説明

ディップコート用エポキシ樹脂組成物

【課題】粘性特性を改善し、作業性及びシェルライフが良好なディップコート用エポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)液状のビスフェノールグリシジルエーテル型エポキシ樹脂と、(B)グリシジルアミン型4官能エポキシ樹脂と、(C)多官能の希釈剤と、(D)シリカ粉とを含む第1液と、(E)液状の芳香族アミン系硬化剤と、(F)トリエタノールアミンとを含む第2液と、からなるディップコート用エポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディップコート用エポキシ樹脂組成物に係り、特に、粘性特性を改善し、作業性及びシェルライフが良好なディップコート用エポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
揺変性(チクソトロピック性;以下、チクソ性とも称する)を有するエポキシ樹脂組成物は、コンデンサー、抵抗器、ハイブリッドIC等の小型電子部品のディップコート用樹脂として広く用いられている。このような揺変性エポキシ樹脂組成物においては、硬化剤添加後のエポキシ樹脂組成物の揺変性の経時低下の小さいこと、硬化物の耐湿性の良好なこと等が要求される。硬化剤混合後のエポキシ樹脂組成物の揺変性の経時低化が大きいと、コーティング膜厚が一定せず、早い時間でタレを生じて均一な厚さの塗膜を得ることができない。また、塗膜の耐湿性が悪いと、塗膜の電気特性が悪化し、電子部品を安全に保護することができなくなる。
【0003】
ところで、揺変性を有するエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂に対してコロイド状のシリカやベントナイト等の充填剤を添加することによって得ることができるが、このような充填剤のみの添加では十分な揺変性が得られない場合が多い。
【0004】
特許文献1には、エポキシ樹脂組成物の揺変性を改良するために、ホルムアミドやジメチルホルムアミド等のアミド化合物と、メチルカルビトール、ジエチレングリコール、エチレングリコール等のヒドロキシル基含有化合物とを添加することにより、揺変性を高めたエポキシ樹脂組成物が開示されている。しかし、この組成物では、揺変性は改善されるものの、ヒドロキシル基含有化合物の多量の添加により、作業性が悪いという問題があった。
【0005】
一方、特許文献2には、揺変性及び耐湿性を改善するために、エポキシ樹脂を含む第1液と硬化剤を含む第2液からなる2液型エポキシ樹脂組成物において、第1液と第2液との混合物の25℃での初期及び6時間保存後の構造粘性比を特定の範囲にしたものが開示されている。しかし、この組成物では、親水性のシリカの添加量が多いため、水分を吸収しやすく、組成物のシェルライフが悪いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−188552号公報
【特許文献2】特開平5−156127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたもので、粘性特性を改善し、作業性及びシェルライフが良好なディップコート用エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意検討した結果、特定の組成を有する樹脂組成物が上記特性を満足することを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明のディップコート用エポキシ樹脂組成物は、(A)液状のビスフェノールグリシジルエーテル型エポキシ樹脂と、(B)グリシジルアミン型4官能エポキシ樹脂と、(C)多官能の希釈剤と、(D)シリカ粉とを含む第1液と、(E)液状の芳香族アミン系硬化剤と、(F)トリエタノールアミンとを含む第2液と、からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のディップコート用エポキシ樹脂組成物によれば、粘性特性を改善したことで、作業性及びシェルライフが良好なディップコート用エポキシ樹脂組成物を得ることができ、安定した塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
本発明のディップコート用エポキシ樹脂組成物は、(A)液状のビスフェノールグリシジルエーテル型エポキシ樹脂と、(B)グリシジルアミン型4官能エポキシ樹脂と、(C)多官能の希釈剤と、(D)シリカ粉とを含む第1液と、(E)液状の芳香族アミン系硬化剤と、(F)トリエタノールアミンとを含む第2液と、から構成される。
【0013】
