説明

デジタル放送受信装置

【課題】複数のチューナを備えた移動体用のデジタル放送受信装置であって、サブチューナによる裏サーチを効率的に行うことが可能な送受信装置を提供する。
【解決手段】本発明の放送受信装置は、第一チューナの受信放送波と同一または類似すると推定される放送波を受信可能な系列チャンネル(第一チューナ受信チャンネルを含む)を、第二チューナにより検出する検出部を備える。また第一チューナの受信放送波に含まれる情報を解析し、この放送波の受信が所定時間を超えて継続される確率を示す受信継続度を算出する継続度算出部を備える。また検出部が系列チャンネルの受信感度を検出する頻度と、それ以外の周波数帯域の受信感度を検出する頻度との比率を、受信継続度に基づいて決定する検出制御部を備える。検出制御部は、各周波数帯域の受信感度の検出を行う順序をこの比率に基づいて決定し、決定した順序で検出を行うよう検出部を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送波を受信するデジタル放送受信装置に関するものであり、特に複数のチューナを備えた移動体用のデジタル放送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル放送の一つとして、地上デジタルTV放送が実施されている。日本においては現行の地上アナログTV放送は2011年に放送終了予定であり、地上デジタルTV放送への移行が進められている。これに伴い、カーナビや携帯電話等に搭載される移動体用のデジタル放送受信装置も、広く開発が行われている。
【0003】
地上デジタルTV放送では、広地域で同一の放送を実現するため、親局から送出された電波を中継局が受け、中継局から再送信する仕組みを用いている。特に移動体用のデジタル放送受信装置では、放送局ごとの中継局の物理チャンネルを示すテーブルを保持し、任意の放送局がユーザ操作により選局された場合に、テーブルに含まれる物理チャンネルをサーチする機能を備えるものがある。
【0004】
また、受信状態が劣化した場合に、デジタル放送受信装置が自動で中継局や系列局などの物理チャンネルをサーチし、受信状態がよい物理チャンネルに切り替える機能を備えるものもある。
【0005】
例えば車載用のデジタル放送受信装置であれば、走行中に自車の位置や速度等により受信状態が刻々と変化する。そして現在の放送地域と移動先の地域との境界域に近づくにつれて、現在の放送地域に向けられた放送波の受信が困難となる。そして移動先の地域に向けられた放送波の受信が可能となる。上記のサーチ機能は、このような境界域において効果を発揮する。
【0006】
また移動体用のデジタル放送受信装置の中には、常に変化する受信状態に対応するため、ユーザが視聴に用いるチューナ(以下、「メインチューナ」という)と、受信感度が良好な物理チャンネルをバックグラウンドでサーチするためのチューナ(以下、「サブチューナ」という)との複数のチューナを備えているものがある。
【0007】
このようなデジタル放送受信装置は、ユーザが指定した番組をメインチューナで受信するとともに、受信中の番組と同番組を放送しており且つ受信感度のよい物理チャンネルを、サブチューナで検出(以下、「裏サーチ」という)する。
【0008】
ただし同番組を放送している系列局のチャンネル情報は、地域によって異なるため、受信中の放送データからは把握できない。また、ユーザがチャンネルを変更した場合に、変更後のチャンネルの受信感度がよいとは限らない。このため、受信可能な物理チャンネルを、常に裏サーチし続ける必要がある。
【0009】
例えば地上デジタルTV放送であれば、UHF帯の13chから62chまでの全50chについて、常に裏サーチを行う。そしてメインチューナの受信感度が低下した場合に、予め裏サーチしてある受信感度のよい物理チャンネルに切り替える。これにより、ユーザがより好適な状態で視聴を継続できるようにする。
【0010】
上記に関連して特許文献1においては、頻繁な再選局動作を防ぎ、好適な受信状態を維持できると共に、好適な受信レベルのチャンネルを選局することを目的としたデジタル放送受信装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−312110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に開示されているような従来のデジタル放送受信装置によれば、受信状態が悪化した時点で、同番組を放送している中継局の物理チャンネルを放送データから把握し、ユーザ操作を必要とすることなく選局することができる。
