デスレセプターリガンド及びCD20抗体の使用方法
癌及び免疫関連疾患などの症状を治療するための、Apo-2リガンド/TRAILポリペプチド又はデスレセプター抗体などのデスレセプターリガンドとCD20抗体の使用方法を提供する。本発明の実施態様には、CD20抗体と組み合わせてDR5抗体及びDR4抗体などのデスレセプター抗体又はApo2L/TRAILの使用方法が含まれる。
【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(出願について)
この出願は、米国特許法119条(e)に基づき、2004年9月8日出願の米国特許仮出願番号第60/607,834号及び、2005年3月30日出願の米国特許仮出願番号第60/666,550号の優先権を主張する出願であり、ここに出典明記により組み込まれるものである。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、デスレセプターリガンド及びCD20抗体の使用方法に関する。より具体的には、本発明は、癌及び免疫関連疾患などの様々な病理学的な疾患を治療するための、CD20抗体と組み合わせたApo-2リガンド/TRAIL又はデスレセプター抗体の使用方法に関する。
【0003】
(発明の背景)
腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリに属する様々なリガンドおよびレセプターが当分野で同定されている。そのようなリガンドの中には、腫瘍壊死因子-α(「TNF-α」)、腫瘍壊死因子-β(「TNF-β」又は「リンホトキシン-α」)、リンホトキシン-β(「LT-β」)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX-40リガンド、4-1BBリガンド、LIGHT、Apo-1リガンド(Fasリガンド又はCD95リガンドとも称される)、Apo-2リガンド(Apo2L又はTRAILとも称される)、Apo-3リガンド(TWEAKとも称される)、APRIL、OPGリガンド(RANKリガンド、ODF又はTRANCEとも称される)、及びTALL-1(BlyS、BAFF又はTHANKとも称される)が含まれる。[例えば、Ashkenazi, Nature Review, 2:420-430 (2002);AshkenaziおよびDixit, Science, 281:1305-1308 (1998);AshkenaziおよびDixit, Curr. Opin. Cell Biol., 11:255-260 (2000);Golstein, Curr. Biol., 7:750-753 (1997) Wallach, Cytokine Reference, Academic Press, 2000, pages 377-411;Locksley 等, Cell, 104:487-501 (2001);GrussおよびDower, Blood, 85:3378-3404 (1995);Schmid 等, Proc. Natl. Acad. Sci., 83:1881 (1986);Dealtry 等, Eur. J. Immunol., 17:689 (1987);Pitti 等, J. Biol. Chem., 271:12687-12690 (1996);Wiley 等, Immunity, 3:673-682 (1995);Browning 等, Cell, 72:847-856 (1993);Armitage 等 Nature, 357:80-82 (1992);1997年1月16日公開のWO97/01633;1997年7月17日公開のWO97/25428;Marstersら, Curr. Biol., 8:525-528(1998);Chicheporticheら, Biol. Chem., 272:32401-32410(1997);Hahneら, J. Exp. Med., 188:1185-1190(1998);1998年7月2日公開のWO98/28426;1998年10月22日公開のWO98/46751;1998年5月7日公開のWO/98/18921;Mooreら, Science, 285:260-263(1999);Shuら, J. Leukocyte Biol., 65:680(1999);Schneiderら, J. Exp. Med., 189:1747-1756(1999);Mukhopadhyayら, J. Biol. Chem., 274:15978-15981(1999)参照]。
【0004】
このようなTNFファミリリガンドによって媒介される様々な細胞性応答の誘導は、一般的に特定の細胞レセプターへの結合によって開始される。すべてではなく、いくつかのTNFファミリリガンドは、細胞表面の「デスレセプター」に結合して、それを介して様々な生物学的活性を誘導し、細胞死やアポトーシス経路を行うカスパーゼまたは酵素を活性化する(Salvesen 等, Cell, 91:443-446 (1997)。今日までに同定されたTNFレセプタースーパーファミリのメンバーには、TNFR1、TNFR2、TACI、GITR、CD27、OX-40、CD30、CD40、HVEM、Fas (Apo-1またはCD95とも称される)、DR4 (TRAIL-R1とも称される)、DR5 (Apo-2またはTRAIL-R2とも称される)、DcR1、DcR2、破骨細胞分化抑制因子(OPG)、RANKおよびApo-3 (DR3またはTRAMPとも称される)が含まれる。(例えば、Ashkenazi, Nature Reviews, 2:420-430 (2002);AshkenaziおよびDixit, Science, 281:1305-1308 (1998);AshkenaziおよびDixit, Curr. Opin. Cell Biol., 11:255-260 (2000);Golstein, Curr. Biol., 7:750-753 (1997) Wallach, Cytokine Reference, Academic Press, 2000, 377-411頁;Locksley 等., Cell, 104:487-501 (2001);Gruss and Dower, Blood, 85:3378-3404 (1995);Hohman 等, J. Biol. Chem., 264:14927-14934 (1989);Brockhaus 等, Proc. Natl. Acad. Sci., 87:3127-3131 (1990);1991年3月20日出願の欧州特許第417,563;Loetscher 等, Cell, 61:351 (1990);Schall 等, Cell, 61:361 (1990);Smith 等, Science, 248:1019-1023 (1990);Lewis 等, Proc. Natl. Acad. Sci., 88:2830-2834 (1991);Goodwin 等, Mol. Cell. Biol., 11:3020-3026 (1991);Stamenkovic 等, EMBO J., 8:1403-1410 (1989);Mallett 等, EMBO J., 9:1063-1068 (1990);Anderson 等, Nature, 390:175-179 (1997);Chicheportiche 等, J. Biol. Chem., 272:32401-32410 (1997);Pan 等, Science, 276:111-113 (1997);Pan 等, Science, 277:815-818 (1997);Sheridan 等, Science, 277:818-821 (1997);Degli-Esposti 等, J. Exp. Med., 186:1165-1170 (1997);Marsters 等, Curr. Biol., 7:1003-1006 (1997);Tsuda 等, BBRC, 234:137-142 (1997);Nocentini 等, Proc. Natl. Acad. Sci., 94:6216-6221 (1997);vonBulow 等, Science, 278:138-141 (1997))。
【0005】
これらTNFレセプターファミリメンバーの多くは、細胞外領域、膜貫通領域および細胞内領域を含む細胞表面レセプターの典型的な構造を共有しており、一方、他のメンバーは膜貫通領域と細胞内ドメインを欠いた可溶性タンパク質として天然にみられる。典型的なTNFRの細胞外部位には、NH2-末端から始まる複数のシステインリッチドメイン(CRD)の反復性のアミノ酸配列パターンを含有する。
Apo-2LまたはTRAILと称されるリガンドはサイトカインのTNFファミリのメンバーとして数年前に同定された。[例えばWileyら, Immunity, 3:673-682 (1995);Pittiら, J. Biol. Chem., 271:12697-12690 (1996);国際公開公報97/01633;国際公開公報97/25428;1998年6月9日発行の米国特許第5,763,223号;2001年9月4日発行の米国特許第6284236を参照]。完全長天然配列ヒトApo2L/TRAILポリペプチドは281アミノ酸長のII型膜貫通タンパク質である。ある細胞は、ポリペプチドの細胞外領域の酵素切断によって、そのポリペプチドの天然の可溶型を生じうる[Marianiら, J. Cell. Biol., 137:221-229 (1997)]。Apo2L/TRAILの可溶型の結晶学的研究はTNF及び他の関連タンパク質の構造に類似したホモ三量体構造を明らかにする[Hymowitzら, Molec. Cell, 4:563-571 (1999);Cha 等, Immunity, 11:253-261 (1999);Mongkolsapaya 等, Nature Structural Biology, 6:1048 (1999);Hymowitz 等, Biochemistry, 39:633-644 (2000)]。しかし、他のTNFファミリーメンバーとは異なり、Apo2L/TRAILは、(ホモ三量体の各サブユニットの位置230の)3つのシステイン残基が併せて亜鉛原子を配位しており、亜鉛の結合が三量体の安定性と生物学的活性のために重要であるという独特の構造的特徴を有していることが分かった。[上掲のHymowitzら;Bodmerら, J. Biol. Chem., 275:20632-20637 (2000)]。
【0006】
Apo2L/TRAILは関節リウマチなどの自己免疫性疾患を含む、免疫系の調節において働きうることが文献で報告されている[例として、Thomas 等, J. Immunol., 161:2195-2200 (1998);Johnsen 等, Cytokine, 11:664-672 (1999);Griffith 等, J. Exp. Med., 189:1343-1353 (1999);Song 等, J. Exp. Med., 191:1095-1103 (2000)を参照]。
また、Apo2L/TRAILの可溶型は大腸、肺、乳房、前立腺、膀胱、腎臓、卵巣及び脳腫瘍を含む様々な癌細胞並びに黒色腫、白血病、及び多発性骨髄腫においてアポトーシスを誘導することが報告されている[例えば、上掲のWileyら;上掲のPittiら;2000年2月29日発行の米国特許第6,030,945号;2004年6月8日発行の米国特許第6,746,668号;Rieger 等, FEBS Letters, 427:124-128 (1998);Ashkenazi 等, J. Clin. Invest., 104:155-162 (1999);Walczak 等, Nature Med., 5:157-163 (1999);Keane 等, Cancer Research, 59:734-741 (1999);Mizutani 等, Clin. Cancer Res., 5:2605-2612 (1999);Gazitt, Leukemia, 13:1817-1824 (1999);Yu 等, Cancer Res., 60:2384-2389 (2000);Chinnaiyan 等, Proc. Natl. Acad. Sci., 97:1754-1759 (2000)を参照のこと]。マウス腫瘍モデルでのインビボ研究は、Apo2L/TRAILが、単独で又は化学療法や放射線療法と組み合わせて、実質的な抗腫瘍効果を生じうることを示唆している[例えば上掲のAshkenaziら;上掲のWalzcakら;Gliniakら, Cancer Res., 59:6153-6158 (1999);上掲のChinnaiyanら;Rothら, Biochem. Biophys. Res. Comm., 265:1999 (1999);PCT出願 US/00/15512;PCT出願 US/01/23691を参照のこと]。多くのタイプの癌細胞とは対照的に、殆どの正常なヒト細胞タイプはApo2L/TRAILのある種の組換え形態によるアポトーシスの誘導に対して耐性があるように思われる[上掲のAshkenaziら;上掲のWalzcakら]。JoらはApo2L/TRAILのポリヒスチジンタグ可溶型が正常な単離された非ヒトではなくヒト肝細胞においてインビトロにてアポトーシスを誘導したことを報告している[Joら, Nature Med., 6:564-567 (2000);またNagata, Nature Med., 6:502-503 (2000)を参照のこと]。ある種の組換えApo2L/TRAIL調製物は、例えばタグ分子の有無、亜鉛含有量、及び三量体の含有%に応じて、罹患細胞対正常細胞に対する生化学的性質及び生物学的活性に関して変動しうると考えられている。[Lawrenceら, Nature Med., Letter to the Editor, 7:383-385 (2001);Qinら, Nature Med., Letter to the Editor, 7:385-386 (2001)]。
【0007】
Apo2L/TRAILは、少なくとも5つの異なるレセプターに結合することが明らかとなった。Apo2L/TRAILに結合するそのレセプターの少なくとも2つは、機能的な細胞質デスドメインを含有している。そのあるレセプターは「DR4」(あるいはTR4またはTRAIL-R1)と称されている(Pan 等, Science, 276:111-113 (1997);また、1998年7月30日公開の国際公開公報98/32856;1999年7月29日公開の国際公開公報99/37684;2000年12月7日公開の国際公開公報00/73349;2002年8月13日発行の米国特許第6,433,147号;2002年10月8日発行の米国特許第6,461,823号および2002年1月29日発行の米国特許第6,342,383号)。
Apo2L/TRAILの他のレセプターはDR5と称されている(あるいはApo-2;TRAIL-RまたはTRAIL-R2、TR6、Tango-63、hAPO8、TRICK2またはKILLERとも称されている) (例として、Sheridan 等, Science, 277:818-821 (1997)、Pan 等, Science, 277:815-818 (1997)、1998年11月19日公開の国際公開公報98/51793;1998年9月24日公開の国際公開公報98/41629;Screaton 等, Curr. Biol., 7:693-696 (1997);Walczak 等, EMBO J., 16:5386-5387 (1997);Wu 等, Nature Genetics, 17:141-143 (1997);1998年8月20日発行の国際公開公報98/35986;1998年10月14日発行の欧州特許第870,827号;1998年10月22日公開の国際公開公報98/46643;1999年1月21日公開の国際公開公報99/02653;1999年2月25日公開の国際公開公報99/09165;1999年3月11日公開の国際公開公報99/11791;2002年8月13日公開の米国特許公開2002/0072091;2001年12月7日公開の米国特許公開2002/0098550;2001年12月6日発行の米国特許第6,313,269号;2001年8月2日公開の米国特許公開2001/0010924;2003年7月3日公開の米国特許公開 2003/01255540;2002年10月31日公開の米国特許公開2002/0160446、2002年4月25日公開の米国特許公開2002/0048785;2002年2月発行の米国特許第6,342,369号;2003年5月27日発行の米国特許第6,569,642号、2000年6月6日発行の米国特許第6,072,047号、2003年11月4日発行の米国特許第6,642,358号;2004年6月1日発行のIS 6,743,625を参照)。DR4と同様に、DR5は細胞質デスドメインを含有し、リガンド結合時(またはリガンドの活性を擬態するアゴニスト抗体などの分子の結合時)にアポトーシスをシグナル伝達することができることが報告された。Apo-2L/TRAILとDR5とで形成される複合体の結晶構造はHymowitz 等, Molecular Cell, 4:563-571 (1999)に記載されている。
【0008】
リガンドが結合すると、DR4とDR5はともに、FADD/Mort1と称されるデスドメイン含有アダプター分子を介してアポトーシスインヒビターであるカスパーゼ8を増加または活性化することによって独立してアポトーシスを引き起こしうる[Kischkel 等, Immunity, 12:611-620 (2000);Sprick 等, Immunity, 12:599-609 (2000);Bodmer 等, Nature Cell Biol., 2:241-243 (2000)]。
また、Apo2L/TRAILはDcR1、DcR2およびOPGと称されるレセプターに結合することが報告されている。そのレセプター等はシグナル伝達のトランスデューサーというよりもインヒビターとして機能すると思われている。(例えば、DCR1 (TRID、LITまたはTRAIL-R3とも称される) [Pan 等, Science, 276:111-113 (1997);Sheridan 等, Science, 277:818-821 (1997);McFarlane 等, J. Biol. Chem., 272:25417-25420 (1997);Schneider 等, FEBS Letters, 416:329-334 (1997);Degli-Esposti 等, J. Exp. Med., 186:1165-1170 (1997);およびMongkolsapaya 等, J. Immunol., 160:3-6 (1998);DCR2 (TRUNDDまたはTRAIL-R4とも称される) [Marsters 等, Curr. Biol., 7:1003-1006 (1997);Pan 等, FEBS Letters, 424:41-45 (1998);Degli-Esposti 等, Immunity, 7:813-820 (1997)]、およびOPG [Simonet 等, supra]。DR4およびDR5に反して、DcR1およびDcR2レセプターはアポトーシスをシグナル伝達しない。
【0009】
DR4および/またはDR5レセプターに結合する特定の抗体が文献で報告されている。例えば、DR4レセプターに対するものであり、特定の哺乳動物細胞の拮抗的ないしはアポトーシス的な活性を有する抗DR4抗体は、例として、1999年7月29日公開の国際公開公報99/37684;2000年7月12日公開の国際公開公報00/73349;2003年8月14日公開の国際公開公報03/066661に記載されている。例として、Griffith 等, J. Immunol., 162:2597-2605 (1999);Chuntharapai 等, J. Immunol., 166:4891-4898 (2001);2002年12月2日公開の国際公開公報02/097033;2003年5月22日公開の国際公開公報03/042367;2003年5月8日公開の国際公開公報03/038043;2003年5月8日公開の国際公開公報03/037913も参照のこと。特定の抗DR5抗体も同様に記載されている。例として、1998年11月8日公開の国際公開公報98/51793;Griffith 等, J. Immunol., 162:2597-2605 (1999);Ichikawa 等, Nature Med., 7:954-960 (2001);Hylander 等, “An Antibody to DR5 (TRAIL-Receptor 2) Suppresses the Growth of Patient Derived Gastrointestinal Tumors Grown in SCID mice”, Abstract, 2d International Congress on Monoclonal Antibodies in Cancers, Aug. 29-Sept. 1, 2002, Banff, Alberta, Canada;2003年5月8日公開の国際公開公報03/038043 ;2003年5月8日公開の国際公開公報03/037913を参照のこと。さらに、DR4とDR5のレセプターの両方と交差反応する特定の抗体が記載されている(例として、2001年6月26日発行の米国特許第6,252,050号を参照)。
【0010】
CD20抗原(ヒトBリンパ球制限分化抗原、Bp35とも呼ばれる)はプレB及び成熟Bリンパ球上に位置するおよそ35kDの分子量の疎水性膜貫通型タンパク質である(Valentineら, J. Biol. Chem. 264(19):11282-11287 (1989);及びEinfeldら, EMBO J. 7(3):711-717(1988))。該抗原はまたB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)の90%以上に発現されるが(Anderson等, Blood 63(6):1424-1433 (1984))、造血幹細胞、プロB細胞、正常なプラズマ細胞又は他の正常な組織上には見出されない(Tedder等, J. Immunol. 135(2):973-979 (1985))。CD20は分化及び細胞周期の開始の活性化過程における初期段階を調節し(上掲のTedderら)、おそらくはカルシウムイオンチャネルとして機能する(Tedder等, J. Cell. Biochem. 14D:195 (1990))。B細胞リンパ腫ではCD20が発現されるため、この抗原はこのようなリンパ腫の「標的とする(ターゲティング)」ための候補となりうる。
【0011】
リツキシマブ(rituximab)(リツキサン(RITUXAN)(登録商標))抗体は、一般的にCD20抗原に対する遺伝子的操作を施したキメラマウス/ヒトモノクローナル抗体である。リツキシマブは1998年4月7日に発行の米国特許第5736137号(Anderson等)において「C2B8」と呼ばれている抗体である。リツキサン(登録商標)は、再発性または低抵抗性の(refractory low-grade)または濾胞性の(follicular)、CD20陽性、B細胞非ホジキンリンパ腫患者の治療のためのものである。インビトロの作用機序の研究は、リツキサン(登録商標)がヒト補体に結合し補体依存性細胞障害性(CDC)を介してリンパB細胞系を溶解することを実証している(Reff等, Blood 83(2):435-445 (1994);Cragg及びMarlin, Blood, 103: 2738-2743 (2004))。加えて、その抗体は抗体依存細胞性細胞障害性(ADCC)のアッセイにおいて有意な活性を有している。更に近年、リツキサン(登録商標)は、他の抗CD19抗体や抗CD20抗体にはない、トリチウム化したチミジン取り込みアッセイにおける抗増殖性効果を持つこと及び直接的にアポトーシスを誘導することが示唆されている(Maloney等 Blood 88(10):637a (1996))。また、リツキサン(登録商標)及び特定の化学療法及び毒素間の相乗効果は、実験的に観察された。特に、リツキサン(登録商標)は、ドキソルビシン、CDDP、VP-16、ジフテリア毒素及びリシンの細胞障害性効果に対するヒトB細胞リンパ腫細胞系の薬物抵抗性の感度を高める(Demidem等 Cancer Chemotherapy & Radiopharmaceuticals 12(3):177-186 (1997))。インビボ前臨床研究では、リツキサン(登録商標)が、おそらく補体及び細胞媒介過程を介して、カニクイザルの末梢血、リンパ節及び骨髄からのB細胞を減少させることを示した (Reff 等 Blood 83(2):435-445 (1994))。
【0012】
(発明の概要)
本明細書中において、Apo-2リガンド/TRAILポリペプチド又はデスレセプター抗体などのデスレセプターリガンド、及びCD20抗体の使用方法を提供する。本発明の実施態様には、癌細胞を有効量のApo2L/TRAIL及びCD20抗体に曝すことを含む治療方法が含まれる。場合によっては、前記癌細胞は、アゴニストDR4抗体又はアゴニストDR5抗体及びCD20抗体などのデスレセプター抗体の有効量に曝される。場合によっては、本方法に用いられるApo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体及びCD20抗体の量は相乗的な治療効果に達するために有効な量であり、例えばこれらの組み合わさった抗癌効果がApo2L/TRAIL又は抗体を単一の治療剤として別々に用いられる場合に達する抗癌効果よりも大きい。前記のApo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体及びCD20抗体が哺乳動物(患者)に投与される場合、本方法はインビトロでの使用又はインビボでの使用を伴ってもよい。場合によっては、本方法では、Apo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体及びCD20抗体で治療される癌細胞はリンパ腫細胞である。
【0013】
本発明の更なる実施態様では、有効量のApo2L/TRAIL及びCD20抗体が哺乳動物に投与されることを含む、免疫関連疾患の治療方法が含まれる。場合によっては、アゴニストDR4抗体又はアゴニストDR5抗体などのデスレセプター抗体及びCD20抗体の有効量が哺乳動物に投与される。場合によっては、本方法に用いられるApo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体及びCD20抗体の量は相乗的な治療効果に達するために有効な量であり、例えばこれらの組み合わさった効果がApo2L/TRAIL又は抗体を単一の治療剤として別々に用いられる場合に達する効果よりも大きい。場合によっては、本方法では、免疫関連疾患は関節リウマチ又は多発性硬化症である。
【0014】
本発明の方法には、哺乳動物から組織又は細胞試料を採取し、CD20、DR4、及び/又はDR5の発現について該組織又は該細胞を検査し、該組織又は細胞試料が当該レセプターの一又は複数を発現することが決定される場合に、Apo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体及びCD20抗体の有効量が該哺乳動物に投与されることを含む、免疫関連疾患又は癌などの哺乳動物の疾患の治療方法が含まれる。一又は複数のこれらのレセプターの発現を検査するための方法における工程は、mRNA発現検出アッセイ及び免疫組織化学アッセイを含む、様々な形式のアッセイで行われてもよい。
場合によっては、本発明の方法は、有効量のApo2L/TRAIL及び/又はデスレセプター抗体及びCD20抗体が投与されることに加えて、化学療法剤又は放射線療法が前記哺乳動物に投与されることを含む。
【0015】
本発明の更なる実施態様は、以下の特許請求の範囲の例により説明する:
1. 哺乳動物癌細胞を相乗的に有効な量のアゴニストデスレセプター抗体及びCD20抗体に曝すことを含む、癌細胞の治療方法。
2. 前記アゴニストデスレセプター抗体が抗DR5レセプターモノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
3. 前記アゴニストデスレセプター抗体が抗DR4レセプターモノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
4. 前記癌細胞が、前記の相乗的に有効な量のアゴニストデスレセプター抗体及びCD20抗体にインビボで曝される、請求項1に記載の方法。
5. 前記アゴニストデスレセプター抗体がキメラ抗体又はヒト化抗体である、請求項2又は3に記載の方法。
6. 前記アゴニストデスレセプター抗体がヒト抗体である、請求項2又は3に記載の方法。
7. 前記アゴニストデスレセプター抗体が1以上のApo-2リガンドレセプターと交差反応する抗体である、請求項1に記載の方法。
8. 前記癌細胞がリンパ腫細胞である、請求項1に記載の方法。
9. さらに、前記癌細胞を一又は複数の成長阻害剤に曝すことを含む、請求項1に記載の方法。
10. さらに、前記細胞を放射線に曝すことを含む、請求項1に記載の方法。
11. 前記DR5抗体が108M−1から1012M−1のDR5レセプター結合親和性を有する、請求項2に記載の方法。
12. 前記デスレセプター抗体及びCD20抗体が、CHO細胞、酵母菌及び大腸菌からなる群から選択される組み換え宿主細胞内で発現される、請求項1に記載の方法。
13. 前記CD20抗体がモノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
14. 前記CD20抗体が抗体リツキシマブである、請求項13に記載の方法。
15. 相乗的に有効な量のアゴニストデスレセプター抗体及びCD20抗体が哺乳動物に投与されることを含む、免疫関連疾患の治療方法。
16. 前記アゴニストデスレセプター抗体が抗DR5レセプターモノクローナル抗体である、請求項15に記載の方法。
17. 前記アゴニストデスレセプター抗体が抗DR4レセプターモノクローナル抗体である、請求項15に記載の方法。
18. 前記アゴニストデスレセプター抗体がキメラ抗体又はヒト化抗体である、請求項16又は17に記載の方法。
19. 前記アゴニストデスレセプター抗体がヒト抗体である、請求項16又は17に記載の方法。
20. 前記アゴニストデスレセプター抗体が1以上のApo-2リガンドレセプターと交差反応する抗体である、請求項15に記載の方法。
21. 前記免疫関連疾患が関節リウマチ又は多発性硬化症である、請求項15に記載の方法。
22. 前記DR5抗体が108M−1から1012M−1のDR5レセプター結合親和性を有する、請求項15に記載の方法。
23. 前記デスレセプター抗体及びCD20抗体が、CHO細胞、酵母菌及び大腸菌からなる群から選択される組み換え宿主細胞内で発現される、請求項15に記載の方法。
24. 前記CD20抗体がモノクローナル抗体である、請求項15に記載の方法。
25. 前記CD20抗体が抗体リツキシマブである、請求項24に記載の方法。
26. 前記デスレセプター抗体及びCD20抗体が連続して投与される、請求項1又は15に記載の方法。
27. 前記デスレセプター抗体及びCD20抗体が同時に投与される、請求項1又は15に記載の方法。
【0016】
(前記実施態様の詳細な記載)
特に定義しない限り、本明細書中で使用する専門用語、記号及び他の化学的な用語のすべては、本発明が属する分野の技術者に共通して理解される意味を持つことを意図する。場合によっては、共通して理解される意味を持つ用語を明確及び/又は参照を容易にするために本明細書中で定義するが、本明細書中の定義に包含されることが、当分野で一般的に理解されることとの実質的な差異を表すためであると解釈されるものではない。本明細書中に記載または参照の技術および手順は一般的に十分理解されるものであり、例えばSambrook 等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd. edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.に記載の広く利用される分子クローニング方法論などの、当分野の技術者による従来の方法論を用いて通常行われるものである。好ましくは、市販のキットや試薬の使用を伴う手順は、特に明記しない限り、プロトコールおよび/またはパラメータを定義する製造者に従って一般的に行われる。
本方法、キット及びそれらの使用を開示する前に、本発明は、ここに記載の特定の方法論、プロトコール、細胞株、動物種や属、コンストラクトおよび試薬に限定されるものではなく、変更されてもよいことを理解されたい。また、本明細書中で用いる用語は特定の実施態様のみを開示するためのものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の権利範囲を限定するものでないことを理解されたい。
【0017】
本明細書で用いられるおよび添付の特許請求の範囲中の単数形「a」、「and」および「the」には、明らかな記載がない限り複数形も含まれる。
本明細書中で引用するすべての出版物は、該出版物が引用される方法および/または材料を開示および記載するために、出典明記によって本明細書中に組み込まれる。本明細書中で引用する出版物は、本出願の提出日前の開示について言及するものである。発明者等は、早い優先日またはより前の発明日のために先行する出版物に権利が与えられないことが認められると解釈されるものではない。さらに、実際の出版日は明記されているものと異なり、個々に検証が必要であろう。
【0018】
I.定義
「Apo−2リガンド」、「Apo-2L」、「Apo2L」、「Apo2L/TRAIL」、「Apo-2リガンド/TRAIL」及び「TRAIL」という用語は、ここでは図1に示されたアミノ酸配列のアミノ酸残基114−281、95−281、残基92−281、残基91−281、残基41−281、残基39−281、残基15−281、又は残基1−281、並びに上記配列の生物学的に活性な断片、欠失、挿入、又は置換変異体を含むポリペプチド配列を意味するものとして互換可能に使用される。一実施態様では、ポリペプチド配列は図1の残基114−281を含む。場合によっては、ポリペプチド配列は図1の残基92−281又は残基91−281を含む。Apo-2Lポリペプチドは図1に示された天然ヌクレオチド配列によってコードされていてもよい。場合によっては、残基Pro119(図1)をコードするコドンは「CCT」又は「CCG」でありうる。場合によっては、断片又は変異体は生物学的に活性であり、上記の配列の何れか一と少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約90%の配列同一性、更により好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する。この定義には、その天然のアミノ酸の少なくとも一がアラニン残基などの他のアミノ酸によって置換されているApo-2リガンドの置換変異体が包含される。任意の置換変異体は一又は複数の残基の置換を含む。任意の変異体は、図1に示す天然配列のApo-2リガンドポリペプチド配列と異なるアミノ酸配列を含んでもよく、図1の残基位置(一又は複数)でのアミノ酸置換:S96C;S101C;S111C;R170C;K179Cの一又は複数を有する。また、定義には、組換え又は合成法によって調製された、又はApo-2リガンド源から単離された天然配列Apo-2リガンドもまた包含される。本発明のApo-2リガンドは1997年1月16日公開の国際公開97/01633、1997年7月17日公開の国際公開97/25428、1999年7月22日公開の国際公開99/36535、2001年1月4日公開の国際公開01/00832、2002年2月7日公開の国際公開02/09755、及び2000年12月14日公開の国際公開00/75191に開示されたApo-2リガンド又はTRAILと称されるポリペプチドを含む。本用語は、一般に、ポリペプチドの単量体、二量体、三量体、六量体又は命令オリゴマーを含むApo-2リガンドの形態を意味するものとして使用される。Apo-2L配列において言及されているアミノ酸残基の全ての番号付けは、特に他の定義を述べない限り、図1における番号付けを使用している。例えば、「D203」又は「Asp203」は図1に与えられた配列中、位置203のアスパラギン酸残基を意味する。
【0019】
本明細書で使用する「Apo-2リガンド選択的変異体」という用語は、天然Apo-2リガンド配列に1又は複数のアミノ酸変異を含み、DR4レセプター又はDR5レセプターに対して選択的な結合親和性を有するApo-2リガンドポリペプチドを指す。一実施形態では、Apo-2リガンド変異体はDR4レセプターに対して選択的結合親和性を有し、天然Apo-2リガンド配列の位置189、191、193、199、201、又は209のいずれか1つに1又は複数のアミノ酸置換を含む。別の実施形態では、Apo-2リガンド変異体はDR5レセプターに対して選択的結合親和性を有し、天然Apo-2リガンド配列の位置189、191、193、264、266、267、又は269のいずれか1つに1又は複数のアミノ酸置換を含む。好ましいApo-2リガンド選択的変異体は、1又は複数のアミノ酸変異を含み、DR4レセプターに対し、天然配列Apo-2リガンド変異体がDR4レセプターに対して示す以上(≧)の結合親和性を示す。さらに好ましくは、Apo-2リガンド変異体は、DR5レセプターに対し、天然配列Apo-2リガンドがDR5に対して示すより小さい(<)結合親和性を示す。このようなApo-2リガンド変異体のDR4レセプターに対する結合親和性は、天然配列Apo-2リガンドと比較した場合、ほぼ等しい(不変である)か、それよりも大きく(増大している)、Apo-2リガンド変異体のDR5レセプターに対する結合親和性は、天然配列Apo-2リガンドと比較した場合、小さいか、殆ど消滅しており、ここでの目的のため、Apo-2リガンド変異体の結合親和性はDR4レセプターについて「選択性」であると考えられる。好ましい本発明のDR4選択性Apo-2リガンド変異体は、DR5レセプターに対して(天然配列Apo-2リガンドと比較した場合)10分の1以下の結合親和性を有し、さらに好ましくは、DR5レセプターに対して(天然配列Apo-2リガンドと比較した場合)100分の1以下の結合親和性を有する。Apo-2リガンド変異体それぞれの結合親和性を測定し、本技術分野で知られているELISA、RIA、及び/又はBIAcoreアッセイにより(114−281形式等の)天然Apo-2Lの結合特性と比較することができる。本発明の好ましいDR4選択性Apo-2リガンド変異体は、少なくとも1種類の哺乳動物細胞(好ましくは癌細胞)にアポトーシスを誘発し、そのようなアポトーシス活性をアラマーブルー又はクリスタルバイオレットアッセイ等の既知の方法により測定することができる。DR4選択性Apo-2リガンド変異体の、Apo-2Lのデコイレセプターのいずれかに対する結合親和性は、変化していても、していなくともよく、それらデコイレセプターを当技術分野でDcR1、DcR2及びOPGと呼ぶ。
【0020】
さらなる好ましいApo-2リガンド選択的変異体は、一又は複数のアミノ酸変異を含み、DR5レセプターに対し、天然配列Apo-2リガンドがDR5レセプターに対して示す以上(≧)の結合親和性を示し、さらに好ましくは、そのようなApo-2リガンド変異体は、DR4レセプターに対し、天然配列Apo-2リガンドがDR4に対して示すより小さい結合親和性を示す。このようなApo-2リガンド変異体のDR5レセプターに対する結合親和性は、天然配列Apo-2リガンドと比較した場合、ほぼ等しい(不変である)か、それよりも大きく(増大している)、Apo-2リガンド変異体のDR4レセプターに対する結合親和性は、天然配列Apo-2リガンドと比較した場合、それより小さいか、殆ど消滅しており、ここでの目的のため、Apo-2リガンド変異体の結合親和性はDR5レセプターについて「選択性」であると考えられる。好ましい本発明のDR5選択性Apo-2リガンド変異体は、DR4レセプターに対して(天然配列Apo-2リガンドと比較した場合)10分の1以下の結合親和性を有し、さらに好ましくは、DR4レセプターに対して(天然配列Apo-2リガンドと比較した場合)100分の1以下の結合親和性を有する。Apo-2リガンド変異体それぞれの結合親和性を測定し、本技術分野で知られているELISA、RIA、及び/又はBIAcoreアッセイにより(114−281形式等の)天然Apo2Lの結合特性と比較することができる。本発明の好ましいDR5選択性Apo-2リガンド変異体は、少なくとも1種類の哺乳動物細胞(好ましくは癌細胞)にアポトーシスを誘発し、そのようなアポトーシス活性をアラマーブルー又はクリスタルバイオレットアッセイ等の既知の方法により測定することができる。DR5選択性Apo-2リガンド変異体の、Apo-2Lのデコイレセプターのいずれかに対する結合親和性は、変化していても、していなくともよく、それらデコイレセプターを当技術分野でDcR1、DcR2及びOPGと呼ぶ。
【0021】
アミノ酸の識別には以下のようなアミノ酸のアルファベット1文字又は3文字を使用してもよい。
Asp D アスパラギン酸
Thr T スレオニン
Ser S セリン
Glu E グルタミン酸
Pro P プロリン
Gly G グリシン
Ala A アラニン
Cys C システイン
Val V バリン
Met M メチオニン
Ile I イソロイシン
Leu L ロイシン
Tyr Y チロシン
Phe F フェニルアラニン
His H ヒスチジン
Lys K リジン
Arg R アルギニン
Trp W トリプトファン
Gln Q グルタミン
Asn N アスパラギン
【0022】
「Apo2L/TRAIL細胞外ドメイン」又は「Apo2L/TRAIL ECD」なる用語は、膜貫通及び細胞質ドメインが本質的にないApo2L/TRAILの形態を称する。通常、ECDはこのような膜貫通及び細胞質ドメインを1%未満、好ましくはこのようなドメインを0.5%未満有している。本発明のポリペプチドとして同定される任意の膜貫通ドメイン(類)は、疎水性ドメインのタイプのものを同定するのに、当該分野で常套的に使用されている基準に従い同定されると理解されるであろう。膜貫通ドメインの正確な境界は多様であるが、多くの場合は、最初同定されたドメインのいずれかの末端において、約5アミノ酸を超えないと思われる。好ましい実施態様において、ECDは、膜貫通及び細胞質又は細胞内ドメインのない(膜に結合していない)ポリペプチドの、可溶性の細胞外ドメイン配列からなる。Apo-2L/TRAILの特定の細胞外ドメインは、PCT出願国際公開第97/01633号及び国際公開第97/25428号に記載されている。
「Apo2L/TRAIL単量体」又は「Apo2L単量体」なる用語は、Apo2Lの細胞外ドメイン配列の共有鎖を称する。
「Apo2L/TRAIL二量体」又は「Apo2L二量体」なる用語は、ジスルフィド結合を介して共有結合に連結した2つのApo-2Lモノマーを称する。ここで使用される場合の用語には、独立したApo2L二量体、及び三量体形態のApo2L内にある二量体(すなわち、互いに結合した、第2のApo2L単量体)が含まれる。
「Apo2L/TRAIL三量体」又は「Apo2L三量体」なる用語は、非共有結合している3つのApo2L単量体を称する。
「Apo2L/TRAIL凝集体」なる用語は、自己結合した高級オリゴマー性形態のApo2L/TRAIL、例えばApo2L/TRAIL三量体、さらには六量体及びナノ量体(nanomeric)の形態のApo2L/TRAILを形成するものを称するために使用する。Apo2L/TRAIL単量体、二量体又は三量体(又は他の凝集体)の存在性及び量の決定は、当該分野で公知の方法及びアッセイ(市販されている物質を使用)、例えば天然サイズ排除HPLC(「SEC」)、ドデシル硫酸ナトリウムを使用する変性サイズ排除(「SDS-SEC」)、逆相HPLC、キャピラリー電気泳動によりなされ得る。
【0023】
「Apo-2リガンドレセプター」は、当分野では、図2及び3それぞれに示すポリヌクレオチド及びポリペプチド配列を有する「DR4」及び「DR5」として称されるレセプターを含む。Panらにより、「DR4」と呼ばれるTNFレセプターファミリーのメンバーが開示されている(Pan等, Science, 276:111-113, 1997年;また、1998年7月30日公開の国際公開98/32856;1999年7月29日公開の国際公報99/37684;2000年12月7日公開の国際公報00/73349;2002年8月13日発行の米国特許第6,433,147号;2002年10月8日発行の米国特許第6,461,823号及び、2002年1月29日発行の米国特許第6,342,383号を参照)。Sheridan等によるScience, 277:818-821(1997年)およびPan等によるScience, 277:815-818(1997年)には、Apo2L/TRAILの他のレセプターが開示されている(1998年11月19日公開の国際公報98/51793;1998年9月24日公開の国際公報98/41629も参照)。このレセプターはDR5と称される(あるいは、該レセプターはApo-2;TRAIL−R、TR6、Tango−63、hAPO8、TRICK2またはKILLERとも称される;Screaton等, Curr. Biol., 7:693-696, 1997年;Walczak等, EMBO J., 16:5386-5387, 1997年;Wu等, Nature Genetics, 17:141-143, 1997年;1998年8月20日公開の国際公報98/35986;1998年10月14日公開の欧州特許第870,827号;1998年10月22日公開の国際公報98/46643;1999年1月21日公開の国際公報99/02653;1999年2月25日公開の国際公報99/09165;1999年3月11日公開の国際公報99/11791;2002年8月13日公開の米国公開特許2002/0072091;2001年12月7日公開の米国公開特許2002/0098550;2001年12月6日発行の米国特許第6,313,269号;2001年8月2日公開の米国公開特許2001/0010924;2003年7月3日公開の米国公開特許2003/01255540;2002年10月31日公開の米国公開特許2002/0160446、2002年4月25日公開の米国公開特許2002/0048785;2003年5月27日発行の米国特許第6,569,642号;2000年6月6日発行の米国特許第6,072,047号;2003年11月4日発行の米国特許第6,642,358号参照)。上記のように、Apo-2Lの他のレセプターはDcR1、DcR2及びOPGを含む(Sheridan等., 上掲;Marsters 等., 上掲;及びSimonet 等.,上掲)。ここで用いられるところの「Apo-2Lレセプター」という用語は、天然配列レセプターとレセプター変異体を包含する。これらの用語はヒトを含む様々な哺乳動物で発現されるApo-2Lレセプターを包含する。Apo-2Lレセプターは、多くのヒト組織株で自然に起こるように内在的に発現されてもよいし、あるいは組換え又は合成方法によって発現されてもよい。「天然配列Apo-2Lレセプター」には、天然由来のApo-2Lレセプターと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドが含まれる。ゆえに、天然配列Apo-2Lレセプターは、任意の動物由来の天然に生じるApo-2Lレセプターのアミノ酸配列を持ちうる。そのような天然配列Apo-2Lレセプターは、天然から単離してもよいし、組み換え又は合成手法により生成することもできる。特に、「天然配列Apo-2Lレセプター」なる用語は、天然に生じる切断型又は分泌型のレセプター(例えば、可溶型を含む、さらには細胞外ドメイン配列)、天然に生じる変異型(例えば、選択的スプライシング型)、及び天然に生じる対立変異型を包含する。レセプター変異型は天然配列Apo-2Lレセプターの断片又は欠損変異型を含みうる。図3Aは1998年11月19日公開の国際公報98/51793に公開されたヒトDR5の411アミノ酸配列を示す。ヒトDR5の転写スプライシング変異体は当分野で公知である。このDR5スプライシング変異体は、1998年8月20日に公開の国際公報98/35986に公開された図3B及び図3Cに示すヒトDR5の440アミノ酸配列をコードする。
【0024】
「デスレセプター抗体」は、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリであり、アポトーシスをシグナル伝達することができるデスドメインを含有するレセプターに対する抗体(一ないし複数)を一般的に意味するものであり、このような抗体にはDR5抗体およびDR4抗体が含まれる。
「DR5レセプター抗体」、「DR5抗体」又は「抗DR5抗体」とは、広義で、DR5レセプターまたはその細胞外ドメインの少なくとも一形態に結合する抗体を意味する。場合によっては、DR5抗体は異種性配列又は分子に融合又は結合する。好ましくは、異種性配列は抗体がより高次の複合体又はオリゴマー複合体を形成させる又は形成を補助する。場合によっては、DR5抗体はDR5レセプターに結合するが、任意の付加的なApo-2Lレセプター(例えばDR4、DcR1又はDcR2)と結合又は交差反応をしない。場合によっては、抗体はDR5シグナル伝達活性のアゴニストである。
場合によっては、本発明のDR5抗体は、BIAcore結合アッセイの測定による約0.1nMから約20mMの範囲の濃度でDR5レセプターに結合する。場合によっては、本発明のDR5抗体は、BIAcore結合アッセイの測定による約0.6nMから約18mMのIC50値を示す。
【0025】
「DR4レセプター抗体」、「DR4抗体」又は「抗DR4抗体」とは、広義で、DR4レセプターまたはその細胞外ドメインの少なくとも一形態に結合する抗体を意味する。場合によっては、DR4抗体は異種性配列又は分子に融合又は結合する。好ましくは、異種性配列は抗体がより高次の複合体又はオリゴマー複合体を形成させる又は形成を補助する。場合によっては、DR4抗体はDR4レセプターに結合するが、任意の付加的なApo-2Lレセプター(例えばDR5、DcR1又はDcR2)と結合又は交差反応をしない。場合によっては、抗体はDR4シグナル伝達活性のアゴニストである。
場合によっては、本発明のDR4抗体は、BIAcore結合アッセイの測定による約0.1nMから約20mMの範囲の濃度でDR4レセプターに結合する。場合によっては、本発明のDR4抗体は、BIAcore結合アッセイの測定による約0.6nMから約18mMのIC50値を示す。
【0026】
「アゴニスト」なる用語は広義で用いられ、Apo2L/TRAIL、DR4ないしDR5のインビトロ、インサイツないしインビボでの一以上の生物学的活性を部分的又は完全に亢進、刺激又は活性化する任意の分子を含む。Apo2L/TRAIL、DR4ないしDR5の生物学的活性の例には、DR4又はDR5へのApo2L/TRAILの結合、アポトーシス並びに更に文献に報告されているものが含まれる。アゴニストは直接的ないし間接的形式で機能しうる。例えば、アゴニストは、レセプター活性化又はシグナル伝達を起こすDR4ないしDR5への直接的結合の結果としてのインビトロ、インサイツないしインビボでのDR4ないしDR5の一以上の生物学的活性を部分的又は完全に亢進、刺激又は活性化するために機能するかもしれない。また、アゴニストは、例えば、DR4又はDR5の活性化ないしシグナル伝達を引き起こす他のエフェクター分子を刺激する結果としてのDR4ないしDR5のインビトロ、インサイツないしインビボでの一以上の生物学的活性を部分的又は完全に亢進、刺激又は活性化するために間接的に機能するかもしれない。アゴニストは、DR4ないしDR5の活性化ないし活性を亢進又は増強するように間接的に機能するエンハンサー分子として働きうることが考えられる。例えば、アゴニストは哺乳動物の内因性のApo-2Lの活性を亢進しうる。例えば、これはDR4ないしDR5をプレ複合体化することによって、ないし、DR4ないしDR5レセプターとのそれぞれのリガンドの複合体を安定化することによって達成することができる(Apo-2LとDR4ないしDR5との天然複合体型を安定化するなど)。
【0027】
ここで使用される「DR4」及び「DR4レセプター」という用語は、Panら, Science, 276:111-113 (1997);1998年7月30日公開の国際公開98/32856;2002年1月29日発行の米国特許第6342363号;及び1999年7月29日公開の国際公開99/37684に記載されているレセプターの完全長可溶性細胞外ドメイン型を意味する。DR4レセプターの完全長アミノ酸配列を図2に示す。
ここで使用される「DR5」及び「DR5レセプター」という用語は、Sheridanら, Science, 277:818-821 (1997);Panら, Science, 277:815-818 (1997)、2000年6月6日発行の米国特許第6072047号、1998年11月19日公開の国際公開98/51793;1998年9月24日公開の国際公開98/41629;Screatonら, Curr. Biol., 7:693-696 (1997);Walczakら, EMBO J., 16:5386-5387 (1997);Wuら, Nature Genetics, 17:141-143 (1997);1998年8月20日公開の国際公開98/35986;1998年10月14日公開の欧州特許第870827号;998年10月22日公開の国際公開98/46643;1999年1月21日公開の国際公開99/02653;1999年2月25日公開の国際公開99/09165;1999年3月11日公開の国際公開99/11791に記載されているレセプターの完全長可溶性細胞外ドメイン型を意味する。DR5レセプターは当該分野においてApo-2;TRAIL-R、TR6、Tango-63、hAPO8、TRICK2又はKILLERとも呼ばれている。ここで使用されるDR5という用語には、図3Aに提供された完全長411アミノ酸ポリペプチド及び図3B−3Cに提供された完全長440アミノ酸ポリペプチドが含まれる。
【0028】
ここで使用される場合の「ポリオール」という用語は広義に多価アルコール化合物を意味する。ポリオールは例えば任意の水可溶型ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーであり得、直鎖又は分枝鎖を有しうる。好適なポリオールには、一又は複数のヒドロキシル位置に化学基、例えば1から4の炭素を有するアルキル基が置換されているものが含まれる。典型的には、ポリオールはポリ(アルキレングリコール)、好ましくはポリ(エチレングリコール)(PEG)である。しかし、当業者であれば、他のポリオール、例えばポリ(プロピレングリコール)及びポリエチレン−ポリプロピレングリコールコポリマーを、ここでPEGについて記載した抱合技術を使用して用いることができることが分かるであろう。本発明のポリオールには当該分野でよく知られたもの及び公的に入手可能なもの、例えば商業的に利用可能な供給源からのものが含まれる。
「抱合(コンジュゲート)」という用語は、ここではその最も広い定義で使用され、共に接合(joined)又は結合(linked)されていることを意味する。分子は、接合されているように作用又は機能する場合、「抱合」されている。
【0029】
「細胞外ドメイン」又は「ECD」という用語は、膜貫通及び細胞質ドメインを本質的に持たないリガンド又はレセプターの型を意味する。通常、可溶性ECDは、そのような膜貫通及び細胞質ドメインを1%未満、好ましくはそのようなドメインを0.5%未満だけ有する。
「二価の金属イオン」という用語は、二つの正電荷を有する金属イオンを称する。本発明において使用される二価金属イオンの例には、限定されるものではないが、亜鉛、コバルト、ニッケル、カドミウム、マグネシウム、及びマンガンが含まれる。かかる金属の特定の形態は塩形態(例えば、製薬剤的に許容可能な塩形態)、例えば、上述の二価の金属イオンの塩化物、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩及び硫酸塩形態を含むものが用いられうる。本明細書に記載の記載の二価金属イオンは、好ましくは、例えば、(1)所望する期間にわたってApo-2L三量体の貯蔵安定性を高め、(2)組換え細胞培養又は精製法においてApo-2L三量体の生産又は収量を高め、(3)Apo-2L三量体の溶解性を高め(又は凝集性を低下させ)、又は(4)Apo-2L三量体の形成を高めるのに十分な濃度又は量(例えば有効量)で用いられる。
【0030】
「単離された」とは、ここで開示された種々のタンパク質を記述するために使用するときは、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたタンパク質を意味する。その自然環境の汚染成分とは、タンパク質の診断又は治療的な使用を典型的には妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様では、タンパク質は、(1)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15のN末端あるいは内部アミノ酸配列の残基を得るのに充分なほど、あるいは、(2)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEにより均一になるまで充分なほど精製される。タンパク質の自然環境の少なくとも一の成分が存在しないため、単離されたタンパク質には、組換え細胞内のインサイツでのタンパク質が含まれる。しかしながら、通常は、単離されたタンパク質は少なくとも一の精製工程により調製される。
