説明

デザイン製作に用いられる記憶装置

【課題】設置場所の画像、設置場所の周辺情報を所定階層に記憶し、デザインの原画や加工条件を別の階層に記憶し、デザインの構成要素を算出できる機能によって、集積される現場の情報に基づいて、集約的にデザインを製作するのに用いられる記憶装置を提供する。
【解決手段】本発明の記憶装置100は、情報を受け取る入力手段111と、デザインが製作される設置領域の画像を記憶する第1記憶領域113と、設置領域の周辺情報を記憶する第2記憶領域114と、設置領域に用いられるデザインの複数の原画を記憶する第3記憶領域115と、画像、周辺情報および原画の少なくとも一つを、デザインの構成要素を算出する算出手段に、演算条件として出力する出力手段112と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デザインの設置場所および周辺情報、デザインの原画や素材の情報、加工条件などを階層毎に記憶でき、記憶している情報を演算手順に従って出力することで、屋外の設置場所に製作されるデザインの構成要素を演算するのに用いられる記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物や建造物の壁面におけるデザイン設置場所に、塗装を施したり看板やポスターを設置(すなわちデザインを施す)したりする際に、予めこれらの建物や建造物の壁面の面積が算出されていることが好ましい。壁面の面積が不明であると、どの程度の塗料や材料が必要となるのか、どの程度の面積の看板やポスターを設置できるのか不明であるからである。壁面の面積が予め分かっている場合には、塗装を施したり、看板やポスターを設置したりする工事の効率が向上する。
【0003】
特に、近年では、デザインを屋外に設置する場合に、設置場所の多様化やデザインに対する要求の多様化が生じている。このような多様化においては、デザインの製作スタッフが、設置現場においてデザインを製作することは効率が悪い。あるいは、設置現場の状況を把握しないままに、設置現場と離れた作業場で、デザインの製作スタッフがデザインを製作することも、設置主の要望に応えられない。
【0004】
また、設置場所に施すデザインの構成要素(最適な原画、面積、必要となる塗料量、コスト、色度、輝度など)を、早期に予測することは、設置場所にデザインを製作する場合に重要である。屋外の設置場所にデザインを製作する場合にデザインの構成要素が不明であると、作業中に必要な材料が不足したり、余分な材料が余ったりしてコスト面での問題が生じうる。あるいは、製作したデザインが、設置場所の周辺環境や方角によって、十分なデザイン効果を発揮できない問題も生じる。
【0005】
このように、屋外の設置場所にデザインを施す場合には、設置場所の面積、最適な原画、必要となる塗料量、コストなどのデザインの構成要素を、デザインを施す前に把握できることが重要である。特に、設置場所における測量などの大掛かりな作業によらずこれらの構成要素を予め推定できることが必要である。
【0006】
例えば、屋外の設置場所の面積を算出するには、危険な作業に基づいて実測を行うか、基準点測量やステレオカメラによる測量を行うのが一般的であった。
【0007】
しかしながら、実測による測量は、危険を伴う上に、対象となる領域が変更になってしまうと、改めて実測による測量作業を必要とする不便を有する。基準点測量やステレオカメラによる作業は、作業時間や作業工数が多くなる上に、測量対象となる建物や建造物を目視できる現場での作業しかできない。
【0008】
近年では、様々な場所における建物や建造物の種々の場所に、看板やポスターを設置したい事業者が数多い。これらの事業者は、設置する看板やポスターを決めてから壁面の面積の測量に入るよりも、壁面の面積に基づいて、設置する看板やポスターの種類を事後的に検討したい。事業者は、壁面における看板やポスターによる宣伝効果を高める工夫を追求するからである。
【0009】
このような看板やポスターを設置する事業者にとっては、設置現場以外で壁面における任意の領域を、事後的に測量したいことが多い。特に、種々の看板やポスターを設置できる面積を有する領域を、壁面の中で任意に探したい場合もある。
【0010】
このため、撮像装置で撮像された画像を用いて、建物や建造物の壁面を計測する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−147522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1は、複数の角度から撮像された画像に含まれる被写体の視差を、調整する技術を開示するだけである。
【0013】
このため、特許文献1は、被写体の面積を算出する技術を開示していない。また、特許文献1の標定基準体は、被写体の位置と面積を算出することに適用が難しい。特に、種々の角度から撮像された画像に含まれる標定基準体の任意の点を、高い精度で識別することが困難であり、事後的に撮像された画像を用いて、被写体の面積算出に必要となるデータを得ることが困難である。撮像された画像の角度や位置によっては、標定基準体の写り方が大きく異なって、標定基準体と被写体との関連性を得ることが難しいからである。
【0014】
また、従来技術は、被写体の面積を十分に算出できないだけでなく、設置場所に最適なデザインを製作するためのデザインの構成要素を算出することができない。この結果、設置場所において実際にデザインを製作する以前に、デザイン製作を効率化するための準備ができない問題がある。特に、デザインオフィスなどの設置場所と離隔した場所にてデザイン製作を効率化する準備が行えない問題がある。
【0015】
また、デザインを製作する際には、多くのデザイン設置場所の画像を撮影したり周辺情報を入手したりするフィールドエンジニアと、フィールドエンジニアが入手した画像や情報を基に、実際のデザインを製作する製作スタッフとの役割分担が発生することが多い。このような場合には、デザインを製作する製作装置やデザインの構成要素を演算する演算装置だけでなく、フィールドエンジニアの業務と製作スタッフの業務とを連携させる装置やシステムが必要となる。デザインの製作の用途や需要は多様であり、フィールドエンジニアが現場において最初から最後まで作業してデザインを製作することも、製作スタッフが設置現場と異なる作業場で最初から最後まで作業してデザインを製作することも、効率および製作されるデザインの最適化の点で不十分となるからである。
【0016】
このような必要性において、従来技術は、解決手段を提供していなかった。
【0017】
本発明は、上記課題に鑑み、設置場所の画像、設置場所の周辺情報を所定階層に記憶し、デザインの原画や加工条件を別の階層に記憶し、デザインの構成要素を算出できる機能によって、集積される現場の情報に基づいて、集約的にデザインを製作するのに用いられる記憶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題に鑑み、本発明の記憶装置は、情報を受け取る入力手段と、デザインが製作される設置領域の画像を記憶する第1記憶領域と、設置領域の周辺情報を記憶する第2記憶領域と、設置領域に用いられるデザインの複数の原画を記憶する第3記憶領域と、画像、周辺情報および原画の少なくとも一つを、デザインの構成要素を算出する算出手段に、演算条件として出力する出力手段と、を備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明の記憶装置は、フィールドエンジニアが収集するデザインの設置領域の画像や設置領域の周辺情報を集約的に記憶でき、所定の作業場において、製作スタッフが記憶されているこれらの情報に基づいて、集中的にデザインを製作できるようなデザイン製作のシステムを提供できる。
【0020】
また、本発明の記憶装置は、フィールドエンジニアの作業と製作スタッフの作業とを時間的および空間的に分離しつつも、設置領域の状況に最適化されたデザインを製作することができる。特に、フィールドエンジニアが情報端末を持って収集してきた情報を、本発明の記憶装置が集約的に記憶することで、製作スタッフによる集中的なデザイン製作を容易にできる。
【0021】
また、情報の種類および作業の実行フェーズに応じて、記憶装置は、階層に分けて情報を記憶できるので、製作スタッフは、優先度に応じてデザインを製作できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態1における製作されるデザインの設置場所を示す説明図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるデザイン製作手法を示す模式図である。
【図3】本発明の実施の形態1におけるデザイン製作装置の内部ブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態1における記憶装置のブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態1における記憶装置のブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態1における設置領域の模式図である。
【図7】本発明の実施の形態1における算出手段によって輝度を変化させられたデザインの模式図である。
【図8】本発明の実施の形態2における記憶装置のブロック図である。
【図9】本発明の実施の形態3におけるデザイン製作システムの概念図である。
【図10】本発明の実施の形態3における第1画像と第2画像との撮像を説明する模式図である。
【図11】実施の形態3における面積算出手段4の内部ブロック図である。
【図12】本発明の実施の形態3における第1画像と第2画像の写真例である。
【図13】本発明の実施の形態3における標識の正面図である。
【図14】本発明の実施の形態3における撮像装置の方向推定の模式図である。
【図15】本発明の実施の形態3における撮像装置と標識との距離の推定を説明する模式図である。
【図16】本発明の実施の形態3における特定点座標の推定を説明する写真である。
【図17】本発明の実施の形態3における特定点の3次元座標の推定を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の第1の発明に係る記憶装置は、情報を受け取る入力手段と、デザインが製作される設置領域の画像を記憶する第1記憶領域と、設置領域の周辺情報を記憶する第2記憶領域と、設置領域に用いられるデザインの複数の原画を記憶する第3記憶領域と、画像、周辺情報および原画の少なくとも一つを、デザインの構成要素を算出する算出手段に、演算条件として出力する出力手段と、を備える。
【0024】
この構成により、記憶装置は、デザインが設置される設置領域の情報を収集する作業と、設置領域に最適なデザインを製作する作業とを分離できる。更には、2つの作業を並列化できる。
【0025】
本発明の第2の発明に係る記憶装置では、第1の発明に加えて、周辺情報は、設置領域の位置、設置領域の周辺の建造物、設置領域の材質、設置領域の方角、設置領域の角度および設置領域の高さの少なくとも一つの情報を含む。
【0026】
この構成により、設置領域の周辺に最適なデザインが製作される。
【0027】
本発明の第3の発明に係る記憶装置では、第1又は第2の発明に加えて、構成要素は、複数の原画の内で設置領域に製作されるデザインとして選択される原画、設置領域に製作されるデザインに必要な塗料量、設置領域に製作されるデザインに必要なコスト、設置領域に製作されるデザインに適する輝度、設置領域に製作されるデザインに適する色度および設置領域に製作されるデザインの中の文字列の位置の少なくとも一つを含む。
【0028】
この構成により、記憶装置より得られた情報によって、設置領域に最適なデザインが製作される。
【0029】
本発明の第4の発明に係る記憶装置では、第1から第3のいずれかの発明に加えて、周辺情報および画像は、入力手段より得られる。
【0030】
この構成により、記憶装置は、記憶すべき種々の情報を効率的に得ることができる。
【0031】
本発明の第5の発明に係る記憶装置では、第1から第4のいずれかの発明に加えて、面積算出手段によって画像に基づいて算出された設置領域の面積を記憶する第4記憶領域を更に備える。
【0032】
本発明の第6の発明に係る記憶装置では、第1から第5のいずれかの発明に加えて、算出手段によって算出されたデザインの構成要素を記憶する第5記憶領域を更に備える。
【0033】
これらの構成により、記憶装置は、算出される情報を効率的に記憶できる。
【0034】
本発明の第7の発明に係る記憶装置では、第1から第6のいずれかの発明に加えて、第1記憶領域、第2記憶領域、第3記憶領域、第4記憶領域および第5記憶領域のそれぞれは、異なるアドレス領域に区分され、第1記憶領域、第2記憶領域および第3記憶領域は、アドレス領域における第1階層に位置し、第4記憶領域および第5記憶領域は、アドレス領域における第2階層に位置する。
【0035】
この構成により、記憶装置は、デザイン製作に用いられる情報とデザイン製作後の結果とを異なる階層に独立して記憶できる。結果として、情報の上書きや衝突を防止できる。