【0013】
しかしながら、全ての物理チャンネルを均等に裏サーチする場合、裏サーチ一周期の時間(=全50chの裏サーチにかかる時間)が非常に長くなる。このため、放送局をあまり変更しないユーザにしてみれば、バックグラウンドで不要な処理が頻繁に実行されていることとなる。つまり演算資源を無駄に消費しており、効率のよい裏サーチとは言えない。
【0014】
例えば、ユーザが一放送局の番組を視聴し続けるだけの状態であれば、選局中の放送局の中継局または系列局に割り当てられている物理チャンネル(以下、「系列チャンネル」という)のみを裏サーチし、この中からより受信感度のよい物理チャンネルを探し当てることが望ましい。この場合、裏サーチ一周期の時間を短縮することができる。
【0015】
逆に、ユーザが放送局を頻繁に変更する場合、系列チャンネルを優先的に裏サーチしたとしても、あまり意味がない。むしろ、全物理チャンネルに対して均等に裏サーチを行い、新たに選局される可能性のある放送局の系列チャンネルについて、予め調査しておくことが望ましい。このように、ユーザの視聴状況に応じて、望ましい裏サーチの形態が異なるという問題がある。
【0016】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであって、その目的は、複数のチューナを備えた移動体用のデジタル放送受信装置であって、サブチューナによる裏サーチを効率よく行うことが可能な送受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために本発明のデジタル放送受信装置は、放送波の受信及び選局を行うチューナを複数含む放送受信部を備えるデジタル放送受信装置において、選局指示を受け付け、選局指示された放送波を前記放送受信部が含む第一チューナにより受信するよう前記放送受信部を制御する選局制御部と、放送波を受信可能な周波数帯域、及び該周波数帯域の受信感度を、前記放送受信部が含む第二チューナにより検出するとともに、前記第一チューナにより受信されている放送波と同一または類似すると推定される放送波を受信可能な周波数帯域である系列チャンネル(前記第一チューナの受信中チャンネルを含む)を前記第二チューナにより検出するよう前記放送受信部を制御する検出部と、前記第一チューナにより受信されている放送波に含まれる情報を解析し、前記解析の結果に基づいて、該放送波の受信が予め定められた時間を超えて継続される確率を示す受信継続度を算出する継続度算出部と、前記検出部が前記系列チャンネルの受信感度を検出する頻度と、前記検出部が前記系列チャンネルを除く周波数帯域の受信感度を検出する頻度との比率を、前記受信継続度に基づいて決定し、各周波数帯域の受信感度の検出を行う順序を前記比率に基づいて決定し、決定した前記順序で該検出を行うよう前記検出部を制御する、検出制御部とを備えることを特徴とする。
【0018】
この構成によると、本発明のデジタル放送受信装置は、複数のチューナを含む放送受信部を備える。また、選局指示を受け付け、選局指示された放送波を第一チューナにより受信するよう放送受信部を制御する選局制御部を備える。また、各周波数帯域の受信感度を第二チューナにより検出するよう放送受信部を制御する検出部を備える。検出部はさらに、第一チューナにより受信されている放送波と同一または類似すると推定される放送波を受信可能な周波数帯域である系列チャンネル(第一チューナ受信チャンネルを含む)を、第二チューナにより検出する。また本発明のデジタル放送受信装置は、第一チューナにより受信されている放送波に含まれる情報、例えばEPG(Electronic Program Guide)等を解析し、解析結果に基づいて、この放送波の受信が所定時間を超えて継続される確率を示す受信継続度を算出する継続度算出部を備える。また、検出部が系列チャンネルの受信感度を検出する頻度と、検出部が系列チャンネルを除く周波数帯域の受信感度を検出する頻度との比率を、受信継続度に基づいて決定する検出制御部を備える。検出制御部はさらに、各周波数帯域の受信感度の検出を行う順序をこの比率に基づいて決定し、決定した順序で検出を行うよう、検出部を制御する。
【0019】
また上記目的を達成するために前記継続度算出部は、前記解析において、放送局の種別、放送番組の分野、または放送番組の放送残り時間を前記情報に基づいて判別し、前記判別の結果に基づいて前記受信継続度を算出することを特徴とする。
【0020】
この構成によると、継続度算出部は、第一チューナにより受信されている放送波の解析において、受信している放送波の放送局の種別、放送番組の分野、または放送番組の放送残り時間を判別し、この判別結果に基づいて受信継続度を算出する。
