説明

デコーダ装置、デジタル放送システム、TSパケットデコード方法および放送字幕監視方法

【課題】放送局において送出する放送字幕データの異常を検知した場合の原因箇所の特定を容易にするデジタル放送システムを提供する。
【解決手段】映像データ、該映像データのアンシラリ領域に多重化されたアンシラリ字幕データを含むアンシラリ字幕多重信号1を、エンコーダ装置101にて映像TSパケット、放送字幕TSパケットを含むデジタル放送信号の形式のTSパケット信号2に変換した際に、該TSパケット信号2をデコーダ装置105に入力し、TSパケット信号2に含まれる映像TSパケットを映像データにデコードするとともに、放送字幕TSパケットをアンシラリ字幕データに変換し、映像データのアンシラリ領域に多重化してアンシラリ字幕表示装置106に出力する。アンシラリ字幕表示装置106は、アンシラリ字幕データをデコードして得られる字幕データを、映像データに重畳した信号として映像モニタ・スピーカ107に出力して画面表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デコーダ装置、デジタル放送システム、TSパケットデコード方法および放送字幕監視方法に関し、特に、デジタル放送を送出する放送局において放送字幕データの異常の有無を監視することが可能なデコーダ装置、デジタル放送システム、TSパケットデコード方法および放送字幕監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のデジタル放送技術の進展に伴い映像信号や音声信号の放送番組に関する放送信号に、デジタル文字放送信号等を多重化して通信衛星や放送衛星に送出するデジタル放送システム(デジタル放送システム)が実用化され、さらには、地上波放送システムについても、デジタル放送への移行が開始されつつある。かかるデジタル放送の放送局においては、特許文献1の特開2001−203989号公報「デジタル放送送信装置、デジタル放送受信装置、デジタル放送送受信システムおよびデジタル放送受信方法並びにコンピュータ読み取り可能な記録媒体」にも記載されているように、アナログ放送の場合と同様、デジタル放送信号中に字幕データを多重化して送出するという文字多重放送も行うようになっている。
【0003】
このため、デジタル放送を行う放送局においては、送出する放送番組に関する映像信号や音声信号のみならず、デジタル放送信号中に多重化されている字幕データに関する信号についても、正しいデータが送出されているか否かを監視することが必要である。
【0004】
デジタル放送信号の送出において、放送字幕データに関する信号が正しく送出されていることを監視する方法は、図5に示すように、TS(Transport Stream)パケット化される前つまり映像データのアンシラリ領域(補助領域)に多重化された状態での字幕データ(アンシラリ字幕データ)を映像データに重畳する形に変換して、映像モニタに表示することができる装置(アンシラリ字幕表示装置)を用いた監視、または、TSパケット化された後さらにデジタル変調されて放送電波となった状態において受信して映像モニタに表示することができるデジタル放送受信器を使用した監視、のいずれか一方または双方による監視方法が採用されていた。図5は、関連するデジタル放送システムのシステム構成を示すシステム構成図である。
【0005】
図5に示すように、デジタル放送の場合、放送局100Aにおいて、映像データ・音声データ・アンシラリ字幕データが多重化されているアンシラリ字幕多重信号1は、エンコーダ装置101に入力され、エンコーダ装置101により、映像データおよび音声データがそれぞれエンコード(圧縮符号化)されてTSパケット化されると同時に、映像データのアンシラリ領域(つまり映像モニタには映らない、画面外の補助領域)に多重化されている字幕データもTSパケット化される。ここで、エンコーダ装置101に入力される、映像データのアンシラシ領域に多重化された字幕データは、一般に、アンシラリ字幕データと称される。
【0006】
エンコーダ装置101によりTSパケット化された映像データ・音声データ・放送字幕データからなるTSパケット信号2は、放送局100A内にてデジタル変調器102によりデジタル変調された後、放送電波3として送出される。
【0007】
該放送電波3を受信した各家庭200のデジタル放送受信器201において、該放送電波3はデコードされて、映像モニタ・スピーカ202に出力され、デコードされた映像信号はテレビ画面に表示され、デコードされた音声信号はスピーカから出力され、また、デコードされた放送字幕データは映像信号に重畳されてテレビ画面に表示される。なお、デジタル放送受信器201によってデコードされる字幕データは、アンシラリ字幕データと区別するために、一般に、放送字幕データと称される。
