説明

デジタル地図の事象情報受信装置および送信装置並びに事象情報の活用方法

【課題】得られた道路の事象情報とデジタル地図上の道路との乖離度合いを反映した評価値を算出し、活用に供する。
【解決手段】対象道路の形状を示す座標列からなる位置参照情報と対象道路における事象内容情報とを含む事象情報を受信し、デジタル地図上で対象道路を特定し、事象情報を活用する受信装置20であって、位置参照情報と事象内容情報とを含む事象情報を受信する受信部21と、受信部21によって受信した位置参照情報に基づき、デジタル地図上で対応する対象道路を特定する位置特定部22と、特定した対象道路における事象内容を活用する事象情報活用部25と、を備え、位置特定部22は、受信した位置参照情報と、デジタル地図上に存在する対応する対象道路との間の乖離度合いを示す評価値を算出し、事象情報活用部25は、事象内容情報と評価値の組み合わせに応じて、受信した事象情報の活用態様を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル地図上の事象情報を伝達する方法に関し、特に、送信装置から送られた事象情報と、受信装置のデジタル地図上における位置を正確に特定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナビゲーション車載機を搭載する車両が急激に増加している。ナビゲーション車載機は、デジタル地図データベースを保持し、交通情報センターなどから提供される渋滞情報や事故情報に基づいて、渋滞や事故位置を地図上に表示し、また、それらの情報を条件に加えて経路探索を実施する。
【0003】
市販されているデジタル地図データベースには多くの種類があり、地図及びデジタイズ技術、システム実装時のデータ変換処理等の違いから、各々の地図データには誤差が含まれており、その誤差は各社のデジタル地図データベースによって違っている。そのため、事象内容情報として、例えば事故位置を伝える場合、ある地図データ上で登録した事故位置の経度・緯度データを単独で送信すると、ナビゲーション車載機では、保持しているデジタル地図データベースが送信側と異なる場合、前記の地図の誤差によって、位置がズレたり、異なる道路上の位置を事故位置として識別してしまう虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−289397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
緯度、経度を使用した位置伝達方法では、受信装置側の地図において該当する道路を選出する。しかしながら、受信した事象情報における対象道路の形状を示す位置参照情報と受信装置側で選出した道路との乖離度合いには種々のものがある。すなわち、特定した道路ごとに、どれだけの乖離度合いが生じているのかを客観的に把握することができるのが好ましい。同じ乖離度合いであっても、活用の仕方によっては、特定した道路区間が活用できる場合もあれば、(より高い信頼度が必要なため)活用できない場合もあるからである。
【0006】
本発明は、上述した如き乖離度合いを反映した信頼度を算出し、活用に供することを可能とする技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、対象道路の形状を示す座標列からなる位置参照情報と前記対象道路における事象内容情報とを含む事象情報を受信し、デジタル地図上で前記対象道路を特定し、前記事象内容情報を活用する受信装置であって、前記位置参照情報と前記事象内容情報とを含む前記事象情報を受信する受信部と、前記受信部によって受信した前記位置参照情報に基づき、前記デジタル地図上で対応する対象道路を特定する位置特定部と、前記特定した対象道路における事象内容を活用する事象情報活用部と、を備え、前記位置特定部は、前記受信した位置参照情報と、前記デジタル地図上に存在する対応する前記対象道路との間の乖離度合いを示す評価値を算出し、前記事象情報活用部は、前記事象内容情報と前記評価値の組み合わせに応じて、受信した前記事象情報の活用態様を変更する。
【0008】
上記構成に基づき得られた評価値を用いて、情報活用側は特定された対象道路の信頼性を把握することができ、特定された対象道路の情報を使用するべきか否か(表示するべきか否かなど)を適切に判断することが可能となる。また、評価値のみならず、事象内容情報に応じて、事象情報の活用態様を変更するため、受信装置がより実用に適したものになる。
【0009】
また、受信装置は、前記算出された評価値を、前記事象情報を送信する送信装置に送信する送信部をさらに備える。
【0010】
上記構成により、送信装置は、受信した評価値を考慮して、位置参照情報の生成に際するエンコーディングパラメータの調整など、状況に応じて適切に位置参照情報ひいては事象情報の生成方法を変えることが可能となる。
【0011】
さらに上述した受信装置が送信した評価値を受信し、当該評価値の値に基づいて前記位置参照情報の対象道路を変更する送信装置も本発明に含まれる。
【0012】
また、コンピュータが、対象道路の形状を示す座標列からなる位置参照情報と前記対象道路における事象内容情報とを含む事象情報を受信し、デジタル地図上で前記対象道路を特定し、前記事象内容情報を活用する事象情報の活用方法であって、前記位置参照情報と前記事象内容情報とを含む前記事象情報を受信し、受信した位置参照情報に基づき、前記デジタル地図上で対応する対象道路を特定し、受信した位置参照情報と、前記デジタル地図上に存在する対応する前記対象道路との間の乖離度合いを示す評価値を算出し、前記事象内容情報と前記評価値の組み合わせに応じて、受信した前記事象情報の活用態様を変更する、事象情報の活用方法も本発明に含まれる。この方法をコンピュータに実行させるプログラムも本発明に含まれる。
【0013】
