説明

デジタル映像信号伝送システム

【課題】映像信号にパソロジカル信号が含まれる場合であっても、受信エラーの発生しないデジタル映像信号伝送システムを提供する。
【解決手段】本発明にかかるデジタル映像信号伝送システムは、映像入力装置により撮影された映像信号をデジタルシリアル信号として映像伝送線を通じて送信する送信装置と、当該デジタルシリアル映像信号を受信する受信装置とからなり、前記送信装置は、送信するデジタルシリアル映像信号を8ビット10ビット変換処理して前記映像伝送線に対して出力する機能を備えており、当該受信装置は、前記8ビット10ビット変換処理されたデジタルシリアル映像信号を受信し、10ビット8ビット変換処理してからモニタ装置に表示可能な映像信号として出力する機能を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル映像信号をシリアル伝送する映像信号伝送システムにおいて、デジタル映像信号の確実な伝送を確保するために施す信号処理に関する。
【背景技術】
【0002】
監視が必要な場所にカメラを設置し、当該カメラの映像を管理センター等の遠隔地に伝送して当該映像を監視する、といった映像監視システムが広く知られている。
従来の映像監視システムではアナログの映像信号を伝送していたが、近年のデジタル信号処理技術の発展により、アナログの映像信号をデジタルのシリアルデータに変換して伝送する、という方式が用いられるようになってきた(特許文献1参照)。
【0003】
アナログ信号を同軸ケーブルで伝送する場合、長距離伝送時の信号の減衰に対処するために所定の距離毎に信号を増幅する必要があり、システムの構築に高いコストを要するという問題があったが、デジタル信号であれば比較的容易に様々な信号処理を施すことが可能であるため、アナログの場合に比べて低いコストで長距離伝送をすることが可能である。
【0004】
デジタル映像信号の伝送では、伝送される映像の輝度と色差の組み合わせにより、チェックフィールド信号(パソロジカル信号)といって、0又は1が20個程度連続して並ぶケースがあり、そういった組み合わせはおおよそ20種類程度あるとされている。
このようなパソロジカル信号が発生した場合、そのパソロジカル信号の後で0と1の短い変化があると、その変化を検知できず、送信側から送られたデータを受信側が正しく受信できず受信エラーが発生するケースがある。
【0005】
特許文献2には、このパソロジカル信号への対策が開示されており、パソロジカル信号を発生させる輝度と色差の組み合わせのうち、他の種類と比べて格段に発生確率の高いもののみに着目し、当該組み合わせが出現したら、送信側で輝度信号を強制的に反転させパソロジカル信号を発生させないようにするという技術が紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−284671号公報
【特許文献2】特許第4127376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、このような方法では、全てのパソロジカル信号に対処することができない上に、映像信号の一部を強制的に変更する処理を行うため、カメラで撮影された映像信号そのものを送信することにはならないという問題がある。
【0008】
本発明は、上記のような点に鑑みてなされたものであり、カメラで撮影された映像信号そのものを正しく送受信し、パソロジカル信号を含むデジタル映像信号であっても受信エラーの発生しないデジタル映像信号伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかるデジタル映像信号伝送システムは、映像入力装置により入力された映像信号をデジタルシリアル映像信号として映像伝送線を通じて送信する送信装置と、当該デジタルシリアル映像信号を受信する受信装置とからなり、前記送信装置は、送信するデジタルシリアル映像信号を8ビット10ビット変換処理して前記映像伝送線に対して出力する機能を備えており、前記受信装置は、前記8ビット10ビット変換処理されたデジタルシリアル映像信号を受信し、10ビット8ビット変換処理してからモニタ装置に表示可能な映像信号として出力する機能を備えている(請求項1)。
【0010】
本発明のデジタル映像信号伝送システムでは、送信装置側で送信するデジタルシリアル映像信号を8ビット10ビット変換処理するため、0又は1のデータが連続して出現することがなくなり、映像伝送線にパソロジカル信号が送信されることを防止できる。したがって、受信装置側での受信エラーを防止することができるようになる。
なお、受信装置側には10ビット8ビット変換処理を行って元の映像信号を復元する機能を持たせてあるので、映像入力装置の映像を正しくモニタ装置に表示することが可能となる。
【0011】
この場合、前記映像伝送線としては光ファイバケーブルを用いることができ、前記送信装置には、前記8ビット10ビット変換処理したデジタルシリアル映像信号を光信号に変換してから前記映像伝送線に出力する機能を備えさせ、前記受信装置には、当該光信号を受信して光電変換する機能を備えさせると良い(請求項2)。
