説明

デジタルカメラ

【課題】被写体輝度が急変した際に生じるライブビュー画像や動画像の明るさの変化を抑制可能とする。
【解決手段】撮像素子134は、撮影レンズ180から入射した被写体光を光電変換して得られた電荷を蓄積し、蓄積された電荷量に応じて画像信号を出力することを所定タイミングで繰り返し行う。減光フィルタ184は、撮影レンズ180の光路に対して挿脱可能に構成される。撮像素子134から繰り返し出力される画像信号の変動をもとに被写体輝度の変化量が導出され、この被写体輝度の変化量が予め定められた閾値以上であるときに、被写体輝度の変化量の大きさに応じたタイミングまたは速さで減光フィルタ184がフィルタ駆動部190により挿脱駆動され、それにより前記撮像素子から出力される画像信号の変動が減じられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラに関し、特に被写体輝度の変化に対応し、NDフィルタを用いて露光量調節をすることの可能なデジタルカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラで背面液晶モニタや電子ビューファインダ(EVF)等のモニタ表示装置にライブビュー画像を表示したり、動画を撮影したりする際には、被写体輝度の変化に対応して露出調節が行われる。
【0003】
より広い輝度範囲に対応して露出調節を可能とするためにNDフィルタを備えるデジタルカメラがある。NDフィルタを備えるデジタルカメラでは、被写体輝度の高低に対応し、NDフィルタが撮影レンズの光路に対して挿脱される。
【0004】
このNDフィルタの挿脱は、比較的短時間のうちに行われるので、NDフィルタが撮影レンズの光路に挿入される際、あるいはNDフィルタが撮影レンズの光路から抜かれる際には撮像素子に入射する被写体光の光量が急変する。
【0005】
上述のように撮像素子に入射する被写体光の光量が急変すると、ライブビュー表示される画像や記録される動画像の明るさが一瞬変化する。例えば、NDフィルタが撮影レンズの光路に挿入された場合を例に説明すると、撮像素子に入射する被写体光の光量はNDフィルタが挿入されると急激に減少する。これに伴い、ライブビュー画像や動画像が急に暗くなる。その後、撮像素子に入射する光量の低下に対応して露出調節が行われるのでライブビュー画像や動画像の明るさは正常な明るさに戻る。
【0006】
結果として、ライブビュー画像や動画像の明るさが一瞬変化する。特許文献1では、上述した理由によってライブビュー画像や動画像の明るさが一瞬変化することを「輝度ショック」と称している。特許文献1では、撮影レンズの光路に対してNDフィルタを挿脱する際の輝度ショックを減じるため、NDフィルタの濃度が徐変するグラデーション部を設け、NDフィルタの挿脱に伴う撮像素子への入射光量の変化が緩やかになるようにする技術が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−35268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、撮影レンズの光路に対するNDフィルタの位置について考える。NDフィルタは、撮影レンズの光軸と略直交する面に沿って移動し、撮影レンズの光路に対して挿脱される。したがって、NDフィルタが光路外にある位置(退避位置と称する)と、NDフィルタのグラデーション部分が光路上にある位置(半減光位置と称する)と、NDフィルタの濃度が最も高く、かつNDフィルタを光束が透過する範囲内で濃度が均一に分布している部分が光路上にある位置(完全減光位置と称する)との三つの位置がある。加えて、特許文献1に開示されるものではグラデーション部の最低濃度部分(透明度の最も高い部分)に続いて透明部が備えられていて、その透明部が光路上にある位置もある。
【0009】
従って、NDフィルタを透過する光束の断面形状が円形であるものとすると、その光束を包括する大きさの円形を一つの平面上で四つ連ねた範囲を少なくとも含む移動空間が必要となる。その理由は、退避位置に対応する円形と、透明部が光路上にある位置に対応する円形と、半減光位置に対応する円形と、完全減光位置に対応する円形とは、これらの円形が互いに重なり合わないように並べて配置する必要があるからである。このようなNDフィルタを動かすための移動空間を撮影レンズの中に設けると、撮影レンズの外径が大きくなり、この撮影レンズを備えるカメラの大型化を免れない。
【0010】
また、被写体輝度が急激に増したような場合を考えると、被写体輝度が急に増すことにより輝度ショック(一瞬、表示画面が白く飛び、その後通常の表示明度に戻る)を生じる。さらに、被写体輝度が所定のレベル以上となったときに、光路外にあるNDフィルタが光路内に挿入される。つまり、2回にわたって輝度ショックを生じる可能性がある。上記特許文献によれば、NDフィルタの挿脱動作に伴う輝度ショックは抑制できても、被写体輝度が急変したことにより生じる輝度ショックは抑制できない。
【0011】
本発明は上記の問題に鑑み、なされたもので、カメラの大型化を招くことなく、被写体輝度が急変した際に生じるライブビュー画像や動画像の明るさの変化を抑制可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1) 本発明の一つの態様によれば、
撮影レンズから入射した被写体光を光電変換して得られた電荷を蓄積し、蓄積された電荷量に応じて画像信号を出力することを所定タイミングで繰り返し行う撮像素子と、
前記撮影レンズの光路に対して挿脱可能に構成され、前記光路に挿入されたときに前記撮像素子に入射する前記被写体光の光量を減じる減光フィルタと、
前記撮影レンズの光路外から光路内へ、または前記撮影レンズの光路内から光路外へ、前記減光フィルタを挿脱駆動するフィルタ駆動部と、
前記撮像素子から繰り返し出力される画像信号の変動をもとに被写体輝度の変化量を導出する被写体輝度変化量導出部と、
前記被写体輝度の変化量が予め定められた閾値以上であるときに、前記被写体輝度の変化量の大きさに応じたタイミングまたは速さで前記減光フィルタを挿脱駆動し、それにより前記撮像素子から出力される画像信号の変動が減じられるように前記フィルタ駆動部に制御信号を発するフィルタ駆動制御部と
をデジタルカメラが備える。
(2) 本発明の別の態様によれば、
撮影レンズから入射した被写体光を光電変換して得られた電荷を蓄積し、蓄積された電荷量に応じて画像信号を出力することを所定タイミングで繰り返し行う撮像素子と、
前記撮影レンズの光路に対して挿脱可能に構成され、前記光路に挿入されたときに前記撮像素子に入射する前記被写体光の光量を減じる減光フィルタと、
前記撮影レンズの光路外から光路内へ、または前記撮影レンズの光路内から光路外へ、前記減光フィルタを挿脱駆動するフィルタ駆動部と、
前記撮像素子から繰り返し出力される画像信号の変動をもとに被写体輝度の変化速度を導出する被写体輝度変化速度導出部と、
前記被写体輝度の変化速度が予め定められた閾値以上であるときに、前記被写体輝度の変化速度の大きさに応じたタイミングまたは速さで前記減光フィルタを駆動し、それにより前記撮像素子から出力される画像信号の変動が減じられるように前記フィルタ駆動部に制御信号を発するフィルタ駆動制御部と
をデジタルカメラが備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被写体輝度が急変した際に生じるライブビュー画像や動画像の明るさの変化を抑制可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】デジタルカメラの内部構成を概略的に説明するブロック図である。
【図2】システムコントローラが備える処理部をデジタルカメラの主要構成要素とともに示すブロック図である。
【図3】被写体輝度変化に伴って生じる露光量変化を説明するグラフである。
【図4】撮影レンズの光路に対してNDフィルタを挿脱したときに生じる露光量の過渡変化を説明するグラフである。
【図5】被写体輝度の増加に伴って撮像素子から出力される画像信号に生じる変動が抑制されるように撮影レンズの光路にNDフィルタを挿入するタイミングを調節する例を説明するグラフである。
【図6】被写体輝度の増加に伴って撮像素子から出力される画像信号に生じる変動が抑制されるように撮影レンズの光路にNDフィルタを挿入するタイミングを調節する別の例を説明するグラフである。
【図7】被写体輝度の減少に伴って撮像素子から出力される画像信号に生じる変動が抑制されるように撮影レンズの光路からNDフィルタを退避するタイミングを調節する例を説明するグラフである。
【図8】被写体輝度の増加に伴って撮像素子から出力される画像信号に生じる変動が抑制されるように撮影レンズの光路にNDフィルタを挿入する際の速度を調節する例を説明するグラフである。
