説明

ディスプレイ装置のための封入構造

封止構造(3)と安定化層(5)とを含むディスプレイ装置のための封入構造が開示されている。封止構造(3)は、環境的に敏感な部分(2)とディスプレイ装置上の突出部(4)とを被覆する本質的に水/酸素不透過性膜である。安定化層(5)はディスプレイ装置、ディスプレイ装置上の突出部(4)、及び、耐引掻性を有する保護層を備えた封止構造(3)を被覆し、その結果、水/酸素不透過性及び耐引掻性を有する封入構造が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ装置のための封入構造、及び、そのような封入構造を含むディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ装置はグラフィック表示及び撮像技術において既知である。そのような装置の例は、液晶(LCD)、並びに、LED(発光ダイオード)に基づく装置、有機発光ダイオード(OLED)装置、及び、高分子発光ダイオード(polyLED)のようなエレクトロルミネッセンス装置である。
【0003】
エレクトロルミネッセンス装置は、電流が流れる時に発光し得るエレクトロルミネッセンス材料を含む装置であり、電流は電極を用いて供給される。ダイオード型のエレクトロルミネッセンス装置は選択的に一方向に電流を通し、陽極と陰極との間に配置されたエレクトロルミネッセンス材料を含むのが一般的である。
【0004】
ディスプレイ装置は酸素及び水分等に対して敏感であることが多く、その結果、大気に晒されると劣化し得る。酸素及び/又は水分への露出は、特に、光が存在する場合に、使用されている高分子材料の光酸化的劣化を招き得る。
【0005】
さらに、陰極/高分子接触面での酸化は、OLED又はpolyLEDのような装置内で酸素及び/又は水分放散との関連で生じる第一の問題の1つである。そのような反応は、装置の光放射特性の性能を著しく低減する。
【0006】
その上、大気に晒されるときに、ディスプレイ装置内で用いられる他の材料も劣化し得る。従って、装置を封止する必要がある。
【0007】
ディスプレイ装置を封止するために、金属膜を蒸発させることによる努力がなされた。しかしながら、これらの膜はしばしばピンホールを包含する。従って、これらの膜は比較的厚い必要があり、その結果、貧弱な光透過を招く。装置の多少の耐封止を達成するための既知のプロセスの多くは、封止プロセス中に300℃を超える温度を必要とする。殆どの高分子基装置はそのような高温に適合しない。
【0008】
さらに、ディスプレイ装置、具体的には、polyLED/OLEDディスプレイの実際のダイオード構造は、装置に加えられる機械力に対して敏感である。封止されたディスプレイ装置の表面を引っ掻くことは、表面破壊を招く。装置内の構造の表面、例えば、ネガ型レジスト及び他の突出部は特に敏感である。表面破壊は、ディスプレイ装置の部分の機能の損失という意味でディスプレイに影響を与える。それは、表面の封止内に物理的ホールが現れることも意味し、水分及び酸素がそこを通って浸透し、装置の耐用年数を低減し得る。よって、封止装置を封入する必要がある。
【0009】
米国特許第6,413,645号は、バリヤー層とバリヤー層の上に形成される高分子層とを含むバリヤー組立体を開示している。低温方法を用いて組立体をディスプレイ装置の上に被覆可能であり、よって、装置を水及び酸素から被覆し且つ保護する。バリヤー組立体は、金属酸化物、金属窒化物、及び、金属炭化物等のようなバリヤー材料の少なくとも1つの層から成り、それは水/酸素バリヤーとして作用する。高分子層は固有のバリヤー機能を有さないが、平坦化層として働く。
【0010】
