説明

デジタル放送受信装置及びデジタル放送受信方法

【課題】デジタル放送によって伝送される緊急地震速報を極力遅延なく再生することが可能なデジタル放送受信装置及びデジタル放送受信方法の詳細動作を提供する。
【解決手段】伝送信号を受信する受信部と、前記受信部で受信された伝送信号からデジタル放送信号を復調し、出力する第1の復調部と、前記受信部で受信された伝送信号からAC信号を復調する第2の復調部と、前記第2の復調部で復調されたAC信号を受信し、地震動警報情報信号を抽出する地震動警報情報抽出部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル放送によって伝送される緊急情報の送信技術、受信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、デジタル放送送信信号に含まれる緊急警報放送用起動フラグを監視して、緊急警報放送用起動フラグが「1」となれば、強制的にサービスの切り替えや、待機状態から通常の通電状態へ移行などにより、視聴者に素早く緊急警報放送を提供することを可能としている。(特許文献1を参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−333512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、緊急警報放送を監視していわゆるスタンバイ状態での低消費電力化について開示されている。
【0005】
しかしながら、緊急警報放送用起動フラグで起動される緊急警報放送は、送信側で緊急警報放送信号が圧縮符号化されており、再生するには受信機側で伸張復号化処理を行なう必要があった。このため、緊急警報放送を再生するまでに圧縮伸長分の遅延時間が生じていた。
【0006】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、デジタル放送によって伝送される緊急地震速報を極力遅延なく再生することが可能なデジタル放送受信装置及びデジタル放送受信方法の詳細動作を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、例えば、特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、極力遅延なく緊急地震速報を再生するとことが可能なデジタル放送受信装置及びデジタル放送受信方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1及び第2の実施形態に係る地震動警報情報を受信することが可能なデジタル放送受信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明のデジタル放送受信装置が受信するデジタル放送を送信するデジタル放送送信装置の一実施例を示すブロック図である。
【図3】地震動警報情報受信部121で受信する地震動警報情報の構成を示す説明図である。
【図4】地震動警報情報受信部121で受信する地震動警報情報の構成を示す説明図である。
【図5】地震動警報情報受信部121で受信する地震動警報情報の構成を示す説明図である。
【図6】地震動警報情報受信部121で受信する地震動警報情報の構成を示す説明図である。
【図7】地震動警報情報受信部121で受信する地震動警報情報の構成を示す説明図である。
【図8】地震動警報情報受信部121で受信する地震動警報情報の構成を示す説明図である。
【図9】地震動警報情報受信部121で受信する地震動警報情報の構成を示す説明図である。
【図10】地震動警報情報受信部121で受信する地震動警報情報の構成を示す説明図である。
【図11】地震動警報情報受信部121で受信する地震動警報情報の構成を示す説明図である。
【図12】地震動警報情報受信部121で受信する地震動警報情報の構成を示す説明図である。
【図13】本発明の第3の実施形態に係る地震動警報情報を受信することが可能なデジタル放送受信装置の構成を示すブロック図である。
【図14】記憶演算部127における時刻情報の処理方法を示す説明図である。
【図15】本発明の第3の実施形態に係る地震動警報情報を受信することが可能なデジタル放送受信装置において、2つの地上デジタル放送受信部を有する場合の構成を示すブロック図である。
【図16】本発明の第4の実施形態に係る地震動警報情報を受信することが可能なデジタル放送受信装置の構成を示すブロック図である。
【図17】複数チャンネルが再送信攻撃を受けている様子を示すチャンネル配置図である。
【図18】BS・広帯域CSデジタル放送受信部1801を備えたデジタル放送受信装置の構成を示すブロック図である。
【図19】本発明のデジタル放送受信装置で受信されるデジタル放送の説明図である。
【図20】本発明のデジタル放送受信装置で受信されるデジタル放送の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して詳述する。なお、図面において同一符号は同一または相当部分を示す。
【実施例1】
【0011】
図1は本発明に係る実施形態1におけるセグメント番号#0に含まれるAC信号を用いて伝送された地震動警報情報を受信するデジタル放送受信装置の構成を示すブロック図である。
【0012】
また、図2に本発明のデジタル放送受信装置が受信するデジタル放送を送信するデジタル放送送信装置の一実施例のブロック図を示す。
【0013】
本デジタル放送方式では、複数のMPEG−2トランスポートストリーム(MPEG-2 Transport Stream、以下、TSとする)を再多重により一つのTSとし、伝送路符号化処理を施した後、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)により複数のサブキャリアからなるOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)送信信号に一括して変換し、放送波として送信する。
【0014】
ここで、本デジタル放送方式におけるOFDM送信信号は、伝送帯域幅6MHzを14等分したOFDMセグメントを13個連結した構成となっており、OFDMセグメントを単位として最大3階層までの階層伝送が可能となっている。また、OFDM送信信号の13セグメントの内、中央のセグメント(セグメント番号#0)は、携帯電話などの移動受信機での受信を想定した部分受信階層として設定できる。図19にセグメント構造を示す。なお、OFDM送信信号の13セグメント全てを受信可能な受信機を13セグメント受信機、OFDM送信信号の中央の1セグメントを受信可能な受信機をワンセグメント受信機と呼ぶ。
【0015】
本デジタル放送方式では、システム識別、伝送パラメータ切替指標、緊急警報放送用起動フラグ、各階層の伝送パラメータなど、受信機の復調動作を円滑に行なうための制御情報を伝送するTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)信号と、変調波の伝送制御に関する付加情報を伝送するための拡張用信号であるAC(Auxiliary Channel)信号が付加されたフレーム構成となっている。このフレーム構成を図20に示す。図20において、OFDMサブキャリアとして付加されるTMCC信号とAC信号のキャリア位置及びキャリア本数は、伝送パラメータによって異なる。詳細は後述する。
