説明

デスケーリングノズル

【課題】壊食性能及び衝突力が大幅に向上したデスケーリングノズルを提供する。
【解決手段】デスケーリングノズルは、ノズル本体の上流端部域に形成された流体導入口55からノズル先端の噴射口5に至る流路と、前記流体導入口55の下流側の流路内に装着され、前記流体導入口55を開閉するためのピストンバルブ34と、このピストンバルブの下流域に配設された整流部材25とを備えており、前記整流部材25の配置された流路24の断面(断面積)が、前記ピストンバルブ34内の流路33の断面(断面積)よりも大きく形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延鋼板上のスケール除去に有用なデスケーリングノズル、特に開閉ピストンバルブを内蔵したデスケーリングノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
デスケーリングノズルとして、噴射停止時にノズル先端からの液漏れを防止するため、開閉バルブを内部に装着したデスケーリングノズルが利用されている。このノズルは、ノズル本体内に形成された弁座と、この弁座の下流側に配設され、かつ弁座に対して着座可能な開閉バルブと、この開閉バルブを弁座に対して付勢するためのスプリングとを備えており、ノズルの上流端部には水流が流入可能な導入口が形成されている。
【0003】
特開平6−79339号公報(特許文献1)には、ノズル後端部の水液導入口部と、この導入口部下流に内装された開閉ピストンバルブと、このピストンバルブをノズル軸線上において動作可能に支持する支持胴体と、この支持胴体の上流側を動作可能に支持するガイドスリーブと、開閉ピストンバルブとガイドスリーブとの間に配設された圧縮状態のスプリングと、支持胴体とノズル本体の内周壁面との間に形成された断面円環状の流路と、支持胴体とノズル本体の内周壁面との間に配設された整流部材とを備えたデスケーリングノズルが開示されている。また、この文献には円周方向に等間隔に放射状に延びる6つの羽根を備えた整流部材が図示されている。
【0004】
しかし、このノズルは、支持胴体とノズル本体の内周壁面との間に形成された断面円環状の流路に整流部材が配設されているため、流路断面積が小さく、圧力損失(圧力低下)が生じる。
【0005】
特開2003−159549号公報(特許文献2)には、ノズルチップの流路に喉部を設け、ノズルチップの流入口から喉部までの流路断面形状を断面積が漸次縮小する円形又は楕円形状とし、上記喉部からノズルチップの噴口までは流路断面形状を断面積が同一又は漸次縮小する円又は楕円乃至長円又は楕円に滑らかに連続させると共に、上記喉部では流路直径(d)に対する喉部の曲率(R)を、R/d=0.2〜5の範囲で滑らかに連続させたスプレーノズルが開示されている。この文献には、流体供給管より流体が供給されるストレーナー、ピストンバルブを備え、流体圧に応じて流路を開閉するチェックバルブ、整流器を組み込んだアダプター、上記ノズルチップを順次連設することも記載されている。さらに、チェックバルブ内の流路直径(d2)とアダプター内の流路直径(d1)を1≦(d2/d1)≦1.4の関係に設定し、直径(d1)の流路と直径(d2)の流路との間に整流部材を配置することも記載されている。
【0006】
このノズルでは、ピストンバルブの下流側に整流部材を配置しているものの、バルブ内の流路直径(d2)とアダプター内の流路直径(d1)を特定の関係に設定し、かつ直径(d2)と直径(d1)との流路間に整流部材を配設しているため、圧力損失が大きくなり、デスケーリング性能を高めるのが困難である。このようなピストンバルブ内蔵型デスケーリングノズルでは、ノズル内部での流体の圧力低下の抑制と整流化の双方の機能を併せもつ内部構造を形成することが困難である。
【0007】
特開2004−216454号公報(特許文献3)には、先端部の凹面又は凹部で開口した吐出孔と、この吐出孔からテーパ角θ30〜80°で延びるテーパ部と、このテーパ部に連なる径大部とで構成されたノズル孔を備えており、前記吐出孔の短径D2に対する径大部の内径D1の割合(D1/D2)が3以上であるデスケーリングノズルが開示されている。特開2009−101411号公報(特許文献4)には、先端部の凹面又は凹部で開口した楕円形状の吐出孔と、この吐出孔からテーパ角θ30〜80°で延びるテーパ部と、このテーパ部に連なる径大部とで構成されたノズル孔を備えており、径大部の長さLと径大部の内径Dcとの割合(L/Dc)が4.2以上であるデスケーリングノズルが開示されている。これらの文献には、上流端部に形成されたフィルタ部と、このフィルタ部の下流部に配設された整流ユニットを備えていることも記載されている。
【0008】
このようなノズルでは、整流部材の流路径を大きくし、高い衝撃力でデスケーリング性能を向上できる。