【0008】
ここで、デジタル放送システムは、放送局100Aにおいて映像データ・音声データのTSパケットが正しく送出されていることを監視するために、エンコーダ装置101から出力される映像TSパケット・音声TSパケット・放送字幕TSパケットからなるTSパケット信号2のうち、映像TSパケットおよび音声TSパケットを抽出して、抽出した映像TSパケットおよび音声TSパケットをデコードしてデコード信号4Aとして出力するデコーダ装置105Aが使用されている。該デコーダ装置105Aから出力されるデコード信号4Aは、映像モニタ・スピーカ107に入力されて、デジタル放送番組としての送出が正常に行われているか否かが監視されている。
【0009】
ここで、図6のブロック図を用いて、デコーダ装置105Aの動作についてさらに説明する。図6は、図5に示す関連するデジタル放送システムにおけるデコーダ装置105Aの内部構成を示すブロック図である。デコーダ装置105Aには、エンコーダ装置101から出力される映像データ・音声データ・放送字幕データの各TSパケットを多重化しているTSパケット信号2が入力される。デコーダ装置105Aにおいて、入力されてくるTSパケット信号2の中から、映像TSパケット抽出部105aにて映像TSパケットが抽出されて、映像デコード部105bにてデコードされる。同様に、入力されてくるTSパケット信号2の中から、音声TSパケット抽出部105cにて音声TSパケットが抽出されて、音声デコード部105dにてデコードされる。
【0010】
映像デコード部105bにてデコードされた映像信号と音声デコード部105dにてデコードされた音声信号とは、多重化部105eにて多重化されて、デコード信号4Aとしてデコーダ装置105Aから出力されて、映像モニタ・スピーカ107に入力される。一方、デコーダ装置105Aへ入力されたTSパケット信号2に含まれていた放送字幕TSパケットは、デコーダ装置105A内では、使用されることなく、破棄されることになる。
【0011】
なお、図5のデジタル放送システムは、放送局100Aにおいて放送字幕データが正しく放送電波3として送出されていることを監視するために、TSパケット化される前つまりアンシラリ字幕多重信号1として映像のアンシラリ領域に多重化された状態におけるアンシラリ字幕データを、アンシラリ字幕表示装置103にて映像信号に重畳して、字幕重畳信号5として映像モニタ・スピーカ104に出力することによって、放送字幕が正しく送出されているか否かを監視する。エンコーダ装置101にてTSパケット化した後、さらにデジタル変調器102や他の装置にてデジタル変調し、放送電波3として放送し、放送電波3をデジタル放送受信器108で受信し、受信した放送電波3をデジタル放送受信器108デコードし、デコードした映像信号、音声信号および放送字幕データを映像モニタ・スピーカ109へ送る。映像モニタ・スピーカ109は、デコードされた映像信号をテレビ画面に表示され、デコードされた音声信号をスピーカから出力し、また、デコードされた放送字幕データを映像信号に重畳してテレビ画面に表示する。映像モニタ・スピーカ109のテレビ画面に放送字幕データを表示することにより、放送字幕が正しく送出されているか否かを監視している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−203989号公報(第3−4頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、図5に示すような関連する放送字幕の監視方法において、例えば、TSパケット化される前に監視している段階、つまり、アンシラリ字幕表示装置103を介して映像モニタ・スピーカ104から出力した段階においては、字幕表示に異常は無かったものの、その後、デジタル変調され、放送電波3となった状態から、デジタル放送受信器108にてデコードして映像モニタ・スピーカ109から出力した段階において、字幕表示に異常があった場合には、エンコーダ装置101によるTSパケット化に問題あるのか、あるいは、エンコーダ装置101以降のデジタル変調器102等の装置を経由して放送電波3に変換される過程で異常が発生しているのか、判別することができない。
【0014】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、エンコーダ装置の出力TSパケットを監視するためのデコーダ装置として、映像データ、音声データの各TSパケットのみならず、放送字幕データのTSパケットも監視することを可能とし、放送字幕データの送出の際に、放送局において該放送字幕データの異常の発生を検知した場合の原因箇所の特定を容易にするデコーダ装置、デジタル放送システム、TSパケットデコード方法および放送字幕監視方法を提供することを、その目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述の課題を解決するため、本発明によるデコーダ装置は、次のような特徴的な構成を採用している。
