説明

デジタル表示装置

【課題】X線管などの操作対象物の操作量を精度よく表示することのできるデジタル表示装置を提供する。
【解決手段】ロータリーエンコーダ16で検出した回転架台4の実回転角度をデジタル表示器19に表示可能な有効桁数の実表示値の公差の範囲で表示するように回転角度を調節する場合、演算処理部18の演算処理により、回転架台4のズレ方向およびズレ量などの情報を求める。これらの情報内容をオペレータに分かるように、表示制御部21がデジタル表示器19に表示する表示態様を切り替え制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、デジタル表示装置に係り、特に、操作対象物の操作量である移動距離や角度などを連続的に精度よく表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のデジタル表示装置としては、放射線治療計画用シミュレータシステムなどに利用されているものが知られている。例えば、被検体を挟んでX線シミュレータのX線照射手段とX線受像手段とを対向配備し、該被検体の体軸回りに両手段を相対的に回転駆動し、被検体の治療部位にX線を照射する角度を決定する。このX線の照射角度を決定する際に、X線照射手段の回転角度を逐次に検出してパルス信号を出力し、そのパスル信号の計数値から実回転角度を算出している。そして、操作パネルなどに設けられたデジタル表示部に、その表示有効桁数に収まるよう有効桁数未満の値の切り捨て、切り上げ、四捨五入などして実回転角度として表示している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−43320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の装置は、デジタル表示部に表示する実回転角度の表示には、例えば有効桁数未満の浮動小数点以下の値の切り捨て、切り上げ、四捨五入などの演算処理によって実現している。
【0004】
これら演算処理によって求めた表示用の回転角度は、実回転角度との大小関係や偏差の大きさ(ズレ量)を判別できないので、表示精度としての信頼性が低いといった問題がある。特に、放射線治療計画用シミュレータなどは、治療部位に任意の角度から精度よくX線照射してデータを取得する必要があるが、従来装置では該照射角度に大きな誤差を含むといった問題がある。
【0005】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、操作対象物の操作量の調整を精度よく行うことのできるデジタル表示装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、第1の発明は、操作対象物の操作量を表示するデジタル表示装置において、前記操作対象物を操作したときの実操作量を検出する検出手段と、所定の桁数で前記実操作量を表示するデジタル表示部と、前記デジタル表示部の表示可能な有効桁数で前記実操作量に最も近い値を実表示値として決定し、該実表示値と実操作量との偏差を求める演算手段と、前記デジタル表示部において前記実操作量を実表示値として許容して表示するように予め決めた任意の公差と、前記演算手段により求めた偏差とを比較し、両値の大小関係を求める比較手段と、前記比較手段の比較結果に応じて前記デジタル表示部の表示の態様を切り替え制御する表示制御手段とを備えたものである。
【0007】
[作用・効果]この構成によると、演算手段は、デジタル表示部の表示可能な有効桁数で実操作量に最も近い値を決定し、実操作量と実表示値との偏差を求める。このとき、実表示値に対して実操作量が大きい値であるか、小さい値であるかを知ることができる。また、比較手段は、演算手段によって実表示値と実操作量から求められた偏差を利用して予め決めた公差と偏差の大小関係を求める。このとき、実表示値に対する実操作量のズレ量を知ることができる。表示制御手段は、これら求まる条件に応じてデジタル表示部の表示の態様を切り替え制御する。すなわち、オペレータは、デジタル表示部に表示される表示態様の変化を見ながら、操作対象物の操作方向や操作量の調整具合を知ることができ、操作対象物の操作量の調整を精度よく行える。
【0008】
さらに、実表示値の公差の設定を任意に変更しても、その公差の範囲内に操作対象物が収まるように、その操作量の調整が可能となる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記演算手段は、前記実操作量の値に含まれる表示有効桁数未満の値を切り捨ておよび切り上げた場合の2つの表示値を求め、前記表示制御手段は、操作対象物が操作される過程で前記比較手段の比較により偏差が公差より大きい値となる場合に、前記演算手段により求めた2つの表示値を前記デジタル表示部に交互に切り替え表示するように構成したことを特徴とする。