しかし、特許文献1及び2などに記載のピストンバルブ内蔵のフィルターを、特許文献3及び4のノズルに装着すると、圧力損失が大きくなり、高い衝撃力を実現できなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−79339号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2003−159549号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2004−216454号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開2009−101411号公報(特許請求の範囲、段落[0028])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、噴射停止時の液漏れを防止し、かつ壊食性能及び衝突力が大幅に向上したデスケーリングノズルを提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、ノズル内での流体の圧力損失を低減できるデスケーリングノズルを提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、ノズル内部の構造を複雑化させることなく、高い壊食性能及び衝突力を有するデスケーリングノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、圧力損失が大きく、壊食性能が低下するピストンバルブを備えたデスケーリングノズルであっても、前記ピストンバルブよりも下流側に整流部材を配設し、この整流部材の配設部位の流路断面積を拡大すると、壊食性能及び衝突力を大幅に向上できること、さらに整流部材の構造(羽根の厚み、枚数、長さ)を最適化すると、さらに壊食性能(デスケーリング能)が向上することを見いだし、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明のデスケーリングノズルは、ノズル本体の上流端部域に形成された流体導入口と、この流体導入口からノズル先端の噴射口に至る流路と、前記流体導入口の下流側の流路内に装着され、前記流体導入口を開閉するためのピストンバルブと、このピストンバルブの下流域に配設された整流部材(整流ユニット)とを備えたデスケーリングノズルであって、前記整流部材(整流ユニット)が配置された流路の断面(断面積)が、前記ピストンバルブ内の流路の断面(断面積)よりも大きく形成されている。この構造では、ピストンバルブの下流域に整流部材が配設され、整流部材の配設部位の流路断面(断面積)がピストンバルブ内の流路断面(断面積)よりも大きく形成されているため、整流部材による整流作用を高めることができ、圧力損失を大きく低減できる。
【0015】
なお、整流部材(整流ユニット)が装着された流路(整流部材を装着した後の流路)の断面積(A)と、ピストンバルブ内の流路の断面積(A)との比(A/A)は1を超え、かつ1.7以下程度であってもよい。また、整流部材の構造は特に制限されず、羽根の枚数は、例えば、10〜16枚程度であってもよく、羽根の厚みは、例えば、0.3〜0.7mm程度であってもよい。さらに、デスケーリングノズルは、ノズル先端部の凹面又は凹部で開口した吐出口と、この吐出口からテーパ角30〜80°で延びるテーパ部と、このテーパ部に連なる径大流路とで構成されたノズル孔を備えていてもよく、前記吐出口の短径D2に対する径大流路の内径D1の割合(D1/D2)は3以上であってもよい。また、前記径大部から上流方向に延びる流路内に配設された整流部材と、この整流部材から離れた上流部に配設されたピストンバルブとを備えていてもよい。さらに、ノズル本体の流路は、上流方向に向かって流路幅が漸増する傾斜流路部と、この傾斜流路部から上流方向に延び、かつ断面積が大きな拡大した中空筒状流路部と、この中空筒状流路部の上流方向に向かって流路幅が漸減する傾斜流路部とを備えていてもよく、前記中空筒状流路部内に整流部材が配設されていてもよい。整流部材は、芯体から放射状に延びる複数の羽根と、芯体の上流側及び下流側に同軸に形成され、かつそれぞれ上流方向及び下流方向に延出する整流案内部とを備えていてもよい。ピストンバルブは、ノズル本体の流路内に形成された弁座と、中空筒状のピストン本体と、このピストン本体の上流部に形成され、前記弁座に着座可能な弁体と、この弁体を弁座に対して上流方向に付勢するコイル状スプリングと、前記弁体の下流部に形成され、弁座に対する弁体の開動に伴って上流からの流体をピストン本体の中空部に通じる連通部とを備えていてもよく、このような形態で、ピストンバルブ内には、導入口から噴射口に連通する筒状流路が形成されていてもよい。さらには、先端部に噴射口を有するノズルチップを装着するための第1のセグメントと、この第1のセグメントに対して接続可能であり、かつ前記円錐状流路に連なる径大な流路を形成し、整流部材が装着可能な第2のセグメントと、この第2のセグメントに対して接続可能であり、かつピストンバルブが装着可能な第3のセグメントと、この第3のセグメントに対して接続可能であり、かつ流体導入口を備えた第4のセグメントとを備えていてもよい。このノズルチップは、先端部に形成された凹面又は凹部で開口した吐出口と、この吐出口から上流方向に向かって所定のテーパ角θで延びる円錐状テーパー部(円錐状流路)とを備えていてもよい。
【0016】
本発明は、前記デスケーリングノズルが、流体導入口からノズルの流路内に流体が流入可能な形態で、流体を供給するヘッダに装着されているノズル装置も包含する。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、ピストンバルブの下流域に整流部材を配設し、前記整流部材が配置された流路断面(断面積)を、前記ピストンバルブ内の流路断面(断面積)よりも大きく形成されているため、整流作用を高め、ノズル内での流体の圧力損失を低減でき、壊食性能及び衝撃力(打力)を大幅に向上できる。また、ピストンバルブにより、噴射停止時にノズル先端から流体(水)が漏れるのを防止できる。さらに、ノズル内部の構造を複雑化させることなく、壊食性能及び衝突力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は本発明に係るデスケーリングノズルの一例を示す概略分解斜視図である。