「単離された」核酸分子は、同定され、核酸の天然源に通常付随している少なくとも一の汚染核酸分子から分離された核酸分子である。単離されたApo-2リガンド核酸分子は、天然に見出される形態あるいは設定以外のものである。故に、単離されたApo-2リガンド核酸分子は、天然の細胞中に存在するApo-2リガンド核酸分子とは区別される。しかし、単離されたApo-2リガンド核酸分子は、例えば、核酸分子が天然の細胞のものとは異なった染色体位置にあるApo-2リガンドを通常発現する細胞に含まれるApo-2リガンド核酸分子を含む。
【0031】
ここで特定されている配列に対する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、必要ならば最大のパーセント配列同一性を得るために間隙を導入し、如何なる同類置換も配列同一性の一部と考えないとした後の、Apo-2リガンド配列のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法で達成可能であり、比較される配列の完全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要なアルゴリズムを割り当てることを含み、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。ここでの目的のために、パーセントアミノ酸同一性値は、ジェネンテック社によって作成され、ソースコードが米国著作権庁, Washington D.C., 20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を用いて得られる。ALIGN-2プログラムはジェネンテック社、South San Francisco, CAを通して公に入手可能である。全ての配列比較パラメーターはALIGN-2プログラムにより設定され、変化しない。
「コントロール配列」という用語は、特定の宿主生物において作用可能に結合したコード配列を発現するために必要なDNA配列を指す。原核生物に好適なコントロール配列は、例えばプロモーター、場合によってはオペレータ配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核生物の細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを利用することが知られている。
【0032】
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係にあるときに「作用可能に結合し」ている。例えば、プレ配列あるいは分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に寄与するプレタンパク質として発現されているならそのポリペプチドのDNAに作用可能に結合している;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼすならばコード配列に作用可能に結合している;又はリボソーム結合部位は、もしそれが翻訳を容易にするような位置にあるならコード配列と作用可能に結合している。一般的に、「作用可能に結合する」とは、結合されたDNA配列が近接しており、分泌リーダーの場合には近接していて読みフェーズにある。しかし、エンハンサーは必ずしも近接しているわけではない。結合は簡便な制限部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、通常の手法にしたがって、合成されたオリゴヌクレオチドアダプターあるいはリンカーが使用される。
【0033】
「B細胞」は骨髄内で成熟するリンパ球であり、ナイーブB細胞、メモリーB細胞、又はエフェクターB細胞(プラズマ細胞)などがある。本明細書中のB細胞は正常又は非悪性のB細胞でもよい。
「CD20」抗原は、末梢血又はリンパ系器官の90%以上のB細胞の表面にみられる35kDa以下の非グルコシル化リンタンパク質である。CD20は正常B細胞だけでなく悪性のB細胞上に存在するが、幹細胞には発現しない。CD20を指す文献中での他の名前には、「Bリンパ球限定抗原(B-lymphocyte-restricted antigen)」及び「Bp35」が含まれる。CD20抗原は、例としてClark等. PNAS (USA) 82:1766 (1985)に記載されている。
【0034】
CD20抗原に結合する抗体の例には以下のものが含まれる:現在では「リツキシマブ」(「リツキサン(登録商標)」)と呼称される「C2B8」(米国特許第5,736,137号);「Y2B8」又は「Ibritumomab Tiuxetan」ゼバリン(登録商標)と命名されるイットリウム-[90]-標識2B8マウス抗体、Idec Pharmaceuticals, Inc.から市販(米国特許第5,736,137号;1993年6月22日に受託番号HB11388としてATCCに寄託された2B8);場合によってはCorixaから市販の「131I-B1」抗体(ヨードI131 tositumomab、BEXXARTM)を生成するために131Iで標識した「Tositumomab」とも呼称されるマウスIgG2a「B1」(米国特許第5,595,721号も参照のこと);マウスモノクローナル抗体「1F5」(Press等 Blood 69(2):584-591 (1987)及びそれらの変異体、例として「フレームワークパッチ」又はヒト化1F5(国際公報03/002607, Leung, S;ATCC寄託番号HB-96450);マウス2H7及びキメラ2H7抗体(米国特許第5,677,180号);ヒト化2H7;B細胞の細胞膜のCD20分子を標的としたHUMAX-CD20TM完全ヒト、高親和性抗体(Genmab, Denmark;例としてGlennie及びvan de Winkel, Drug Discovery Today 8: 503-510 (2003)とCragg 等, Blood 101: 1045-1052 (2003)を参照);国際公報2004/035607(Teeling 等)に記載のヒトモノクローナル抗体;AME-133TM抗体(Applied Molecular Evolution);キメラ又はヒト化A20抗体(それぞれcA20、hA20)などのA20抗体又はその変異体(米国公開番号2003/0219433、免疫医学);及びInternational Leukocyte Typing Workshopより入手のモノクローナル抗体L27、G28-2、93-1B3、B-C1又はNU-B2(Valentine等, Leukocyte Typing III (McMichael, 編集, 440頁, Oxford University Press (1987))。本明細書中の好適なCD20抗体は、キメラCD20抗体、ヒト化CD20抗体またはヒトCD20抗体、より好ましくはリツキシマブ、ヒト化2H7、キメラないしはヒト化A20抗体(Immunomedics)、及びHUMAX-CD20TM ヒトCD20抗体(Genmab)である。
【0035】
ここで言う「リツキシマブ」又は「リツキサン(登録商標)」なる用語は、CD20抗原に対する一般的に遺伝学的に操作したキメラのマウス/ヒトモノクローナル抗体を指し、米国特許第5,736,137号では「C2B8」と命名されるものであり、CD20を結合する能力を保持する該抗体の断片を含みうる。
単に本願明細書中の目的のために、特別に明記しなければ、「ヒト化2H7」は、ヒト化CD20抗体又はその抗原結合断片を意味し、該抗体がインビボで霊長類のB細胞を枯渇させる効果を有し、該抗体はそのH鎖可変領域(VH)に抗ヒトCD20抗体由来の少なくとも1のCDRH3配列と実質的なヒト重鎖サブグループIII(VHIII)のヒトコンセンサスフレームワーク(FR)残基を有するものである。
【0036】
好適なヒト化2H7は可変軽鎖配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASSSVSYMHWYQQKPGKAPKPLIYAPSNLASGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQWSFNPPTFGQGTKVEIKR (配列番号:7);
と、可変重鎖配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTSYNMHWVRQAPGKGLEWVGAIYPGNGDTSYNQKFKGRFTISVDKSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARVVYYSNSYWYFDVWGQGTLVTVSS (配列番号:8)
を含有する完全な抗体ないしは抗体断片である。
【0037】
ヒト化2H7抗体が完全な抗体である場合、軽鎖アミノ酸配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASSSVSYMHWYQQKPGKAPKPLIYAPSNLASGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQWSFNPPTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC (配列番号:9);
と、重鎖アミノ酸配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTSYNMHWVRQAPGKGLEWVGAIYPGNGDTSYNQKFKGRFTISVDKSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARVVYYSNSYWYFDVWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK (配列番号:10)
又は、重鎖アミノ酸配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTSYNMHWVRQAPGKGLEWVGAIYPGNGDTSYNQKFKGRFTISVDKSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARVVYYSNSYWYFDVWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNATYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIAATISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK (配列番号:11)
を含有するのが好ましい。
【0038】
「抗体依存性細胞障害活性」または「ADCC」は、Fcレセプター(FcR)を発現する非特異的細胞障害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)が標的細胞上の結合した抗体を認識し、続いて標的細胞を溶解する細胞媒介性反応を指す。ADCCを媒介する一次細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現する一方、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血性細胞でのFcRの発現は、Ravetch及びKinet, Annu.Rev.Immunol., 9:457-92(1991)の464頁の表3に要約されている。対象分子のADCC活性を評価するためには、米国特許第5500362号又は第5821337号に記載されているようなインビトロADCCアッセイが実施されうる。そのようなアッセイのための有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー細胞(NK)細胞を含む。あるいは、又は付加的に、対象分子のADCC活性は、例えばClynes等 .PNAS(USA), 95:652-656(1998)に開示されたような動物モデルにおいて、インビボで評価されてもよい。
「ヒトエフェクター細胞」とは、1つ又は複数のFcRsを発現し、エフェクター機能を実行する白血球のことである。好ましくは、その細胞が少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行する。ADCCを媒介するヒト白血球の例として、末梢血液単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞障害性T細胞及び好中球が含まれるが、PBMCとNK細胞が好適である。
【0039】
「Fcレセプター」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合するレセプターを表す。好適なFcRは、天然配列ヒトFcRである。さらに好適なFcRは、IgG抗体(γレセプター)に結合し、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIサブクラスのレセプターを含むものであり、これらのレセプターの対立遺伝子変異体及び選択的スプライシング型を含む。FcγRIIレセプターは、FcγRIIA(「活性化レセプター」)及びFcγRIIB(「阻害レセプター」)を含み、それらは、主としてその細胞質ドメインにおいて異なる類似のアミノ酸配列を有する。活性化レセプターFcγRIIAは、その細胞質ドメインに、免疫レセプターチロシン−ベース活性化モチーフ(ITAM)を有する。阻害レセプターFcγRIIBは、その細胞質ドメインに、免疫レセプターチロシン−ベース阻害モチーフ(ITIM)を有する(Daeron, Annu. Rev. Immunol., 15:203-234(1997)参照)。FcRはRavetch及びKinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991);Capelら, Immunomethods 4:25-34 (1994);及びde Hasら, J. Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995)において概説されている。将来同定されるものも含む他のFcRが、ここにおける「FcR」なる用語によって包含される。この用語は胎児への母性IgGの移動の原因である新生児レセプター、FcRnもまた含む(Guyerら, J. Immumol. 117:587 (1976)及びKimら, J. Immunol. 24:249 (1994))。本明細書中のFcRはFcγRIIIaをコードする遺伝子内に遺伝的二形性などの多型を含有し、それによってIgG1に結合するレセプターの領域内に位置するアミノ酸位置158がフェニルアラニン(F)又はバリン(V)となる。ホモ接合体バリンFcγRIIIa(FcγRIIIa-158V)は、ホモ接合体フェニルアラニンFcγRIIIa(FcγRIIIa-158F)又はヘテロ(FcγRIIIa-158F/V)レセプターと比較してインビトロでのADCC媒介を増加し、ヒトIgG1に対する親和性も高いことが示された。
【0040】
「補体依存性細胞障害」もしくは「CDC」は、補体の存在下で標的を溶解することを意味する。補体活性化経路は補体系(Clq)の第1補体が、同族抗原と結合した分子(例えば、抗体)に結合することにより開始される。補体の活性化を評価するために、CDCアッセイを、例えばGazzano-Santoro等, J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載されているように実施することができる。
ここで「抗体」なる用語は、広い意味で用いられ、特に無傷のモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの無傷の抗体から形成した多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び所望の生物学的活性を有する限りにおける抗体断片の範囲にわたる。
「抗体断片」は、無傷の抗体の一部、好ましくはその抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFv断片;ダイアボディ;線形抗体;一本鎖抗体分子;及び抗体断片から形成された多特異性抗体が含まれる。
【0041】
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖からなる、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は一つの共有ジスルフィド結合により重鎖に結合しており、ジスルフィド結合の数は、異なった免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の中で変化する。また各重鎖と軽鎖は、規則的に離間した鎖間ジスルフィド結合を有している。各重鎖は、多くの定常ドメインが続く可変ドメイン(VH)を一端に有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)を、他端に定常ドメインを有する;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている。
【0042】
「可変」という用語は、可変ドメインのある部位が、抗体の中で配列が広範囲に異なっており、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合性及び特異性に使用されているという事実を意味する。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメインにわたって一様には分布していない。軽鎖及び重鎖の可変ドメインの両方の高頻度可変領域と呼ばれる3つのセグメントに濃縮される。可変ドメインのより高度に保持された部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、βシート構造を結合し、ある場合にはその一部を形成するループ結合を形成する、3つの高頻度可変領域により連結されたβシート配置を主にとる4つのFRをそれぞれ含んでいる。各鎖の高頻度可変領域は、FRによって近接して結合され、他の鎖の高頻度可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabatら, Sequence of Proteins ofImmunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, BEthesda, MD. (1991))。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関連しているものではないが、種々のエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞媒介性障害活性(ADCC)への抗体の関与を示す。
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗体結合断片を生成し、その各々は単一の抗原結合部位を持ち、残りは容易に結晶化する能力を反映して「Fc」断片と命名される。ペプシン処理はF(ab')2断片を生じ、それは2つの抗原結合部位を持ち、抗原を交差結合することができる。
【0043】
「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含む最小抗体断片である。この領域は、堅固な非共有結合をなした一つの重鎖及び一つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。この配置において、各可変ドメインの3つの高頻度可変領域は相互に作用してVH-VL二量体表面に抗原結合部位を形成する。集合的に、6つの高頻度可変領域が抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一の可変ドメイン(又は抗原に対して特異的な3つの高頻度可変領域のみを含むFvの半分)でさえ、全結合部位よりも親和性が低くなるが、抗原を認識して結合する能力を有している。
またFab断片は、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第一定常領域(CH1)を有する。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含む重鎖CH1領域のカルボキシ末端に数個の残基が付加している点でFab断片とは異なる。Fab'-SHは、定常ドメインのシステイン残基が少なくとも一つの遊離チオール基を担持しているFab'に対するここでの命名である。F(ab')2抗体断片は、間にヒンジシステインを有するFab'断片の対として生産された。また、抗体断片の他の化学結合も知られている。
【0044】
任意の脊椎動物種からの抗体(イムノグロブリン)の「軽鎖」には、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に区別される型の一つが割り当てられる。
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、抗体は異なるクラスが割り当てられる。無傷の抗体には5つの主なクラスがある:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM、更にそれらは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgA2等のサブクラス(イソ型)に分かれる。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。イムノグロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元立体配位はよく知られている。
「一本鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。好ましくは、FvポリペプチドはVH及びVLドメイン間にポリペプチドリンカーを更に含み、それはscFvが抗原結合に望まれる構造を形成するのを可能にする。scFvの概説については、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)のPluckthunを参照のこと。
【0045】
「ダイアボディ」なる用語は、二つの抗原結合部位を持つ小さい抗体断片を指し、その断片は同一のポリペプチド鎖(VH−VL)内で軽鎖可変ドメイン(VL)に重鎖可変ドメイン(VH)が結合してなる。非常に短いために同一鎖上で二つのドメインの対形成が可能であるリンカーを使用して、ドメインを他の鎖の相補ドメインと強制的に対形成させ、二つの抗原結合部位を創製する。ダイアボディーは、例えば、欧州特許第404,097号;国際公報93/11161;及びHollingerら, Proc.Natl.Acad.Sci. USA 90:6444-6448 (1993)に更に詳細に記載されている。
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味する。すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在しうる自然に生じる可能性がある突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に対するものである。更に、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的には含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは異なり、各モノクローナル抗体は抗原の単一の決定基に対するものである。その特異性に加えて、モノクローナル抗体はハイブリドーマ培養により合成され、他のイムノグロブリンの混入がないという利点がある。「モノクローナル」との修飾語句は、実質的に均一な抗体の集団から得たものとしての抗体の性質を表すものであり、抗体が何か特定の方法による生成を必要として構築したものであることを意味するものではない。例えば、本発明において使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler等, Nature, 256:495 (1975)に記載されたハイブリドーマ法によって作ることができ、あるいは組換えDNA法によって作ることができる(例えば米国特許第4816567号を参照のこと)。また「モノクローナル抗体」は、例えば、Clackson等, Nature, 352:624-628 (1991)およびMarks等, J. Mol. biol. 222: 581-597 (1991)に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリーから作成することもできる。
【0046】
ここで言うモノクローナル抗体は、特に「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を含み、それは特定の種由来または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体が持つ配列に一致するまたは類似する重鎖および/または軽鎖の一部を含むものであり、残りの鎖は、所望の生物学的活性を表す限り、抗体断片のように他の種由来または他の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体が持つ配列に一致するまたは類似するものである(米国特許第4,816,567号;およびMorrisonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))。ここで対象とするキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば、ヒヒ、アカゲザル又はカニクイザルなどの旧世界サル)由来の可変ドメイン抗原結合配列とヒト定常領域配列を含む「霊長類化」抗体を含む(米国特許第5,693,780号)。
非ヒト(例えばマウス)の抗体の「ヒト化」型は、非ヒトイムノグロブリン(免疫グロブリン)に由来する最小配列を含むキメラ抗体である。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)からの高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。例として、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、もしくはドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性を更に洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいは実質的に全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、ヒト免疫グロブリン配列の高頻度可変ループがFRのすべて又は実質的にすべてである少なくとも一又は一般的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。また、ヒト化抗体は、場合によっては免疫グロブリン定常領域(Fc)の一部、一般的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も含む。更なる詳細については、Jones等, Nature 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature 332:323-329 (1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照のこと。
【0047】
ここで使用されるところの「高頻度可変領域」なる用語は、抗原結合に寄与する抗体のアミノ酸残基を意味する。高頻度可変領域は一般には「相補性決定領域」又は「CDR」からのアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメインの残基24−34(L1)、50−56(L2)及び89−97(L3)、及び重鎖可変ドメインの31−35(H1)、50−65(H2)及び95−102(H3);Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest,5版, Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD.(1991))及び/又は「高頻度可変ループ」からの残基(例えば、軽鎖可変ドメインの残基26−32(L1)、50−52(L2)及び91−96(L3)及び重鎖可変ドメインの残基26−32(H1)、53−55(H2)及び96−101(H3);Chothia及びLesk J.Mol.Biol. 196:901-917 (1987))を含む。「フレームワーク」又は「FR」残基はここで定義するように高頻度可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
目的の抗原、例えばCD20又はDR4又はDR5に「結合する」抗体とは、抗体が抗原発現細胞を標的とした治療薬として有用となるように十分な親和性及び/又は結合活性を有して抗原に結合することができるものである。
ここでの目的のための「免疫治療」とは、抗体を用いた哺乳動物(好ましくはヒト患者)の治療方法を意味し、この抗体はコンジュゲートされたもの又は「ありのままの」抗体でもよいし、又は一又は複数の細胞障害性剤などの薬剤やヘテロ分子とコンジュゲート又は融合して、それによって「免疫コンジュゲートを生成してもよい。
【0048】
「単離された」抗体は、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたものを意味する。その自然環境の汚染成分は、アンタゴニスト又は抗体の診断又は治療への使用を妨害しうる物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様においては、抗体は、(1)ローリー(Lowry)法により定量して、抗体が95重量%より多くなるほど、最も好ましくは99重量%より多くなるまで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、N末端あるいは内部アミノ酸配列の少なくとも15の残基を得るのに充分な程度まで、あるいは、(3)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性が得られるように充分な程度まで精製される。抗体の自然環境の少なくとも一つの成分が存在しないため、単離された抗体には、組換え細胞内のインサイツの抗体が含まれる。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも1つの精製工程により調製される。
「有効量」という用語は、疑われる疾患又は症状を予防、寛解又は治療するために効果的なApo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体及びCD20抗体の量を意味する。
【0049】
ここで補助治療として用いる「免疫抑制剤」という用語は、本明細書中で治療される哺乳動物の免疫系を抑制する又は遮断するように働く物質を表す。これは、サイトカイン産生を抑制する、自己抗原の発現を下方制御または抑制する、あるいはMHC抗原を遮断する物質を含む。そのような薬剤の例として、2-アミノ-6-アリル-5-代替ピリミジン(米国特許第4,665,077号参照、出典明記によりその開示内容がここに組み込まれる);非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs);アザチオプリン;シクロフォスファミド;ブロモクリプチン;ダナゾール;ダプソン;グルタルアルデヒド (米国特許第4,120,649号に記載のように、MHC抗原を遮断する);MHC抗原及びMHCフラグメントに対する抗イデオタイプ抗体;シクロスポリンA;糖質ステロイドなどのステロイド、例としてプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、及びヒドロコルチゾン;メトトレキサート(経口又は皮下);ヒドロキシクロロキン;スルファサラジン;レフルノミド;サイトカイン又はサイトカインレセプターアンタゴニスト、例として抗インターフェロン-γ、-β、又は-α抗体、抗腫瘍壊死因子α抗体(インフリキシマブ又はアダリムマブ)、抗TNFαイムノアドヘシン(エタネルセプト)、抗腫瘍壊死因子β抗体、抗インターロイキン2抗体、及び抗IL-2レセプター抗体;抗CD11a及び抗CD18抗体を含む抗LFA-1抗体;抗-L3T4抗体;異種性抗リンパ球グロブリン;pan-T抗体、好ましくは、抗-CD3又は抗CD4/CD4a抗体;LFA-3結合ドメインを含む可溶性ペプチド(1990年7月26日公開の国際公報90/08187);ストレプトキナーゼ;TGF−β;ストレプトドルナーゼ(streptodornase);宿主由来のRNA又はDNA;FK506;RS-61443;デオキシスペルグアニン(deoxyspergualin);ラパマイシン;T細胞レセプター (Cohen等, 米国特許第5,114,721号);T細胞レセプターフラグメント(Offner 等, Science 251:430-432 (1991);国際公報90/11294;Ianeway, Nature, 341: 482 (1989);及び国際公報 91/01133);及びT10B9などのT細胞レセプター抗体 (欧州特許第340,109号)を含む。
【0050】
ここで使用する「細胞障害性剤」なる用語は、細胞の機能を阻害又は阻止する、及び/又は細胞破壊をもたらす物質を表す。この用語は、放射性同位体(例として、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射性同位体)、化学療法剤、及び細菌、真菌、植物、又は動物起源の酵素活性毒素又は小分子毒素などの毒素、またはそれらの断片を含むことを意図する。
本明細書中で目的とする「相乗的活性」又は「相乗作用」又は「相乗効果」又は「相乗的な有効量」とは、Apo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体とCD20抗体とを組み合わせて用いた場合に観察される効果が、(1)Apo2L/TRAIL、デスレセプター抗体又はCD20抗体を単独(別々に)用いる場合に達する効果よりも大きい、及び(2)Apo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体とCD20抗体との合計付加(付加的な)効果よりも大きいことを意味する。そのような相乗作用又は相乗効果は、当業者に公知の様々な方法によって測定することができる。例えば、Apo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体及びCD20抗体の相乗効果は、腫瘍細胞数又は腫瘍体積の減少を測定するインビトロ又はインビボアッセイ様式で観察されうる。
【0051】
「アポトーシス」及び「アポトーシス活性」という用語は広義に使用され、典型的には、細胞質の凝集、原形質膜の微絨毛の喪失、核の分節化、染色体DNAの分解又はミトコンドリア機能の喪失を含む一又は複数の特徴的な細胞変化を伴う、哺乳動物における細胞死の規則的又は制御された形態を称する。この活性は、当該分野で公知の、例えば細胞生死判別アッセイ、FACS分析又はDNA電気泳動法を用いて、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞収縮、小胞体の拡張、細胞断片化、及び/又は膜小胞(アポトーシス体と呼ばれる)の形成を決定して測定することができる。抗体(例えばリツキシマブ)のアポトーシスを誘導する能力を決定するアッセイは、例えばShan 等 Cancer Immunol Immunther 48:673-83 (2000);Pedersen 等 Blood 99:1314-9 (2002);Demidem 等 Cancer Chemotherapy & Radiopharmaceuticals 12(3):177-186 (1997)に記載されている。
「癌」、「癌性」及び「悪性」という用語は、典型的には調節されない細胞成長を特徴とする、哺乳動物の生理学的状態を称するか説明する。癌の例には、これらに限定されるものではないが、腺癌、リンパ腫、芽細胞腫、メラノーマ、肉腫及び白血病などがある。このような癌のより具体的な例として、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、胃腸癌、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫、膵癌、神経膠芽腫、膠腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、例えば肝腫瘍及び肝細胞癌(hepatoma)、膀胱癌、乳癌、大腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜上皮癌、骨髄腫(例えば多発性骨髄腫)、唾液腺上皮癌、腎臓癌、例えば腎臓細胞上皮癌及びウィルムス腫瘍、基底細胞癌、メラノーマ、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、精巣癌、食道癌、及び様々な種類の頭頸部癌などがある。
【0052】
「免疫関連疾患」という用語は、哺乳動物の免疫系の成分が、哺乳動物の病理学的状態の原因であるか、媒介又は寄与するものである疾患を意味する。また、免疫反応の刺激又は介在により疾患の進行に改善された効果が付与される疾患も含まれる。この用語には、自己免疫疾患、免疫媒介炎症疾患、非免疫媒介炎症疾患、感染症、及び免疫欠損症が含まれる。そのうちの一部が免疫又はT細胞媒介であり、本発明によって治療することが可能な免疫関連及び炎症性疾患の例には、全身性エリテマトーデス、リウマチ様関節炎、若年型慢性関節炎、脊椎関節症、全身性硬化症(強皮症)、特発性炎症性筋疾患(皮膚筋炎、多発性筋炎)、シェーグレン症候群、全身性血管炎、サルコイドーシス、自己免疫性溶血性貧血(免疫性汎血球減少症、発作性夜間ヘモグロビン尿症)、自己免疫性血小板減少症(溶血性血小板減少性紫斑病、免疫媒介血小板減少症)、甲状腺炎(バセドウ病、橋本甲状腺炎、若年型リンパ球性甲状腺炎、萎縮性甲状腺炎)、糖尿病、免疫媒介腎疾患(糸球体腎炎、尿細管間質性腎炎)、中枢及び末梢神経系の脱髄疾患例えば多発性硬化症、特発性脱髄多発神経障害又はギラン・バレー症候群、及び慢性炎症性脱髄性多発神経障害、肝胆道疾患例えば感染性肝炎(A、B、C、D、E型肝炎、及び他の非肝親和性ウイルス)、自己免疫性慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、肉芽腫性肝炎、及び硬化性胆管炎、炎症性腸疾患等の炎症性及び線維性肺疾患(潰瘍性大腸炎:クローン病)、グルテン過敏性腸疾患、及びウィップル病、水疱性皮膚病を含む自己免疫又は免疫媒介皮膚疾患、多形滲出性紅斑及び接触性皮膚炎、乾癬、アレルギー性疾患例えば喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物過敏症及び蕁麻疹、肺の免疫疾患例えば好酸球性肺炎、特発性肺線維症及び過敏性肺炎、拒絶反応及び移植片対宿主病を含む移植関連疾患が含まれる。感染症疾患には、AIDS(HIV感染)、A、B、C、D及びE型肝炎、細菌感染症、真菌感染症、原虫感染症及び寄生虫症が含まれる。
【0053】
「B細胞悪性腫瘍」は、B細胞が関与している悪性腫瘍である。例として、リンパ球優性ホジキン病(LPHD)を含むホジキン病;非ホジキンリンパ腫(NHL);濾胞性中心の細胞(FCC)リンパ腫;急性リンパ球性白血病(ALL);慢性リンパ球性白血病(CLL);有毛細胞白血病;プラズマ細胞性リンパ球リンパ腫;マントル細胞リンパ腫;エイズ又はHIV関連のリンパ腫;多発性骨髄腫;中枢神経系(CNS)リンパ腫;移植後のリンパ増殖性疾患(PTLD);ワルデンシュトレームマクログロブリン血症(リンパ形質細胞性リンパ腫);粘膜関連リンパ系組織(MALT)リンパ腫;及び、周辺帯リンパ腫/白血病などがある。
非ホジキンリンパ腫(NHL)は、限定するものではないが、軽度の/濾胞性NHL、再発性又は抵抗性NHL、前面の軽度のNHL、ステージIII/IV NHL、化学療法耐性のNHL、小リンパ球(SL)NHL、中程度の/濾胞性NHL、中程度の広汎性NHL、広汎性大細胞リンパ腫、活動性NHL(活動性前面のNHL及び活動性再発性NHLを含む)、自己由来の幹細胞移植の後に再発したNHL又はその移植に抵抗性のNHL、高度免疫芽細胞NHL、高度リンパ芽球NHL、高度小非非正円形細胞NHL、バルキー(bulky)疾患NHLなどがある。
【0054】
ここで言う「自己免疫疾患」とは、個体自身の組織から生じて個体自身の組織に対して起こる疾患又は障害、あるいはその同時分離いたものないしは徴候又は結果として生じる症状である。自己免疫疾患又は障害の例には、限定するものではないが、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、骨関節症、乾癬の関節炎及び強直性脊椎炎)、乾癬、アトピー性皮膚炎を含む皮膚炎;慢性特発性蕁麻疹、例えば慢性自己免疫蕁麻疹、多発性筋炎/皮膚筋炎、中毒性表皮の表皮壊死症、全身強皮症及び硬化症、炎症性腸疾患(IBD)(クローン病、潰瘍性大腸炎)と関連している応答、及び膿皮症壊疽の同時分離を伴うIBD、結節性紅斑、原発性硬化性胆管炎、及び/又は上強膜炎)、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む呼吸窮迫症候群、髄膜炎、IgE媒介性疾患、例えばアナフィラキシー及びアレルギー性鼻炎、ラスマッセン脳炎のような脳炎、ブドウ膜炎、大腸炎、例えば顕微鏡的大腸炎及び膠原性大腸炎、膜性GNなどの糸球体腎炎(GN)、特発性膜性GN、I型及びII型及び急速進行性GNを含む膜性増殖性GN(MPGN)、アレルギー症状、湿疹、喘息、T細胞の浸潤が関与している症状及び慢性炎症反応、アテローム性動脈硬化症、自己免疫心筋炎、白血球癒着不全、皮膚SLEのような全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス(腎炎、脳炎、小児科、非腎臓、ジスコイド、脱毛症を含む)、若年型糖尿病、脊髄視覚MSなどの多発性硬化症(MS)、アレルギー性脳脊髄炎、サイトカイン及びTリンパ球によって媒介される急性及び遅発性過敏症と関連している免疫応答、結核、サルコイドーシス、ヴェゲナー肉芽腫症を含む肉芽腫症、無顆粒球症、脈管炎(大動脈管炎(リウマチ性多発筋痛症及び巨細胞(高安)動脈炎を含む)、中脈管炎(川崎病および結節性多発性動脈炎を含む)、CNS脈管炎、及び脈管炎関連ANCA、例えばチャーグ・ストラウス脈管炎又は症候群(CSS))、無形成性貧血、クームス陽性貧血症、ダイアモンド・ブラックファン(Blackfan)貧血症、自己免疫溶血性貧血(AIHA)を含む免疫溶血性貧血、悪性貧血、純粋な赤血球形成不全(赤芽球癆)、第VIII因子欠乏症、血友病A、自己免疫好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球血管外遊出が関与している疾患、CNS炎症性障害、多器官損傷症候群、重症筋無力症、抗原抗体複合体媒介性疾患、抗糸球体基底膜疾患、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット病、キャッスルマン症候群、グッドパスチュア症候群、ランバート・イートン筋無力症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群、固形臓器移植拒絶反応(高い試験板反応性の抗体価、組織のIgA沈澱物及び腎移植、肝移植、腸移植、心臓移植に起因している拒絶などのための前処置を含む)、移植片対宿主病(GVHD)、類天疱瘡水疱、天疱瘡(尋常性、落葉状及び天疱瘡粘液膜類天疱瘡を含む)、自己免疫多腺性内分泌障害、ライター症候群、スティッフマン症候群、免疫複合体腎炎、IgM多発性神経炎又はIgM媒介性神経病、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓症血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫血小板減少を含む血小板減少(例えば心筋梗塞患者に発現)、自己免疫精巣炎及び卵巣炎を含む精巣及び卵巣の自己免疫疾患、原発性甲状腺機能低下症;自己免疫性甲状腺炎を含む自己免疫内分泌性疾患、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)、亜急性の甲状腺炎、特発性の甲状腺機能低下症、アジソン病、甲状腺機能亢進症、自己免疫多腺性症候群(又は多腺性内分泌障害症候群)、小児IDDMを含むインシュリン依存性真正糖尿病(IDDM)とも称されるI型糖尿病、及びシーハン症候群;自己免疫肝炎、リンパ系間質性肺炎(HIV)、閉塞性細気管支炎(非移植)対NSIP、ギランバレ症候群、ベルジェ病(IgAネフロパシ)、原発性胆管萎縮症、脂肪便症(グルテン腸疾患)、同時分離疱疹状皮膚炎を有する抵抗性スプルー、クリオグロブリン血症、アミル栄養側索硬化症(ALS;筋萎縮性側索硬化症)、冠状動脈疾患、自己免疫内耳疾患(AIED)、自己免疫聴力障害、眼球クローヌス筋硬直症候群(OMS)、抵抗性多発性軟骨炎のような多発性軟骨炎、肺胞蛋白症、アミロイドーシス、巨細胞肝炎、強膜炎、不明な/未知の重大なモノクローナル免疫グロブリン増多症(MGUS)、末梢神経障害、腫瘍随伴症候群、チャンネル病、例えば癲癇、片頭痛、不整性、筋疾患、難聴、失明、周期性麻痺及びCNSのチャンネル病;自閉症、炎症性筋疾患及び巣状分節状糸球体硬化症(FSGS)が含まれる。
【0055】
この出願で用いられる用語「プロドラッグ」は、親薬剤に比較して癌細胞に対する細胞障害性が低く、酵素的に活性化又はより活性な親形態に変換される製薬的活性物質の前駆体又は誘導体形態を意味する。例えば、Wilman, 「Prodrugs in Cancer Chemotherapy」, Biochemical Society Transactions, 14, :375-382, 615th Meeting, Belfast (1986)、及びStella 等, 「Prodrugs: A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery」、Directed Drug Delivery, Borchardt等(編), 247-267項, Humana Press (1985)参照。本発明のプロドラッグは、限定するものではないが、ホスファート含有プロドラッグ、チオホスファート含有プロドラッグ、スルファート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D-アミノ酸修飾プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、β-ラクタム含有プロドラッグ、任意に置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ又は任意に置換されたフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、より活性のある細胞毒のない薬剤に転換可能な5-フルオロシトシン及び他の5-フルオロウリジンプロドラッグを含む。限定はしないが、本発明で使用されるプロドラッグ形態に誘導体化可能な細胞障害性剤の例には、以下の化学療法剤が含まれる。
ここで使用する「細胞障害性剤」なる用語は、細胞の機能を阻害又は阻止する、及び/又は細胞破壊をもたらす物質を表す。この用語は、放射性同位体(例として、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射性同位体)、化学療法剤、及び細菌、真菌、植物、又は動物起源の酵素活性毒素又は小分子毒素などの毒素(それらの断片及び/又は変異体を含む)を含むことを意図する。
【0056】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化学的化合物である。化学療法剤の例には、チオテパ及びシクロスホスファミド(CYTOXAN(登録商標))のようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)のようなアジリジン類;アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;アセトゲニン(acetogenins)(特にブラタシン(bullatacin)及びブラタシノン(bullatacinone));カンプトセシン(合成類似体トポテカン(topotecan)を含む);ブリオスタチン;カリスタチン(callystatin);CC-1065(そのアドゼレシン(adozelesin)、カルゼレシン(carzelesin)及びバイゼレシン(bizelesin)合成類似体を含む);クリプトフィシン(cryptophycin)(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン(dolastatin);デュオカルマイシン(duocarmycin )(合成類似体、KW-2189及びCBI-TM1を含む);エレトロビン(eleutherobin);パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコディクチン(sarcodictyin);スポンジスタチン(spongistatin);クロランブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタード等のナイトロジェンマスタード;ニトロスレアス(nitrosureas)、例えばカルムスチン(carmustine)、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン(lomustine)、ニムスチン、ラニムスチン;エネジイン(enediyne) 抗生物質等の抗生物質(例えば、カリケアマイシン(calicheamicin)、特にカリケアマイシンガンマ1I及びカリケアマイシンオメガI1、例えば、Agnew Chem Intl. Ed. Engl., 33:183-186(1994)を参照のこと;ダイネミシンA(dynemicinA)を含むダイネミシン(dynemicin);クロドロネート(clodronate)などのビスホスホネート(bisphosphonates);エスペラマイシン(esperamicin);同様にネオカルチノスタチン発光団及び関連色素蛋白エネジイン(enediyne) 抗生物質発光団)、アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン(bleomycins)、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン(carminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン (モルフォリノ−ドキソルビシン、シアノモルフォリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンCなどのマイトマイシン(mitomycins)、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);メトトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU)のような抗-代謝産物;デノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate)のような葉酸類似体;フルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンのようなプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine)のようなピリミジン類似体;カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone)のようなアンドロゲン類;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンのような抗副腎剤;フロリン酸(frolinic acid)のような葉酸リプレニッシャー(replenisher);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル(eniluracil);アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エポチロン(epothilone);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidamine);メイタンシン(maytansine)及びアンサマイトシン(ansamitocin)のようなメイタンシノイド(maytansinoid);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products, Eugene, OR);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン(rhizoxin);シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(trichothecenes)(特に、T-2トキシン、ベラキュリンA(verracurin A)、ロリデンA(roridin A)及びアングイデン(anguidine));ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばタキソール(登録商標)パクリタキセル、(Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, NJ)、ABRAXANETM クレモフォール(Cremophor)を含まない、アルブミン設計のナノ粒子形状のパクリタキセル(American Pharmaceutical Partners, Schaumberg, Illinois)及びタキソテア(登録商標)ドキセタキセル、(Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル;GEMZAR(登録商標)ゲンシタビン(gemcitabine);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;シスプラチン及びカルボプラチンのようなプラチナ類似体;ビンブラスチン;プラチナ;エトポシド(VP-16);ミトキサントン;ビンクリスチン;NAVELBINE(登録商標)ビノレルビン;ナベルビン(Navelbine);ノバントロン(novantrone);テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセローダ(xeloda);イバンドロナート(ibandronate);CPT-11;トポイソメラーゼインヒビターRFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド類;カペシタビン(capecitabine);並びに上述したものの製薬的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体が含まれる。
【0057】
また、この定義には、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように働く抗ホルモン剤、抗エストロゲン及び選択的エストロゲンレセプターモジュレーター(SERM)など、例えばタモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン(raloxifene)、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストーン(onapristone)、及びFARESTON トレミフェン(Fareston);アロマターゼ酵素を阻害するアロマターゼ阻害物質、それらは副腎でのエストロゲン産生を調節するものであり、例えば4(5)-イミダゾール類、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)メゲストロールアセテート、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、ホルメスタイン(formestanie)、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ゾロゾール(vorozole)、FEMARA(登録商標)レトロゾールおよびARIMIDEX(登録商標)アナストロゾール;;及び抗アンドロゲン、例えばフルタミド(flutamide)、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリン;並びにトロキサシタビン(troxacitabine)(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に不粘着性細胞増殖に関係するシグナル伝達経路の遺伝子の発現を抑制するもの、例えばPKC-alpha、ラルフおよびH-Ras;VEGF発現インヒビター(例えばANGIOZYME(登録商標)リボザイム)及びHER2発現インヒビターなどのリボザイム;遺伝子治療ワクチンなどのワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン及びVAXID(登録商標)ワクチン);PROLEUKIN(登録商標)rIL-2;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1インヒビター;ABARELIX(登録商標)rmRH並びに上記のものの製薬的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体が含まれる。