【0010】
[作用・効果]この構成によると、実操作量の値に含まれる表示有効桁数未満の値を切り捨ておよび切り上げた場合の2つの表示値が、演算手段により求まる偏差に応じてデジタル表示部に交互に切り替え表示される。したがって、オペレータは、デジタル表示部に表示される2つの表示値から実操作量が実表示値に対して、大きい値であるか、小さい値であるかを容易に知ることができる。すなわち、この第2の発明は、第1の発明を好適に実施することができる。
【0011】
第3の発明は、第2の発明において、前記表示制御手段は、さらに、前記比較手段の比較により偏差が公差より大きい値となる場合に、前記偏差の大きさに応じて前記演算手段により求めた2つの表示値の表示切り替え速度を変化させるように構成したことを特徴とする。
【0012】
[作用・効果]この構成によると、偏差の大きさに応じて2つの表示値の表示切り替え速度が変化させられる。つまり、操作対象物の操作方向によって偏差の大きさが変わるので、オペレータは、デジタル表示部の表示を見るだけで操作対象物の操作すべき量を容易に知ることができる。
【0013】
第4の発明は、第1ないし第3の発明において、前記表示制御手段は、さらに、前記操作対象物が操作される過程で前記比較手段の比較により偏差が公差より小さい値となる場合に、実表示値を前記デジタル表示部に継続的に表示するように構成したことを特徴とする。
【0014】
[作用・効果]この構成によると、偏差が公差より小さい場合は、実表示値がデジタル表示部に継続的に表示されるので、オペレータは、実表示値の範囲に操作対象物が収まっていることを容易に知ることができる。
【0015】
なお、本明細書は、次のようなX線シミュレータに係る発明も開示している。
【0016】
(1)放射線治療時に被検体に照射する放射線の照準合わせに利用される照準照合用のX線透視画像データを治療実行前に予め取得するX線シミュレータであって、天板に載置された被検体にX線を照射するX線管とX線照射により生じる被検体のX線透視像を検出するX線透視像検出器とを被検体を挟んで対向配備し、X線管およびX線透視像検出器を被検体のまわりに相対的に回転させる回転駆動手段と、X線照射に伴ってX線透視像検出器から出力されるX線検出データに基づきX線透視画像を表示する画像表示手段と、前記X線管とX線透過像検出器の実回転角度を検出する検出手段と、所定の桁数で前記実回転角度を表示するデジタル表示部と、前記デジタル表示部の表示可能な有効桁数で前記実回転角度に最も近い値を実表示値として決定し、該実表示値と実回転角度との偏差を求める演算手段と、前記デジタル表示部において前記実回転角度を実表示値として許容して表示するように予め決めた任意の公差と、前記演算手段により求めた偏差とを比較し、両値の大小関係を求める比較手段と、前記比較手段の比較結果に応じて前記デジタル表示部の表示の態様を切り替え制御する表示制御手段とを備えたことを特徴とするX線シミュレータ。
【0017】
前記(1)に記載の発明によれば、演算手段は、デジタル表示部の表示可能な有効桁数で実回転角度に最も近い値を決定し、実回転角度と実表示値との偏差を求める。このとき、実表示値に対して実回転角度が大きい値であるか、小さい値であるかを知ることができる。また、比較手段は、演算手段によって実表示値と実回転角度から求められた偏差を利用して予め決めた公差と偏差の大小関係を求める。このとき、実表示値に対する実回転角度のズレ量を知ることができる。表示制御手段は、これら求まる条件に応じてデジタル表示部の表示の態様を切り替え制御する。すなわち、オペレータは、デジタル表示部に表示される表示態様の変化を見ながら、X線管とX線透過像検出器の操作方向や操作量の調整具合を知ることができ、X線管とX線透過像検出器の操作量の調整を精度よく行える。
【0018】
さらに、実表示値の公差の設定を任意に変更しても、その公差の範囲内にX線管とX線透過像検出器が収まるように、その操作量の調整が可能となる。
【0019】
(2)前記(1)に記載のX線シミュレータにおいて、前記演算手段は、前記実回転角度の値に含まれる表示有効桁数未満の値を切り捨ておよび切り上げた場合の2つの表示値を求め、前記表示制御手段は、X線管とX線透過像検出器とが回転駆動する過程で前記比較手段の比較により偏差が公差より大きい値となる場合に、前記演算手段により求めた2つの表示値を前記デジタル表示部に交互に切り替え表示するように構成したX線シミュレータ。
