ディスプレイ装置及びプログラム
【課題】視聴者が複数人の場合に適した映り込み低減処理を行なうことにより、視聴者が複数人の場合においても、視認性を向上させることのできるディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】ディスプレイに対する複数の視聴者毎の映り込み領域を推定する推定部と、各視聴者毎の映り込み領域のなかで全視聴者に対して共通する領域である重畳領域を取得する重畳領域取得部と、取得された重畳領域について映り込み低減処理をする低減部と、を有する。
【解決手段】ディスプレイに対する複数の視聴者毎の映り込み領域を推定する推定部と、各視聴者毎の映り込み領域のなかで全視聴者に対して共通する領域である重畳領域を取得する重畳領域取得部と、取得された重畳領域について映り込み低減処理をする低減部と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映り込みによる視認性の悪化を低減可能なディスプレイ装置及びディスプレイ装置の映り込み低減処理装置の動作プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスプレイ装置として、ブラウン管、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイなど種々のものが知られている。そして、ブラウン管やプラズマディスプレイなどでは、ガラス表面に映り込みが生じ、表示される映像が視認しにくくなるという問題が知られている。映り込みとは、ディスプレイの表面の光の反射量が大きいために、光源や視聴者自身を含む物体などが、ディスプレイに映り込むことをいう。映り込みが生じるか否かは、視聴環境により左右される。視聴環境とは、具体的には、光源の位置、光源の光量、光を反射する物体の有無などである。
【0003】
また、液晶ディスプレイについても、近年、光沢パネルが使用される場合が多い。光沢パネルを使用することにより、より鮮やかな表示が可能となるなどの利点があるためである。しかしながら、光沢パネルは光の反射量が大きいことにより、映り込みが生じ、表示される映像が視認しにくくなる。すなわち、ディスプレイ装置の仕組みを問わず、ディスプレイの表面の光の反射量が大きい場合には、映り込みによる視認性の悪化が共通して生じる課題となる。
【0004】
上記課題に対し、特許文献1には、表示画面(本件発明におけるディスプレイ)に対向するユーザ(本件発明における視聴者)に認識される背景領域を特定して、表示画面に表示される映像の画質を調整する映像表示装置(本件発明におけるディスプレイ装置)が開示されている。さらに、特許文献1には、背景領域の特定の前提として、ユーザの位置を検出するユーザ位置検出手段として、ユーザ検出用カメラ(撮像手段)により撮像された画像を、顔認識技術などの画像認識技術を用いて分析することも開示されている(0034段落から0036段落参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−031337
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された先行技術は、視聴者が1人の時しか考慮しておらず、視聴者が複数人の場合に適した映り込み低減処理を行うことができない。以下、説明する。
【0007】
図1は、視聴者が1人の場合における視聴環境の一例を示す模式図である。この図には、ディスプレイ(0101)に対する1人の視聴者(0102)と、光源(0103)とが示されている。
【0008】
また、図2は、視聴者が1人の場合の映り込み低減処理による視認性の向上について説明するための図である。図2(a)は、表示装置によって表示されるべき原映像である。図2(b)は、図1のような視聴環境である場合に映り込みによってディスプレイに生じる映り込み映像を示している。図2(c)は、映り込み低減処理を行わない場合に視聴者によって視認されることとなる映像を示している。これに対し、図2(d)は、原映像(図2(b))に対して映り込み低減処理を行った映り込み低減映像である。図2(e)は、映り込み低減処理が行われた場合に視聴者によって視認されることとなる映像を示している。図2(c)と図2(e)とを比較すると、映り込み低減処理を行った場合の方が、視認性が向上する。
【0009】
図3は、視聴者が複数の場合における映り込みによる視認性の悪化について説明するための図である。図3(a)は、表示装置によって表示されるべき原映像である。図3(b)は、ディスプレイに対する2人の視聴者(視聴者A及び視聴者B)のうち、一方(視聴者A)から見た映り込み映像、図3(c)は、視聴者Bから見た映り込み映像を示している。図3(b)と図3(c)との比較により示されるように、視聴者Aから見た映り込み映像と視聴者Bから見た映り込み映像とは異なる。しかしながら、特許文献1には、このように視聴者が複数の場合に各視聴者毎の映り込み映像が異なることについて、そもそも開示されておらず、したがって、いかなる構成により、視聴者が複数人の場合に適した映り込み低減処理を行なうことができるかも不明であった。映り込み低減処理が行われないと、図3(d)(e)のように、映り込みが生じて、視認性が悪化する。
【0010】
本件発明は、視聴者が複数人の場合に適した映り込み低減処理を行なうことにより、視聴者が複数人の場合においても、視認性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の課題を解決するため、本願出願人は、次のディスプレイ装置を提案する。
【0012】
すなわち、第一の発明として、ディスプレイに対する複数の視聴者毎の映り込み領域を推定する推定部と、各視聴者毎の映り込み領域のなかで全視聴者に対して共通する領域である重畳領域を取得する重畳領域取得部と、取得された重畳領域について映り込み低減処理をする低減部と、を有するディスプレイ装置、を提案する。
【0013】
第二の発明として、推定部は、撮像手段と、撮像手段によって視聴者位置を取得する視聴者位置取得手段と、取得された視聴者位置毎にディスプレイに対する映り込み領域を推定する映り込み推定手段と、からなる第一の発明に記載のディスプレイ装置、を提案する。
【0014】
第三の発明として、重畳領域の取得は、ディスプレイ領域を分割して設定されるブロック単位で取得される第一の発明または第二の発明に記載のディスプレイ装置、を提案する。
第四の発明として、各視聴者毎の映り込み領域のなかで全視聴者に対して共通しない領域に関しては映り込み低減処理をしない非重畳領域回避部を有する第一の発明から第三の発明のいずれか一に記載のディスプレイ装置、を提案する。
【0015】
第五の発明として、第一の発明から第四の発明のいずれか一に記載のディスプレイ装置を含むテレビ受像装置、を提案する。
【0016】
第六の発明として、ディスプレイ装置の映り込み低減処理装置の動作プログラムであって、視聴者を含む視聴環境の映像を取得する映像取得ステップと、取得した映像を分析して、ディスプレイに対する複数の視聴者毎の映り込み領域を推定する推定ステップと、各視聴者毎の映り込み領域のなかで全視聴者に対して共通する領域である重畳領域を取得する重畳領域取得ステップと、取得された重畳領域について映り込み低減処理をする低減ステップと、を計算機に実行させるためのディスプレイ装置の映り込み低減処理装置の動作プログラム、を提案する。
【0017】
第七の発明として、第六の発明に記載のディスプレイ装置の映り込み低減処理装置の動作プログラムを記憶した記憶媒体、を提案する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のディスプレイ装置及びディスプレイ装置の映り込み低減処理装置の動作プログラムにより、視聴者が複数人である場合にも、各視聴者毎の映り込みの違いに応じた適切な映り込み低減処理を行った映像を表示することができる。このため、ディスプレイ装置の視認性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本件発明の実施の形態について、添付の図面を用いて説明する。なお、本件発明は、これら実施の形態に何ら限定されるべきものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。なお、実施形態1は、主に請求項1、5、6及び7などに関する。実施形態2は、主に請求項2などに関する。実施形態3は、主に請求項3などに関する。実施形態4は、主に請求項4などに関する。
<<実施形態1>>
<実施形態1:概要>
【0020】
本実施形態のディスプレイ装置は、複数の視聴者毎の映り込み領域を推定し、これらの映り込み領域の共通部分を重畳領域として取得して、少なくとも、この重畳領域について映り込み低減処理を行うことを特徴とする。
<実施形態1:機能的構成>
【0021】
図4は、本実施形態のディスプレイ装置の機能ブロックの一例を示す図である。(a)にはディスプレイ装置一般の機能ブロックを、(b)には液晶ディスプレイの場合の機能ブロックを示している。液晶ディスプレイの場合については、後述する。
【0022】
図4(a)を参照する。本実施形態のディスプレイ装置(0401)は、推定部(0402)と、重畳領域取得部(0403)と、低減部(0404)と、を有する。
【0023】
なお、以下に詳述する本発明の構成要素である各部は、ハードウェア、ソフトウェア、ハードウェアとソフトウェアの両方のいずれかによって構成される。例えば、これらを実現する一例として、コンピュータを利用する場合には、CPU、バス、メモリ、インタフェース、周辺装置などで構成されるハードウェアと、それらハードウェア上で実行可能なソフトウェアがある。ソフトウェアとしては、メモリ上に展開されたプログラムを順次実行することで、メモリ上のデータや、インタフェースを介して入力されるデータの加工、保存、出力などにより各部の機能が実現される。(明細書の全体を通じて同様である。)