【0036】
本発明の第8の発明に係る記憶装置では、第1から第7のいずれかの発明に加えて、入力手段は、画像および周辺情報の少なくとも一方を取得する携帯端末からの情報を受信可能である。
【0037】
この構成により、記憶装置は、種々の情報を、容易に受け取り可能である。
【0038】
本発明の第9の発明に係る記憶装置では、第6の発明に加えて、算出手段は、複数の原画の内で設置領域に製作されるデザインとしての原画の選択、設置領域に製作されるデザインに必要な塗料量の算出、設置領域に製作されるデザインに必要なコストの算出、設置領域に製作されるデザインに適する輝度の算出、設置領域に製作されるデザインに適する色度の算出および設置領域に製作されるデザインの中の文字列の位置の決定の少なくとも一つを行う。
【0039】
この構成により、設置領域に製作されるデザインは、設置領域の周辺環境に最適化されたデザインとして製作される。
【0040】
本発明の第10の発明に係る記憶装置では、第9の発明に加えて、算出手段は、算出手段から算出された構成要素に基づくデザイン見本およびデザイン画の少なくとも一方を出力する。
【0041】
この構成により、製作者の便益が高まる。
【0042】
本発明の第11の発明に係る記憶装置では、第10の発明に加えて、デザイン見本およびデザイン画の少なくとも一方を記憶する第6記憶領域を更に備える。
【0043】
この構成により、記憶装置は、製作されたデザインを記憶して、製作者の便益を高める。
【0044】
本発明の第12の発明に係る記憶装置では、第6から第11のいずれかの発明に加えて、画像は、第1撮像装置により撮像された設置領域と標識とを含む第1画像と、第1撮像装置と異なる角度から第2撮像装置により撮像された設置領域と標識とを含む第2画像を有し、面積算出手段は、第1撮像装置の第1位置の3次元座標の値と、第2撮像装置の第2位置の3次元座標の値とを推定する撮像装置座標推定部と、第1位置および第2位置に基づいて、設置領域に含まれる複数の特定点のそれぞれの3次元座標の値を推定する特定点座標推定部と、複数の特定点のそれぞれの3次元座標の値に基づいて、設置領域の面積を算出する算出部と、を備え、標識は、3以上のポインタを備える2次元形状を有する。
【0045】
この構成により、面積算出手段は、標識を含む設置領域の画像のみで、設置領域の面積を算出できる。
【0046】
本発明の第13の発明に係る記憶装置では、第12の発明に加えて、標識は、相互に色度が異なると共に略球形を有する3つのポインタを頂点とする3角形を有する。
【0047】
この構成により、画像において標識が容易に識別される。結果として面積算出の精度が高まる。
【0048】
本発明の第14の発明に係る記憶装置では、第12又は第13の発明に加えて、撮像装置座標推定部は、第1画像に含まれる標識の傾きに基づいて、第1撮像装置の標識に対する方向を第1方向として推定し、第1画像に含まれる標識の面積に基づいて、第1撮像装置と標識との距離を第1距離として推定し、第2画像に含まれる標識の傾きに基づいて、第2撮像装置の標識に対する方向を第2方向として推定し、第2画像に含まれる標識の面積に基づいて、第2撮像装置と標識との距離を第2距離として推定し、第1方向および第1距離に基づいて、第1位置を推定し、第2方向および第2距離に基づいて、第2位置を推定する。
【0049】
この構成により、面積算出手段は、設置領域の画像だけで、その面積を算出できる。
【0050】
本発明の第15の発明に係る記憶装置では、第12から第14のいずれかの発明に加えて、第1位置から得られる特定点の3次元座標の値である第1特定座標と、第2位置から得られる特定点の3次元座標の値である第2特定座標と、が一致しない場合には、特定点座標推定部は、第1特定座標および第2特定座標から、特定点の3次元座標の値を近似する。
【0051】
この構成により、面積算出の精度が維持される。
【0052】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態について説明する。
【0053】
(実施の形態1)
【0054】
実施の形態1について説明する。
(デザイン製作の状態)
【0055】
まずは、デザイン製作の状態について、図1を用いて説明する。
【0056】
図1は、本発明の実施の形態1における製作されるデザインの設置場所を示す説明図である。
【0057】
図1に示されるように、屋外の建造物2A、2Bには、宣伝広告用のポスター、デザイン画、看板や旗などが設置されることがある。近年では、LEDなどを用いた画像による看板も増えているが、従来どおり塗料の塗布による画面やポスターによる画面が設置されるケースも多い。このようなポスター、デザイン画、看板や旗などのデザインは、屋外の建造物2A、2Bに設置されて屋外を行き交う通行人や自動車の運転者から視認されうる。このため、屋外の建造物2A、2Bに設置されるデザインは、設置場所の周辺環境によっては、通行人や自動車から見えにくかったり分かりにくかったりすることもある。
【0058】
例えば、図1においては、建造物2Aの屋上にデザインの設置領域1が設けられ、この設置領域1に看板1Aが設置される。建造物2Aが高い建物である場合には、地上の道路を行き交う通行人にとって、看板1Aを見にくい場合がある。あるいは、看板1Aの仰角、看板1Aの周囲の建物との位置関係、看板1Aの方角(西日が当たるのか、日中の陽射しが当たるのかなど)などによって、通行人が、看板1Aを見にくい場合もある。
【0059】
また、図1においては、建造物2Bの壁面にデザインの設置領域1が設けられ、この設置領域1にポスター1Bが設置される。ポスター1Bは、壁面に垂れ下がるように設置されるので、建造物2Bの壁面の角度に沿って設置される。この場合には、隣接する建造物2Aの影による影響で見にくくなったり、看板1Aと同じくポスター1Bの方角によって見にくくなったりする場合もある。
【0060】
このように、周辺環境の影響によって、設置領域1に設置されるデザインが見えにくい場合が生じる。このように、通行人や自動車から見えにくいデザインは、折角の屋外に設置される情報発信の役割を果たすことができない。このように情報発信の役割を果たすことができないデザインは、その製作コストと効果とのバランスが不十分である。
【0061】
一方で、設置領域1にデザインを実際に製作する段階では、選択されたデザインを製作することだけに注力されるので、設置領域1の周辺環境に応じたデザインの構成要素の変更などは困難である。例えば、陽射しの関係上、デザインの輝度を向上させてより目立たせる必要がある設置領域1であることなどを、設置領域1の現場での製作の際には判断して作業することは難しい。もちろん、デザインの原画の選択も、周辺環境や設置領域1の面積などに依存するが、実際に製作作業を現場で始めた後では、原画の選択の余地が無い問題もある。
【0062】
加えて、塗料が不要に余ったり、足りなかったりなどの問題も生じうるので、製作における効率性が低くなることも生じうる。
【0063】
図1に示されるように、屋外に設置されるデザインは、周辺環境によって様々な影響を受ける。実施の形態1におけるデザイン製作装置は、このような設置領域1および周辺環境における問題を事前に解決した上で、設置領域およびその周辺環境に最適なデザインを作成できる。
【0064】
また、図1に示されるように、デザインが設置される設置領域1は、ビルの屋上だったりビルの壁面であったりと様々である。また複数のデザインの設置領域1の候補があるが、実際にいずれの設置領域1が採用されるかは分からないことが多い。同じビルの壁面であっても、ビルの上の方が採用されることもありえるし、ビルの下の方が採用されることもありうる。複数の設置領域1のいずれが採用されるかによって、実際に設置されるデザインの見え方が大きく変化することも多々ある。
【0065】
このように、屋外の設置領域1は、様々な場所にあり実際にデザインを設置してみない限り、デザインの見え方や見え方に基づく効果を予測しにくい。一方で、デザイン製作スタッフが設置領域1の現場で、現場情報の確認およびデザインの製作や決定を同時に行うことは、製作効率が著しく悪い。コストも上昇する。設置領域1そのものに関する情報(設置領域1の面積)および設置領域1の周辺情報を把握しておくことで、デザイン製作用のオフィスや作業所で、デザイン製作を集中的に行うことが効率化、低コスト化の点で適当である。デザインの設置領域1そのものの情報と周辺情報とを備えておけば、原画や発注主の希望と合わせて、製作オフィスで集中的な製作作業ができるからである。
【0066】
このようなデザイン製作においては、候補として挙げられうる複数の設置領域1の情報を収集する処理と、収集された情報に基づいて実際のデザインを製作する処理とが、異なる作業者によって行われることが効率的である。更に、この異なる作業者による異なる作業を接続する仕組みが必要である。実施の形態1における記憶装置は、この異なる作業者による異なる作業を接続する。
【0067】
図2は、本発明の実施の形態1におけるデザイン製作手法を示す模式図である。図2は、フィールドエンジニアが設置領域1の画像や周辺情報を収集する処理と、収集された画像や周辺情報に基づいて製作スタッフがデザインを製作する処理と、これら2つの処理を接続する記憶装置100とを示している。
【0068】
フィールドエンジニアは、例えば携帯端末16を持って、複数の設置領域1の画像を撮像したり周辺情報を収集したりする。建造物2の周辺の画像を撮像したり、周辺情報を所定の入力方式で入力することで周辺情報を収集したりする。携帯端末16は、撮像機能や入力機能を備えており、撮像した画像や入力された周辺情報を、通信機能(無線通信、有線通信)によって記憶装置100に出力する。設置領域1は、複数の建造物に備えられており、屋外において多数存在する。
【0069】
また、実際にデザインを設置することが決まってはいないが、実際のデザイン製作を行う場所を決定するために、設置領域1の候補に関する情報を多く集める必要がある場合がある。このような場合には、フィールドエンジニアは、様々な場所であって多くの場所における設置領域1の候補の画像や情報を収集する必要を有する。この場合には、フィールドエンジニアは、携帯端末を持参した上で、デザインを設置する可能性のある場所の画像や周辺情報を収集する。収集された情報は、携帯端末16が備える通信機能によって、記憶装置100に記憶される。この記憶装置100によって、フィールドエンジニアが収集した設置領域1の画像や周辺情報を、デザインを実際に製作する製作スタッフ(あるいはデザイン製作装置)が利用できるようになる。
【0070】
製作スタッフは、デザイン製作装置3の使用によってデザインを製作する。このとき、デザイン製作装置3は、記憶部100から必要となる設置領域1の画像や周辺情報を、記憶装置100から得ることができる。デザイン製作装置3やデザイン製作スタッフは、実際の設置現場とは異なる場所でデザインを製作する。このため、記憶装置100が、フィールドエンジニアの作業とデザイン製作装置3の作業とを接続できる。
【0071】
すなわち、屋外の様々な設置領域1におけるデザインを製作するデザイン製作システムは、設置領域1に関する情報を収集する処理と、デザインを製作するデザイン製作装置3と、収集する処理とデザイン製作装置3とを有機的に接続する記憶装置100によって実現される。
【0072】
デザイン製作装置3は、記憶部100から設置領域1の画像や周辺情報を読み出すことで、設置領域1に製作されるデザインの構成要素やデザイン見本を製作できる。
【0073】
デザイン製作装置3は、記憶部100から必要な情報を読み出す読み出し部5、読み出し部5から得られる設置領域1の画像に基づいて設置領域1の面積を算出する面積算出手段4、面積算出手段4で算出される面積および読み出し部5が読み出す周辺情報に基づいてデザインの構成要素を算出する算出手段7と、を備える。これらの機能によって、デザイン製作装置3は、設置現場と離れた所定の作業場において、デザインを製作できる。このとき、デザイン製作装置3は、設置領域1の画像と周辺情報だけで、設置領域1の面積を算出できると共に周辺状況にも合わせた最適なデザインを製作できる。これは、記憶装置100によって、種々の設置領域1の画像や周辺情報を、デザイン製作装置3が得ることができるからである。
【0074】
このように、記憶装置100によって、設置領域1の情報を得る処理とデザインを製作する処理とが有機的に接続される。
【0075】
記憶装置100は、このような有機的接続のために、携帯端末16を通じて収集される各種情報を分類して記憶する。
【0076】
図4は、本発明の実施の形態1における記憶装置のブロック図である。図4は、記憶装置100の内部の構成を示している。
【0077】
記憶装置100は、入力手段111、第1記憶領域113、第2記憶領域114、第3記憶領域115、出力手段112と、を備える。入力手段111は、携帯端末16の通信機能などによって送信される情報を受け取る。すなわち、入力手段111は、設置領域1の画像および周辺情報を受け取る。また、デザイン製作スタッフによって用意されるデザインの原画を受け取る。
【0078】