【0020】
前記(2)に記載の発明によれば、実回転角度の値に含まれる表示有効桁数未満の値を切り捨ておよび切り上げた場合の2つの表示値が、演算手段により求まる偏差に応じてデジタル表示部に交互に切り替え表示される。したがって、オペレータは、デジタル表示部に表示される2つの表示値から実回転角度が実表示値に対して、大きい値であるか、小さい値であるかを容易に知ることができる。
【0021】
(3)前記(2)に記載のX線シミュレータにおいて、前記表示制御手段は、さらに、前記比較手段の比較により偏差が公差より大きい値となる場合に、前記偏差の大きさに応じて前記演算手段により求めた2つの表示値の表示切り替え速度を変化させるように構成したことを特徴とするX線シミュレータ。
【0022】
前記(3)に記載の発明によれば、偏差の大きさに応じて2つの表示値の表示切り替え速度が変化させられる。つまり、X線管とX線透過像検出器の操作方向によって偏差の大きさが変わるので、オペレータは、デジタル表示部の表示を見るだけでX線管とX線透過像検出器の操作すべき量を容易に知ることができる。
【0023】
(4)前記(1)ないし(3)のいずれかに記載のX線シミュレータにおいて、前記表示制御手段は、さらに、前記X線管とX線透過像検出器とが回転駆動する過程で前記比較手段の比較により偏差が公差より小さい値となる場合に、実表示値を前記デジタル表示部に継続的に表示するように構成したことを特徴とするX線シミュレータ。
【0024】
前記(4)に記載の発明によれば、偏差が公差より小さい場合は、実表示値がデジタル表示部に継続的に表示されるので、オペレータは、実表示値の範囲にX線管とX線透過像検出器が収まっていることを容易に知ることができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明に係るデジタル表示装置によれば、演算手段により実表示値を決定するときに、実表示値に対して操作対象物の実操作量の大小関係を求めることができる。また、実表示値と実操作量とから求まる偏差と、予め決めた実表示値の公差とを比較することにより、実表示値に対する実操作量のズレ量を求めることができる。すなわち、これら求まる条件に応じてデジタル表示部の表示の態様を制御手段によって切り替え制御することにより、オペレータは、デジタル表示部に表示される表示態様の変化を見ながら、操作対象物の操作方向や操作量の調整具合を知ることができ、操作対象物の操作量の調整を精度よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照してこの発明の実施形態を説明する。なお、本実施例では、放射線治療装置に利用される治療計画を決定するためのX線シミュレータに、本発明のデジタル表示装置を備えた場合を例に採って説明する。
【0027】
図1は実施例に係るX線シミュレータの全体構成を示すブロック図、図2は実施例のX線シミュレータのガントリ周りの構成を示す正面図である。
【0028】
X線シミュレータは、患者である被検体Mを載置するベッド上に設けられた天板1と、天板1の上に載置された被検体Mに向けてX線を照射するX線管2と、複数個のX線検出素子が縦横に配列された2次元アレイ方式のフラットパネル型X線検出器3(以下、単に「X線検出器3」という)とを備えている。なお、天板1の上の被検体Mを挟んでX線管2とX線検出器3が対向配備されている。なお、X線検出器は、本発明のX線透視像検出器に相当する。
【0029】
X線管2およびX線検出器3は、図1に示すように、リング方式のガントリGに起立姿勢で配設された回転架台4から水平方向に片持ち支持された支持アーム5a,5bにガイドアーム6a,6bを介してそれぞれ取り付けられている。ガントリGに配設されている回転架台4は水平軸Zを回転中心として全体が回転可能に構成されている。なお、X線管2およびX線検出器3を備えた回転架台4は、本発明の測定対象物に相当する。
【0030】
また、図2に示すように、回転架台4が矢印RA、RBで示す方向へ回転するのに伴って、X線管2およびX線検出器3が対向配備状態を維持したまま被検体Mのまわりを相対的に回転するように構成されている。さらに、X線管2およびX線検出器3は、それぞれ画像倍率調整などのためにガイドアーム6a、6bの長手方向(矢印RC、RDの示す向き)に往復移動可能に構成されている。
【0031】
