説明

デジタル白黒画像の不良画素の輝度補正のための方法

【課題】デジタル白黒画像の不良画素の輝度を補正する。
【解決手段】近傍にわたる不良画素輝度の計算に存在するデジタル白黒画像の不良画素の輝度補正のための方法であって、好ましくは四重結合された不良クラスタ周辺を決定するとともに、そのような周辺に属する各不良画素の輝度値を計算するために用いられる不良画素マップを生成し、各不良画素の輝度値が計算されるまでそのような手順を繰り返し実行し、不良画素輝度値が近傍画素輝度値にわたる加重平均値として計算される。
主張された方法の技術結果は、デジタル白黒画像の不良画素の輝度補正によって、取得された画像の品質を増加することにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、画像処理方法に関し、すなわち、デジタル白黒画像の不良画素の輝度補正に関する。
【背景技術】
【0002】
技術分野の従前の状態
デジタル画像検出器は、非常に多くの類似のセル(画素)を含み、そのいくつかまたはその小グループは不良であり得る。画像において、これらの不良は、表示(view)−実際の信号を記録する近傍の画素の輝度値よりも低い輝度値を有する依存領域−として現れる。そのような画素は不良画素と称され、不良画素のグループは不良クラスタと称される。最も広範な不良は以下のようなものである。
【0003】
ドット抜け(Dead pixel)−この不良は、異なる入力信号レベルにおいて、不変の出力信号をもたらす。
【0004】
ホットピクセル(Hot pixel)−この不良は、入力に応じて不正確な出力信号をもたらすか、あるいは、たとえば、温度または隣接画素値などの他の要因に大きく依存する。
【0005】
依存ピクセル(Dependent pixel)−この不良は、隣接画素に依存する画素信号をもたらす。
【0006】
画像補正法のための入力パラメータは不良検出座標であり、その行および列番号はデジタル検出器キャリブレーションステージにおいて決定される。一般に、不良画素輝度値は、異なる計算技術の使用によって、隣接画素にわたって計算される。不良画素輝度補正は、視覚化されたデジタル画像のよりよい認識に寄与するとともに、たとえば、ノイズ低減、コントラストおよび輝度レベル計算の間、ならびに画像中の物体探索の間の、さらなる処理を単純化する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】非パラメータサンプリングによるテクスチャ合成(texture synthesis by non-parametric sampling),A.エフロス(A. Efros)およびT.ルーグ(T. Leug),コンピュータビジョン世界会議議事録,pp.1033-1038,ギリシャ,1999年9月
【非特許文献2】MATLABを用いたデジタル画像処理(Digital Image Processing using MATLAB),ゴンザレス R.ウッズ(Gonzalez R., Woods),R.スティーブン(R., Steven),L.エディンズ(L. Eddins),テクノスフェラ(Technosphera),2006年,p.370
【非特許文献3】データ解析のための適合された平滑化技術(Applied Smoothing Techniques for Data Analysis),A.W.ボウマン(A. W. Bowman)およびA.アザリニ(A. Azzalini),クラレンドン出版(Clarendon Press),1997年,p.49
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願において、我々は、不良画素の輝度補正方法を主張し、その座標はデジタル検出器キャリブレーションステージにおいて決定されるとともに、補正方法のための入力パラメータである。
【0009】
[非パラメータサンプリングによるテクスチャ合成(texture synthesis by non-parametric sampling),A.エフロス(A. Efros)およびT.ルーグ(T. Leug),コンピュータビジョン世界会議議事録,pp. 1033-1038,ギリシャ,1999年9月]に記載の方法が公知である。iおよびjを画像画素座標とし、v(i)およびv(j)を言及された画素の輝度値とし、N(i)およびN(j)はそれらの近傍である。画素iを中央に有する画像の矩形部分を、画素iの近傍N(i)とする。
【0010】
公知の方法は、信号v(i)を再構築することが必要であるときに、ある距離(metric)d(i,j)にわたる画素jの最も近い近傍N(j)が、近傍N(i)を用いて決定されることにある。
【0011】
j=arg min(d(i,j))
近傍N(j)が決定された後に、信号v(i)は、信号V(j)に等しいと推定される。
【0012】
v(i)=v(j)
近傍N(j)の探索は、画像全体にわたって実行されるとともに、探索すべき領域と称される任意の限定された画像領域にわたっても実行され得る。距離d(i,j)は、以下の態様で計算される。
【0013】
【数1】