【図9】被写体輝度の増加に伴って撮像素子から出力される画像信号に生じる変動が抑制されるように撮影レンズの光路にNDフィルタを挿入する際の速度を調節する別の例を説明するグラフである。
【図10】被写体輝度の変化に伴って撮像素子から出力される画像信号に生じる変動が抑制されるように撮影レンズの光路に対してNDフィルタを挿脱するタイミングを調節する際の処理手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係るデジタルカメラ10の概略的構成を示すブロック図である。本発明の実施の形態において、デジタルカメラ10は、撮影レンズ180を交換可能なデジタルスチルカメラで、撮影レンズ内に減光フィルタ(以下、NDフィルタと称する)を内蔵するものとして説明する。無論、他の形式のカメラ、例えば一眼レフレックス式のデジタルスチルカメラ、撮影レンズ固定式のデジタルスチルカメラ、撮影レンズ交換式または固定式のデジタルムービーカメラ等であってもよい。また、先にも説明したとおり、以下ではNDフィルタが撮影レンズ内に内蔵されるものとして説明するが、デジタルカメラ10の本体内に内蔵されていてもよい。特にデジタルカメラ10が撮影レンズ交換式のものである場合、デジタルカメラ10の本体内にNDフィルタを内蔵することにより、交換レンズのそれぞれにNDフィルタを設ける必要が無くなる。
【0016】
デジタルカメラ10は、システムコントローラ100と、操作スイッチ104と、不揮発性メモリ110と、DRAM116と、画像信号処理部(DSP)120と、表示制御部122と、画像表示部124と、アナログ・フロントエンド(図1中では「AFE」と表記されている)130と、タイミング・ジェネレータ(図1中では「TG」と表記されている)132と、撮像素子134とを備える。デジタルカメラ10には撮影レンズ180および画像データ記録媒体126が着脱自在に装着される。
【0017】
撮影レンズ180は、レンズエレメント181と、絞り装置182と、NDフィルタ184と、絞り駆動部186と、レンズCPU188と、フィルタ駆動部190と、レンズ駆動部192と、不揮発性メモリ194とを備える。不揮発性メモリ194には制御プログラム196と動作時間パラメータ198とが記憶される。不揮発性メモリ194はフラッシュメモリ等で構成される。
【0018】
NDフィルタ184は、撮影レンズ180の光路に対して挿脱可能に構成される。NDフィルタ184が撮影レンズ180の光路に対して挿入されると、レンズエレメント181を透過して撮像素子134の受光面に入射する被写体光の光量が減じられる。NDフィルタ184による減光段数は、デジタルカメラ10や撮影レンズ180の仕様等に応じて様々な値に設定可能である。例えば、撮影レンズ180の開放F値がF2.0、F1.4などといった比較的明るいものでは減光段数を比較的大きめに設定することにより、被写体輝度が比較的高い状況でも絞りを開け気味にしてボケ味を活かした撮影をすることが可能となる。
【0019】
フィルタ駆動部190は、撮影レンズ180の光路にNDフィルタ184が挿入された状態と、光路から退避した状態との間でNDフィルタ184を切替駆動する。このフィルタ駆動部190は、NDフィルタ184の位置を検出するスイッチ、NDフィルタ184を軸回りに回動駆動するアクチュエータ、NDフィルタ184を撮影レンズ180の光路に挿入された状態または退避した状態に保持する弾性部材等を備えて構成される。アクチュエータとしては、アイリスモータ、DCモータ、ステッピングモータ、あるいは界磁を発生させるコイルと永久磁石等とが組み合わされていて、コイルに電流を流してこれらコイルおよび永久磁石の間で相対動を生じさせるもの等を利用可能である。
【0020】
撮影レンズ180をデジタルカメラ10に装着してデジタルカメラ10の電源を投入するとデジタルカメラ10側から撮影レンズ180に電力が供給される。レンズCPU188は、不揮発性メモリ194内に記憶される制御プログラム196を読み込んで実行する。デジタルカメラ10の電源が投入されるとレンズCPU188はシステムコントローラ100と通信を開始する。そして、システムコントローラ100からの要求に応答して不揮発性メモリ194内に記憶される動作時間パラメータ198をシステムコントローラ100に送信する。
【0021】
動作時間パラメータ198としては、NDフィルタ184が撮影レンズ180の光路から退避した状態から挿入された状態にまで駆動するのに要する時間(挿入切替時間)と、撮影レンズ180の光路上に挿入された状態から退避した状態にまで駆動するのに要する時間(退避切替時間)とに関連する情報などが含まれる。すなわち、NDフィルタ184は機械的に動作するので、撮影レンズ180の光路に対して挿脱駆動される際、NDフィルタ184の駆動を開始してから完了するまでに時間を要する。この、NDフィルタ184の挿脱切替に要する時間に関する情報が動作時間パラメータ198に含まれる。
【0022】
撮影準備動作時(ユーザがデジタルカメラ10を被写体に向けてレリーズボタンを半押しし、ファーストレリーズスイッチをオンにしている状態のとき)、レンズCPU188はシステムコントローラ100から制御信号を受信し、この制御信号に基づいてレンズ駆動部192に制御信号を発し、レンズエレメント181内の焦点調節用レンズの光軸方向の位置を調節する。同じく撮影準備動作時、レンズCPU188はシステムコントローラ100から制御信号を受信し、この制御信号に基づいてフィルタ駆動部190に制御信号を発してNDフィルタ184を撮影レンズ180の光路に対して挿脱駆動する。
【0023】
露光動作開始時、レンズCPU188はシステムコントローラ100から絞り制御信号を受信する。レンズCPU188は、この絞り制御信号に基づいて絞り駆動部186内のアクチュエータに制御信号を発し、絞り装置182の開度(設定絞り値)を調節する。絞り込み動作の完了後、レンズCPU188は絞り込み動作完了を示す信号をシステムコントローラ100に出力する。
【0024】
撮像素子134は、単板式または多板式のCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサとすることが可能である。本発明の実施の形態において、撮像素子134はその受光面上にベイヤ配列のオンチップカラーフィルタが形成された単板式のCCDカラーイメージセンサであるものとして説明をする。撮像素子134は、撮影レンズ180から入射した被写体光を一定の時間にわたって光電変換して生成された電荷を蓄積する蓄積動作と、蓄積された電荷量に応じて画像信号を出力する動作である画像信号出力動作を行う。本発明の実施の形態においてデジタルカメラ10は、撮像素子134から繰り返し出力される画像信号を処理して測光、焦点調節状態の検出を行うものとする。
【0025】
アナログ・フロントエンド130は、撮像素子134から出力されるアナログ画像信号に対して相関二重サンプリング、増幅、A/D変換等の処理を行い、デジタル画像信号を生成する。このアナログ・フロントエンド130は、撮像素子134がCMOS撮像素子である場合、撮像素子134中に設けることも可能である。
【0026】
タイミング・ジェネレータ132は、画像信号処理部120から出力される指令に基づいてタイミングパルスを生成し、撮像素子134に出力する。撮像素子134は、このタイミングパルスに同期して上述した蓄積動作および画像信号出力動作を繰り返し行い、その都度アナログ・フロントエンド130に画像信号を出力する。
【0027】
DRAM116は、画像信号処理部120、システムコントローラ100の双方からアクセス可能に構成される揮発性メモリであり、上記画像信号処理部120、システムコントローラ100において後述する処理が行われる際の作業エリアとして用いられる。
【0028】
不揮発性メモリ110は、フラッシュメモリ等で構成される。不揮発性メモリ110には、調整用パラメータ112、制御プログラム114等が記憶される。
【0029】
画像データ記録媒体126は、メモリカード、小型ハードディスクドライブ、あるいは他の磁気記憶媒体等で構成され、デジタルカメラ10に対して着脱自在に構成される。デジタルカメラ10で生成された画像データは、この画像データ記録媒体126に記録される。あるいは、画像データ記録媒体126はデジタルカメラ10に内蔵されるものであってもよい。その場合、不揮発性メモリ110の中に画像データ記録用の領域を設けてもよい。
【0030】
画像表示部124は、TFT表示素子とバックライト装置、あるいは有機EL表示素子等で構成され、撮影して得られた画像をカラー表示することが可能に構成される。また、必要に応じてメニュー画面を表示したり、ユーザに情報を伝達するための文字表示やグラフィック表示をしたりすることも可能に構成される。
【0031】
表示制御部122は、画像信号処理部120から出力される信号に基づいて画像を表示するように画像表示部124を制御する。
