説明

ディスプレイ装置用赤色蛍光体及びこれを含むディスプレイ装置

【課題】
本発明は、ディスプレイ装置用赤色蛍光体及びこれを含むディスプレイ装置に関する。本発明による赤色蛍光体は、残光時間が非常に短く、輝度特性が優れているので、3次元立体映像を実現するためのディスプレイ装置に非常に有用に使用される。
【解決手段】
本発明による赤色蛍光体は、下記の[化学式1]で示される化合物を含む。
[化学式1]
(Y1−x1x12−y1:Euy1
上記[化学式1]で、MはGd、La、Sc、Lu、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、0.00≦x1≦0.8、0.025≦y1≦0.20である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ装置用赤色蛍光体及びこれを含むディスプレイ装置に関し、より詳細には、残光時間が短いディスプレイ装置用赤色蛍光体及びこれを含むディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネルは、パネル内に封入されたキセノン(Xe)及びネオン(Ne)の混合ガスの放電現象を利用したディスプレイ装置であって、放電駆動時に発生する147nmあるいは172nmの波長の真空紫外線を蛍光体に照射すると高エネルギー状態に励起された蛍光体層が可視光線を発生させる原理を利用する。現在、一般的に使用されているプラズマディスプレイパネルは、上板及び下板の間の隔壁で分離された空間に赤色、緑色、あるいは青色蛍光体層を塗布し、選別的にプラズマ放電を生成させて、塗布された蛍光体層で発生する可視光を表示する。
【0003】
プラズマディスプレイパネルを利用した立体映像は、1TVフィールド(16.7msec)を二つのサブフィールドに分割して各々左立体映像及び右立体映像を製作し、ゴーグル(goggles)を利用して観測者の左眼及び右眼に立体映像を選別的に投影する方法で実現することができる。この時、観測者が着用するゴーグルは、左右側に光学シャッターが形成されていて、これが左サブフィールド及び右サブフィールドと連動して両眼に選別的な立体映像信号を投影することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、既存の1TVフィールドを半分にして二つのサブフィールドに分割しなければならないので、一般的な用途のプラズマディスプレイパネルに比べて蛍光体層の残光特性が特に重要である。
【0005】
一方、プラズマディスプレイパネル用赤色蛍光体として幅広く使用されている(Y,Gd)BO:Eu蛍光体は、残光時間が7〜9msecレベルであると言われている。このような(Y,Gd)BO:Eu蛍光体を単独で利用して赤色蛍光体層を形成する場合、クロストーク現象による鮮明度の低下を避けることができない。
【0006】
本発明の目的は、残光時間が減少したディスプレイ装置用赤色蛍光体を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、上記蛍光体を含むディスプレイ装置を提供することにある。
【0008】
ただし、本発明が目的とする技術的課題は、上記で言及した技術的課題に限定されず、下記の記載から当業者に明確に理解される課題も挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、下記の化学式1で示される化合物を含むディスプレイ装置用赤色蛍光体を提供する。
【0010】
(Y1−x1x12−y1:Euy1・・・(化学式1)
【0011】
上記化学式1で、MはGd、La、Sc、Lu、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、0.00≦x1≦0.8、0.025≦y1≦0.20である。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、本発明の赤色蛍光体は、また、Pr、Sm、Dy、Tm、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される元素を共賦活剤としてさらに含む。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の第2具現例は、上記赤色蛍光体を含むディスプレイ装置を提供する。