【0021】
また上記目的を達成するために前記検出部は、予め定められた順序で前記第二チューナにより各周波数帯域の受信感度を検出するよう前記放送受信部を制御し、前記検出制御部は、前記順序に基づいて該受信感度の検出をn回(nは0を含む自然数)行うごとに、前記系列チャンネルの受信感度の検出を行うよう前記検出部を制御するとともに、前記nの値を前記受信継続度に基づいて決定することを特徴とする。
【0022】
この構成によると、検出部は、予め定められた順序で各周波数帯域の受信感度を検出するよう前記放送受信部を制御する。また検出制御部は、この順序に基づいて受信感度の検出をn回(nは0を含む自然数)行うごとに、系列チャンネルの受信感度の検出を行うよう、検出部を制御する。また検出制御部は、上記nの値を、受信継続度に基づいて決定する。なお検出制御部は、受信継続度が大きくなるにつれ、nの値を小さくするように制御することが望ましい。
【0023】
また上記目的を達成するために前記検出部は、放送波の識別情報と該放送波を受信するための前記系列チャンネルとを関連付けた情報であり、前記系列チャンネルごとの使用優先度を前記検出部による検出結果に基づいて示した情報である関連情報を生成し、前記選局制御部は、前記系列チャンネルを前記関連情報に基づいて判別し、前記使用優先度に基づく順で前記第一チューナによる選局、及び受信の試行を行うよう前記放送受信部を制御することを特徴とする。
【0024】
この構成によると、検出部は、放送波の識別情報とこの放送波を受信するための系列チャンネルとを関連付けた情報である関連情報を生成する。また検出部は、系列チャンネルごとの使用優先度を、検出部の検出結果に基づいて決定して関連情報に含める。選局制御部は、系列チャンネルをこの関連情報に基づいて判別し、使用優先度に基づく順で第一チューナによる選局、及び受信試行を行うよう、放送受信部を制御する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、選局中の放送局で放送されている番組の内容を解析し、ユーザが同一の放送波を受信し続ける可能性が高い場合は、中継局または系列局の物理チャンネルを裏サーチ(=受信感度検出)する頻度を高めるよう、裏サーチ順序を変更する。そして変更後の裏サーチ順序で裏サーチを行って関連情報を更新する。
【0026】
逆に可能性が低い場合は、全物理チャンネルに対して均等に裏サーチを行って関連情報を更新し、ユーザからの選局指示に備える。そして選局指示がなされた場合、または受信状態が悪くなった場合に、関連情報を用いて受信状態のよい周波数帯域に切り替える。これにより、状況に応じた効率のよい裏サーチを実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係るデジタル放送受信装置の内部構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る機能部の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る選局候補テーブルを示すテーブル図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る重み付けテーブルを示すテーブル図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る裏サーチ順序を示す模式図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る裏サーチ処理を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、ここで示す実施形態は一例であり、本発明はここに示す実施形態に限定されるものではない。
〈1.内部構成について〉
図1は、本発明の一実施形態に係る車載用受信装置100(=デジタル放送受信装置)の内部構成を示すブロック図である。図1のブロック図に示すように、本発明の車載用受信装置100は、外部接続される装置として複数のダイバーシティアンテナ1を備えている。
【0029】
また車載用受信装置100は少なくとも、メインチューナ11a(=第一チューナ)、メインチューナ11b(=第一チューナ)、サブチューナ11c(=第二チューナ)からなるチューナ群11(=放送受信部)、復調部12(=放送受信部)、操作入力部13、CPU14、RAM15、ROM16、オーディオフィルタ21、オーディオデコーダ21、D/Aコンバータ23、LPF/ドライバ24、音声出力部25、ビデオフィルタ31、ビデオデコーダ32、画像処理部33、D/Aコンバータ34、LPF/ドライバ35、画像出力部36を備えている。
