説明

ディフレクタ構造

【課題】ディフレクタによる空気抵抗の低減効果を増大させることが可能なディフレクタ構造を得る。
【解決手段】ディフレクタ2に略沿い当該ディフレクタ2の側外方に向けて流れる空気流Aを生じさせる空気流発生機構1を設けた。よって、空気流Aによって走行風Sをディフレクタ2の側外方へ逸らすことができるので、空気流Aを形成しない場合に比べて、ディフレクタ2による空気抵抗の低減効果をより増大させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディフレクタ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両走行時に車輪に風(走行風)が当たって空気抵抗が増大するのを抑制すべく、車輪の前方にプレート状のディフレクタを設けた構成が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−55425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、路面凹凸との干渉やデザイン上の理由等によって、ディフレクタの大きさが制限される場合があり、その場合には、車輪に当たる風量が比較的多くなって、ディフレクタによる空気抵抗の低減効果が少なくなってしまうおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、ディフレクタによる空気抵抗の低減効果をより増大させることが可能なディフレクタ構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にあっては、ディフレクタに略沿い当該ディフレクタの側外方に向けて流れる空気流を生じさせる空気流発生機構を設けたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、上記空気流を形成することで、空気流を形成しない場合に比べて、走行風が車輪から逸れやすくなり、ディフレクタによる空気抵抗の低減効果を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態にかかるディフレクタ構造を下方かつ後方から見た斜視図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施形態にかかるディフレクタ構造の正面図である。
【図3】図3は、本発明の第1実施形態にかかるディフレクタ構造を上方かつ前方から見た斜視図である。
【図4】図4は、本発明の第1実施形態にかかるディフレクタ構造の背面図である。
【図5】図5は、本発明の第1実施形態にかかるディフレクタ構造における風の流れを模式的に示す平面図であって、(a)は空気流が形成されない場合、(b)は空気流が形成された場合を示す図である。
【図6】図6は、本発明の第2実施形態にかかるディフレクタ構造を上方かつ前方から見た斜視図である。
【図7】図7は、図6のVII−VII断面図である。
【図8】図8は、本発明の第3実施形態にかかるディフレクタ構造を上方かつ前方から見た斜視図である。
【図9】図9は、図8のIX−IX断面図である。
【図10】図10は、本発明の第4実施形態にかかるディフレクタ構造を上方かつ前方から見た斜視図である。
【図11】図11は、図10のXI−XI断面図である。
【図12】図12は、本発明の第4実施形態にかかるディフレクタ構造に含まれる共有部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。以下の複数の実施形態は、いずれも、車両としての自動車の前輪にディフレクタ構造を適用したものである。なお、以下の複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれている。よって、それら同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。また、各図では、いずれもフェンダパネル等が取り除かれてディフレクタ構造を露出させた状態が示されており、図中、FRは車両前方、UPは車両上方、WOは車幅方向外側を示している。
【0010】
(第1実施形態)図1〜図5は、本発明の第1実施形態にかかるディフレクタ構造を示している。
【0011】
