説明

デジタル式プラネタリウム装置

【課題】投映方式が単眼式であっても高解像度であり、ビデオプロジェクタで生成される画像領域を増やして画像表示面を有効活用できるデジタル式プラネタリウム装置を提供する。
【解決手段】プラネタリウム装置は、2台のビデオプロジェクタPA,PB、リレーレンズRA,RB、魚眼レンズGLを有する。ビデオプロジェクタPA,PBはそれぞれの内部の表示素子DA,DBに半円像IA,IBを生成し、リレーレンズRA,RBは2つの半円像IA,IBを光学的に結像させて円像IMを生成し、魚眼レンズGLは円像IMをドームスクリーン1上に投射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデジタル式プラネタリウム装置に関するものであり、例えば、ドームスクリーンにビデオプロジェクタの映像を投映するデジタル式プラネタリウム装置に関するものである。また、多目的(アミューズメント等)な映像装置としての応用が可能で、ドームスクリーンに対し広範囲に映像を投映するドーム映像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
世界中でデジタル式プラネタリウムが徐々に普及し始めており、光学式プラネタリウム全盛の時代からデジタル式プラネタリウムの時代へと移行しつつある。デジタル式プラネタリウムでは、地球上で見られる星空や宇宙空間で見られる様子を再現することは勿論のこと、各天体の上空から見た地表の様子等も再現できるようになってきている。またデジタル式プラネタリウムには、DLP(登録商標)方式,D−ILA(登録商標)方式又は液晶方式のビデオプロジェクタが一般的に採用され、そのアスペクト比も従来は4:3が一般的であったが、ハイビジョン化に伴って16:9のものが普及しつつある。
【0003】
デジタル式プラネタリウムの投映方式は、分割投映方式と単眼投映方式とに大別される。分割投映方式のデジタル式プラネタリウムは、ドーム周辺に配置された複数(例えば6台)のビデオプロジェクタを用いて表示素子の画像を投映し、画像を繋ぎ合わせてドーム全天を覆う映像を生成するものである(例えば、特許文献1,2参照。)。これにより没入感及び臨場感のある星空等の全天映像を上映することができる。一方、単眼投映方式のデジタル式プラネタリウムは、1台のビデオプロジェクタをドーム中心に配置し、それに装着した魚眼レンズで映像を拡大してドーム全天に投映するものであり(例えば、特許文献1参照。)、その優れたメンテナンス性により普及しつつある。
【特許文献1】特開2004−361880号公報
【特許文献2】特開2005−31270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分割投映方式のデジタル式プラネタリウムでは、複数のビデオプロジェクタを用いて映像を構成するため、個々のビデオプロジェクタの輝度調整が困難である。また、経時変化等が原因となって輝度等が狂ってしまうと、ドーム上に映像の切れ目が顕著に発生してしまい、観客にとって非常に見苦しいものとなる。それを調整することも非常に困難である。一方、単眼投映方式のデジタル式プラネタリウム装置では、こういった問題は生じない。しかし、1台のビデオプロジェクタに対し1台の魚眼レンズでドーム全天を覆う映像を投映する構成であるため、高解像度化は困難である。さらに、デジタル式プラネタリウムで生成される画像領域が円形であるため、画像表示面のアスペクト比が16:9に近い最近のビデオプロジェクタでは、短辺方向の画素で画像領域が決定されてしまう。その結果、非画像領域が多くなるため、投映効率が悪いという問題もある。
【0005】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、投映方式が単眼式であっても高解像度であり、ビデオプロジェクタで生成される画像領域を増やして画像表示面を有効活用できるデジタル式プラネタリウム装置とドーム映像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1の発明のデジタル式プラネタリウム装置は、2台のビデオプロジェクタから成りそれぞれの内部の表示素子に半円像を生成する原像生成手段と、前記原像生成手段で生成された2つの半円像を光学的に結像させて円像を生成する中間像生成手段と、前記中間像生成手段により生成された円像を投射する魚眼レンズと、を有することを特徴とする。
【0007】
第1の発明の構成によると、原像生成手段において例えばアスペクト比=16:9のビデオプロジェクタ2台のそれぞれで半円像が生成され、その2つの半円像が中間像生成手段による光学的な結像により円像として合成される。その円像は、例えば、等距離射影方式を採用した魚眼レンズにより、ドーム全天に適した映像に変換されてドームスクリーン上に投射される。魚眼レンズの射影方式としては、立体角射影や等立体角射影等の他の射影方式でも映像の変換により採用可能である。2台のビデオプロジェクタを使用する構成であるため、高解像度化が可能となり、それぞれの表示素子に半円像が生成されるため、使用するビデオプロジェクタのアスペクト比が16:9であっても非投映領域は低減される。また、一方のビデオプロジェクタの輝度を基準にして他方のビデオプロジェクタの輝度を合わせ込むことができるので、輝度調整を容易に行うことができる。
【0008】
第2の発明のデジタル式プラネタリウム装置は、上記第1の発明において、前記中間像生成手段が、一方のビデオプロジェクタ内部の表示素子で生成された半円像を光学的に結像させる第1のリレーレンズと、他方のビデオプロジェクタ内部の表示素子で生成された半円像を光学的に結像させる第2のリレーレンズと、を含み、各リレーレンズの光軸が各表示素子の中心からシフトしていることを特徴とする。
【0009】
第2の発明の構成によると、第1,第2のリレーレンズにおいて各光軸の片側に偏った部分を用いた結像が行われる。これにより、第1,第2のリレーレンズの設計・配置の自由度が向上するため、デジタル式プラネタリウム装置のコンパクト化が可能になる。
【0010】
第3の発明のデジタル式プラネタリウム装置は、上記第2の発明において、前記第1,第2のリレーレンズの光軸と前記魚眼レンズの光軸とが一致していることを特徴とする。
【0011】
第3の発明の構成によると、第1,第2のリレーレンズと魚眼レンズとの間で、歪曲収差,倍率色収差,像面湾曲を補間する設計が可能となり、高画質化の達成に寄与することができる。
【0012】
第4の発明のデジタル式プラネタリウム装置は、上記第1の発明において、前記中間像生成手段が、一方のビデオプロジェクタ内部の表示素子で生成された半円像を光学的に結像させる第1のリレーレンズと、他方のビデオプロジェクタ内部の表示素子で生成された半円像を光学的に結像させる第2のリレーレンズと、を含み、各リレーレンズの光軸と各表示素子の中心とが一致していることを特徴とする。