【0058】
ここで用いられる際の「成長阻害剤」は、細胞の成長をインビトロ又はインビボで阻害する化合物又は組成物を意味する。即ち、成長阻害剤は、S期でそのような遺伝子を過剰発現する細胞の割合を有意に減少させるものである。成長阻害剤の例は、細胞周期を(S期以外の位置で)阻害する薬剤、例えばG1停止又はM期停止を誘発する薬剤を含む。古典的なM期ブロッカーは、ビンカス(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキソール、及びトポII阻害剤、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド及びブレオマイシンを含む。G1を停止するこれらの薬剤は、S期停止にも溢流し、例えば、DNAアルキル化剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、及びara-Cである。更なる情報は、The Molecular Basis of Cancer, Mendelsohn及びIsrael, 編, Chapter 1, 表題「Cell cycle reguration, oncogene, and antineoplastic drugs」, Murakamiら, (WB Saunders: Philadelphia, 1995)、特に13頁に見出すことができる。
【0059】
「サイトカイン」という用語は、一つの細胞集団から放出されるタンパク質であって、他の細胞に対して細胞間メディエータとして作用するものの包括的な用語である。このようなサイトカインの例としては、リンフォカイン、モノカイン、及び伝統的なポリペプチドホルモンを挙げることができる。サイトカインには、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラクシン;プロリラクシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)のような糖タンパク質ホルモン、副甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び黄体形成ホルモン(LH);肝臓成長因子;繊維芽細胞成長因子;プロラクチン;胎盤ラクトゲン;腫瘍壊死因子−α及び−β;ミュラー阻害物質;マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);神経成長因子;血小板成長因子;TGF−αあるいはTGF−βのような形質転換成長因子(TGF);インスリン様成長因子−I及び−II;エリスロポイエチン(EPO);オステオインダクティブ因子;インターフェロン−α、−β、及び−γのようなインターフェロン;マクロファージCSF(M-CSF)のようなコロニー刺激因子(CSF);顆粒球マクロファージCSF(GM−CSF)及び顆粒球CSF(G-CSF);IL-1、IL-2、IL-3、 IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、 IL-8、IL-9、IL-11、IL-12等のインターロイキン(IL);LIF及びキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子が含まれる。ここで使用される場合、サイトカインなる用語は天然源由来あるいは組換え細胞培養由来のタンパク質及び天然配列サイトカインの生物的に活性な等価物を含む。
【0060】
「パッケージ挿入物」は、効能、用途、服用量、投与、配合禁忌、パッケージされている製品と併用される他の治療薬、及び/又はその治療薬の用途に関する警告などについての情報を含む、治療薬の商業的包装を慣習的に含めた指示書を指す。
ここで使用される「治療する」、「治療」、及び「療法」とは、治癒的療法、予防的療法及び防護的療法を称する。
ここで使用される「哺乳類」という用語は、ヒト、ウシ、ウマ、犬及びネコを含む哺乳類に分類されるあらゆる動物に相当する。本発明の好ましい実施態様では、哺乳類はヒトである。
【0061】
II.本発明の組成物及び方法
TNFリガンドファミリーに関連したサイトカインであって、ここにおいて「Apo-2リガンド」又は「TRAIL」と特定されたサイトカインが記載されている。ヒト天然Apo-2リガンドの予測成熟アミノ酸配列は、281個のアミノ酸を含み、約32.5kDaの計算上の分子量を有する。シグナル配列が存在せず内在性疎水性領域が存在することは、Apo-2リガンドがII型膜貫通タンパク質であることを示唆する。また、可溶性細胞外ドメインApo-2リガンドポリペプチドが記載されている。例えば1997年7月17日に公開の国際公開公報97/25428を参照のこと。Apo-2L置換変異体がさらに記載されている。アラニンスキャンニング技術が、生物学的活性を有する種々の置換変異体分子を同定するために利用されてきた。Apo-2リガンドの特定の置換変異体は、少なくとも一つのアミノ酸がアラニン残基等の別のアミノ酸残基によって置換されているものを含む。これら置換変異体は、例えば「D203A」、「D218A」及び「D269A」として同定されている。この命名法は、位置203、218、及び/又は269(図1に示した番号を使用)の残基がアラニン残基によって置換されているApo-2リガンド変異体を同定するために利用されている。場合によっては、本発明のApo-2L変異体は一又は複数のアミノ酸置換を含んでもよい。場合によっては、このようなApo-2L変異体はDR4又はDR5レセプター選択的変異体である。
下記の説明は、核酸をコードするApo-2リガンドを含むベクターで形質転換又は形質移入された宿主細胞を培養し、細胞培養物からポリペプチドを回収することによる、Apo-2リガンド変異体を含むApo-2リガンドを生産する方法に関する。
【0062】
Apo-2リガンドをコードするDNAは、Apo-2リガンドmRNAを有し、これを検出可能なレベルで発現すると考えられる組織から調製された任意のcDNAライブラリーから得ることできる。従って、ヒトApo-2リガンドDNAは、国際公開97/25428に記載されているヒト胎盤cDNAのバクテリオファージライブラリーのような、ヒト組織から調製されたcDNAライブラリーから簡便に得ることが可能である。また、Apo-2リガンドコード化遺伝子は、ゲノムライブラリーから又はオリゴヌクレオチド合成によって得ることもできる。
ライブラリーは、対象となる遺伝子あるいはその遺伝子によりコードされるタンパク質を同定するために設計された(Apo-2リガンドに対する抗体又は少なくとも約20−80塩基のオリゴヌクレオチド等の)プローブによってスクリーニングすることができる。選択されたプローブによるcDNA又はゲノムライブラリーのスクリーニングは、例えばSambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual(New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)に記載されている標準的な手順を使用して実施することができる。Apo-2リガンドをコードする遺伝子を単離する他の方法はPCR法を使用するものである[Sambrookら,上掲;Dieffenbachら, PCR Primer:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1995)]。
【0063】
Apo-2リガンドのアミノ酸配列断片又は変異体は、Apo-2リガンドDNAに適切なヌクレオチド変化を導入するか、所望のApo-2リガンドポリペプチドを合成することにより調製することができる。このような断片又は変異体は、完全長Apo-2リガンドについて図1に示したアミノ酸配列の、又は細胞内領域、膜貫通領域、又は細胞外領域の内部あるいは一方又は両方の末端に残基の挿入、置換及び/又は欠失を示す。挿入、置換及び/又は欠失の何れかを組み合わせて、ここに定義するような所望の生物活性、例えばアポトーシス活性を有する最終のコンストラクトに到達するように作製することができる。好ましい実施態様では、断片又は変異体は、Apo-2リガンドの細胞内、膜貫通、又は細胞外領域についてここで同定した配列、あるいはApo-2リガンドの完全長配列に対して、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約90%の配列同一性、さらに好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する。また、アミノ酸の変化により、グリコシル化部位の数と位置の変化、又は膜係留特性(膜アンカー特性)の改変のように、Apo-2リガンドの翻訳後プロセスを改変し得る。
ここで記載されているApo-2リガンド配列における変異は、米国特許第5364934号に記載された保存的あるいは非保存的突然変異に関する技術とガイドラインの任意のものを使用して生じさせることができる。これらは、オリゴヌクレオチド媒介(部位特異的)突然変異誘発、アラニンスキャニング、及びPCR突然変異誘発を含む。
【0064】
近接配列に沿った一又は複数のアミノ酸を同定するために、スキャニングアミノ酸分析法を使用することができる。好ましいスキャニングアミノ酸は、比較的小さい中性アミノ酸である。このようなアミノ酸には、アラニン、グリシン、セリン及びシステインが含まれる。変異体の主鎖構造をあまり改変することなく、ベータ炭素を越えた側鎖が除去されるため、アラニンがこの群のなかで好ましいスキャニングアミノ酸である[Cunninghamら, Science, 244: 1081 (1989)]。またアラニンは最も一般的なアミノ酸であることによっても好ましい。さらに、アラニンは埋設及び露出位置の双方に頻繁に見出される[Creighton, The Proteins, (W.H. Freeman & Co., N.Y.);Chothia, J. Mol. Biol., 150:1(1976)]。
アミノ酸はその側鎖の性質の類似性に応じて分類される( Biochemistry, 第2版., pp. 73-75, Worth Publishers, New York (1975)中のA. L. Lehninger):
(1) 非極性:Ala (A), Val (V), Leu (L), Ile (I), Pro (P), Phe (F), Trp (W), Met (M)
(2) 荷電のない極性:Gly (G), Ser (S), Thr (T), Cys (C), Tyr (Y), Asn (N), Gln (Q)
(3) 酸性:Asp (D), Glu (E)
(4) 塩基性:Lys (K), Arg (R), His(H)
あるいは、天然に生じる残基は共通の側鎖性質に基づいてグループに分けられる:
(1) 疎水性:ノルロイシン, Met, Ala, Val, Leu, Ile;
(2) 中性親水性:Cys, Ser, Thr, Asn, Gln;
(3) 酸性:Asp, Glu;
(4) 塩基性:His, Lys, Arg;
(5) 鎖配向に影響する残基:Gly, Pro;
(6) 芳香族:Trp, Tyr, Phe。
【0065】
表1
【0066】
また、本発明の範囲に含まれるApo-2リガンド配列の変異体は、アミノ末端誘導体又は修飾形にも関連する。このようなApo-2リガンド配列は、ポリペプチド配列のN末端にメチオニン又は修飾メチオニン(例えばホルミルメチオニル又は他のブロックされたメチオニル種など)を有するここに記載した任意のApo-2リガンドポリペプチドを含む。
天然又は変異体Apo-2リガンドをコードする核酸(例えば、cDNA又はゲノムDNA)は、さらなるクローニング(DNAの増幅)又は発現のために、複製可能なベクター内に挿入される。様々なベクターが公的に入手可能である。ベクター成分としては、一般に、これらに制限されるものではないが、次のものの一又は複数が含まれる:シグナル配列、複製開始点、一又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサー成分、プロモーター、及び転写終結配列であり、それぞれを以下に説明する。用いられるであろう任意のシグナル配列、複製開始点、マーカー遺伝子、エンハンサーエレメント及び転写終結配列は当該分野で知られており、WO97/25428にさらに詳しく記載されている。
【0067】
発現及びクローニングベクターは、通常、宿主生物によって認識され、Apo-2リガンド核酸配列に作用可能に結合したプロモーターを含む。プロモーターは、作用可能に結合したApo-2リガンド核酸配列のような特定の核酸配列の転写及び翻訳を制御する構造遺伝子(一般的に約100ないし1000塩基対)の開始コドンの上流側(5')に位置する未翻訳配列である。このようなプロモーターは典型的には、誘発的なクラス及び構成的なクラスの2つのクラスに属する。誘発的なプロモーターは、例えば、栄養分の存在あるいは不存在、温度変化などの培養条件のある変化に対応してその制御の下でDNAからの転写レベルを上昇させるプロモーターである。現時点において多種の可能な宿主細胞により認識される非常に多くのプロモーターがよく知られている。これらのプロモーターは、制限酵素の消化によって供給源DNAからプロモーターを除去し、ベクターに単離したプロモーター配列を挿入することで、Apo-2リガンドをコードするDNAに作用的に結合している。天然のApo-2リガンドプロモーター配列及び多くの異種性プロモーターはいずれもApo-2リガンドDNAの直接増幅及び/又は発現に用いることができる。
原核生物及び真核生物宿主に適したプロモーターは当該分野で知られており、国際公開公報97/25428にさらに詳しく記載されている。
【0068】
大腸菌における可溶性Apo-2Lの生産の好ましい方法には、生産物発現の制御のための誘発的プロモーターが用いられる。制御可能な誘発的なプロモーターの利用は、生産物発現の誘発、及び宿主によってよく耐えることのできないかなりの量の生産物の蓄積の前に、所望する細胞密度への培養成長を可能にする。
Apo-2L(114−281形態)の発現のために、いくつかの誘発的なプロモーター系(T7ポリメラーゼ、trp及びアルカリホスファターゼ(AP))が出願人によって評価された。これら三つのプロモーターのそれぞれの利用は、収集細胞ペーストから回収されたかなりの量の可溶性で生物学的に活性なApo-2L三量体を結果として生じた。しっかりとしたプロモーターコントロール、及び収集細胞ペーストにおいて到達したより高い細胞密度及び力価のために、試験されたこれら三つの誘発的なプロモーター系の中でAPプロモーターが好まれている。
【0069】
一又は複数の上に列挙した成分を含む適切なベクターの構築には、標準的なライゲーション技術を用いる。単離されたプラスミド又はDNA断片を開裂させ、整え、そして必要とされるプラスミドの生成のために望ましい形態に再びライゲーションする。
作成されたプラスミドが正しい配列であることを確認する分析のために、ライゲーション混合物を用いて、大腸菌K12菌株294(ATCC31446)を形質転換し、適当な場合にはアンピシリン又はテトラサイクリン耐性によって、形質転換細胞を好適に選択する。形質転換細胞からプラスミドを調製し、制限エンドヌクレアーゼ消化により分析し、及び/又は当該分野で知られている標準的技術を利用して配列を決定する[例えば、Messingら, Nucleic Acids Res., 9:309 (1981);Maxamら, Methods in Enzymology, 65:499 (1980)を参照のこと]。
Apo-2リガンドをコードしているDNAの哺乳動物細胞における一過性発現をもたらす発現ベクターを使用することができる。一般に、一過性発現は、宿主細胞が発現ベクターの多くのコピーを蓄積し、次にその発現ベクターによってコードされている所望のポリペプチドを高レベルで合成するように、宿主細胞中で効果的に複製できる発現ベクターを使用することを含む[Sambrookら, 上掲]。一過性発現系は、適切な発現ベクターと宿主細胞を含むが、クローニングされたDNAによりコードされているポリペプチドの簡便で確実な同定並びに所望の生物学的又は生理学的性質についてのポリペプチドの迅速なスクリーニングを可能にする。したがって、一過性発現系は、本発明において、生物学的に活性なApo-2リガンドであるApo-2リガンドの類似物及び変異体を同定する目的に特に有用である。
【0070】
組換え脊椎動物細胞培養でのApo-2リガンドの合成に適応化させるのに適切な他の方法、ベクター及び宿主細胞は、Gethingら, Nature, 293:620-625 (1981);Manteiら, Nature, 281:40-46 (1979);欧州特許第117,060号;及び欧州特許第117,058号に記載されている。
ここに記載のベクターにDNAをクローニングあるいは発現するために適切な宿主細胞は、上述の原核生物、酵母、又は高等真核生物細胞である。この目的にとって適切な原核生物は、限定するものではないが、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物体、例えばエシェリチアのような腸内菌科、例えば大腸菌、エンテロバクター、エルウィニア(Erwinia)、クレブシエラ、プロテウス、サルモネラ、例えばネズミチフス菌、セラチア属、例えばセラチア・マルセスキャンス及び赤痢菌属、並びにバシラス、例えば枯草菌及びバシラス・リチェフォルミス(licheniformis)(例えば、1989年4月12日に公開されたDD266710に開示されたバシラス・リチェニフォルミス41P)、シュードモナス属、例えば緑膿菌及びストレプトマイセス属を含む。好ましくは、宿主細胞は最小量のタンパク質分解酵素を分泌すべきである。
【0071】
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、Apo-2リガンドをコードするベクターのための適切なクローニング又は発現宿主である。グリコシル化Apo-2リガンドの発現に適切な宿主細胞は、多細胞生物から誘導される。CHO細胞を含むすべてのこのような宿主細胞の例は、さらに国際公開公報97/25428に記載されている。
宿主細胞を形質移入し、好ましくはApo-2リガンド産生のための発現又はクローニングベクターで形質転換し、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適切に修飾された栄養培地で培養する。
形質移入は、如何なるコード配列が実際に発現されるか否かにかかわらず、宿主細胞による発現ベクターの取り込みを意味する。多数のトランスフェクションの方法が当業者に知られている。例えば、CaPO4及びエレクトロポレーションである。このベクターの操作のあらゆる徴候が宿主細胞内で生じたときに成功したトランスフェクションが一般に認められる。
【0072】
形質転換は、染色体外の成分としてであろうと染色体成分によってであろうと、DNAが複製可能であるように生物体中にDNAを導入することを意味する。用いられる宿主細胞に応じて、そのような細胞に対して適した標準的な方法を用いて形質転換はなされる。前掲のSambrookらにより記載された塩化カルシウムを用いるカルシウム処理又はエレクトロポレーションが、原核生物又は実質的な細胞壁障壁を含む他の細胞に対して用いられる。アグロバクテリウム・トゥメファシエンスによる感染が、Shawら, Gene, 23:315 (1983)及び1989年6月29日公開の国際公開公報89/05859に記載されたように、ある種の植物細胞の形質転換に用いられる。加えて、1991年1月10日に公開された国際公開公報91/00358に記載されているように、超音波処理を用いて植物をトランスフェクションすることもできる。
このような細胞壁のない哺乳動物細胞に対しては、Graham及びvan der Eb, Virology, 52:456-457 (1978)のリン酸カルシウム沈殿法が好ましい。哺乳動物細胞の宿主系形質転換の一般的な側面は米国特許第4399216号に記載されている。酵母中の形質転換は、典型的には、Van Solingenら, J. Bact., 130:946 (1977)及びHsiaoら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76:3829 (1979)の方法によって実施する。しかしながら、DNAを細胞中に導入する他の方法、例えば、核マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、無傷の細胞、又はポリカチオン、例えばポリブレン、ポリオルニチン等を用いる細菌プロトプラスト融合もまた用いることもできる。哺乳動物細胞を形質転換するための種々の技術については、Keownら, Methods in Enzymology, 185:527-537 (1990)及び Mansourら, Nature, 336:348-352 (1988)を参照のこと。
【0073】
Apo-2リガンドを生産するために用いられる原核細胞は、前掲のSambrookらにより記載されているような適切な培地で培養される。大腸菌の培養に用いることができる培養培地の特定の形態は、後述の実施例でさらに説明する。大腸菌の培養に用いられうる培養培地の特定の形態は、下記の実施例にさらに記載されている。Apo-2リガンドを生産するための哺乳動物宿主細胞は、種々の培養培地において培養することができる。
市販培地の例としては、ハム(Ham)のF10(シグマ)、最小必須培地(「MEM」、シグマ)、RPMI-1640(シグマ)及びダルベッコの改良イーグル培地(「DMEM」、シグマ)が含まれる。これらの培地はいずれも、ホルモン及び/又は他の成長因子(例えばインスリン、トランスフェリン、又は表皮成長因子)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩)、バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオシド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えば、ゲンタマイシンTM薬)、微量元素(最終濃度がマイクロモル範囲で通常存在する無機化合物として定義される)及びグルコース又は同等のエネルギー源を必要に応じて補充することができる。任意の他の必要な補充物質もまた当業者に知られている適当な濃度で含むことができる。培養条件、例えば温度、pH等々は、発現のために選ばれた宿主細胞について以前から用いられているものであり、当業者には明らかであろう。
【0074】
一般に、哺乳動物の細胞培養の生産性を最大にするための原理、プロトコル、及び実用技術は、Mammalian Cell Biotechnology: A Practical Approach, M.Butler編 (IRL Press, 1991)に見出すことができる。
本発明の一側面では、宿主細胞の培養又は発酵のために、典型的には一又は複数の二価金属イオンが培養培地へ添加されるかあるいは含まれる。二価金属イオンは、好ましくは、貯蔵安定性を増すため、溶解性を増すため、又は一又は複数の亜鉛イオンによって調整される安定なApo-2L三量体の形成を補助するために十分な濃度レベルで培養培地に存在するかあるいは添加される。添加されうる二価金属イオンの量は、一部は培養中の宿主細胞密度又はこのような二価金属イオンへの潜在的な宿主細胞感受性に依存する。培養におけるより高い細胞密度では、二価金属イオンの濃度を増すことは有益である。宿主細胞による生産物の発現中又は発現後に二価金属イオンが添加される場合は、宿主細胞による産物の発現が増加するのに応じて二価金属イオン濃度を調節又は増加させることが望ましい。典型的な普通に入手可能な細胞培養培地に存在しうる微量レベルの二価金属イオンは、安定な三量体形成には十分ではないと一般的に考えられている。従って、本明細書に開示するように、更なる量の二価金属イオンの添加が好ましい。
【0075】
培養中の宿主細胞の成長期の間に二価金属イオンが添加される場合は、二価金属イオンは、逆に又は負の方向に宿主細胞へ影響しない濃度で培養培地へ添加されるのが好ましい。振盪フラスコ培養では、1mMより高い濃度でのZnSO4の添加は、結果として低い宿主細胞密度を生じる可能性がある。当業者であれば、細菌細胞は、細胞マトリックスと金属イオン複合体を形成することで、効果的に金属イオンを隔離することが可能であることが分かる。従って、細胞培養では、成長期の後(所望する宿主細胞密度に達した後)又は宿主細胞による生産物発現の直前に、選択された二価金属イオンを添加することが好ましい。十分な量の二価金属イオンが存在していることを確かめるために、更なる二価金属イオンを、生産物発現期の間に細胞培養培地へ添加又は供給することができる。
培養培地の二価金属イオン濃度は、宿主細胞に対して有害又は毒性でありうる濃度を越えてはならない。宿主細胞として大腸菌を用いる本発明の方法では、培養培地の二価金属イオンの濃度が約1mM(好ましくは≦1mM)を越えないことが好ましい。さらにより好ましくは、培養培地の二価金属イオン濃度は、約50マイクロモルから約250マイクロモルである。最も好ましくは、このような方法で使用される二価金属イオンは硫酸亜鉛である。金属イオン及びApo-2リガンド三量体が1対1モル比で存在することが可能である量の二価金属イオンを細胞培養へ添加することが望ましい。
【0076】
二価金属イオンは、細胞培養へ如何なる許容可能な形態でも添加が可能である。例えば、金属イオンの溶液は水を使って調製することが可能であり、次に、二価金属イオン溶液は培養培地へ添加又は供給することが可能である。
Apo-2Lの発現は、例えば、ここに記載された配列に基づき、適切に標識されたプローブを用い、一般的なサザンブロット法、mRNAの転写を定量化するノーザンブロット法(Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:5201-5205 (1980))、ドットブロット法(DNA分析)、又はインシトゥハイブリダイゼーション法によって、直接的に試料中で測定することができる。種々の標識を用いることができ、最も一般的なものは放射性同位元素、特に32Pである。しかしながら、他の方法、例えばポリヌクレオチド中への導入のためのビオチン修飾ヌクレオチドを用いる方法もまた使用することができる。ついで、このビオチンは、例えば放射性核種、蛍光剤又は酵素等のような広範囲の標識で標識することができるアビジン又は抗体への結合部位となる。あるいは、DNA二本鎖、RNA二本鎖及びDNA-RNAハイブリッド二本鎖又はDNA-タンパク二本鎖を含む、特異的二本鎖を認識することができる抗体を用いることもできる。ついで、抗体を標識し、検定を実施することができ、ここで二本鎖は表面に結合しており、その結果二本鎖の表面での形成の時点でその二本鎖に結合した抗体の存在を検出することができる。あるいは、遺伝子の発現は、遺伝子産物の発現を直接的に定量する免疫学的な方法、例えば組織切片の免疫組織化学的染色及び細胞培養又は体液の検定によって測定することもできる。免疫組織化学的染色技術では、細胞試料を、典型的には脱水と固定によって調製し、結合した遺伝子産物に対し特異的な標識化抗体と反応させるが、この標識は通常は視覚的に検出可能であり、例えば酵素的標識、蛍光標識、ルミネセンス標識等である。
【0077】
試料液の免疫組織化学的染色及び/又はアッセイに有用な抗体は、モノクローナルでもポリクローナルでもよく、任意の哺乳類において調製することができる。簡便には、抗体は、天然配列Apo-2リガンドポリペプチドに対して、又はここで提供されるDNA配列をベースとした合成ペプチドに対して、又はApo-2リガンドDNAに融合し特異的抗体エピトープをコードする外因性配列に対して調製され得る。
Apo-2リガンドは、好ましくは培養培地から分泌されたポリペプチドとして回収されるが、分泌シグナル無しで直接産生される場合は宿主細胞溶菌液から回収してもよい。Apo-2リガンドが膜結合性である場合は、適切な洗浄液(例えばトリトン-X100)を用いて膜から引き離すか、又は酵素的切断によりその細胞外領域を切り離すことができる。
【0078】
Apo-2リガンドがヒト起源のもの以外の組換え細胞でつくられる場合は、Apo-2リガンドはヒト起源のタンパク質又はポリペプチドを含まない。しかしながら、Apo-2リガンドに関して実質的に相同である調製物を得るには、組換え細胞タンパク又はポリペプチドからApo-2リガンドを精製することが通常必要である。第一段階として、培地又は溶菌液を遠心分離して粒状の細胞屑を除去することができる。ついで、Apo-2リガンドを、汚染した可溶性タンパク質及びポリペプチドから、適切な精製手順の例である次の手順により精製される:イオン交換カラムでの分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカ又はカチオン交換樹脂、例えばDEAE又はCM;クロマトフォーカシング;SDS-PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えばセファデックスG-75を用いるゲル濾過;及びIgGのような汚染物を除くプロテインAセファロースカラムである。
好ましい実施態様では、Apo-2リガンドはアフィニティークロマトグラフィーによって精製される。残基が欠失され、挿入され、又は置換されたApo-2リガンド断片又は変異体は、その変異によってしばしば惹起される実質的な性質変化を考慮に入れて、天然Apo-2リガンドと同じようにして回収することができる。例えば、他のタンパク質又はポリペプチド、例えば細菌性もしくはウイルス性抗原とのApo-2リガンド融合体の調製は精製を容易にする;抗原に対する抗体を含む免疫アフィニティーカラムを、融合ポリペプチドを吸着させるために使用することができる。
【0079】
例えばフェニルメチルスルホニルフルオライド(PMSF)のようなプロテアーゼインヒビターもまた精製の間のタンパク分解を阻害するのに有用であり、偶発的な汚染物質の成長を防止するために抗生物質を含めることができる。天然Apo-2リガンドに適切な精製方法は、組換え細胞培養の発現の際におけるApo-2リガンド又はその変異体の特性の変化の起因となる改変が必要となることは、当業者であれば分かるであろう。
このような精製工程では、回収されたApo-2Lを二価金属イオン含有溶液又は一又は複数の二価金属イオンを含有する精製物質(例えばクロマトグラフィー媒体又は支持体)へ曝露することが望ましいであろう。好ましい実施態様では、二価金属イオン及び/又は還元剤は、Apo-2Lの精製又は回収の間に使用される。場合によっては、DTT又はBMEのような二価金属イオン及び還元剤の両方を、Apo-2Lの精製又は回収の間に使用してもよい。精製又は回収の間に二価金属イオンを使用することは、Apo-2L三量体の安定性を提供するか、あるいは細胞培養段階の間に形成されるApo-2L三量体を維持すると考えられる。
【0080】
また、以下の記載は一又は複数の化学基に共有的に結合した(以下「抱合された(conjugated)」)Apo-2リガンドを製造する方法に関する。本発明のApo-2L抱合体に使用するのに適した化学基は好ましくは有意に毒性又は免疫原性ではない。化学基は場合によっては保存することができ保存に適した条件下で使用できるApo-2L抱合体を製造するために選択される。ポリペプチドに抱合されうる様々な例示的化学基が当該分野で知られており、例えば糖タンパク質に天然に生じる炭水化物のような炭水化物、ポリグルタミン、及び非タンパク様ポリマー、例えばポリオールが含まれる(米国特許第6245901号を参照)。
例えばポリオールは、上掲の国際公開93/00109に開示されているように、リジン残基を含む一又は複数のアミノ酸残基においてApo-2Lなどのポリペプチドに抱合されうる。用いられるポリオールは任意の水溶性ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーとでき、直鎖又は分枝鎖を有しうる。好適なポリオールには一又は複数のヒドロキシル位置で1から4の炭素を有するアルキル基のような化学基が置換されているものが含まれる。典型的には、ポリオールはポリ(アルキレングリコール)、例えばポリ(エチレングリコール)(PEG)であり、よって記載を簡単にするために、以下の議論においては、用いるポリオールがPEGである例示的な実施態様に関するものとし、ポリペプチドにポリオールを抱合させる方法を「ペグ化(pegylation)」と称する。しかし、当業者であれば、他のポリオール、例えばポリ(プロピレングリコール)及びポリエチレン-ポリプロピレングリコールコポリマーを、PEGに対してここに記載した抱合法を使用して用いることができることは理解できるであろう。
【0081】
Apo-2Lのペグ化に用いられるPEGの平均分子量は変動し得、典型的には約500から約30000ダルトン(D)の範囲でありうる。好ましくは、PEGの平均分子量は約1000から約25000Dであり、より好ましくは約1000から約5000Dである。一実施態様では、ペグ化は約1000Dの平均分子量を持つPEGを用いて実施される。場合によっては、PEGホモポリマーは未置換であるが、一端にアルキル基が置換されていてもよい。好ましくは、アルキル基はC1−C4アルキル基、最も好ましくはメチル基である。PEG調製物は商業的に入手可能であり、典型的には本発明において使用するのに適したPEG調製物は平均分子量に応じて販売されている非均一調製物である。例えば、市販のPEG(5000)調製物は典型的には分子量が僅かに変動し、通常は±500Dの分子を含む。
本発明のApo-2リガンドは単量体形態又は三量体形態(3つの単量体を含む)等、様々な形態でありうる。場合によっては、Apo-2L三量体は、PEG分子が三量体Apo-2Lを構成する3つの単量体の1つ、2つ、又は全てに結合又は抱合されるようにペグ化される。そのような実施態様では、用いられるPEGは約1000から約5000Dの平均分子量を有するのが好ましい。また、Apo-2L三量体は「部分的に」ペグ化され得、つまり、三量体を構成する三の単量体の一又は二だけがPEGに結合又は抱合される。
【0082】
タンパク質をペグ化するための様々な方法が当該分野で知られている。PEGに抱合したタンパク質を製造するための特定の方法には、米国特許第4179337号、米国特許第4935465号及び米国特許第5849535号に記載された方法が含まれる。典型的には、タンパク質は、主に反応条件、ポリマーの分子量等々に応じて、ポリマーの末端反応性基にタンパク質のアミノ酸残基の一又は複数を介して共有的に結合される。反応性基を有するポリマーはここでは活性化ポリマーと命名する。反応性基はタンパク質の遊離のアミノ又は他の反応性基と選択的に反応する。PEGポリマーは無作為な形又は部位特異的な形の何れかの形でタンパク質上のアミノ又は他の反応性基に結合しうる。しかし、最適な結果を得るために、選択される反応性基のタイプと量、並びに用いられるポリマーのタイプは、反応性基がタンパク質上の余りに多くの特に活性な基と反応することを避けるために用いられる特定のタンパク質又はタンパク質変異体に依存するものと理解される。これは完全に避けることができないであろうため、タンパク質1モル当たり一般に約0.1から1000モル、好ましくは2から200モルの活性化ポリマーを、タンパク質濃度に応じて用いることが推奨される。タンパク質1モル当たりの活性化ポリマーの最終量は、最適な活性を維持し、同時に可能ならばタンパク質の循環半減期を最適化するためのバランス量である。
さらに、本明細書中に記載のApo2Lは、当分野に公知の技術を用いてロイシンジッパー配列に結合又は融合させてもよい。
【0083】
また、デスレセプター抗体及びCD20抗体の産生方法をここに記載する。抗体の製造又はスクリーニングのために用いる抗原は、例として所望のエピトープを含む抗原ないしはその一部の可溶性形態であってもよい。あるいは又はさらに、抗原をその細胞表面上に発現する細胞を抗体の製造又はスクリーニングに用いることができる。抗体の製造に有用な抗原の他の形態は当業者に明らかである。
【0084】
(i) ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連する抗原とアジュバントを複数回皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射することにより動物に産生される。免疫化される種において免疫原性であるタンパク質、例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、又は大豆トリプシンインヒビターに関連抗原を、二官能性又は誘導体形成剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基による抱合)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基による)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2、又はRとR1が異なったアルキル基であるR1N=C=NRにより抱合させることが有用である。
動物を、例えばタンパク質又はコンジュゲート100μg又は5μg(それぞれウサギ又はマウスの場合)を完全フロイントアジュバント3容量と併せ、この溶液を複数部位に皮内注射することによって、抗原、免疫原性コンジュゲート、又は誘導体に対して免疫化する。1ヶ月後、該動物を、完全フロイントアジュバントに入れた初回量の1/5ないし1/10のペプチド又はコンジュゲートを用いて複数部位に皮下注射することにより、追加免疫する。7ないし14日後に動物を採血し、抗体価について血清を検定する。動物は、力価がプラトーに達するまで追加免疫する。好ましくは、動物は、同じ抗原のコンジュゲートであるが、異なったタンパク質にコンジュゲートさせた、及び/又は異なった架橋剤によってコンジュゲートさせたコンジュゲートで追加免疫する。コンジュゲートはまたタンパク融合として組換え細胞培養中で調製することもできる。また、ミョウバンのような凝集化剤が、免疫反応の増強のために好適に使用される。
【0085】
(ii) モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を意味する、すなわち、集団を構成する個々の抗体が、一般にわずかながら存在する自然に生じる突然変異体を除いて同一である。よって、「モノクローナル」との修飾詞は、別個の抗体の混合物ではなく、抗体の特性を示すものである。
例えば、モノクローナル抗体は、Kohlerら, Nature, 256:495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて作製でき、又は組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)によって作製することができる。
ハイブリドーマ法においては、マウス又はその他の適当な宿主動物、例えばハムスターを上記したようにして免疫し、免疫化に用いられるタンパク質と特異的に結合する抗体を生産するか又は生産することのできるリンパ球を導き出す。別法として、リンパ球をインビトロで免疫することもできる。次に、リンパ球を、ポリエチレングリコールのような適当な融剤を用いて骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice,59-103頁(Academic Press, 1986))。
このようにして調製されたハイブリドーマ細胞を、融合していない親の骨髄腫細胞の増殖または生存を阻害する一又は複数の物質を好ましくは含む適当な培地に蒔き、増殖させる。例えば、親の骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニジンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠失するならば、ハイブリドーマのための培地は、典型的には、HGPRT欠失細胞の増殖を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含有するであろう(HAT培地)。
【0086】
好ましい骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの生産を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性である細胞である。これらの中でも、好ましい骨髄腫株化細胞は、マウス骨髄腫系、例えば、ソーク・インスティテュート・セル・ディストリビューション・センター、San Diego, California USAから入手し得るMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍、及びアメリカ培養細胞系統保存機関、Manassas, Virginia USAから入手し得るSP-2又はX63-Ag8-653細胞から誘導されたものである。ヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫株化細胞もまたヒトモノクローナル抗体の産生のために開示されている(Kozbor, J.Immunol., 133:3001 (1984);Brodeurら, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,51-63頁(Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
ハイブリドーマ細胞が生育している培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又はインビトロ結合検定、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着検定(ELISA)によって測定する。
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunsonほか, Anal. Biochem., 107:220 (1980)のスキャッチャード分析法によって測定することができる。
所望の特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が確定された後、該クローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法により増殖させることができる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, 59-103頁(Academic Press, 1986))。この目的に対して好適な培地には、例えば、D-MEM又はRPMI-1640培地が包含される。加えて、該ハイブリドーマ細胞は、動物において腹水腫瘍としてインビボで増殖させることができる。
【0087】
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA-Sepharose、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィーのような常套的な免疫グロブリン精製法により、培地、腹水、又は血清から好適に分離される。
モノクローナル抗体をコードしているDNAは、常法を用いて(例えば、マウスの重鎖及び軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)即座に単離され配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび単離されたならば、DNAを発現ベクター中に入れ、ついでこれを、そうしないと免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞のような宿主細胞中にトランスフェクトし、組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体の合成を達成することができる。抗体をコードするDNAの細菌中での組換え発現に関する概説論文には、Skerraら, Curr. Opinion in Immunol., 5:256-262(1993)及びPlueckthum, Immunol. Revs., 130:151-188(1992)がある。
【0088】
更なる実施態様では、抗体又は抗体断片は、McCaffertyら, Nature, 348:552-554 (1990)に記載された技術を使用して産生される抗体ファージライブラリから単離することができる。Clacksonら, Nature, 352:624-628 (1991)及び Marksら, J.Mol.Biol., 222:581-597 (1991)は、ファージライブラリを使用したマウス及びヒト抗体の単離を記述している。続く刊行物は、鎖混合による高親和性(nM範囲)のヒト抗体の生産(Marksら, Bio/Technology, 10:779-783(1992))、並びに非常に大きなファージライブラリを構築するための方策としてコンビナトリアル感染とインビボ組換え(Waterhouseら, Nuc.Acids.Res., 21:2265-2266(1993))を記述している。従って、これらの技術はモノクローナル抗体の分離に対する伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ法に対する実行可能な別法である。
DNAはまた、例えば、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード化配列を、相同的マウス配列に代えて置換することにより(米国特許第4,816,567号;Morrisonら, Proc.Nat.Acad.Sci.,USA,81:6851(1984))、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部又は一部を共有結合させることで修飾できる。
典型的には、このような非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインに置換され、又は抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインに置換されて、抗原に対する特異性を有する1つの抗原結合部位と異なる抗原に対する特異性を有するもう一つの抗原結合部位とを含むキメラ二価抗体を作り出す。
【0089】
(iii) ヒト化抗体
非ヒト抗体をヒト化する方法は従来からよく知られている。好ましくは、ヒト化抗体には非ヒト由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入されている。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と呼ばれる。ヒト化は、本質的にはヒト抗体の該当する高頻度可変領域配列を置換することによりウィンターと共同研究者の方法(Jonesほか, Nature, 321:522-525 (1986)、Riechmannほか, Nature, 332:323-327 (1988)、Verhoeyenほか, Science, 239:1534-1536(1988))を使用して実施することができる。よって、このような「ヒト化」抗体は、完全なヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の該当する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は、典型的にはいくつかの高頻度可変領域残基及び場合によってはいくらかのFR残基が齧歯類抗体の類似部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。
抗原性を低減するには、ヒト化抗体を生成する際に使用するヒトの軽重両方の可変ドメインの選択が非常に重要である。「ベストフィット法」では、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列を既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリ全体に対してスクリーニングする。次に齧歯動物のものと最も近いヒト配列をヒト化抗体のヒトフレームワーク領域(FR)として受け入れる(Simsほか, J. Immunol., 151:2296 (1993);Chothiaら, J. Mol. Biol., 196:901(1987))。他の方法では、軽又は重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体全てのコンセンサス配列から誘導される特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークをいくつかの異なるヒト化抗体に使用できる(Carterほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992);Prestaほか, J. Immunol., 151:2623(1993))。
【0090】
更に、抗体を、抗原に対する高親和性や他の好ましい生物学的性質を保持してヒト化することが重要である。この目標を達成するべく、好ましい方法では、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析工程を経てヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推測三次元立体配座構造を図解し、表示するコンピュータプログラムは購入可能である。これら表示を見ることで、候補免疫グロブリン配列の機能における残基のありそうな役割の分析、すなわち候補免疫グログリンの抗原との結合能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、例えば標的抗原に対する親和性が高まるといった、望ましい抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエント及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般的に、高頻度可変領域残基は、直接的かつ最も実質的に抗原結合性に影響を及ぼしている。
【0091】
(iv) ヒト抗体
ヒト化のための別法により、ヒト抗体を生産することができる。例えば、内因性の免疫グロブリン産生がなくともヒト抗体の全レパートリーを免疫化することで産生することのできるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作ることが今は可能である。例えば、キメラ及び生殖系列突然変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(JH)遺伝子の同型接合除去が内因性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記載されている。このような生殖系列突然変異体マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子列の転移は、抗原投与時にヒト抗体の産生をもたらす。Jakobovitsら, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 90:2551 (1993);Jakobovitsら, Nature 362:255-258 (1993);Bruggermanら, Year in Immuno., 7:33 (1993);米国特許第5,591,669号、同5,589,369号及び同5,545,807号を参照されたい。
【0092】
あるいは、ファージディスプレイ技術(McCaffertyら, Nature 348:552-553(1990))を、非免疫化ドナーからの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、インビトロでヒト抗体及び抗体断片を産出させるために使用することができる。この技術によれば、抗体Vドメイン遺伝子は、繊維状バクテリオファージ、例えばM13の大きい又は小さいコートタンパク質遺伝子のいずれかにおいてイン-フレームをクローンする。繊維状粒子がファージゲノムの一本鎖のDNAコピーを含むので、抗体の機能特性に基づいた選択により、これらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択がなされる。よって、ファージはB細胞の特性のいくつかを模倣している。ファージディスプレイは多様な形式で行うことができる;例えばJohnson, Kevin S. 及びChiswell, David J., Current Opinion in Structural Biology 3:564-571(1993)を参照のこと。V-遺伝子セグメントのいくつかの供給源がファージディスプレイのために使用可能である。Clacksonら, Nature, 352:624-628(1991)は、免疫化されたマウス脾臓から得られたV遺伝子の小ランダム組合せライブラリーからの抗オキサゾロン抗体の異なった配列を単離した。非免疫化ヒトドナーからのV遺伝子のレパートリーを構成可能で、抗原(自己抗原を含む)とは異なる配列の抗体を、Marksら, J. Mol. Biol. 222:581-597(1991)、又はGriffithら, EMBO J. 12:725-734(1993)に記載の技術に本質的に従って単離することができる。また、米国特許第5,565,332号及び同5,573,905号を参照のこと。
またヒト抗体は、活性化B細胞によりインビトロで生産してもよい(例えば米国特許第5,567,610号及び同5,229,275号を参照)。
【0093】
(v) 抗体断片
抗体断片を生産するために様々な技術が開発されている。伝統的には、これらの断片は、完全な抗体のタンパク分解性消化を介して誘導されていた(例えば、Morimotoら, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992)及びBrennanら, Science, 229:81(1985)を参照されたい)。しかし、これらの断片は現在は組換え宿主細胞により直接生産することができる。例えば、抗体断片は上述において検討した抗体ファージライブラリーから分離することができる。別法として、Fab'-SH断片は大腸菌から直接回収することができ、化学的に結合してF(ab')2断片を形成することができる(Carterら, Bio/Technology 10:163-167(1992))。他のアプローチ法では、F(ab')2断片を組換え宿主細胞培養から直接分離することができる。抗体断片の生産のための他の方法は当業者には明らかであろう。他の実施態様では、選択抗体は単鎖Fv断片(scFV)である。国際公開93/16185;米国特許第5,571,894号;及び米国特許第5,587,458号を参照のこと。また、抗体断片は、例えば米国特許第5,641,870号に記載されているような「直鎖状抗体」であってもよい。このような直線状の断片は単特異的又は二重特異的であってもよい。
【0094】
(vi) 二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有する抗体である。例示的な二重特異性抗体は、CD20、DR4又はDR5レセプターの2つの異なるエピトープに結合しうる。また、二重特異性抗体はB細胞に細胞障害剤を局在化するためにも使用されうる。これらの抗体はB細胞マーカー結合アーム及び細胞障害剤(例えば、サポリン(saporin)、抗インターフェロン-α、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メトトレキセート又は放射性同位体ハプテン)と結合するアームを有する。二重特異性抗体は全長抗体又は抗体断片(例えばF(ab')2二重特異性抗体)として調製することができる。
二重特異性抗体を作成する方法は当該分野において既知である。全長二重特異性抗体の伝統的な産生は二つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の同時発現に基づき、ここで二つの鎖は異なる特異性を持っている(Millsteinら, Nature, 305:537-539(1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖が無作為に取り揃えられているため、これらのハイブリドーマ(四部雑種)は10個の異なる抗体分子の可能性ある混合物を産生し、そのうちただ一つが正しい二重特異性構造を有する。通常、アフィニティークロマトグラフィー工程により行われる正しい分子の精製は、かなり煩わしく、生成物収率は低い。同様の方法が国際公報93/8829及びTrauneckerら、EMBO J. 10:3655-3659(1991)に開示されている。
【0095】
異なったアプローチ法では、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗原−抗体結合部位)を免疫グロブリン定常ドメイン配列と融合させる。該融合は好ましくは、少なくともヒンジの一部、CH2及びCH3領域を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合である。軽鎖の結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)を、融合の少なくとも一つに存在させることが望ましい。免疫グロブリン重鎖の融合、望まれるならば免疫グロブリン軽鎖をコードしているDNAを、別個の発現ベクター中に挿入し、適当な宿主生物に同時形質移入する。これにより、コンストラクトに使用される三つのポリペプチド鎖の等しくない比率が最適な収率をもたらす態様において、三つのポリペプチド断片の相互の割合の調節に大きな融通性が与えられる。しかし、少なくとも二つのポリペプチド鎖の等しい比率での発現が高収率をもたらすとき、又はその比率が特に重要性を持たないときは、2または3個全てのポリペプチド鎖のためのコード化配列を一つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0096】
