デジタル地図の位置情報伝達方法と装置
【課題】道路形状が複雑な場合でも、少ないデータ量で正確にデジタル地図上の位置や形状を伝達することができる位置情報伝達方法を提供する。
【解決手段】送信側が、デジタル地図上の対象道路区間を指定する道路形状情報と、事象発生位置を対象道路区間内の相対位置で指定する事象情報とを伝達し、受信側が、道路形状情報を基にマップマッチングでデジタル地図上の対象道路区間を同定し、事象情報に基づいて対象道路区間内の事象発生位置を特定する位置情報伝達方法において、送信側は、対象道路区間に含まれるノードを間欠的に選出(2)して、当該ノードの座標データを道路形状情報に含めて伝達し、受信側は、マップマッチングで道路形状情報に含まれるノード位置を決定し(4)、このノード間の道路を経路探索で求めて(5)、対象道路区間を同定する。少ないデータ量で、効率的且つ正確にデジタル地図の事象位置を伝達することができる。
【解決手段】送信側が、デジタル地図上の対象道路区間を指定する道路形状情報と、事象発生位置を対象道路区間内の相対位置で指定する事象情報とを伝達し、受信側が、道路形状情報を基にマップマッチングでデジタル地図上の対象道路区間を同定し、事象情報に基づいて対象道路区間内の事象発生位置を特定する位置情報伝達方法において、送信側は、対象道路区間に含まれるノードを間欠的に選出(2)して、当該ノードの座標データを道路形状情報に含めて伝達し、受信側は、マップマッチングで道路形状情報に含まれるノード位置を決定し(4)、このノード間の道路を経路探索で求めて(5)、対象道路区間を同定する。少ないデータ量で、効率的且つ正確にデジタル地図の事象位置を伝達することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル地図の位置情報を伝達する方法と、それを実施する装置に関し、特に、デジタル地図上の位置を、少ないデータ量で的確に伝えることを可能にするものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ナビゲーション車載器を搭載する車両が急激に増加している。ナビゲーション車載機は、デジタル地図データベースを保持し、交通情報センターなどから提供される渋滞情報や事故情報に基づいて、渋滞や事故位置を地図上に表示し、また、それらの情報を条件に加えて経路探索を実施する。
【0003】
デジタル地図のデータベースは、我が国では数社で作成されているが、基図及びデジタイズ技術の違いから、この地図データには誤差が含まれており、その誤差は各社のデジタル地図によって違っている。
【0004】
交通情報などで、例えば事故位置を伝える場合、その位置の経度・緯度データを単独で提示すると、車載器では、保持しているデジタル地図データベースの種類により、異なる道路上の位置を事故位置として識別してしまう虞れがある。
【0005】
こうした情報伝達の不正確さを改善するため、従来は、道路網に存在する交差点などのノードにノード番号が、また、ノード間の道路を表すリンクにリンク番号が定義されており、各社のデジタル地図データベースでは、各交差点や道路がノード番号及びリンク番号と対応付けて記憶され、また、交通情報では、道路をリンク番号で特定し、その先頭から何メートル、と云う表現方法で道路上の地点が表示される。
【0006】
しかし、道路網に定義したノード番号やリンク番号は、道路の新設や変更に伴って新しい番号に付け替える必要があり、また、ノード番号やリンク番号が変更されると、各社のデジタル地図データも更新しなければならない。そのため、ノード番号やリンク番号を用いてデジタル地図の位置情報を伝達する方式は、そのメンテナンスに多大な社会的コストが掛かることになる。
【0007】
こうした点を改善するため、本発明の発明者等は、特願平11−214068号において、情報提供側が、道路位置を伝えるために、その道路位置を含む所定長の道路区間の道路形状を示す座標列から成る「道路形状データ」と、この道路形状データで表される道路区間内の道路位置を示す「相対位置データ」とを伝達し、これらの情報を受信した側では、道路形状データを用いてマップマッチングを行い、デジタル地図上の道路区間を特定し、相対位置データを用いてこの道路区間内の道路位置を特定する方式を提案し、また、特願平11−242166号において、上記「道路形状データ」の伝送データ量を削減しても、受信側でのマップマッチングを正確に実施できるように、道路種別、道路番号、道路区間内のノードの交差リンク数、交差リンク角度、交差点名などの「付加情報」を併せて伝送する方式を提案し、さらに、受信側での誤マッチングを招来しない範囲で「道路形状データ」の伝送データ量を間引く方式について提案している。
【0008】
この場合、受信側でのマップマッチングは、例えば次のように行われる。
図21に示すように、A〜B区間で渋滞が発生している道路の道路形状を表す「道路形状データ」として、地点P0(x0,y0)、P1(x1,y1)、‥、Pk(xk,yk)の経度・緯度データが
(x0,y0)(x1,y1)‥(xk,yk)
のように伝えられると(地点P0(x0,y0)、P1(x1,y1)、‥、Pkは、、受信側は、図22に示すように、自己のデジタル地図データベースから読み出した地図データを用いて、P0(x0,y0)地点を中心とする誤差の範囲に含まれる道路を候補として選定し、その中から、伝送された「付加情報」を用いて候補を絞り込む。候補が1つに絞り込めたときは、その道路の(x0,y0)及び(xk,yk)に最も近い位置を求め、その区間を「道路形状データ」で表された道路区間とする。
【0009】
候補が1つに絞り込めず、道路Q、Rが候補として残った場合は、P0(x0,y0)に最も近い各候補道路上の位置Q0、R0を求め、P0〜Q0、P0〜R0間の距離を算出する。この操作をP1(x1,y1)、‥、Pk(xk,yk)の各点について実行し、各点P0、P1、‥、Pkからの距離の二乗平均の加算値が最小となる道路区間を求め、これを「道路形状データ」が表す道路区間とする手法等により、道路区間を特定する。
【0010】
A〜Bの渋滞区間は、「道路形状データ」から求めた道路区間の開始位置を起点に、伝送された「相対位置データ」に基づいて特定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、この道路形状データを伝送する方式では、情報精度を落とさずに伝送データ量を如何に減らすかと云うことが大きな課題になる。これまで、データ量削減のために、本発明者等は、直線の道路部分の形状データを間引いて送信する方式や、道路の曲線形状をフーリエ係数で表現したり、円弧で近似したり、スプライン関数で表すことにより、データ量を圧縮する方式を提案しているが、例えば、図23に示すように、道路密度は低いが道路形状が複雑で、ノード間の間隔が長い山間部の道路などでは、こうした方式を採用しても、道路形状の表現に多くのデータ量が必要となる。
【0012】
本発明は、こうした従来の問題点を解決するものであり、道路形状が複雑な場合でも、少ないデータ量で正確にデジタル地図上の位置や形状を伝達することができる位置情報伝達方法を提供し、また、その方法を実施する装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、第1のデジタル地図上の第1の道路区間を備えた送信装置であって、当該送信装置から位置情報を受信し、前記位置情報に含まれる各ノードの座標情報、及び前記各ノードに関する付加情報または前記各ノードが属する道路に関する付加情報に基づいて、前記各ノードに対応する第2のデジタル地図上での道路上の各ノードの位置をマップマッチングにより決定し、前記決定した各ノードの位置間の経路探索に基づいて、前記第2のデジタル地図上で第1の道路区間に対応する第2の道路区間の位置を特定する受信装置に対して前記位置情報を送信する送信装置であって、前記送信装置は、前記第1のデジタル地図上の前記第1の道路区間から複数のノードを選択する手段と、前記受信装置における前記マップマッチングまたは前記経路探索の精度を高めるための情報として、前記選択されたノードに関する付加情報または前記選択されたノードが属する道路に関する付加情報を抽出する手段と、前記選択した各ノードの座標情報と、前記各ノードに関する付加情報または前記各ノードが属する道路に関する付加情報とを含む位置情報を、前記第1のデジタル地図上の前記第1の道路区間の位置情報として生成する手段と、前記生成した位置情報を前記受信装置に対して送信する手段と、を備える。
【0014】
前記ノードを選択する手段は、少なくとも前記第1の道路区間の始端ノード及び終端ノードを選択することが好ましい。
【0015】
第1のデジタル地図上の第1の道路区間を備えた送信装置が実行する位置情報の送信方法であって、当該送信装置から位置情報を受信し、前記位置情報に含まれる各ノードの座標情報、及び前記各ノードに関する付加情報または前記各ノードが属する道路に関する付加情報に基づいて、前記各ノードに対応する第2のデジタル地図上での道路上の各ノードの位置をマップマッチングにより決定し、前記決定した各ノードの位置間の経路探索に基づいて、前記第2のデジタル地図上で第1の道路区間に対応する第2の道路区間の位置を特定する受信装置に対して前記位置情報を送信する送信方法であって、前記送信方法は、前記第1のデジタル地図上の前記第1の道路区間から複数のノードを選択するステップと、前記受信装置における前記マップマッチングまたは前記経路探索の精度を高めるための情報として、前記選択されたノードに関する付加情報または前記選択されたノードが属する道路に関する付加情報を抽出するステップと、前記選択した各ノードの座標情報と、前記各ノードに関する付加情報または前記各ノードが属する道路に関する付加情報とを含む位置情報を、前記第1のデジタル地図上の前記第1の道路区間の位置情報として生成するステップと、前記生成した位置情報を前記受信装置に対して送信するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0016】