(推定部)
【0024】
「推定部」は、ディスプレイに対する複数の視聴者毎の映り込み領域を推定する機能を有する。「映り込み領域」は、ディスプレイに対して映り込みが生じている領域をいう。
【0025】
前述のとおり、映り込みが生じるか否か、どの程度の映り込みが生じるかは、視聴環境により左右される。視聴環境とは、具体的には、ディスプレイに対する光源の位置、その光源の光量、ディスプレイに対して光を反射する物体の有無などである。さらに、ディスプレイの明るさも影響を与えるので、ディスプレイに表示されるコンテンツ映像の内容にも影響される場合がある。また、複数の視聴者毎の映り込み領域は、各視聴者とディスプレイとの相対的位置関係によって変化する。そこで、複数の視聴者が同時に(同じ視聴環境で)ディスプレイを視認している場合にも、各視聴者毎の映り込み領域を推定する必要がある。この推定は、例えば、ディスプレイに映りこむこととなる可能性のある視聴環境の映像(視聴環境映像)と、視聴者位置の情報とに基づいて算出可能である。具体的には、ディスプレイと視聴者との相対的位置関係から、視聴環境映像中、ディスプレイに映りこむこととなる映り込み領域が推定できる。さらに、ディスプレイに表示されるべき原映像(コンテンツ映像)に関する情報も利用して推定を行えば、実際の映り込み映像に近い映り込み映像を推定可能であるので好ましい。
【0026】
視聴環境映像の取得は、カメラ等の撮像手段によって行うことができる。あるいは、視聴環境が一定の場合には、あらかじめ視聴環境映像を推定部に保持していても良い。
【0027】
また、視聴者位置の取得は、撮像手段によって取得された視聴環境映像によることもできる。この点は、実施形態2において詳述する。あるいは、視聴者位置の取得は、赤外線センサ等の各種センサによることもできる。
【0028】
また、推定部において推定される複数の視聴者毎の映り込み領域は、ディスプレイに生じる具体的な映り込み「映像」として推定されてもよい。各視聴者毎の映り込み映像は、映り込み領域の情報を当然に含むので、各視聴者毎の映り込み映像を推定する機能を有する構成も当然に本実施形態のディスプレイ装置の構成を満たすからである。あるいは、映り込み領域は、視聴環境映像中で、一定の輝度となる領域がディスプレイ上に占める座標情報として推定されていてもよい。
【0029】
なお、推定部によって映り込み領域が推定される各視聴者は、必ずしもディスプレイを視認している視聴者全員でなくとも良い。例えば、推定部によって複数の視聴者のうちの一部しか視聴者位置が取得できなかったとしても、視聴者位置を取得できた視聴者毎の映り込み領域を推定する場合は、本件発明の構成要件に該当する。
【0030】
また、視聴者が極めて多数の場合などにおいては、視聴者位置が取得できた視聴者のうちの一部(一例としてディスプレイから所定の距離内の視聴者)を選択して、選択された複数の視聴者について、各視聴者毎の映り込み領域を推定してもよい。あるいは、近接した位置にいる視聴者らの中間に仮想的な視聴者位置を想定して、この仮想的な視聴者から見た映り込み領域を推定しても良い。このように、映り込み領域を推定すべき視聴者数を限定することにより、映り込み領域の推定のために必要な処理が過大なために処理速度が遅くなるなどの問題が生じるおそれを回避できる。
(重畳領域取得部)
【0031】
「重畳領域取得部」は、重畳領域を取得する機能を有する。「重畳領域」は、各視聴者毎の映り込み領域のなかで全視聴者に対して共通する領域である。
【0032】
重畳領域は、推定部によって推定された複数の映り込み領域を相互に参照して取得できる。例えば、各映り込み領域のディスプレイ上に占める座標位置を参照して、映り込み領域の重なり合う領域を算出するといった具合である。図5を用いて重畳領域の取得について説明する。図5(a)は、視聴者Aから見た映り込み映像(図3(b)と同じ)、図5(b)は、視聴者Bから見た映り込み映像(図3(c)と同じ)である。これらを重ね合わせた場合に取得される重畳領域は、図5(c)となる。図5(h)は、視聴環境の一例を模式的に示しており、ディスプレイ装置(0501)、視聴者A(0502)、視聴者B(0503)、ディスプレイに対して光を反射する物体(0504)、視聴環境映像を取得するためのカメラ(0505)が図示されている。なお、図5(d)から(g)の図は、低減部において説明する。
(低減部)
【0033】
「低減部」は、取得された重畳領域について映り込み低減処理をする機能を有する。「映り込み低減処理」は、映り込みによる視認性の悪化を低減させるための処理をいう。
【0034】
映り込み低減処理の一例としては、ディスプレイ装置によって表示されるべき原映像の各ピクセルの映像情報に対して、ディスプレイに対して映りこむと推定される映り込み映像の各ピクセルの映像情報を差し引くという処理が挙げられる。輝度を例にして具体的に説明すると、原映像のピクセルの輝度が10であり、映り込み映像の対応するピクセルの輝度が2であった場合、映り込み低減処理をしなければ、視聴者から見た映像のピクセルの輝度は12となる。このため、原映像の輝度よりもディスプレイが明るく見えて、視認性が悪化する。これに対し、映り込み低減処理によって原映像の輝度を8に変更することで、視聴者から見た映像のピクセルの輝度を視認されるべき原映像の輝度と同様とすることが可能となるといった具合である。
【0035】
図5(d)以降を用いて低減処理の具体的一例を説明する。図5(c)のように重畳領域が取得された場合、この重畳領域について、原映像(図5(d))に映り込み低減処理がされ、映り込み低減映像(図5(e))が作成される。これらの映り込み低減映像がディスプレイに表示された場合、視聴者Aが見ることとなる映像(図5(f))及び、視聴者Bが見ることとなる映像(図5(g))は、それぞれ原映像が表示された場合(図3(d)及び(e))に比べて視認性が向上する。
【0036】
映り込み低減処理は、取得された重畳領域について行えば良い。重畳領域以外の部分について映り込み低減処理を行うか否かは、本実施形態において特に限定されない。例えば、重畳領域以外の部分の全部又は一部について映り込み低減処理を行う構成であっても良い。あるいは、重畳領域以外の部分については処理を行わない構成であっても良い。これらの構成については、後述する実施形態4でさらに説明する。
【0037】
映り込み低減処理された映りこみ低減映像はディスプレイに表示される。特に、液晶ディスプレイの場合について、図4(b)を用いて説明する。この図には、図4(a)と同様に本実施形態の各部が示されているほか、バックライト(0405)の輝度を調整するバックライト駆動部(0406)、液晶パネル(0407)を制御する液晶パネル駆動部(0408)が示されている。これらのバックライト駆動部と液晶パネル駆動部との協働によりディスプレイへの映像表示が制御される。そして、映り込み低減映像をディスプレイに表示する際には、バックライト駆動部にてバックライトの輝度のみを調整してもよいし、液晶パネル駆動部にて液晶パネルの輝度のみを調整してもよいし、両者を調整することもできる。
(テレビ受像装置)
【0038】
本件発明には、本実施形態のディスプレイ装置を含むテレビ受像装置も含まれる。テレビ受像装置は、以上に述べたところの本実施形態のディスプレイ装置の各機能的構成に加えて、さらに、放送されたコンテンツデータを受信する機能と、受信したコンテンツデータをディスプレイ装置にて表示可能となるよう処理する機能とを備える。
<実施形態1:ハードウェア構成>
【0039】
次に、本実施形態のディスプレイ装置のハードウェア構成について説明する。図6は、本実施形態のディスプレイ装置のハードウェア構成の一例を示す概略図である。この図にあるように、本実施形態のディスプレイ装置は、「CPU」(0601)と、「主メモリ」(0602)と、「記憶装置」(0603)と、I/O(0604、0604、0604)と、から構成され、それらが「システムバス」(0605)などのデータ通信経路によって相互に接続され、情報の送受信や処理を行う。さらに、I/Oに接続されたディスプレイ(0606)を備えている。
【0040】
記憶装置はCPUによって実行される各種プログラムなどを記憶している。また主メモリは、プログラムがCPUによって実行される際の作業領域であるワーク領域を提供する。また、この主メモリや記憶装置にはそれぞれ複数のメモリアドレスが割り当てられており、CPUで実行されるプログラムは、そのメモリアドレスを特定しアクセスすることで相互にデータのやりとりを行い、処理を行うことが可能になっている。
【0041】
本実施形態のディスプレイ装置の電源が入れられると、記憶装置に保持されている推定プログラム、重畳領域取得プログラム、低減プログラム等のプログラムが主メモリ上に展開される。
【0042】
そして、推定部を構成するCPUは、主メモリ上に展開された推定プログラムに従って、複数の視聴者毎の映り込み領域を推定する。その際、I/Oに接続された周辺機器を通じて主メモリに取得された視聴環境映像や、視聴者位置に関する情報などが、必要に応じて参照される。推定された各視聴者毎の映り込み領域に関する情報は、主メモリに保持される。
【0043】
次に、重畳領域取得部を構成するCPUは、主メモリに保存された各視聴者毎の映り込み領域に関する情報を利用して、重畳領域取得プログラムにしたがって、各視聴者毎の映り込み領域のなかで全視聴者に対して共通する領域である重畳領域を取得する。取得された重畳領域に関する情報は、主メモリに保持される。