【0014】
その他の本発明の具現例の具体的な事項は、以下の詳細な説明に含まれている。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明による赤色蛍光体は、残光時間が非常に短くて、輝度特性が優れているので、3次元立体映像を実現するためのディスプレイ装置に非常に有用に使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の具現例を詳細に説明する。ただし、これは例示として提示されるものであって、本発明はこれによって制限されず、本発明は請求の範囲の範疇によって定義される。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
本発明は、残光時間が短くて、ディスプレイ装置、特に3次元立体映像を実現することができるディスプレイ装置に有用に使用される赤色蛍光体に関する。上記ディスプレイ装置としては、3次元立体映像を実現することができれば、プラズマディスプレイパネル、陰極線管などいかなるディスプレイ装置でもよい。しかし、本発明の赤色蛍光体は、プラズマディスプレイ装置に最も有用に使用される。
【0018】
まず、従来の技術について説明すると、一般に、蛍光体の残光時間を減少させるために、過量の活性剤を添加する方法が利用される。活性剤の濃度が増加すると、励起状態の活性剤の遷移確率が増加するため、遷移確率の逆数に比例する残光時間は減少するようになる。代表的なプラズマディスプレイパネル用緑色蛍光体であるZnSiO:Mnの場合、活性剤であるマンガン(Mn)の添加量を増加させて、残光時間を効果的に減少させることができると言われている。しかし、プラズマディスプレイパネル用赤色蛍光体に活性剤として添加されるユウロピウム(Eu)は、量子力学的選択規則によってユウロピウムイオン間のエネルギー移動(migration)確率が低くて、Eu3+D0準位は交差緩和(cross relaxation)現象による遷移確率の増加が微少で、活性剤の添加量の増加を通じた残光特性の調節は効果的でない。したがって、残光特性の改善を通じた立体映像の実現のためには、(Y,Gd)BO:Euとは異なった組成の残光時間の短い赤色蛍光体の使用が必須である。
【0019】
特に、最近、次世代情報通信サービスとして需要及び技術開発競争が激しい先端高度化技術において、情報通信、放送、医療、教育、訓練、軍事、ゲーム、アニメーション、バーチャルリアリティ、CAD、産業技術などその応用分野が非常に多様で様々な分野で共通的に要求される次世代実感3次元立体マルチメディアのための3次元立体映像技術を実現するために、残光時間が短くて、輝度特性が優れている赤色蛍光体に対する研究が大変重要な実情である。
【0020】
上記、従来技術をもとに本発明を詳細に説明する。本発明の第1具現例による赤色蛍光体は、下記の化学式1で示される化合物を含む。
【0021】
(Y1−x1x12−y1:Euy1・・・(化学式1)
【0022】
上記化学式1で、MはGd、La、Sc、Lu、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、特にGdが好ましく、0.00≦x1≦0.8、0.025≦y1≦0.20であり、特に0.00≦x1≦0.4、0.05≦y1≦0.15であるのが好ましい。
【0023】
本発明の赤色蛍光体は、また、Pr、Sm、Dy、Tm、及びこれらの組み合わせからなる元素を共賦活剤としてさらに含むこともできる。本発明の赤色蛍光体で、これら元素の含有量は適切に調節することができ、その例として、ユウロピウムと同一に0.025〜0.20モル%で使用することができる。
【0024】
本発明の赤色蛍光体は、上記化学式1の蛍光体を第1蛍光体として含み、下記の化学式2で示される蛍光体、下記の化学式3で示される蛍光体、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される蛍光体を第2蛍光体としてさらに含むこともできる。また、第2蛍光体として、下記の化学式2または化学式3で示されるもの以外にも、輝度特性は維持しつつ、赤色色度座標特性を改善することができる赤色蛍光体はいずれも使用することができ、また、化学式2または化学式3で示される蛍光体と共に混合して第2蛍光体として使用することもできる。
