説明

デジタル土壌物理性計測装置

【課題】自然状態における構造を保持したままの土壌試料に係る物理量を高精度に計測する装置を提供する。
【解決手段】デジタル土壌物理性計測装置1は、計測に必要な項目を入力する操作パネル3と、操作手順および計測結果を表示する表示部5と、計測する試料を入れる試料室11、制御装置21等を備える。制御装置21は、試料室11が目標圧力に達するまでに必要な空気流量に基づいて、または、試料室11に目標流量を送り込んだ際に得られる圧力変化量に基づいて、この試料室11内の試料容積を算出する実容積算定手段を有するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然状態における構造を保持したままの土壌試料を用いて、土壌の三相構造に係る物理量の計測をデジタルに変換して計測データを収集する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
土壌は、固相、液相および気相を構成成分とする三相系物質である。固相とは鉱物を主とする無機質と有機質から成り、液相および気相はそれぞれ土壌水分および土壌空気により構成されている。この固相・液相・気相のそれぞれが占める容積割合が土壌の三相分布である。土壌の肥沃度や作物の生育には、この土壌三相の適正な関係が決め手となり、三相分布状態を知ることが土壌診断の基本となっている。
【0003】
自然状態における構造を保持したままの土壌試料の計測法として実容積計測法が用いられている。土壌の全容積と土壌三相の固相・液相・気相それぞれの容積は次の式に表わすことができる。
【0004】
Vt=Vs+Vl+Va(Vt=全容積、Vs=固相、Vl=液相、Va=気相)
【0005】
実容積計測法を用いて計測される実容積は土壌の固相容積と液相(水分)容積との和の容積量であり次の式に表わすことができる。
【0006】
V=Vs+Vl =Vt−Va(V=実容積、Vs=固相、Vl=液相、Vt=全容積、Va=気相)
【0007】
また、このとき、土壌の全重量と、土壌の三相の固相重量、液相(水分)重量、気相重量の関係は次の式に表わすことができる。
【0008】
W=S+M+Aw(W=全重量、S=固相重量、M=液相(水分)重量、Aw=気相重量)
【0009】
しかし、気相重量Awは通常0とみなされるので、全重量は固相重量と液相(水分)重量との和となり次の式に表わすことができる。
【0010】
W=S+M(W=全重量、S=固相重量、M=液相(水分重量))
【0011】
実容積計測法では、計測する土壌の全重量と、実容積の計測を終えた試料を乾熱させて水分を除去し、それによって失われる重量を液相(水分)重量とする。このとき土壌水分の密度は1g/cm3とし、土壌液相(水分)重量と液相(水分)容積とは等しい数値をもつとしている。したがって、土壌の固相容積は、実容積から液相(水分)容積を減じた容積量となり次の式に表わすことができる。
【0012】
Vs=V−M(Vs=固相容積、V=実容積、Vl=液相(水分)容積
【0013】
つまり実容積計測法では、容量が既知の土壌採取容器で採取した土壌の実容積を計測すると、気相容積が求められる。そして、実容積の計測を終えた試料を乾熱させて水分を除去することで、固相容積と液相(水分)容積をもとめるこができる。
【0014】
従来、土壌の三相(固相・液相・気相)それぞれの容積を計測しようとするときに、自然状態における土壌構造を保持したままの土壌試料の採取方法と、実容積を計測する計測方法が確立され広く用いられている。一般に農耕土壌の採取は100mlの金属製の円筒容器を用いて行われている。これは農業機械化研究所の考案に基づくもので、全容積100mlの大きさの容器を採用することは採取した土壌をそのまま実容積計測に用いることができるなど有利な点が多いからである。
【0015】
ボイル−シャルル(Boyle−Chareles)の法則によれば、温度が一定の場合にひとつの空気系統において容積変化を生じたときに、それにともなう圧力変化について次の数式が成り立つ。
【数1】

【0016】
この式は、はじめの圧力を一定(例えば大気圧)にし、さらに圧力変化量を一定にすれば、空気容積と容積変化量とが比例関係にあることを示している。土壌の実容積を求める計測器は、この原理を利用してはじめの圧力を一定にして、特定の目標圧力まで圧縮するときの容積変化量から実容積を求める方法を採用している。この実容積計測器は、土壌試料を密閉容器に入れてから、エアーシリンダーを用いて目標圧力に達するまで圧縮操作をする。そのときのエアーシリンダーのピストン移動量から容積変化量を求めて実容積を計測する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】公開実用昭和59−006772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従来の実容積計測器は、エアーシリンダーで目標圧力まで圧縮操作するときに、土壌構造の特性から土壌粒子間にあるわずかな空気層、いわゆる土壌中の孔隙に加えられた圧力が定常状態になるまで密閉された容器の中で圧力変化に揺らぎが発生する。
【0019】
その際、計測者は試料容器内の圧力計測値を見ながら、徐々に目標圧力に到達するまで圧縮操作をしなければならない。この一連の圧縮操作を手動で行っているため、計測者による圧縮操作に個人差が生じやすく、計測誤差の要因となっている。
【0020】
また、装置自体に経時的な劣化や何らかの故障が生じていても、それによる誤差が小さい場合は、計測者がそれを認識できない場合がある。このことも計測誤差を増大させる要因となる。
【0021】
また、計測精度を高めるために同一試料を4〜5回程度計測してその平均値を求めて計測結果としているが、計測サンプル数が多くなると計測作業と計測値計算に多くの労力が必要となる。
【0022】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、高精度な実容積計測を自動的に実現するデジタル土壌物理性計測装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者の鋭意研究により、上記目的は以下の手段によって達成される。