【0044】
次に、低減部を構成するCPUは、主メモリ上に保存された重畳領域に関する情報を利用して、低減プログラムにしたがって、取得された重畳領域について映り込み低減処理を実行する。具体的には、記憶装置にあらかじめ保持されているか、あるいは、I/Oを通じて主メモリ(またはビデオメモリ)に取得された、ディスプレイ装置によって表示されるべき原映像について、当該原映像の各ピクセルの映像情報に対して、映り込み映像の各ピクセルの映像情報を差し引くという演算を行うといった具合である。映り込み低減処理をされた映り込み低減映像は、主メモリ上(またはビデオメモリ上)に保存され、CPU(またはGPU)の処理によって、ディスプレイに表示される。
【0045】
もちろん上記例は一例であって、視聴者毎にどのような映り込み映像が生じるかが判明している場合(例えば、ディスプレイや光源の位置、視聴者の着席すべき椅子の位置などが固定されている場合)には、この視聴者毎の映り込み映像の推定結果があらかじめ推定部を構成する記憶領域に保持されていてもよい。この場合は、重畳領域取得部において、視聴者位置(例えば視聴者が座っている椅子の位置)に応じて、重畳領域が取得されるような構成であってもよい。
<実施形態1:処理の流れ>
【0046】
図7は、本実施形態のディスプレイ装置における処理の流れの一例を表すフローチャートである。なお、以下に示すステップは、上記のような計算機の各ハードウェア構成によって実行されるステップであっても良いし、あるいは媒体に記録され計算機を制御するためのプログラムを構成する処理ステップであっても構わない。ここでは、以下に述べる各ステップを計算機に実行させるためのディスプレイ装置の映り込み低減処理装置の動作プログラムとして説明する。なお、このプログラムを記憶したコンピュータに読み取り可能な記憶媒体も本件発明に含まれる。
【0047】
本実施形態のディスプレイ装置の映り込み低減処理装置の動作プログラムは、映像取得ステップ(0701)と、推定ステップ(0702)と、重畳領域取得ステップ(0703)と、低減ステップ(0704)と、を計算機に実行させるためのディスプレイ装置の映り込み低減処理装置の動作プログラムである。
【0048】
映像取得ステップでは、視聴者を含む視聴環境の映像を取得する。なお、視聴環境の映像は、あらかじめ記憶装置に保持されており、当該記憶装置から読み込む場合も「取得」に含まれる。あるいは、映像取得ステップは、後述する実施形態2のようにカメラ等の撮像手段によって取得されても良い。
【0049】
推定ステップでは、映像取得ステップにおいて取得された視聴環境映像や視聴者位置等に基づいて、ディスプレイに対する複数の視聴者毎の映り込み領域が推定される。
【0050】
重畳領域取得ステップでは、推定ステップにおいて推定された各視聴者毎の映り込み領域のなかで全視聴者に対して共通する領域である重畳領域を取得する。
【0051】
低減ステップでは、重畳領域取得ステップにおいて取得された重畳領域について映り込み低減処理を行い、その結果をディスプレイに表示する。
【0052】
以上の各ステップは、ディスプレイに表示されるべき映像コンテンツの1フレームにつき1回行われるのが好ましい。
<実施形態1:効果>
【0053】
本実施形態のディスプレイ装置により、視聴者が複数人である場合にも、各視聴者毎の映り込みの違いに応じた適切な映り込み低減処理を行った映像を表示することができる。このため、ディスプレイ装置の視認性が向上する。
<<実施形態2>>
<実施形態2:概要>
【0054】
本実施形態のディスプレイ装置は、実施形態1を基本としつつ、推定部の構成に特徴を有する。つまり、推定部は撮像手段で撮像された視聴環境映像(本実施形態において、視聴環境映像は、視聴者を含んだ映像である。)を分析することで、視聴者位置を取得する点に特徴を有する。
<実施形態2:機能的構成>
【0055】
本実施形態のディスプレイ装置は、推定部と、重畳領域取得部と、低減部と、を有する。重畳領域取得部、低減部については、実施形態1で述べたところと同様であるので、説明を省略する。
【0056】
本実施形態のディスプレイ装置の推定部は、撮像手段と、視聴者位置取得手段と、映り込み推定手段と、からなる。
【0057】
「撮像手段」は、カメラ等の撮像が可能な装置である。撮像手段は、視聴環境映像を撮影可能である。撮像手段は、ディスプレイ側から視聴者を含めた視聴環境映像を撮像可能であるように、ディスプレイの前面(視聴者側)に設けられていることが好ましい。前述した図5(h)には、ディスプレイの前面中央下部に撮像手段(カメラ、0505)を設けた例が示されている。撮像手段の個数は限定されないが、例えばディスプレイ前面の左右に設けて、視聴環境映像を撮影することとすれば、ディスプレイと視聴者との距離を視差によって分析可能であるので、視聴者位置をより正確に取得可能となる。ただし、映り込み領域を推定する上で重要なのは視聴者がディスプレイの中央に正対しているか、左右いずれかの方向に寄っているかという「方向」である。したがって、視聴者位置は、ディスプレイに対する視聴者の方向を含んでいれば良く、必ずしも距離を含んでいなくとも良い。
【0058】
「視聴者位置取得手段」は、撮像手段によって視聴者位置を取得する機能を有する。例えば、撮像手段によって撮影された視聴環境映像について、顔認識技術を用いることで、視聴者位置を取得することができる。
【0059】
「映り込み推定手段」は、取得された視聴者位置毎にディスプレイに対する映り込み領域を推定する。具体的には、視聴者位置に応じて、視聴環境映像から映り込み領域を算出するといった具合である。
【0060】
その他、推定部の構成については、本実施形態と矛盾しないかぎり、実施形態1で述べたところと同様である。
<実施形態2:ハードウェア構成>
【0061】
推定部以外のハードウェア構成は、実施形態1と同様であるので、説明を省略する。以下、推定部のハードウェア構成について説明する。
【0062】
撮像手段を構成するCPUは、主メモリ上に展開された推定プログラムを構成する撮像モジュールに従って、カメラ等の撮像可能な入力機器を制御し、視聴環境映像を取得する。取得された視聴環境映像は、主メモリに保持される。
【0063】
次に、視聴者位置取得手段を構成するCPUは、主メモリ上に展開された推定プログラムを構成する視聴者位置取得モジュールに従って、取得された視聴環境映像を分析して視聴者位置を推計して取得する。
【0064】
次に、映り込み推定手段を構成するCPUは、主メモリ上に展開された推定プログラムを構成する映り込み推定モジュールに従って、視聴環境映像から視聴者位置毎の映り込み映像を算出する。
<実施形態2:処理の流れ>
【0065】
本実施形態のディスプレイ装置における処理の流れは、推定ステップと、重畳領域取得ステップと、低減ステップと、からなる。さらに、推定ステップは、撮像ステップと、視聴者位置取得ステップと、映り込み推定ステップと、からなる。
【0066】
重畳領域取得ステップと、低減ステップと、については実施形態1で述べたところと同様であるので、説明を省略する。以下、推定ステップについて説明する。
【0067】
撮像ステップでは、視聴環境映像を取得する。次に、視聴者位置取得ステップでは、取得された視聴環境映像を分析して、視聴者位置を取得する。次に、映り込み推定ステップでは、視聴環境映像と、視聴者位置とから、各視聴者毎の映り込み領域を推定する。
<実施形態2:効果>
【0068】
本実施形態のディスプレイ装置により、視聴者が複数人である場合にも、各視聴者毎の映り込みの違いに応じた適切な映り込み低減処理を行った映像を表示することができる。このため、ディスプレイ装置の視認性が向上する。
<<実施形態3>>
<実施形態3:概要>
【0069】
本実施形態のディスプレイ装置は、実施形態2を基本としつつ、重畳領域取得部における重畳領域の取得は、ディスプレイ領域を分割して設定されるブロック単位で取得される点に特徴がある。
<実施形態3:機能的構成>
【0070】
本実施形態のディスプレイ装置は、推定部と、重畳領域取得部と、低減部と、を有する。さらに、推定部は、撮像手段と、視聴者位置取得手段と、映り込み推定手段と、からなる場合がある。
【0071】
推定部(撮像手段と、視聴者位置取得手段と、映り込み推定手段)、重畳領域取得部、低減部については、以下に述べる重畳領域の取得に関する点を除き、実施形態1または2において述べたところと同様であるので、説明を省略する。
【0072】
本実施形態のディスプレイ装置の重畳領域取得部における重畳領域の取得は、ディスプレイ領域を分割して設定されるブロック単位で取得される。
【0073】
「ディスプレイ領域を分割して設定されるブロック単位」とは、ディスプレイ領域を所定数のブロックに分割した場合の各ブロック単位をいう。各ブロック単位は、複数ピクセル単位である。例えば、MPEG処理におけるマクロブロックの単位でもよいし、これより大きな(あるいは小さな)領域が1単位となる場合もある。
【0074】
図8を用いて、ブロック単位で重畳領域を取得する処理の一例を示す。この図で、画像A及び画像Bは、それぞれ各視聴者毎の映り込み映像(映像中の1フレームを画像として抽出したもの)である。画像A、Bは、ディスプレイ領域を分割して設定されるブロック単位で区切られ、各ブロック毎に比較が行われる。画像A、Bについて対応するブロック同士を比較して映り込み度合いの差分を測定し、同等の映り込み度合いである(例えば、輝度が同等である)場合にはそのブロックを重畳領域として抽出する。一方、同等の映り込み度合いでない場合には次のブロックについて映り込み度合いの差分を測定する処理を行う。これらの処理を全てのブロックについて処理が終了するまで繰り返す。
