm)等があるが、コンパクト、低消費電力、安定性、長寿命等の観点から、青色半導体レーザーが好ましい。特に、2001年3月第48回応用物理学関係連合講演会で日亜化学(株)発表の、青色半導体レーザーが好ましい。
【0084】
なお、本発明においては、シールド枠をメッシュ部よりも導電性を高くするために、ハロゲン化銀感光材料のシールド枠相当領域の露光に際して、幾何学パターンのピッチをメッシュ部よりも小さく露光したり、幾何学パターンの線幅を太く露光することによって、額縁メッシュ部を形成することができる。
【0085】
(現像処理)
本発明では、ハロゲン化銀感光材料を露光した後、現像処理が行われる。現像処理は、発色現像主薬を含有しない、いわゆる黒白現像処理であることが好ましい。
【0086】
現像処理液としては、現像主薬としてハイドロキノン、ハイドロキノンスルホン酸ナトリウム、クロルハイドロキノン等のハイドロキノン類の他に、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−3−ピラゾリドン等のピラゾリドン類及びN−メチルパラアミノフェノール硫酸塩等の超加成性現像主薬と併用することができる。また、ハイドロキノンを使用しないでアスコルビン酸やイソアスコルビン酸等レダクトン類化合物を上記超加成性現像主薬と併用することが好ましい。
【0087】
また、現像処理液には保恒剤として亜硫酸ナトリウム塩や亜硫酸カリウム塩、緩衝剤として炭酸ナトリウム塩や炭酸カリウム塩、現像促進剤としてジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルアミノプロパンジオール等を適宜使用できる。
【0088】
現像処理で用いられる現像処理液は、画質を向上させる目的で、画質向上剤を含有することができる。画質向上剤としては、例えば、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール、5−メチルベンゾトリアゾール等の含窒素ヘテロ環化合物を挙げることができる。
【0089】
本発明においては、露光後に行われる現像処理が、定着前物理現像を含んでいることが好ましい。ここで言う定着前物理現像とは、後述の定着処理を行う前に、露光により潜像を有するハロゲン化銀粒子の内部以外から銀イオンを供給し、現像銀を補強するプロセスのことを示す。現像処理液から銀イオンを供給するための具体的な方法としては、例えば予め現像処理液中に硝酸銀等を溶解しておき銀イオンを溶かしておく方法、あるいは現像液中に、チオ硫酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム等のようなハロゲン化銀溶剤を溶解しておき、現像時に未露光部のハロゲン化銀を溶解させ、潜像を有するハロゲン化銀粒子の現像を補力する方法等が挙げられる。
【0090】
本発明においては、現像液中に予めハロゲン化銀溶剤を溶解しておく処方を用いた方が、未露光部でのカブリ発生による、フィルムの透過率低下を抑制できるため好ましい。
【0091】
なお、本発明においては、シールド枠をメッシュ部よりも導電性を高くするために、ハロゲン化銀感光材料の現像処理に際して、シールド枠相当領域の現像処理反応を促進することができる。具体的には、現像処理液中において、シールド枠相当領域付近の液温度を高めたり、シールド枠相当領域付近の液攪拌を高めることによって達成される。言うまでもなく、現像処理反応が促進された部分では、銀現像率が高まって現像銀がメッシュ部よりも多く形成され、線幅や厚さの大きい額縁メッシュを形成することができる。
【0092】
本発明に係る現像処理においては、露光されたハロゲン化銀粒子の現像終了後に、未露光部分のハロゲン化銀粒子を除去して安定化させる目的で行われる定着処理を行う。本発明における定着処理は、ハロゲン化銀粒子を用いた写真フィルムや印画紙等で用いられる定着液処方を用いることができる。定着処理で使用する定着液は、定着剤としてチオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸アンモニウム等を使用することができる。定着時の硬膜剤として硫酸アルミウム、硫酸クロミウム等を使用することができる。定着剤の保恒剤としては、現像処理液で述べた亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、アスコルビン酸、エリソルビン酸等を使用することができ、その他にクエン酸、蓚酸等を使用することができる。