まず、第1液に使用される各成分について説明する。第1液に用いられる(A)成分のビスフェノールグリシジルエーテル型エポキシ樹脂は、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、水添ビスフェノールA等のビスフェノール類とエピクロルヒドリンを反応させることによって得られるエポキシ樹脂であり、常温で液状のものであれば特に制限されることなく使用される。(A)成分のエポキシ樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0014】
第1液に用いられる(B)成分のグリシジルアミン型4官能エポキシ樹脂は、官能基を4つ有しているため反応性や架橋密度が高く、耐熱性、高強度、高硬度、耐薬品性に優れた硬化物を与えることができるエポキシ樹脂である。また、このエポキシ樹脂を窒素変性のものとすることで樹脂組成物の作業性、シェルライフを改善できることを新たに見出した。このグリシジルアミン型4官能エポキシ樹脂としては、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂等があり、より具体的には、三菱化学株式会社製のJER604(商品名;テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0015】
本発明においては(A)成分と(B)成分という2種類のエポキシ樹脂を必須の硬化成分とするものであり、これらの配合比は質量基準で90:10〜10:90とするもので、70:30〜60:40であることが好ましい。(A)成分の割合が多くなり、(B)成分の割合が少なくなりすぎると粘度が低く作業性が悪くなり、(A)成分の割合が少なくなり(B)成分の割合が多くなりすぎると粘度が高くなり作業性が悪くなってしまう。
【0016】
第1液に用いられる(C)成分の多官能の希釈剤は、2以上、好ましくは3以上の官能基を有する反応性希釈剤であり、通常、ディップコート用組成物の粘度を低下させ、その粘度低減する目的の反応性希釈剤とは異なり、粘度低減効果は低いものの、樹脂組成物のチクソ性を低減又は維持しつつ、粘度を向上させ、作業性を改善するものである。
【0017】
この(C)多官能の希釈剤としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル等が挙げられ、特に3官能希釈剤が好ましく、製品例としてはトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(坂本薬品工業(株)製、商品名:SR−TMP)等が好ましい。
【0018】
その配合量は、上記(A)及び(B)成分のエポキシ樹脂100質量部に対し、5〜30質量部の範囲が好ましい。配合量が5質量部未満では、本発明の組成物を適正な粘度に調節することができず、また、配合量が30質量部を超えると、硬化物の特性が不良となる。
【0019】
第1液に用いられる(D)成分はシリカ粉であり、これは揺変性付与剤として添加される成分である。本発明において使用するシリカ粉としてはコロイダルシリカが挙げられる。このコロイダルシリカとしては、親水性シリカや疎水性シリカが挙げられ、これらは単独で使用してもよいが、本発明においては併用して用いることが好ましい。併用することで耐湿性を改善し、ポットライフも良好なものとできる。
【0020】
親水性シリカとしては、四塩化ケイ素の火炎加水分解法により得られる親水性のフュームドシリカが挙げられる。親水性のフュームドシリカは、その表面に親水性のシラノール基を持ち、一次粒子径が5〜20nmで、比表面積(BET)が40〜400m/gのものが好ましい。このような親水性フュームドシリカの市販品としては、例えば、アエロジル#300、#200(以上、いずれも日本アエロジル(株)製、商品名)等が挙げられる。
【0021】
疎水性シリカとしては、上記のような親水性フュームドシリカを、シラン、シロキサン等で化学的に処理することによって疎水化したフュームドシリカで、一次粒子径が7〜25nmで、比表面積(BET)が50〜500m/gのものが好ましい。このような疎水性フュームドシリカの市販品としては、例えば、RY200S(日本アエロジル(株)製、商品名)等が挙げられる。
【0022】
なお、上記親水性シリカおよび疎水性シリカの一次粒子径は、例えば、動的光散乱法により測定することができる。
【0023】
ここで(D)シリカ粉の配合量は、上記(A)及び(B)成分のエポキシ樹脂の合計量100質量部に対し2.0〜5.0質量部の範囲が好ましい。配合量が2.0質量部未満では、揺変性が不十分となり、5.0質量部を超えると、粘度、揺変性が過度に高くなって、均一な膜厚でコーティングすることが困難になる。
【0024】