<実施形態3:ハードウェア構成、処理の流れ>
【0075】
本実施形態のハードウェア構成及び処理の流れについては、実施形態1及び2で述べたところと同様であるので、説明を省略する。
<実施形態3:効果>
【0076】
重畳領域の取得をブロック単位で行うことにより、ピクセル単位で処理を行う場合に比べて処理を軽くすることができる。
<<実施形態4>>
<実施形態4:概要>
【0077】
実施形態1から3では、重畳領域以外の部分について、低減処理を行うのか否かについて限定がない。本実施形態では、非重畳領域回避部を有することにより、全視聴者に対して共通しない領域に関しては映り込み低減処理をしない点に特徴がある。
<実施形態4:機能的構成>
【0078】
図9は、本実施形態のディスプレイ装置の一例を示す機能ブロック図である。本実施形態のディスプレイ装置(0901)は、推定部(0902)と、重畳領域取得部(0903)と、低減部(0904)と、非重畳領域回避部(0905)と、を有する。なお、推定部は、撮像手段と、視聴者位置取得手段と、映り込み推定手段と、からなる場合がある。
【0079】
推定部(撮像手段と、視聴者位置取得手段と、映り込み推定手段)、重畳領域取得部、低減部については、実施形態1から3において述べたところと同様であるので、説明を省略する。
【0080】
非重畳領域回避部は、非重畳領域に関しては映り込み低減処理をしない。非重畳領域は、各視聴者毎の映り込み領域のなかで全視聴者に対して共通しない領域である。「全視聴者に対して共通しない」とは、視聴者A、B、Cを例にすると、A、B、Cのすべてに対して共通しないとの意味である。一部の視聴者に対して共通する場合、例えば、AとBとで共通するが、Cには共通しない場合は、「全視聴者に対して共通しない」ものではない。すなわち、AとB、AとC、BとCなど、各視聴者を任意のペアにしても、共通しない領域が非重畳領域である。
【0081】
仮に非重畳領域について映り込み低減処理をするとする。例えば、Aのみに対して映り込みが生じる映り込み領域について、映り込み低減処理をする。すると、Aにとっては、視認性が向上するものの、BやCなど、他の視聴者は原映像と異なる映像を見なければならず、視認性がかえって悪化する。すなわち、非重畳領域においては、ある視聴者の視認性を高めようとすると、他の視聴者の視認性が悪化するという関係にある。そこで、非重畳領域については映り込み低減処理をしないことによって、一部の視聴者の視認性を向上させることにより他の視聴者の視認性を悪化させることを回避し、全視聴者の視認性に関する満足度を平等に向上させることができる。
【0082】
非重畳領域回避部は、低減部そのものであって、低減部以外に映り込み低減処理をすべき機能を有する部が存在しない場合であってもよい。
【0083】
あるいは、非重畳領域回避部は、各視聴者毎の映り込み領域のなかで、一部の視聴者に対して共通する領域である一部重畳領域について、低減処理をする構成であってもよい。さらに、一部重畳領域について、共通する視聴者数や、全視聴者に占める共通する視聴者数の割合に応じて、低減処理をするかしないかを判断する構成であっても良い。一部重畳領域については、一部の視聴者の視認性を向上させることと引き換えにその他の視聴者の視認性を悪化させるとしても、視聴者全体としての視認性に関する満足度を向上させることができる場合があるからである。
<実施形態4:ハードウェア構成>
【0084】
本実施形態のハードウェア構成は、以下に述べる非重畳領域回避部を除き、実施形態1から3で述べたところと同様であるので、説明を省略する。さらに、非重畳領域回避部が低減部そのものである場合には、非重畳領域回避部は、低減部のハードウェア構成と同一である。
【0085】
あるいは、非重畳領域回避部は、前述のように、一部重畳領域について低減処理を行う構成であるなど、低減部における映り込み低減処理とは異なる処理を行うべき機能を有する場合がある。この場合、非重畳領域回避部を構成するCPUは、主メモリに展開された非重畳領域回避プログラムに従って、一部重畳領域等を取得し、取得された一部重畳領域について低減処理を実行する(あるいは実行しない)。
<実施形態4:処理の流れ>
【0086】
本実施形態のディスプレイ装置における処理の流れは、推定ステップと、重畳領域取得ステップと、低減ステップと、非重畳領域回避ステップと、からなる。さらに、推定ステップは、撮像ステップと、視聴者位置取得ステップと、映り込み推定ステップと、からなる場合がある。
【0087】
推定ステップ(撮像ステップと、視聴者位置取得ステップと、映り込み推定ステップ)と、重畳領域取得ステップと、低減ステップと、については実施形態1から3で述べたところと同様であるので、説明を省略する。さらに、非重畳領域回避部が低減部そのものである場合には、非重畳領域回避ステップにおける処理は低減ステップにおける処理と同一である。
【0088】
あるいは、非重畳領域回避部は、前述のように、一部重畳領域について低減処理を行う構成であるなど、低減部における映り込み低減処理とは異なる処理を行うべき機能を有する場合がある。この場合、非重畳領域回避ステップでは、一部重畳領域等を取得し、取得された一部重畳領域について、低減処理を実行する(あるいは実行しない)。さらに、非重畳領域回避ステップは、低減処理を実行すべきか判定するプロセスを含んでいてもよい。
<実施形態4:効果>
【0089】
本実施形態のディスプレイ装置により、視聴者が複数人である場合にも、各視聴者毎の映り込みの違いに応じた適切な映り込み低減処理を行った映像を表示することができる。このため、ディスプレイ装置の視認性が向上する。
【0090】
さらに、本実施形態のディスプレイ装置は、非重畳領域回避部により、非重畳領域については映り込み低減処理をしないことによって、一部の視聴者の視認性を向上させることにより他の視聴者の視認性を悪化させることを回避し、全視聴者の視認性に関する満足度を平等に向上させることができる。
【実施例1】
【0091】
図10は、視聴者が1人の場合にも映り込み低減処理可能なディスプレイ装置について処理の流れの一例を示すフローチャートである。本実施例のディスプレイ装置は、実施形態1から4のいずれか一を基本としつつ、視聴者が1人の場合にも映り込み低減映像を作成可能である。以下、処理の流れを説明する。本実施例のディスプレイ装置は、カメラで撮像した視聴環境映像に基づいて視聴者位置等を検出する。視聴者が0人であった場合には、カメラでの撮像を間欠的に行う。視聴者が1人であった場合は、映り込み低減映像を作成する。視聴者が2人以上であった場合は、実施形態1から4に記載したとおり、映り込み重畳領域について、共通の映り込み低減映像を作成する。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】視聴者が1人の場合における視聴環境の一例を示す模式図
【図2】視聴者が1人の場合の映り込み低減処理による視認性の向上について説明するための図
【図3】視聴者が複数の場合における映り込みによる視認性の悪化について説明するための図
【図4】実施形態1のディスプレイ装置の機能ブロックの一例を示す図
【図5】重畳領域の取得及び低減処理の具体的一例を説明するための図
【図6】実施形態1のディスプレイ装置のハードウェア構成の一例を示す概略図
【図7】実施形態1のディスプレイ装置における処理の流れの一例を表すフローチャート
【図8】実施形態3のディスプレイ装置におけるブロック単位の重畳領域取得処理の流れの一例を表すフローチャート
【図9】実施形態4のディスプレイ装置の機能ブロックの一例を示す図
【図10】実施例1のディスプレイ装置の処理の流れの一例を表すフローチャート
【符号の説明】
【0093】
ディスプレイ 0101
視聴者 0102
光源 0103
ディスプレイ装置 0401、0901
推定部 0402、0902
重畳領域取得部 0403、0903
低減部 0404、0904
非重畳領域回避部 0905
【技術分野】
【0001】
本発明は、映り込みによる視認性の悪化を低減可能なディスプレイ装置及びディスプレイ装置の映り込み低減処理装置の動作プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスプレイ装置として、ブラウン管、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイなど種々のものが知られている。そして、ブラウン管やプラズマディスプレイなどでは、ガラス表面に映り込みが生じ、表示される映像が視認しにくくなるという問題が知られている。映り込みとは、ディスプレイの表面の光の反射量が大きいために、光源や視聴者自身を含む物体などが、ディスプレイに映り込むことをいう。映り込みが生じるか否かは、視聴環境により左右される。視聴環境とは、具体的には、光源の位置、光源の光量、光を反射する物体の有無などである。
【0003】
また、液晶ディスプレイについても、近年、光沢パネルが使用される場合が多い。光沢パネルを使用することにより、より鮮やかな表示が可能となるなどの利点があるためである。しかしながら、光沢パネルは光の反射量が大きいことにより、映り込みが生じ、表示される映像が視認しにくくなる。すなわち、ディスプレイ装置の仕組みを問わず、ディスプレイの表面の光の反射量が大きい場合には、映り込みによる視認性の悪化が共通して生じる課題となる。
【0004】