本実施形態にかかるディフレクタ構造では、図1に示すように、車輪Whの前方に間隔をあけてプレート状のディフレクタ2が設けられている。このディフレクタ2は、車輪Whの少なくとも外周側かつ上側を間隔をあけて覆うホイルハウス3の前壁部3aの下端部に、車両前後方向に対して交差する(略直交する)姿勢で取り付けられている。また、前壁部3aの下端部には、平面視で車両前方に向けて略三角形状に尖るプレート状のプロテクタ4が設けられている。プロテクタ4は、略水平な姿勢で配置されており、車両前部に形成されて車両駆動用のエンジンやモータ等を収容するフロントコンパートメントFc(図3等参照)の底壁部の一部を成している。本実施形態では、ホイルハウス3とプロテクタ4とは一体部品として構成され、プロテクタ4の下面に、別部品としてのディフレクタ2が取り付けられている。
【0012】
また、図2に示すように、ディフレクタ2の車幅方向外側かつ下側の隅部は面取りされており、図2の正面視では、ディフレクタ2は、プロテクタ4より下方で、主として車輪Whの車幅方向内側を覆い隠すようになっている。
【0013】
このディフレクタ2については、走行風Sの風圧等によっては変形しない程度の剛性を確保する必要がある。本実施形態では、図1,図4等に示すように、ディフレクタ2の後面2bに、突壁部6を複数(本実施形態では三本)設けてあり、これら突壁部6によって剛性が向上している。
【0014】
また、本実施形態では、ディフレクタ2に略沿って当該ディフレクタ2の側外方に向かう空気流Aを生じさせる空気流発生機構1を設けてある。本実施形態では、空気流発生機構1として、フロントコンパートメントFc内の空気をディフレクタ2と車輪Whとの間の空間に流出させて空気流Aを形成する空気通路5が形成されている。
【0015】
具体的には、図3に示すように、フロントコンパートメントFcの底壁部(外壁部)の一部を構成しているプロテクタ4に、ホイルハウス3の前壁部3aの下端縁に沿ってスリット状の貫通孔5aを複数並べて形成し、フロントコンパートメントFc内の空気を、これら貫通孔5aを介して車外すなわちプロテクタ4の下面側に排出して、この排出された空気の流れによって空気流Aを形成している。すなわち、本実施形態では、これら貫通孔5aが空気通路5に相当する。
【0016】
空気通路5は、フロントコンパートメントFcの底壁部(本実施形態ではプロテクタ4)または後壁部(本実施形態ではホイルハウス3の前壁部3a)を貫通して車両の内外、本実施形態ではフロントコンパートメントFcの内外を連通する通路である。車両走行時には、車外側を流れる空気やホイルハウス3内を流れる空気の負圧によって車内側すなわちフロントコンパートメントFc内の空気が空気通路5を介して吸い出されることになる。すなわち、本実施形態では、空気通路5を形成することで、空気流Aを生じさせる空気流発生機構1を比較的簡単な構成として得ることができる。
【0017】
また、図1に示すように、本実施形態では、貫通孔5aを、ディフレクタ2の後方に開口させている。ディフレクタ2の後方は前方に比べて圧力が低くなる傾向にあるため、空気通路5を介しての吸い出しの効果を得やすくなっている。
【0018】
また、貫通孔5aは、ディフレクタ2の後面2bの上端縁に沿って開口している。よって、空気流Aは、ディフレクタ2の後面2bに沿う流れとなる。このとき、上述したように、ディフレクタ2の後面2bには、突壁部6が形成されているため、空気流Aはこの突壁部6に沿ってガイドされる。すなわち、本実施形態では、突壁部6がガイド部に相当する。
【0019】
突壁部6は、略一定の幅および高さを有し、図4に示すように、車幅方向内側の上方(図6の右上側)から車幅方向外側の下方(図6の左下側)に向けて延設されている。そして、複数の突壁部6を相互に略平行に配置し、貫通孔5aを各突壁部6の上方に対向させて配置している。よって、貫通孔5aから流出した空気流Aは、ディフレクタ2の後面2bおよび突壁部6によってガイドされながら車幅方向内側の上方から車幅方向外側の下方へ向けて斜め下に向かい、ディフレクタ2の外縁2aから側外方(本実施形態では、車幅方向外方かつ下方、図4の斜め下方)へ流出する流れとなる。
【0020】
このようにして形成された空気流Aによって、図5の(b)に示すように、走行風Sはディフレクタ2の側外方(車両の側外方)に逸らされることになる。また、図2に示すように、空気流Aは、正面視で、ディフレクタ2から車輪Whが露出する側に向けて吹き出すため、走行風Sはその空気流Aの先方側、すなわち車幅方向外方かつ下方(図2の右下側)に向けて逸らされることになる。したがって、空気流Aを形成しない場合(図5の(a))に比べて、車輪Whの前面(図2の手前側、図5の下側)の圧力を下げて、走行風Sに基づく空気抵抗を低減することができる。
【0021】