このアプローチ法の好適な実施態様では、二重特異性抗体は、第一の結合特異性を有する一方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖と他方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第二の結合特異性を提供する)とからなる。二重特異性分子の半分にしか免疫グロブリン軽鎖がないと容易な分離法が提供されるため、この非対称的構造は、所望の二重特異性化合物を不要な免疫グロブリン鎖の組み合わせから分離することを容易にすることが分かった。このアプローチ法は、国際公報94/04690に開示されている。二重特異性抗体を産生する更なる詳細については、例えばSureshら, Methods in Enzymology, 121:210 (1986)を参照されたい。米国特許第5,731,168号に記載された他のアプローチ法によれば、一対の抗体分子間の界面を操作して組換え細胞培養から回収されるヘテロダイマーのパーセントを最大にすることができる。好適な界面は抗体定常ドメインのCH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1抗体分子の界面からの一又は複数の小さいアミノ酸側鎖がより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)と置き換えられる。大きな側鎖と同じ又は類似のサイズの相補的「キャビティ」を、大きなアミノ酸側鎖を小さいもの(例えばアラニン又はスレオニン)と置き換えることにより第2の抗体分子の界面に作り出す。これにより、ホモダイマーのような不要の他の最終産物に対してヘテロダイマーの収量を増大させるメカニズムが提供される。
【0097】
二特異性抗体とは架橋抗体や「ヘテロ抱合抗体」を含む。例えば、ヘテロ抱合体の一方の抗体がアビジンと結合し、他方はビオチンと結合していても良い。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせること(米国特許第4,676,980号)及びHIV感染の治療(国際公報91/00360、国際公報92/200373及び欧州特許第03089号)等の用途が提案されている。ヘテロ抱合抗体は適当な架橋方法によって生成できる。当技術分野においては、適切な架橋剤は周知であり、それらは複数の架橋法と共に米国特許第4,676,980号などに記されている。
抗体断片から二重特異性抗体を産生する技術もまた文献に記載されている。例えば、化学結合を使用して二重特異性抗体を調製することができる。Brennanら, Science, 229:81 (1985);Shalaby 等, J. Exp. Med., 175: 217-225 (1992)。
【0098】
組換え細胞培養から直接的に二重特異性抗体断片を作成し分離する様々な方法もまた記述されている。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを使用して生産された。Kostelnyら, J.Immunol., 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合により二つの異なった抗体のFab'部分に結合させられた。抗体ホモダイマーはヒンジ領域で還元されてモノマーを形成し、ついで再酸化させて抗体ヘテロダイマーを形成する。この方法はまた抗体ホモダイマーの生産に対して使用することができる。Hollingerら, Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により記述された「ダイアボディ」技術は二重特異性抗体断片を作成する別のメカニズムを提供した。断片は、同一鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするのに十分に短いリンカーにより軽鎖可変ドメイン(VL)に重鎖可変ドメイン(VH)を結合してなる。従って、一つの断片のVH及びVLドメインは他の断片の相補的VL及びVHドメインと強制的に対形成させられ、2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)ダイマーを使用する他の二重特異性抗体断片製造方策もまた報告されている。Gruberら, J.Immunol., 152:5368 (1994)を参照されたい。
二価より多い抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tuttら J.Immunol. 147:60(1991)。3又はそれ以上の抗原結合部位を有する抗体は、国際公開公報01/77342 (Miller及びPresta)に記載されており、出典明記によって特別に本明細書中に組み込まれる。
【0099】
本明細書中の方法に用いる又は製造品に具備される抗体は場合によって細胞障害性剤とコンジュゲートされる。
そのような抗体-細胞障害性剤コンジュゲートの生成に有用な化学療法剤は前述している。
また、抗体と一つ以上の小分子毒素のコンジュゲート、例えばカリケアミシン(calicheamicin)、マイタンシン(maytansine)(米国特許第5,208,020号)、トリコテン(trichothene)及びCC1065もここにおいて考慮される。本発明の一実施態様では、抗体は、一つ以上のマイタンシン(maytansine)分子(例えば、抗体分子当たり約1から約10のマイタンシン分子)と共役している。マイタンシンは、例えばMay-SH3へ還元されるMay-SS-Meへ変換され、修飾抗体(Chariら,Cancer Research 52:127-131(1992))と反応してマイタンシノイド(maytansinoids)−抗体コンジュゲートを生じる。
【0100】
あるいは、抗体は、一つ以上のカリケアマイシン(calicheamicin)分子を包含する。抗生物質のカリケアマイシンファミリーは、サブピコモル濃度で、二重鎖DNAの割れ目を作ることができる。使用されるであろうカリケアマイシンの構造類似体は、限定されるものではないが、γ1I、α2I、α3I、N−アセチルγ1I、PSAG及びθI1(Hinmanら, Cancer Research 53:3336-3342(1993)及びLodeら,Cancer Research 58:2925-2928(1998))を含む。
使用可能な酵素活性毒及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖(シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa))、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン(sarcin)、アレウライツ・フォルディイ(Aleurites fordii)プロテイン、ジアンシン(dianthin)プロテイン、フィトラッカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)プロテイン(PAPI、PAPII及びPAP-S)、モモルディカ・キャランティア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン、サパオナリア(sapaonaria)オフィシナリスインヒビター、ゲロニン(gelonin)、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコセセンス(tricothecenes)が含まれる。例えば、1993年10月28日に公開の国際公開公報93/21232を参照のこと。
【0101】
本発明は、更に、抗体と核酸分解性活性(例えば、リボムクレアーゼ又はDNAエンドヌクレアーゼ、例えばデオキシリボヌクレアーゼ;DNA分解酵素)を有する化合物との抗体コンジュゲートについて考慮する。
種々の放射性核種が放射性コンジュゲートアンタゴニストないしは抗体の生成に利用できる。具体例にはAt211、I131、I125、Y90、Re186、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射線各種が含まれる。
抗体と細胞障害剤のコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、スクシインミジル1-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCl)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン-2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製される。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238:1098(1987)に記載されているようにして調製することができる。炭素-14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレン-トリアミン五酢酸(MX-DTPA)がアンタゴニスト又は抗体に放射性ヌクレオチドをコンジュゲートするためのキレート剤の例である。国際公開公報94/11026を参照されたい。リンカーは、細胞内で細胞毒性薬剤を放出を容易にする「切断可能なリンカー」でもよい。例えば、酸性の易動性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカー(Chari 等 Cancer Research 52: 127-131 (1992))を用いてもよい。
【0102】
あるいは、抗体及び細胞障害性剤を含んでなる融合タンパク質を、例えば組み換え技術又はペプチド合成で製造してもよい。
また、本発明の抗体を、プロドラッグ(例えばペプチジル化学療法剤、国際公報81/01145を参照)を活性な抗癌剤に転化させるプロドラッグ活性化酵素にコンジュゲートさせてもよい。例えば国際公報88/07378及び米国特許第4,975,278号を参照されたい。
そのようなコンジュゲートの酵素成分には、より活性な細胞毒形態に転化するように、プロドラッグに作用し得る任意の酵素が含まれる。
この発明の方法に有用な酵素には、限定するものではないが、ホスファート含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なアルカリ性ホスファターゼ;スルファート含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なアリールスルファターゼ;非毒性5-フルオロシトシンを抗癌剤5-フルオロウラシルに転化するのに有用なシトシンデアミナーゼ;プロテアーゼ、例えばセラチアプロテアーゼ、サーモリシン、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼ及びカテプシン(例えば、カテプシンB及びL)で、ペプチド含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なもの;D-アミノ酸置換基を含有するプロドラッグの転化に有用なD-アラニルカルボキシペプチダーゼ;炭水化物切断酵素、例えばグリコシル化プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なノイラミニダーゼ及びβガラクトシダーゼ;βラクタムで誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に転化させるのに有用なβラクタマーゼ;及びペニシリンアミダーゼ、例えばそれぞれフェノキシアセチル又はフェニルアセチル基で、それらのアミン性窒素において誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に転化するのに有用なペニシリンVアミダーゼ又はペニシリンGアミダーゼが含まれる。あるいは、「アブザイム」としてもまた公知の酵素活性を有する抗体を、遊離の活性薬剤に本発明のプロドラッグを転化させるために使用することもできる(例えば、Massey, Nature 328:457-458(1987)を参照)。抗体-アブザイムコンジュゲートは、ここで記載されているようにして、腫瘍細胞個体群にアブザイムを送達するために調製することができる。
【0103】
この発明の酵素は、当該分野においてよく知られている技術、例えば上で検討したヘテロ二官能性架橋試薬を使用することにより、抗体に共有的に結合させることができる。あるいは、抗体の少なくとも抗原結合領域を本発明の酵素の少なくとも機能的に活性な部位に結合せしめてなる融合タンパク質を、当該技術においてよく知られている組換えDNA技術を使用して作成することができる(例えばNeubergerら, Nature 312:604-608(1984)参照。
抗体の他の修飾がここで検討される。例えば、抗体は、様々な非タンパク質性(nonproteinaceous)のポリマー、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン類、又はポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのコポリマーの1つに結合させてもよい。
抗体の血清半減期を延長するために、例として米国特許第5739277号に記載されているように抗体(特に抗体断片)内にサルベージレセプター結合エピトープを組み込んでもよい。ここで用いる、「サルベージレセプター結合エピトープ」は、IgG分子のインビボ血清半減期延長に関与するIgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4)のFc領域のエピトープを表す。あるいは又はさらに、変化したFcRn結合を有する変異体を作製するために抗体のFc領域のアミノ酸配列を変更することによって、血清半減期を延長又は短縮してもよい。変化したFcRn結合及び/又は血清半減期を有する抗体は国際公開公報00/42072(Presta, L.)に記載される。
【0104】
また、Apo2L/TRAIL、デスレセプター抗体、及び/又はCD20抗体を含有する製剤が、本発明により提供される。このような製剤は、治療的投与のみならず、特に貯蔵に適している。製剤は、既知の技術で調製することが可能である。例えば、製剤はゲル濾過カラムでのバッファー交換によって調製することが可能である。
典型的には、適量の許容可能な塩類又は担体が、製剤を等浸透圧にするために製剤に使用される。製薬的に許容可能な担体の例には、生理食塩水、リンガー液及びデキストロース液が含まれる。製剤のpHは、好ましくは約6〜約9、さらに好ましくは約7〜約7.5である。例えばApo-2リガンド、デスレセプター抗体及び/又はCD20抗体の濃度及び投与経路よっては、ある種の担体がより好ましいことは、当業者には明らかである。
【0105】
治療用製剤は、凍結乾燥製剤、水溶液又は水性分散液の形態で、任意の担体、賦形剤又は安定剤(Remington's Pharmaceutical Sciences, 16版, A. Osol, A.編 (1980))と、適切な純度を有する所望の分子を混合することにより調製される。許容される担体、賦形剤、又は安定化剤は、好ましくは用いられる投与量及び濃度で受容者に非毒性であり、トリス(Tris)、HEPES、PIPES、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などの緩衝剤、アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベンのようなアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;及び/又はTWEENTM、PLURONICSTM、又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
【0106】
このような担体の更なる例は、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばグリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩、又は電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、コロイダルシリカ、マグネシウムトリシリケート、ポリビニルピロリドン、及びセルロースベースの物質である。局所用の担体又はゲルベースの形態は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース又はメチルセルロース等の多糖類、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール、及びモクロウアルコールを含む。あらゆる投与について、従来のデポー形態が好適に用いられる。このような形態は、例えば、マイクロカプセル、ナノ-カプセル、リポソーム、硬膏剤、吸入形態、鼻スプレー、舌下錠、及び徐放性製剤を含む。
インビボ投与に使用される製剤は滅菌されていなくてはならない。これは、凍結乾燥及び再構成の前又は後に、滅菌フィルター膜を通す濾過により容易に達成される。製剤は凍結乾燥形態又は全身投与される場合には溶液中に貯蔵される。凍結乾燥形態にある場合、典型的には使用時に適当な希釈剤と再構成するために他の成分と組み合わせて処方される。液体製剤の例は、皮下注射用の1回投与バイアルに充填された無菌の、透明な、無色の保存料未添加(unpreserved)溶液である。
【0107】
治療用製剤は、一般的に無菌のアクセスポート、例えば、静脈内溶液バッグ又は皮下注射針で貫通可能なストッパーを備えたバイアルに入れられる。製剤は、好ましくは静脈内(i.v.)、皮下(s.c.)、又は筋肉内(i.m.)の繰り返し注射として、あるいは鼻内又は肺内送達に適したエアロゾル製剤として投与される(肺内送達については、例えば欧州特許第257956号参照)。
また、Apo2L/TRAIL、デスレセプター抗体及びCD20抗体は、徐放性調製物の形態で投与することが可能である。徐放性調製物の適切な例には、タンパク質を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスが含まれ、このマトリクスは、例えばフィルム又はマイクロカプセル等の成形品の形態である。徐放性マトリクスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、Langerら, J. Biomed. Mater. Res. 15: 167-277 (1981)及びLanger, Chem. Tech. 12: 98-105 (1982)に記載されたポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3773919号、欧州特許第58481号)、L-グルタミン酸とガンマ-エチル-L-グルタメートのコポリマー(Sidmanら, Biopolymers 22: 547-556 (1983))、非分解性エチレン-酢酸ビニル(Langerら, 上掲)、分解性の乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOT(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注入可能な微小球)、及びポリ-D-(−)-3-ヒドロキシ酪酸(欧州特許第133988号)が含まれる。
【0108】
ここに記載されたApo2L/TRAIL、デスレセプター抗体及びCD20抗体は、種々の治療的に応用される。これらの応用は、種々の癌及び免疫関連疾患の治療の方法である。ここに記載した様々な病理状態の哺乳動物における診断は、熟練した実務者によって行うことが可能である。例えば、哺乳動物の癌又は免疫関連疾患の診断と検出を可能にする診断技術は、当該分野で利用可能である。例えば、癌は、限定されるものではないが、触診(法)、血液分析、X線、NMR等々を含む技術を通して同定され得る。また、免疫関連疾患は容易に同定できる。全身性エリテマトーデスでは、疾患の中心媒介物は自己タンパク質/組織に対する自己反応性抗体、及び引き続き起こる免疫媒介炎症の産生である。腎臓、肺、骨格筋系、皮膚と粘膜、眼、中枢神経系、心臓血管系、胃腸管、骨髄及び血液を包含する複数の臓器と系が、臨床的に影響を受ける。リウマチ様関節炎(RA)は、主に複数の関節の滑膜に係る慢性全身性自己免疫疾患であり、結果として関節軟骨に傷害が生じる。病原はTリンパ球依存であり、リウマチ因子、自己IgGに対する自己抗体の生成を伴い、結果として関節体液及び血液において高レベルに達する免疫複合体が形成される。関節におけるこれらの複合体は、滑膜へのリンパ球及び単球の顕著な浸潤と、続いての顕著な滑膜変化を誘発しうる;多数の好中球の添加により同様の細胞で浸潤されるならば関節空間/体液でもである。影響を受けている組織は、多くの場合対称的パターンで主に関節である。しかしながら、2つの主な形態の関節外疾患も生じる。一方の形態は進行中の進行性関節疾患及び肺線維症の局部的障害、血管炎、及び皮膚潰瘍を伴う関節外障害の発達である。関節外疾患の第2の形態はいわゆるフェルティー症候群であり、RA疾患経路の末期、時々は関節疾患が鎮静した後に生じ、好中球減少、血小板減少及び脾腫大の存在に関与する。これは、梗塞、皮膚潰瘍及び壊疽の形成を伴う多数の器官及び血管炎に付随する。多くの場合、患者では、発病している関節上にある皮下組織にリウマチ様小結節が発達し;小結節は、混合炎症細胞浸潤に包囲された壊死性中心を有する。RAで生じる可能性のある他の徴候には:心外膜炎、胸膜炎、冠動脈炎、肺線維症を伴う間質性肺炎、乾性角結膜炎、及びリウマチ様小結節が含まれる。
【0109】
Apo2L/TRAIL、デスレセプター抗体及びCD20抗体は、周知の方法に従い、ボーラスとしての静脈内投与、又は一定期間にわたる連続的な注入、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、骨液内、くも膜腔内、経口、局所的、又は吸入の経路により投与できる。場合によっては、投与は、様々な市販の装置を使用するミニポンプでの注入によって実施することもできる。
Apo2L/TRAIL、デスレセプター抗体及びCD20抗体の投与の有効な用量とスケジュールは、経験的に決定することができ、そのような決定を行うことは当業者の技量の範囲にある。単独又は複数の用量が使用されうる。単独に使用されるApo2L/TRAILの効果的な用量又は量は一日当り約1μg/kgから約100mg/kg体重あるいはそれ以上までの範囲であると現在は考えられる。用量の種間スケーリングは、例えば、Mordentiら, Pharmaceut. Res., 8:1351(1991)に開示されているような当該分野で知られている方法で実施することができる。
【0110】
Apo2L/TRAILのインビボ投与が用いられる場合、正常な投与量は、投与経路に応じて、哺乳動物の体重当たり1日に約10ng/kgから100mg/kgまで、好ましくは約1μg/kg/日から10mg/kg/日である。特定の用量及び輸送方法の指針は文献に与えられている;例えば、米国特許第4657760号、第5206344号、又は第5225212号参照。異なる製剤が異なる治療用化合物及び異なる疾患に有効であること、例えば一つの器官又は組織を標的とする投与には、他の器官又は組織とは異なる方式で輸送することが必要であることが予想される。当業者であれば、投与されなければならないApo2L/TRAILの用量が、例えば、Apo2L/TRAILを受入れる哺乳動物、投与経路、及び哺乳動物に投与されている他の薬剤又は治療法に依存して変わりうることは理解できるであろう。
CD20抗体は、細胞障害性剤にコンジュゲートされていない、リツキシマブやヒト化2H7などの抗体であってもよい。非コンジュゲート抗体の好適な用量は、例えばおよそ20mg/m2からおよそ1000mg/m2の範囲である。一実施態様では、抗体の用量は、現在推奨されるリツキシマブの用量と異なる。CD20抗体の例示的な投与用量は、375mg/m2、週4ないし8回;又は1000mg、2回(例えば第1日目と第15日目)などである。
更なる治療法を本方法において使用することも考えられる。一又は複数の他の治療法には、これらに限定されるものではないが、当該技術分野において既知であり、前述のセクションIにおいてさらに詳細に定義された、放射線療法、サイトカイン、成長阻害剤、化学治療剤、細胞障害剤、チロシンキナーゼ阻害因子、ラスファルネシルトランスフェラーゼ阻害因子、血管形成阻害因子、及びサイクリン依存性キナーゼ阻害因子の投与が含まれる。
【0111】
例示的な治療用抗体には、抗-HER2抗体、例えばrhuMAb 4D5 (HERCEPTIN) (Carter 等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285-4289 (1992), 米国特許第5,725,856号);抗-IL-8 (St John 等, Chest, 103:932 (1993)、及び国際公開公報95/23865);抗-VEGF抗体、例えばヒト化及び/又は親和性成熟抗-VEGF抗体、例えばヒト化抗-VEGF抗体huA4.6.1 AVASTIN (Kim 等, Growth Factors, 7:53-64 (1992)、国際公開公報96/30046、及び1998年10月15日公開の国際公開公報98/45331);抗-PSCA抗体 (国際公開公報01/40309);抗-CD40抗体、例えばS2C6及びそのヒト化変異体(国際公開公報00/75348);抗-CD11a抗体、例えばRaptivaTM (米国特許第5,622,700号、国際公開公報 98/23761、Steppe 等, Transplant Intl. 4:3-7 (1991)、及びHourmant 等, Transplantation 58:377-380 (1994));抗-IgE抗体 (Presta 等, J. Immunol. 151:2623-2632 (1993)、及び国際公開公報95/19181;1998年2月3日発行の米国特許第5,714,338号、又は1992年2月25日発行の米国特許第5,091,313号、1993年3月4日公開の国際公開公報 93/04173、又は1998年6月30日出願の公開番号PCT/US98/13410、米国特許第5,714,338号);抗-CD18抗体 (1997年4月22日発行の米国特許第5,622,700号、又は1997年7月31日公開の国際公開公報 97/26912);抗-Apo-2レセプター抗体抗体 (1998年11月19日公開の国際公開公報 98/51793);抗-TNF-α抗体、例えばcA2 (REMICADE)、CDP571及びMAK-195 (1997年9月30日発行の米国特許第5,672,347号、Lorenz 等 J. Immunol. 156(4):1646-1653 (1996)、及びDhainaut 等 Crit. Care Med. 23(9):1461-1469 (1995)を参照);抗-組織因子(TF)抗体 (1994年11月9日に権利化された欧州特許第0 420 937号B1);抗-ヒトα4-β7 インテグリン抗体 (1998年2月19日公開の国際公開公報 98/06248);抗-EGFR抗体 (キメラ化又はヒト化225抗体、1996年12月19日公開の国際公開公報 96/40210);抗-CD3抗体、例えばOKT3 (1985年5月7日発行の米国特許第4,515,893号);抗-CD25又は抗-Tac抗体、例えばCHI-621 (SIMULECT)及びZENAPAX (1997年12月2日発行の米国特許第5,693,762号参照);抗-CD4抗体、例えばcM-7412抗体 (Choy 等 Arthritis Rheum 39(1):52-56 (1996));抗-CD52抗体、例えばCAMPATH-1H (Riechmann 等 Nature 332:323-337 (1988);抗-Fc receptor抗体、例えばFcRIに対するM22抗体、Graziano 等 J. Immunol. 155(10):4996-5002 (1995);抗-癌胎児性抗原(CEA)抗体、例えばhMN-14 (Sharkey 等 Cancer Res. 55(23Suppl): 5935s-5945s (1995);乳房上皮細胞に対する抗体、例えばhuBrE-3、hu-Mc 3及びCHL6 (Ceriani 等 Cancer Res. 55(23): 5852s-5856s (1995);及びRichman 等 Cancer Res. 55(23 Supp): 5916s-5920s (1995));大腸癌細胞に結合する抗体、例えばC242 (Litton 等 Eur J. Immunol. 26(1):1-9 (1996));抗-CD38抗体、例えばAT 13/5 (Ellis 等 J. Immunol. 155(2):925-937 (1995));抗-CD33抗体、例えばHu M195 (Jurcic 等 Cancer Res 55(23 Suppl):5908s-5910s (1995)及びCMA-676又はCDP771;抗-CD22抗体、例えばLL2又はLymphoCide (Juweid 等 Cancer Res 55(23 Suppl):5899s-5907s (1995);抗-EpCAM抗体、例えば17-1A (PANOREX);抗-GpIIb/IIIa抗体、例えばabciximab又はc7E3 Fab (REOPRO);抗-RSV抗体、例えばMEDI-493 (SYNAGIS);抗-CMV抗体、例えばPROTOVIR;抗-HIV抗体、例えばPRO542;抗-肝炎抗体、例えば抗-Hep B抗体OSTAVIR;抗-CA 125抗体 OvaRex;抗-イデオタイプGD3エピトープ抗体BEC2;抗-.v.3抗体 VITAXIN;抗-ヒト腎細胞癌抗体、例えばch-G250;ING-1;抗-ヒト17-1A抗体(3622W94);抗-ヒト結腸直腸腫瘍抗体(A33);GD3ガングリオシドに対する抗-ヒトメラノーマ抗体R24;抗-ヒト扁平上皮癌(SF-25);及び抗-ヒト白血病抗原(HLA)抗体、例えばSmart ID10及び抗-HLA DR抗体Oncolym (Lym-1)などがある。
【0112】
化学治療剤に対する調製法及び用量スケジュールは、製造者の指示に従って使用されるか、熟練した実務家により経験的に決定される。また、そのような化学療法の調製法及び用量スケジュールはChemotherapy Service, M.C.Perry編, Williams & Wilkins, Baltimore, MD(1992)にも記載されている。化学療法剤は、Apo2L/TRAIL、デスレセプター抗体、及び/又はCD20抗体の投与に先行し、又はその後に行い、又はそれらと共に与えられてもよい。
また、一又は複数のサイトカインないしは成長阻害剤を投与するのが有用なことも多い。
Apo2L/TRAIL、デスレセプター抗体、及びCD20抗体(及び一又は複数の他の治療剤)は同時的又は経時的に投与される。投与の後、インビトロで処理された細胞を分析することができる。インビボでの治療がなされた場合、治療された哺乳動物は熟練した実務家にとって周知の様々な方法によりモニターすることができる。例えば、壊死をアッセイするために癌細胞を病理検査することができ、又は血清の免疫系応答を分析することができる。
【0113】
RA及び他の自己免疫性疾患には、Apo2L/TRAIL、デスレセプター抗体、及び/又はCD20抗体を、任意の一又は複数の前述の定義の項目で列挙した免疫抑制剤、化学療法剤及び/又はサイトカイン;任意の一又は複数の疾患変更抗リウマチ薬(DMARDs)、例えばヒドロキシクロロクイン(hydroxycloroquine)、スルファサラジン、メトトレキサート、レフルノミド、アザチオプリン、Dペニシラミン、ゴールド(Gold)(経口)、ゴールド(筋注)、ミノサイクリン、シクロスポリン、ブドウ球菌タンパク質A免疫吸着;静脈免疫グロブリン(IVIG);非ステロイド性抗炎症薬(NSAID);糖質コルチコイド(例えば関節注射によるもの);副腎皮質ステロイド(例えばメチルプレドニゾロン及び/又はプレドニゾン);葉酸塩;抗腫瘍壊死因子(TNF)抗体、例えばエタネルセプト/ENBRELTM、インフリキシマブ/REMICADETM、D2E7(Knoll)又はCDP-870(Celltech);IL-1Rアンタゴニスト(例えばKineret);IL-10アンタゴニスト(例えばIlodecakin);血液凝固モジュレータ(例えばWinRho);IL-6アンタゴニスト/抗TNF(CBP 1011);CD40アンタゴニスト(例えばIDEC 131);Ig-Fcレセプターアンタゴニスト(MDX33);免疫修飾物質(例えばサリドマイド又はImmuDyn);抗CD5抗体(例えばH5g1.1);マクロファージインヒビター(例えばMDX 33);共刺激遮断薬(例えばBMS 188667又はTolerimab);補体阻害剤(例えばh5G1.1, 3E10又は抗腐食促進因子(DAF)抗体);又は、IL-2アンタゴニスト(zxSMART)と組み合わせてもよい。
【0114】
B細胞悪性腫瘍には、例えば、Apo2L/TRAIL、デスレセプター抗体、及び/又はCD20抗体を、化学療法剤;サイトカイン、例えばIL-2、IL-12などのリンホカイン、又は、インターフェロンα-2aなどのインターフェロン;他の抗体、例えば、ibritumomab tiuxetan (ZEVALIN(登録商標))、ヨウ素I131 tositumomab (BEXXARTM)、131I Lym-1 (ONCOLYMTM)、90Y-LYMPHOCIDETMなどの放射線標識した抗体;抗CD52抗体、例えば、alemtuzumab (CAMPATH-1HTM)、抗HLA-DR-β抗体、例として、apolizumab、抗CD80抗体(例えばIDEC-114)、epratuzumab、Hu1D10 (SMART 1D10TM)、CD19抗体、CD40抗体又はCD22抗体;免疫修飾物質(例えばサリドマイド又はImmuDyn);血管新生のインヒビター(例えば抗血管内皮性成長因子(VEGF)抗体、例として、AVASTINTM又はサリドマイド);イディオタイプワクチン(EPOCH);ONCO-TCSTM;HSPPC-96 (ONCOPHAGETM);リポソーム治療(例えばダウノルビシンクエン酸塩リポソーム)、などと組み合わせてもよい。
本発明の他の実施態様では、上記の癌及び免疫関連疾患の治療に有用な材料を具備する製造品が提供される。一態様では、製造品は、(a)CD20抗体を具備する容器(該抗体と薬剤的に受容可能な担体ないしは希釈剤を容器内に含有するのが好ましい);(b)Apo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体を具備する容器(該Apo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体と薬剤的に受容可能な担体ないしは希釈剤を容器内に含有するのが好ましい);及び(c)患者の癌又は免疫関連疾患を治療するための指示書を有するパッケージ挿入物を含んでなり、該指示書にCD20抗体及びApo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体が該疾患の治療に相乗効果を与えるのに効果的な量で該患者に投与されることを示している。
【0115】
すべての態様において、パッケージ挿入物は容器上にあるないしは容器に付属するものである。適切な容器には、例えばボトル、ガラス瓶、シリンジ等が含まれる。容器はガラス又はプラスチックなどの様々な材料で形成されうる。容器は癌又は免疫関連疾患の治療に有効な組成物を収容しており、滅菌した出入口を有している(例えば、容器は皮下注射針により貫通可能なストッパーを具備する静脈溶液用のバック又はガラス瓶であってよい)。組成物中の少なくとも1つの活性剤はCD20抗体、Apo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体である。ラベル又はパッケージ挿入物には、供給される抗体と任意の他の薬剤の用量と間隔に関する具体的な指導と共に、該組成物が治療に好適な患者又は被検体の癌又は免疫関連疾患を治療するために使用されることが示されている。更に、製造品は、製薬的に許容可能な希釈用バッファー、例えば、注入のための静菌性水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー液及び/又はデキストロース溶液を収容する付加的な容器を有してもよい。さらに、製造品は、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針及びシリンジを含む、市販及び使用者の観点から望ましい他の材料を更に有してもよい。
以下の実施例は例示するためにのみ提供されるものであって、いかなる意味においても本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書において引用した全ての特許及び参考文献の全体は、出典明記によりここに組み込まれる。
【実施例】
【0116】
実施例で言及されている市販試薬は、特に示さない限りは製造者の使用説明に従い使用した。ATCC受託番号により以下の実施例及び明細書全体を通して特定されている細胞の供給源はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、バージニアである。
【0117】
実施例1 Bリンパ腫細胞株におけるApo2L/TRAILレセプター発現の分析
ヒトリンパ腫細胞株でのApo2L/TRAILレセプター(DR4、DR5、DcR1及びDcR2)の細胞表面発現を検査するために、B細胞リンパ腫細胞株Ramos、Daudi、Raji及びBJAB (ATCC)を、DR4 (mAb 4H6.17.8;ATCC HB-12455)、DR5 (mAb 3H3.14.5;HB-12534)、DcR1 (mAb 6G9;Genentech, Inc.)、又はDcR2 (mAb 1G9、Genentech, Inc.)に特異的なモノクローナル抗体を用いたFACSによって分析した。RAMOS細胞について、再現性を高くするために2度分析を行った(RAMOS A及びB)。
図4に示すように、DR4及びDR5は、4つすべての細胞株において有意に(およそ0.5〜1.7単位の平均蛍光変化)発現が高く、DcR1及びDcR2は、より低いないしは最少レベル(およそ0〜0.3単位の平均蛍光変化)の発現であった。
【0118】
実施例2 Bリンパ腫細胞株におけるCD20発現の分析
ヒトリンパ腫細胞株でのCD20の細胞表面発現を検査するために、B細胞リンパ腫細胞株Ramos、Daudi、Raji及びBJAB (ATCC)を、CD20 (リツキサン(登録商標)、Genentech, Inc.)に特異的なモノクローナル抗体を用いたFACSによって分析した。Ramos細胞について、再現性を高くするために2度分析を行った(RAMOS A及びB)。
図5に示すように、およそ5〜15単位の平均蛍光変化で示されるように、4つすべての細胞株でCD20は高いレベルで発現していた。
【0119】
実施例3 SCIDマウスに予め定着させた皮下BJABリンパ腫腫瘍異種移植片の成長に対するApo2L/TRAIL、リツキサン(登録商標)、又は併用処置の効果
SCIDマウスにヒトB細胞非ホジキンBJABリンパ腫細胞(ATCC)(1マウス当たり20万個の細胞)を皮下注射して、腫瘍を200mm3まで成長させた。次いで、マウスを4つの試験グループに分けて(1グループ当たり8匹)、溶媒(0.5M Arg-コハク酸/20mM トリス/0.02% Tween20, pH =7.2)、Apo2L/TRAIL (図1のアミノ酸114−281)(60mg/kg)を2週間にわたって週当たり5回(すなわち、第0−4日目及び第7−11日目)の腹腔内投与、ないしはリツキサン(登録商標)(4mg/kg、Genentech, Inc.)を2週間にわたって週当たり1回の腹腔内投与(すなわち、第0日目と第7日目)、又は後者のApo2L/TRAILとリツキサン(登録商標)投薬計画の併用にて処理した(図6)。
溶媒処理マウスの腫瘍は急速に成長したが、単剤Apo2L/TRAIL又はリツキサン(登録商標)処理では有意に腫瘍の成長が遅かった。Apo2L/TRAILグループの1マウスでは完全な腫瘍の消耗がみられ、腫瘍発生率(TI)は7/8であった。リツキサン(登録商標)処理では何れの腫瘍も消耗しなかったが、より効果が長かった。重要なことに、Apo2L/TRAILとリツキサン(登録商標)の併用処置では、すべてのマウスの腫瘍体積が劇的に減少した。8匹中5匹のマウスは完全に腫瘍が消耗し、8匹中3匹のマウスは少なくとも28日間で最小の腫瘍成長率を示した。これらの結果から、Apo2L/TRAILとリツキサン(登録商標)はリンパ腫異種移植片に対して相乗的な抗腫瘍活性を示しうることが示唆された。
【0120】
実施例4 SCIDマウスに予め定着させた皮下BJABリンパ腫腫瘍異種移植片の成長に対するApo2L/TRAIL、リツキサン(登録商標)、又は併用処置の効果
実施例3に記載のものと同じ研究を行った。SCIDマウスにヒトB細胞非ホジキンBJABリンパ腫細胞(ATCC)(1マウス当たり20万個の細胞)を皮下注射して、腫瘍を200mm3まで成長させた。次いで、マウスを4つの試験グループに分けて(1グループ当たり8匹)、溶媒(0.5M Arg-コハク酸/20mM トリス/0.02% Tween20, pH =7.2)、Apo2L/TRAIL(「Apo2L.0」;図1のアミノ酸114−281) (60 mg/kg)を2週間にわたって週当たり5回(すなわち、第0−4日目及び第7−11日目)の腹腔内投与、ないしはリツキサン(登録商標)(4mg/kg、Genentech, Inc.)を2週間にわたって週当たり1回の腹腔内投与(すなわち、第0日目と第7日目)、又は後者のApo2L/TRAILとリツキサン(登録商標)投薬計画の併用にて処理した。
図7に結果を示す。溶媒処理マウスの腫瘍は急速に成長したが、単剤Apo2L/TRAIL又はリツキサン(登録商標)処理では有意に腫瘍の成長が遅かった。Apo2L/TRAIL単独及びリツキサン(登録商標)単独の何れにおいても完全な退行はみられず、リツキサン(登録商標)はより効果が長く続いた。実施例3に記載の実験と同様に、Apo2L/TRAILとリツキサン(登録商標)の併用処置では、すべてのマウスの腫瘍体積が有意に減少した。7匹中6匹のマウスは完全に腫瘍が消耗した。これらの結果から、Apo2L/TRAILとリツキサン(登録商標)はリンパ腫異種移植片に対して相乗的な抗腫瘍活性を示しうることが示唆された。
【0121】
実施例5 SCIDマウスに予め定着させた皮下BJABリンパ腫腫瘍異種移植片の成長のカスパーゼプロセシングに対するApo2L/TRAIL、リツキサン(登録商標)、又は併用処置の効果
処置した腫瘍のアポトーシス媒介性カスパーゼのプロセシング(タンパク質分解性カスパーゼプロセシングによって示される)を検査するために、SCIDマウスにヒトB細胞非ホジキンBJABリンパ腫細胞(ATCC)(1マウス当たり20万個の細胞)を皮下注射して、腫瘍を200mm3まで成長させた。次いで、マウスを、溶媒(0.5M Arg-コハク酸/20mM トリス/0.02% Tween20, pH =7.2)(n=1)、Apo2L/TRAIL(60mg/kg)の1回腹腔内投与(n=1)、又はリツキサン(登録商標)(4mg/kg、Genentech, Inc.)の1回腹腔内投与(n=2)、又は後者のApo2L/TRAILとリツキサン(登録商標)投薬計画の併用(n=2)にて処理した。処理後2日に、腫瘍を採取し、溶解バッファ中で溶解し、カスパーゼ8、3、9及び7に対する特異的な抗体を用いたイムノブロットを行い(ローディングコントロールとして抗βアクチン抗体を用いる)、カスパーゼプロセシングを可視化した(図8)。
Apo2L/TRAIL処理(A)では、溶媒コントロール(V)と比較してカスパーゼ8、3、9及び7のプロセシングの誘導が増加したが、リツキサン(登録商標)(R)ではカスパーゼプロセシングが誘導されなかった。特に、Apo2L/TRAILとリツキサン(登録商標)との併用処置(AR)では、Apo2L/TRAIL単独のもの以上にカスパーゼプロセシングが増加しなかった。これらの結果から、Apo2L/TRAILとリツキサン(登録商標)との相乗的な抗腫瘍活性がアポトーシスの亢進に必ずしも媒介されないことが示唆される。このことから、リツキサン(登録商標)に媒介されるADCCと補体依存性溶解と、Apo2L/TRAILに媒介されるアポトーシス活性の組合せが、観察された抗腫瘍相乗作用の根底にあることがいえる。
【0122】
実施例6 SCIDマウスに予め定着させた皮下BJABリンパ腫腫瘍異種移植片の成長に対するアゴニストDR5抗体、リツキサン(登録商標)、又は併用処置の効果
SCIDマウスにヒトB細胞非ホジキンBJABリンパ腫細胞(ATCC)(1マウス当たり20万個の細胞)を皮下注射して、腫瘍を200mm3まで成長させた。次いで、マウスを4つの試験グループに分けて(1グループ当たり7匹)、溶媒(0.5M Arg-コハク酸/20mM トリス/0.02% Tween20, pH =7.2)、アゴニストDR5モノクローナル抗体(「Apomab」)(10mg/kg)、ないしはリツキサン(登録商標)(4mg/kg)を2週間にわたって週当たり1回の腹腔内投与(すなわち、第0日目と第7日目)、又は後者のDR5抗体とリツキサン(登録商標)投薬計画の併用にて処理した(図9)。溶媒処理マウスの腫瘍は急速に成長したが、単剤DR5抗体又はリツキサン(登録商標)処理では有意に腫瘍の成長が遅かった。重要なことに、DR5抗体とリツキサン(登録商標)との併用処置では、すべてのマウスの腫瘍体積が劇的に減少した。7匹中5匹のマウスは完全に腫瘍が消耗し、7匹中2匹のマウスは少なくとも35日間で最小の腫瘍成長率を示した。これらの結果から、アゴニストDR5抗体とリツキサン(登録商標)はリンパ腫異種移植片に対して相乗的な抗腫瘍活性を示しうることが示唆された。
【0123】
実施例7 SCIDマウスに予め定着させた皮下BJABリンパ腫腫瘍異種移植片の成長のカスパーゼプロセシングに対するアゴニストDR5抗体、リツキサン(登録商標)、又は併用処置の効果
処置した腫瘍のアポトーシス媒介性カスパーゼのプロセシング(タンパク質分解性カスパーゼプロセシングによって示される)を検査するために、SCIDマウスにヒトB細胞非ホジキンBJABリンパ腫細胞(ATCC)(1マウス当たり20万個の細胞)を皮下注射して、腫瘍を200mm3まで成長させた。次いで、マウスを、溶媒(0.5M Arg-コハク酸/20mM トリス/0.02% Tween20, pH =7.2)(n=1)、又はリツキサン(登録商標)(4mg/kg)の1回腹腔内投与(n=2)、又はアゴニストDR5抗体(10mg/kg)の1回腹腔内投与(n=2)、又は後者のDR5抗体とリツキサン(登録商標)投薬計画の併用(n=2)にて処理した。処理後2日に、腫瘍を採取し、溶解バッファ中で溶解し、カスパーゼ8、3、9及び7に対する特異的な抗体を用いたイムノブロットを行い(ローディングコントロールとして抗βアクチン抗体を用いる)、カスパーゼプロセシングを可視化した(図10)。
アゴニストDR5抗体処理(A)では、溶媒コントロール(V)と比較してカスパーゼ8、3、9及び7のプロセシングの誘導が増加したが、リツキサン(登録商標)(R)ではカスパーゼプロセシングが誘導されなかった。特に、DR5抗体とリツキサン(登録商標)との併用処置(AR)では、DR5抗体単独のもの以上にカスパーゼプロセシングが増加しなかった。これらの結果から、DR5抗体とリツキサン(登録商標)との相乗的な抗腫瘍活性がアポトーシスの亢進に必ずしも媒介されないことが示唆される。むしろ、リツキサン(登録商標)に媒介されるADCCと補体依存性溶解と、アゴニストDR5抗体に媒介されるアポトーシス活性の組合せが、観察された抗腫瘍相乗作用の根底にあることがいえる。
【0124】
NHL細胞株におけるCD20及びApo2L/TRAILレセプターの発現と、癌細胞に対するリツキシマブ、Apo2L/TRAIL及びこれらの併用の効果を示す更なるデータを図11−16に示す。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】ヒトApo-2リガンドcDNA(配列番号:2)のヌクレオチド配列およびその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:1)を示す。ヌクレオチド位置447の「N」は、ヌクレオチド塩基が「T」又は「G」でありうることを示すために用いる。
【図2A】完全長ヒトDR4のcDNAのヌクレオチド配列(配列番号:4)およびその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:3)を示す。また、ヒトDR4のそれぞれのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、Pan 等, Science, 276:111 (1997)に報告される。
【図2B】完全長ヒトDR4のcDNAのヌクレオチド配列(配列番号:4)およびその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:3)を示す。また、ヒトDR4のそれぞれのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、Pan 等, Science, 276:111 (1997)に報告される。
【図3A】1998年11月19日の国際公開公報98/51793に公開されるヒトDR5の411のアミノ酸配列(配列番号:5)を示す。
【図3B】ヒトDR5の転写スプライシング変異体は当分野で公知である。1998年8月20日の国際公開公報98/35986に公開される、このDR5スプライシング変異体はヒトDR5の440のアミノ酸配列(配列番号:6)をコードする。
【図3C】ヒトDR5の転写スプライシング変異体は当分野で公知である。1998年8月20日の国際公開公報98/35986に公開される、このDR5スプライシング変異体はヒトDR5の440のアミノ酸配列(配列番号:6)をコードする。
【図4】Bリンパ腫細胞株のApo2L/TRAILレセプターの発現を示す。
【図5】Bリンパ腫細胞株のCD20の発現を示す。
【図6】SCIDマウスに予め定着させた皮下BJABリンパ腫腫瘍異種移植片の成長に対するApo2L/TRAIL、リツキサン(登録商標)、又は併用処置の効果を示す。
【図7】SCIDマウスに予め定着させた皮下BJABリンパ腫腫瘍異種移植片の成長に対するApo2L/TRAIL、リツキサン(登録商標)、又はApo2L/TRAILとリツキサン(登録商標)の併用処置の効果についての更なる結果を示す。
【図8】SCIDマウスに予め定着させた皮下BJABリンパ腫腫瘍異種移植片成長のカスパーゼプロセシングに対するApo2L/TRAIL、リツキサン(登録商標)、又はApo2L/TRAILとリツキサン(登録商標)の併用処置の効果を示す。
【図9】SCIDマウスに予め定着させた皮下BJABリンパ腫腫瘍異種移植片の成長に対するDR5アゴニスト抗体、リツキサン(登録商標)、又は併用処置の効果を示す。
【図10】SCIDマウスに予め定着させた皮下BJABリンパ腫腫瘍異種移植片成長のカスパーゼプロセシングに対するDR5アゴニスト抗体、リツキサン(登録商標)、又は併用処置の効果を示す。
【図11】NHL細胞株におけるCD20及びApo2L/TRAILレセプターの発現を示す。
【図12】SCIDマウスに予め定着させた皮下Ramos RA1腫瘍異種移植片の成長に対するApo2L/TRAIL、リツキシマブ、又は併用処置の効果を示す。
【図13】SCIDマウスに予め定着させたDOHH-2濾胞性リンパ腫異種移植片の成長に対するApo2L/TRAIL、リツキシマブ、又は併用処置の効果を示す。
【図14A】BJAB細胞に対するApo2L/TRAIL及びリツキシマブ又はこれらの併用処置による細胞殺傷の効果とメカニズムを示す。
【図14B】BJAB細胞に対するApo2L/TRAIL及びリツキシマブ又はこれらの併用処置による細胞殺傷の効果とメカニズムを示す。
【図14C】BJAB細胞に対するApo2L/TRAIL及びリツキシマブ又はこれらの併用処置による細胞殺傷の効果とメカニズムを示す。
【図15】SCIDマウスにおけるRamosT1腫瘍異種移植片の成長に対するApo2L/TRAIL、リツキシマブ、又はこれらの併用処置の効果を示す。
【図16】SCIDマウスにおけるBJAB-Luc腫瘍異種移植片に対するApo2L/TRAIL、リツキシマブ、又はこれらの併用処置の効果を示す。
【発明の開示】
【0001】
(出願について)
この出願は、米国特許法119条(e)に基づき、2004年9月8日出願の米国特許仮出願番号第60/607,834号及び、2005年3月30日出願の米国特許仮出願番号第60/666,550号の優先権を主張する出願であり、ここに出典明記により組み込まれるものである。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、デスレセプターリガンド及びCD20抗体の使用方法に関する。より具体的には、本発明は、癌及び免疫関連疾患などの様々な病理学的な疾患を治療するための、CD20抗体と組み合わせたApo-2リガンド/TRAIL又はデスレセプター抗体の使用方法に関する。
【0003】
(発明の背景)
腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリに属する様々なリガンドおよびレセプターが当分野で同定されている。そのようなリガンドの中には、腫瘍壊死因子-α(「TNF-α」)、腫瘍壊死因子-β(「TNF-β」又は「リンホトキシン-α」)、リンホトキシン-β(「LT-β」)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX-40リガンド、4-1BBリガンド、LIGHT、Apo-1リガンド(Fasリガンド又はCD95リガンドとも称される)、Apo-2リガンド(Apo2L又はTRAILとも称される)、Apo-3リガンド(TWEAKとも称される)、APRIL、OPGリガンド(RANKリガンド、ODF又はTRANCEとも称される)、及びTALL-1(BlyS、BAFF又はTHANKとも称される)が含まれる。[例えば、Ashkenazi, Nature Review, 2:420-430 (2002);AshkenaziおよびDixit, Science, 281:1305-1308 (1998);AshkenaziおよびDixit, Curr. Opin. Cell Biol., 11:255-260 (2000);Golstein, Curr. Biol., 7:750-753 (1997) Wallach, Cytokine Reference, Academic Press, 2000, pages 377-411;Locksley 等, Cell, 104:487-501 (2001);GrussおよびDower, Blood, 85:3378-3404 (1995);Schmid 等, Proc. Natl. Acad. Sci., 83:1881 (1986);Dealtry 等, Eur. J. Immunol., 17:689 (1987);Pitti 等, J. Biol. Chem., 271:12687-12690 (1996);Wiley 等, Immunity, 3:673-682 (1995);Browning 等, Cell, 72:847-856 (1993);Armitage 等 Nature, 357:80-82 (1992);1997年1月16日公開のWO97/01633;1997年7月17日公開のWO97/25428;Marstersら, Curr. Biol., 8:525-528(1998);Chicheporticheら, Biol. Chem., 272:32401-32410(1997);Hahneら, J. Exp. Med., 188:1185-1190(1998);1998年7月2日公開のWO98/28426;1998年10月22日公開のWO98/46751;1998年5月7日公開のWO/98/18921;Mooreら, Science, 285:260-263(1999);Shuら, J. Leukocyte Biol., 65:680(1999);Schneiderら, J. Exp. Med., 189:1747-1756(1999);Mukhopadhyayら, J. Biol. Chem., 274:15978-15981(1999)参照]。
【0004】