また、このような量で配合されるシリカ粉において、親水性シリカ及び疎水性シリカを併用した場合の配合比は、疎水性シリカの割合がシリカ全体の10〜50質量%となる範囲が好ましく、20〜30質量%となる範囲がより好ましい。疎水性シリカの割合が10質量%未満では、組成物の可使時間(ポットライフ)を十分に長くすることができないばかりか、第1液と第2液混合後の粘度が上昇し、塗装仕上がりが不良となるおそれがある。また、50質量%を超えると、揺変性が低下して親水性シリカ及び疎水性シリカがともに沈降しやすくなる。
【0025】
次に、第2液に使用される各成分について説明する。第2液に用いられる(E)成分の芳香族アミン系硬化剤は、常温で液状のものであれば、特に制限されることなく使用される。その具体例としては、メタフェニレンジアミンとジアミノジフェニルメタンの共融混合物、そのような共融混合物とエポキシ化合物との付加物(例えば、アンカミンZ(エアプロダクツ(株)製、商品名)等)、ジアミノジエチルジフェニルメタン(例えば、カヤハード(日本化薬(株)製、商品名)等)、ジアミノジフェニルメタンのクルード(例えば、MDA−150(三井東圧化学(株)製、商品名)等)、ジエチルトルエンジアミン(例えば、アルベマール・コーポレーション(株)製、商品名)等)、アニリンとホリマリンの縮合物(例えば、ラッカマイドWH−619(大日本インキ化学工業(株)製、商品名)等)等が挙げられる。
【0026】
これらの芳香族系アミン硬化剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。(E)成分の芳香族アミン系硬化剤としては、反応性や、硬化物の耐熱性、耐湿性等の点から、なかでもメタフェニレンジアミンとジアミノジフェニルメタンの共融混合物、そのような共融混合物とエポキシ化合物との付加物が好ましい。
【0027】
この(E)成分の芳香族アミン系硬化剤の配合量は、(A)及び(B)成分のエポキシ樹脂の合計量100質量部に対し、1〜40質量部の範囲が好ましく、15〜35質量部の範囲がより好ましい。配合量が1質量部未満では、ガラス転移温度が下がって耐熱性が低下するおそれがある。また、配合量が40質量部を超えると、耐湿性が低下するおそれがある。
【0028】
なお、エポキシ樹脂の他の硬化剤、例えば、酸無水物系、イミダゾール系、ジシアンジアミド系、脂肪族アミン系等の硬化剤の使用は、組成物の揺変性を低下させ、また硬化物の耐湿性も低下させることから、硬化剤成分は芳香族アミン系硬化剤のみの使用が好ましい。
【0029】
第2液に用いられる(F)成分のトリエタノールアミン又はその塩は、(D)シリカ粉によりもたらされる揺変性を増強するために配合される成分であり、その配合量は、(A)及び(B)成分のエポキシ樹脂の合計量100質量部に対し、0.1〜2.0質量部の範囲が好ましく、1.0〜1.5質量部の範囲がより好ましい。配合量が0.1質量部未満では、揺変性増強効果が小さく、また、配合量が2.0質量部を超えると、エポキシ樹脂と芳香族アミン系硬化剤との硬化反応を促進させ、組成物の可使時間を短縮させるおそれがある。
【0030】
なお、トリエタノールアミンの塩としては、低級カルボン酸塩(アセテートやプロピオネート等)や無機酸塩が挙げられる。なお、トリエタノールアミンとその塩とを併用してもよい。
【0031】
本発明のディップコート用エポキシ樹脂組成物には、以上説明した成分の他に、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、上記シリカ粉以外の粉末充填剤、難燃剤、着色剤、その他の添加剤を配合することができる。例えば、粉末充填剤としては、結晶シリカ、溶融シリカ、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、ホワイトカーボン、ジルコニア、チタンホワイト、ベンガラ、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミ、窒化ケイ素、マグネシア、マグネシウムシリケート等が挙げられる。難燃剤としては、粉末状有機ハロゲン化合物、赤リン、リン酸エステル、三酸化アンチモン等が挙げられる。着色剤としては、カーボンブラック、コバルトブルー等の各種顔料・染料が挙げられる。なお、これらの成分は、第1液及び第2液のいずれか一方に配合してもよく、あるいはその両方に配合してもよい。充填剤の沈殿防止の点からは、第1液に配合することが好ましい。
【0032】
本発明のディップコート用エポキシ樹脂組成物は、前述したように、(A)液状のビスフェノールグリシジルエーテル型エポキシ樹脂と、(B)グリシジル型4官能エポキシ樹脂と、(C)多官能の希釈剤と、(D)シリカ粉とを含む第1液と、(E)液状の芳香族アミン系硬化剤と、(F)トリエタノールアミン又はその塩とを含む第2液と、から構成され、使用時に両液を所定割合で混合して使用される。
【0033】