上記事象情報の活用方法において、特定した対象道路にUターン発生箇所が存在するか否か、特定した対象道路の交差点の近傍に他の交差点が存在するか否か、特定した対象道路と前記評価値が僅差となる僅差道路が存在するか否かを考慮して前記評価値を算出することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上述べたように、本発明の受信装置および事象情報の活用方法によれば、受信した位置参照情報と、デジタル地図上に存在する対応する対象道路との間の乖離度合いを反映した評価値を算出することが可能となる。したがって、情報活用側に受信した情報の信頼性を判断する情報を与えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】事象情報送受信装置を含む位置参照情報伝達システムのブロック図
【図2】事象情報送信装置における位置参照情報の生成処理の手順を示す模式図
【図3】事象情報送信装置における位置参照情報の生成処理の手順を示す模式図
【図4】事象情報受信装置における位置参照情報の生成処理の手順を示す模式図
【図5】種々の誤差パラメータを示す図
【図6】事象情報送信装置と事象情報受信装置において、交差点右左折箇所位置にチェックの対象となる道路が特定されたデジタル地図
【図7】事象情報送信装置と事象情報受信装置において、交差点右左折箇所位置にチェックの対象となる道路が特定されたデジタル地図
【図8】事象情報送信装置と事象情報受信装置において、僅差道路有無チェックの対象となる道路が特定されたデジタル地図
【図9】評価値算出用のパラメータとして道路種別を用いた場合の評価値算出用の表
【図10】評価値算出用のパラメータとして交差点種別を用いた場合の評価値算出用の表
【図11】評価値算出用のパラメータとして方位誤差を用いた場合の評価値を算出するための概念図
【図12】評価値算出用のパラメータとして、エンコードルール違反の有無、Uターン発生箇所、交差点右左折箇所、僅差道路の有無を用いた場合の評価値算出用の表
【図13】事象情報受信装置におけるマッチング処理および総合評価値を算出する手順を示すフローチャート
【図14】データ構造図
【図15】総合評価値の算出後、事象情報を表示するか否かを判定する処理の手順を示すフローチャート
【図16】総合評価値の算出後、事象情報を表示するか否かを判定する処理の手順を示すフローチャート
【図17】事象情報送信装置における受信装置から受信した評価値に基づく判定処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態である事象情報送信装置10と事象情報受信装置20を含む事象情報伝達システムのブロック図である。例えば、事象情報送信装置10は、事象情報の提供サービスを行うセンター装置を構成し、事象情報受信装置20は、車両に搭載されたカーナビゲーション装置を構成する。
【0018】
事象情報送信装置10は、事象情報入力部11と、位置参照情報変換部12と、デジタル地図データベース13と、送信部14と、受信部15と、事象内容情報変換部16とを含む。
【0019】
事象情報入力部11には、道路に配置された各種のセンサー、プローブ車両などの外部装置から収集した事象情報が入力される。事象情報は、(1)対象道路の形状を示す座標列からなる位置参照情報(位置情報)と、(2)当該対象道路における事象内容情報を含む。ここで、事象内容情報とはコンテンツ情報ともいい、道路規制、道路・交通障害、渋滞、事故などの交通状態に関する交通情報や、特定場所の性質、名称などを表すPOI(Point of Interest;対象物の位置や対象となるポイント)、地図の更新情報等が存在する。位置参照情報変換部12は、事象情報入力部11から入力された位置参照情報を、座標列データに変換する。デジタル地図データベース13は第1のデジタル地図を表現するデジタル地図データを蓄積する。事象内容情報変換部16は、事象情報入力部11から入力された事象内容情報を、予め定められた規則に従い、送信に適したデータに変換する。送信部14は、変換された位置参照情報及び事象内容情報とを含む事象情報を事象情報受信装置20に送信する。受信部15は、後述するように、事象情報受信装置20から、位置参照情報に関する評価値を受信する。
【0020】
事象情報送信装置10の位置参照情報変換部12は、種々のエンコーディングパラメータを用いて、位置参照情報を変換し、座標データ列を生成する。すなわち、本作用から見れば、事象情報送信装置10は、当該データ列を生成するエンコーダとして機能する。
【0021】
事象情報受信装置20は、受信部21と、位置特定部22と、事象内容情報処理部23と第2のデジタル地図を表現するデジタル地図データを蓄積するデジタル地図データベース24と、事象情報活用部25と、送信部26とを含む。
【0022】
受信部21は、事象情報送信装置10から送られた事象情報を受信する。位置特定部22は、受信部21が受信した事象情報中の位置参照情報である座標列データを用いて、第2のデジタル地図上における位置参照情報の位置特定(マッチング)を行う。すなわち、位置特定部22は、受信した位置参照情報に対応する対象道路を、第2のデジタル地図上で特定する。事象内容情報処理部23は、受信部21が受信した事象情報中の事象内容情報を処理し、後述する事象情報活用部25が利用可能なデータ形式に変換する。デジタル地図データベース24は第2のデジタル地図を表現するデジタル地図データを蓄積する。事象情報活用部25は種々の態様にて、事象情報を活用する。例えば、事象情報活用部25が液晶表示装置等によって構成される表示部の場合、位置特定部22によって第1のデジタル地図上の対象道路区間に対応する第2のデジタル地図上の道路区間の位置を特定し、事象内容情報処理部23から入力された当該事象内容情報を表示する。またさらに、事象情報活用部25が経路誘導等の機能を有する場合は、特定した道路上の渋滞状況や通行可能可否等の交通情報を活用して推奨経路の探索をおこなう。