【図2】図2は図1のノズルチップを備えたアダプター(ノズルケース)を示す概略断面図である。
【図3】図3は図1のピストンバルブ内蔵フィルターを示す部分概略断面図であり、図3(A)はピストンバルブが閉じ状態の部分概略断面図であり、図3(B)はピストンバルブが開状態の部分概略断面図である。
【図4】図4は図3(A)のIV-IV線概略断面図である。
【図5】図5は図1のピストンバルブを示す部分概略斜視図である。
【図6】図6は比較例で用いたピストンバルブ内蔵フィルターを示す概略斜視図である。
【図7】図7は図6のVII-VII線概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、添付図面に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は本発明に係るデスケーリングノズルの一例を示す概略分解斜視図、図2は図1のノズルチップを備えたアダプター(ノズルケース)を示す概略断面図、図3は図1のピストンバルブ内蔵フィルターを示す部分概略断面図であり、図3(A)はピストンバルブが閉じ状態の部分概略断面図であり、図3(B)はピストンバルブが開状態の部分概略断面図である。図4は図1のIV-IV線概略断面図(整流部材の配設部位の断面図)であり、図5は図1のピストンバルブを示す部分概略斜視図である。
【0020】
図1に示すデスケーリングノズルは、先端部に噴射口(吐出口)5を有するノズルチップ3を装着するための中空筒状の第1のアダプター(ノズルケース又はセグメント)1と、整流部材25が装着可能な中空筒状の第2のアダプター(又はセグメント)21と、ピストンバルブ34が装着可能な中空筒状の第3のアダプター(又はセグメント)31と、流体導入口55を備えた中空筒状の第4のアダプター(又はセグメント)51とを備えている。これらのアダプター(セグメント又はケーシング)1,21,31,51はノズル本体を形成し、互いに隣接するこれらのアダプターは、それぞれ上流端部及び下流端部の螺合部1a,21a,31aでの螺合により緊密に接続又は連結可能であり、下流から上流方向に向かって、同一軸線上に沿って延びる流路(流体導入口からノズル先端の噴射口5に至る流路)を形成している。なお、第1のアダプター1はノズルケースを形成し、整流部材25、ピストンバルブ34、流体導入口55を備えた第2乃至第4のアダプター(又はセグメント)21,31,51は、ピストンバルブ内蔵フィルターを形成する。
【0021】
第1のアダプター(ノズルケース)1の下流端では長方形状の開口部2が開口しており、第1のアダプター1の先端部に装着されたノズルチップ3は、先端面の半径方向に横断して形成された断面U字状の凹溝4と、この凹溝4の断面U字状の凹面(この凹面の中心部)で開口し、かつ長径/短径比が1.2〜1.8程度の楕円形状の噴射口(吐出口)5と、この噴射口から上流方向に向かって所定のテーパ角で直線的に拡がる円錐状流路6とを備えており、円錐状流路6はノズルチップ3のテーパ部(又は円錐状傾斜壁)7により形成され、前記凹溝4の両側壁8は下流(先端部)方向にいくにつれて外方向に拡がる(又は傾倒する)傾斜側壁を形成している。特に、低圧及び/又は低流量並びにスプレー距離が遠くても衝突力を高めるため、前記円錐状流路6を形成するテーパ部7の角度(テーパ角)θは、45〜55°程度に設定されている。なお、第1のアダプター1の下流端の長方形状の開口部2からは、長軸を合わせて、前記ノズルチップ3の楕円形状の噴射口5が、前方方向に臨んでいる。前記ノズルチップ3の外周面には第1のアダプター1の内壁と係合可能な係合段部9が形成され、先端部方向へのノズルチップ3の抜けを規制している。
【0022】
第1のアダプター1内には、ノズルチップ3の円錐状流路6の上流端と実質的に同じ内径の流路を有する中空円筒状のブシュ10が装着され、このブシュ10は、第1のアダプター1の上流端部への螺合に伴って前進動する第2のアダプター21の下流端面により下流方向に押圧され、ノズルチップ3を前記係合段部9で係合させ、ノズルチップ3を第1のアダプター1に緊密に装着している。
【0023】
さらに、前記ブシュ10の円筒状内壁はノズルチップ3の円錐状流路6の上流端から上流方向に延びる径大流路11を形成しており、楕円形状の吐出口5の短径D2に対する径大流路11の内径D1の割合(D1/D2)は、3〜4程度に設定されている。
【0024】
なお、第1のアダプター1の所定の外周部(この例では、第1のアダプター又はノズルケースの端部)には、導管又は流体供給管(又はヘッダ,図示せず)にノズルを取り付けるための鍔部(又はフランジ)などの取付部又は位置決め部12が形成されている。
【0025】
第2のアダプター21は、前記ブシュ10の径大流路(円筒状流路)11と実質的に同じ内径の円筒状流路22と、この流路から上流方向に向かって内径が緩やかに大きくなる傾斜流路23と、この傾斜流路23の上流端からと実質的に同じ内径の径大な円筒状装着流路24とを備えており、この装着流路24には整流ユニット(整流部材)25が配設又は装着されている。この整流ユニット(整流部材)25は、芯体26から放射方向に延び、先端部が第2のアダプター21の内壁に当接してもよい複数の整流板(整流羽根)27と、芯体の上流側及び下流側に同軸に形成され、かつそれぞれ先端部を上下流方向に向けて形成された鋭角な円錐部(上流側又は下流側が先細状の円錐部)28a,28bとを備えている。この例では、径大流路11の内径D1に対する径大な円筒状装着流路24の内径D3(又は整流ユニット25の羽根27先端の仮想円の外径)の割合(D3/D1)は、1.3〜1.5程度に形成されている。すなわち、圧力損失を低減し、かつ整流ユニット25による整流作用を高めるため、径大流路11よりも流路径の大きな円筒状流路24の部位に整流ユニット25が装着されている。また、芯体26からは周方向に等間隔に12枚の整流板(整流羽根)27が放射状に延びており、整流板(整流羽根)27の厚みは0.5〜0.7mm程度に形成されている。なお、整流ユニット25は、傾斜流路23の傾斜内壁により下流方向への移動が規制される。