【0032】
画像信号処理部120は、アナログ・フロントエンド130から出力されるデジタル画像信号を入力してDRAM116へ一時的に記憶する。画像信号処理部120は、DRAM116に記憶されるデジタル画像信号にデモザイク、ホワイトバランス補正、シェーディング補正、ノイズ低減、レベル補正、階調補正等の処理をして画像データを生成する。なお、本明細書中では、上記の処理をする前のものをデジタル画像信号と称し、処理をしたものをデジタル画像データと称する。画像信号処理部120は、デジタル画像データに対して必要に応じて圧縮処理をし、処理後の画像データを画像データ記録媒体126に記録する。
【0033】
ところで、画像データにはタグ情報が付加され、他の情報処理装置で画像を再生することができるように所定のファイルフォーマットで画像データ記録媒体126に記録される。この、タグ情報の付加や所定のファイルフォーマットで画像データ記録媒体126に記録する処理についてはシステムコントローラ100が行うようにしてもよい。
【0034】
画像信号処理部120はまた、撮像素子134から出力される画像信号をもとに生成された画像データや、画像データ記録媒体126から読み出された画像データに基づき、表示用画像データを生成して表示制御部122に出力する。表示制御部122は、受信した表示用画像データに基づく画像を画像表示部124に表示する。
【0035】
システムコントローラ100は、CPU、またはハードウェアロジック等で構成可能であるが、本実施の形態においてはCPUで構成されるものとする。システムコントローラ100とレンズCPU188等とはバス106等を介して電気的に接続されている。システムコントローラ100は、不揮発性メモリ110からDRAM116に転送された制御プログラム114を逐次読み込んで実行し、上述した各構成要素の動作を制御してデジタルカメラ10全体の動作を制御する。
【0036】
調整用パラメータ112について説明する。デジタルカメラ10を構成する機械部品や電子部品には製造上のばらつきがある。それらのばらつきによって、同じ制御プログラムに基づいて個々のデジタルカメラ10を制御しても、動作や精度は個々のカメラごとに異なる場合がある。調整用パラメータ112は、このようなばらつきを減じるために製造・調整過程で個々のデジタルカメラ10に対応して書き込まれる。
【0037】
調整用パラメータ112には、機械部品の動作ばらつきの補正、測光部164の測光精度調整、アナログ・フロントエンド130でのゲイン調整、あるいはAD変換に際してのレベルやリニアリティ等の調整をするための情報等、様々な調整用情報を記憶可能に構成される。
【0038】
操作スイッチ104は、レリーズスイッチ、スライドスイッチ、ダイヤルスイッチ、プッシュスイッチ等、デジタルカメラ10に設けられる各種スイッチを総称したものである。ユーザが操作スイッチ104を用いて、絞り値、シャッタ速度、等価ISO感度、露出モード等の設定、カメラの動作モード(記録モード/再生モード等)の切り替え、メニュー選択、撮影動作の開始等の操作をすることが可能となる。
【0039】
図2は、システムコントローラ100が備える処理部を説明するブロック図である。図2には、システムコントローラ100が、図1に示される構成要素中の一部の構成要素とともに示されている。システムコントローラ100は、測光処理部200と、撮像パラメータ導出部202と、フィルタ駆動制御部204と、絞り駆動制御部206と、レンズ駆動制御部208とを備える。不揮発性メモリ110からDRAM116に転送された制御プログラム114をシステムコントローラ100が逐次読み込んで実行することにより、上述した各処理部が機能する。
【0040】
測光処理部200は、アナログ・フロントエンド130を介して撮像素子134から繰り返し出力される画像信号を逐次処理して測光処理を行い、被写体輝度を導出する。すなわち、デジタルカメラ10の測光モードが分割測光、中央部重点測光、スポット測光、平均測光等のうちのいずれかに設定されているのに応じて画像信号を処理することにより被写体輝度を導出する。
【0041】
撮像パラメータ導出部202は、測光処理部200で導出された被写体輝度に基づき、後続するタイミングにおいて撮像素子134で実行される蓄積動作に際しての動作パラメータを導出する。動作パラメータとしては、撮像素子134の蓄積時間(電子シャッタ時間)や、撮像素子134から出力されるアナログ画像信号をアナログ・フロントエンド130で増幅する際のゲイン等を含むことが可能である。
【0042】
ところで、図1を参照して先に説明したように、システムコントローラ100はバス106を介してレンズCPU188に接続されており、システムコントローラ100はレンズCPU188を介して間接的にフィルタ駆動部190、絞り駆動部186、レンズ駆動部192を制御する。図2ではレンズCPU188の図示を省略し、以下ではシステムコントローラ100中のフィルタ駆動制御部204、絞り駆動制御部206、レンズ駆動制御部208がそれぞれフィルタ駆動部190、絞り駆動部186、レンズ駆動部192を制御するものとして説明する。同様に、不揮発性メモリ194もレンズCPU188に接続されていて、動作時間パラメータ198はレンズCPU188を介してシステムコントローラ100に出力されるが、以下では動作時間パラメータ198がシステムコントローラ100に直接出力されるものとして説明をする。
【0043】
動作時間パラメータ198には、NDフィルタ184が撮影レンズ180の光路から退避した状態から挿入された状態にまで駆動するのに要する時間(挿入切替時間)と、撮影レンズ180の光路上に挿入された状態から退避した状態にまで駆動するのに要する時間(退避切替時間)とに関連する情報が、NDフィルタ動作パラメータ198Aとして含まれる。
【0044】
ところで、NDフィルタがデジタルカメラ10の本体内に備えられていてもよいことについて先に説明した。その場合、NDフィルタ184、フィルタ駆動部190がデジタルカメラ100内に備えられ、NDフィルタ動作パラメータ198Aがデジタルカメラ100内に備えられる不揮発性メモリ110内に記憶されるようにすればよい。NDフィルタ184がデジタルカメラ10の本体内に備えられる場合、NDフィルタ184は機械的に作動して撮影レンズ180の光路に対して挿抜可能に構成されるものであっても、透明基板上に形成されて光学濃度を電気化学的に変化させることが可能に構成されるエレクトロクロミック素子や液晶素子等の素子が撮影レンズ180と撮像素子134との間に配置されるものであってもよい。
【0045】
NDフィルタ184がエレクトロクロミック素子や液晶素子等で構成される場合、フィルタ駆動部190はその素子を駆動して光学濃度を変化させるための電気回路となる。NDフィルタ動作パラメータ198Aとしては、光学濃度を増すのに要する時間(挿入切替時間に相当)、光学濃度を減じるのに要する時間(退避切替時間に相当)に関連する情報が記憶されればよい。
【0046】
レンズ駆動制御部208は、レンズ駆動部192に制御信号を出力してレンズエレメント181中の焦点調節用レンズをレンズエレメント181の光軸Oに沿って前後方向(撮像素子134から遠ざかる方向/近づく方向)に移動させる。すなわち、アナログ・フロントエンド130を介して撮像素子134から繰り返し出力される画像信号が画像信号処理部120で逐次処理されてコントラスト値が導出される。レンズ駆動制御部208は、このコントラスト値の変化に基づいてレンズ駆動部192に制御信号を出力し、撮像素子134上に形成される被写体像のコントラストが増す方向に焦点調節用レンズを駆動するようレンズ駆動部192に制御信号を出力する。
【0047】
絞り駆動制御部206は、撮影動作に先立って予め決定されている絞り値が得られるように、撮影動作時に絞り駆動部186へ制御信号を出力する。絞り駆動部186は、絞り駆動制御部206から出力される制御信号に基づき、絞り装置182の開口径を調節する。
【0048】
フィルタ駆動制御部204は、撮影レンズ180の光路に対してNDフィルタ184を挿脱するようにフィルタ駆動部190へ制御信号を発する。このとき、フィルタ駆動制御部204は、以下で詳しく説明するように、被写体輝度の変化に対応してフィルタ駆動部190へ制御信号を出力する。
【0049】
ここで、デジタルカメラ10はライブビュー画像を画像表示部124に表示する状態にあるものとする。このとき、デジタルカメラ10が動画記録モードで動作していて、動画像データが画像データ記録媒体126に記録されていてもよい。また、撮像素子134において同じ条件で蓄積動作および画像信号出力動作が行われているときに被写体輝度が増減するとそれにつれて画像信号の出力レベルも増減する。以下ではこのように画像信号の出力レベルが増減することを「信号レベルが増加する」、「信号レベルが低下する」と称する。
