説明

ディスプレイ装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は透過像と反射像を合成して表示を行うディスプレイ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来反射像と透過像の合成にはハーフミラーまたはビームスプリッタと呼ばれるミラーが使用され、例えば特開昭60−84573のようなディスプレイ装置が知られている。このミラーはガラス基板の表面に誘電体層を設けて反射と透過の割合をコントロールするものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし前述の従来技術を用いた場合、ハーフミラーに入射した光は約半分が反射し残りの半分が透過するため、観視者には透過像及び反射像のそれぞれ約半分の光しか到達しない。そのため明るさの低いディスプレイ装置となっていた。
【0004】また像形成手段が液晶表示素子の場合には偏光板等を使用するため、効率が悪くハーフミラーでさらに減衰する。そこで、光源のパワーをアップすれば良いが今度は発熱の問題が生じ、液晶表示素子に悪影響を与え、画質をそこなう。
【0005】そこで本発明はこのような問題点を解決するもので、その目的とするところは明るい表示が可能なディスプレイ装置を提供するところにある。
【0006】
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明のディスプレイ装置は、透過像を形成する手段と、反射像を形成する手段と、前記透過像と前記反射像を合成する合成手段から構成されるディスプレイ装置において、前記透過像を形成する手段と、前記反射像を形成する手段のうち一方からの出射光は、赤色光、緑色光、青色光に狭帯域波長域を有しており、他方からの出射光は、前記狭帯域波長域以外の波長域を少なくとも有しており、前記合成手段は、前記透過像を形成する手段からの出射光が、前記狭帯域波長域を有している場合には、前記狭帯域波長域を透過し、前記狭帯域波長域以外の波長域を反射する、あるいは、前記反射像を形成する手段からの出射光が、前記狭帯域波長域を有している場合には、前記狭帯域波長域を反射し、前記狭帯域波長域以外の波長域を透過する、単一のダイクロイックミラーで構成されたことを特徴とする。
【0008】また本発明のディスプレイ装置は、透過像を形成する手段と、反射像を形成する手段と、前記透過像と前記反射像を合成する合成手段から構成されるディスプレイ装置において、前記透過像を形成する手段と、前記反射像を形成する手段のうち一方からの出射光は、赤色光、緑色光、青色光に狭帯域波長域を有しており、他方からの出射光は、前記狭帯域波長域以外の波長域を少なくとも有しており、前記合成手段は、前記透過像を形成する手段からの出射光が、前記狭帯域波長域を有している場合には、前記狭帯域波長域を透過し、前記狭帯域波長域以外の波長域を反射する、あるいは、前記反射像を形成する手段からの出射光が、前記狭帯域波長域を有している場合には、前記狭帯域波長域を反射し、前記狭帯域波長域以外の波長域を透過する、ホログラムで構成されたことを特徴とする。
【0009】
【0010】
【実施例】
(実施例1)以下本発明の一実施例を図面にしたがって説明する。
【0011】図1は本発明のディスプレイ装置100の構成図である。透過像形成手段として液晶表示素子1と、反射像形成手段として立体物2がL字状になるように配置されている。二つの像の合成手段として、液晶表示素子1と立体物2の像が合成できるように45度の角度で偏光ビームスプリッタ3が配置される。
【0012】液晶表示素子1は透過型で光源6からの白色光を制御しカラー表示を行い、透過像を形成する。モードとしては、液晶の旋光性を利用し偏光板を用いる現在最も汎用的なTNタイプを用いた。立体物2は、照明光7により照明されたときのみ反射像を形成する。
【0013】観視者4にはディスプレイ装置100の観察窓5から、液晶表示素子1の像と立体物2の像が重なって観察される。例えば液晶表示素子1の映像がピエロで、立体物2がボールだとすると、あたかもピエロが立体的なボールの上で踊っているように観察される。この時、観視者4から液晶表示素子1及び立体物2までの距離は、ほぼ等しくなっている。
【0014】次に、本発明に用いた偏光ビームスプリッタ3の構成図を図2に示す。
【0015】一般に偏光ビームスプリッタ3としては、2つの直角プリズムの斜面の間に偏光膜11が挟持され、その斜面どうしを貼り合わせるものであった。この構成はプリズムの屈折率、膜の構成物質の屈折率が大きく関与しており、板状のもので可視域全体をカバーすることが困難であった。しかしプリズムを用いると、重くなり価格も高くなるため、使用しにくかった。
【0016】今回はその点を考慮して、図2(A)のような板状の偏光ビームスプリッタ3を用いた。構成は、2枚のプリズムプレート10の平面の間には偏光膜11が挟持されたものである。このプリズムプレート10は面法線と45度の角度をなし、互いに直交する2つの面を持つプリズム要素が複数列配置されたものである。
