説明

デジタル無線電話装置

【課題】 徐々に悪化する受信感度の様子を通話者に自然な形で認識させること。また、圏外に達して受信感度の限界となった時に通話者に不快感を与えないこと。
【解決手段】 アンテナにより無線受信した音声信号の強度を検出する強度検出手段と、検出した強度が所定値以下の場合に受信した音声信号の音量を前記強度に応じて小さく再生する再生手段とを備える。これにより、常時、受信感度を監視し、受信感度が悪化した場合に悪化の程度に応じて再生音量を小さくするため、通話者が自然に受信感度の悪化を認識することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、受信信号の強度に対応して受話音量を制御するデジタル無線電話装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、デジタル無線電話装置では、送信端末または受信端末の移動によって端末間の電波の伝搬距離が離れ受信感度が悪化した場合にも、エラー訂正により音声品質をほぼ一定に保つということが行われていた。 以下、従来の技術を図面を用いて説明する。図5は、従来のデジタル無線電話装置の構成を示すブロック図である。図5において、アンテナ1は無線信号を受信する。高周波回路2は受信信号の周波数変換を行う。変復調回路3は周波数変換された信号をデジタル音声信号に変換する。デジタルシグナルプロセッサ4はデジタル音声信号を復号する。DAコンバータ5は復号されたデジタル音声信号をアナログ音声信号に変換して出力する。受信信号強度検出器7は高周波回路2により周波数変換された信号から現在の受信信号の強度を検出する。ADコンバータ8は検出された信号強度をデジタルデータに変換する。CPU9は、ADコンバータ8から入力された信号強度を元に、送信時のチャネルが既に使用中でないかどうかを判断する。
【0003】以上のように構成された従来のデジタル無線電話装置についてその受信動作を説明する。
【0004】移動体通信では端末が移動することによって端末間の電波の伝搬距離が離れると、通信データ中のエラー数が増加する。エラーのある音声信号をそのまま復号すると音声品質に劣化が生じるが、デジタル通信では、送信側装置がエラーを検出、訂正するための冗長ビットを復号データに付加して送信してくるので、受信側装置では、アンテナ1が受信したデータを高周波回路2により周波数変換し、さらに変復調回路3により変換されたデジタル音声信号のエラーデータの訂正を行う。訂正不可能なエラーデータの場合は、エラーを検出する直前のデータに置き換えたり、エラー検出直後の正常データとの間の平均値データに置き換える等の補間処理を行って復号し、DAコンバータ5によりアナログ変換されて出力される。このため、受信感度が悪化してもエラー訂正により音声品質をほぼ一定に維持することができるため、通話者は圏外などの通信の限界が近づいてもそれを認識することがない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上述の従来技術の構成では、受信感度が徐々に悪化していっても通話者は感知することができないため、圏外に達して受信感度の限界となった時の突然の劣化が通話者に非常な不快感を与えることになる。限界に達した際には、単に音声劣化や突然の無音だけに留まらず、ひどい場合には、非常に大きな破裂音を発することもある。
【0006】本発明は、上述の課題に鑑みて為されたもので、徐々に悪化する受信感度の様子を通話者に自然な形で認識させることができるデジタル無線電話装置を提供することを目的とする。
【0007】また、圏外間近で発生する破裂的な音による不快感をなくすことを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、上述の目的を達成するため、以下の構成をとる。
【0009】請求項1記載のデジタル無線電話装置の発明は、アンテナにより無線受信した音声信号の強度を検出する強度検出手段と、検出した強度に応じて音声信号の音量を小さく再生する再生手段とを備える構成とした。 この構成により、常時、受信感度を監視し、受信感度が悪化した場合に悪化の程度に応じて再生音量を小さくするため、通話者が自然に受信感度の悪化を知ることができる。