【0024】
即ち、上記目的を達成する本発明は、計測用の試料室と、前記試料室を加圧する加圧手段と、前記試料室内の圧力を計測する圧力計測手段と、前記加圧手段を駆動する加圧手段駆動装置と、前記加圧手段駆動装置を制御する制御装置と、利用者に対して情報を提示する表示部と、を備え、前記制御装置は、前記試料室が目標圧力に達するまでに必要な空気流量に基づいて、または、前記試料室に目標流量を送り込んだ際に得られる圧力変化量に基づいて、前記試料室内の試料容積を算出する実容積算定手段を有することを特徴とするデジタル土壌物理性計測装置である。
【0025】
上記目的を達成する上記発明において、前記制御装置は、既知の体積となる校正用空間を前記加圧手段によって加圧し、前記校正用空間が目標圧力に達するまでの前記空気流量、または、前記校正用空間に目標流量を送り込んだ際に得られる前記圧力変化量を算出する自動校正手段を備え、前記制御装置における前記実容積算定手段は、前記自動校正手段によって算出される前記空気流量又は前記圧力変化量を利用して、前記試料容積を算出することを特徴とする。
【0026】
上記目的を達成する上記発明において、前記自動校正手段は、体積の異なる複数の前記校正用空間のそれぞれに対して、前記空気流量又は前記圧力変化量を算出することを特徴とする。
【0027】
上記目的を達成する上記発明において、前記自動校正手段は、前記校正用空間の体積に対応して、前記空気流量又は前記圧力変化量の許容上限値及び許容下限値を記憶しており、校正動作時における前記空気流量又は前記圧力変化量が、前記許容上限値又は前記許容下限値を超える場合は、前記表示部にエラーを表示させることを特徴とする。
【0028】
上記目的を達成する上記発明において、既知の体積となる校正用試料を前記試料室に収容することで、該試料室を前記校正用空間とすることを特徴とする。
【0029】
上記目的を達成する上記発明において、前記制御装置は、前記加圧手段が特定の終了点まで加圧しても前記試料室の内圧が目標圧力に到達しない場合、前記表示部にエラーを表示させる強制終了手段を備えることを特徴とする。
【0030】
上記目的を達成する上記発明において、前記制御装置は、前記加圧手段を特定の開始点に移動させて停止すると共に、前記加圧手段の内部を大気開放した際に、前記加圧手段の内圧と大気圧の間に一定以上の圧力差があるか否かを判定し、圧力差がある場合は、前記表示部にエラーを表示させる原点処理手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、試料室内の圧力を計測しながら目標圧力に達するまで加圧する一連の計測作業を全て自動化して制御するため、計測者の操作方法に個人差による計測誤差を防ぐことが可能となり計測精度が向上する。更に本発明は、測定環境(温度、湿度、気圧)に合わせて、自動的に校正処理を行うことができるので、計測精度を高めることが可能となる。特に、校正処理時において、その校正量(理想値との差)が大きい場合には、エラーを表示させることで、機械的な異常を未然に検知することが可能となる。
【0032】
更に本発明は、校正時や実測時において、加圧手段が特定の終了点まで加圧すると強制終了させるようになっているので、装置の破損等を未然に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】デジタル土壌物理性計測装置の外観図である。
【図2】デジタル土壌物理性計測装置の上面図である。
【図3】デジタル土壌物理性計測装置の背面図である。
【図4】デジタル土壌物理性計測装置の接続状態を示す構成図である。
【図5】デジタル土壌物理性計測装置の機能を示すブロック図である。
【図6】デジタル土壌物理性計測装置の校正作業の動作を示すブロック図である。
【図7】デジタル土壌物理性計測装置の他の構造を示す構成図である。
【図8】デジタル土壌物理性計測装置の他の構造を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下図面を参照しながら、本発明の実施の形態の例について詳細に説明する。
【0035】
図1から図3にはデジタル土壌物理性計測装置1が示されている。デジタル土壌物理性計測装置1は、計測に必要な項目を入力する操作パネル3と、操作手順および計測結果を表示する表示部5と、計測する試料を入れる試料室11と、計測に必要な電力の供給を受ける電源ソケット13と、供給された電力を通電または遮断する電源スイッチ9と、計測データをデジタル出力する出力コネクタ15と、計測制御プログラム130(図示省略)を入力する入力コネクタ17と、これらを取り付けた筐体7で構成されている。
【0036】
次に、デジタル土壌物理性計測装置1の筐体7の内部機構と接続状態について図4で説明する。筐体7の内部は、エアー出口29を備えたエアーシリンダー23と、エアーシリンダー23内のエアー25を加圧するピストン27と、ピストン27に取り付けたギヤ33と、ギヤ33を駆動する歯車35を取り付けたモータ37と、ピストン27の初期位置を検知する原点センサ39と、エアー25の圧力を計測する圧力センサ31を備える。モータ37によって歯車35を回転させると、ラックアンドピニオン構造によってギア33が往復運動し、ピストン27が駆動される。ピストン27によってエアーシリンダー23のエアー25が加圧又は減圧される。
【0037】
筐体7の内部は、更に、エアーシリンダー23と試料室11へのエアー25の出入りを開閉する電磁弁41と、エアーシリンダー23のエアー出口29と試料室11と圧力センサ31と電磁弁41とを接続する配管43と、配管43を分岐接続する継ぎ手45を備える。電磁弁41は、いわゆるリリーフバルブとして機能しており、電磁弁41が開くと配管43内が大気側に開放される。一方、電磁弁41が閉じると、配管43内が密閉空間となるので、この配管43を介してエアーシリンダー23内のエアー25の圧力が試料室11に伝達される。