【0026】
第3のアダプター31の円筒状流路32内には、ピストンバルブ34がスライド可能に配設され、ピストンバルブ34を装着した状態では、前記径大な円筒状装着流路24と実質的に同じ内径の下流端から上流方向に向かって流路径が漸減する傾斜流路33と、この傾斜流路の上流端から上流方向に向かって実質的に同じ流路径で延び、かつピストンバルブ34内の円筒状流路36とを備えている。すなわち、ピストンバルブ34は、外周部に螺旋状のスプリング37が装着可能な中空円筒状のピストン本体35と、このピストン本体35の上流側の外周面に形成され、第3のアダプター31の円筒状流路32の内壁と摺接し、前記スプリング37の上流端部を止定するための規制するリング状規制壁38と、この規制壁38から上流方向に延びるリング部39と、このリング部の上流端から円錐状に突出する円錐状弁体40と、前記リング部39の周方向に間隔をおいて凹状に形成され、リング状規制壁38との隣接部位でピストン本体35の中空部(円筒状流路)33に通じる複数の連通部41とを備えており、ピストン本体35の下流側の外周面には、ピストン本体35が下流方向へ移動するのを規制するための環状ストッパ42が装着されている。第4のアダプター(フィルター)51の下流側の開口端には、円錐状弁体が着座可能なリング状傾斜面(弁座)54が形成されている。そのため、常態では、スプリング37の付勢力により弁体40は弁座に対して押圧され、「閉」状態が維持されている。また、ピストン本体35の周壁には、空気抜き孔43が形成されている。
【0027】
なお、前記整流ユニットの配設部位の流路断面積を大きくするため、前記整流ユニットが装着された流路の断面積Aと、ピストンバルブ内の流路の断面積Aとの面積比(A/A)=1.2〜1.5程度に形成されている。
【0028】
第4のアダプター51の流路は、第3のアダプター31の円筒状流路33と実質的に同じ径(又は若干大きい又は小さい径)で上流方向に延びる円筒状流路52と、この円筒状流路から傾斜部を経て内径が大きく、第4のアダプター51の上流端部壁に至る円筒状流路53とを備えている。第4のアダプター51の下流端面には、前記ピストンバルブの弁体が緊密に接触可能なリング状傾斜面(弁座)54が形成され、第4のアダプター51の上流端部の端部壁及び周面には、流体導入口として、周方向に所定間隔をおいて軸方向に延びる複数のスリット(又は流入口)55が形成されており、導管又は流体供給管(図示せず)からの夾雑物の流入を規制しつつ、流体導入口(スリット)55からノズル本体内に水を流入させている。そのため、第4のアダプター51はフィルタ又はストレーナとして機能させることができる。
【0029】
このようなデスケーリングノズルでは、大きな圧力損失をもたらしやすいピストンバルブ34を内蔵しているにも拘わらず、整流効果を高めて圧力損失を著しく低減でき、壊食性能を大きく向上できる。より詳細には、第4のアダプター51の流体導入口(スリット)55から水が流入し、水圧が大きくなり所定の基準値を越えると、ピストンバルブ34のスプリング37の付勢力に抗して弁座54から弁体40が離れてバルブが「開」となり、ノズル本体内に流入した水は、第3のアダプター31の円筒状流路(ピストンバルブ内に形成された流路)及び下流方向に向かって拡がった傾斜流路33を経て第2のアダプター21の整流ユニット25で整流される。また、整流ユニット25により整流された水流は、下流方向に向かって狭まった傾斜流路23を経て円筒状流路22及び第1のアダプター1の径大流路11に至り、円錐状流路6を経て吐出口5から噴射される。このような構造では、ピストンバルブ34から離れた下流域であって流路断面積の大きな流路24に整流ユニット25が配設され、かつ整流ユニット25の羽根26が薄く、しかも羽根数が多いため、高い整流効果を実現でき、圧力損失を大きく低減できる。しかも、整流ユニット25の上流側及び下流側に先細状の円錐部28a,28bが形成されているため、傾斜流路33,23で流路断面積が変化しても、急激な断面積の変化及び乱流化を抑制できる。そのため、整流された水流は、所定のテーパ角の円錐状流路6で絞りつつ、径大流路11の内径D1に対して短径D2が小さな楕円形状の吐出口5から水流を噴射するため、低圧及び/又は低流量並びにスプレー距離が遠くてもスケールを効率よく除去でき、鋼板の冷却を抑制しつつデスケーリング性能を向上できる。
【0030】
なお、本発明において、ノズルチップの構造は特に制限されず、先端部の噴射口(吐出口)と、この噴射口(吐出口)から上流方向に拡がって延びる流路とを有していればよい。好ましいノズルチップの構造及び噴射口(吐出口)と径大流路との関係については、特開2004−216454号公報及び特開2009−101411号公報を参照できる。ノズルチップは、通常、先端部に形成された凹面又は凹部で開口した噴射口(吐出口)と、ノズルチップのテーパ部(円錐状傾斜壁など)により形成され、前記噴射口から上流方向に向かって所定のテーパ角θで延びる流路(円錐状流路など)とを備えている。吐出口は、扁平状、四角形状などであってもよいが、通常、楕円形状である。例えば、楕円形状の吐出口の長径/短径比は、1.1〜3.0(例えば、1.2〜3)、好ましくは1.15〜2.8(例えば、1.2〜2.5)、さらに好ましくは1.2〜2.5(例えば、1.4〜2)程度である。また、楕円形状の吐出口の長径/短径比は、比較的小さい範囲、例えば、1.1〜2(例えば、1.12〜1.7)、好ましくは1.15〜1.5(例えば、1.15〜1.45)、特に1.2〜1.45程度であってもよい。