アナログの映像信号の場合には、同軸ケーブルを敷設して映像信号を伝送することが一般的だが、同軸ケーブルの場合には信号の減衰に対処するため100メートル程度の短い距離毎に信号増幅器を設置しなければならず、長距離伝送を行うにはコストがかかるという問題があった。このシステムではデジタル映像信号を伝送するという特徴を生かして、光電変換処理により生成した光信号を光ファイバを用いて送信することで、例えば30キロ程度であれば信号増幅器等を用いずに安価なシステムを構築することが可能となるという利点がある。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明のデジタル映像信号伝送システムによれば、カメラで撮影された映像信号そのものを正しく送受信することが可能となり、パソロジカル信号を含むデジタル映像信号であっても受信エラーを発生させないという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るデジタル映像信号伝送システムの全体構成の概要を示す模式図である。
【図2】送信装置1と受信装置2の間でやりとりされるデータのフォーマットの一例を示す図である。
【図3】データ変換テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、送信装置1と受信装置2とで構成されるデジタル映像信号伝送システムの全体構成を示す構成図である。
【0015】
送信装置1には例えば発電所等の監視対象エリアが撮影範囲として設定されたカメラが接続されており、映像入力部101がカメラからの映像信号を受信する。この映像信号はアナログ信号でもデジタル信号でも構わないが、本実施形態では、デジタルのSDI信号フォーマットであるものとする。なお、映像信号がアナログの場合には、映像入力部101においてA/D変換処理を施した上で、SDI信号フォーマットのデータを作成するようにすれば良い。また、HDMI信号のような異なるデジタル信号フォーマットであっても実現可能である。
なお、映像入力部101は接続されたカメラがHD−SDI方式かSD−SDI方式かを自動的に認識する機能を備えており、当該情報を後述するパケットの「ヘッダ」フィールドに格納して、受信装置2に対して通知する機能を備えている。
【0016】
パケット生成部111は、図2に示す送信フォーマットのパケットを生成する機能を備えており、映像入力部101から受け取ったSDI信号フォーマットの映像信号を所定のデータ数毎(例えば40バイト毎)に分割し、図2の「SDIデータ」と書かれたフィールドに格納する。
この送信フォーマットでは、8バイトの「アイドル」信号(例えば16進数で「BC」)が先頭と末尾に付与されており、このアイドル信号を目印にして受信装置2がデータを正しく受信できるようになっている。そして、4バイトの「ヘッダ」、40バイトの「SDIデータ」、4バイトの「音声データ」、2バイトの「CRC」を順番に格納する形式が採用されている。
【0017】
「ヘッダ」フィールドには、SDIデータがHD−SDI形式かSD−SDI形式かを示す情報、音声データフィールドに有効な音声データが格納されているかどうかを示す情報、電源の監視結果に関する情報、カメラの制御に関する情報、送信装置1に取り付けられたLED(図示せず)のランプ点滅状態等が格納される。
また、「音声データ」フィールドには、送信装置1や受信装置2に取り付けられたマイクやスピーカで入出力される音声データが格納される。この音声データについても、所定の時間毎にデータが分割して格納される。
「CRC」フィールドには「ヘッダ」から「音声データ」までのデータについて、受信装置2がデータ内容を検証するための所定の生成多項式の演算結果が格納される。
【0018】
パケット生成部111で生成されるパケットは、順次8B10B変換部112に受け渡されて8ビット10ビット変換処理が施され、光信号送受信部131で光信号に変換して光ファイバケーブルに出力する。
この8ビット10ビット変換処理は、パケット生成部で生成されたデータを8ビットずつ取り出し、当該8ビットのデータパタンに対応した10ビットのデータパタンを、予め記憶したデータ変換テーブルから読み出して置き換える処理であり、図3は、このデータ変換テーブルの一部を示すものである。
【0019】
このデータ変換テーブルでは、0又は1のデータが長く続かないように10ビット変換データを準備してある。そのため、送信装置1と受信装置2の間の映像伝送線上でパソロジカル信号が発生する心配がなくなり、受信装置2が受信エラーを起こす心配がなくなる。
【0020】
一方の受信装置2では、光信号送受信部231で送信装置1が送信したデータを受け取って電気信号に変換し、10B8B変換部222で8ビット10ビット変換されたデータを基の8ビットのデータに戻す処理を行う。
この場合、受信装置2にも図3相当のデータ変換用のテーブルが記憶されており、10B8B変換部222は当該データ変換用のテーブルを参照して元の8ビットのデータを復元することができる。
そして、パケット分解部221で、「ヘッダ」、「SDIデータ」、「音声データ」にそれぞれ分解し、「SDIデータ」フィールドの映像データは映像出力部201経由でモニタ装置に出力してカメラの映像を表示させる。また、送信装置1にマイクが接続されている場合には、その音声データが音声入出力部203経由でスピーカに出力される。
