説明

デジタル放送信号処理装置及びデジタル信号処理方法

【課題】複数の放送TS信号に対するTS処理及びFEC処理を、一系統のハードウェアで実施することが可能なデジタル放送信号処理装置及びこの装置で用いられるデジタル信号処理方法を提供する。
【解決手段】放送TS信号を複数チャンネルからフレーム単位で受信するデジタル放送信号処理装置は、多重化処理部、FEC処理部、連結処理部、OFDM変調部を具備する。多重化処理部は、指示ビットを複数のチャンネルからの放送TS信号の有効パケットに付加して放送TS信号を多重する。FEC処理部は、多重化処理部からの多重信号に含まれる有効パケットに付加された指示ビットを参照して有効パケットのチャンネルを判断し、チャンネル毎にFEC符号化を行う。連結処理部は、FEC符号化が終了した信号を前記チャンネル毎に連結する。OFDM変調部は、連結信号に対してOFDM変調を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、複数チャンネルの放送TS(Transport Stream)信号を受信し、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)処理して出力するデジタル放送信号処理装置及びこの装置で用いられるデジタル信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地上デジタル音声システム(実用化試験放送)において、デジタル放送信号処理装置は、複数チャンネルの放送TS信号を受信し、受信した放送TS信号についてのTS処理及びFEC(Forward Error Correction)処理を、それぞれ個別のハードウェアで行う。そして、デジタル放送信号処理装置は、FEC処理後の信号を連結し、IFFT以降のOFDM化を行うようにしている。
【0003】
ところで、1セグ放送、3セグ放送を行う地上デジタル音声システムでは、放送TS信号は、1フレーム中に有効パケットと、ヌルパケットと称される固定の信号を含んでいる。有効パケットの容量は、1フレームのデータ容量の10分の1以下である。なおヌルパケットは、FEC処理の段階で除去される。
【0004】
しかしながら、1フレーム中の有効パケットが少ない放送TS信号に対して、チャンネル毎に個別のハードウェアでTS処理及びFEC処理を行うということは、1セグ放送、3セグ放送を行う地上デジタル音声システムのハードウェア構成の上で非効率であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−117243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように、1セグ放送、3セグ放送を行う地上デジタル音声システムにおける従来のデジタル放送信号処理装置は、放送TS信号に含まれる有効パケットが少ないにも関らず、チャンネル毎に個別のハードウェアでFEC処理等を行っているため、非効率であるという問題があった。
【0007】
そこで、目的は、複数の放送TS信号に対するTS処理及びFEC処理を、一系統のハードウェアで実施することが可能なデジタル放送信号処理装置及びこの装置で用いられるデジタル信号処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、ヌルパケットと有効パケットとを含む放送TS(Transport Stream)信号を、複数チャンネルからフレーム単位で受信するデジタル放送信号処理装置は、多重化処理部、FEC処理部、連結処理部、OFDM変調部を具備する。多重化処理部は、いずれのチャンネルからのパケットであるかを示す指示ビットを、前記複数のチャンネルからの放送TS信号の有効パケットに付加し、前記指示ビットを付加した有効パケットを含む放送TS信号を、前記ヌルパケットを置き換えるように多重して多重信号として出力する。FEC処理部は、前記多重信号に含まれる有効パケットに付加された指示ビットを参照して有効パケットのチャンネルを判断し、前記チャンネル毎にFEC(Forward Error Correction)符号化を行う。連結処理部は、前記FEC符号化が終了した信号を前記チャンネル毎に連結して出力する。OFDM変調部は、前記連結処理部からの連結信号に対してOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調を行う。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係るデジタル放送信号処理装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】図1のデジタル放送信号処理装置による信号処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】図1の多重化処理部が受け取る、1フレーム分の放送TS信号を示す図である。