【0038】
また筐体7の内部には、制御装置21と、電源ソケット13が配置されており、筐体7の外部には、電源ケーブル57を有するアダプター55が配置されている。制御装置21は、配線47を利用して、モータ37、原点センサ39、圧力センサ31、電磁弁41、操作パネル3、表示部5、電源ソケット13に接続されている。アダプター55は電源ソケット13に接続されて、供給される電力の電圧を制御装置21用に変換する。従って、電源ケット13は、アダプター55から、デジタル土壌物理性計測装置1の制御に必要な全電力の供給を受ける。なお、制御に必要な電力の供給は、制御装置21の仕様に合致していれば何を用いても良い。例えば蓄電池59を使用することもできる。
【0039】
制御装置21は、マイクロプロセッサ(CPU)49と、計測制御プログラム130と計測データを有する記憶部(ROM)51と、設定した日付および時刻を電源が切られていても現在時刻を刻み続ける機能を有したリアルタイムクロック53と、出力コネクタ15と、入力コネクタ17を備えてる。出力コネクタ15には、計測データを外部コンピュータ61にデジタル出力するための出力ケーブル62が接続される。入力コネクタ17には、上位コンピュータ63から計測制御プログラム130を入力するための入力ケーブル64が接続される。
【0040】
次に、デジタル土壌物理性計測装置1の機能について図5で説明する。デジタル土壌物理性計測装置1は、計測用の試料室11と、試料室11を加圧す加圧手段65と、試料室11内の圧力を計測する圧力計測手段67と、加圧に用いる空気の流量を計測する流量計測手段69と、加圧手段65を駆動する加圧手段駆動装置71と、試料室11の内圧に基づいて加圧手段駆動装置71を制御する制御装置21を備えている。
【0041】
なお、図4と図5の対応関係について説明する。図5の加圧手段65は、図4の23エアーシリンダーと、エアー25と、ピストン27と、エアー出口29に相当する。図5の圧力計測手段67は、図4の圧力センサ31と配線47に相当する。図5の流量計測手段69と加圧手段駆動装置71は、図4のギヤ33と、歯車35と、モータ37と、原点センサ39と、配線47に相当する。図5の加圧制御手段101〜原点処理手段123は、図4の記憶部(ROM)51に記憶されたプログラムをマイクロプロセッサ49で実行することで実現される。これはデジタル土壌物理性計測装置1を動作制御する為の機能となる。
【0042】
図5を参照して、制御装置21は、計測制御プログラム130がCPU49で実行されることにより、様々な機能を実現するようになっている。具体的に制御装置21は、その機能構成として、加圧制御手段101、加圧停止手段103、移行判定手段105、平均値算出手段107、反復手段109、出力手段111、計測値保存手段113、自動校正手段115、エラー報知手段117、実容積算定手段119、強制終了手段121、原点処理手段123を備える。
【0043】
なお、これらの機能(加圧制御手段101〜原点処理手段123)を実現するコンピュータプログラムは、筐体7の背面にある入力コネクタ17を介して、制御装置21に備えられた記憶部(ROM)51に予め転送されている。記憶部(ROM)51に記憶されたプログラムは、制御装置21に備えられたマイクロプロセッサ49で、入出力信号を演算しながら実行される。記憶部(ROM)51に記憶されたプログラムは、電源の供給が停止しても記憶部(ROM)51から消去されることはない。つまり、転送操作を一度行った以降は、プログラムを外部から転送する必要がなく、いつでもプログラムを実行することが可能となる。さらに、プログラムの修正が必要となった場合、修正プログラムを入力コネクタ17を介して記憶部(ROM)51に転送すれば良いので、筐体7を分解することなく短時間でプログラムを更新することができる。また、制御装置21は、プログラムの指令に基づき、表示部5に操作手順と計測結果を表示する機能を備えている。
【0044】
加圧制御手段101は、加圧手段駆動装置71の駆動を制御する。また、駆動速度も制御可能となっている。この駆動速度は一定に設定したり、高速から低速に変化するように設定することもできる。
【0045】
例えば加圧制御手段101は、試料を入れた試料室11を初期(大気圧)から一定の中間圧力(例えば30kPa)までを加圧する第一速度と、この中間圧力から目標圧力(例えば36kPa)までを加圧する第二速度によって、加圧手段駆動装置71の駆動速度を制御することが好ましい。この際、第一速度に対して、第二速度は遅くなるように設定される。勿論、最初から目標圧力に達するまでを、一定の速度で制御しても良い。
【0046】
加圧停止手段103は、その目的に応じて、加圧手段駆動装置71による加圧を停止したり、中止したりする。加圧の停止は、主として(1)測定時や校正時において、試料室11内が目標とする圧力に到達した場合、(2)上述の通り加圧を2段階の速度で行う場合において、試料室11が中間圧力に到達した場合(速度を切り換える場合)、(3)何らかのエラーによって加圧を停止する場合などがある。
【0047】
上記(1)の場合、試料室11内の圧力を圧力センサ31によって検出し、その圧力が目標圧力に到達すると同時に加圧を停止する。上記(2)の場合、例えば上記加圧制御手段101によって、試料室11内が初期から中間圧力に至った際に、一時的に加圧を中断する。また(3)の場合、測定時にエラーが生じた際に、デジタル土壌物理性計測装置1の破壊を回避する為に加圧を停止させる。いずれにしろ、加圧停止手段103は、加圧手段駆動装置71の駆動を停止・中断する。
【0048】
なお、ここでは加圧手段駆動装置71の駆動を停止・中断することで、加圧をストップする場合を示したが、電磁弁41を開くことで配管43内を大気側に開放し、その結果として加圧が停止されるようにしても良い。
【0049】