【0093】
本発明に使用する水洗水には、防黴剤としてN−メチル−イソチアゾール−3−オン、N−メチル−イソチアゾール−5−クロロ−3−オン、N−メチル−イソチアゾール−4,5−ジクロロ−3−オン、2−ニトロ−2−ブロム−3−ヒドロキシプロパノール,2−メチル−4−クロロフェノール、過酸化水素等を使用することができる。
【0094】
(補力処理)
本発明においては、上述の現像処理によって形成された現像銀同士の接触を補助し、導電性を高めるために補力処理を行うことが好ましい。本発明において補力処理とは、現像処理中、あるいは処理後に予めハロゲン化銀感光材料中に含有されていない導電性物質源を外部から供給し、導電性を高める処理のことを指し、具体的な方法としては、例えば、物理現像、あるいはメッキ処理等を挙げることができる。
【0095】
(物理現像処理)
物理現像は、潜像を有するハロゲン化銀感光材料を、銀イオンあるいは銀錯イオンと還元剤を含有する処理液に浸漬することで施すことができる。
【0096】
本発明においては、物理現像の現像開始点が潜像核だけでなく、現像銀が物理現像開始点となった場合についても物理現像と定義し、これを好ましく用いることができる。
【0097】
(メッキ処理)
本発明において、メッキ処理には従来公知の種々のメッキ方法を用いることができ、例えば電解メッキ及び無電解メッキを単独、あるいは組み合わせて実施することができる。中でも、メッキ金属の選択性、メッキ速度の調整、メッキ強度に優れた電解メッキを本発明では好ましく用いることができる。無電解メッキの場合は、電流分布ムラによるメッキムラが発生しないという長所を有する。メッキに用いることができる金属としては、例えば、銅、ニッケル、コバルト、すず、銀、金、白金、その他各種合金を用いることができる。メッキ処理が比較的容易であり、かつ高い導電性を得やすいという観点から、銅電解メッキを用いることが特に好ましい。
【0098】
なお、上記処理は現像中、現像後定着前、定着処理後のいずれのタイミングにおいても実施可能であるが、フィルムの透明性を高く維持するという観点から、定着処理後に実施することが好ましい。
【0099】
本発明において、物理現像または金属メッキにより付与された金属量が、ハロゲン化銀感光材料を露光、現像処理することにより得られた現像銀に対して、質量換算で10〜100倍である態様が好ましい。この値は、物理現像または金属メッキを施す前後において、ハロゲン化銀感光材料中に含有される金属を、例えば蛍光X線分析等で定量することによって求めることができる。物理現像または金属メッキにより付与された金属量が、ハロゲン化銀感光材料を露光、現像処理することにより得られた現像銀に対して、質量換算で10倍未満である場合、導電性がやや低下する傾向となりやすく、また、100倍より大きい場合には、導電性メッシュパターン部以外の不要な部分への金属析出による透過率の低下が生じやすい傾向となる。なお、本発明においては物理現像及び金属メッキの両方の処理を施すことが好ましい。
【0100】
なお、本発明においては、シールド枠をメッシュ部よりも導電性を高くするために、メッキ処理に際して、シールド枠相当領域のメッキ処理反応を促進することができる。具体的には、メッキ処理液中において、シールド枠相当領域付近の液温度を高めたり、シールド枠相当領域付近の液攪拌を高めたり、シールド枠相当領域付近に電極を近づけて電流を増大すること等によって達成される。言うまでもなく、メッキ処理反応が促進された部分では、メッキ反応率が高まってメッキがメッシュ部よりも多く形成され、線幅や厚さの大きい額縁メッシュを形成することができる。
【0101】
さらに、本発明においては、シールド枠をメッシュ部よりも導電性を高くするために、シールド枠相当領域を金メッキすることができる。金メッキは、現像処理の後、または現像処理と物理現像の後の現像銀が形成された後、さらには現像銀の上に銅メッキ等を施した後であっても、金メッキ液にシールド枠だけを浸漬して金メッキすることができる。
【0102】
さらに、また本発明においては、シールド枠をメッシュ部よりも導電性を高くするために、シールド枠相当領域を、加圧、加熱または加圧後加熱することができる。