【0025】
1−x2(Vy21−y2)O:Eux2・・・(化学式2)
【0026】
上記化学式2で、0.01<x2<0.30、0.30<y2<0.60であり、特に0.05≦x2≦0.15、0.35≦y2≦0.45であるのが好ましい。
【0027】
(Y1−x3M´x31−y3Al(BO:Euy3・・・(化学式3)
【0028】
上記化学式3で、M´はGd、La、Sc、Lu、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、0.00≦x3≦1.00、0.01<y3<0.30であり、特に0.20≦x3≦1.00、0.05≦y3≦0.15であるのが好ましい。
【0029】
本発明で、上記第1蛍光体及び第2蛍光体の混合比率は、95:5〜40:60質量比であるのが好ましく、95:5〜70:30質量比であるのがより好ましい。第2蛍光体の使用量が上記範囲に含まる場合には、輝度特性は維持しつつ、赤色色度座標特性を改善することができるので、色品位が向上して好ましい。
【0030】
このような本発明の赤色蛍光体は、残光時間が短く、輝度の減少がなくて、色度座標特性が優れているので、ディスプレイ装置に有用に使用することができ、特に、l60Hz、120Hz以上の高速で駆動するディスプレイ装置や、3次元立体映像装置に有用に使用することができる。特に、本発明の赤色蛍光体は、励起が終結した直後から蛍光体で発生する光量が初期対比で1/10に減少するまでにかかる時間(以下、残光時間とする)が5ms以下、好ましくは4ms以下、より好ましくは3.0〜3.7msと非常に短いので、3次元立体映像装置に非常に有用に使用することができる。
【0031】
本発明の第2具現例によるディスプレイ装置は、第1具現例による赤色蛍光体を含み、第2具現例の一例として、プラズマディスプレイパネルについて以下で説明する。
【0032】
図1は本発明の第2具現例によるプラズマディスプレイパネルを示した部分分解斜視図である。
【0033】
図1に示したように、本発明のプラズマディスプレイパネルは、任意の間隔をおいて実質的に平行に配置される第1基板(背面基板)1及び第2基板(前面基板)11を含む。
【0034】
上記第1基板(背面基板)1上に一方向(図面のY方向)に沿って複数のアドレス電極3が形成され、このアドレス電極3を覆って第1基板1に第1誘電体層5が形成される。上記第1誘電体層5上に各アドレス電極3の間に配置されるように所定の高さで複数の隔壁7が形成されて、放電空間を形成する。
【0035】
上記隔壁7は、放電空間を区画する形状であればいかなる形状でもよく、多様なパターンに形成される。例えば、上記隔壁7は、ストライプなどの開放型隔壁はもちろん、ワッフル、マトリックス、デルタなどの閉鎖型隔壁に形成されることもある。また、閉鎖型隔壁は、放電空間の横断面が四角形、三角形、五角形などの多角形、または円形、楕円形などになるように形成されることもある。
【0036】
各隔壁7の間に複数の放電セルが形成され、上記放電セル内には、赤(R)、緑(G)、青(B)色の蛍光体層9が位置する。この時、上記赤色蛍光体層は、本発明の赤色蛍光体を含む。
【0037】
そして、第1基板1に対向する第2基板(前面基板)11の一面には、アドレス電極3と交差する方向(図面のX軸方向)に沿って一対の透明電極13a及びバス電極13bからなる表示電極13が形成され、上記表示電極13を覆って第2基板11全体に誘電体層15が形成される。
【0038】
上記第1基板1上のアドレス電極3及び第2基板11上の表示電極が交差する地点が、放電セルを構成する部分になる。
【0039】
上記プラズマディスプレイパネルは、アドレス電極3及び表示電極13の間にアドレス電圧(Va)を印加してアドレス放電を行い、再び一対の表示電極の間に維持電圧(Vs)を印加して維持放電を行って駆動する。この時に発生する励起源が当該蛍光体を励起させて透明な第2基板11を通じて可視光を放出して、プラズマディスプレイパネルの画面を実現するようになる。上記励起源としては真空紫外線(Vacuum Ultraviolet)が主に使用される。