【図4】図1の多重化処理部からTS処理部へ出力される多重信号を示す図である。
【図5】図1の連結処理部からOFDM変調部へ出力される連結信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係るデジタル放送信号処理装置の機能構成を示すブロック図である。図1に示すデジタル放送信号処理装置は、1セグ放送、3セグ放送を行う地上デジタル音声システムで用いられる。デジタル放送信号処理装置は、多重化処理部10、TS(Transport Stream)処理部20、FEC(Forward Error Correction)処理部30、連結処理部40及びOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調部50を具備する。
【0012】
多重化処理部10には、8チャンネルの放送TS信号が並列して供給される。放送TS信号は、モード3、ガードインターバル比1/16の場合、1フレーム当り4352パケットのパケットデータを有する。パケットデータには、有効パケット、ヌルパケット及びIIP(ISDB-T Information Packet)が含まれる。ヌルパケットは、固定の信号が格納されたパケットデータである。IIPは、FEC処理部30及びOFDM変調部50でのOFDM変調で用いられる変調情報及びインタリーブ情報等の管理情報が格納される情報パケットである。
【0013】
多重化処理部10は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)及び汎用メモリにより実現される。多重化処理部10は、各チャンネルからの放送TS信号1〜8を受け取り、供給された放送TS信号1〜8に含まれるパケットデータのうち、有効パケットにレイヤインジケータを付加する。レイヤインジケータは、パケットデータがいずれのチャンネルから供給されたのかを示す指示ビットであり、有効パケットにおける所定の位置に4ビットで付加される。
【0014】
多重化処理部10は、レイヤインジケータを有効パケットに付加した後、複数のチャンネルからの放送TS信号を多重し、一つの多重信号を生成する。このとき、多重化処理部10は、予め設定された多重フレームに基づいて、放送TS信号を時間的に多重するため、放送TS信号1〜8に含まれるヌルパケットのうちいくつかは除去されることとなる。また、IIPは、多重信号における予め設定した位置にまとめて配置する。多重化処理部10は、多重信号をTS処理部20へ出力する。
【0015】
TS処理部20は、多重化処理部10からの多重信号に含まれるチャンネル毎のIIPから、チャンネル毎の管理情報を読み出す。
【0016】
FEC処理部30は、TS処理部20から多重信号を受け取り、多重信号の有効パケットに付加されたレイヤインジケータを参照し、有効パケット毎のチャンネルを判断し、チャンネル毎にFEC処理を行う。
【0017】
連結処理部40は、FEC処理後の信号を連結して出力する。
【0018】
OFDM変調部50は、連結処理部40からの信号に対してOFDM変調を行う。
【0019】
次に、以上のように構成されたデジタル放送信号処理装置による信号処理を詳細に説明する。図2は、本実施形態に係るデジタル放送信号処理装置による信号処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0020】
まず、デジタル放送信号処理装置は、多重化処理部10により、各チャンネルから放送TS信号1〜8を受け取る(ステップS21)。図3は、多重化処理部10が受け取る、1フレーム分の放送TS信号1〜8の模式図を示す。それぞれの放送TS信号には、IIP、有効パケット及びヌルパケットが含まれる。図3において、放送TS信号1は有効パケット1−1,1−2,…,1−nを有し、放送TS信号2は有効パケット2−1,2−2,…,2−nを有する。その他の放送TS信号も同様に有効パケットを有する。
【0021】
多重化処理部10は、放送TS信号1〜8を受け取ると、放送TS信号に含まれる有効パケットに対してレイヤインジケータを順次付加する(ステップS22)。多重化処理部10は、レイヤインジケータを付加した後、予め設定された多重フレームに従い、放送TS信号1〜8に基づいて一つの多重信号を生成する(ステップS23)。図4は、多重化処理部10からTS処理部20へ出力される多重信号の一例を示す模式図である。図4に示す多重信号では、有効パケット1−1,1−2,…,1−nのように、各チャンネルからの有効パケットが順番に配置される。なお、図4においては、多重信号の一番最後に各チャンネルのIIPがまとめて配置されるとする。
【0022】
TS処理部20は、図4に示す多重信号から、IIPに格納されている管理情報を読み出す(ステップS24)。このとき、TS処理部20は、チャンネル毎のIIPからチャンネル毎の管理情報を読み出す。FEC処理部30は、TS処理後の多重信号を受け取り、多重信号に含まれる有効パケットそれぞれに対してFEC符号化を行う(ステップS25)。
