説明

ディスプレイ知育玩具

【課題】 子供の興味や関心を引き、注意力や集中力や知力を養い、乗り物などにも適するものとする。
【解決手段】 同期回転する複数の歯車36、歯車36を囲み歯車36に対向する表側を透視可能としたケース34と、歯車36に設けられた放射状の複数の突壁38、歯車36とケース34との間に装填され突壁38により転送される円盤40、歯車36の噛合部分を指向して突出し円盤40をガイドする一対の揺動可能なガイド爪42、これらガイド爪42を互いに逆方向に揺動させ連動させて円盤40を隣接する歯車36へガイドする天秤状レバー44と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、子供用の乗物玩具、手押車、“カタカタ”と呼ばれる歩行用遊具など、子供や幼児が乗ったり押したりして遊ぶ玩具に好適なディスプレイ知育玩具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
子供用(幼児用を含む)の乗り物玩具や手押車や、歩行用遊具などでは、子供の注意や関心を引きつけ、子供の注意力や集中力を養い育てるための知育玩具を取付けたものが広く用いられている。例えば乗り物等の走行と共に人形などを上下動させたり回転させたりするものがある。
【0003】
特許文献1には、支持面に例えば磁石によって複数の歯車を固定可能にすると共に、各歯車を噛合させて回転可能とし、歯車に例えば反射性のディスプレイシートを貼ってこれらが連動して回転するようにしたディスプレイ装置が示されている。このディスプレイ装置は看板用、宣伝用のものであるが、子供が支持面に固定する歯車をパターン化してそれらを回転させるような玩具として用い得ることができるものである。
【0004】
【特許文献1】特表2004−504644
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
人形などを上下動や回転させたりするものでは、通常その駆動機構が乗り物のボデー内などに隠されていて、人形などの単純な動きに対して子供はすぐに飽きてしまい、興味や関心を失う。このため子供の注意力や集中力あるいは考える力(知力)を養うには十分でない。
【0006】
特許文献1に示されたものは、各歯車を支持面に固定したり、各歯車にディスプレイシートを貼り付けるものであるため、特に幼児や幼児に近い年少の子供では複雑すぎて組み立てられない、という問題がある。また歯車やディスプレイシートが露出しているため屋外で使用する乗り物などに適用するのに適さない、という問題もある。
【0007】
この発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、内部の動きを外から見て確認できるようにして、幼児や子供の興味や関心を引き付け、幼児や子供がその動きを追い掛けることにより注意力や集中力あるいは知力を養うことができ、また屋外で使う乗り物などにも適するディスプレイ知育玩具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明によればこの目的は、互いに同期して回転する複数の歯車と、これら歯車を囲み歯車に対向する表側を透視可能としたケースと、前記歯車に設けられ前記ケースの表側に内側から対向する放射状の複数の突壁と、歯車とケースとの間に装填され歯車の回転により前記歯車に設けた突壁とケースの内壁とにガイドされて転動する装飾用の円盤と、隣接する歯車の噛合部分の両側からこの噛合部分を指向して突出し円盤をガイドする一対の揺動可能なガイド爪と、これらガイド爪を互いに逆方向に揺動させ連動させて前記円盤を隣接する歯車へガイドする天秤状レバーと、を備えることを特徴とするディスプレイ知育玩具、により達成される。
【発明の効果】
【0009】
ケースの表側を透視可能としたから、この表側を通して内部を透視できる。ケースの内部では歯車が回転するだけでなく、ガイド爪や天秤状レバーなどが円盤により連動して間欠的に揺動するから、動きが複雑で興味を引くものになる。このため幼児はそれらの動きを追い掛けることにより自然に注意力と集中力を養うことができ、また円盤などの動きを理解し動きを予測することが可能になるため考える力(知力)を養うことが可能になる。
【0010】
また歯車や円盤やガイド爪、天秤状アームなどはケースの中に収容されているので、屋外で使うのに適し、乗り物に組付けて使用するのに適したものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
ケースは表側だけでなく全体を透視可能とすれば、裏側からも中を見ることができるので、本発明の効果は一層増大する。歯車は3個以上を並べれば、円盤の動く範囲が広くなり、幼児の注意を一層引付け易くなる。この場合にはガイド爪は2つ以上必要であり、天秤状レバーも2個以上必要になる(請求項2)。
【0012】
ケースは横長としてその中に複数の歯車を横並びに収容し、このケースを子供用(幼児用を含む)の乗り物の後部に取付けた後面視略逆U字状の手押しハンドルに取付けることができる(請求項3)。この場合にはケースで手押しハンドルを補強することができる。ケースは着座シート後方の背当てとすることもできる(請求項4)。
