説明

ディスポーザブル・バイオリアクタ及びそのキット並びに製造方法

【課題】ディスポーザブル・バイオリアクタ及びそのキット並びに製造方法の提供。
【解決手段】容器40と、容器40と接続可能で破壊しなければ取り外すことができない蓋10とからなるディスポーザブル・バイオリアクタ。蓋10は横方向に延在する複数のロックアームを備える保持構造を有し、一方、ロックアームはその長手方向に弾性的に縮むように、また保持表面によって容器40の縦方向に対して垂直にロックされるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剛性の壁(以下、剛体壁と記す)を有する本体から構成されるディスポーザブル・バイオリアクタに関する。より詳細には、前記本体は容器とこれに結合可能な蓋から構成される。
【背景技術】
【0002】
現在の技術水準において、バイオリアクタには通常、マルチユースタイプのシステムとディスポーザブル(シングルユースタイプ)のシステムとがある。マルチユースタイプのシステムはガラスとスチールから出来ていて、制御装置と共に作動するように構成されている。このようなマルチユースタイプのシステムはガラス容器とこれを閉じる蓋を有する。この蓋を通して、例えば攪拌器やセンサ、供給ライン等を容器内部に接続できる。マルチユースタイプのシステムに関する不都合な点は、一回の使用が終了した後にマルチユースタイプのシステムを洗浄するのにコストと時間を要し、その結果費用が嵩むことである。更に、用いる洗浄方法に関してもその適否を確認しなければならないが、そのことで更にコストがかかる。このことは、組換えタンパク質の生産等、工業的規模で用いられるあらゆる用途のバイオリアクタにおける本質的な事実である。
【0003】
上述の細胞培養プロセスのためのマルチユースタイプのシステムに対し、ディスポーザブルのシステムも知られている。このディスポーザブルのシステムやリアクタは通常バッグ形状を有する。このようなシステムは特許文献1及び特許文献2に記載されている。使用時には、このようなバッグを回転台(ロッカ)の上に置き、回転台と共に前後に動かす。上述の攪拌タンク式のマルチユースタイプのシステムに比べ、バッグ型リアクタによって得られる細胞密度は低密度である。更に、多層構造のバッグからなるディスポーザブル・リアクタには、種々のプラスチック材料が使用されているためにリサイクルできないという不都合がある。バッグ型リアクタは特に、ガラスとスチールで製作された容器について見出された細胞培養プロセス条件をそのままバッグ型リアクタには適用できないという不都合を有するため、このバッグ型リアクタをそれぞれの用途に合わせて最適化する必要がある。
【0004】
攪拌タンク式バイオリアクタもディスポーザブル・システムとして知られている。例えば、特許文献3に記載のバイオリアクタは膨張可能な構造によって安定化された容器を有する。また別のバイオリアクタにおいては、堅固なケーシング内にバッグを置き、その中に培地を収容するように使用される(特許文献4、特許文献5)。このケーシングとバッグの組合せは攪拌装置を有し、ディスポーザブルな材料で構成されている。バッグはケーシングのサイズに合ったものを使用しなければならないため、バッグのサイズを自由に変えることはできない。更に、この柔軟なバッグは攪拌装置を取付けるための剛性のアダプタを有するが、この構成は複雑であり製造には費用がかかる。
【0005】
これに代わる構成は、サトリウス(Satorius)のSuperspinner D1000(DF001LS SSB−−−V)である。このバイオリアクタは、剛体壁と取り外し可能な蓋を特徴とする。このバイオリアクタは、使用前にバイオリアクタが開けられて汚染されるリスク、或いは使用中に開けられて中に収容されている材料が汚染されるリスクを抱える。従って、実際に未開封の無菌バイオリアクタが提供されているかどうかは、ユーザーには判断できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第1602715(B1)号公報
【特許文献2】米国特許第6432698(B1)号公報
【特許文献3】独国特許第102006022651号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0239198号公報
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0239199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述の不都合を克服し、現在の技術水準と比べて簡単な設計であり且つ細胞培養プロセスに効率的に用いることのできるディスポーザブル・バイオリアクタを提供することにある。特に本発明の目的は、汚染リスクを低減するために、自由に開閉することのできないバイオリアクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚くべきことに、本発明の構成によれば、公知のバイオリアクタの不都合が克服される。特に、望ましくないバイオリアクタの開封の問題、ひいては汚染のリスクが防止される。本発明の構成に基づくと、ユーザーは滅菌のためにオートクレーブ処理する必要もなく、また滅菌済証明文書を作成する必要がない。従って、使いやすい簡易バイオリアクタがユーザーに提供される。
【0009】
上述の目的は、独立請求項12に従うディスポーザブル・バイオリアクタと、独立請求項1に従う蓋であってバイオリアクタの本質的な構成要素を形成する蓋とによって達成される。更に、上述の目的は、請求項16に従う細胞培養のためのバイオリアクタシステム、請求項18に従うディスポーザブル・バイオリアクタの製造方法、及び請求項21に従うディスポーザブル・バイオリアクタの使用によっても達成される。本発明の更に有利な実施形態や改変は、次の説明や添付の図面、従属請求項から明らかになるであろう。
【0010】
定義
細胞培養プロセス:本用語は、液体培地における好気条件及び嫌気条件の細胞培養の全タイプを含む。この用語は特に、高等真核細胞(哺乳類や魚類、鳥類、爬虫類、両生類の各細胞、植物細胞、藻類等)、真菌類等の下等真核細胞(例えばサッカロマイセス(Saccharomyces sp.)や、ピキア(Pichia sp.)、クリベロマイセス(Kluyveromyces sp.)等の酵母や、コウジカビ(Aspergillus sp.)やアオカビ類(Penicillium)等の糸状菌等)、微生物(例えばラクトバチルス(Lactobacillales sp.)、放線菌、大腸菌(Escherichia sp.)、ストレプトマイセス(Streptomyces sp.))、感染細胞(例えばウイルス感染(バキュロウイルス等)や細菌感染した細胞)及び特に遺伝子組換え微生物や細胞等、形質転換細胞の培養を含む。本用語はまた、例えばペレットやキャリア等、その上で細胞がコロニー形成できるキャリア材料を加えた液体培地における細胞培養も対象とする。本用語は更に、溶液や懸濁液、分散液等(例えば増殖培地や洗浄培地、リンス培地、緩衝液等)の混合や混和といった、細胞培養の準備段階も含む。従って、本バイオリアクタは混合装置として使用することもできる。