【0040】
以下、本発明の好ましい実施例及び比較例を記載する。しかし、下記の実施例は本発明の好ましい一実施例にすぎず、本発明は下記の実施例に限定されない。
【0041】
(実施例1〜4及び比較例1〜2)
原料物質であるY、Euを下記の表1に示した組成が得られるように化学量論比により秤量して混合して、ここに融剤(Flux)として0.5質量%のNHClを添加して混合した。得られた混合物100gを300ccアルミナルツボに入れて、酸素雰囲気、1500℃で0.5時間焼成した。焼成した混合物を5時間ボールミルによりミリングして粉砕して、洗浄、乾燥、及びふるいにかけて蛍光体を製造した。
【0042】
製造された蛍光体の色度座標、残光時間(decay time)、及び相対輝度を測定して、その結果を下記の表1に共に示した。赤色蛍光体のCIE色度座標は、一般に、xは0.67、yは0.33に近いほど好ましいので、測定された色度座標値をこの基準値と比較した。相対輝度は、(Y0.75Gd0.250.9BO:Eu0.1蛍光体を基準にして、この蛍光体の輝度を100%としてそれに対する相対値を測定して示した値である。上記(Y0.75Gd0.250.9BO:Eu0.1蛍光体は、下記のような方法で製造した。まず、原料物質であるY、Gd、及びEuを化学量論比により秤量して混合して、融剤としてBを化学量論比の110質量%になるように秤量して混合した。得られた混合物100gを300ccアルミナルツボに入れて、酸素雰囲気、1100℃で2時間焼成した。焼成した混合物を5時間ボールミルによりミリングして粉砕して、洗浄、乾燥及びふるいにかけて製造した。
【0043】
また、下記の表1で、残光時間の「±0.2」は測定誤差を示す。
【0044】
【表1】

【0045】
上記表1に示したように、Euの添加量が0.025未満である場合には、色度座標特性が良好でなく、0.20を超える場合には、輝度特性が低下することがわかる。
【0046】
上記表1の結果から、Euの添加量は0.025以上0.20以下であるのが好ましいことがわかる。残光時間、色度座標、相対輝度の全てにおいて良好な特性を有するのは、実施例1〜4であることが分かる。
【0047】
(実施例5〜9及び比較例3)
原料物質であるY、Gd、Euを下記の表2に示した組成が得られるように化学量論比により秤量して混合したことを除いては、上記実施例1と同一に実施して、赤色蛍光体を製造した。
【0048】
製造された蛍光体の色度座標、残光時間(decay time)、及び相対輝度を測定して、その結果を下記の表2に共に示した。相対輝度は、(Y0.75Gd0.250.9BO:Eu0.1蛍光体を基準にして、この蛍光体の輝度を100%としてそれに対する相対値を測定して示した値である。また、下記の表2で、残光時間の「±0.2」は、測定誤差を示す。
【0049】
【表2】

【0050】
上記表2に示したように、Gd置換量が増加すると残光時間は次第に減少する傾向があるが、輝度特性も低下するので、x1は0.8以下であるのが残光時間及び輝度特性が適切で好ましいことがわかる。残光時間、色度座標、相対輝度の全てにおいて良好な特性を有するのは、実施例5〜9であることが分かる。
【0051】
製造された実施例6の(Y0.8Gd0.21.9:Eu0.1蛍光体の蛍光スペクトルを測定して、その結果を図2に示した。図2に示したように、(Y0.8Gd0.21.9:Eu0.1蛍光体は、590nm付近で発光する光の強さがそれほど大きくなく、大部分が610〜650nmで発光する光であるので、色純度を向上させるために主に使用されるNe除去フィルター(Ne−cut filter、約590nmの光を遮断する)を使用する一般的なプラズマディスプレイパネルに有用に使用されることがわかる。
【0052】
(実施例10〜13及び比較例3〜4)
下記の表3に示した組成で(Y0.8Gd0.21.9:Eu0.1第1蛍光体(R1)及びY0.9(V0.40.6)O:Eu0.1第2蛍光体(R2)を混合して、赤色蛍光体を製造した。
【0053】
この時、
