説明

デイジタルダイバーシチ装置

【目的】 グリッジを確実に吸収でき、データ伝送速度の高速化にも充分に対応可能なディジタルダイバーシチ装置を得る。
【構成】 2台のディジタル無線受信機の復調クロックのオア出力、もしくはその一方が“非受信中”である場合には他方のディジタル無線受信機の復調クロック単独を、ディジタルPLL回路に入力して周波数の安定化を施すことにより、新たな再生クロックの生成を行う。
【効果】 出力される再生クロックにグリッジが生ずることがなくなって同一データの2度読みなどによる同期外れの発生を防止でき、また、フィルタ等も不要となるためデータ伝送速度の高速化にも充分に対応できるディジタルダイバーシチ装置が得られる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、2台のディジタル無線受信機にて受信したデータおよびクロックのうちの受信レベルの高い側のものを選択し、それを受信データおよび再生クロックとして出力するディジタルダイバーシチ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図3は従来のディジタルダイバーシチ装置を示すブロック図である。図において、1a,1bは当該ディジタルダイバーシチ装置が接続される2台のディジタル無線受信機である。2a,2bはこのディジタル無線受信機1aあるいは1bに接続された空中線で、例えば、当該ディジタル無線受信機1a,1bが搭載された列車等の移動体に設置された2組の漏洩同軸ケーブル用空中線である。
【0003】3はディジタル無線受信機1a,1bの受信レベルを比較する比較回路であり、4a,4bはこの比較回路3からの比較結果と各ディジタル無線受信機1a,1bからの復調クロックを受け、当該復調クロックの立ち上がりで切替信号を発生させるラッチ回路である。
【0004】5は各ラッチ回路4a,4bより出力される切替信号が一致するのを防止する一致禁止回路であり、6a,6bは各ディジタル無線受信機1a,1bからの復調クロックのジッタによるグリッジを吸収するためのフィルタである。
【0005】7a,7bはこのフィルタ6a,6bの出力によってディジタル無線受信機1aあるいは1bの出力する復調データをゲートするアンドゲートであり、8a,8bは同じくフィルタ6a,6bの出力によってディジタル無線受信機1aあるいは1bの出力する復調クロックをゲートするアンドゲートである。
【0006】9aはアンドゲート7a,7bの出力の論理和をとって、それを受信データとして出力するオアゲートであり、9bはアンドゲート8a,8bの出力の論理和をとって、それを再生クロックとして出力するオアゲートである。
【0007】次に動作について説明する。2台のディジタル無線受信機1a,1bは、それぞれに接続された空中線2a,2bより取り込んだ電波の復調を行い、各々復調データおよび復調クロックの出力を行う。この時、同時に受信電波の強弱に比例した直流電圧もそれぞれの受信レベルとして出力する。
【0008】比較回路3は両ディジタル無線受信機1a,1bの受信レベルの比較を行い、受信レベルの高い側のディジタル無線受信機の復調データおよび復調クロックを選択するための切替信号を出力する。この切替信号は各ディジタル無線受信機1a,1bからの復調クロックの立ち上がりに同期してラッチ回路4a,4bより出力され、一致禁止回路5を経由してフィルタ6aあるいは6bに送られる。
【0009】ラッチ回路4aからの切替信号は、一致禁止回路5でラッチ回路4bからの切替信号との一致が防止された上でフィルタ6aに送られ、復調クロックのジッタによるグリッジが吸収され、アンドゲート7aおよび8aに入力される。また、ラッチ回路4bからの切替信号も同様に、一致禁止回路5で一致防止が行われ、フィルタ6bでグリッジが吸収されてアンドゲート7bおよび8bに入力される。
【0010】ここで、アンドゲート7a,7bのもう一方の端子には各ディジタル無線受信機1a,1bからの復調データが入力され、アンドゲート8a,8bのもう一方の端子には各ディジタル無線受信機1a,1bからの復調クロックが入力されている。
【0011】従って、これら各アンドゲート7a,7bおよび8a,8bによって、ディジタル無線受信機1a,1bの一方からの復調データと復調クロックが選択される。選択された復調データおよび復調クロックは、オアゲート9aまたは9bを介して受信データあるいは再生クロックとして出力される。
【0012】このようにして、2台のディジタル無線受信機1a,1b中の、受信レベルが高い側で受信・復調された復調データおよび復調クロックが、自動的に受信データおよび再生クロックとして選択される。
【0013】なお、このような従来のディジタルダイバーシチ装置に関連した技術が記載された文献としては、例えば特開昭63−43438号公報などがある。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】従来のディジタルダイバーシチ装置は以上のように構成されているので、データ伝送速度が速くなると、切替信号のグリッジ吸収用のフィルタ6a,6bの時定数の作用により切替速度が遅くなってダイバーシチ効果が低下し、また、フィルタ6a,6bの時定数を小さくすると、再生クロックにもグリッジが残って同一データを2度読みしてしまい、同期外れを生ずるなどの問題点があった。