【0013】
第4の発明の構成によると、各リレーレンズの光軸と各表示素子の中心とが一致しているため、そのシンプルな構成により安価な設計が可能となる。
【0014】
第5の発明のデジタル式プラネタリウム装置は、上記第4の発明において、前記中間像生成手段が、第1のリレーレンズにより形成される半円像と第2のリレーレンズにより形成される半円像とが平面状に合成されるように、それぞれのビデオプロジェクタ内部の表示素子を各リレーレンズの光軸に対し傾斜させることを特徴とする。
【0015】
第5の発明の構成によると、ビデオプロジェクタ内部の表示素子が各リレーレンズの光軸に対し傾斜しているため、円像を平面状に形成することにより、画質を向上させることが可能となる。
【0016】
第6の発明のデジタル式プラネタリウム装置は、上記第2〜第5のいずれか1つの発明において、前記中間像生成手段が、前記第1,第2のリレーレンズによる半円像の結像位置又はその近傍にフィールドレンズ,ミラー又はプリズムを有することを特徴とする。
【0017】
第6の発明の構成によると、フィールドレンズ,ミラー又はプリズムにより、第1,第2のリレーレンズと魚眼レンズとの光線角度のマッチング等が可能となる。
【0018】
第7の発明のデジタル式プラネタリウム装置は、上記第1〜第6のいずれか1つの発明において、前記魚眼レンズが円像側に略テレセントリックであることを特徴とする。
【0019】
第7の発明の構成によると、魚眼レンズの円像側への略テレセントリック性により、画像をきれいに繋げて明るさ効率を良くすることが可能となる。
【0020】
第8の発明のデジタル式プラネタリウム装置は、上記第1〜第7のいずれか1つの発明において、前記第1,第2のリレーレンズが中間像側に略テレセントリックであることを特徴とする。
【0021】
第8の発明の構成によると、第1,第2のリレーレンズの中間像側への略テレセントリック性により、画像をきれいに繋げて明るさ効率を良くすることが可能となる。また、第1,第2のリレーレンズは両側に略テレセントリックであることが更に好ましい。
【0022】
第9の発明のデジタル式プラネタリウム装置は、2台のビデオプロジェクタから成りそれぞれの内部の表示素子に半円像を生成する原像生成手段と、拡大側から順に前レンズ群及び後レンズ群から成り前記原像生成手段で生成された2つの半円像を投射する魚眼レンズと、前記2つの半円像が1つの円像として繋ぎ合わされて結像するように、前記前レンズ群と後レンズ群との間で前記2つの半円像の光路を合成する画像合成手段と、を有することを特徴とする。
【0023】
第9の発明の構成によると、原像生成手段において例えばアスペクト比=16:9のビデオプロジェクタ2台のそれぞれで半円像が生成され、その2つの半円像が魚眼レンズにより投射される。魚眼レンズを構成する前レンズ群と後レンズ群との間では、画像合成手段により2つの半円像の光路が合成され、それによって2つの半円像が1つの円像として繋ぎ合わされて結像する。その際、円像を構成する各半円像は、例えば、等距離射影方式を採用した魚眼レンズにより、ドーム全天に適した映像に変換されてドームスクリーン上に投射される。魚眼レンズの射影方式としては、立体角射影や等立体角射影等の他の射影方式でも映像の変換により採用可能である。2台のビデオプロジェクタを使用する構成であるため、高解像度化が可能となり、それぞれの表示素子に半円像が生成されるため、使用するビデオプロジェクタのアスペクト比が16:9であっても非投映領域は低減される。また、一方のビデオプロジェクタの輝度を基準にして他方のビデオプロジェクタの輝度を合わせ込むことができるので、輝度調整を容易に行うことができる。
【0024】
第10の発明のデジタル式プラネタリウム装置は、上記第9の発明において、前記画像合成手段が偏光ビームスプリッターであり、前記後レンズ群が一方のビデオプロジェクタ側に位置する第1の後レンズ群と他方のビデオプロジェクタ側に位置する第2の後レンズ群とから成り、第1の後レンズ群からP偏光が射出するように一方のビデオプロジェクタからの光をP偏光に統一する第1の偏光変換素子と、第2の後レンズ群からS偏光が射出するように他方のビデオプロジェクタからの光をS偏光に統一する第2の偏光変換素子と、を更に有することを特徴とする。
【0025】
第10の発明の構成によると、偏光ビームスプリッターの偏光分離特性を利用した2つの半円像の光路合成により、2つの半円像を1つの円像として効率的に繋ぎ合わせることが可能となる。
【0026】
第11の発明のドーム映像装置は、2台のビデオプロジェクタから成りそれぞれの内部の表示素子に半円像を生成する原像生成手段と、前記原像生成手段で生成された2つの半円像を光学的に結像させて円像を生成する中間像生成手段と、前記中間像生成手段により生成された円像をドームスクリーンに投射する魚眼レンズと、を有することを特徴とする。
【0027】
第11の発明の構成によると、原像生成手段において例えばアスペクト比=16:9のビデオプロジェクタ2台のそれぞれで半円像が生成され、その2つの半円像が中間像生成手段による光学的な結像により円像として合成される。その円像は、例えば、等距離射影方式を採用した魚眼レンズにより、ドーム全天に適した映像に変換されてドームスクリーン上に投射される。魚眼レンズの射影方式としては、立体角射影や等立体角射影等の他の射影方式でも映像の変換により採用可能である。2台のビデオプロジェクタを使用する構成であるため、高解像度化が可能となり、それぞれの表示素子に半円像が生成されるため、使用するビデオプロジェクタのアスペクト比が16:9であっても非投映領域は低減される。また、一方のビデオプロジェクタの輝度を基準にして他方のビデオプロジェクタの輝度を合わせ込むことができるので、輝度調整を容易に行うことができる。
【0028】
第12の発明のドーム映像装置は、2台のビデオプロジェクタから成りそれぞれの内部の表示素子に半円像を生成する原像生成手段と、拡大側から順に前レンズ群及び後レンズ群から成り前記原像生成手段で生成された2つの半円像をドームスクリーンに投射する魚眼レンズと、前記2つの半円像が1つの円像として繋ぎ合わされて結像するように、前記前レンズ群と後レンズ群との間で前記2つの半円像の光路を合成する画像合成手段と、を有することを特徴とする。
【0029】