本実施形態のように、SDIデータが標準的なSDI信号フォーマットの形式そのものであれば、特別な加工処理を施すことなくそのまま順次モニタ装置宛に出力すれば良いが、標準的なフォーマットではないのであれば、モニタ装置側で表示可能な形式に加工してから出力すれば良い。また、デジタル/アナログ変換処理をした後、アナログ信号で出力しても良い。
【0021】
なお、以上は、送信装置1からデータを送信して受信装置2が受信する機能についての説明であるが、受信装置2から送信装置1に対しても図2に示すフォーマットと同じデータを送信することが可能であり、送信装置1と受信装置2には、受信装置2から送信装置1に対するデータの送信に応じて、それぞれ同じ機能が備えられている。
具体的には、受信装置2のパケット生成部211で生成されたデータは、8B10B変換部212で変換された後、光信号送受信部231を介して光ファイバケーブルに送出され、このデータは送信装置1の光信号送受信部131に受け取られた後に、10B8B変換部122で元のパケットに復元された後にパケット分解部121で分解され、カメラに対する制御信号であれば、制御信号入出力部102を通じてカメラに出力され、音声データであれば、送信装置1に接続されたスピーカによって再生される。
【0022】
この場合、受信装置2にはカメラが接続されていないため、受信装置2から送信装置1に送信されるデータの「SDIデータ」フィールドには映像データが格納されない。
また、受信装置2には、カメラのズームや旋回といった制御を行うためのカメラ操作部(パーソナルコンピュータ等で構成できる)を接続することが可能であり、制御信号入力部202がカメラ操作部からのカメラ制御信号を受信して受信装置2から送信装置1に向かうパケットの「ヘッダ」フィールドにそのカメラ制御信号を格納して送信装置1宛に送出することができるようになっている。
【0023】
カメラ操作部から入力されるカメラ制御信号は、送信装置1に受信された後、制御信号入出力部102からカメラに出力される。カメラは、そのカメラ制御信号に応じてズームや旋回等の動作を行い、倍率や旋回角度といったカメラ状態情報を送信装置1に出力する。制御信号入出力部102は、受け取ったカメラ状態情報を、送信装置1から受信装置2に向かうパケットに格納して受信装置2宛に送出する。そして、送信装置1がカメラ操作部にカメラ状態情報を出力する。
このデータの送受信により、カメラ操作部がカメラの制御に関する指示を行ったら、カメラがその指示に従って動作し、その動作の結果をカメラ操作部に通知できる仕組みになっている。
なお、音声データは、送信装置1や受信装置2に接続されているマイクやスピーカに応じていずれの方向にも送受信することが可能となっている。
したがって、管理センター側のマイクに対して入力した音声を、受信装置2および送信装置1を介して送信装置1に接続されたスピーカから出力することが可能となる。また、送信装置1側に設けたマイクによって、監視エリアの音声信号を管理センター側に送信することも可能である。
【0024】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0025】
例えば、この実施形態では、デジタル映像信号をSDI信号としているが、HDMI信号やその他の方式であっても実現することができる。
カメラから入力される映像信号がいかなる方式であっても、パケット生成部111において所定のサイズに分割して所定のフォーマットのパケットに格納して送信する方法を採用しているため、本システムでは、送信装置1や受信装置2を置き換えずにカメラのみを別の方式のカメラに容易に交換することが可能である、というさらなる利点も有している。
【符号の説明】
【0026】
1 送信装置
101 映像入力部
102 制御信号入出力部
103 音声入出力部
111 パケット生成部
112 8B10B変換部
121 パケット分解部
122 10B8B変換部
131 光信号送受信部
2 受信装置
201 映像出力部
202 制御信号入力部
203 音声入出力部
211 パケット生成部
212 8B10B変換部
221 パケット分解部
222 10B8B変換部
231 光信号送受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像入力装置により入力された映像信号をデジタルシリアル映像信号として映像伝送線を通じて送信する送信装置と、当該デジタルシリアル映像信号を受信する受信装置とを備えるデジタル映像信号伝送システムであって、
前記送信装置は、送信するデジタルシリアル映像信号を8ビット10ビット変換処理して前記映像伝送線に対して出力する機能を備えており、
前記受信装置は、前記8ビット10ビット変換処理されたデジタルシリアル映像信号を受信し、10ビット8ビット変換処理してからモニタ装置に表示可能な映像信号として出力する機能を備えること
を特徴とするデジタル映像信号伝送システム。
【請求項2】
前記映像伝送線は光ファイバケーブルであり、
前記送信装置は、前記8ビット10ビット変換処理したデジタルシリアル映像信号を光信号に変換してから前記映像伝送線に出力する機能を備え、
前記受信装置は、当該光信号を受信して光電変換する機能を備えること
を特徴とする請求項1に記載のデジタル映像信号伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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