【0015】この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、グリッジを確実に吸収でき、データ伝送速度の高速化にも充分に対応可能なディジタルダイバーシチ装置を得ることを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明に係るディジタルダイバーシチ装置は、2台のディジタル無線受信機の“受信中”/“非受信中”を第1の比較器で判定し、第1の比較器の一方で“受信中”と判定された場合には該当する側の復調クロックを、また、両者で“受信中”と判定された場合には両復調クロックを合成するオアゲートの出力を第1の選択回路にて選択して、この第1の選択回路の出力と内部発振器の発生する基準クロックに基づいて再生クロックを生成し、第2の比較器が両ディジタル無線受信機の受信レベルを比較して出力する切替信号に基づく第2の選択回路による復調データの選択を、前記再生クロックとは非同期で行い、最終段にてその再生クロックの立ち上がりで受信データの出力を行うものである。
【0017】また、請求項2に記載の発明に係るディジタルダイバーシチ装置は、第2の比較器が両ディジタル無線受信機の受信レベルを比較して出力する切替信号を、再生クロックに同期させて出力し、その切替信号で第2の選択回路を制御して受信データの出力を行うものである。
【0018】
【作用】この発明におけるクロック再生回路は、第1の選択回路にて選択された、“受信中”と判定されたディジタル無線受信機からの復調クロックあるいはオアゲートからの合成クロックと、内部発振器の発生する基準クロックに基づいて再生クロックを生成することにより、切替信号によるクロックの切り替えを行わず、この再生クロックによって受信データの切替、出力を行って確実にグリッジが吸収でき、データ伝送速度の高速化にも充分に対応できるディジタルダイバーシチ装置を実現する。
【0019】
【実施例】実施例1.以下、この発明の実施例を図について説明する。図1は請求項1に記載の発明の一実施例を示すブロック図である。図において、1a,1bはディジタル無線受信機、2a,2bは空中線であり、図3に同一符号を付した従来のそれらと同一、あるいは相当部分であるため詳細な説明は省略する。
【0020】10a,10bは各ディジタル無線受信機1a,1bの受信レベルをそれぞれ参照用の基準レベルと比較して、ディジタル無線受信機1aおよび1bが“受信中”であるか“非受信中”であるかの判定を行う第1の比較器であり、11a,11bは前記基準レベルをこれらの第1の比較器10a,10bに与える基準レベル発生器である。
【0021】12は各ディジタル無線受信機1a,1bからの復調クロックを合成するオアゲートであり、13は第1の比較器10a,10bの一方のみが“受信中”と判定した場合には該当するディジタル無線受信機1aあるいは1bからの復調クロックを選択し、第1の比較器10a,10bの両方が“受信中”と判定した場合にはオアゲート12の出力する合成クロックを選択する第1の選択回路である。
【0022】14は第1の選択回路13の出力と、当該ディジタルダイバーシチ装置内部の基準クロックに基づいて再生クロックを生成するクロック再生回路としてのディジタルフェーズロックドループ回路(以下、ディジタルPLL回路という)であり、15は前記基準クロックを発生してディジタルPLL回路14に供給する内部発振器である。
【0023】16は各ディジタル無線受信機1a,1bの受信レベルを比較して切替信号を発生する第2の比較器であり、17はこの第2の比較器16の出力する切替信号に基づいて受信レベルの高い側のディジタル無線受信機1aあるいは1bの出力する復調データを選択する第2の選択回路である。
【0024】18は第2の選択回路17で選択されたディジタル無線受信機1aあるいは1bからの復調データを、前記ディジタルPLL回路14から出力される再生クロックの立ち上がりに同期させて、受信データとして出力するD型のフリップフロップ回路である。
【0025】次に動作について説明する。従来の場合と同様に、各空中線2a,2bより取り込まれた電波はディジタル無線受信機1a,1bにて復調され、各々の復調データおよび復調クロックとして出力される。ディジタル無線受信機1a,1bはその時同時に、受信電波の強弱に比例した直流電圧もそれぞれの受信レベルとして出力する。
【0026】第2の比較器16は各ディジタル無線受信機1aと1bの受信レベルの比較を行い、当該比較結果に基づく切替信号を生成して第2の選択回路17へ送る。第2の選択回路17は当該切替信号に従って動作し、前記受信レベルが高かった側のディジタル無線受信機1aあるいは1bの出力する復調データを選択する。
【0027】また、第1の比較器10aおよび10bは、各ディジタル無線受信機1a,1bの受信レベルをそれぞれ、基準レベル発生器11aあるいは11bの発生する参照用の基準レベルと比較して、各ディジタル無線受信機1aおよび1bが“受信中”であるか“非受信中”であるかを判定する。なお、この基準レベル発生器11a,11bの発生する基準レベルは通常同一レベルとしている。
【0028】ここで、第1の比較器10aの出力が“受信中”を示し、第1の比較器10bの出力が“非受信中”を示している場合には、第1の選択回路13はディジタル無線受信機1aの復調クロックを選択・出力する。また、同様に、第1の比較器10aの出力が“非受信中”、10bの出力が“受信中”を示している場合には、第1の選択回路13はディジタル無線受信機1bの復調クロックを選択・出力する。
【0029】一方、第1の比較器10a,10bの出力がともに“受信中”を示している場合には、第1の選択回路13は各ディジタル無線受信機1a,1bの復調クロックを合成した、オアゲート12の出力を選択・出力する。また、前記出力がともに“非受信中”を示している場合には、両復調クロックがともに無効であるため、第1の選択回路13はアースレベルを選択・出力する。