【0031】
ノズルチップのテーパ部は、直線的に、又は異なる複数の傾斜角で、若しくは湾曲して傾斜していてもよい。前記テーパ部の角度(テーパ角)θは、20〜80°程度の範囲から選択してもよく、通常、例えば、30〜80°、好ましくは35〜75°、さらに好ましくは40〜70°、特に40〜60°程度の範囲から選択できる。なお、テーパ部が複数のテーパ部や湾曲部で構成されている場合、前記テーパ角θは、吐出口と、上流側に位置する径大流路の始端部とを結ぶ線で形成される角度を意味する。
【0032】
ノズルの流路(ノズル孔)は、吐出口と、テーパ側壁により所定のテーパ角θで上流方向に拡がって延びるテーパ状流路(又は円錐状流路)と、このテーパ状流路の上流端とほぼ同じ内径で延びる円筒状径大流路とで構成してもよい。径大流路は、通常、実質的に同じ内径に形成する場合が多いものの、整流部材が装着される流路部位を除き、全体として、角度0〜5°(例えば、0〜3°)で上流方向に向かって内径が若干拡大して傾斜していてもよい。前記吐出口の短径D2に対する径大流路の内径D1の割合(D1/D2)は、3以上(例えば、3〜7)、好ましくは3.5〜6.5、さらに好ましくは4〜6(例えば、4.5〜5.5)程度であってもよい。なお、径大流路の内径D1は、8〜20mm(例えば、8〜15mm、好ましくは9〜15mm)程度であってもよい。径大流路の全長は、例えば、30〜300mm(例えば、50〜200mm)、好ましくは50〜150mm(例えば、75〜150mm)程度である。さらに、径大流路の長さLと径大流路の内径D1との割合(L/D1)は、4.2以上、例えば、4.2〜12(例えば、4.2〜8)、好ましくは4.3〜10(例えば、4.3〜7.5)、さらに好ましくは4.4〜8(例えば、4.4〜7)、特に4.5〜7.5(例えば、4.5〜6.5)程度であってもよい。さらに、吐出孔の長径Daに対する径大流路の内径D1の割合(D1/Da)が3.6〜10、3.65〜9.5、好ましくは3.7〜9、さらに好ましくは3.75〜8.5、特に3.8〜8(例えば、3.8〜7.5)程度であってもよい。
【0033】
前記径大流路はブシュで形成する必要はなく、種々の流路形成部材(スリーブなど)で形成してもよく、第1のアダプター及び/又は第2のアダプターの内壁で形成してもよい。
【0034】
なお、前記凹面又は凹部(断面U字状の湾曲溝などの溝など)の両側壁は、上流方向から先端部方向にいくにつれて外方向に傾斜していてもよく、凹面又は凹部の底面は、吐出口を最下部として溝の延出方向(又は半径方向)にいくにつれて両端部が隆起(前方方向に隆起)した湾曲状底面であってもよい。
【0035】
ノズルチップが装着可能な第1のアダプター(ノズルケース又は第1のケーシング)の形態は、先端部が開口し、後端部に第2のアダプターとの連結部(螺合部など)を備えていればよい。
【0036】
整流部材(整流ユニット)は、整流効果を高めるため、ノズルチップから上流方向に延びる流路(例えば、前記径大流路から上流方向に延びる流路)内であって、ピストンバルブの下流域に配設される。整流部材が配設される流路部(中空筒状流路部又は装着流路)は、前記径大流路と実質的に同じ流路径を有していてもよく、径大流路よりも大きな流路径を有していてもよい。特に、流路断面積を大きくして高い整流作用により壊食性能を向上させるため、整流部材(整流ユニット)は、径大流路よりも流路径の大きな円筒状流路(装着流路)の部位に装着するのが好ましい。径大流路の内径D1に対する径大な円筒状装着流路(整流部材が装着される流路)の内径D3の割合(D3/D1)は、1.1〜2、好ましくは1.2〜1.8、さらに好ましくは1.3〜1.7(例えば、1.4〜1.6)程度であってもよい。また、前記整流部材が配置された流路断面は、前記ピストンバルブ内の流路断面よりも大きく形成するのが好ましい。整流ユニットが装着された流路(装着後の流路)の断面積(A)と、ピストンバルブ内の流路の断面積(A)との比(A/A)は、例えば、1を越え、1.7以下(例えば、1.05〜1.7)、好ましくは1.1〜1.6(例えば、1.15〜1.55)、さらに好ましくは1.2〜1.5(例えば、1.25〜1.48)程度である。
【0037】
径大流路よりも大きな流路径を有し、かつ整流部材が配設される流路部(中空筒状流路部)の両側の流路径は、乱流の生成を抑制するため、通常、上流方向及び下流方向にいくにつれて、整流部材の配設部位(装着流路)の流路径よりも連続的に(直線的に又は湾曲して)小さく形成されている。例えば、整流部材とその周辺の流路は、上流方向に向かって流路幅が直線的又は湾曲して漸増して径大流路に至る傾斜流路部(円錐状流路部など)と、この傾斜流路部から上流方向に延び、かつ断面積が大きな拡大した中空筒状流路部(整流部材が配設される流路)と、この中空筒状流路部の上流方向に向かって流路幅が直線的又は湾曲して漸減して径大流路に至る傾斜流路部(円錐状流路部など)とを備えている。さらに、整流部材の両端部に形成した突起部により、整流部材の上流域及び下流域での急激な断面積の変化や流れの変化を抑制できる。
【0038】
