説明

デジタル磁気ビーズ分析のための装置および方法

光に対して一部透過性であり不透明であるデジタルコード化構造を有する光透過アッセイビーズまたはデジタル磁気マイクロビーズ。数百または数千のLITABがマイクロプレート中のマイクロウェルの底に沈められると、バーコードは画像処理により正確かつ確実に解読できる。マイクロプレートは、一般のバイオアッセイフォーマットである;各プレートは、96、384、または1536の患者サンプルを有してもよい。したがって、1つのサンプル中で多数の標的を、単一のマイクロウェル中で分析できる。画像解読アルゴリズムは、4つの主工程を含む:(1)画像の強調;(2)ビーズのセグメント化:(3)バーコードスリットの抽出:および(4)バーコードの解読。ビーズ画像は、光学的に透明なマイクロプレートの底から得られ、バーコードパターンは画像ソフトウェアにより解読できる。したがって、ビーズバイオアッセイ実験全体は、ビーズを外に出さずにマイクロプレート中で行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2006年10月13日に出願された米国特許出願第11/580,514号の一部継続出願であり;2005年8月9日に出願された米国仮特許出願第60/706,896号に優先権を主張して2006年8月9日に出願された米国特許出願第11/502,606号の一部継続出願であり;2008年2月11日に出願された米国特許出願第12/069,720号の一部継続出願であり;2007年8月8日に出願された米国仮特許出願第60/964,108号の一部継続出願である。以下に開示される全ての他の刊行物および米国特許出願もまた、ここに完全に記載されたものとして、参照することにより組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、タンパク質、核酸および分子診断のための数百または数千のデジタル磁気バーコードマイクロビーズによる多重化バイオアッセイの実施に関する;より詳細には、マイクロプレートのような小さいマイクロウェル中の1つ1つのビーズのバーコードを素早く同時に分析するための、光学画像解読アルゴリズムおよび方法が開発される。デジタル磁気ビーズは、球形ではなく、伝統的なラテックスミクロスフェアではない;したがって、高密度の光学パターンが正確に結像され同定できる。
【背景技術】
【0003】
ゲノミクスおよびプロテオミクスにおける現在の研究は多重データを必要とし、核酸およびタンパク質のような多量の標的を、非常に少量のサンプル中で素早くスクリーニングできる技術が必要とされる。平面プラットフォーム上の数千または数百万の標的をスクリーニングできるマイクロアレイ、DNAチップ、およびタンパク質チップは、大きい表面をカバーするために多量のサンプルを必要とする。標準的な表面積は、1cm×1cmまたはマイクロスライド上である。少量の液体サンプルを比較的大きいチップ表面に分布させることにより、しばしば分子の遅い拡散およびチップ表面上の不均一な混合または分布という不都合が生じる。これらは、マイクロアレイアッセイが非常に長い反応時間を必要とする理由である。さらに、マイクロアレイチップが一度印刷され組み立てられると、多重アッセイにもう1つテストを加えることは不可能である。
【0004】
マイクロビーズ技術は、マイクロアレイ技術の多くの問題を克服し、ライブラリ内容および分析におけるビーズの量またはビーズタイプに自由度を与える可能性がある。その少ない量により(ビーズごとにピコリットルの範囲内)、数千のビーズを非常に少量のサンプルでインキュベートできる。多くのコード化方法が、スペクトル的に区別できるフルオロフォア、蛍光半導体量子ドット、およびバーコード化色(吸収)ストリップまたは白黒ストリップを有する金属ロッドを有する粒子を含むことが示されてきた。蛍光およびバーコード色ストリップビーズはいずれも、反射または放射配置における光学検出により同定される。反射配置における問題は、(1)特にビーズがマイクロメートルスケールの場合に光反射収率が低い、(2)光収集効率が悪い、および(3)蛍光に基づくコード化ビーズについて、蛍光バンドが著しく広いまたは重複し、潜在的なコード番号を制限する、ということである。蛍光に基づくビーズの別の欠点は、ほとんどのビーズに基づくアッセイは蛍光読出しに依存し、したがって、より多くの蛍光スペクトルまたは強度干渉を生じるということである。マルチ金属(Au、Pt、Ni、Agなど)色マイクロロッドの場合、コード化は、製造の困難性があり、異なる金属材料に基づいて色の数が制限される。
【0005】
その全内容がここに言及することにより組み込まれる、2004年8月10日に発行された特許文献1は、400-4000nmの多層マルチ金属ロッドによる30-300nmの直径を有するバーコード化の一形態を開示する。これらのロッドは、アルミナ型への電着により作成される;その後、これらの小さい多層物体を残してアルミナが除去される。このシステムは、最大7つの異なる金属において、コード化されたゾーンを最大12まで有することができ、金属は異なる反射率を有し、したがって、金属の種類に依存して光学顕微鏡においてより明るくまたは暗く見え、一方でアッセイの読出しは標的からの蛍光により、プローブの同定はバーコードの明暗パターンからである。
【0006】
その全内容がここに言及することにより組み込まれる、2003年10月7日に発行された特許文献2は、バーコードとして作用する半導体ナノ結晶を開示し、各半導体ナノ結晶は、明確な発光スペクトルを生じる。これらの特徴的な発光は、スペクトルの可視領域においては色として観察でき、または不連続の移行が観察される特定の波長についての情報を提供するように解読されてもよい。
【0007】
その全内容がここに言及することにより組み込まれる、2004年5月11日に発行された特許文献3は、励起エネルギーに応じて波長/強度スペクトルを生じるためのマーカーを含むラベルと結合する複数の同定可能要素、および結合するラベルの波長/強度スペクトルからの要素を同定するアナライザを含む同定システムを開示する。
【0008】
2002年2月26日に発行された特許文献4は、バーコードがその上に電気鋳造されたニッケルプレートと第2のプレートとの間にビーズを配置し、バーコードをビーズの表面に押しつけてバーコードを有するマイクロケーキ状粒子を形成することにより、マイクロキャリアを作製する方法を開示する。
【0009】
その全内容がここに言及することにより組み込まれる、特許文献5は、親和反応プローブビーズを産生するための、バーコードまたはドットマトリクスバーコードのような光学グラフィックおよび色情報シグナルに基づく色シグナルを使用する同定システムを開示する。
【0010】