【0030】
チューナ群11は、ダイバーシティアンテナ1から地上デジタルTV放送信号を受信し、所望の物理チャンネル(=周波数帯域)での選局を行う。またチューナ群11は、選局中の物理チャンネルにおいて放送波が受信不可となったか否かを監視する。具体的には例えば、車載用受信装置100を搭載した車両が受信地域を跨ぐ等により、これまで受信していた放送波の電界強度が所定の閾値を下回った場合に、受信不可となったとみなす。
【0031】
メインチューナ11a及びメインチューナ11bは、ユーザに選局指示された放送波を受信するためのチューナである。サブチューナ11cは、後述する裏サーチ部14bにより裏サーチに用いられるチューナである。
【0032】
復調部12は、チューナ群11から入力される選局された信号を復調及びエラー訂正し、ワンセグと12セグとの、それぞれのTS(Transport Stream)を出力する。復調部12により復調されたTSは、後述するオーディオフィルタ21、ビデオフィルタ31、及びデータフィルタ41に与えられる。
【0033】
なお、ワンセグ放送のみに対応した機器の場合は、受信できるのはワンセグにかかるデジタル放送信号のみとなる。このため、こういった機器における復調部12では、チューナ11により受信されたデジタル放送信号からワンセグにかかるTS信号を出力するものとする。
【0034】
操作入力部13は、不図示のリモコン、及びリモコン受光部を含む。リモコンには、車載用受信装置100に対して選局指示等を行うための、プッシュボタンやタッチセンサ等が含まれている。また操作入力部13は、車載用受信装置100のハウジングに設けられたハードキーやタッチパネル等を含む。操作入力部13は、上記装置のいずれかにより受け付けたユーザ操作に基づく操作信号を生成し、出力する。なお操作入力部13は、必ずしも上記装置の全てを含む必要はなく、上記装置の一部のみを含む形態でもよい。
【0035】
CPU14は、各種演算、処理、制御を行う演算処理装置である。CPU14は、車載用受信装置100の各部材の駆動を有機的に制御して、放送受信処理等を統括制御する。RAM15は、CPU14のワークメモリ等に用いられる。ROM16は、CPU14が実行する制御プログラム等を格納する。
【0036】
オーディオフィルタ21は、復調部12から出力されたTSからオーディオデータのみを抽出する。オーディオデコーダ22は、抽出されたオーディオデータを復号し、デジタル音声信号を出力する。デジタル音声信号は、ワンセグと12セグとが切り替えられて(より具体的には、12セグ視聴中/録画中に受信状態が悪化するとワンセグに切り替えられ、ワンセグ視聴中/録画中に受信状態が良好になると12セグに切り替えられ)、D/Aコンバータ23に出力される。
【0037】
D/Aコンバータ23は、オーディオデコーダ22から入力されるデジタル音声信号をアナログベースバンド信号に変換し、LPF/ドライバ24を介して音声出力部25へ出力する。音声出力部25は、スピーカ等の音声装置を接続して音声信号を出力するための出力端子を含む。
【0038】
ビデオフィルタ31は、復調部12から出力されたTSからビデオデータのみを抽出する。ビデオデコーダ32は、抽出されたビデオデータを復号し、デジタル映像信号を出力する。デジタル映像信号は、ワンセグと12セグとが切り替えられて(より具体的には、12セグ視聴中/録画中に受信状態が悪化するとワンセグに切り替えられ、ワンセグ視聴中/録画中に受信状態が良好になると12セグに切り替えられ)、画像処理部33に出力される。
【0039】
映像処理部33は、ビデオデコーダ32から入力されるデジタル映像信号の映像サイズを変更するスケーラ機能や、文字等を重畳するOSD(On Screen Display)機能を有する。なおOSD機能が描画に用いる画像データやテキストデータは、ROM16等に予め記録されている。或いは、後述するデータデコーダ42により復号されるデータを用いることも可能である。
【0040】
D/Aコンバータ34は、映像処理部33から入力される映像信号をアナログ映像信号に変換し、LPF/ドライバ35を介して画像出力部36へ出力する。画像出力部36は、液晶パネル等の表示装置を接続して画像信号を出力するための出力端子を含む。
【0041】
データフィルタ41は、復調部12から出力されたTSから伝送パラメータ、NIT(Network Information Table)、番組情報、データ放送等のデータを抽出する。データデコーダ42は、抽出されたデータを復号する。復号されたデータは、RAM15等に記録される。