【0013】
歯車を回転させるためには、1つの歯車を手動で回転駆動するための摘みをケースの裏側に配設することができる(請求項5)。この場合にはケースの表側を幼児に見せ、保護者が裏から摘みを回せばよい。歯車は他の手段で回転させてもよい。
【実施例】
【0014】
図1は本発明の一実施例を適用した子供用乗物を斜め前方から見た斜視図、図2は同じく斜め後方から見た斜視図、図3はこの実施例の分解斜視図、図4はケースを透視して内部構造を示す正面図、図5は同じく背面図、図6〜11は図4の状態からの動作の変化過程を示す正面図である。
【0015】
図1,2において符号10は車体であり、2個の操向前輪12,12と2個の後輪14,14とを持つ。16は操向ハンドル、18は着座シートである。この着座シート18は車体10の中央付近に位置し、子供はこの着座シート18に跨いで着座した時に両足が車体10の外側方で路面に着くものである。すなわち子供は車体10の両外側に足を出して路面を蹴ることにより走行可能である。
【0016】
車体10の前部はほぼ球面の一部を切り欠いた形状の透明なカバー20で覆われ、このカバー20内に収容した人形などのおもちゃ(図示せず)を透視可能である。操向ハンドル16の軸はこのカバー20の上部を貫通している。カバー20には、操向ハンドル16を左右および前方から囲むように3つのボタン22が取付けられている。これらのボタン22によりカバー20の内部のおもちゃを動かすことができる。
【0017】
後輪14,14の間には、後輪14,14に加える制動力を調整するための手動操作ノブ24が配設されている(図2)。また26は後輪14,14の間から下後方へ延出する板材である。この板材26は車体10の前部が規定量以上に浮き上がった時に路面に接触し、過大な浮き上がりを防ぐものである。
【0018】
車体10の後部には、着座シート18の後方から起立する手押しハンドル28が取付けられている。この手押しハンドル28は後方視略逆U字状であり、その上部のグリップ部28aと間隔を空けて本発明に係るディスプレイ知育玩具30が取付けられている。この実施例では、このディスプレイ知育玩具30はグリップ部28aと一体化され、この一体化されたユニット32は左右のポール部28b、28bの上端に固定されている。
【0019】
知育玩具30とグリップ部28aとのユニット32は、図3に示すように、前後割りのケース34を持つ。このケース34は、透明または半透明で透視可能な樹脂製の前半体34aおよび後半体34bを適宜数のビスで互いに結合したものである。従って前半体34aを通してケース34の表側から内部を透視可能である。なお後半体34bは必ずしも透視可能である必要はないが、透視可能にすれば後方(背面)からも内部を視認でき、一層興趣に富むものとなる。
【0020】
ケース34の中には、図3に示すように、車体10の横幅方向に並べた同歯数の3個の歯車36(36a、36b、36c)と、この歯車36の前側すなわちケース34の前半体34a側に突設した放射状の複数の突壁38と、歯車36とケース34との間に装填され歯車36の回転により転送される装飾用の2個の円盤40(40a、40b)と、後記するガイド爪42(42a、42b)、天秤状レバー44などが収容される。
【0021】
歯車36の突壁38はこの実施例では歯車36の中心を中心にして十字型に突設されている。ケース34の後半体34bの内面には、歯車36を回転自在に保持する3個のボス46と、歯車36の外周を十分な間隔を空けて囲むように突出する円弧状の複数のガイド壁48と、これらガイド壁48と歯車36の外周との間にあって歯車36の表面(ケース34の前半体34a側の面)とほぼ同じ高さの円弧状の複数の円盤支持壁50とが突設されている。なおガイド壁48はここではケース34の内周壁と別に形成されているが、これらを兼用として独立したガイド壁48を省いてもよい。
【0022】
正面から見て左端の歯車36aにはケース34の後半体34bを貫通して後方から摘み52が係入固定されている。摘み52は図2に示すようにケース34から後方へ突出している。この摘み52を手動で回転すれば、歯車36aが回転し、これに噛合する他の歯車36b、36cも連動し同期して回転する。
【0023】
円盤40は歯車36とケース34の前半体34aとの間で歯車36の突壁38とガイド壁48とで囲まれる空間に十分な余裕をもって装填される。前記円盤支持壁50は円盤40が歯車36とガイド壁48の間に落下するのを防ぐ。なお3個の歯車36は、図4に示すように突壁38がほぼ一直線に揃うように位相を揃えて噛合し、2つの円盤40a、40bは中央の歯車36bを中心にして対称となる位置に装填される。これら円盤40の表面には着色したり絵を描いたり、反射性のディスプレイを施しておき、子供の興味を引き易くしておくのがよい。
【0024】