その全内容がここに言及することにより組み込まれる、特許文献6は、単一の接着性細胞が付着するように設計された小さい平面、細胞を保護するよう設計された細胞付着領域、およびフロースルー工程を可能にまたは改良するよう設計された形状を含むマイクロパレットを開示する。マイクロパレットは、好ましくは容易に同定可能な様式でパターン化され、サイズが同等である単一の細胞を収容できるサイズである。
【0011】
磁気ビーズは、高速大量処理自動化工程において広く使用される。磁気ビーズは、常磁性である、すなわち、磁場中に置かれると磁気特性を有するが、磁場から取り除かれると磁性が残らない。これにより、マイクロビーズの磁性収集および磁場が取り除かれた場合にビーズの再懸濁が可能となる。デジタル磁気ビーズの収集および再懸濁は、何度でも容易にかつ素早く繰り返すことができる。一般的なロボットによる自動化は、磁性ピンを備えた磁性スタンドに、96ウェル、384ウェルまたは1536ウェルマイクロプレートを置き、磁場を作動させる。これにより、未結合の分子をビーズから洗浄し、緩衝溶液を変え、溶液中の任意の汚染物質を除去できる。例えば、DNAまたはRNAアッセイの場合、未結合または非特異的ヌクレオチドを、ハイブリダイゼーション後に除去できる。タンパク質アッセイの場合、未結合または非特異的抗体または抗原を、抗体−抗原反応後に除去できる。分子生物用途中、大規模な洗浄を、素早く、効率的に、および最小限の難しさで行うことがしばしば必要とされる。磁気ビーズはバイオアッセイで広く使用されるが、高密度バーコードを有する磁気ビーズは入手できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,773,886号明細書
【特許文献2】米国特許第6,630,307号明細書
【特許文献3】米国特許第6,734,420号明細書
【特許文献4】米国特許第6,350,620号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0003556号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2005/0244955号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
信頼性のある解読のための高い光コントラストおよび高い信号対雑音を提供し、またマイクロプレートフォーマットにおける高速大量処理自動化洗浄のための磁気特性を提供する、デジタルコード化磁気マイクロビーズが必要とされる。解読方法は、単純で丈夫である必要がある。データ処理は、素早く正確である必要がある。
【発明を解決するための手段】
【0014】
本発明は、従来技術のシステムおよび親出願に改良を加え、複数のデジタルコード化ビーズの同時結像により示されるコードを同定する高速大量処理プロセスを提供する。本発明によれば、マイクロビーズ分析システムは、デジタルコードを示す印が付いた少なくとも1つのビーズを支持するサポート(例えばウェルのプレートまたはマイクロスライド);前記サポートおよび前記印を含むビーズの画像を得る結像装置;および前記結像装置により得られた画像を分析し、ビーズを互いにおよびバックグラウンド中のサポートから認識および分離し、ビーズ上に付けられた印により示されるデジタルコードを同定する解読システムを含む。本発明の画像処理方法は、パレットがバックグラウンドサポートと共に結像されない点でパレット上のバーコードの従来のスキャニングと異なり、したがって、パレットは任意のバックグラウンドまたは任意の他の画像から認識および分離されない。本発明は特に、それぞれがデジタルコードを示す印を有する複数のマイクロビーズの効率的な分析に有用であり、結像装置により得られる画像が各ビーズ上に印を含む複数のビーズを含み、解読システムが画像を分析して複数のビーズを認識および分離し各ビーズ上に付けられた印により示されるデジタルコードを同定するよう構成される。複数のビーズの全画像において各ビーズを互いにおよびバックグラウンドから認識および分離することにより、各ビーズ上に示されるデジタルコードが同定できる。
【0015】
ある態様において、本発明は、ビーズが結像光学系に関して移動する動態(例えばフロー中を動くビーズが結像光学系を通過するまたはビーズが移動光ビームによりスキャンされる)ではなく、ビーズの結像を定常状態で行うバイオアッセイにおいて使用されるデジタルコード化ビーズを解読する画像処理方法に関する。複数のビーズは、平面(例えばガラスマイクロスライド)上に分布されてもよく、結像装置(例えば広視野画像カメラ)により2次元で同時に結像されてもよく、それにより、複数のビーズが解読されて検出結果が改良される。デジタルコード化は、ビーズに関して光の発光、反射および/または透過に基づいて結像により観察されてもよい。
【0016】
別の態様において、本発明のビーズ結像態様は、ビーズが動いている間にビーズの定常状態画像をビーズ結像システムが鮮明に撮ることができる限り、結像光学系に関してビーズが動いている動態(例えば、フロー中を動くビーズが結合光学系を通過するまたはビーズが移動光ビームによりスキャンされる)のビーズに適用できる。
【0017】
本発明の別の態様において、ビーズのデジタルコード化は、バーコートパターンを含む。一連の狭いおよび広いバンドを有するバーコードパターンは、明白なシグナルおよび0および1の分化を提供する。パレット上のスリットの位置は、どのビットが最下位ビット(LSB)および最上位ビット(MSB)かを決定する。LSBはパレットのエッジにより近く位置し、他方のより長い端のMSBと区別する。ある実施の形態において、コード化ビーズは、相対的幅(例えば一連の”0”コードを示す狭いセクションおよび”1”コードを示す広いセクション、または逆もまた同様)を有する一連の交互の明暗セクション(例えば光透過および不透明セクション)のバーコード画像を有する本体を含む。デジタルバーコードパターンは、結像装置により結像される。
【0018】
画像解読方法は、4つの主要なサブプロセスを含む;(1)画像の強調、(2)ビーズのセグメント化、(3)バーコードスリットの抽出、および(4)バーコードの解読。ある実施の形態において、ビーズの画像の解読は、ビーズの画像を解析しデジタルコード化情報を抽出するために取られる一連の工程を含む。そのような工程は、以下を含んでもよい:(1)ビーズ画像の詳細を保存するためのグレースケール変換;(2)ビーズ画像について均一なバックグラウンドを得るためのバックグラウンド除去;(3)ビーズ画像エッジ検出;(4)ビーズ画像が接触している場合には、接触するビーズ画像を分離するための追加のフィルタリング工程;(5)個々のビーズ画像のラベリング(例えば色コードまたは数を使用する);(6)ビーズ画像のアラインメント変換および強度(例えば強度プロット)による各ビーズ画像におけるデジタルコード化の表示(例えばバーコードパターン);および(7)デジタルコードを同定するための強度の分析(例えばバーコードパターン中の狭いおよび広いバンドの同定)。
【0019】