このようなTNFファミリリガンドによって媒介される様々な細胞性応答の誘導は、一般的に特定の細胞レセプターへの結合によって開始される。すべてではなく、いくつかのTNFファミリリガンドは、細胞表面の「デスレセプター」に結合して、それを介して様々な生物学的活性を誘導し、細胞死やアポトーシス経路を行うカスパーゼまたは酵素を活性化する(Salvesen 等, Cell, 91:443-446 (1997)。今日までに同定されたTNFレセプタースーパーファミリのメンバーには、TNFR1、TNFR2、TACI、GITR、CD27、OX-40、CD30、CD40、HVEM、Fas (Apo-1またはCD95とも称される)、DR4 (TRAIL-R1とも称される)、DR5 (Apo-2またはTRAIL-R2とも称される)、DcR1、DcR2、破骨細胞分化抑制因子(OPG)、RANKおよびApo-3 (DR3またはTRAMPとも称される)が含まれる。(例えば、Ashkenazi, Nature Reviews, 2:420-430 (2002);AshkenaziおよびDixit, Science, 281:1305-1308 (1998);AshkenaziおよびDixit, Curr. Opin. Cell Biol., 11:255-260 (2000);Golstein, Curr. Biol., 7:750-753 (1997) Wallach, Cytokine Reference, Academic Press, 2000, 377-411頁;Locksley 等., Cell, 104:487-501 (2001);Gruss and Dower, Blood, 85:3378-3404 (1995);Hohman 等, J. Biol. Chem., 264:14927-14934 (1989);Brockhaus 等, Proc. Natl. Acad. Sci., 87:3127-3131 (1990);1991年3月20日出願の欧州特許第417,563;Loetscher 等, Cell, 61:351 (1990);Schall 等, Cell, 61:361 (1990);Smith 等, Science, 248:1019-1023 (1990);Lewis 等, Proc. Natl. Acad. Sci., 88:2830-2834 (1991);Goodwin 等, Mol. Cell. Biol., 11:3020-3026 (1991);Stamenkovic 等, EMBO J., 8:1403-1410 (1989);Mallett 等, EMBO J., 9:1063-1068 (1990);Anderson 等, Nature, 390:175-179 (1997);Chicheportiche 等, J. Biol. Chem., 272:32401-32410 (1997);Pan 等, Science, 276:111-113 (1997);Pan 等, Science, 277:815-818 (1997);Sheridan 等, Science, 277:818-821 (1997);Degli-Esposti 等, J. Exp. Med., 186:1165-1170 (1997);Marsters 等, Curr. Biol., 7:1003-1006 (1997);Tsuda 等, BBRC, 234:137-142 (1997);Nocentini 等, Proc. Natl. Acad. Sci., 94:6216-6221 (1997);vonBulow 等, Science, 278:138-141 (1997))。
【0005】
これらTNFレセプターファミリメンバーの多くは、細胞外領域、膜貫通領域および細胞内領域を含む細胞表面レセプターの典型的な構造を共有しており、一方、他のメンバーは膜貫通領域と細胞内ドメインを欠いた可溶性タンパク質として天然にみられる。典型的なTNFRの細胞外部位には、NH2-末端から始まる複数のシステインリッチドメイン(CRD)の反復性のアミノ酸配列パターンを含有する。
Apo-2LまたはTRAILと称されるリガンドはサイトカインのTNFファミリのメンバーとして数年前に同定された。[例えばWileyら, Immunity, 3:673-682 (1995);Pittiら, J. Biol. Chem., 271:12697-12690 (1996);国際公開公報97/01633;国際公開公報97/25428;1998年6月9日発行の米国特許第5,763,223号;2001年9月4日発行の米国特許第6284236を参照]。完全長天然配列ヒトApo2L/TRAILポリペプチドは281アミノ酸長のII型膜貫通タンパク質である。ある細胞は、ポリペプチドの細胞外領域の酵素切断によって、そのポリペプチドの天然の可溶型を生じうる[Marianiら, J. Cell. Biol., 137:221-229 (1997)]。Apo2L/TRAILの可溶型の結晶学的研究はTNF及び他の関連タンパク質の構造に類似したホモ三量体構造を明らかにする[Hymowitzら, Molec. Cell, 4:563-571 (1999);Cha 等, Immunity, 11:253-261 (1999);Mongkolsapaya 等, Nature Structural Biology, 6:1048 (1999);Hymowitz 等, Biochemistry, 39:633-644 (2000)]。しかし、他のTNFファミリーメンバーとは異なり、Apo2L/TRAILは、(ホモ三量体の各サブユニットの位置230の)3つのシステイン残基が併せて亜鉛原子を配位しており、亜鉛の結合が三量体の安定性と生物学的活性のために重要であるという独特の構造的特徴を有していることが分かった。[上掲のHymowitzら;Bodmerら, J. Biol. Chem., 275:20632-20637 (2000)]。
【0006】
Apo2L/TRAILは関節リウマチなどの自己免疫性疾患を含む、免疫系の調節において働きうることが文献で報告されている[例として、Thomas 等, J. Immunol., 161:2195-2200 (1998);Johnsen 等, Cytokine, 11:664-672 (1999);Griffith 等, J. Exp. Med., 189:1343-1353 (1999);Song 等, J. Exp. Med., 191:1095-1103 (2000)を参照]。
また、Apo2L/TRAILの可溶型は大腸、肺、乳房、前立腺、膀胱、腎臓、卵巣及び脳腫瘍を含む様々な癌細胞並びに黒色腫、白血病、及び多発性骨髄腫においてアポトーシスを誘導することが報告されている[例えば、上掲のWileyら;上掲のPittiら;2000年2月29日発行の米国特許第6,030,945号;2004年6月8日発行の米国特許第6,746,668号;Rieger 等, FEBS Letters, 427:124-128 (1998);Ashkenazi 等, J. Clin. Invest., 104:155-162 (1999);Walczak 等, Nature Med., 5:157-163 (1999);Keane 等, Cancer Research, 59:734-741 (1999);Mizutani 等, Clin. Cancer Res., 5:2605-2612 (1999);Gazitt, Leukemia, 13:1817-1824 (1999);Yu 等, Cancer Res., 60:2384-2389 (2000);Chinnaiyan 等, Proc. Natl. Acad. Sci., 97:1754-1759 (2000)を参照のこと]。マウス腫瘍モデルでのインビボ研究は、Apo2L/TRAILが、単独で又は化学療法や放射線療法と組み合わせて、実質的な抗腫瘍効果を生じうることを示唆している[例えば上掲のAshkenaziら;上掲のWalzcakら;Gliniakら, Cancer Res., 59:6153-6158 (1999);上掲のChinnaiyanら;Rothら, Biochem. Biophys. Res. Comm., 265:1999 (1999);PCT出願 US/00/15512;PCT出願 US/01/23691を参照のこと]。多くのタイプの癌細胞とは対照的に、殆どの正常なヒト細胞タイプはApo2L/TRAILのある種の組換え形態によるアポトーシスの誘導に対して耐性があるように思われる[上掲のAshkenaziら;上掲のWalzcakら]。JoらはApo2L/TRAILのポリヒスチジンタグ可溶型が正常な単離された非ヒトではなくヒト肝細胞においてインビトロにてアポトーシスを誘導したことを報告している[Joら, Nature Med., 6:564-567 (2000);またNagata, Nature Med., 6:502-503 (2000)を参照のこと]。ある種の組換えApo2L/TRAIL調製物は、例えばタグ分子の有無、亜鉛含有量、及び三量体の含有%に応じて、罹患細胞対正常細胞に対する生化学的性質及び生物学的活性に関して変動しうると考えられている。[Lawrenceら, Nature Med., Letter to the Editor, 7:383-385 (2001);Qinら, Nature Med., Letter to the Editor, 7:385-386 (2001)]。
【0007】
Apo2L/TRAILは、少なくとも5つの異なるレセプターに結合することが明らかとなった。Apo2L/TRAILに結合するそのレセプターの少なくとも2つは、機能的な細胞質デスドメインを含有している。そのあるレセプターは「DR4」(あるいはTR4またはTRAIL-R1)と称されている(Pan 等, Science, 276:111-113 (1997);また、1998年7月30日公開の国際公開公報98/32856;1999年7月29日公開の国際公開公報99/37684;2000年12月7日公開の国際公開公報00/73349;2002年8月13日発行の米国特許第6,433,147号;2002年10月8日発行の米国特許第6,461,823号および2002年1月29日発行の米国特許第6,342,383号)。
Apo2L/TRAILの他のレセプターはDR5と称されている(あるいはApo-2;TRAIL-RまたはTRAIL-R2、TR6、Tango-63、hAPO8、TRICK2またはKILLERとも称されている) (例として、Sheridan 等, Science, 277:818-821 (1997)、Pan 等, Science, 277:815-818 (1997)、1998年11月19日公開の国際公開公報98/51793;1998年9月24日公開の国際公開公報98/41629;Screaton 等, Curr. Biol., 7:693-696 (1997);Walczak 等, EMBO J., 16:5386-5387 (1997);Wu 等, Nature Genetics, 17:141-143 (1997);1998年8月20日発行の国際公開公報98/35986;1998年10月14日発行の欧州特許第870,827号;1998年10月22日公開の国際公開公報98/46643;1999年1月21日公開の国際公開公報99/02653;1999年2月25日公開の国際公開公報99/09165;1999年3月11日公開の国際公開公報99/11791;2002年8月13日公開の米国特許公開2002/0072091;2001年12月7日公開の米国特許公開2002/0098550;2001年12月6日発行の米国特許第6,313,269号;2001年8月2日公開の米国特許公開2001/0010924;2003年7月3日公開の米国特許公開 2003/01255540;2002年10月31日公開の米国特許公開2002/0160446、2002年4月25日公開の米国特許公開2002/0048785;2002年2月発行の米国特許第6,342,369号;2003年5月27日発行の米国特許第6,569,642号、2000年6月6日発行の米国特許第6,072,047号、2003年11月4日発行の米国特許第6,642,358号;2004年6月1日発行のIS 6,743,625を参照)。DR4と同様に、DR5は細胞質デスドメインを含有し、リガンド結合時(またはリガンドの活性を擬態するアゴニスト抗体などの分子の結合時)にアポトーシスをシグナル伝達することができることが報告された。Apo-2L/TRAILとDR5とで形成される複合体の結晶構造はHymowitz 等, Molecular Cell, 4:563-571 (1999)に記載されている。
【0008】
リガンドが結合すると、DR4とDR5はともに、FADD/Mort1と称されるデスドメイン含有アダプター分子を介してアポトーシスインヒビターであるカスパーゼ8を増加または活性化することによって独立してアポトーシスを引き起こしうる[Kischkel 等, Immunity, 12:611-620 (2000);Sprick 等, Immunity, 12:599-609 (2000);Bodmer 等, Nature Cell Biol., 2:241-243 (2000)]。
また、Apo2L/TRAILはDcR1、DcR2およびOPGと称されるレセプターに結合することが報告されている。そのレセプター等はシグナル伝達のトランスデューサーというよりもインヒビターとして機能すると思われている。(例えば、DCR1 (TRID、LITまたはTRAIL-R3とも称される) [Pan 等, Science, 276:111-113 (1997);Sheridan 等, Science, 277:818-821 (1997);McFarlane 等, J. Biol. Chem., 272:25417-25420 (1997);Schneider 等, FEBS Letters, 416:329-334 (1997);Degli-Esposti 等, J. Exp. Med., 186:1165-1170 (1997);およびMongkolsapaya 等, J. Immunol., 160:3-6 (1998);DCR2 (TRUNDDまたはTRAIL-R4とも称される) [Marsters 等, Curr. Biol., 7:1003-1006 (1997);Pan 等, FEBS Letters, 424:41-45 (1998);Degli-Esposti 等, Immunity, 7:813-820 (1997)]、およびOPG [Simonet 等, supra]。DR4およびDR5に反して、DcR1およびDcR2レセプターはアポトーシスをシグナル伝達しない。
【0009】
DR4および/またはDR5レセプターに結合する特定の抗体が文献で報告されている。例えば、DR4レセプターに対するものであり、特定の哺乳動物細胞の拮抗的ないしはアポトーシス的な活性を有する抗DR4抗体は、例として、1999年7月29日公開の国際公開公報99/37684;2000年7月12日公開の国際公開公報00/73349;2003年8月14日公開の国際公開公報03/066661に記載されている。例として、Griffith 等, J. Immunol., 162:2597-2605 (1999);Chuntharapai 等, J. Immunol., 166:4891-4898 (2001);2002年12月2日公開の国際公開公報02/097033;2003年5月22日公開の国際公開公報03/042367;2003年5月8日公開の国際公開公報03/038043;2003年5月8日公開の国際公開公報03/037913も参照のこと。特定の抗DR5抗体も同様に記載されている。例として、1998年11月8日公開の国際公開公報98/51793;Griffith 等, J. Immunol., 162:2597-2605 (1999);Ichikawa 等, Nature Med., 7:954-960 (2001);Hylander 等, “An Antibody to DR5 (TRAIL-Receptor 2) Suppresses the Growth of Patient Derived Gastrointestinal Tumors Grown in SCID mice”, Abstract, 2d International Congress on Monoclonal Antibodies in Cancers, Aug. 29-Sept. 1, 2002, Banff, Alberta, Canada;2003年5月8日公開の国際公開公報03/038043 ;2003年5月8日公開の国際公開公報03/037913を参照のこと。さらに、DR4とDR5のレセプターの両方と交差反応する特定の抗体が記載されている(例として、2001年6月26日発行の米国特許第6,252,050号を参照)。
【0010】
CD20抗原(ヒトBリンパ球制限分化抗原、Bp35とも呼ばれる)はプレB及び成熟Bリンパ球上に位置するおよそ35kDの分子量の疎水性膜貫通型タンパク質である(Valentineら, J. Biol. Chem. 264(19):11282-11287 (1989);及びEinfeldら, EMBO J. 7(3):711-717(1988))。該抗原はまたB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)の90%以上に発現されるが(Anderson等, Blood 63(6):1424-1433 (1984))、造血幹細胞、プロB細胞、正常なプラズマ細胞又は他の正常な組織上には見出されない(Tedder等, J. Immunol. 135(2):973-979 (1985))。CD20は分化及び細胞周期の開始の活性化過程における初期段階を調節し(上掲のTedderら)、おそらくはカルシウムイオンチャネルとして機能する(Tedder等, J. Cell. Biochem. 14D:195 (1990))。B細胞リンパ腫ではCD20が発現されるため、この抗原はこのようなリンパ腫の「標的とする(ターゲティング)」ための候補となりうる。
【0011】
リツキシマブ(rituximab)(リツキサン(RITUXAN)(登録商標))抗体は、一般的にCD20抗原に対する遺伝子的操作を施したキメラマウス/ヒトモノクローナル抗体である。リツキシマブは1998年4月7日に発行の米国特許第5736137号(Anderson等)において「C2B8」と呼ばれている抗体である。リツキサン(登録商標)は、再発性または低抵抗性の(refractory low-grade)または濾胞性の(follicular)、CD20陽性、B細胞非ホジキンリンパ腫患者の治療のためのものである。インビトロの作用機序の研究は、リツキサン(登録商標)がヒト補体に結合し補体依存性細胞障害性(CDC)を介してリンパB細胞系を溶解することを実証している(Reff等, Blood 83(2):435-445 (1994);Cragg及びMarlin, Blood, 103: 2738-2743 (2004))。加えて、その抗体は抗体依存細胞性細胞障害性(ADCC)のアッセイにおいて有意な活性を有している。更に近年、リツキサン(登録商標)は、他の抗CD19抗体や抗CD20抗体にはない、トリチウム化したチミジン取り込みアッセイにおける抗増殖性効果を持つこと及び直接的にアポトーシスを誘導することが示唆されている(Maloney等 Blood 88(10):637a (1996))。また、リツキサン(登録商標)及び特定の化学療法及び毒素間の相乗効果は、実験的に観察された。特に、リツキサン(登録商標)は、ドキソルビシン、CDDP、VP-16、ジフテリア毒素及びリシンの細胞障害性効果に対するヒトB細胞リンパ腫細胞系の薬物抵抗性の感度を高める(Demidem等 Cancer Chemotherapy & Radiopharmaceuticals 12(3):177-186 (1997))。インビボ前臨床研究では、リツキサン(登録商標)が、おそらく補体及び細胞媒介過程を介して、カニクイザルの末梢血、リンパ節及び骨髄からのB細胞を減少させることを示した (Reff 等 Blood 83(2):435-445 (1994))。
【0012】
(発明の概要)
本明細書中において、Apo-2リガンド/TRAILポリペプチド又はデスレセプター抗体などのデスレセプターリガンド、及びCD20抗体の使用方法を提供する。本発明の実施態様には、癌細胞を有効量のApo2L/TRAIL及びCD20抗体に曝すことを含む治療方法が含まれる。場合によっては、前記癌細胞は、アゴニストDR4抗体又はアゴニストDR5抗体及びCD20抗体などのデスレセプター抗体の有効量に曝される。場合によっては、本方法に用いられるApo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体及びCD20抗体の量は相乗的な治療効果に達するために有効な量であり、例えばこれらの組み合わさった抗癌効果がApo2L/TRAIL又は抗体を単一の治療剤として別々に用いられる場合に達する抗癌効果よりも大きい。前記のApo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体及びCD20抗体が哺乳動物(患者)に投与される場合、本方法はインビトロでの使用又はインビボでの使用を伴ってもよい。場合によっては、本方法では、Apo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体及びCD20抗体で治療される癌細胞はリンパ腫細胞である。
【0013】
本発明の更なる実施態様では、有効量のApo2L/TRAIL及びCD20抗体が哺乳動物に投与されることを含む、免疫関連疾患の治療方法が含まれる。場合によっては、アゴニストDR4抗体又はアゴニストDR5抗体などのデスレセプター抗体及びCD20抗体の有効量が哺乳動物に投与される。場合によっては、本方法に用いられるApo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体及びCD20抗体の量は相乗的な治療効果に達するために有効な量であり、例えばこれらの組み合わさった効果がApo2L/TRAIL又は抗体を単一の治療剤として別々に用いられる場合に達する効果よりも大きい。場合によっては、本方法では、免疫関連疾患は関節リウマチ又は多発性硬化症である。
【0014】
本発明の方法には、哺乳動物から組織又は細胞試料を採取し、CD20、DR4、及び/又はDR5の発現について該組織又は該細胞を検査し、該組織又は細胞試料が当該レセプターの一又は複数を発現することが決定される場合に、Apo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体及びCD20抗体の有効量が該哺乳動物に投与されることを含む、免疫関連疾患又は癌などの哺乳動物の疾患の治療方法が含まれる。一又は複数のこれらのレセプターの発現を検査するための方法における工程は、mRNA発現検出アッセイ及び免疫組織化学アッセイを含む、様々な形式のアッセイで行われてもよい。
場合によっては、本発明の方法は、有効量のApo2L/TRAIL及び/又はデスレセプター抗体及びCD20抗体が投与されることに加えて、化学療法剤又は放射線療法が前記哺乳動物に投与されることを含む。
【0015】
本発明の更なる実施態様は、以下の特許請求の範囲の例により説明する:
1. 哺乳動物癌細胞を相乗的に有効な量のアゴニストデスレセプター抗体及びCD20抗体に曝すことを含む、癌細胞の治療方法。
2. 前記アゴニストデスレセプター抗体が抗DR5レセプターモノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
3. 前記アゴニストデスレセプター抗体が抗DR4レセプターモノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
4. 前記癌細胞が、前記の相乗的に有効な量のアゴニストデスレセプター抗体及びCD20抗体にインビボで曝される、請求項1に記載の方法。
5. 前記アゴニストデスレセプター抗体がキメラ抗体又はヒト化抗体である、請求項2又は3に記載の方法。
6. 前記アゴニストデスレセプター抗体がヒト抗体である、請求項2又は3に記載の方法。
7. 前記アゴニストデスレセプター抗体が1以上のApo-2リガンドレセプターと交差反応する抗体である、請求項1に記載の方法。
8. 前記癌細胞がリンパ腫細胞である、請求項1に記載の方法。
9. さらに、前記癌細胞を一又は複数の成長阻害剤に曝すことを含む、請求項1に記載の方法。
10. さらに、前記細胞を放射線に曝すことを含む、請求項1に記載の方法。
11. 前記DR5抗体が108M−1から1012M−1のDR5レセプター結合親和性を有する、請求項2に記載の方法。
12. 前記デスレセプター抗体及びCD20抗体が、CHO細胞、酵母菌及び大腸菌からなる群から選択される組み換え宿主細胞内で発現される、請求項1に記載の方法。
13. 前記CD20抗体がモノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
14. 前記CD20抗体が抗体リツキシマブである、請求項13に記載の方法。
15. 相乗的に有効な量のアゴニストデスレセプター抗体及びCD20抗体が哺乳動物に投与されることを含む、免疫関連疾患の治療方法。
16. 前記アゴニストデスレセプター抗体が抗DR5レセプターモノクローナル抗体である、請求項15に記載の方法。
17. 前記アゴニストデスレセプター抗体が抗DR4レセプターモノクローナル抗体である、請求項15に記載の方法。
18. 前記アゴニストデスレセプター抗体がキメラ抗体又はヒト化抗体である、請求項16又は17に記載の方法。
19. 前記アゴニストデスレセプター抗体がヒト抗体である、請求項16又は17に記載の方法。
20. 前記アゴニストデスレセプター抗体が1以上のApo-2リガンドレセプターと交差反応する抗体である、請求項15に記載の方法。
21. 前記免疫関連疾患が関節リウマチ又は多発性硬化症である、請求項15に記載の方法。
22. 前記DR5抗体が108M−1から1012M−1のDR5レセプター結合親和性を有する、請求項15に記載の方法。
23. 前記デスレセプター抗体及びCD20抗体が、CHO細胞、酵母菌及び大腸菌からなる群から選択される組み換え宿主細胞内で発現される、請求項15に記載の方法。
24. 前記CD20抗体がモノクローナル抗体である、請求項15に記載の方法。
25. 前記CD20抗体が抗体リツキシマブである、請求項24に記載の方法。
26. 前記デスレセプター抗体及びCD20抗体が連続して投与される、請求項1又は15に記載の方法。
27. 前記デスレセプター抗体及びCD20抗体が同時に投与される、請求項1又は15に記載の方法。
【0016】
(前記実施態様の詳細な記載)
特に定義しない限り、本明細書中で使用する専門用語、記号及び他の化学的な用語のすべては、本発明が属する分野の技術者に共通して理解される意味を持つことを意図する。場合によっては、共通して理解される意味を持つ用語を明確及び/又は参照を容易にするために本明細書中で定義するが、本明細書中の定義に包含されることが、当分野で一般的に理解されることとの実質的な差異を表すためであると解釈されるものではない。本明細書中に記載または参照の技術および手順は一般的に十分理解されるものであり、例えばSambrook 等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd. edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.に記載の広く利用される分子クローニング方法論などの、当分野の技術者による従来の方法論を用いて通常行われるものである。好ましくは、市販のキットや試薬の使用を伴う手順は、特に明記しない限り、プロトコールおよび/またはパラメータを定義する製造者に従って一般的に行われる。
本方法、キット及びそれらの使用を開示する前に、本発明は、ここに記載の特定の方法論、プロトコール、細胞株、動物種や属、コンストラクトおよび試薬に限定されるものではなく、変更されてもよいことを理解されたい。また、本明細書中で用いる用語は特定の実施態様のみを開示するためのものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の権利範囲を限定するものでないことを理解されたい。
【0017】
本明細書で用いられるおよび添付の特許請求の範囲中の単数形「a」、「and」および「the」には、明らかな記載がない限り複数形も含まれる。
本明細書中で引用するすべての出版物は、該出版物が引用される方法および/または材料を開示および記載するために、出典明記によって本明細書中に組み込まれる。本明細書中で引用する出版物は、本出願の提出日前の開示について言及するものである。発明者等は、早い優先日またはより前の発明日のために先行する出版物に権利が与えられないことが認められると解釈されるものではない。さらに、実際の出版日は明記されているものと異なり、個々に検証が必要であろう。
【0018】
I.定義
「Apo−2リガンド」、「Apo-2L」、「Apo2L」、「Apo2L/TRAIL」、「Apo-2リガンド/TRAIL」及び「TRAIL」という用語は、ここでは図1に示されたアミノ酸配列のアミノ酸残基114−281、95−281、残基92−281、残基91−281、残基41−281、残基39−281、残基15−281、又は残基1−281、並びに上記配列の生物学的に活性な断片、欠失、挿入、又は置換変異体を含むポリペプチド配列を意味するものとして互換可能に使用される。一実施態様では、ポリペプチド配列は図1の残基114−281を含む。場合によっては、ポリペプチド配列は図1の残基92−281又は残基91−281を含む。Apo-2Lポリペプチドは図1に示された天然ヌクレオチド配列によってコードされていてもよい。場合によっては、残基Pro119(図1)をコードするコドンは「CCT」又は「CCG」でありうる。場合によっては、断片又は変異体は生物学的に活性であり、上記の配列の何れか一と少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約90%の配列同一性、更により好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する。この定義には、その天然のアミノ酸の少なくとも一がアラニン残基などの他のアミノ酸によって置換されているApo-2リガンドの置換変異体が包含される。任意の置換変異体は一又は複数の残基の置換を含む。任意の変異体は、図1に示す天然配列のApo-2リガンドポリペプチド配列と異なるアミノ酸配列を含んでもよく、図1の残基位置(一又は複数)でのアミノ酸置換:S96C;S101C;S111C;R170C;K179Cの一又は複数を有する。また、定義には、組換え又は合成法によって調製された、又はApo-2リガンド源から単離された天然配列Apo-2リガンドもまた包含される。本発明のApo-2リガンドは1997年1月16日公開の国際公開97/01633、1997年7月17日公開の国際公開97/25428、1999年7月22日公開の国際公開99/36535、2001年1月4日公開の国際公開01/00832、2002年2月7日公開の国際公開02/09755、及び2000年12月14日公開の国際公開00/75191に開示されたApo-2リガンド又はTRAILと称されるポリペプチドを含む。本用語は、一般に、ポリペプチドの単量体、二量体、三量体、六量体又は命令オリゴマーを含むApo-2リガンドの形態を意味するものとして使用される。Apo-2L配列において言及されているアミノ酸残基の全ての番号付けは、特に他の定義を述べない限り、図1における番号付けを使用している。例えば、「D203」又は「Asp203」は図1に与えられた配列中、位置203のアスパラギン酸残基を意味する。
【0019】
本明細書で使用する「Apo-2リガンド選択的変異体」という用語は、天然Apo-2リガンド配列に1又は複数のアミノ酸変異を含み、DR4レセプター又はDR5レセプターに対して選択的な結合親和性を有するApo-2リガンドポリペプチドを指す。一実施形態では、Apo-2リガンド変異体はDR4レセプターに対して選択的結合親和性を有し、天然Apo-2リガンド配列の位置189、191、193、199、201、又は209のいずれか1つに1又は複数のアミノ酸置換を含む。別の実施形態では、Apo-2リガンド変異体はDR5レセプターに対して選択的結合親和性を有し、天然Apo-2リガンド配列の位置189、191、193、264、266、267、又は269のいずれか1つに1又は複数のアミノ酸置換を含む。好ましいApo-2リガンド選択的変異体は、1又は複数のアミノ酸変異を含み、DR4レセプターに対し、天然配列Apo-2リガンド変異体がDR4レセプターに対して示す以上(≧)の結合親和性を示す。さらに好ましくは、Apo-2リガンド変異体は、DR5レセプターに対し、天然配列Apo-2リガンドがDR5に対して示すより小さい(<)結合親和性を示す。このようなApo-2リガンド変異体のDR4レセプターに対する結合親和性は、天然配列Apo-2リガンドと比較した場合、ほぼ等しい(不変である)か、それよりも大きく(増大している)、Apo-2リガンド変異体のDR5レセプターに対する結合親和性は、天然配列Apo-2リガンドと比較した場合、小さいか、殆ど消滅しており、ここでの目的のため、Apo-2リガンド変異体の結合親和性はDR4レセプターについて「選択性」であると考えられる。好ましい本発明のDR4選択性Apo-2リガンド変異体は、DR5レセプターに対して(天然配列Apo-2リガンドと比較した場合)10分の1以下の結合親和性を有し、さらに好ましくは、DR5レセプターに対して(天然配列Apo-2リガンドと比較した場合)100分の1以下の結合親和性を有する。Apo-2リガンド変異体それぞれの結合親和性を測定し、本技術分野で知られているELISA、RIA、及び/又はBIAcoreアッセイにより(114−281形式等の)天然Apo-2Lの結合特性と比較することができる。本発明の好ましいDR4選択性Apo-2リガンド変異体は、少なくとも1種類の哺乳動物細胞(好ましくは癌細胞)にアポトーシスを誘発し、そのようなアポトーシス活性をアラマーブルー又はクリスタルバイオレットアッセイ等の既知の方法により測定することができる。DR4選択性Apo-2リガンド変異体の、Apo-2Lのデコイレセプターのいずれかに対する結合親和性は、変化していても、していなくともよく、それらデコイレセプターを当技術分野でDcR1、DcR2及びOPGと呼ぶ。
【0020】
さらなる好ましいApo-2リガンド選択的変異体は、一又は複数のアミノ酸変異を含み、DR5レセプターに対し、天然配列Apo-2リガンドがDR5レセプターに対して示す以上(≧)の結合親和性を示し、さらに好ましくは、そのようなApo-2リガンド変異体は、DR4レセプターに対し、天然配列Apo-2リガンドがDR4に対して示すより小さい結合親和性を示す。このようなApo-2リガンド変異体のDR5レセプターに対する結合親和性は、天然配列Apo-2リガンドと比較した場合、ほぼ等しい(不変である)か、それよりも大きく(増大している)、Apo-2リガンド変異体のDR4レセプターに対する結合親和性は、天然配列Apo-2リガンドと比較した場合、それより小さいか、殆ど消滅しており、ここでの目的のため、Apo-2リガンド変異体の結合親和性はDR5レセプターについて「選択性」であると考えられる。好ましい本発明のDR5選択性Apo-2リガンド変異体は、DR4レセプターに対して(天然配列Apo-2リガンドと比較した場合)10分の1以下の結合親和性を有し、さらに好ましくは、DR4レセプターに対して(天然配列Apo-2リガンドと比較した場合)100分の1以下の結合親和性を有する。Apo-2リガンド変異体それぞれの結合親和性を測定し、本技術分野で知られているELISA、RIA、及び/又はBIAcoreアッセイにより(114−281形式等の)天然Apo2Lの結合特性と比較することができる。本発明の好ましいDR5選択性Apo-2リガンド変異体は、少なくとも1種類の哺乳動物細胞(好ましくは癌細胞)にアポトーシスを誘発し、そのようなアポトーシス活性をアラマーブルー又はクリスタルバイオレットアッセイ等の既知の方法により測定することができる。DR5選択性Apo-2リガンド変異体の、Apo-2Lのデコイレセプターのいずれかに対する結合親和性は、変化していても、していなくともよく、それらデコイレセプターを当技術分野でDcR1、DcR2及びOPGと呼ぶ。
【0021】
アミノ酸の識別には以下のようなアミノ酸のアルファベット1文字又は3文字を使用してもよい。
Asp D アスパラギン酸
Thr T スレオニン
Ser S セリン
Glu E グルタミン酸
Pro P プロリン
Gly G グリシン
Ala A アラニン
Cys C システイン
Val V バリン
Met M メチオニン
Ile I イソロイシン
Leu L ロイシン
Tyr Y チロシン
Phe F フェニルアラニン
His H ヒスチジン
Lys K リジン
Arg R アルギニン
Trp W トリプトファン
Gln Q グルタミン
Asn N アスパラギン
【0022】
「Apo2L/TRAIL細胞外ドメイン」又は「Apo2L/TRAIL ECD」なる用語は、膜貫通及び細胞質ドメインが本質的にないApo2L/TRAILの形態を称する。通常、ECDはこのような膜貫通及び細胞質ドメインを1%未満、好ましくはこのようなドメインを0.5%未満有している。本発明のポリペプチドとして同定される任意の膜貫通ドメイン(類)は、疎水性ドメインのタイプのものを同定するのに、当該分野で常套的に使用されている基準に従い同定されると理解されるであろう。膜貫通ドメインの正確な境界は多様であるが、多くの場合は、最初同定されたドメインのいずれかの末端において、約5アミノ酸を超えないと思われる。好ましい実施態様において、ECDは、膜貫通及び細胞質又は細胞内ドメインのない(膜に結合していない)ポリペプチドの、可溶性の細胞外ドメイン配列からなる。Apo-2L/TRAILの特定の細胞外ドメインは、PCT出願国際公開第97/01633号及び国際公開第97/25428号に記載されている。
「Apo2L/TRAIL単量体」又は「Apo2L単量体」なる用語は、Apo2Lの細胞外ドメイン配列の共有鎖を称する。
「Apo2L/TRAIL二量体」又は「Apo2L二量体」なる用語は、ジスルフィド結合を介して共有結合に連結した2つのApo-2Lモノマーを称する。ここで使用される場合の用語には、独立したApo2L二量体、及び三量体形態のApo2L内にある二量体(すなわち、互いに結合した、第2のApo2L単量体)が含まれる。
「Apo2L/TRAIL三量体」又は「Apo2L三量体」なる用語は、非共有結合している3つのApo2L単量体を称する。
「Apo2L/TRAIL凝集体」なる用語は、自己結合した高級オリゴマー性形態のApo2L/TRAIL、例えばApo2L/TRAIL三量体、さらには六量体及びナノ量体(nanomeric)の形態のApo2L/TRAILを形成するものを称するために使用する。Apo2L/TRAIL単量体、二量体又は三量体(又は他の凝集体)の存在性及び量の決定は、当該分野で公知の方法及びアッセイ(市販されている物質を使用)、例えば天然サイズ排除HPLC(「SEC」)、ドデシル硫酸ナトリウムを使用する変性サイズ排除(「SDS-SEC」)、逆相HPLC、キャピラリー電気泳動によりなされ得る。
【0023】
「Apo-2リガンドレセプター」は、当分野では、図2及び3それぞれに示すポリヌクレオチド及びポリペプチド配列を有する「DR4」及び「DR5」として称されるレセプターを含む。Panらにより、「DR4」と呼ばれるTNFレセプターファミリーのメンバーが開示されている(Pan等, Science, 276:111-113, 1997年;また、1998年7月30日公開の国際公開98/32856;1999年7月29日公開の国際公報99/37684;2000年12月7日公開の国際公報00/73349;2002年8月13日発行の米国特許第6,433,147号;2002年10月8日発行の米国特許第6,461,823号及び、2002年1月29日発行の米国特許第6,342,383号を参照)。Sheridan等によるScience, 277:818-821(1997年)およびPan等によるScience, 277:815-818(1997年)には、Apo2L/TRAILの他のレセプターが開示されている(1998年11月19日公開の国際公報98/51793;1998年9月24日公開の国際公報98/41629も参照)。このレセプターはDR5と称される(あるいは、該レセプターはApo-2;TRAIL−R、TR6、Tango−63、hAPO8、TRICK2またはKILLERとも称される;Screaton等, Curr. Biol., 7:693-696, 1997年;Walczak等, EMBO J., 16:5386-5387, 1997年;Wu等, Nature Genetics, 17:141-143, 1997年;1998年8月20日公開の国際公報98/35986;1998年10月14日公開の欧州特許第870,827号;1998年10月22日公開の国際公報98/46643;1999年1月21日公開の国際公報99/02653;1999年2月25日公開の国際公報99/09165;1999年3月11日公開の国際公報99/11791;2002年8月13日公開の米国公開特許2002/0072091;2001年12月7日公開の米国公開特許2002/0098550;2001年12月6日発行の米国特許第6,313,269号;2001年8月2日公開の米国公開特許2001/0010924;2003年7月3日公開の米国公開特許2003/01255540;2002年10月31日公開の米国公開特許2002/0160446、2002年4月25日公開の米国公開特許2002/0048785;2003年5月27日発行の米国特許第6,569,642号;2000年6月6日発行の米国特許第6,072,047号;2003年11月4日発行の米国特許第6,642,358号参照)。上記のように、Apo-2Lの他のレセプターはDcR1、DcR2及びOPGを含む(Sheridan等., 上掲;Marsters 等., 上掲;及びSimonet 等.,上掲)。ここで用いられるところの「Apo-2Lレセプター」という用語は、天然配列レセプターとレセプター変異体を包含する。これらの用語はヒトを含む様々な哺乳動物で発現されるApo-2Lレセプターを包含する。Apo-2Lレセプターは、多くのヒト組織株で自然に起こるように内在的に発現されてもよいし、あるいは組換え又は合成方法によって発現されてもよい。「天然配列Apo-2Lレセプター」には、天然由来のApo-2Lレセプターと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドが含まれる。ゆえに、天然配列Apo-2Lレセプターは、任意の動物由来の天然に生じるApo-2Lレセプターのアミノ酸配列を持ちうる。そのような天然配列Apo-2Lレセプターは、天然から単離してもよいし、組み換え又は合成手法により生成することもできる。特に、「天然配列Apo-2Lレセプター」なる用語は、天然に生じる切断型又は分泌型のレセプター(例えば、可溶型を含む、さらには細胞外ドメイン配列)、天然に生じる変異型(例えば、選択的スプライシング型)、及び天然に生じる対立変異型を包含する。レセプター変異型は天然配列Apo-2Lレセプターの断片又は欠損変異型を含みうる。図3Aは1998年11月19日公開の国際公報98/51793に公開されたヒトDR5の411アミノ酸配列を示す。ヒトDR5の転写スプライシング変異体は当分野で公知である。このDR5スプライシング変異体は、1998年8月20日に公開の国際公報98/35986に公開された図3B及び図3Cに示すヒトDR5の440アミノ酸配列をコードする。
【0024】
「デスレセプター抗体」は、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリであり、アポトーシスをシグナル伝達することができるデスドメインを含有するレセプターに対する抗体(一ないし複数)を一般的に意味するものであり、このような抗体にはDR5抗体およびDR4抗体が含まれる。
「DR5レセプター抗体」、「DR5抗体」又は「抗DR5抗体」とは、広義で、DR5レセプターまたはその細胞外ドメインの少なくとも一形態に結合する抗体を意味する。場合によっては、DR5抗体は異種性配列又は分子に融合又は結合する。好ましくは、異種性配列は抗体がより高次の複合体又はオリゴマー複合体を形成させる又は形成を補助する。場合によっては、DR5抗体はDR5レセプターに結合するが、任意の付加的なApo-2Lレセプター(例えばDR4、DcR1又はDcR2)と結合又は交差反応をしない。場合によっては、抗体はDR5シグナル伝達活性のアゴニストである。
場合によっては、本発明のDR5抗体は、BIAcore結合アッセイの測定による約0.1nMから約20mMの範囲の濃度でDR5レセプターに結合する。場合によっては、本発明のDR5抗体は、BIAcore結合アッセイの測定による約0.6nMから約18mMのIC50値を示す。
【0025】
「DR4レセプター抗体」、「DR4抗体」又は「抗DR4抗体」とは、広義で、DR4レセプターまたはその細胞外ドメインの少なくとも一形態に結合する抗体を意味する。場合によっては、DR4抗体は異種性配列又は分子に融合又は結合する。好ましくは、異種性配列は抗体がより高次の複合体又はオリゴマー複合体を形成させる又は形成を補助する。場合によっては、DR4抗体はDR4レセプターに結合するが、任意の付加的なApo-2Lレセプター(例えばDR5、DcR1又はDcR2)と結合又は交差反応をしない。場合によっては、抗体はDR4シグナル伝達活性のアゴニストである。
場合によっては、本発明のDR4抗体は、BIAcore結合アッセイの測定による約0.1nMから約20mMの範囲の濃度でDR4レセプターに結合する。場合によっては、本発明のDR4抗体は、BIAcore結合アッセイの測定による約0.6nMから約18mMのIC50値を示す。
【0026】
「アゴニスト」なる用語は広義で用いられ、Apo2L/TRAIL、DR4ないしDR5のインビトロ、インサイツないしインビボでの一以上の生物学的活性を部分的又は完全に亢進、刺激又は活性化する任意の分子を含む。Apo2L/TRAIL、DR4ないしDR5の生物学的活性の例には、DR4又はDR5へのApo2L/TRAILの結合、アポトーシス並びに更に文献に報告されているものが含まれる。アゴニストは直接的ないし間接的形式で機能しうる。例えば、アゴニストは、レセプター活性化又はシグナル伝達を起こすDR4ないしDR5への直接的結合の結果としてのインビトロ、インサイツないしインビボでのDR4ないしDR5の一以上の生物学的活性を部分的又は完全に亢進、刺激又は活性化するために機能するかもしれない。また、アゴニストは、例えば、DR4又はDR5の活性化ないしシグナル伝達を引き起こす他のエフェクター分子を刺激する結果としてのDR4ないしDR5のインビトロ、インサイツないしインビボでの一以上の生物学的活性を部分的又は完全に亢進、刺激又は活性化するために間接的に機能するかもしれない。アゴニストは、DR4ないしDR5の活性化ないし活性を亢進又は増強するように間接的に機能するエンハンサー分子として働きうることが考えられる。例えば、アゴニストは哺乳動物の内因性のApo-2Lの活性を亢進しうる。例えば、これはDR4ないしDR5をプレ複合体化することによって、ないし、DR4ないしDR5レセプターとのそれぞれのリガンドの複合体を安定化することによって達成することができる(Apo-2LとDR4ないしDR5との天然複合体型を安定化するなど)。
【0027】
ここで使用される「DR4」及び「DR4レセプター」という用語は、Panら, Science, 276:111-113 (1997);1998年7月30日公開の国際公開98/32856;2002年1月29日発行の米国特許第6342363号;及び1999年7月29日公開の国際公開99/37684に記載されているレセプターの完全長可溶性細胞外ドメイン型を意味する。DR4レセプターの完全長アミノ酸配列を図2に示す。
ここで使用される「DR5」及び「DR5レセプター」という用語は、Sheridanら, Science, 277:818-821 (1997);Panら, Science, 277:815-818 (1997)、2000年6月6日発行の米国特許第6072047号、1998年11月19日公開の国際公開98/51793;1998年9月24日公開の国際公開98/41629;Screatonら, Curr. Biol., 7:693-696 (1997);Walczakら, EMBO J., 16:5386-5387 (1997);Wuら, Nature Genetics, 17:141-143 (1997);1998年8月20日公開の国際公開98/35986;1998年10月14日公開の欧州特許第870827号;998年10月22日公開の国際公開98/46643;1999年1月21日公開の国際公開99/02653;1999年2月25日公開の国際公開99/09165;1999年3月11日公開の国際公開99/11791に記載されているレセプターの完全長可溶性細胞外ドメイン型を意味する。DR5レセプターは当該分野においてApo-2;TRAIL-R、TR6、Tango-63、hAPO8、TRICK2又はKILLERとも呼ばれている。ここで使用されるDR5という用語には、図3Aに提供された完全長411アミノ酸ポリペプチド及び図3B−3Cに提供された完全長440アミノ酸ポリペプチドが含まれる。
【0028】
ここで使用される場合の「ポリオール」という用語は広義に多価アルコール化合物を意味する。ポリオールは例えば任意の水可溶型ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーであり得、直鎖又は分枝鎖を有しうる。好適なポリオールには、一又は複数のヒドロキシル位置に化学基、例えば1から4の炭素を有するアルキル基が置換されているものが含まれる。典型的には、ポリオールはポリ(アルキレングリコール)、好ましくはポリ(エチレングリコール)(PEG)である。しかし、当業者であれば、他のポリオール、例えばポリ(プロピレングリコール)及びポリエチレン−ポリプロピレングリコールコポリマーを、ここでPEGについて記載した抱合技術を使用して用いることができることが分かるであろう。本発明のポリオールには当該分野でよく知られたもの及び公的に入手可能なもの、例えば商業的に利用可能な供給源からのものが含まれる。
「抱合(コンジュゲート)」という用語は、ここではその最も広い定義で使用され、共に接合(joined)又は結合(linked)されていることを意味する。分子は、接合されているように作用又は機能する場合、「抱合」されている。
【0029】
「細胞外ドメイン」又は「ECD」という用語は、膜貫通及び細胞質ドメインを本質的に持たないリガンド又はレセプターの型を意味する。通常、可溶性ECDは、そのような膜貫通及び細胞質ドメインを1%未満、好ましくはそのようなドメインを0.5%未満だけ有する。
「二価の金属イオン」という用語は、二つの正電荷を有する金属イオンを称する。本発明において使用される二価金属イオンの例には、限定されるものではないが、亜鉛、コバルト、ニッケル、カドミウム、マグネシウム、及びマンガンが含まれる。かかる金属の特定の形態は塩形態(例えば、製薬剤的に許容可能な塩形態)、例えば、上述の二価の金属イオンの塩化物、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩及び硫酸塩形態を含むものが用いられうる。本明細書に記載の記載の二価金属イオンは、好ましくは、例えば、(1)所望する期間にわたってApo-2L三量体の貯蔵安定性を高め、(2)組換え細胞培養又は精製法においてApo-2L三量体の生産又は収量を高め、(3)Apo-2L三量体の溶解性を高め(又は凝集性を低下させ)、又は(4)Apo-2L三量体の形成を高めるのに十分な濃度又は量(例えば有効量)で用いられる。
【0030】
「単離された」とは、ここで開示された種々のタンパク質を記述するために使用するときは、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたタンパク質を意味する。その自然環境の汚染成分とは、タンパク質の診断又は治療的な使用を典型的には妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様では、タンパク質は、(1)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15のN末端あるいは内部アミノ酸配列の残基を得るのに充分なほど、あるいは、(2)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEにより均一になるまで充分なほど精製される。タンパク質の自然環境の少なくとも一の成分が存在しないため、単離されたタンパク質には、組換え細胞内のインサイツでのタンパク質が含まれる。しかしながら、通常は、単離されたタンパク質は少なくとも一の精製工程により調製される。
「単離された」核酸分子は、同定され、核酸の天然源に通常付随している少なくとも一の汚染核酸分子から分離された核酸分子である。単離されたApo-2リガンド核酸分子は、天然に見出される形態あるいは設定以外のものである。故に、単離されたApo-2リガンド核酸分子は、天然の細胞中に存在するApo-2リガンド核酸分子とは区別される。しかし、単離されたApo-2リガンド核酸分子は、例えば、核酸分子が天然の細胞のものとは異なった染色体位置にあるApo-2リガンドを通常発現する細胞に含まれるApo-2リガンド核酸分子を含む。
【0031】
ここで特定されている配列に対する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、必要ならば最大のパーセント配列同一性を得るために間隙を導入し、如何なる同類置換も配列同一性の一部と考えないとした後の、Apo-2リガンド配列のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法で達成可能であり、比較される配列の完全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要なアルゴリズムを割り当てることを含み、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。ここでの目的のために、パーセントアミノ酸同一性値は、ジェネンテック社によって作成され、ソースコードが米国著作権庁, Washington D.C., 20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を用いて得られる。ALIGN-2プログラムはジェネンテック社、South San Francisco, CAを通して公に入手可能である。全ての配列比較パラメーターはALIGN-2プログラムにより設定され、変化しない。
「コントロール配列」という用語は、特定の宿主生物において作用可能に結合したコード配列を発現するために必要なDNA配列を指す。原核生物に好適なコントロール配列は、例えばプロモーター、場合によってはオペレータ配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核生物の細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを利用することが知られている。
【0032】
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係にあるときに「作用可能に結合し」ている。例えば、プレ配列あるいは分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に寄与するプレタンパク質として発現されているならそのポリペプチドのDNAに作用可能に結合している;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼすならばコード配列に作用可能に結合している;又はリボソーム結合部位は、もしそれが翻訳を容易にするような位置にあるならコード配列と作用可能に結合している。一般的に、「作用可能に結合する」とは、結合されたDNA配列が近接しており、分泌リーダーの場合には近接していて読みフェーズにある。しかし、エンハンサーは必ずしも近接しているわけではない。結合は簡便な制限部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、通常の手法にしたがって、合成されたオリゴヌクレオチドアダプターあるいはリンカーが使用される。
【0033】
「B細胞」は骨髄内で成熟するリンパ球であり、ナイーブB細胞、メモリーB細胞、又はエフェクターB細胞(プラズマ細胞)などがある。本明細書中のB細胞は正常又は非悪性のB細胞でもよい。
「CD20」抗原は、末梢血又はリンパ系器官の90%以上のB細胞の表面にみられる35kDa以下の非グルコシル化リンタンパク質である。CD20は正常B細胞だけでなく悪性のB細胞上に存在するが、幹細胞には発現しない。CD20を指す文献中での他の名前には、「Bリンパ球限定抗原(B-lymphocyte-restricted antigen)」及び「Bp35」が含まれる。CD20抗原は、例としてClark等. PNAS (USA) 82:1766 (1985)に記載されている。
【0034】
CD20抗原に結合する抗体の例には以下のものが含まれる:現在では「リツキシマブ」(「リツキサン(登録商標)」)と呼称される「C2B8」(米国特許第5,736,137号);「Y2B8」又は「Ibritumomab Tiuxetan」ゼバリン(登録商標)と命名されるイットリウム-[90]-標識2B8マウス抗体、Idec Pharmaceuticals, Inc.から市販(米国特許第5,736,137号;1993年6月22日に受託番号HB11388としてATCCに寄託された2B8);場合によってはCorixaから市販の「131I-B1」抗体(ヨードI131 tositumomab、BEXXARTM)を生成するために131Iで標識した「Tositumomab」とも呼称されるマウスIgG2a「B1」(米国特許第5,595,721号も参照のこと);マウスモノクローナル抗体「1F5」(Press等 Blood 69(2):584-591 (1987)及びそれらの変異体、例として「フレームワークパッチ」又はヒト化1F5(国際公報03/002607, Leung, S;ATCC寄託番号HB-96450);マウス2H7及びキメラ2H7抗体(米国特許第5,677,180号);ヒト化2H7;B細胞の細胞膜のCD20分子を標的としたHUMAX-CD20TM完全ヒト、高親和性抗体(Genmab, Denmark;例としてGlennie及びvan de Winkel, Drug Discovery Today 8: 503-510 (2003)とCragg 等, Blood 101: 1045-1052 (2003)を参照);国際公報2004/035607(Teeling 等)に記載のヒトモノクローナル抗体;AME-133TM抗体(Applied Molecular Evolution);キメラ又はヒト化A20抗体(それぞれcA20、hA20)などのA20抗体又はその変異体(米国公開番号2003/0219433、免疫医学);及びInternational Leukocyte Typing Workshopより入手のモノクローナル抗体L27、G28-2、93-1B3、B-C1又はNU-B2(Valentine等, Leukocyte Typing III (McMichael, 編集, 440頁, Oxford University Press (1987))。本明細書中の好適なCD20抗体は、キメラCD20抗体、ヒト化CD20抗体またはヒトCD20抗体、より好ましくはリツキシマブ、ヒト化2H7、キメラないしはヒト化A20抗体(Immunomedics)、及びHUMAX-CD20TM ヒトCD20抗体(Genmab)である。
