説明

デオドラント組成物及び複合粒子の製造方法

【課題】消臭効果が高く、その持続性に優れ、使用感が良好な酸化亜鉛を含むデオドラント組成物を提供する。
【解決手段】(A)酸化亜鉛及び(B)水溶性高分子化合物を含有する複合粒子を含むデオドラント組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化亜鉛及び水溶性高分子化合物を含有する複合粒子を含むデオドラント組成物、及び複合粒子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のエチケット志向の高まりをうけ、体臭に対するデオドラントニーズは高まっている。一般的に、体臭物質としては、イソ吉草酸等の低級脂肪酸類やアンモニア、ブチルアミン等の含窒素化合物等が知られている。酸化亜鉛は体臭の原因である低級脂肪酸に対して高い消臭効果があることが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開平03−279322号公報
【特許文献2】特開2008−156236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
酸化亜鉛のような粒子の場合、粒子径が小さいほど比表面積が大きくなるため効果が高くなる。しかしながら、酸化亜鉛は凝集性が高く、凝集により粒子径が大きくなり消臭力が低下し、さらに、凝集体は不定形であるため肌に塗布した際に、肌の滑らかさが失われるような使用感が発生する。本発明はこのような事情に鑑みなされたもので、消臭効果が高く、その持続性に優れ、使用感が良好な酸化亜鉛を含むデオドラント組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、酸化亜鉛を水溶性高分子化合物と共に複合粒子として、デオドラント組成物に配合することにより、酸化亜鉛の凝集を抑制し、カプセルの崩壊により、消臭効果が高く、その持続性に優れ、使用感が良好となることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0006】
従って、本発明は下記デオドラント組成物及び複合粒子の製造方法を提供する。
[1].(A)酸化亜鉛及び(B)水溶性高分子化合物を含有する複合粒子を含むデオドラント組成物。
[2].複合粒子が、(A)酸化亜鉛が(B)水溶性高分子化合物に分散されてなる複合粒子であることを特徴とする[1]記載のデオドラント組成物。
[3].複合粒子が、さらに(C)液状油を含有し、(A)/(C)で表される質量比が30/70〜70/30である[1]又は[2]記載のデオドラント組成物。
[4].(A)酸化亜鉛の複合粒子中における含有量が、30〜50質量%である[1]〜[3]のいずれかに記載のデオドラント組成物。
[5].(B)水溶性高分子化合物の複合粒子中における含有量が、30〜70質量%である[1]〜[4]のいずれかに記載のデオドラント組成物。
[6].(B)水溶性高分子化合物が、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルナトリウムである[1]〜[5]のいずれかに記載のデオドラント組成物。
[7].複合粒子が、さらに(D)清涼剤を含有することを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載のデオドラント組成物。
[8].デオドラントスプレーである[1]〜[7]のいずれかに記載のデオドラント組成物。
[9].(B)水溶性高分子化合物を含有する水溶性高分子化合物含有水溶液に、(A)酸化亜鉛を添加し、得られた液を噴霧乾燥することを特徴とする、(A)酸化亜鉛が(B)水溶性高分子化合物に分散されてなる複合粒子の製造方法。
[10].(B)水溶性高分子化合物を含有する水溶性高分子化合物含有水溶液に、(A)酸化亜鉛を(C)液状油に分散させた分散液を添加し、得られた液を噴霧乾燥することを特徴とする、(A)酸化亜鉛、(B)水溶性高分子化合物及び(C)液状油を含み、(A)酸化亜鉛が(B)水溶性高分子化合物に分散されてなる複合粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、消臭効果が高く、その持続性に優れ、使用感が良好な酸化亜鉛を含むデオドラント組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のデオドラント組成物は、(A)酸化亜鉛及び(B)水溶性高分子化合物を含有する複合粒子を含むものである。
【0009】
(A)酸化亜鉛