【0011】
本体:本発明における「本体」は、破壊しなければ開けることができない充填可能な閉じた内部空間を有する。本体は好ましくは上部と下部とからなり、これら上部と下部は単一のパーツ或いは複数のパーツによって形成することができる。複数パーツ構造の場合、破壊しなければ下部から取り外すことができない蓋によって上部が形成される、2パーツ構造を採用することが好ましい。好ましくは、本体は、1個又は数個の画定された閉止可能な開口部によって外部環境と連絡可能とされ、この開口部によって内部空間を充填したり、空にしたり及び/又は内部空間と連絡することができる。これら1個又は数個の開口部は、本体の下部及び/又は上部に位置する。好ましくはこれらは上部に配置され、2パーツ又は複数パーツ構造の本体においては蓋に設けられる。開口部は、チューブ用の接続コーンとして、クランプリングとして及び/又は他の要素の維持及び/又は位置決めのための非貫通の開口部として構成される。接続コーンは蓋の上側と下側に配置されることが好ましい。クランプリング及び/又は非貫通の開口部は、蓋の上側のみに配置されることが好ましい。
【0012】
緊密:この用語は、バイオリアクタ本体が壁と縁部において、特に2パーツ又は複数パーツの本体の場合は例えば蓋の外縁部と容器の接触する壁との間において、水、蒸気及び/又は空気に対して浸透性を有さないという性質を意味する。緊密性は、当接し相互接触する壁同士の確実な結合によってもたらされる。更に、例えばO−リング、シールリップ及び/又は接着剤等の封止要素も緊密性に寄与できる。この場合、封止要素は蓋と容器の接触する壁同士の間に締め付けられる。複数パーツの本体、特に容器と蓋とから形成される本体を組み立てる際、先ず封止要素が容器に配置され、その後蓋が取り付けられるか、或いはその逆になされ、封止要素は本体の両パーツの間に締め付けられる。組み立てが容易になるという理由から、封止要素は先に容器に取付けることが好ましい。緊密性を確認するには所謂圧力試験を行う。この試験においては、閉鎖されたバイオリアクタ本体の内部空間を開口部を経由する空気によって1バールの圧力で加圧する。圧力試験を始める前に、全ての開口部と連絡可能部を閉鎖する。この圧力試験によると、閉鎖された内部空間における圧力が5〜10分間、好ましくは10〜20分間、更に好ましくは20〜30分間1バールを保ち続ける場合にバイオリアクタは緊密である。
【0013】
ミキサ:本用語は、外部駆動装置と直接又は間接に接続され、バイオリアクタ本体の内部空間に配置され、バイオリアクタの内容物の混合を実現する、ディスポーザブル・バイオリアクタの要素を意味する。特に、混合装置は磁石、駆動軸及びミキサを備える。ミキサは様々に構成することができるが、特にインペラミキサ、プロペラミキサ、ラシュトンミキサ、傾斜ブレードミキサからなる群から選択される。例えばマグネットモータ等の外部駆動部のために、ディスポーザブル・バイオリアクタには特別に適合する収容部が備えられ、これによってミキサと駆動部との間の取り外し可能な接続が実現する。
【0014】
保持構造:本用語は、取り付けのための構造体を意味する。
【0015】
本発明のディスポーザブル・バイオリアクタは、互いに結合される剛体壁を備える本体を有し、該壁は充填可能な内部空間を形成し包囲し、前記剛体壁は破壊しなければ互いに取り外すことができず、前記包囲された内部空間は少なくとも1個のディスポーザブル・バイオリアクタ部品、特に攪拌装置及び/又はセンサを備えることができる。本発明の好ましい一実施形態においては、前記本体は、容器と、破壊しなければ前記容器から取り外すことができない蓋とを有し、少なくとも1個のディスポーザブル・バイオリアクタ部品は前記蓋に配置することができる。更なる一実施形態においては、前記ディスポーザブル・バイオリアクタの前記蓋は、次の特徴を有する。即ち、上側と下側を備える蓋表面と;蓋表面下側に配置され、横方向に延在する複数のロックアームを備える保持構造とを有し、前記ロックアームはその長手方向に弾性的に縮むように、また保持表面によって容器の縦方向に対して垂直にロックされるように構成されるという特徴である。この蓋の他にも、ディスポーザブル・バイオリアクタは、開口部周りに形成された固定フランジを備える容器を有し、この固定フランジは、開口部に向いて湾曲した固定用入り込み部としての端部を備え、この端部において蓋の保持構造がロックされるように構成される。このようにして、容器は蓋と確実に嵌合する。更に、混合装置と少なくとも1個のセンサが蓋に固定されて容器内部に配置することができるように、蓋の構造が実現される。
【0016】
本発明のディスポーザブル・バイオリアクタは、その特別な設計の蓋により、公知のマルチユースタイプのバイオリアクタの利点とディスポーザブル・バイオリアクタの利点とを兼ね備える。本発明のバイオリアクタはディスポーザブルな材料で構成されているため、ディスポーザブル・バイオリアクタとしての使用にも適する。本発明のディスポーザブル・バイオリアクタは、予め密閉され滅菌状態で出荷される。ディスポーザブル・バイオリアクタ本体の剛体壁、或いは好ましくは蓋は、破壊しなければバイオリアクタ容器から取り外すことができないので、バイオリアクタ汚染の危険は最小限に抑えられる。更に、本ディスポーザブル・バイオリアクタがディスポーザブル・システムとして使用される場合、次回の使用プロセスにおける洗浄にかかる出費及び汚染の危険性が完全に回避される。
【0017】
本発明の蓋の一実施形態においては、蓋は、蓋表面の周囲に形成され且つ蓋表面に対して垂直に突出し、蓋表面に対して平行に弾性を示すように形成されるつば部、及び/又はその内側における周囲封止要素を有することを特徴とする。ディスポーザブル・バイオリアクタの容器がこの蓋によって閉じられる場合、突出するつば部が弾性的に容器に向かうか、及び/又は封止要素がつば部と容器外壁との間に締め付けられる。いずれの場合においても、ディスポーザブル・バイオリアクタの容器と蓋との間の緊密な結合が形成される。
【0018】
蓋の更なる一実施形態においては、ロックアームは、その半径方向の外端部にU字型部を有することを特徴とし、U字型部は蓋表面の方向に開き、その脚部はロックアームの長手方向に弾性的に可動である。
【0019】