上記課題に対し、特許文献1には、表示画面(本件発明におけるディスプレイ)に対向するユーザ(本件発明における視聴者)に認識される背景領域を特定して、表示画面に表示される映像の画質を調整する映像表示装置(本件発明におけるディスプレイ装置)が開示されている。さらに、特許文献1には、背景領域の特定の前提として、ユーザの位置を検出するユーザ位置検出手段として、ユーザ検出用カメラ(撮像手段)により撮像された画像を、顔認識技術などの画像認識技術を用いて分析することも開示されている(0034段落から0036段落参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−031337
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された先行技術は、視聴者が1人の時しか考慮しておらず、視聴者が複数人の場合に適した映り込み低減処理を行うことができない。以下、説明する。
【0007】
図1は、視聴者が1人の場合における視聴環境の一例を示す模式図である。この図には、ディスプレイ(0101)に対する1人の視聴者(0102)と、光源(0103)とが示されている。
【0008】
また、図2は、視聴者が1人の場合の映り込み低減処理による視認性の向上について説明するための図である。図2(a)は、表示装置によって表示されるべき原映像である。図2(b)は、図1のような視聴環境である場合に映り込みによってディスプレイに生じる映り込み映像を示している。図2(c)は、映り込み低減処理を行わない場合に視聴者によって視認されることとなる映像を示している。これに対し、図2(d)は、原映像(図2(b))に対して映り込み低減処理を行った映り込み低減映像である。図2(e)は、映り込み低減処理が行われた場合に視聴者によって視認されることとなる映像を示している。図2(c)と図2(e)とを比較すると、映り込み低減処理を行った場合の方が、視認性が向上する。
【0009】
図3は、視聴者が複数の場合における映り込みによる視認性の悪化について説明するための図である。図3(a)は、表示装置によって表示されるべき原映像である。図3(b)は、ディスプレイに対する2人の視聴者(視聴者A及び視聴者B)のうち、一方(視聴者A)から見た映り込み映像、図3(c)は、視聴者Bから見た映り込み映像を示している。図3(b)と図3(c)との比較により示されるように、視聴者Aから見た映り込み映像と視聴者Bから見た映り込み映像とは異なる。しかしながら、特許文献1には、このように視聴者が複数の場合に各視聴者毎の映り込み映像が異なることについて、そもそも開示されておらず、したがって、いかなる構成により、視聴者が複数人の場合に適した映り込み低減処理を行なうことができるかも不明であった。映り込み低減処理が行われないと、図3(d)(e)のように、映り込みが生じて、視認性が悪化する。
【0010】
本件発明は、視聴者が複数人の場合に適した映り込み低減処理を行なうことにより、視聴者が複数人の場合においても、視認性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の課題を解決するため、本願出願人は、次のディスプレイ装置を提案する。
【0012】
すなわち、第一の発明として、ディスプレイに対する複数の視聴者毎の映り込み領域を推定する推定部と、各視聴者毎の映り込み領域のなかで全視聴者に対して共通する領域である重畳領域を取得する重畳領域取得部と、取得された重畳領域について映り込み低減処理をする低減部と、を有するディスプレイ装置、を提案する。
【0013】
第二の発明として、推定部は、撮像手段と、撮像手段によって視聴者位置を取得する視聴者位置取得手段と、取得された視聴者位置毎にディスプレイに対する映り込み領域を推定する映り込み推定手段と、からなる第一の発明に記載のディスプレイ装置、を提案する。
【0014】
第三の発明として、重畳領域の取得は、ディスプレイ領域を分割して設定されるブロック単位で取得される第一の発明または第二の発明に記載のディスプレイ装置、を提案する。
第四の発明として、各視聴者毎の映り込み領域のなかで全視聴者に対して共通しない領域に関しては映り込み低減処理をしない非重畳領域回避部を有する第一の発明から第三の発明のいずれか一に記載のディスプレイ装置、を提案する。
【0015】
第五の発明として、第一の発明から第四の発明のいずれか一に記載のディスプレイ装置を含むテレビ受像装置、を提案する。
【0016】
第六の発明として、ディスプレイ装置の映り込み低減処理装置の動作プログラムであって、視聴者を含む視聴環境の映像を取得する映像取得ステップと、取得した映像を分析して、ディスプレイに対する複数の視聴者毎の映り込み領域を推定する推定ステップと、各視聴者毎の映り込み領域のなかで全視聴者に対して共通する領域である重畳領域を取得する重畳領域取得ステップと、取得された重畳領域について映り込み低減処理をする低減ステップと、を計算機に実行させるためのディスプレイ装置の映り込み低減処理装置の動作プログラム、を提案する。
【0017】
第七の発明として、第六の発明に記載のディスプレイ装置の映り込み低減処理装置の動作プログラムを記憶した記憶媒体、を提案する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のディスプレイ装置及びディスプレイ装置の映り込み低減処理装置の動作プログラムにより、視聴者が複数人である場合にも、各視聴者毎の映り込みの違いに応じた適切な映り込み低減処理を行った映像を表示することができる。このため、ディスプレイ装置の視認性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本件発明の実施の形態について、添付の図面を用いて説明する。なお、本件発明は、これら実施の形態に何ら限定されるべきものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。なお、実施形態1は、主に請求項1、5、6及び7などに関する。実施形態2は、主に請求項2などに関する。実施形態3は、主に請求項3などに関する。実施形態4は、主に請求項4などに関する。
<<実施形態1>>
<実施形態1:概要>
【0020】
本実施形態のディスプレイ装置は、複数の視聴者毎の映り込み領域を推定し、これらの映り込み領域の共通部分を重畳領域として取得して、少なくとも、この重畳領域について映り込み低減処理を行うことを特徴とする。
<実施形態1:機能的構成>
【0021】
図4は、本実施形態のディスプレイ装置の機能ブロックの一例を示す図である。(a)にはディスプレイ装置一般の機能ブロックを、(b)には液晶ディスプレイの場合の機能ブロックを示している。液晶ディスプレイの場合については、後述する。
【0022】
図4(a)を参照する。本実施形態のディスプレイ装置(0401)は、推定部(0402)と、重畳領域取得部(0403)と、低減部(0404)と、を有する。
【0023】
なお、以下に詳述する本発明の構成要素である各部は、ハードウェア、ソフトウェア、ハードウェアとソフトウェアの両方のいずれかによって構成される。例えば、これらを実現する一例として、コンピュータを利用する場合には、CPU、バス、メモリ、インタフェース、周辺装置などで構成されるハードウェアと、それらハードウェア上で実行可能なソフトウェアがある。ソフトウェアとしては、メモリ上に展開されたプログラムを順次実行することで、メモリ上のデータや、インタフェースを介して入力されるデータの加工、保存、出力などにより各部の機能が実現される。(明細書の全体を通じて同様である。)
(推定部)
【0024】
「推定部」は、ディスプレイに対する複数の視聴者毎の映り込み領域を推定する機能を有する。「映り込み領域」は、ディスプレイに対して映り込みが生じている領域をいう。
【0025】
前述のとおり、映り込みが生じるか否か、どの程度の映り込みが生じるかは、視聴環境により左右される。視聴環境とは、具体的には、ディスプレイに対する光源の位置、その光源の光量、ディスプレイに対して光を反射する物体の有無などである。さらに、ディスプレイの明るさも影響を与えるので、ディスプレイに表示されるコンテンツ映像の内容にも影響される場合がある。また、複数の視聴者毎の映り込み領域は、各視聴者とディスプレイとの相対的位置関係によって変化する。そこで、複数の視聴者が同時に(同じ視聴環境で)ディスプレイを視認している場合にも、各視聴者毎の映り込み領域を推定する必要がある。この推定は、例えば、ディスプレイに映りこむこととなる可能性のある視聴環境の映像(視聴環境映像)と、視聴者位置の情報とに基づいて算出可能である。具体的には、ディスプレイと視聴者との相対的位置関係から、視聴環境映像中、ディスプレイに映りこむこととなる映り込み領域が推定できる。さらに、ディスプレイに表示されるべき原映像(コンテンツ映像)に関する情報も利用して推定を行えば、実際の映り込み映像に近い映り込み映像を推定可能であるので好ましい。
【0026】
視聴環境映像の取得は、カメラ等の撮像手段によって行うことができる。あるいは、視聴環境が一定の場合には、あらかじめ視聴環境映像を推定部に保持していても良い。
【0027】
また、視聴者位置の取得は、撮像手段によって取得された視聴環境映像によることもできる。この点は、実施形態2において詳述する。あるいは、視聴者位置の取得は、赤外線センサ等の各種センサによることもできる。
【0028】
また、推定部において推定される複数の視聴者毎の映り込み領域は、ディスプレイに生じる具体的な映り込み「映像」として推定されてもよい。各視聴者毎の映り込み映像は、映り込み領域の情報を当然に含むので、各視聴者毎の映り込み映像を推定する機能を有する構成も当然に本実施形態のディスプレイ装置の構成を満たすからである。あるいは、映り込み領域は、視聴環境映像中で、一定の輝度となる領域がディスプレイ上に占める座標情報として推定されていてもよい。
【0029】