記憶装置100は、半導体メモリ、ハードディスクドライブ、光ディスク、磁気ディスク、光メモリ、磁気メモリなど、電気信号によってデータを記憶できる種々のメモリ装置を備える。例えば、DRAMやSRAMといったメモリ装置を備えても良い。これらのメモリ装置は、データを記憶する領域を決めるためのアドレス空間を有しており、第1記憶領域113、第2記憶領域114、第3記憶領域115は、このアドレス空間によって区別される空間である。第1記憶領域113〜第3記憶領域115のそれぞれは、記憶する情報の種類が異なり、記憶における役割分担を行っている。
【0079】
第1記憶領域113は、デザインが製作される設置領域1の画像を記憶する。第2記憶領域114は、設置領域1の周辺情報を記憶する。第3記憶領域115は、設置領域1に用いられるデザインの複数の原画を記憶する。また、出力手段112は、第1記憶領域113に記憶される画像、第2記憶領域114に記憶される周辺情報および第3記憶領域115に記憶される原画の少なくとも一つを、デザインの構成要素の演算条件として、デザイン製作装置3に出力する。
【0080】
このとき、第1記憶領域113に記憶されている画像は、デザイン製作装置3の面積算出手段4に用いられることになり、設置領域1の面積が算出される。第2記憶領域114に記憶されている周辺情報によって、第3記憶領域115から得られる複数の原画から特定の原画が選択されたり、デザインの輝度や色度といった構成要素が算出されたりする。このように、デザインの製作に必要となる種々の情報が区分して記憶されていることで、デザインの製作が容易になる。
【0081】
ここで、第2記憶領域114が記憶する周辺情報は、設置領域1の位置、設置領域1の周辺の建造物、設置領域1の材質、設置領域1の方角、設置領域1の角度および設置領域1の高さの少なくとも一つの情報を含む。算出手段7は、これらの情報を活用して、設置領域1に最適なデザインの構成要素を算出する。
【0082】
デザインの構成要素は、複数の原画の内で設置領域1に製作されるデザインに選択される原画、設置領域1に製作されるデザインに必要な塗料量、設置領域1に製作されるデザインに必要なコスト、設置領域1に製作されるデザインに適する輝度、設置領域1に製作されるデザインに適する色度および設置領域1に製作されるデザインの中の文字列の位置の少なくとも一つを含む。
【0083】
このような周辺情報を考慮したデザインの構成要素が算出されることで、実際の設置領域1や周辺環境に最適化された輝度や色度のデザインが製作される。この結果、設置後に高い効果を得るデザインが製作される。
【0084】
記憶装置100は、フィールドエンジニアによって携帯端末16等を通じて送信された設置領域1の画像、周辺情報、および予め記憶されるデザインの原画を、それぞれ区分された領域に記憶する。この記憶する各情報を、設置領域1の面積を算出したりデザインの構成要素を算出したりするデザイン製作装置3に出力する。これらの流れによって、デザインの実際の製作と、デザイン製作に必要な情報の収集とを独立した作業に切り分けることができ、必要に合わせて接続できる。
【0085】
また、記憶装置100は、収集した情報を記憶する場合と情報をデザイン製作装置3に出力する場合とにおいて、記憶する情報を区別した記憶領域に記憶することで、記憶装置100は、情報提供を高速にでき、デザイン製作の精度や効率を向上させることができる。
【0086】
加えて、設置領域1に関する情報を収集する処理とデザインを製作する処理とが並列に行われることで、デザインの製作コストが低減できる。
【0087】
次に各部の詳細について説明する。
【0088】
(記憶装置)
記憶装置100は、設置領域1に関する情報を収集する処理とデザインを製作する処理とを並列化すると共に二つの処理を有機的に接続する。
【0089】
記憶装置100は、ハードディスクドライブ、光ディスク、磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、USBメモリ、半導体メモリ、光メモリ、磁気メモリなど、データを電気信号として記憶できる種々の記憶可能なデバイスを含む。例えば、DRAMやSRAMといったメモリ装置を備えても良い。これらのメモリ装置は、アドレス空間を有しており、第1記憶領域113、第2記憶領域114および第3記憶領域115のそれぞれは、このアドレス空間を区分した領域である。
【0090】
入力手段111は、フィールドエンジニアが所持する携帯端末16からの情報を受信可能であることによって、設置領域1の画像や周辺情報を受け取ることができる。入力手段111は、例えば、USBコネクタ、無線コネクタ、優先コネクタ、ネットワークケーブル、IASバスなどの電気信号を接続できるコネクタを有する。更に、このコネクタを介して電気信号をやり取りできる制御部を有する。この要素を備えることによって、入力手段111は、必要な情報を受け取ることができる。
【0091】
また、出力手段112は、第1記憶領域113〜第3記憶領域115に記憶されている情報を、デザイン製作装置3に出力する。この際には、入力手段111と同様に、電気信号を接続できるコネクタと電気信号を制御する制御部とを備えていればよい。また、出力手段112は、入力手段111と一体でもよい。
【0092】
例えば、記憶装置100が、汎用のパーソナルコンピュータや演算装置で実現される場合には、入力手段111および出力手段112は、パーソナルコンピュータや演算装置に設けられるデータの読み書き部で実現される。また第1記憶領域113〜第3記憶領域115は、パーソナルコンピュータや演算装置に設けられるハードディスクドライブや内部メモリで実現される。更には、記憶装置100は、デザイン製作装置3と共にパーソナルコンピュータや演算装置によって実現されることもある。この場合には、パーソナルコンピュータや演算装置が備えるハードディスクドライブや内部メモリで記憶装置100が実現され、CPUで実行される機能によってデザイン製作装置3が実現される。
【0093】
記憶装置100は、データを記憶できる記憶領域を、アドレスごとに区分しており(複数のバンクを有する)、区分したアドレス空間のそれぞれに第1記憶領域113、第2記憶領域114、第3記憶領域115を割り当てる。この結果、デザイン製作装置3にとって必要な要素を、区分された記憶空間に区分して記憶することができる。このため、デザイン製作装置3にとって、データの読み出しが容易となる。
【0094】
なお、第1記憶領域113、第2記憶領域114および第3記憶領域115のそれぞれの一部同士が同じアドレス空間で重複していても良い。また、第1記憶領域113に記憶されるある設置領域1の画像と、第2記憶領域114に記憶されるこの設置領域1の周辺情報と、第3記憶領域115に記憶されるこの設置領域1に用いられる原画とのそれぞれが、アドレスによって関連付けられるように、それぞれの記憶領域における共通アドレス位置に記憶されることも好適である。
【0095】
例えば、第1記憶領域113のアドレス「1000番地」に所定の設置領域1の画像が記憶され、第2記憶領域114のアドレス「1000番地」にこの設置領域1の周辺情報が記憶され、第3記憶領域115のアドレス「1000番地」にこの設置領域1に対応する原画が記憶されている。デザイン製作装置3は、この設置領域1に設置されるデザインの構成要素を算出するに際しては、第1記憶領域113〜第3記憶領域115のそれぞれの「1000番地」を参照すればよいので、誤った算出がなされない。記憶装置100が、必要に応じて更なる記憶領域を備える場合にも同様である。関連する情報を関連するアドレスに割り当てて記憶することで、記憶装置100は、収集された情報の整理および活用を容易にでき、フィールド作業と製作作業との有機的な接続を確立させる。
【0096】
(デザイン製作装置)
【0097】
記憶装置100に記憶される情報によって、デザイン製作装置3は、設置領域1に設置されるデザインの構成要素を算出する。
【0098】
デザイン製作装置3は、図3に示されるとおり、読み出し部5、面積算出手段4、出力部6、算出手段7を備える。読み出し部5は、記憶装置100に記憶されている設置領域1の画像、周辺情報および原画の少なくとも一つを必要に応じて読み出す。面積算出手段4は、読み出された設置領域1の画像から、設置領域1の面積を算出する。算出手段7は、周辺情報などに基づいて、設置領域1に製作されるデザインの構成要素を算出する。出力部6は、面積算出手段4で算出された面積および算出手段7で算出されたデザインの構成要素を出力する(このとき、これらの算出される値の中間値を出力しても良い)。
【0099】
図3は、本発明の実施の形態1におけるデザイン製作装置の内部ブロック図である。
【0100】
デザイン製作装置3は、これらの要素を備えることで、設置領域1が存在する屋外の現場での手間が掛かったり危険を伴ったりする作業を排除した上で、設置現場と離れた作業場所において集中的にデザインに必要な構成要素を算出し決定できる。現場と離れた作業場所においてデザインに必要な構成要素を決定できることで、デザイン製作の精度を向上させることができ、加えて製作後の不具合を未然に防止でき、更には製作コストを低減できる。
【0101】
また、デザイン製作装置3は、フィールドエンジニアによって収集された設置領域1に関する情報を、記憶装置100から得るだけで設置領域1に製作されるデザインの構成要素を算出できる。すなわち、デザイン製作装置3は、デザイン製作を集中的に行うことができる。
【0102】
設置領域1は、図1に示されるように、建造物の屋上や壁面に設けられる領域であり、設置領域1として形成される枠や壁面に設けられた一定の範囲である。この設置領域1に製作されたポスターや看板が設置される。あるいは、この設置領域1において、ポスターや看板の製作が行われる。
【0103】
(面積算出手段)
面積算出手段4は、この設置領域1の面積を算出する。設置領域1に、ポスターや看板などのデザインが製作されるので、設置領域1の面積が必要となるからである。製作されるデザインの見た目、必要となる塗料量、バランスなどの最適化においては、実際の設置領域1の面積が算出される必要があるからである。設置領域1は、方形である場合もあるが、円形であったり、多角形であったりすることもあるので、面積を算出することは、実際にデザインを製作するに当たっては重要である。
【0104】
面積算出手段4は、設置領域1の画像を用いた種々の手法によって、設置領域1の面積を算出する。このとき、面積算出手段4は、設置領域1の全体の面積を算出しても良いし、設置領域1の一部の面積を算出しても良い。例えば、設置領域1の一部にのみデザインが設置され、それ以外の部分にデザインと別の素材が設置される場合には、面積算出手段4は、この設置領域1のデザインが設置される一部の面積のみを算出する。
【0105】
面積算出手段4は、設置領域1の撮像画像に基づいて設置領域1の面積を算出する。設置領域1の撮像画像によって、設置領域に含まれる特定点の3次元座標が推定されるので、設置領域1の面積を算出できる。
【0106】
面積算出手段4は、このように設置領域1の画像における(特に、その外周に位置する)複数の特定点の3次元座標によって、設置領域1の面積を算出する。面積算出手段4は、算出した面積を、算出手段7に出力する(あるいは、算出手段7が、面積算出手段4が算出した面積を読み出す)。
【0107】
また、面積算出手段4が算出した設置領域1の面積を記憶する第4記憶領域を、記憶装置100は更に備えても良い。すなわち、面積算出手段4は、算出した面積の値を、出力部6を介して記憶装置100に出力し、記憶装置100が備える第4記憶領域がこの面積の値を記憶する。
【0108】
図5は、本発明の実施の形態1における記憶装置のブロック図である。図5に示される記憶装置100は、第1記憶領域113〜第3記憶領域115に加えて、第4記憶領域116、第5記憶領域117を備えている。第4記憶領域116および第5記憶領域117は、他の記憶領域と同様に、アドレス空間によって区分されている。第4記憶領域116は、面積算出手段4によって算出された面積の値を記憶する。算出された設置領域1の面積が記憶装置100に記憶されることで、事後的に新たなデザインを製作する際に流用できる。また、他の記憶領域と異なるアドレス空間である第4記憶領域116に面積が記憶されることで、面積の値を読み出す際の読み出しエラーを生じさせない。
【0109】
また、面積算出手段4は、算出した面積の値を算出手段7にも出力し、算出手段7における演算の用に供する。あるいは、算出手段7は、記憶装置100の第4記憶領域116から面積の値を読み出した上で、デザインの構成要素を算出する。この場合には、面積算出手段4における演算と算出手段7における演算とを不連続かつ並列にできるので、デザイン製作の作業効率を上げることができる。
【0110】
このように、面積算出手段4が算出した面積の値は、算出手段7において利用可能となるように、第4記憶領域116において記憶される(もちろん、平行して算出手段7に出力されても良い)。
【0111】
面積算出手段4は、デザイン製作装置1の製作しようとする対象の設置領域の面積を、デザイン製作の都度、算出しても良いし、予め用意されている複数の設置領域のそれぞれについて面積を算出しておくことでも良い。後者の場合には、算出された面積は、第4記憶領域116に記憶されればよい。