なお、本実施例のX線シミュレータは、X線検出器3の後段に、X線検出器3から出力されるX線検出データを収集するデータ収集部7と、A/D変換部8でデジタル化されたX線検出データを画像信号として記憶するメモリ9とを備えている。このメモリ9に記憶されたデータは適時に読み出されて、データ処理部10により必要な画像データ処理が施されてから、X線透視画像として表示モニタMAの画面に映し出されたり、図示しないフィルム記録部によりフィルムに焼き付けられてフィルム写真として記録されたり、あるいは、ディスクメモリに格納されて画像信号の形態で記録されるよう構成されている。
【0032】
なお、フィルム記録部により作成されるフィルム写真は、従来のフィルムカセッテを使って撮ったフィルム写真と同等のものである。以下、実施例のX線シミュレータの主要構成部分について、より具体的に説明する。
【0033】
天板1は被検体Mを載せた状態で、天板駆動部12のコントロールにより前後や上下に移動させられるよう構成されている。この天板駆動部12は、キーボードやマウスなどで構成された操作部11からの操作入力により撮影制御部13から送出される指令信号に従って、天板1の駆動をコントロールする。
【0034】
X線管2は、高電圧発生器などを含む照射制御部14のコントロールにより、設定された照射条件に従ってX線を被検体Mに照射するよう構成されている。照射制御部14によるコントロールも、操作部11からの操作入力により撮影制御部13から送出される指令信号に従って行われる。
【0035】
また、X線管2およびX線検出器3が回転駆動部15のコントロールに応じた回転架台4の回転駆動に連動して移動するのに伴って、撮影方向であるX線管2の回転角度(操作量)を示すデータ信号が回転架台4に備わったロータリーエンコーダ16により逐次に検出され、一定の回転角度ごとにデジタル信号のパルスを後段のパルスカウント部17に送信するように構成されている。なお、なお、一定の回転角度としては、例えば、0.036°であり、回転架台4が一回転することによりロータリーエンコーダ16からパルスカウント部17には1000パルスのデジタル信号が送信される。なお、回転駆動部15は、本発明の回転駆動手段に、ロータリーエンコーダ16およびパルスカウント部17は、本発明に検出手段に相当する。
【0036】
つまり、図2および図3に示すように、X線管2とX線検出器3を回転移動させることにより、被検体Mに対するX線の照射角度を変えながら異なる方向から被検体MをX線撮影できるよう構成されている。これらX線管2およびX線検出器3の移動も、撮影制御部13から送出される指令信号に従ってコントロールされる。
【0037】
パルスカウント部17は、ロータリーエンコーダ16からのパルスを計数し、実回転角度に変換する。変換後の実回転角度は、演算処理部18に送信され、演算処理部18によって所定の加工が施され、図2に示すガントリGの左上角部に設けられた3桁の数値表示が可能なデジタル表示器19に、逐次に回転角度が表示されるように構成されている。この演算処理部18の具体的な構成および処理については後述する。なお、演算処理部18は本発明の演算手段に、デジタル表示器19はデジタル表示部に相当する。
【0038】
X線検出器3としては、例えばX線検出素子を横方向に1024,縦方向に1024の正形マトリックス構成が挙げられる。なお、X線検出器3は、入射X線を電荷あるいは光に変換するX線変換層と、X線変換層で生じた電荷あるいは光を検出する素子が縦横にマトリックス状に配置形成されている検出アレイ層との積層構造である直接変換タイプや、間接変換タイプとが利用される。
【0039】
さらに、本実施例のX線シミュレータのガントリGまわりには、X線シミュレータでの被検体Mの位置設定と放射線照射装置での被検体Mの位置設定を正確に合わせられるように、3基準点プロット方式の位置決め用投光機(図示省略)が設けられており、投光機の光により被検体Mの体表面に3つの十字ラインが映し出される構成となっている。3つの十字ラインの各交点がそれぞれ基準点となる。
【0040】
次に、上記実施例のX線シミュレータによりX線撮影を実行するときの回転角度をデジタル表示器に表示する処理について、図4に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0041】
〔ステップS1〕 被検体Mを天板1に載置して放射線治療を行う場合の条件設定を操作部11の操作によって行う。例えば、被検体Mに照射する放射線の強度、照射位置および照射角度、デジタル表示器19の有効桁数で実回転角度を実表示値として許容して固定表示させる公差などを撮像制御部13に対して設定する。本実施例では、図2に示すX線管2とX線検出器3を垂直方向の位置を基準角度0°とし、図3に示すように、X線管2の照射角度を45°、公差を±0.1°に設定した場合について説明する。
【0042】