【0023】
連結処理部40は、FEC符号化後の信号を受け取り、チャンネル毎に連結して出力する(ステップS26)。図5は、連結処理部40からOFDM変調部50へ出力される連結信号の一例を示す模式図である。
【0024】
OFDM変調部50は、図5に示す連結信号を受け取り、その信号に対してOFDM変調を行う(ステップS27)。
【0025】
以上のように、上記実施形態では、放送TS信号の1フレーム中の有効パケットの容量が10分の1以下であることを利用し、放送TS信号1〜8を時間的に多重する。そして、1つのまとめた多重信号に対して、時分割でTS処理及びFEC処理を行うようにしている。これにより、放送TS信号1〜8に対するTS処理及びFEC処理を、一系統のハードウェアで実施することが可能となる。
【0026】
したがって、本実施形態に係るデジタル放送信号処理装置によれば、1セグ放送、3セグ放送を行う地上デジタル音声システムにおいて、ハードウェア構成を簡略化でき、省スペース化及び省電力化を図ることができる。
【0027】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0028】
10…多重化処理部
20…TS処理部
30…FEC処理部
40…連結処理部
50…OFDM変調部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヌルパケットと有効パケットとを含む放送TS(Transport Stream)信号を、複数チャンネルからフレーム単位で受信するデジタル放送信号処理装置において、
いずれのチャンネルからのパケットであるかを示す指示ビットを、前記複数のチャンネルからの放送TS信号の有効パケットに付加し、前記指示ビットを付加した有効パケットを含む放送TS信号を、前記ヌルパケットを置き換えるように多重して多重信号として出力する多重化処理部と、
前記多重信号に含まれる有効パケットに付加された指示ビットを参照して有効パケットのチャンネルを判断し、前記チャンネル毎にFEC(Forward Error Correction)符号化を行うFEC処理部と、
前記FEC符号化が終了した信号を前記チャンネル毎に連結して出力する連結処理部と、
前記連結処理部からの連結信号に対してOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調を行うOFDM変調部と
を具備することを特徴とするデジタル放送信号処理装置。
【請求項2】
前記放送TS信号は、OFDM変調に必要な管理情報が格納される情報パケットをさらに含み、
前記多重信号に含まれる情報パケットからチャンネル毎の管理情報を読み出すTS処理部をさらに具備し、
前記OFDM化処理部は、前記チャンネル毎の管理情報に基づいて、前記チャンネル毎の有効パケットに対してOFDM変調を行うことを特徴とする請求項1記載のデジタル放送信号処理装置。
【請求項3】
前記放送TS信号は、1セグ放送を行う地上デジタル音声システムにおいて伝送されることを特徴とする請求項1及び2のいずれかに記載のデジタル放送信号処理装置。
【請求項4】
前記放送TS信号は、3セグ放送を行う地上デジタル音声システムにおいて伝送されることを特徴とする請求項1及び2のいずれかに記載のデジタル放送信号処理装置。
【請求項5】
ヌルパケットと有効パケットとを含む放送TS(Transport Stream)信号を、複数チャンネルからフレーム単位で受信するデジタル放送信号処理装置で用いられるデジタル信号処理方法において、
いずれのチャンネルからのパケットであるかを示す指示ビットを、前記複数のチャンネルからの放送TS信号の有効パケットに付加し、
前記指示ビットを付加した有効パケットを含む放送TS信号を、前記ヌルパケットを置き換えるように多重して多重信号として出力し、
前記多重信号に含まれる有効パケットに付加された指示ビットを参照して有効パケットのチャンネルを判断し、
チャンネル毎にFEC(Forward Error Correction)符号化を行い、
前記FEC符号化が終了した信号を前記チャンネル毎に連結して出力し、
前記連結した信号に対してOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調を行うことを特徴とするデジタル放送信号処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−195865(P2012−195865A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59720(P2011−59720)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】