0.9(V0.40.6)O:Eu0.1第2蛍光体(R2)は、下記のような方法で製造した。まず、原料物質であるY、V、及びEuを化学量論比により秤量して混合して、融剤として3.0質量%のHBOを添加して混合した。得られた混合物100gを300ccアルミナルツボに入れて、酸素雰囲気、1200℃で2時間焼成した。焼成した混合物を5時間ボールミルによりミリングして粉砕して、洗浄、乾燥及びふるいにかけて製造した。
【0054】
製造された蛍光体の色度座標、残光時間(decay time)、及び相対輝度を測定して、その結果を下記の表3に共に示した。相対輝度は、(Y0.75Gd0.250.9BO:Eu0.1蛍光体を基準にして、この蛍光体の輝度を100%としてそれに対する相対値を測定して示した値である。また、下記の表3で、残光時間の「±0.2」は測定誤差を示す。
【0055】
【表3】

【0056】
上記表3に示したように、第1蛍光体だけを使用した実施例10の場合は、色度座標特性は若干低下するが、相対輝度は非常に高く、残光時間は若干長いが、輝度特性が非常に優れており、第2蛍光体を最大60質量比で使用した実施例13の場合は、輝度特性は多少低下するが、実施例10に比べてCIE色度座標のx座標は増加し、CIE色度座標のy座標は減少して、好ましい赤色度座標特性を実現することがわかる。この結果から、実施例10〜13の蛍光体は、輝度特性及び残光時間が適切であることがわかる。残光時間、色度座標、相対輝度の全てにおいて良好な特性を有するのは、実施例10〜13であることが分かる。これに対して、第2蛍光体の比率が高すぎた比較例4及び第2蛍光体だけを使用した比較例5の場合は、色度座標特性は優れているが、残光時間が長く、相対輝度が非常に減少したことがわかる。
【0057】
(実施例14〜17及び比較例6〜7)
下記の表4に示した組成で(Y0.8Gd0.21.9:Eu0.1第1蛍光体(R1)及び
(Y0.75Gd0.250.9Al(BO:Eu0.1第2蛍光体(R2)を混合して、赤色蛍光体を製造した。
【0058】
この時、(Y0.75Gd0.250.9Al(BO:Eu0.1第2蛍光体(R2)は、下記のような方法で製造した。まず、原料物質であるY、Gd、Eu、Alを化学量論比により秤量して、Bを融剤として化学量論比の110質量%になるように秤量して混合した。得られた混合物100gを300ccのアルミナルツボに入れて、酸素雰囲気、1150℃で2時間焼成した。焼成した混合物を5時間ボールミルによりミリングして粉砕して、洗浄、乾燥、及びふるいにかけて蛍光体粉末を製造した。
【0059】
製造された(Y0.75Gd0.250.9Al(BO:Eu0.1第2蛍光体(R2)の蛍光スペクトルを測定して、その結果を図3に示した。図3に示したように、(Y0.75Gd0.250.9Al(BO:Eu0.1蛍光体は、590nm付近で発光する光の強さがそれほど大きくなく、大部分が610〜650nmで発光する光であるので、色純度を向上させるために主に使用するNe除去フィルター(Ne−cut filter、約590nmの光を遮断する)を使用する一般的なプラズマディスプレイパネルに有用に使用されることがわかる。
【0060】
製造された蛍光体の色度座標、残光時間(1/10 decay time)、及び相対輝度を測定して、その結果を下記の表4に共に示した。相対輝度は、(Y0.75Gd0.250.9BO:Eu0.1蛍光体を基準にして、この蛍光体の輝度を100%としてそれに対する相対値を測定して示した値である。また、下記の表4で残光時間の「±0.2」は測定誤差を示す。
【0061】
【表4】

【0062】
上記表4に示したように、第1蛍光体だけを使用した実施例14及び第2蛍光体を最大60質量比で使用した実施例15〜17の場合は、残光時間、輝度特性、及び色度座標特性が適切であることがわかる。残光時間、色度座標、相対輝度の全てにおいて良好な特性を有するのは、実施例14〜17であることが分かる。
【0063】
これに対して、第2蛍光体の比率が高すぎた比較例6及び第2蛍光体だけを使用した比較例7の場合は、残光時間及び色度座標特性は優れているが、相対輝度が非常に減少したことがわかる。
【0064】
(実施例18〜20及び比較例8)