【0103】
加圧は、1kPa〜100MPa、好ましくは10kPa〜10MPaの範囲、より好ましくは、50kPa〜5MPaである。加圧が1kPより少ないと導電性向上の効果が小さく、100MPaより大きいと、面を平滑に保つことができにくくヘイズが上昇するので好ましくない。
【0104】
加熱は、40〜300℃、好ましくは50〜200℃、より好ましくは60〜200℃である。40℃未満では導電性向上の効果が小さく、300℃より高いと面を平滑に保つことができにくいので好ましくない。
【0105】
(酸化処理)
本発明においては、現像処理あるいは物理現像またはメッキ処理後に酸化処理を行うこが好ましい。酸化処理により、不要な金属成分をイオン化して溶解除去することが可能となり、フィルムの透過率をより高めることが可能となる。
【0106】
酸化処理に用いる処理液としては、例えばFe(III)イオンを含む水溶液を用いて処理する方法、あるいは過酸化水素、過硫酸塩、過硼酸塩、過燐酸塩、過炭酸塩、過ハロゲン酸塩、次亜ハロゲン酸塩、ハロゲン酸塩、有機過酸化物等の過酸化物を含む水溶液を用いて処理する方法等、従来公知の酸化剤を含有する処理液を用いることができる。酸化処理は、現像処理終了後から、メッキ処理前の間に行うことが、短時間処理で効率的に透過率向上を行うことができるため好ましく、物理現像終了後に行うことが特に好ましい。
【0107】
(黒化処理)
本発明においては、ディスプレイ用電磁波シールド材ロール体表面での外光反射を防止するという観点から、金属メッシュ表面に黒化処理を施すことが好ましい。このような黒化処理を施した透明ディスプレイ用電磁波シールド材ロール体を、例えばPDP(プラズマディスプレイパネル)等のディスプレイに用いた場合、外光反射によるコントラストの低下を軽減できるとともに、非使用時の画面の色調を黒く高品位に保つことができ好ましい。黒化処理の方法としては、特に制限はなく、既知の手法を適宜、単独あるいは組み合わせて用いることができる。例えば導電性パターンの最表面が金属銅から成る場合には、亜塩素酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸三ナトリウムを含む水溶液に浸漬して酸化処理する方法、あるいはピロリン酸銅、ピロリン酸カリウム、アンモニアを含む水溶液に浸漬し、電解メッキを行うことにより、黒化処理する方法、等を好ましく用いることができる。また、導電性パターンの最表層がニッケル−リン合金被膜から成る場合は、塩化銅(II)または硫酸銅(II)、塩化ニッケルまたは硫酸ニッケル、及び塩酸を含有する酸性黒化処理液中に浸漬する方法を好ましく用いることができる。
【0108】
また、上述の方法以外にも、表面を微粗面化する方法によっても黒化処理が可能であるが、高い導電性を維持するという観点からは、表面の微粗面化よりも、酸化による黒化処理の方法が好ましい。
【0109】
(近赤外線吸収層)
本発明のディスプレイ用電磁波シールド材ロール体を、例えば、PDP用の光学フィルタと組み合わせて使う場合には、ハロゲン化銀感光性層の下に近赤外吸収染料を含む層である近赤外線吸収層を設けることも好ましい。場合によっては近赤外線吸収層を支持体に対して、ハロゲン化銀乳剤層のある側の反対側に設けることもできるし、ハロゲン化銀乳剤層側と反対側の両方に設けてもよい。ハロゲン化銀を含むハロゲン化銀乳剤層と支持体との間に近赤外線吸収層を設けること、あるいは、ハロゲン化銀乳剤層からみて支持体の反対側に近赤外線吸収層を設けることができるが、支持体の一方側にすると同時に塗布ができるので前者の方が好ましい。
【0110】
近赤外線吸収染料の具体例としては、ポリメチン系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、金属錯体系、アミニウム系、イモニウム系、ジイモニウム系、アンスラキノン系、ジチオール金属錯体系、ナフトキノン系、インドールフェノール系、アゾ系、トリアリルメタン系の化合物等が挙げられる。PDP用光学フィルタで近赤外線吸収能が要求されるのは、主として熱線吸収や電子機器のノイズ防止である。このためには、最大吸収波長が750〜1100nmである近赤外線吸収能を有する色素が好ましく、金属錯体系、アミニウム系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、ジイモニウム系、スクワリウム化合物系が特に好ましい。