第12の発明の構成によると、原像生成手段において例えばアスペクト比=16:9のビデオプロジェクタ2台のそれぞれで半円像が生成され、その2つの半円像が魚眼レンズにより投射される。魚眼レンズを構成する前レンズ群と後レンズ群との間では、画像合成手段により2つの半円像の光路が合成され、それによって2つの半円像が1つの円像として繋ぎ合わされて結像する。その際、円像を構成する各半円像は、例えば、等距離射影方式を採用した魚眼レンズにより、ドーム全天に適した映像に変換されてドームスクリーン上に投射される。魚眼レンズの射影方式としては、立体角射影や等立体角射影等の他の射影方式でも映像の変換により採用可能である。2台のビデオプロジェクタを使用する構成であるため、高解像度化が可能となり、それぞれの表示素子に半円像が生成されるため、使用するビデオプロジェクタのアスペクト比が16:9であっても非投映領域は低減される。また、一方のビデオプロジェクタの輝度を基準にして他方のビデオプロジェクタの輝度を合わせ込むことができるので、輝度調整を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0030】
第1又は第11の発明によれば、原像生成手段を構成する2台のビデオプロジェクタで2つの半円像を生成し、中間像生成手段で2つの半円像を光学的に結像させて円像を生成し、魚眼レンズで円像を投射する構成になっているため、投映方式が単眼式であっても高解像度であり、ビデオプロジェクタで生成される画像領域を増やして画像表示面(例えば、アスペクト比=16:9)を有効活用できるデジタル式プラネタリウム装置とドーム映像装置を実現することができる。また、第9又は第12の発明によれば、原像生成手段を構成する2台のビデオプロジェクタで2つの半円像を生成し、その2つの半円像が1つの円像として繋ぎ合わされて結像するように、画像合成手段で光路を合成して魚眼レンズで投射する構成になっているため、投映方式が単眼式であっても高解像度であり、ビデオプロジェクタで生成される画像領域を増やして画像表示面(例えば、アスペクト比=16:9)を有効活用できるデジタル式プラネタリウム装置とドーム映像装置を実現することができる。第1〜第12のいずれの発明によっても、魚眼レンズが1個で済むため、低コスト化を達成することができる。さらには、第1又は第11の発明では中間像前までの光学系とそれ以降の魚眼レンズを構成する光学系とを個別化することができ、第9又は第12の発明では前レンズ群と後レンズ群とを個別化することができるので、ビデオプロジェクタの種類が互いに異なっても柔軟な設計変更が可能であり、更なるコスト低減が可能である。
【0031】
従来の分割投映方式のデジタル式プラネタリウムでは、通常6台のビデオプロジェクタが使用されるため、1台のビデオプロジェクタを基準にして5台のビデオプロジェクタを調整する必要がある。その調整作業は煩雑であり、基準となる1台を決めることも困難である。それに対し、本発明によれば2台のビデオプロジェクタについてのみ調整を行えば済む。つまり、一方のビデオプロジェクタの輝度や映像を基準にして、他方のビデオプロジェクタを調整するだけでよい。なお、1台のビデオプロジェクタを使用する単眼式のデジタル式プラネタリウム装置では、ビデオプロジェクタ間の調整は全く不要であるが、高解像度化を達成することは困難である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明に係るデジタル式プラネタリウム装置の実施の形態等を、図面を参照しつつ説明する。なお、各実施の形態等の相互で同一の部分や相当する部分には同一の符号を付して重複説明を適宜省略する。
【0033】
図1に、各実施の形態の装置が適用されるプラネタリウム設備全体の概略構成を示す。デジタル式プラネタリウムは、図1に示すように、半球状のドームスクリーン1と、その中央下に設置されたデジタル式プラネタリウム装置10と、で構成される。デジタル式プラネタリウム装置10は、再生部2,投映部3,魚眼レンズ部4,操作部5,スピーカ6等を備えている。再生部2はドームスクリーン1上に投映するビデオ映像やプラネタリウム施設内に放送する音声等の再生等を行い、投映部3は再生部2からの信号を用いてビデオ映像を構成し、それを魚眼レンズ部4がドームスクリーン1の全天周に投映する。操作部5は、操作パネル5a(図2)を通じて操作者が実演中又は実演前に映像内容の設定を行うためのものであり、例えば、タッチパネルに表示された複数のボタンで操作者が種々の機能を選択することが可能になっている。選択可能な機能としては、例えば、星座絵,星座線,極座標線等のいわゆる解説補助機能の他,恒星の固有運動や擬似宇宙飛行等のシミュレーション機能が挙げられる。
【0034】
図2に、デジタル式プラネタリウム装置10の制御構成をブロック図で示す。再生部2には処理部20が内蔵されており、処理部20は、演算処理部21,データ格納部22,映像生成部23及び音声生成部24を有している。また操作部5は、操作パネル(タッチパネル)5aと、処理部20と交信するためのマシンIF部5bと、を有している。演算処理部21は、種々の演算処理を行うとともに、操作部5からの命令等に基づく映像制御,音声制御,照明制御等を行う。データ格納部22は、制御に必要なデータや投映等に必要なファイルを格納するものであり、格納されているデータとしては、例えば各天体の明るさ・配置;各星座の名前,配列,星座領域等の天文データ等が挙げられ、格納されているファイルとしては、例えば天体の写真画像,星座絵;音声ファイル(例えば、自動ナレーションやBGM)等が挙げられる。映像生成部23は、ドームスクリーン1上に投映する映像を生成するものであり、生成された映像は投映部3に送られてドームスクリーン1上に投映される。音声生成部24は、プラネタリウム施設内に放送される音声を生成するものであり、生成された音声はスピーカ6を介してプラネタリウム施設内に放送される。
【0035】
上記のように構成されたデジタル式プラネタリウムでは、以下のようにして番組の上映が行われる。まず、ドーム内にいる操作者が操作部5を操作して、所望の番組の選択及び実行を行うと、番組がスタートする(なお、ドーム外にいる操作者が遠隔操作できるように、遠隔操作部を設置してもよい。)。具体的には、演算処理部21がデータ格納部22から当該番組の番組プログラムを読み出し、これに基づいて映像生成部23及び音声生成部24を種々制御する。その際に映像生成部23は、番組の映像データに基づく画像を投映部3の投映用画面に書き込む。すると、その映像が魚眼レンズ部4を介してドームスクリーン1に投映される。この他にも,操作によっては星空に関する自動解説を行ったり、番組を途中で停止させたりすることも勿論可能である。
【0036】