〈2.機能部の構成について〉
ここで、本発明の一実施形態に係る裏サーチ処理を実施するための各機能部の関係を、図2の機能ブロック図を用いながら説明する。なお図2においてCPU14の内部に図示されている機能ブロックは、CPU14が所定のプログラムを実行することにより実現される機能部を表している。
【0042】
図2に示すように、本実施形態のサーチ処理は、サーチ部14a(=選局制御部)、裏サーチ部14b(=検出部)、算出部14c(=継続度算出部)、及びサーチ順変更部14d(=検出制御部)により実施される。
【0043】
サーチ部14aは、所定の放送局からの放送波を受信するためのチャンネルサーチ(以下、「サーチ」という)を行う。サーチ部14aは、後述する裏サーチ部14bが生成する選局候補テーブル(=関連情報)を用いて、ユーザに選局指示された放送波の物理チャンネルを判別し、受信を試行する。受信に成功した場合、この物理チャンネルを用いて放送波の受信を開始する。
【0044】
受信に失敗した場合、サーチ部14aは選局候補テーブルに含まれる未チェックの物理チャンネルを抽出し、受信を試行する。この繰り返しを行い、受信できる物理チャンネルが検知されなかった場合に、サーチに失敗したとみなす。なお、サーチ部14aによるサーチは、ユーザが選局操作を行った場合や、受信中の放送波の受信感度が低下したことが検知された場合等に実行される。
【0045】
裏サーチ部14bは、車載用受信装置100の電源投入と共に、UHF帯の全50chチャンネルの裏サーチを開始する。なお裏サーチは、サブチューナ11cを用いて行う。そして受信可能な物理チャンネルを解析すると共に、放送波に含まれるNITやPAT(Program Association Table)、PMT(Program Map Table)等の解析により、各放送局の中継局の物理チャンネル(=系列チャンネル)を判別する。
【0046】
なお裏サーチ部14bが実施する裏サーチ処理は、サーチ部14aが実施するサーチ処理と併行して行う。裏サーチ部14bは、裏サーチの結果に基づいて、図3に示す選局候補テーブルの生成及び更新を行う。図3(a)〜図3(c)は、時間経過とともに更新された選局候補テーブルの推移の一例を示している。
【0047】
図中の「NetworkID」欄は、予め放送局ごとに割り当てられている識別情報を示している。「NetworkID」に関連付けられているデータとして、予めリモコンのボタンに割り当てられているボタン番号と、一放送局に対する系列チャンネルと、各系列チャンネルのC/N比とが存在する。
【0048】
図3の例では、C/N比が大きい、つまり受信感度がよい系列チャンネルほど、テーブルの左方向に配置されて優先順位(=使用優先度)が高くなっている。またC/N比が小さい、つまり受信感度が悪い系列チャンネルほど、テーブルの右方向に配置されて優先順位が低くなっている。ただし上記のような受信感度に基づいた配置方法はあくまで一例であり、運用の形態に応じて、配置方法を適宜変更可能である。或いは、ランダムに配置を行う形態でもよい。
【0049】
裏サーチ部14bは、裏サーチの結果に基づいて、系列チャンネルの追加/削除を行ったり、各系列チャンネルのC/N比の値を変更したり、C/N比の大きさに基づいて各系列チャンネルの優先順位を変更したりする。
【0050】
なおサーチ部14aは、上記で更新された選局候補テーブルの内容に基づいて、選局を行う。例えば選局候補テーブルが、図3(c)に示す状態であったとする。この場合、ユーザが物理チャンネル13chに対応付けられているリモコンボタン、つまり2番ボタンを押下したとしても、この時点では19chの受信状態の方が13chよりよいため、サーチ部14aは19chを選局する。
【0051】
算出部14cは、メインチューナ11aまたはメインチューナ11bにより受信中である放送番組、つまりユーザに選局指示された放送番組の内容を解析する。解析する内容としては、EPGより取得した放送番組のジャンル(=分野)、放送残り時間、放送局の種別(NHKか、或いは民放か)等を用いる。そして解析結果に基づいて、ユーザが同番組を視聴し続ける可能性を示す連続視聴可能度(=受信継続度)の算出を行う。
【0052】
具体的な算出方法としては例えば、連続視聴可能度の初期値を「0」としたうえで、図4に示す重み付けテーブルを用いた算出処理を行う。図4の例では、放送番組のジャンルがドラマまたは映画である場合は「+2」、スポーツである場合は「+1」、ニュースである場合は「0」、バラエティである場合は「−1」の値を加算する。