【0112】
図3には示していないが、デザイン製作装置3は、読み出した情報を記憶する記憶部を備えていても良い。この記憶部は、読み出し部5が記憶装置100から読み出した各種情報を一時的に記憶する。すなわち、面積算出手段4や算出手段7が演算処理を実行するのに必要なデータを記憶することで、演算処理を可能とする。
【0113】
(算出手段)
【0114】
算出手段7は、設置領域1の面積、設置領域1の画像および周辺情報の少なくとも一つに基づいてデザインの構成要素を算出する。設置領域1の面積は、面積算出手段4から得ることもできるし、記憶装置100内部の第4記憶領域116から得ることもできる。記憶装置100から得る場合には、読み出し部5が、面積の値を読み出す。
【0115】
同様に、読み出し部5は、記憶装置100(第3記憶領域115)からデザインの複数の原画を読み出す。この原画は、例えば、デザイナーが作成した原画であったり、予め用意されている画像要素や画像要素の組み合わせであったりする。読み出された原画の情報は、算出手段7に利用される。更には、読み出し部5は、第2記憶領域114から周辺情報を読み出す。
【0116】
算出手段7は、面積算出手段4で算出された設置領域1の面積、周辺情報および原画の少なくとも1つに基づいて、デザインに必要な構成要素を算出する。デザインに必要な構成要素とは、実際に製作されるデザインに用いられる看板やポスターといった最終結果物でもよいし、デザインに必要となる要素であってもよい。例えば、構成要素は、複数の原画から製作されるデザインとして選択される原画、設置領域1に製作されるデザインに必要な塗料量、設置領域1に製作されるデザインに必要なコスト、設置領域1に製作されるデザインに適する輝度、設置領域1に製作されるデザインに適する色度および設置領域1に製作されるデザイン中の文字列の位置の少なくとも一つを含む。
【0117】
特に、算出手段7は、設置領域1の周辺情報を考慮してデザインの構成要素を算出することで、設置後においても設置環境に適した効果を発揮できるデザインを製作できる。周辺情報は、更に、設置領域1の周辺の建造物の高さ、構造、形状、設置領域1と周辺の建造物との位置関係などの情報を含んでも良い。更には、周辺情報は、設置領域1の平均的な天気、平均気温、平均照度、平均日照時間などの気候に関する情報や、設置領域1周辺の地図情報、設置領域1周辺の人口動向などの情報を含んでいても良い。周辺情報は、設置領域1に製作されて設置される最適なデザインの選択の精度を上げる役割を有するからである。
【0118】
設置領域1は、デザイン製作を依頼する企業や個人の要望に応じて、様々な場所に位置する。ビルやマンションの屋上であったり、ビルの上に立つ看板用フレームであったり、道路上であったり、バス停や駅の広告板であったりする。一方、デザインを製作する製作者は、依頼者によるデザインの目的(会社の宣伝、顧客へのお知らせなど)に合わせて、絵柄としてのデザインを製作するだけであることがほとんどであった。
【0119】
すなわち、製作者が製作するデザインは、依頼者の直接的な目的には対応するが、実際の設置場所1における設置後の効果については確認されていなかった。
【0120】
一方で、設置場所1の周辺環境は、設置後のデザインがその目的を発揮できるか否かに大きな影響を与える。例えば、設置領域1の周囲に多数の建造物がある場合には、設置領域1には、多くの情報を詰め込んだデザインは不適切である。このため、設置領域1の周囲に多数の建造物がある場合には、設置領域1には、単純であるが重要なポイントに絞り込んだ情報を備えるデザインが適している。
【0121】
周辺情報を用いることの無いデザイン製作では、このような設置場所に応じたデザインが選択されない問題がある。もちろん、デザインを製作する製作者が現場の情報を確認しながら製作すれば問題はないが、製作者が現場の確認をしながらの製作は手間とコストがかかる。更には、製作者のノウハウやスキルに依存してデザインが製作されることになるので、一定の水準を保ったデザインの製作の維持が困難となる問題がる。
【0122】
一方、算出手段7は、周辺情報をも活用してデザインの構成要素を決定するので、製作されるデザインは、周辺情報による影響を考慮したものとなる。加えて、周辺情報は、記憶装置100に記憶されているので、製作者が設置現場に出向く必要もない。また、算出手段7が、デザインの原画などと合わせて周辺情報を活用してデザインの構成要素を決定するので、製作者の個人的スキルに依存したばらつきも防止できる。
【0123】
算出手段7は、記憶装置100の第2記憶領域114に記憶されている周辺情報を活用して、設置現場に適したデザインやデザインの構成要素を算出できる。
【0124】
(原画の選択)
【0125】
算出手段7は、周辺情報も考慮しながら、複数の原画から最終的に使用する原画を選択する。例えば、ある設置領域1に、飲食店の広告看板を製作する必要がある場合に、飲食店の外観、飲食店の店主、飲食店のメニュー、飲食店の地図、飲食店の代表料理、など、多くの原画の選択肢が存在する。このような複数の選択肢から、いずれの原画を選択するのが適当であるかは、設置領域1の周辺環境に依存することも多い。
【0126】
例えば、設置領域1が当該飲食店のある繁華街の中である場合には、設置領域1に選択される原画としては、飲食店の外観や地図などが適している。飲食店の近辺にいる通行人に宣伝する上では、飲食店に到達可能な情報を提供することが、デザインとしては最適だからである。
【0127】
逆に、設置領域1が当該飲食店のある繁華街より離れた場所に位置する場合には、設置領域1に選択される原画としては、飲食店のメニューや代表料理の原画が適している。飲食店に対する興味を通行人に持たせる点で、デザインとしては最適だからである。
【0128】
また、周辺情報に基づいて、設置領域1への日当たりが強いと思われる場所においては輝度を抑えたデザインが好ましい。一方で、原画の種類によっては輝度を抑えることが難しい場合もある。例えば、代表料理の写真をベースとした原画の場合には、輝度を抑えることが難しい。このような周辺情報がある場合には、デザイン製作装置3は、複数の原画から、代表料理の写真を含む原画を選択しないことが好ましい。
【0129】
このように、算出手段7は、設置領域1に適用するデザインに用いられる原画を、周辺情報も考慮することで、最適な原画を選択できる。
【0130】
(構成要素の算出例)
また、算出手段7は、デザインの原画以外に、デザインの構成要素を算出したり決定したりする。ここで、算出とは、所定の閾値や演算処理によって、輝度や色度等のように値で定まる構成要素については、その値を算出することであり、複数の原画からある原画を選択する場合には、原画を選択することであり、文字列の位置を決める必要がある場合には、文字列の位置を決定することであり、最終的なデザインを製作する場合には、デザインを決定(製作)することである。
【0131】
このため、算出手段7は、専用のハードウェアや専用のLSIを備えても良い。あるいは、汎用プロセッサによって実行されるソフトウェアを備えても良い。例えば、デザイン製作装置3が、汎用のパーソナルコンピュータで実現される場合には、パーソナルコンピュータが備えるCPUが算出手段7の機能を発揮してもよい。CPUがメモリ(キャッシュメモリや外部メモリを含む)に記憶されたプログラムを読み出して、所定の手順を実行する。所定の手順は、(1)面積算出手段4から設置領域1の面積値を読み出し、(2)第2記憶領域114から周辺情報を読み出し、(3)第3記憶領域115から原画を読み出し、(4−1)面積値と周辺情報に基づいてデザインに適した原画を選択し、(4−2)面積値と原画とに基づいて、デザインに必要なコスト等を算出し、(4−3)周辺情報と原画とに基づいて、デザインの輝度や色度を算出し、(4−4)周辺情報と原画とに基づいて、デザインの中の文字列の位置を決定する、ステップを含む。もちろん、これ等以外のステップを含んでも良い。
【0132】
ステップの(4−1)〜(4−4)のそれぞれにおいては、算出や選択における基準値を、算出手段7が有していることも好適である。更には、基準値に基づく判定の詳細手順を備えていることも好適である。
(例1)
【0133】
算出手段7は、設置領域1の方角および角度の少なくとも一つに基づいて、設置領域1に製作されるデザインに適する輝度および色度の少なくとも一方を算出する。
【0134】
例えば、設置領域1が、建造物の屋上の看板である場合に、この看板が下方に向けて傾いている場合には、設置領域1に対しては自然光や照明が当たりにくい。この場合には、設置領域1に設置されるデザインの輝度は高いことが見易さの点で好ましい。また設置領域1に自然光や照明が当たりやすい角度である場合には、デザインの輝度は低いことが見易さの点で好ましい。また、設置領域1の方角が西日を受ける角度である場合には、見易さを確保するために、設置領域1に製作されるデザインの色度は濃いことが好適である。算出手段7は、周辺情報に基づいて、これら設置現場に即した輝度や色度を算出できる。
【0135】
もちろん、算出手段7は、設置領域1の周辺の建造物や他の看板などとの関係から、設置領域1に製作されるデザインの輝度や色度を決定しても良い。例えば、設置領域1の周辺に色味の弱い建造物や看板しかない場合には、設置領域1のデザインの色度を濃くしたり、明るい色度を選択したりすることも好適である。当然ながら輝度についても同様である。
【0136】
(例2)
【0137】
算出手段7は、設置領域1の周辺の建造物および設置領域1の高さの少なくとも一つに基づいて、設置領域1に製作されるデザインの中の文字列の位置を決定する。
【0138】
図6は、本発明の実施の形態1における設置領域の模式図である。図6では、複数の建造物が隣接して立地している。
【0139】
建造物2Cは、その屋上に看板としての設置領域1Cを備え、設置領域1Cには、デザイン10Cが製作される。デザイン10Cが、設置領域1Cにおいて製作された上で、デザイン1Cは、通行人や運転者に情報を発信する。
【0140】
ここで、建造物2Cは、非常に高さが高い。このような高さの高い建造物2Cの屋上に位置する設置領域1Cは、その高さが高いことになる。デザイン10Cに含まれる文字列101Cは、通行人や運転者に所定の情報を伝達する役割を有する。図6においては、デザイン10Cに係る店舗や会社の電話番号を、文字列101Cは示している。ここで、設置領域1Cはその高さが高いため、デザイン10Cに含まれる文字列101Cが高い位置にあると、道路を通行する通行人や運転者からは見えづらくなる。
【0141】
このため、算出手段7は、設置領域1Cの高さが所定値以上である場合には、デザイン10Cに含まれる文字列101Cの位置を低い位置に決定する。図6では、文字列101Cは、デザイン10Cの下に位置するように決定されている。文字列101Cがデザイン10Cの下に位置することで、高い建造物1Cの屋上に設置されるデザイン10Cが伝えようとする情報を、通行人や運転者は確実に確認できるようになる。
【0142】
また、図6では、建造物2Eは、高さは高くないが、その前に被るようにして建造物2Dが建っている。建造物2Eの屋上の設置領域1Eに製作されるデザインには、通行人や運転者から見る角度によっては、建造物2Dが重複する可能性がある。このように重複する場合には、デザイン10Eの絵としての部分が見えにくくて問題は少ないが、情報発信を行う文字列101Eが見えにくい場合には問題がある。建造物2Dと設置領域1Eとが重複しやすいのは、設置領域1Eの下方である。
【0143】
このため、算出手段7は、設置領域1Eに製作されるデザイン10Eが含む文字列101Eの位置を上方に決定する。文字列101Eがデザイン10Eの上方の位置になることで、建造物2Dと重複する場合でも通行人等から見えやすくなる。デザイン10Eは、文字列101Eを伝達したい情報として有しているので、文字列101Eが見えやすいことは、デザイン10Eの設置者にとっては、費用対効果が高い。
【0144】
また、図6を用いた説明では、文字列の位置を上方もしくは下方のいずれかで説明したが、これら以外でも当然に良い。例えば、左右のいずれかの位置に決定されることでもよい。あるいは、算出手段7は、文字列の位置の決定だけでなく、文字列の輝度、色度を決定しても良い。例えば、設置領域の高さが高い場合には、通行人の意識をひきつけるために、文字列は、蛍光色を有していることも好ましい。従来のデザイン製作では、現場での製作者のノウハウに依存するこのような工夫も、実施の形態1のデザイン製作装置3は、算出手段7によって、周辺情報を活用しながら、文字列の色度を最適化することができる。
【0145】
以上のように、算出手段7は、周辺環境に応じて、デザインに含まれる文字列の位置、輝度、色度などを決定できる。
【0146】
また、算出手段7は、設置領域1の高さ、設置領域1の周辺の建造物更には設置領域1の方角や角度をも考慮して、設置領域1に製作されるデザインの原画、輝度、色度、色味および文字列の位置の複数の組み合わせを決定することも好適である。設置領域1の周辺環境によって、文字列の位置のみならず、輝度や色度との組み合わせの最適化も必要となるからである。
【0147】