【0017】プリズムプレート10の材質は透過率の高い光学プラスチックで、射出成形等で安価に大量生産ができる。偏光膜11は誘電体多層膜で、プリズムプレート10を2枚貼り合わせることで、可視光のうちp偏光光を透過し、s偏光光を反射させることができる。プラスチック材のプリズムプレート10に直接蒸着が難しい場合には、ガラスの片面に蒸着しておいて、2枚のプリズムプレート3を貼り合わせる方法が取られる。
【0018】この偏光ビームスプリッタ3は従来のプリズムタイプのものを微細化し板状に配列したものであるから、全く従来のものと同様に扱うことができる。つまり図3(B)に示したように、45度で入射した入射光12のうち、p偏光光13は透過しs偏光光14は反射する。ここで液晶表示素子1の出射光の偏光特性をp偏光光に合わせることで、ほぼ100%透過させることができる。具体的には偏光板の偏光軸をp偏光光の光軸に合わせるだけでよい。
【0019】従来のディスプレイ装置100では、透過像の明るさ及び反射像の明るさがそれぞれ100だとすると、ハーフミラーによりそれぞれ50程度に減衰し、合成光は100程度の明るさになっていた。しかし、本発明によれば、液晶表示素子1の出射光の偏光軸と偏光ビームスプリッタの透過軸を同一にしたことで、反射像の明るさは50程度に半減するものの、透過像の明るさはほぼ100を維持でき、合成光の明るさは150となる。
【0020】また液晶表示素子1は立体物2に比べ熱に弱く、コントラスト比の低下など画質劣化を起こすので、明るさを上げるために光源6のパワーをアップできない。照明光7はパワーアップが容易なので、透過像と反射像の明るさのバランスはとりやすい。
【0021】透過像形成手段及び反射像形成手段としては、前述の液晶表示素子1と立体物2が入れ替わっても良いし、両方とも液晶表示素子1であっても良い。反射像形成手段が液晶表示素子1の場合には、その出射光の偏光軸をs偏光の軸に合わせる。図1では紙面に垂直方向となる。
【0022】透過像形成手段と反射像形成手段が共に液晶表示素子1である場合には、さらに効果が大きくなる。透過像の出射光をp偏光光に、反射像の出射光をs偏光光にすると、偏光ビームスプリッタ3での光の損失はなくなり、それぞれの出射光の明るさをほぼそのまま維持できるため明るさはハーフミラーの場合の約2倍となる。
【0023】また、この他に透過像あるいは反射像を形成する手段として、出射する光が偏光していれば何でも良く、CRTや電子ディスプレイであってもかまわない。つまり、偏光ビームスプリッタ3に対して、透過像の出射光をp偏光光に、反射像の出射光をs偏光光になるように調整してやることで、明るさを落とすことなく合成できる。
【0024】(実施例2)以下本発明の他の実施例を図面にしたがって説明する。
【0025】図3は本発明のディスプレイ装置100の構成図である。透過像形成手段として立体物2と、反射像形成手段としてカラータイプの液晶表示素子1がL字状になるように配置されている。液晶表示素子1と立体物2の像が合成できるように45度の角度で合成手段としてダイクロイックミラー8が配置される。観視者4には観察窓5を通して液晶表示素子1の像と立体物2の像が重なって観測される。なお光源6は三波長発光型の蛍光ランプを用いた。また照明光7は、連続発光のタングステンランプを用いた。
【0026】図4はダイクロイックミラー8(一点鎖線)と光源6(実線)及び照明光(点線)の分光特性図である。光源6に三波長タイプの蛍光ランプを用いたので、図示したようにR,G,B3色にピークを持っている。そして、液晶表示素子1により形成された反射像の分光特性も、光源6の分光特性に準ずる。
【0027】この特性に対してダイクロイックミラー8の特性は、図からわかるように光源6の発光波長帯域のみを反射し、その他の波長帯域を透過する。そのため反射像の出射光はほぼ100%観視者4に到達する。
【0028】また透過像は照明光7に連続発光のハロゲンランプを用いたので、ダイクロイックミラー8の反射帯域については反射され観視者4に到達しないが、それ以外の約80%の波長帯域は全て到達する。
【0029】従来のディスプレイ装置100では、透過像の明るさ及び反射像の明るさがそれぞれ100だとすると、ハーフミラーによりそれぞれ50程度に減衰し、合成光は100程度の明るさになっていた。しかし、本発明によれば、反射像の波長特性を狭帯域にしたことと、それに合わせたダイクロイックミラー8を用いたことにより、反射像の明るさはほぼ100に保ち、透過像の明るさも80程度にでき、合成光は180程度の明るさとなる。
【0030】なお、透過像形成手段及び反射像形成手段としては、前述の液晶表示素子1と立体物2が入れ替わっても良い。その場合には当然ダイクロイックミラー8の特性も変えることが必要となる。
【0031】また、この他に狭帯域波長域で発光する表示素子として、CRT、LED、蛍光表示素子、プラズマ表示素子等がある。これらの電子ディスプレイを透過像と反射像の形成手段とし、発光分布特性を透過像と反射光の出射光でずらして構成し、透過像と反射像の発光分布に合わせた最適な透過特性と反射特性を持つダイクロイックミラー8を用いれば、透過像と反射像のほぼ全ての出射光を観視者4に到達せしめることができ、明るい表示が可能となる。
【0032】(実施例3)以下本発明の他の実施例を図面にしたがって説明する。
【0033】図5が本発明のディスプレイ装置100の構成図である。基本的な配置は前述の実施例2に準じており、透過像形成手段として立体物2、反射像形成手段としてカラーの液晶表示素子1、2つの像の合成手段としてホログラム9が配置される。光源6は三波長発光型の蛍光ランプ、照明光7は連続波長発光のタングステンランプを用いた。