なお、推定部によって映り込み領域が推定される各視聴者は、必ずしもディスプレイを視認している視聴者全員でなくとも良い。例えば、推定部によって複数の視聴者のうちの一部しか視聴者位置が取得できなかったとしても、視聴者位置を取得できた視聴者毎の映り込み領域を推定する場合は、本件発明の構成要件に該当する。
【0030】
また、視聴者が極めて多数の場合などにおいては、視聴者位置が取得できた視聴者のうちの一部(一例としてディスプレイから所定の距離内の視聴者)を選択して、選択された複数の視聴者について、各視聴者毎の映り込み領域を推定してもよい。あるいは、近接した位置にいる視聴者らの中間に仮想的な視聴者位置を想定して、この仮想的な視聴者から見た映り込み領域を推定しても良い。このように、映り込み領域を推定すべき視聴者数を限定することにより、映り込み領域の推定のために必要な処理が過大なために処理速度が遅くなるなどの問題が生じるおそれを回避できる。
(重畳領域取得部)
【0031】
「重畳領域取得部」は、重畳領域を取得する機能を有する。「重畳領域」は、各視聴者毎の映り込み領域のなかで全視聴者に対して共通する領域である。
【0032】
重畳領域は、推定部によって推定された複数の映り込み領域を相互に参照して取得できる。例えば、各映り込み領域のディスプレイ上に占める座標位置を参照して、映り込み領域の重なり合う領域を算出するといった具合である。図5を用いて重畳領域の取得について説明する。図5(a)は、視聴者Aから見た映り込み映像(図3(b)と同じ)、図5(b)は、視聴者Bから見た映り込み映像(図3(c)と同じ)である。これらを重ね合わせた場合に取得される重畳領域は、図5(c)となる。図5(h)は、視聴環境の一例を模式的に示しており、ディスプレイ装置(0501)、視聴者A(0502)、視聴者B(0503)、ディスプレイに対して光を反射する物体(0504)、視聴環境映像を取得するためのカメラ(0505)が図示されている。なお、図5(d)から(g)の図は、低減部において説明する。
(低減部)
【0033】
「低減部」は、取得された重畳領域について映り込み低減処理をする機能を有する。「映り込み低減処理」は、映り込みによる視認性の悪化を低減させるための処理をいう。
【0034】
映り込み低減処理の一例としては、ディスプレイ装置によって表示されるべき原映像の各ピクセルの映像情報に対して、ディスプレイに対して映りこむと推定される映り込み映像の各ピクセルの映像情報を差し引くという処理が挙げられる。輝度を例にして具体的に説明すると、原映像のピクセルの輝度が10であり、映り込み映像の対応するピクセルの輝度が2であった場合、映り込み低減処理をしなければ、視聴者から見た映像のピクセルの輝度は12となる。このため、原映像の輝度よりもディスプレイが明るく見えて、視認性が悪化する。これに対し、映り込み低減処理によって原映像の輝度を8に変更することで、視聴者から見た映像のピクセルの輝度を視認されるべき原映像の輝度と同様とすることが可能となるといった具合である。
【0035】
図5(d)以降を用いて低減処理の具体的一例を説明する。図5(c)のように重畳領域が取得された場合、この重畳領域について、原映像(図5(d))に映り込み低減処理がされ、映り込み低減映像(図5(e))が作成される。これらの映り込み低減映像がディスプレイに表示された場合、視聴者Aが見ることとなる映像(図5(f))及び、視聴者Bが見ることとなる映像(図5(g))は、それぞれ原映像が表示された場合(図3(d)及び(e))に比べて視認性が向上する。
【0036】
映り込み低減処理は、取得された重畳領域について行えば良い。重畳領域以外の部分について映り込み低減処理を行うか否かは、本実施形態において特に限定されない。例えば、重畳領域以外の部分の全部又は一部について映り込み低減処理を行う構成であっても良い。あるいは、重畳領域以外の部分については処理を行わない構成であっても良い。これらの構成については、後述する実施形態4でさらに説明する。
【0037】
映り込み低減処理された映りこみ低減映像はディスプレイに表示される。特に、液晶ディスプレイの場合について、図4(b)を用いて説明する。この図には、図4(a)と同様に本実施形態の各部が示されているほか、バックライト(0405)の輝度を調整するバックライト駆動部(0406)、液晶パネル(0407)を制御する液晶パネル駆動部(0408)が示されている。これらのバックライト駆動部と液晶パネル駆動部との協働によりディスプレイへの映像表示が制御される。そして、映り込み低減映像をディスプレイに表示する際には、バックライト駆動部にてバックライトの輝度のみを調整してもよいし、液晶パネル駆動部にて液晶パネルの輝度のみを調整してもよいし、両者を調整することもできる。
(テレビ受像装置)
【0038】
本件発明には、本実施形態のディスプレイ装置を含むテレビ受像装置も含まれる。テレビ受像装置は、以上に述べたところの本実施形態のディスプレイ装置の各機能的構成に加えて、さらに、放送されたコンテンツデータを受信する機能と、受信したコンテンツデータをディスプレイ装置にて表示可能となるよう処理する機能とを備える。
<実施形態1:ハードウェア構成>
【0039】
次に、本実施形態のディスプレイ装置のハードウェア構成について説明する。図6は、本実施形態のディスプレイ装置のハードウェア構成の一例を示す概略図である。この図にあるように、本実施形態のディスプレイ装置は、「CPU」(0601)と、「主メモリ」(0602)と、「記憶装置」(0603)と、I/O(0604、0604、0604)と、から構成され、それらが「システムバス」(0605)などのデータ通信経路によって相互に接続され、情報の送受信や処理を行う。さらに、I/Oに接続されたディスプレイ(0606)を備えている。
【0040】
記憶装置はCPUによって実行される各種プログラムなどを記憶している。また主メモリは、プログラムがCPUによって実行される際の作業領域であるワーク領域を提供する。また、この主メモリや記憶装置にはそれぞれ複数のメモリアドレスが割り当てられており、CPUで実行されるプログラムは、そのメモリアドレスを特定しアクセスすることで相互にデータのやりとりを行い、処理を行うことが可能になっている。
【0041】
本実施形態のディスプレイ装置の電源が入れられると、記憶装置に保持されている推定プログラム、重畳領域取得プログラム、低減プログラム等のプログラムが主メモリ上に展開される。
【0042】
そして、推定部を構成するCPUは、主メモリ上に展開された推定プログラムに従って、複数の視聴者毎の映り込み領域を推定する。その際、I/Oに接続された周辺機器を通じて主メモリに取得された視聴環境映像や、視聴者位置に関する情報などが、必要に応じて参照される。推定された各視聴者毎の映り込み領域に関する情報は、主メモリに保持される。
【0043】
次に、重畳領域取得部を構成するCPUは、主メモリに保存された各視聴者毎の映り込み領域に関する情報を利用して、重畳領域取得プログラムにしたがって、各視聴者毎の映り込み領域のなかで全視聴者に対して共通する領域である重畳領域を取得する。取得された重畳領域に関する情報は、主メモリに保持される。
【0044】
次に、低減部を構成するCPUは、主メモリ上に保存された重畳領域に関する情報を利用して、低減プログラムにしたがって、取得された重畳領域について映り込み低減処理を実行する。具体的には、記憶装置にあらかじめ保持されているか、あるいは、I/Oを通じて主メモリ(またはビデオメモリ)に取得された、ディスプレイ装置によって表示されるべき原映像について、当該原映像の各ピクセルの映像情報に対して、映り込み映像の各ピクセルの映像情報を差し引くという演算を行うといった具合である。映り込み低減処理をされた映り込み低減映像は、主メモリ上(またはビデオメモリ上)に保存され、CPU(またはGPU)の処理によって、ディスプレイに表示される。
【0045】
もちろん上記例は一例であって、視聴者毎にどのような映り込み映像が生じるかが判明している場合(例えば、ディスプレイや光源の位置、視聴者の着席すべき椅子の位置などが固定されている場合)には、この視聴者毎の映り込み映像の推定結果があらかじめ推定部を構成する記憶領域に保持されていてもよい。この場合は、重畳領域取得部において、視聴者位置(例えば視聴者が座っている椅子の位置)に応じて、重畳領域が取得されるような構成であってもよい。
<実施形態1:処理の流れ>
【0046】
図7は、本実施形態のディスプレイ装置における処理の流れの一例を表すフローチャートである。なお、以下に示すステップは、上記のような計算機の各ハードウェア構成によって実行されるステップであっても良いし、あるいは媒体に記録され計算機を制御するためのプログラムを構成する処理ステップであっても構わない。ここでは、以下に述べる各ステップを計算機に実行させるためのディスプレイ装置の映り込み低減処理装置の動作プログラムとして説明する。なお、このプログラムを記憶したコンピュータに読み取り可能な記憶媒体も本件発明に含まれる。
【0047】
本実施形態のディスプレイ装置の映り込み低減処理装置の動作プログラムは、映像取得ステップ(0701)と、推定ステップ(0702)と、重畳領域取得ステップ(0703)と、低減ステップ(0704)と、を計算機に実行させるためのディスプレイ装置の映り込み低減処理装置の動作プログラムである。
【0048】
映像取得ステップでは、視聴者を含む視聴環境の映像を取得する。なお、視聴環境の映像は、あらかじめ記憶装置に保持されており、当該記憶装置から読み込む場合も「取得」に含まれる。あるいは、映像取得ステップは、後述する実施形態2のようにカメラ等の撮像手段によって取得されても良い。
【0049】
推定ステップでは、映像取得ステップにおいて取得された視聴環境映像や視聴者位置等に基づいて、ディスプレイに対する複数の視聴者毎の映り込み領域が推定される。