例えば、算出手段7は、図7に示されるように、ある図柄の原画を選択した上で、設置領域1の周辺環境の情報に基づいて、原画に含まれる主たる図柄の輝度を変更する。図7は、本発明の実施の形態1における算出手段によって輝度を変化させられたデザインの模式図である。
【0148】
図7(a)は、算出手段7によって選択された原画に基づくデザイン10Fを示している。デザイン10Fは、中央に太陽のマークを含んでいる。ここで、算出手段7は、第1記憶部5から周辺情報を読み出す。読み出された周辺情報は、設置領域1に対しては陽射しが非常に強いとの情報を含んでいる場合には、太陽のマーク(これがデザイン10Fのもっともアピールする図柄である)の輝度を下げたほうが、通行人には見やすくなる。このため、算出手段7は、太陽のマークの輝度を下げる算出を行う。すなわち、図7(b)に示されるデザイン10Gのように変更する。
【0149】
このように輝度が低下させられたデザイン10Gは、陽射しの強い場所における設置領域1に製作されても、通行人などから見えやすい。
【0150】
(例3)
【0151】
算出手段7は、原画および面積算出手段4で算出された面積に基づいて、設置領域1に製作されるデザインに必要な塗料量(塗装でデザインを製作する場合の塗料量および印刷でデザインを製作する場合の塗料量などを含む)およびデザインに必要なコストの少なくとも一方を算出する。
【0152】
面積算出手段4は、設置領域1の画像から面積を算出できる。また、算出手段7は、設置領域1にデザインを設置する設置者の意向、設置領域1の周辺環境に基づいて、複数の原画の候補から特定の原画を選択する。また、算出手段7は、面積算出手段4が算出した面積を読み出せる。この原画および面積の2つによって、算出手段7は、設置領域1に製作されるデザインに必要な塗料量算出できる。
【0153】
また、算出手段7が塗料の単価などの情報をも備えている場合には、算出手段7は、算出された塗料量からデザインに必要なコストを算出できる。塗料単価に塗料の量を乗算することで、コストが算出されるからである。あるいは、工賃などのコストを加味して算出することもできる。
【0154】
また、算出手段7は、許容されるコストに基づいて原画を選択することもできる。算出手段7の算出時に、予め制限値を設定しておくことができる。この設定値は、記憶装置100に記憶されて置けばよい。あるいは使用者がデザイン製作装置3を使用する際に入力しても良い。算出手段7は、設定された許容コスト、面積および塗料単価に基づいて、原画を選択できる。例えば、原画の色度分布を解析し、色度分布と塗料の単価から産出されるコストが許容コスト以下であるか以上であるかに基づいて、算出手段7は、原画を選択できる。もちろん、原画の選択の手段はその他の方法であっても良い。
【0155】
また、周辺情報に基づいてコストを算出することもよい。例えば、陽射しが弱いために、蛍光色や色度の高いデザインとしなければならない場合には、算出手段7は、面積、原画に加えてこの周辺情報に基づいて、製作されるデザインのコストを算出する。
【0156】
以上のように、算出手段7は、面積算出手段4が算出した面積、第1記憶部5が記憶する周辺情報および第2記憶部6が記憶する原画に基づいて、設置領域1に最適なデザインの構成要素を算出する。
【0157】
また、算出手段7は、算出したデザインの構成要素を記憶装置100に出力し、記憶装置100は、算出されたデザインの構成要素を記憶する。このとき、記憶装置100は、デザインの構成要素を記憶する第5記憶領域117を備える。第5記憶領域117は、図5に示されるとおりである。第5記憶領域117は、第1記憶領域113などと同様に、記憶装置100内部の記憶領域のアドレス空間において他の記憶領域と区分される。アドレス空間として区分される第5記憶領域117にデザインの構成要素が記憶されることで、他のデータと混在しなくなり、算出されたデザインの構成要素を活用する際のエラーが生じにくくなる。
【0158】
また、他の記憶領域とアドレス空間において区分された第5記憶領域117が、デザインの構成要素を記憶することで、デザイン製作装置3が事後的にデザインの構成要素を読み出す場合にも、容易である。
【0159】
なお、図5では、第1記憶領域113〜第5記憶領域117が、順に並んでいるが、この通りの順番でアドレス空間を区分しなければならないわけではない。どのようにアドレス空間を区分してもよい。記憶装置100の備える記憶領域の物理的な特性に合わせて、第1記憶領域113〜第5記憶領域117を分割すればよい。
【0160】
なお、算出手段7は、面積算出手段4の機能を兼用してもよく、同じハードウェアとして構成されても良い。例えば、デザイン製作装置3が汎用のパーソナルコンピュータである場合には、CPUが、面積算出手段4と算出手段7との機能を果たしても良い。
【0161】
このように、設置領域1の設置現場でなくとも、周辺情報などを前提に、算出手段7は、設置領域1に最適な(通行人に見やすい、設置場所に適しているなど)デザインを製作できる。加えて、設置領域1の設置現場から離れた場所で作業できるので、作業効率は高く、作業に要する人件費や工賃といったコストを低減できる。また、作業における危険性も低下する。
【0162】
算出手段7が、周辺情報に基づいて、上述のように設置領域の上部にデザインの中の文字列を配置するように決定することで、通行人や自動車は、文字列を見やすくなる。文字列が見やすいことで、デザインの提供者(商店や会社など)は、電話番号やホームページアドレスなど、広く衆知させたい情報を、確実に通行人や運転者などに提供できる。結果として、このようなデザインは、デザインの提供者にとって、コスト対効果の非常に高いものとなる。
【0163】
以上のように、算出手段7は、記憶装置100から読み出した種々の情報に基づいて、設置現場と離隔した場所において集中的にデザインの構成要素を算出できる。このとき、設置現場の情報を集める作業とデザインを製作する作業とが、記憶装置100によって分離されるので、それぞれの作業が並列的に行われる。加えて、それぞれの作業は集中的に行えるので、作業効率およびデザイン製作のコストが低減する。
【0164】
このように、実施の形態1における記憶装置100は、デザインを設置する設置現場の情報を集める作業と設置現場の情報に基づいてデザインを製作する作業とを切離しつつ並列化できる。加えて、記憶装置100が、アドレス空間を区分した第1記憶領域113〜第5記憶領域117に、種類ごとに情報を記憶することで、情報を用いた作業が効率的になる。
【0165】
また、記憶装置100と接続されるデザイン製作装置3は、設置領域1の周辺情報をも加味して、設置後の効果の高い最適なデザインを製作できる。しかも、設置現場と離れた作業場所で集中的に作業でき、デザイン製作者のノウハウやスキルに依存しないで、一定以上のレベルのデザインを安定的に製作できる。この結果、製作にかかる手間やコストが低減でき、製作依頼者にとって費用対効果の高いデザインを提供できる。
【0166】
(実施の形態2)
【0167】
次に、実施の形態2について説明する。
【0168】
実施の形態2における記憶装置100は、収集される情報の記憶と記憶されている情報の出力とにおける効率を更に上げる。
【0169】
図8は、本発明の実施の形態2における記憶装置のブロック図である。記憶装置100は、実施の形態1で説明した通り、アドレス空間が区分された第1記憶領域113〜第5記憶領域117を備える。それぞれの区分された記憶領域のそれぞれは、異なる役割に基づいて異なる種類の情報を記憶する。第1記憶領域113は設置領域1の画像を記憶し、第2記憶領域114は設置領域1の周辺情報を記憶し、第3記憶領域115は原画を記憶し、第4記憶領域116は算出された設置領域1の面積を記憶し、第5記憶領域117は算出されたデザインの構成要素を記憶する。
【0170】
ここで、設置領域1の画像、設置領域1の周辺情報および原画は、デザイン製作のために必要となる情報であり、設置領域1の面積よびデザインの構成要素は、デザイン製作の結果で生じるものである。このため、第1記憶領域113〜第3記憶領域115までの領域と、第4記憶領域116および第5記憶領域117の領域とは、異なる位置づけを有する。
【0171】
一般的に記憶装置100は、その記憶量に限界があったり、記憶領域の区分に物理的制約があったりする。このため、デザイン製作に必要となる情報とデザイン製作の結果とのいずれかの情報が他方の記憶領域に侵食することは好ましくない。また、記憶装置100は、デザインを設置する設置領域1の情報を収集する作業とデザインを製作する作業とを切離しつつ並列化する役割を有する。このため、収集された情報と算出された情報とは、異なる階層に記憶されることが、情報の上書き防止や並列作業の点からも好ましい。それぞれが同一階層に存在する場合には、収集された情報の記憶領域への書き込みと算出された情報の記憶領域への書き込みとが衝突する可能性もあるからである。
【0172】
図8に示されるように、第1記憶領域113、第2記憶領域114および第3記憶領域115は、第1階層170に位置し、第4記憶領域116および第5記憶領域117は、第2階層171に位置する。それぞれが異なる階層に位置することで、情報の上書きや書き込みにおける衝突が防止される。
【0173】
特に、第1階層170に情報を書き込む入力ポートと第2階層171に情報を書き込む入力ポートとを、記憶装置100は別々に備えていることも好適である。この場合には、第1階層170に対する情報の書き込みと第2階層171に対する情報の書き込みとが衝突しない。同様に、第1階層170からの情報を読み出す出力ポートと第2階層171から情報を読み出す出力ポートとを、記憶装置100が別々に備えていることも好適である。この場合には、第1階層170からの情報の読み出しと第2階層171からの情報の読み出しとが衝突しない。
【0174】
このように、収集される情報と算出される情報とを、異なる階層に記憶させ、階層ごとに入出力ポートが設けられることで、情報の上書きや衝突が防止される。もちろん、第1記憶領域113〜第5記憶領域117の全てが異なる階層に設けられて、異なる入出力ポートを備えることもよいが、この場合にはコストが増加する。一方、収集される情報を第1階層170に、算出される結果を第2階層171に記憶させて、2つの階層で管理することで最小限のコストで情報の管理を容易にできる。
【0175】
また、記憶装置100は、図示していないが、第6記憶領域を更に備えても良い。
【0176】
デザインの構成要素を算出する算出手段7は、算出されたデザインの構成要素に基づくデザイン見本およびデザイン画の少なくとも一方を出力できる。デザインの原画、輝度、色度などが算出されれば、実際に設置領域1に製作されるデザイン見本やデザイン画を製作できるからである。第6記憶領域は、この出力されたデザイン見本やデザイン画を記憶する。第6記憶領域がこれらを記憶することで、記憶装置100は、製作されたデザインを容易に提供できる。
【0177】
第6記憶領域は、製作されたデザイン画などの情報を記憶するので、第2階層に位置することが好ましい。この位置づけにより、デザイン製作装置3で製作されたデザイン見本やデザイン画が、容易に活用される。
【0178】
なお、実施の形態1、2における記憶装置100は、ネットワークによって他の機器や装置と接続されていることも好適である。携帯端末16によって集められた情報の転送が容易となったり、デザイン製作装置3とのデータのやり取りが容易となったりするからである。もちろん、記憶装置100がインターネットと接続されており、設置領域1の地図情報などを記憶装置100が得ることも好適である。
【0179】
(実施の形態3)
【0180】
次に、実施の形態3について説明する。実施の形態3では、面積算出手段4が、設置領域1の画像に基づいて、設置領域1の面積を算出する算出方式について説明する。この算出方法を、デザイン製作装置3や記憶装置100を含むデザイン製作システムを基に説明する。
【0181】
面積算出手段4は、第1記憶領域113から得られる設置領域1の画像に基づいて、設置領域1の面積を算出する。このとき、設置領域1の画像を撮像する撮像手段をさらに備え、この撮像手段によって撮像された画像が、第1記憶領域113に記憶される。
【0182】
(システム全体の概要)
図9は、本発明の実施の形態3におけるデザイン製作システムの概念図である。
【0183】
デザイン製作システムは、設置領域1と設置領域1と近接しておかれた標識12と、設置領域1と標識12とを撮像する撮像装置13と、撮像された画像を解析して、設置領域1の面積を算出するデザイン製作装置3とを備えている。なお、実施の形態1、2で説明した記憶装置100は、デザイン製作装置3の内部に含まれている。撮像装置13は、フィールドエンジニアによって携帯され、設置領域1の画像を撮像したり、周辺情報を入力したりできる携帯端末の一例である。
【0184】
設置領域1は、建物や建造物の一部もしくは全部であり、特には建物や建造物の壁面であって面積を算出したい領域を含む部分である。例えば、設置領域1の例は、ビルやマンションの壁面であったり、ビルやマンションの看板設置板であったりする。
【0185】