以上の説明から明らかなように、本発明のデジタル地図の位置情報伝達方法、及び、それを実施する装置では、少ないデータ量で、効率的且つ正確に、デジタル地図の形状や位置の情報を伝達することができ、データ伝送効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施形態の位置情報伝達方法を模式的に示す図
【図2】第1の実施形態の位置情報送受信装置の構成を示すブロック図
【図3】第1の実施形態の位置情報伝達方法を示すフロー図
【図4】第1の実施形態の位置情報伝達方法でのデータの構成例を示す図
【図5】第1の実施形態の位置情報伝達方法でのデータの他の構成例を示す図
【図6】接続リンク角度を説明する図
【図7】第1の実施形態の位置情報伝達方法により付加情報を参照して行う経路探索を示す図
【図8】第2の実施形態の位置情報伝達方法により伝達する切片方位を示す図
【図9】第2の実施形態の位置情報伝達方法での受信側のマップマッチングを説明する図
【図10】切片方位の求め方を説明する図
【図11】第2の実施形態の位置情報伝達方法での送信側の処理フローを示す図
【図12】第2の実施形態の位置情報伝達方法での受信側のマップマッチング処理フローを示す図
【図13】第2の実施形態の位置情報伝達方法でのデータの構成例を示す図
【図14】第3の実施形態の位置情報伝達方法を模式的に示す図
【図15】第3の実施形態の位置情報伝達方法でのデータの構成例を示す図
【図16】第3の実施形態の位置情報伝達方法での判定に用いる隣接道路との距離及び切片方位角度の差を説明する図
【図17】第3の実施形態の位置情報伝達方法での処理フローを示す図
【図18】第4の実施形態の位置情報伝達方法での送信側の処理フローを示す図
【図19】第4の実施形態の位置情報伝達方法での受信側の処理フローを示す図
【図20】第4の実施形態の位置情報伝達方法でのデータの構成例を示す図
【図21】マップマッチングの一例を説明する図
【図22】道路形状データ及び相対位置情報を説明する図
【図23】山間部の道路形状を示す地図
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
本発明の位置情報伝達方法では、送信側が、伝達しようとする道路区間に含まれるノードの中から少数のノード(始端及び終端の2点でも良い)を選択して、そのノード情報を送信する。受信側は、受信したノードの位置をマップマッチングで決定した後、ノード間の最短経路を順次探索し、その最短経路を繋ぎ合わせて、道路区間を特定する。
【0019】
図2は、この位置情報伝達方法を実施する装置の一例として、管轄する区域に発生した事象の情報を他の装置20との間で交換する位置情報送受信装置10の構成を示している。
【0020】
この装置10は、他の装置20の位置情報送信部21から送られた位置情報を受信する位置情報受信部11と、デジタル地図データを蓄積するデジタル地図データベース14と、受信情報に含まれるノード情報から該当するノード位置をマップマッチングで特定するマップマッチング部12と、特定したノード間の最短経路を探索する経路探索部13と、地図上に事象発生位置を表示するデジタル地図表示部15と、事象の発生情報を入力する事象情報入力部16と、事象発生位置を、道路形状データで表した対象道路区間の相対位置で表示する位置情報変換部17と、ノード情報を送信する対象道路区間の中のノードや、送信する付加情報を選出する送信ノード・付加情報抽出部18と、選出されたノードの位置情報を、選出された付加情報とともに他の装置20の位置情報受信部22に送信する位置情報送信部19とを備えている。
【0021】
デジタル地図データベース14には、デジタル地図のノードデータとリンクデータとが含まれている。ノードデータには、ノードの緯度経度座標データ、ノード種別(交差点/トンネル入出口/インターチェンジ料金所/道路属性(道路種別や道路番号)の変更点/都道府県境/2次メッシュ境界点等の識別情報)、名称、ノードに接続する接続リンクの数、接続リンクの角度を表す接続リンク角度等のデータが含まれている。また、リンクデータには、道路番号、道路種別(国道、県道、市道等の識別情報)、リンク種別(本線/インターチェンジ入出路/交差点内リンク/側道/連絡路・連結路等の識別情報)、通行禁止規制の有無や規制方向、距離や旅行時間などで表された各リンクの各種コスト等のデータが含まれ、さらに、リンク形状を表す補間点の座標データが付加されている。補間点は、ノード間の道路形状を再現するために設定されている点である。ここでは、特に断らない限り、座標データが保持されているノード及び補間点を合わせてノードと呼ぶことにする。
【0022】
図3は、この装置10の処理手順を送信側と受信側とに分けて示し、また、図1は、各処理の内容を地図上で模式的に表している。
ステップ1:事象情報入力部16から、渋滞や交通事故など、事象の発生を知らせる情報が入力すると、位置情報変換部17は、デジタル地図データベース14のデータを基に、事象発生位置を含む道路区間を対象道路区間として選出し、その対象道路区間の基準点からの相対距離によって事象位置を表示した交通情報を生成する。図1の(1)に、選出された対象道路区間を示している。対象道路区間上の黒丸は、デジタル地図データベース14に座標データが保持されているノードを示している。
【0023】
ステップ2:送信ノード群・付加情報抽出部18は、対象道路区間のノードの中からノード情報を送信するノードを選出する。このとき、図1(2)に示すように、対象道路区間の始端(p1)及び終端(p3)のノードは必ず選出する。選出するノードは、この2点だけでも良いが、その他のノードを間欠的(数百m〜数km間隔)に選んでも良い。ここでは、始端、終端以外に途中のノードp2を選出している。
【0024】
ステップ3:また、選出したノードのノードデータや対象道路区間のリンクデータの中から、マップマッチングの精度や経路探索の精度を高めることができる情報を、必要に応じて、付加情報として抽出する。
ステップ4:位置情報送信部19は、対象道路区間を表示する、選出されたノードの座標データと選出された付加情報とから成る形状ベクトルデータ列情報と、この対象道路区間の基準点からの相対距離により事象位置を表示した交通情報とを送信する。
【0025】
図4(a)は、付加情報を含まない形状ベクトルデータ列情報を示し、図4(b)は、対象道路区間の基準点からの相対距離で表示した事象位置情報と事象内容の情報とを含む交通情報を示している。形状ベクトルデータ列情報では、始端ノードの座標を絶対座標(経度緯度)で表示し、その他のノードの座標を、データ量を削減するために、始端ノード(またはノード列の1つ前のノード)との相対座標で表示している。なお、交通情報における対象道路区間の基準点には、始端(p1)、終端(p3)の他に、対象道路区間途中のノードp2を用いることもできる。
【0026】
また、図5(a)は、付加情報として、道路種別、道路番号及びリンク種別のリンクデータを含む形状ベクトルデータ列情報を示し、図5(b)は、付加情報として、ノード種別、ノード名称、ノードの接続リンク数、及び接続リンク角度のノードデータを含む形状ベクトルデータ列情報を示している。接続リンク角度は、図6に示すように、ノード(ノード種別=交差点、名称=綱島4丁目)における真北(点線)の絶対方位との角度θ1〜θ4によって表示される。
【0027】
一方、受信側では、
ステップ5:位置情報受信部11が、この形状ベクトルデータ列情報と交通情報とを受信すると、
ステップ6:マップマッチング部12は、デジタル地図データベース14のデータを用いて、形状ベクトルデータ列情報に含まれたノードの位置をマップマッチングで決定する。このとき、形状ベクトルデータ列情報に付加情報が含まれている場合は、その付加情報を利用してマップマッチングを実行する。
【0028】
図1(3)は、受信側の地図上に、受信したノードp1、p2及びp3の座標位置をプロットした状態を示している。送信側が有するデジタル地図データの作成元と受信側が有するデジタル地図データの作成元とが異なる場合には、こうした“ずれ”がしばしば発生する。
【0029】
図1(4)は、マップマッチングにより、受信側の地図上で、ノードp1、p2及びp3に対応するノードp1’、p2’及びp3’の位置を決定した状態を示している。このとき、図7に示すように、ノードp1の周辺にp1と誤マッチングし易い近隣交差点が存在する場合でも、ノード名称などの付加情報を参照することにより、正しいノード位置へのマッチングが可能になる。
【0030】
ステップ7:経路探索部13は、デジタル地図データベース14のリンクデータの距離で表されたリンクコストを用いて、ステップ6で決定したノードの間の最短経路を順次探索する。このとき、形状ベクトルデータ列情報にリンクデータの付加情報が含まれている場合は、その付加情報を利用して経路探索を実行する。
ステップ8:ステップ7で求めた最短経路を順番に繋いで対象道路区間を再現する。
【0031】
図1(5)は、ノードp1’〜p2’の最短経路が探索され、次いで、ノードp2’〜p3’の最短経路が探索され、それらを繋いでノードp1’からp3’に至る対象道路区間が決定された状態を示している。このとき、図7に示すように、国道256号(実太線)をバイパスする県道123号(点線)が存在し、最短経路の探索に誤りが混入し易い場合でも、道路種別や道路番号などの付加情報を参照することにより、正しい対象道路区間を再現できる。
【0032】