【0050】
例えば、最初、デジタルカメラ10が日陰に位置する被写体に向けられていて、NDフィルタ184は撮影レンズ180の光路から退避しているものとする。その後、デジタルカメラ10が日向に位置する被写体に向けられると、被写体輝度は増す。このとき、撮像素子134では上述した蓄積動作および画像信号出力動作が繰り返し行われていて、撮像素子134から出力される画像信号の信号レベルは過渡的に増加する。
【0051】
その様子が図3に示されている。図3は、被写体輝度の変化に伴う露光量の変化を、縦軸に露光量変化を、横軸に経過する時間をとって示すグラフである。図3において、計時の基準となる時刻(0ミリ秒経過時点)ではデジタルカメラ10が日陰の被写体に向けられていて、50ミリ秒後にカメラの向きが変えられ始め、400ミリ秒後に日向の被写体に向け終わっている様子が描かれている。以下では、デジタルカメラ10において50ミリ秒間隔で蓄積動作および画像信号出力動作が行われるものとして説明をする。
【0052】
被写体輝度が図3中で符号Bを付した曲線で示されるように変化するものとする。0ミリ秒から50ミリ秒の間の時間帯内で撮像素子134により行われた蓄積動作および画像信号出力動作の結果得られた画像信号をもとに測光処理が測光処理部200で行われ、後続する時間周期で蓄積動作および画像信号出力動作が行われる際の動作パラメータが撮像パラメータ導出部202で導出される。
【0053】
上記動作パラメータに基づき、50ミリ秒から100ミリ秒の間の時間帯内で蓄積動作および画像信号出力動作が行われる。このとき、被写体輝度が符号Bを付した破線で示されるように増すことにより、撮像素子134の受光面上に入射する被写体光の光量(像面照度)が符号C1を付した曲線で示されるように増すので露光量が増す。概念的には、図3中でハッチングを施した領域の面積に比例した露光量オーバーを生じる。
【0054】
従って、50ミリ秒から100ミリ秒の間の時間帯内で撮像素子134により行われた蓄積動作および画像信号出力動作の結果得られる画像信号の信号レベルは増加する。その結果、ライブビュー画像や動画像は明るくなる。続いて、50ミリ秒から100ミリ秒の間の時間帯内で撮像素子134により行われた蓄積動作および画像信号出力動作の結果得られる画像信号をもとに、被写体輝度の導出と、100ミリ秒から150ミリ秒の間の時間帯内で蓄積動作および画像信号出力動作が行われる際の動作パラメータの導出とが行われる。
【0055】
以上のように、100ミリ秒から150ミリ秒の間の時間帯内で蓄積動作および画像信号出力動作が行われる際の動作パラメータは、50ミリ秒から100ミリ秒の時間帯内で行われた蓄積動作および画像信号出力動作の結果得られた画像信号から導出される。一方、被写体輝度は100ミリ秒から150ミリ秒の間の時間帯内で依然として増加している。したがって、撮像素子134の受光面上での像面照度が符号C2を付した曲線で示されるように増す。
【0056】
一つ前の時間周期で得られた画像信号から、次の時間周期で行われる蓄積動作および画像信号出力動作の動作パラメータが決定される結果、被写体輝度が符号Bを付した曲線で示されるように変化すると、撮像素子134の受光面上での像面照度は符号C1、C2、…、C7を付した曲線で示されるように変化する。
【0057】
図4は、被写体輝度一定の条件のもとで撮影レンズ180の光路に対してNDフィルタ184が挿入される際および退避される際の露光量の変化を示すグラフである。図4において、NDフィルタ184の露出倍数は3(光量を1/8に減じる濃度を有する)であるものとしてグラフが示されている。
【0058】
撮影レンズ180の光路に対してNDフィルタ184の挿入を開始してから完了するまでの過渡状態において、レンズエレメント181中を進む光束の一部が減衰される状態から全部が減衰される状態に変化する。図4の例では、ある基準時刻から100ミリ秒が経過した時点から140ミリ秒が経過した時点までの間で撮像素子134の受光面上での像面照度が減少する様子が符号C10を付した屈曲線によって示されている。
【0059】
また、撮影レンズ180の光路からNDフィルタ184の退避を開始してから完了するまでの過渡状態において、レンズエレメント181中を進む光束の全部が減衰される状態から一部が減衰される状態に変化する。図4の例では、ある基準時刻から350ミリ秒が経過した時点から約390ミリ秒が経過した時点までの間で撮像素子134の受光面上での像面照度が増加する様子が符号C11を付した屈曲線によって示されている。
【0060】
本発明においては、撮影レンズ180の光路に対してNDフィルタ184を挿脱する際に生じる撮像素子134の受光面上での像面照度の上述した過渡変化を利用して被写体輝度の変化に伴う露光量の変化(画像信号の出力レベルの変化)を抑制する。
【0061】
図5、図6は、被写体輝度の変化量(増加量)が予め定められた閾値以上である場合に撮影レンズ180の光路に対してNDフィルタ184が挿入され、その結果として被写体輝度の変化によって生じる露光量の変化が抑制される様子を示すグラフである。被写体輝度の変化が、図5においては符号B1を付した破線で示され、図6においては符号B2を付した破線で示される。図5に例示される被写体輝度変化の方が図6に例示される被写体輝度変化よりも大きくなっている。
【0062】
図5、図6のグラフにおいても、縦軸に露光量変化を、横軸に経過する時間をとり、被写体輝度の変化に伴う露光量の変化を示している。図5、図6のグラフにはまた、NDフィルタ184を撮影レンズ180の光路に対して挿入した場合の露光量変化を示すグラフを符号C58(図5)、符号C68(図6)を付した屈曲線で示しており、縦方向の座標軸を図5、図6の右側に示している。
【0063】
図5、図6において、図3と同様、計時の基準となる時刻(0ミリ秒経過時点)においてはデジタルカメラ10が日陰の被写体に向けられていて、50ミリ秒後にカメラの向きが変えられ始め、400ミリ秒後に日向の被写体に向け終わっている様子が描かれている。
【0064】
撮像素子134で蓄積動作および画像信号出力動作が繰り返し行われるのに応じて出力される画像信号をもとに測光処理部200で被写体輝度が繰り返し導出され、被写体輝度の変化量が導出される。図5、図6に示される例においてフィルタ駆動制御部204は、被写体輝度の変化量が予め定められた閾値以上であるときに、以下に説明するように被写体輝度の変化量の大きさに応じたタイミングでNDフィルタ184を撮影レンズ180の光路に挿入する。
【0065】
図5においては、基準の時刻から50ミリ秒が経過した時点で導出された被写体輝度に対して100ミリ秒が経過した時点(以下ではこれを「100ミリ秒の時点」などと称する)で導出された被写体輝度が3EV相当増加している。同様に、図6においては2EV相当増加している。撮影レンズ180の光路にNDフィルタ184を挿入する/しないの判定をする際の閾値が2EVであるものとして説明すると、図5、図6に例示される両方の場合において、被写体輝度の変化量が閾値以上であるので、フィルタ駆動制御部204は、NDフィルタ184を撮影レンズ180の光路中に挿入する決定を100ミリ秒の時点で行う。このとき、フィルタ駆動制御部204は、NDフィルタ184を撮影レンズ180の光路中に挿入する際のタイミングを、上述した被写体輝度の変化量の大きさに基づいて決定する。
【0066】
フィルタ駆動制御部204で行われる上記タイミングの決定は以下のように行われる。すなわち、撮像素子134による複数回の蓄積動作にまたがってフィルタ駆動部190によるNDフィルタ184の駆動開始(撮影レンズ180の光路への挿入開始)から駆動完了(撮影レンズ180の光路への挿入完了)までの動作が行われるように上記タイミングを決定する。その上でフィルタ駆動制御部204は、被写体輝度の変化量が比較的大きい場合の上記タイミングを、被写体輝度の変化量が比較的小さい場合の上記タイミングに比して遅くなるように決定をする。
【0067】
その様子が図5、図6に示されている。50ミリ秒の時点から100ミリ秒の時点の間で3EV相当の被写体輝度の変化が検出された例を示す図5では、NDフィルタ184の駆動開始タイミングがおよそ130ミリ秒の時点に設定され、その結果、NDフィルタ184の駆動開始から駆動完了までの時間が150ミリ秒の時点を境に略均等に振り分けられている。一方、50ミリ秒の時点から100ミリ秒の時点の間で2EV相当の被写体輝度の変化が検出された例を示す図6では、NDフィルタ184の駆動開始タイミングがおよそ120ミリ秒の時点に設定され、NDフィルタ184の駆動開始から駆動完了までの時間が150ミリ秒の時点よりも早い側でより多く費やされるようにタイミングが決定される。
【0068】
これらのタイミングについては、被写体輝度の変化量とNDフィルタの駆動開始タイミングとの関係を定めたテーブルが不揮発性メモリ110中に予め記憶されていて、それを参照するようにしてもよいし、関数等を用いて導出するようにしてもよい。