【0111】
近赤外線吸収染料としては、ジイモニウム化合物は、IRG−022、IRG−040(以上、日本化薬株式会社製)、ニッケルジチオール錯体化合物は、SIR−128、SIR−130、SIR−132、SIR−159、SIR−152、SIR−162(以上、三井化学株式会社製)、フタロシアニン系化合物は、IR−10,IR−12(以上、日本触媒株式会社)等の市販品を利用することができる。
【0112】
本発明のディスプレイ用電磁波シールド材ロール体を、例えば、PDP用の光学フィルタと組み合わせて使う場合には、PDPに用いられるネオンガスの輝線発光行による色再現性の低下を防ぐために595nm付近の光を吸収する色素を含有することが好ましい。このような特定波長を吸収する色素としては、具体的には例えば、アゾ系、縮合アゾ系、フタロシアニン系、アンスラキノン系、インジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、ジオキサジン系、キナクリドン系、メチン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、ピロール系、チオインジゴ系、金属錯体系等の周知の有機顔料及び有機染料、無機顔料が挙げられる。これらの中でも、耐候性が良好であることから、フタロシアニン系、アンスラキノン系色素が特に好ましく用いられる。
【0113】
(紫外線吸収層)
本発明においては、ディスプレイ用電磁波シールド材ロール体の紫外線による劣化を避けるために、極大吸収波長350nm未満の紫外線吸収剤を使用することが好ましい。
【0114】
紫外線吸収剤としては、公知の紫外線吸収剤、例えばサリチル酸系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、S−トリアジン系化合物、環状イミノエステル系化合物等を好ましく使用することができる。これらの中、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、環状イミノエステル系化合物が好ましい。ポリエステルに配合するものとしては、特に環状イミノエステル系化合物が好ましい。これら紫外線吸収剤の添加層については特に制限はないが、ハロゲン化銀感光性層(メッシュパターン層)に用いられるバインダーの紫外線による劣化を防止するという観点から、ハロゲン化銀感光性層への添加、あるいは該層よりも光源側に設けることが好ましい。
【0115】
好ましい紫外線吸収剤としてはベンゾトリアゾール類が挙げられ、例えば特開平1−250944号公報記載の一般式[III−3]で示される化合物、特開昭64−66646号公報記載の一般式[III]で示される化合物、特開昭63−187240号公報記載のUV−1L〜UV−27L、特開平4−1633号公報記載の一般式[I]で示される化合物、特開平5−165144号公報記載の一般式(I)、(II)で示される化合物等が好ましく用いられる。
【0116】
これらの紫外線吸収剤は、例えばジオクチルフタレート、ジ−i−デシルフタレート、ジブチルフタレート等のフタル酸エステル類、トリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェート等の燐酸エステル類等に代表される高沸点有機溶媒に分散して添加することが好ましい。また、これらの紫外線吸収剤を支持体中に直接添加することも好ましく用いられ、この場合、例えば特表2004−531611号に記載の態様も好ましく用いることができる。
【0117】
(反射防止層)
本発明の電ディスプレイ用電磁波シールド材ロール体を、ディスプレイ画面の保護等を目的として用いる場合には、反射防止層を設けることが好ましい。
【0118】
反射防止層は、屈折率の異なる複数の光透過性層からなることが好ましく、無機微粒子を含有した高屈折率層、中屈折率層、低屈折率層から構成されることがより好ましい。屈折率の異なる層はそれぞれに含有される無機微粒子の種類、粒径、添加量、樹脂バインダーの種類等によって調整される。高屈折率層の屈折率は1.55〜2.30であることが好ましく、1.57〜2.20であることがさらに好ましい。中屈折率層の屈折率は、基材フィルムの屈折率と高屈折率層の屈折率との中間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は1.55〜1.80であることが好ましい。低屈折率層の屈折率は1.46以下が好ましく、特に1.3〜1.45であることが望ましい。