整流部材は、通常、芯体から周方向に間隔をおいて放射状に延びる複数の羽根と、芯体の上流側及び下流側に同軸に形成され、かつそれぞれ上流方向及び下流方向に延出する整流案内部とを備えている。整流部材の構造(羽根の枚数、厚み、長さ)を最適化することにより、壊食性能を向上できる。特に、羽根の枚数及び厚みの効果は顕著であり、羽根の枚数が多いほど、また羽根の厚みが小さいほど、壊食性能が向上する。羽根の枚数は、ノズルのサイズなどに応じて、例えば、10〜20枚(例えば、10〜18枚)程度の範囲から選択でき、通常、10〜16枚、好ましくは10〜14枚(例えば、12〜14枚)程度である。羽根は、通常、芯体の周方向に等間隔毎に形成される。
【0039】
羽根の厚みを薄くするにつれて、羽根の端面での流れの乱れを軽減できるため、整流作用を高め、衝突力(壊食性能)を向上できる。一方、羽根の厚みが薄すぎると、強度が低下して羽根が変形又は破損するおそれがある。そのため、羽根の厚みは、ノズルのサイズや用途などに応じて、0.1〜1mm(例えば、0.2〜0.9mm)程度の範囲から選択でき、通常、0.3〜0.8mm(例えば、0.5〜0.8mm)、好ましくは0.3〜0.7mm(例えば、0.4〜0.6mm)程度であってもよく、0.4〜0.7mm程度であってもよい。
【0040】
羽根の長さは、ノズルのサイズなどに応じて、10〜50mm(例えば、12〜45mm)程度の範囲から選択でき、例えば、15〜45mm(例えば、17〜40mm)、好ましくは20〜43mm(例えば、23〜40mm)、さらに好ましくは25〜40(例えば、25〜38mm)程度であり、16〜35mm(例えば、25〜35mm)程度であってもよい。羽根の長さを15〜40mm(例えば、25〜40mm、好ましくは28〜38mm)程度にすると、性能が大幅に向上する。
【0041】
また、整流部材が装着される流路(円筒状流路)の内径(D)に対する羽根の長さ(L)の比(L/D)が大きいほど整流効果が高く、壊食性能が向上する傾向を示し、前記比(L/D)が大きすぎると、噴射パターンに曲がりが発生するなど噴霧が不安定になりやすくなる。前記比(L/D)は、ノズルのサイズや用途などに応じて、0.7〜3程度の範囲から選択してもよく、通常、1〜3(例えば、1〜2.3)、好ましくは1.3〜2.5(例えば、1.5〜2.3)、さらに好ましくは0.6〜2.2(例えば1.8〜2.1)程度であってもよい。なお、本発明では、前記比(L/D)が「1」であっても高い壊食性能を示す。
【0042】
前記整流部材の上流部及び下流部には、流体をより整流化するため、整流羽根よりも上流方向及び下流方向に延出する整流案内部を備えていてもよい。この整流案内部は、下流方向又は上流方向にいくにつれて先細りとなる形態を有していればよく、整流案内部材の頂部は、流体の乱流化を抑制できる限り、弾頭状、ノーズ状などの形態で湾曲していてもよく、円錐台状であってもよく、先端が鋭角に尖った円錐状であってもよい。
【0043】
整流案内部(先細状の円錐状の突起など)は、少なくとも整流部材の下流側に形成するのが好ましい。整流部材の下流側及び上流側にそれぞれ先細状の円錐状の突起(円錐部)を形成すると、整流効果が高めるのに有利である。特に、整流部材が配設される流路(装着流路)の上流部及び下流部にそれぞれ前記傾斜流路部(円錐状流路部など)が形成されている場合、整流案内部(先細状の円錐状の突起(円錐部)など)を形成すると、整流部材の上流域及び下流域での流路断面積の変化及び流体の乱流化を抑制できる。整流効果を高めるため、整流案内部(先細状の円錐状の突起など)は、整流部材の装着流路に隣接する上流域及び下流域の傾斜壁に対応した角度で整流部材から先細状に延出していてもよい。
【0044】
また、整流羽根は芯体から放射状に延出している必要はなく、軸芯から放射状に延出していればよく、例えば、互いに装着可能な切り込み部を有する複数の板部材を組み合わせることにより形成してもよい。
【0045】
整流部材(整流ユニット)は、第2のアダプター内において、係止、嵌合、溶着、固着などの位置決め又は固定手段により下流側への移動を規制できる。なお、整流部材の羽根は第2のアダプターの装着流路の内壁に固定されていてもよい。
【0046】
ピストンバルブは、前記流体導入口の下流側であって整流部材の上流側の流路内に装着され、流体圧に応じて前記流体導入口を開閉可能であればよい。ピストンバルブは、整流部材に隣接して配設してもよいが、整流部材から離れた上流部に配設してもよい。ピストンバルブ内には、圧力損失を低減するため、導入口から噴射口に連通する筒状流路(円筒状流路など)が形成されている。すなわち、ピストンバルブは、ノズル本体の流路内に形成された弁座と、中空筒状のピストン本体と、このピストン本体の上流部に形成され、前記弁座に着座可能な弁体と、この弁体を弁座に対して上流方向に付勢するコイル状スプリングと、前記弁体の下流部に形成され、弁座に対する弁体の開動に伴って上流からの流体をピストン本体の中空部(筒状流路)に通じる連通部とを備えている。なお、ピストンバルブの形態は特に制限されず、弁座は、アダプターの開口端面に限らず、ノズル本体の流路内であれば適所に形成できる。また、連通部から流体をピストン本体内の中空部に効率よく流入させるため、通常、弁体とピストン本体との間には流体が下流方向に漏洩するのを規制するための規制壁(例えば、前記リング状規制壁)又はシール壁を形成してもよく、連通部は、弁体の下流側の周壁部(前記リング部など)の周方向及び/又は軸方向の適所に形成される。ピストン本体の中空部(流路)に連通する連通部は、通常、弁体と規制壁(例えば、前記リング状規制壁)又はシール壁との間の領域に周方向に間隔をおいて形成する場合が多い。このような構造のピストンバルブでは、上流方向からピストン本体の中空部(流路)内に流体(水)が流入するため、通常、圧力損失が大きくなる。本発明では、前記のように、このようなピルトンバルブを内蔵していても、圧力損失を大きく低減して壊食性能を向上できる。