次に、図1のデジタル式プラネタリウムにおいて好適に使用可能なデジタル式プラネタリウム装置10を、その光学構成に特徴のある3つのタイプの実施の形態に分けて説明する。第1,第2のタイプのデジタル式プラネタリウム装置10は、半円像を生成する表示素子を備えたビデオプロジェクタ2台から成る原像生成手段と、原像生成手段で生成された2つの半円像を光学的に結像させて円像を生成する中間像生成手段と、中間像生成手段により生成された円像を投射する魚眼レンズと、を有する構成になっている。そのうち、第1のタイプでは中間像生成手段による結像が光軸の片側にオフセットされた半円像に対して行われ、第2のタイプでは中間像生成手段による結像が光軸を中心にセットされた半円像に対して行われる。第3のタイプのデジタル式プラネタリウム装置10は、半円像を生成する表示素子を備えたビデオプロジェクタ2台から成る原像生成手段と、拡大側から順に前レンズ群及び後レンズ群から成り原像生成手段で生成された2つの半円像を投射する魚眼レンズと、2つの半円像が1つの円像として繋ぎ合わされて結像するように、前レンズ群と後レンズ群との間で2つの半円像の光路を合成する画像合成手段と、を有する構成になっている。以下に、各タイプの光学構成を更に詳しく説明する(なお、2つの半円像と1つの円像の対応関係を分かり易くするため、それらの生成状態を必要に応じて図中に模式的に示す。)。
【0037】
第1のタイプのデジタル式プラネタリウム装置10は、図3に示すように、2台のビデオプロジェクタPA,PBと2つのリレーレンズ部3a,3bを投映部3に有しており、その光射出側に配置された1つの魚眼レンズ部4でドームスクリーン1上に映像を投映する構成になっている。原像生成手段に相当する2台のビデオプロジェクタPA,PBは、それぞれ内部に表示素子DA,DBを有しており、各表示素子DA,DBでは半円像IA,IBが生成される。なお、表示素子DA,DBとしては、デジタル・マイクロミラー・デバイス(digital micromirror device),反射型又は透過型のLCD(liquid crystal display)等が用いられる。
【0038】
表示素子DA,DBとしてデジタル・マイクロミラー・デバイスを用いた場合、それに入射した光は、ON/OFF状態(例えば±12°の傾き状態)の各マイクロミラーで反射されることにより空間的に変調される。その際、ON状態のマイクロミラーで反射した光のみがリレーレンズ部3a,3bに入射し、その結果、表示素子DA,DBの表示画像がドームスクリーン1上に拡大投映される。また、表示素子DA,DBとして、EL素子(electro luminescence element)等の自発光型表示素子を用いてもよい。表示素子として自発光型表示素子を用いれば、照明用の光源等が不要となるため、装置全体をより軽量・小型化することができる。
【0039】
図4に、1台のビデオプロジェクタPAの原板イメージを示す。半円像IAを生成する表示素子DAの画像表示面は、Px=1920画素,Py=1080画素から成るアスペクト比=16:9(=1920:1080)の長方形状になっている。もし、アスペクト比=16:9の画像表示面で円像を生成すると、画像領域は短辺方向の画素数Pyで決定される。その結果、解像度が短辺方向の画素数Pyに制限されてしまうとともに、非画像領域が多くなって投映効率が悪くなる。それに対し、図4に示すように表示素子DAで半円像IAを生成する構成にすれば、画像表示面のアスペクト比が16:9であっても、画像表示面の長辺方向に半円像IAの直径方向を合わせることにより、解像度を長辺方向の画素数Pxまで向上させることができ、また、非画像領域が少なくなるため非投映領域の低減により投映効率が良くなる。したがって、1つの円像を2つの半円像に分けることにより、投映する画像半分の形状を表示素子の画像表示面の形状に近づける、という観点から言えば、アスペクト比は2:1に近いことが好ましく、例えば4:3より16:9の方が有利になる。
【0040】
図3に示すように、中間像生成手段に相当する2つのリレーレンズ部3a,3bは、それぞれ内部にリレーレンズRA,RBを有している。ビデオプロジェクタPA,PBで生成された2つの半円像IA,IBは、各リレーレンズRA,RBで結像して、2つの半円像IA,IBから成る1つの円像IMを構成する。円像IMは、空中像でもよく、スクリーン(不図示)上に結像させた像でもよい。また、結像位置又はその近傍にフィールドレンズ(図5)を配置することにより、リレーレンズRA,RBと魚眼レンズGLとの光線角度をマッチングさせる構成にしてもよい。いずれにしても中間像としての円像IMは、魚眼レンズ部4に内蔵されている魚眼レンズGL(XG:光軸)でドームスクリーン1上に拡大投映される。なお、リレーレンズRA,RBや魚眼レンズGLは、透過型光学素子としてのレンズのみから成る光学系に限らず、ミラー等の反射型光学素子を含む光学系,回折レンズ等の回折型光学素子を含む光学系等であってもよい。
【0041】
第1のタイプのデジタル式プラネタリウム装置10の特徴は、リレーレンズRA,RBによる結像が光軸XA,XBの片側にオフセットされた半円像IA,IBに対して行われる点にある。つまり、リレーレンズRA,RBの光軸XA,XBが表示素子DA,DBの中心からシフトしている点に特徴がある。リレーレンズRA,RBに対し表示素子DA,DBがオフセットされているため、リレーレンズRA,RBにおいて光軸XA,XBの片側に偏った部分を用いた結像が行われる。この構成により、リレーレンズRA,RBの設計・配置の自由度が向上するため、投映部3とそれを内蔵するプラネタリウム装置10のコンパクト化が可能になる。
【0042】
第1のタイプのデジタル式プラネタリウム装置10の光学構成を、第1〜第3の実施の形態を例示して、更に詳しく説明する。図5〜図7に、第1〜第3の実施の形態の光学構成をそれぞれ示す。第1〜第3の実施の形態に用いられているビデオプロジェクタPA,PBには、プリズムGA,GBが内蔵されている。ここでは、プリズムGA,GBとして照明光を反射させ投映光を透過させるTIR(Total Internal Reflection)プリズムを想定している。ただし、使用されるプリズムGA,GBはこれに限らず、投映系や表示素子に適したPBS(偏光ビームスプリッター)プリズム又は3板式用プリズム(色分離・色合成用プリズム等)を1つ又は組み合わせて用いても構わない。また、単板式でプリズムを使用しないビデオプロジェクタの場合、プリズムGA,GBは無くてもよい。
【0043】
図13に、照明光と投映光とを臨界角前後の入射角度差を利用して分離するTIRプリズムの単板式システム構成例を示す。TIRプリズムはプリズムpr1とプリズムpr2とから成り、その間にはエアギャップが存在する。プリズムpr1に入射した照明光L1は、プリズムpr1,pr2間のエアギャップに面するプリズム面に対し臨界角を超えて入射することにより、全反射される。その後、プリズムpr1から射出し、表示素子DA,DB(例えばデジタル・マイクロミラー・デバイス)で反射されることにより、投映光としてプリズムpr1へ再入射する。プリズムpr1に入射した投映光L2は、プリズムpr1,pr2間のエアギャップに面するプリズム面に対し臨界角未満で入射することにより、プリズムpr1,エアギャップ,プリズムpr2の順に透過する。