移行判定手段105は、加圧停止手段103によって一時的に加圧を中断した際、更なる加圧を行うか否かを判断する。例えば、上記中間圧力において加圧中断中となっている際に、試料室11内の圧力変化量を検出して、その変動に基づいて次への加圧(中間圧力から目標圧力)に移行するか否かを判定する。このように加圧途中で一時的に加圧を停止して、移行判定を行うことで、一層きめ細かな制御が可能となる。
【0050】
具体的にこの移行判定手段105は、中間圧力において、一定量以上の圧力低下を検出した場合に、更なる加圧を行わずに計測を中止する。一方、一定量以上の圧力低下を検出しない場合、試料室11内への加圧を再開する。具体的に移行判定手段105は、加圧制御手段101に対して移行指示を出す。移行指示を受けた加圧制御手段101は、第二速度で加圧手段駆動装置71を制御する。結果、試料室11内は、中間圧力から目標圧力まで加圧される。
【0051】
実容積算定手段119は、試料室11内(配管43)の圧力が目標圧力に達するまでのピストン27の移動量、即ち目標圧力に達して加圧停止手段103によって停止されたピストン27の移動量を検出して、加圧に要したエアー量を算出し、ボイル−シャルルの法則に基づいて、試料室11内の土壌の実容積を算出する。なお、ピストン27の移動量は、歯車35やモータ37の回転量を検出することで算出できる。
【0052】
計測値保存手段113は、実容積算定手段119によって測定された実容積等の情報をRAM(図示省略)の所定の記憶領域に保存する。
【0053】
平均値算出手段107は、実容積算定手段119による測定を複数回(例えば3回)繰り返して計測し、その複数回(例えば3回)の計測値を利用してその平均値を算出する。この結果、微小な計測誤差を均一化することが可能となる。これは、制御装置21のマイクロプロセッサ49が、計測値保存手段113を利用して、RAMに記憶されている複数回の測定値を呼び出して、平均値算出手段107により平均値を算出することで実現される。
【0054】
なお、ここでは3回の測定を行い、平均値を算出する場合を示したが、この測定回数は柔軟に変更することも好ましい。例えば反復手段109は、前回の計測値と今回の計測値を比較してその差が一定の範囲内となるまで計測を繰り返すことも好ましい。計測誤差が大きい場合、反復手段109は、誤差が小さくなるまで計測を自動的に繰り返す。平均値算出手段107では、繰り返し計測された範囲内において、誤差が最も小さくなる複数回の連続測定値を利用して、平均値を算出することが可能となる。なお、反復手段109により、例えば3回測定分の各々前後を比較し、各測定値の差が一定の範囲内に収まらない場合には、加圧停止手段103が加圧を停止し、後述するエラー報知手段117によって、表示部5にエラー表示等を行って処理を終了する。
【0055】
出力手段111は、計測値保存手段113によってRAMに保存された計測値(以下、計測データとも言う)を、出力コネクタ15を介して外部の上位コンピュータに出力する。
【0056】
強制終了手段121は、ピストン27の移動量が、特定の終了点となる最大許容値Rmax(図6参照)を超えるか否かを常に判定している。この最大許容値Rmaxは、試料室11の内部が空となる場合において、試料室11を目標圧力まで高める際に必要なピストン27の移動量(後述する0mlの理想移動量R)よりも多少大きい値となる。即ち、トラブル無く、本装置1で測定を行っている限り、ピストン27は、この最大許容値Rmaxまで移動することは考えられない。そこで、この強制終了手段121は、ピストン27が最大許容値Rmaxを超える場合、加圧停止手段103に対して、加圧手段駆動装置71による加圧を中止するように指示する。この際、エラー報知手段117に対しては、表示部5によってエラー表示を行うように指示する。
【0057】
例えば、試料室11の蓋が緩んでいたり、配管43が外れていたりして、少しずつエアーが漏れ出している場合、試料率11が目標圧力に達する前にピストン27に移動量が最大許容値Rmaxに到達してしまう。この場合、本装置1では強制終了手段121によって強制的にピストン27が停止されるので、ピストン27の破壊等を未然に防止することができる。仮に、ピストン27を機械的な上限までモータ37で押し込んでしまうと、ピストン27が変形したり、ギヤ33や歯車35が破損・変形したり、モータ37に余分な負荷がかかったりするので、本装置1の測定誤差が生じやすくなる。従って、強制終了手段121によって、本装置1のメンテナンス負担が軽減され、長期間に亘って安定して使用することが可能となる。
【0058】
原点処理手段123は、加圧手段65(ピストン27)の原点設定を行う。具体的に、原点センサ39の電気信号に基づいて、モータ37を駆動させることにより、ピストン27に取り付けられたギヤ33を特定の開始点(原点)に移動させる。その後、電磁弁41を開くことで、エアーシリンダー23内のエアー25と大気の圧力を等しくし、これを圧力センサ31が計測することで確認する。即ち、エアー25の圧力と大気圧にある一定以上の圧力差があるか否かを判定し、一定範囲内の圧力差であれば正常に原点設定が完了したと判断する。一方、一定以上の圧力差がある場合は、空気系統のどこかに詰り等の問題があるか、もしくは圧力センサ31、原点センサ39、モータ37、ピストン27、ギヤ33、歯車35、制御装置21に故障が生じている可能性があると判断する。従って、この際はエラーメッセージを表示部5に表示することで、本装置1の異常を事前に利用者に伝える。
【0059】
エラー報知手段117は、他の各種手段からの指示を受けて、表示部5に対して様々なエラーメッセージを表示する。なお、ここではエラーメッセージとして文章を表示させる場合を示しているが、例えば、ランプによる表示や、音声ガイダンスなど、利用者に対してエラーを伝えることができる手段であれば、適宜採用すれば良い。
【0060】
自動校正手段115は、デジタル土壌物理性計測装置1の自動校正を行うためのものである。具体的にこの自動校正手段115は、校正用体積設定部115A、許容誤差保存部115B、校正処理部115Cを備える。
【0061】