定常ビーズの画像の解読における正確性は、移動ビーズの画像の解読より良好にできる。誤った同定は誤診断および誤治療につながり得るので、解読の正確性は臨床診断について非常に重要である。
【0020】
例示される実施の形態において、本発明は、光透過アッセイビーズ(LITAB)またはビーズの同定を容易にする高コントラストおよび高シグナル対ノイズ光学的検出を提供する画像により示されるようにデジタルコード化されるマイクロパレットに関する。画像は、光に対して一部実質的に透過性であり(例えば、光に対して透明、半透明、および/または透過性)および一部実質的に不透明である(例えば、光に対して反射性および/または吸収性)パターンを有する物理的構造により実施される。透過光のパターンが同定され(例えば、スキャニングまたは結像により)、コード化ビーズ上の画像により示されるコードを解読できる。ある実施の形態において、コード化ビーズは、1Dまたは2Dバーコード画像(例えば、一連の”0”コードを示す狭いスリット(例えば5マイクロメートル幅)および”1”コードを示す広いスリット(例えば10マイクロメートル幅)、あるいは逆もまた同じ)に似た相対的な位置、幅および間隔を有する、一連の交互の光透過性および不透明セクションを有する本体を含む。画像を解読するために、本体の交互の透過性および不透明セクションがスキャンされ結像され(例えばCCDセンサにより)、透過光から同定された画像により示されるコードを同定する。
【0021】
本発明のさらなる態様において、多数のデジタル磁気ビーズが平面上に分布され、画像カメラにより同時に検出できる。平面は、マイクロスライド上またはマイクロプレートの底でもよい。各ビーズの”0”および”1”のようなデジタルシグナルを示すバーコードパターンは、画像処理により同定できる。
【0022】
本発明のさらなる態様において、デジタルバーコードビーズは常磁性を有する、すなわち、磁場中に置かれると磁気特性を有するが、磁場から取り除かれると磁性が残らない。磁気ビーズは、外部磁石でビーズを収集し磁場を取り除いたときにビーズを再懸濁することにより、マイクロプレート中での洗浄が可能となる。複数のデジタル磁気ビーズにより、単一のウェル中で多重アッセイを行うことが可能となる。マイクロプレートは、各プレートが96、384または1536患者サンプルを有する臨床診断における標準高速大量処理フォーマットである。
【0023】
本発明のさらなる態様において、デジタル磁気マイクロビーズ分析システムは、以下を含む:(a)複数のウェルを有するスライドまたはマイクロプレート;(b)スライドの表面上またはマイクロプレートのウェルの底に沈む少なくとも1つのデジタル磁気ビーズ;(c)スライドまたはマイクロプレートの上または下に位置し、少なくとも1つの磁気マイクロビーズを結像する光学検出器;および(d)少なくとも1つの磁気マイクロビーズの画像パターンを処理するために画像ソフトウェアにより行われるデジタル処理システム。ある実施の形態において、ウェルの数は、約96、384または1536ウェルである。
【0024】
本発明のさらなる態様において、バーコード画像および蛍光画像はいずれも、顕微鏡およびカメラの下で同時に撮影される。したがって、ビーズを取りださずにマイクロプレート中で全てのビーズ実験を行うことができる。バーコードを使用して、ビーズ上でどの分子プローブが固定されているかを同定し、一方で、蛍光を使用して、陽性または陰性反応を検出する。多数の標的が同時に分析できる。
【0025】
本発明のさらなる態様において、デジタル磁気マイクロビーズは、第1層;第2層;および第1層と第2層との間の中間層を含み、中間層はその上に定められたコード化パターンを有し、光に対して一部実質的透過性であり一部実質的に不透明であり、各マイクロビーズに対応するコードを示す。
【0026】
本発明のさらなる態様において、中間層は、コード化パターンを定める、一連の交互の実質的に光透過性のセクションおよび実質的に光に不透明なセクションを有する。透過性セクションおよび/または不透明なセクション間の相対的な位置、幅および/または間隔は、2進コードを示す。実質的に光に不透明なセクションは、光遮断材料を含む。各マイクロビーズの本体は、1mm以下の最長直交軸を有する。
【0027】
本発明のさらなる態様において、デジタル磁気ビーズの第1層および第2層は、タンパク質、核酸、小分子、化学物質、およびそれらの組合せからなる群より選択される材料で機能性を持たせる。
【0028】
ある実施の形態において、コード化ビーズの本体は、相対的な幾何学的性質および/またはサイズにおいて異なる少なくとも2つの直交断面を有するように構成されてもよい。さらに、断面の幾何学的性質は、左右対称または左右非対称でもよく、および/または規則正しい形または異形でもよい。ある実施の形態において、コード化ビーズの最長直交軸は1mm未満である。
【0029】
本発明のさらなる態様において、光透過性セクションは、中間層を通るスリットにより定められ、光不透明セクションは、光反射材料および/または光吸収材料により定められる。スリットは、第1の幅のスリットおよび第2の幅のスリットを有し、2進コードにおいて第1の幅は”0”を示し第2の幅は”1”を示す。第1の幅は約1から10マイクロメートルであり、第2の幅は約1から50マイクロメートルであり、第1の幅は第2の幅より狭い。2進コードは画像ソフトウェアにより解読できる。
【0030】
本発明の範囲および性質、並びに使用の好ましい形態のより完全な理解のために、添付の図面と共に以下の詳細な説明を参照すべきである。以下の図面では、図面を通して同様の参照番号は同様のまたは類似するパーツを示す。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1a】本発明のある実施の形態による、バイオアッセイのための光透過アッセイビーズ(LITAB)を調製する方法を示す:マイクロプレートのマイクロウェル中の複数LITAB
【図1b】本発明のある実施の形態による、バイオアッセイのための光透過アッセイビーズ(LITAB)を調製する方法を示す:バイオアッセイのためのLITAB
【図1c】本発明のある実施の形態による、バイオアッセイのための光透過アッセイビーズ(LITAB)を調製する方法を示す:LITABの写真画像を示す概略図
【図2a】本発明のある実施の形態によるLITABの平面図
【図2b】図2aの線A−A間の断面図
【図2c】画像カメラ上で0011111001を示すバーコードビーズの透過デジタルシグナルを示す
【図3】最下位ビット(LSB)または最上位ビット(MSB)を有するLITAB中のスリットのパターンを透過した光を示す光シグナルパターンを示す
【図4】本発明のある実施の形態によるビーズを形成する工程を示す
【図5】分子固定について同じ界面化学を提供しうる2つのポリマー層間に挟まれた層としての金属層を示す
【図6】バーコードマイクロビーズの顕微鏡画像を示す
【図7】画像中の物体の輪郭を描くためのエッジ検出技術の使用を示す