【0044】
第1の実施の形態(図5)において、魚眼レンズGLは円像IM側に略テレセントリックであり、リレーレンズRA,RBは表示素子DA,DB側に略テレセントリックである。また、リレーレンズRA,RBの光軸XA,XBは表示素子DA,DBの中心からシフトしており、さらにリレーレンズRA,RBの光軸XA,XBは魚眼レンズGLの光軸XGからもシフトしている。リレーレンズRA,RBの光軸XA,XBと魚眼レンズGLの光軸XGとがズレていても、円像IMの近傍に配置されている正パワーのフィールドレンズFLで光束を取り込むことにより、リレーレンズRA,RBと魚眼レンズGLとの光線角度をマッチングさせて、リレーレンズRA,RBからの光を効率的に魚眼レンズGLに導くことができる。さらに、魚眼レンズGLが円像IM側に略テレセントリックであるため、画像をきれいに繋げて明るさ効率を良くすることができる。
【0045】
第2の実施の形態(図6)では、リレーレンズRA,RBの光軸XA,XBと魚眼レンズGLの光軸XGとを一致させたまま、ミラーMRで円像IMよりもリレーレンズRA側の光路を折り曲げることにより、2つのリレーレンズRA,RBの光軸XA,XBが略直交するように光路を合成している。画像をきれいに繋げるには、ミラーMRのエッジ形状を狭い角度に設定するのが好ましいが、ミラーMRを薄くして実装するようにしてもよい。
【0046】
第3の実施の形態(図7)では、リレーレンズRA,RBの光軸XA,XBと魚眼レンズGLの光軸XGとを一致させたまま、プリズムPRで円像IMよりもリレーレンズRA,RB側の光路を折り曲げることにより、2つのリレーレンズRA,RBの光軸XA,XBが略一致するように光路を合成している。第3の実施の形態のように、プリズムPRの頂角を円像IMに一致させた場合、その頂角が完全なエッジ状に構成されていなければ(例えば、プリズム頂角が完全でなく欠け等がある場合)、半円像IA,IBの繋ぎ目に相当する投映像面中央にその分の影が形成されるおそれがある。この頂角の悪影響を解消するには、プリズムPRの頂角が円像IMよりも魚眼レンズGL側に位置するように、プリズムPRを魚眼レンズGL側に少しだけシフトさせるのが好ましく、プリズムPRからビデオプロジェクタPA,PBまでの全部又は一部を魚眼レンズGL側に少しだけシフトさせるのが更に好ましい。
【0047】
図14に、プリズムPRからビデオプロジェクタPA,PBまでを魚眼レンズGL側に少しだけシフトさせたときの光路変化を示す。また図15に、図14中の光路合成部Tを拡大して示す。プリズム反射面が移動した分だけ、リレーレンズRA,RB側に折り返される光軸XA,XBもズレることになる。その結果、前記欠点となる影(つまり頂角の像)はデフォーカス分だけ消えることになる。
【0048】
第2,第3の実施の形態(図6,図7)において、魚眼レンズGLは円像IM側に略テレセントリックであり、リレーレンズRA,RBは両側に略テレセントリックである。また、リレーレンズRA,RBの光軸XA,XBは表示素子DA,DBの中心からシフトしているが、リレーレンズRA,RBの光軸XA,XBと魚眼レンズGLの光軸XGとは一致している。このようにリレーレンズRA,RBの光軸XA,XBを魚眼レンズGLの光軸XGと一致させるとともに、表示素子DA,DBをオフセット状態で使用することにより、リレーレンズRA,RBと魚眼レンズGLとの間で、歪曲収差,倍率色収差,像面湾曲を補間する設計が可能となる。これにより、高画質化を達成できるというメリットがある。なお、魚眼レンズGLが円像IM側にテレセントリックでない場合でも、リレーレンズRA,RBにおける円像IM側の光線角度をテレセントリックから崩してマッチングさせてもよい。
【0049】
第2のタイプのデジタル式プラネタリウム装置10は、図8に示すように、2台のビデオプロジェクタPA,PBと2つのリレーレンズ部3a,3bを投映部3に有しており、その光射出側に配置された1つの魚眼レンズ部4でドームスクリーン1上に映像を投映する構成になっている。第1のタイプ(図3,図4)と同様、原像生成手段に相当する2台のビデオプロジェクタPA,PBは、それぞれ内部に表示素子DA,DB(デジタル・マイクロミラー・デバイス,反射型又は透過型のLCD等)を有しており、各表示素子DA,DBでは半円像IA,IBが生成される。
【0050】
図8に示すように、中間像生成手段に相当する2つのリレーレンズ部3a,3bは、それぞれ内部にリレーレンズRA,RBを有している。ビデオプロジェクタPA,PBで生成された2つの半円像IA,IBは、各リレーレンズRA,RBで結像して、2つの半円像IA,IBから成る1つの円像IMを構成する。円像IMは、空中像でもよく、スクリーン(不図示)上に結像させた像でもよい。また、2つの半円像IA,IBはくの字状の円像IMを構成するが、結像位置又はその近傍にフィールドレンズ(図10)を配置することにより、リレーレンズRA,RBと魚眼レンズGLとの光線角度をマッチングさせる構成にしてもよい。いずれにしても中間像としての円像IMは、魚眼レンズ部4に内蔵されている魚眼レンズGL(XG:光軸)でドームスクリーン1(図1)上に拡大投映される。なお、リレーレンズRA,RBや魚眼レンズGLは、透過型光学素子としてのレンズのみから成る光学系に限らず、ミラー等の反射型光学素子を含む光学系,回折レンズ等の回折型光学素子を含む光学系等であってもよい。
【0051】
第2のタイプのデジタル式プラネタリウム装置10の特徴は、リレーレンズRA,RBによる結像が光軸XA,XBを中心にセットされた半円像IA,IBに対して行われる点にある。つまり、リレーレンズRA,RBの光軸XA,XBが表示素子DA,DBの中心に一致している点に特徴がある。リレーレンズRA,RBの光軸XA,XBが表示素子DA,DBの中心を通過するシンプルな構成であるため、その分、2つの半円像IA,IBから成る円像IMが小さくて済み、安価な設計が可能となる。
【0052】
第2のタイプのデジタル式プラネタリウム装置10の光学構成を、第4〜第6の実施の形態を例示して、更に詳しく説明する。図9〜図11に、第4〜第6の実施の形態の光学構成をそれぞれ示す。第4〜第6の実施の形態に用いられているビデオプロジェクタPA,PBには、第1のタイプ(図5〜図7)と同様、プリズムGA,GBが内蔵されている。ここでは、プリズムGA,GBとして照明光を反射させ投映光を透過させるTIRプリズム(図13)を想定している。ただし、使用されるプリズムGA,GBはこれに限らず、投映系や表示素子に適したPBS(偏光ビームスプリッター)プリズム又は3板式用プリズム(色分離・色合成用プリズム等)を1つ又は組み合わせて用いても構わない。また、単板式でプリズムを使用しないビデオプロジェクタの場合、プリズムGA,GBは無くてもよい。