【0023】
図2及び図3は、位置参照情報変換部12によって生成され、送信部14から事象情報受信装置20へ送信される位置参照情報(受信装置側で対象となる道路区間を特定する為の情報)の生成手順の一例を示す。まず、位置参照情報変換部12は、図2(a)に示す送信しようとする対象道路区間のデータ(地図データ内で当該道路区間を一意に識別できるID、座標列データなど)を受領する。当該座標列データは、事象情報入力部11から得られるものである。続いて、位置参照情報変換部12は、図2(b)に示すように、対象道路区間の始点および終点が、次の適合条件(1)から(3)を満たすように、対象道路区間の延伸を行う。ただし、図2(b)の左側に示すように、始点または終点が適合条件を満たす場合、延伸は行われない。
【0024】
(1)対象道路区間の外側近傍に交差点が存在する場合、交差点を含むように、対象道路区間を延伸する。
(2)対象道路区間の対象道路が低位クラス道路(都道府県道など)である場合、上位クラス道路(高速道路など)との交差点を含むように、対象道路区間を延伸する。
(3)後で述べる道路特定点(RP;Routing Point)が設定可能な箇所まで、対象道路区間を延伸する。道路特定点が設定可能な箇所とは、(a)あいまいさがない(周辺に類似道路が少なく、誤判定リスクが小さい)、(b)微小なジグザグ、凸凹がなく、道路方位が安定している、といったような箇所である。
【0025】
次に位置参照情報変換部12は、図2(c)に示すように、対象道路区間の始点、終点、道路の属性の変更点(国道から一般道、連絡線から本線への変更など)に、属性変更点(IP;Intersection Point)を設定する。
【0026】
更に位置参照情報変換部12は、図2(d)に示すように、道路特定点RPを、道路区間の始点、終点、道路区間の途中に設定する。「IP∧RP」は「IPかつRP」の意味である。尚、隣接する道路特定点RP間で最短経路探索を行った場合に、他の道路パスが選出されないよう、逐次挿入する(例えば右から2番目のRP)。また、道路特定点RPの設定は、次の条件(1)から(5)を満たすように行われる。
【0027】
(1)設定可能箇所に道路特定点RPを設定する。
(2)隣り合うRPの道なり距離が直線距離の2倍以内となるようにRPを設定する。
(3)可能な限り交差点IPと重なるように道路特定点RPを設定する。
(4)数が必要最小限となるように、道路特定点RPを設定する。
(5)道路特定点RP間の対象道路の重み付け経路コストは、他の全ての代替経路のコストよりも規定以上(たとえば25%以上)の優位性を確保するよう、道路特定点RPを設定する。
【0028】
更に位置情報変換部12は、図3(a)に示すように、事象情報受信装置20側で誤判定を起こしやすい区間を、道路形状表現区間として次の条件にしたがって設定する。
【0029】
(1)道路特定点RPまたは交差点IPがあいまいさをもつ(周辺に類似道路があり、誤判定リスクが高い)。
(2)低位クラス道路
(3)最短経路を保障するRPが設定できない区間
【0030】
更に位置参照情報変換部12は、図3(b)に示すように、図3(a)の処理で設定された対象道路区間を構成する形状構成点(SP;Shape Point)の抽出、および道なり距離が直線距離の規定値を超えないように補間点(LP;Location Point)の抽出を行う。
【0031】
最後に位置参照情報変換部12は、図3(c)に示すように、交差点IP、道路特定点RP、形状構成点SP、補間点LPの各々に対し、条件に合致する属性情報を設定し、位置参照情報の座標列データを生成する。
【0032】
図4は、事象情報受信装置20における位置特定部22において実施される、対象道路区間の位置参照情報のデジタル地図上での特定処理の手順を示す。図4(a)は事象情報受信装置20の受信部21が受信する、事象情報送信装置10から送信された事象情報に含まれる位置参照情報を示す。図4(b)に示すように、まず、位置特定部22は位置参照情報から道路形状区間を抽出し、パターンマッチング(位置特定)で、デジタル地図データベース24の第2のデジタル地図上の該当道路区間を特定する。
【0033】
次に位置特定部22は、図4(c)に示すように、受信した位置参照情報内の道路特定点RPの緯度、経度、属性から、検索半径(DSA)内の道路特定点RPの候補点を、第2のデジタル地図から抽出するとともに、形状端点付近に擬似道路特定点RPを設定する。
【0034】
そして、位置特定部22は、図4(d)に示すように、道路特定点RP間の経路の候補を、ダイクストラ法などの経路探索手法(RS;Route Search)を用いて候補経路として算出する。本例では、2×3=6つの候補経路が算出されている。
【0035】
最後に位置特定部22は、図4(e)に示すように、各候補経路の評価値および/または各道路特定点RPの候補の地点の評価値から、最終候補を決定する。
【0036】
すなわち、本実施形態において、位置特定部22は、複数の候補経路について、最も妥当な経路と考えられる最終候補を選択するための評価値を算出する。ここで、当該評価値の基礎となる誤差の判定基準としては、
・受信した道路形状区間データとデジタル地図上で特定した道路の緯度経度のずれ(位置情報のずれ)
・受信した道路形状区間データとデジタル地図上で特定した道路の属性情報のずれ(事象情報のずれ)
・エンコード、アルゴリズムとの矛盾の有無
などが挙げられる。
【0037】