図6に示されるように、校正用体積設定部115Aは、操作パネル3から入力された校正用試料の体積(以下校正用体積という)に係る情報を記憶部(ROM)51に記憶する。この校正用体積は、試料室11内に収容された校正用試料の体積を意味している。例えば本実施形態では、30ml、50mlとなる2種類の校正用試料(テストピース)が用意されている。従って、校正値として利用可能な校正用体積としては、0ml(校正用試料無し)、30ml、50ml、80ml(30ml校正用試料と50ml校正用試料を同時にセット)の4種類の校正用体積を選択できる。本装置1では、この校正用体積設定部115Aによって、どの校正用体積によって校正するか否かを認識する。
【0062】
なお、校正用空間の観点からすると、本実施形態では試料室11内に残っている空間を意味している。即ち、本実施形態では、試料室11を活用して、その中に校正用試料をセットすることで、校正用空間を、通常状態(−0ml)から、−30ml、−50ml、−80mlの4段階で適宜変更できるようにしている。
【0063】
許容誤差保存部115Bは、各校正用体積に対応させて、目標圧力に達成するまでに必要となる加圧手段65(ピストン27)の理想移動量(理論値)Rに関する情報と、この理想移動量Rを基準とした前後の許容誤差(許容上限移動量RUと許容下限移動量RD)に関する情報とを、記憶部(ROM)51に記憶している。
【0064】
校正処理部115Cは、利用者の開始指示に基づいて自動校正処理を行う。具体的には、加圧制御手段101を利用して、試料室11内が目標圧力に達するまで加圧し、加圧停止手段103によって停止されたピストン27の実移動量Tを検出する。この実移動量Tと校正用体積をセットにして、校正情報として記憶部(ROM)51に記憶する。本実施形態においては、この校正作業を、80ml、50ml、30mlの順番で実行し、更にこれを2回繰り返すことで6セットの校正情報を算出する。この6セットの校正情報に基づいて、デジタル土壌物理性計測装置1の実測で用いる算定式を確定(校正)する。この算定式は、実容積算定手段119による実測時に用いられることになる。結果として、温度変化や大気圧変化のような様々な測定環境変化に合わせて、高精度な校正作業が実現され、測定精度を高めることが可能となる。
【0065】
また校正処理部115Cは、この校正作業における実移動量Tが、許容誤差となる許容上限移動量RUと許容下限移動量RDから外れるか否かを判定する。実移動量Tが許容誤差を超えている場合、自動校正手段115はエラー報知手段117に対して、表示部5にエラーを表示させるように指示する。このエラー表示により、例えば、使用者によって設定された校正用体積と、実際に試料室11に収容されている校正用試料が異なっている場合や、配管43の途中が詰まっている場合等の様々なトラブルを、自動的に検出することが可能となる。即ち、この校正処理部115Cによれば、校正情報として採用すべき誤差なのか、機械的なトラブルで生じている誤差なのかを、その大きさから自動的に判別することが可能となり、誤った校正処理を抑制できる。また、実測前に必ず行われる校正作業時に、本装置1の機械的なトラブルを検知できるので、装置1の破損を未然防止したり、実測時のミスを低減できる。
【0066】
またこの校正作業時においても、強制終了手段121は、ピストン27の移動量が最大許容値Rmaxを超えるか否かを常に判定する。校正時においても、試料室11の蓋が緩んでいたり、配管43が外れていたり、電磁弁41が故障していたりすると、目標圧力に達する前にピストン27が最大許容値Rmaxに達する可能性がある。従って、常に強制終了手段121を機能させておけば、校正作業時において本装置1が破損することを防止できる。
【0067】
また、この校正作業時においても、開始前に、原点処理手段123が加圧手段65(ピストン27)の原点設定を行う。この結果、校正作業前においても、本装置1に生じている何らかの不具合を未然に検知することが可能となり、校正ミスを抑制することができる。
【0068】
次に、デジタル土壌物理性計測装置1の計測手順について、図4で説明する。まず、デジタル土壌物理性計測装置1の駆動に必要な電源を供給するために電源ソケット13に電源ケーブル57と、商用電源の場合は電圧変換用のアダプターを接続する。商用電源のない場所で計測する場合は、蓄電池59を接続する。次に、電源スイッチ9(図3参照)をONにして前記デジタル土壌物理性計測装置1に通電する。
【0069】
次に、デジタル土壌物理性計測装置1は、土壌を計測する前に、試料室11に校正用試料を収容して校正作業を行う。校正用試料は、既知の体積(例えば30ml、50ml)を持った円柱体となる。校正作業は、試料室11に校正用試料を入れて密閉し、表示部5を見ながら操作パネル3で校正用試料の合計体積(30ml、50ml、80ml)を選択入力して、スタートボタンを押すことで開始する。
【0070】
校正は制御装置21の自動校正手段115によって自動的に行われる。自動校正を具体的に説明すると、まず、図4に示される原点センサ39の電気信号に基づいて、モータ37を駆動させることにより、ピストン27に取り付けられたギヤ33を特定の開始点(原点)に移動させて停止する。次に、電磁弁41を開き、エアーシリンダー23内のエアー25を大気開放し、正常に大気開放されたか否かを圧力センサ31で確認する。具体的は、エアーシリンダー23・電磁弁41・配管43・継ぎ手45・エアー出口29で構成されたひとつの空気系統の圧力を、圧力センサ31で計測し、その圧力センサ31の電気信号を配線47を介して制御装置21に伝達させる。制御装置21の原点処理部115Dでは、その信号を演算処理することで、エアーシリンダー23のエアー25の圧力と大気圧に差があるか否かを判定する。
【0071】
もし、このときエアー25と大気の圧力にある一定以上の圧力差がある場合は、空気系統のどこかに詰り等の問題があるか、もしくは圧力センサ31、原点センサ39、モータ37、ピストン27、ギヤ33、歯車35、制御装置21に故障が生じている可能性がある。従って、エラーメッセージを表示部5に表示することで、本装置1の異常を利用者に伝える。