【0014】
ここで、b(k)は、適当な近傍の二値マスクであり、k画素がすでに既知であればb(k)=0であり、k画素の信号の計算が依然として進行中であればb(k)=1である。正規化係数Zは、以下の式で求められる。
【0015】
【数2】

【0016】
公知の方法の欠点は以下のようなものである。
【0017】
【数3】

【課題を解決するための手段】
【0018】
発明の開示
本発明の目的は、デジタル白黒画像の不良画素の輝度を補正することである。
【0019】
主張される方法の技術的結果は、デジタル白黒画像の不良画素の輝度補正によって、取得された画像の品質を向上することにある。
【0020】
技術的結果は、不良画素の輝度値がその近傍を用いて計算されるデジタル白黒画像の不良画素の輝度補正の方法において、本発明に従って、不良画素マッピングによって不良クラスタ周辺が決定される。その後、その周辺における各不良画素の輝度値が計算され、各不良画素の輝度値が計算されるまでこの手順が繰り返し実行され、不良画素輝度値は、近傍の画素輝度値にわたる加重平均値として計算される。
【0021】
画像品質を改善するために、四重結合された周辺が、不良クラスタ周辺として用いられる。
【0022】
画像品質を改善するために、不良画素の輝度値が、ナダラヤ−ワトソン(Nadaraya-Watson)推定に従って決定され、探索すべき領域にわたって加算を実行する。
【0023】
【数4】

【0024】
i,jは画素インデックスであり、
N(i)は、i番目の画素の近傍値であり、
v(i)は、i番目の不良画素の決定における輝度値であり、
v(j)は、j番目の画素の輝度値であり、
ω(i,j)は、以下の式を用いて計算された重みであり、
【0025】
【数5】

【0026】
hは、平滑パラメータであり、
d(i,j)は、近傍N(i)とN(j)との間の距離であり、
【0027】
【数6】

【0028】
k,nは、画素インデックスであり、
Z(i,j)は、正規化係数であり、
【0029】
【数7】

【0030】
b(k)およびb(n)は、不良画素マップにおけるk番目およびn番目の画素の値である。
【0031】
画像品質を改善し、かつ主張される方法のソフトウェアランタイムを短縮するために、不良画素周辺は、3×3の近傍画素にわたって分類される。異なるクラスに属する不良画素の輝度を補正するために、近傍サイズの異なる値および探索すべき領域が用いられ、以下のような分類、近傍サイズの値、および探索すべき領域が用いられる。
【0032】
3未満の不良画素量を有するクラスタ、3×3の画素近傍サイズ、および3×3の探索すべき画素領域。
【0033】
4以上の不良画素量を有するクラスタ、5×5の画素近傍サイズ、および5×5の探索すべき画素領域。
【0034】
1画素幅を有する行の形状における不良クラスタ、5×5の画素近傍サイズ、ならびに、行についての3×7の探索すべき画素領域および列についての7×3の探索すべき画素領域。
【0035】
2画素幅を有する行の形状における不良クラスタ、5×5の画素近傍サイズ、ならびに、行についての5×7の探索すべき画素領域および列についての7×5の探索すべき画素領域。
【0036】
主張される方法の特徴は以下のようなものである。
1)方法は、不良画素配置には依存しない。すなわち、方法は、いかなる限定を伴わずに、任意の形状の不良クラスタ輝度値を補正することができる。
【0037】
2)方法は、画像テクスチャ、たとえば、輝度の急変の境界における信号および局部的に周期的なテクスチャの領域における信号を現実的に再構築する。
【0038】
不良クラスタ配置についての主張される方法の独立性を与えるために、−不良クラスタ周辺にわたって−不良画素補正手順が繰り返し実行される。まず。特定された不良クラスタ座標を用いて不良画素マップがプロットされる−不良画素が単位(unit)によって示され、一方実信号を有する画素はゼロで示される二値画像。四重結合された周辺が不良画素マップにおいて見出され、その周辺に属する各不良画素の輝度値が計算され、その後、補正された輝度を有する画素は、不良画素マップにおいてゼロで示される。さらに、この手順は、最後の不良画素の輝度値が計算されるまで継続される。不良クラスタ周辺は、公知のルックアップテーブル(LUT)法によって計算された。[MATLABを用いたデジタル画像処理(Digital Image Processing using MATLAB),ゴンザレス R.ウッヅ(Gonzalez R., Woods),R.スティーブン(R., Steven),L.エディンズ(L. Eddins),テクノスフェラ(Technosphera),2006年,p.370]
不良画素輝度の補正方法の本質は、不良画素輝度値が、近傍の画素輝度にわたる加重平均として計算されることである。さらに、不良画素近傍は回帰器(regressor)とみなされ、不良画素輝度値は従属変数(ここでは、回帰分析の項が用いられる)とみなされる。従属変数である不良画素輝度値の計算のために、我々は、非パラメータ回帰法から、ナダラヤ−ワトソン推定を用いる。[データ解析のための適合された平滑化技術(Applied Smoothing Techniques for Data Analysis),A.W.ボウマン(A. W. Bowman)およびA.アザリニ(A. Azzalini),クラレンドン出版(Clarendon Press),1997年,p.49]
【0039】
【数8】