すなわち、ここでいう「評価値」とは、受信した道路の位置参照情報に含まれる座標値や属性情報(道路種別などの道路の特性)などと、デジタル地図上で対応する対象道路(道路の座標値や属性情報)との間の乖離状況、乖離度合い(誤差)を反映した数値、ランクなどの指標である。また、評価値には、対象道路上の特定の地点(RPなど)に基づいて算出される地点評価値、または対象道路の少なくとも一部の地点間を結ぶ特定の経路に基づいて算出される経路評価値が存在する。また、対象の道路区間全体の評価値ではなく、道路区間を分割し、部分的道路区間単位で、評価値を算出することも可能である。さらに評価値の詳細な例としては、以下のような誤差パラメータが挙げられる。
【0038】
(1)ポイント(RP)の誤差(道路の位置コードとデジタル地図上での道路特定点(RP)の位置ずれ;地点評価値)
・緯度経度誤差(単純な距離の誤差):垂線誤差(図5(a))、垂点誤差(垂直距離、引寄せ距離;(図5(b))、方位誤差(図5(c))
・道路属性誤差(RPにおける道路属性の違い):道路種別(FC)、道路機能(FW)、道路名称(RD)、規制情報(DD)
・交差点属性(交差点における道路属性の違い):交差点種別(IT)、交差道路接続角度(CA)、交差道路属性(FC,FW)
【0039】
(2)線分(特定経路)の誤差/矛盾(経路自体の位置ずれや矛盾;経路評価値)
・道路属性誤差(FC/FW)、ポイント間道なり距離誤差(PD)
・LP位置誤差(図5(d))
・対象道路無し/道路形状区間の位置飛び有無
・エンコード・ルール違反:受信側でデコードした際にエンコードルールに反している箇所の有無やその数。具体例として、RP間の道なり距離は、RP間の直線距離の規定倍数(たとえば2倍)以内か否か、LP間の道なり距離は、LP間の直線距離の規定倍数以内か否か、等の判定基準により判定がなされる。図12に示すように、受信側で特定した道路区間において、エンコードルールに反している発生件数に基づいて評価値が算出される。本例では、発生件数が0、1、2、3それぞれの場合に、評価値0、20、30、40が付与される。
・Uターン発生箇所のチェック(図5(e))
Uターンの発生箇所は図5(e)に示すように受信側(デコード側)で特定した道路区間について反対方向が含まれる場合、または同じ交差点を二度通るかのチェックを行う。具体的には図12に示すようにUターンの発生件数によって評価値が算出される。本例では、発生件数が0、1、2、3それぞれの場合に、評価値0、70、80、90が付与される。
【0040】
・交差点右左折箇所位置チェック(交差点位置のずれに基づく評価値)
図6(a)は、事象情報送信装置10における位置参照情報変換部12が、デジタル地図データベース13の第1のデジタル地図上において、交差点IP、道路特定点RP、補間点LPを特定した状況を示す。交差点IPの周りには多くの交差点が存在しており、ここでは交差点IPは道路特定点RPとして設定されていない。一方、図6(b)は、事象情報受信装置20が図6(a)のように事象情報送信装置10において変換された位置参照情報である座標列データを受信し、その後に位置特定部22がデジタル地図データベース24の第2のデジタル地図上において、受信した座標列データに対応する位置特定によって道路を特定した状況を示す。具体的には図12に示すように、交差点右左折箇所の位置ずれの発生件数によって評価値が算出される。本例では、発生件数が0、1、2、3それぞれの場合に、評価値0、50、70、90が付与される。
【0041】
位置特定においては、交差点IPは使用されない。そして、今回の位置特定においては、図6(b)に示すようにA1からA5の交差点を通った道路区間が位置特定部22によって特定されている。受信した座標列データには交差点IPが含まれているが、当然、A1からA5の交差点は、交差点IPとは異なる。A1からIPまでの距離が150m、A2からIPまでの距離が170m、A3からIPまでの距離が60m、A4からIPまでの距離が80m、A5からIPまでの距離が100mの場合、これら150m、170m、60m、80m、100mという距離を評価値の計算の基礎とすることができる。
【0042】
すなわち、本実施形態においては、受信した座標列データ(位置参照情報)において、特定した対象道路の交差点(A1からA5)の近傍に他の交差点(交差点IP)が存在するか否かを考慮して、評価値が算出される。
【0043】
図6は、交差点IPとA1からA5の交差点のように、本来の交差点(IP)と特定された交差点(A1〜A5)が極端に離れた例を示している。一方、図7は、多くの交差点が狭い領域に集中して存在した例を示す。このような場合において、図6のように交差点の位置をチェックし、評価値を算出し、特定した道路の正確性を吟味することは有効である。
【0044】
・僅差道路有無チェック(僅差道路の有無に基づく評価値)
図8(a)は、事象情報送信装置10において参照された位置参照情報には1本の道路しか存在しない状況を示す。一方、当該位置参照情報に対応した座標列データを受信した事象情報受信装置20においては、図8(b)に示すように、本来特定すべき道路に加え、近接した連絡路(僅差道路)をも含む2本の道路が特定されている。本来特定すべき道路と僅差道路それぞれの関係を考慮せずに算出されたそれぞれの評価値は僅差であると考えられる。このように僅差道路が存在する場合、事象情報受信装置20における位置特定が誤っている可能性が高い。
【0045】
本実施形態においては、特定した対象道路と評価値が僅差となる僅差道路が存在するか否かを考慮して、対象道路の評価値が算出される。具体的には図12に示すように、僅差道路の発生件数によって評価値が算出される。本例では、発生件数が0、1、2、3それぞれの場合に、評価値0、40、50、60が付与される。
【0046】
具体的に、評価値はA〜D、1〜4などのランクによって表現され、表示部としての事象情報活用部25に表示され得るが、態様は特に限定はされない。
【0047】