ディスポーザブル・バイオリアクタの容器に蓋を設置する場合、先ず半径方向外側に位置するU字型部の脚部は、容器の固定フランジによって内側に弾性的に押圧される。このようにして、保持構造を容器内部に向かう方向に固定フランジ内に押し付けることが可能となる。保持構造が容器内に十分に深く押圧されると直ちに、弾性的に歪められたU字型部の脚部は再度外側にパチリと跳ね返り、固定フランジに設けられた固定用入り込み部の裏に係合する。従って、この位置においてロックアームは容器内部に配置され、周囲につば部を備える蓋表面によって容器は完全に閉鎖される。その結果、ロックアームの解放と、これによってディスポーザブル・バイオリアクタを開けることは、蓋の破壊によってのみ可能となる。破壊により、バイオリアクタはそれ以降の使用が不可能となる。このようにして、ディスポーザブル・バイオリアクタの汚染が防止される。更に、ディスポーザブル・バイオリアクタの容器と蓋の間の結合により、前記蓋の中に又は上に配置されたフィルタ要素を通してガス交換が可能なようにディスポーザブル・バイオリアクタを緊密な状態で提供することが可能となる。
【0020】
蓋の更なる一実施形態においては、保持構造は中央に配置された軸受フランジを有し、軸受フランジにおいてインペラと磁石とを備える駆動軸が、マグネットモータにより駆動されるように回転可能に保持される。更に、蓋表面は、その上側と下側それぞれにおけるチューブ接続部品として、少なくとも1個の、好ましくは複数の突出する接続コーンを有することを特徴とする。好ましくは蓋の上側に少なくとも1個、好ましくは複数のクランプリングが配置され、例えばプローブやセンサ等のバイオリアクタに導入されるべき要素の確実な位置決めのために用いられる。全ての開口部(接続コーン、クランプリング等)は、接続される要素(チューブ、センサ、プローブ)によって、或いは栓、膜及び/又はフィルタによって閉鎖することができる。
【0021】
この蓋の設計により、攪拌器や各種センサの駆動を非侵襲的な方法で行うことができる。この目的で、ミキサ(好ましくはインペラ)を備え磁石に結合する駆動軸が、マグネットモータにより非接触で回転される。更に、プラスチックチューブ、好ましくはシリコーンチューブを接続コーンに固定することができる。このプラスチックチューブは、例えばセンサを容器内に配置するために使用される。この目的で、例えばチューブ内に配置されたセンサの種類に応じて、チューブはストッパ又は膜で閉止される。接続コーンに固定されたチューブ内にセンサを配置することによって、センサは容器内の溶液中におけるその位置を保持できる。これによって、バッグ型リアクタ(上述を参照)の不都合である、しばしばセンサがバッグ内の培地表面に出てしまい、液体培地でなくそこに存在する空気を測定してしまうということが回避される。
【0022】
容器内部におけるチューブの位置、ひいてはセンサの位置を更にしっかりと維持するために、蓋は位置決めリングを有することが好ましい。例えば中央ブリッジによって駆動軸に保持される位置決めリングによって、チューブ同士は互いに距離を保って安定化される。これによりセンサは、容器内部においてトラブル無く操作・使用できるようになる。一方、この位置決めリングは滅菌気密バイオリアクタの運搬・輸送にもメリットがある。これは即ち、リアクタ内に配置された部品が安定化されることによるものである。
【0023】
更により好ましくは、上述の位置決めリングは複数のロッドによって保持構造に固定される。更に、ディスポーザブル・バイオリアクタの前記位置決めリングと共に、容器と蓋はプラスチック等のリサイクル可能な材料でできている。プラスチックは特に、米国薬局方(USP)クラスVIの認証を受けたものであることが好ましい。ディスポーザブル・バイオリアクタを製造するために、USPクラスVIのプラスチックから選択された再利用可能なプラスチックを使用することも好ましい。
【0024】
本発明は更に次の特徴を有するディスポーザブル・バイオリアクタキットを開示する。即ち、開口部周りに形成され、開口部に向いて湾曲する固定用入り込み部としての端部を備える固定フランジを有する容器と、既に上に記載されたものと同様の蓋であって、その保持構造は固定用入り込み部にロックされるように構成されている蓋と、混合装置と、容器内の培地データを得るための少なくとも1個のセンサと、ディスポーザブル・バイオリアクタの設置と使用のための使用説明書とを有する特徴である。他の一実施形態においては、本キットは、少なくとも1個のセンサと共に接続されたチューブを備える混合装置を有する予め閉鎖されたバイオリアクタと、ディスポーザブル・バイオリアクタの設置と使用のための使用説明書とを有する。前記キットの更なる一実施形態はまた、バイオリアクタを操作することができる外部駆動部と制御装置とを更に有する。特に、前記センサはpHセンサである。
【0025】
本発明は更に細胞培養のためのバイオリアクタシステムを開示する。本バイオリアクタシステムは次の特徴を有する。即ち、上述のディスポーザブル・バイオリアクタと、前記ディスポーザブル・バイオリアクタの上及び/又は中に取り付けられる、特に混合装置及び/又はセンサ等のディスポーザブル・バイオリアクタの複数の部品と、ディスポーザブル・バイオリアクタの複数の部品の制御及び/又は読取りを行う制御装置とを有するという特徴である。好ましくは、制御装置は次の部品類;各種培養プロセスを制御するためのメインモジュール、バイオリアクタシステムへエネルギーを供給するための電力モジュール、ミキサを制御するための駆動モジュール、気体及び/又は液体をディスポーザブル・バイオリアクタの内外に制御下で供給及び/又は排出するためのポンプモジュール、ディスポーザブル・バイオリアクタを冷却又は加熱するための熱モジュール、pH/DOモジュール及び気体混合モジュールを含む。
【0026】
更に本発明は、1:互いに接続して充填可能な内部空間を形成し、破壊しなければ互いに取り外すことができない、剛体壁を有する1パーツ型本体であって、ディスポーザブル・バイオリアクタの少なくとも1個の部品、好ましくは攪拌装置及び/又はセンサが前記本体の前記内部空間に配置される1パーツ型本体、を製造する工程。2:前記本体を滅菌する工程を含むことを特徴とするディスポーザブル・バイオリアクタの製造方法を開示する。この方法の別の一実施形態においては、容器と、前記容器を閉じる蓋とから形成される複数パーツ型本体が製造されることが好ましい。充填可能な内部空間はまた、ディスポーザブル・バイオリアクタの少なくとも1個の部品、特に混合装置及び/又はセンサを備える。この別の実施形態においては、第一工程において蓋と、ディスポーザブル・バイオリアクタの部品、特に混合装置及び/又は少なくとも1個のセンサとが接続され、第二工程においてディスポーザブル・バイオリアクタの前記部品を備える蓋が前記容器に結合され、緊密に封止されたディスポーザブル・バイオリアクタが提供される。続いて、封止されたディスポーザブル・バイオリアクタが滅菌される。好ましくは、前記容器は固定フランジを有するものとして製造されるが、この固定フランジは開口部周りに形成され、また固定用入り込み部として開口部に向いて湾曲する端部を備える。前記蓋は好ましくは上述の構造に従って製造され、その保持構造が前記容器の固定用入り込み部にロックされる。