こうして対象道路区間が再現されると、受信した交通情報に基づいて、対象道路区間の基準点から事象位置が算出され、地図上の事象位置がデジタル地図表示部15により表示される。
【0033】
なお、対象道路区間から間欠的にノードを選出する際は、受信側でのノード位置の特定や、経路の算出に誤りが生じないような位置のノードを選ぶように配慮する必要がある。例えば、図7では、ノードp2として、道路種別が国道から主要地方道に変更する点を選出している。そのため、形状ベクトルデータ列情報には、ノードp1〜p2間の付加情報(道路種別/道路番号=国道/256)と、ノードp2〜p3間の付加情報(道路種別/道路番号=主要地方道/923)とを切り分けて加えることが可能になり、受信側での対象道路区間の再現を容易にすることができる。
【0034】
このように、この位置情報伝達方法では、対象道路区間を特定する道路形状データとして、対象道路区間から間欠的に選出したノードの情報を送信するだけで済むため、対象道路区間の各ノードの座標列情報を伝送する場合に比べて、伝送データ量を大幅に削減することができる。
【0035】
また、この道路形状データに、ノードを特定し易くするための付加情報や、経路を特定し易くするための付加情報を含めることにより、受信側では、マップマッチングでノード位置を高精度に決定し、このノード間の最短経路を正確に算出することが可能になり、伝送された対象道路区間を、自己の有するデジタル地図上で忠実に再現することができる。
【0036】
この位置情報伝達方法は、道路密度が低く、交差点が少なく、複雑に曲がっている山間部の道路などの道路形状を伝達する場合に、特に適している。
【0037】
また、この位置情報伝達方法を実施する装置として、交通情報提供システムを構成する位置情報送受信装置の例を示したが、この装置の受信側の構成をカーナビゲーション装置に設け、この方法による位置情報の受信機能をカーナビゲーション装置に持たせることも可能である。
【0038】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、第1の実施形態の位置情報伝達方法を実施する場合に、受信側でのマッチング精度を高めるため、形状ベクトルデータ列情報に、ノード位置における切片方位の情報を付加情報として含める方法について説明する。
【0039】
ノード位置での切片方位は、図8に点線の矢印で示すように、ノードpxにおいて道路曲線に接する接線の方位であり、真北の絶対方位を0度とし、時計回りに0度〜360度の範囲で表示する。ノードpxの切片方位は、図10に示すように、ノードpxの上流側に位置する隣接ノードをpx-1、ノードpxの下流側に位置する隣接ノードをpx+1とするとき、ノードpx-1とノードpxとを結ぶ直線の方位θx-1と、ノードpxとノードpx+1とを結ぶ直線の方位θxとを平均し、
(θx-1+θx)/2 (式1)
により求めることができる。
【0040】
図11は、送信側が、対象道路区間から選択したノードの切片方位を求める手順を示している。
ステップ11:デジタル地図データベースから、選択したノードと、その上流側及び下流側の隣接ノードの座標データを取得し、
ステップ12:各ノードを結ぶ直線の方位を算出し、(式1)により、選択したノードの切片方位を求める。
【0041】
図13は、対象道路区間から選択した各ノードの切片方位の情報を付加情報として加えた形状ベクトルデータ列情報を示している。ここでは、始端ノード(p1)の切片方位を絶対方位で表示し、その他のノードの切片方位を、データ量を削減するために、形状ベクトルデータ列に含まれる1つ手前のノードとの相対方位で表示している。
【0042】
この形状ベクトルデータ列情報を受信した受信側では、切片方位の情報を利用してマップマッチングを実施する。図12には、このマップマッチングの手順を示している。
ステップ13:受信側のデジタル地図データベースのデータを用いて、ノードpxの経度・緯度データに近い道路上の位置を、近い順にマッチング候補として抽出し、
ステップ14:デジタル地図データベースから、その候補位置の隣接ノードの座標を取得して、候補位置の切片方位を算出する。そして、算出した切片方位と、付加情報で送られたノードpxの切片方位との差分を求める。その差分が規定値より小さければ、その候補位置を、選択されたノードとして決定する。
また、差分が規定値より大きい場合には、それをマッチング候補から除外し、ステップ13に戻って、次に近いものをマッチング候補として抽出し、ステップ14の手順を実行する。
【0043】
このように、受信側で、ノード位置の方位情報を参照することにより、誤マッチングを防ぐことができる。
【0044】
図8において、道路1上のノードpxは、px地点近くを通る、道路1に交差する道路2に誤マッチングしやすい。受信側では、マッチングに際して、図9に示すように、地点pxに最も近い道路2上の地点をマッチング候補点1、地点pxに次に近い道路1上の地点をマッチング候補点2として設定する可能性がある。しかし、この候補点1は、候補点1の切片方位とノードpxの切片方位とを比較したとき、その差分が規定値を超えるため、マッチング候補から除外される。候補点2は、候補点2の切片方位とノードpxの切片方位との差分が規定値未満であるため、選択されたノードとして決定される。
【0045】
この場合、異なる道路上の候補点1を、選択されたノードとして誤マッチングすると、後続する経路探索において、経路が誤って算出され、対象道路区間の再現が不可能になる。
【0046】
この実施形態の位置情報伝達方法では、形状ベクトルデータ列情報に、ノード位置における切片方位の情報を付加情報として加えているため、本来の道路に交差する道路等にノード地点を設定する誤りを防止することができ、マッチング精度の向上を図ることができる。
【0047】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、第1の実施形態の位置情報伝達方法を実施する場合に、受信側が誤マッチングしやすい道路箇所での送信ノード数を増やし、それにより受信側でのマッチング精度を高める方法について説明する。
【0048】
図14は、この位置情報伝達方法における処理の内容を地図上で模式的に表している。
送信側では、図14(1)に示すように、対象道路区間を選出すると、図14(2)に示すように、対象道路区間のノードの中から、送信するノードを選出する。このとき、並走する隣接道路の存在等により、受信側が誤マッチングしやすい箇所では、隣接道路形状との差異が識別できるように、複数の一纏まりのノード(ノード群)を選出する。
【0049】
送信側は、選出したノードの座標データと付加情報とから成る形状ベクトルデータ列情報を、交通情報とともに送信する。
【0050】
図15は、この形状ベクトルデータ列情報を例示している。ここでは、送信ノードがn個のノード群から成り、ノード群1はm個のノードを含み、‥、ノード群nがs個のノードを含む場合を示している。この形状ベクトルデータ列情報では、各ノード群に含まれるノードの座標データを順番に配列しているが、個々のノード群の複数のノードで表される道路形状をフーリエ係数で表現したり、円弧と直線で近似表現したり、スプライン関数で表すことにより、データ量を圧縮しても良い。
【0051】
一方、形状ベクトルデータ列情報を受信した受信側では、図14(3)に示すように、受信側の地図上に、形状ベクトルデータ列情報に含まれる各ノード群のノードの位置をプロットし、図14(4)に示すように、マップマッチングで、各ノードの受信側の地図上での位置を算出する。
【0052】
このとき、ノード群に含まれる複数のノードの配列が表す形状と、受信側地図の道路形状とのマッチングを取ることにより、各ノードの受信側の地図上での位置を正確に求めることができる。
【0053】
こうして、ノード位置が決定すると、図14(5)に示すように、間欠的に位置するノードの間の最短経路を順次探索し、求めた最短経路を順番に繋いで対象道路区間を再現する。
【0054】
この位置情報伝達方法において、送信側では、例えば、次のような基準でノード群に含めるノードを選出する。
(1)図16に示すように、ノードPjから最も近い隣接道路上の位置P'jまでの距離Ljが短く、且つ、ノードPjでの切片方位角度θjと位置P'jでの切片方位角度θ'jとの差分(Δθj=θj−θ'j)が小さいとき、ノードPjは受信側で誤マッチングしやすいノードであると判定する。
【0055】
例えば、判定値εjを
εj=α×Lj+β×|Δθj| (式2)
(α、βは予め決めた係数)
と定義し、εjが規定値ε0より小さいとき、ノードPjは受信側で誤マッチングしやすいノードであると判定する。
(2)ノードPjが誤マッチングしやすいノードであるとき、ノードPjの前後に存在するノードについて、(1)の基準により、受信側で誤マッチングしやすいノードかどうか判定し、受信側で誤マッチングが起きにくいノードが見つかるまで、判定対象のノードを順次拡大する。受信側で誤マッチングが起きにくい、εj≧ε0であるノードが見つかると、隣接道路形状との差異を識別できる形状が得られたものと見做し、そのノードと、それまでにεj<ε0と判定した各ノードとをノード群として採用する。
【0056】
図17は、ノード群に含めるノードの選出手順の一例を示している。
ステップ21:対象道路区間を選出し、
ステップ22:送信するノードPjを選出する。
ステップ23:m=0として、
ステップ24:隣接道路との距離Lj±m及び切片方位角度差Δθj±mを算出し、
ステップ25:(式2)により、判定値εj±mを算出する。
【0057】
ステップ26:εj-m及びεj+mのいずれもが規定値ε0より小さいときは、
ステップ28:m=m+1として、ステップ24からの手順を繰り返す。