事象情報受信装置20における事象情報活用部25によって実行されるデジタル地図の表示などを行う、アプリケーション、ソフトウェアは、例えば以下のように、算出された評価値を活用する。すなわち、交通状況などの事象内容情報に対応して所定の採用基準が定められており、事象情報活用部25は、当該採用基準と評価値を比較し、事象情報の活用態様(事象情報の採用の有無など)を変更する。すなわち、事象内容情報と評価値の組み合わせにより、事象情報の活用態様が変更される。
【0048】
(1)渋滞情報の場合は、多少対象道路を間違えても表示位置がずれるだけなので、よりたくさんの情報を活用すべく、低信頼の道路も利用する。すなわち、渋滞情報という事象内容情報に対する採用基準は低く、このような低い採用基準と評価値が比較される。
(2)地図更新の場合は、誤判定していると、後々まで「間違った道路」が残るため、低信頼の道路は利用しない。すなわち、地図更新という事象内容情報に対する採用基準は高く、このような高い採用基準と評価値が比較される。
【0049】
また、評価値の算出に当たっては、上述した種々の誤差パラメータを採用することが可能であるが、複数の誤差パラメータを採用することができる。また、複数の誤差パラメータを採用した場合において、各誤差パラメータの重み付けを任意に調整することができる。基本的には、評価値が見えやすく、重み付けをチューニングしやすいのが望ましい。例えば、ポイントの誤差パラメータ合計値:RP区間の誤差パラメータ合計値=50:50 〜 60:40の範囲となるよう、誤差パラメータの重み付けを調整することができる。
【0050】
重み付けの具体例としては、以下のようなものが挙げられる。
(1)IP/RPまたは交差点に設定されたRPの誤差パラメータは、例えば以下のように重み付けが配分される。
垂線誤差:垂点誤差:BR誤差:FC誤差:IT誤差:CA誤差:交差FC誤差:交差FW誤差=30:20:10:10:10:10:5:5[%]
【0051】
CA等がないような場合、各誤差の比率をEr1,Er2・・・として、100*ErN/Σ(ErM)で補正することが可能である。
(例:CAが無いとき、垂線誤差は、100/(100−10)=100/90=33.3[%]に補正する)。また、各誤差パラメータに誤差レンジを定め、誤差がないとき=0(満点)、誤差レンジ上限値のとき=100(0点)といった形式で誤差レンジを設定することができる。
【0052】
(2)RP(リンク途中のRP)の誤差パラメータは、例えば以下のように重み付けが配分される。
垂線誤差:BR誤差:FW誤差:FC誤差:PCI誤差=30:20:10:10:30
【0053】
(3)RP区間の誤差パラメータは、例えば以下のように重み付けが配分される。
PD誤差:FC誤差:FW誤差:LP位置誤差=30:15:15:40
【0054】
(4)総合評価値
上記より、N個のRPと、N−1個のRP区間エラーコストが算出
総合評価値は、ポイントのコスト合計値:RP区間のコスト合計値=P:Q
[P/(P+Q)*(1/N)*(各RPのエラーコスト合計値)]+[Q/(P+Q)*(1/(N−1)*(各RP区間のエラーコスト合計値)]
【0055】
以下、評価値の具体的な算出例を示す。単純な距離の誤差である緯度経度誤差が評価値算出用のパラメータとして用いられる場合、評価値は例えば以下の式により求められる。
評価値 = 候補点とRPの距離誤差/許容誤差 × 100(%)
【0056】
例えば許容誤差(最大許される距離誤差)が150mであり、候補点とRPの距離誤差が30mの場合、評価値は30/150 × 100 = 20(%)となる。
【0057】
図9は、評価値算出用のパラメータとして、道路種別(FC)を用いた例である。事象情報送信装置10から送られた座標列データ(受信データ)の道路種別には、例えば識別コード0、1、2、3が割り当てられ、それぞれ、高速道路、国道、地方道、その他の道路を示す。一方、事象情報受信装置20においても、受信データに対応する候補点には識別コード0、1、2、3が割り当てられる。受信データと候補点の対応関係に応じて、所定の評価値が与えられる。受信データと候補点が同じ道路種別の場合、評価値は「0」となる。また、例えば受信データが識別コード1の国道であり、候補点が識別コード2の地方道である場合、評価値は「10」となり、受信データが識別コード3のその他の道路であり、候補点が識別コード0の高速道路である場合、評価値は「50」となる。
【0058】
図10は、評価値算出用のパラメータとして、交差点種別(IT)を用いた例である。事象情報送信装置10から送られた座標列データ(受信データ)の交差点種別には、例えば識別コード0、1、2、3が割り当てられ、それぞれ、無効交差点(交差点でない道路の途中点)、通常の交差点、複合交差点、分岐・合流を示す。一方、事象情報受信装置20においても、受信データに対応する候補点には識別コード0、1、2、3が割り当てられる。受信データと候補点の対応関係に応じて、所定の評価値が与えられる。受信データと候補点が同じ交差点種別の場合、評価値は「0」となる。また、例えば受信データが識別コード1の通常の交差点であり、候補点が識別コード2の地方道である場合、評価値は「5」となり、受信データが識別コード3のその他の道路であり、候補点が識別コード0の無効交差点である場合、評価値は「50」となる。
【0059】
図11は、評価値算出用のパラメータとして、図5(c)にも示した方位誤差(座標列データにおける道路の方位と位置特定で特定された道路の方位との間の角度誤差)を用いる場合の評価値を算出するための概念を示す図である。方位誤差における評価値は、例えば以下の式により求められる。
評価値 = 方位誤差θ/許容誤差 × 100(%)
【0060】
例えば許容誤差(最大許される角度誤差)が45度であり、方位誤差θ=18度の場合、評価値は18/45 × 100 = 40(%)となる。
【0061】