【0053】
第4の実施の形態(図9)において、魚眼レンズGLは円像IM側に非テレセントリックであり、リレーレンズRA,RBの光軸XA,XBは魚眼レンズGLの光軸XGからシフトしているが、リレーレンズRA,RBの光軸XA,XBは表示素子DA,DBの中心にセットされている(つまり、リレーレンズRA,RBの光軸XA,XBと表示素子DA,DBの中心とが一致している。)。そのため、2つの半円像IA,IBはくの字状の円像IMを構成しているが、そのシンプルな構成により安価な設計が可能となる。また、魚眼レンズGLの光軸XGに対して半円像IA,IBが垂直に結像するように、リレーレンズRA,RBの光軸XA,XBと表示素子DA,DBの画像表示面の法線とが非平行に位置する構成にしてもよい。つまり、表示素子DA,DBを光軸XA,XBに対して垂直の状態から傾けることにより、魚眼レンズGLの光軸XGに対して垂直に半円像IA,IBを結像させれば、円像IMをくの字状から平面状に改善することができる。円像IMを平面状に形成することにより、画質を向上させることが可能となる。
【0054】
第5の実施の形態(図10)において、魚眼レンズGLは円像IM側に略テレセントリックであり、リレーレンズRA,RBの光軸XA,XBは魚眼レンズGLの光軸XGからシフトしているが、リレーレンズRA,RBの光軸XA,XBは表示素子DA,DBの中心にセットされている。リレーレンズRA,RBの光軸XA,XBが魚眼レンズGLの光軸XGからシフトしていても、円像IMの近傍に配置されている負パワーのフィールドレンズFLで光束を取り込むことにより、リレーレンズRA,RBと魚眼レンズGLとの光線角度をマッチングさせて、リレーレンズRA,RBからの光を効率的に魚眼レンズGLに導くことができる。さらに、魚眼レンズGLが円像IM側に略テレセントリックであるため、画像をきれいに繋げて明るさ効率を良くすることができる。
【0055】
第6の実施の形態(図11)では、リレーレンズRA,RBの光軸XA,XBと魚眼レンズGLの光軸XGとを一致させたまま、ミラーMRで円像IMよりもリレーレンズRA側の光路を折り曲げることにより、2つのリレーレンズRA,RBの光軸XA,XBが略直交するように光路を合成している。画像をきれいに繋げるには、ミラーMRのエッジ形状を狭い角度に設定するのが好ましいが、ミラーMRを薄くして実装するようにしてもよい。魚眼レンズGLは円像IM側に略テレセントリックであり、リレーレンズRA,RBは両側に略テレセントリックである。また、リレーレンズRA,RBの光軸XA,XBは表示素子DA,DBの中心にセットされており、リレーレンズRA,RBの光軸XA,XBと魚眼レンズGLの光軸XGとは一致している。第4の実施の形態では2つの半円像IA,IBでくの字状の円像IMが構成されるが、それに対し第6の実施の形態では、円像IMがフラットになるように一方の半円像IAの結像位置をミラーMRで調整している。このため、魚眼レンズGLもリレーレンズRA,RBも円像IM側に略テレセントリックであることが望ましい。なお、魚眼レンズGLが円像IM側にテレセントリックでない場合でも、リレーレンズRA,RBにおける円像IM側の光線角度をテレセントリックから崩してマッチングさせてもよい。
【0056】
第4〜第6の実施の形態のように、第2のタイプの光学構成はリレーレンズRA,RBの光軸XA,XBが表示素子DA,DBの中心に一致したシンプルな構成になっているため安価である。ただし、光束の取り込み効率(つまり明るさムラ対策)に関しては、第4の実施の形態が最も低く、第5,第6の実施の形態の順で改善される。
【0057】
上述したように、第1,第2のタイプのデジタル式プラネタリウム装置10は、2台のビデオプロジェクタPA,PBから成りそれぞれの内部の表示素子DA,DBに半円像IA,IBを生成する原像生成手段と、原像生成手段で生成された2つの半円像IA,IBを光学的に結像させて円像IMを生成する中間像生成手段と、中間像生成手段により生成された円像を投射する魚眼レンズGLと、を有することに特徴がある。この構成によると、原像生成手段において例えばアスペクト比=16:9のビデオプロジェクタ2台(PA,PB)のそれぞれで半円像IA,IBが生成され、その2つの半円像IA,IBが中間像生成手段による光学的な結像により円像IMとして合成される。その円像IMは、例えば、等距離射影等の射影方式を採用した魚眼レンズGLにより、ドーム全天に適した映像に変換されてドームスクリーン1(図1)上に投射される。2台のビデオプロジェクタPA,PBを使用する構成であるため、高解像度化が可能となり、それぞれの表示素子DA,DBに半円像IA,IBが生成されるため、使用するビデオプロジェクタPA,PBのアスペクト比が16:9であっても非投映領域は低減される。また、一方のビデオプロジェクタの輝度を基準にして他方のビデオプロジェクタの輝度を合わせ込むことができるので、輝度調整を容易に行うことができる。
【0058】
第3のタイプのデジタル式プラネタリウム装置10は、図12に示すように、2台のビデオプロジェクタp1,p2を投映部3に有しており、その光射出側に配置された1つの魚眼レンズ部4でドームスクリーン1(図1)上に映像を投映する構成になっている。原像生成手段に相当する2台のビデオプロジェクタp1,p2は、それぞれ内部に表示素子d1r,d1g,d1b;d2r,d2g,d2bと、クロスダイクロイックプリズムcx1,cx2と、を有している。図12に示すビデオプロジェクタp1,p2では、表示素子d1r,d1g,d1b;d2r,d2g,d2bとして透過型のLCDを想定しているが、デジタル・マイクロミラー・デバイス,反射型のLCD等の表示素子、又はEL素子等の自発光型表示素子を有するビデオプロジェクタp1,p2を用いてもよい。
【0059】
各表示素子d1r,d1g,d1b;d2r,d2g,d2bでは、R・G・Bの各色の画像表示に対応した半円像が、第1,第2の実施の形態と同様に生成される。魚眼レンズ部4は、2つの偏光変換素子q1,q2と、2つの後レンズ群gR1,gR2と、1つの偏光ビームスプリッターspと、1つの前レンズ群gFと、を有しており、1つの前レンズ群gFと2つの後レンズ群gR1,gR2とで魚眼レンズを構成している。なお、魚眼レンズは透過型光学素子としてのレンズのみから成る光学系に限らず、ミラー等の反射型光学素子を含む光学系,回折レンズ等の回折型光学素子を含む光学系等であってもよい。