下記の表5に示した組成で赤色蛍光体を製造した。この赤色蛍光体を使用して、通常の方法で、Ne除去フィルター(Ne−cut filter)を使用するプラズマディスプレイ装置を製造した。(Y0.75Gd0.250.9BO:Eu0.1蛍光体を比較例8として示した。製造されたプラズマディスプレイ装置の残光時間、色度座標、及び相対輝度を測定して、その結果を下記の表5に示した。相対輝度は、比較例8を基準にして、この蛍光体の輝度を100%としてそれに対する相対値を計算して示した値である。また、下記の表5で、残光時間の「±0.2」は測定誤差を示す。
【表5】

【0065】
上記表5に示したように、実施例18〜20は、比較例8に比べて相対輝度は多少減少したが、残光時間が非常に短くて、比較例8以上に色度座標特性が優れていることがわかる。また、実施例18〜20は、実際のプラズマディスプレイパネルの駆動(Ne除去フィルター使用)時に3次元立体映像用残光特性を満たすことがわかる。残光時間、色度座標、相対輝度の全てにおいて良好な特性を有するのは、実施例18〜20であることが分かる。
【0066】
上記比較例8の(Y0.75Gd0.250.9BO:Eu0.1蛍光体の蛍光スペクトルを測定して、その結果を図4に示した。図4に示したように、(Y0.75Gd0.250.9BO:Eu0.1蛍光体は、約593nmで蛍光強度が最大であるので、色純度を向上させるために主に使用されるNe除去フィルター(Ne−cut filter、約590nmの光を遮断する)を使用する一般的なプラズマディスプレイパネルに使用する時、光がほとんど遮断されることが予測される。
これに対して、上記実施例の蛍光体は、実施例6の蛍光体の蛍光スペクトルを示した図2に示したように、590nm付近で発光する光の光量が小さいので、Ne除去フィルターを使用しても赤色光量の減少が微少である。その結果、同一な蛍光体を使用した実施例6及び18で、表2及び表5に示した相対輝度値を見ると、Ne除去フィルターを使用する一般的なプラズマディスプレイパネルに使用する時に、相対輝度がより増加したことがわかる。
【0067】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明のプラズマディスプレイパネルを示した部分分解斜視図である。
【図2】本発明の実施例6の(Y0.8Gd0.21.9:Eu蛍光体の蛍光スペクトルを測定して示したグラフである。
【図3】本発明の実施例14の(Y0.75Gd0.250.9Al(BO:Eu0.1蛍光体の蛍光スペクトルを測定して示したグラフである。
【図4】本発明の比較例8の(Y0.75Gd0.250.9BO:Eu0.1蛍光体の蛍光スペクトルを測定して示したグラフである
【符号の説明】
【0069】
1 第1(背面)基板
3 アドレス電極
5 第1誘電体層
7 隔壁
9 蛍光体層
11 第2(前面基板)
13 表示電極
13a 透明電極
13b バス電極
15 誘電体層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1で示される化合物を含む、ディスプレイ装置用赤色蛍光体。
(Y1−x1x12−y1:Euy1・・・(化学式1)
前記化学式1で、MはGd、La、Sc、Lu、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、0.00≦x1≦0.8、0.025≦y1≦0.20である。
【請求項2】
前記MはGdである、請求項1に記載のディスプレイ装置用赤色蛍光体。
【請求項3】
0.00≦x1≦0.4、0.05≦y1≦0.15である、請求項1又は2に記載のディスプレイ装置用赤色蛍光体。
【請求項4】
前記赤色蛍光体は、Pr、Sm、Dy、Tm、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される元素を共賦活剤としてさらに含む、請求項1〜3の何れかに記載のディスプレイ装置用赤色蛍光体。
【請求項5】
前記赤色蛍光体は、前記化学式1の蛍光体を第1蛍光体として含み、
下記の化学式2で示される蛍光体、下記の化学式3で示される蛍光体、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される蛍光体を第2蛍光体としてさらに含む、請求項1〜4の何れかに記載のディスプレイ装置用赤色蛍光体。
1−x2(Vy21−y2)O:Eux2・・・(化学式2)
前記化学式2で、0.01<x2<0.30、0.30<y2<0.60である。