【0053】
また放送残り時間に関して、残り時間が一時間以上である場合は「+2」、一時間未満三十分以上である場合は「+1」、三十分未満五分以上である場合は「0」、五分未満である場合は「−1」の値を加算する。
【0054】
また放送局がNHKである場合は「+1」、民放各社である場合は「0」の値を加算する。これは民放各社の場合、番組途中でコマーシャルが放映されるため、コマーシャル時にユーザが視聴番組を変更する可能性が高いことに対応するものである。
【0055】
以上から、連続視聴可能度が大きいほど、ユーザが放送局を変更する可能性が低く、逆に連続視聴可能度が小さいほど、ユーザが放送局を頻繁に変更する可能性が高いとみなすことができる。なお上記はあくまで一例であり、各値は車載用受信装置100の開発時または工場出荷時等において適宜変更可能である。
【0056】
裏サーチ順変更部14dは、上記で算出された連続視聴可能度を用いて、通常の物理チャンネルと、系列チャンネルとのサーチ比率を変更する。そして変更後のサーチ比率に基づき、裏サーチ順を変更するよう、裏サーチ部14bへ指示する。通常であれば、裏サーチ部14bは、13chから62chまで順に均等に裏サーチを行う。そして62chのサーチが完了すると、再び13chから裏サーチを行う、ループ処理を行う。
【0057】
本発明の裏サーチ順変更部14dは、一物理チャンネルに対する裏サーチをn回(nは0を含む自然数)行うごとに、系列チャンネルを裏サーチするよう、裏サーチ部14bへ指示する。なお裏サーチ順変更部14dは、連続視聴可能度が大きくなるにつれnの値を小さくし、連続視聴可能度が小さくなるにつれnの値を大きくするよう、制御を行う。
【0058】
例えば連続視聴可能度が3以上であれば、n=5とし、五つの物理チャンネルを裏サーチするごとに一回、系列チャンネルをサーチするようにサーチ順を変更する。また例えば、連続視聴可能度が2であれば、n=7とし、七つの物理チャンネルを裏サーチするごとに一回、系列チャンネルをサーチするようにサーチ順を変更する。
【0059】
また連続視聴可能度が1であれば、n=10とし、十の物理チャンネルをサーチするごとに一回、系列チャンネルをサーチするようにサーチ順を変更する。また連続視聴可能度が0以下であれば、サーチ順の変更は行わない。
【0060】
図5は、連続視聴可能度に基づいてサーチ順が変更された裏サーチ順序の一例を示している。なお図中の丸印で示された物理チャンネルが、優先的に裏サーチされる系列チャンネルを示している。
【0061】
図5のサーチ順となる前提として、ユーザの視聴している番組が物理チャンネル24chであり、この番組の放送局の中継局が29ch、34ch、40ch、系列局が49chであるとする。またこの番組が高校野球、つまりジャンルがスポーツの番組であり、放送残り時間が45分、放送局がNHKであるとする。この場合、図4の重み付けテーブルにより、連続視聴可能度は3であると算出される。
【0062】
このため図5に示すように、五つの物理チャンネルを裏サーチするごとに一回、系列チャンネルを裏サーチするよう、サーチ順序を変更する。裏サーチ部14bは、この変更されたサーチ順に基づいて裏サーチを行い、選局候補テーブルの更新を行う。
【0063】
図5に示すサーチ順では、まず左上の13chから下方向にサーチが開始される。そして下端の40chまでサーチが完了すると、その右隣の列の上端(この例では29ch)から下方向にサーチが開始される。この繰り返しを行い、継続的に裏サーチを行う。
〈3.裏サーチ処理について〉
ここで、本発明の一実施形態に係る車載用受信装置100が実施する裏サーチ処理について、図6のフロー図を用いながら説明する。
【0064】
本実施形態の処理フローは、ユーザにより車載用受信装置100の電源が投入された時点で開始される。本処理の開始後、裏サーチ部14bはステップS110において、サブチューナ11cによる裏サーチを開始する。これにより、全物理チャンネルの受信状態を把握するために、物理チャンネルの13chから62chまでの全50chを対象としたサーチが行われる。
【0065】
次に裏サーチ部14bはステップS120において、上記の裏サーチによって検知された信号レベルのC/N比やNIT情報を物理チャンネルごとに記録し、選局候補テーブル(図3)の作成及び更新を行う。
【0066】
次に、サーチ部14aはステップS130において、前回電源停止時において選局されていた物理チャンネルによる選局を行う。なおこの物理チャンネルは、後述するステップS240において記録される物理チャンネルを用いる。また、この選局はメインチューナ11aまたはメインチューナ11bに対して行う。