【0040】
ここで、K(・)はカーネル平滑器(Kernel smoother)であり、hは平滑化パラメータ(ウィンドウ幅)である。この場合においては、xは不良画素近傍を示し、yは計算された不良画素輝度値を示している。
【0041】
不良画素輝度の補正方法の実行例が図1〜図6に示される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】10×10のサイズの不良クラスタ周辺を示す図である。白の不良画素は1で示される。灰色の実信号を有する画素は2で示される。
【図2】図1に示される不良クラスタの四重結合された周辺を示す図である。白色で数字の3は、不良画素の四重結合クラスタ周辺を形成するそれらの画素を示している。周辺不良画素の1つは4であり、その3×3の画素近傍は5である。
【図3】不良画素を含む画像の一部の例を示す図である。1画素幅の不良の行および列は6である。2画素幅の不良の行および列は7である。一点鎖線タイプの不良を含む1画素幅の列は8である。
【図4】不良画素を含む画像の一部の例を示す図である。1画素幅の不良の行は6である。2画素幅の不良の行および列は7である。
【図5】補正後の図3に提示した画像を示す図である。
【図6】補正後の図4に提示した画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
主張される方法において、不良画素iの輝度値v(i)は、以下の式のように、加重平均値として計算される。
【0044】
【数9】

【0045】
ここで、ω(i,j)は、一般的な限界値0≦ω(i,j)≦1を伴う重み係数であり、分数項は正規化条件である。上記公式における加算は、探索すべき所与の領域にわたって計算される。N(i)およびN(j)は、iおよびjの座標を有する上述の画素近傍を意味するものとする。以下の式によって、これらの近傍間の距離が計算される。
【0046】
【数10】

【0047】
ここで、画素が不良のものとして記される場合はb(k)=1であり、そうでなければb(k)=0である。正規化係数Z(i,j)は、以下の式によって与えられる。
【0048】
【数11】

【0049】
重みω(i,j)は、以下の式を用いて計算される。
【0050】
【数12】

【0051】
平滑化パラメータhが、シルバーマン規則(Silverman's Rule)に従って計算される平滑化周辺に比例するように選択される。[データ解析のための適合された平滑化技術(Applied Smoothing Techniques for Data Analysis),A.W.ボウマン(A. W. Bowman)およびA.アザリニ(A. Azzalini),クラレンドン出版(Clarendon Press),1997年,p.31]
【0052】
【数13】