【0035】
ここで言う「リツキシマブ」又は「リツキサン(登録商標)」なる用語は、CD20抗原に対する一般的に遺伝学的に操作したキメラのマウス/ヒトモノクローナル抗体を指し、米国特許第5,736,137号では「C2B8」と命名されるものであり、CD20を結合する能力を保持する該抗体の断片を含みうる。
単に本願明細書中の目的のために、特別に明記しなければ、「ヒト化2H7」は、ヒト化CD20抗体又はその抗原結合断片を意味し、該抗体がインビボで霊長類のB細胞を枯渇させる効果を有し、該抗体はそのH鎖可変領域(VH)に抗ヒトCD20抗体由来の少なくとも1のCDRH3配列と実質的なヒト重鎖サブグループIII(VHIII)のヒトコンセンサスフレームワーク(FR)残基を有するものである。
【0036】
好適なヒト化2H7は可変軽鎖配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASSSVSYMHWYQQKPGKAPKPLIYAPSNLASGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQWSFNPPTFGQGTKVEIKR (配列番号:7);
と、可変重鎖配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTSYNMHWVRQAPGKGLEWVGAIYPGNGDTSYNQKFKGRFTISVDKSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARVVYYSNSYWYFDVWGQGTLVTVSS (配列番号:8)
を含有する完全な抗体ないしは抗体断片である。
【0037】
ヒト化2H7抗体が完全な抗体である場合、軽鎖アミノ酸配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASSSVSYMHWYQQKPGKAPKPLIYAPSNLASGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQWSFNPPTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC (配列番号:9);
と、重鎖アミノ酸配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTSYNMHWVRQAPGKGLEWVGAIYPGNGDTSYNQKFKGRFTISVDKSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARVVYYSNSYWYFDVWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK (配列番号:10)
又は、重鎖アミノ酸配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTSYNMHWVRQAPGKGLEWVGAIYPGNGDTSYNQKFKGRFTISVDKSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARVVYYSNSYWYFDVWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNATYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIAATISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK (配列番号:11)
を含有するのが好ましい。
【0038】
「抗体依存性細胞障害活性」または「ADCC」は、Fcレセプター(FcR)を発現する非特異的細胞障害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)が標的細胞上の結合した抗体を認識し、続いて標的細胞を溶解する細胞媒介性反応を指す。ADCCを媒介する一次細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現する一方、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血性細胞でのFcRの発現は、Ravetch及びKinet, Annu.Rev.Immunol., 9:457-92(1991)の464頁の表3に要約されている。対象分子のADCC活性を評価するためには、米国特許第5500362号又は第5821337号に記載されているようなインビトロADCCアッセイが実施されうる。そのようなアッセイのための有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー細胞(NK)細胞を含む。あるいは、又は付加的に、対象分子のADCC活性は、例えばClynes等 .PNAS(USA), 95:652-656(1998)に開示されたような動物モデルにおいて、インビボで評価されてもよい。
「ヒトエフェクター細胞」とは、1つ又は複数のFcRsを発現し、エフェクター機能を実行する白血球のことである。好ましくは、その細胞が少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行する。ADCCを媒介するヒト白血球の例として、末梢血液単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞障害性T細胞及び好中球が含まれるが、PBMCとNK細胞が好適である。
【0039】
「Fcレセプター」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合するレセプターを表す。好適なFcRは、天然配列ヒトFcRである。さらに好適なFcRは、IgG抗体(γレセプター)に結合し、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIサブクラスのレセプターを含むものであり、これらのレセプターの対立遺伝子変異体及び選択的スプライシング型を含む。FcγRIIレセプターは、FcγRIIA(「活性化レセプター」)及びFcγRIIB(「阻害レセプター」)を含み、それらは、主としてその細胞質ドメインにおいて異なる類似のアミノ酸配列を有する。活性化レセプターFcγRIIAは、その細胞質ドメインに、免疫レセプターチロシン−ベース活性化モチーフ(ITAM)を有する。阻害レセプターFcγRIIBは、その細胞質ドメインに、免疫レセプターチロシン−ベース阻害モチーフ(ITIM)を有する(Daeron, Annu. Rev. Immunol., 15:203-234(1997)参照)。FcRはRavetch及びKinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991);Capelら, Immunomethods 4:25-34 (1994);及びde Hasら, J. Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995)において概説されている。将来同定されるものも含む他のFcRが、ここにおける「FcR」なる用語によって包含される。この用語は胎児への母性IgGの移動の原因である新生児レセプター、FcRnもまた含む(Guyerら, J. Immumol. 117:587 (1976)及びKimら, J. Immunol. 24:249 (1994))。本明細書中のFcRはFcγRIIIaをコードする遺伝子内に遺伝的二形性などの多型を含有し、それによってIgG1に結合するレセプターの領域内に位置するアミノ酸位置158がフェニルアラニン(F)又はバリン(V)となる。ホモ接合体バリンFcγRIIIa(FcγRIIIa-158V)は、ホモ接合体フェニルアラニンFcγRIIIa(FcγRIIIa-158F)又はヘテロ(FcγRIIIa-158F/V)レセプターと比較してインビトロでのADCC媒介を増加し、ヒトIgG1に対する親和性も高いことが示された。
【0040】
「補体依存性細胞障害」もしくは「CDC」は、補体の存在下で標的を溶解することを意味する。補体活性化経路は補体系(Clq)の第1補体が、同族抗原と結合した分子(例えば、抗体)に結合することにより開始される。補体の活性化を評価するために、CDCアッセイを、例えばGazzano-Santoro等, J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載されているように実施することができる。
ここで「抗体」なる用語は、広い意味で用いられ、特に無傷のモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの無傷の抗体から形成した多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び所望の生物学的活性を有する限りにおける抗体断片の範囲にわたる。
「抗体断片」は、無傷の抗体の一部、好ましくはその抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFv断片;ダイアボディ;線形抗体;一本鎖抗体分子;及び抗体断片から形成された多特異性抗体が含まれる。
【0041】
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖からなる、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は一つの共有ジスルフィド結合により重鎖に結合しており、ジスルフィド結合の数は、異なった免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の中で変化する。また各重鎖と軽鎖は、規則的に離間した鎖間ジスルフィド結合を有している。各重鎖は、多くの定常ドメインが続く可変ドメイン(VH)を一端に有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)を、他端に定常ドメインを有する;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている。
【0042】
「可変」という用語は、可変ドメインのある部位が、抗体の中で配列が広範囲に異なっており、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合性及び特異性に使用されているという事実を意味する。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメインにわたって一様には分布していない。軽鎖及び重鎖の可変ドメインの両方の高頻度可変領域と呼ばれる3つのセグメントに濃縮される。可変ドメインのより高度に保持された部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、βシート構造を結合し、ある場合にはその一部を形成するループ結合を形成する、3つの高頻度可変領域により連結されたβシート配置を主にとる4つのFRをそれぞれ含んでいる。各鎖の高頻度可変領域は、FRによって近接して結合され、他の鎖の高頻度可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabatら, Sequence of Proteins ofImmunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, BEthesda, MD. (1991))。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関連しているものではないが、種々のエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞媒介性障害活性(ADCC)への抗体の関与を示す。
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗体結合断片を生成し、その各々は単一の抗原結合部位を持ち、残りは容易に結晶化する能力を反映して「Fc」断片と命名される。ペプシン処理はF(ab')2断片を生じ、それは2つの抗原結合部位を持ち、抗原を交差結合することができる。
【0043】
「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含む最小抗体断片である。この領域は、堅固な非共有結合をなした一つの重鎖及び一つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。この配置において、各可変ドメインの3つの高頻度可変領域は相互に作用してVH-VL二量体表面に抗原結合部位を形成する。集合的に、6つの高頻度可変領域が抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一の可変ドメイン(又は抗原に対して特異的な3つの高頻度可変領域のみを含むFvの半分)でさえ、全結合部位よりも親和性が低くなるが、抗原を認識して結合する能力を有している。
またFab断片は、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第一定常領域(CH1)を有する。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含む重鎖CH1領域のカルボキシ末端に数個の残基が付加している点でFab断片とは異なる。Fab'-SHは、定常ドメインのシステイン残基が少なくとも一つの遊離チオール基を担持しているFab'に対するここでの命名である。F(ab')2抗体断片は、間にヒンジシステインを有するFab'断片の対として生産された。また、抗体断片の他の化学結合も知られている。
【0044】
任意の脊椎動物種からの抗体(イムノグロブリン)の「軽鎖」には、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に区別される型の一つが割り当てられる。
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、抗体は異なるクラスが割り当てられる。無傷の抗体には5つの主なクラスがある:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM、更にそれらは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgA2等のサブクラス(イソ型)に分かれる。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。イムノグロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元立体配位はよく知られている。
「一本鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。好ましくは、FvポリペプチドはVH及びVLドメイン間にポリペプチドリンカーを更に含み、それはscFvが抗原結合に望まれる構造を形成するのを可能にする。scFvの概説については、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)のPluckthunを参照のこと。
【0045】
「ダイアボディ」なる用語は、二つの抗原結合部位を持つ小さい抗体断片を指し、その断片は同一のポリペプチド鎖(VH−VL)内で軽鎖可変ドメイン(VL)に重鎖可変ドメイン(VH)が結合してなる。非常に短いために同一鎖上で二つのドメインの対形成が可能であるリンカーを使用して、ドメインを他の鎖の相補ドメインと強制的に対形成させ、二つの抗原結合部位を創製する。ダイアボディーは、例えば、欧州特許第404,097号;国際公報93/11161;及びHollingerら, Proc.Natl.Acad.Sci. USA 90:6444-6448 (1993)に更に詳細に記載されている。
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味する。すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在しうる自然に生じる可能性がある突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に対するものである。更に、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的には含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは異なり、各モノクローナル抗体は抗原の単一の決定基に対するものである。その特異性に加えて、モノクローナル抗体はハイブリドーマ培養により合成され、他のイムノグロブリンの混入がないという利点がある。「モノクローナル」との修飾語句は、実質的に均一な抗体の集団から得たものとしての抗体の性質を表すものであり、抗体が何か特定の方法による生成を必要として構築したものであることを意味するものではない。例えば、本発明において使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler等, Nature, 256:495 (1975)に記載されたハイブリドーマ法によって作ることができ、あるいは組換えDNA法によって作ることができる(例えば米国特許第4816567号を参照のこと)。また「モノクローナル抗体」は、例えば、Clackson等, Nature, 352:624-628 (1991)およびMarks等, J. Mol. biol. 222: 581-597 (1991)に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリーから作成することもできる。
【0046】
ここで言うモノクローナル抗体は、特に「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を含み、それは特定の種由来または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体が持つ配列に一致するまたは類似する重鎖および/または軽鎖の一部を含むものであり、残りの鎖は、所望の生物学的活性を表す限り、抗体断片のように他の種由来または他の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体が持つ配列に一致するまたは類似するものである(米国特許第4,816,567号;およびMorrisonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))。ここで対象とするキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば、ヒヒ、アカゲザル又はカニクイザルなどの旧世界サル)由来の可変ドメイン抗原結合配列とヒト定常領域配列を含む「霊長類化」抗体を含む(米国特許第5,693,780号)。
非ヒト(例えばマウス)の抗体の「ヒト化」型は、非ヒトイムノグロブリン(免疫グロブリン)に由来する最小配列を含むキメラ抗体である。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)からの高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。例として、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、もしくはドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性を更に洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいは実質的に全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、ヒト免疫グロブリン配列の高頻度可変ループがFRのすべて又は実質的にすべてである少なくとも一又は一般的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。また、ヒト化抗体は、場合によっては免疫グロブリン定常領域(Fc)の一部、一般的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も含む。更なる詳細については、Jones等, Nature 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature 332:323-329 (1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照のこと。
【0047】
ここで使用されるところの「高頻度可変領域」なる用語は、抗原結合に寄与する抗体のアミノ酸残基を意味する。高頻度可変領域は一般には「相補性決定領域」又は「CDR」からのアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメインの残基24−34(L1)、50−56(L2)及び89−97(L3)、及び重鎖可変ドメインの31−35(H1)、50−65(H2)及び95−102(H3);Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest,5版, Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD.(1991))及び/又は「高頻度可変ループ」からの残基(例えば、軽鎖可変ドメインの残基26−32(L1)、50−52(L2)及び91−96(L3)及び重鎖可変ドメインの残基26−32(H1)、53−55(H2)及び96−101(H3);Chothia及びLesk J.Mol.Biol. 196:901-917 (1987))を含む。「フレームワーク」又は「FR」残基はここで定義するように高頻度可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
目的の抗原、例えばCD20又はDR4又はDR5に「結合する」抗体とは、抗体が抗原発現細胞を標的とした治療薬として有用となるように十分な親和性及び/又は結合活性を有して抗原に結合することができるものである。
ここでの目的のための「免疫治療」とは、抗体を用いた哺乳動物(好ましくはヒト患者)の治療方法を意味し、この抗体はコンジュゲートされたもの又は「ありのままの」抗体でもよいし、又は一又は複数の細胞障害性剤などの薬剤やヘテロ分子とコンジュゲート又は融合して、それによって「免疫コンジュゲートを生成してもよい。
【0048】
「単離された」抗体は、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたものを意味する。その自然環境の汚染成分は、アンタゴニスト又は抗体の診断又は治療への使用を妨害しうる物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様においては、抗体は、(1)ローリー(Lowry)法により定量して、抗体が95重量%より多くなるほど、最も好ましくは99重量%より多くなるまで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、N末端あるいは内部アミノ酸配列の少なくとも15の残基を得るのに充分な程度まで、あるいは、(3)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性が得られるように充分な程度まで精製される。抗体の自然環境の少なくとも一つの成分が存在しないため、単離された抗体には、組換え細胞内のインサイツの抗体が含まれる。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも1つの精製工程により調製される。
「有効量」という用語は、疑われる疾患又は症状を予防、寛解又は治療するために効果的なApo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体及びCD20抗体の量を意味する。
【0049】
ここで補助治療として用いる「免疫抑制剤」という用語は、本明細書中で治療される哺乳動物の免疫系を抑制する又は遮断するように働く物質を表す。これは、サイトカイン産生を抑制する、自己抗原の発現を下方制御または抑制する、あるいはMHC抗原を遮断する物質を含む。そのような薬剤の例として、2-アミノ-6-アリル-5-代替ピリミジン(米国特許第4,665,077号参照、出典明記によりその開示内容がここに組み込まれる);非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs);アザチオプリン;シクロフォスファミド;ブロモクリプチン;ダナゾール;ダプソン;グルタルアルデヒド (米国特許第4,120,649号に記載のように、MHC抗原を遮断する);MHC抗原及びMHCフラグメントに対する抗イデオタイプ抗体;シクロスポリンA;糖質ステロイドなどのステロイド、例としてプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、及びヒドロコルチゾン;メトトレキサート(経口又は皮下);ヒドロキシクロロキン;スルファサラジン;レフルノミド;サイトカイン又はサイトカインレセプターアンタゴニスト、例として抗インターフェロン-γ、-β、又は-α抗体、抗腫瘍壊死因子α抗体(インフリキシマブ又はアダリムマブ)、抗TNFαイムノアドヘシン(エタネルセプト)、抗腫瘍壊死因子β抗体、抗インターロイキン2抗体、及び抗IL-2レセプター抗体;抗CD11a及び抗CD18抗体を含む抗LFA-1抗体;抗-L3T4抗体;異種性抗リンパ球グロブリン;pan-T抗体、好ましくは、抗-CD3又は抗CD4/CD4a抗体;LFA-3結合ドメインを含む可溶性ペプチド(1990年7月26日公開の国際公報90/08187);ストレプトキナーゼ;TGF−β;ストレプトドルナーゼ(streptodornase);宿主由来のRNA又はDNA;FK506;RS-61443;デオキシスペルグアニン(deoxyspergualin);ラパマイシン;T細胞レセプター (Cohen等, 米国特許第5,114,721号);T細胞レセプターフラグメント(Offner 等, Science 251:430-432 (1991);国際公報90/11294;Ianeway, Nature, 341: 482 (1989);及び国際公報 91/01133);及びT10B9などのT細胞レセプター抗体 (欧州特許第340,109号)を含む。
【0050】
ここで使用する「細胞障害性剤」なる用語は、細胞の機能を阻害又は阻止する、及び/又は細胞破壊をもたらす物質を表す。この用語は、放射性同位体(例として、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射性同位体)、化学療法剤、及び細菌、真菌、植物、又は動物起源の酵素活性毒素又は小分子毒素などの毒素、またはそれらの断片を含むことを意図する。
本明細書中で目的とする「相乗的活性」又は「相乗作用」又は「相乗効果」又は「相乗的な有効量」とは、Apo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体とCD20抗体とを組み合わせて用いた場合に観察される効果が、(1)Apo2L/TRAIL、デスレセプター抗体又はCD20抗体を単独(別々に)用いる場合に達する効果よりも大きい、及び(2)Apo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体とCD20抗体との合計付加(付加的な)効果よりも大きいことを意味する。そのような相乗作用又は相乗効果は、当業者に公知の様々な方法によって測定することができる。例えば、Apo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体及びCD20抗体の相乗効果は、腫瘍細胞数又は腫瘍体積の減少を測定するインビトロ又はインビボアッセイ様式で観察されうる。
【0051】
「アポトーシス」及び「アポトーシス活性」という用語は広義に使用され、典型的には、細胞質の凝集、原形質膜の微絨毛の喪失、核の分節化、染色体DNAの分解又はミトコンドリア機能の喪失を含む一又は複数の特徴的な細胞変化を伴う、哺乳動物における細胞死の規則的又は制御された形態を称する。この活性は、当該分野で公知の、例えば細胞生死判別アッセイ、FACS分析又はDNA電気泳動法を用いて、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞収縮、小胞体の拡張、細胞断片化、及び/又は膜小胞(アポトーシス体と呼ばれる)の形成を決定して測定することができる。抗体(例えばリツキシマブ)のアポトーシスを誘導する能力を決定するアッセイは、例えばShan 等 Cancer Immunol Immunther 48:673-83 (2000);Pedersen 等 Blood 99:1314-9 (2002);Demidem 等 Cancer Chemotherapy & Radiopharmaceuticals 12(3):177-186 (1997)に記載されている。
「癌」、「癌性」及び「悪性」という用語は、典型的には調節されない細胞成長を特徴とする、哺乳動物の生理学的状態を称するか説明する。癌の例には、これらに限定されるものではないが、腺癌、リンパ腫、芽細胞腫、メラノーマ、肉腫及び白血病などがある。このような癌のより具体的な例として、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、胃腸癌、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫、膵癌、神経膠芽腫、膠腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、例えば肝腫瘍及び肝細胞癌(hepatoma)、膀胱癌、乳癌、大腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜上皮癌、骨髄腫(例えば多発性骨髄腫)、唾液腺上皮癌、腎臓癌、例えば腎臓細胞上皮癌及びウィルムス腫瘍、基底細胞癌、メラノーマ、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、精巣癌、食道癌、及び様々な種類の頭頸部癌などがある。
【0052】
「免疫関連疾患」という用語は、哺乳動物の免疫系の成分が、哺乳動物の病理学的状態の原因であるか、媒介又は寄与するものである疾患を意味する。また、免疫反応の刺激又は介在により疾患の進行に改善された効果が付与される疾患も含まれる。この用語には、自己免疫疾患、免疫媒介炎症疾患、非免疫媒介炎症疾患、感染症、及び免疫欠損症が含まれる。そのうちの一部が免疫又はT細胞媒介であり、本発明によって治療することが可能な免疫関連及び炎症性疾患の例には、全身性エリテマトーデス、リウマチ様関節炎、若年型慢性関節炎、脊椎関節症、全身性硬化症(強皮症)、特発性炎症性筋疾患(皮膚筋炎、多発性筋炎)、シェーグレン症候群、全身性血管炎、サルコイドーシス、自己免疫性溶血性貧血(免疫性汎血球減少症、発作性夜間ヘモグロビン尿症)、自己免疫性血小板減少症(溶血性血小板減少性紫斑病、免疫媒介血小板減少症)、甲状腺炎(バセドウ病、橋本甲状腺炎、若年型リンパ球性甲状腺炎、萎縮性甲状腺炎)、糖尿病、免疫媒介腎疾患(糸球体腎炎、尿細管間質性腎炎)、中枢及び末梢神経系の脱髄疾患例えば多発性硬化症、特発性脱髄多発神経障害又はギラン・バレー症候群、及び慢性炎症性脱髄性多発神経障害、肝胆道疾患例えば感染性肝炎(A、B、C、D、E型肝炎、及び他の非肝親和性ウイルス)、自己免疫性慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、肉芽腫性肝炎、及び硬化性胆管炎、炎症性腸疾患等の炎症性及び線維性肺疾患(潰瘍性大腸炎:クローン病)、グルテン過敏性腸疾患、及びウィップル病、水疱性皮膚病を含む自己免疫又は免疫媒介皮膚疾患、多形滲出性紅斑及び接触性皮膚炎、乾癬、アレルギー性疾患例えば喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物過敏症及び蕁麻疹、肺の免疫疾患例えば好酸球性肺炎、特発性肺線維症及び過敏性肺炎、拒絶反応及び移植片対宿主病を含む移植関連疾患が含まれる。感染症疾患には、AIDS(HIV感染)、A、B、C、D及びE型肝炎、細菌感染症、真菌感染症、原虫感染症及び寄生虫症が含まれる。
【0053】
「B細胞悪性腫瘍」は、B細胞が関与している悪性腫瘍である。例として、リンパ球優性ホジキン病(LPHD)を含むホジキン病;非ホジキンリンパ腫(NHL);濾胞性中心の細胞(FCC)リンパ腫;急性リンパ球性白血病(ALL);慢性リンパ球性白血病(CLL);有毛細胞白血病;プラズマ細胞性リンパ球リンパ腫;マントル細胞リンパ腫;エイズ又はHIV関連のリンパ腫;多発性骨髄腫;中枢神経系(CNS)リンパ腫;移植後のリンパ増殖性疾患(PTLD);ワルデンシュトレームマクログロブリン血症(リンパ形質細胞性リンパ腫);粘膜関連リンパ系組織(MALT)リンパ腫;及び、周辺帯リンパ腫/白血病などがある。
非ホジキンリンパ腫(NHL)は、限定するものではないが、軽度の/濾胞性NHL、再発性又は抵抗性NHL、前面の軽度のNHL、ステージIII/IV NHL、化学療法耐性のNHL、小リンパ球(SL)NHL、中程度の/濾胞性NHL、中程度の広汎性NHL、広汎性大細胞リンパ腫、活動性NHL(活動性前面のNHL及び活動性再発性NHLを含む)、自己由来の幹細胞移植の後に再発したNHL又はその移植に抵抗性のNHL、高度免疫芽細胞NHL、高度リンパ芽球NHL、高度小非非正円形細胞NHL、バルキー(bulky)疾患NHLなどがある。
【0054】
ここで言う「自己免疫疾患」とは、個体自身の組織から生じて個体自身の組織に対して起こる疾患又は障害、あるいはその同時分離いたものないしは徴候又は結果として生じる症状である。自己免疫疾患又は障害の例には、限定するものではないが、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、骨関節症、乾癬の関節炎及び強直性脊椎炎)、乾癬、アトピー性皮膚炎を含む皮膚炎;慢性特発性蕁麻疹、例えば慢性自己免疫蕁麻疹、多発性筋炎/皮膚筋炎、中毒性表皮の表皮壊死症、全身強皮症及び硬化症、炎症性腸疾患(IBD)(クローン病、潰瘍性大腸炎)と関連している応答、及び膿皮症壊疽の同時分離を伴うIBD、結節性紅斑、原発性硬化性胆管炎、及び/又は上強膜炎)、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む呼吸窮迫症候群、髄膜炎、IgE媒介性疾患、例えばアナフィラキシー及びアレルギー性鼻炎、ラスマッセン脳炎のような脳炎、ブドウ膜炎、大腸炎、例えば顕微鏡的大腸炎及び膠原性大腸炎、膜性GNなどの糸球体腎炎(GN)、特発性膜性GN、I型及びII型及び急速進行性GNを含む膜性増殖性GN(MPGN)、アレルギー症状、湿疹、喘息、T細胞の浸潤が関与している症状及び慢性炎症反応、アテローム性動脈硬化症、自己免疫心筋炎、白血球癒着不全、皮膚SLEのような全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス(腎炎、脳炎、小児科、非腎臓、ジスコイド、脱毛症を含む)、若年型糖尿病、脊髄視覚MSなどの多発性硬化症(MS)、アレルギー性脳脊髄炎、サイトカイン及びTリンパ球によって媒介される急性及び遅発性過敏症と関連している免疫応答、結核、サルコイドーシス、ヴェゲナー肉芽腫症を含む肉芽腫症、無顆粒球症、脈管炎(大動脈管炎(リウマチ性多発筋痛症及び巨細胞(高安)動脈炎を含む)、中脈管炎(川崎病および結節性多発性動脈炎を含む)、CNS脈管炎、及び脈管炎関連ANCA、例えばチャーグ・ストラウス脈管炎又は症候群(CSS))、無形成性貧血、クームス陽性貧血症、ダイアモンド・ブラックファン(Blackfan)貧血症、自己免疫溶血性貧血(AIHA)を含む免疫溶血性貧血、悪性貧血、純粋な赤血球形成不全(赤芽球癆)、第VIII因子欠乏症、血友病A、自己免疫好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球血管外遊出が関与している疾患、CNS炎症性障害、多器官損傷症候群、重症筋無力症、抗原抗体複合体媒介性疾患、抗糸球体基底膜疾患、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット病、キャッスルマン症候群、グッドパスチュア症候群、ランバート・イートン筋無力症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群、固形臓器移植拒絶反応(高い試験板反応性の抗体価、組織のIgA沈澱物及び腎移植、肝移植、腸移植、心臓移植に起因している拒絶などのための前処置を含む)、移植片対宿主病(GVHD)、類天疱瘡水疱、天疱瘡(尋常性、落葉状及び天疱瘡粘液膜類天疱瘡を含む)、自己免疫多腺性内分泌障害、ライター症候群、スティッフマン症候群、免疫複合体腎炎、IgM多発性神経炎又はIgM媒介性神経病、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓症血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫血小板減少を含む血小板減少(例えば心筋梗塞患者に発現)、自己免疫精巣炎及び卵巣炎を含む精巣及び卵巣の自己免疫疾患、原発性甲状腺機能低下症;自己免疫性甲状腺炎を含む自己免疫内分泌性疾患、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)、亜急性の甲状腺炎、特発性の甲状腺機能低下症、アジソン病、甲状腺機能亢進症、自己免疫多腺性症候群(又は多腺性内分泌障害症候群)、小児IDDMを含むインシュリン依存性真正糖尿病(IDDM)とも称されるI型糖尿病、及びシーハン症候群;自己免疫肝炎、リンパ系間質性肺炎(HIV)、閉塞性細気管支炎(非移植)対NSIP、ギランバレ症候群、ベルジェ病(IgAネフロパシ)、原発性胆管萎縮症、脂肪便症(グルテン腸疾患)、同時分離疱疹状皮膚炎を有する抵抗性スプルー、クリオグロブリン血症、アミル栄養側索硬化症(ALS;筋萎縮性側索硬化症)、冠状動脈疾患、自己免疫内耳疾患(AIED)、自己免疫聴力障害、眼球クローヌス筋硬直症候群(OMS)、抵抗性多発性軟骨炎のような多発性軟骨炎、肺胞蛋白症、アミロイドーシス、巨細胞肝炎、強膜炎、不明な/未知の重大なモノクローナル免疫グロブリン増多症(MGUS)、末梢神経障害、腫瘍随伴症候群、チャンネル病、例えば癲癇、片頭痛、不整性、筋疾患、難聴、失明、周期性麻痺及びCNSのチャンネル病;自閉症、炎症性筋疾患及び巣状分節状糸球体硬化症(FSGS)が含まれる。
【0055】
この出願で用いられる用語「プロドラッグ」は、親薬剤に比較して癌細胞に対する細胞障害性が低く、酵素的に活性化又はより活性な親形態に変換される製薬的活性物質の前駆体又は誘導体形態を意味する。例えば、Wilman, 「Prodrugs in Cancer Chemotherapy」, Biochemical Society Transactions, 14, :375-382, 615th Meeting, Belfast (1986)、及びStella 等, 「Prodrugs: A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery」、Directed Drug Delivery, Borchardt等(編), 247-267項, Humana Press (1985)参照。本発明のプロドラッグは、限定するものではないが、ホスファート含有プロドラッグ、チオホスファート含有プロドラッグ、スルファート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D-アミノ酸修飾プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、β-ラクタム含有プロドラッグ、任意に置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ又は任意に置換されたフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、より活性のある細胞毒のない薬剤に転換可能な5-フルオロシトシン及び他の5-フルオロウリジンプロドラッグを含む。限定はしないが、本発明で使用されるプロドラッグ形態に誘導体化可能な細胞障害性剤の例には、以下の化学療法剤が含まれる。
ここで使用する「細胞障害性剤」なる用語は、細胞の機能を阻害又は阻止する、及び/又は細胞破壊をもたらす物質を表す。この用語は、放射性同位体(例として、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射性同位体)、化学療法剤、及び細菌、真菌、植物、又は動物起源の酵素活性毒素又は小分子毒素などの毒素(それらの断片及び/又は変異体を含む)を含むことを意図する。
【0056】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化学的化合物である。化学療法剤の例には、チオテパ及びシクロスホスファミド(CYTOXAN(登録商標))のようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)のようなアジリジン類;アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;アセトゲニン(acetogenins)(特にブラタシン(bullatacin)及びブラタシノン(bullatacinone));カンプトセシン(合成類似体トポテカン(topotecan)を含む);ブリオスタチン;カリスタチン(callystatin);CC-1065(そのアドゼレシン(adozelesin)、カルゼレシン(carzelesin)及びバイゼレシン(bizelesin)合成類似体を含む);クリプトフィシン(cryptophycin)(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン(dolastatin);デュオカルマイシン(duocarmycin )(合成類似体、KW-2189及びCBI-TM1を含む);エレトロビン(eleutherobin);パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコディクチン(sarcodictyin);スポンジスタチン(spongistatin);クロランブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタード等のナイトロジェンマスタード;ニトロスレアス(nitrosureas)、例えばカルムスチン(carmustine)、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン(lomustine)、ニムスチン、ラニムスチン;エネジイン(enediyne) 抗生物質等の抗生物質(例えば、カリケアマイシン(calicheamicin)、特にカリケアマイシンガンマ1I及びカリケアマイシンオメガI1、例えば、Agnew Chem Intl. Ed. Engl., 33:183-186(1994)を参照のこと;ダイネミシンA(dynemicinA)を含むダイネミシン(dynemicin);クロドロネート(clodronate)などのビスホスホネート(bisphosphonates);エスペラマイシン(esperamicin);同様にネオカルチノスタチン発光団及び関連色素蛋白エネジイン(enediyne) 抗生物質発光団)、アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン(bleomycins)、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン(carminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン (モルフォリノ−ドキソルビシン、シアノモルフォリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンCなどのマイトマイシン(mitomycins)、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);メトトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU)のような抗-代謝産物;デノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate)のような葉酸類似体;フルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンのようなプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine)のようなピリミジン類似体;カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone)のようなアンドロゲン類;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンのような抗副腎剤;フロリン酸(frolinic acid)のような葉酸リプレニッシャー(replenisher);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル(eniluracil);アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エポチロン(epothilone);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidamine);メイタンシン(maytansine)及びアンサマイトシン(ansamitocin)のようなメイタンシノイド(maytansinoid);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products, Eugene, OR);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン(rhizoxin);シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(trichothecenes)(特に、T-2トキシン、ベラキュリンA(verracurin A)、ロリデンA(roridin A)及びアングイデン(anguidine));ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばタキソール(登録商標)パクリタキセル、(Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, NJ)、ABRAXANETM クレモフォール(Cremophor)を含まない、アルブミン設計のナノ粒子形状のパクリタキセル(American Pharmaceutical Partners, Schaumberg, Illinois)及びタキソテア(登録商標)ドキセタキセル、(Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル;GEMZAR(登録商標)ゲンシタビン(gemcitabine);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;シスプラチン及びカルボプラチンのようなプラチナ類似体;ビンブラスチン;プラチナ;エトポシド(VP-16);ミトキサントン;ビンクリスチン;NAVELBINE(登録商標)ビノレルビン;ナベルビン(Navelbine);ノバントロン(novantrone);テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセローダ(xeloda);イバンドロナート(ibandronate);CPT-11;トポイソメラーゼインヒビターRFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド類;カペシタビン(capecitabine);並びに上述したものの製薬的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体が含まれる。
【0057】
また、この定義には、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように働く抗ホルモン剤、抗エストロゲン及び選択的エストロゲンレセプターモジュレーター(SERM)など、例えばタモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン(raloxifene)、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストーン(onapristone)、及びFARESTON トレミフェン(Fareston);アロマターゼ酵素を阻害するアロマターゼ阻害物質、それらは副腎でのエストロゲン産生を調節するものであり、例えば4(5)-イミダゾール類、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)メゲストロールアセテート、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、ホルメスタイン(formestanie)、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ゾロゾール(vorozole)、FEMARA(登録商標)レトロゾールおよびARIMIDEX(登録商標)アナストロゾール;;及び抗アンドロゲン、例えばフルタミド(flutamide)、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリン;並びにトロキサシタビン(troxacitabine)(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に不粘着性細胞増殖に関係するシグナル伝達経路の遺伝子の発現を抑制するもの、例えばPKC-alpha、ラルフおよびH-Ras;VEGF発現インヒビター(例えばANGIOZYME(登録商標)リボザイム)及びHER2発現インヒビターなどのリボザイム;遺伝子治療ワクチンなどのワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン及びVAXID(登録商標)ワクチン);PROLEUKIN(登録商標)rIL-2;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1インヒビター;ABARELIX(登録商標)rmRH並びに上記のものの製薬的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体が含まれる。
【0058】
ここで用いられる際の「成長阻害剤」は、細胞の成長をインビトロ又はインビボで阻害する化合物又は組成物を意味する。即ち、成長阻害剤は、S期でそのような遺伝子を過剰発現する細胞の割合を有意に減少させるものである。成長阻害剤の例は、細胞周期を(S期以外の位置で)阻害する薬剤、例えばG1停止又はM期停止を誘発する薬剤を含む。古典的なM期ブロッカーは、ビンカス(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキソール、及びトポII阻害剤、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド及びブレオマイシンを含む。G1を停止するこれらの薬剤は、S期停止にも溢流し、例えば、DNAアルキル化剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、及びara-Cである。更なる情報は、The Molecular Basis of Cancer, Mendelsohn及びIsrael, 編, Chapter 1, 表題「Cell cycle reguration, oncogene, and antineoplastic drugs」, Murakamiら, (WB Saunders: Philadelphia, 1995)、特に13頁に見出すことができる。
【0059】
「サイトカイン」という用語は、一つの細胞集団から放出されるタンパク質であって、他の細胞に対して細胞間メディエータとして作用するものの包括的な用語である。このようなサイトカインの例としては、リンフォカイン、モノカイン、及び伝統的なポリペプチドホルモンを挙げることができる。サイトカインには、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラクシン;プロリラクシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)のような糖タンパク質ホルモン、副甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び黄体形成ホルモン(LH);肝臓成長因子;繊維芽細胞成長因子;プロラクチン;胎盤ラクトゲン;腫瘍壊死因子−α及び−β;ミュラー阻害物質;マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);神経成長因子;血小板成長因子;TGF−αあるいはTGF−βのような形質転換成長因子(TGF);インスリン様成長因子−I及び−II;エリスロポイエチン(EPO);オステオインダクティブ因子;インターフェロン−α、−β、及び−γのようなインターフェロン;マクロファージCSF(M-CSF)のようなコロニー刺激因子(CSF);顆粒球マクロファージCSF(GM−CSF)及び顆粒球CSF(G-CSF);IL-1、IL-2、IL-3、 IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、 IL-8、IL-9、IL-11、IL-12等のインターロイキン(IL);LIF及びキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子が含まれる。ここで使用される場合、サイトカインなる用語は天然源由来あるいは組換え細胞培養由来のタンパク質及び天然配列サイトカインの生物的に活性な等価物を含む。
【0060】
「パッケージ挿入物」は、効能、用途、服用量、投与、配合禁忌、パッケージされている製品と併用される他の治療薬、及び/又はその治療薬の用途に関する警告などについての情報を含む、治療薬の商業的包装を慣習的に含めた指示書を指す。
ここで使用される「治療する」、「治療」、及び「療法」とは、治癒的療法、予防的療法及び防護的療法を称する。
ここで使用される「哺乳類」という用語は、ヒト、ウシ、ウマ、犬及びネコを含む哺乳類に分類されるあらゆる動物に相当する。本発明の好ましい実施態様では、哺乳類はヒトである。
【0061】
II.本発明の組成物及び方法
TNFリガンドファミリーに関連したサイトカインであって、ここにおいて「Apo-2リガンド」又は「TRAIL」と特定されたサイトカインが記載されている。ヒト天然Apo-2リガンドの予測成熟アミノ酸配列は、281個のアミノ酸を含み、約32.5kDaの計算上の分子量を有する。シグナル配列が存在せず内在性疎水性領域が存在することは、Apo-2リガンドがII型膜貫通タンパク質であることを示唆する。また、可溶性細胞外ドメインApo-2リガンドポリペプチドが記載されている。例えば1997年7月17日に公開の国際公開公報97/25428を参照のこと。Apo-2L置換変異体がさらに記載されている。アラニンスキャンニング技術が、生物学的活性を有する種々の置換変異体分子を同定するために利用されてきた。Apo-2リガンドの特定の置換変異体は、少なくとも一つのアミノ酸がアラニン残基等の別のアミノ酸残基によって置換されているものを含む。これら置換変異体は、例えば「D203A」、「D218A」及び「D269A」として同定されている。この命名法は、位置203、218、及び/又は269(図1に示した番号を使用)の残基がアラニン残基によって置換されているApo-2リガンド変異体を同定するために利用されている。場合によっては、本発明のApo-2L変異体は一又は複数のアミノ酸置換を含んでもよい。場合によっては、このようなApo-2L変異体はDR4又はDR5レセプター選択的変異体である。
下記の説明は、核酸をコードするApo-2リガンドを含むベクターで形質転換又は形質移入された宿主細胞を培養し、細胞培養物からポリペプチドを回収することによる、Apo-2リガンド変異体を含むApo-2リガンドを生産する方法に関する。