条件設定が完了すると、天板1の上に被検体Mを載せてから天板1をガントリGの方へ移動させて被検体Mを撮影位置へセットする。キーボードやマウスの操作部11の入力操作により撮影を開始させる。
【0043】
〔ステップS2〕 回転駆動15は、撮像制御部13から指令に基づいて回転架台4を回転させ、X線管3の位置が、図3に示すように45°の位置にくるように回転移動させる。このとき、ロータリーエンコーダ16によって回転架台4の回転角度が逐次に検出され、パルス信号がパルスカウント部17に送信される。
【0044】
パルスカウント部17は、入力されるパルスを計数し、その計数値を実回転角度に変換して演算処理部18に送信する。実回転角度が44〜45°の範囲で、例えば44.75°で停止した場合、演算処理部18は、次にような処理を行う。
【0045】
〔ステップS3〕 演算処理部18は、先ず、実回転数の有効桁数未満の値を参照し、デジタル表示器19に表示可能な値の45°または44°に最も近い値に決める。この場合は、実回転角度が45°に近いので、45°を実表示値として決定する。
【0046】
〔ステップS4〕 実表示値が決まると演算処理部18は、実表示値と実回転数と差分により偏差または偏差の絶対値を求める。つまり、本実施例の偏差は、45.00−44.75=0.25となる。
【0047】
〔ステップS5〕 演算処理部18の内部に備わった比較処理部20は、予め任意に決めた公差(±0.1)と演算処理部18が求めた偏差(0.25)との大小関係の比較を行う。比較の結果、偏差が公差よりも大きいので、偏差が大きい値であることを示す符号信号を表示制御部21に送信する。また、実回転角度の浮動小数点以下の値を切り捨てた値の44°と切り上げた値の45°の数値情報信号も同時に表示制御部21に送信される。
【0048】
〔ステップS6〕 表示制御部21は、符号信号と数値情報信号にしたがって、デジタル表示器19に表示する数値の表示態様を切り替え制御する。例えば、偏差が公差よりも大きく、かつ、45°未満であるので、表示制御部21は、数値情報信号に含まれる回転角度44と45の値を交互に表示させる。
【0049】
〔ステップS7〕 デジタル表示器19に交互に表示される値を見るオペレータは、X線管2の位置が、設定値の45°の手前の44〜45°の範囲にあることが分かる。つまり、X線管2の位置ズレの方向を知ることができる。したがって、オペレータは、X線管2の位置を45°に近づけるように操作部11を操作して移動させる。この操作時にもステップS2〜ステップS6の処理が繰り返される。
【0050】
〔ステップS8〕
オペレータの操作により偏差が公差以下の値となると演算処理部18は、実表示値が設定値と一致すると判断し、デジタル表示器19に45の値を固定表示する指令信号を表示制御部21に送信する。演算処理部18からの指令信号に基づいて、デジタル表示器19に、45の値を表示させる。同時に演算処理部18は、45°になったことを示す信号を撮像制御部13にも送信する。
【0051】
〔ステップS9〕 撮像位置が確定すると、表示制御部21は、45の値をデジタル表示器19に固定表示させる。また、撮影制御部13は、X線管2から被検体MにX線を照射させて、X線検出器3から出力されるデータをメモリ9に格納させる。また、データ処理部10により必要な画像データ処理が行われて、X線透視画像がX線照射と同時的に表示モニタMAの画面へ表示される。
【0052】
オペレータは、操作部11により天板1を操作することにより被検体Mを移動させ、表示モニタMAに表示されたX線透視画像を観察しながら検討し、プランが決まれば、決定に従って、照射エリアを示すマークが入ったX線透視画像を取得する。
【0053】
この照射エリアを示すマーク入りのX線透視画像を照準照合用のX線の照射角度など必要付随データを静止画の治療計画の内容としてフィルムに焼き付けたり、ディスクメモリなどに納めたりして記憶する。以上で一連の処理が終了する。
【0054】
上述のように、演算処理部18によって決められた実表示値と、実回転角度と実表示値の偏差と、この偏差と公差の大小関係を求めることによって、X線管2の位置が44〜45°の範囲のどちらに方向に偏っており、さらに、設定値の公差からのズレ量までも求めることができる。これら演算処理部18で求められた結果に基づいて、表示制御部21がデジタル表示器19に44と45の値を交互に表示させることにより、オペレータは、X線管2の位置が45°未満であるか、それとも45°を超えているかのズレ方向を容易に知ることができる。そして、オペレータがズレ方向と逆にX線管3を移動調整して設定範囲に収まると、設定値が固定表示されるので、位置合わせが完了したことを容易に知ることができる。