【0060】
第3のタイプのデジタル式プラネタリウム装置10は、リレーレンズを持たないタイプになっている。したがって、ビデオプロジェクタp1,p2で生成された2つの半円像は、中間像を形成することなく、前レンズ群gFと後レンズ群gR1,gR2から成る魚眼レンズでドームスクリーン1に拡大投映される。つまり、表示素子d1r,d1g,d1bで生成されるR・G・Bの各色の画像表示に対応した3つの半円像と、表示素子d2r,d2g,d2bで生成されるR・G・Bの各色の画像表示に対応した3つの半円像と、でR・G・Bの各色の画像表示に対応した2つの半円像から成る1つの円像がドームスクリーン1上に形成されることになる。このとき、2つの半円像が1つの円像として繋ぎ合わされて結像するように、前レンズ群gFと後レンズ群gR1,gR2との間で2つの半円像の光路が合成される。
【0061】
上記半円像の光路合成は、前レンズ群gFと後レンズ群gR1,gR2との間に配置されている偏光ビームスプリッターspで行われる。2つの半円像が1つの円像として繋ぎ合わされて結像するように、偏光ビームスプリッターspに対し2台のビデオプロジェクタp1,p2は互いにズレた位置に配置されている。また、偏光ビームスプリッターspは、その偏光分離面に対し、P偏光を透過させS偏光を反射させる特性を有している。このため、後レンズ群gR1からはP偏光が入射するように、ビデオプロジェクタp1からの光をP偏光に統一する偏光変換素子q1が配置されている。また、後レンズ群gR2からはS偏光が入射するように、ビデオプロジェクタp2からの光をS偏光に統一する偏光変換素子q2が配置されている。
【0062】
例えば、表示素子d1r,d1g,d1b;d2r,d2g,d2bとしてLCDを用いたビデオプロジェクタp1,p2において、GのみP偏光を射出し、R・BでS偏光を射出する構成を採用した場合には、ビデオプロジェクタp1からのR・BのS偏光を偏光変換素子q1で波長選択的にP偏光に変換し、ビデオプロジェクタp2からのGのP偏光を偏光変換素子q2で波長選択的にS偏光に変換すればよい。また、P偏光のみを射出するビデオプロジェクタp1,p2を用いた場合には、1/2波長板の機能を有する偏光変換素子q2のみを配置することにより、後レンズ群gR1にP偏光のみが入射し、後レンズ群gR2にS偏光のみが入射するようにすればよい。逆に、S偏光のみを射出するビデオプロジェクタp1,p2を用いた場合には、1/2波長板の機能を有する偏光変換素子q1のみを配置することにより、後レンズ群gR1にP偏光のみが入射し、後レンズ群gR2にS偏光のみが入射するようにすればよい。
【0063】
表示素子d1r,d1g,d1b;d2r,d2g,d2bとしてデジタル・マイクロミラー・デバイスを用いた場合でも、上記LCDを用いた場合と同様である。後レンズ群gR1からP偏光が射出するようにビデオプロジェクタp1からの光をP偏光に統一する偏光変換素子q1を配置し、後レンズ群gR2からS偏光が射出するようにビデオプロジェクタp2からの光をS偏光に統一する偏光変換素子q2を配置すればよい。なお、2つの半円像が1つの円像として繋ぎ合わされて結像するように、前レンズ群と後レンズ群との間で2つの半円像の光路を合成する画像合成手段として、偏光分離特性を有する他の光学素子を偏光ビームスプリッターspの代わりに用いてもよく、光量を所定の割合で反射光と透過光とに分割するハーフミラーを用いてもよい。
【0064】
上述したように、第3のタイプのデジタル式プラネタリウム装置10は、2台のビデオプロジェクタp1,p2から成りそれぞれの内部の表示素子d1r,d1g,d1b;d2r,d2g,d2bに半円像を生成する原像生成手段と、拡大側から順に前レンズ群gF及び後レンズ群gR1,gR2から成り原像生成手段で生成された2つの半円像を投射する魚眼レンズと、2つの半円像が1つの円像として繋ぎ合わされて結像するように、前レンズ群gFと後レンズ群gR1,gR2との間で2つの半円像の光路を合成する画像合成手段と、を有することに特徴がある。この構成によると、原像生成手段において例えばアスペクト比=16:9のビデオプロジェクタ2台(p1,p2)のそれぞれで半円像が生成され、その2つの半円像が魚眼レンズにより投射される。魚眼レンズを構成する前レンズ群gFと後レンズ群gR1,gR2との間では、画像合成手段により2つの半円像の光路が合成され、それによって2つの半円像が1つの円像として繋ぎ合わされて結像する。その際、円像を構成する各半円像は、例えば、等距離射影等の射影方式を採用した魚眼レンズにより、ドーム全天に適した映像に変換されてドームスクリーン1(図1)上に投射される。2台のビデオプロジェクタp1,p2を使用する構成であるため、高解像度化が可能となり、それぞれの表示素子d1r,d1g,d1b;d2r,d2g,d2bに半円像が生成されるため、使用するビデオプロジェクタp1,p2のアスペクト比が16:9であっても非投映領域は低減される。また、一方のビデオプロジェクタの輝度を基準にして他方のビデオプロジェクタの輝度を合わせ込むことができるので、輝度調整を容易に行うことができる。
【0065】
第1〜第3のいずれのタイプの光学構成を採用した場合でも、投映方式が単眼式でありながら高解像度化を達成することが可能であり、しかもビデオプロジェクタで生成される画像領域を増やして画像表示面(例えば、アスペクト比=16:9)を有効活用することが可能である。魚眼レンズが1個で済むため、低コスト化にも寄与することができる。第1又は第2のタイプの光学構成では中間像(円像IM)前までの光学系とそれ以降の魚眼レンズを構成する光学系とを個別化することができ、第3のタイプの光学構成では前レンズ群と後レンズ群とを個別化することができるので、ビデオプロジェクタの種類が互いに異なっても柔軟な設計変更が可能であり、更なるコスト低減が可能である。また、ビデオプロジェクタの調整作業に関しても、2台のビデオプロジェクタについてのみ調整を行えば済む。つまり、従来の分割投映方式のデジタル式プラネタリウムでは1台のビデオプロジェクタを基準にして複数台のビデオプロジェクタを調整する必要があったが、一方のビデオプロジェクタの輝度や映像を基準にして、他方のビデオプロジェクタを調整するだけでよいため、煩雑な調整作業は必要ない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】デジタル式プラネタリウム全体の概略構成例を示す模式図。
【図2】図1中のデジタル式プラネタリウム装置の制御構成例を示すブロック図。
【図3】第1のタイプのデジタル式プラネタリウム装置の概略光学構成を示す図。
【図4】図3中の1台のビデオプロジェクタの原板イメージを示す図。
【図5】第1の実施の形態の光学構成図。