【0047】
第3のアダプターはピストンバルブが装着可能であればよく、第2のアダプターに対して第3のアダプターを相対的に螺合することにより、整流部材を緊密に装着できる。
【0048】
流体導入口(水流入口)はノズル本体の上流端部域に形成すればよく、この流体導入口は、ノズル本体の上流端部の周壁に軸方向又は周方向に延びるスリット状流入口で形成してもよく、ノズル本体の上流端面を開口し、この開口部をフィルタ又はストレーナーでカバーして装着してもよい。第4のアダプターの下流側の開口端に弁座を形成すると、スプリングの付勢力に抗して第3のアダプターに対して相対的に第4のアダプターを螺合するだけで、弁座に弁体を密接に着座させて、ピストンバルブを装着できる。
【0049】
なお、ノズル本体は、前記第1乃至第4のアダプター(セグメント、ケーシング)で構成する必要はなく、流体導入口からノズル先端の噴射口に至る流路を備え、この流路内にノズルチップ、整流部材、ピストンバルブが配設可能であり、ノズル本体の上流端部域に流体導入口が形成されていればよい。また、ノズルの流路として代表的な円筒状流路に基づいて説明したが、円筒状流路に代えて断面楕円形状の流路であってもよい。
【0050】
本発明では、デスケーリングノズルの流路内でピストンバルブの下流側に整流部材を装着し、しかも整流部材の装着部位の流路断面積を大きくするため、圧力損失を低減でき、高い整流作用を利用して、壊食性能、衝突力(打力)を大幅に向上できる。また、整流部材の構造(羽根の厚み、枚数、長さ)を最適化することにより、整流効果をさらに一層増大でき、さらに壊食性能、衝突力(打力)を向上でき、しかも均一な噴霧パターンを形成できる。さらには、所定の吐出口と径大流路とを有し、高い壊食性能及び衝突力(打力)を発揮するノズルチップ又はノズルと組み合わせることにより、壊食性能及び衝突力(打力)を顕著に向上できる。そのため、本発明のデスケーリングノズルは、流体導入口からノズルの流路内に流体が流入可能な形態で、デスケーリングノズルを、流体供給ヘッダに装着したノズル装置、特に、熱間圧延鋼板上のスケールを除去するためのノズル装置として有用である。
【0051】
本発明のノズルは、低圧及び/又は低流量(低い水の流量)であってもデスケーリング効率を大きく改善できる。例えば、吐出圧又は噴出圧が、例えば、5〜30MPa(好ましくは8〜25MPa、さらに好ましくは10〜20MPa、特に12〜18MPa)程度、水の吐出流量又は噴出流量が、例えば、20〜200リットル/分(例えば、30〜180リットル/分)、好ましくは40〜160リットル/分、さらに好ましくは50〜140リットル/分(例えば、60〜120リットル/分)程度であっても、高いデスケーリング性を実現できる。
【0052】
被処理基材(鋼板)に対して吐出距離(スプレー距離)が短くなると、通常、壊食性能は増大する傾向を示すが、本発明のデスケーリングノズルでは吐出距離が長くなっても高い壊食性能を示す。そのため、本発明の方法において、被処理基材(鋼板)に対する吐出距離(スプレー距離)は、広い範囲(例えば、600mm以下(例えば、50〜600mm程度)の範囲)から適当に選択でき、100〜500mm程度であってもよい。
【0053】
鋼板の種類は特に制限されず、Si含有量の多い高Si鋼板、Si含有量の少ない低Si鋼(例えば、Si0.5重量%以下(0.2〜0.5重量%程度)の普通鋼など)であってもよい。
【実施例】
【0054】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0055】
表1に示すように、羽根枚数、羽根厚み、羽根外径の異なる整流部材とピストンバルブとを装着したノズル3種類について、鉛壊食及び衝突力性能を調べた。
【0056】
実施例1及び2
ピストンバルブの下流側に、羽根数12枚、羽根厚み0.8mm(実施例2は0.5mm)、外径16mmの整流部材を装着し、図1及び図2に示すスプレーノズルを調製した。このノズルは、断面U字状溝の凹面で開口されたノズルチップの楕円形状吐出口(長径4.7mm、短径3.3mm)、吐出口からテーパ角50°で上流方向に拡大した円錐状流路、ノズルケース及び第2のアダプターの途中部まで延びる円筒状流路(内径11mmφ及び長さ47mm)、この円筒状流路の上流側に形成された傾斜流路、この傾斜流路の上流端から上流方向に形成された径大な円筒状流路(整流部材の装着流路)、第3のアダプターの下流端部に、前記径大な円筒状流路(整流部材の装着流路)の上流端から連なって形成された傾斜流路、この傾斜流路の上流端から上流方向に延びるピストン内流路(内径11.5mm及び長さ45mm)、第4のアダプターの上流側端部に周方向に等間隔離れて軸方向に形成された12個の縦スリット(スリット長20mm)を有している。整流部材は上流側及び下流側にそれぞれ先端部が上流側および下流側に向いた円錐状突起を備えている。
【0057】
比較例1
図6及び図7に示すスプレーノズルを調製した。すなわち、整流部材を第2のアダプター61の径大な円筒状流路部に装着することなく、第3のアダプター62内に配設されたピストンバルブ65のピストン本体66の流路67内に、8枚の羽根64を備えた数整流部材(羽根厚み0.8mm、外径11.5mm)63を装着した点、第1のアダプター(ノズルケース)(図示せず)、第2のアダプター61及び第3のアダプター62の途中部まで円筒状流路(内径11mm及び長さ106.5mm)が延びている点、ピストンバルブ65内の流路67の長さが短い点(内径11.5mm長さ34mm)、第4のケーシング68の上流側端部に軸方向に等間隔離れて周方向に延びる15個の横スリット(スリット長9.3mm)69が形成されている点を除いて、実施例1と同様のスプレーノズルを調製した。