標識12は、3つのポインタ121、122,123を備える基準部材であり、標識12を基準とした撮像装置13の3次元座標から、設置領域1の面積を算出する。
【0186】
撮像装置13は、カメラ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯端末、携帯電話機などの撮像機能を有する電子機器や電子装置である。
【0187】
デザイン製作装置3として、図9ではパーソナルコンピュータが例として示されているが、パーソナルコンピュータだけでなく、実施の形態1、2で説明したデザイン製作の機能を有する専用装置、汎用装置などが幅広く用いられる。また、このパーソナルコンピュータは、記憶装置100、面積算出手段4、算出手段7(およびこれらに付随する他の要素)を備えている。
【0188】
デザイン製作システムでは、まず標識12を設置領域1に近接して設置し、撮像装置13が標識12と設置領域1とを同時に撮影する。このとき、撮像装置13は、標識12と設置領域1とを含む第1画像と、第1画像と異なる角度から撮像される標識12と設置領域1とを含む第2画像(あるいは、第3画像以上を)を撮像する。
【0189】
図10に、第1撮像装置13aと第2撮像装置13bが、設置領域1と標識12とを撮像する様子を示す。図10は、本発明の実施の形態3における第1画像と第2画像との撮像を説明する模式図である。第1撮像装置13aは、所定の方向から設置領域1と標識12とを撮像して、第1画像を得る。一方、第2撮像装置13bは、第1撮像装置13aと異なる角度から、設置領域1と標識12とを撮像して、第2画像を得る。
【0190】
面積算出手段4は、第1画像と第2画像を得る。第1画像および第2画像は、上述の通り、設置領域1と標識12との画像を含んでいる。第1撮像装置13aと第2撮像装置13bとを、設置現場であるフィールドエンジニアが持参して対象となる設置領域1の第1画像と第2画像とを撮像する。もちろん、1枚の第1画像と第2画像とを撮像するだけでなく、多くの情報を得るために複数の第1画像と第2画像とを撮像してもよい。また、フィールドエンジニアは、第1画像と第2画像の撮像だけでなく、設置領域1の周辺情報についても収拾する。
【0191】
第1画像と第2画像は、第1記憶領域113に記憶される。
【0192】
面積算出手段4は、読み出し部41、撮像装置座標推定部42、特定点座標推定部43、算出部44を備えている。図11は、実施の形態3における面積算出手段4の内部ブロック図である。ここで、読み出し部41は、記憶装置100に含まれる要素でも良い。図11は、第1撮像装置13aと第2撮像装置13bとによって撮像された第1画像と第2画像とを用いて設置領域1の面積を算出するのに必要な要素を示している。
【0193】
読み出し部41は、第1記憶領域113に記憶されている第1画像と第2画像とを読み出す。このとき、1枚ずつ読み出しもよいし、一度に複数の画像を読み出しても良い。読み出し部41は、読み出した画像のデータを撮像装置座標推定部42に出力する。
【0194】
撮像装置座標推定部42は、第1画像を撮像した撮像装置(第1撮像装置13a)の3次元座標で表される第1位置と、第2画像を撮像した撮像装置(第2撮像装置13b)の3次元座標で表される第2位置とを推定する。なお、第1撮像装置13aと第2撮像装置13bとは、説明の便宜上「第1、第2」と記載されているだけで、第1撮像装置13aと第2撮像装置13bとは、同一の装置であっても異なる装置であってもかまわない。この点は、本明細書の全体に渡って同様である。
【0195】
また、他の画像があれば、撮像装置座標推定部42は、第3撮像装置が配置された第3位置の3次元座標(第n撮像装置が配置された第n位置の3次元座標も)を推定する。
【0196】
撮像装置座標推定部42は、画像の中に含まれる標識12の傾きに基づいて、撮像装置と標識12との方向を推定する。ついで、画像の中に含まれる標識12の面積に基づいて、撮像装置と標識12との距離を推定する。撮像装置座標推定部42は、この方向と距離を用いて、撮像装置の位置の3次元座標を推定する。なお、標識12は、その大きさ、形状、面積などが既知である。
【0197】
撮像装置座標推定部42によって、2次元座標であるローカル座標を有する撮像装置の座標が、標識12を基準とした3次元座標であるグローバル座標に変換される。なお、撮像装置座標推定部42は、複数の位置における撮像装置のそれぞれの3次元座標の値を推定する。結果として、異なる位置にある撮像装置それぞれの3次元座標の値が推定される。
【0198】
第1位置と第2位置が推定されると、第1位置と第2位置に基づいて、特定点座標推定部43が、設置領域1に含まれる複数の特定点のそれぞれの3次元座標を、推定する。設置領域1に含まれる複数の特定点の3次元座標が定まれば、面積を算出することができるようになる。
【0199】
特定点座標推定部43は、推定された撮像装置の3次元座標を基準に、設置領域1に含まれる特定点の3次元座標を推定する。設置領域1は、その面積を算出したい領域を有しており、特定点座標推定部43は、この領域の外縁に沿った複数の点を特定点として決定する。これら複数の特定点のグローバルな3次元座標の値が求まれば、これら特定点で囲まれる領域の面積が算出できる。
【0200】
撮像装置座標推定部43によって、撮像装置の3次元座標の値は推定されている。特定点の3次元座標は、撮像装置の3次元座標に基づいて推定される。すなわち、複数の撮像装置からある特定点の方向を推定し、複数の撮像装置から推定された特定点の方向の重複点が、特定点の3次元座標の値となる。このように、特定点の一つの3次元座標の値は、複数の撮像装置の位置に基づいて算出される。特定点座標推定部43は、複数の特定点のそれぞれに推定の作業を行うことで、複数の特定点のそれぞれの3次元座標の値を算出する。
【0201】
特定点座標推定部43は、推定した複数の特定点の3次元座標の値を、算出部44に出力する。
【0202】
算出部44は、特定点座標推定部43より受け取った特定点の3次元座標に基づいて、設置領域1の面積を算出できる。なお、算出部44は、設置領域1において、特定点によって囲まれる所定の領域の面積を算出する。
【0203】
設置領域1がビルの壁面の一部であるとすると、特定点は、この壁面の一部を囲む線上の点である。特定点の3次元座標に基づいて計算することで、算出部44は、設置領域1の面積を算出できる。3次元座標が定まっていれば、座標値に基づく積分計算によって設置領域1の面積が算出できるからである。
【0204】
算出部44は、算出した面積の値を、算出手段7に出力する。この結果、算出手段7において、デザインの構成要素が算出される。もちろん、算出部44は、算出した面積の値を、第4記憶領域116に出力しても良い。
【0205】
以上のように、設置領域1に標識12を含む異なる位置からの複数の画像によって、面積算出手段4は、設置領域1の面積を算出できる。特に、標識12と設置領域1とは、撮像した画像に写っているので、第3記憶部11が画像を記憶していれば、いかなる場所においても、面積算出手段4は、面積を算出できる。また、標識と共に写りこんでいる設置領域であれば、その特定点の選び方によって、様々な領域の面積を算出できるので、デザイン製作者は、フレキシブルに領域を選択して、領域の面積を算出できる。
【0206】
なお、面積算出手段4は、設置領域1と標識12とが写っている画像について、より様々な位置や角度から撮像された多くの画像に基づくことで、面積算出の精度を向上させることができる。
【0207】
次に、面積算出手段4に含まれる要素の詳細および面積算出の詳細について説明する。
【0208】
(第1画像、第2画像)
図12に第1画像と第2画像の例を示す。図12は、本発明の実施の形態3における第1画像と第2画像の写真例である。第1画像および第2画像のそれぞれは、設置領域1であるブロック塀と三角形の形状を有する標識12とを含んでいる。また、設置領域1の一部の領域が線で枠囲いされているが、この枠囲いされている領域が、面積算出の対象となる対象領域15である。
【0209】
図12の第1画像と第2画像が示すように、第1画像と第2画像とは、異なる角度から設置領域1と標識12とを有している。
【0210】
(読み出し部)
読み出し部41は、第1記憶領域113に記憶されている画像であって図12に示されるような画像を読み出す。例えば、読み出し部41は、HDDやDVDドライブなどに設けられているデータの読取装置およびこの読取装置を駆動するソフトウェアなどを含む。記憶装置100が半導体メモリや光ディスクである場合には、読み出し部41は、読み出し対象の画像が含まれているアドレスを指定し、当該アドレスに対応するデータを読み出す。
【0211】
読み出し部41の読み出しにおける実現手段や構成は、公知技術や一般的に用いられる技術でよい。また、読み出し部41は、データの読み出しだけに限定されるものではなく、データの書き込みを行っても良い。読み出し部41は、図12に示される第1画像と第2画像とを読み出す。読み出し部41は、読み出した第1画像と第2画像とのデータを、撮像装置座標推定部42に出力する。
【0212】
(撮像装置座標推定部)
撮像装置座標推定部42は、第1撮像装置13aの配置される第1位置と、第2撮像装置13bの配置される第2位置の、グローバル座標に基づく3次元座標の値を推定する。撮像装置座標推定部42は、標識12を利用して、第1位置と第2位置の3次元座標の値を推定する。第1位置と第2位置の3次元座標の値に基づいて、設置領域1の特定点の3次元座標の値が推定できるようになる。
【0213】
ここで、撮像装置座標推定部42は、第1画像に写っている標識12の傾きに基づいて、第1撮像装置13aの標識12に対する方向を第1方向として推定する。ついで、撮像装置座標推定部42は、第1画像中における標識12の面積に基づいて、第1撮像装置13aと標識12との距離を第1距離として推定する。
【0214】
同様に、撮像装置座標推定部42は、第2画像に写っている標識12の傾きに基づいて、第2撮像装置13bの標識12に対する方向を第2方向として推定する。ついで、撮像装置座標推定部42は、第2画像中における標識12の面積に基づいて、第2撮像装置13bと標識12との距離を第2距離として推定する。
【0215】
なお、撮像装置座標推定部42は、具体的には標識12が含む特定の部位(ポインタ)を基準として、撮像装置と標識12との方向を推定する。このため、標識12は、ポインタを有していることが必要である。特には、ポインタから傾きを検出する必要があるので、標識12は3個以上のポインタを有している必要がある。
【0216】
撮像装置座標推定部42は、第1方向および第1距離に基づいて、第1位置の3次元座標の値を推定し、第2方向および第2距離に基づいて、第2位置の3次元座標の値を推定する。このとき、撮像装置座標推定部42は、第1画像および第2画像に写っている標識12の傾きと面積を利用する。このため、標識12は、画像に移っている状態だけでその傾きと面積とを容易に算出できる構成を有していることが好ましい。
【0217】
例えば、標識12は、その形状や面積が既知であって、画像中で標識12の全体形状や画像中における面積が算出しやすい形状を有していることが好適である。加えて、標識12は、画像のみで、標識12の傾きが判別しやすい形状を有していることが好適である。
【0218】
(標識について)
図13は、本発明の実施の形態3における標識の正面図である。上述のように、画像中で標識12を認識しやすい一例を、図13は示している。勿論、図13に示される形状や構成に、標識12の形状や構成が限られるものではない。
【0219】
標識12は、3以上のポインタを有している。図13では、標識12は、3つのポインタ121、122、123を有している。3つのポインタ121、122、123同士を結ぶ棒状部材によって、標識12は、3つのポインタ121、122、123を頂点とする略三角形の形状を有する。このとき、標識12を形成する三角形は、既知である所定の面積を有している。標識12の本来の面積が既知であることで、画像における標識12の面積(すなわち、三角形の面積)が算出されれば、算出された面積と本来の面積との縮尺率から、撮像装置から標識12までの距離が算出できる。
【0220】
また、標識12が図13に示されるように三角形を有していることで、最少の頂点数により面積を有するので、標識12が画像の中で判別しやすい上に面積や大きさが判別されやすい。
【0221】
このように、標識12が、3つのポインタ121、122、123を頂点とする三角形を有することで、(1)画像中における標識12が容易かつ確実に判別できる、(2)標識12の画像中における面積を算出しやすい、(3)画像中での標識12の面積と、実際の標識12の面積との比較から、撮像装置から標識12までの距離が容易に算出できる、とのメリットを生じる。
【0222】
また、撮像装置座標推定部42は、画像中の標識12の傾きから、撮像装置と標識12との方向を推定する。例えば、図12の第1画像では、標識12は、正面から見て右側に傾いている。一方、図12の第2画像では、標識12は、正面から見て左側に傾いている。第1画像と第2画像のいずれであっても、標識12がどのように傾いているかは、容易に判別できる。撮像装置座標推定部42にとって、標識12の傾きを容易かつ確実に判別できることは、撮像装置と標識12との方向を推定する上で重要である。