しかしながら、米国特許第6,413,645号に開示されているバリヤー組立体は、機械力に対して弱い。もし機械力が装置に対して加えられるならば、バリヤー組立体は損傷し、水/酸素浸透性は劇的に損なわれる。組立体を強化するために、保護高分子層及び耐引掻層のような追加層をバリヤー組立体の上に蒸着することが提案されている。しかしながら、これらの余分な層は製造方法に追加的ステップを導入し、よって、製造方法が複雑且つ高価になり、余分な保護層を備えるバリヤー組立体の全体は比較的厚くなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、従来技術の有する上記に記載された問題を克服する封止構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的及び他の目的は、誘電性封止構造及び安定化層を含む、ディスプレイ装置のための封入構造によって達成される。誘電性封止構造は、装置上に本質的に水/酸素不透過性膜を形成する。安定化層は封止構造上に形成され、封止構造を安定化し且つ保護することを意図すると共に、ディスプレイ装置上に耐引掻性を有する表面をもたらす。
【0013】
1つの実施態様において、封止構造は少なくとも2つの誘電性材料層を含む。少なくとも2つの層を用いることによって、ピンホールなしの構造が得られる。封止構造は透明であり、第二層上に形成される誘電性材料の第三層を含み得る。
【0014】
本発明の1つの実施態様に従って、封止構造の第一層及び第三層は同一の誘電性材料で形成される。しかしながら、第一層及び第三層を異なる誘電性材料で形成し得る。
【0015】
第二層中の誘電性材料は、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸フッ化ケイ素、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、及び、これらの任意の組み合わせを含む群から選択される。
【0016】
安定化層は、封止構造中の突出構造を被覆するのに十分な厚さであり、よって、突出構造は安定化層を形成する材料中に封入され、安定化層の本質的に平坦な表面の下に被覆される。本発明に従った安定化層は、硬化された(さもなければ、固化された)、例えば、熱硬化された材料を含み得る。該材料は透明な高分子又は非高分子の有機又は無機材料であり得る。
【0017】
本発明の1つの実施態様によれば、安定化層はインクジェット印刷によって装置上に蒸着される。蒸着後、安定化層は固化又は硬化される。
【0018】
ディスプレイ装置は、polyLED(高分子発光ダイオード)又はOLED(有機発光ダイオード)に基づくディスプレイであり、ネガ型レジストのような負の傾斜を備えた突出構造を含む。
【0019】
本発明は、ディスプレイ装置のための封入構造の製造方法にも関し、装置上に封止構造を蒸着するステップと、封止構造の上に安定化層を蒸着するステップとを含む。
【0020】
本発明は、本発明に従った封入構造を含むディスプレイ装置にも関する。
【0021】
本発明のこれらの及び他の特徴は、以下に記載される実施態様を参照することで明瞭に解明されるであろう。
【0022】
本発明を添付の図面を参照してさらに記載する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明はディスプレイ装置のための封入構造に関し、封止構造3と、安定化層5とを含む。本発明の好適実施態様において、封止構造3は、第一誘電性材料の第一層6と、第二誘電性材料の第二層7とを含む。本発明の1つの実施態様において、封止構造3は第三誘電性材料の第三層8も含む。第三誘電性材料は第一誘電体層と同一の材料であり得る。
【0024】
図1は、基板1上に配置されたpolyLEDディスプレイ装置の実施態様を描写している。装置は、高分子発光ダイオード(polyLED)2及び突出部4をさらに含む。ディスプレイ装置は、誘電性材料6,7,8の三層を含む封止構造3で封止され、最終的に、安定化層5がディスプレイ装置を封入し、構造をディスプレイ装置上に安定化する。
【0025】
基板1はソーダ石灰又はボロンケイ酸塩ガラスであり得る。しかしながら、金属、プラスチック、及び/又は、可撓基板のような多少の酸素及び/又は水分浸透性を有する他の基板を用い得る。その上、基板は透明又は不透明であり得る。基板は、アクティブ構成部材、例えば、薄膜トランジスタ、及び/又は、パッシブ構成部材、例えば、ダイオード及びキャパシタでもあり得る。当業者に既知の適切な製造方法を用いて、polyLED2を基板上に形成し得る。