酸化亜鉛の平均粒径は0.01〜1μmが好ましく、0.1〜0.6μmがより好ましい。平均粒径が0.01μm未満だと、消臭効果と使用感が低下する場合があり、1μmを超えると、比表面積が小さくなり、消臭効果と使用感が低下する場合がある。
【0010】
酸化亜鉛の複合粒子中における含有量は、10〜60質量%が好ましく、30〜50質量%がより好ましい。含有量が10質量%未満だと、消臭効果が不十分となる場合があり、60質量%を超えると、複合化しても粒子が凝集し、使用感が低下する場合がある。
【0011】
酸化亜鉛のデオドラント組成物中における含有量は、0.1〜10質量%が好ましく、1.0〜3.0質量%がより好ましい。0.1質量%未満だと、消臭効果が不十分となるおそれがあり、10質量%を超えると、皮膚上に供与される複合粉体量が多くなり、使用感が低下する場合がある。なお、デオドラント組成物中の含有量は、エアゾール型デオドラントスプレーの場合は、原液組成中をいうものとする。
【0012】
(B)水溶性高分子化合物
本発明においては、酸化亜鉛と水溶性高分子化合物とを併用することにより、水分との接触により、カプセルが崩壊して酸化亜鉛が放出され、消臭効果が発揮される。このような水溶性高分子化合物としては、例えば、天然又は変性デンプン、アラビアガム、グリコーゲン、キサンタンガム、グアガム、ショ糖、ラクトース、トレハロース、グンチアノース等のオリゴ糖類、デキストリン、植物ゴム、ペクチン、アルギネート等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。この中でも、酸化亜鉛の分散性を高め、疎水基を有し界面活性能を有する水溶性高分子化合物が好ましく、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルナトリウムが好ましい。
【0013】
水溶性高分子化合物の複合粒子中における含有量は、27〜70質量%が好ましく、30〜70質量%がより好ましい。良好な複合粒子を得る点から、30質量%以上がより好ましく、酸化亜鉛の放出性の点から、70質量%以下が好ましく、30〜50質量%がさらに好ましい。また、水溶性高分子化合物のデオドラント組成物中における含有量は、0.5〜5質量%が好ましい。
【0014】
(C)液状油
複合粒子には、酸化亜鉛を均一に水溶性高分子化合物に分散させ、結果として消臭効果が高く、その持続性に優れ、使用感が良好な酸化亜鉛を含むデオドラント組成物とする点から、(C)液状油を配合することが好ましい。なお、液状油とは、常温(15〜25℃)で液状の油をいう。
【0015】
液状油としては、例えば、流動パラフィン、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、オレイン酸エチル、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。この中でも、酸化亜鉛の分散性と使用感の点から、ミリスチン酸イソプロピル、イソオクタン酸セチルが好ましい。
【0016】
その配合量は、(A)/(C)で表される質量比が30/70〜70/30、好ましくは50/50〜60/40とすると好適である。この比率とすることで、消臭効果、その持続性及び使用感がさらに向上する。その機構は明確ではないが、酸化亜鉛に対する液状油の割合が多すぎると、複合粒子が崩壊しやすくなりすぎ、酸化亜鉛が凝集するおそれがある。液状油の割合が少なすぎると、崩壊しにくくなりすぎて、酸化亜鉛が放出され難いものと推定される。さらに、液状油の割合が多すぎると、べたついて使用感が低下するおそれがある。
【0017】
液状油の複合粒子中における含有量は、8〜60質量%が好ましく、15〜50質量%がより好ましく、20〜30質量%がさらに好ましい。酸化亜鉛の分散性を向上させ、凝集して消臭力、使用感の低下を抑制する点から、8質量%以上が好ましく、良好な複合粒子を得る点から、60質量%以下が好ましい。また、液状油のデオドラント組成物中における含有量は0.1〜5質量%が好ましい。
【0018】
(D)清涼剤
複合粒子には、消臭効果が高さ及びその持続性の点から、(D)清涼剤を配合することが好ましい。清涼剤としては、l−メントール、l−メンチルグリセリルエーテル、l−メンチルラクテート等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0019】
清涼剤の複合粒子中における含有量は0.1〜15質量%が好ましく、0.2〜10質量%がより好ましい。0.1質量%以上配合することで、より消臭効果が向上し、15質量%を超えて配合すると、刺激を感じる場合がある。また、清涼剤のデオドラント組成物中における含有量は0.01〜2質量%が好ましい。