【0016】
(1)映像TS(Transport Stream)パケットを映像データにデコードするデコーダ装置であって、前記映像TSパケットとともに入力される放送字幕TSパケットをアンシラリ字幕データに変換するデコーダ装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明のデコーダ装置、デジタル放送システム、TSパケットデコード方法および放送字幕監視方法によれば、放送局において、放送字幕データの送出に異常を検知した場合に、放送局内のいずれの回路部に異常が発生しているのかを容易に特定することが可能となる。
【0018】
さらに、映像信号や音声信号に関しては擬似信号を用いて、字幕データ単独の形態で表示の正常性を確認するのではなく、実際の映像信号・音声信号とともに字幕データを表示することにより、映像信号・音声信号の確認と字幕データの表示の確認とを同時に行うことができるので、確認作業を効率化することができるという効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明によるデジタル放送システムのシステム構成の一例を示すシステム構成図である。
【図2】図1に示すデジタル放送システムにおけるエンコーダ装置の内部構成の一例を示すブロック図である。
【図3】図1に示すデジタル放送システムにおけるアンシラリ字幕表示装置の内部構成の一例を示すブロック図である。
【図4】図1に示すデジタル放送システムにおけるデコーダ装置の内部構成の一例を示すブロック図である。
【図5】関連するデジタル放送システムのシステム構成を示すシステム構成図である。
【図6】図5に示す関連するデジタル放送システムにおけるデコーダ装置の内部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明によるデコーダ装置、デジタル放送システム、TSパケットデコード方法および放送字幕監視方法の好適な実施形態について添付図を参照して説明する。
【0021】
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、デジタル放送においてTS(Transport Stream)パケットとして映像データ・音声データとともに送出される放送字幕データが正常に送出されているか否かを放送局内で監視し、放送字幕データに異常を検知した際に、放送局内のどの回路部に異常が発生しているかを容易に特定することを可能としている点に、その特徴を有している。
【0022】
つまり、本発明は、エンコーダ装置から出力されるTSパケット信号を監視するためのデコーダ装置において、映像TSパケットや音声TSパケットのみならず、放送字幕TSパケットについても監視をすることを可能とするものである。エンコーダ装置が出力する放送字幕TSパケットはTSパケット形式となっているので、デコーダ装置において、一旦、該放送字幕TSパケットをアンシラリ字幕形式の字幕データに変換して、映像データのアンシラリ領域に重畳された形式のデコード信号として出力する。
【0023】
しかる後、該デコード信号として出力された、字幕データがアンシラリ領域に多重化された状態のデコード映像信号であるアンシラリ字幕多重信号を、アンシラリ字幕表示装置へ入力して、アンシラリ領域に多重化された字幕データをデコードして、デコード映像信号に重畳することによって、字幕データが重畳された映像信号からなる字幕重畳信号に変換して、映像モニタ・スピーカに出力する。変換した字幕重畳信号を映像モニタに表示させることにより、映像信号に放送字幕データが重畳された状態で表示されることになり、放送字幕TSパケットが正常に送出されているか否かを監視することが可能となる。
【0024】
(実施形態の構成)
図1は、本発明によるデジタル放送システムのシステム構成の一例を示すシステム構成図であり、図5に示した関連するデジタル放送システムと同一の機能を有する回路部には、図5と同一の符号を付して示している。図1に示すデジタル放送システムにおいては、図5の関連するデジタル放送システムの放送局100Aに設置されているデコーダ装置105Aの代わりに、デコーダ装置105とアンシラリ字幕表示装置106とが放送局100に設置されている。
【0025】