【0223】
ここで、3つのポインタ121、122、123のそれぞれは、相互に色度が異なっていることも好適である。相互に色度が異なっていることで、画像中における標識12の判別が確実になる。特に、撮像装置座標推定部42は、ポインタ121、122、123のそれぞれを基準として、撮像装置と標識12との方向を推定するので、ポインタ121、122、123のそれぞれは、確実に区別できることが好ましい。ポインタ121、122、123のそれぞれの色度が相互に異なることで、画像中に写っているポインタ121、122、123のそれぞれが、個々に区別できるようになる。
【0224】
また、3つのポインタ121、122、123のそれぞれは、略球形を有することが好ましい。
【0225】
撮像装置座標推定部42は、標識12に含まれるポインタ121、122、123のそれぞれを基準として撮像装置との方向を推定する。このため、標識12の画像中での写りこみの態様の如何にかかわらず、撮像装置座標推定部42は、画像中のポインタを確実に認識できる必要がある。このとき、ポインタ121、122、123のそれぞれが略球形であることで、標識12がどのような角度から撮像されていてもポインタ121、122、123の形状に変化がない(画像に写っている形状において)。このため、撮像装置座標推定部42は、画像の中から確実に標識12を認識できる。
【0226】
実際には、表示された第1画像や第2画像において、使用者がポインタを選択することで、ポインタと撮像装置との方向や距離が算出される。このとき、撮像されている角度によってポインタの形状が異なってしまっては、正確な選択ができない。ポインタが略球形を有していることで、撮像されている角度によることなく(異なる画像によることなく)、ポインタを正確に選択できる。
【0227】
このように、ポインタ121、122、123が異なる色度を有していたり、略球形を有していたりすることで、(1)画像中におけるポインタが容易かつ確実に判別できる、(2)画像の撮像角度の違いによっても、ポインタを一義的に選択できる、(3)ポインタが正確に選択できることで、標識12に対する撮像装置の方向が確実に推定できる、メリットが生じる。
【0228】
撮像装置座標推定部42は、第1画像に写っているポインタ121、122、123のそれぞれから、第1撮像装置13aの標識12に対する方向を推定する。同様に、撮像装置座標推定部42は、第2画像に写っているポインタ121、122、123のそれぞれから、第2撮像装置13bの標識12に対する方向を推定する。
【0229】
図14は、撮像装置の標識12に対する方向を推定する状態を示している。図14は、本発明の実施の形態3における撮像装置の方向推定の模式図である。
【0230】
標識12は、3つのポインタ121、122、123を有しており、第1位置に配置される第1撮像装置13aは、第1画像を撮像し、第2位置に配置される第2撮像装置13bは、第2画像を撮像する。
【0231】
撮像装置座標推定部42は、第1画像において、ポインタ121、ポインタ122およびポインタ123を選択して、ポインタ121、122、123のそれぞれで構成される平面(標識12の三角形の平面)の傾きを算出する。この傾きによって、第1撮像装置13aの標識12に対する第1方向が推定される。なお、標識12の画像中での形状と標識12の傾きとの相関関係を明示したテーブルに基づいて、撮像装置座標推定部42は、第1方向を推定しても良い。
【0232】
同様に、撮像装置座標推定部42は、第2画像において、ポインタ121、122、123を選択して、ポインタ121、122、123のそれぞれによって構成される平面(標識12の三角形の平面)の傾きを算出する。この傾きによって、第1撮像装置13bの標識12に対する第2方向が推定される。なお、第2方向も、標識12の画像中での形状と標識12の傾きとの相関関係を明示したテーブルに基づいて、推定されてもよい。
【0233】
第1方向および第2方向のいずれも、図14に示されるように、ポインタ121、122、123の各点と撮像装置とを結ぶベクトルによって、推定される。
【0234】
次に、撮像装置座標推定部42は、画像中の標識12の面積と本来の標識12の面積との比較から、撮像装置から標識12までの距離を推定する。図15は、距離の推定の状態を示す。図15は、本発明の実施の形態3における撮像装置と標識との距離の推定を説明する模式図である。
【0235】
図15より明らかな通り、撮像装置は、線形を保ったまま標識12を撮像するので、撮像装置から標識12までの距離は、標識12の撮像装置の位置における面積(既知である固有の面積)と画像中で算出される標識12の面積との比較によって推定される。
【0236】
撮像装置座標推定部42は、第1画像における標識12の面積を算出した上で既知の面積と比較して、第1撮像装置13aから標識12までの距離を第1距離として推定する。同様に、撮像装置座標推定部42は、第2画像における標識12の面積を算出した上で既知の面積と比較して、第2撮像装置13bから標識12までの距離を第2距離として推定する。
【0237】
標識12を基準とした第1撮像装置13aの方向と距離が分かれば、第1撮像装置13aの画像中における2次元座標が、標識12を基準としたグローバルな3次元座標に変換される。すなわち、第1位置の3次元座標の値が得られる。同様に、標識12を基準とした第2撮像装置13bの方向と距離が分かれば、第2撮像装置13bの画像中における2次元座標が、標識12を基準としたグローバルな3次元座標に変換される。
【0238】
このことから、撮像装置座標推定部42は、第1方向と第1距離とから第1位置の3次元座標の値を推定し、第2方向と第2距離と空第2位置の3次元座標の値を推定する。
【0239】
以上の処理手順によって、撮像装置座標推定部42は、第1撮像装置13aの配置されている第1位置と第2撮像装置13bの配置されている第2位置との3次元座標の値を推定する。
【0240】
(特定点座標推定部)
撮像装置座標推定部42は、特定点座標推定部43に、第1位置と第2位置の3次元座標の値を出力する。特定点座標推定部43は、この第1位置と第2位置の3次元座標の値に基づいて、設置領域1の特定点の3次元座標の値を推定する。
【0241】
図16は、本発明の実施の形態3における特定点座標の推定を説明する写真である。図16で示される画像は、標識12と一緒に撮像された設置領域1を含んでおり、設置領域1において、枠囲いされた面積を算出する対象である対象領域15を含んでいる。
【0242】
対象領域15は、任意に定まる複数の特定点を含んでいる。対象領域15は、特定点の3次元座標が分かれば、その面積が算出される。図16においては、対象領域15は、方形の領域であり、対象領域15の4つの頂点が、4つの特定点151、152、153、154として特定されている。特定点は、任意に定められれば良いが、面積算出の容易性から、対象領域の頂点に含まれればよい。あるいは対象領域の外枠の辺上の任意の点と頂点とが組み合わされて、特定点が定められても良い。
【0243】
実際には、表示手段に表示されている画像(図16に例示される画像)上で、使用者が任意の点を特定点として選択する。
【0244】
特定点座標推定部43は、特定点151、152、153、154のそれぞれに対して、第1位置からの方向と第2位置からの方向のそれぞれを推定する。例えば、一つの特定点151に対する第1位置からの方向と第2位置からの方向を推定する。このとき、第1位置と第2位置とは、それぞれ3次元座標の値を有しているので、この3次元座標の値に基づいて、特定点151への方向が推定される。更に、特定点座標推定部43は、第1位置からの方向と第2位置からの方向の交点の3次元座標の値を求める。交点の3次元座標の値が、求めるべき特定点151の3次元座標の値である。
【0245】
図17に特定点の3次元座標の推定の状態を示す。図17は、本発明の実施の形態3における特定点の3次元座標の推定を説明する模式図である。
【0246】
図17に示されるように、第1撮像装置13a(第1位置)から特定点151への方向を示す線51と第2撮像装置13b(第2位置)から特定点151への方向を示す線52とが描かれる。図17より明らかな通り、線51と線52とは、ある位置で交わる。この位置が、交点156である。線51は、第1画像に写っている特定点151と第1位置とを結ぶ線であり、線52は、第2画像に写っている特定点151と第2位置とを結ぶ線である。特定点151は、撮像された角度や位置によって、単一の画像だけでは、その3次元座標は正確に求まらない。これに対して、撮像角度が異なる複数の画像によって、それぞれの画像における特定点151への方向の共通項(交点)が得られる。この交点156は、単一の画像だけの場合よりも特定点151の位置に近い位置となりうる。
【0247】
このように、第1画像と第2画像のそれぞれにおいて、第1位置から特定点を結ぶ線と、第2位置から特定点を結ぶ線とを算出し、それぞれの線同士の交点156を算出することで、特定点の3次元座標(第1位置と第2位置が有する3次元座標と共通の座標)が求まる。交点156が、特定点151の座標位置となる。
【0248】
特定点座標推定部43は、残りの特定点152、153、154の3次元座標の値も求める。
【0249】
なお、ここでは、第1画像と第2画像の2つの画像に基づいて、特定点の3次元座標を求める処理を説明したが、3以上の画像に基づいて(すなわち、第3位置に配置される第3撮像装置にも基づいて)特定点の3次元座標の値を算出しても良い。
【0250】
なお、特定点は、対象領域を囲む外枠上のいくつかの点でもよいし、外枠の辺が特定点の集まりであるとして、辺を選択して、多数の特定点を選択したことにしてもよい。いずれにしても、特定点の数が多いほど、後述の算出44での対象領域の面積算出の精度が高まる。
【0251】
また、特定点座標推定部43は、第1位置からの直線と第2位置からの直線との交点を、特定点の位置として推定しても良いが、第1位置から特定点までの方向と距離によって、まず第1位置に基づく特定点の3次元座標の値(第1特定座標とする)を推定し、ついで、第2位置から特定点までの方向と距離によって、第2位置に基づく特定点の3次元座標の値(第2特定座標とする)を推定した上で、第1特定座標と第2特定座標とに基づいて、特定点の3次元座標の値を推定しても良い。
【0252】
このとき、特定点を含む設置領域1までの距離は、第1位置や第2位置から標識12までの距離と略同一であると考えればよい。方向は、特定点として選択した位置と第1位置(第2位置)の座標との角度で定まる。
【0253】
このとき、第1特定座標と第2特定座標が一致する場合には、第1特定座標と第2特定座標の値が、特定点の3次元座標の値として推定される。第1特定座標と第2特定座標とが不一致の場合には、実施の形態2で説明するように、第1特定座標と第2特定座標との近接位置が、特定点を近似する位置として定められる。
【0254】
このように、特定点座標推定部43は、特定点の3次元座標を推定し、推定結果を算出部44に出力する。
【0255】
なお、特定点座標推定部43は、ハードウェアで実現されても、ソフトウェアで実現されても、ハードウェアとソフトウェアの混在で実現されても良い。
【0256】
(算出部)
次に、算出部44について説明する。
【0257】
算出部44は、特定点座標推定部43で推定された、対象領域15を示す特定点の3次元座標の値に基づいて、対象領域15の面積を算出する。
【0258】
複数の特定点は、共通の3次元座標の値を有している。複数の特定点によって囲まれる対象領域15は、3次元座標によって、その面積が算出できる。3次元座標の値によって、対象領域15を形成する各辺の長さや辺同士が形成する角度が算出されるので、この長さと角度を用いて、算出部44は、対象領域15の面積を算出できる。
【0259】
ここで、算出部44は、領域を形成する点の3次元座標に基づいて領域の面積を算出する種々の公知技術や周知技術を利用できる。これらは、種々の公知技術や周知技術を参考にすればよいので、説明を割愛する。
【0260】
算出部44は、算出した対象領域15の面積値(これが結局は求めたい設置領域1の面積に対応する)を算出手段7に出力する。算出手段7は、この面積値を利用してデザインの構成要素を算出する。
【0261】
また、デザイン製作装置3は、表示手段を備えており、面積算出手段4が算出した面積が表示されても良い。実際の面積算出作業では、使用者は、コンピュータや専用装置のキー入力装置を用いて、第1記憶領域113に記憶されている画像を読み出す。読み出された画像は、例えば図12に示されるような第1画像と第2画像である。使用者は、第1画像および第2画像において、標識12のポインタのそれぞれをマウスやポインティングデバイスを用いてドラッグする。このドラッグによって、撮像装置座標推定部42が作動して、第1画像を撮像した位置である第1位置の3次元座標の値と、第2画像を撮像した位置である第2位置の3次元座標の値と、が推定される。
【0262】