【0050】
重畳領域取得ステップでは、推定ステップにおいて推定された各視聴者毎の映り込み領域のなかで全視聴者に対して共通する領域である重畳領域を取得する。
【0051】
低減ステップでは、重畳領域取得ステップにおいて取得された重畳領域について映り込み低減処理を行い、その結果をディスプレイに表示する。
【0052】
以上の各ステップは、ディスプレイに表示されるべき映像コンテンツの1フレームにつき1回行われるのが好ましい。
<実施形態1:効果>
【0053】
本実施形態のディスプレイ装置により、視聴者が複数人である場合にも、各視聴者毎の映り込みの違いに応じた適切な映り込み低減処理を行った映像を表示することができる。このため、ディスプレイ装置の視認性が向上する。
<<実施形態2>>
<実施形態2:概要>
【0054】
本実施形態のディスプレイ装置は、実施形態1を基本としつつ、推定部の構成に特徴を有する。つまり、推定部は撮像手段で撮像された視聴環境映像(本実施形態において、視聴環境映像は、視聴者を含んだ映像である。)を分析することで、視聴者位置を取得する点に特徴を有する。
<実施形態2:機能的構成>
【0055】
本実施形態のディスプレイ装置は、推定部と、重畳領域取得部と、低減部と、を有する。重畳領域取得部、低減部については、実施形態1で述べたところと同様であるので、説明を省略する。
【0056】
本実施形態のディスプレイ装置の推定部は、撮像手段と、視聴者位置取得手段と、映り込み推定手段と、からなる。
【0057】
「撮像手段」は、カメラ等の撮像が可能な装置である。撮像手段は、視聴環境映像を撮影可能である。撮像手段は、ディスプレイ側から視聴者を含めた視聴環境映像を撮像可能であるように、ディスプレイの前面(視聴者側)に設けられていることが好ましい。前述した図5(h)には、ディスプレイの前面中央下部に撮像手段(カメラ、0505)を設けた例が示されている。撮像手段の個数は限定されないが、例えばディスプレイ前面の左右に設けて、視聴環境映像を撮影することとすれば、ディスプレイと視聴者との距離を視差によって分析可能であるので、視聴者位置をより正確に取得可能となる。ただし、映り込み領域を推定する上で重要なのは視聴者がディスプレイの中央に正対しているか、左右いずれかの方向に寄っているかという「方向」である。したがって、視聴者位置は、ディスプレイに対する視聴者の方向を含んでいれば良く、必ずしも距離を含んでいなくとも良い。
【0058】
「視聴者位置取得手段」は、撮像手段によって視聴者位置を取得する機能を有する。例えば、撮像手段によって撮影された視聴環境映像について、顔認識技術を用いることで、視聴者位置を取得することができる。
【0059】
「映り込み推定手段」は、取得された視聴者位置毎にディスプレイに対する映り込み領域を推定する。具体的には、視聴者位置に応じて、視聴環境映像から映り込み領域を算出するといった具合である。
【0060】
その他、推定部の構成については、本実施形態と矛盾しないかぎり、実施形態1で述べたところと同様である。
<実施形態2:ハードウェア構成>
【0061】
推定部以外のハードウェア構成は、実施形態1と同様であるので、説明を省略する。以下、推定部のハードウェア構成について説明する。
【0062】
撮像手段を構成するCPUは、主メモリ上に展開された推定プログラムを構成する撮像モジュールに従って、カメラ等の撮像可能な入力機器を制御し、視聴環境映像を取得する。取得された視聴環境映像は、主メモリに保持される。
【0063】
次に、視聴者位置取得手段を構成するCPUは、主メモリ上に展開された推定プログラムを構成する視聴者位置取得モジュールに従って、取得された視聴環境映像を分析して視聴者位置を推計して取得する。
【0064】
次に、映り込み推定手段を構成するCPUは、主メモリ上に展開された推定プログラムを構成する映り込み推定モジュールに従って、視聴環境映像から視聴者位置毎の映り込み映像を算出する。
<実施形態2:処理の流れ>
【0065】
本実施形態のディスプレイ装置における処理の流れは、推定ステップと、重畳領域取得ステップと、低減ステップと、からなる。さらに、推定ステップは、撮像ステップと、視聴者位置取得ステップと、映り込み推定ステップと、からなる。
【0066】
重畳領域取得ステップと、低減ステップと、については実施形態1で述べたところと同様であるので、説明を省略する。以下、推定ステップについて説明する。
【0067】
撮像ステップでは、視聴環境映像を取得する。次に、視聴者位置取得ステップでは、取得された視聴環境映像を分析して、視聴者位置を取得する。次に、映り込み推定ステップでは、視聴環境映像と、視聴者位置とから、各視聴者毎の映り込み領域を推定する。
<実施形態2:効果>
【0068】
本実施形態のディスプレイ装置により、視聴者が複数人である場合にも、各視聴者毎の映り込みの違いに応じた適切な映り込み低減処理を行った映像を表示することができる。このため、ディスプレイ装置の視認性が向上する。
<<実施形態3>>
<実施形態3:概要>
【0069】
本実施形態のディスプレイ装置は、実施形態2を基本としつつ、重畳領域取得部における重畳領域の取得は、ディスプレイ領域を分割して設定されるブロック単位で取得される点に特徴がある。
<実施形態3:機能的構成>
【0070】
本実施形態のディスプレイ装置は、推定部と、重畳領域取得部と、低減部と、を有する。さらに、推定部は、撮像手段と、視聴者位置取得手段と、映り込み推定手段と、からなる場合がある。
【0071】
推定部(撮像手段と、視聴者位置取得手段と、映り込み推定手段)、重畳領域取得部、低減部については、以下に述べる重畳領域の取得に関する点を除き、実施形態1または2において述べたところと同様であるので、説明を省略する。
【0072】
本実施形態のディスプレイ装置の重畳領域取得部における重畳領域の取得は、ディスプレイ領域を分割して設定されるブロック単位で取得される。
【0073】
「ディスプレイ領域を分割して設定されるブロック単位」とは、ディスプレイ領域を所定数のブロックに分割した場合の各ブロック単位をいう。各ブロック単位は、複数ピクセル単位である。例えば、MPEG処理におけるマクロブロックの単位でもよいし、これより大きな(あるいは小さな)領域が1単位となる場合もある。
【0074】
図8を用いて、ブロック単位で重畳領域を取得する処理の一例を示す。この図で、画像A及び画像Bは、それぞれ各視聴者毎の映り込み映像(映像中の1フレームを画像として抽出したもの)である。画像A、Bは、ディスプレイ領域を分割して設定されるブロック単位で区切られ、各ブロック毎に比較が行われる。画像A、Bについて対応するブロック同士を比較して映り込み度合いの差分を測定し、同等の映り込み度合いである(例えば、輝度が同等である)場合にはそのブロックを重畳領域として抽出する。一方、同等の映り込み度合いでない場合には次のブロックについて映り込み度合いの差分を測定する処理を行う。これらの処理を全てのブロックについて処理が終了するまで繰り返す。
<実施形態3:ハードウェア構成、処理の流れ>
【0075】
本実施形態のハードウェア構成及び処理の流れについては、実施形態1及び2で述べたところと同様であるので、説明を省略する。
<実施形態3:効果>
【0076】
重畳領域の取得をブロック単位で行うことにより、ピクセル単位で処理を行う場合に比べて処理を軽くすることができる。
<<実施形態4>>
<実施形態4:概要>
【0077】
実施形態1から3では、重畳領域以外の部分について、低減処理を行うのか否かについて限定がない。本実施形態では、非重畳領域回避部を有することにより、全視聴者に対して共通しない領域に関しては映り込み低減処理をしない点に特徴がある。
<実施形態4:機能的構成>
【0078】
図9は、本実施形態のディスプレイ装置の一例を示す機能ブロック図である。本実施形態のディスプレイ装置(0901)は、推定部(0902)と、重畳領域取得部(0903)と、低減部(0904)と、非重畳領域回避部(0905)と、を有する。なお、推定部は、撮像手段と、視聴者位置取得手段と、映り込み推定手段と、からなる場合がある。
【0079】
推定部(撮像手段と、視聴者位置取得手段と、映り込み推定手段)、重畳領域取得部、低減部については、実施形態1から3において述べたところと同様であるので、説明を省略する。
【0080】
非重畳領域回避部は、非重畳領域に関しては映り込み低減処理をしない。非重畳領域は、各視聴者毎の映り込み領域のなかで全視聴者に対して共通しない領域である。「全視聴者に対して共通しない」とは、視聴者A、B、Cを例にすると、A、B、Cのすべてに対して共通しないとの意味である。一部の視聴者に対して共通する場合、例えば、AとBとで共通するが、Cには共通しない場合は、「全視聴者に対して共通しない」ものではない。すなわち、AとB、AとC、BとCなど、各視聴者を任意のペアにしても、共通しない領域が非重畳領域である。
【0081】
仮に非重畳領域について映り込み低減処理をするとする。例えば、Aのみに対して映り込みが生じる映り込み領域について、映り込み低減処理をする。すると、Aにとっては、視認性が向上するものの、BやCなど、他の視聴者は原映像と異なる映像を見なければならず、視認性がかえって悪化する。すなわち、非重畳領域においては、ある視聴者の視認性を高めようとすると、他の視聴者の視認性が悪化するという関係にある。そこで、非重畳領域については映り込み低減処理をしないことによって、一部の視聴者の視認性を向上させることにより他の視聴者の視認性を悪化させることを回避し、全視聴者の視認性に関する満足度を平等に向上させることができる。
【0082】