図13は、図4で示した事象情報受信装置20の位置特定部22による道路区間特定処理および評価値算出処理のフロー手順を示す。まず、位置特定部22は道路形状区間を抽出し(ステップS101)、抽出された道路形状区間とデジタル地図データベース24の第2のデジタル地図とのパターンマッチング(位置特定)を行う(ステップS102)。さらに位置特定部22は、Uターンや迂回、道路外区間の有無などのチェック、更に必要に応じて「交差点右左折箇所位置チェック」、「僅差道路有無チェック」を行う(ステップS103)。ステップS101からステップS103が、道路特定、すなわちパターンマッチングの処理に該当し、図4(a)、(b)の処理に該当する。
【0062】
次に位置特定部22は、経路探索を行うため、道路特定点RPの候補を検索する第2のデジタル地図上の領域(図4(c)のDSA)を決定する(ステップS104)。そして位置特定部22は、当該領域内の道路特定点RPを複数抽出する(ステップS105)。この際、各道路特定点RPについて、上述したポイント(RP)の誤差で述べた誤差パラメータに基づいて算出された評価値(地点評価値)が算出される。さらに位置特定部22は、候補経路を構成する道路特定点RPを複数算出する(ステップS106)。ここで、算出される道路特定点RPは、上述したポイント(RP)の誤差で述べた誤差パラメータに基づいて算出された評価値(地点評価値)のうち、小さいもの(誤差の小さいもの)から所定の数が選び出される。ステップS104とステップS105が、経路探索の候補となりうるRPの算出処理であり、図4(c)の処理に該当する。
【0063】
ここで、道路特定点RPの組み合わせ、すなわち候補経路が#N個得られる(ステップS106,S107)。候補経路の最初のものの番号をN=1とする。次のステップS108以下で処理の対象となる候補経路Nは、その道路特定点RPの地点評価値のよいもの(小さいもの)から順に番号が付与され、選出される。
【0064】
位置特定部22は、対象の候補経路Nについて、上述した線分(特定経路)の誤差/矛盾で述べた誤差パラメータに基づいて算出された評価値(経路評価値)を算出する(ステップS108)。さらに位置特定部22は、ステップS105で得られた地点評価値と、ステップS108で得られた経路評価値に基づき、対象の候補経路Nの総合評価値を算出する(ステップS109)。
【0065】
次に位置特定部22は、対象の候補経路Nについて、Uターンの有無、エンコードルールとの矛盾などのチェックを行う(ステップS110)。更に必要に応じて、位置特定部22は、「交差点右左折箇所位置チェック」、「僅差道路有無チェック」等を行う。
【0066】
位置特定部22によって算出された評価値が規定外の場合(ステップS111)、位置特定部22は、対象となっている候補経路Nの総合評価値と、以前に総合評価値を算出している候補経路の総合評価値から、総合評価値の増減傾向を判定し(ステップS112)、合致する場合は最も総合評価値がよい道路特定点RPの組み合わせ、すなわち経路を選出する(ステップS113)。
【0067】
ここで、「総合評価値の増減傾向」とは、ステップS107で選出される候補経路の地点評価値の変化傾向と、ステップS109で得られる総合評価値の変化傾向が一致しているか否かを表す指標である。すなわち、総合評価値の増減傾向が合致するとは、地点評価値が増加(減少)していくに従い、総合評価値も増加(減少)する状態をいう。
【0068】
ステップS112での総合評価値の増減傾向が不一致の場合、対象の候補経路の番号Nが、算出された組み合わせの中から、候補経路の番号Nが最大値Maxに等しいか否かを判定する(ステップS114)。ここで、「総合評価値の増減傾向が不一致」とは、地点評価値が増加(減少)していくに従い、総合評価値が減少(増加)する状態をいう。また、最大値Maxとは、総合評価値を比べる対象となる候補経路の最大数であり、予め定められたものである。
【0069】
候補経路の番号Nが最大値Maxに等しい場合は(ステップS114;Yes)、これ以上候補経路の総合評価値を算出することなく、最も評価値がよい経路を選出する(ステップS113)。
【0070】
ステップS114で、候補経路の番号Nが最大値Maxに等しくないと判定された場合はN<最大値Maxのため、次の候補経路(N+1)に移る。すなわちN=N+1とし(ステップS115)、ステップS107に戻り、次の候補経路(N+1)について、再度総合評価値の算出、増減傾向の判定等を行う(ステップS108からS114)。
【0071】
一方、ステップS111において位置特定部22によって算出された評価値が、予め定められた評価値の規定内であり、かつステップS110のチェック結果が問題ない場合、当該評価値算出の対象となっている経路がステップS107において挙げられた候補経路のうち1番目であるかどうか(N=1)が確認される。対象となっている経路が1番目でない場合(N≠1)、既に複数の候補経路が挙げられているので、位置特定部22は、評価値の最もよい候補経路の評価値と、次点評価値をもつ候補経路の評価値との差をチェックし(ステップS119)、当該差がわずかであるかどうかを判定する(ステップS120)。当該差がわずかである場合(ステップS120;YES)、位置特定部22は評価値の最もよい候補経路の評価値に対し、「僅差道路有」を反映した新たな評価値を算出し(ステップS121)、処理を終える。二つの経路の評価値の差がわずかである場合、位置特定が誤っている可能性が高く、誤りの可能性を評価値に反映させるべきであるからである。一方、当該差がわずかでない場合(ステップS120;NO)、位置特定部22は評価値の最もよい候補経路の評価値をそのまま最終の評価値として算出し、処理を終える。
【0072】
また、事象内容情報処理部23は、上述した位置特定部22の処理と並行して、受信部21が受信した事象情報中の事象内容情報を処理し、後述する事象情報活用部25が利用可能なデータ形式に変換する。