次に使用者は、図16に示されるように、第1画像もしくは第2画像中の対象領域15を特定する特定点151、152、153、154を、画像中においてマウスやポインティングデバイスを用いてドラッグする。このドラッグによって、特定点座標推定手段が作動して、特定点151、152、153、154の3次元座標の値が推定される。更には、算出部44が作動して、特定点151、152、153、154で形成される対象領域15の面積が算出される。いずれも、画像上でのマウスやポインティングデバイスによるドラッグでは、画像中の座標値が決定されることによるものである。
【0263】
このように、面積算出手段4(デザイン製作装置3)が汎用のパーソナルコンピュータや専用装置に実装されている場合には、使用者は表示された画像において、必要となる点(標識12のポインタや対象領域15の特定点)を指定するだけで、対象領域15(すなわち設置領域1)の面積を算出できる。
【0264】
また、面積算出手段4は、面積算出の精度を上げるために対象領域1の第1画像および第2画像の撮像角度と異なる角度の第3画像を用いてもよい。このときには、設置領域1の第3画像によって得られる第3位置の3次元座標の値をも用いて、面積算出手段4は、設置領域1の面積を算出する。
【0265】
また、特定点座標推定部43は、第1位置および第2位置から特定点の3次元座標を推定する。このとき、第1から特定点に向けて延伸する直線と第2位置から特定点に向けて延伸する直線との交点を、特定点の位置として推定する。このとき第1位置および第2位置の2つの位置からの交点だけでなく、更に第3位置に基づくことで、特定点の3次元座標を、高い精度で推定できる。すなわち、異なる角度からの3以上の撮像画像に基づいて、特定点座標推定部43は、特定点の3次元座標を高い精度で推定できる。
【0266】
このように、2つの撮像位置からだけでなく、3以上の撮像位置からの特定点の3次元座標の推定によって、被写体の対象領域の面積が高い精度で算出される。
【0267】
ここで、各撮像位置から特定点へ形成される各直線が、一つの点で交差せずねじれの関係になることが生じうる。第1位置から特定点への直線は、画像中において選択された特定点と第1位置との方向と距離によって定まり、第2位置から特定点への直線は、画像中において選択された特定点と第2位置との方向と距離によって定まる。このとき、特定点は、平面である画像中において使用者が選択した位置を示し、3次元において一意に定まる本来の特定点と同じ位置となるとは限らない。このため、第1位置から特定点(画像中で選択された特定点)へ形成される直線と第2位置から特定点(画像中で選択された特定点)へ形成される直線とが、交差しないことが生じうる。
【0268】
ねじれが生じる場合には、近似によって特定点の3次元座標を推定する。
【0269】
近似は、単純な近似や従量平均による近似などが用いられる。第1位置から特定点に向けて延伸する直線と第2位置から特定点に向けて延伸する直線の交点と、第2位置から特定点に向けて延伸する直線と第3位置から特定点に向けて延伸する直線の交点との離隔間隔に基づいて、近似を行うことで、特定点を近似できる。重み付け平均での近似でも良い。
【0270】
面積算出手段4は、特定点の推定精度に基づいて、算出する面積の誤差率および面積の誤差範囲の少なくとも一方を算出することも好適である。
【0271】
特定点座標推定部43は、第1位置から特定点への直線と第2位置から特定点への直線とが交差しない場合には、交差しないことによって生じる不一致量を算出する。あるいは、第1特定座標と第2特定座標との不一致量を算出する。
【0272】
第1位置から特定点への直線と第2位置から特定点への直線とが交差しない場合には、それぞれの直線の離隔量が生じる。特定点座標推定部43は、第1位置からの直線と第2位置からの直線とが近接する位置において、近接点を算出する。このとき、近接点を算出する位置における、2つの直線同士の離隔量が算出される。この離隔量が大きいことは、特定点の近似位置として算出される近接点の算出精度は低く、離隔量が小さいことは、特定点の近似位置として算出される近接点の算出精度が高いことを示す。言い換えると、特定点の推定精度を示す。特定点の3次元座標の推定精度が高いことは、算出部44が算出する面積の算出精度が高いことを示す。逆に、特定点の3次元座標の推定精度が低いことは、算出部44が算出する面積の算出精度が低いことを示す。
【0273】
特定点座標推定部43は、この離隔量を不一致量として算出する。
【0274】
あるいは、特定点座標推定部43が、第1位置から特定点までの方向と距離によって定めた第1特定座標と第2位置から特定点までの方向と距離によって定めた第2特定座標(あるいは第3特定座標以降も含めて)とに基づいて、特定点の3次元座標を推定する場合には、第1特定座標の値と第2特定座標の値の差分値を不一致量として算出する。
【0275】
算出部44は、この不一致量に基づいて、算出する対象領域の面積の誤差率を算出する。例えば、算出部44は、不一致量と算出された面積の乗算によって、面積の誤差率を算出する。あるいは、不一致量を絶対値ではなく、レベル値(不一致量によって、レベル1〜レベル5までの段階評価としておく)と面積の値との関係によって誤差率を算出する。例えば、面積が所定範囲内であるときに、不一致量がレベル1である場合には、誤差率を1%と定義し、不一致量がレベル2である場合には、誤差率を2%と定義する。
【0276】
あるいは、算出した面積を、「**平方メートルから○○平方メートルの範囲である」とのように、面積の誤差範囲を明示して算出しても良い。誤差範囲が明示されることで、利用者の便宜がますます高まるからである。
【0277】
以上のように、特定点座標推定部43は不一致量を算出し、算出部44は誤差率を算出する。算出された誤差率は、算出された面積と共に表示手段16で表示される。誤差率が表示されることによって、使用者の便宜が高まる。
【0278】
以上のような面積算出手段4を備えるデザイン製作装置3は、設置領域1の写真のみで設置領域1の面積を算出しつつデザインの構成要素を算出できる。
記憶装置100は、このようなデザイン製作システムの中に位置づけられ、フィールドエンジニアによる情報収集の作業とデザイン製作の作業とを分離しつつ並列化できることで、屋外の様々な設置領域1に最適なデザインを効果的に製作できる。
【0279】
以上、実施の形態1〜3で説明された記憶装置は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0280】
1 設置領域
2 建造物
3 デザイン製作装置
4 面積算出手段
5 読み出し部
6 出力部
7 算出手段
12 標識
121、122、123 ポインタ
13 撮像装置
15 対象領域
16 携帯端末
100 記憶装置
111 入力手段
112 出力手段
113 第1記憶領域
114 第2記憶領域
115 第3記憶領域
116 第4記憶領域
117 第5記憶領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を受け取る入力手段と、
デザインが製作される設置領域の画像を記憶する第1記憶領域と、
前記設置領域の周辺情報を記憶する第2記憶領域と、
前記設置領域に用いられるデザインの複数の原画を記憶する第3記憶領域と、
前記画像、前記周辺情報および前記原画の少なくとも一つを、デザインの構成要素を算出する算出手段に、演算条件として出力する出力手段と、を備えるデザインを製作するのに用いられる記憶装置。
【請求項2】
前記周辺情報は、前記設置領域の位置、前記設置領域の周辺の建造物、前記設置領域の材質、前記設置領域の方角、前記設置領域の角度および前記設置領域の高さの少なくとも一つの情報を含む、請求項1記載の記憶装置。
【請求項3】
前記構成要素は、前記複数の原画の内で前記設置領域に製作されるデザインとして選択される原画、前記設置領域に製作されるデザインに必要な塗料量、前記設置領域に製作されるデザインに必要なコスト、前記設置領域に製作されるデザインに適する輝度、前記設置領域に製作されるデザインに適する色度および前記設置領域に製作されるデザインの中の文字列の位置の少なくとも一つを含む、請求項1又は2記載の記憶装置。
【請求項4】
前記周辺情報および前記画像は、前記入力手段より得られる、請求項1から3のいずれか記載の記憶装置。
【請求項5】
面積算出手段によって前記画像に基づいて算出された前記設置領域の面積を記憶する第4記憶領域を更に備える、請求項1から4のいずれか記載の記憶装置。
【請求項6】
算出手段によって算出された前記デザインの構成要素を記憶する第5記憶領域を更に備える、請求項1から5のいずれか記載の記憶装置。
【請求項7】
前記第1記憶領域、前記第2記憶領域、前記第3記憶領域、前記第4記憶領域および前記第5記憶領域のそれぞれは、異なるアドレス領域に区分され、前記第1記憶領域、前記第2記憶領域および前記第3記憶領域は、前記アドレス領域における第1階層に位置し、前記第4記憶領域および前記第5記憶領域は、前記アドレス領域における第2階層に位置する、請求項1から6のいずれか記載の記憶装置。
【請求項8】
前記入力手段は、前記画像および前記周辺情報の少なくとも一方を取得する携帯端末からの情報を受信可能である、請求項1から7のいずれか記載の記憶装置。
【請求項9】
前記算出手段は、前記複数の原画の内で前記設置領域に製作されるデザインとしての原画の選択、前記設置領域に製作されるデザインに必要な塗料量の算出、前記設置領域に製作されるデザインに必要なコストの算出、前記設置領域に製作されるデザインに適する輝度の算出、前記設置領域に製作されるデザインに適する色度の算出および前記設置領域に製作されるデザインの中の文字列の位置の決定の少なくとも一つを行う、請求項6記載の記憶装置。
【請求項10】
前記算出手段は、前記算出手段から算出された前記構成要素に基づくデザイン見本およびデザイン画の少なくとも一方を出力する、請求項9記載の記憶装置。
【請求項11】
前記デザイン見本および前記デザイン画の少なくとも一方を記憶する第6記憶領域を更に備える、請求項10記載の記憶装置。
【請求項12】
前記画像は、第1撮像装置により撮像された前記設置領域と標識とを含む第1画像と、前記第1撮像装置と異なる角度から第2撮像装置により撮像された前記設置領域と前記標識とを含む第2画像を有し、
前記面積算出手段は、
前記第1撮像装置の第1位置の3次元座標の値と、前記第2撮像装置の第2位置の3次元座標の値とを推定する撮像装置座標推定部と、
前記第1位置および前記第2位置に基づいて、前記設置領域に含まれる複数の特定点のそれぞれの3次元座標の値を推定する特定点座標推定部と、
前記複数の特定点のそれぞれの3次元座標の値に基づいて、前記設置領域の面積を算出する算出部と、を備え、
前記標識は、3以上のポインタを備える2次元形状を有する、請求項6から11のいずれか記載の記憶装置。
【請求項13】
前記標識は、相互に色度が異なると共に略球形を有する3つの前記ポインタを頂点とする3角形を有する、請求項12記載の記憶装置。
【請求項14】
前記撮像装置座標推定部は、
前記第1画像に含まれる前記標識の傾きに基づいて、前記第1撮像装置の前記標識に対する方向を第1方向として推定し、
前記第1画像に含まれる前記標識の面積に基づいて、前記第1撮像装置と前記標識との距離を第1距離として推定し、
前記第2画像に含まれる前記標識の傾きに基づいて、前記第2撮像装置の前記標識に対する方向を第2方向として推定し、
前記第2画像に含まれる前記標識の面積に基づいて、前記第2撮像装置と前記標識との距離を第2距離として推定し、
前記第1方向および前記第1距離に基づいて、前記第1位置を推定し、
前記第2方向および前記第2距離に基づいて、前記第2位置を推定する、請求項12又は13記載の記憶装置。
【請求項15】
前記第1位置から得られる前記特定点の3次元座標の値である第1特定座標と、前記第2位置から得られる前記特定点の3次元座標の値である第2特定座標と、が一致しない場合には、
前記特定点座標推定部は、前記第1特定座標および前記第2特定座標から、前記特定点の3次元座標の値を近似する、請求項12から14のいずれか記載の記憶装置。
【請求項16】
前記画像および前記周辺情報の少なくとも一方を取得する携帯端末と、
請求項1から7のいずれか記載の記憶装置と、
前記画像に基づいて前記設置領域の面積を算出する面積算出手段と、
前記面積算出手段が算出する面積、前記記憶装置が記憶する前記周辺情報および前記原画の少なくとも一つに基づいて、前記設置領域に製作されるデザインの構成要素を算出する、デザイン製作システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−37946(P2012−37946A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174941(P2010−174941)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(503445054)マツノデザイン店舗建築株式会社 (4)
【出願人】(509121019)株式会社春田建設 (7)
【出願人】(591065549)福岡県 (121)
【Fターム(参考)】