【0010】請求項2記載の発明は、アンテナにより受信した無線信号を周波数変換する周波数変換手段と、周波数変換された信号をデジタル音声信号に変換する変復調手段と、変復調手段により変換されたデジタル音声信号を復号する復号手段と、復号されたデジタル音声信号をアナログ音声信号に変換するDA変換手段と、前記周波数変換手段により変換された信号の強度を検出する強度検出手段と、検出した信号強度に応じて再生音量を調節するための音量制御信号を出力する音量制御信号出力手段と、前記音量制御信号に基づいて前記DA変換手段により出力されたアナログ音声信号の出力レベルを制御する音量制御手段と、音量制御手段により制御された音量で前記アナログ音声信号を再生する再生手段とを備える構成とした。
【0011】この構成により、無線受信した信号を可聴信号に変換するのと並行して、該信号の強度に応じた音量制御信号を生成し、音声制御信号により受信音声の音量を調整するため、通話者が自然に逐次受信感度状態を知ることができる。
【0012】請求項3記載の発明は、請求項2記載のデジタル無線電話装置において、前記音量制御信号出力手段は、前記強度検出手段により検出された信号強度が所定範囲内のときに前記音量制御信号を出力する構成とした。
【0013】この構成により、一定以上強度が悪化した場合のみ、受信音声の音量を調整するため、圏外間近で発生する破裂的な音を防止できるとともに軽度の場合には通常音量で会話することができる。
【0014】請求項4記載の発明は、アンテナにより無線受信した音声信号の強度を検出し、検出した強度が所定値以下の場合に受信した音声信号の音量を前記強度に応じて小さく再生する構成とした。
【0015】この構成により、常時、受信感度を監視し、受信感度が悪化した場合に悪化の程度に応じて再生音量を小さくするため、通話者が自然に受信感度の悪化を知ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施例によるデジタル無線電話装置の構成を示すブロック図である。図1において、アンテナ1は無線信号を受信する。高周波回路2は受信信号の周波数変換を行う。変復調回路3は周波数変換された信号をデジタル音声信号に変換する。デジタルシグナルプロセッサ4はデジタル音声信号を復号する。DAコンバータ5は復号されたデジタル音声信号をアナログ音声信号に変換して出力する。アッテネータ6はアナログ音声信号の出力レベル(Vout)を変化させる。受信信号強度検出器(RSSI)7は高周波回路2により周波数変換された信号から現在の受信信号の強度を検出する。ADコンバータ8は検出された信号強度をデジタルデータに変換する。CPU9は信号強度のレベルを判断しレベルに応じた音量制御データを出力する。DAコンバータ10は音量制御データをアナログに変換する。
【0017】以上のように構成したデジタル無線電話装置の動作について、図2のフロー図に従って説明する。
【0018】図2のステップ(以下STと略す。)201〜ST202において、アンテナ1が受信した受信信号は、高周波回路2で中間周波(IF)信号に周波数変換され、変復調回路3および受信信号強度検出器7(RSSI)に出力される。
【0019】ST203〜ST205において、変復調回路3に入力された中間周波信号は、デジタル音声信号に変換され、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)4により復号されてDAコンバータ5に出力される。さらに、DAコンバータ5はデジタル音声信号をアナログ信号に変換してアッテネータ6に出力する。
【0020】一方、ST206〜ST207において、受信信号強度検出器(RSSI)7に入力された中間周波信号は、受信信号強度検出器(RSSI)7により、信号の強度を直流電圧信号の電圧レベルの高低に変換され、ADコンバータ8を経てCPU9に信号強度データとして直流電圧信号が出力される。
【0021】ST208〜ST210において、CPU9はこの信号強度データを積分処理し瞬時変動成分が除去された後で、信号強度のレベルが悪化しているかどうかを判断する。信号強度が悪化しているかどうかは、予め実験などで求めておき、記憶領域に記憶されているしきい値により決定する。このしきい値と比較して悪化していると判断した場合、悪化の程度に応じた音量制御データをDAコンバータ10に送る。
【0022】ST211において、DAコンバータ10は音量制御データをデジタルからアナログ信号に変換してアッテネータ6に出力する。音量制御データとは、信号強度に応じて最適な再生音量になるようにアッテネータ6の信号減衰量を決定するための予め実験などで求められた制御電圧である。