【0119】
反射防止層としては、金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、ホウ化物、炭化物、窒化物、硫化物等の無機物を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法等で単層あるいは多層に薄膜積層させる方法、アクリル樹脂、フッ素樹脂等の屈折率の異なる樹脂を単層あるいは多層に薄膜積層させる方法等を用いることができる。
【0120】
本発明の透明ディスプレイ用電磁波シールド材ロール体において、導電性パターンを有する層に対して該ディスプレイ用電磁波シールド材ロール体の支持体を挟んだ反対側に反射防止層を形成する場合には、最初に反射防止層を形成した後に、プロテクトフィルムを貼り合わせ、その後導電性パターン層を形成することが好ましい。導電性パターンを先に形成した後に反射防止層を形成する場合、反射防止層と支持体の接着性を向上させるために行うプラズマ処理やコロナ処理の効率が低下しやすい傾向にあるため、反射防止層を最初に形成することが好ましい。また、反射防止層を先に形成した場合、該層が現像及びメッキ処理等により劣化することを防止するという観点から、予めプロテクトフィルムを貼り合わせた後、導電性パターン層を形成することが好ましい。
【0121】
本発明において用いられるプロテクトフィルムは、一般的に市販されているプロテクトフィルムを用いることができるが、導電性パターン形成のための感光性ハロゲン化銀乳剤層を塗工しやすくするという観点から、フィルムの厚さは10〜100μmが好ましく、特に好ましくは20〜60μmである。10μm未満の場合、フィルムの剛性が著しく低下するためプロテクトフィルムの貼合せの作業効率が低下しやすく、また100μmより厚い場合、フィルムの巻き取り時に巻き取り皺等の故障が発生しやすくなるためである。
【0122】
プロテクトフィルムに用いられる粘着剤の種類には特に制限はないが、反射防止フィルムを変質させることなく、また剥離時に反射防止フィルムにダメージを与えないものが好ましく用いられる。このような観点から、アクリル系、またはシリコーン系の粘着剤が好ましく用いられる。また、その粘着力としては、0.08〜0.6N/25mmであるものが好ましく用いられる。
【実施例】
【0123】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0124】
実施例1
(ハロゲン化銀乳剤の調製)
硝酸銀水溶液と、臭化カリウム及び塩化ナトリウム水溶液とを、35℃のゼラチン水溶液中へ制御しながら添加混合して、塩臭化銀乳剤(臭化銀10モル%、塩化銀90モル%)を調製した。この乳剤中には臭化ロジウム酸カリウム及び塩化イリジウム酸カリウムを濃度が1.0×10-7(モル/モル銀)になるように添加し、RhイオンとIrイオンをドープした。また、銀/ゼラチン質量比は4/1(銀/ゼラチン体積比は約0.5)とし、ゼラチン種としては平均分子量4万のアルカリ処理型低分子量ゼラチンを用いた。平均粒径は0.04μm、粒径分布の変動係数は0.13であった。
【0125】
その後、チオ硫酸ナトリウムをハロゲン化銀1モル当たり2.0mg用い、40℃にて80分間化学増感を行い、化学増感終了後に4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデンをハロゲン化銀1モル当たり500mg添加して、さらに、下記増感色素SD−1をハロゲン化銀1モル当たり500mg添加して、感光性ハロゲン化銀乳剤を得た。
【0126】
【化1】

【0127】
(支持体)
両面にプラズマ放電処理を施した、厚さ120μm、幅60cm、長さ120mの透明ポリエチレンテレフタレートフィルム支持体の一方の側に、ブチルアクリレート:スチレン:グリシジルアクリレート(40:20:40質量%)ラテックスが0.40g/m2、ヘキサメチレン−1,6−ビス(エチレンウレア)が0.01g/m2となるように塗布して、下塗り層を設けた。その一方の側に、非感光性中間層として、ゼラチンを0.20g/m2塗布した。