【0026】
酸素及び/又は水分に対する放散バリヤーとして機能する封止構造3は、ディスプレイ装置上に形成され、故に、ディスプレイ装置のより一層長い耐久性が達成される。ここで用いられる「封止構造」という用語は、本質的に水及び/又は酸素不浸透性構造、好ましくは、水及び/又は酸素に対するバリヤーをもたらす1つ又はそれ以上の層を含む薄膜を表わす。封止構造はディスプレイ装置上に蒸着され、水及び/又は酸素からディスプレイ装置を保護し、さもなければ、それらはディスプレイ装置の性能を損なうであろう。
【0027】
本発明の1つの実施態様において、封止構造3は、誘電性材料の三層6,7,8を含み、透明であり得る。封止構造の第一層6は低ピンホール密度であり、陰極材料の実質的に表面全体を被覆し得る。ディスプレイ装置を空気に晒すことなく、即ち、装置を不活性雰囲気に維持しながら、誘電性材料の第一層は陰極材料の蒸着後に形成される。第一誘電体層のためと同一技法を用いて、後続の誘電性材料層を形成し得る。
【0028】
第一層6は窒化ケイ素を含み、それはディスプレイ装置の殆どの領域を閉塞し、幾つかのピンホールを開放状態にするだけである。しかしながら、ピンホールの化学的表面が窒化物の粘着を阻止するので、これらのピンホールは窒化ケイ素層をより厚くすることによって閉塞されない。第二層7、例えば、酸化物を蒸着することによって、第一層の表面は変更され、酸化物層はピンホールを被覆する。
【0029】
しかしながら、酸化物層は、酸素/水分に対する顕著な放散バリヤーを窒化ケイ素のようにはもたらさず、従って、例えば、第一層としての使用に適した材料を含む第三層8が第二層の上に蒸着される。第三層は酸化物層に粘着し、よって、ピンホールがなく且つ良好なバリヤー特性を備える無傷の表面が達成される。
【0030】
封止構造3はN−O−N又はO−N−O構造を含んでよく、ここで、「N」は、誘電性窒化物層、例えば、窒化ケイ素又は窒化アルミニウムを意味し、ここで、「O」は、酸化ケイ素、酸フッ化ケイ素、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、又は、これらの任意の混合物の層から選択される誘電性酸化物層を意味する。とりわけ、酸化ケイ素が驚く程に良好な結果を示した。
【0031】
封止構造内に含まれる層の形成のために、低温プラズマ化学気相成長法(PECVD)を用い得る。しかしながら、用いられる材料に依存して、当業者に既知の他の技法も用い得る。
【0032】
本実施態様の封止構造は、80℃で蒸着された、約200nmの窒化ケイ素と、約300nmの酸化ケイ素と、再度、約200nmの窒化ケイ素とを含む。本発明に従ったN−O−N封止構造の例が1×10−6グラム/平方メートル/日ぐらいの低さの水浸透率を有するよう示され、材料の厚さを増大することによって、或いは、余分の層、例えば、N−O−N−O−N、O−N−O−N−O、N−O−N−O−N−O−N、又は、O−N−O−N−O−N−O封止構造を追加することによって、それを追加的に向上し得る。
【0033】
本発明の他の実施態様において、封止構造は、封止構造内に含まれる追加的な層として形成されるゲッタリング層も含む。このゲッタリング層は、水分に敏感な装置のための内蔵式水トラップとして機能する。このゲッタリング層のための適切な材料の例は、Bao及びCaOである。
【0034】
封止構造は、誘電性材料の二層間の有機高分子層も含み得る。満足し得る水/酸素不透過性を実証する他の封止構造も、単独で、或いは、上述の封止構造と共に用い得る。そのような他の封止構造は、例えば、金属層、セラミック層、これらの材料の組み合わせを単独で或いは他の層と共に含み得る。
【0035】
安定化層5は、硬化性又は他の固化可能な組成で形成され、その液相で蒸着され、そして、蒸着後に硬化されて、耐引掻性を有し、好ましくは、透明、固形、又は、非晶形な表面を形成する。安定化層のための材料は、紫外線(UV)又は熱硬化性高分子又は非高分子材料であり得る。それはインジウムのような低温融解金属化合物でもあり得る。
【0036】