ステップ26において、εj-mまたはεj+mのいずれかが規定値ε0以上であるときは、
ステップ27:Pj-m,‥,Pj,‥,Pj+mを、Pj周辺のノード群として採用する。
【0058】
こうして、この手順では、ノードから隣接道路までの距離、及び、ノードの切片方位と隣接道路上の最近地点における切片方位との差分を基に、受信側での誤マッチング発生可能性を評価し、その評価値に応じて、ノード群に含めるノードを選出している。
【0059】
このように、この位置情報伝達方法では、送信側において、受信側での誤マッチング発生可能性を評価し、受信側が誤マッチングしやすい道路箇所で、送信ノード数を増やしているため、受信側のマッチング精度が向上し、対象道路区間を忠実に再現することが可能になる。
【0060】
なお、前述する隣接道路までの距離、及び、切片方位の差分を基に、受信側での誤マッチング発生可能性を評価する手法は、「従来の技術」で説明した、形状ベクトルデータ列から成る「道路形状データ」を伝送する方式にも適用することが可能であり、その評価値に応じて、形状ベクトルデータ列で規定する道路形状の長さや、形状ベクトルデータ列に含めるノード数を決定することができる。
【0061】
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、受信側で保持するデジタル地図データのバージョンが古い場合の対応方法について説明する。
【0062】
第1〜第3の実施形態の位置情報伝達方法では、受信側が、ノード間の最短経路を経路探索で求めて、対象道路区間を再現しているため、受信側のデジタル地図データベースに含まれていない道路は再現することができない。例えば、受信側のデジタル地図データのバージョンが古く、最近の開通道路のデータが含まれていない場合には、送信側が指定する間欠的なノードの間を、この開通道路で繋ぐことは不可能である。その結果、送信側が意図する対象道路区間と、受信側で再現した対象道路区間とが食い違い、受信側で、別の道路上に事象が発生しているものと誤って解釈すると云う事態が発生する。
【0063】
こうした事態は、現実には、送信側が交通情報提供システムの情報提供手段であり、受信側が交通情報の提供を受けるカーナビゲーション装置である場合に多く発生する。
【0064】
第4の実施形態では、こうした事態を回避する位置情報伝達方法について説明する。
【0065】
この方法では、送信側が、対象とする道路のデジタル地図データへの設定年月を識別し、設定年月に応じて、使用する位置情報伝達方法の種類を選択する。道路のデジタル地図データベースへの設定年月は、その道路の開通時期にほぼ重なる。例えば、対象道路が開通間も無い道路である場合には、この開通道路のデータを含むデジタル地図データベースを有するカーナビゲーション装置の割合は極めて低いと見られる。こうしたとき、送信側は、カーナビゲーション装置が開通道路のデータを含まないデジタル地図データベースを有していても、(対象道路を特定できないことは致し方無いとしても)対象道路以外の道路上に事象が発生していると誤解することが無いような位置情報伝達方法を採用して、交通情報を伝える。
【0066】
道路のデータ設定年月は、デジタル地図データベースの各道路リンクに設定年月が定義されている場合は、それを採用する。設定年月が定義されていない場合は、デジタル地図データの各バージョンを比較し、当該道路リンクが始めて登載されたバージョンの改訂時期から、設定年月を算出する。
【0067】
また、送信側は、形状ベクトルデータ列情報の中に、対象道路のデータの設定年月を表す情報、及び、ノード間の距離の情報を含めて伝送する。
【0068】
受信側は、受信した形状ベクトルデータ列情報の中の対象道路のデータ設定年月を参照し、対象道路のデータが自己のデジタル地図データベースに含まれていないと判断したときは、対象道路区間の再現を停止する。
【0069】
また、経路探索で求めたノード間の最短経路の距離と、形状ベクトルデータ列情報に含まれるノード間の距離とが、余りに相違しているときは、対象道路のデータが自己のデジタル地図データベースに含まれていないものと判断し、対象道路区間の再現を停止する。
【0070】
図18のフロー図は、この送信側の処理手順を示している。
ステップ30:対象道路区間を選出し、
ステップ31:送信するノードを選出する。
ステップ32:選出したノード間の道路のデータ設定年月が基準年月(規定値)と同じ、または、基準年月より古ければ、
ステップ33:第1〜第3の実施形態の位置情報伝達方法を採用する。
【0071】
また、ステップ32において、選出したノード間の道路のデータ設定年月が基準年月より新しければ、
ステップ35:対象道路区間の道路形状を直接的に表すデータ(道路形状を特定する各ノードの座標データ列など)を伝達する位置情報伝達方法を採用する。
ステップ36:採用した方法に基づいて位置情報を送信する。
【0072】
図20は、本発明の方法により送信する形状ベクトルデータ列情報を例示している。この情報の中には、ノード間の道路のデータ設定年月及び探索距離のデータが含まれている。
【0073】
図19のフロー図は、この形状ベクトルデータ列情報を受信した受信側の処理手順を示している。
ステップ40:情報を受信し、
ステップ41:付加情報を参照して、各ノードの座標をマップマッチングにより決定する。
ステップ42:受信データに含まれる各ノード間のデータ設定年月が、自装置の地図データの作成年月より古いか否かを識別し、古ければ、
ステップ43:付加情報を参照して、ノード間の経路探索を行い、対象道路区間を決定する。
ステップ44:決定した対象道路区間の距離と、受信データに含まれるノード間の探索距離との差分が規定誤差以内か否かを識別し、規定誤差以内であれば、
ステップ45:対象道路区間の全体形状を再現する。
【0074】
また、ステップ42において、データ設定年月が自装置の地図データの作成年月より古くない場合、または、ステップ44において、対象道路区間の距離と受信データに含まれるノード間の探索距離との差分が規定誤差以内でない場合には、該当ノード間の情報を破棄する。
【0075】
こうした手順を取ることにより、本発明の位置情報伝達方法を適用する際に、送信側及び受信側で保持されるデジタル地図データのバージョンの違いにより、位置情報が誤って伝達される事態を回避することができる。
【0076】
なお、ここでは、形状ベクトルデータ列情報に、ノード間の道路のデータ設定年月及び探索距離のデータの両方を含める場合を示しているが、どちらか一方だけを含めるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上の説明から明らかなように、本発明のデジタル地図の位置情報伝達方法、及び、それを実施する装置では、少ないデータ量で、効率的且つ正確に、デジタル地図の形状や位置の情報を伝達することができ、データ伝送効率を高めることができる。
【符号の説明】
【0078】
10、20 位置情報送受信装置
11、22 位置情報受信部
12 マップマッチング部
13 経路探索部
14 デジタル地図データベース
15 デジタル地図表示部
16 事象情報入力部
17 位置情報変換部
18 送信ノード群・付加情報抽出部
19、21 位置情報送信部
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル地図の位置情報を伝達する方法と、それを実施する装置に関し、特に、デジタル地図上の位置を、少ないデータ量で的確に伝えることを可能にするものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ナビゲーション車載器を搭載する車両が急激に増加している。ナビゲーション車載機は、デジタル地図データベースを保持し、交通情報センターなどから提供される渋滞情報や事故情報に基づいて、渋滞や事故位置を地図上に表示し、また、それらの情報を条件に加えて経路探索を実施する。
【0003】
デジタル地図のデータベースは、我が国では数社で作成されているが、基図及びデジタイズ技術の違いから、この地図データには誤差が含まれており、その誤差は各社のデジタル地図によって違っている。
【0004】
交通情報などで、例えば事故位置を伝える場合、その位置の経度・緯度データを単独で提示すると、車載器では、保持しているデジタル地図データベースの種類により、異なる道路上の位置を事故位置として識別してしまう虞れがある。
【0005】
こうした情報伝達の不正確さを改善するため、従来は、道路網に存在する交差点などのノードにノード番号が、また、ノード間の道路を表すリンクにリンク番号が定義されており、各社のデジタル地図データベースでは、各交差点や道路がノード番号及びリンク番号と対応付けて記憶され、また、交通情報では、道路をリンク番号で特定し、その先頭から何メートル、と云う表現方法で道路上の地点が表示される。
【0006】
しかし、道路網に定義したノード番号やリンク番号は、道路の新設や変更に伴って新しい番号に付け替える必要があり、また、ノード番号やリンク番号が変更されると、各社のデジタル地図データも更新しなければならない。そのため、ノード番号やリンク番号を用いてデジタル地図の位置情報を伝達する方式は、そのメンテナンスに多大な社会的コストが掛かることになる。
【0007】