図1のデジタル放送システムにおいて、放送局100で制作された放送番組に関する映像データ・音声データ・アンシラリ字幕データが多重化されたアンシラリ字幕多重信号1は、エンコーダ装置101に入力される。エンコーダ装置101は、入力されてくるアンシラリ字幕多重信号1のうち、映像データ・音声データを圧縮符号化して、TSパケット化し、映像TSパケット、音声TSパケットとして出力する。同時に、エンコーダ装置101は、入力されてくるアンシラリ字幕多重信号1に含まれているアンシラリ字幕データを放送字幕データに変換した後、TSパケット化し、放送字幕TSパケットとして出力する。
【0026】
エンコーダ装置101が出力した映像TSパケット・音声TSパケット・放送字幕TSパケットからなるTSパケット信号2は、デジタル変調器102その他の装置にて、デジタル変調や他の処理が施されて、放送電波3として出力され、各家庭200へ送出される。
【0027】
各家庭200においては、デジタル放送受信器201にて放送電波3を受信し、放送電波3に含まれている映像TSパケットはデコードされて、映像信号として映像モニタ・スピーカ202の映像モニタ画面に映され、放送電波3に含まれている音声TSパケットはデコードされて、音声信号として映像モニタ・スピーカ202のスピーカから出力され、放送電波3に含まれている放送字幕TSパケットはデコードされて、映像信号に重畳されて映像モニタ・スピーカ202の映像モニタ画面に映される。
【0028】
以上が、デジタル放送番組を各家庭200に送出する図1のデジタル放送システムとして、放送局100側で制作された放送番組の映像データ・音声データ・アンシラリ字幕データが、各家庭200において、受信されて、テレビ画面に表示され、スピーカから出力されるまでの流れである。
【0029】
(実施形態の動作の説明)
次に、図1に示すデジタル放送システムを構成するエンコーダ装置101、アンシラリ字幕表示装置103、デコーダ装置105のそれぞれの動作例について、さらに説明する。
【0030】
まず、エンコーダ装置101の動作について、その一例を図2のブロック図を用いて説明する。図2は、図1に示すデジタル放送システムにおけるエンコーダ装置101の内部構成の一例を示すブロック図である。図2に示すように、エンコーダ装置101には、映像データ・音声データ・アンシラリ字幕データが多重化されたアンシラリ字幕多重信号1が入力される。エンコーダ装置101は、入力されてくるアンシラリ字幕多重信号1の中から、映像抽出部101a、音声抽出部101c、アンシラリ字幕抽出部101eにて、それぞれ、映像データ、音声データ、アンシラリ字幕データを抽出する。
【0031】
映像抽出部101aにより抽出された映像データは、映像圧縮符号化・TSパケット化部101bにて、圧縮符号化され、映像TSパケットとしてTSパケット化される。同様に、音声抽出部101cにより抽出された音声データは、音声圧縮符号化・TSパケット化部101dにて、圧縮符号化され、音声TSパケットとしてTSパケット化される。また、アンシラリ字幕抽出部101eにより抽出されたアンシラリ字幕データは、放送字幕抽出・TSパケット化部101fにて、放送字幕データとして抽出されて、TSパケット化される。
【0032】
TSパケット化された映像TSパケット・音声TSパケット・放送字幕TSパケットは、TS多重化部101gにて、TS多重化され、TSパケット信号2としてエンコーダ装置101から出力される。
【0033】
次に、アンシラリ字幕表示装置103の動作について、その一例を図3のブロック図を用いて説明する。図3は、図1に示すデジタル放送システムにおけるアンシラリ字幕表示装置103の内部構成の一例を示すブロック図である。図3に示すように、アンシラリ字幕表示装置103へは、アンシラリ字幕データが多重化された映像データを含むアンシラリ字幕多重信号1が入力される。アンシラリ字幕表示装置103内部では、デコード部103aにより、アンシラリ字幕多重信号1のうち、映像データのアンシラリ領域に多重化されている字幕データが抽出された後、デコードされて、字幕データ6として出力される。
【0034】
デコードされた字幕データ6は、重畳部103bにおいて、アンシラリ字幕表示装置103へ入力されたアンシラリ字幕多重信号1に、重畳(スーパーインポーズ)されて、字幕データが重畳された映像信号に変換されて、字幕重畳信号5として、アンシラリ字幕表示装置103から出力され、図1の映像モニタ・スピーカ104に入力されることになる。なお、アンシラリ字幕表示装置103へ入力されるアンシラリ字幕多重信号1は、図1に示す映像データ・音声データ・アンシラリ字幕データが多重化されているアンシラリ字幕多重信号1と同じ信号であり、アンシラリ字幕多重信号1に含まれる音声データは、そのまま、アンシラリ字幕表示装置103を介して、図1の映像モニタ・スピーカ104に入力される。
【0035】