【0020】
(E)無水ケイ酸
さらに、複合粒子には、複合粒子の流動性(ハンドリング)及び使用感向上の点から、無水ケイ酸を配合することが好ましい。無水ケイ酸の複合粒子中における含有量は0.1〜1質量%が好ましい。
【0021】
複合粒子には、前記水溶性高分子化合物の他、必要に応じて、抗酸化剤、水溶性ビタミン、アミノ酸、界面活性剤、防腐剤、アルコール類、キレート剤、安定化剤等のその他の成分を含有していてもよい。
【0022】
抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸のアルカリ金属塩、アスコルビン酸の脂肪酸エステル、没食子酸のエステル類、エリソルビン酸、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、トコフェロール、トコトリエノール等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0023】
水溶性ビタミンとしては、例えば、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、パントテン酸、ビタミンH、葉酸、ビタミンB12、コリン、イノシット、ビタミンL1、ビタミンL2、ビタミンB13、ビタミンBT、リポ酸、ビタミンB14、ビタミンB15、ビタミンBx、ビタミンP等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0024】
アミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、シスチン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、フェニルアラニン、チロシン、ヒスチジン、トリプトファン、プロリン、オキシプリン等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0025】
[複合粒子]
本発明の複合粒子は、(A)酸化亜鉛及び(B)水溶性高分子化合物を含有するものである。複合粒子は、被保持物が外殻基剤に内包されるタイプや、被保持物が微粒子として外殻基剤全体に分散しているタイプとが挙げられるが、消臭効果、その持続性及び使用感の点から、被保持物が微粒子として外殻基剤全体に分散しているタイプが好ましく、(A)酸化亜鉛が(B)水溶性高分子化合物に分散されてなる複合粒子であることが好ましい。(A)酸化亜鉛は微粒子として分散されることが好ましく、酸化亜鉛の平均粒径は0.01〜1μmが好ましく、0.1〜0.6μmがより好ましい。(C)液状油、(D)清涼剤、(E)無水ケイ酸等を配合する場合も、被保持物として微粒子が(B)水溶性高分子化合物として分散されていることが好ましい。被保持物が外殻基剤に内包されるタイプであると、押圧や摩擦等の物理的な作用が加えられない限り崩壊せず、さらに一旦崩壊すると内包物の全量が放出されるために、酸化亜鉛を複合粒子内に分散させたとしても放出時に凝集するため、凝集が発生する成分等を徐放させる機構には不向きな点がある。これに対して、被保持物が微粒子として外殻基剤全体に分散しているタイプであれば、水分の接触により部分的に崩壊していき、その部分に分散している被保持物のみが放出されるために、徐放させる機構として優れた構造を有している。なお、(A)酸化亜鉛が(B)水溶性高分子化合物に分散している状態は、例えば、SEM−EDS分析法(測定機器:走査電子顕微鏡(日立 S−2380N)、X線分析装置(HORIBA EMAX−7000)により確認することができる。
【0026】
複合粒子の平均粒径は10〜75μmが好ましい。平均粒径が10μm未満だと、酸化亜鉛が複合粒子内で凝集して消臭効果と使用感が低下する場合があり、75μmを超えると、使用感が低下する場合がある。さらに、肌あたりがよく、エアゾール型デオドラントスプレーに配合した場合の目詰まり抑制の点から、平均粒径を50μm以下にするとよい。なお、本発明における平均粒径は、メディアン径(積算粒子量が50体積%になる粒子径)であり、測定機器:島津レーザ回折式粒度分布測定装置SALD−2200で測定した値である。
【0027】
また、複合粒子のデオドラント組成物中における含有量は、0.1〜10質量%が好ましい。0.1質量%未満だと消臭効果が不十分となるおそれがあり、10質量%を超えると、使用感が低下する場合がある。
【0028】
[複合粒子の製造方法]
複合粒子の製造方法としては特に制限はなく、従来のマイクロカプセル化手法から目的に応じて、適宜選択することができる。例えば、相分離法、オリフィス法、液中硬化法、噴霧乾燥法、凍結乾燥法等が挙げられる。これらの中でも、噴霧乾燥法、凍結乾燥法が好ましく、特に、以下の噴霧乾燥法が好ましい。