【0016】
ここで、TMCCによって伝送される緊急警報放送用起動フラグにより起動される緊急警報放送(EWS:Emergency Warning System)とは、地震発生による津波警報などが発令された場合に、視聴者に緊急情報をより早く知らせるために利用されているものである。緊急警報放送を運用する場合、放送局がTMCC信号に含まれる緊急警報放送用起動フラグを「ON」として、緊急警報放送と認識できるコンテンツで放送を実施する。
【0017】
更に高度化された緊急情報を伝送するシステムとして、気象庁が発表する緊急地震速報(EEW:Earthquake Early Warning)がある。緊急地震速報とは、地震の発生直後に、震源に近い地震計でとらえた初期微動(いわゆるP波)と主要動(いわゆるS波)を解析して震源や地震の規模を直ちに推定し、これに基づいて各地での主要動の震度を推定し、可能な限り素早く知らせる情報である。また、緊急地震速報では、強い揺れが到着する前に知らせることで、視聴者に対して周囲の状況に応じて慌てずに身の安全を確保することを目的としている。この緊急地震速報をセグメント番号#0に含まれるAC信号を用いて伝送する。
【0018】
なお、一般には緊急地震速報という名称が用いられるが、省令告示では地震動警報情報という名称が使われており、今後は「地震動警報情報」を用いる。
【0019】
地震動警報情報とは、気象業務法(昭和27年法律第165号)第13条第1項の規定により行われる地震動警報に関する情報のことである。
【0020】
図2を用いて、本デジタル放送方式を実現するデジタル伝送送信装置の動作を説明する。
201は情報源符号化部、202はMPEG2多重化部、203はTS再多重部、204はRS(リード・ソロモン)符号化部、205は階層分割部である。206は並列処理部であり、a、b、cの3系統ある。207は階層合成部、208は時間インタリーブ部、209は周波数インターリーブ部、210はOFDMフレーム構成部、211は逆高速フーリエ変換(以下、IFFT)部、212はガードインターバル付加部、213は送信部、214はパイロット信号構成部、215はTMCC信号構成部、216はAC信号構成部である。
【0021】
本デジタル放送方式は、MPEG2 Systemsで規定されるトランスポートストリーム(TS)を1つ若しくは複数の入力を再多重により1つのTSとし、サービス意図に応じて複数の伝送路符号化を施した後、最終的に1つのOFDM信号として送信する。テレビジョン放送の送信スペクトルは、テレビジョン放送のチャンネル帯域幅を14等分したOFDMブロック(以下OFDMセグメントと呼ぶ)を13個連ねて構成される。OFDMセグメントのキャリア構成を複数セグメントの連結が可能なように構造化することにより、メディアに適した伝送帯域幅をセグメント幅単位で実現できる。伝送路符号化はOFDMセグメントを単位に行われるので、1テレビジョンチャンネルの中で一部を固定受信サービス、残りを移動体受信サービスとすることができる。このような伝送を階層伝送と定義する。各階層は、1つまたは複数のOFDMセグメントにより構成され、階層ごとにキャリア変調方式、内符号の符号化率、および時間インターリーブ長等のパラメータを設定することができる。なお、可能な階層数は最大3レベルまでであり、部分受信についても1つの階層として数える。各階層のセグメント数や伝送路符号化パラメータは編成情報に従って決められ、また、受信機の動作を補助する制御情報としてTMCC信号によって伝送される。13セグメントで構成されるテレビジョン放送信号の中央部のOFDMセグメントについては、そのセグメント内のみの周波数インターリーブを行う伝送路符号化が可能である。これにより、テレビジョンサービスの一部を部分的に受信することができる。
【0022】
SFNの置局間距離への適合性、或いは、移動受信におけるドップラーシフトへの耐性を考慮し、本デジタル放送方式は3つの異なるOFDMキャリア間隔を備えている。これらはシステムのモードとして識別される。キャリア間隔は、モード1では約4kHz、モード2では約2kHz、モード3では約1kHz である。モードに応じてキャリア数は異なるが、どのモードにおいても伝送可能な情報ビットレートは同じである。
【0023】
情報源符号化部201で映像信号、音声信号、データがそれぞれ符号化され、MPEG2多重化部202で一つのTSが生成される。複数のMPEG2多重化部から出力された複数のTSは、データセグメント単位の信号処理に適した配置とするためTS再多重部203に入力される。TS再多重部203において、IFFTサンプルクロックの4倍のクロックにより188バイト単位のバースト信号形式に変換され、RS符号化部204でリード・ソロモン外符号が付加されると共に単一のTSに変換される。その後、階層伝送を行う場合には、階層情報の指定に沿って階層分割部205で階層分割され、最大3系統の並列処理部206a、b、cに入力される。並列処理部206a、b、cにおいては、それぞれ、主として誤り訂正符号化、インターリーブ等のデジタルデータ処理、キャリア変調が施される。また、バイトインターリーブとビットインターリーブの時間軸操作で生じる階層間の遅延時間差に対して予め遅延補正を行い、タイミング調整を図っている。誤り訂正、インターリーブ長、キャリア変調方式はそれぞれの階層で独立に設定される。並列処理部206a、b、cでの並列処理の後、階層合成部207で階層合成された信号は、移動受信における電界変動やマルチパス妨害に対して、誤り訂正符号化の能力を有効に発揮させるため時間インターリーブ部208及び周波数インターリーブ部209に入力される。時間インターリーブの方式は、送受あわせた遅延時間を短縮し受信機のメモリー容量を抑えるため畳み込みインターリーブである。また、周波数インターリーブ部は、セグメント構造を確保しつつ、十分なインターリーブ効果が発揮できるよう、セグメント間とセグメント内のインターリーブを組み合わせて構成されている。
【0024】
複数の伝送パラメータが混在する階層伝送に対して、受信機の復調・復号を補助するため、制御情報としてTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)信号が特定のキャリアを用いて伝送される。また、放送に関する付加情報を伝送するため、特定のキャリアに割り当てられたAC(Auxiliary Channel)信号が用いられる。
【0025】