【0072】
なお、ここでは校正用試料として30mlと50mlを例示したが、計測範囲内であればどのような体積であっても良い。校正用試料は、圧縮や温度変化に対して体積変化の生じにくい材質・形状がよいので、通常は金属製の円柱状のものを使用する。しかし、他の形状・材質のものを使用してもよい。
【0073】
次に、原点設定が正常に完了したら、電磁弁41を閉めて、目標圧力に到達するまで試料室11を加圧する。この加圧は、圧力センサ31からの電気信号をマイクロプロセッサ49で演算しながら、目標圧力に到達するまでモータ37を駆動させることで行う。即ち、モータ37に取り付けられた歯車35を回転させることで、ピストン27とギヤ33を、エアーシリンダー23内のエアー25が試料室11に送られるように動かす。このとき上述の空気系統は密閉されているので、空気系統内の空気は圧縮され、圧力が上昇する。空気系統の空気を圧縮する速度は、例えば、目標圧力に到達するまで一定の速度で行う。
【0074】
なお、目標圧力の少し手前までは高速(第一速度)で加圧を行い、数秒間加圧を停止して空気系統の圧力が定常状態(安定した状態)になるのを確認してから、徐々に目標圧力に到達するまで低速(第二速度)で圧縮を行うことも好ましい。あるいは、目標圧力に到達する少し手前までは高速で圧縮を行い、徐々に圧縮速度を減速させることで空気系統の圧力を定常状態近づけながら目標圧力に到達させることも望ましい。即ち、上述の第一速度と第二速度は、それぞれ一定の速度である場合に限定されず、平均値としての第一速度と、平均値としての第二速度が、高速と低速に設定されるようにしても良い。
【0075】
空気系統の圧力が目標圧力に到達したことを確認した後、ピストン27の到達点と特定の開始点(原点)の移動量をマイクロプロセッサ49で演算して、記憶部(ROM)51に記憶する。このときのピストン27の移動量は、モータ37の総回転角度に置き換えることが出来る。また、使用するピストン27の断面積の値を予めプログラムに入れておくことで、ピストン27の移動量から試料室11に送られた空気の流量をマイクロプロセッサ49で演算できる。つまり、試料室11には既知の体積を持った校正用試料が入っているので、ピストン27の移動量は、計測原理でいうところの、はじめの圧力を一定にして特定の目標圧力まで圧縮するときの容積変化量となる。また、求める実容積の値は、校正用試料の体積から予め確定できる。この校正処理を、体積の異なる複数の校正用体積でそれぞれ行う。これらの結果を、計算式に代入して記憶部(ROM)51に記憶する。即ち、校正処理から得られる情報を利用して、実際の計測で利用する計算式を生成する。
【0076】
その後、ピストン27は開始点(原点)に移動して停止し、電磁弁41を開いて空気系統を大気開放すると同時に、表示部5に校正終了を知らせる表示を出す。もし、校正処理中に、特定の終了点となる最大許容値Rmaxまでピストン27が移動しても目標圧力に到達しない場合は、空気系統のどこかに詰り等の問題があるか、もしくは、圧力センサ31、原点センサ39、モータ37、ピストン27、ギヤ33、歯車35、制御装置21に故障が生じている可能性がある。その場合は、エラーメッセージを表示部5に表示すると共に、ピストン27の移動を中止する。この際、ピストン27を原点に復帰させたり、電磁弁41を開くことが好ましい。
【0077】
校正作業が完了し、未知の計測試料の実容積を計測する時は、計測対象の試料を試料室11に入れて密閉し、表示部5を見ながら操作パネル3で計測開始を入力する。制御装置21によって計測が自動的に行われ、計測結果が表示部5に表示される。
【0078】
この自動計測を具体的に説明する。まず、原点センサ39の電気信号を利用して、ピストン27に取り付けられたギヤ33を特定の開始点(原点)に移動させて停止する。この原点処理は、モータ37によって歯車35を回転させることで行う。次に、電磁弁41を開き、エアーシリンダー23内のエアー25の圧力が大気圧となるようにし、実際に、圧力センサ31で計測して確認する。つまり、エアーシリンダー23内・電磁弁41・配管43・継ぎ手45・エアー出口29で構成されるひとつの空気系統の圧力を圧力センサ31で計測し、その電気信号を配線47を介して制御装置21に伝達し、マイクロプロセッサ49に送られて演算処理され、エアー25と大気に圧力差がないことを確認する。もし、このときエアー25の圧力と大気圧にある一定以上の圧力差がある場合は、空気系統のどこかに詰り等の問題があるか、もしくは圧力センサ31、原点センサ39、モータ37、ピストン27、ギヤ33、歯車35、制御装置21に故障が生じている可能性がある。従って、エラーメッセージを表示部5に表示する。これにより、本装置1にトラブルが生じたまま、実際の計測を開始してしまうことを未然に防ぐことができる。
【0079】
エアー25と大気に圧力差がないことが確認された後、電磁弁41を閉めて、目標圧力に到達するまで空気系統の空気を圧縮する。この圧縮は、圧力センサ31からの電気信号をマイクロプロセッサ49で演算して監視しながら、目標圧力に到達するまでモータ37を駆動させることで行う。このときピストン27とギヤ33は、エアーシリンダー23内のエアー25を試料室11に送る方向に動く。空気系統は、密閉されているので、ピストン27により空気系統の空気は圧縮され圧力が上昇する。
【0080】
空気系統を圧縮する速度(ピストン27の移動速度)は、ここでは定速制御しているが、例えば目標圧力に到達する少し手前までは高速(第一速度)で加圧を行い、数秒間加圧を停止して、空気系統の圧力が定常状態になるのを確認してから、徐々に目標圧力に到達するまで低速(第一速度)で加圧することが好ましい。また、目標圧力に到達する少し手前までは高速で圧縮を行い、徐々に圧縮速度を減速させることで空気系統の圧力を定常状態近づけながら目標圧力に到達させることも可能である。
【0081】