【0058】
そして、壊食性能の試験では、スプレーの噴射圧(水圧)15MPa、スプレー距離300mmおよび吐出流量116リットル/分に設定し、衝突力と壊食時間45秒の条件での鉛壊食量を調べた。結果を表1に示す。なお、鉛壊食比及び衝突力比は、比較例1の鉛壊食量及び衝突力比をそれぞれ「1」とし、比較例1に対する比率で表している。
【0059】
【表1】

【0060】
表1から明らかなように、比較例に比べ、実施例では高い壊食性能及び衝突力(打力)を示した。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は種々の鋼板表面のデスケーリング(熱間圧延工程での鋼板表面のデスケーリング)に利用できる。
【符号の説明】
【0062】
1…第1のアダプター
3…ノズルチップ
4…凹溝
5…噴射口
6…円錐状流路
7…テーパ部(円錐状傾斜壁)
11…径大流路
21…第2のアダプター
25…整流ユニット(整流部材)
26…芯体
27…整流羽根
28a,28b…円錐部
31…第3のアダプター
34…ピストンバルブ
35…ピストン本体
36…円筒状流路
37…スプリング
38…リング状規制壁
39…リング部
40…円錐状弁体
41…連通部
42…環状ストッパ
51…第4のアダプター
54…リング状傾斜面(弁座)
55…スリット(流体導入口)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル本体の上流端部域に形成された流体導入口と、この流体導入口からノズル先端の噴射口に至る流路と、前記流体導入口の下流側の流路内に装着され、前記流体導入口を開閉するためのピストンバルブと、このピストンバルブの下流域に配設された整流部材とを備えたデスケーリングノズルであって、前記整流部材が配置された流路の断面が、前記ピストンバルブ内の流路の断面よりも大きいデスケーリングノズル。
【請求項2】
整流部材が装着された流路の断面積(A)と、ピストンバルブ内の流路の断面積(A)との比(A/A)が1を越え、1.7以下である請求項1記載のデスケーリングノズル。
【請求項3】
整流部材の羽根の枚数が10〜16枚であり、かつ整流部材の羽根の厚みが0.3〜0.7mmである請求項1又は2に記載のデスケーリングノズル。
【請求項4】
ノズル先端部の凹面または凹部で開口した吐出口と、この吐出口からテーパ角30〜80°で延びるテーパ部と、このテーパ部に連なる径大流路とで構成されたノズル孔を備えており、前記吐出口の短径D2に対する径大流路の内径D1の割合(D1/D2)が3以上であり、前記径大部から上流方向に延びる流路内に配設された整流部材と、この整流部材から離れた上流部に配設されたピストンバルブとを備えている請求項1〜3のいずれかに記載のデスケーリングノズル。
【請求項5】
ノズル本体の流路が、上流方向に向かって流路幅が漸増する傾斜流路部と、この傾斜流路部から上流方向に延び、かつ断面積が大きな拡大した中空筒状流路部と、この中空筒状流路部の上流方向に向かって流路幅が漸減する傾斜流路部とを備えており、前記中空筒状流路部内に整流部材が配設されている請求項1〜4のいずれかに記載のデスケーリングノズル。
【請求項6】
整流部材が、芯体から放射状に延びる複数の羽根と、芯体の上流側及び下流側に同軸に形成され、かつそれぞれ上流方向及び下流方向に延出する整流案内部とを備えている請求項1〜5のいずれかに記載のデスケーリングノズル。
【請求項7】
ピストンバルブが、ノズル本体の流路内に形成された弁座と、中空筒状のピストン本体と、このピストン本体の上流部に形成され、前記弁座に着座可能な弁体と、この弁体を弁座に対して上流方向に付勢するコイル状スプリングと、前記弁体の下流部に形成され、弁座に対する弁体の開動に伴って上流からの流体をピストン本体の中空部に通じる連通部とを備えており、ピストンバルブ内に、導入口部から噴射口に連通する筒状流路が形成されている請求項1〜6のいずれかに記載のデスケーリングノズル。
【請求項8】
先端部に噴射口を有するノズルチップを装着するための第1のセグメントと、この第1のセグメントに対して接続可能であり、かつ前記円錐状流路に連なる径大な流路を形成し、整流部材が装着可能な第2のセグメントと、この第2のセグメントに対して接続可能であり、かつピストンバルブが装着可能な第3のセグメントと、この第3のセグメントに対して接続可能であり、かつ流体導入口を備えた第4のセグメントとを備えている請求項1〜7のいずれかに記載のデスケーリングノズル。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のデスケーリングノズルが、流体導入口からノズルの流路内に流体が流入可能な形態で、流体を供給するヘッダに装着されているノズル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−76134(P2012−76134A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225456(P2010−225456)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000142023)株式会社共立合金製作所 (24)
【Fターム(参考)】