非高分子材料によって、炭素基バックボーン、例えば、ケイ素基材料なしの材料が意味される。高分子材料の非限定的な例は、エポキシ基及びアクリレート基材料を含み、非高分子材料の非限定的な例は、ゲル基材料及び3−グリシドオキシプロピルトリメトキシレン(3-glycidooxypropyltrimethoxysilane)を含む。
【0037】
本発明の他の実施態様において、安定化層5は熱硬化性無機組成から形成される。良好に働く材料の例は以下の実証的な例に見い出される。材料及び対応する硬化方法は、封止構造3及びディスプレイ装置に適合するよう注意深く選択されるのが好ましい。例えば、エレクトロルミネッセンスpolyLED及びOLED材料はUV放射に対して敏感であるので、透明陰極を備えるpolyLED及びOLEDディスプレイはUV放射に対して敏感であることが多い。これらの場合には、安定化層のために熱硬化性材料を選択することが適切であることが多い。
【0038】
硬く耐引掻性を有する安定化層をディスプレイ装置上に蒸着することに伴う1つの利点は、従来技術において用いられるような余分な保護カバープレートがもはや重大ではないことである。これは、より薄く且つより軽いが、依然として耐久性のあるディスプレイ装置を製造する可能性を提供する。
【0039】
安定化層5は封止構造3上に蒸着され、封止構造の蒸着前にディスプレイ装置上に位置するネガ型レジスト及び粒子のような突出構造4を被覆するのに十分な厚さであるのが好ましい。封止構造の蒸着前の装置上の如何なるダスト粒子も、封止構造の薄さの故に、封止構造内に予期されない突出部を引き起こす。これらの突出部は水/酸素不浸透性を有するが、機械的不安定性を導入し得る。それらに加えられる如何なる機械力も、それらに表面を破壊させる原因となり、よって、封止構造に穴を開け、水及び酸素がそこを通じて浸透し得る。
【0040】
安定化層5の厚さはそのような突出部が効果的に封入されることを意味し、層の機械的剛性は突出部を安定化し、ディスプレイ装置を機械的影響に対してさらに余り敏感でなくする。
【0041】
安定化層5は、ディスプレイ装置の突出構造4の少なくとも一部を被覆するのに十分な厚さであり得る。一部の場合には、ディスプレイ装置上の粒子によって引き起こされる突出部、及び、類似サイズの他の突出部は、安定化層の本質的に平坦な表面の下にカバーされる。少なくともネガ型レジストのようなサイズを備えたより大きな構造は、依然として安定化層に突出部を引き起こす。
【0042】
他の場合には、ディスプレイ装置の表面上の本質的に全ての構造は、安定化層によって形成される本質的に平坦な表面の下にカバーされる。安定化層は突出構造上に本質的に平坦な表面を形成するのが好ましく、外部機械力の影響下で表面を破壊するために下方に横たわる構造を保護する引掻保護層として機能する。突出部が存在しない封止構造の表面上の地点から測定される安定化層の厚さは少なくとも0.1μmであり、一部の場合には、100μmまでの厚さであり得る。最適な厚さは、表面に異なる構造を備えるディスプレイ装置の異なる種類のために異なる。
【0043】
突出構造を有さないディスプレイ装置、例えば、ネガ型レジストがない一部のアクティブマトリックスディスプレイに関して、取り囲まれた粒子を安定化するために、安定化層は依然として必要である。その場合には、安定化層は少なくとも0.1μmでなければならない。
【0044】
「ネガ型レジスト」という表現によって突出区域が意味され、その傾斜は陰影領域を生成する。一部の環境下において、ネガ型レジストは垂直側壁を有する区域を含む。polyLEDディスプレイ装置では、上方電極層を蒸着するときに、電極材料が蒸着されない陰影領域を提供することによって、ネガ型レジストは上方電極層、即ち、陰極をパターン化する機能を有する。ネガ型レジストは絶縁材料から成るのが好ましく、適切な材料は高分子基フォトレジスタ、SiO、Si Alを含む。ネガ型レジスタの幅は例えば1〜50μmの範囲内であり、ネガ型レジスタの高さは例えば0.3〜10μmの範囲内である。
【0045】