【0029】
具体的には、(B)水溶性高分子化合物を含有する水溶性高分子化合物含有水溶液に、(A)酸化亜鉛を添加し、得られた液を噴霧乾燥(スプレードライ)することにより、複合粒子を得ることができる。水溶性高分子化合物含有水溶液は、水溶性高分子化合物とその2〜5倍量(質量)の水を用いるとよい。水溶性高分子化合物含有水溶液を攪拌しながら、酸化亜鉛を添加して分散させ、必要に応じて乳化させ、得られた液体を噴霧乾燥するとよい。分散に際しては、ホモミキサーや高圧乳化機等の任意の設備を用いることができる。さらに、得られた複合粒子を、粒径を均一にするために、ふるいを通過させることが好ましい。
【0030】
さらに、(C)液状油を配合する場合、(B)水溶性高分子化合物を含有する水溶性高分子化合物含有水溶液に、(A)酸化亜鉛を(C)液状油に分散させた分散液を添加し、得られた液を噴霧乾燥することが好ましい。水溶性高分子化合物含有水溶液を攪拌しながら、酸化亜鉛を液状油に分散させた分散液を添加し、必要に応じて乳化させ、得られた液体を、噴霧乾燥するとよい。水溶性高分子化合物含有水溶液の温度は、水溶性高分子が溶解できる温度であれば特に限定されないが、より高濃度に水溶性高分子化合物を溶解させ、かつ後の乾燥工程で乾燥効率を上げるために、50〜90℃であることが好ましく、この温度範囲を(A)酸化亜鉛、(C)液状油を添加後も保つことが好ましい。また、予め酸化亜鉛を液状油に分散させた分散液を用いることで、複合粒子中の酸化亜鉛を水溶性高分子化合物に均一に分散させることができ、結果として、消臭効果、その持続性及び使用感向上を図ることができる。この場合、酸化亜鉛を液状油に分散させた分散液中の配合量は、(A)/(C)で表される質量比が30/70〜70/30、好ましくは50/50〜60/40とすると好適である。
【0031】
さらに、(D)清涼剤を配合する場合も、(B)液状油に溶解させることが好ましい。その他の成分については特に限定されないが、(B)液状油に溶解又は分散させてもよく、水溶性高分子化合物含有水溶液に、直接添加してもよい。
【0032】
[デオドラント組成物]
本発明のデオドラント組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分を1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて配合することができる。任意成分としては、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、シリコーン油やエステル油等の油分、無機粉体、有機粉体、高分子化合物、保湿剤、包接化合物、ビタミン類、紫外線吸収剤、アミノ酸類、抗炎症剤、冷感付与剤、酸化防止剤、着色剤、香料、制汗剤、殺菌剤、消臭剤、防腐剤、溶剤(エタノール等)、脂肪酸等が挙げられる。なお、配合量は適宜選定される。さらに、複合粒子への配合とは別に、(A)酸化亜鉛、(B)水溶性高分子化合物、(C)液状油、(D)清涼剤、(E)無水ケイ酸等を配合してもよい。
【0033】
制汗剤としては、クロロヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛、クロルヒドロキシアルミニウム・プロピレングリコール、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、フェノールスルホン酸アルミニウム、β−ナフトールジスルホン酸アルミニウム、過ホウ酸ナトリウム、アルミニウムジルコニウムオクタクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムペンタクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムテトラクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムトリクロロハイドレート、ジルコニウムクロロハイドレート、硫酸アルミニウムカリウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、塩基性臭化アルミニウム、アルミニウムナフタリンスルホン酸、塩基性ヨウ化アルミニウム等が挙げられる。
【0034】
殺菌剤としては、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、トリクロロカルバニリド、塩酸クロルヘキシジン、ピロクトンオラミン、クララエキス等が挙げられる。