第1液の調製は、(A)成分の液状のビスフェノールグリシジルエーテル型エポキシ樹脂及び(B)グリシジル型4官能エポキシ樹脂を予め混合しておき、さらに(D)成分のシリカ粉を添加し、攪拌混合した後、(C)成分の多官能の希釈剤を添加して、さらに短時間、例えば、30分間程度攪拌混合することにより行われる。前述した任意成分の充填剤、難燃剤、着色剤等を添加する場合には、例えば、3本ロール等で混合分散させればよい。(A)及び(B)成分のエポキシ樹脂と(D)成分のシリカ粉との撹拌混合は、第1液の粘度がほぼ平衡状態の粘度(平衡粘度)に到達している平衡粘度組成物が得られるように行うことが好ましい。このためには、エポキシ樹脂にシリカ粉を添加し、通常、2時間以上、好ましくは3〜5時間攪拌する。第1液を得るための攪拌混合装置としては、例えば、プラネタリーミキサー等を用いることができる。
【0034】
また、第2液の調整は、(E)液状の芳香族アミン系硬化剤に、(F)トリエタノールアミン又はその塩を添加、混合することで容易に得られる。
【0035】
本発明のディップコート用エポキシ樹脂組成物は、上記の通り配合を所定量で混合することにより、第1液と第2液との混合直後(初期)における混合物の25℃でのチクソ性(回転粘度計で20回転での粘度に対する4回転での粘度の比;構造粘性比)を低く抑えることができる特徴を有する。このチクソ性は、ディップコート用としては1.4〜1.9の範囲であることが好ましい。チクソ性が、1.4より小さいとコーティング後にタレが生じやすくなり、1.9を超えると揺変性が強くなり均一にコーティングができないおそれがある。このチクソ性は、コロイダルシリカの添加量や揺変性増強剤の添加量等により適宜調節することができる。
【0036】
また、第1液と第2液との混合直後(初期)の粘度は、チクソ性を上記範囲を満たしながら3dPa・s以上とすることで、樹脂組成物のディップコート時の作業性が改善でき、この粘度は4〜10dPa・sとすることが好ましい。
【0037】
また、電子部品を樹脂組成物によりディップコートする場合の塗膜厚さは、通常、0.2〜0.4mmの厚さである場合が多い。しかし、0.2mmより薄くコートする場合や、原料樹脂液の粘度が高く、所定の膜厚を得にくい場合等には、本発明の樹脂組成物の粘性低下の目的のために反応性希釈剤を添加するのがよい。ここで用いる反応性希釈剤としては、本発明の(C)多官能の希釈剤以外の反応性希釈剤が挙げられ、分子内にエポキシ基を1個有するエポキシ化合物で25℃の粘度が200cps以下のものが用いられる。
【0038】
このような反応性希釈剤としては、従来、粘性低下に用いられているものが挙げられ、、例えば、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アルキルフェノールグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブタンジオールグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0039】
この反応性希釈剤の添加量は、(A)成分及び(B)成分のエポキシ樹脂と(C)成分の多官能の希釈剤に、さらにここで添加する粘性低下のための反応性希釈剤の混合物に対して30質量%以下、好ましくは1〜30質量%、さらに好ましくは5〜20質量%である。30質量%を超えると硬化物特性が悪化してしまう。
【実施例】
【0040】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。また、以下の記載において、「部」は「質量部」を示すものとする。
【0041】
(実施例1)
常温で液状のビスフェノールグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、商品名:jER828;エポキシ当量188) 70部に、グリシジルアミン型4官能エポキシ樹脂としてN,N,N´,N´−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、商品名:jER604;エポキシ当量120) 30部を混合したエポキシ樹脂に、多官能の希釈剤としてトリメチロールプロパン・ポリグリシジルエーテル(坂本薬品工業(株)製、商品名:SR−TMP) 10部、シリカ粉として親水性フュームドシリカ(日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジル#200;一次粒子径1.4nm、比表面積200m/g) 3部及び疎水性フュームドシリカ(日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジルRY200S;一次粒子径15μm、比表面積80m/g) 1部を添加し、その添加後3時間攪拌混合して平衡粘度到達度100%の第1液を調製した。この第1液の調製には、(株)井上製作所製のダブルプラネタリーミキサー(型式 PLM−5)を用い、自転速度84rpm、公転速度26rmpで撹拌した。