ガイド爪42(42a、42b)は、隣接する歯車36の噛合部分を指向して両側のガイド壁48から突出し、それらの先端が揺動可能である。すなわちガイド爪42(42a、42b)は歯車36aと36bの間に一対設けられ、また歯車36bと36cの間に一対設けられる。
【0025】
これらの一対のガイド爪42(42a、42b)は天秤状レバー44,44により連動する。レバー44は図5に示すように略S字形であり、その中央を噛合部分の裏側でケース34の後半体34bに軸支されている。レバー44の両端には、レバー44の揺動中心方向に長いガイド孔44a、44bが形成され、これらのガイド孔44a、44bにガイド爪42の揺動端側に突設した突起54(図5)が係入している。
【0026】
このため図5で上のガイド爪42aが右へ揺動すると下のガイド爪42bは左へ揺動する。すなわちガイド爪42a、42bは互いに逆方向に揺動する、従って歯車36の回転により円盤40が移動して一方のガイド爪42aまたは42bを押し開くと他方のガイド爪42bまたは42aが連動して逆側に揺動する。
【0027】
次に図4,6〜11を用いて動作を説明する。まず円盤40a、40bが図4のように歯車36a、36cに乗っているものとする。この状態で後方から摘み52を反時計廻り方向(図4では時計廻り方向)に回動すれば、歯車36a、36cは同方向(時計方向)に回り、円盤40a、40bは突壁38に押されさらにガイド壁48に案内されて回転しながら移動する(図6)。そしてこの円盤40aが図7の左側のガイド爪42aを押し開き(図7)、歯車36a、36bの突壁38に挟まれて下降し、ガイド爪42bによって中間の歯車36bの下方へ送られる(図8,9)。
【0028】
またこの時円盤40bは右側のガイド爪42bを左へ倒して押し開き(図7)、歯車36c、36bの間を押し上げられる(図8)。そして円盤40bは上の右に倒れたガイド爪42aによって中間の歯車36bの上方へ送られる(図9)。
【0029】
摘み52をさらに同方向に回転すると、円盤40aは右側のガイド爪42bを押し開き、円盤40bは左側のガイド爪42aを押し開き(図10)、それぞれ歯車36c、36aに回転しながら移動していく(図11)。このようにして摘み52を回転すれば、円盤40a、40bは歯車36の周囲を8字状に移動する(図1参照)。この時円盤40はガイド壁48や突壁38などに接触して回転する。
【0030】
ケース34の全面は透明なので円盤40や歯車36を外側から視認でき、それらの動きを追うことにより子供の興味を強く引き付けることができ、集中力の訓練に役立つものである。また摘み52の回転方向を逆にすれば円盤40の動きも逆になり、円盤40の動きを予測することによって子供の知力(考える力)を養うことができる。円盤40に子供の注意を引き易い色模様や絵を描いておけば、効果は一層大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施例を適用した子供用乗物を斜め前方から見た斜視図
【図2】同じく斜め後方から見た斜視図
【図3】この実施例の分解斜視図
【図4】ケースを透明にして内部構造を示す正面図
【図5】同じく背面図
【図6】動作説明図
【図7】動作説明図
【図8】動作説明図
【図9】動作説明図
【図10】動作説明図
【図11】動作説明図
【符号の説明】
【0032】
30 ディスプレイ知育玩具
34(34a、34b) ケース
36(36a、36b、36c) 歯車
38 突壁
40(40a、40b) 装飾用の円盤
42(42a、42b) ガイド爪
44 天秤状レバー
52 摘み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに同期して回転する複数の歯車と、これら歯車を囲み歯車に対向する表側を透視可能としたケースと、前記歯車に設けられ前記ケースの表側に内側から対向する放射状の複数の突壁と、歯車とケースとの間に装填され歯車の回転により前記歯車に設けた突壁とケースの内壁とにガイドされて転動する装飾用の円盤と、隣接する歯車の噛合部分の両側からこの噛合部分を指向して突出し円盤をガイドする一対の揺動可能なガイド爪と、これらガイド爪を互いに逆方向に揺動させ連動させて前記円盤を隣接する歯車へガイドする天秤状レバーと、
を備えることを特徴とするディスプレイ知育玩具。
【請求項2】
3個の歯車と、2対のガイド爪と、2個の天秤状レバーとを備える請求項1のディスプレイ知育玩具。
【請求項3】
ケースは横長で複数の歯車を横並びに収容し、子供用乗物の後部から起立する後面視略逆U字状の手押しハンドルに取付けられている請求項1または2のディスプレイ知育玩具。
【請求項4】
ケースは横長で複数の歯車を横並びに収容し、その表側が子供用乗物の着座シート後方の背当てとなっている請求項1または2のディスプレイ知育玩具。
【請求項5】
1つの歯車を手動で回転駆動するための摘みがケースの裏側に配設されている請求項1〜4のいずれかのディスプレイ知育玩具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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