【0034】ホログラム9の分光特性はダイクロイックミラー8とほぼ等しく、R,G,Bの3つのピーク波長の光を反射し、その他の波長域は透過する。つまり反射像に対して約100%、透過像に対して約80%の光を観察窓5から観視者4に到達させることができる。
【0035】ホログラム9の作成方法は、エンボス・ホログラムの箔押し法として技術確立されている。元の型を作りさえすれば大量生産においてコストが非常に小さくなり、前述のダイクロイックミラー8に比べ大幅に低価格のディスプレイ装置100が提供できる。
【0036】実施例2と同様に、液晶表示素子1と立体物2は入れ替わってもよい。また、像形成手段に三波長発光型蛍光ランプを光源6とした液晶表示素子1の他に、狭帯域波長で発光する電子ディスプレイを用い、その分光特性を反射像と透過像でずらし、それに合わせたホログラム9を作成すれば、効率が上がり明るいディスプレイ装置100が構成できることは明白である。
【0037】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、少なくとも一方が偏光光として出射する透過像と反射像の合成手段に偏光ビームスプリッタを配置したとことで、偏光光を出射する像形成手段の明るさを減衰させないので、明るいディスプレイ装置を提供できるという効果を有する。
【0038】また、透過像と反射像の出射光の波長特性をずらして構成し、合成手段にダイクロイックミラーあるいはホログラムを配置し、反射像及び透過像のそれぞれの出射光に合わせた分光特性を持たせたことで、ディスプレイ装置の明るさを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のディスプレイ装置の一実施例を示す構成図である。
【図2】 本発明のディスプレイ装置の偏光ビームスプリッタの斜視図である。
【図3】 本発明のディスプレイ装置の他の実施例を示す構成図である。
【図4】 ダイクロイックミラーと光源と照明光の分光特性図である。
【図5】 本発明のディスプレイ装置の他の実施例を示す構成図である。
【符号の説明】
1 液晶表示素子
2 立体物
3 偏光ビームスプリッタ
4 観視者
5 観察窓
6 光源
7 照明光
8 ダイクロイックミラー
9 ホログラム
10 プリズムプレート
11 偏光膜
12 入射光
13 p偏光光
14 s偏光光
100 ディスプレイ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】 透過像を形成する手段と、反射像を形成する手段と、前記透過像と前記反射像を合成する合成手段から構成されるディスプレイ装置において、前記透過像を形成する手段と、前記反射像を形成する手段のうち一方からの出射光は、赤色光、緑色光、青色光に狭帯域波長域を有しており、他方からの出射光は、前記狭帯域波長域以外の波長域を少なくとも有しており、前記合成手段は、前記透過像を形成する手段からの出射光が、前記狭帯域波長域を有している場合には、前記狭帯域波長域を透過し、前記狭帯域波長域以外の波長域を反射する、あるいは、前記反射像を形成する手段からの出射光が、前記狭帯域波長域を有している場合には、前記狭帯域波長域を反射し、前記狭帯域波長域以外の波長域を透過する、単一のダイクロイックミラーで構成されたことを特徴とするディスプレイ装置。
【請求項2】透過像を形成する手段と、反射像を形成する手段と、前記透過像と前記反射像を合成する合成手段から構成されるディスプレイ装置において、前記透過像を形成する手段と、前記反射像を形成する手段のうち一方からの出射光は、赤色光、緑色光、青色光に狭帯域波長域を有しており、他方からの出射光は、前記狭帯域波長域以外の波長域を少なくとも有しており、前記合成手段は、前記透過像を形成する手段からの出射光が、前記狭帯域波長域を有している場合には、前記狭帯域波長域を透過し、前記狭帯域波長域以外の波長域を反射する、あるいは、前記反射像を形成する手段からの出射光が、前記狭帯域波長域を有している場合には、前記狭帯域波長域を反射し、前記狭帯域波長域以外の波長域を透過する、ホログラムで構成されたことを特徴とするディスプレイ装置。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【特許番号】特許第3384026号(P3384026)
【登録日】平成14年12月27日(2002.12.27)
【発行日】平成15年3月10日(2003.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−107945
【出願日】平成5年5月10日(1993.5.10)
【公開番号】特開平6−317760
【公開日】平成6年11月15日(1994.11.15)
【審査請求日】平成12年4月17日(2000.4.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【参考文献】
【文献】特開 昭60−84573(JP,A)
【文献】特開 平2−181138(JP,A)
【文献】特開 平5−19386(JP,A)
【文献】特開 平3−107190(JP,A)