【0073】
図14(a)は地点評価値、区間評価値のデータ構造の例、図14(b)は図14(a)のデータの基礎となる、各ポイント及び各経路に対する誤差、及び形状区間チェック、経路探索区間チェックのデータ構造の例である。
【0074】
図15は、位置特定部22による特定経路の総合評価値算出後の、事象情報の活用の一態様としての、事象情報の表示処理のフロー手順を示す。図13の総合評価値の算出後(ステップS201)、当該総合評価値が採用基準を満たすか否かを位置特定部22は判定する(ステップS202)。採用基準は、事象内容情報に対応して所定のものが予め決められており、当該総合評価値が採用基準を満たす場合(ステップS202;YES)、事象情報活用部25は該当事象情報を地図重畳表示により活用する(ステップS203)。一方、当該総合評価値が採用基準を満たさない場合(ステップS202;NO)、当該総合評価値は廃棄される(ステップS204)。
【0075】
上記手順においては、当該経路全体の総合評価値が、表示するか否かの判断対象となる。一方、次の図16に示すように、経路を複数の小区間に分割し、各小区間ごとに表示するか否かを判断してもよい。
【0076】
図16は、位置特定部22による対象経路の小区間(道路区間を分割した部分的道路区間単位)ごとの総合評価値算出後の、事象情報の表示処理のフロー手順を示す。図13の総合評価値算出手順において、位置特定部22は、対象経路を小区間に分割し、小区間ごとに総合評価値を算出する(ステップS301)。そして、位置特定部22は、まず小区間M=1について(ステップS302)、小区間Nの総合評価値が採用基準を満たすか否かを判定する(ステップS303)。当該総合評価値が採用基準を満たす場合(ステップS303;YES)、表示部としての事象情報活用部25は、当該小区間Mに対応する総合評価値を、位置特定部22、事象情報処理部23によって処理された事象情報とともに表示する(ステップS304)。一方、当該総合評価値が採用基準を満たさない場合(ステップS303;NO)、当該小区間Mに対応する総合評価値は廃棄される(ステップS305)。
【0077】
ステップS304、S305の後、位置特定部22は、全小区間Mについて処理が終了したか否かを判定し(ステップS306)、全小区間Mについて処理が終了している場合(ステップS306;YES)、処理を終了する。一方、全小区間Mについて処理が終了していない場合(ステップS306;NO)、処理の対象を次の小区間(M+1)に移す。すなわちM=M+1とし(ステップS307)、ステップS303に戻り、次の小区間(M+1)について、再度採用基準を満たすか否かの判定等を行う(ステップS303からS306)。
【0078】
すなわち、事象情報活用部25は、交通状況などの事象内容情報に対応して定められた所定の採用基準と、算出された評価値を比較し、事象情報の活用態様(事象情報の採用の有無など)を変更する。すなわち、事象内容情報と評価値の組み合わせにより、事象情報の活用態様が変更される。
【0079】
上述したように、本実施形態の事象情報受信装置20は、上述した手順に基づき得られた評価値を用いて、特定された対象道路の信頼性を把握することができる。そして、事象情報受信装置20は、特定された対象道路を使用するべきか否か(表示するべきか否かなど)、適切に判断することが可能となる。
【0080】
さらに、事象情報受信装置20は、算出された評価値(総合評価値、地点評価値、経路評価値のいずれか)を、適宜事象情報送信装置10にフィードバック送信する。この際、位置特定部22は、送信部26を介して事象情報送信装置10へ評価値をフィードバック送信する。フィードバック送信する評価値は、総合評価値か、図14(a),(b)のような個別の評価値、または各誤差そのものでもよい。当該評価値を受信した事象情報送信装置10は、当該評価値に基づき、位置参照情報を作成するために用いるエンコードパラメータを更新するなど、評価値を活用する。評価値の活用の仕方としては、以下のような例がある。
【0081】
(ケース1)新設された道路などがあるため、「乖離が大きい(評価値が大きい)」という事象情報受信装置20の判定が続いた場合、「受信装置側のデジタル地図には該当する道路が存在しない」と事象情報送信装置10は判定し、道路存在有無の判別がしやすい「道路形状」を用いて位置コードを生成する。このような手順により、事象情報受信装置20側のデジタル地図のバージョンが更新され、乖離が小さくなった時点で、間欠的なポイント列に戻す、という利用方法にも活用することが可能となる。
【0082】
(ケース2)事象情報受信装置20の判定が「乖離が大きい(評価値が大きい)」という場合は、誤判定をなるべく防止するため、RP、LPなど、ポイントの密度を上げた位置参照情報を事象情報送信装置10は作成し、事象情報受信装置20に送信する。
【0083】
(ケース3)事象情報受信装置20の判定が「乖離が小さい「(評価値が小さい)」という場合は、送信データ量を減らすため、位置参照情報のポイントの密度を下げる、または追加する属性情報を削減する。
【0084】
図17は、評価値を受信した事象情報送信装置10のデータ更新処理のフロー手順を示す。まず、事象情報受信装置20の受信部15が評価値を受信し(ステップS401)、位置参照情報変換部12が当該評価値を分析する(ステップS402)。分析の結果、上記ケース2の如く乖離度合いが予め定められた規定値(1)より大きい(評価値が大きい)と判定された場合(ステップS404)、位置参照情報変換部12は該当位置のポイント密度を上げるようにエンコードパラメータを更新する(ステップS404)。一方、分析の結果、乖離度合いが規定値(1)より大きくないと判定された場合(ステップS403;NO)はそのまま処理を終了する。