消臭剤としては、マグネシア・シリカ、酸化マグネシウム、ヒドロキシアパタイト等が挙げられる。
【0035】
本発明のデオドラント組成物は、組成物の経時安定性の点から、実質的に水無配合で、水フリーのものが好ましく、原料に含まれる水分によっても、デオドラント組成物中の水分量を5質量%以下にすることが好ましい。
【0036】
本発明のデオドラント組成物の形態例としては特に限定されず、化粧料、医薬品、医薬部外品等に適用することができ、腋等の身体用デオドラント組成物とできる。本発明のデオドラント組成物は、固形状、半固形状、ジェル状、液状等の剤型にすることができ、その剤型の常法に基づき調製することができる。具体的には、デオドラントスプレー、デオドラントミスト、デオドラントシート、デオドラントスティック、デオドラントロールオン、デオドラント用ファンデーション等にすることが好ましい。この中でも、デオドラントスプレーが好ましく、エアゾール型デオドラントスプレーが好適である。エアゾール型デオドラントスプレーにする場合、デオドラント組成物(原液)に、ジメチルエーテル、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ネオペンタン等の液化石油ガス(LPG)、及びジメチルエーテル(DME)等の液化ガス、これらに加えて、炭酸ガス、窒素ガス等の噴射剤を配合し、エアゾール缶に充填することにより得ることができる。デオドラント組成物(原液)と噴射剤との質量比は、デオドラント組成物(原液)/噴射剤=1/99〜20/80の範囲が好ましい。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%、比率は質量比を示し、表中の各成分の量は純分換算した量である。
【0038】
[実施例1〜5,7に用いる複合粒子の調製]
ミリスチン酸イソプロピルを攪拌しながら、酸化亜鉛全量を添加し分散液を得た。オクテニルコハク酸デンプンエステルナトリウムを4倍量の水に添加して攪拌溶解し、65℃に加温した。これに、無水ケイ酸と前記分散液を添加し、パドル式攪拌機を用いて65℃にて分散させ、その分散液を180℃雰囲気中に噴霧乾燥し、複合粒子を得た。さらに、得られた複合粒子を所定メッシュのふるいを通過させ、所望の平均粒径の複合粒子を得た。なお、実施例1をSEM−EDS分析法(測定機器:走査電子顕微鏡(日立 S−2380N),X線分析装置(HORIBA EMAX−7000)でみたところ、酸化亜鉛が水溶性高分子化合物に分散されてなる状態が確認された。
【0039】
[実施例6に用いる複合粒子の調製]
ミリスチン酸イソプロピルを攪拌しながら、酸化亜鉛19部を添加し分散液を得た。オクテニルコハク酸デンプンエステルナトリウムを4倍量の水に添加して攪拌溶解し、65℃に加温した。これに、無水ケイ酸と残部酸化亜鉛33部、前記分散液を添加し、パドル式攪拌機を用いて65℃にて分散させ、その分散液を180℃雰囲気中に噴霧乾燥し、複合粒子を得た。さらに、得られた複合粒子を所定メッシュのふるいを通過させ、所望の平均粒径の複合粒子を得た。
【0040】
[実施例8に用いる複合粒子の調製]
無水ケイ酸を配合しない以外は、実施例1と同様の方法で複合粒子を得た。
【0041】
[実施例9に用いる複合粒子の調製]
ミリスチン酸イソプロピルに代えてイソオクタン酸セチルを用いる以外は、実施例1と同様の方法で複合粒子を得た。
【0042】
[実施例10,11に用いる複合粒子の調製]
ミリスチン酸イソプロピルを攪拌しながら、清涼化剤を添加し溶解した後、酸化亜鉛全量を添加し、分散液を得た。オクテニルコハク酸デンプンエステルナトリウムを4倍量の水に添加して攪拌溶解し、65℃に加温した。これに、無水ケイ酸と前記分散液を添加し、パドル式攪拌機を用いて65℃にて分散させ、その分散液を180℃雰囲気中に噴霧乾燥し複合粒子を得た。さらに、得られた複合粒子を所定メッシュのふるいを通過させ、所望の平均粒径の複合粒子を得た。
【0043】
[実施例12に用いる複合粒子の調製]
オクテニルコハク酸デンプンエステルナトリウムを4倍量の水に添加し攪拌溶解し、65℃に加温した。これに、無水ケイ酸と酸化亜鉛全量を添加し、パドル式攪拌機を用いて65℃にて分散させ、その分散液を180℃雰囲気中に噴霧乾燥し複合粒子を得た。さらに、得られた複合粒子を所定メッシュのふるいを通過させ、所望の平均粒径の複合粒子を得た。
【0044】
[比較例1,3に用いる複合粒子の調製]
オクテニルコハク酸デンプンエステルナトリウムを4倍量の水に添加し攪拌溶解し、65℃に加温した。これに、無水ケイ酸とミリスチン酸イソプロピルを添加し、パドル式攪拌機を用いて65℃にて分散させ、その分散液を180℃雰囲気中に噴霧乾燥し複合粒子を得た。さらに、得られた複合粒子を所定メッシュのふるいを通過させ、所望の平均粒径の複合粒子を得た。