【図8】Watershedラインを使用して分離された隔離ビーズを示す
【図9】各マイクロビーズを主軸に合わせる方法を示し、グレースケール画像は画素値を含むマトリクスに変換される
【図10】ビーズ画像が画素値の関数としてグレースケール強度に変換されることを示す
【図11】各マイクロビーズに存在するバーコードの幅に基づいて同定されるデジタルコードを示す
【図12】本発明のある実施の形態によるLITAB分析システムを示す
【発明を実施するための形態】
【0032】
この記載は、本発明の実施の最良の現在考えられるモードのものである。この記載は、本発明の原則を示すためになされるものであり、限定する意味で考慮されるべきではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照することにより最も良く定められる。
【0033】
本発明の方法の詳細な説明は、主として方法または工程、作業の記号による説明、発明の機能性および特徴に関して記載される。これらの方法の記載および説明は、当業者がその研究を他の当業者に最も有効に伝えるために使用される方法である。ソフトウェアで実行される方法または工程はここでは、通常、所望の結果に導く一貫した一連の工程である。これらの工程は、物理量の物理的操作を必要とする。しばしば、しかし必ずではないが、これらの量は、保存、移動、組合せ、比較および他の操作が可能な電気的または磁気的シグナルの形態を取る。
【0034】
本発明のソフトウェアで実行される作業を行うのに有用な装置は、独立型装置またはより大きいシステムの一部であってもよい、一般のまたは特定の目的のデジタル処理および/または計算装置を含むが、これに限定されない。この装置は、装置中に保存されたプログラム、ルーチンおよび/または一連の指示および/またはロジックにより選択的に作動または再設定されてもよい。つまり、ここに記載および示唆される方法の使用は、特定の処理構成に制限されない。
【0035】
本発明の原理を説明する目的で、制限するものではなく、本願発明は以下に、パレットの形状であるマイクロビーズを参照し生物分析を参照することにより説明される。しかしながら、本発明は、本発明の範囲および性質から逸脱することなく、他の全ての構成(geometry)に等しく適用でき、ビーズの同定に基づく同定を必要とする他の用途に適用されることが理解される。以下の議論を促進するために、本発明のマイクロビーズは、光透過アッセイビーズを意味するLITABと称される。
【0036】
LITABは、ビーズの同定を容易にする高いコントラストおよび高いシグナル対ノイズ光検出を提供する画像により示されるように、デジタルコード化される。画像は、光に対して一部実質的に透過性であり(例えば、光に対して透明、半透明、および/または透過性)および一部実質的に不透明である(例えば光に対して反射性および/または吸収性)パターンを有する物理的構造により実施される。透過した光のパターンが同定され(例えば、スキャニングまたは結像により)、コード化ビーズ上の画像により示されるコードを解読できる。”1”または”0”を示しデコーダにより認識できる限り、丸、四角、または他の幾何学的図形のような様々のバーコードパターンが設計できる。しかしながら、LITABは球形ではない;従来のラテックスに基づく球形のビーズとは異なる。
【0037】
ある実施の形態において、コード化ビーズは、1Dまたは2Dバーコード画像(例えば、2進コードを形成するために、一連の”0”コードを示す狭いスリット(例えば約1から5マイクロメートル幅)および”1”コードを示す広いスリット(例えば約1から10マイクロメートル幅)、あるいは逆もまた同じ)に似た相対的な位置、幅および間隔を有する、一連の交互の光透過性および不透明なセクションを有する本体を含む。図2は、本発明のある実施の形態によるコード化ビーズであるLITAB11を示す。LITAB11は、平らなパレットまたはディスクの形状の本体25を有する。コード化ビーズの本体は、相対的な幾何学的性質および/またはサイズにおいて異なる少なくとも2つの直交断面を有するように構成されてもよい。さらに、断面の幾何学的性質は、左右対称または左右非対称でもよく、および/または規則正しい形または異形でもよい。この特定の実施の形態において、3つの直交軸の全ては異なる長さであり、3つの直交断面全ての幾何学的性質は、左右対称であり規則正しい形である。図2(a)は、平らな幾何学的性質が左右対称の引き伸ばされたまたは伸長した楕円形状のパレットに似ることを示す。図2(b)は、縦軸(または最長軸)を示す断面を示す。一連の広いおよび狭いスリット23および24は、本体25に亘って提供され、実質的に光に不透明の材料(例えば反射性または吸収性)により作成されまたはそのような材料で被覆されてもよい。広いおよび狭いスリット23および24は、それぞれ論理”1”および”0”またはその逆を示し、合わせて2進コードを示す(各スリットはビットを示す)。この実施の形態において、コードはバーコードに類似する。狭いスリット24は5マイクロメートルの幅を有し、広いスリット23は10マイクロメートルの幅を有してもよい。100×30×10μmから300μm×100μm×40μmの全体寸法を有するLITABについて、少なくとも約10スリットは、LITABパレット上に提供されてもよく、6ビットから12ビットまたはそれ以上をコード化し、64から4096またそれ以上のユニークコードを可能とする。ある実施の形態において、コード化ビーズの最長直交軸は1mm未満である。
【0038】
例示される実施の形態は狭いおよび広い幅の間隔のあるパターンのスリットを示すが、本発明の範囲および性質から逸脱せずに、1および0を示す隣接するスリット間の狭いおよび広い間隔であけられた一定の幅を有するあるパターンのスリットを使用することも可能である。図2(c)は、CCD(電化結合素子)により検出されコンピュータスクリーン上に表示される単一のビーズの透過ピークを示す。ビーズが光ビームで照射されると、スリットからの透過ピークの「全強度」または透過ピークの「バンド幅」に基づいて、デジタルバーコード0または1が、結像カメラおよびデジタルシグナルプロセッサにより同定できる。図面に示されるように、バーコードパターンはピーク幅に基づいて容易に同定できる。図2(c)に示される実施の形態において特に示されるように、ビーズは0011111001を示す10ビットバーコードを示す。
【0039】
画像を解読するために、本体の交互の透過性および不透明セクションを光で結像し(例えばCCDセンサを使用して)、透過光から同定される画像により示されるコードを同定する。説明の目的のために、図3は、図2(a)におけるLITAB11中のスリット23および24を透過する光の検出を示す一連のシグナルパルスを示す。シグナルは、LITAB11の縦軸を通る透過対遮断光のコントラストに対応する。各シグナルパルスの幅は、LITAB11のコードにおいて”1”または”0”を示す。特定の例示される実施例において、より広い幅は1を示し、より狭い幅は0を示す。LITAB11上のスリットの相対的な位置は、どのビットが最下位ビット(LSB)または最上位ビット(MSB)であるかを特定する。ある実施の形態において、最下位ビットは、LITAB11の1つのエッジまたは端により近く位置し、反対のエッジまたは端における最上位ビットと区別する。シグナルパルスを解読する概念は、従来のバーコードについての解読と類似する。