【0027】
更に、本発明は、上述のディスポーザブル・バイオリアクタ及び細胞培養プロセスを行うためのディスポーザブル・バイオリアクタの使用を開示する。
本発明を添付の図面によって更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のディスポーザブル・バイオリアクタの好ましい一実施形態。
【図2】保持構造、駆動軸及びインペラを備える、ディスポーザブル・バイオリアクタの蓋の一実施形態の拡大図。
【図3】ディスポーザブル・バイオリアクタの容器に取り付けられた、保持構造を備える蓋の拡大切欠図。
【図4】図1のディスポーザブル・バイオリアクタの一部分の断面図。
【図5】ディスポーザブル・バイオリアクタの蓋の一実施形態の斜視図。
【図6】図5の蓋の部分断面図。
【図7】図5の蓋の一部分の拡大斜視図。
【図8】チューブアダプタを備える図5の蓋の斜視図。
【図9】チューブ及びセンサを備える図5の蓋の断面図。
【図10】チューブ及びセンサを備える図5の蓋の更なる断面図。
【図11】容器中に配置された図10のチューブ端の拡大図。
【図12】他の好ましいチューブ及びセンサを備える図5の蓋の断面図。
【図13】図12のチューブ端の拡大図。
【図14】保持構造、チューブ及び位置決めリングを備える蓋の好ましい一実施形態の斜視図。
【図15】蓋と容器の間の好ましい結合の拡大断面図。
【図16】蓋と容器の間の更に好ましい結合の拡大断面図。
【図17】ディスポーザブル・バイオリアクタの好ましい一実施形態の平面斜視図。
【図18】ディスポーザブル・バイオリアクタの蓋と容器との間の更に好ましい結合の拡大断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明は、図1に従う一実施形態であるディスポーザブル・バイオリアクタ1を開示する。ディスポーザブル・バイオリアクタ1は一般に、剛体壁からなる本体10、40で形成され、これら両壁は互いに結合されている。この互いに結合された剛体壁は、前記本体10、40の充填可能な内部空間を形成し包囲する。後述する好ましい一実施形態においては、前記の互いに結合された剛体壁は、容器40とそれに結合する蓋10によって提供される。前記本体10、40の互いに結合された剛体壁は、破壊しなければ互いに取り外し不可能である。この構成によって、ディスポーザブル・バイオリアクタが実際に使い捨て品としてのみ使用され、実行し得る後続プロセスが、例えば汚染によって妨げられないことが保証される。前記本体の前記内部空間内には、公知のディスポーザブル・バイオリアクタ部品を配置することができる。このようなディスポーザブル・バイオリアクタ部品には、例えば攪拌装置及び/又はセンサが含まれる。前記ディスポーザブル・バイオリアクタの好ましい本体は、例えば閉鎖されたシングルピース構成の本体として、ブロー成形法を用いて製造されるが、この場合、ディスポーザブル・バイオリアクタの各部品は予め前記本体内に成形しておく。この本体は、好ましくは底部のプラットフォームと頂部のヘッドとを有する円筒形(図示せず)を有する。この頂部のヘッドにも同様の接続形態が設けられるが、これについては蓋10とその好ましい実施形態とを参照して後述する。それに基づき、公知のディスポーザブル・バイオリアクタ部品が前記シングルピース構成のディスポーザブル・バイオリアクタ内に配置される。
【0030】
図1を参照すると、ディスポーザブル・バイオリアクタ1の好ましい一実施形態は、蓋10と堅固且つ緊密に結合するよう構成され、破壊されずに取り外すことができないようにされた容器40を有する。例えば容器40、蓋10、更にチューブ60、位置決め補助部90及び接続部品等、バイオリアクタ1に設置される他の部品は、プラスチック材料、特にUSPクラスVI認証のプラスチックから選択されるプラスチック材料から形成される。この様なプラスチック材料は一般に知られている。蓋10と容器40は、破壊せずには互いに取り外すことができないため、これらは取り囲まれた内部空間を有する上記本体を形成する。
【0031】
ディスポーザブル・バイオリアクタ1は、その構成により、システムを予め洗浄せずに使用できる有利な攪拌式タンク設計を提供する。このようにして、ディスポーザブル・バイオリアクタ1は滅菌され緊密な状態で出荷されるので、バイオリアクタ1の汚染の危険性は低減される。ディスポーザブル・バイオリアクタ1の内部空間と周囲環境との間の空気交換は、前記ディスポーザブル・バイオリアクタ1の滅菌バリアとして設置された少なくとも1個のフィルタ要素(図示せず)を通して実現される。好ましくは、少なくとも1個のフィルタ要素は接続コーンに直接的又は間接的に接続される。
【0032】
ディスポーザブル・バイオリアクタはプラスチック材料からなるため、その部品である容器40、蓋10、保持構造20、位置決めリング90、チューブ60は、従来のプラスチック加工のための成形方法によって製造することができる。従って、ディスポーザブル・バイオリアクタの製造にあたっては、先ず容器40が例えばブロー成形プロセスによって成形される。続く工程において、蓋10とその保持構造20が、射出成形や類似の方法によって成形される。これに加え、バイオリアクタの内部構造、特に混合装置30、32、35及び位置決めリング90が別の方法によって製造される。ディスポーザブル・バイオリアクタ全体を組み立てる際、先ずこれら内部構造物が、ねじ、接着剤及び/又は溶接によって蓋10に取り付けられる。その後、これら内部構造物を備えた蓋10が、ねじ、接着剤及び/又は溶接によって容器40に搭載される。このように、互いに接続された剛体壁からなる本体10、40が先ず製造される。これら剛体壁は充填可能な内部空間を形成してそれを包囲する。更に、例えば前記蓋10と前記容器40との間の結合に関する次の記載からわかるように、前記剛体壁は、破壊されずには互いに取り外すことができない。後により詳細に説明するように、ディスポーザブル・バイオリアクタの個々の部品は、ディスポーザブル・バイオリアクタとして組み立てられた後、滅菌される。従って、保持構造20又は別の構造による容器40と蓋10との結合を必須工程として含む製造プロセスが完了すると、滅菌され気密に閉鎖されたディスポーザブル・バイオリアクタが完成する。ディスポーザブル・バイオリアクタの個々の部品の構造上の詳細と特性を次に説明する。