次に、デコーダ装置105の動作について、その一例を図4のブロック図を用いて説明する。図4は、図1に示すデジタル放送システムにおけるデコーダ装置105の内部構成の一例を示すブロック図である。図4に示すように、デコーダ装置105に対して、エンコーダ装置101から出力される映像TSパケット・音声TSパケット・放送字幕TSパケットが多重化されたTSパケット信号2が入力される。
【0036】
デコーダ装置105においては、入力されてくるTSパケット信号2の中から、映像TSパケット抽出部105aにて映像TSパケットが抽出され、映像デコード部105bにてデコードされる。同様に、入力されてくるTSパケット信号2の中から、音声TSパケット抽出部105cにて音声TSパケットが抽出され、音声デコード部105dにてデコードされる。さらに、入力されてくるTSパケット信号2の中から、放送字幕TSパケット抽出部105fにて放送字幕TSパケットも抽出されて、変換部105gにて、放送字幕TSパケットが映像データのアンシラリ領域に多重化される形式のアンシラリ字幕データに変換される。
【0037】
映像デコード部105bにてデコードされた映像データ、音声デコード部105dにてデコードされた音声データおよび変換部105gにて変換されたアンシラリ字幕データは、多重化部105eにて多重化されて、デコーダ装置105からデコード信号4として出力される。
【0038】
かくのごとく、図4に示すデコーダ装置105は、図6に示した関連するデコーダ装置105Aとは異なり、デコーダ装置105へ入力されてくるTSパケット信号2に含まれる放送字幕TSパケットについても、破棄することなく、アンシラリ字幕データとして変換され、映像データ、音声データと多重化されてデコード信号4に含まれた形で出力される。
【0039】
ここで、放送局100内には、デジタル放送が正常に送出されているか否かを監視するための仕組みが存在している。さらに、デジタル放送が正常に送出されていないことが検知された場合には、放送局100内のどの箇所で問題が発生したかを特定し易くするために、放送局100内の適当な箇所に監視ポイントが置かれている。図1に示すデジタル放送システムにおいては、放送局100内に、次に示す3箇所の監視ポイントを設定している。
(1)第1の監視ポイント(映像モニタ・スピーカ104による監視ポイント)
エンコーダ装置101にてエンコードする前の段階のアンシラリ字幕多重
信号1の異常の有無を監視する。
(2)第2の監視ポイント(映像モニタ・スピーカ107による監視ポイント)
エンコーダ装置101にてエンコードした後の段階のTSパケット信号2
の異常の有無を監視する。
(3)第3の監視ポイント(映像モニタ・スピーカ109による監視ポイント)
デジタル変調器102、他の装置のデジタル変調や他の処理を施した段階
で送出した放送電波の異常の有無を監視する。
【0040】
つまり、第1の監視ポイントとしては、エンコーダ装置101の前段の映像データ・音声データ・アンシラリ字幕データからなるアンシラリ字幕多重信号1を監視するために、アンシラリ字幕表示装置103および映像モニタ・スピーカ104が使用される。アンシラリ字幕表示装置103には、エンコーダ装置101に入力されるアンシラリ字幕多重信号1と同じ映像データ・音声データ・アンシラリ字幕データからなる信号が入力される。
【0041】
アンシラリ字幕表示装置103においては、前述したように、まず、映像データからアンシラリ字幕データが抽出・分離されて、字幕データ6としてデコードされる。しかる後、字幕データ6は、入力されるアンシラリ字幕多重信号1の映像信号に重畳(スーパーインポーズ)されて、字幕重畳信号5として、映像モニタ・スピーカ104に出力され、映像モニタ・スピーカ104にて、映像信号に重畳されて表示される字幕データが、映像信号や音声信号とともに監視されることになる。
【0042】
第2の監視ポイントとしては、エンコーダ装置101からTSパケット化されて出力される映像TSパケット・音声TSパケット・放送字幕TSパケットからなるTSパケット信号2を監視するために、デコーダ装置105、アンシラリ字幕表示装置106および映像モニタ・スピーカ107が使用される。デコーダ装置105は、前述したように、図6に示したような関連するデコーダ装置105Aとは異なり、放送字幕TSパケットについても処理対象としている。
【0043】
つまり、デコーダ装置105は、TSパケット化された映像TSパケット・音声TSパケットを、それぞれ、映像データ、音声データとしてデコードするとともに、放送字幕TSパケットについてもアンシラリ字幕データへ変換して、映像データのアンシラリ領域へ多重化し、デコード信号4として、後段のアンシラリ字幕表示装置106に対して出力する。
【0044】