【0067】
次に算出部14cはステップS140において、上記の物理チャンネルで受信した放送波、つまりメインチューナ11aまたはメインチューナ11bで受信した放送波の内容を解析する。さらに算出部14cはステップS150において、解析結果に基づいて連続視聴可能度の算出を行う(図4)。
【0068】
次に裏サーチ順変更部14dはステップS160において、算出された連続視聴可能度に基づいて、裏サーチ順序の変更を行う(図5)。次に裏サーチ部14bはステップS170において、上記で変更された裏サーチ順序による裏サーチを開始する。
【0069】
なおこの際、ステップS110等で開始された実行中の裏サーチは停止される。ただしステップS160において、裏サーチ順序の変更を行う必要がないと判定された場合、裏サーチ部14bは実行中の裏サーチを継続して行う。
【0070】
次に裏サーチ部14bはステップS180において、裏サーチによって検知された信号レベルのC/N比やNIT情報に基づき、選局候補テーブルを更新する。これにより、例えば選局候補テーブルが図3(a)の状態から図3(b)の状態へ変更される。
【0071】
次にサーチ部14aはステップS190において、メインチューナ11aまたはメインチューナ11bで受信中の放送波の受信状態が悪化したか否かを判定する。受信状態が悪化していない場合、後述するステップS220へ移行する。受信状態が悪化した場合、サーチ部14aはステップS200において、受信中の物理チャンネルが、選局候補テーブルにおいて最も優先順位の高い物理チャンネルであるか否かを判定する。
【0072】
最も優先順位の高い物理チャンネルである場合、後述するステップS220へ移行する。最も優先順位の高い物理チャンネルではない場合、つまり優先順位のより高い系列チャンネルが存在する場合、サーチ部14aはステップS210において、最も優先順位の高い系列チャンネルに変更するよう、選局動作を行う。これにより、受信状態の安定した物理チャンネルによる受信を行う。
【0073】
次にサーチ部14aはステップS220において、ユーザ操作による選局指示を検知したか否かを判定する。選局指示を検知した場合、サーチ部14aはステップS221において、選局指示された放送局の物理チャンネルのうち、最も優先順位の高い系列チャンネルを選局候補テーブルから判別する。そして判別した系列チャンネルによる選局動作をメインチューナ11aまたはメインチューナ11bに対して行う。選局動作が完了すると、再びステップS140へ移行する。
【0074】
選局指示を検知していない場合、CPU14はステップS230において、車載用受信装置100に対する電源停止指示を検知したか否かを判定する。電源停止指示を検知していない場合、再びステップS140へ移行する。電源停止指示を検知した場合、サーチ部14aはステップS240において、メインチューナ11aまたはメインチューナ11bで選局中の物理チャンネルを示すチャンネル情報を、RAM15等に記録する。記録が完了すると、本処理を終了する。
【0075】
なお、上記のステップS140〜S160の一連の処理は、同処理を前回実施した時刻から所定時間が経過している場合にのみ、実施することが望ましい。例えば、ユーザが長時間に渡って同一番組を視聴する等、選局が頻繁に行われない状況においては、短い周期でステップS140〜S160が繰り返し行われる可能性がある。ただしこの場合、処理結果が同一となる可能性が高い。このため、例えば算出部14cが時間監視を行い、ある程度の期間を設けて処理の繰り返しを行う形態でもよい。これにより、不要な処理を削減することができる。
【0076】
以上に説明した本実施形態によれば、ユーザが同一の番組を視聴し続ける可能性が高い場合は、系列チャンネルを裏サーチする頻度を高めるようサーチ順序を変更し、変更後のサーチ順序で裏サーチを行って選局候補テーブルを更新する。逆に可能性が低い場合は、全物理チャンネルに対して均等にサーチを行って選局候補テーブルを更新することで、ユーザからの選局指示に備える。
【0077】
つまり系列チャンネルを優先的に裏サーチするか、或いは全物理チャンネルを均等に裏サーチするかを、番組内容に応じて切り替える。これにより、状況に応じた効率のよい裏サーチを実施することが可能である。
[その他の実施の形態]
以上、好ましい実施の形態及び実施例をあげて本発明を説明したが、本発明は必ずしも上記実施の形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内において様々に変形して実施することができる。