【図6】第2の実施の形態の光学構成図。
【図7】第3の実施の形態の光学構成図。
【図8】第2のタイプのデジタル式プラネタリウム装置の概略光学構成を示す図。
【図9】第4の実施の形態の光学構成図。
【図10】第5の実施の形態の光学構成図。
【図11】第6の実施の形態の光学構成図。
【図12】第3のタイプのデジタル式プラネタリウム装置の概略光学構成を示す図。
【図13】TIRプリズムの単板式システム構成例を示す図。
【図14】第3の実施の形態においてプリズムからビデオプロジェクタまでを魚眼レンズ側に少しだけシフトさせたときの光路変化を示す光学構成図。
【図15】図14中のT部の拡大図。
【符号の説明】
【0067】
1 ドームスクリーン
2 再生部
3 投映部
3a,3b リレーレンズ部(中間像生成手段)
4 魚眼レンズ部(魚眼レンズ)
10 プラネタリウム装置
IM 円像
IA,IB 半円像
PA,PB ビデオプロジェクタ(原像生成手段)
DA,DB 表示素子(原像生成手段)
GA,GB プリズム(原像生成手段)
RA,RB リレーレンズ(第1,第2のリレーレンズ;中間像生成手段)
FL フィールドレンズ(中間像生成手段)
PR プリズム(中間像生成手段)
MR ミラー(中間像生成手段)
GL 魚眼レンズ
p1,p2 ビデオプロジェクタ(原像生成手段)
d1r,d1g,d1b;d2r,d2g,d2b 表示素子(原像生成手段)
cx1,cx2 クロスダイクロイックプリズム(原像生成手段)
q1,q2 偏光変換素子(第1,第2の偏光変換素子)
sp 偏光ビームスプリッター(画像合成手段)
gF 前レンズ群(魚眼レンズ)
gR1,gR2 後レンズ群(第1,第2の後レンズ群;魚眼レンズ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2台のビデオプロジェクタから成りそれぞれの内部の表示素子に半円像を生成する原像生成手段と、前記原像生成手段で生成された2つの半円像を光学的に結像させて円像を生成する中間像生成手段と、前記中間像生成手段により生成された円像を投射する魚眼レンズと、を有することを特徴とするデジタル式プラネタリウム装置。
【請求項2】
前記中間像生成手段が、一方のビデオプロジェクタ内部の表示素子で生成された半円像を光学的に結像させる第1のリレーレンズと、他方のビデオプロジェクタ内部の表示素子で生成された半円像を光学的に結像させる第2のリレーレンズと、を含み、各リレーレンズの光軸が各表示素子の中心からシフトしていることを特徴とする請求項1記載のデジタル式プラネタリウム装置。
【請求項3】
前記第1,第2のリレーレンズの光軸と前記魚眼レンズの光軸とが一致していることを特徴とする請求項2記載のデジタル式プラネタリウム装置。
【請求項4】
前記中間像生成手段が、一方のビデオプロジェクタ内部の表示素子で生成された半円像を光学的に結像させる第1のリレーレンズと、他方のビデオプロジェクタ内部の表示素子で生成された半円像を光学的に結像させる第2のリレーレンズと、を含み、各リレーレンズの光軸と各表示素子の中心とが一致していることを特徴とする請求項1記載のデジタル式プラネタリウム装置。
【請求項5】
前記中間像生成手段が、第1のリレーレンズにより形成される半円像と第2のリレーレンズにより形成される半円像とが平面状に合成されるように、それぞれのビデオプロジェクタ内部の表示素子を各リレーレンズの光軸に対し傾斜させることを特徴とする請求項4記載のデジタル式プラネタリウム装置。
【請求項6】
前記中間像生成手段が、前記第1,第2のリレーレンズによる半円像の結像位置又はその近傍にフィールドレンズ,ミラー又はプリズムを有することを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のデジタル式プラネタリウム装置。
【請求項7】
前記魚眼レンズが円像側に略テレセントリックであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のデジタル式プラネタリウム装置。
【請求項8】
前記第1,第2のリレーレンズが中間像側に略テレセントリックであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のデジタル式プラネタリウム装置。
【請求項9】
2台のビデオプロジェクタから成りそれぞれの内部の表示素子に半円像を生成する原像生成手段と、拡大側から順に前レンズ群及び後レンズ群から成り前記原像生成手段で生成された2つの半円像を投射する魚眼レンズと、前記2つの半円像が1つの円像として繋ぎ合わされて結像するように、前記前レンズ群と後レンズ群との間で前記2つの半円像の光路を合成する画像合成手段と、を有することを特徴とするデジタル式プラネタリウム装置。
【請求項10】
前記画像合成手段が偏光ビームスプリッターであり、前記後レンズ群が一方のビデオプロジェクタ側に位置する第1の後レンズ群と他方のビデオプロジェクタ側に位置する第2の後レンズ群とから成り、第1の後レンズ群からP偏光が射出するように一方のビデオプロジェクタからの光をP偏光に統一する第1の偏光変換素子と、第2の後レンズ群からS偏光が射出するように他方のビデオプロジェクタからの光をS偏光に統一する第2の偏光変換素子と、を更に有することを特徴とする請求項9記載のデジタル式プラネタリウム装置。
【請求項11】
2台のビデオプロジェクタから成りそれぞれの内部の表示素子に半円像を生成する原像生成手段と、前記原像生成手段で生成された2つの半円像を光学的に結像させて円像を生成する中間像生成手段と、前記中間像生成手段により生成された円像をドームスクリーンに投射する魚眼レンズと、を有することを特徴とするドーム映像装置。
【請求項12】
2台のビデオプロジェクタから成りそれぞれの内部の表示素子に半円像を生成する原像生成手段と、拡大側から順に前レンズ群及び後レンズ群から成り前記原像生成手段で生成された2つの半円像をドームスクリーンに投射する魚眼レンズと、前記2つの半円像が1つの円像として繋ぎ合わされて結像するように、前記前レンズ群と後レンズ群との間で前記2つの半円像の光路を合成する画像合成手段と、を有することを特徴とするドーム映像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−187695(P2007−187695A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−3194(P2006−3194)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(595086410)コニカミノルタプラネタリウム株式会社 (13)
【Fターム(参考)】