【0069】
その後、図5、図6の両例において、100ミリ秒の時点で撮像パラメータ導出部202により導出された撮像パラメータに基づいて、100ミリ秒から150ミリ秒にかけての時間区間で撮像素子134による蓄積動作および画像信号出力動作が行われる。これらの蓄積動作および画像信号出力動作と並行して、フィルタ駆動制御部204は、上述のようにして決定したタイミングの計時を100ミリ秒の時点から開始する。そして、決定したタイミングに達した時点でフィルタ駆動部190に制御信号を発する。その結果、図5、図6に示されるように撮影レンズ180の光路に対するNDフィルタ184の挿入開始から挿入完了までの動作が行われる。
【0070】
図5におけるC51、C52、…、C57の符号を付した曲線あるいは屈曲線、そして図6におけるC61、C62、…、C67の符号を付した曲線あるいは屈曲線は、上述した被写体輝度の変化、撮像素子134で繰り返し行われる蓄積動作および画像信号出力動作における動作条件の変更、撮影レンズ180の光路へのNDフィルタ184の挿入開始から終了までの間で生じる撮像素子134の受光面上での像面照度の過渡変化に伴う露光量変化(撮像素子134から得られる画像信号のレベルの変化)を概念的に示している。これらのC51、C52、…、C57、そしてC61、C62、…、C67の符号を付した曲線あるいは屈曲線それぞれを、対応する時間区間ごとに時間軸に沿って積分して得たものが、50ミリ秒から100ミリ秒にかけての時間区間、100ミリ秒から150ミリ秒にかけての時間区間、…、350ミリ秒から400ミリ秒にかけての時間区間のそれぞれにおける露光量誤差に対応したものとなる。各時間区間における露光量誤差(露光量の変動)は、撮像素子134から得られる画像信号の変動を生じ、これがライブビュー画像や記録される動画像における明るさの変動の原因となる。しかし、本発明の実施の形態に係るデジタルカメラ10では、以下の説明で明らかになるように、画像信号の変動が抑制されるようにNDフィルタ184の撮影レンズ180の光路に対する挿脱駆動が行われる。
【0071】
図5および図6において、100ミリ秒から150ミリ秒にかけての時間区間および150ミリ秒から200ミリ秒にかけての時間区間にまたがるようにしてNDフィルタ184を撮影レンズ180の光路に挿入する動作が行われる結果、露光量誤差(画像信号の変動)を複数の時間区間にわたって抑制することが可能となる。
【0072】
ここで、NDフィルタ184を撮影レンズ180の光路に挿入することにより生じる撮像素子134の受光面上での像面照度の過渡的な減少を過渡減少と称して説明をすると、図5に示す例では過渡減少が符号T51、T52を付した破線で示されるように、両時間区間で略均等に振り分けられている。これは、50ミリ秒から100ミリ秒にかけての時間区間での蓄積動作および画像信号出力動作の結果導出された被写体輝度の変化量が比較的大きいことから、後続する複数の時間区間、すなわち100ミリ秒から150ミリ秒にかけての時間区間および150ミリ秒から200ミリ秒にかけての時間区間においても比較的大きな被写体輝度の変化が予想されることに対応している。つまり、露光量の変動(画像信号の変動)を過渡減少によって抑制する際、過渡減少の効果を複数の時間区間に略均等に振り分けることにより、これら複数の時間区間における画像信号の変動を効果的に抑制することができる。
【0073】
一方、図6に示す例では、符号T61、T62を付した破線で示されるように、150ミリ秒から200ミリ秒にかけての時間区間よりも100ミリ秒から150ミリ秒にかけての時間区間において、より多くの過渡減少が割り振られている。これは、50ミリ秒から100ミリ秒にかけての時間区間での蓄積動作および画像信号出力動作の結果導出された被写体輝度の変化量が、図5に示す例よりも小さいことから、後続する時間区間での被写体輝度の変化量が減少しやすいと予想されることに対応している。この場合、100ミリ秒から150ミリ秒にかけての時間区間および150ミリ秒から200ミリ秒にかけての時間区間のうち、被写体輝度の変化量がより多いと予想される100ミリ秒から150ミリ秒にかけての時間区間に対してより多くの過渡減少を割り振る。その結果、100ミリ秒から150ミリ秒にかけての時間区間および150ミリ秒から200ミリ秒にかけての時間区間の両時間区間において過渡減少による露光量の変動(画像信号の変動)をバランス良く抑制することができる。
【0074】
図5、図6を参照しての以上の説明では、被写体輝度が増加する方向に変化した場合の動作を示したが、被写体輝度が減少する方向に変化した場合も同様の動作をすることが可能である。その例について図7を参照して説明する。
【0075】
図7は、被写体輝度の変化量(減少量)が予め定められた閾値以上である場合に撮影レンズ180の光路からNDフィルタ184が退避され、その結果として被写体輝度の変化によって生じる露光量の変化が抑制される様子を示すグラフである。被写体輝度の変化が符号B3を付した破線で示される。なお、以下の説明の前提として、0ミリ秒の時点でNDフィルタ184は撮影レンズ180の光路上に挿入された状態にあるものとする。
【0076】
図7のグラフにおいても、縦軸に露光量変化を、横軸に経過する時間をとり、被写体輝度の変化に伴う露光量の変化を示している。また、NDフィルタ184を撮影レンズ180の光路から退避した場合の露光量変化を示すグラフを、符号C78を付した屈曲線で示しており、縦方向の座標軸を図7の右側に示している。
【0077】
図7では、計時の基準となる時刻(0ミリ秒経過時点)ではデジタルカメラ10が日向の被写体に向けられていて、50ミリ秒後にカメラの向きが変えられ始め、400ミリ秒後に日陰の被写体に向け終わっている様子が描かれている。
【0078】
撮像素子134で蓄積動作および画像信号出力動作が繰り返し行われるのに応じて出力される画像信号をもとに測光処理部200で被写体輝度が繰り返し導出され、被写体輝度の変化量が導出される。図7に示される例において、被写体輝度の変化量が予め定められた閾値以上であるとフィルタ駆動制御部204で判定され、図5、図6を参照して説明したのと同様、被写体輝度の変化量の大きさに応じて決定されたタイミングでNDフィルタ184が撮影レンズ180の光路から退避される。
【0079】
50ミリ秒の時点で導出された被写体輝度に対して100ミリ秒の時点で導出された被写体輝度が3EV相当減少している。撮影レンズ180の光路からNDフィルタ184を退避する/しないの判定をする際の閾値が2EVであるものとして説明すると、図7に示される例では被写体輝度の変化量が閾値以上の3EVであるので、フィルタ駆動制御部204は、NDフィルタ184を撮影レンズ180の光路中から退避する決定を100ミリ秒の時点で行う。このとき、フィルタ駆動制御部204は、NDフィルタ184を撮影レンズ180の光路中から退避する際のタイミングを、被写体輝度の変化量の大きさに基づいて決定する。そのタイミングの決定方法は、図5、図6を参照して説明したものと同様とすることが可能であるのでここでは説明を省略する。
【0080】
100ミリ秒の時点で撮像パラメータ導出部202により導出された撮像パラメータに基づいて、100ミリ秒から150ミリ秒にかけての時間区間で撮像素子134による蓄積動作および画像信号出力動作が行われる。これらの蓄積動作および画像信号出力動作と並行して、フィルタ駆動制御部204は、上述のようにして決定したタイミングの計時を100ミリ秒の時点から開始する。そして、決定したタイミングに達した時点でフィルタ駆動部190に制御信号を発する。その結果、図7に示されるように撮影レンズ180の光路に対するNDフィルタ184の退避開始から退避完了までの動作が行われる。
【0081】
図7におけるC71、C72、…、C77の符号を付した曲線あるいは屈曲線は、上述した被写体輝度の変化、撮像素子134で繰り返し行われる蓄積動作および画像信号出力動作における動作条件の変更、撮影レンズ180の光路からのNDフィルタ184の退避開始から終了までの間で生じる撮像素子134の受光面上での像面照度の過渡変化に伴う露光量変化(撮像素子134から得られる画像信号のレベルの変化)を概念的に示している。これらのC71、C72、…、C77の符号を付した曲線あるいは屈曲線それぞれを対応する時間区間ごとに時間軸に沿って積分して得たものが、50ミリ秒から100ミリ秒にかけての時間区間、100ミリ秒から150ミリ秒にかけての時間区間、…、350ミリ秒から400ミリ秒にかけての時間区間のそれぞれにおける露光量誤差に対応したものとなる。各時間区間における露光量誤差(露光量の変動)は、撮像素子134から得られる画像信号の変動を生じるが、NDフィルタ184を撮影レンズ180の光路から退避する際のタイミングを制御することによって上記画像信号の変動が抑制される。