目標圧力に到達したことを確認したらピストン27を停止させ、ピストン27の到達点と、上記原点の差となる移動量をマイクロプロセッサ49で演算して記憶部(ROM)51に記憶する。このときのピストン27の移動量は、モータ37の総回転角度に置き換えることが出来る。マイクロプロセッサ49は、特定の目標圧力まで圧縮するときの容積変化量から、校正処理によって求められた計算式を利用して、試料の実容積値を演算して記憶部(ROM)51に記憶する。また、ピストン27は、原点に移動させてから停止し、電磁弁41を開いて空気系統を大気開放すると同時に、表示部5に計測終了を知らせる表示を出す。この際、演算によって得られた実容積値を表示部5に表示することが望ましい。
【0082】
なお、最大許容値Rmaxまでピストン27が移動しても目標圧力に到達しない場合は、空気系統のどこかに詰り等の問題があるか、もしくは圧力センサ31、原点センサ39、モータ37、ピストン27、ギヤ33、歯車35、制御装置21に故障がある可能性があることになる。その場合は、エラーメッセージを表示部5に表示し、ピストン27による加圧を強制終了する。これにより本デジタル土壌物理性計測装置1の破損を回避する。
【0083】
なお、このデジタル土壌物理性計測装置1は、自動で複数回の繰り返し計測をして、平均値をマイクロプロセッサ49で演算して記憶部(ROM)51に記憶することができる。さらに複数回計測する時に、前回計測値と比較した値が一定範囲内であれば、さらなる計測を繰り返すことなく計測をマイクロプロセッサ49で演算して自動判定して終了することもできる。また、計測した計測値をデジタルデータとして記憶部(ROM)51に保存するとともに、出力ケーブル62と出力コネクタ15を介して計測データを外部コンピュータ61に出力することができる。
【0084】
デジタル土壌物理性計測装置1の前記制御装置21は、時計機能としてリアルタイムクロック53を備えている。リアルタイムクロック53は、表示部5を見ながら操作パネル3で現在時刻・日付を入力することができる。この時計機能により、計測した日時を計測データに付加して、記憶部(ROM)51に保存されることでデータの整理を簡単に行うことができる。
【0085】
ここで説明した実施例は、特定の目標圧力(圧縮圧力)に対する空気流量(圧縮容積)の変化量から実容積を求める方法で記載しているが、ボイル−シャルル(Boyle−Chareles)の法則によれば、特定の目標容積を圧縮した際、即ち圧縮容積を一定にした際に得られる、試料室内の圧力変化量から実容積を求める計測方法も採用できる。いずれも原理的には全く同等であるため、上述の目標圧力と空気容量(圧縮容積)の関係を、目標容積と圧力変化量の関係の置き換えれば良いことから、詳細な説明は省略する。
【0086】
デジタル土壌物理性計測装置1では、校正と計測の双方において、目標圧力に達するまで加圧する一連の計測作業を全て自動化して制御するので、個人差による計測誤差を防ぐことが可能となり、計測精度が向上する。特に、制御装置において、例えばボイル−シャルルの法則を利用した算定式を利用して、試料容積を自動的に算出することが可能になるので、計算ミス等を含めた計測エラーを抑制することができ、且つ測定時間を大幅に短縮することができる。
【0087】
特に本デジタル土壌物理性計測装置1では、自動校正手段によって、校正用試料を用いて校正作業を行い、その結果を利用して実容積の算定式を自動的に補正するので、測定環境に合わせて極めて高精度な計測が可能となる。とりわけ、校正作業と実測作業が自動的に連動するので、作業者の負担を大幅に軽減できる。校正作業時においても、複数の校正用試料を利用して複数回の校正を行うので、校正制度を高めることが可能となっている。
【0088】
更にこの自動校正手段では、校正作業時における誤差が、許容上限値又は許容下限値を超えるか否かを判断している。この上限又は下限を超える場合は、本装置1に何らかの異常が生じている可能性があるのでエラー表示を出す。この結果、校正ミスを未然に防止でき、また、本装置1に異常が生じたまま、実測を始めてしまうミスを低減できる。
【0089】
また更に、デジタル土壌物理性計測装置1では、特定の終了点まで加圧しても試料室11の内圧が目標圧力に到達しない場合、表示部5にエラーを表示させるので、校正時や実測時において、本装置1の破損や測定ミスを未然に防止することが可能となっている。
【0090】
また、このデジタル土壌物理性計測装置1では、校正や実測時に、特定の開始点にピストンを移動させて停止させて内部を大気開放し、その内圧と大気圧の間に一定以上の圧力差があるか否かを判定し、圧力差がある場合は表示部にエラーを表示させる。従って、微小な目詰まりや各部品の異常などのように、人間の感覚では分からないようなトラブルも、測定前に自動的に検知することが可能となる。この結果、測定ミスを低減することができる。
【0091】
また、このデジタル土壌物理性計測装置1では、目標圧力に到達させる加圧速度を自動制御することが可能であるので、この加圧速度の自動制御は計測精度の向上と計測時間の短縮につながる。
【0092】
さらに、圧力変化量に基づいて次への加圧に移行するか否かを判定するので、計測装置あるいは計測手段の異常を自動で検出することが可能となり、計測を中止あるいは計測者に異常を知らせることができ計測精度が向上する。
【0093】
また、自動で複数回の繰り返し平均値を算出することができるので、計測値計算の時間を短縮するメリットがある。さらに同一サンプルを複数回計測するとき、前回計測値と比較した値が一定範囲内であればさらなる計測を繰り返すことなく計測を自動判定して終了することができるので、計測精度を保ちながら計測時間を短縮するメリットがある。
【0094】
また、計測した計測値をデジタルデータとして保存できるので、データ入力作業が軽減されるとともにデータ解析が容易に行えるメリットがある。
【0095】