【0085】
また、分析の結果、上記ケース1の如く対象道路がないと判定された場合(ステップS405;YES)、位置参照情報変換部12は道路形状となるようにエンコードパラメータを更新する(ステップS406)。一方、分析の結果、対象道路があると判定された場合(ステップS405;NO)はそのまま処理を終了する。
【0086】
また、分析の結果、上記ケース3の如く乖離度合いが予め定められた規定値(2)(規定値(1)>規定値(2))より小さい(評価値が小さい)と判定された場合(ステップS407;YES)、当該位置のポイント密度を下げるようにエンコードパラメータを更新する(ステップS408)。一方、分析の結果、乖離度合いが規定値(2)より小さくないと判定された場合(ステップS407;NO)はそのまま処理を終了する。
【0087】
すなわち、位置参照情報変換部12は、受信した評価値の値に基づいて位置参照情報の対象道路を何らかの形式で変更する役割を果たす。以上のような処理により、事象情報受信装置10は状況に応じて最適な位置参照情報を生成することが可能となる。
【0088】
本実施形態では、受信装置、送信装置とも、地点評価値、経路評価値を含む総合評価値を乖離度合いの判定基準としている。しかしながら、乖離度合いの判定基準はここでいう総合評価値に限定される必要はなく、地点評価値または経路評価値のみを本発明の評価値として使用することができる。また、乖離度合いを適切に反映したものであれば、他の指標を本発明の評価値して使用することもできる。
【0089】
以上、本発明の各種実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態において示された事項に限定されず、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者がその変更・応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明によれば、特定した道路の信頼性を反映した評価値が得られるので、当該道路の特性に応じて当該道路を使用するか否か等を判定する受信装置を提供される。また、受信した評価値を考慮して、適切に位置参照情報の生成方法を変更する送信装置が提供される。
【符号の説明】
【0091】
10 事象情報送信装置
11 事象情報入力部
12 位置参照情報変換部
13 デジタル地図データベース
14 送信部
15 受信部
16 事象内容情報変換部
20 事象情報受信装置
21 受信部
22 位置特定部
23 事象内容情報処理部
24 デジタル地図データベース
25 事象情報活用部
26 送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象道路の形状を示す座標列からなる位置参照情報と前記対象道路における事象内容情報とを含む事象情報を受信し、デジタル地図上で前記対象道路を特定し、前記事象情報を活用する受信装置であって、
前記位置参照情報と前記事象内容情報とを含む前記事象情報を受信する受信部と、
前記受信部によって受信した前記位置参照情報に基づき、前記デジタル地図上で対応する対象道路を特定する位置特定部と、
前記特定した対象道路における事象内容を活用する事象情報活用部と、を備え、
前記位置特定部は、前記受信した位置参照情報と、前記デジタル地図上に存在する対応する前記対象道路との間の乖離度合いを示す評価値を算出し、
前記事象情報活用部は、前記事象内容情報と前記評価値の組み合わせに応じて、受信した前記事象情報の活用態様を変更する、受信装置。
【請求項2】
請求項1記載の受信装置であって、
前記算出された評価値を、前記事象情報を送信する送信装置に送信する送信部をさらに備える受信装置。
【請求項3】
請求項2記載の受信装置が送信した評価値を受信し、当該評価値の値に基づいて前記位置参照情報の対象道路を変更する、送信装置。
【請求項4】
コンピュータが、対象道路の形状を示す座標列からなる位置参照情報と前記対象道路における事象内容情報とを含む事象情報を受信し、デジタル地図上で前記対象道路を特定し、前記事象情報を活用する事象情報の活用方法であって、
前記位置参照情報と前記事象内容情報とを含む前記事象情報を受信し、
受信した位置参照情報に基づき、前記デジタル地図上で対応する対象道路を特定し、
受信した位置参照情報と、前記デジタル地図上に存在する対応する前記対象道路との間の乖離度合いを示す評価値を算出し、
前記事象内容情報と前記評価値の組み合わせに応じて、受信した前記事象情報の活用態様を変更する、事象情報の活用方法。
【請求項5】
請求項4記載の事象情報の活用方法であって、
特定した対象道路にUターン発生箇所が存在するか否かを考慮して前記評価値を算出する、事象情報の活用方法。
【請求項6】
請求項4記載の事象情報の活用方法であって、
特定した対象道路の交差点の近傍に他の交差点が存在するか否かを考慮して前記評価値を算出する、事象情報の活用方法。
【請求項7】
請求項4記載の事象情報の活用方法であって、
特定した対象道路と前記評価値が僅差となる僅差道路が存在するか否かを考慮して前記評価値を算出する、事象情報の活用方法。
【請求項8】
請求項4から7のいずれか1項に記載の事象情報の活用方法をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−256343(P2010−256343A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70460(P2010−70460)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、経済産業省、「情報大航海プロジェクト」委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】