【0082】
図7において、100ミリ秒から150ミリ秒にかけての時間区間および150ミリ秒から200ミリ秒にかけての時間区間において、NDフィルタ184を撮影レンズ180の光路から退避する動作が行われる結果、露光量誤差(画像信号の変動)が複数の時間区間にわたって減じることが可能となる。
【0083】
ここで、NDフィルタ184を撮影レンズ180の光路から退避することにより生じる撮像素子134の受光面上での像面照度の過渡的な増加を過渡増加と称して説明をすると、図7に示す例では符号T71、T72を付した破線で示される過渡増加が得られるようにNDフィルタ184の駆動開始タイミングを制御することにより、100ミリ秒から150ミリ秒にかけての時間区間および150ミリ秒から200ミリ秒にかけての時間区間において露光量の変動(画像信号の変動)が過渡増加によって抑制される。
【0084】
以上、図5から図7を参照しての説明では、被写体輝度の変化に伴って撮像素子から出力される画像信号の変動が減じられるようにするため、被写体輝度の変化量の大きさに応じたタイミングでNDフィルタ184の挿脱駆動をする例について説明した。これに対して、以下では図8、図9を参照し、被写体輝度の変化量の大きさに応じた速さでNDフィルタ184を挿脱駆動する例について説明する。
【0085】
図8、図9は、被写体輝度の変化量(増加量)が予め定められた閾値以上である場合に撮影レンズ180の光路に対してNDフィルタ184が挿入され、その結果として被写体輝度の変化によって生じる露光量の変化が抑制される様子を示すグラフである。被写体輝度の変化が、図8においては符号B4を付した破線で示され、図9においては符号B5を付した破線で示される。図8に例示される被写体輝度変化の方が図9に例示される被写体輝度変化よりも大きくなっている。
【0086】
図8、図9のグラフにおいても、縦軸に露光量変化を、横軸に経過する時間をとり、被写体輝度の変化に伴う露光量の変化を示している。図8、図9のグラフにはまた、NDフィルタ184を撮影レンズ180の光路に対して挿入した場合の露光量変化を示すグラフを、符号C88(図8)、C98(図9)を付した屈曲線で示しており、縦方向の座標軸を図8、図9の右側に示している。
【0087】
図8、図9では、図3、図5、図6と同様、計時の基準となる時刻(0ミリ秒の時点)ではデジタルカメラ10が日陰の被写体に向けられていて、50ミリ秒の時点でカメラの向きが変えられ始め、400ミリ秒の時点で日向の被写体に向け終わっている様子が描かれている。
【0088】
図8、図9に示される例においてフィルタ駆動制御部204は、被写体輝度の変化量が予め定められた閾値以上であるとき、NDフィルタ184を撮影レンズ180の光路に挿入し、その際に、以下に説明するように被写体輝度の変化量の大きさに応じた速さでNDフィルタ184が撮影レンズ180の光路に挿入されるようにする。
【0089】
図8においては、基準の時刻から50ミリ秒の時点で導出された被写体輝度に対して100ミリ秒の時点で導出された被写体輝度が3EV相当増加している。同様に、図9においては2EV相当増加している。撮影レンズ180の光路にNDフィルタ184を挿入する/しないの判定をする際の閾値が2EVであるものとして説明すると、図8、図9に例示される両方の場合において、被写体輝度の変化量が閾値以上であるので、フィルタ駆動制御部204は、NDフィルタ184を撮影レンズ180の光路中に挿入する決定を100ミリ秒の時点で行う。このとき、フィルタ駆動制御部204は、NDフィルタ184を撮影レンズ180の光路中に挿入する際の速度(以下、フィルタ挿入速度と称する)を、上述した被写体輝度の変化量の大きさに基づいて決定する。
【0090】
50ミリ秒の時点から100ミリ秒の時点の間で3EV相当の被写体輝度の変化が検出された例を示す図8では、NDフィルタ184の駆動開始から駆動完了までの時間が約200ミリ秒に設定される。一方、50ミリ秒の時点から100ミリ秒の時点の間で2EV相当の被写体輝度の変化が検出された例を示す図9では、NDフィルタ184の駆動開始から駆動完了までの時間が約125ミリ秒に設定される。これらの時間については、被写体輝度の変化量と、NDフィルタの駆動開始から駆動完了までの時間との関係を定めたテーブルが不揮発性メモリ110中に予め記憶されていて、それを参照するようにしてもよいし、関数等を用いて導出するようにしてもよい。
【0091】
その後、図8、図9の両例において、100ミリ秒の時点で撮像パラメータ導出部202により導出された撮像パラメータに基づいて、100ミリ秒から150ミリ秒にかけての時間区間で撮像素子134による蓄積動作および画像信号出力動作が行われる。これらの蓄積動作および画像信号出力動作と並行して、フィルタ駆動制御部204は、100ミリ秒の時点でNDフィルタの挿入動作を開始するようにフィルタ駆動部190に制御信号を発する。そして、被写体輝度の変化量に応じて決定されたフィルタ挿入速度でNDフィルタの挿入動作が行われるようにフィルタ駆動部190に制御信号を発する。その結果、図8、図9に示されるように撮影レンズ180の光路に対するNDフィルタ184の挿入開始から挿入完了までの動作が行われる。
【0092】
図8におけるC81、C82、…、C87の符号を付した曲線あるいは屈曲線、そして図9におけるC91、C92、…、C97の符号を付した曲線あるいは屈曲線は、上述した被写体輝度の変化、撮像素子134で繰り返し行われる蓄積動作および画像信号出力動作における動作条件の変更、撮影レンズ180の光路へのNDフィルタ184の挿入開始から終了までの間で生じる撮像素子134の受光面上での像面照度の過渡変化に伴う露光量変化(撮像素子134から得られる画像信号のレベルの変化)を概念的に示している。
【0093】
これらのC81、C82、…、C87、そしてC91、C92、…、C97の符号を付した曲線あるいは屈曲線それぞれを対応する時間区間ごとに時間軸に沿って積分して得たものが、50ミリ秒から100ミリ秒にかけての時間区間、100ミリ秒から150ミリ秒にかけての時間区間、…、350ミリ秒から400ミリ秒にかけての時間区間のそれぞれにおける露光量誤差に対応したものとなる。先にも説明したように、各時間区間における露光量誤差(露光量の変動)は、撮像素子134から得られる画像信号の変動を生じ、これがライブビュー画像や記録される動画像における明るさの変動の原因となる。しかし、本発明の実施の形態に係るデジタルカメラ10では、以下の説明で明らかになるように、画像信号の変動が抑制されるようにフィルタ挿入速度が設定され、撮影レンズ180の光路に対するNDフィルタ184の挿入駆動が行われる。
【0094】
図8に示す例では、およそ100ミリ秒から300ミリ秒にかけての時間区間でNDフィルタ挿入動作が行われる。つまり、約200ミリ秒の時間にわたる過渡減少を生じる。図8中、50ミリ秒の時間区間ごとの過渡減少が符号T81、T82、T83、T84を付した破線で示される。これらの過渡減少により、被写体輝度の変動による画像信号の変動は符号C82、C83、C84、C85が付された屈曲線または曲線で示されるように抑制される。これらの符号C82、C83、C84、C85が付された屈曲線または曲線とともに描かれている破線の曲線は、NDフィルタ挿入動作が行われなかった場合の露光量変化(画像信号の変動)を示している。
【0095】
図8に示す例では、50ミリ秒から100ミリ秒にかけての時間区間での蓄積動作および画像信号出力動作の結果導出された被写体輝度の変化量が比較的大きいことから、比較的長い時間にわたって比較的大きな被写体輝度の変化を生じることが予想されることに対応したものとなっている。つまり、露光量の変動(画像信号の変動)を過渡減少によって抑制する際、過渡減少の効果がより長い時間にわたって得られるようにして、画像信号の変動を抑制する効果がより長い時間にわたって得られるようにする。
【0096】
図9においては、およそ100ミリ秒から225ミリ秒にかけての時間区間でNDフィルタ挿入動作が行われる。つまり、約125ミリ秒の時間にわたる過渡減少を生じる。図9中、過渡減少が符号T91、T92、T93を付した破線で示される。この過渡減少により、被写体輝度の変動による画像信号の変動は符号C92、C93、C94が付された曲線または屈曲線で示されるように抑制される。これらの符号C92、C93、C94が付された屈曲線または曲線とともに描かれている破線の曲線は、NDフィルタ挿入動作が行われなかった場合の露光量変化(画像信号の変動)を示している。
【0097】