【0128】
さらに他方の側に、非感光性中間層として、ゼラチンを0.20g/m2塗布した。
【0129】
(ハロゲン化銀感光性層の塗布)
前記のハロゲン化銀乳剤に、塗布助剤として、界面活性剤(スルホ琥珀酸ジ・2−エチルヘキシル・ナトリウム)を添加して表面張力を調整し、硬膜剤(テトラキス・ビニルスルホニルメチル・メタン)をゼラチン1g当たり50mgとなるようにして添加し、前記非感光性中間層の上に、銀塗布量0.60g/m2、及びゼラチン塗布量0.15g/m2となるように、速度20m/分で塗布を行って乾燥し、ロール状のハロゲン化銀感光材料を8本作製した。
【0130】
(露光)
このようにして得られたハロゲン化銀感光材料に対して、図2(A)、(B)、図3、図4に示すパターンの露光を行った。図2は本発明、図3は給電層が不連続の比較例、4は給電層が連続の比較例である。メッシュ部は、線幅が10μm、線間隔が240μmの格子状で、格子線がロールの長手方向に対して45度の角度をもって形成される。
【0131】
これらのメッシュパターンを、発振波長440nmのレーザー光(日亜化学(株)製の青色半導体レーザーダイオード)を用いて、ハロゲン化銀感光材料を連続搬送しながら露光を行った。
【0132】
(現像処理)
露光済みの試料について、幅60cmのリーダーベルト搬送方式の、自動現像処理・物理現像・メッキ統合機を用い、下記現像液を用いて25℃で60秒間現像処理を行った後、下記定着液を用いて、25℃で120秒間の定着処理を行い、ついで水洗処理を行った。さらに、下記物理現像液を用いて、25℃5分間の物理現像を行い、ついで水洗処理を行った後、下記銅メッキ液にて、2.5A/cm2で25℃5分間の電解メッキを行って、水洗した。最後に60℃温風にて乾燥し、長尺ロール状のディスプレイ用電磁波シールド材ロール体試料11〜14を作製した。図2(A)、(B)、図3、図4に示すパターンの露光から、それぞれ試料11〜14を作製した。
【0133】
なお、自動現像処理・物理現像・メッキ統合機の電解メッキ装置部分は図1の構造のものを用いた。
【0134】
(現像液)
純水 500ml
メトール 2g
無水亜硫酸ナトリウム 80g
ハイドロキノン 4g
ホウ砂 4g
チオ硫酸ナトリウム 10g
臭化カリウム 0.5g
水を加えて全量を1リットルとする
(定着液)
純水 750ml
チオ硫酸ナトリウム 250g
無水亜硫酸ナトリウム 15g
氷酢酸 15ml
カリミョウバン 15g
水を加えて全量を1リットルとする
(物理現像液)
純水 800ml
クエン酸 5g
ハイドロキノン 7g
硝酸銀 3g
水を加えて全量を1リットルとする
(銅メッキ液)
硫酸銅 125g
硫酸 85g
ポリエチレングリコール 0.1g
1mol/L塩酸 2.0ml
水を加えて全量を1リットルとする。
【0135】
(評価)
このようにして得られた、導電性の金属メッシュ部を有するディスプレイ用電磁波シールド材ロール体試料11〜14に対して、以下の評価を行った。
【0136】
〈メッキムラ〉
メッキ処理し、乾燥した後の試料の、シールド枠とメッシュ部の境界付近のパターンのムラの発生状況を、高精細CCDカメラで複数箇所をコマ撮影して40インチモニター画面上に拡大倍率200倍で表示し、目視観察して、下記基準で評価した。
【0137】
○:メッシュの線幅のばらつきは認められない
△:わずかにメッシュの線幅のばらつきが認められる
×:線幅が1/2以下の部分や、断線部分が認められる
〈接地性〉
ディスプレイ用電磁波シールド材ロール体のシールド枠と、該シールド枠と同じ幅の厚さ50μmのスズメッキ軟銅導体とをヒートシーラーで接着(160℃、40N/cm2、3秒間)し、導体の線間抵抗性を、幅15mmで測定し、下記基準で評価した。
【0138】
○:5Ω以下
△:5Ωより大きく20Ω以下
×:20Ωより大きい
【0139】
【表1】

【0140】
表1から、本発明の試料11、12は、パネルの接地性に優れ、製造中に発生するメッキムラを改善したディスプレイ用電磁波シールド材ロール体であることが分かる。比較試料13は生産性が低く、比較試料14はメッキムラが見られた。
【0141】
実施例2