安定化層はディスプレイ装置の構造も満たし、本質的にキャビティなしの締り嵌め封入を形成し、安定化層とディスプレイ装置とその封止構造との間にそれぞれ本質的にキャビティなし接触面を形成する。安定化層内又は安定化層とディスプレイ装置との間の接触面内のキャビティ又は気泡は、封入の強度のみならず、ディスプレイの、具体的には、封入構造が潜在的使用者に面する所謂上方放出ディスプレイのための光学的特性さえも損ない得る。「本質的にキャビティなし」によって、材料中にキャビティ又は気泡がないか或いは極めて少ないことが意味される。
【0046】
さらに、安定化層及び封入された封止構造中の材料は、適合する熱膨張係数を有することが好ましい。「適合」によって、装置が晒されている温度での材料の熱膨張の相違がディスプレイ装置の如何なる部分も表面破壊の原因とならないことを意味する。
【0047】
ディスプレイ装置の種類に依存して、安定化層は不透明又は透明であり得る。安定化層が潜在的使用者に面する上方放出ディスプレイのためには、可視波長中の少なくとも70%の透明性が好ましい。安定化層が潜在的使用者から見て外方を向く下方放出ディスプレイのためには、透明性は重要でない。
【0048】
幾つかの異なる方法によって安定化層をディスプレイ装置に蒸着し得る。そのような方法は、構造を定めるフォトリソグラフィを用いるスピンコーティング、シャドウマスクを用いるスプレーコーティング、フレキソ印刷、ミクロ接触印刷、スクリーン印刷、及び、インクジェット印刷を含むが、これらに限定されない。
【0049】
本発明の1つの実施態様では、安定化層は、液相にある安定化層のための材料のインクジェット印刷によって、ディスプレイ装置上に蒸着される。他の可能な方法の多くと比較すると、インクジェット法は、印刷における低い材料消費及び良好な公差及び品質(気泡なし)をもたらす。さらに、印刷ヘッドとディスプレイ装置との間の接触は不要であり、さもなければ、それは封止構造に損害を与え得る。安定化層の製造のためのインクジェット印刷及び後続の処理のためのパラメータの例が、以下の実施例に開示される。
【0050】
本発明に従った封入構造が蒸着されるディスプレイ装置は、液晶ディスプレイ、又は、発光ダイオードに基づくディスプレイ、例えば、polyLED(高分子発光ダイオード)又はOLED(有機発光ダイオード)に基づくディスプレイであり得る。ディスプレイ装置は、陰影領域を生成するネガ型レジストのような突出部を含むアクティブ又はパッシブpolyLED/OLEDディスプレイであり得る。
【0051】
本発明が上記に記載された実施態様及び以下の実験に限定されるものと考えられるべきではない。それは添付の請求項によって定められる範囲によってカバーされる全ての可能な変形を含む。耐引掻性を有する酸素及び/又は水分バリヤー封入が必要な如何なる状況においても封入構造を用い得る。
【0052】
(実施例)
実施例1:有機平坦化層
良好に働いた幾つかの異なる蒸着法によって、MicroChem Corpから商業的に入手可能なUVラッカーSU−8をネガ型レジストを備えるpolyLED装置上に蒸着した。N−O−N−O−N封止構造が既に装置上に蒸着された。ラッカーは極めて低い粘性を有し、従って、ネガ型レジスタ下の負の角を良好に充填する。ラッカーを約95℃の温度で乾燥し、次に、ラッカーをUV光(365nmで400mJ)に晒すことによって固化した。安定化層は透明であり、装置上に良好な平坦面をもたらした。
【0053】
使用された異なる蒸着法は、構造を定めるフォトリトグラフィを用いたスピンコーティング、シャドウマスクを用いるスプレーコーティング、スクリーン印刷、及び、インクジェット印刷である。異なる蒸着法に依存して、異なる濃度のUVラッカーを用いた。
【0054】
実施例2:無機平坦化層
以下の組成を混合し、2時間還流し、次に、室温まで冷却した。
− 74グラムの3−グリシドオキシプロピルトリメトキシレン
− 20グラムのメタノール
− 1グラムのアルミニウム ジ−s−ブトキシドアセト酢酸エチル
− 17グラムのHCI(0.005N)
【0055】