映像データのアンシラリ領域へ多重化されたアンシラリ字幕データを含むデコード信号4は、エンコーダ装置101に入力されるアンシラリ字幕多重信号1と同一の信号形式であり、アンシラリ字幕表示装置106において、映像データからアンシラリ字幕データが抽出・分離されて、字幕データ6としてデコードされ、しかる後、字幕データ6は、入力されるアンシラリ字幕多重信号1の映像信号に重畳(スーパーインポーズ)されて、字幕重畳信号5として、映像モニタ・スピーカ107に出力される。したがって、映像モニタ・スピーカ107にて、映像信号に重畳されて表示される字幕データが、映像信号や音声信号とともに監視されることになる。
【0045】
第3の監視ポイントとしては、デジタル放送システムから出力される放送電波3を放送局100内に設置されたデジタル放送受信器108によって受信し、映像モニタ・スピーカ109に出力して監視する方法が用いられる。該デジタル放送受信器108は、各家庭200に設置されるデジタル放送受信器201と同じ回路構成のものであり、字幕データを映像信号に重畳して表示することが可能である。
【0046】
図5に示すような関連するデジタル放送システムにおいては、前述した第2の監視ポイントで放送字幕データが正常であるか否かを監視することができなかった。したがって、第1の監視ポイントにおいて、アンシラリ字幕データが映像モニタ・スピーカ104に正常に表示していた場合に、第3の監視ポイントにおいて、放送電波3に含まれている放送字幕データが映像モニタ・スピーカ109に異常な状態で表示された場合、第1の監視ポイント以降であって、かつ、第3の監視ポイント以前に介在している、エンコーダ装置101、デジタル変調器102、他の装置のいずれの箇所で異常が発生しているのかを特定することが困難であった。
【0047】
図1に示す本実施形態のデジタル放送システムにおいては、エンコーダ装置101からのTSパケット信号2を監視する第2の監視ポイントにおいて、放送字幕の正常性を監視することを可能としている。
【0048】
したがって、例えば、第1の監視ポイントで、アンシラリ字幕多重信号1に含まれるアンシラリ字幕データが正常であることが確認されていて、第2の監視ポイントで、TSパケット信号2に含まれる放送字幕TSパケットが異常であることが検知された場合には、第1の監視ポイント以降であって、かつ、第2の監視ポイント以前に介在する回路つまりエンコーダ装置101に異常が発生している可能性が高いと判断することができるようになる。
【0049】
同様に、第2の監視ポイントで、TSパケット信号2に含まれる放送字幕TSパケットが正常であることが確認されていて、第3の監視ポイントで、放送電波3に含まれている放送字幕データが映像モニタ・スピーカ109に異常な状態で表示されていることが検知された場合、第2の監視ポイント以降であって、かつ、第3の監視ポイント以前に介在する回路つまりデジタル変調器102等の回路に異常が発生している可能性が高いと判断することができることになる。
【0050】
なお、図1に示す本デジタル放送システムにおいては、各家庭200に放送番組を送出する手段として、放送電波3を用いる場合について説明したが、本発明はかかる場合のみに限るものではなく、例えば、CATVのような同軸ケーブルや光ファイバ等の有線ケーブルを用いて放送番組を送出するようにしても良い。
【0051】
(実施形態の効果の説明)
以上に詳細に説明したように、図1に示すような本実施形態のシステム構成により、デジタル放送システムにおいて、放送字幕データの送出に異常を検知した場合に、放送局100内のいずれの回路部に異常が発生しているのかを容易に特定することが可能となる。
【0052】
さらに、映像信号や音声信号に関しては擬似信号を用いて、字幕データ単独の形態で表示の正常性を確認するのではなく、実際の映像信号・音声信号とともに字幕データを表示することにより、映像信号・音声信号の確認と字幕データの表示の確認とを同時に行うことができるので、確認作業を効率化することができるという効果も得られる。
【0053】
以上、本発明の好適実施形態の構成を説明した。しかし、斯かる実施形態は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。例えば、本発明の実施態様は、課題を解決するための手段における構成(1)に加えて、次のような構成として表現できる。
(2)映像TS(Transport Stream)パケットを映像データにデコードするデコーダ装置であって、前記映像TSパケットとともに入力される放送字幕TSパケットをアンシラリ字幕データに変換するデコーダ装置。