また、硬化剤として芳香族アミン系硬化剤(1)(エアプロダクツ(株)製、商品名:アンカミンZ) 10部及び芳香族アミン系硬化剤(2)(エアプロダクツ(株)製、商品名:エタキュア100) 10部に、添加剤としてトリエタノールアミン(和光純薬(株)製) 1部を常法により添加し混合して第2液を調製した。
その後、これらの第1液及び第2液を混合してエポキシ樹脂組成物を得た。
【0042】
(実施例2)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、商品名:jER828;エポキシ当量188)の配合量を80部、N,N,N´,N´−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、商品名:jER604;エポキシ当量120)の配合量を20部に変更した以外は、実施例1と同様にして第1液及び第2液を調製し、さらに、これらの第1液及び第2液を混合してエポキシ樹脂組成物を得た。
【0043】
(実施例3)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、商品名:jER828;エポキシ当量188)の配合量を60部、N,N,N´,N´−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、商品名:jER604;エポキシ当量120)の配合量を40部に変更した以外は、実施例1と同様にして第1液及び第2液を調製し、さらに、これらの第1液及び第2液を混合してエポキシ樹脂組成物を得た。
【0044】
(実施例4)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、商品名:jER828;エポキシ当量188)の配合量を70部、N,N,N´,N´−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、商品名:jER604;エポキシ当量120)の配合量を30部、多官能の希釈剤であるトリメチロールプロパン・ポリグリシジルエーテル(坂本薬品工業(株)製、商品名:SR−TMP)の配合量を5部に変更した以外は、実施例1と同様にして第1液及び第2液を調製し、さらに、これらの第1液及び第2液を混合してエポキシ樹脂組成物を得た。
【0045】
(実施例5)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、商品名:jER828;エポキシ当量188)の配合量を70部、N,N,N´,N´−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、商品名:jER604;エポキシ当量120)の配合量を30部、多官能の希釈剤であるトリメチロールプロパン・ポリグリシジルエーテル(坂本薬品工業(株)製、商品名:SR−TMP)の配合量を20部に変更した以外は、実施例1と同様にして第1液及び第2液を調製し、さらに、これらの第1液及び第2液を混合してエポキシ樹脂組成物を得た。
【0046】
(比較例1)
エポキシ樹脂として、常温で液状のビスフェノールグリシジルエーテル型エポキシ樹脂であるビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、商品名:jER828;エポキシ当量188)を単独で、その配合量を100部とし、希釈剤としてトリメチロールプロパン・ポリグリシジルエーテルの代わりに1官能のブチルグリシジルエーテル(坂本薬品工業(株)製、商品名:BGE−R)を10部用いた以外は、実施例1と同様にして第1液及び第2液を調製し、さらに、これらの第1液及び第2液を混合してエポキシ樹脂組成物を得た。
【0047】
(比較例2)
N,N,N´,N´−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、商品名:jER604;エポキシ当量120) 30部の代わりに、パラアミノフェノール型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、商品名:jER630;エポキシ当量95) 30部を用いた以外は、実施例1と同様にして第1液及び第2液を調製し、さらに、これらの第1液及び第2液を混合してエポキシ樹脂組成物を得た。
【0048】
(比較例3)
N,N,N´,N´−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、商品名:jER604;エポキシ当量120) 30部の代わりに、固形のビスフェノールグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、商品名:jER1001;エポキシ当量400) 30部を用いた以外は、実施例1と同様にして第1液及び第2液を調製し、さらに、これらの第1液及び第2液を混合してエポキシ樹脂組成物を得た。