【0040】
別の実施の形態において、実質的に透過性のセクションは、必ずしもLITABの本体の全厚さに亘ってスリットである必要はない。スリットは、実質液に透明または半透明の材料で完全にまたは部分的に充填されてもよく、それでもなお不透明セクションと比較して実質的に光透過性を提供する。例えば、LITABは、透明本体を露呈するスリットを定める開口部を有する光遮断材料(例えば、反射材料、または光反射性または吸収ダイ)で被覆される透明の本体を有してもよい。このLITAB上に結像される光は、遮断材料により被覆されていないセクション(すなわちスリット)において本体を透過し、被覆されたセクションにおいて光を遮断する。別の実施の形態において、コード化LITABは、透過光対遮断/反射光の間のコントラストおよび画像認識および解読の光学的効率を改良するために、反射性薄膜またはコーティングを備えてもよい(例えば、LITABの表面を金属薄膜でメッキまたはコーティングする、あるいは常磁性金属薄膜の中間のサンドウィッチ層を提供する、あるいは、光吸収ダイでコーティングする)。
【0041】
LITABは、クリーンルーム微細加工設備で薄膜形成に使用される従来の方法を使用して作成してもよい。従来のフォトリソグラフィ、印刷、シルクスクリーニング、キュアリング、現像、エッチング(例えば、化学エッチング、イオンエッチング、および/または他の除去工程)、メッキ、ダイシング、およびそのような種類の構造および材料について当該技術においてよく知られる他の処理工程を含む方法を使用して、LITABの構造を得てもよい。図4(a)から(d)を参照すると、LITABを作成する方法のある実施の形態において、Tiの層52(例えば100nm)が、基板50、例えばクリーンガラススライド(例えば約1mm厚)上にe-ビーム蒸発により蒸着される。Tiは、代替放出層(surrogate releasing layer)のみならず導電シード層(conducting seed layer)としても作用する。LITABの本体25は、ポリマー材料の層を使用して形成されてもよい。例えば、フォトレジスト感光性樹脂(例えば、当該技術において知られるSU-8など)をLITABの作成に使用してもよい。ポリマー材料の層21は、Ti層52上にスピンコートされ、標準的なフォトリソグラフィ方法を使用してそのような層にスリット23および24が形成される。例えば、スリット23および24は、広いおよび狭いスリットの所望のパターンを定めるフォトマスク(図示せず)およびLITAB本体25の平らな形状を使用してUV光により定めてもよい。LITABのアレイは、それぞれ異なるコードを示す異なるスリットパターンを有する単一基板上に形成してもよい。フォトマスクはまた、LITAB本体のアレイの周囲を定めてもよく、LITAB本体はスリットを定める同じフォトリソグラフィ法の終わりに互いに分離される。SU-8は透明なので、e-ビーム蒸発器を使用して、金(Au、0.1μm)最上層22(図2(b)も参照)のような金属層を、基板50上に支持されたSu-8層21上に蒸着する。個々のLITAB本体25(図2(b)に示される)は、フッ酸(HF)を含むエッチング溶液により代替Ti層52を溶解することにより、下にある基板50から最終的に遊離される。このようにして、LITAB上の金パターンは光を反射することにより光を遮断し(Su-8層21に暴露された側および隣接する側の両方に向かって)、金層により被覆されていないスリットは光を透過する。金層22は光を遮断するので、開いたスリットは光を透過する一方で、LITAB「バーコード」は、透過光が検出されると高い光シグナルおよび高い光コントラストを提供する。
【0042】
図5は、LITAB80の別の実施の形態を示し、2つのポリマー層82間に挟まれた中間層として金属層81を含んでもよい。バーコードパターンが金属81上に形成される。例えば、異なる幅および/間隔のスリット84が金属層81に形成される。例示される実施の形態において、ポリマー(フォトポリマー:SU-8)層82は閉じた層である(すなわち、スリットがない)。LITAB80を形成する方法は、まず第1フォトポリマー層82を形成し、次に金属層81を形成し、その中にスリット84をエッチングする工程を含んでもよい。第2フォトポリマー層82は、スリット84を充填する金属層81上に形成される(例えば、スピンコーティングまたはキュアリングにより)。あるいは、スリット84は、第2フォトポリマー層82を形成する前に、まず別の透明材料で充填されてもよい。この実施の形態において、同様の表面コーティングおよび固定条件を提供するために、表面の状態はLITABの暴露された平面の両方について同じにされてもよい。他の実施の形態において、ビオチン、カルボン酸塩、またはストレプトアビジンのようなポリマーまたは機能分子でLITABを被覆する;したがって、全ビーズは分子固定について同じ条件を有する。
【0043】
LITABの中間層に常磁性材料が埋め込まれ、したがって、ポリマーフィルムの第1層と第2層との間に挟まれる。常磁性材料は、マグネシウム、モリブデン、リチウム、アルミニウム、ニッケル、およびタンタルを含む。LITAB上の常磁性材料は、光遮断材料としても作用し、したがって反射層は不要であることに留意すべきである。本発明は、常磁性材料の存在下においても、透過光に基づく解読を可能とする。しかしながら、従来技術について、磁気ビーズおよびバーコードビーズは存在するが、磁性材料がバーコードマイクロビーズ中に組み込まれることの開示はない。これは、本質的に暗褐色の磁性材料は、交互の明暗線を必要とする反射性バーコードと両立できないという理由による。
【0044】
図1は、バイオアッセイのためにLITABを調整する実施の形態を示す。図1(a)に示されるように、LITAB11は、マイクロボリュームサンプルにおける多重同種バイオアッセイを可能にする。異なるコード14に対応するLITAB11の混合を、チューブまたはマイクロウェルプレート13中の小容積の生体サンプル12中に入れる。LITABは、必要に応じてその後に容易にかつ素早く解読できる。ある実施の形態において、図1(b)は、標的ハイブリダイゼーション16および蛍光検出17のために核酸プローブ15で機能化したLITAB11を示す。ビーズ固定のためにいくつかの材料が利用できる。ある実施の形態において、LITABはマイクロアレイで使用される共有DNA結合剤で被覆されてもよい。プローブビーズはその後、5’端で共有結合したフルオロフォアを運ぶ相補的オリゴ標的に溶液中でハイブリダイズされた。図1(c)は、顕微鏡でCCD上に結像されたLITABである。異なる対象は異なる視野を提供する。