(3)映像データ、該映像データのアンシラリ領域に多重化された字幕データであるアンシラリ字幕データを少なくとも含む放送情報を、映像TS(Transport Stream)パケット、放送字幕TSパケットを少なくとも含むデジタル放送信号の形式で放送するデジタル放送システムにおいて、前記映像TSパケット、前記放送字幕TSパケットを少なくとも入力し、入力された前記映像TSパケットを映像データにデコードするとともに、入力された前記放送字幕TSパケットをアンシラリ字幕データに変換し、前記映像データのアンシラリ領域に多重化したアンシラリ字幕多重信号として出力するデコーダ装置を備えているデジタル放送システム。
(4)前記デコーダ装置から出力される前記アンシラリ字幕多重信号に多重化されている前記アンシラリ字幕データを抽出した後、デコードして得られる字幕データを、前記アンシラリ字幕多重信号に重畳した放送字幕重畳信号として出力するアンシラリ字幕表示装置を備え、かつ、該放送字幕重畳信号を出力表示する映像モニタを備えている上記(3)のデジタル放送システム。
(5)映像データ、該映像データのアンシラリ領域に多重化された字幕データであるアンシラリ字幕データを少なくとも含む放送情報を入力して、該放送情報のうち、前記映像データを圧縮符号化した後、映像TSパケットにエンコードするとともに、前記アンシラリ字幕データを、前記映像データに重畳する放送字幕データとして抽出した後、放送字幕TSパケットにエンコードし、前記映像TSパケットと多重化して、TSパケット信号として出力するエンコーダ装置を備えている上記(3)または(4)のデジタル放送システム。
(6)前記エンコーダ装置の出力を前記デコーダ装置の入力に接続してなる上記(5)のデジタル放送システム。
(7)映像TS(Transport Stream)パケットを映像データにデコードするとともに、前記映像TSパケットとともに入力される放送字幕TSパケットをアンシラリ字幕データに変換するTSパケットデコード方法。
(8)前記アンシラリ字幕データを前記映像データに多重化する上記(7)のTSパケットデコード方法。
(9)映像データ、該映像データのアンシラリ領域に多重化された字幕データであるアンシラリ字幕データを少なくとも含む放送情報を、映像TS(Transport Stream)パケット、放送字幕TSパケットを少なくとも含むデジタル放送信号の形式で放送する際に、前記字幕データが正常に放送されているか否かを監視する放送字幕監視方法において、前記映像TSパケット、前記放送字幕TSパケットを少なくとも入力し、入力された前記映像TSパケットを映像データにデコードするとともに、入力された前記放送字幕TSパケットをアンシラリ字幕データに変換し、前記映像データのアンシラリ領域に多重化したアンシラリ字幕多重信号として出力し、該アンシラリ字幕多重信号が正常に表示されるか否かを監視する監視工程を有している放送字幕監視方法。
(10)前記アンシラリ字幕多重信号に多重化されている前記アンシラリ字幕データを抽出した後、デコードして得られる字幕データを、前記アンシラリ字幕多重信号に重畳した放送字幕重畳信号に変換し、変換した該放送字幕重畳信号を映像モニタに出力表示する上記(9)の放送字幕監視方法。
(11)映像データ、該映像データのアンシラリ領域に多重化された字幕データであるアンシラリ字幕データを少なくとも含む放送情報を入力して、該放送情報のうち、前記映像データを圧縮符号化した後、映像TSパケットにエンコードするとともに、前記アンシラリ字幕データを、前記映像データに重畳する放送字幕データとして抽出した後、放送字幕TSパケットにエンコードし、前記映像TSパケットと多重化して、TSパケット信号として出力した直後に、前記監視工程により、前記放送字幕TSパケットが正常であるか否かを監視する上記(9)または(10)の放送字幕監視方法。
【符号の説明】
【0054】
1 アンシラリ字幕多重信号
2 TSパケット信号
3 放送電波
4 デコード信号
4A デコード信号
5 字幕重畳信号
6 字幕データ
100 放送局
100A 放送局
101 エンコーダ装置
101a 映像抽出部
101b 映像圧縮符号化・TSパケット化部
101c 音声抽出部
101d 音声圧縮符号化・TSパケット化部
101e アンシラリ字幕抽出部
101f 放送字幕抽出・TSパケット化部
101g TS多重化部
102 デジタル変調器
103 アンシラリ字幕表示装置
104 映像モニタ・スピーカ
105 デコーダ装置
106 アンシラリ字幕表示装置
107 映像モニタ・スピーカ
108 デジタル放送受信器
109 映像モニタ・スピーカ
200 家庭
201 デジタル放送受信器
202 映像モニタ・スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像TS(Transport Stream)パケットを映像データにデコードするデコーダ装置であって、前記映像TSパケットとともに入力される放送字幕TSパケットをアンシラリ字幕データに変換することを特徴とするデコーダ装置。