OFDMフレーム構成部210では、周波数インターリーブ部209からの情報データ、パイロット信号構成部214からの同期再生用パイロット信号、TMCC構成部215からのTMCC信号、および、AC信号構成部216からのAC信号によりOFDMフレームが構成される。このフレーム構成を図20に示す。Si,jはインターリーブ後のデータセグメント内のキャリアシンボルを表す。SP(Scattered Pilot)は受信機が準同期検波を行なうための基準パイロットシンボルである。図20に示すとおり、キャリア方向に12キャリアに1回、シンボル方向に4シンボルに1回挿入される。受信側でSPをシンボル方向に補間すれば、3(12/4)キャリア間隔のSPを得ることができる。ガードインターバル長の最大値が有効シンボル長の1/4であることから、3キャリア間隔のSPによる補間処理(伝送路特性推定)により、シンボル間干渉を生じない最大遅延時間までのマルチパスに対応することが可能である。なお、ガードインターバル比が1/4の場合、原理的には4キャリア間隔のSPであればよいが、補間フィルタの特性などを考慮し、シンボル方向には4シンボルに1回挿入されている。
【0026】
図20の例はモード1であるが、モード1のキャリア番号は0から107なのに対して、モード2、モード3 ではそれぞれ、0から215、0から431である。
【0027】
AC信号は図20に示すとおり配置され、1キャリア204ビットのデータ量を持つ。また、AC信号は各セグメントごとに、モード1では2本、モード2では4本、モード3では8本、配置される。
【0028】
TMCC信号は図20に示すとおり配置され、1キャリア204ビットのデータ量を持つ。また、TMCC信号は各セグメントごとに、モード1では1本、モード2では2本、モード3では4本、配置される。
【0029】
フレーム構成を終えた全信号はIFFT部211のIFFT演算によりOFDM信号に変換され、ガードインターバル付加部212でガードインターバルが付加されOFDM送信信号に変換され、送信部213で決められた周波数のデジタル放送信号に変換される。
【0030】
次に、図1を用いて、図2のデジタル放送送信装置によって伝送される送信信号を受信するデジタル放送受信装置の動作を説明する。
【0031】
101はアンテナ、102は選局部、103は直交復調部、104は高速フーリエ変換(以下、FFT)部、105はFFT部104以降TS出力までのISDB−T方式の復調・復号動作を行う復調復号部、106はデスクランブル部、107はデマックス部、108は圧縮された放送映像信号及び放送音声信号のデコード部、109はデコードされた放送映像信号の表示やデコードされた放送音声信号の出力を行う画音出力部である。また、110は同期再生部、111はフレーム抽出部、112はTMCC復号部であり、復調復号部105の動作を行うための同期信号再生や、伝送パラメータなどの情報入手を行う。選局部102からTMCC復号部112で地上デジタル放送受信部120が構成される。
【0032】
一方、113はAC復号部、114は出力部、115は時刻抽出部、116は第1時計部、117は第2時計部、118は時刻比較部であり、AC復号部113から時刻比較部118で地震動警報情報受信部121が構成される。また、119は制御部であり、地上デジタル放送受信部120や地震動警報情報受信部121の動作制御を行う。
【0033】
制御部119、地上デジタル放送受信部120、地震動警報情報受信部121でデジタル放送受信装置122が構成される。
【0034】
123は操作部であり、ユーザからの放送チャンネルの選局操作や、デジタル放送受信装置122を待機状態あるいは通電状態に切り替える操作を受けると、これらの情報を制御部119に通知する。
【0035】
以下、詳細に動作を説明する。アンテナ101で受信されたデジタル放送から選局部102で受信すべきチャネルの周波数帯域が抽出、UHFテレビ放送チャンネルが指定され、直交復調部103でチャンネル選択された信号が直行復調されベースバンド信号とされ、FFT部104で周波数軸処理に変換され、OFDMシンボルのうち、有効シンボルに相当する期間についてFFTが実施される。その際、受信信号のマルチパスの状況が考慮され、適切な期間でFFT処理が実施される。これを受け、復調復号部105では周波数軸上の各キャリアに対して復調処理が行われ(例えば、QPSK、16QAM、64QAM用にスキャッタードパイロット(SP:図20参照)を用いた同期復調を行い、振幅、及び位相情報を検出する)、周波数軸及び時間軸のデインターリーブ、デマッピングされ、各階層に分割されビットデインターリーブ、デパンクチャ、バイトデインターリーブ、エネルギー逆拡散が行われ、ビタビ復号やRS(リード・ソロモン)復号などの誤り訂正が施されてデジタル放送信号が復調され、例えば、MPEG2システムズに規定されるTS信号がデスクランブル部106に出力される。デスクランブル部106では、著作権保護のためにスクランブルのかけられているTS信号のスクランブルが解除され、デマックス部107に出力される。デマックス部107では、希望された圧縮された放送映像信号や圧縮された放送音声信号のデジタル信号が抽出され、デコード部108に出力される。また、デマックス部107では、PSI/SI(Program Specific Information / Service Information)などの放送番組に関する情報が抽出され、時刻抽出部115に出力される。デコード部108では圧縮された放送映像信号や放送音声信号が復号され、復号された放送映像信号や放送音声信号は画音出力部109に供給される。
【0036】
一方、同期再生部110では直交復調部103からのベースバンド信号を受け、モード、ガードインターバル長に応じてOFDMシンボル同期信号及びFFTサンプル周波数が再生される。モード、ガードインターバル長が未知の場合には、OFDM信号のガード期間の相関性等により判別することもできる。さらにFFT部104の出力信号からTMCC信号の周波数位置が検出される。フレーム抽出部111では検出された周波数位置のTMCC信号が復調されるとともにTMCC信号からフレーム同期信号が抽出される。フレーム同期信号は同期再生部110に出力され、シンボル同期信号との位相調整が行われる。TMCC復号部112では復調されたTMCC信号に差集合巡回符号の誤り訂正が施され、階層構造、伝送パラメータなどTMCC情報が抽出される。このTMCC情報は復調復号部105に出力され、復調復号処理の各種制御情報として利用される。
【0037】
次に、図3から図12を用い、AC信号構成部216で構成され、地震動警報情報受信部121で受信する地震動警報情報の構成を説明する。
【0038】
AC信号とは放送に関する付加情報信号をいう。放送に関する付加情報とは変調波の伝送制御に関する付加情報、または地震動警報情報をいう。地震動警報情報は、セグメントNo.0のACキャリアを用いて伝送する。AC信号は図20に示すとおり配置され、1キャリア204ビットのデータ量を持つ。
【0039】
図3はセグメントNo.0に配置されるAC信号の204ビットB0〜B203のビット割当てを示したものである。
【0040】
B0の1ビットは差動復調の基準とする。B1〜B3の3ビットは構成識別とし、付加情報であるか、地震動警報情報であるか区別する。B4〜B203の200ビットによって、付加情報または地震動警報情報を送出する。なお、地震動警報情報を送出する際は、セグメントNo.0内の全てのACキャリアで同一の地震動警報情報を送出する。セグメントNo.0内の全てのACキャリアで同一の地震動警報情報とすることにより、異なるACキャリアで伝送された地震動警報情報を受信機側でアナログ加算できるので、より小さなCN比でも受信可能となる。