図2(A)、(B)、図3、図4に示すパターンの導電性メッシュパターン、シールド枠及び給電層を印刷法により導電ペーストで作製し、その後、実施例1と同様にメッキ処理をして、図2(A)、(B)、図3、図4に示すパターンから、それぞれディスプレイ用電磁波シールド材ロール体試料21〜24を作製した。
【0142】
実施例1と同様に評価した結果、本発明の試料21、22は、パネルの接地性に優れ、製造中に発生するメッキムラを改善したディスプレイ用電磁波シールド材ロール体であることが分かる。比較試料23は生産性が低く、比較試料24はメッキムラが見られた。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】本発明のディスプレイ用電磁波シールド材ロール体のメッキ処理に好適に用いられる電解メッキ槽の一例を示す模式図である。
【図2】本発明のディスプレイ用電磁波シールド材ロール体におけるメッシュパターン及び給電層の配置の一例を示す部分平面図である。
【図3】従来のディスプレイ用電磁波シールド材ロール体におけるメッシュパターン及び給電層の配置の一例を示す部分平面図である。
【図4】従来のディスプレイ用電磁波シールド材ロール体におけるメッシュパターン及び給電層の配置の他の一例を示す部分平面図である。
【符号の説明】
【0144】
10 電解メッキ装置
11 電解槽
12a、12b 給電ローラ
13 アノード板
14 ガイドローラ
16、20 ロールシート
21、31、41 透明基材
22、32、42 メッシュパターン
23、33、43 シールド枠
24、34、44 間隔
25、35、45 給電層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の透明基材の少なくとも一方の面に、ディスプレイの画面サイズの金属メッシュパターンが前記透明基材の長手方向に一定の間隔で設けられ、かつロールの状態で供給されるディスプレイ用電磁波シールド材ロール体であって、前記金属メッシュパターンは、導電性メッシュパターン及びその上に少なくとも電解メッキしたメッキ層を有し、前記金属メッシュパターンの周囲には金属メッシュまたは金属薄膜からなるシールド枠が配置され、前記シールド枠の幅方向の両外側に接し、前記シールド枠の長手方向の少なくとも前後一方に、前記シールド枠から突出した電解メッキ用の給電層が設けられていることを特徴とするディスプレイ用電磁波シールド材ロール体。
【請求項2】
長尺の透明基材の少なくとも一方の面に、ディスプレイの画面サイズの金属メッシュパターンが前記透明基材の長手方向に一定の間隔で設けられ、かつロールの状態で供給されるディスプレイ用電磁波シールド材ロール体であって、前記金属メッシュパターンは、導電性メッシュパターン及びその上に少なくとも電解メッキしたメッキ層を有し、前記金属メッシュパターンの周囲には金属メッシュまたは金属薄膜からなるシールド枠が配置され、前記シールド枠に、前記シールド枠から長手方向の少なくとも前後一方に、前記シールド枠から突出した給電層が設けられていることを特徴とするディスプレイ用電磁波シールド材ロール体。
【請求項3】
前記給電層は、金属薄膜または金属メッシュからなることを特徴とする請求項1または2に記載のディスプレイ用電磁波シールド材ロール体。
【請求項4】
前記給電層の長さは、電解メッキ時に電解メッキ装置の給電ローラと前記ディスプレイ用電磁波シールド材ロール体とが接している面の最下部からメッキ液面までの距離より長いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のディスプレイ用電磁波シールド材ロール体。
【請求項5】
前記導電性メッシュパターン、前記シールド枠及び前記給電層が写真製法により生成された現像銀であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のディスプレイ用電磁波シールド材ロール体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−297612(P2008−297612A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−146696(P2007−146696)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】