図9に示す例では、50ミリ秒から100ミリ秒にかけての時間区間での蓄積動作および画像信号出力動作の結果導出された被写体輝度の変化量が、図8に示す例よりも小さいことから、後続する時間区間での被写体輝度の変化量が減少しやすいと予想されることに対応したものとなっている。つまり、露光量の変動(画像信号の変動)を過渡減少によって抑制する際、被写体輝度の変化量が比較的大きいうちに過渡減少の効果を配分することにより、画像信号の変動をバランス良く抑制することが可能となる。また、被写体輝度の変動は安定域に入っているのにもかかわらず、NDフィルタ挿入動作はまだ継続していて、それが逆に画像信号の変動の原因となってしまうことを抑制することが可能となる。
【0098】
以上の図8、図9を参照しての説明では、被写体輝度が増加する方向に変化した場合の動作を示したが、被写体輝度が減少する方向に変化した場合も同様の動作をすることが可能である。
【0099】
図10は、デジタルカメラ10でライブビュー表示や動画像記録が行われているときにシステムコントローラ100により実行される画像信号変動抑制制御の処理手順を説明する概略フローチャートである。以下、図5、図7のグラフを適宜参照しつつ、図10のフローチャート中の処理手順について説明する。
【0100】
S1000では撮像素子134による蓄積動作(撮像動作)とアナログ・フロントエンド130を介しての画像信号出力動作とが行われる。S1002では、アナログ・フロントエンド130を介して撮像素子134から出力された画像信号をもとに測光処理が行われる。ここで、測光処理は、アナログ・フロントエンド130を介して撮像素子134から出力された画像信号を用いて行われるものとする。
【0101】
S1004では、S1002での測光処理結果に基づき、被写体輝度を導出する処理が行われる。例えば、デジタルカメラ10が分割測光、中央部重点測光、スポット測光、平均測光等のうちのいずれかの測光モードに設定されているのに応じて、被写体輝度の導出が行われる。導出された被写体輝度は一時的に記憶される。
【0102】
S1006では、撮像パラメータ導出処理が行われる。撮像パラメータは、撮像素子134で後続して行われる蓄積動作における蓄積時間や、撮像素子134から出力されるアナログ画像信号をアナログ・フロントエンド130で増幅する際のゲイン等に関連する情報を含む。
【0103】
例えば、図5の50ミリ秒から100ミリ秒にかけての時間区間内で行われた撮像動作、画像信号出力動作(S1000)の結果得られた画像信号をもとにS1002での測光処理、S1004での被写体輝度導出・記憶処理が行われ、次の100ミリ秒から150ミリ秒にかけての時間区間内で行われる蓄積動作、画像信号出力動作に際しての撮像パラメータがS1006で導出される。
【0104】
S1008では、NDフィルタ184が撮影レンズ180の光路に対して挿脱する動作が現在行われているか否かが判定される。この判定が肯定されると処理はS1016に進む一方、否定されるとS1010に進む。例えば図5の150ミリ秒の時点でS1008の判定が行われた場合、S1008の判定は肯定される。一方、図5中の50ミリ秒、100ミリ秒、200ミリ秒と云った時点でS1008の判定が行われた場合、否定される。
【0105】
S1008の判定が否定された場合の分岐先であるS1010では、前回および今回の被写体輝度値の差を導出する処理が行われる。例えば、図5の100ミリ秒の時点で現在の処理が行われているとすると、S1010では前回、すなわち50ミリ秒の時点で導出された被写体輝度値と、今回、すなわち100ミリ秒の時点で導出された被写体輝度値との差が導出される。
【0106】
S1012では、S1010で導出された被写体輝度値の差が上限閾値以上であるか否かが判定される。つまり、前回に比して今回は輝度値が増加していて、その増加幅が閾値を越しているか否かが判定される。この判定が肯定されると処理はS1020に進む一方、否定されるとS1014に進む。例えば図5の50ミリ秒の時点では、S1012の判定は否定される。一方、100ミリ秒の時点では、S1012の判定は肯定される。
【0107】
S1012の判定が否定された場合の分岐先であるS1014では、S1010で導出された被写体輝度値の差が下限閾値以下であるか否かが判定される。つまり、前回に比して今回は輝度値が減少していて、その減少幅が閾値を越しているか否かが判定される。この判定が肯定されると処理はS1030に進む一方、否定されるとS1016に進む。例えば図7の50ミリ秒の時点では、S1014の判定は否定される。一方、図7の100ミリ秒の時点では、S1014の判定は肯定される。
【0108】
S1014の判定が否定された場合の分岐先であるS1016では、S1006で導出された撮像パラメータに基づいて撮像素子134による蓄積動作(撮像動作)とアナログ・フロントエンド130を介しての画像信号出力動作とが行われる。例えば図5の0ミリ秒から50ミリ秒の時間区間内で行われた蓄積動作および画像信号出力動作に基づき、S1006で導出された撮像パラメータに基づいて、次の50ミリ秒から100ミリ秒の時間区間内でS1016の蓄積動作および画像信号出力動作が撮像素子134により行われる。
【0109】
S1018では、処理を継続するか否かの判定がなされる。例えば、撮影者がデジタルカメラ10を操作して動作モードを撮影モードから生成モードに切り替えた場合等にこの判定は否定される。S1018の判定が肯定されると図10に示す一連の処理を終える一方、否定されるとS1002に戻り、処理を継続する。
【0110】
S1012の判定が肯定された場合の分岐先であるS1020においては、NDフィルタ184が撮影レンズ180の光路内に挿入済みであるか否かが判定される。この判定が肯定されると処理はS1016に進む一方、否定されるとS1022に進む。すなわち、被写体輝度値の変化量が閾値以上であったとしても、NDフィルタ184が既に挿入されている場合には以下で説明するS1022、S1024の処理をスキップする。
【0111】
S1020での判定が否定された場合の分岐先であるS1022において、NDフィルタ挿入タイミング決定の処理が行われる。例えば図5の100ミリ秒の時点では、S1012の判定が肯定され、S1020の判定が否定されてS1022の処理が行われ、先にも説明したように、3EV相当の被写体輝度値の変化量に対応して130ミリ秒の時点でNDフィルタ184の挿入を開始する決定がなされる。
【0112】
S1024では、NDフィルタ挿入制御が開始される。S1024の処理は、S1022で決定されたNDフィルタ挿入タイミングでNDフィルタ184の挿入駆動を開始するためのタイマをスタートさせる処理である。
【0113】
S1024の処理に続き、S1016の処理が行われる。例えば、図5の100ミリ秒の時点でNDフィルタ挿入タイミングは30ミリ秒後であるとS1022で決定されてS1024でタイマの計時が始まり、S1016の処理によって100ミリ秒から150ミリ秒の時間区間内における蓄積動作が始まる。そして30ミリ秒が経過した130ミリ秒の時点でNDフィルタ184を撮影レンズ180の光路内に挿入する動作が始まり、T51の符号を付した破線で示される過渡減少を生じる。その結果、被写体輝度が符号B1で示した破線で示されるような増加傾向にあったとしても、撮像素子134の受光面上での像面照度は上記の過渡減少によって符号C52を付した屈曲線で示されるような変化をする。その結果、100ミリ秒から150ミリ秒の時間区間内における撮像素子134の蓄積動作に対応して読み出される画像信号の変動が抑制される。
【0114】
なお、ここでは撮像素子134の蓄積動作が100ミリ秒から150ミリ秒の時間区間内の約50ミリ秒にわたって行われるものとして説明をしたが、被写体輝度の増減に伴って蓄積時間は変化する。その場合、S1022でNDフィルタ挿入タイミングを決定する際に、S1010で導出された被写体輝度値の差とともにS1006で導出された撮像パラメータも加味してNDフィルタ挿入タイミングを決定することが望ましい。
【0115】
S1014の判定が肯定された場合の分岐先S1016では、S1006で導出された撮像パラメータに基づいて撮像素子134による蓄積動作(撮像動作)とアナログ・フロントエンド130を介しての画像信号出力動作とが行われる。例えば図5の0ミリ秒から50ミリ秒の時間区間内で行われた蓄積動作および画像信号出力動作に基づき、S1006で導出された撮像パラメータに基づいて、次の50ミリ秒から100ミリ秒の時間区間内でS1016の蓄積動作および画像信号出力動作が撮像素子134により行われる。
【0116】
S1018では、処理を継続するか否かの判定がなされる。例えば、撮影者がデジタルカメラ10を操作して動作モードを撮影モードから生成モードに切り替えた場合等にこの判定は否定される。S1018の判定が肯定されると図10に示す一連の処理を終える一方、否定されるとS1002に戻り、処理を継続する。
【0117】