【請求項2】
前記アンシラリ字幕データを前記映像データに多重化することを特徴とする請求項1に記載のデコーダ装置。
【請求項3】
映像データ、該映像データのアンシラリ領域に多重化された字幕データであるアンシラリ字幕データを少なくとも含む放送情報を、映像TS(Transport Stream)パケット、放送字幕TSパケットを少なくとも含むデジタル放送信号の形式で放送するデジタル放送システムにおいて、前記映像TSパケット、前記放送字幕TSパケットを少なくとも入力し、入力された前記映像TSパケットを映像データにデコードするとともに、入力された前記放送字幕TSパケットをアンシラリ字幕データに変換し、前記映像データのアンシラリ領域に多重化したアンシラリ字幕多重信号として出力するデコーダ装置を備えていることを特徴とするデジタル放送システム。
【請求項4】
前記デコーダ装置から出力される前記アンシラリ字幕多重信号に多重化されている前記アンシラリ字幕データを抽出した後、デコードして得られる字幕データを、前記アンシラリ字幕多重信号に重畳した放送字幕重畳信号として出力するアンシラリ字幕表示装置を備え、かつ、該放送字幕重畳信号を出力表示する映像モニタを備えていることを特徴とする請求項3に記載のデジタル放送システム。
【請求項5】
映像データ、該映像データのアンシラリ領域に多重化された字幕データであるアンシラリ字幕データを少なくとも含む放送情報を入力して、該放送情報のうち、前記映像データを圧縮符号化した後、映像TSパケットにエンコードするとともに、前記アンシラリ字幕データを、前記映像データに重畳する放送字幕データとして抽出した後、放送字幕TSパケットにエンコードし、前記映像TSパケットと多重化して、TSパケット信号として出力するエンコーダ装置を備えていることを特徴とする請求項3または4に記載のデジタル放送システム。
【請求項6】
前記エンコーダ装置の出力を前記デコーダ装置の入力に接続してなることを特徴とする請求項5に記載のデジタル放送システム。
【請求項7】
映像TS(Transport Stream)パケットを映像データにデコードするとともに、前記映像TSパケットとともに入力される放送字幕TSパケットをアンシラリ字幕データに変換することを特徴とするTSパケットデコード方法。
【請求項8】
前記アンシラリ字幕データを前記映像データに多重化することを特徴とする請求項7に記載のTSパケットデコード方法。
【請求項9】
映像データ、該映像データのアンシラリ領域に多重化された字幕データであるアンシラリ字幕データを少なくとも含む放送情報を、映像TS(Transport Stream)パケット、放送字幕TSパケットを少なくとも含むデジタル放送信号の形式で放送する際に、前記字幕データが正常に放送されているか否かを監視する放送字幕監視方法において、前記映像TSパケット、前記放送字幕TSパケットを少なくとも入力し、入力された前記映像TSパケットを映像データにデコードするとともに、入力された前記放送字幕TSパケットをアンシラリ字幕データに変換し、前記映像データのアンシラリ領域に多重化したアンシラリ字幕多重信号として出力し、該アンシラリ字幕多重信号が正常に表示されるか否かを監視する監視工程を有していることを特徴とする放送字幕監視方法。
【請求項10】
前記アンシラリ字幕多重信号に多重化されている前記アンシラリ字幕データを抽出した後、デコードして得られる字幕データを、前記アンシラリ字幕多重信号に重畳した放送字幕重畳信号に変換し、変換した該放送字幕重畳信号を映像モニタに出力表示することを特徴とする請求項9に記載の放送字幕監視方法。
【請求項11】
映像データ、該映像データのアンシラリ領域に多重化された字幕データであるアンシラリ字幕データを少なくとも含む放送情報を入力して、該放送情報のうち、前記映像データを圧縮符号化した後、映像TSパケットにエンコードするとともに、前記アンシラリ字幕データを、前記映像データに重畳する放送字幕データとして抽出した後、放送字幕TSパケットにエンコードし、前記映像TSパケットと多重化して、TSパケット信号として出力した直後に、前記監視工程により、前記放送字幕TSパケットが正常であるか否かを監視することを特徴とする請求項9または10に記載の放送字幕監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−206531(P2010−206531A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49797(P2009−49797)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】