【0045】
不規則に方向付けられたマイクロビーズは、画像処理方法により、スライドのような支持体上またはマイクロプレートの底において解読できる。ビーズが最終的に沈降しマイクロプレート中の平面の底に分布されると、広視覚またはスキャニング結像カメラにより多数のビーズを同時に解読できる。マイクロプレートは、高速大量処理臨床アッセイについての標準フォーマットである。各ウェルを1つのサンプルに使用する;各プレートは、96ウェル、384ウェル、および1536ウェルについて、それぞれ96、384、または1536患者サンプルを保持する。したがって、ビーズを外に出さずにマイクロプレート中で実験を行うことが可能であり、解読のためにより正確で感度の良い定常状態でマイクロビーズを結像できる。誤った同定は誤診断および誤治療につながり得るので、解読の正確性は臨床診断について非常に重要である。小さいビーズサイズのために、重複を最小限にしてマイクロウェルの底に数百または数千のビーズを表示できる。ビーズの重複を最小にするために、マイクロウェルの面積に依存して、ビーズの総数は一定の数に制限される。バーコード画像および蛍光画像はいずれも、従来の顕微鏡またはインバータ蛍光顕微鏡で構成できる。
【0046】
図12に図示される実施の形態において、デジタル磁気LITAB分析システム100は、ビーズパターン照射のための光源102および支持体(例えば、図示の実施の形態におけるマイクロウェル106)の底でビーズ11の画像を獲得するための光学CCD104を有する。マイクロウェル106の底は、透明または半透明であり、ビーズに十分な光が通ることを可能とする。スキャニングまたは変換機構110(図12に概略的に示される)は、光検出器104(例えばCCD)および光源に相対的にマイクロウェル106を移動させ、所望のウェルを結像する。光検出器104は、バーコード画像および蛍光検出の両方に使用できる。1M画素CCDは、ビーズ11上のバーコードパターン14の解明に十分な画素を有する。レンズおよび光学フィルタ108を使用して、励起および蛍光波長を収集および選択する。システム100および/または画像処理のコントロールは、制御演算装置112により行われ、これは本発明の開示による処理工程を行うための機能性および特徴を有する。ビーズの画像は、制御演算装置112により処理される前に保存および/または印刷/表示されてもよく、ビーズの画像を示すシグナルまたはデータはリアルタイムでまたはほぼリアルタイムで処理されるように制御演算装置112に送られてもよい。
【0047】
別の実施の形態において(図示せず)、2つの光源を使用し、1つの光源102は透過モードにおけるバーコード照射のためにマイクロウェルの下にあり、1つの光源103は入射または反射モードにおける蛍光励起のためにマイクロウェルの上にある。バーコード照射光源は白色光でよいが、蛍光励起光源はフルオロフォアの吸収に適合する波長が必要である。蛍光強度を測定することにより、どのビーズが陽性の生化学反応を有するか同定できる。ビーズを結像するのと同じまたは異なる光検出器により蛍光強度を測定してもよい。デジタルバーコード画像を解読することにより、どの生物プローブがマイクロビーズの表面に固定されるか同定できる。光源の選択は、フルオロフォアに依存する。例えば、光フィルタキューブを備えた水銀光源は、可視光励起にUVを提供する。赤色ダイオードレーザ(665nm)、および小型アルゴンレーザ(488nm)または緑色レーザ(530nm)は、様々のフルオロフォア(例えばフィコエリトリン(PE)、Cy3、およびCy5等)についての共通のレーザ光源である。光フィルタセットは、様々のフルオロフォアについて特定の励起および蛍光波長を選択するよう設計される。
【0048】
バーコード画像をCCDから得るとすぐに、画像データを画像ソフトウェアにより素早く処理する。これらは多くの画像解読アルゴリズムである。画像パターンに依存して、異なるアルゴリズムは解読の速度または正確性において変わり得る。画像解読アルゴリズムの1つは、4つの主工程を含む:(1)画像の強調;(2)ビーズのセグメント化;(3)バーコードスリットの抽出;および(4)バーコードの解読。これらの工程のいくつかは、”The Mathworks, Inc.”から市販されるツールキットのような数学ソフトウェアを使用して行われる(例えば、MATLAB(登録商標)バージョン7.4.0.287(R2007a);2007年1月29日)。これらの工程の機能は以下の欄に説明される。
【0049】
(1)画像の強調:ビーズの解読の性能は、画像の質に著しく依存する。解読工程の正確性は、画像の強調により改良できる。画像強度正規化を使用するこの画像の強調は、均一な強度バックグラウンドを提供する。不均一なバックグラウンドは、しばしば不均質な照射による。ビーズの高い画像コントラストを達成するために、バックグラウンド除去および正規化によりまず均質なバックグラウンドを生じるべきである。
【0050】
(2)ビーズのセグメント化:画像セグメント化の目的は、さらなる分析のために画像中のビーズの輪郭を描くことである。基本的なセグメント化ルーチンは、画像中でビーズを位置づけることができる画像中の線、曲線のような境界をつける。ある実施の形態によれば、MATLABにおけるウォータシェッド(Watershed)アルゴリズムは、ビーズの位置を隔てるために適用される。MATLBにおけるウォータシェッドアルゴリズムは、画像が白黒画像であることを必要とし、したがって画像処理の一部の間に画像は白黒画像に変換される。黒画素のより高い密度(不透明領域による)は、ビーズのエッジに対応するので、ウォータシェッド変換は、画像中の発見した分水線を変換し、濃い画素により囲まれた表面をビーズとして処理する。あるいは、MATLBにおける新しいウォータシェッドアルゴリズムを修正し、グレースケール画像を使用することもでき、それによりビーズのセグメント化および最終解読がより正確に行われる。LITABは一定の領域を有し、したがって、各ビーズはその領域に基づいて画像から分離およびフィルタされる。
【0051】
(3)バーコードスリットの抽出:ビーズのセグメント化の後、各ビーズを別々に処理してバーコードを抽出する。メインの画像から抽出されて、ビーズの領域は、サブ画像とみなされ、一つずつ処理される。サブ画像は、主軸および短軸により無作為の方向においてビーズの位置付けを示す。画像のx軸を用いてビーズの主軸によりなされる角度を計算する。ビーズからのスリットの抽出は、ビーズの主軸をx軸に回転させた後に行われる。ビーズの回転後、ビーズの境界を除去し、強度値をバーの長さ(y軸)に沿って平均する。これらのサブ画像は事実上2次元であるが、透過強度情報のみを伝える。ビーズのx軸に沿う強度プロットは、1および0ビットに対応する2つの幅(狭いおよび広い)を有するピークを示す。
【0052】