S1012の判定が肯定された場合の分岐先であるS1030においては、NDフィルタ184が撮影レンズ180の光路から退避済みであるか否かが判定される。この判定が肯定されると処理はS1016に進む一方、否定されるとS1032に進む。すなわち、被写体輝度値が低下して、その変化量が閾値以上であったとしても、NDフィルタ184が既に退避されている場合には以下で説明するS1032、S1034の処理をスキップする。
【0118】
S1030での判定が否定された場合の分岐先であるS1032において、NDフィルタ退避タイミング決定の処理が行われる。例えば図7の100ミリ秒の時点では、S1014の判定が肯定され、S1030の判定が否定されてS1032の処理が行われ、3EV相当の被写体輝度値の変化量(低下量)に対応して130ミリ秒の時点でNDフィルタ184の退避を開始する決定がなされる。
【0119】
S1034では、NDフィルタ退避制御が開始される。S1034の処理は、S1032で決定されたNDフィルタ退避タイミングでNDフィルタ184の退避駆動を開始するためのタイマをスタートさせる処理である。
【0120】
S1034の処理に続き、S1016の処理が行われる。例えば、図7の100ミリ秒の時点でNDフィルタ退避タイミングは30ミリ秒後であるとS1032で決定されてS1034でタイマの計時が始まり、S1016の処理により、100ミリ秒から150ミリ秒の時間区間内における蓄積動作が始まる。そして30ミリ秒が経過した130ミリ秒の時点でNDフィルタ184を撮影レンズ180の光路から退避する動作が始まり、T71の符号を付した破線で示される過渡増加を生じる。その結果、被写体輝度が符号B3で示した破線で示されるような減少傾向にあったとしても、撮像素子134の受光面上での像面照度は上記の過渡増加によって符号C72を付した屈曲線で示されるような変化をする。その結果、100ミリ秒から150ミリ秒の時間区間内における撮像素子134の蓄積動作に対応して読み出される画像信号の変動が抑制される。
【0121】
本例においても、撮像素子134の蓄積動作が100ミリ秒から150ミリ秒の時間区間内の約50ミリ秒にわたって行われるものとして説明をしたが、被写体輝度の増減にともなって蓄積時間は変化する。その場合、S1032でNDフィルタ退避タイミングを決定する際に、S1010で導出された被写体輝度値の差とともにS1006で導出された撮像パラメータも加味してNDフィルタ退避タイミングを決定することが望ましい。
【0122】
以上では図10を参照して、S1022でNDフィルタ挿入タイミングが、あるいはS1032でNDフィルタ退避タイミングが決定され、S1016の処理により撮像素子134による蓄積動作が始まってから、上記S1022またはS1032で決定されたタイミングでNDフィルタ184の挿抜駆動が開始される例について説明した。これに対して、図8、図9を参照して説明したようにNDフィルタ184を撮影レンズ180の光路に対して挿脱する際のNDフィルタ挿入速度、退避速度を調節するようにしてもよい。その場合、NDフィルタ挿入速度をS1022で、NDフィルタ退避速度をS1032で、それぞれ決定可能である。そしてS1016の処理が始められるのと略同時にフィルタ駆動制御部204からフィルタ駆動部190に制御信号を発し、S1022あるいはS1032で決定された速度でNDフィルタ184を駆動すればよい。
【0123】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の改良・変更が可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、撮影レンズ固定式、レンズ交換式、あるいは撮影目的に応じて撮影レンズユニット、撮像ユニット、本体ユニット等の組み合わせを変更可能なユニット交換式等を問わず、様々な形式のデジタルスチルカメラ、デジタルムービーカメラに適用可能である。
【符号の説明】
【0125】
10 … デジタルカメラ
100 … システムコントローラ
110 … 不揮発性メモリ
112 … 調整用パラメータ
114 … 制御プログラム
116 … DRAM
120 … 画像信号処理部(DSP)
122 … 表示制御部
124 … 画像表示部
130 … アナログ・フロントエンド
132 … タイミング・ジェネレータ
134 … 撮像素子
180 … 撮影レンズ
181 … レンズエレメント
182 … 絞り装置
184 … NDフィルタ
186 … 絞り駆動部
188 … レンズCPU
190 … フィルタ駆動部
192 … レンズ駆動部
194 … 不揮発性メモリ
196 … 制御プログラム
198 … 動作時間パラメータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影レンズから入射した被写体光を光電変換して得られた電荷を蓄積し、蓄積された電荷量に応じて画像信号を出力することを所定タイミングで繰り返し行う撮像素子と、
前記撮影レンズの光路に対して挿脱可能に構成され、前記光路に挿入されたときに前記撮像素子に入射する前記被写体光の光量を減じる減光フィルタと、
前記撮影レンズの光路外から光路内へ、または前記撮影レンズの光路内から光路外へ、前記減光フィルタを挿脱駆動するフィルタ駆動部と、
前記撮像素子から繰り返し出力される画像信号の変動をもとに被写体輝度の変化量を導出する被写体輝度変化量導出部と、
前記被写体輝度の変化量が予め定められた閾値以上であるときに、前記被写体輝度の変化量の大きさに応じたタイミングまたは速さで前記減光フィルタを挿脱駆動し、それにより前記撮像素子から出力される画像信号の変動が減じられるように前記フィルタ駆動部に制御信号を発するフィルタ駆動制御部と
を備えることを特徴とするデジタルカメラ。
【請求項2】
前記フィルタ駆動制御部は、
前記撮像素子による複数回の前記電荷蓄積の動作にまたがって前記フィルタ駆動部による前記減光フィルタの駆動開始から完了までが行われるように、前記被写体輝度の変化量の大きさに応じたタイミングまたは速さで前記減光フィルタを駆動することを特徴とする請求項1に記載のデジタルカメラ。
【請求項3】
撮影レンズから入射した被写体光を光電変換して得られた電荷を蓄積し、蓄積された電荷量に応じて画像信号を出力することを所定タイミングで繰り返し行う撮像素子と、
前記撮影レンズの光路に対して挿脱可能に構成され、前記光路に挿入されたときに前記撮像素子に入射する前記被写体光の光量を減じる減光フィルタと、
前記撮影レンズの光路外から光路内へ、または前記撮影レンズの光路内から光路外へ、前記減光フィルタを挿脱駆動するフィルタ駆動部と、
前記撮像素子から繰り返し出力される画像信号の変動をもとに被写体輝度の変化速度を導出する被写体輝度変化速度導出部と、
前記被写体輝度の変化速度が予め定められた閾値以上であるときに、前記被写体輝度の変化速度の大きさに応じたタイミングまたは速さで前記減光フィルタを駆動し、それにより前記撮像素子から出力される画像信号の変動が減じられるように前記フィルタ駆動部に制御信号を発するフィルタ駆動制御部と
を備えることを特徴とするデジタルカメラ。
【請求項4】
前記フィルタ駆動制御部は、
前記撮像素子による複数回の前記電荷蓄積の動作にまたがって前記フィルタ駆動部による前記減光フィルタの駆動開始から完了までが行われるように、前記被写体輝度の変化速度の大きさに応じたタイミングまたは速さで前記減光フィルタを駆動することを特徴とする請求項3に記載のデジタルカメラ。
【請求項5】
前記撮影レンズは、前記デジタルカメラに着脱自在に構成される交換式の撮影レンズであって、前記減光フィルタおよび前記フィルタ駆動部が当該の撮影レンズ内に備えられ、
前記フィルタ駆動制御部はさらに、前記減光フィルタを前記挿脱駆動する際の動作開始から動作完了までに要する時間が前記デジタルカメラに装着される前記撮影レンズの種類によって異なるのに対応して前記フィルタ駆動部に制御信号を発することが可能に構成される
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載のデジタルカメラ。
【請求項6】
前記撮像素子から前記所定タイミングで繰り返し出力される画像信号をもとにライブビュー表示用の表示画像データまたは動画像記録用の記録画像データを生成する画像データ生成処理部を生成する画像データ生成処理部をさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載のデジタルカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−49881(P2012−49881A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190950(P2010−190950)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(504371974)オリンパスイメージング株式会社 (2,647)
【Fターム(参考)】