こうした点を改善するため、本発明の発明者等は、特願平11−214068号において、情報提供側が、道路位置を伝えるために、その道路位置を含む所定長の道路区間の道路形状を示す座標列から成る「道路形状データ」と、この道路形状データで表される道路区間内の道路位置を示す「相対位置データ」とを伝達し、これらの情報を受信した側では、道路形状データを用いてマップマッチングを行い、デジタル地図上の道路区間を特定し、相対位置データを用いてこの道路区間内の道路位置を特定する方式を提案し、また、特願平11−242166号において、上記「道路形状データ」の伝送データ量を削減しても、受信側でのマップマッチングを正確に実施できるように、道路種別、道路番号、道路区間内のノードの交差リンク数、交差リンク角度、交差点名などの「付加情報」を併せて伝送する方式を提案し、さらに、受信側での誤マッチングを招来しない範囲で「道路形状データ」の伝送データ量を間引く方式について提案している。
【0008】
この場合、受信側でのマップマッチングは、例えば次のように行われる。
図21に示すように、A〜B区間で渋滞が発生している道路の道路形状を表す「道路形状データ」として、地点P0(x0,y0)、P1(x1,y1)、‥、Pk(xk,yk)の経度・緯度データが
(x0,y0)(x1,y1)‥(xk,yk)
のように伝えられると(地点P0(x0,y0)、P1(x1,y1)、‥、Pkは、、受信側は、図22に示すように、自己のデジタル地図データベースから読み出した地図データを用いて、P0(x0,y0)地点を中心とする誤差の範囲に含まれる道路を候補として選定し、その中から、伝送された「付加情報」を用いて候補を絞り込む。候補が1つに絞り込めたときは、その道路の(x0,y0)及び(xk,yk)に最も近い位置を求め、その区間を「道路形状データ」で表された道路区間とする。
【0009】
候補が1つに絞り込めず、道路Q、Rが候補として残った場合は、P0(x0,y0)に最も近い各候補道路上の位置Q0、R0を求め、P0〜Q0、P0〜R0間の距離を算出する。この操作をP1(x1,y1)、‥、Pk(xk,yk)の各点について実行し、各点P0、P1、‥、Pkからの距離の二乗平均の加算値が最小となる道路区間を求め、これを「道路形状データ」が表す道路区間とする手法等により、道路区間を特定する。
【0010】
A〜Bの渋滞区間は、「道路形状データ」から求めた道路区間の開始位置を起点に、伝送された「相対位置データ」に基づいて特定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、この道路形状データを伝送する方式では、情報精度を落とさずに伝送データ量を如何に減らすかと云うことが大きな課題になる。これまで、データ量削減のために、本発明者等は、直線の道路部分の形状データを間引いて送信する方式や、道路の曲線形状をフーリエ係数で表現したり、円弧で近似したり、スプライン関数で表すことにより、データ量を圧縮する方式を提案しているが、例えば、図23に示すように、道路密度は低いが道路形状が複雑で、ノード間の間隔が長い山間部の道路などでは、こうした方式を採用しても、道路形状の表現に多くのデータ量が必要となる。
【0012】
本発明は、こうした従来の問題点を解決するものであり、道路形状が複雑な場合でも、少ないデータ量で正確にデジタル地図上の位置や形状を伝達することができる位置情報伝達方法を提供し、また、その方法を実施する装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、第1のデジタル地図上の第1の道路区間を備えた送信装置であって、当該送信装置から位置情報を受信し、前記位置情報に含まれる各ノードの座標情報、及び前記各ノードに関する付加情報または前記各ノードが属する道路に関する付加情報に基づいて、前記各ノードに対応する第2のデジタル地図上での道路上の各ノードの位置をマップマッチングにより決定し、前記決定した各ノードの位置間の経路探索に基づいて、前記第2のデジタル地図上で第1の道路区間に対応する第2の道路区間の位置を特定する受信装置に対して前記位置情報を送信する送信装置であって、前記送信装置は、前記第1のデジタル地図上の前記第1の道路区間から複数のノードを選択する手段と、前記受信装置における前記マップマッチングまたは前記経路探索の精度を高めるための情報として、前記選択されたノードに関する付加情報または前記選択されたノードが属する道路に関する付加情報を抽出する手段と、前記選択した各ノードの座標情報と、前記各ノードに関する付加情報または前記各ノードが属する道路に関する付加情報とを含む位置情報を、前記第1のデジタル地図上の前記第1の道路区間の位置情報として生成する手段と、前記生成した位置情報を前記受信装置に対して送信する手段と、を備える。
【0014】
前記ノードを選択する手段は、少なくとも前記第1の道路区間の始端ノード及び終端ノードを選択することが好ましい。
【0015】
第1のデジタル地図上の第1の道路区間を備えた送信装置が実行する位置情報の送信方法であって、当該送信装置から位置情報を受信し、前記位置情報に含まれる各ノードの座標情報、及び前記各ノードに関する付加情報または前記各ノードが属する道路に関する付加情報に基づいて、前記各ノードに対応する第2のデジタル地図上での道路上の各ノードの位置をマップマッチングにより決定し、前記決定した各ノードの位置間の経路探索に基づいて、前記第2のデジタル地図上で第1の道路区間に対応する第2の道路区間の位置を特定する受信装置に対して前記位置情報を送信する送信方法であって、前記送信方法は、前記第1のデジタル地図上の前記第1の道路区間から複数のノードを選択するステップと、前記受信装置における前記マップマッチングまたは前記経路探索の精度を高めるための情報として、前記選択されたノードに関する付加情報または前記選択されたノードが属する道路に関する付加情報を抽出するステップと、前記選択した各ノードの座標情報と、前記各ノードに関する付加情報または前記各ノードが属する道路に関する付加情報とを含む位置情報を、前記第1のデジタル地図上の前記第1の道路区間の位置情報として生成するステップと、前記生成した位置情報を前記受信装置に対して送信するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0016】
以上の説明から明らかなように、本発明のデジタル地図の位置情報伝達方法、及び、それを実施する装置では、少ないデータ量で、効率的且つ正確に、デジタル地図の形状や位置の情報を伝達することができ、データ伝送効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施形態の位置情報伝達方法を模式的に示す図
【図2】第1の実施形態の位置情報送受信装置の構成を示すブロック図
【図3】第1の実施形態の位置情報伝達方法を示すフロー図
【図4】第1の実施形態の位置情報伝達方法でのデータの構成例を示す図
【図5】第1の実施形態の位置情報伝達方法でのデータの他の構成例を示す図
【図6】接続リンク角度を説明する図
【図7】第1の実施形態の位置情報伝達方法により付加情報を参照して行う経路探索を示す図
【図8】第2の実施形態の位置情報伝達方法により伝達する切片方位を示す図
【図9】第2の実施形態の位置情報伝達方法での受信側のマップマッチングを説明する図
【図10】切片方位の求め方を説明する図
【図11】第2の実施形態の位置情報伝達方法での送信側の処理フローを示す図
【図12】第2の実施形態の位置情報伝達方法での受信側のマップマッチング処理フローを示す図
【図13】第2の実施形態の位置情報伝達方法でのデータの構成例を示す図
【図14】第3の実施形態の位置情報伝達方法を模式的に示す図
【図15】第3の実施形態の位置情報伝達方法でのデータの構成例を示す図
【図16】第3の実施形態の位置情報伝達方法での判定に用いる隣接道路との距離及び切片方位角度の差を説明する図
【図17】第3の実施形態の位置情報伝達方法での処理フローを示す図
【図18】第4の実施形態の位置情報伝達方法での送信側の処理フローを示す図
【図19】第4の実施形態の位置情報伝達方法での受信側の処理フローを示す図
【図20】第4の実施形態の位置情報伝達方法でのデータの構成例を示す図
【図21】マップマッチングの一例を説明する図
【図22】道路形状データ及び相対位置情報を説明する図
【図23】山間部の道路形状を示す地図
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
本発明の位置情報伝達方法では、送信側が、伝達しようとする道路区間に含まれるノードの中から少数のノード(始端及び終端の2点でも良い)を選択して、そのノード情報を送信する。受信側は、受信したノードの位置をマップマッチングで決定した後、ノード間の最短経路を順次探索し、その最短経路を繋ぎ合わせて、道路区間を特定する。
【0019】
図2は、この位置情報伝達方法を実施する装置の一例として、管轄する区域に発生した事象の情報を他の装置20との間で交換する位置情報送受信装置10の構成を示している。
【0020】
この装置10は、他の装置20の位置情報送信部21から送られた位置情報を受信する位置情報受信部11と、デジタル地図データを蓄積するデジタル地図データベース14と、受信情報に含まれるノード情報から該当するノード位置をマップマッチングで特定するマップマッチング部12と、特定したノード間の最短経路を探索する経路探索部13と、地図上に事象発生位置を表示するデジタル地図表示部15と、事象の発生情報を入力する事象情報入力部16と、事象発生位置を、道路形状データで表した対象道路区間の相対位置で表示する位置情報変換部17と、ノード情報を送信する対象道路区間の中のノードや、送信する付加情報を選出する送信ノード・付加情報抽出部18と、選出されたノードの位置情報を、選出された付加情報とともに他の装置20の位置情報受信部22に送信する位置情報送信部19とを備えている。
【0021】