【0041】
図4はB0の差動復調の基準を示したものである。ACキャリアの変調方式はDBPSKとし、差動復調の振幅及び位相基準は図4のWiで与えられる。これは現在のISDB−T放送の標準規格と同じである。
【0042】
図5は地震動警報情報をセグメントNo.0のAC信号で伝送する場合のビット割当てを示したものである。
【0043】
構成識別を000,010,011,100,101,111とした場合は、ACは従来通り、放送事業者向けの利用とし、変調波の伝送制御に関する付加情報を伝送する。
【0044】
構成識別を001,110とした場合は、地震動警報情報を伝送する。
【0045】
地震動警報情報の伝送を表す‘001’と‘110’は、TMCCの同期信号の先頭3ビット(B1〜B3)と同一の符号とし、TMCC信号と同一のタイミングでフレームごとに交互に送出する。
【0046】
B4〜B16の13ビットは同期信号とする。
【0047】
地震動警報情報の場合、構成識別と同期信号を連結した符号は、TMCCの同期信号と同一符号とし、16ビットのワードで構成する。同期信号はw0=0011010111101110とそれをビット反転したw1=1100101000010001の2種類とする。TMCC同期信号(B1〜B16)と同じビットを割当て、同じタイミングでフレーム毎にw0とw1を交互に送出しTMCCと同じ符号を送出する。TMCCとAC信号とでアナログ加算を行うことが出来るので、受信機におけるフレーム同期の受信感度を向上できる。
【0048】
B17〜B18の2ビットは地震動警報情報の開始/終了フラグとする。
【0049】
図6は地震動警報情報の開始/終了フラグの意味を示したものである。地震動警報情報が発報されたときに、受信機を自動起動し、かつ、AC信号で地震動警報情報を送出していることを示すため、地震動警報情報の開始/終了フラグとして2ビットを割り当てる。
【0050】
AC信号は、伝送される情報が無い場合、全てのビットが‘1’で変調されるため、地震動警報詳細情報又はその試験信号を表す場合の開始/終了フラグを‘00’とする。また、開始/終了フラグの信頼性を向上するため、開始/終了フラグに2ビットを使用して符号間距離が最大となる反転信号とする。また、開始/終了フラグの信頼性を確保するために‘10’、‘01’は使用しない。
【0051】
地震動警報情報の送出を開始するときは、開始/終了フラグを‘11’から‘00’に変更する。また、地震動警報情報の送出を終了するときは、開始/終了フラグを‘00’から‘11’に変更する。開始/終了フラグは受信機の起動信号として使用することができる。
【0052】
B19〜B20の2ビットは更新フラグとする。
【0053】
図7は地震動警報情報更新フラグの意味を示したものである。
【0054】
地震動警報情報の開始/終了フラグの値が‘00’の状態で継続中に、信号識別(B21〜B121)または図10(後述)に示す地震動情報(B56〜B111)の内容が更新された場合は、図7、8に示すように更新フラグの値を1ずつインクリメントし、受信機に信号識別または地震動情報が更新されたことを通知する。
【0055】
更新フラグは、開始/終了フラグが‘00’の場合に伝送される一連の地震動警報詳細情報の内容に変更が生じるごとに1ずつ増加するものとし、‘00’を開始値とし、‘11’の次は‘00’に戻るものとする。開始/終了フラグが‘11’の場合は更新フラグを‘11’とする。
【0056】
更新フラグの送出例を図8に示す。第1報、第2報…は図9(後述)に示す信号識別又は図10(後述)に示す地震動情報の内容が変化している状態を示している。図10(後述)に示す現在時刻又はページ種別が変化しても更新フラグの値は変更しない。
【0057】
B21〜B23の3ビットは信号識別とする。
【0058】
図9は信号識別の意味を示す。
【0059】
地震動警報情報の信号識別は、地震動警報詳細情報の種別を識別するために使用する信号である。開始/終了フラグが‘00’の場合は、信号識別‘000’/‘001’/‘010’/‘011’を送出し、開始/終了フラグが‘11’の場合は、信号識別‘111’を送出する。また、地震動警報詳細情報の試験信号(該当地域あり/なし)と地震動警報詳細情報(該当地域あり/なし)は、同時には送出しない。
【0060】
信号識別‘100’/‘101’/‘110’は将来の拡張用とし、すべて‘1’とする。
【0061】
図12(後述)に示すように地震動情報総数は最大2つまで送出することができるが、試験信号と本信号は同時には送出しないこととする。また、信号識別が該当地域ありと該当地域なしの地震動情報を同時に送出する場合は、いずれの情報も該当地域ありの地震動情報として送出することで、少なくとも1つの地震動情報は該当地域ありであることを受信機に速やかに知らせることができる。
【0062】
B24〜B111の88ビットは地震動警報詳細詳細情報とする。
【0063】
図10にその詳細を示す。地震動警報詳細情報のビット割り当ては,信号識別毎に規定する。
【0064】
まず、信号識別が‘000’/‘001’/‘010’/‘011’の場合の地震動警報詳細情報について示す。
【0065】
現在時刻は、別途定める基準年月日時分秒からの経過秒数を二進数表記とし、下位31ビットをMSBファーストで割り当てる。地震動警報情報を伝送する場合に、TOT(Time Offset Table)や通信回線等による時刻合わせを有する自動起動に対応した受信機では、受信機の時刻と送出された時刻情報を照合することで、受信した地震動警報情報の信頼性を確認することが出来る。
【0066】
地震動情報は、ページ種別の符号によって、伝送する情報の割当てが異なる。受信機ではページ種別を確認することにより、どちらの情報が伝送されているかを知ることができる。ページ種別が‘0’の場合は、図11(後述)に示すように地震動警報の対象地域を示す情報を伝送する。ページ種別が‘1’の場合は、図12に示すように地震動警報の震源に関する情報を伝送する。但し、ページ種別‘0’と’1’の両方の地震動情報を伝送するとは限らない。
【0067】
地震動情報を送出しない場合は、ページ種別を‘0’とし、地震動情報はすべて‘1’とする。
【0068】
次に、信号識別が‘111’の場合の地震動警報詳細情報について示す。
【0069】
放送事業者識別11 ビットは、全国の放送事業者にユニークに割り付ける。AC信号のみで放送事業者を識別することができる。
【0070】
開始/終了フラグが‘11’の場合、信号識別‘111’を送出する。
【0071】
図11にページ種別が‘0’の場合の地震動情報を示す。ページ種別が‘0’の場合は、地震動警報の対象地域を示す情報とし、図11は対象地域のビット割当てを示す。地震動警報の対象地域を含む地域に割り当てられるビットは‘0’、地震動警報の対象地域を含まない地域に割り当てられるビットは‘1’とする。なお、地震動情報を送出しない場合は、すべて‘1’とする。
【0072】
複数の地震動警報が同時に発生している場合(最大総数2)、ページ種別‘0‘の地震動情報(地域情報)は、1つ目と2つ目をそれぞれ送出する場合があり、この場合、地震動警報情報(地域情報)の送出が1つ目から2つ目、もしくは2つ目から1つ目に変わる際に更新フラグは更新しない。