以上、説明したように、本実施形態では、ディフレクタ2に略沿い当該ディフレクタ2の側外方に向けて流れる空気流Aを生じさせる空気流発生機構1を設けた。よって、空気流Aによって走行風Sをディフレクタ2の側外方へ逸らすことができるので、空気流Aを形成しない場合に比べて、ディフレクタ2による空気抵抗の低減効果をより増大させることができる。
【0022】
また、本実施形態では、空気流発生機構1を、車両の走行によって生じる車両内外の圧力差を利用して、車両内の空気を、車両内外を連通する空気通路5を介して車両外に流出させるものとして構成した。よって、空気流発生機構1を比較的簡単な構成として得ることができる。
【0023】
また、本実施形態では、空気流発生機構1を、フロントコンパートメントFc内の空気をフロントコンパートメントFc外に流出させるものとして構成した。すなわち、走行に伴って生じるフロントコンパートメントFc外の負圧を利用してフロントコンパートメントFc内の空気を空気通路5を介して吸い出し、これを空気流Aとして利用することができるため、空気流発生機構1を比較的簡単な構成として得ることができる。また、車両の前輪(車輪Wh)に適用しやすいという利点がある。
【0024】
また、本実施形態では、フロントコンパートメントFcの底壁部(外壁部)をなすプロテクタ4に貫通孔5aを形成し、これを空気通路5として用いた。よって、空気通路5を比較的簡単に形成し、ひいては空気流発生機構1を比較的簡単な構成として得ることができる。
【0025】
また、本実施形態では、ディフレクタ2の表面としての後面2bに、空気流Aをガイドするガイド部としての突壁部6を設けた。よって、ガイド部としての突壁部6によって空気流Aをより好適な方向に流して、空気流Aによる空気抵抗低減効果をより効果的に得ることができるようになるとともに、突壁部6によってディフレクタ2の剛性を高めて、ディフレクタ2の本体部分を薄肉化して軽量化を促進したり、振動を抑制したりすることができるという利点がある。
【0026】
(第2実施形態)図6,図7は本発明の第2実施形態を示している。本実施形態でも、フロントコンパートメントFc内の空気を空気通路5を介してフロントコンパートメントFc外へ流出させて突壁部6を有するディフレクタ2に略沿う空気流Aを形成する点は、上記第1実施形態と同様である。
【0027】
ただし、本実施形態にかかる空気流発生機構1Aでは、空気通路5の上流側に異物(泥や、石、水、塵芥等)が進入するのを抑制する遮蔽部7を設けた点が、上記第1実施形態と相違している。
【0028】
本実施形態では、遮蔽部7を構成する部材として、貫通孔5aの上方を間隔をあけて覆うカバー10を設けてある。カバー10は、断面略W字状に屈曲して形成されたホイルハウス3の下端縁に略沿って細長い部材であって、貫通孔5aの前方のプロテクタ4上で上方に向けて立設されてホイルハウス3の前壁部3aに対して間隔をあけて略平行に伸びる略帯板状の前壁部10cと、前壁部10cの上縁と前壁部3aとの間に架設されて水平方向に略沿って伸びる略帯板状の天壁部10dと、を有している。
【0029】
さらに、カバー10は、前壁部10cの下縁から前方に突出しプロテクタ4の上面上で前壁部10cに略沿って伸びる略帯板状のフランジ部10aと、天壁部10dの後縁から上方に突出し前壁部3aの前面上で天壁部10dに略沿って伸びる略帯板状のフランジ部10bと、を有している。そして、フランジ部10aを、プロテクタ4に、接着や、溶着、ねじ止め等することで固定し、かつフランジ部10bを、前壁部3aに、接着や、溶着、ねじ止め等することで固定し、これにより、カバー10を前壁部3aとプロテクタ4との双方に結合してある。このカバー10は、コーナー部材に相当する。
【0030】
そして、かかる構成では、貫通孔5aの上方に、前壁部10c、天壁部10d、前壁部3a、およびプロテクタ4によって略矩形状の閉断面が形成され、この閉断面内に、前壁部3aの下縁に沿って横たわる略角柱状の空間として、空気通路5の中間部分5bが形成される。中間部分5bの車幅方向両側は開放されており、フロントコンパートメントFc側に開口する開口部5cとなっている。すなわち、本実施形態では、開口部5c、中間部分5b、および貫通孔5aによって、フロントコンパートメントFcの内外を連通する空気通路5が形成される。なお、カバー10の長手方向(車幅方向)の両端は、貫通孔5aの同方向の両端よりも外に張り出させてある。
【0031】
以上の本実施形態では、空気流発生機構1Aによって空気流Aを形成することができるため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0032】