デジタル地図データベース14には、デジタル地図のノードデータとリンクデータとが含まれている。ノードデータには、ノードの緯度経度座標データ、ノード種別(交差点/トンネル入出口/インターチェンジ料金所/道路属性(道路種別や道路番号)の変更点/都道府県境/2次メッシュ境界点等の識別情報)、名称、ノードに接続する接続リンクの数、接続リンクの角度を表す接続リンク角度等のデータが含まれている。また、リンクデータには、道路番号、道路種別(国道、県道、市道等の識別情報)、リンク種別(本線/インターチェンジ入出路/交差点内リンク/側道/連絡路・連結路等の識別情報)、通行禁止規制の有無や規制方向、距離や旅行時間などで表された各リンクの各種コスト等のデータが含まれ、さらに、リンク形状を表す補間点の座標データが付加されている。補間点は、ノード間の道路形状を再現するために設定されている点である。ここでは、特に断らない限り、座標データが保持されているノード及び補間点を合わせてノードと呼ぶことにする。
【0022】
図3は、この装置10の処理手順を送信側と受信側とに分けて示し、また、図1は、各処理の内容を地図上で模式的に表している。
ステップ1:事象情報入力部16から、渋滞や交通事故など、事象の発生を知らせる情報が入力すると、位置情報変換部17は、デジタル地図データベース14のデータを基に、事象発生位置を含む道路区間を対象道路区間として選出し、その対象道路区間の基準点からの相対距離によって事象位置を表示した交通情報を生成する。図1の(1)に、選出された対象道路区間を示している。対象道路区間上の黒丸は、デジタル地図データベース14に座標データが保持されているノードを示している。
【0023】
ステップ2:送信ノード群・付加情報抽出部18は、対象道路区間のノードの中からノード情報を送信するノードを選出する。このとき、図1(2)に示すように、対象道路区間の始端(p1)及び終端(p3)のノードは必ず選出する。選出するノードは、この2点だけでも良いが、その他のノードを間欠的(数百m〜数km間隔)に選んでも良い。ここでは、始端、終端以外に途中のノードp2を選出している。
【0024】
ステップ3:また、選出したノードのノードデータや対象道路区間のリンクデータの中から、マップマッチングの精度や経路探索の精度を高めることができる情報を、必要に応じて、付加情報として抽出する。
ステップ4:位置情報送信部19は、対象道路区間を表示する、選出されたノードの座標データと選出された付加情報とから成る形状ベクトルデータ列情報と、この対象道路区間の基準点からの相対距離により事象位置を表示した交通情報とを送信する。
【0025】
図4(a)は、付加情報を含まない形状ベクトルデータ列情報を示し、図4(b)は、対象道路区間の基準点からの相対距離で表示した事象位置情報と事象内容の情報とを含む交通情報を示している。形状ベクトルデータ列情報では、始端ノードの座標を絶対座標(経度緯度)で表示し、その他のノードの座標を、データ量を削減するために、始端ノード(またはノード列の1つ前のノード)との相対座標で表示している。なお、交通情報における対象道路区間の基準点には、始端(p1)、終端(p3)の他に、対象道路区間途中のノードp2を用いることもできる。
【0026】
また、図5(a)は、付加情報として、道路種別、道路番号及びリンク種別のリンクデータを含む形状ベクトルデータ列情報を示し、図5(b)は、付加情報として、ノード種別、ノード名称、ノードの接続リンク数、及び接続リンク角度のノードデータを含む形状ベクトルデータ列情報を示している。接続リンク角度は、図6に示すように、ノード(ノード種別=交差点、名称=綱島4丁目)における真北(点線)の絶対方位との角度θ1〜θ4によって表示される。
【0027】
一方、受信側では、
ステップ5:位置情報受信部11が、この形状ベクトルデータ列情報と交通情報とを受信すると、
ステップ6:マップマッチング部12は、デジタル地図データベース14のデータを用いて、形状ベクトルデータ列情報に含まれたノードの位置をマップマッチングで決定する。このとき、形状ベクトルデータ列情報に付加情報が含まれている場合は、その付加情報を利用してマップマッチングを実行する。
【0028】
図1(3)は、受信側の地図上に、受信したノードp1、p2及びp3の座標位置をプロットした状態を示している。送信側が有するデジタル地図データの作成元と受信側が有するデジタル地図データの作成元とが異なる場合には、こうした“ずれ”がしばしば発生する。
【0029】
図1(4)は、マップマッチングにより、受信側の地図上で、ノードp1、p2及びp3に対応するノードp1’、p2’及びp3’の位置を決定した状態を示している。このとき、図7に示すように、ノードp1の周辺にp1と誤マッチングし易い近隣交差点が存在する場合でも、ノード名称などの付加情報を参照することにより、正しいノード位置へのマッチングが可能になる。
【0030】
ステップ7:経路探索部13は、デジタル地図データベース14のリンクデータの距離で表されたリンクコストを用いて、ステップ6で決定したノードの間の最短経路を順次探索する。このとき、形状ベクトルデータ列情報にリンクデータの付加情報が含まれている場合は、その付加情報を利用して経路探索を実行する。
ステップ8:ステップ7で求めた最短経路を順番に繋いで対象道路区間を再現する。
【0031】
図1(5)は、ノードp1’〜p2’の最短経路が探索され、次いで、ノードp2’〜p3’の最短経路が探索され、それらを繋いでノードp1’からp3’に至る対象道路区間が決定された状態を示している。このとき、図7に示すように、国道256号(実太線)をバイパスする県道123号(点線)が存在し、最短経路の探索に誤りが混入し易い場合でも、道路種別や道路番号などの付加情報を参照することにより、正しい対象道路区間を再現できる。
【0032】
こうして対象道路区間が再現されると、受信した交通情報に基づいて、対象道路区間の基準点から事象位置が算出され、地図上の事象位置がデジタル地図表示部15により表示される。
【0033】
なお、対象道路区間から間欠的にノードを選出する際は、受信側でのノード位置の特定や、経路の算出に誤りが生じないような位置のノードを選ぶように配慮する必要がある。例えば、図7では、ノードp2として、道路種別が国道から主要地方道に変更する点を選出している。そのため、形状ベクトルデータ列情報には、ノードp1〜p2間の付加情報(道路種別/道路番号=国道/256)と、ノードp2〜p3間の付加情報(道路種別/道路番号=主要地方道/923)とを切り分けて加えることが可能になり、受信側での対象道路区間の再現を容易にすることができる。
【0034】
このように、この位置情報伝達方法では、対象道路区間を特定する道路形状データとして、対象道路区間から間欠的に選出したノードの情報を送信するだけで済むため、対象道路区間の各ノードの座標列情報を伝送する場合に比べて、伝送データ量を大幅に削減することができる。
【0035】
また、この道路形状データに、ノードを特定し易くするための付加情報や、経路を特定し易くするための付加情報を含めることにより、受信側では、マップマッチングでノード位置を高精度に決定し、このノード間の最短経路を正確に算出することが可能になり、伝送された対象道路区間を、自己の有するデジタル地図上で忠実に再現することができる。
【0036】
この位置情報伝達方法は、道路密度が低く、交差点が少なく、複雑に曲がっている山間部の道路などの道路形状を伝達する場合に、特に適している。
【0037】
また、この位置情報伝達方法を実施する装置として、交通情報提供システムを構成する位置情報送受信装置の例を示したが、この装置の受信側の構成をカーナビゲーション装置に設け、この方法による位置情報の受信機能をカーナビゲーション装置に持たせることも可能である。
【0038】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、第1の実施形態の位置情報伝達方法を実施する場合に、受信側でのマッチング精度を高めるため、形状ベクトルデータ列情報に、ノード位置における切片方位の情報を付加情報として含める方法について説明する。
【0039】
ノード位置での切片方位は、図8に点線の矢印で示すように、ノードpxにおいて道路曲線に接する接線の方位であり、真北の絶対方位を0度とし、時計回りに0度〜360度の範囲で表示する。ノードpxの切片方位は、図10に示すように、ノードpxの上流側に位置する隣接ノードをpx-1、ノードpxの下流側に位置する隣接ノードをpx+1とするとき、ノードpx-1とノードpxとを結ぶ直線の方位θx-1と、ノードpxとノードpx+1とを結ぶ直線の方位θxとを平均し、
(θx-1+θx)/2 (式1)
により求めることができる。
【0040】
図11は、送信側が、対象道路区間から選択したノードの切片方位を求める手順を示している。
ステップ11:デジタル地図データベースから、選択したノードと、その上流側及び下流側の隣接ノードの座標データを取得し、
ステップ12:各ノードを結ぶ直線の方位を算出し、(式1)により、選択したノードの切片方位を求める。
【0041】
図13は、対象道路区間から選択した各ノードの切片方位の情報を付加情報として加えた形状ベクトルデータ列情報を示している。ここでは、始端ノード(p1)の切片方位を絶対方位で表示し、その他のノードの切片方位を、データ量を削減するために、形状ベクトルデータ列に含まれる1つ手前のノードとの相対方位で表示している。
【0042】
この形状ベクトルデータ列情報を受信した受信側では、切片方位の情報を利用してマップマッチングを実施する。図12には、このマップマッチングの手順を示している。
ステップ13:受信側のデジタル地図データベースのデータを用いて、ノードpxの経度・緯度データに近い道路上の位置を、近い順にマッチング候補として抽出し、
ステップ14:デジタル地図データベースから、その候補位置の隣接ノードの座標を取得して、候補位置の切片方位を算出する。そして、算出した切片方位と、付加情報で送られたノードpxの切片方位との差分を求める。その差分が規定値より小さければ、その候補位置を、選択されたノードとして決定する。