ネガ型レジストを備えるpolyLED装置上へのN−O−N−O−N封止構造の蒸着後、幾つかの異なる方法によって、上記に記載された組成を装置上に蒸着した。組成を80℃で乾燥し、さらに120℃で固化した。安定化層の厚さは20μm〜少なくとも60μmで変化し得た。安定化層は透明であり、装置上に良好な平坦面をもたらした。
【0056】
使用された蒸着法はシャドウマスクを備えるスプレーコーティングであった。他の可能な蒸着法はスクリーン印刷及びインクジェット印刷である。
【0057】
実施例3:インクジェット印刷
約10cPのラッカーのインクジェット印刷に適した粘性を得るために、UVラッカーSU8をγ―ブチロラクトンで希釈した。単一ノズルのインクジェットヘッドを用いて実験を遂行した。ネガ型レジストを備えるpolyLED装置上にN−O−N−O−N封止構造の蒸着後、2つの隣接する平行なネガ型レジスト間に形成されたライン中に溶剤をインクジェット印刷することによって、15μmの厚さの安定化層を装置上に蒸着した。15mm/sのテーブル速度を用いて12μmの距離で150plドロップを印刷した。どの印刷ラインも隣接する印刷ラインと結合し、ネガ型レジストを被覆する〜50μmの厚さの連続層を形成した。ラッカーを約55℃の温度で乾燥し、次に、ラッカーをUV光(365nmで400mJ)に晒すことによって固化し、15μmの厚さの安定化層を形成した。この印刷方法は、より広い領域のより迅速な印刷のための多ノズルインクジェットシステムに容易に移行される。
【0058】
この実験中、印刷された(固化されていない)液体がディスプレイ装置の縁部外に広がるのを阻止するために、突出バリヤーを2つの平行な隣接するネガ型レジスト間の空間によって形成されるラインの両端部に配置し、それらのラインをラッカーの蒸着のために用いることが好ましいことが分かった。バリヤーをラインの各端部に、2つの平行な隣接するネガ型レジストの両端部間に配置した。突出バリヤーの目的は、ディスプレイ装置からの液体ラッカーの毛管輸送を効果的に停止するために、平行な隣接するネガ型レジストの両端部間の開口を閉塞することであった。そのような突出バリヤーの使用は、ディスプレイ装置からの印刷された液体ラッカーの最小限の漏れをもたらし、その結果、安定化層で、ディスプレイ装置の縁部でさえ、平坦面が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に従った封入構造によって保護されたディスプレイ装置の1つの実施態様を概略的に示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電性の封止構造を有するディスプレイ装置のための封入構造であって、安定化層をさらに有することを特徴とする封入構造。
【請求項2】
前記封止構造は高分子材料である、請求項1に記載の封入構造。
【請求項3】
前記封止構造は、第一誘電性材料の第一層と、第二誘電性材料の第二層とを有する、請求項1又は2に記載の封入構造。
【請求項4】
前記封止構造は第三誘電性材料の第三層を有する、請求項3に記載の封入構造。
【請求項5】
前記第三誘電性材料は前記第一誘電性材料と同一である、請求項4に記載の封入構造。
【請求項6】
前記第一誘電性材料は、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、及び、これらの任意の組み合わせを有する群から選択され、前記第二誘電性材料は、酸化ケイ素、酸フッ化ケイ素、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、及び、これらの任意の組み合わせを有する群から選択される、請求項3乃至5のうちいずれか1項に記載の封入構造。
【請求項7】
前記第一誘電性材料は、酸化ケイ素、酸フッ化ケイ素、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、及び、これらの任意の組み合わせを有する群から選択され、前記第二誘電性材料は、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、及び、これらの任意の組み合わせを有する群から選択される、請求項3乃至5のうちいずれか1項に記載の封入構造。