【0073】
図12にページ種別が‘1’の場合の地震動情報を示す。
【0074】
「地震動警報識別」は、複数の地震動警報が発生した場合に、地震動警報情報を識別するために9ビットを割り当てる。複数の地震動警報情報を区別するために、時刻(秒単位)を元に決定するものとした場合、9ビットの地震動警報識別で過去8分32秒間の地震動警報情報を識別することが可能となる。B24〜B54の現在時刻とB101〜B110の発生時刻を比較することにより、地震動の発生からの経過秒数を知ることができる。
【0075】
B57の地震動情報識別は、伝送されている地震動情報が1情報目の場合は‘0’、2情報目の場合は‘1’とする。
【0076】
発生時刻は、B24〜B54で示される現在時刻と同じ基準年月日時分秒を基準とし、基準時刻からの経過秒数を二進数表記にして、下位10ビットをMSBファーストで割り当てる。
【0077】
B112〜B121の10ビットは、CRC−10とする。
【0078】
地震動警報詳細情報に関する情報は重要な情報であり高い信頼性が要求されることから、下記パリティビットを用いた誤り訂正符号による復号後、CRCによる誤り検出を可能とする。
【0079】
B122〜B203の82ビットには、TMCCの誤り訂正符号と同様に、差集合巡回符号(273,191)の短縮符号(187,105)を用い生成されたパリティビットを設定する。
【0080】
地震動警報情報は重要な情報であり、高い信頼性が要求されることから、TMCCと同様に差集合巡回符号を用いた誤り訂正符号で保護する。構成識別B1〜B3及び同期信号B4〜B16は誤り訂正の対象外とする。B17〜B121の情報は、差集合巡回符号(273,191)の短縮符号(187,105)で誤り訂正符号化する。
【0081】
以上、図3から図12で説明した地震動警報情報の運用方法を図5を用い簡単に説明する。
【0082】
地震動警報情報をセグメントNO.0のACキャリアで伝送している場合は構成識別を図5に示す値に設定する。地震が起こり地震動警報を発報するときには、開始/終了フラグを"地震動警報詳細情報あり:‘00’"とし、同時に更新フラグ、信号識別、地震動警報詳細情報、パリティビットを設定する。地震動警報終了時に開始/終了フラグを"地震動警報詳細情報なし:‘11’"とする。
【0083】
図3から図12で説明した地震動警報情報を受信する動作を図1を用いて説明する。
【0084】
図1のAC復号部113において、セグメントNo.0内のACキャリアが抽出復調されるとともに図5で示した構成識別で地震動警報情報の送出が確認され、更に同期が確立される。このとき、セグメントNo.0内の全てのACキャリアで同一の地震動警報情報が送出されているため、セグメントNo.0内のACキャリア全てをアナログ加算することで、低雑音下でも地震動警報情報の復調が可能になる。例えばN本のACキャリアがあったとすれば地震動警報情報の振幅がN倍になるのに対して雑音はそれぞれのACキャリアにおいて無相関であるためN倍にならない(電力でいえば、地震動警報情報はNの2乗倍に対し雑音はN倍にしかならない)。
【0085】
また、AC復号部113において、図5で示した構成識別部分を調べてACに地震動警報情報が送出されていることの確認ができたときには、図5で説明したように、構成識別と同期信号を連結した符号はTMCCの同期信号と同一となっているので、構成識別と同期信号を連結した符号とTMCCの同期信号とをアナログ加算することで、上記した理由により、TMCCだけで再生するよりも低雑音下での同期信号を再生することができる。
【0086】
さらにまた、AC復号部113において図5で示した構成識別部分を調べる方法として、TMCCの同期信号の先頭から3ビット部分と、セグメントNo.0内のACキャリアの図5で示した構成識別部分の相関をとることにより、3ビット全てに相関がある場合にACに地震動警報情報が送出されていると判断することが可能である。
【0087】
AC復号部116でセグメントNO.0内のACキャリアが抽出復調され、図5に示す地震動警報情報開始/終了フラグが図6に示す意味で監視されており、初期段階、すなわち地震動警報情報が発報されていない段階では"地震動警報情報なし"から"地震動警報情報あり"と切替わる状態が監視されている。
【0088】
地震が発生し地震動警報情報が発報されたとき、すなわち地震動警報情報開始/終了フラグが"地震動警報詳細情報あり"となった場合には、AC復号部113は、"地震動警報詳細情報なし"から"地震動警報詳細情報あり"と切り替わる状態が検出される。AC復号部113は、地震動警報情報開始/終了フラグが"地震動警報詳細情報あり"となった時点で、図5に示す地震動警報情報開始/終了フラグ、地震動警報情報更新フラグ、識別信号、地震動警報情報詳細、CRC−10、パリティビットのデータを確定する。そしてAC復号部113は、差集合巡回符号の短縮符号の誤り訂正が行われ、CRC−10誤り検出を行った後、図5に示す信号識別が確認され、図9に示すどの意味であるかが判別される。
【0089】
AC復号部113は、"地震動警報詳細情報(該当地域あり)"の場合には、図10、図11、図12に示す強い揺れが予想される都道府県情報や震源地情報などの地震詳細情報や時刻情報を出力部114に送る。
【0090】
また、AC復号部113は、"地震動警報詳細情報(該当地域なし)"の場合には、出力部114にデータは送らない。
【0091】
同時にAC復号部113は、時刻情報を時刻比較部118へ送る。ここで、地震動警報情報で送出される時刻情報は、放送局側が送信したときの放送局の現在時刻情報であり、定められた精度をもっている。これに放送局側の処理遅延、放送電波が受信機までに届く伝搬遅延、これを受信するデジタル放送受信装置122の処理遅延と、第1時計部116及び第2時計部117の精度を加味した時間、最大でもこれらを全て加算した時間の正負(進み遅れ)以上には、AC復号部113から供給された時刻情報と第2時計部117の時刻情報はずれることがない。これをスレッシュホールド値として、時刻比較部118は、時刻情報のずれがスレッシュホールド値内である場合には、"正常"な地震動警報情報と判断し、また時刻情報のずれがスレッシュホールド値を超える場合には、"異常"な地震動警報情報と判断する。
【0092】
出力部114は、時刻比較部118が"正常"と判断した場合には、AC復号部113より供給された図10、図11、図12に示す強い揺れが予想される都道府県情報や震源地情報などの地震詳細情報や時刻情報を画音出力部109に出力する。画音出力部109では、これを受け、地震動警報情報の映像表示、ブザー音や音声などによる警告音声出力、または地震が発生すると思われる時間までのカウントダウンを行う。
【0093】
一方、出力部114は、時刻比較部118が"異常"と判断した場合には、画音出力部109への出力は行わない。
【0094】