また、差分が規定値より大きい場合には、それをマッチング候補から除外し、ステップ13に戻って、次に近いものをマッチング候補として抽出し、ステップ14の手順を実行する。
【0043】
このように、受信側で、ノード位置の方位情報を参照することにより、誤マッチングを防ぐことができる。
【0044】
図8において、道路1上のノードpxは、px地点近くを通る、道路1に交差する道路2に誤マッチングしやすい。受信側では、マッチングに際して、図9に示すように、地点pxに最も近い道路2上の地点をマッチング候補点1、地点pxに次に近い道路1上の地点をマッチング候補点2として設定する可能性がある。しかし、この候補点1は、候補点1の切片方位とノードpxの切片方位とを比較したとき、その差分が規定値を超えるため、マッチング候補から除外される。候補点2は、候補点2の切片方位とノードpxの切片方位との差分が規定値未満であるため、選択されたノードとして決定される。
【0045】
この場合、異なる道路上の候補点1を、選択されたノードとして誤マッチングすると、後続する経路探索において、経路が誤って算出され、対象道路区間の再現が不可能になる。
【0046】
この実施形態の位置情報伝達方法では、形状ベクトルデータ列情報に、ノード位置における切片方位の情報を付加情報として加えているため、本来の道路に交差する道路等にノード地点を設定する誤りを防止することができ、マッチング精度の向上を図ることができる。
【0047】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、第1の実施形態の位置情報伝達方法を実施する場合に、受信側が誤マッチングしやすい道路箇所での送信ノード数を増やし、それにより受信側でのマッチング精度を高める方法について説明する。
【0048】
図14は、この位置情報伝達方法における処理の内容を地図上で模式的に表している。
送信側では、図14(1)に示すように、対象道路区間を選出すると、図14(2)に示すように、対象道路区間のノードの中から、送信するノードを選出する。このとき、並走する隣接道路の存在等により、受信側が誤マッチングしやすい箇所では、隣接道路形状との差異が識別できるように、複数の一纏まりのノード(ノード群)を選出する。
【0049】
送信側は、選出したノードの座標データと付加情報とから成る形状ベクトルデータ列情報を、交通情報とともに送信する。
【0050】
図15は、この形状ベクトルデータ列情報を例示している。ここでは、送信ノードがn個のノード群から成り、ノード群1はm個のノードを含み、‥、ノード群nがs個のノードを含む場合を示している。この形状ベクトルデータ列情報では、各ノード群に含まれるノードの座標データを順番に配列しているが、個々のノード群の複数のノードで表される道路形状をフーリエ係数で表現したり、円弧と直線で近似表現したり、スプライン関数で表すことにより、データ量を圧縮しても良い。
【0051】
一方、形状ベクトルデータ列情報を受信した受信側では、図14(3)に示すように、受信側の地図上に、形状ベクトルデータ列情報に含まれる各ノード群のノードの位置をプロットし、図14(4)に示すように、マップマッチングで、各ノードの受信側の地図上での位置を算出する。
【0052】
このとき、ノード群に含まれる複数のノードの配列が表す形状と、受信側地図の道路形状とのマッチングを取ることにより、各ノードの受信側の地図上での位置を正確に求めることができる。
【0053】
こうして、ノード位置が決定すると、図14(5)に示すように、間欠的に位置するノードの間の最短経路を順次探索し、求めた最短経路を順番に繋いで対象道路区間を再現する。
【0054】
この位置情報伝達方法において、送信側では、例えば、次のような基準でノード群に含めるノードを選出する。
(1)図16に示すように、ノードPjから最も近い隣接道路上の位置P'jまでの距離Ljが短く、且つ、ノードPjでの切片方位角度θjと位置P'jでの切片方位角度θ'jとの差分(Δθj=θj−θ'j)が小さいとき、ノードPjは受信側で誤マッチングしやすいノードであると判定する。
【0055】
例えば、判定値εjを
εj=α×Lj+β×|Δθj| (式2)
(α、βは予め決めた係数)
と定義し、εjが規定値ε0より小さいとき、ノードPjは受信側で誤マッチングしやすいノードであると判定する。
(2)ノードPjが誤マッチングしやすいノードであるとき、ノードPjの前後に存在するノードについて、(1)の基準により、受信側で誤マッチングしやすいノードかどうか判定し、受信側で誤マッチングが起きにくいノードが見つかるまで、判定対象のノードを順次拡大する。受信側で誤マッチングが起きにくい、εj≧ε0であるノードが見つかると、隣接道路形状との差異を識別できる形状が得られたものと見做し、そのノードと、それまでにεj<ε0と判定した各ノードとをノード群として採用する。
【0056】
図17は、ノード群に含めるノードの選出手順の一例を示している。
ステップ21:対象道路区間を選出し、
ステップ22:送信するノードPjを選出する。
ステップ23:m=0として、
ステップ24:隣接道路との距離Lj±m及び切片方位角度差Δθj±mを算出し、
ステップ25:(式2)により、判定値εj±mを算出する。
【0057】
ステップ26:εj-m及びεj+mのいずれもが規定値ε0より小さいときは、
ステップ28:m=m+1として、ステップ24からの手順を繰り返す。
ステップ26において、εj-mまたはεj+mのいずれかが規定値ε0以上であるときは、
ステップ27:Pj-m,‥,Pj,‥,Pj+mを、Pj周辺のノード群として採用する。
【0058】
こうして、この手順では、ノードから隣接道路までの距離、及び、ノードの切片方位と隣接道路上の最近地点における切片方位との差分を基に、受信側での誤マッチング発生可能性を評価し、その評価値に応じて、ノード群に含めるノードを選出している。
【0059】
このように、この位置情報伝達方法では、送信側において、受信側での誤マッチング発生可能性を評価し、受信側が誤マッチングしやすい道路箇所で、送信ノード数を増やしているため、受信側のマッチング精度が向上し、対象道路区間を忠実に再現することが可能になる。
【0060】
なお、前述する隣接道路までの距離、及び、切片方位の差分を基に、受信側での誤マッチング発生可能性を評価する手法は、「従来の技術」で説明した、形状ベクトルデータ列から成る「道路形状データ」を伝送する方式にも適用することが可能であり、その評価値に応じて、形状ベクトルデータ列で規定する道路形状の長さや、形状ベクトルデータ列に含めるノード数を決定することができる。
【0061】
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、受信側で保持するデジタル地図データのバージョンが古い場合の対応方法について説明する。
【0062】
第1〜第3の実施形態の位置情報伝達方法では、受信側が、ノード間の最短経路を経路探索で求めて、対象道路区間を再現しているため、受信側のデジタル地図データベースに含まれていない道路は再現することができない。例えば、受信側のデジタル地図データのバージョンが古く、最近の開通道路のデータが含まれていない場合には、送信側が指定する間欠的なノードの間を、この開通道路で繋ぐことは不可能である。その結果、送信側が意図する対象道路区間と、受信側で再現した対象道路区間とが食い違い、受信側で、別の道路上に事象が発生しているものと誤って解釈すると云う事態が発生する。
【0063】
こうした事態は、現実には、送信側が交通情報提供システムの情報提供手段であり、受信側が交通情報の提供を受けるカーナビゲーション装置である場合に多く発生する。
【0064】
第4の実施形態では、こうした事態を回避する位置情報伝達方法について説明する。
【0065】
この方法では、送信側が、対象とする道路のデジタル地図データへの設定年月を識別し、設定年月に応じて、使用する位置情報伝達方法の種類を選択する。道路のデジタル地図データベースへの設定年月は、その道路の開通時期にほぼ重なる。例えば、対象道路が開通間も無い道路である場合には、この開通道路のデータを含むデジタル地図データベースを有するカーナビゲーション装置の割合は極めて低いと見られる。こうしたとき、送信側は、カーナビゲーション装置が開通道路のデータを含まないデジタル地図データベースを有していても、(対象道路を特定できないことは致し方無いとしても)対象道路以外の道路上に事象が発生していると誤解することが無いような位置情報伝達方法を採用して、交通情報を伝える。
【0066】
道路のデータ設定年月は、デジタル地図データベースの各道路リンクに設定年月が定義されている場合は、それを採用する。設定年月が定義されていない場合は、デジタル地図データの各バージョンを比較し、当該道路リンクが始めて登載されたバージョンの改訂時期から、設定年月を算出する。
【0067】
また、送信側は、形状ベクトルデータ列情報の中に、対象道路のデータの設定年月を表す情報、及び、ノード間の距離の情報を含めて伝送する。
【0068】
受信側は、受信した形状ベクトルデータ列情報の中の対象道路のデータ設定年月を参照し、対象道路のデータが自己のデジタル地図データベースに含まれていないと判断したときは、対象道路区間の再現を停止する。
【0069】
また、経路探索で求めたノード間の最短経路の距離と、形状ベクトルデータ列情報に含まれるノード間の距離とが、余りに相違しているときは、対象道路のデータが自己のデジタル地図データベースに含まれていないものと判断し、対象道路区間の再現を停止する。
【0070】
図18のフロー図は、この送信側の処理手順を示している。