また、本実施形態では、カバー10を設けたことで空気通路5が屈折され、その前壁部10cおよび天壁部10dが遮蔽部7として機能することになる。かかる構成により、泥や、石、水、塵芥等の異物が空気通路5の上流側(本実施形態ではフロントコンパートメントFc内)へ進入するのを抑制することができる。特に、本実施形態では、貫通孔5aの上方を間隔をあけてカバー10で覆うという比較的簡単な構成によって、異物の進入を抑制することができる。
【0033】
さらに、本実施形態では、コーナー部材としてのカバー10をホイルハウス3の前壁部3aとフロントコンパートメントFcの底壁部の一部をなすプロテクタ4との双方に結合した。このため、カバー10をより強固に固定することができるとともに、カバー10によって、ホイルハウス3とプロテクタ4との境界部分の剛性を向上することが可能となる。
【0034】
また、本実施形態では、コーナー部材としてのカバー10と、ホイルハウス3の前壁部3a、およびプロテクタ4によって、閉断面を形成したため、ホイルハウス3とプロテクタ4との境界部分の剛性をより一層向上することが可能となる。
【0035】
(第3実施形態)図8,図9は本発明の第3実施形態を示している。本実施形態でも、フロントコンパートメントFc内の空気を空気通路5を介してフロントコンパートメントFc外へ流出させて突壁部6を有するディフレクタ2に略沿う空気流Aを形成する点は、上記第1実施形態と同様である。
【0036】
また、本実施形態にかかる空気流発生機構1Bでも、空気通路5の上流側に異物が進入するのを抑制する遮蔽部7を設けてある。
【0037】
ただし、本実施形態では、遮蔽部7を構成する部材として、貫通孔5aの周囲を取り囲んでプロテクタ4の上面から上方に突出して上方に開放される下側カバー11と、下側カバー11の開口部11aの上方を覆って下方に開放される上側カバー12と、を設けた点が、上記第2実施形態と相違している。
【0038】
下側カバー11は、貫通孔5aの前方のプロテクタ4上で上方に向けて立設されてホイルハウス3の前壁部3aに対して間隔をあけて略平行に伸びる略帯板状の前壁部11bと、貫通孔5aの車幅方向両側のプロテクタ4上で上方に向けて立設されて前壁部11bの車幅方向両端縁とホイルハウス3の前壁部3aとの間で架設される側壁部11cと、前壁部11bの下縁から前方に突出しプロテクタ4の上面上で前壁部11bに略沿って伸びる略帯板状のフランジ部11dと、を有している。そして、フランジ部11dを、プロテクタ4に、接着や、溶着、ねじ止め等することで結合するとともに、側壁部11cの後縁をホイルハウス3の前壁部3aに接着等して結合している。よって、この下側カバー11は、ホイルハウス3とプロテクタ4の双方に結合されるコーナー部材に相当するものである。
【0039】
そして、本実施形態では、コーナー部材としての下側カバー11の前壁部11b、側壁部11c、およびホイルハウス3の前壁部3aによって略矩形状の閉断面が形成されている。
【0040】
一方、上側カバー12は、下側カバー11の開口部11aの上方に間隔をあけて配置され、ホイルハウス3の前壁部3aから前方に突出して前壁部3aに沿って伸びる略帯板状の天壁部12aと、天壁部12aの前縁から下方に向けて伸びる前壁部12bと、天壁部12aおよび前壁部12bの車幅方向の両端縁をつなぐ側壁部12cと、天壁部12aの後縁から上方に突出し前壁部3aの前面上で天壁部12aに略沿って伸びる略帯板状のフランジ部12dと、を有している。また、フランジ部12dを、ホイルハウス3の前壁部3aに、接着や、溶着、ねじ止め等することで結合してある。
【0041】
そして、本実施形態では、図9に示すように、天壁部12aの前縁を開口部11aの前縁より前方に張り出させて、前壁部12bより前方に配置し、これにより、前壁部12bおよび側壁部12cの下縁を開口部5cとする空気通路5が形成されるようになっている。具体的には、下側カバー11、上側カバー12、およびホイルハウス3の前壁部3aで囲まれた部分が空気通路5の中間部分5bとなる。中間部分5b内では、下側カバー11の前壁部11bおよび側壁部11cの外側を上方へ向かいそれら前壁部11bおよび側壁部11cの上方を回り込んで下方へ向かって貫通孔5aからプロテクタ4の下方へ抜け出る空気通路5が形成される。すなわち、本実施形態では、開口部5cから中間部分5b内で折り返して貫通孔5aへ至る、屈折した空気通路5が形成される。
【0042】