【0049】
(比較例4)
N,N,N´,N´−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、商品名:jER604;エポキシ当量120) 30部の代わりに、トリス(4−グリシドキシフェニル)ジグリシジルメタン(ダウケミカル社製、商品名:XD−7347;エポキシ当量200) 30部とした以外は、実施例1と同様にして第1液及び第2液を調製し、さらに、これらの第1液及び第2液を混合してエポキシ樹脂組成物を得た。
【0050】
上記各実施例及び各比較例で得られたエポキシ樹脂組成物について、下記に示す方法で各種特性を評価した。結果を組成とともに表1及び表2に示す。
【0051】
[チクソ性]
回転粘度計(芝浦システム(株)製 ビスメトロンVGH型粘度計)を用いて、第1液及び第2液の混合して1分後の、25℃における20rpmの粘度(η20)と4rpmでの粘度(η)を測定し、次式により求め、チクソ性(構造粘性比)とした。
チクソ性=η/η20
【0052】
[粘度]
回転粘度計(芝浦システム(株)製 ビスメトロンVGH型粘度計)を用いて、第1液及び第2液の混合1分後の粘度を25℃で測定した。
【0053】
[作業性]
φ3mmのガラス棒をエポキシ樹脂組成物中に3秒間浸漬させた後、これを引上げ、引き上げた際にできた穴の痕がなくなる時間を測定し、下記の基準で評価した。
○:10秒以内、×:10秒超
【0054】
[シェルライフ]
第1液及び第2液をそれぞれ60℃で90日間の状態で保管した後、これらを混合してエポキシ樹脂組成物とした後、この樹脂組成物中にφ3mmのガラス棒を3秒間浸漬させた後、引き上げて外観を確認した。このとき、被膜の表面状態を目視で観察し、下記の基準で評価した。
○:全体が均一、△:一部不均一な部分あり、×:ほぼ全体が不均一
【0055】
[ガラス転移点(Tg)]
熱機械分析装置(TA instruments(株)製、商品名:Q400)を用いTMA法によりガラス転移点(Tg)を測定した。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
表1及び表2から明らかなように、本発明の実施例のエポキシ樹脂組成物は、混合初期のチクソ性を低下又は維持するとともに、粘度を上げることができ、ディップコート時の作業性を良好なものとでき、さらに樹脂組成物のシェルライフも向上できた。また、得られるガラス転移点(Tg)が高くなり、従来よりも高温環境下で使用できることもわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)液状のビスフェノールグリシジルエーテル型エポキシ樹脂と、(B)グリシジルアミン型4官能エポキシ樹脂と、(C)多官能の希釈剤と、(D)シリカ粉とを含む第1液と、(E)液状の芳香族アミン系硬化剤と、(F)トリエタノールアミン又はその塩とを含む第2液と、からなることを特徴とするディップコート用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記第1液が、前記(A)及び(B)成分の合量100質量部に対し、前記(C)成分を5〜30質量部、前記(D)成分を2〜5質量部、含有することを特徴とする請求項1記載のディップコート用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)成分及び(B)成分の配合比が、質量基準で90:10〜10:90である請求項1又は2記載のディプコート用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記(C)成分が、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のディップコート用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記(D)成分が、親水性シリカと疎水性シリカの混合物であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のディップコート用エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記第1液と第2液との混合後の粘度が、4〜10dPa・s、チクソ性が1.4〜1.9であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のディップコート用エポキシ樹脂組成物。

【公開番号】特開2013−95889(P2013−95889A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241974(P2011−241974)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】