【0030】このようにして第1の選択回路13で選択された信号はディジタルPLL回路14に入力される。ディジタルPLL回路14はそれを、内部発振器15の発生する基準クロックを分周して作成した復調クロックと同一周波数の内部クロックと位相比較し、再生クロックを生成してそれを出力する。
【0031】なお、この再生クロックはD型のフリップフロップ回路18にも入力され、フリップフロップ回路18は、第2の選択回路17で選択されたディジタル無線受信機1aあるいは1bの復調データを、当該再生クロックの立ち上がりに同期させて受信データとして出力する。
【0032】実施例2.なお、上記実施例では、復調データの選択・切替を再生クロックと非同期で行い、最終段において再生クロックのタイミングで受信データとして出力する場合について説明したが、切替信号を再生クロックのタイミングで出力させ、この切替信号で第2の選択回路を制御するようにしてもよく、上記実施例と同様の効果を奏する。
【0033】図2は請求項2に記載されたそのような発明の一実施例を示すブロック図であり、各部の符号は図1R>1に示す実施例の相当部分と同一のものが付されている。この場合、第2の比較器16にて生成された切替信号がフリップフロップ回路18に送られ、フリップフロップ回路18よりディジタルPLL回路14の生成した再生クロックのタイミングで第2の選択回路17に入力されている。
【0034】
【発明の効果】以上のように、この発明によれば、2台のディジタル無線受信機の復調クロックのオア出力、もしくはその一方が“非受信中”である場合には他方のディジタル無線受信機の復調クロック単独を、ディジタルPLL回路に入力することによって、当該ディジタルPLL回路にて周波数の安定化を施して新たに再生クロックを生成するように構成したので、出力される再生クロックにグリッジが発生することがなくなり、同一データの2度読みなどによる同期外れの発生を防止することが可能となるばかりか、フィルタ等も不要となるため、データ伝送速度の高速化にも充分に対応できるディジタルダイバーシチ装置が得られる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1に記載の発明の一実施例によるディジタルダイバーシチ装置を示すブロック図である。
【図2】請求項2に記載の発明の一実施例を示すブロック図である。
【図3】従来のディジタルダイバーシチ装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
1a,1b ディジタル無線受信機
10a,10b 第1の比較器
12 オアゲート
13 第1の選択回路
14 クロック再生回路(ディジタルPLL回路)
15 内部発振器
16 第2の比較器
17 第2の選択回路
18 フリップフロップ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 2台のディジタル無線受信機の受信レベルをそれぞれ参照用基準レベルと比較して、前記各ディジタル無線受信機が“受信中”であるか“非受信中”であるかを判定する2つの第1の比較器と、前記各ディジタル無線受信機の復調クロックを合成するオアゲートと、前記第1の比較器の一方のみが“受信中”と判定した場合には該当する前記ディジタル無線受信機からの復調クロックを選択し、前記第1の比較器の両方が“受信中”と判定した場合には前記オアゲートの出力を選択する第1の選択回路と、前記第1の選択回路の出力と内部発振器の発生する基準クロックに基づいて再生クロックを生成するクロック再生回路と、前記各ディジタル無線受信機の受信レベルを比較して切替信号を発生させる第2の比較器と、前記第2の比較器の出力する切替信号に基づいて、受信レベルの高い側の前記ディジタル無線受信機の出力する復調データを選択する第2の選択回路と、前記第2の選択回路の出力を、前記クロック再生回路の出力する再生クロックの立ち上がりに同期して、受信データとして出力するフリップフロップ回路とを備えたディジタルダイバーシチ装置。
【請求項2】 2台のディジタル無線受信機の受信レベルをそれぞれ参照用基準レベルと比較して、前記各ディジタル無線受信機が“受信中”であるか“非受信中”であるかを判定する2つの第1の比較器と、前記各ディジタル無線受信機の復調クロックを合成するオアゲートと、前記第1の比較器の一方のみが“受信中”と判定した場合には該当する前記ディジタル無線受信機からの復調クロックを選択し、前記第1の比較器の両方が“受信中”と判定した場合には前記オアゲートの出力を選択する第1の選択回路と、前記第1の選択回路の出力と内部発振器の発生する基準クロックに基づいて再生クロックを生成するクロック再生回路と、前記各ディジタル無線受信機の受信レベルを比較して切替信号を発生させる第2の比較器と、前記第2の比較器からの切替信号を前記クロック再生回路の出力する再生クロックの立ち上がりに同期して出力するフリップフロップ回路と、前記フリップフロップ回路にて再生クロックとの同期がとられた切替信号に基づいて、受信レベルの高い側の前記ディジタル無線受信機が出力する復調データを選択し、受信データとして出力する第2の選択回路とを備えたディジタルダイバーシチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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