以上の本実施形態では、空気流発生機構1Bによって空気流Aを形成することができるため、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0043】
また、本実施形態では、下側カバー11および上側カバー12を設けたことで空気通路5が上下方向に折り返すように屈折され、それらの各部(前壁部11b、側壁部11c、天壁部12a、前壁部12b、側壁部12c)が遮蔽部7として機能することになる。かかる構成により、泥や、石、水、塵芥等の異物が空気通路5の上流側(本実施形態ではフロントコンパートメントFc内)へ進入するのを抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態では、コーナー部材としての下側カバー11を設けたため、ホイルハウス3とプロテクタ4との境界部分の剛性をより向上することが可能となる。さらに、本実施形態では、下側カバー11の前壁部11bおよび側壁部11cとホイルハウス3の前壁部3aとによって閉断面が形成されるため、ホイルハウス3とプロテクタ4との境界部分の剛性をより一層向上させることができる。
【0045】
(第4実施形態)図10〜図12は本発明の第4実施形態を示している。本実施形態でも、フロントコンパートメントFc内の空気を空気通路5を介してフロントコンパートメントFc外へ流出させて突壁部6を有するディフレクタ2に略沿う空気流Aを形成する点は、上記第1実施形態と同様である。
【0046】
また、本実施形態にかかる空気流発生機構1Cでも、空気通路5の上流側に異物が進入するのを抑制する遮蔽部7を設けてある。
【0047】
ただし、本実施形態では、プロテクタ4の上方で遮蔽部7を構成するカバー13とプロテクタ4の下方のディフレクタ2とを一体化して、共有部材8を構成している点が、上記各実施形態と相違している。
【0048】
カバー13は、ホイルハウス3の前壁部3aの前方のプロテクタ4上で上方に向けて立設されてホイルハウス3の前壁部3aに対して間隔をあけて略平行に伸びる略帯板状の前壁部13aと、前壁部13aの車幅方向両端縁とホイルハウス3の前壁部3aとの間に架設される側壁部13bと、を有する。よって、カバー13の前壁部13aおよび側壁部13bと、ホイルハウス3の前壁部3aとで囲まれた略矩形状の閉断面が形成され、この閉断面内に、空気通路5の中間部分5bが形成される。このカバー13はコーナー部材に相当する。
【0049】
中間部分5bの下方は、底壁部8bで閉塞され、この底壁部8bに、上下に貫通する貫通孔5aが形成されている。貫通孔5aの形状や配置は上記各実施形態と同様である。また、前壁部13aおよび側壁部13bの上縁には内向きフランジ部13cが形成され、その内縁が空気通路5のフロントコンパートメントFc側の開口部5cとなっている。
【0050】
したがって、本実施形態では、開口部5c、中間部分5b、および貫通孔5aによって、フロントコンパートメントFcの内外を連通する空気通路5が形成されている。そして、カバー13の各部(前壁部13a、側壁部13b、内向きフランジ部13c)が遮蔽部7として機能することになる。かかる構成により、泥や、石、水、塵芥等の異物が空気通路5の上流側へ進入するのを抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態では、ディフレクタ2の上端部から前方に突出してプロテクタ4の下面上でディフレクタ2の上縁に略沿って伸びる略帯板状のフランジ部8aを設け、当該フランジ部8aを底壁部8bに連設するとともに、カバー13の前壁部13aおよび側壁部13bを、底壁部8bから上方に突出させてある。
【0052】
そして、共有部材8を取り付けるにあたっては、ホイルハウス3の前壁部3aの下縁に隣接してプロテクタ4に形成した貫通孔4aに(図10参照)、カバー13をプロテクタ4の下方側から差し込んで上方に突出させ、フランジ部8aをプロテクタ4の下面に突き当てて接着や、溶着、ねじ止め等することで結合する。さらに、カバー13の側壁部13bの後縁をホイルハウス3の前壁部3aに接着等することで結合する。
【0053】
以上の本実施形態では、空気流発生機構1Cによって空気流Aを形成することができるため、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0054】
また、本実施形態では、遮蔽部7を構成するカバー13を設けるとともに、コーナー部材に相当するカバー13をプロテクタ4とホイルハウス3の前壁部3aとの双方に結合して閉断面を形成したため、上記第2および第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0055】