ステップ30:対象道路区間を選出し、
ステップ31:送信するノードを選出する。
ステップ32:選出したノード間の道路のデータ設定年月が基準年月(規定値)と同じ、または、基準年月より古ければ、
ステップ33:第1〜第3の実施形態の位置情報伝達方法を採用する。
【0071】
また、ステップ32において、選出したノード間の道路のデータ設定年月が基準年月より新しければ、
ステップ35:対象道路区間の道路形状を直接的に表すデータ(道路形状を特定する各ノードの座標データ列など)を伝達する位置情報伝達方法を採用する。
ステップ36:採用した方法に基づいて位置情報を送信する。
【0072】
図20は、本発明の方法により送信する形状ベクトルデータ列情報を例示している。この情報の中には、ノード間の道路のデータ設定年月及び探索距離のデータが含まれている。
【0073】
図19のフロー図は、この形状ベクトルデータ列情報を受信した受信側の処理手順を示している。
ステップ40:情報を受信し、
ステップ41:付加情報を参照して、各ノードの座標をマップマッチングにより決定する。
ステップ42:受信データに含まれる各ノード間のデータ設定年月が、自装置の地図データの作成年月より古いか否かを識別し、古ければ、
ステップ43:付加情報を参照して、ノード間の経路探索を行い、対象道路区間を決定する。
ステップ44:決定した対象道路区間の距離と、受信データに含まれるノード間の探索距離との差分が規定誤差以内か否かを識別し、規定誤差以内であれば、
ステップ45:対象道路区間の全体形状を再現する。
【0074】
また、ステップ42において、データ設定年月が自装置の地図データの作成年月より古くない場合、または、ステップ44において、対象道路区間の距離と受信データに含まれるノード間の探索距離との差分が規定誤差以内でない場合には、該当ノード間の情報を破棄する。
【0075】
こうした手順を取ることにより、本発明の位置情報伝達方法を適用する際に、送信側及び受信側で保持されるデジタル地図データのバージョンの違いにより、位置情報が誤って伝達される事態を回避することができる。
【0076】
なお、ここでは、形状ベクトルデータ列情報に、ノード間の道路のデータ設定年月及び探索距離のデータの両方を含める場合を示しているが、どちらか一方だけを含めるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上の説明から明らかなように、本発明のデジタル地図の位置情報伝達方法、及び、それを実施する装置では、少ないデータ量で、効率的且つ正確に、デジタル地図の形状や位置の情報を伝達することができ、データ伝送効率を高めることができる。
【符号の説明】
【0078】
10、20 位置情報送受信装置
11、22 位置情報受信部
12 マップマッチング部
13 経路探索部
14 デジタル地図データベース
15 デジタル地図表示部
16 事象情報入力部
17 位置情報変換部
18 送信ノード群・付加情報抽出部
19、21 位置情報送信部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のデジタル地図上の第1の道路区間を備えた送信装置であって、当該送信装置から位置情報を受信し、前記位置情報に含まれる各ノードの座標情報、及び前記各ノードに関する付加情報または前記各ノードが属する道路に関する付加情報に基づいて、前記各ノードに対応する第2のデジタル地図上での道路上の各ノードの位置をマップマッチングにより決定し、前記決定した各ノードの位置間の経路探索に基づいて、前記第2のデジタル地図上で第1の道路区間に対応する第2の道路区間の位置を特定する受信装置に対して前記位置情報を送信する送信装置であって、
前記送信装置は、
前記第1のデジタル地図上の前記第1の道路区間から複数のノードを選択する手段と、
前記受信装置における前記マップマッチングまたは前記経路探索の精度を高めるための情報として、前記選択されたノードに関する付加情報または前記選択されたノードが属する道路に関する付加情報を抽出する手段と、
前記選択した各ノードの座標情報と、前記各ノードに関する付加情報または前記各ノードが属する道路に関する付加情報とを含む位置情報を、前記第1のデジタル地図上の前記第1の道路区間の位置情報として生成する手段と、
前記生成した位置情報を前記受信装置に対して送信する手段と、
を備えた送信装置。
【請求項2】
請求項1記載の送信装置であって、
前記ノードを選択する手段は、少なくとも前記第1の道路区間の始端ノード及び終端ノードを選択することを特徴とする送信装置。
【請求項3】
第1のデジタル地図上の第1の道路区間を備えた送信装置が実行する位置情報の送信方法であって、当該送信装置から位置情報を受信し、前記位置情報に含まれる各ノードの座標情報、及び前記各ノードに関する付加情報または前記各ノードが属する道路に関する付加情報に基づいて、前記各ノードに対応する第2のデジタル地図上での道路上の各ノードの位置をマップマッチングにより決定し、前記決定した各ノードの位置間の経路探索に基づいて、前記第2のデジタル地図上で第1の道路区間に対応する第2の道路区間の位置を特定する受信装置に対して前記位置情報を送信する送信方法であって、
前記送信方法は、
前記第1のデジタル地図上の前記第1の道路区間から複数のノードを選択するステップと、
前記受信装置における前記マップマッチングまたは前記経路探索の精度を高めるための情報として、前記選択されたノードに関する付加情報または前記選択されたノードが属する道路に関する付加情報を抽出するステップと、
前記選択した各ノードの座標情報と、前記各ノードに関する付加情報または前記各ノードが属する道路に関する付加情報とを含む位置情報を、前記第1のデジタル地図上の前記第1の道路区間の位置情報として生成するステップと、
前記生成した位置情報を前記受信装置に対して送信するステップと、
を備えた送信方法。
【請求項1】
第1のデジタル地図上の第1の道路区間を備えた送信装置であって、当該送信装置から位置情報を受信し、前記位置情報に含まれる各ノードの座標情報、及び前記各ノードに関する付加情報または前記各ノードが属する道路に関する付加情報に基づいて、前記各ノードに対応する第2のデジタル地図上での道路上の各ノードの位置をマップマッチングにより決定し、前記決定した各ノードの位置間の経路探索に基づいて、前記第2のデジタル地図上で第1の道路区間に対応する第2の道路区間の位置を特定する受信装置に対して前記位置情報を送信する送信装置であって、
前記送信装置は、
前記第1のデジタル地図上の前記第1の道路区間から複数のノードを選択する手段と、
前記受信装置における前記マップマッチングまたは前記経路探索の精度を高めるための情報として、前記選択されたノードに関する付加情報または前記選択されたノードが属する道路に関する付加情報を抽出する手段と、
前記選択した各ノードの座標情報と、前記各ノードに関する付加情報または前記各ノードが属する道路に関する付加情報とを含む位置情報を、前記第1のデジタル地図上の前記第1の道路区間の位置情報として生成する手段と、
前記生成した位置情報を前記受信装置に対して送信する手段と、
を備えた送信装置。
【請求項2】
請求項1記載の送信装置であって、
前記ノードを選択する手段は、少なくとも前記第1の道路区間の始端ノード及び終端ノードを選択することを特徴とする送信装置。
【請求項3】
第1のデジタル地図上の第1の道路区間を備えた送信装置が実行する位置情報の送信方法であって、当該送信装置から位置情報を受信し、前記位置情報に含まれる各ノードの座標情報、及び前記各ノードに関する付加情報または前記各ノードが属する道路に関する付加情報に基づいて、前記各ノードに対応する第2のデジタル地図上での道路上の各ノードの位置をマップマッチングにより決定し、前記決定した各ノードの位置間の経路探索に基づいて、前記第2のデジタル地図上で第1の道路区間に対応する第2の道路区間の位置を特定する受信装置に対して前記位置情報を送信する送信方法であって、
前記送信方法は、
前記第1のデジタル地図上の前記第1の道路区間から複数のノードを選択するステップと、
前記受信装置における前記マップマッチングまたは前記経路探索の精度を高めるための情報として、前記選択されたノードに関する付加情報または前記選択されたノードが属する道路に関する付加情報を抽出するステップと、
前記選択した各ノードの座標情報と、前記各ノードに関する付加情報または前記各ノードが属する道路に関する付加情報とを含む位置情報を、前記第1のデジタル地図上の前記第1の道路区間の位置情報として生成するステップと、
前記生成した位置情報を前記受信装置に対して送信するステップと、
を備えた送信方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2012−98308(P2012−98308A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−25479(P2012−25479)
【出願日】平成24年2月8日(2012.2.8)
【分割の表示】特願2010−237814(P2010−237814)の分割
【原出願日】平成13年1月29日(2001.1.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月8日(2012.2.8)
【分割の表示】特願2010−237814(P2010−237814)の分割
【原出願日】平成13年1月29日(2001.1.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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