これにより、過去に地震動警報情報が発報されたときの放送波を蓄積しておき(以下、RFキャプチャと示す)これを再送信されたような攻撃を受けた場合においても、RFキャプチャした信号はRFキャプチャした時点の時刻情報を持っているため、第2時計部117の現在時刻とはスレッシュホールド値を超える状態となり時刻比較部118では"異常"と判断され、出力部114は地震動警報情報を出力しない動作をとり、画音出力部109に地震動警報情報が出力させるという誤作動を防ぐことができる効果がある。
【0095】
次に、時刻抽出部115、第1時計部116、第2時計部117、及び制御部119の動作を説明する。
【0096】
操作部123より、ユーザが放送チャンネルの選局操作を行うと、制御部119はこれを受け、制御信号124を用いて、地上デジタル放送受信部120に対して所望の放送チャンネルを受信するように指示する。地上デジタル放送受信部120は、これを受け、選局部102において所望の放送チャンネルの周波数が選局され、また画音出力部109には所望の放送チャンネルの映像信号及び音声信号が出力される。続いて制御部119は、制御信号125を用いて、時刻抽出部115に対して現在受信している放送チャンネルの時刻情報を取得させる。時刻抽出部115はこれを受け、デマックス部107より例えばPSI/SIに含まれているTOT(Time Offset Table)などの時刻情報を抽出し、第1時計部116に出力する。第1時計部116はこれを受け、まず第1時計部116の内部時計の時刻情報を第2時計部117に出力し、続いて時刻抽出部115から供給された時刻情報を用いて第1時計部116の内部時計の時刻を補正する。第2時計部117は、第1時計部116から時刻情報を受け取ると、その時刻情報を用いて内部時計の時刻を補正する。
【0097】
以上の処理により、時刻比較部118において地震動警報情報の時刻情報と比較される第2時計部117の時刻とは、現在受信している放送チャンネルの直前に受信していた放送チャンネルの時刻情報を用いて補正された時刻である。このように、地震動警報情報が発報されている放送チャンネルの時刻情報は使用しない。したがって、現在受信している放送チャンネルがRFキャプチャした信号による再送信攻撃を受けていたとしても、第2時計部117の時刻は一選局前に受信していた再送信攻撃を受けていない放送チャンネルの時刻情報を用いて時刻補正されたものであるため、時刻情報が一致して地震動警報情報が画音出力部109に出力されるという誤動作を防ぐことができる効果がある。
【実施例2】
【0098】
次に、操作部123より、ユーザがデジタル放送受信装置122を通常の通電状態から待機状態、また待機状態から通常の通電状態とする操作を行った場合の処理について説明する。
【0099】
制御部119は、操作部123よりデジタル放送受信装置122を通常の通電状態から待機状態にする指示を受けると、まず制御信号126を用いて第1時計部116の時刻情報を第2時計部117に出力させる。第2時計部117は供給された時刻情報を用いて第2時計部117の内部時計を補正する。続いて制御部119は、少なくとも第2時計部117の内部時計は動作させておき、地震動警報情報受信部121におけるその他の動作、及び地上デジタル放送受信部120の動作を停止させる。
【0100】
次に、制御部119は、操作部123よりデジタル放送受信装置122を待機状態から通常の通電状態にする指示を受けると、まず地上デジタル放送受信部120及び地震動警報情報受信部121の動作を開始させ、地上デジタル放送受信部120に対して所定の放送チャンネルを受信させる。続いて制御部119は、制御信号125を用いて時刻抽出部115に対して現在受信している放送チャンネルの時刻情報を取得するよう指示する。時刻抽出部115は、デマックス部107より例えばPSI/SIに含まれているTOTなどの時刻情報を抽出し、第1時計部116に出力する。第1時計部116は供給された時刻情報を用いて、第1時計部116の内部時計を補正する。
【0101】
以上の処理により、デジタル放送受信装置122が待機状態から通常の通電状態となった際の第2時計部117の内部時計は、デジタル放送受信装置122が通常の通電状態から待機状態になる直前に受信していた放送チャンネルの時刻情報を用いて補正されている。このように、地震動警報情報が発報されている放送チャンネルの時刻情報は使用しない。したがって、デジタル放送受信装置122を待機状態から通常の通電状態にした直後に受信している放送チャンネルが地震動警報情報の再送信攻撃を受けている放送波であるとしても、第2時計部117の内部時計は地震動警報情報の再送信攻撃を受けていない放送チャンネルの時刻情報を用いて時刻補正されたものであるため、地震動警報情報が画音出力部109に出力されるという誤動作を防ぐことができる効果がある。
【実施例3】
【0102】
次に、地震動警報情報の時刻情報との比較に用いられる受信機内の時刻情報をより正確に保持するための動作について説明する。
【0103】
図13は本発明に係る第3の実施形態におけるデジタル放送受信装置の構成を示すブロック図である。図13において、図1で示したデジタル放送受信装置の構成と異なる点は、図1での第1時計部116、第2時計部117を削除し、複数の時刻情報の記憶と演算処理を行う記憶演算部127、および時計部128を加えたことにある。
【0104】
以下、詳細に動作を説明する。
【0105】
制御部119は、操作部123より通常の通電状態から待機状態にする指示を受けると、少なくとも時計部128の内部時計は動作を継続させ、地震動警報情報受信部121のその他の動作、及び地上デジタル放送受信部120の動作を停止させる。
【0106】
制御部119は、デジタル放送受信装置122が待機状態の間に、デコード部108及び画音出力部109を除くその他の地上デジタル放送受信部120の各処理、時刻抽出部115、記憶演算部127、時計部128をそれぞれ動作させる。そして、制御部119は、デジタル放送受信装置122が受信可能な全ての放送チャンネルについて、選局部102に順番に選局をさせながら、時刻抽出部115より各放送チャンネルの時刻情報を抽出させる。時刻抽出部115により抽出された各放送チャンネルの時刻情報は、記憶演算部127に出力され、これを受けた記憶演算部127は時刻情報を記憶していく。
【0107】
制御部119は、全ての放送チャンネルについて時刻抽出部115が時刻情報の取得を完了し記憶演算部127に時刻情報を供給し終えると、制御信号129を用いて記憶演算部127に演算処理の実行開始を通知する。図14に、記憶演算部127において実行される演算処理の一例を示す。
【0108】
図14(1)は、記憶演算部127で実行される演算処理の一例であって、1401は時計部であり、a、b、c、d、eの5系統ある。ここでは記憶演算部127に供給された時刻情報は5つとし、時刻情報a、b、c、d、eの順番に記憶演算部127に供給されたものとする。時刻情報が5つ以上入力される可能性がある場合は、入力数分の時計部1401を用意する。また、1402は演算部である。
【0109】