【請求項8】
前記安定化層は、前記ディスプレイ装置の少なくとも一部の突出構造を被覆し、該突出構造に亘って本質的に平坦面を形成する、上記請求項のうちいずれか1項に記載の封入構造。
【請求項9】
本質的にキャビティなしの接触面が前記安定化層と前記封止構造との間に形成された、上記請求項のうちいずれか1項に記載の封入構造。
【請求項10】
前記安定化層の熱膨張係数が前記封止構造の熱膨張係数と本質的に同一である、上記請求項のうちいずれか1項に記載の封入構造。
【請求項11】
前記安定化層の厚さが少なくとも0.1μmである、上記請求項のうちいずれか1項に記載の封入構造。
【請求項12】
当該封入構造は透明である、上記請求項のうちいずれか1項に記載の封入構造。
【請求項13】
前記安定化層は非高分子材料である、請求項1に記載の封入構造。
【請求項14】
前記非高分子材料は硬化性無機材料である、請求項13に記載の封入構造。
【請求項15】
前記安定化層は前記ディスプレイ装置の少なくとも一部の突出構造を被覆し、前記被覆された突出構造に亘って本質的に平坦面を形成する、請求項13又は14のうちいずれか1項に記載の封入構造。
【請求項16】
本質的にキャビティなしの接触面が前記安定化層と前記封止構造との間に形成された、請求項13乃至15のうちいずれか1項に記載の封入構造。
【請求項17】
前記安定化層の熱膨張係数が前記封止構造の熱膨張係数と本質的に同一である、請求項13乃至16のうちいずれか1項に記載の封入構造。
【請求項18】
前記安定化層の厚さが少なくとも0.1μmである、請求項13乃至17のうちいずれか1項に記載の封入構造。
【請求項19】
当該封入構造は透明である、請求項13乃至18のうちいずれか1項に記載の封入構造。
【請求項20】
前記ディスプレイ装置は、polyLEDディスプレイ、OLEDディスプレイ、又は、液晶ディスプレイから選択される、上記請求項のうちいずれか1項に記載の封入構造。
【請求項21】
前記ディスプレイ装置は、陰影領域を形成する負の傾斜を備えた突出構造を有する、上記請求項のうちいずれか1項に記載の封入構造。
【請求項22】
誘電性の封止材料を蒸着するステップと、
安定化層を蒸着するステップとを有する、
ディスプレイ装置のための封入構造を製造する方法。
【請求項23】
前記安定化層を蒸着するステップは、
硬化性組成を蒸着するステップと、
該硬化性組成を硬化するステップとを有する、
請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記硬化は熱硬化である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記安定化層はインクジェット印刷によって蒸着される、請求項22乃至24のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記ディスプレイ装置は、polyLEDディスプレイ、OLEDディスプレイ、又は、液晶ディスプレイである、請求項22乃至25のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
請求項1乃至21のうちいずれか1項に記載の方法に従った封入構造を有するディスプレイ装置。
【請求項28】
請求項22乃至26のうちいずれか1項に記載の方法によって得られるディスプレイ装置。

【図1】
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【公表番号】特表2007−528018(P2007−528018A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518483(P2006−518483)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【国際出願番号】PCT/IB2004/051182
【国際公開番号】WO2005/006441
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】