【0033】
詳細は後述するが、種々の攪拌器30、35を駆動するための外部マグネットモータM、容器40内に突出するチューブ60を備えるチューブ接続部品68、チューブ60中に配置されたセンサ82、84、更に公知の部品又はそれから選択される部品が蓋10に接続される。蓋10は容器40の固定フランジ50と適合する。好ましくは、この固定フランジ50は種々の寸法の容器40と共に提供される。このようにして、容器の寸法はディスポーザブル・バイオリアクタ1のそれぞれの用途のために思慮深く選択することができ、それぞれの容器寸法に合う特別な蓋10を提供する必要はない。
【0034】
図3に示すように、固定フランジ50は、容器40の開口部周りに形成される。固定フランジ50の湾曲した端部52は、容器40或いは固定フランジ50の開口部の中心方向に突出する。この形にすることによって、端部52は蓋10のための固定用或いはロック用の入り込み部を形成する。
【0035】
更に好ましくは、固定用入り込み部52には、容器40の底の方向に突出するブリッジ(図示せず)が設けられる。このブリッジも、容器40の開口部の周囲に形成される。この構造は、そこに係合する保持構造20の保持腕24と確実な嵌合を形成することによって、蓋10の保持構造20(後述を参照)を固定用入り込み部52にロックすることに役立つ。
【0036】
蓋10を図2と図5に斜視図で示す。蓋10は、容器40に面する下側14bと、容器40とは逆の方向を向く上側14aとを備える蓋表面14を有する。図示される一実施形態において蓋表面は円形となっているが、角張った形、楕円形又は曲線形も可能である。
【0037】
蓋表面14は、蓋表面14に対して垂直に突出する周囲つば部12によって制限される。容器40が閉じているときに固定フランジ50を包囲する目的で、つば部12は容器40の方向に突出する。一実施形態においては、つば部は半径方向に弾性的に形成される。更に、その内径は、固定フランジ50の外径よりも若干小さくされる。容器40に蓋10を取付けると、つば部12と固定フランジ50は互いに支持し合い、緊密な結合を形成することができる。
【0038】
更なる一実施形態においては、つば部12は、その半径方向内側面に封止要素13を備える。封止要素13は、固定フランジ50の方向に半径方向内側に突出する。封止要素は例えば柔軟なシールリップ又はO−リング13によって形成される。容器40に蓋10を取付けると、封止要素はつば部12と固定フランジ50との間に締め付けられる。このようにして、容器40と蓋10との間の緊密な結合が達成される。別の一実施形態においては、容器40が封止要素13を備える。封止要素は固定フランジ50の半径方向外側面に配置される。封止要素13は、好ましくはO−リング又はシールリップによって実現される。一実施形態においては、周囲の溝又はナットに配置され、蓋10のつば部12の方向に半径方向外側に突出する。容器40に蓋10を取付ける際に、封止要素13は固定フランジ50とつば部12との間に締め付けられる。このようにして、容器40と蓋10との間の緊密な結合が実現される。ディスポーザブル・バイオリアクタの組み立てが簡単であるという理由から、この実施形態が好ましい。
【0039】
保持構造20は、蓋表面14の下側14bに固定される。この固定は、溶接、ねじ留め及び/又は接着剤によって行うことができる。保持構造20は、容器40に蓋10をロックするために用いられ、これにより蓋10は破壊しなければ容器40から取り外すことができない。この好ましい実施形態において、保持構造20は円形の蓋10に合わせて星形構造として形成されるが、蓋の形状に適合する他の形状も可能である。保持構造20の機能は完全に達成されなければならない、即ち、外側から取り外せないように、容器40の固定フランジ50にロック可能でなければならない。
【0040】
保持構造20は、中央に配置された軸受フランジ26を有する。軸受フランジ26は、インペラ35を備える駆動軸30を保持する。好ましくは、インペラ35は、セットアップスリーブによって駆動軸30に摩擦的に嵌合する。駆動軸30のインペラとは反対側の端部において、駆動用磁石32が駆動軸30に固定される。この磁石32と、磁石と結合する駆動軸30も、マグネットモータMに接触することなく回転できる。軸受フランジ26の一部と駆動用磁石32は蓋10のドーム状の収容部18内に保持されるが、軸受フランジ26はドーム状収容部18内にねじ留めされることが好ましい。このドーム状収容部18はマグネットモータMの固定のためにも用いられる。
【0041】
複数のロックアーム24は、軸受フランジ26から横方向、即ちつば部12の方向に延在する。蓋10を容器40に耐久的にロックするために、ロックアーム24は安定したプラスチック材料から形成される。このロックを実現するために、ロックアーム24はその長手方向に弾性的に縮むように構成されている。この目的で、ロックアーム24は、蓋表面14に向かって開口するU字型部22をつば部12に面した端部に備える。U字型部22の脚部は、ロックアーム24の長手方向に弾性的に可動である。ロックアーム24とU字型部22を備える保持構造20は、容器40の固定フランジ50の内径よりも横方向(即ち半径方向)に長く延在する。蓋10を容器底の方向へ押圧することによって蓋10を容器40に固定する際、U字型部22の脚部は、固定フランジ50によって半径方向内側に動く。これにより、ロックアーム24はその長手方向に縮み、半径方向外側のU字型部22の脚部は固定フランジ50に対して弾性的に歪められる。U字型部22のロック面28が、肩の形状をした固定用入り込み部52の下に来ると直ちに、U字型部22は最初の形に戻る。これによって、ロックアーム24はその最初の長さを回復し、固定用入り込み部52にロックされるか、或いは入り込み部の裏に係合される。ロック面28は、本発明の実施形態に応じて様々に構成される。第一の別の一実施形態(図示せず)においては、ロック面28は平坦であり、これによってほぼ完全に蓋10の下側14bに当接することができる。第二の別の一実施形態(図示せず)においては、ロック面28はU字型に構成され、これにより固定フランジ50の周囲に形成された筋目(rip)と確実に結合することができる(上を参照)。第三の別の一実施形態においては、ロック面28は異なる長さのU脚部を有するU字型である。ロックアーム24を見ると、ロック面28の半径方向内側に配置されたU脚部は、半径方向外側に配置されたU脚部よりも長い(図3を参照)。この形状に基づくと、保持構造20が固定フランジ50に引っ掛る場合、ロックアーム24のU字型部22は半径方向外側へと限定的且つ弾力的に動く。
【0042】