最初に供給された時刻情報aは時計部1401aに入力され、時計部1401aは時刻情報aを用いて内部時刻を補正する。また、時計部1401b〜1401eも同様に、入力された時刻情報b〜時刻情報eを用いて、それぞれ内部時計を補正する。制御部119より、演算処理の実行開始の通知を受けると、時計部1401a〜1401eは同時に時刻情報を演算部1402に出力する。演算部1402はこれを受け、供給された5つの時刻情報の中央値(2010/3/20 10:19:59)、或いは最も多く現れている時刻情報を示す最頻値(2010/3/20 10:20:00)を計算し、得られた時刻情報を時計部128に出力する。
【0110】
一方、図14(2)は、記憶演算部127で実行される演算処理の他の一例であって、1403は保持部であり、a、b、c、d、eの5系統ある。ここでは保持部1403に供給された時刻情報は5つとし、時刻情報a、b、c、d、eの順番に記憶演算部127に供給されたものとする。時刻情報が5つ以上入力される可能性がある場合は、入力数分の保持部1403を用意する。また、1404はタイマー部、1405は演算部である。
【0111】
最初に供給された時刻情報aは保持部1403aに入力され、保持部1403aは入力された時刻情報aを保持するとともに、タイマー部1404にタイマー開始を通知する。タイマー部1404は、これを受けると、タイマーを開始する。
【0112】
保持部1403b〜1403eは、入力された時刻情報b〜時刻情報eをそれぞれ保持するとともに、タイマー部1404より、現在のタイマー時間(記憶演算部127に時刻情報aが供給されてから時刻情報b〜時刻情報eがそれぞれ供給されるまでの差分時間を示す)を入手して保持する。制御部119より、演算処理の実行開始の通知を受けると、保持部1403a〜1403eはそれぞれが保持している時刻情報およびタイマー時間(差分時間)を演算部1405に出力する。演算部1405はこれを受け、各保持部より供給された時刻情報とタイマー時間を用いて、時刻情報からタイマー時間を差し引いた時刻情報をそれぞれ算出し、得られた5つの時刻情報の中央値(2010/3/20 10:19:59)、或いは最も多く現れている時刻情報を示す最頻値(2010/3/20 10:20:00)を計算し、得られた時刻情報を時計部128に出力する。図14(1)及び(2)で示した例は、時計部128に出力される時刻情報は同一のものであるが、図14(1)では複数の時計が必要であるのに対して、図14(2)の例では時計が不要で1つのタイマーのみで実現できるという利点がある。
【0113】
時計部128は、記憶演算部127より供給された時刻情報を用いて時計部128の内部時計を補正する。時計部128の内部時計は、時刻比較部118において、地震動警報情報の時刻情報との比較に用いられる。
【0114】
以上のように、本実施例では、複数の放送チャンネルから時刻情報を取得し、これらの時刻情報の中央値或いは最頻値より時計部128の内部時計を補正している。このため、1つの放送チャンネルの時刻情報を用いて時刻情報を補正する場合と比較して、時刻情報の信頼性を高めることが可能である。また、複数の放送チャンネルの時刻情報の中に地震動警報情報の再送信攻撃を受けている放送チャンネルが含まれていたとしても(時刻情報d)、その他多数の放送チャンネルによる正確な時刻情報を用いて内部時計を補正することができる。
【0115】
本実施例では、デジタル放送受信装置122が待機状態における場合について説明したが、デジタル放送受信装置122が地上デジタル放送受信部を複数備えている場合には、通常の通電状態においても本実施例を行うことが可能である。図15に示すように、制御部119は、地上デジタル放送受信部120が通常の通電状態であるか待機状態であるかを確認し、通常の通電状態にあり番組受信や番組録画などに使用されている場合には、未使用の地上デジタル放送受信部1501を用いて各放送チャンネルの時刻情報を取得させる。これにより、ユーザが放送チャンネルをある受信部を使って視聴中においても、別の受信部を使って時計部128の内部時計を補正することが可能となり、内部時計の補正タイミングについて時間的制約を自由にすることができる。
【実施例4】
【0116】
次に、本発明の第4の実施形態について図16を参照して説明する。
【0117】
図16は本発明に係る第4の実施形態におけるデジタル放送受信装置の構成を示すブロック図である。図16において、図13で示したデジタル放送受信装置の構成と異なる点は、EPG(電子番組表)を表示するための情報を入手するEPG処理部130を加えたことにある。地上デジタル放送では受信機においてEPGの表示を可能とするために、番組の名称や放送日時、放送内容など、番組に関連する情報を主にEIT(Event Information Table)に記述して伝送している。
【0118】
以下、詳細に動作を説明する。
【0119】
EPG処理部130は、操作部123よりEPGを表示するように指示を受けると、以下に示す手順に従って、各放送チャンネルのEPG情報の取得処理を行う。また、EPG処理部130は、デジタル放送受信装置122が待機状態である場合に、本処理を開始しても良い。
【0120】
まず、EPG処理部130は、制御部119に制御信号131を用いてEPG情報の取得処理を開始したことを伝える。次に、EPG処理部130は、制御信号124を用いて地上デジタル放送受信部120が受信可能な放送チャンネルのうち、一つのチャンネル周波数を選局部102に選局させる。そして、EPG処理部130は、デマックス部107よりPSI/SIに含まれているEIT情報を抽出する。これにより、当該放送チャンネルのEPGを表示することが可能となる。一方、制御部119は、EPG処理部130よりEPGの取得処理を開始した通知を受けると、時刻抽出部115に対して制御信号125を用いて時刻情報を取得するように指示する。時刻抽出部115はこれを受け、デマックス部107よりPSI/SIに含まれているTOTなどの時刻情報を入手して記憶演算部127へ供給し、その後制御信号132、133を用いてEPG処理部130に時刻情報の取得が完了したことを通知する。EPG処理部130はこれを受け、且つEIT情報の取得が完了すると、続いて地上デジタル放送受信部120が受信可能な他の放送チャンネルについても上記と同様にEIT情報の取得と時刻抽出部115によるTOTなどの時刻情報の取得処理を行う。
【0121】
EPG処理部130は、全ての放送チャンネルについて上記処理を完了すると、画音出力部109にEPGを表示させるとともに、制御部119に処理が完了したことを通知する。制御部119はこれを受けると、制御信号129を用いて記憶演算部127に通知する。記憶演算部127はこれを受けると、図14(1)または(2)で説明した処理に従い、取得した各放送チャンネルの時刻情報をもとに中央値或いは最頻値を算出し、時計部128の内部時計を補正する。
【0122】
以上のように、EPGの取得処理を利用して、各放送チャンネルの時刻情報を入手し、これら入手した時刻情報を用いて時計部128の内部時計を補正することができる。
【0123】