さらに、本実施形態では、遮蔽部7として機能するカバー13とディフレクタ2とを一体に有する共有部材8を用いたため、部品点数を減らすことができ、これらを別個に製造した場合に比べて製造や組み付けの手間を減らすことができる。また、これらを別部品とした場合に比べて剛性を向上することができるという利点もある。
【0056】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。例えば、本発明を車両の後輪に適用することも可能である。
【0057】
また、空気流発生機構は、ファン等を用いて空気流を発生するものとして構成することができる。また、トランクルームなどのフロントコンパートメント以外の部分から、空気を流出させる構成とすることができる。また、フロントコンパートメントの後壁部や側壁部等の他の外壁部に、空気通路を成す貫通孔を形成してもよい。
【0058】
また、ディフレクタや、突壁部、遮蔽部、コーナー部材、貫通孔等の、配置や、構造、形状、大きさ、数等のスペックは、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0059】
A 空気流
Fc フロントコンパートメント
Wh 車輪
1,1A,1B,1C 空気流発生機構
2 ディフレクタ
2b (ディフレクタの)後面(表面)
3 ホイルハウス
3a 前壁部
4 プロテクタ(外壁部、底壁部)
4a 貫通孔
5 空気通路
5a 貫通孔
6 突壁部(ガイド部)
7 遮蔽部
8 共有部材
10 カバー(コーナー部材)
11 下側カバー(コーナー部材)
13 カバー(コーナー部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の前方に間隔をあけて設けられた車両前後方向に略交差するプレート状のディフレクタを備えるディフレクタ構造において、
前記ディフレクタに略沿い当該ディフレクタの側外方に向けて流れる空気流を生じさせる空気流発生機構を備えることを特徴とするディフレクタ構造。
【請求項2】
前記空気流発生機構は、車両の走行によって生じる車両内外の圧力差を利用して、車両内の空気を、車両内外を連通する空気通路を介して車両外に流出させるものであることを特徴とする請求項1に記載のディフレクタ構造。
【請求項3】
前記空気流発生機構は、車両前部に形成されるフロントコンパートメント内の空気を、前記空気通路を介して、前記フロントコンパートメント外に流出させるものであることを特徴とする請求項2に記載のディフレクタ構造。
【請求項4】
前記フロントコンパートメントの外壁部に貫通孔を形成し、当該貫通孔を、前記空気通路の少なくとも一部として用いることを特徴とする請求項3に記載のディフレクタ構造。
【請求項5】
前記空気通路を介して異物が進入するのを抑制する遮蔽部を備えることを特徴とする請求項3または4に記載のディフレクタ構造。
【請求項6】
車輪の上側を覆うホイルハウスの前壁部と前記外壁部としての前記フロントコンパートメントの底壁部との両方に結合されるとともに前記遮蔽部を構成するコーナー部材を備えることを特徴とする請求項5に記載のディフレクタ構造。
【請求項7】
前記コーナー部材と、前記前壁部および前記底壁部のうち少なくともいずれか一方とによって、閉断面を形成したことを特徴とする請求項6に記載のディフレクタ構造。
【請求項8】
前記ディフレクタと前記遮蔽部とを一体に有する共有部材を備えることを特徴とする請求項5〜7のうちいずれか一つに記載のディフレクタ構造。
【請求項9】
前記空気通路を屈折させて形成したことを特徴とする請求項2〜8のうちいずれか一つに記載のディフレクタ構造。
【請求項10】
前記ディフレクタに、前記空気流をガイドするガイド部を設けたことを特徴とする請求項1〜9のうちいずれか一つに記載のディフレクタ構造。
【請求項11】
前記ガイド部として、前記ディフレクタの表面に形成した突壁部を含むことを特徴とする請求項10に記載のディフレクタ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−202040(P2010−202040A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49526(P2009−49526)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】