容器40と蓋10との間のロックを増強するため、固定用入り込み部52におけるブリッジ54と、U字型部22の半径方向外側の脚部の前面において相補的に形成された保持面28とは確実な嵌合を構成する。
【0043】
図3、4は、容器40と接続した、破壊されなくては取り外すことができない蓋10を示す。U字型部22は固定用入り込み部52の下にロックされる。加えてU字型部22は、ディスポーザブル・バイオリアクタ1の外側に対して蓋表面14とつば部12によって完全に覆われる。その結果、容器40から蓋10を取り外すのは、破壊しなければ不可能となる。更に、図4においてインペラ35を備える駆動軸30が設置されていることが分かる。一例として図示されるインペラ35は、異なる攪拌器形状、例えばラシュトン攪拌器、傾斜ブレード攪拌器又はプロペラ攪拌器等の形状とすることができる。
【0044】
図5〜図7において、蓋表面14は、クランプリング19及び接続コーン16としての複数の開口部を有するが、これらは蓋表面上側14a及び/又は下側14bに突出する。上側の接続コーン16はチューブ及びアダプタ70の固定のために用いられる。下側の接続コーン16は培地の供給・排出用或いはセンサ82、84設置用のチューブ60の固定のために用いられる。接続コーン16とチューブ60の使用方法及び設置されたセンサ82、84、86の使用方法に応じて、接続コーンは種々の直径を有することができる。図6の断面図にこれを示す。
【0045】
更に、蓋表面14の上側は複数の弾性的なクランプリング19を有することを特徴とする。クランプリングは複数の、好ましくは3個の弾性的に配置された舌部又はブリッジからなる。接続コーン16同様、クランプリング19も好ましくは種々の直径で製造される。クランプリング19は、容器40に挿入されるセンサ82、84、86用の、或いはディスポーザブル・バイオリアクタ1の同様の補足部品用の連結アダプタ70の収容或いは摩擦的嵌め込みによる保持のために用いられる。
【0046】
容器40に配置されるチューブ60は、蓋表面14の下側の接続コーン16に被せられ、摩擦的嵌め込みによって保持される。配置されたチューブ60とセンサを容器40内の適所に維持するために、チューブ60は位置決めリング90によって安定化され支持される。図14に示すように、位置決めリング90は周囲に配置されたクランプであり、チューブ60がそのクランプに固定される。位置決めリング90の内には調心リングが存在し、駆動軸30を包囲し、ブリッジによって位置決めリング90と結合される。好ましくは、位置決めリング90はロッド94によって保持される。ロッド94は一端において蓋表面14の下側、或いは保持構造20に固定される。ロッド94はその他端において位置決めリング90の半径方向内側に保持される。この結果、位置決めリング90は容器40の内部空間において固定的に配置され、チューブ60とセンサの位置が確実となるだけでなく、ディスポーザブル・バイオリアクタ1移動のためのロックが提供される。
【0047】
接続コーン16を経由して各種部品が容器40の内部に配置される。一実施形態においては、ある角度に曲げられた肘部を容器40の底付近に有するチューブ68が容器40の内部に備えられる。このため、チューブ68の端部は容器40の底と平行に延在する。この端部は多孔性フィルタで閉鎖される。このフィルタは容器40中の培地の通気に用いられる。
【0048】
図12に示す更なる一実施形態においては、温度センサ84が容器40内に配置される。温度センサ84はチューブ60中に位置し、チューブ60はその端部62においてストッパ66によって閉鎖される。温度センサ84は、蓋10を経由して容器40内に挿入される。熱はチューブ60を通して伝えられる。細胞培養プロセスにおける温度変化は非常に小さいため、前記チューブ60の壁を通しての測定の応答時間は無視できる。
【0049】
DOセンサ(溶存酸素センサ)82は、シリコーンキャップ64(図10と図11を比較)を有するチューブ60中に挿入される。DOセンサ82の断面は、接続コーン16とDOセンサ82との間に摩擦嵌合接続が起こるよう、接続コーン16の内の1個と適合させる。これに基づくと、追加的なアダプタ使用の必要はなく、センサをチューブ60中に自由に配置することができる。好ましくは、このセンサはチューブ端部まで移動されるよう配置される。
【0050】
図9の実施形態においては、pHセンサ86が容器40内に設置されている。この目的で、チューブ60、好ましくは他のセンサと共に用いられるようなシリコーンチューブは、蓋表面14の下側14bで接続コーン16に固定される。この接続コーン16の前には、クランプリング19が蓋表面14の上側14aに配置される。pHセンサ86のための連結アダプタ70は、摩擦嵌合によってクランプリング19内に保持される。チューブ60中に、pHセンサ86の剛体として形成又は硬くされた光ガイドが延在する。チューブ60の端部62において、軸方向前面に光感受性スポット89を備えるpHセンサアダプタ88が存在する。pHセンサ86の前記剛体として形成された光ガイド/ファイバは、前記チューブ60中で前記アダプタ88の前記光感受性スポット89に近接して終端する。前記光ガイドの剛性構造に基づくと、光ガイドの端部と光感受性スポット89との間の距離が、ディスポーザブル・バイオリアクタ1の使用の際に常に一定であることが保証される。これにより、前記pHセンサ86による信頼できる測定がサポートされる。使用時には、先ず光感受性スポット89が前記pHセンサ86の前記光ガイドによって刺激され、次にその発光が前記pHセンサ86の光ガイドによって感知される。
【0051】
ディスポーザブル・バイオリアクタ自体を上に記載してきたが、本発明はバイオリアクタのキット、特にディスポーザブル・バイオリアクタのためのキットも提供する。このキットは、上述の容器40、蓋10、攪拌装置30、32、35及びチューブ、更にはそれぞれ容器40又は蓋10に設置されるように構成されている上述のセンサ類を有する。上述のディスポーザブル・バイオリアクタ部品は、本キットの個々の部品として提供される。これによりキットを組み立て、その場でディスポーザブル・バイオリアクタを滅菌し、目的とする用途のために使用する可能性が提供される。このために必要な工程は、バイオリアクタキットに更に備えられているインストールと使用のための使用説明書に記載されている。更に、本バイオリアクタキットによれば、必要に応じて蓋10及びその保持構造20と組み合わせるために、同一の固定フランジ50を備えるが各種の寸法を有する容器40を出荷することが可能となる。別の一実施形態においては、キットは、混合装置と、接続されたチューブと、少なくとも1個のセンサとを備える閉鎖されたディスポーザブル・バイオリアクタと、ディスポーザブル・バイオリアクタの設置と使用のための使用説明書とを含む。更なる一実施形態においては、前記キットは、バイオリアクタを操作するための外部駆動部と制御装置とを更に有する。