また、本実施例では、デジタル放送受信装置122が地上デジタル放送受信部120を一つ備えた場合について説明したが、複数の地上デジタル放送受信部を備えていてもよい。この場合、EPG処理部130は、通常の通電状態にあり番組受信や番組録画などに使用されていない地上デジタル放送受信部が検出し、検出された地上デジタル放送受信部を用いて各放送チャンネルのEIT情報と時刻情報の取得を行わせれば良い。これにより、ユーザが放送チャンネルをある受信部を使って視聴中においても、別の受信部を使ってEIT情報の取得と時計部128の内部時計を補正することが可能となる。
【実施例5】
【0124】
本発明の第5の実施形態について図17を用いて説明する。
【0125】
図17は、地上デジタル放送受信部120が受信可能な放送チャンネルを周波数軸上に記述したものである。このうち、24ch〜27chの4チャンネルについては、26chで地震動警報情報が発報された際に4チャンネル分の周波数帯域でRFキャプチャされ、現在、再送信攻撃を受けているものとする。このように、連続した複数のチャンネル周波数で再送信攻撃を受けている場合には、実施例3及び実施例4で示したような、全ての放送チャンネルの時刻情報をもとに中央値や最頻値を抽出して受信機の内部時計を補正する方法であると、再送信攻撃がされた複数の放送チャンネルの時刻情報が中央値や最頻値に該当してしまい、受信機は正確な現在の時刻情報を示すことができなくなってしまう可能性がある。
【0126】
この問題に対処するため、制御部119は、受信可能な放送チャンネルのチャンネル周波数(18、20、21、・・・、28、32ch)のうち、最小の周波数のチャンネル(α=18ch)と最大の周波数のチャンネル(β=32ch)、及びαとβの中間の周波数のチャンネル((α+β)/2=25ch)の3チャンネル分の時刻情報から中央値や最頻値を抽出して受信機の内部時計を補正する。もし、中間の周波数のチャンネルが存在しない場合は、中間の周波数のチャンネルに最も近いチャンネルの時刻情報を用いる。
【0127】
このように、全ての放送チャンネルの時刻情報を用いるのではなく、チャンネル周波数の離れた放送チャンネルの時刻情報のみを用いることで、再送信攻撃された複数の放送チャンネルの時刻情報で受信機の内部時計が補正されてしまうことを防止できる。
【0128】
第1から第5の実施形態において、受信機の内部時計を補正するための時刻情報は、地上デジタル放送受信部120より取得を行っていたが、デジタル放送受信装置122が放送衛星(BS:Broadcasting Satellite)によるデジタル放送(以下、BSデジタル放送)や通信衛星(CS:Communications Satellite)によるデジタル放送(以下、広帯域CSデジタル放送)を視聴できる場合には、図18に示すように、BS・広帯域CSデジタル放送アンテナ1801で受信したBS・広帯域CSデジタル放送信号の中から任意の一つの放送チャンネルをBS・広帯域CSデジタル放送受信部1801で受信してTOTなどの時刻情報を取得し、これを用いて受信機の内部時間を補正すればよい。BSデジタル放送や広帯域CSデジタル放送は、地上デジタル放送と同様に時刻情報の伝送が行われており、また、地震動警報情報の伝送は行われていないため、地震動警報情報の再送信攻撃を受けることは無く、このため正常な現在の時刻情報を取得することができる。
【符号の説明】
【0129】
101・・・アンテナ部
102・・・選局部
103・・・直交復調部
104・・・FFT部
105・・・復調復号部
106・・・デスクランブル部
107・・・デマックス部
108・・・デコード部
109・・・画音出力部
110・・・同期再生部
111・・・フレーム抽出部
112・・・TMCC復号部
113・・・AC復号部
114・・・出力部
115・・・時刻抽出部
116・・・第1時計部
117・・・第2時計部
118・・・時刻比較部
119・・・制御部
120、1501・・・地上デジタル放送受信部
121・・・地震動警報情報受信部
122・・・デジタル放送受信装置
123・・・操作部
127・・・記憶演算部
128・・・時計部
130・・・EPG処理部
1801・・・BS・広帯域CSデジタル放送アンテナ
1802・・・BS・広帯域CSデジタル放送受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチャンネルに係る映像信号あるいは音声信号及び放送時刻情報を含むデジタル放送信号と、地震動警報情報を伝送するためのAC信号とを有する伝送信号を受信するデジタル放送受信装置であって、
前記伝送信号を受信する受信部と、
前記受信部で受信された伝送信号から前記デジタル放送信号を復調し、出力する第1の復調部と、
前記受信部で受信された伝送信号から前記AC信号を復調する第2の復調部と、
前記第2の復調部で復調されたAC信号を受信し、地震動警報情報信号を抽出する地震動警報情報抽出部と、
前記第1の復調部から出力されるデジタル放送信号から前記放送時刻情報を抽出し、当該放送時刻情報に基づき、現在時刻を補正する時計部と、
前記地震動警報情報抽出部で抽出された前記地震動警報情報信号に含まれる時刻情報と、前記時計部の現在時刻を比較し、時刻の差分が所定値以内かどうかを判定する時刻比較部と、
前記時刻比較部で時刻の差分が所定値以内であれば、前記地震動警報情報抽出部で抽出された前記地震動警報情報信号を出力する出力部と、
を備え、
前記時計部の現在時刻は、前記第1の復調部で復調されるデジタル放送信号のうち、複数のチャンネルに係る前記放送時刻情報を用いて補正されることを特徴とするデジタル放送受信装置。
【請求項2】
複数のチャンネルに係る映像信号あるいは音声信号及び放送時刻情報を含むデジタル放送信号と、地震動警報情報を伝送するためのAC信号とを有する伝送信号を受信するデジタル放送受信方法であって、
前記伝送信号を受信する受信ステップと、
前記受信ステップで受信された伝送信号から前記デジタル放送信号を復調し、出力する第1の復調ステップと、
前記受信ステップで受信された伝送信号から前記AC信号を復調する第2の復調ステップと、
前記第2の復調ステップで復調されたAC信号を受信し、地震動警報情報信号を抽出する地震動警報情報抽出ステップと、
前記第1の復調ステップから出力されるデジタル放送信号から前記放送時刻情報を抽出し、当該放送時刻情報に基づき、現在時刻を補正する時刻補正ステップと、
前記地震動警報情報抽出ステップで抽出された前記地震動警報情報信号に含まれる時刻情報と、前記時計部の現在時刻を比較し、時刻の差分が所定値以内かどうかを判定する時刻比較ステップと、
前記時刻比較ステップで時刻の差分が所定値以内であれば、前記地震動警報情報抽出ステップで抽出された前記地震動警報情報信号を出力する出力ステップと、
を備え、
前記時計ステップの現在時刻は、前記第1の復調ステップで復調されるデジタル放送信号のうち、複数のチャンネルに係る前記放送時刻情報を用いて補正されることを特徴とするデジタル放送受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−244034(P2011−244034A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111644(P2010−111644)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】