【0062】
Apo-2リガンドをコードするDNAは、Apo-2リガンドmRNAを有し、これを検出可能なレベルで発現すると考えられる組織から調製された任意のcDNAライブラリーから得ることできる。従って、ヒトApo-2リガンドDNAは、国際公開97/25428に記載されているヒト胎盤cDNAのバクテリオファージライブラリーのような、ヒト組織から調製されたcDNAライブラリーから簡便に得ることが可能である。また、Apo-2リガンドコード化遺伝子は、ゲノムライブラリーから又はオリゴヌクレオチド合成によって得ることもできる。
ライブラリーは、対象となる遺伝子あるいはその遺伝子によりコードされるタンパク質を同定するために設計された(Apo-2リガンドに対する抗体又は少なくとも約20−80塩基のオリゴヌクレオチド等の)プローブによってスクリーニングすることができる。選択されたプローブによるcDNA又はゲノムライブラリーのスクリーニングは、例えばSambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual(New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)に記載されている標準的な手順を使用して実施することができる。Apo-2リガンドをコードする遺伝子を単離する他の方法はPCR法を使用するものである[Sambrookら,上掲;Dieffenbachら, PCR Primer:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1995)]。
【0063】
Apo-2リガンドのアミノ酸配列断片又は変異体は、Apo-2リガンドDNAに適切なヌクレオチド変化を導入するか、所望のApo-2リガンドポリペプチドを合成することにより調製することができる。このような断片又は変異体は、完全長Apo-2リガンドについて図1に示したアミノ酸配列の、又は細胞内領域、膜貫通領域、又は細胞外領域の内部あるいは一方又は両方の末端に残基の挿入、置換及び/又は欠失を示す。挿入、置換及び/又は欠失の何れかを組み合わせて、ここに定義するような所望の生物活性、例えばアポトーシス活性を有する最終のコンストラクトに到達するように作製することができる。好ましい実施態様では、断片又は変異体は、Apo-2リガンドの細胞内、膜貫通、又は細胞外領域についてここで同定した配列、あるいはApo-2リガンドの完全長配列に対して、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約90%の配列同一性、さらに好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する。また、アミノ酸の変化により、グリコシル化部位の数と位置の変化、又は膜係留特性(膜アンカー特性)の改変のように、Apo-2リガンドの翻訳後プロセスを改変し得る。
ここで記載されているApo-2リガンド配列における変異は、米国特許第5364934号に記載された保存的あるいは非保存的突然変異に関する技術とガイドラインの任意のものを使用して生じさせることができる。これらは、オリゴヌクレオチド媒介(部位特異的)突然変異誘発、アラニンスキャニング、及びPCR突然変異誘発を含む。
【0064】
近接配列に沿った一又は複数のアミノ酸を同定するために、スキャニングアミノ酸分析法を使用することができる。好ましいスキャニングアミノ酸は、比較的小さい中性アミノ酸である。このようなアミノ酸には、アラニン、グリシン、セリン及びシステインが含まれる。変異体の主鎖構造をあまり改変することなく、ベータ炭素を越えた側鎖が除去されるため、アラニンがこの群のなかで好ましいスキャニングアミノ酸である[Cunninghamら, Science, 244: 1081 (1989)]。またアラニンは最も一般的なアミノ酸であることによっても好ましい。さらに、アラニンは埋設及び露出位置の双方に頻繁に見出される[Creighton, The Proteins, (W.H. Freeman & Co., N.Y.);Chothia, J. Mol. Biol., 150:1(1976)]。
アミノ酸はその側鎖の性質の類似性に応じて分類される( Biochemistry, 第2版., pp. 73-75, Worth Publishers, New York (1975)中のA. L. Lehninger):
(1) 非極性:Ala (A), Val (V), Leu (L), Ile (I), Pro (P), Phe (F), Trp (W), Met (M)
(2) 荷電のない極性:Gly (G), Ser (S), Thr (T), Cys (C), Tyr (Y), Asn (N), Gln (Q)
(3) 酸性:Asp (D), Glu (E)
(4) 塩基性:Lys (K), Arg (R), His(H)
あるいは、天然に生じる残基は共通の側鎖性質に基づいてグループに分けられる:
(1) 疎水性:ノルロイシン, Met, Ala, Val, Leu, Ile;
(2) 中性親水性:Cys, Ser, Thr, Asn, Gln;
(3) 酸性:Asp, Glu;
(4) 塩基性:His, Lys, Arg;
(5) 鎖配向に影響する残基:Gly, Pro;
(6) 芳香族:Trp, Tyr, Phe。
【0065】
表1
【0066】
また、本発明の範囲に含まれるApo-2リガンド配列の変異体は、アミノ末端誘導体又は修飾形にも関連する。このようなApo-2リガンド配列は、ポリペプチド配列のN末端にメチオニン又は修飾メチオニン(例えばホルミルメチオニル又は他のブロックされたメチオニル種など)を有するここに記載した任意のApo-2リガンドポリペプチドを含む。
天然又は変異体Apo-2リガンドをコードする核酸(例えば、cDNA又はゲノムDNA)は、さらなるクローニング(DNAの増幅)又は発現のために、複製可能なベクター内に挿入される。様々なベクターが公的に入手可能である。ベクター成分としては、一般に、これらに制限されるものではないが、次のものの一又は複数が含まれる:シグナル配列、複製開始点、一又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサー成分、プロモーター、及び転写終結配列であり、それぞれを以下に説明する。用いられるであろう任意のシグナル配列、複製開始点、マーカー遺伝子、エンハンサーエレメント及び転写終結配列は当該分野で知られており、WO97/25428にさらに詳しく記載されている。
【0067】
発現及びクローニングベクターは、通常、宿主生物によって認識され、Apo-2リガンド核酸配列に作用可能に結合したプロモーターを含む。プロモーターは、作用可能に結合したApo-2リガンド核酸配列のような特定の核酸配列の転写及び翻訳を制御する構造遺伝子(一般的に約100ないし1000塩基対)の開始コドンの上流側(5')に位置する未翻訳配列である。このようなプロモーターは典型的には、誘発的なクラス及び構成的なクラスの2つのクラスに属する。誘発的なプロモーターは、例えば、栄養分の存在あるいは不存在、温度変化などの培養条件のある変化に対応してその制御の下でDNAからの転写レベルを上昇させるプロモーターである。現時点において多種の可能な宿主細胞により認識される非常に多くのプロモーターがよく知られている。これらのプロモーターは、制限酵素の消化によって供給源DNAからプロモーターを除去し、ベクターに単離したプロモーター配列を挿入することで、Apo-2リガンドをコードするDNAに作用的に結合している。天然のApo-2リガンドプロモーター配列及び多くの異種性プロモーターはいずれもApo-2リガンドDNAの直接増幅及び/又は発現に用いることができる。
原核生物及び真核生物宿主に適したプロモーターは当該分野で知られており、国際公開公報97/25428にさらに詳しく記載されている。
【0068】
大腸菌における可溶性Apo-2Lの生産の好ましい方法には、生産物発現の制御のための誘発的プロモーターが用いられる。制御可能な誘発的なプロモーターの利用は、生産物発現の誘発、及び宿主によってよく耐えることのできないかなりの量の生産物の蓄積の前に、所望する細胞密度への培養成長を可能にする。
Apo-2L(114−281形態)の発現のために、いくつかの誘発的なプロモーター系(T7ポリメラーゼ、trp及びアルカリホスファターゼ(AP))が出願人によって評価された。これら三つのプロモーターのそれぞれの利用は、収集細胞ペーストから回収されたかなりの量の可溶性で生物学的に活性なApo-2L三量体を結果として生じた。しっかりとしたプロモーターコントロール、及び収集細胞ペーストにおいて到達したより高い細胞密度及び力価のために、試験されたこれら三つの誘発的なプロモーター系の中でAPプロモーターが好まれている。
【0069】
一又は複数の上に列挙した成分を含む適切なベクターの構築には、標準的なライゲーション技術を用いる。単離されたプラスミド又はDNA断片を開裂させ、整え、そして必要とされるプラスミドの生成のために望ましい形態に再びライゲーションする。
作成されたプラスミドが正しい配列であることを確認する分析のために、ライゲーション混合物を用いて、大腸菌K12菌株294(ATCC31446)を形質転換し、適当な場合にはアンピシリン又はテトラサイクリン耐性によって、形質転換細胞を好適に選択する。形質転換細胞からプラスミドを調製し、制限エンドヌクレアーゼ消化により分析し、及び/又は当該分野で知られている標準的技術を利用して配列を決定する[例えば、Messingら, Nucleic Acids Res., 9:309 (1981);Maxamら, Methods in Enzymology, 65:499 (1980)を参照のこと]。
Apo-2リガンドをコードしているDNAの哺乳動物細胞における一過性発現をもたらす発現ベクターを使用することができる。一般に、一過性発現は、宿主細胞が発現ベクターの多くのコピーを蓄積し、次にその発現ベクターによってコードされている所望のポリペプチドを高レベルで合成するように、宿主細胞中で効果的に複製できる発現ベクターを使用することを含む[Sambrookら, 上掲]。一過性発現系は、適切な発現ベクターと宿主細胞を含むが、クローニングされたDNAによりコードされているポリペプチドの簡便で確実な同定並びに所望の生物学的又は生理学的性質についてのポリペプチドの迅速なスクリーニングを可能にする。したがって、一過性発現系は、本発明において、生物学的に活性なApo-2リガンドであるApo-2リガンドの類似物及び変異体を同定する目的に特に有用である。
【0070】
組換え脊椎動物細胞培養でのApo-2リガンドの合成に適応化させるのに適切な他の方法、ベクター及び宿主細胞は、Gethingら, Nature, 293:620-625 (1981);Manteiら, Nature, 281:40-46 (1979);欧州特許第117,060号;及び欧州特許第117,058号に記載されている。
ここに記載のベクターにDNAをクローニングあるいは発現するために適切な宿主細胞は、上述の原核生物、酵母、又は高等真核生物細胞である。この目的にとって適切な原核生物は、限定するものではないが、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物体、例えばエシェリチアのような腸内菌科、例えば大腸菌、エンテロバクター、エルウィニア(Erwinia)、クレブシエラ、プロテウス、サルモネラ、例えばネズミチフス菌、セラチア属、例えばセラチア・マルセスキャンス及び赤痢菌属、並びにバシラス、例えば枯草菌及びバシラス・リチェフォルミス(licheniformis)(例えば、1989年4月12日に公開されたDD266710に開示されたバシラス・リチェニフォルミス41P)、シュードモナス属、例えば緑膿菌及びストレプトマイセス属を含む。好ましくは、宿主細胞は最小量のタンパク質分解酵素を分泌すべきである。
【0071】
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、Apo-2リガンドをコードするベクターのための適切なクローニング又は発現宿主である。グリコシル化Apo-2リガンドの発現に適切な宿主細胞は、多細胞生物から誘導される。CHO細胞を含むすべてのこのような宿主細胞の例は、さらに国際公開公報97/25428に記載されている。
宿主細胞を形質移入し、好ましくはApo-2リガンド産生のための発現又はクローニングベクターで形質転換し、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適切に修飾された栄養培地で培養する。
形質移入は、如何なるコード配列が実際に発現されるか否かにかかわらず、宿主細胞による発現ベクターの取り込みを意味する。多数のトランスフェクションの方法が当業者に知られている。例えば、CaPO4及びエレクトロポレーションである。このベクターの操作のあらゆる徴候が宿主細胞内で生じたときに成功したトランスフェクションが一般に認められる。
【0072】
形質転換は、染色体外の成分としてであろうと染色体成分によってであろうと、DNAが複製可能であるように生物体中にDNAを導入することを意味する。用いられる宿主細胞に応じて、そのような細胞に対して適した標準的な方法を用いて形質転換はなされる。前掲のSambrookらにより記載された塩化カルシウムを用いるカルシウム処理又はエレクトロポレーションが、原核生物又は実質的な細胞壁障壁を含む他の細胞に対して用いられる。アグロバクテリウム・トゥメファシエンスによる感染が、Shawら, Gene, 23:315 (1983)及び1989年6月29日公開の国際公開公報89/05859に記載されたように、ある種の植物細胞の形質転換に用いられる。加えて、1991年1月10日に公開された国際公開公報91/00358に記載されているように、超音波処理を用いて植物をトランスフェクションすることもできる。
このような細胞壁のない哺乳動物細胞に対しては、Graham及びvan der Eb, Virology, 52:456-457 (1978)のリン酸カルシウム沈殿法が好ましい。哺乳動物細胞の宿主系形質転換の一般的な側面は米国特許第4399216号に記載されている。酵母中の形質転換は、典型的には、Van Solingenら, J. Bact., 130:946 (1977)及びHsiaoら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76:3829 (1979)の方法によって実施する。しかしながら、DNAを細胞中に導入する他の方法、例えば、核マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、無傷の細胞、又はポリカチオン、例えばポリブレン、ポリオルニチン等を用いる細菌プロトプラスト融合もまた用いることもできる。哺乳動物細胞を形質転換するための種々の技術については、Keownら, Methods in Enzymology, 185:527-537 (1990)及び Mansourら, Nature, 336:348-352 (1988)を参照のこと。
【0073】
Apo-2リガンドを生産するために用いられる原核細胞は、前掲のSambrookらにより記載されているような適切な培地で培養される。大腸菌の培養に用いることができる培養培地の特定の形態は、後述の実施例でさらに説明する。大腸菌の培養に用いられうる培養培地の特定の形態は、下記の実施例にさらに記載されている。Apo-2リガンドを生産するための哺乳動物宿主細胞は、種々の培養培地において培養することができる。
市販培地の例としては、ハム(Ham)のF10(シグマ)、最小必須培地(「MEM」、シグマ)、RPMI-1640(シグマ)及びダルベッコの改良イーグル培地(「DMEM」、シグマ)が含まれる。これらの培地はいずれも、ホルモン及び/又は他の成長因子(例えばインスリン、トランスフェリン、又は表皮成長因子)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩)、バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオシド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えば、ゲンタマイシンTM薬)、微量元素(最終濃度がマイクロモル範囲で通常存在する無機化合物として定義される)及びグルコース又は同等のエネルギー源を必要に応じて補充することができる。任意の他の必要な補充物質もまた当業者に知られている適当な濃度で含むことができる。培養条件、例えば温度、pH等々は、発現のために選ばれた宿主細胞について以前から用いられているものであり、当業者には明らかであろう。
【0074】
一般に、哺乳動物の細胞培養の生産性を最大にするための原理、プロトコル、及び実用技術は、Mammalian Cell Biotechnology: A Practical Approach, M.Butler編 (IRL Press, 1991)に見出すことができる。
本発明の一側面では、宿主細胞の培養又は発酵のために、典型的には一又は複数の二価金属イオンが培養培地へ添加されるかあるいは含まれる。二価金属イオンは、好ましくは、貯蔵安定性を増すため、溶解性を増すため、又は一又は複数の亜鉛イオンによって調整される安定なApo-2L三量体の形成を補助するために十分な濃度レベルで培養培地に存在するかあるいは添加される。添加されうる二価金属イオンの量は、一部は培養中の宿主細胞密度又はこのような二価金属イオンへの潜在的な宿主細胞感受性に依存する。培養におけるより高い細胞密度では、二価金属イオンの濃度を増すことは有益である。宿主細胞による生産物の発現中又は発現後に二価金属イオンが添加される場合は、宿主細胞による産物の発現が増加するのに応じて二価金属イオン濃度を調節又は増加させることが望ましい。典型的な普通に入手可能な細胞培養培地に存在しうる微量レベルの二価金属イオンは、安定な三量体形成には十分ではないと一般的に考えられている。従って、本明細書に開示するように、更なる量の二価金属イオンの添加が好ましい。
【0075】
培養中の宿主細胞の成長期の間に二価金属イオンが添加される場合は、二価金属イオンは、逆に又は負の方向に宿主細胞へ影響しない濃度で培養培地へ添加されるのが好ましい。振盪フラスコ培養では、1mMより高い濃度でのZnSO4の添加は、結果として低い宿主細胞密度を生じる可能性がある。当業者であれば、細菌細胞は、細胞マトリックスと金属イオン複合体を形成することで、効果的に金属イオンを隔離することが可能であることが分かる。従って、細胞培養では、成長期の後(所望する宿主細胞密度に達した後)又は宿主細胞による生産物発現の直前に、選択された二価金属イオンを添加することが好ましい。十分な量の二価金属イオンが存在していることを確かめるために、更なる二価金属イオンを、生産物発現期の間に細胞培養培地へ添加又は供給することができる。
培養培地の二価金属イオン濃度は、宿主細胞に対して有害又は毒性でありうる濃度を越えてはならない。宿主細胞として大腸菌を用いる本発明の方法では、培養培地の二価金属イオンの濃度が約1mM(好ましくは≦1mM)を越えないことが好ましい。さらにより好ましくは、培養培地の二価金属イオン濃度は、約50マイクロモルから約250マイクロモルである。最も好ましくは、このような方法で使用される二価金属イオンは硫酸亜鉛である。金属イオン及びApo-2リガンド三量体が1対1モル比で存在することが可能である量の二価金属イオンを細胞培養へ添加することが望ましい。
【0076】
二価金属イオンは、細胞培養へ如何なる許容可能な形態でも添加が可能である。例えば、金属イオンの溶液は水を使って調製することが可能であり、次に、二価金属イオン溶液は培養培地へ添加又は供給することが可能である。
Apo-2Lの発現は、例えば、ここに記載された配列に基づき、適切に標識されたプローブを用い、一般的なサザンブロット法、mRNAの転写を定量化するノーザンブロット法(Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:5201-5205 (1980))、ドットブロット法(DNA分析)、又はインシトゥハイブリダイゼーション法によって、直接的に試料中で測定することができる。種々の標識を用いることができ、最も一般的なものは放射性同位元素、特に32Pである。しかしながら、他の方法、例えばポリヌクレオチド中への導入のためのビオチン修飾ヌクレオチドを用いる方法もまた使用することができる。ついで、このビオチンは、例えば放射性核種、蛍光剤又は酵素等のような広範囲の標識で標識することができるアビジン又は抗体への結合部位となる。あるいは、DNA二本鎖、RNA二本鎖及びDNA-RNAハイブリッド二本鎖又はDNA-タンパク二本鎖を含む、特異的二本鎖を認識することができる抗体を用いることもできる。ついで、抗体を標識し、検定を実施することができ、ここで二本鎖は表面に結合しており、その結果二本鎖の表面での形成の時点でその二本鎖に結合した抗体の存在を検出することができる。あるいは、遺伝子の発現は、遺伝子産物の発現を直接的に定量する免疫学的な方法、例えば組織切片の免疫組織化学的染色及び細胞培養又は体液の検定によって測定することもできる。免疫組織化学的染色技術では、細胞試料を、典型的には脱水と固定によって調製し、結合した遺伝子産物に対し特異的な標識化抗体と反応させるが、この標識は通常は視覚的に検出可能であり、例えば酵素的標識、蛍光標識、ルミネセンス標識等である。
【0077】
試料液の免疫組織化学的染色及び/又はアッセイに有用な抗体は、モノクローナルでもポリクローナルでもよく、任意の哺乳類において調製することができる。簡便には、抗体は、天然配列Apo-2リガンドポリペプチドに対して、又はここで提供されるDNA配列をベースとした合成ペプチドに対して、又はApo-2リガンドDNAに融合し特異的抗体エピトープをコードする外因性配列に対して調製され得る。
Apo-2リガンドは、好ましくは培養培地から分泌されたポリペプチドとして回収されるが、分泌シグナル無しで直接産生される場合は宿主細胞溶菌液から回収してもよい。Apo-2リガンドが膜結合性である場合は、適切な洗浄液(例えばトリトン-X100)を用いて膜から引き離すか、又は酵素的切断によりその細胞外領域を切り離すことができる。
【0078】
Apo-2リガンドがヒト起源のもの以外の組換え細胞でつくられる場合は、Apo-2リガンドはヒト起源のタンパク質又はポリペプチドを含まない。しかしながら、Apo-2リガンドに関して実質的に相同である調製物を得るには、組換え細胞タンパク又はポリペプチドからApo-2リガンドを精製することが通常必要である。第一段階として、培地又は溶菌液を遠心分離して粒状の細胞屑を除去することができる。ついで、Apo-2リガンドを、汚染した可溶性タンパク質及びポリペプチドから、適切な精製手順の例である次の手順により精製される:イオン交換カラムでの分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカ又はカチオン交換樹脂、例えばDEAE又はCM;クロマトフォーカシング;SDS-PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えばセファデックスG-75を用いるゲル濾過;及びIgGのような汚染物を除くプロテインAセファロースカラムである。
好ましい実施態様では、Apo-2リガンドはアフィニティークロマトグラフィーによって精製される。残基が欠失され、挿入され、又は置換されたApo-2リガンド断片又は変異体は、その変異によってしばしば惹起される実質的な性質変化を考慮に入れて、天然Apo-2リガンドと同じようにして回収することができる。例えば、他のタンパク質又はポリペプチド、例えば細菌性もしくはウイルス性抗原とのApo-2リガンド融合体の調製は精製を容易にする;抗原に対する抗体を含む免疫アフィニティーカラムを、融合ポリペプチドを吸着させるために使用することができる。
【0079】
例えばフェニルメチルスルホニルフルオライド(PMSF)のようなプロテアーゼインヒビターもまた精製の間のタンパク分解を阻害するのに有用であり、偶発的な汚染物質の成長を防止するために抗生物質を含めることができる。天然Apo-2リガンドに適切な精製方法は、組換え細胞培養の発現の際におけるApo-2リガンド又はその変異体の特性の変化の起因となる改変が必要となることは、当業者であれば分かるであろう。
このような精製工程では、回収されたApo-2Lを二価金属イオン含有溶液又は一又は複数の二価金属イオンを含有する精製物質(例えばクロマトグラフィー媒体又は支持体)へ曝露することが望ましいであろう。好ましい実施態様では、二価金属イオン及び/又は還元剤は、Apo-2Lの精製又は回収の間に使用される。場合によっては、DTT又はBMEのような二価金属イオン及び還元剤の両方を、Apo-2Lの精製又は回収の間に使用してもよい。精製又は回収の間に二価金属イオンを使用することは、Apo-2L三量体の安定性を提供するか、あるいは細胞培養段階の間に形成されるApo-2L三量体を維持すると考えられる。
【0080】
また、以下の記載は一又は複数の化学基に共有的に結合した(以下「抱合された(conjugated)」)Apo-2リガンドを製造する方法に関する。本発明のApo-2L抱合体に使用するのに適した化学基は好ましくは有意に毒性又は免疫原性ではない。化学基は場合によっては保存することができ保存に適した条件下で使用できるApo-2L抱合体を製造するために選択される。ポリペプチドに抱合されうる様々な例示的化学基が当該分野で知られており、例えば糖タンパク質に天然に生じる炭水化物のような炭水化物、ポリグルタミン、及び非タンパク様ポリマー、例えばポリオールが含まれる(米国特許第6245901号を参照)。
例えばポリオールは、上掲の国際公開93/00109に開示されているように、リジン残基を含む一又は複数のアミノ酸残基においてApo-2Lなどのポリペプチドに抱合されうる。用いられるポリオールは任意の水溶性ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーとでき、直鎖又は分枝鎖を有しうる。好適なポリオールには一又は複数のヒドロキシル位置で1から4の炭素を有するアルキル基のような化学基が置換されているものが含まれる。典型的には、ポリオールはポリ(アルキレングリコール)、例えばポリ(エチレングリコール)(PEG)であり、よって記載を簡単にするために、以下の議論においては、用いるポリオールがPEGである例示的な実施態様に関するものとし、ポリペプチドにポリオールを抱合させる方法を「ペグ化(pegylation)」と称する。しかし、当業者であれば、他のポリオール、例えばポリ(プロピレングリコール)及びポリエチレン-ポリプロピレングリコールコポリマーを、PEGに対してここに記載した抱合法を使用して用いることができることは理解できるであろう。
【0081】
Apo-2Lのペグ化に用いられるPEGの平均分子量は変動し得、典型的には約500から約30000ダルトン(D)の範囲でありうる。好ましくは、PEGの平均分子量は約1000から約25000Dであり、より好ましくは約1000から約5000Dである。一実施態様では、ペグ化は約1000Dの平均分子量を持つPEGを用いて実施される。場合によっては、PEGホモポリマーは未置換であるが、一端にアルキル基が置換されていてもよい。好ましくは、アルキル基はC1−C4アルキル基、最も好ましくはメチル基である。PEG調製物は商業的に入手可能であり、典型的には本発明において使用するのに適したPEG調製物は平均分子量に応じて販売されている非均一調製物である。例えば、市販のPEG(5000)調製物は典型的には分子量が僅かに変動し、通常は±500Dの分子を含む。
本発明のApo-2リガンドは単量体形態又は三量体形態(3つの単量体を含む)等、様々な形態でありうる。場合によっては、Apo-2L三量体は、PEG分子が三量体Apo-2Lを構成する3つの単量体の1つ、2つ、又は全てに結合又は抱合されるようにペグ化される。そのような実施態様では、用いられるPEGは約1000から約5000Dの平均分子量を有するのが好ましい。また、Apo-2L三量体は「部分的に」ペグ化され得、つまり、三量体を構成する三の単量体の一又は二だけがPEGに結合又は抱合される。
【0082】
タンパク質をペグ化するための様々な方法が当該分野で知られている。PEGに抱合したタンパク質を製造するための特定の方法には、米国特許第4179337号、米国特許第4935465号及び米国特許第5849535号に記載された方法が含まれる。典型的には、タンパク質は、主に反応条件、ポリマーの分子量等々に応じて、ポリマーの末端反応性基にタンパク質のアミノ酸残基の一又は複数を介して共有的に結合される。反応性基を有するポリマーはここでは活性化ポリマーと命名する。反応性基はタンパク質の遊離のアミノ又は他の反応性基と選択的に反応する。PEGポリマーは無作為な形又は部位特異的な形の何れかの形でタンパク質上のアミノ又は他の反応性基に結合しうる。しかし、最適な結果を得るために、選択される反応性基のタイプと量、並びに用いられるポリマーのタイプは、反応性基がタンパク質上の余りに多くの特に活性な基と反応することを避けるために用いられる特定のタンパク質又はタンパク質変異体に依存するものと理解される。これは完全に避けることができないであろうため、タンパク質1モル当たり一般に約0.1から1000モル、好ましくは2から200モルの活性化ポリマーを、タンパク質濃度に応じて用いることが推奨される。タンパク質1モル当たりの活性化ポリマーの最終量は、最適な活性を維持し、同時に可能ならばタンパク質の循環半減期を最適化するためのバランス量である。
さらに、本明細書中に記載のApo2Lは、当分野に公知の技術を用いてロイシンジッパー配列に結合又は融合させてもよい。
【0083】
また、デスレセプター抗体及びCD20抗体の産生方法をここに記載する。抗体の製造又はスクリーニングのために用いる抗原は、例として所望のエピトープを含む抗原ないしはその一部の可溶性形態であってもよい。あるいは又はさらに、抗原をその細胞表面上に発現する細胞を抗体の製造又はスクリーニングに用いることができる。抗体の製造に有用な抗原の他の形態は当業者に明らかである。
【0084】
(i) ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連する抗原とアジュバントを複数回皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射することにより動物に産生される。免疫化される種において免疫原性であるタンパク質、例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、又は大豆トリプシンインヒビターに関連抗原を、二官能性又は誘導体形成剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基による抱合)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基による)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2、又はRとR1が異なったアルキル基であるR1N=C=NRにより抱合させることが有用である。
動物を、例えばタンパク質又はコンジュゲート100μg又は5μg(それぞれウサギ又はマウスの場合)を完全フロイントアジュバント3容量と併せ、この溶液を複数部位に皮内注射することによって、抗原、免疫原性コンジュゲート、又は誘導体に対して免疫化する。1ヶ月後、該動物を、完全フロイントアジュバントに入れた初回量の1/5ないし1/10のペプチド又はコンジュゲートを用いて複数部位に皮下注射することにより、追加免疫する。7ないし14日後に動物を採血し、抗体価について血清を検定する。動物は、力価がプラトーに達するまで追加免疫する。好ましくは、動物は、同じ抗原のコンジュゲートであるが、異なったタンパク質にコンジュゲートさせた、及び/又は異なった架橋剤によってコンジュゲートさせたコンジュゲートで追加免疫する。コンジュゲートはまたタンパク融合として組換え細胞培養中で調製することもできる。また、ミョウバンのような凝集化剤が、免疫反応の増強のために好適に使用される。
【0085】
(ii) モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を意味する、すなわち、集団を構成する個々の抗体が、一般にわずかながら存在する自然に生じる突然変異体を除いて同一である。よって、「モノクローナル」との修飾詞は、別個の抗体の混合物ではなく、抗体の特性を示すものである。
例えば、モノクローナル抗体は、Kohlerら, Nature, 256:495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて作製でき、又は組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)によって作製することができる。
ハイブリドーマ法においては、マウス又はその他の適当な宿主動物、例えばハムスターを上記したようにして免疫し、免疫化に用いられるタンパク質と特異的に結合する抗体を生産するか又は生産することのできるリンパ球を導き出す。別法として、リンパ球をインビトロで免疫することもできる。次に、リンパ球を、ポリエチレングリコールのような適当な融剤を用いて骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice,59-103頁(Academic Press, 1986))。
このようにして調製されたハイブリドーマ細胞を、融合していない親の骨髄腫細胞の増殖または生存を阻害する一又は複数の物質を好ましくは含む適当な培地に蒔き、増殖させる。例えば、親の骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニジンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠失するならば、ハイブリドーマのための培地は、典型的には、HGPRT欠失細胞の増殖を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含有するであろう(HAT培地)。
【0086】
好ましい骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの生産を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性である細胞である。これらの中でも、好ましい骨髄腫株化細胞は、マウス骨髄腫系、例えば、ソーク・インスティテュート・セル・ディストリビューション・センター、San Diego, California USAから入手し得るMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍、及びアメリカ培養細胞系統保存機関、Manassas, Virginia USAから入手し得るSP-2又はX63-Ag8-653細胞から誘導されたものである。ヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫株化細胞もまたヒトモノクローナル抗体の産生のために開示されている(Kozbor, J.Immunol., 133:3001 (1984);Brodeurら, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,51-63頁(Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
ハイブリドーマ細胞が生育している培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又はインビトロ結合検定、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着検定(ELISA)によって測定する。
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunsonほか, Anal. Biochem., 107:220 (1980)のスキャッチャード分析法によって測定することができる。
所望の特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が確定された後、該クローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法により増殖させることができる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, 59-103頁(Academic Press, 1986))。この目的に対して好適な培地には、例えば、D-MEM又はRPMI-1640培地が包含される。加えて、該ハイブリドーマ細胞は、動物において腹水腫瘍としてインビボで増殖させることができる。
【0087】
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA-Sepharose、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィーのような常套的な免疫グロブリン精製法により、培地、腹水、又は血清から好適に分離される。
モノクローナル抗体をコードしているDNAは、常法を用いて(例えば、マウスの重鎖及び軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)即座に単離され配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび単離されたならば、DNAを発現ベクター中に入れ、ついでこれを、そうしないと免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞のような宿主細胞中にトランスフェクトし、組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体の合成を達成することができる。抗体をコードするDNAの細菌中での組換え発現に関する概説論文には、Skerraら, Curr. Opinion in Immunol., 5:256-262(1993)及びPlueckthum, Immunol. Revs., 130:151-188(1992)がある。
【0088】
更なる実施態様では、抗体又は抗体断片は、McCaffertyら, Nature, 348:552-554 (1990)に記載された技術を使用して産生される抗体ファージライブラリから単離することができる。Clacksonら, Nature, 352:624-628 (1991)及び Marksら, J.Mol.Biol., 222:581-597 (1991)は、ファージライブラリを使用したマウス及びヒト抗体の単離を記述している。続く刊行物は、鎖混合による高親和性(nM範囲)のヒト抗体の生産(Marksら, Bio/Technology, 10:779-783(1992))、並びに非常に大きなファージライブラリを構築するための方策としてコンビナトリアル感染とインビボ組換え(Waterhouseら, Nuc.Acids.Res., 21:2265-2266(1993))を記述している。従って、これらの技術はモノクローナル抗体の分離に対する伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ法に対する実行可能な別法である。
DNAはまた、例えば、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード化配列を、相同的マウス配列に代えて置換することにより(米国特許第4,816,567号;Morrisonら, Proc.Nat.Acad.Sci.,USA,81:6851(1984))、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部又は一部を共有結合させることで修飾できる。
典型的には、このような非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインに置換され、又は抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインに置換されて、抗原に対する特異性を有する1つの抗原結合部位と異なる抗原に対する特異性を有するもう一つの抗原結合部位とを含むキメラ二価抗体を作り出す。
【0089】
(iii) ヒト化抗体
非ヒト抗体をヒト化する方法は従来からよく知られている。好ましくは、ヒト化抗体には非ヒト由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入されている。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と呼ばれる。ヒト化は、本質的にはヒト抗体の該当する高頻度可変領域配列を置換することによりウィンターと共同研究者の方法(Jonesほか, Nature, 321:522-525 (1986)、Riechmannほか, Nature, 332:323-327 (1988)、Verhoeyenほか, Science, 239:1534-1536(1988))を使用して実施することができる。よって、このような「ヒト化」抗体は、完全なヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の該当する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は、典型的にはいくつかの高頻度可変領域残基及び場合によってはいくらかのFR残基が齧歯類抗体の類似部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。
抗原性を低減するには、ヒト化抗体を生成する際に使用するヒトの軽重両方の可変ドメインの選択が非常に重要である。「ベストフィット法」では、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列を既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリ全体に対してスクリーニングする。次に齧歯動物のものと最も近いヒト配列をヒト化抗体のヒトフレームワーク領域(FR)として受け入れる(Simsほか, J. Immunol., 151:2296 (1993);Chothiaら, J. Mol. Biol., 196:901(1987))。他の方法では、軽又は重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体全てのコンセンサス配列から誘導される特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークをいくつかの異なるヒト化抗体に使用できる(Carterほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992);Prestaほか, J. Immunol., 151:2623(1993))。
【0090】
更に、抗体を、抗原に対する高親和性や他の好ましい生物学的性質を保持してヒト化することが重要である。この目標を達成するべく、好ましい方法では、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析工程を経てヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推測三次元立体配座構造を図解し、表示するコンピュータプログラムは購入可能である。これら表示を見ることで、候補免疫グロブリン配列の機能における残基のありそうな役割の分析、すなわち候補免疫グログリンの抗原との結合能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、例えば標的抗原に対する親和性が高まるといった、望ましい抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエント及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般的に、高頻度可変領域残基は、直接的かつ最も実質的に抗原結合性に影響を及ぼしている。
【0091】
(iv) ヒト抗体
ヒト化のための別法により、ヒト抗体を生産することができる。例えば、内因性の免疫グロブリン産生がなくともヒト抗体の全レパートリーを免疫化することで産生することのできるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作ることが今は可能である。例えば、キメラ及び生殖系列突然変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(JH)遺伝子の同型接合除去が内因性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記載されている。このような生殖系列突然変異体マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子列の転移は、抗原投与時にヒト抗体の産生をもたらす。Jakobovitsら, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 90:2551 (1993);Jakobovitsら, Nature 362:255-258 (1993);Bruggermanら, Year in Immuno., 7:33 (1993);米国特許第5,591,669号、同5,589,369号及び同5,545,807号を参照されたい。
【0092】
あるいは、ファージディスプレイ技術(McCaffertyら, Nature 348:552-553(1990))を、非免疫化ドナーからの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、インビトロでヒト抗体及び抗体断片を産出させるために使用することができる。この技術によれば、抗体Vドメイン遺伝子は、繊維状バクテリオファージ、例えばM13の大きい又は小さいコートタンパク質遺伝子のいずれかにおいてイン-フレームをクローンする。繊維状粒子がファージゲノムの一本鎖のDNAコピーを含むので、抗体の機能特性に基づいた選択により、これらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択がなされる。よって、ファージはB細胞の特性のいくつかを模倣している。ファージディスプレイは多様な形式で行うことができる;例えばJohnson, Kevin S. 及びChiswell, David J., Current Opinion in Structural Biology 3:564-571(1993)を参照のこと。V-遺伝子セグメントのいくつかの供給源がファージディスプレイのために使用可能である。Clacksonら, Nature, 352:624-628(1991)は、免疫化されたマウス脾臓から得られたV遺伝子の小ランダム組合せライブラリーからの抗オキサゾロン抗体の異なった配列を単離した。非免疫化ヒトドナーからのV遺伝子のレパートリーを構成可能で、抗原(自己抗原を含む)とは異なる配列の抗体を、Marksら, J. Mol. Biol. 222:581-597(1991)、又はGriffithら, EMBO J. 12:725-734(1993)に記載の技術に本質的に従って単離することができる。また、米国特許第5,565,332号及び同5,573,905号を参照のこと。
またヒト抗体は、活性化B細胞によりインビトロで生産してもよい(例えば米国特許第5,567,610号及び同5,229,275号を参照)。
【0093】
(v) 抗体断片
抗体断片を生産するために様々な技術が開発されている。伝統的には、これらの断片は、完全な抗体のタンパク分解性消化を介して誘導されていた(例えば、Morimotoら, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992)及びBrennanら, Science, 229:81(1985)を参照されたい)。しかし、これらの断片は現在は組換え宿主細胞により直接生産することができる。例えば、抗体断片は上述において検討した抗体ファージライブラリーから分離することができる。別法として、Fab'-SH断片は大腸菌から直接回収することができ、化学的に結合してF(ab')2断片を形成することができる(Carterら, Bio/Technology 10:163-167(1992))。他のアプローチ法では、F(ab')2断片を組換え宿主細胞培養から直接分離することができる。抗体断片の生産のための他の方法は当業者には明らかであろう。他の実施態様では、選択抗体は単鎖Fv断片(scFV)である。国際公開93/16185;米国特許第5,571,894号;及び米国特許第5,587,458号を参照のこと。また、抗体断片は、例えば米国特許第5,641,870号に記載されているような「直鎖状抗体」であってもよい。このような直線状の断片は単特異的又は二重特異的であってもよい。
【0094】
(vi) 二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有する抗体である。例示的な二重特異性抗体は、CD20、DR4又はDR5レセプターの2つの異なるエピトープに結合しうる。また、二重特異性抗体はB細胞に細胞障害剤を局在化するためにも使用されうる。これらの抗体はB細胞マーカー結合アーム及び細胞障害剤(例えば、サポリン(saporin)、抗インターフェロン-α、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メトトレキセート又は放射性同位体ハプテン)と結合するアームを有する。二重特異性抗体は全長抗体又は抗体断片(例えばF(ab')2二重特異性抗体)として調製することができる。
二重特異性抗体を作成する方法は当該分野において既知である。全長二重特異性抗体の伝統的な産生は二つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の同時発現に基づき、ここで二つの鎖は異なる特異性を持っている(Millsteinら, Nature, 305:537-539(1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖が無作為に取り揃えられているため、これらのハイブリドーマ(四部雑種)は10個の異なる抗体分子の可能性ある混合物を産生し、そのうちただ一つが正しい二重特異性構造を有する。通常、アフィニティークロマトグラフィー工程により行われる正しい分子の精製は、かなり煩わしく、生成物収率は低い。同様の方法が国際公報93/8829及びTrauneckerら、EMBO J. 10:3655-3659(1991)に開示されている。
【0095】
異なったアプローチ法では、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗原−抗体結合部位)を免疫グロブリン定常ドメイン配列と融合させる。該融合は好ましくは、少なくともヒンジの一部、CH2及びCH3領域を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合である。軽鎖の結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)を、融合の少なくとも一つに存在させることが望ましい。免疫グロブリン重鎖の融合、望まれるならば免疫グロブリン軽鎖をコードしているDNAを、別個の発現ベクター中に挿入し、適当な宿主生物に同時形質移入する。これにより、コンストラクトに使用される三つのポリペプチド鎖の等しくない比率が最適な収率をもたらす態様において、三つのポリペプチド断片の相互の割合の調節に大きな融通性が与えられる。しかし、少なくとも二つのポリペプチド鎖の等しい比率での発現が高収率をもたらすとき、又はその比率が特に重要性を持たないときは、2または3個全てのポリペプチド鎖のためのコード化配列を一つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0096】
このアプローチ法の好適な実施態様では、二重特異性抗体は、第一の結合特異性を有する一方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖と他方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第二の結合特異性を提供する)とからなる。二重特異性分子の半分にしか免疫グロブリン軽鎖がないと容易な分離法が提供されるため、この非対称的構造は、所望の二重特異性化合物を不要な免疫グロブリン鎖の組み合わせから分離することを容易にすることが分かった。このアプローチ法は、国際公報94/04690に開示されている。二重特異性抗体を産生する更なる詳細については、例えばSureshら, Methods in Enzymology, 121:210 (1986)を参照されたい。米国特許第5,731,168号に記載された他のアプローチ法によれば、一対の抗体分子間の界面を操作して組換え細胞培養から回収されるヘテロダイマーのパーセントを最大にすることができる。好適な界面は抗体定常ドメインのCH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1抗体分子の界面からの一又は複数の小さいアミノ酸側鎖がより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)と置き換えられる。大きな側鎖と同じ又は類似のサイズの相補的「キャビティ」を、大きなアミノ酸側鎖を小さいもの(例えばアラニン又はスレオニン)と置き換えることにより第2の抗体分子の界面に作り出す。これにより、ホモダイマーのような不要の他の最終産物に対してヘテロダイマーの収量を増大させるメカニズムが提供される。
【0097】
二特異性抗体とは架橋抗体や「ヘテロ抱合抗体」を含む。例えば、ヘテロ抱合体の一方の抗体がアビジンと結合し、他方はビオチンと結合していても良い。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせること(米国特許第4,676,980号)及びHIV感染の治療(国際公報91/00360、国際公報92/200373及び欧州特許第03089号)等の用途が提案されている。ヘテロ抱合抗体は適当な架橋方法によって生成できる。当技術分野においては、適切な架橋剤は周知であり、それらは複数の架橋法と共に米国特許第4,676,980号などに記されている。
抗体断片から二重特異性抗体を産生する技術もまた文献に記載されている。例えば、化学結合を使用して二重特異性抗体を調製することができる。Brennanら, Science, 229:81 (1985);Shalaby 等, J. Exp. Med., 175: 217-225 (1992)。
【0098】
組換え細胞培養から直接的に二重特異性抗体断片を作成し分離する様々な方法もまた記述されている。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを使用して生産された。Kostelnyら, J.Immunol., 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合により二つの異なった抗体のFab'部分に結合させられた。抗体ホモダイマーはヒンジ領域で還元されてモノマーを形成し、ついで再酸化させて抗体ヘテロダイマーを形成する。この方法はまた抗体ホモダイマーの生産に対して使用することができる。Hollingerら, Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により記述された「ダイアボディ」技術は二重特異性抗体断片を作成する別のメカニズムを提供した。断片は、同一鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするのに十分に短いリンカーにより軽鎖可変ドメイン(VL)に重鎖可変ドメイン(VH)を結合してなる。従って、一つの断片のVH及びVLドメインは他の断片の相補的VL及びVHドメインと強制的に対形成させられ、2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)ダイマーを使用する他の二重特異性抗体断片製造方策もまた報告されている。Gruberら, J.Immunol., 152:5368 (1994)を参照されたい。
二価より多い抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tuttら J.Immunol. 147:60(1991)。3又はそれ以上の抗原結合部位を有する抗体は、国際公開公報01/77342 (Miller及びPresta)に記載されており、出典明記によって特別に本明細書中に組み込まれる。
【0099】
本明細書中の方法に用いる又は製造品に具備される抗体は場合によって細胞障害性剤とコンジュゲートされる。
そのような抗体-細胞障害性剤コンジュゲートの生成に有用な化学療法剤は前述している。
また、抗体と一つ以上の小分子毒素のコンジュゲート、例えばカリケアミシン(calicheamicin)、マイタンシン(maytansine)(米国特許第5,208,020号)、トリコテン(trichothene)及びCC1065もここにおいて考慮される。本発明の一実施態様では、抗体は、一つ以上のマイタンシン(maytansine)分子(例えば、抗体分子当たり約1から約10のマイタンシン分子)と共役している。マイタンシンは、例えばMay-SH3へ還元されるMay-SS-Meへ変換され、修飾抗体(Chariら,Cancer Research 52:127-131(1992))と反応してマイタンシノイド(maytansinoids)−抗体コンジュゲートを生じる。