【0052】
ディスポーザブル・バイオリアクタが完全に組み立てられた状態で出庫・配送された直後から、このディスポーザブル・バイオリアクタは細胞培養プロセスのために使用することができる。このことは、ディスポーザブル・バイオリアクタキットの個々の部品からディスポーザブル・バイオリアクタを組み立てた後も同様である。
【0053】
図15〜図18は、ディスポーザブル・バイオリアクタ1の前記蓋10及び前記容器40並びにそれらの相互接続の更に好ましい実施形態を示す。図15に示す実施形態においては、容器40の固定フランジは円筒形に形成される。その半径方向外側には、ねじ山56が形成される。固定フランジ50の上側には、封止要素13が配置される。蓋10も、そのつば部12の半径方向内側にねじ山11を有する。このねじ山11は固定フランジ50のねじ山56に合致する。互いに相補的に形成されたねじ山11と56によって、蓋10は容器40の固定フランジ50にねじ留めされる。蓋10が固定フランジ50に完全にねじ留めされると、封止要素13は蓋10の下側14bと固定フランジ50の上面との間に押しつけられ、これによりディスポーザブル・バイオリアクタ1の内部空間は緊密に閉じられる。蓋10の前記実施形態では保持構造20は設けられていない。前記蓋10の中央において、磁石32に結合する駆動軸30を保持するために、軸受フランジ26がマグネットモータの前記収容部18の下に配置される。
【0054】
図15を参照すると、前記つば部12と前記固定フランジ50との間におけるロックによる又はラッチによる接続として、係合するねじ山11、56を形成することも好ましい。このような実施形態においては、前記つば部12は少なくとも1個のラッチ用の筋目11を有し、これは前記蓋10が前記容器40に取り付けられると直ちに前記固定フランジ50の少なくとも1個のラッチ用の溝56と係合する。ディスポーザブル・バイオリアクタ1の内部空間は、前記封止要素13によって封止される。ラッチ用の筋目11とラッチ用の溝56との間の接続をラビリンスシールとして実現することも好ましい。このようなラビリンスシールは、単独で用いることも、前記封止要素13と組み合わせて用いることもできる。
【0055】
前記蓋10を前記容器40に取付けるための更に好ましい一実施形態を図16に示す。この実施形態においては、つば部12と固定フランジ50は、半径方向に突出し周囲に延在するウエブを有する。これらウエブ12、50は互いに当接する。また、この実施形態においては、保持構造20は前記蓋10に設けられない。互いに当接する前記ウエブ12、50は、例えば振動溶接又は超音波溶接によって互いに恒久的に結合される。更に好ましい一実施形態においては、前記ウエブ12、50は結合要素58(概略的にのみ図示)により結合される。この適用に関しては、ねじ、リベット等が適切な結合要素58である。前記蓋10と前記容器40のねじ留め又はリベット結合と、ウエブ12と50の接着剤付けとを組み合わせることも好ましい。更に別の一実施形態においては、結合要素58を用いることなく、前記ウエブ12と50の前記接着剤付けを利用することができる。図17は、結合要素58によって容器40と接続される蓋10の斜視図を示す。
【0056】
図18は、ディスポーザブル・バイオリアクタ1の蓋10と容器40との間の結合の更に好ましい一実施形態を示す。この実施形態においては、固定フランジ50は円筒形状を有する。前記固定フランジ50は、前記つば部12と前記つば部12に平行な配置で延在するウエブ15との間に設けられる前記蓋10の接着用凹部と係合する。例えば前記ウエブ15と前記つば部12との間の前記接着用凹部に接着剤が充填されると、前記固定フランジ50は硬く恒久的に取り付けられ、他方で前記蓋10と前記容器40との間で緊密な接続が実現される。
【0057】
ディスポーザブル・バイオリアクタ1の上述の様々な実施形態は、細胞培養のためのバイオリアクタシステムにおいて使用される。このバイオリアクタシステムは様々なモジュラ部品からなるため、様々な種類の細胞へ適用できる高い柔軟性を特徴とする。モジュラ部品を適用に応じて、制御装置と前記ディスポーザブル・バイオリアクタ1に組み合わせることができる。ディスポーザブル・バイオリアクタ1は、既に上述したディスポーザブル・バイオリアクタ部品類を備える。これには、例えばミキサ、各種センサ、供給と排出が可能なチューブ及びフィルタ要素が含まれる。複数のディスポーザブル・バイオリアクタ部品の制御及び/又は読取りを行う制御要素は、様々な種類の細胞の細胞培養プロセスを制御するメインモジュールを少なくとも備える。メインモジュールは、前記ディスポーザブル・バイオリアクタと接続されるディスポーザブル・バイオリアクタ部品に応じて、また前記バイオリアクタシステムによって処理される用途に応じて、様々な更なるモジュールと必要に応じて組み合わされる。この更なるモジュールには、バイオリアクタシステムに電力を供給するための電気供給モジュール、ミキサを制御するための駆動モジュール、前記ディスポーザブル・バイオリアクタの内へ/外へガス及び/又は液体を制御下で供給及び/又は排出するためのポンプモジュール、ディスポーザブル・バイオリアクタを冷却又は加熱するための加熱モジュール、前記ディスポーザブル・バイオリアクタ内の培地のpH値及び/又はDO値を制御するためのpH/DOモジュール及び前記ディスポーザブル・バイオリアクタ内及び/又は外へガスを供給及び/又は排出すると共に、前記ディスポーザブル・バイオリアクタ内のガス組成を制御するためのガス混合モジュールが含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1 バイオリアクタ
10 蓋
11 ねじ山;ラッチ接続
12 つば部
13 O−リング、封止要素
14 蓋表面
14a 蓋上側
14b 蓋下側
15 ウエブ
16 接続コーン
18 マグネットモータの収容部
19 クランプリング
20 保持構造
22 U字型部
24 ロックアーム
26 軸受フランジ
28 ロック面
30 駆動軸
32 磁石
35 インペラ
40 容器
50 固定フランジ
52 端部
56 ねじ山;ラッチ接続
58 結合要素
60 チューブ
62 チューブ端
64 膜
66 ストッパ
68 チューブ
70 チューブアダプタ
82 DOセンサ
84 温度センサ
86 pHセンサの結合
88 pHセンサアダプタ
89 光感受性スポット
90 位置決めリング
92 固定要素
94 ロッド
M 駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と結合可能で、破壊しなければ容器から取り外すことができないディスポーザブル・バイオリアクタの蓋であって、