(4)ビットの解読:バーコードを解読するために、透過強度ピークの幅を分析する。半値線(half maximum line)を使用してピークの幅を計算する。2進ビット情報を抽出するために、5つの画素がビーズの狭いスリット('0’) を描くために十分である。幅は、10%の許容範囲を使用して2進ビットに変換される。ビーズの終端エッジを示すピークに関連して強度ピークの上昇および下降するエッジに依存して、バーコードの最上位ビット(MSB)または最下位ビット(LSB)を同定できる。2つの幅の同定に基づいて、2進数字を解読できる。
【0053】
例示される実施の形態によれば、画像処理ソフトウェアは、画像解読のための以下の詳細な段階的な手順から成る:
1.グレースケール変換およびビーズ画像詳細の保存:画像が読み取られ、図6に示されるようにグレースケール画像に変換される。このプログラミングにおいて使用される画像処理アルゴリズムのいくつかは、MATLBからのものであり、したがって画像が白黒画像に変換されることを必要とする。したがって、画像処理の工程中、処理された画像は必要な場合さらに白黒画像に変換される。
【0054】
2.均一なバックグラウンドを得るためのバックグラウンド抽出:バックグラウンドの不均一な光照射を除去する。均一なバックグラウンドを得るために、構成要素および画像計算を使用して各画像を処理する。画像をバックグラウンドから抽出し、画像の強度を調整してさらなる処理を行う。
【0055】
3.ビーズ画像エッジ検出:検出されたエッジが図7に示される。この工程は、バックグラウンドまたは残りの画像からビーズを認識および分離する。「ゾーベル(sobel)」フィルタリング技術を使用して、ビーズの全てのエッジ境界を抑え、各ビーズ内のスリットを強調する。
【0056】
4.個々のビーズ画像のラベリング:画像中でビーズが個々の領域として分離されると、RGB色コードを使用してまたは各ビーズに番号付けすることにより、領域にラベルを付ける(図8)。面積、方向の角度、画素リストのような異なるパラメータを、領域ポップス(pops)アルゴリズムを使用して各ビーズについて計算する。
【0057】
5.ビーズ画像の配置変換および強度プロットによるデジタル解読の表示:各マイクロビーズを主軸に配置するために(図9)、元のグレースケール画像を撮影して、画素値を含むマトリクスに変換する。マイクロビーズの画素インデクスリストを、領域特性から得る。グレースケール画像を、各マイクロビーズの画素インデクスリストと交換し、画素の残りをゼロにする。前に計算された各マイクロビーズの方向の角度を使用して、各ビーズを主軸に沿って回転する。
【0058】
6.デジタルコード同定のための強度の分析:図10に示されるように強度対画素数をプロットすることにより、マイクロビーズ画像を表示する。各強度プロットを分析して、マイクロビーズ中のバーコードを得る。x軸に平行に線を引き、プロットで線の各交点についてx値を取る。ピークの平均値で線を引く。これは、ピーク中の全ての点の合計を点の数で割ることを意味する。次に、2つの連続するx値の間の差を得る。代替値は、各マイクロビーズ中のバーコードの幅である。バーコードのエッジと第1のスリットとの間の間隔を計算することにより、バーコードの方向が分かる。より長い距離が、バーコードの読取りの順方向に対応する。ビーズが画像中で逆に表れる場合、バーコードビットを逆にする。解読された結果を、図11に示されるように表示する。
【0059】
7.接触するビーズのセグメント化:2つのビーズがエッジに沿って接触する場合、バーコードは重複せず、したがってビーズの解読が可能である。しかし、2つのビーズは単一のビーズとしてセグメント化される。そのような接触するビーズを分解させるために、距離変換(Distance Transform)およびウォーターシェッド線を使用する「ウォーターシェッド変換」を使用する。距離変換は、デジタル画像のマッピング表示であり、画像の各画素に最も近い境界画素への距離を与える。画像データは、画像表示ウォーターシェッドの勾配においてグレーレベルがピークである局所表面として解釈してもよい。セグメント化において、これらのビーズのスリットを広げ、距離変換を使用してウォーターシェッド線を見つける。ウォーターシェッド線作成は、画像が白黒であることを必要とし、したがって各画像は限界強度に基づいて白黒に変換される。バーコードスリットの長方形の構造要素は、画像を広げることを前提とする。ウォーターシェッド線が作成されると、エッジが検出された画像はウォーターシェッド線を重ねられ、結果として分離したビーズを得る。これらの分離したビーズはエッジでは異形であるが、バーコードは解読のために完全である。
【0060】
本発明において長方形ビーズが扱われるが、これは曲がった長方形のビーズに拡張できる。すなわち、ビーズは長方形および一方の端における2つの半円から成る。半円の1つは、他方より大きく、MSBおよびLSBを示す。バーコードを解読するために、画像処理を行って半円を除いてビーズを徐々に失わせる。領域に基づくフィルタは、ビーズからMSB半円のみを抽出できる。この確かな半円画像は、「ゾーベルフィルタ」を使用してエッジ画像に換算される。全体画像は、曲線を形成する半円および直線から成る。MATLBにおいてハフ(Hough)変換を使用して直線を同定する。直線に基づいて、ビーズのバーコード部分の長さの箱を、直線に向かって垂直方向にだが半円領域から離れるように構成する。構成された箱内部の強度をプロットすることにより、バーコードの抽出を行う。
【0061】
画像処理のための計算時間量を減少するために、アルゴリズムを改良するための多くの試みが行われてきた。ビーズのセグメント化のための初期処理を行うために、画像解析は1μm/画素から10μm/画素に減少される。ビーズがセグメント化されると、高解像度画像を使用してバーコードが抽出される。別の試みは、画像解読アルゴリズムをMATLBからC言語に変化し、実行前にCプログラムをコンパイルすることである。このことは、画像解読ソフトウェアの実行速度を著しく改良する。最後に、解読プログラムを、NVIDIAのようなコプロセッサによりおよびCUDAライブラリを使用して実行し、プログラムをコプロセッサとつなぐ。このシステムは、128ものコプロセッサに、平衡にプログラムを実行させる。
【0062】
本発明の方法およびシステムは、機能的モジュールの点で上記に記載されている。反対に示されない限り、本発明の範囲および性質を逸脱せずに、単一の物理的装置またはソフトウェア産物中のソフトウェアモジュールに1つ以上の機能が統合されてもよく、または別の物理的装置またはソフトウェアモジュールである機能が実行されてよいことが理解される。ハードウェアとソフトウェアとの間の境界線は必ずしも明確ではないことがさらに理解されるであろう。
【0063】