【0023】ST212において、アッテネータ6はST205でDAコンバータ5から入力したアナログ音声信号の再生出力レベルを、ST211でDAコンバータ10から入力した音量制御データを基に変化させる。すなわち、アッテネータ6はDAコンバータ10の出力信号電圧が小さい時には減衰量を小さく、大きい時には減衰量を大きくすることにより、再生音量を調整する。
【0024】図3は受信感度の低下に伴うエラー発生頻度を示す図である。図4は受信感度の低下に伴う再生音量の変化を示す図である。図3に示すように、受信信号強度検出器(RSSI)7の出力レベルが高い、領域■ではエラー発生頻度も低く、図4に示すように信号強度はしきい値以上となるので、再生音量は通常レベルとなり通話には全く影響がない。この状態から次第に端末間の距離が広がっていくと、RSSIの出力レベルが弱くなり、図3の領域■に示すようにエラーの発生数も増加するため、図4の領域■に示すように信号強度はしきい値以下となり、徐々に再生音量が小さくなる。圏外付近に達した図3、図4の領域■の状態では、通信の限界時に破裂音が発生するが再生音量は非常に小さくなっているので不快感を伴うことがない。圏外となった後の図3R>3、図4の領域■の状態では、エラーもバースト状であり無音状態となる。
【0025】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明は、アンテナにより無線受信した音声信号の強度を検出する強度検出手段と、検出した強度に応じて音声信号の音量を小さく再生する再生手段を備えることにより、常時、受信感度を監視し、受信感度が悪化した場合に悪化の程度に応じて再生音量を小さくするため、通話者が自然に受信感度の悪化を認識することができる。
【0026】また、圏外間近で破裂的な音を発生させないため、使用者に不快感を与えることがなく使い勝手を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態によるデジタル無線電話装置の構成を示すブロック図
【図2】本発明の一実施の形態によるデジタル無線電話装置の動作を説明するフロー図
【図3】受信感度の低下に伴うエラー発生頻度を示す図
【図4】受信感度の低下に伴う再生音量の変化を示す図
【図5】従来例によるデジタル無線電話装置の構成を示すブロック図
【符号の説明】
1 ・・・・ アンテナ
2 ・・・・ 高周波回路
3 ・・・・ 変復調回路
4 ・・・・ デジタルシグナルプロセッサ(DSP)
5、10 ・・・・ DAコンバータ
6 ・・・・ アッテネータ
7 ・・・・ 受信信号強度検出器(RSSI)
8 ・・・・ ADコンバータ
9 ・・・・ CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】 アンテナにより無線受信した音声信号の強度を検出する強度検出手段と、検出した強度に応じて音声信号の音量を小さく再生する再生手段とを備えることを特徴とするデジタル無線電話装置。
【請求項2】 アンテナにより受信した無線信号を周波数変換する周波数変換手段と、周波数変換された信号をデジタル音声信号に変換する変復調手段と、変復調手段により変換されたデジタル音声信号を復号する復号手段と、復号されたデジタル音声信号をアナログ音声信号に変換するDA変換手段と、前記周波数変換手段により変換された信号の強度を検出する強度検出手段と、検出した信号強度に応じて再生音量を調節するための音量制御信号を出力する音量制御信号出力手段と、前記音量制御信号に基づいて前記DA変換手段により出力されたアナログ音声信号の出力レベルを制御する音量制御手段と、音量制御手段により制御された音量で前記アナログ音声信号を再生する再生手段とを備えることを特徴とするデジタル無線電話装置。
【請求項3】 前記音量制御信号出力手段は、前記強度検出手段により検出された信号強度が所定範囲内のときに前記音量制御信号を出力することを特徴とする請求項2記載のデジタル無線電話装置。
【請求項4】 アンテナにより無線受信した音声信号の強度を検出し、検出した強度が所定値以下の場合に受信した音声信号の音量を前記強度に応じて小さく再生することを特徴とするデジタル無線電話再生方法。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2000−101460(P2000−101460A)
【公開日】平成12年4月7日(2000.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−267885
【出願日】平成10年9月22日(1998.9.22)
【出願人】(000187736)松下電送システム株式会社 (7)
【Fターム(参考)】