【0045】
[比較例2に用いる複合粒子の調製]
ミリスチン酸イソプロピルを攪拌しながら、酸化亜鉛全量を添加し分散液を得た。セルロースを4倍量の水に添加して攪拌分散し、90℃に加温した。これに、無水ケイ酸と前記分散液を添加し、パドル式攪拌機を用いて90℃にて分散させ、その分散液を180℃雰囲気中に噴霧乾燥し、複合粒子を得た。さらに、得られた複合粒子を所定メッシュのふるいを通過させ、所望の平均粒径の複合粒子を得た。
【0046】
[比較例4,5に用いる複合粒子の調製]
オクテニルコハク酸デンプンエステルナトリウムを4倍量の水に添加し攪拌溶解し、65℃に加温した。これに、無水ケイ酸を添加し、パドル式攪拌機を用いて65℃にて分散させ、その分散液を180℃雰囲気中に噴霧乾燥し複合粒子を得た。さらに、得られた複合粒子を所定メッシュのふるいを通過させ、所望の平均粒径の複合粒子を得た。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
[実施例1〜12、比較例1〜5]
上記複合粒子を7%、クロルヒドロキシアルミニウム24%、無水ケイ酸10%を樹脂製容器に入れ、よく振り混ぜ均一にし粉体混合物とした。別途、下記表4の原液組成において、前記粉体混合物の調製に用いた成分以外の残り成分を均一に混合し、液体混合物を得た。この液体混合物に粉体混合物を均一に混合し、原液を得た。
次に、アルミニウム製の缶に原液を入れ、アルミニウム製バルブでクリンチし、その後、原液/噴射剤(質量比)7/93で混合して充填し、エアゾール型デオドラントスプレー(デオドラント組成物)を得た。得られたエアゾール型デオドラントスプレーについて、下記評価を行った。結果を表1〜3に併記する。
【0051】
【表4】

【0052】
[消臭効果評価方法]
男女被験者20名に対し、各々の片方の腋窩部には何も処理せず、もう片方の腋窩部にデオドラント組成物を80mg塗布した。その後、着用開始から、1時間後、4時間後、8時間後に、各被験者が自身の腋窩部の臭気から下記評価点に基づいて消臭効果を官能評価した。結果を、被験者20人の官能評価平均点に基づいて、下記消臭効果基準に基づき示す。
<評価点>
3点:塗布部側は無塗布部よりも消臭効果が非常に高いと感じる
2点:塗布部側は無塗布部よりも消臭効果がかなり高いと感じる
1点:塗布部側は無塗布部よりも消臭効果がやや高いと感じる
0点:塗布部側は無塗布部と同等
<消臭効果基準>
◎:被験者20人の平均点が2.5点以上
○:被験者20人の平均点が2点以上2.5点未満
△:被験者20人の平均点が1点以上2点未満
×:被験者20人の平均点が1点未満
【0053】
[使用感評価方法]
男女被験者20名に対し、前腕内側部にデオドラント組成物を80mg塗布し、肌についた感触について、下記評価点に基づき官能評価した。結果を、被験者20名の官能評価平均点に基づいて、下記使用感基準に基づき示す。
<評価点>
5点:非常に残存感やざらつきを感じる
4点:残存感やざらつきを感じる
3点:少し残存感やざらつきを感じる
2点:ほとんど残存感やざらつきを感じない
1点:全く残存感やざらつきを感じない
<使用感基準>
◎:被験者20名の平均点が1点以上2点未満
○:被験者20名の平均点が2点以上3点未満
△:被験者20名の平均点が3点以上4点未満
×:被験者20名の平均点が4点以上5点以下
【0054】
下記組成のデオドラント組成物を常法に基づいて調製した。これらは、消臭効果が高く、その持続性に優れ、使用感が良好なものであった。
[実施例13]デオドラントスプレー
(原液)
組成 %
マイクロカプセル化消臭剤(実施例10で用いた複合粒子) 7
クロルヒドロキシアルミニウム 25
ミリスチン酸イソプロピル 26
マグネシア・シリカ(*1) 5
ジメチルシリコーン(*2) 5
ポリエーテル変性シリコーン(*3) 3
イソプロピルメチルフェノール(*4) 0.1
イソステアリン酸(*5) 3
POE(20)トリイソステアリン酸グリセリル(*6) 15
無水ケイ酸(*7) 10
香料 0.9
原液合計 100.0
(噴射剤)
液化石油ガス(LPG、0.15MPa/20℃) 噴射剤合計:100.0
原液/噴射剤(質量比)=7/93
*1:ミズパールM−5015(水澤化学工業株式会社)
*2:KF−96 10cs(信越化学工業株式会社)
*3:SH3771M(東レ・ダウコーニング株式会社)
*4:イソプロピルメチルフェノール(大阪化学株式会社)
*5:イソステアリン酸EX(高級アルコール工業株式会社)