(Y1−x3M´x31−y3Al(BO:Euy3・・・(化学式3)
前記化学式3で、M´はGd、La、Sc、Lu、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、0.00≦x3≦1.00、0.01<y3<0.30である。
【請求項6】
0.05<x2<0.15、0.35<y2<0.45である、請求項5に記載のディスプレイ装置用赤色蛍光体。
【請求項7】
前記第1蛍光体及び第2蛍光体の混合比率は、95:5〜40:60質量比である、請求項5又は6に記載のディスプレイ装置用赤色蛍光体。
【請求項8】
前記第1蛍光体及び第2蛍光体の混合比率は、95:5〜70:30質量比である、請求項7に記載のディスプレイ装置用赤色蛍光体。
【請求項9】
前記ディスプレイ装置は、3次元立体映像を実現するためのディスプレイ装置である、請求項1〜8の何れかに記載のディスプレイ装置用赤色蛍光体。
【請求項10】
前記蛍光体は、残光時間が5ms以下である、請求項1〜9の何れかに記載のディスプレイ装置用赤色蛍光体。
【請求項11】
前記蛍光体は、残光時間が3〜3.7msである、請求項10に記載のディスプレイ装置用赤色蛍光体。
【請求項12】
下記の化学式1で示される化合物を含む蛍光体を含む、ディスプレイ装置。
(Y1−x1x12−y1:Euy1・・・(化学式1)
前記化学式1で、MはGd、La、Sc、Lu、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、0.00≦x1≦0.8、0.025≦y1≦0.20である。
【請求項13】
前記MはGdである、請求項12に記載のディスプレイ装置。
【請求項14】
0.00≦x1≦0.4、0.05≦y1≦0.15である、請求項12又は13に記載のディスプレイ装置。
【請求項15】
前記赤色蛍光体は、Pr、Sm、Dy、Tm、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される元素を共賦活剤としてさらに含む、請求項12〜14の何れかに記載のディスプレイ装置。
【請求項16】
前記赤色蛍光体は、前記化学式1の蛍光体を第1蛍光体として含み、
下記の化学式2で示される蛍光体、下記の化学式3で示される蛍光体、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される蛍光体を第2蛍光体としてさらに含む、請求項12〜15の何れかに記載のディスプレイ装置。
1−x2(Vy21−y2)O:Eux2・・・(化学式2)
前記化学式2で、0.01<x2<0.30、0.30<y2<0.60である。
(Y1−x3M´x31−y3Al(BO:Euy3・・・(化学式3)
前記化学式3で、M´はGd、La、Sc、Lu、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、0.00≦x3≦1.00、0.01<y3<0.30である。
【請求項17】
0.05<x2<0.15、0.35<y2<0.45である、請求項16に記載のディスプレイ装置。
【請求項18】
前記第1蛍光体及び第2蛍光体の混合比率は、95:5〜40:60質量比である、請求項16又は17に記載のディスプレイ装置。
【請求項19】
前記第1蛍光体及び第2蛍光体の混合比率は、95:5〜70:30質量比である、請求項18に記載のディスプレイ装置。
【請求項20】
前記ディスプレイ装置は、3次元立体映像を実現するためのディスプレイ装置である、請求項12〜19の何れかに記載のディスプレイ装置。
【請求項21】
前記蛍光体は、残光時間が5ms以下である、請求項12〜20の何れかに記載のディスプレイ装置。
【請求項22】
前記蛍光体は、残光時間が3〜3.7msである、請求項21に記載のディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−185275(P2009−185275A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215241(P2008−215241)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】