【0100】
あるいは、抗体は、一つ以上のカリケアマイシン(calicheamicin)分子を包含する。抗生物質のカリケアマイシンファミリーは、サブピコモル濃度で、二重鎖DNAの割れ目を作ることができる。使用されるであろうカリケアマイシンの構造類似体は、限定されるものではないが、γ1I、α2I、α3I、N−アセチルγ1I、PSAG及びθI1(Hinmanら, Cancer Research 53:3336-3342(1993)及びLodeら,Cancer Research 58:2925-2928(1998))を含む。
使用可能な酵素活性毒及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖(シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa))、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン(sarcin)、アレウライツ・フォルディイ(Aleurites fordii)プロテイン、ジアンシン(dianthin)プロテイン、フィトラッカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)プロテイン(PAPI、PAPII及びPAP-S)、モモルディカ・キャランティア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン、サパオナリア(sapaonaria)オフィシナリスインヒビター、ゲロニン(gelonin)、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコセセンス(tricothecenes)が含まれる。例えば、1993年10月28日に公開の国際公開公報93/21232を参照のこと。
【0101】
本発明は、更に、抗体と核酸分解性活性(例えば、リボムクレアーゼ又はDNAエンドヌクレアーゼ、例えばデオキシリボヌクレアーゼ;DNA分解酵素)を有する化合物との抗体コンジュゲートについて考慮する。
種々の放射性核種が放射性コンジュゲートアンタゴニストないしは抗体の生成に利用できる。具体例にはAt211、I131、I125、Y90、Re186、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射線各種が含まれる。
抗体と細胞障害剤のコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、スクシインミジル1-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCl)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン-2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製される。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238:1098(1987)に記載されているようにして調製することができる。炭素-14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレン-トリアミン五酢酸(MX-DTPA)がアンタゴニスト又は抗体に放射性ヌクレオチドをコンジュゲートするためのキレート剤の例である。国際公開公報94/11026を参照されたい。リンカーは、細胞内で細胞毒性薬剤を放出を容易にする「切断可能なリンカー」でもよい。例えば、酸性の易動性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカー(Chari 等 Cancer Research 52: 127-131 (1992))を用いてもよい。
【0102】
あるいは、抗体及び細胞障害性剤を含んでなる融合タンパク質を、例えば組み換え技術又はペプチド合成で製造してもよい。
また、本発明の抗体を、プロドラッグ(例えばペプチジル化学療法剤、国際公報81/01145を参照)を活性な抗癌剤に転化させるプロドラッグ活性化酵素にコンジュゲートさせてもよい。例えば国際公報88/07378及び米国特許第4,975,278号を参照されたい。
そのようなコンジュゲートの酵素成分には、より活性な細胞毒形態に転化するように、プロドラッグに作用し得る任意の酵素が含まれる。
この発明の方法に有用な酵素には、限定するものではないが、ホスファート含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なアルカリ性ホスファターゼ;スルファート含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なアリールスルファターゼ;非毒性5-フルオロシトシンを抗癌剤5-フルオロウラシルに転化するのに有用なシトシンデアミナーゼ;プロテアーゼ、例えばセラチアプロテアーゼ、サーモリシン、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼ及びカテプシン(例えば、カテプシンB及びL)で、ペプチド含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なもの;D-アミノ酸置換基を含有するプロドラッグの転化に有用なD-アラニルカルボキシペプチダーゼ;炭水化物切断酵素、例えばグリコシル化プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なノイラミニダーゼ及びβガラクトシダーゼ;βラクタムで誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に転化させるのに有用なβラクタマーゼ;及びペニシリンアミダーゼ、例えばそれぞれフェノキシアセチル又はフェニルアセチル基で、それらのアミン性窒素において誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に転化するのに有用なペニシリンVアミダーゼ又はペニシリンGアミダーゼが含まれる。あるいは、「アブザイム」としてもまた公知の酵素活性を有する抗体を、遊離の活性薬剤に本発明のプロドラッグを転化させるために使用することもできる(例えば、Massey, Nature 328:457-458(1987)を参照)。抗体-アブザイムコンジュゲートは、ここで記載されているようにして、腫瘍細胞個体群にアブザイムを送達するために調製することができる。
【0103】
この発明の酵素は、当該分野においてよく知られている技術、例えば上で検討したヘテロ二官能性架橋試薬を使用することにより、抗体に共有的に結合させることができる。あるいは、抗体の少なくとも抗原結合領域を本発明の酵素の少なくとも機能的に活性な部位に結合せしめてなる融合タンパク質を、当該技術においてよく知られている組換えDNA技術を使用して作成することができる(例えばNeubergerら, Nature 312:604-608(1984)参照。
抗体の他の修飾がここで検討される。例えば、抗体は、様々な非タンパク質性(nonproteinaceous)のポリマー、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン類、又はポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのコポリマーの1つに結合させてもよい。
抗体の血清半減期を延長するために、例として米国特許第5739277号に記載されているように抗体(特に抗体断片)内にサルベージレセプター結合エピトープを組み込んでもよい。ここで用いる、「サルベージレセプター結合エピトープ」は、IgG分子のインビボ血清半減期延長に関与するIgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4)のFc領域のエピトープを表す。あるいは又はさらに、変化したFcRn結合を有する変異体を作製するために抗体のFc領域のアミノ酸配列を変更することによって、血清半減期を延長又は短縮してもよい。変化したFcRn結合及び/又は血清半減期を有する抗体は国際公開公報00/42072(Presta, L.)に記載される。
【0104】
また、Apo2L/TRAIL、デスレセプター抗体、及び/又はCD20抗体を含有する製剤が、本発明により提供される。このような製剤は、治療的投与のみならず、特に貯蔵に適している。製剤は、既知の技術で調製することが可能である。例えば、製剤はゲル濾過カラムでのバッファー交換によって調製することが可能である。
典型的には、適量の許容可能な塩類又は担体が、製剤を等浸透圧にするために製剤に使用される。製薬的に許容可能な担体の例には、生理食塩水、リンガー液及びデキストロース液が含まれる。製剤のpHは、好ましくは約6〜約9、さらに好ましくは約7〜約7.5である。例えばApo-2リガンド、デスレセプター抗体及び/又はCD20抗体の濃度及び投与経路よっては、ある種の担体がより好ましいことは、当業者には明らかである。
【0105】
治療用製剤は、凍結乾燥製剤、水溶液又は水性分散液の形態で、任意の担体、賦形剤又は安定剤(Remington's Pharmaceutical Sciences, 16版, A. Osol, A.編 (1980))と、適切な純度を有する所望の分子を混合することにより調製される。許容される担体、賦形剤、又は安定化剤は、好ましくは用いられる投与量及び濃度で受容者に非毒性であり、トリス(Tris)、HEPES、PIPES、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などの緩衝剤、アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベンのようなアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;及び/又はTWEENTM、PLURONICSTM、又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
【0106】
このような担体の更なる例は、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばグリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩、又は電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、コロイダルシリカ、マグネシウムトリシリケート、ポリビニルピロリドン、及びセルロースベースの物質である。局所用の担体又はゲルベースの形態は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース又はメチルセルロース等の多糖類、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール、及びモクロウアルコールを含む。あらゆる投与について、従来のデポー形態が好適に用いられる。このような形態は、例えば、マイクロカプセル、ナノ-カプセル、リポソーム、硬膏剤、吸入形態、鼻スプレー、舌下錠、及び徐放性製剤を含む。
インビボ投与に使用される製剤は滅菌されていなくてはならない。これは、凍結乾燥及び再構成の前又は後に、滅菌フィルター膜を通す濾過により容易に達成される。製剤は凍結乾燥形態又は全身投与される場合には溶液中に貯蔵される。凍結乾燥形態にある場合、典型的には使用時に適当な希釈剤と再構成するために他の成分と組み合わせて処方される。液体製剤の例は、皮下注射用の1回投与バイアルに充填された無菌の、透明な、無色の保存料未添加(unpreserved)溶液である。
【0107】
治療用製剤は、一般的に無菌のアクセスポート、例えば、静脈内溶液バッグ又は皮下注射針で貫通可能なストッパーを備えたバイアルに入れられる。製剤は、好ましくは静脈内(i.v.)、皮下(s.c.)、又は筋肉内(i.m.)の繰り返し注射として、あるいは鼻内又は肺内送達に適したエアロゾル製剤として投与される(肺内送達については、例えば欧州特許第257956号参照)。
また、Apo2L/TRAIL、デスレセプター抗体及びCD20抗体は、徐放性調製物の形態で投与することが可能である。徐放性調製物の適切な例には、タンパク質を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスが含まれ、このマトリクスは、例えばフィルム又はマイクロカプセル等の成形品の形態である。徐放性マトリクスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、Langerら, J. Biomed. Mater. Res. 15: 167-277 (1981)及びLanger, Chem. Tech. 12: 98-105 (1982)に記載されたポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3773919号、欧州特許第58481号)、L-グルタミン酸とガンマ-エチル-L-グルタメートのコポリマー(Sidmanら, Biopolymers 22: 547-556 (1983))、非分解性エチレン-酢酸ビニル(Langerら, 上掲)、分解性の乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOT(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注入可能な微小球)、及びポリ-D-(−)-3-ヒドロキシ酪酸(欧州特許第133988号)が含まれる。
【0108】
ここに記載されたApo2L/TRAIL、デスレセプター抗体及びCD20抗体は、種々の治療的に応用される。これらの応用は、種々の癌及び免疫関連疾患の治療の方法である。ここに記載した様々な病理状態の哺乳動物における診断は、熟練した実務者によって行うことが可能である。例えば、哺乳動物の癌又は免疫関連疾患の診断と検出を可能にする診断技術は、当該分野で利用可能である。例えば、癌は、限定されるものではないが、触診(法)、血液分析、X線、NMR等々を含む技術を通して同定され得る。また、免疫関連疾患は容易に同定できる。全身性エリテマトーデスでは、疾患の中心媒介物は自己タンパク質/組織に対する自己反応性抗体、及び引き続き起こる免疫媒介炎症の産生である。腎臓、肺、骨格筋系、皮膚と粘膜、眼、中枢神経系、心臓血管系、胃腸管、骨髄及び血液を包含する複数の臓器と系が、臨床的に影響を受ける。リウマチ様関節炎(RA)は、主に複数の関節の滑膜に係る慢性全身性自己免疫疾患であり、結果として関節軟骨に傷害が生じる。病原はTリンパ球依存であり、リウマチ因子、自己IgGに対する自己抗体の生成を伴い、結果として関節体液及び血液において高レベルに達する免疫複合体が形成される。関節におけるこれらの複合体は、滑膜へのリンパ球及び単球の顕著な浸潤と、続いての顕著な滑膜変化を誘発しうる;多数の好中球の添加により同様の細胞で浸潤されるならば関節空間/体液でもである。影響を受けている組織は、多くの場合対称的パターンで主に関節である。しかしながら、2つの主な形態の関節外疾患も生じる。一方の形態は進行中の進行性関節疾患及び肺線維症の局部的障害、血管炎、及び皮膚潰瘍を伴う関節外障害の発達である。関節外疾患の第2の形態はいわゆるフェルティー症候群であり、RA疾患経路の末期、時々は関節疾患が鎮静した後に生じ、好中球減少、血小板減少及び脾腫大の存在に関与する。これは、梗塞、皮膚潰瘍及び壊疽の形成を伴う多数の器官及び血管炎に付随する。多くの場合、患者では、発病している関節上にある皮下組織にリウマチ様小結節が発達し;小結節は、混合炎症細胞浸潤に包囲された壊死性中心を有する。RAで生じる可能性のある他の徴候には:心外膜炎、胸膜炎、冠動脈炎、肺線維症を伴う間質性肺炎、乾性角結膜炎、及びリウマチ様小結節が含まれる。
【0109】
Apo2L/TRAIL、デスレセプター抗体及びCD20抗体は、周知の方法に従い、ボーラスとしての静脈内投与、又は一定期間にわたる連続的な注入、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、骨液内、くも膜腔内、経口、局所的、又は吸入の経路により投与できる。場合によっては、投与は、様々な市販の装置を使用するミニポンプでの注入によって実施することもできる。
Apo2L/TRAIL、デスレセプター抗体及びCD20抗体の投与の有効な用量とスケジュールは、経験的に決定することができ、そのような決定を行うことは当業者の技量の範囲にある。単独又は複数の用量が使用されうる。単独に使用されるApo2L/TRAILの効果的な用量又は量は一日当り約1μg/kgから約100mg/kg体重あるいはそれ以上までの範囲であると現在は考えられる。用量の種間スケーリングは、例えば、Mordentiら, Pharmaceut. Res., 8:1351(1991)に開示されているような当該分野で知られている方法で実施することができる。
【0110】
Apo2L/TRAILのインビボ投与が用いられる場合、正常な投与量は、投与経路に応じて、哺乳動物の体重当たり1日に約10ng/kgから100mg/kgまで、好ましくは約1μg/kg/日から10mg/kg/日である。特定の用量及び輸送方法の指針は文献に与えられている;例えば、米国特許第4657760号、第5206344号、又は第5225212号参照。異なる製剤が異なる治療用化合物及び異なる疾患に有効であること、例えば一つの器官又は組織を標的とする投与には、他の器官又は組織とは異なる方式で輸送することが必要であることが予想される。当業者であれば、投与されなければならないApo2L/TRAILの用量が、例えば、Apo2L/TRAILを受入れる哺乳動物、投与経路、及び哺乳動物に投与されている他の薬剤又は治療法に依存して変わりうることは理解できるであろう。
CD20抗体は、細胞障害性剤にコンジュゲートされていない、リツキシマブやヒト化2H7などの抗体であってもよい。非コンジュゲート抗体の好適な用量は、例えばおよそ20mg/m2からおよそ1000mg/m2の範囲である。一実施態様では、抗体の用量は、現在推奨されるリツキシマブの用量と異なる。CD20抗体の例示的な投与用量は、375mg/m2、週4ないし8回;又は1000mg、2回(例えば第1日目と第15日目)などである。
更なる治療法を本方法において使用することも考えられる。一又は複数の他の治療法には、これらに限定されるものではないが、当該技術分野において既知であり、前述のセクションIにおいてさらに詳細に定義された、放射線療法、サイトカイン、成長阻害剤、化学治療剤、細胞障害剤、チロシンキナーゼ阻害因子、ラスファルネシルトランスフェラーゼ阻害因子、血管形成阻害因子、及びサイクリン依存性キナーゼ阻害因子の投与が含まれる。
【0111】
例示的な治療用抗体には、抗-HER2抗体、例えばrhuMAb 4D5 (HERCEPTIN) (Carter 等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285-4289 (1992), 米国特許第5,725,856号);抗-IL-8 (St John 等, Chest, 103:932 (1993)、及び国際公開公報95/23865);抗-VEGF抗体、例えばヒト化及び/又は親和性成熟抗-VEGF抗体、例えばヒト化抗-VEGF抗体huA4.6.1 AVASTIN (Kim 等, Growth Factors, 7:53-64 (1992)、国際公開公報96/30046、及び1998年10月15日公開の国際公開公報98/45331);抗-PSCA抗体 (国際公開公報01/40309);抗-CD40抗体、例えばS2C6及びそのヒト化変異体(国際公開公報00/75348);抗-CD11a抗体、例えばRaptivaTM (米国特許第5,622,700号、国際公開公報 98/23761、Steppe 等, Transplant Intl. 4:3-7 (1991)、及びHourmant 等, Transplantation 58:377-380 (1994));抗-IgE抗体 (Presta 等, J. Immunol. 151:2623-2632 (1993)、及び国際公開公報95/19181;1998年2月3日発行の米国特許第5,714,338号、又は1992年2月25日発行の米国特許第5,091,313号、1993年3月4日公開の国際公開公報 93/04173、又は1998年6月30日出願の公開番号PCT/US98/13410、米国特許第5,714,338号);抗-CD18抗体 (1997年4月22日発行の米国特許第5,622,700号、又は1997年7月31日公開の国際公開公報 97/26912);抗-Apo-2レセプター抗体抗体 (1998年11月19日公開の国際公開公報 98/51793);抗-TNF-α抗体、例えばcA2 (REMICADE)、CDP571及びMAK-195 (1997年9月30日発行の米国特許第5,672,347号、Lorenz 等 J. Immunol. 156(4):1646-1653 (1996)、及びDhainaut 等 Crit. Care Med. 23(9):1461-1469 (1995)を参照);抗-組織因子(TF)抗体 (1994年11月9日に権利化された欧州特許第0 420 937号B1);抗-ヒトα4-β7 インテグリン抗体 (1998年2月19日公開の国際公開公報 98/06248);抗-EGFR抗体 (キメラ化又はヒト化225抗体、1996年12月19日公開の国際公開公報 96/40210);抗-CD3抗体、例えばOKT3 (1985年5月7日発行の米国特許第4,515,893号);抗-CD25又は抗-Tac抗体、例えばCHI-621 (SIMULECT)及びZENAPAX (1997年12月2日発行の米国特許第5,693,762号参照);抗-CD4抗体、例えばcM-7412抗体 (Choy 等 Arthritis Rheum 39(1):52-56 (1996));抗-CD52抗体、例えばCAMPATH-1H (Riechmann 等 Nature 332:323-337 (1988);抗-Fc receptor抗体、例えばFcRIに対するM22抗体、Graziano 等 J. Immunol. 155(10):4996-5002 (1995);抗-癌胎児性抗原(CEA)抗体、例えばhMN-14 (Sharkey 等 Cancer Res. 55(23Suppl): 5935s-5945s (1995);乳房上皮細胞に対する抗体、例えばhuBrE-3、hu-Mc 3及びCHL6 (Ceriani 等 Cancer Res. 55(23): 5852s-5856s (1995);及びRichman 等 Cancer Res. 55(23 Supp): 5916s-5920s (1995));大腸癌細胞に結合する抗体、例えばC242 (Litton 等 Eur J. Immunol. 26(1):1-9 (1996));抗-CD38抗体、例えばAT 13/5 (Ellis 等 J. Immunol. 155(2):925-937 (1995));抗-CD33抗体、例えばHu M195 (Jurcic 等 Cancer Res 55(23 Suppl):5908s-5910s (1995)及びCMA-676又はCDP771;抗-CD22抗体、例えばLL2又はLymphoCide (Juweid 等 Cancer Res 55(23 Suppl):5899s-5907s (1995);抗-EpCAM抗体、例えば17-1A (PANOREX);抗-GpIIb/IIIa抗体、例えばabciximab又はc7E3 Fab (REOPRO);抗-RSV抗体、例えばMEDI-493 (SYNAGIS);抗-CMV抗体、例えばPROTOVIR;抗-HIV抗体、例えばPRO542;抗-肝炎抗体、例えば抗-Hep B抗体OSTAVIR;抗-CA 125抗体 OvaRex;抗-イデオタイプGD3エピトープ抗体BEC2;抗-.v.3抗体 VITAXIN;抗-ヒト腎細胞癌抗体、例えばch-G250;ING-1;抗-ヒト17-1A抗体(3622W94);抗-ヒト結腸直腸腫瘍抗体(A33);GD3ガングリオシドに対する抗-ヒトメラノーマ抗体R24;抗-ヒト扁平上皮癌(SF-25);及び抗-ヒト白血病抗原(HLA)抗体、例えばSmart ID10及び抗-HLA DR抗体Oncolym (Lym-1)などがある。
【0112】
化学治療剤に対する調製法及び用量スケジュールは、製造者の指示に従って使用されるか、熟練した実務家により経験的に決定される。また、そのような化学療法の調製法及び用量スケジュールはChemotherapy Service, M.C.Perry編, Williams & Wilkins, Baltimore, MD(1992)にも記載されている。化学療法剤は、Apo2L/TRAIL、デスレセプター抗体、及び/又はCD20抗体の投与に先行し、又はその後に行い、又はそれらと共に与えられてもよい。
また、一又は複数のサイトカインないしは成長阻害剤を投与するのが有用なことも多い。
Apo2L/TRAIL、デスレセプター抗体、及びCD20抗体(及び一又は複数の他の治療剤)は同時的又は経時的に投与される。投与の後、インビトロで処理された細胞を分析することができる。インビボでの治療がなされた場合、治療された哺乳動物は熟練した実務家にとって周知の様々な方法によりモニターすることができる。例えば、壊死をアッセイするために癌細胞を病理検査することができ、又は血清の免疫系応答を分析することができる。
【0113】
RA及び他の自己免疫性疾患には、Apo2L/TRAIL、デスレセプター抗体、及び/又はCD20抗体を、任意の一又は複数の前述の定義の項目で列挙した免疫抑制剤、化学療法剤及び/又はサイトカイン;任意の一又は複数の疾患変更抗リウマチ薬(DMARDs)、例えばヒドロキシクロロクイン(hydroxycloroquine)、スルファサラジン、メトトレキサート、レフルノミド、アザチオプリン、Dペニシラミン、ゴールド(Gold)(経口)、ゴールド(筋注)、ミノサイクリン、シクロスポリン、ブドウ球菌タンパク質A免疫吸着;静脈免疫グロブリン(IVIG);非ステロイド性抗炎症薬(NSAID);糖質コルチコイド(例えば関節注射によるもの);副腎皮質ステロイド(例えばメチルプレドニゾロン及び/又はプレドニゾン);葉酸塩;抗腫瘍壊死因子(TNF)抗体、例えばエタネルセプト/ENBRELTM、インフリキシマブ/REMICADETM、D2E7(Knoll)又はCDP-870(Celltech);IL-1Rアンタゴニスト(例えばKineret);IL-10アンタゴニスト(例えばIlodecakin);血液凝固モジュレータ(例えばWinRho);IL-6アンタゴニスト/抗TNF(CBP 1011);CD40アンタゴニスト(例えばIDEC 131);Ig-Fcレセプターアンタゴニスト(MDX33);免疫修飾物質(例えばサリドマイド又はImmuDyn);抗CD5抗体(例えばH5g1.1);マクロファージインヒビター(例えばMDX 33);共刺激遮断薬(例えばBMS 188667又はTolerimab);補体阻害剤(例えばh5G1.1, 3E10又は抗腐食促進因子(DAF)抗体);又は、IL-2アンタゴニスト(zxSMART)と組み合わせてもよい。
【0114】
B細胞悪性腫瘍には、例えば、Apo2L/TRAIL、デスレセプター抗体、及び/又はCD20抗体を、化学療法剤;サイトカイン、例えばIL-2、IL-12などのリンホカイン、又は、インターフェロンα-2aなどのインターフェロン;他の抗体、例えば、ibritumomab tiuxetan (ZEVALIN(登録商標))、ヨウ素I131 tositumomab (BEXXARTM)、131I Lym-1 (ONCOLYMTM)、90Y-LYMPHOCIDETMなどの放射線標識した抗体;抗CD52抗体、例えば、alemtuzumab (CAMPATH-1HTM)、抗HLA-DR-β抗体、例として、apolizumab、抗CD80抗体(例えばIDEC-114)、epratuzumab、Hu1D10 (SMART 1D10TM)、CD19抗体、CD40抗体又はCD22抗体;免疫修飾物質(例えばサリドマイド又はImmuDyn);血管新生のインヒビター(例えば抗血管内皮性成長因子(VEGF)抗体、例として、AVASTINTM又はサリドマイド);イディオタイプワクチン(EPOCH);ONCO-TCSTM;HSPPC-96 (ONCOPHAGETM);リポソーム治療(例えばダウノルビシンクエン酸塩リポソーム)、などと組み合わせてもよい。
本発明の他の実施態様では、上記の癌及び免疫関連疾患の治療に有用な材料を具備する製造品が提供される。一態様では、製造品は、(a)CD20抗体を具備する容器(該抗体と薬剤的に受容可能な担体ないしは希釈剤を容器内に含有するのが好ましい);(b)Apo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体を具備する容器(該Apo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体と薬剤的に受容可能な担体ないしは希釈剤を容器内に含有するのが好ましい);及び(c)患者の癌又は免疫関連疾患を治療するための指示書を有するパッケージ挿入物を含んでなり、該指示書にCD20抗体及びApo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体が該疾患の治療に相乗効果を与えるのに効果的な量で該患者に投与されることを示している。
【0115】
すべての態様において、パッケージ挿入物は容器上にあるないしは容器に付属するものである。適切な容器には、例えばボトル、ガラス瓶、シリンジ等が含まれる。容器はガラス又はプラスチックなどの様々な材料で形成されうる。容器は癌又は免疫関連疾患の治療に有効な組成物を収容しており、滅菌した出入口を有している(例えば、容器は皮下注射針により貫通可能なストッパーを具備する静脈溶液用のバック又はガラス瓶であってよい)。組成物中の少なくとも1つの活性剤はCD20抗体、Apo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体である。ラベル又はパッケージ挿入物には、供給される抗体と任意の他の薬剤の用量と間隔に関する具体的な指導と共に、該組成物が治療に好適な患者又は被検体の癌又は免疫関連疾患を治療するために使用されることが示されている。更に、製造品は、製薬的に許容可能な希釈用バッファー、例えば、注入のための静菌性水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー液及び/又はデキストロース溶液を収容する付加的な容器を有してもよい。さらに、製造品は、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針及びシリンジを含む、市販及び使用者の観点から望ましい他の材料を更に有してもよい。
以下の実施例は例示するためにのみ提供されるものであって、いかなる意味においても本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書において引用した全ての特許及び参考文献の全体は、出典明記によりここに組み込まれる。
【実施例】
【0116】
実施例で言及されている市販試薬は、特に示さない限りは製造者の使用説明に従い使用した。ATCC受託番号により以下の実施例及び明細書全体を通して特定されている細胞の供給源はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、バージニアである。
【0117】
実施例1 Bリンパ腫細胞株におけるApo2L/TRAILレセプター発現の分析
ヒトリンパ腫細胞株でのApo2L/TRAILレセプター(DR4、DR5、DcR1及びDcR2)の細胞表面発現を検査するために、B細胞リンパ腫細胞株Ramos、Daudi、Raji及びBJAB (ATCC)を、DR4 (mAb 4H6.17.8;ATCC HB-12455)、DR5 (mAb 3H3.14.5;HB-12534)、DcR1 (mAb 6G9;Genentech, Inc.)、又はDcR2 (mAb 1G9、Genentech, Inc.)に特異的なモノクローナル抗体を用いたFACSによって分析した。RAMOS細胞について、再現性を高くするために2度分析を行った(RAMOS A及びB)。
図4に示すように、DR4及びDR5は、4つすべての細胞株において有意に(およそ0.5〜1.7単位の平均蛍光変化)発現が高く、DcR1及びDcR2は、より低いないしは最少レベル(およそ0〜0.3単位の平均蛍光変化)の発現であった。
【0118】
実施例2 Bリンパ腫細胞株におけるCD20発現の分析
ヒトリンパ腫細胞株でのCD20の細胞表面発現を検査するために、B細胞リンパ腫細胞株Ramos、Daudi、Raji及びBJAB (ATCC)を、CD20 (リツキサン(登録商標)、Genentech, Inc.)に特異的なモノクローナル抗体を用いたFACSによって分析した。Ramos細胞について、再現性を高くするために2度分析を行った(RAMOS A及びB)。
図5に示すように、およそ5〜15単位の平均蛍光変化で示されるように、4つすべての細胞株でCD20は高いレベルで発現していた。
【0119】
実施例3 SCIDマウスに予め定着させた皮下BJABリンパ腫腫瘍異種移植片の成長に対するApo2L/TRAIL、リツキサン(登録商標)、又は併用処置の効果
SCIDマウスにヒトB細胞非ホジキンBJABリンパ腫細胞(ATCC)(1マウス当たり20万個の細胞)を皮下注射して、腫瘍を200mm3まで成長させた。次いで、マウスを4つの試験グループに分けて(1グループ当たり8匹)、溶媒(0.5M Arg-コハク酸/20mM トリス/0.02% Tween20, pH =7.2)、Apo2L/TRAIL (図1のアミノ酸114−281)(60mg/kg)を2週間にわたって週当たり5回(すなわち、第0−4日目及び第7−11日目)の腹腔内投与、ないしはリツキサン(登録商標)(4mg/kg、Genentech, Inc.)を2週間にわたって週当たり1回の腹腔内投与(すなわち、第0日目と第7日目)、又は後者のApo2L/TRAILとリツキサン(登録商標)投薬計画の併用にて処理した(図6)。
溶媒処理マウスの腫瘍は急速に成長したが、単剤Apo2L/TRAIL又はリツキサン(登録商標)処理では有意に腫瘍の成長が遅かった。Apo2L/TRAILグループの1マウスでは完全な腫瘍の消耗がみられ、腫瘍発生率(TI)は7/8であった。リツキサン(登録商標)処理では何れの腫瘍も消耗しなかったが、より効果が長かった。重要なことに、Apo2L/TRAILとリツキサン(登録商標)の併用処置では、すべてのマウスの腫瘍体積が劇的に減少した。8匹中5匹のマウスは完全に腫瘍が消耗し、8匹中3匹のマウスは少なくとも28日間で最小の腫瘍成長率を示した。これらの結果から、Apo2L/TRAILとリツキサン(登録商標)はリンパ腫異種移植片に対して相乗的な抗腫瘍活性を示しうることが示唆された。
【0120】
実施例4 SCIDマウスに予め定着させた皮下BJABリンパ腫腫瘍異種移植片の成長に対するApo2L/TRAIL、リツキサン(登録商標)、又は併用処置の効果
実施例3に記載のものと同じ研究を行った。SCIDマウスにヒトB細胞非ホジキンBJABリンパ腫細胞(ATCC)(1マウス当たり20万個の細胞)を皮下注射して、腫瘍を200mm3まで成長させた。次いで、マウスを4つの試験グループに分けて(1グループ当たり8匹)、溶媒(0.5M Arg-コハク酸/20mM トリス/0.02% Tween20, pH =7.2)、Apo2L/TRAIL(「Apo2L.0」;図1のアミノ酸114−281) (60 mg/kg)を2週間にわたって週当たり5回(すなわち、第0−4日目及び第7−11日目)の腹腔内投与、ないしはリツキサン(登録商標)(4mg/kg、Genentech, Inc.)を2週間にわたって週当たり1回の腹腔内投与(すなわち、第0日目と第7日目)、又は後者のApo2L/TRAILとリツキサン(登録商標)投薬計画の併用にて処理した。
図7に結果を示す。溶媒処理マウスの腫瘍は急速に成長したが、単剤Apo2L/TRAIL又はリツキサン(登録商標)処理では有意に腫瘍の成長が遅かった。Apo2L/TRAIL単独及びリツキサン(登録商標)単独の何れにおいても完全な退行はみられず、リツキサン(登録商標)はより効果が長く続いた。実施例3に記載の実験と同様に、Apo2L/TRAILとリツキサン(登録商標)の併用処置では、すべてのマウスの腫瘍体積が有意に減少した。7匹中6匹のマウスは完全に腫瘍が消耗した。これらの結果から、Apo2L/TRAILとリツキサン(登録商標)はリンパ腫異種移植片に対して相乗的な抗腫瘍活性を示しうることが示唆された。
【0121】
実施例5 SCIDマウスに予め定着させた皮下BJABリンパ腫腫瘍異種移植片の成長のカスパーゼプロセシングに対するApo2L/TRAIL、リツキサン(登録商標)、又は併用処置の効果
処置した腫瘍のアポトーシス媒介性カスパーゼのプロセシング(タンパク質分解性カスパーゼプロセシングによって示される)を検査するために、SCIDマウスにヒトB細胞非ホジキンBJABリンパ腫細胞(ATCC)(1マウス当たり20万個の細胞)を皮下注射して、腫瘍を200mm3まで成長させた。次いで、マウスを、溶媒(0.5M Arg-コハク酸/20mM トリス/0.02% Tween20, pH =7.2)(n=1)、Apo2L/TRAIL(60mg/kg)の1回腹腔内投与(n=1)、又はリツキサン(登録商標)(4mg/kg、Genentech, Inc.)の1回腹腔内投与(n=2)、又は後者のApo2L/TRAILとリツキサン(登録商標)投薬計画の併用(n=2)にて処理した。処理後2日に、腫瘍を採取し、溶解バッファ中で溶解し、カスパーゼ8、3、9及び7に対する特異的な抗体を用いたイムノブロットを行い(ローディングコントロールとして抗βアクチン抗体を用いる)、カスパーゼプロセシングを可視化した(図8)。
Apo2L/TRAIL処理(A)では、溶媒コントロール(V)と比較してカスパーゼ8、3、9及び7のプロセシングの誘導が増加したが、リツキサン(登録商標)(R)ではカスパーゼプロセシングが誘導されなかった。特に、Apo2L/TRAILとリツキサン(登録商標)との併用処置(AR)では、Apo2L/TRAIL単独のもの以上にカスパーゼプロセシングが増加しなかった。これらの結果から、Apo2L/TRAILとリツキサン(登録商標)との相乗的な抗腫瘍活性がアポトーシスの亢進に必ずしも媒介されないことが示唆される。このことから、リツキサン(登録商標)に媒介されるADCCと補体依存性溶解と、Apo2L/TRAILに媒介されるアポトーシス活性の組合せが、観察された抗腫瘍相乗作用の根底にあることがいえる。
【0122】
実施例6 SCIDマウスに予め定着させた皮下BJABリンパ腫腫瘍異種移植片の成長に対するアゴニストDR5抗体、リツキサン(登録商標)、又は併用処置の効果
SCIDマウスにヒトB細胞非ホジキンBJABリンパ腫細胞(ATCC)(1マウス当たり20万個の細胞)を皮下注射して、腫瘍を200mm3まで成長させた。次いで、マウスを4つの試験グループに分けて(1グループ当たり7匹)、溶媒(0.5M Arg-コハク酸/20mM トリス/0.02% Tween20, pH =7.2)、アゴニストDR5モノクローナル抗体(「Apomab」)(10mg/kg)、ないしはリツキサン(登録商標)(4mg/kg)を2週間にわたって週当たり1回の腹腔内投与(すなわち、第0日目と第7日目)、又は後者のDR5抗体とリツキサン(登録商標)投薬計画の併用にて処理した(図9)。溶媒処理マウスの腫瘍は急速に成長したが、単剤DR5抗体又はリツキサン(登録商標)処理では有意に腫瘍の成長が遅かった。重要なことに、DR5抗体とリツキサン(登録商標)との併用処置では、すべてのマウスの腫瘍体積が劇的に減少した。7匹中5匹のマウスは完全に腫瘍が消耗し、7匹中2匹のマウスは少なくとも35日間で最小の腫瘍成長率を示した。これらの結果から、アゴニストDR5抗体とリツキサン(登録商標)はリンパ腫異種移植片に対して相乗的な抗腫瘍活性を示しうることが示唆された。
【0123】
実施例7 SCIDマウスに予め定着させた皮下BJABリンパ腫腫瘍異種移植片の成長のカスパーゼプロセシングに対するアゴニストDR5抗体、リツキサン(登録商標)、又は併用処置の効果
処置した腫瘍のアポトーシス媒介性カスパーゼのプロセシング(タンパク質分解性カスパーゼプロセシングによって示される)を検査するために、SCIDマウスにヒトB細胞非ホジキンBJABリンパ腫細胞(ATCC)(1マウス当たり20万個の細胞)を皮下注射して、腫瘍を200mm3まで成長させた。次いで、マウスを、溶媒(0.5M Arg-コハク酸/20mM トリス/0.02% Tween20, pH =7.2)(n=1)、又はリツキサン(登録商標)(4mg/kg)の1回腹腔内投与(n=2)、又はアゴニストDR5抗体(10mg/kg)の1回腹腔内投与(n=2)、又は後者のDR5抗体とリツキサン(登録商標)投薬計画の併用(n=2)にて処理した。処理後2日に、腫瘍を採取し、溶解バッファ中で溶解し、カスパーゼ8、3、9及び7に対する特異的な抗体を用いたイムノブロットを行い(ローディングコントロールとして抗βアクチン抗体を用いる)、カスパーゼプロセシングを可視化した(図10)。
アゴニストDR5抗体処理(A)では、溶媒コントロール(V)と比較してカスパーゼ8、3、9及び7のプロセシングの誘導が増加したが、リツキサン(登録商標)(R)ではカスパーゼプロセシングが誘導されなかった。特に、DR5抗体とリツキサン(登録商標)との併用処置(AR)では、DR5抗体単独のもの以上にカスパーゼプロセシングが増加しなかった。これらの結果から、DR5抗体とリツキサン(登録商標)との相乗的な抗腫瘍活性がアポトーシスの亢進に必ずしも媒介されないことが示唆される。むしろ、リツキサン(登録商標)に媒介されるADCCと補体依存性溶解と、アゴニストDR5抗体に媒介されるアポトーシス活性の組合せが、観察された抗腫瘍相乗作用の根底にあることがいえる。
【0124】
NHL細胞株におけるCD20及びApo2L/TRAILレセプターの発現と、癌細胞に対するリツキシマブ、Apo2L/TRAIL及びこれらの併用の効果を示す更なるデータを図11−16に示す。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】ヒトApo-2リガンドcDNA(配列番号:2)のヌクレオチド配列およびその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:1)を示す。ヌクレオチド位置447の「N」は、ヌクレオチド塩基が「T」又は「G」でありうることを示すために用いる。
【図2A】完全長ヒトDR4のcDNAのヌクレオチド配列(配列番号:4)およびその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:3)を示す。また、ヒトDR4のそれぞれのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、Pan 等, Science, 276:111 (1997)に報告される。
【図2B】完全長ヒトDR4のcDNAのヌクレオチド配列(配列番号:4)およびその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:3)を示す。また、ヒトDR4のそれぞれのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、Pan 等, Science, 276:111 (1997)に報告される。
【図3A】1998年11月19日の国際公開公報98/51793に公開されるヒトDR5の411のアミノ酸配列(配列番号:5)を示す。
【図3B】ヒトDR5の転写スプライシング変異体は当分野で公知である。1998年8月20日の国際公開公報98/35986に公開される、このDR5スプライシング変異体はヒトDR5の440のアミノ酸配列(配列番号:6)をコードする。
【図3C】ヒトDR5の転写スプライシング変異体は当分野で公知である。1998年8月20日の国際公開公報98/35986に公開される、このDR5スプライシング変異体はヒトDR5の440のアミノ酸配列(配列番号:6)をコードする。
【図4】Bリンパ腫細胞株のApo2L/TRAILレセプターの発現を示す。
【図5】Bリンパ腫細胞株のCD20の発現を示す。
【図6】SCIDマウスに予め定着させた皮下BJABリンパ腫腫瘍異種移植片の成長に対するApo2L/TRAIL、リツキサン(登録商標)、又は併用処置の効果を示す。
【図7】SCIDマウスに予め定着させた皮下BJABリンパ腫腫瘍異種移植片の成長に対するApo2L/TRAIL、リツキサン(登録商標)、又はApo2L/TRAILとリツキサン(登録商標)の併用処置の効果についての更なる結果を示す。
【図8】SCIDマウスに予め定着させた皮下BJABリンパ腫腫瘍異種移植片成長のカスパーゼプロセシングに対するApo2L/TRAIL、リツキサン(登録商標)、又はApo2L/TRAILとリツキサン(登録商標)の併用処置の効果を示す。
【図9】SCIDマウスに予め定着させた皮下BJABリンパ腫腫瘍異種移植片の成長に対するDR5アゴニスト抗体、リツキサン(登録商標)、又は併用処置の効果を示す。
【図10】SCIDマウスに予め定着させた皮下BJABリンパ腫腫瘍異種移植片成長のカスパーゼプロセシングに対するDR5アゴニスト抗体、リツキサン(登録商標)、又は併用処置の効果を示す。
【図11】NHL細胞株におけるCD20及びApo2L/TRAILレセプターの発現を示す。
【図12】SCIDマウスに予め定着させた皮下Ramos RA1腫瘍異種移植片の成長に対するApo2L/TRAIL、リツキシマブ、又は併用処置の効果を示す。
【図13】SCIDマウスに予め定着させたDOHH-2濾胞性リンパ腫異種移植片の成長に対するApo2L/TRAIL、リツキシマブ、又は併用処置の効果を示す。
【図14A】BJAB細胞に対するApo2L/TRAIL及びリツキシマブ又はこれらの併用処置による細胞殺傷の効果とメカニズムを示す。
【図14B】BJAB細胞に対するApo2L/TRAIL及びリツキシマブ又はこれらの併用処置による細胞殺傷の効果とメカニズムを示す。
【図14C】BJAB細胞に対するApo2L/TRAIL及びリツキシマブ又はこれらの併用処置による細胞殺傷の効果とメカニズムを示す。
【図15】SCIDマウスにおけるRamosT1腫瘍異種移植片の成長に対するApo2L/TRAIL、リツキシマブ、又はこれらの併用処置の効果を示す。
【図16】SCIDマウスにおけるBJAB-Luc腫瘍異種移植片に対するApo2L/TRAIL、リツキシマブ、又はこれらの併用処置の効果を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物癌細胞を相乗的に有効な量のアゴニストデスレセプター抗体及びCD20抗体に曝すことを含む、癌細胞の治療方法。
【請求項2】
前記アゴニストデスレセプター抗体が抗DR5レセプターモノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アゴニストデスレセプター抗体が抗DR4レセプターモノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記癌細胞が、前記の相乗的に有効な量のアゴニストデスレセプター抗体及びCD20抗体にインビボで曝される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アゴニストデスレセプター抗体がキメラ抗体又はヒト化抗体である、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項6】
前記アゴニストデスレセプター抗体がヒト抗体である、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項7】
前記アゴニストデスレセプター抗体が1以上のApo-2リガンドレセプターと交差反応する抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記癌細胞がリンパ腫細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
さらに、前記癌細胞を一又は複数の成長阻害剤に曝すことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
さらに、前記細胞を放射線に曝すことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記DR5抗体が108M−1から1012M−1のDR5レセプター結合親和性を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記デスレセプター抗体及びCD20抗体が、CHO細胞、酵母菌及び大腸菌からなる群から選択される組み換え宿主細胞内で発現される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記CD20抗体がモノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記CD20抗体が抗体リツキシマブである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
相乗的に有効な量のアゴニストデスレセプター抗体及びCD20抗体が哺乳動物に投与されることを含む、免疫関連疾患の治療方法。
【請求項16】
前記アゴニストデスレセプター抗体が抗DR5レセプターモノクローナル抗体である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記アゴニストデスレセプター抗体が抗DR4レセプターモノクローナル抗体である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記アゴニストデスレセプター抗体がキメラ抗体又はヒト化抗体である、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記アゴニストデスレセプター抗体がヒト抗体である、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項20】
前記アゴニストデスレセプター抗体が1以上のApo-2リガンドレセプターと交差反応する抗体である、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記免疫関連疾患が関節リウマチ又は多発性硬化症である、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記DR5抗体が108M−1から1012M−1のDR5レセプター結合親和性を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記デスレセプター抗体及びCD20抗体が、CHO細胞、酵母菌及び大腸菌からなる群から選択される組み換え宿主細胞内で発現される、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記CD20抗体がモノクローナル抗体である、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記CD20抗体が抗体リツキシマブである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記デスレセプター抗体及びCD20抗体が連続して投与される、請求項1又は15に記載の方法。
【請求項27】
前記デスレセプター抗体及びCD20抗体が同時に投与される、請求項1又は15に記載の方法。
【請求項1】
哺乳動物癌細胞を相乗的に有効な量のアゴニストデスレセプター抗体及びCD20抗体に曝すことを含む、癌細胞の治療方法。
【請求項2】
前記アゴニストデスレセプター抗体が抗DR5レセプターモノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アゴニストデスレセプター抗体が抗DR4レセプターモノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記癌細胞が、前記の相乗的に有効な量のアゴニストデスレセプター抗体及びCD20抗体にインビボで曝される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アゴニストデスレセプター抗体がキメラ抗体又はヒト化抗体である、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項6】
前記アゴニストデスレセプター抗体がヒト抗体である、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項7】
前記アゴニストデスレセプター抗体が1以上のApo-2リガンドレセプターと交差反応する抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記癌細胞がリンパ腫細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
さらに、前記癌細胞を一又は複数の成長阻害剤に曝すことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
さらに、前記細胞を放射線に曝すことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記DR5抗体が108M−1から1012M−1のDR5レセプター結合親和性を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記デスレセプター抗体及びCD20抗体が、CHO細胞、酵母菌及び大腸菌からなる群から選択される組み換え宿主細胞内で発現される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記CD20抗体がモノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記CD20抗体が抗体リツキシマブである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
相乗的に有効な量のアゴニストデスレセプター抗体及びCD20抗体が哺乳動物に投与されることを含む、免疫関連疾患の治療方法。
【請求項16】
前記アゴニストデスレセプター抗体が抗DR5レセプターモノクローナル抗体である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記アゴニストデスレセプター抗体が抗DR4レセプターモノクローナル抗体である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記アゴニストデスレセプター抗体がキメラ抗体又はヒト化抗体である、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記アゴニストデスレセプター抗体がヒト抗体である、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項20】
前記アゴニストデスレセプター抗体が1以上のApo-2リガンドレセプターと交差反応する抗体である、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記免疫関連疾患が関節リウマチ又は多発性硬化症である、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記DR5抗体が108M−1から1012M−1のDR5レセプター結合親和性を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記デスレセプター抗体及びCD20抗体が、CHO細胞、酵母菌及び大腸菌からなる群から選択される組み換え宿主細胞内で発現される、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記CD20抗体がモノクローナル抗体である、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記CD20抗体が抗体リツキシマブである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記デスレセプター抗体及びCD20抗体が連続して投与される、請求項1又は15に記載の方法。
【請求項27】
前記デスレセプター抗体及びCD20抗体が同時に投与される、請求項1又は15に記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15】
【図16】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2008−512479(P2008−512479A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531333(P2007−531333)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/032015
【国際公開番号】WO2006/029275
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/032015
【国際公開番号】WO2006/029275
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【Fターム(参考)】
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