a.上側と下側とを備える蓋表面と、
b.蓋表面の下側に配置され、横方向に延在する複数のロックアームを備える保持構造と、
を有すると共に、
c.該ロックアームはその長手方向に弾性的に縮むように、また保持表面によって容器の縦方向に対して垂直にロックされるように構成されていること、
を特徴とするディスポーザブル・バイオリアクタの蓋。
【請求項2】
蓋表面の周囲に形成され且つ蓋表面に対して垂直に突出するつば部であって、蓋表面に対して平行に弾性を示すように形成される及び/又はその内側面の周囲に封止要素を有するつば部を有すること特徴とする、請求項1に記載の蓋。
【請求項3】
ロックアームは蓋表面の方向に開くU字型部をその半径方向外端部に有し、U字型部の脚部はロックアームの長手方向に弾性的に可動である、請求項1に記載の蓋。
【請求項4】
蓋表面は円形に形成され、ロックアームを備える保持構造は星形に形成される、請求項1に記載の蓋。
【請求項5】
保持構造は中央に配置された軸受フランジを有し、軸受フランジにおいて好ましくはインペラであるミキサを備える駆動軸と磁石とが、マグネットモータによって駆動されるように回転可能に保持されることができる、請求項1に記載の蓋。
【請求項6】
蓋表面は、その上側及び/又は下側におけるチューブ接続部品としての複数の突出する接続コーンを有することを特徴とする、請求項1に記載の蓋。
【請求項7】
蓋表面は、蓋下側へと開口する通路に隣接する、接続部品としての少なくとも1個の弾性的なクランプリングを有することを特徴とする、請求項1に記載の蓋。
【請求項8】
蓋表面下側における接続コーンに複数のチューブが摩擦嵌合によって接続され、チューブ中にセンサを配置することができ、チューブはストッパ又は膜によって閉鎖することができるか、及び/又はチューブを通して培地を供給又は排出することができる、請求項6又は7に記載の蓋。
【請求項9】
複数のチューブを互いにある距離に維持し安定化させる位置決めリングを有する、請求項8に記載の蓋。
【請求項10】
位置決めリングは複数のロッドによって保持構造に固定されている、請求項9に記載の蓋。
【請求項11】
保持構造は、ねじ留め、溶接及び/又は接着剤付けによって蓋表面に固定されている、請求項1に記載の蓋。
【請求項12】
ディスポーザブル・バイオリアクタであって、
a.互いに接続され、充填可能な内部空間を形成し包囲する剛体壁からなる本体と、
b.前記剛体壁は破壊されなくては互いに取り外すことができず、前記包囲された内部空間は少なくとも1個のディスポーザブル・バイオリアクタ部品、特に攪拌装置及び/又はセンサを備えることができることと、
を特徴とするディスポーザブル・バイオリアクタ。
【請求項13】
本体は容器と、破壊しなければ前記容器から取り外すことができない蓋とから形成され、前記少なくとも1個のディスポーザブル・バイオリアクタ部品は前記蓋に配置することができる、請求項12に記載のディスポーザブル・バイオリアクタ。
【請求項14】
容器は、開口部周りに形成されて開口部に向いて湾曲する固定用入り込み部としての端部を備える固定フランジを有し、蓋は請求項1に従って形成され、保持構造は固定用入り込み部にロックされるように構成され、ミキサ装置と少なくとも1個のセンサを蓋に配置することができる、請求項13に記載のディスポーザブル・バイオリアクタ。
【請求項15】
容器と蓋とが、米国薬局方クラスVI認証のプラスチックからなる群から選択される材料から形成される、請求項14に記載のディスポーザブル・バイオリアクタ。
【請求項16】
細胞培養のためのバイオリアクタシステムであって、
a.請求項12に記載のディスポーザブル・バイオリアクタと、
b.ディスポーザブル・バイオリアクタの中及び/又は上に設置される、複数のディスポーザブル・バイオリアクタ部品、特にミキサ装置及び/又はセンサと、
c.複数のディスポーザブル・バイオリアクタ部品の制御及び/又は読取りを行うように構成されている制御装置と、
を有する、細胞培養のためのバイオリアクタシステム。
【請求項17】
前記制御装置が、次の各部品類:様々な培養プロセスを制御するためのメインモジュールと、前記バイオリアクタシステムにエネルギー供給するための電力モジュールと、ミキサを制御するための駆動モジュールと、前記ディスポーザブル・バイオリアクタの内/外へガス及び/又は液体を制御下で供給及び/又は排出するためのポンプモジュールと、前記ディスポーザブル・バイオリアクタを冷却又は加熱するための加熱モジュールと、pH/DOモジュールと、ガス混合モジュールとを有する、請求項16に記載のバイオリアクタシステム。
【請求項18】
ディスポーザブル・バイオリアクタを製造するための方法であって、
a.互いに結合され、破壊しなければ互いに取り外すことができない、且つ少なくとも1個のディスポーザブル・バイオリアクタ部品、特にミキサ装置及び/又は少なくとも1個のセンサが配置される充填可能な内部空間を形成し包囲する剛体壁からなる本体を製造する工程と、
b.前記本体を滅菌する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
前記本体が、
a’.蓋とディスポーザブル・バイオリアクタ部品、特にミキサ装置及び/又は少なくとも1個のセンサとを接続する工程と、
a''.前記ディスポーザブル・バイオリアクタ部品を備える前記蓋を前記容器に結合し、緊密に封止されたディスポーザブル・バイオリアクタを製造する工程と、
を含む工程aに従って、幾つかの部品から構成されるものとして製造される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
開口部周りに形成されて、開口部に向いて湾曲する固定用入り込み部としての端部を備える固定フランジを有する容器を製造する工程と、保持構造が固定用入り込み部にロックされるように構成されている請求項1〜11のいずれか1項に記載の蓋を製造する工程と、を含むことを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
細胞培養プロセスを行うための、請求項12に記載のディスポーザブル・バイオリアクタの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−263891(P2010−263891A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110080(P2010−110080)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(505404725)エッペンドルフ アーゲー (16)
【Fターム(参考)】