*6:ユニオックスGT−20IS(日油株式会社)
*7:サンスフェアH−122(AGCエスアイテック)
【0055】
[実施例14]デオドラントスティック
組成 %
マイクロカプセル化消臭剤(実施例11で用いた複合粒子) 2.5
クロルヒドロキシアルミニウム 24.0
ケイ酸マグネシウム 2.0
ステアリルアルコール 8.0
硬化ヒマシ油 5.0
マイクロクリスタリンワックス 2.0
ポリオキシプロピレンブチルエーテル 3.0
ジブチルヒドロキシトルエン 0.05
デカメチルペンタシロキサン(*8) 残部
グリチルレチン酸ステアリル 0.02
タルク(*9) 5.0
香料 0.05
合計 100.0
使用容器:吉野工業所製ポリプロピレン/ポリアセタール容器
*8:SH245 Fluid(東レ・ダウコーニング)
*9:SW−A(浅田製粉)
【0056】
[実施例15]デオドラント用プレストパウダーファンデーション
マイクロカプセル化消臭剤(実施例10で用いた複合粒子) 3.0
セリサイト 15.0
マイカ 10.0
タルク(*10) 残部
微粒子酸化チタン 10.0
メチルシロキサン網状重合体(*11) 12.0
流動パラフィン 2.0
オクチルドデカノール 5.0
メチルポリシロキサン(*12) 2.0
パラオキシ安息香酸エステル 0.1
グンジョウ 適量
香料 0.1
合計 100.0
*10:SW−A(浅田製粉)
*11:KMP−590(信越化学工業)
*12:KF96A−50cs(信越化学工業)
【0057】
[実施例16]デオドラント用スティック状油性ファンデーション
マイクロカプセル化消臭剤(実施例1で用いた複合粒子) 3.0
酸化チタン 7.0
タルク 15.0
カオリン 10.0
流動パラフィン 残部
セレシン 20.0
オクチルドデカノール 8.0
キャンデリラロウ 5.0
無水ケイ酸(*13) 2.0
メチルポリシロキサン(*14) 10.0
グリチルレチン酸ステアリル 0.1
グンジョウ 適量
香料 0.1
合計 100.0
*13:サンスフェアH−121(AGCエスアイテック)
*14:KF96A−200cs(信越化学工業)
【0058】
実施例及び比較例を調製する際に用いた原料を以下に示す。
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸化亜鉛及び(B)水溶性高分子化合物を含有する複合粒子を含むデオドラント組成物。
【請求項2】
複合粒子が、(A)酸化亜鉛が(B)水溶性高分子化合物に分散されてなる複合粒子であることを特徴とする請求項1記載のデオドラント組成物。
【請求項3】
複合粒子が、さらに(C)液状油を含有し、(A)/(C)で表される質量比が30/70〜70/30である請求項1又は2記載のデオドラント組成物。
【請求項4】
(A)酸化亜鉛の複合粒子中における含有量が、30〜50質量%である請求項1〜3のいずれか1項記載のデオドラント組成物。
【請求項5】
(B)水溶性高分子化合物の複合粒子中における含有量が、30〜70質量%である請求項1〜4のいずれか1項記載のデオドラント組成物。
【請求項6】
(B)水溶性高分子化合物が、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルナトリウムである請求項1〜5のいずれか1項記載のデオドラント組成物。
【請求項7】
複合粒子が、さらに(D)清涼剤を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載のデオドラント組成物。
【請求項8】
デオドラントスプレーである請求項1〜7のいずれか1項記載のデオドラント組成物。
【請求項9】
(B)水溶性高分子化合物を含有する水溶性高分子化合物含有水溶液に、(A)酸化亜鉛を添加し、得られた液を噴霧乾燥することを特徴とする、(A)酸化亜鉛が(B)水溶性高分子化合物に分散されてなる複合粒子の製造方法。
【請求項10】
(B)水溶性高分子化合物を含有する水溶性高分子化合物含有水溶液に、(A)酸化亜鉛を(C)液状油に分散させた分散液を添加し、得られた液を噴霧乾燥することを特徴とする、(A)酸化亜鉛、(B)水溶性高分子化合物及び(C)液状油を含み、(A)酸化亜鉛が(B)水溶性高分子化合物に分散されてなる複合粒子の製造方法。

【公開番号】特開2010−150189(P2010−150189A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330426(P2008−330426)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】