【0055】
さらに、実表示値の公差は、任意に設定できるので、公差を小さくしても、その公差の範囲に容易に位置合せすることができる。すなわち、X線管2の照射角度の設定精度を向上させることができる。
【0056】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0057】
(1)上述した実施例では、予め設定した回転角度を基準に、デジタル表示器19の表示態様の切り替えを行っていたが、最小表示桁数の1°単位で同じ処理を行ってもよい。
【0058】
(2)上述した実施例では、偏差と公差の大小関係の比較を比較処理部20で行った結果に基づいて、表示制御部21が2つの値を交互に表示していたが、次にように構成してもよい。例えば、公差と偏差の差分により求まるズレ量が大きい場合に2つの値を交互に表示切り替えする速度を遅くし、ズレ量が小さくなるに従って表示切り替え速度を早くしたり、または、ズレ量が小さくなるに従って近づく値の表示時間を長くし、ズレ量が大きくなる値の表示時間を短くするように交互に2つの値の表示切り替えを行ったりするよう構成してもよい。
【0059】
(3)上述した実施例では、デジタル表示器19をガントリGに備えた構成であったが、表示モニタMAや他の独立した箇所などに配備した構成であってもよい。
【0060】
(4)なお、本発明のデジタル表示装置は、X線シミュレータに限らず、移動距離や、物理量を測定する装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施例に係るX線シミュレータの全体構成を示すブロック図である。
【図2】ガントリ周りの構成を示す正面図である
【図3】X線シミュレータの動作を示す図である
【図4】実施例のX線シミュレータ内の処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0062】
1 … 天板
2 … X線管
3 … X線検出器
4 … 回転架台
15 … 回転駆動部
16 … ロータリーエンコーダ
17 … パルスカウント部
18 … 演算処理部
19 … デジタル表示器
20 … 比較処理部
21 … 表示制御部
M … 被検体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作対象物の操作量を表示するデジタル表示装置において、前記操作対象物を操作したときの実操作量を検出する検出手段と、所定桁数で前記実操作量を表示するデジタル表示部と、前記デジタル表示部の表示可能な有効桁数で前記実操作量に最も近い値を実表示値として決定し、該実表示値と実操作量との偏差を求める演算手段と、前記デジタル表示部において前記実操作量を実表示値として許容して表示するように予め決めた任意の公差と、前記演算手段により求めた偏差とを比較し、両値の大小関係を求める比較手段と、前記比較手段の比較結果に応じて前記デジタル表示部の表示の態様を切り替え制御する表示制御手段とを備えたことを特徴とするデジタル表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載のデジタル表示装置において、前記演算手段は、前記実操作量の値に含まれる表示有効桁数未満の値を切り捨ておよび切り上げた場合の2つの表示値を求め、前記表示制御手段は、操作対象物が操作される過程で前記比較手段の比較により偏差が公差より大きい値となる場合に、前記演算手段により求めた2つの表示値を前記デジタル表示部に交互に切り替え表示するように構成したことを特徴とするデジタル表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載のデジタル表示装置において、前記表示制御手段は、さらに、前記比較手段の比較により偏差が公差より大きい値となる場合に、前記偏差の大きさに応じて前記演算手段により求めた2つの表示値の表示切り替え速度を変化させるように構成したことを特徴とするデジタル表示装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のデジタル表示装置において、前記表示制御手段は、さらに、前記操作対象物が操作される過程で前記比較手段の比較により偏差が公差より小さい値となる場合に、実表示値を前記デジタル表示部に継続的に表示するように構成したことを特徴とするデジタル表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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