非重畳領域回避部は、低減部そのものであって、低減部以外に映り込み低減処理をすべき機能を有する部が存在しない場合であってもよい。
【0083】
あるいは、非重畳領域回避部は、各視聴者毎の映り込み領域のなかで、一部の視聴者に対して共通する領域である一部重畳領域について、低減処理をする構成であってもよい。さらに、一部重畳領域について、共通する視聴者数や、全視聴者に占める共通する視聴者数の割合に応じて、低減処理をするかしないかを判断する構成であっても良い。一部重畳領域については、一部の視聴者の視認性を向上させることと引き換えにその他の視聴者の視認性を悪化させるとしても、視聴者全体としての視認性に関する満足度を向上させることができる場合があるからである。
<実施形態4:ハードウェア構成>
【0084】
本実施形態のハードウェア構成は、以下に述べる非重畳領域回避部を除き、実施形態1から3で述べたところと同様であるので、説明を省略する。さらに、非重畳領域回避部が低減部そのものである場合には、非重畳領域回避部は、低減部のハードウェア構成と同一である。
【0085】
あるいは、非重畳領域回避部は、前述のように、一部重畳領域について低減処理を行う構成であるなど、低減部における映り込み低減処理とは異なる処理を行うべき機能を有する場合がある。この場合、非重畳領域回避部を構成するCPUは、主メモリに展開された非重畳領域回避プログラムに従って、一部重畳領域等を取得し、取得された一部重畳領域について低減処理を実行する(あるいは実行しない)。
<実施形態4:処理の流れ>
【0086】
本実施形態のディスプレイ装置における処理の流れは、推定ステップと、重畳領域取得ステップと、低減ステップと、非重畳領域回避ステップと、からなる。さらに、推定ステップは、撮像ステップと、視聴者位置取得ステップと、映り込み推定ステップと、からなる場合がある。
【0087】
推定ステップ(撮像ステップと、視聴者位置取得ステップと、映り込み推定ステップ)と、重畳領域取得ステップと、低減ステップと、については実施形態1から3で述べたところと同様であるので、説明を省略する。さらに、非重畳領域回避部が低減部そのものである場合には、非重畳領域回避ステップにおける処理は低減ステップにおける処理と同一である。
【0088】
あるいは、非重畳領域回避部は、前述のように、一部重畳領域について低減処理を行う構成であるなど、低減部における映り込み低減処理とは異なる処理を行うべき機能を有する場合がある。この場合、非重畳領域回避ステップでは、一部重畳領域等を取得し、取得された一部重畳領域について、低減処理を実行する(あるいは実行しない)。さらに、非重畳領域回避ステップは、低減処理を実行すべきか判定するプロセスを含んでいてもよい。
<実施形態4:効果>
【0089】
本実施形態のディスプレイ装置により、視聴者が複数人である場合にも、各視聴者毎の映り込みの違いに応じた適切な映り込み低減処理を行った映像を表示することができる。このため、ディスプレイ装置の視認性が向上する。
【0090】
さらに、本実施形態のディスプレイ装置は、非重畳領域回避部により、非重畳領域については映り込み低減処理をしないことによって、一部の視聴者の視認性を向上させることにより他の視聴者の視認性を悪化させることを回避し、全視聴者の視認性に関する満足度を平等に向上させることができる。
【実施例1】
【0091】
図10は、視聴者が1人の場合にも映り込み低減処理可能なディスプレイ装置について処理の流れの一例を示すフローチャートである。本実施例のディスプレイ装置は、実施形態1から4のいずれか一を基本としつつ、視聴者が1人の場合にも映り込み低減映像を作成可能である。以下、処理の流れを説明する。本実施例のディスプレイ装置は、カメラで撮像した視聴環境映像に基づいて視聴者位置等を検出する。視聴者が0人であった場合には、カメラでの撮像を間欠的に行う。視聴者が1人であった場合は、映り込み低減映像を作成する。視聴者が2人以上であった場合は、実施形態1から4に記載したとおり、映り込み重畳領域について、共通の映り込み低減映像を作成する。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】視聴者が1人の場合における視聴環境の一例を示す模式図
【図2】視聴者が1人の場合の映り込み低減処理による視認性の向上について説明するための図
【図3】視聴者が複数の場合における映り込みによる視認性の悪化について説明するための図
【図4】実施形態1のディスプレイ装置の機能ブロックの一例を示す図
【図5】重畳領域の取得及び低減処理の具体的一例を説明するための図
【図6】実施形態1のディスプレイ装置のハードウェア構成の一例を示す概略図
【図7】実施形態1のディスプレイ装置における処理の流れの一例を表すフローチャート
【図8】実施形態3のディスプレイ装置におけるブロック単位の重畳領域取得処理の流れの一例を表すフローチャート
【図9】実施形態4のディスプレイ装置の機能ブロックの一例を示す図
【図10】実施例1のディスプレイ装置の処理の流れの一例を表すフローチャート
【符号の説明】
【0093】
ディスプレイ 0101
視聴者 0102
光源 0103
ディスプレイ装置 0401、0901
推定部 0402、0902
重畳領域取得部 0403、0903
低減部 0404、0904
非重畳領域回避部 0905
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイに対する複数の視聴者毎の映り込み領域を推定する推定部と、
各視聴者毎の映り込み領域のなかで全視聴者に対して共通する領域である重畳領域を取得する重畳領域取得部と、
取得された重畳領域について映り込み低減処理をする低減部と、
を有するディスプレイ装置。
【請求項2】
推定部は、
撮像手段と、
撮像手段によって視聴者位置を取得する視聴者位置取得手段と、
取得された視聴者位置毎にディスプレイに対する映り込み領域を推定する映り込み推定手段と、
からなる請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項3】
重畳領域の取得は、ディスプレイ領域を分割して設定されるブロック単位で取得される請求項1または2に記載のディスプレイ装置。
【請求項4】
各視聴者毎の映り込み領域のなかで全視聴者に対して共通しない領域に関しては映り込み低減処理をしない非重畳領域回避部を有する請求項1から3のいずれか一に記載のディスプレイ装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一に記載のディスプレイ装置を含むテレビ受像装置。
【請求項6】
ディスプレイ装置の映り込み低減処理装置の動作プログラムであって、
視聴者を含む視聴環境の映像を取得する映像取得ステップと、
取得した映像を分析して、ディスプレイに対する複数の視聴者毎の映り込み領域を推定する推定ステップと、
各視聴者毎の映り込み領域のなかで全視聴者に対して共通する領域である重畳領域を取得する重畳領域取得ステップと、
取得された重畳領域について映り込み低減処理をする低減ステップと、
を計算機に実行させるための
ディスプレイ装置の映り込み低減処理装置の動作プログラム。
【請求項7】
請求項6に記載のディスプレイ装置の映り込み低減処理装置の動作プログラムを記憶した記憶媒体。
【請求項1】
ディスプレイに対する複数の視聴者毎の映り込み領域を推定する推定部と、
各視聴者毎の映り込み領域のなかで全視聴者に対して共通する領域である重畳領域を取得する重畳領域取得部と、
取得された重畳領域について映り込み低減処理をする低減部と、
を有するディスプレイ装置。
【請求項2】
推定部は、
撮像手段と、
撮像手段によって視聴者位置を取得する視聴者位置取得手段と、
取得された視聴者位置毎にディスプレイに対する映り込み領域を推定する映り込み推定手段と、
からなる請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項3】
重畳領域の取得は、ディスプレイ領域を分割して設定されるブロック単位で取得される請求項1または2に記載のディスプレイ装置。
【請求項4】
各視聴者毎の映り込み領域のなかで全視聴者に対して共通しない領域に関しては映り込み低減処理をしない非重畳領域回避部を有する請求項1から3のいずれか一に記載のディスプレイ装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一に記載のディスプレイ装置を含むテレビ受像装置。
【請求項6】
ディスプレイ装置の映り込み低減処理装置の動作プログラムであって、
視聴者を含む視聴環境の映像を取得する映像取得ステップと、
取得した映像を分析して、ディスプレイに対する複数の視聴者毎の映り込み領域を推定する推定ステップと、
各視聴者毎の映り込み領域のなかで全視聴者に対して共通する領域である重畳領域を取得する重畳領域取得ステップと、
取得された重畳領域について映り込み低減処理をする低減ステップと、
を計算機に実行させるための
ディスプレイ装置の映り込み低減処理装置の動作プログラム。
【請求項7】
請求項6に記載のディスプレイ装置の映り込み低減処理装置の動作プログラムを記憶した記憶媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−113940(P2013−113940A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258301(P2011−258301)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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