本発明の方法を構成する各工程の実際の実行の詳細な議論は、本発明の理解を可能にするために必ずしも必要ではないことが理解される。実際の実行は、プログラマおよびコンピュータエンジニアの通常のスキル、および本発明のシステムの開示の結果であると考えるとシステム中の様々のソフトウェアおよびハードウェア構成要素の機能性および相互関係の範囲内である。当業者は、通常のスキルを適用することにより、過度の実験をせずに本発明を行うことができる。
【0064】
本発明は、記載される実施の形態に関して記載されているが、本発明の範囲および
性質を逸脱せずに様々の変更および改良をしてもよいことは当業者に明らかであろう。したがって、本発明は、特定の例示される実施の形態によって限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定されることが理解されるべきである。
【図1(a)】

【図1(b)】

【図1(c)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロビーズ分析システムであって、
デジタルコードを示す印が付いた少なくとも1つのビーズを支持するサポート;
前記サポートおよび前記印を含むビーズの画像を得る結像装置;および
前記結像装置により得られた画像を分析し、前記ビーズを前記画像の残りから認識および分離し、前記ビーズ上に付けられた印により示される前記デジタルコードを同定するよう構成された解読システム、
を備えたマイクロビーズ分析システム。
【請求項2】
前記サポートが、それぞれデジタルコードを示す印を有する複数のマイクロビーズを支持し、前記結像装置により得られる画像が、各ビーズ上に前記印を含む複数のビーズを含み、前記解読システムが、前記画像を解析して、前記複数のビーズを互いにおよびバックグラウンド中の前記サポートから認識および分離し、各ビーズ上に付けられた印により示されるデジタルコードを同定するよう構成されることを特徴とする請求項1記載のマイクロビーズ分析システム。
【請求項3】
前記サポートが、複数のウェルを有するプレートを有し、前記複数のビーズがウェル中に支持されることを特徴とする請求項2記載のマイクロビーズ分析システム。
【請求項4】
結像のために前記複数のビーズを照射する光源をさらに含むことを特徴とする請求項2記載のマイクロビーズ分析システム。
【請求項5】
前記光源が、前記複数のビーズを通って前記結像装置に光を透過するよう位置付けられることを特徴とする請求項4記載のマイクロビーズ分析システム。
【請求項6】
前記光源が、前記複数のビーズ上に光を入射するよう位置付けられることを特徴とする請求項4記載のマイクロビーズ分析システム。
【請求項7】
前記ビーズが、光シグナルを生じる材料を含み、前記結像装置が、前記光シグナルを検出する光学装置を含むことを特徴とする請求項6記載のマイクロビーズ分析システム。
【請求項8】
前記ビーズがそれぞれ、
第1層;
第2層:および
その上に定められたコード化パターンを有する、前記第1層と前記第2層との間の中間層であって、光に対して一部実質的透過性であり一部実質的に不透明であり、前記ビーズに対応するデジタルコードを示す中間層、
を含むことを特徴とする請求項2記載のマイクロビーズ分析システム。
【請求項9】
前記中間層が、前記コード化パターンを示す、一連の交互の実質的に光透過性のセクションおよび実質的に光に不透明のセクションを含むことを特徴とする請求項8記載のマイクロビーズ分析システム。
【請求項10】
前記透過性セクションおよび/または不透明セクションの間の相対的な位置、幅および/または間隔が2進コードを示すことを特徴とする請求項9記載のマイクロビーズ分析システム。
【請求項11】
前記光透過性セクションが、前記中間層を通るスリットにより定められ、前記光に不透明のセクションが、光反射材料および/または光吸収材料により定められることを特徴とする請求項8記載のマイクロビーズ分析システム。
【請求項12】
前記スリットが、第1の幅のスリットおよび第2の幅のスリットを含み、2進コードにおいて該第1の幅は”0”を示し前記第2の幅は”1”を示すことを特徴とする請求項11記載のマイクロビーズ分析システム。
【請求項13】
前記解読システムが、(1)ビーズ画像詳細を保存するグレースケール変換;(2)ビーズ画像について均一なバックグラウンドを得るバックグラウンド除去;(3)ビーズ画像エッジ検出;(4)ビーズ画像が接触する場合に、接触するビーズ画像を分離する追加のフィルタリング工程;(5)個々のビーズ画像のラベリング;(6)前記ビーズ画像の配置変換および強度による各ビーズ画像中のデジタルコード化の表示;および(7)前記デジタルコードを同定するための前記強度の分析、
により、前記画像の残りから特定のビーズを認識および分離し、該ビーズ上に付けられた印により示されるデジタルコードを同定するよう構成されることを特徴とする請求項2記載のマイクロビーズ分析システム。
【請求項14】
デジタルコードを示す印が付いた複数のビーズを支持し;
サポートおよび前記印を含むビーズの画像を獲得し;
前記画像を分析して、前記画像の残りから前記ビーズを認識および分離し、前記ビーズ上に付けられた印により示される前記デジタルコードを同定する、
各工程を含むことを特徴とするマイクロビーズを分析する方法。
【請求項15】
前記分析する工程が、
(1)ビーズ画像詳細を保存するグレースケール変換;
(2)ビーズ画像について均一なバックグラウンドを得るバックグラウンド除去;
(3)ビーズ画像エッジ検出;
(4)ビーズ画像が接触する場合に、接触するビーズ画像を分離する追加のフィルタリング工程;
(5)個々のビーズ画像のラベリング;
(6)前記ビーズ画像の配置変換および強度による各ビーズ画像中のデジタルコード化の表示;および
(7)前記デジタルコードを同定するための前記強度の分析、
の各工程を含むことを特徴とする請求項14記載の方法。

【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図4(c)】
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【図4(d)】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2010−536029(P2010−536029A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519907(P2010−519907)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/008529
【国際公開番号】WO2009/020506
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(510034948)マックスウェル センサーズ インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】MAXWELL SENSORS, INC.
【Fターム(参考)】