【0078】
従って本発明は、以下の形態にも適用可能である。
【0079】
(A)上記実施形態では、本発明の裏サーチ処理を実施するデジタル放送受信装置として、車載用受信装置100を例に説明しているが、これ以外のデジタル放送受信装置において実施する形態でもよい。例えば、ポータブルテレビやテレビ付き携帯電話、デジタルラジオ等で実施する形態でもよい。
【0080】
(B)上記実施形態では、本発明の各種処理に関わる各機能部が、マイクロプロセッサ等の演算処理装置上で所定のプログラムを実行することにより実現されているが、各種機能部が複数の回路により実現される形態でもよい。
【符号の説明】
【0081】
100 車載用テレビ(デジタル放送受信装置)
11 チューナ群(放送受信部)
11a メインチューナ(第一チューナ)
11b メインチューナ(第一チューナ)
11c サブチューナ(第二チューナ)
12 復調部(放送受信部)
13 操作入力部
14 CPU
14a サーチ部(選局制御部)
14b 裏サーチ部(検出部)
14c 算出部(継続度算出部)
14d 裏サーチ順変更部(検出制御部)
15 RAM
16 ROM
21 オーディオフィルタ
22 オーディオデコーダ
23 D/Aコンバータ
24 LPF/ドライバ
25 音声出力部
31 ビデオフィルタ
32 ビデオデコーダ
33 画像処理部
34 D/Aコンバータ
35 LPF/ドライバ
36 画像出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送波の受信及び選局を行うチューナを複数含む放送受信部を備えるデジタル放送受信装置において、
選局指示を受け付け、選局指示された放送波を前記放送受信部が含む第一チューナにより受信するよう前記放送受信部を制御する選局制御部と、
放送波を受信可能な周波数帯域、及び該周波数帯域の受信感度を、前記放送受信部が含む第二チューナにより検出するとともに、前記第一チューナにより受信されている放送波と同一または類似すると推定される放送波を受信可能な周波数帯域である系列チャンネルを前記第二チューナにより検出するよう前記放送受信部を制御する検出部と、
前記第一チューナにより受信されている放送波に含まれる情報を解析し、前記解析の結果に基づいて、該放送波の受信が予め定められた時間を超えて継続される確率を示す受信継続度を算出する継続度算出部と、
前記検出部が前記系列チャンネルの受信感度を検出する頻度と、前記検出部が前記系列チャンネルを除く周波数帯域の受信感度を検出する頻度との比率を、前記受信継続度に基づいて決定し、各周波数帯域の受信感度の検出を行う順序を前記比率に基づいて決定し、決定した前記順序で該検出を行うよう前記検出部を制御する、検出制御部とを備えること
を特徴とするデジタル放送受信装置。
【請求項2】
前記継続度算出部は、前記解析において、放送局の種別、放送番組の分野、または放送番組の放送残り時間を前記情報に基づいて判別し、前記判別の結果に基づいて前記受信継続度を算出すること
を特徴とする請求項1に記載のデジタル放送受信装置。
【請求項3】
前記検出部は、予め定められた順序で前記第二チューナにより各周波数帯域の受信感度を検出するよう前記放送受信部を制御し、
前記検出制御部は、前記順序に基づいて該受信感度の検出をn回(nは0を含む自然数)行うごとに、前記系列チャンネルの受信感度の検出を行うよう前記検出部を制御するとともに、前記nの値を前記受信継続度に基づいて決定すること
を特徴とする請求項2に記載のデジタル放送受信装置。
【請求項4】
前記検出部は、放送局の識別情報と該放送局から放送波を受信するための前記系列チャンネルとを関連付けた情報であり、前記系列チャンネルごとの使用優先度を前記検出部による検出結果に基づいて示した情報である関連情報を生成し、
前記選局制御部は、前記系列チャンネルを前記関連情報に基づいて判別し、前記使用優先度に基づく順で前記第一チューナによる選局、及び受信の試行を行うよう前記放送受信部を制御すること
を特徴とする請求項3に記載のデジタル放送受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−138788(P2012−138788A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290209(P2010−290209)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】