なお、上記実施形態では、試料室11に校正用試料をセットすることで、この試料室11を校正用空間として利用する場合を示したが、例えば図7に示されるように、試料室11とは別に、大きさの異なる複数の校正室11A、11B、11Cを用意して、校正作業を行うことも好ましい。この際、試料室11を含めて、校正室11A、11B、11Cには、各空間への空気の導入を切り換える切替弁12、12A、12B、12Cを設ける。校正時は、これらの切替弁12、12A、12B、12CのいずれかをONにし、残りをOFFにすることで、試料室11と校正室11A、11B、11Cが、合計4つの校正用空間として機能する。従って、これらの校正用空間に順番に空気を導入して校正を行うことができる。このようにすると、複数の校正用空間が予め用意されているので、最初から最後まで、完全に自動的に校正作業を行うことが出来る。
【0096】
更に例えば、図8に示されるように、試料室11とは別に、ピストンによって内部体積を可変にできる可変校正室16を用意して、校正作業を行うことも好ましい。この際、試料室11と可変校正室16には、各空間への空気の導入を切り換える切替弁12、12Aを設ける。校正時は、この切替弁12をOFFにして12AをONにし、可変校正室16の内部空間を自動的に多段階で変化させ、大きさの異なる複数の校正用空間として機能させる。従って、可変校正室16の内部空間を変化させながら、これらの校正用空間に順番に空気を導入して校正を行うことができる。このようにすると、複数の校正用空間が自動的に形成されるので、最初から最後まで、完全に自動的に校正作業を行うことが出来る。
【0097】
尚、本発明のデジタル土壌物理性計測装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明のデジタル土壌物理性計測装置は、土壌の実容積を測定する様々な場面で利用することが可能である。
【符号の説明】
【0099】
1.デジタル土壌物理性計測装置
3.操作パネル
5.表示部
7.筐体
9.電源スイッチ
11.試料室
11A.11B.11C 校正室
12.12A.12B.12C 切替弁
13.電源ソケット
15.出力コネクタ
16.可変校正室
17.入力コネクタ
21.制御装置
23.エアーシリンダー
25.エアー
27.ピストン
29.エアー出口
31.圧力センサ
33.ギヤ
35.歯車
37.モータ
39.原点センサ
41.電磁弁
43.配管
45.継ぎ手
47.配線
49.マイクロプロセッサ(CPU)
51.記憶部
53.リアルタイムクロック
55.アダプター
57.電源ケーブル
59.蓄電池
61.外部コンピュータ
62.出力ケーブル
63.上位コンピュータ
64.入力ケーブル
65.加圧手段
67.圧力計測手段
69.流量計測手段
71.加圧手段駆動装置
101.加圧制御手段
103.加圧停止手段
105.移行判定手段
107.平均値算出手段
109.反復手段
111.出力手段
113.計測値保存手段
117.エラー報知手段
119.実容積算定手段
121.強制終了手段
123.原点処理手段
130.計測制御プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測用の試料室と、
前記試料室を加圧する加圧手段と、
前記試料室内の圧力を計測する圧力計測手段と、
前記加圧手段を駆動する加圧手段駆動装置と、
前記加圧手段駆動装置を制御する制御装置と、
利用者に対して情報を提示する表示部と、を備え、
前記制御装置は、前記試料室が目標圧力に達するまでに必要な空気流量に基づいて、または、前記試料室に目標流量を送り込んだ際に得られる圧力変化量に基づいて、前記試料室内の試料容積を算出する実容積算定手段を有することを特徴とするデジタル土壌物理性計測装置。
【請求項2】
前記制御装置は、既知の体積となる校正用空間を前記加圧手段によって加圧し、前記校正用空間が目標圧力に達するまでの前記空気流量、または、前記校正用空間に目標流量を送り込んだ際に得られる前記圧力変化量を算出する自動校正手段を備え、
前記制御装置における前記実容積算定手段は、前記自動校正手段によって算出される前記空気流量又は前記圧力変化量を利用して、前記試料容積を算出することを特徴とする請求項1に記載のデジタル土壌物理性計測装置。
【請求項3】
前記自動校正手段は、体積の異なる複数の前記校正用空間のそれぞれに対して、前記空気流量又は前記圧力変化量を算出することを特徴とする請求項2に記載のデジタル土壌物理性計測装置。
【請求項4】
前記自動校正手段は、前記校正用空間の体積に対応して、前記空気流量又は前記圧力変化量の許容上限値及び許容下限値を記憶しており、校正動作時における前記空気流量又は前記圧力変化量が、前記許容上限値又は前記許容下限値を超える場合は、前記表示部にエラーを表示させることを特徴とする請求項2又は3に記載のデジタル土壌物理性計測装置。
【請求項5】
既知の体積となる校正用試料を前記試料室に収容することで、該試料室を前記校正用空間とすることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載のデジタル土壌物理性計測装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記加圧手段が特定の終了点まで加圧しても前記試料室の内圧が目標圧力に到達しない場合、前記表示部にエラーを表示させる強制終了手段を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のデジタル土壌物理性計測装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記加圧手段を特定の開始点に移動させて停止すると共に、前記加圧手段の内部を大気開放した際に、前記加圧手段の内圧と大気圧の間に一定以上の圧力差があるか否かを判定し、圧力差がある場合は、前記表示部にエラーを表示させる原点処理手段を備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のデジタル土壌物理性計測装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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