【0053】
無次元係数kは、主張される補正方法のパラメータであり、平滑化パラメータhの制限を与えるために導入される。
【0054】
主張される不良画素輝度の補正方法のパラメータは、
1)不良画素近傍の縦横サイズ
2)探索領域の縦横サイズ
3)無次元係数k
である。
【0055】
発明の実施形態の好ましい変形例
主張される不良画素輝度の補正方法は、非常に高い演算上の複雑性を有している。計算方法における変更を伴わずにアルゴリズムを加速する第1の可能性は、不良配置に関してアルゴリズムパラメータを最適化することである。主張される方法においては、3×3の画素近傍における不良クラスタの以下のような分類が用いられる。
【0056】
1)小クラスタは、3以下の不良画素を含むクラスタである。
2)大クラスタは、4以上の不良画素を含むクラスタである。
【0057】
3)不良クラスタは、1画素幅の行である。
4)不良クラスタは、2画素幅の行である。
【0058】
不良クラスタの数が7×7の画素を超えず、かつ不良行の幅が2画素以下しかない特定のデジタル検出器については、以下のアルゴリズムパラメータを用いることができる(表を参照)。
【0059】
【表1】

【0060】
不良画素輝度の補正の例において、上記の表で与えられたパラメータが用いられ、k係数は1である。図3および図4は、1および2画素の行および列の形式の不良を有する画像、および一点鎖線のタイプの不良を含む1画素幅の列の画像の例を示す。図5および図6は、同一の画像であるが、主張される方法による補正後のものを示す。
【符号の説明】
【0061】
1,3,4 不良画素、2 正常画素、5 画素近傍、6 不良の行および列、7,8 不良列。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近傍にわたる不良画素輝度の計算を含むデジタル白黒画像の不良画素の輝度補正のための方法であって、
不良画素マップの生成が、不良クラスタ周辺を決定するとともに、そのような周辺に属する各不良画素の輝度値を計算するために用いられ、
その手順が、各不良画素の輝度値が計算されるまで繰り返し実行され、
不良画素輝度値が近傍画素輝度値にわたる加重平均値として計算されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
四重結合された周辺が、不良クラスタ周辺として用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
不良画素輝度値は、ナダラヤ−ワトソン(Nadayara-Watoson)推定を用いて、探索すべき領域にわたった加算を実行することによって決定され、
【数1】

i,jは画素インデックスであり、
N(i)は、i番目の画素の近傍値であり、
v(i)は、i番目の不良画素の決定における輝度値であり、
v(j)は、j番目の画素の輝度値であり、
ω(i,j)は、以下の式を用いて計算された重みであり、
【数2】

hは、平滑パラメータであり、
d(i,j)は、近傍N(i)とN(j)との間の距離であり、
【数3】

k,nは、画素インデックスであり、
Z(i,j)は、正規化係数であり、
【数4】

b(k)およびb(n)は、前記不良画素マップにおけるk番目およびn番目の画素の値である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記周辺の不良画素は、3×3の画素の近傍に関連して分類され、
異なるクラスの不良画素の輝度補正について、異なる近傍および探索すべき領域サイズ値が用いられ、
以下の、
3以下の不良画素量を有するクラスタ、3×3の画素近傍サイズ、および3×3の探索すべき画素領域、
4以上の不良画素量を有するクラスタ、5×5の画素近傍サイズ、および5×5の探索すべき画素領域、
1画素の幅を有する行の形状における不良クラスタ、5×5の画素近傍サイズ、ならびに、探索すべき行についての3×7の画素領域および列についての7×3の画素領域、
2画素の幅を有する行の形状における不良クラスタ、5×5の画素近傍サイズ、ならびに、探索すべき行についての5×7の画素領域および列についての7×5の画素領域、
の近傍の分類およびサイズ値、ならびに探索すべき領域が与えられる、請求項3に記載の方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−81171(P2013−81171A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−214350(P2012−214350)
【出願日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【出願人】(512008864)
【氏名又は名称原語表記】ZAKRYTOE AKCIONERNOE OBSHCHESTVO (IMPUL’S)
【Fターム(参考)】