説明

デセナールの水素化によるデカノールの製造法

本発明は、少なくとも1つのデカノールを、少なくとも1つのデセナールの水素化によって製造するための方法に関し、その際、第1の水素化は、液相中で固体の第1の触媒で行なわれ、この場合第1の触媒は、銅およびニッケルを含有する。本発明は、長い運転時間後であってもデセナールを高い収率でデカノールへと水素化する、冒頭に記載された上位概念の方法を記載するという課題に基づくものである。殊に、水素化搬出物中の未反応のデセナールの含量は、1500ppm未満であるべきである。この課題は、水素化を二段階で行ない、すなわち第1の工程で自体公知の方法で、銅、ニッケルおよび場合によりクロムおよび/または酸化バリウムを含有する触媒で行ない、それに続いて第2の工程で、銅不含、クロム不含およびニッケル不含でなければならない別の触媒で行なうことによって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのデカノールを、少なくとも1つのデセナールの水素化によって製造するための方法に関し、その際、第1の水素化は、液相中で固体の第1の触媒で行なわれ、この場合第1の触媒は、銅およびニッケルを含有する。
【0002】
この種の方法は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第102007041380号明細書A1から公知である。
【0003】
本発明の範囲内のデカノールは、10個の炭素原子を有する飽和アルコールである。デカノールの群の代表例は、次の通りである:2−プロピルヘプタノール、4−メチル−2−プロピル−ヘキサノール、5−メチル−2−プロピル−ヘキサノール、2−イソプロピル−4−メチル−ヘキサノール、2−イソプロピル−5−メチル−ヘキサノール、この場合枚挙されたデカノールは、それぞれ少なくとも2個の立体異性体からなる。
【0004】
デカノールは、可塑剤を製造するための前駆物質として、ならびに洗剤を製造するための中間生成物として使用される。
【0005】
本発明の範囲内のデセナールは、10個の炭素原子を有するα,β−不飽和アルデヒドである。このα,β−不飽和アルデヒドは、殊に飽和C5アルデヒド(ペンタール)をアルドール化することによって取得される。デセナールの群の代表例は、次の通りである:2−プロピルヘプテナール、4−メチル−2−プロピル−ヘキセナール、5−メチル−2−ヘキセナール、2−イソプロピル−4−メチル−ヘキセナール、2−イソプロピル−5−メチル−ヘキセナール。
【0006】
カルボニル化合物、殊にアルデヒドを接触的に水素を用いてアルコールへと還元することは、公知である。この場合、しばしば、元素の周期律表の第1b族、第2b族、第6b族、第7b族、および/または第8族からの少なくとも1つの金属を含有する触媒が使用される。アルデヒドの水素化は、連続的または非連続的に、粉末状または粒状の触媒を用いて気相または液相中で実施することができる。
【0007】
オキソプロセス(オレフィンのヒドロホルミル化)またはアルデヒドのアルドール縮合からのアルデヒドの水素化によるアルコールの工業的な製造のためには、なかんずく大量生産物を得る場合に、固定床中に配置された触媒を用いた気相または液相中での連続的方法が使用される。
【0008】
液相水素化は、気相水素化と比較してより好ましいエネルギー収支およびより高い空時収量を有する。水素化されるべきアルデヒドの分子量の上昇とともに、すなわち、沸点の上昇とともに、より好ましいエネルギー収支の利点が増す。それに従って、7個より多い炭素原子を有する高級アルデヒドが特に液相中で水素化される。
【0009】
しかしながら、液相中での水素化は、アルデヒドのみならずアルコールの高い濃度に基づき、高沸点物の形成が後続反応および副反応によって助長されるという欠点を有する。例えば、アルデヒドは容易にアルドール反応(付加および/または縮合)し、かつアルコールと一緒にヘミアセタールまたは完全なアセタールを形成する。生じたアセタールは、水またはアルコールの脱離下でエノールエーテルを形成し得、該エノールエーテルは反応条件下で飽和エーテルへと水素化される。それによって、これらの二次副生成物は収率を減少させる。高沸点物と称される副生成物は、せいぜい部分的に、後接続された装置中で、価値のある生成物、例えば出発アルデヒドおよび目的アルコールに再び分解されうる。
【0010】
水素化のために使用される工業用アルデヒド混合物は、しばしばすでに高沸点物を種々の濃度で含有している。
【0011】
水を添加しながらの飽和アルデヒド(ヒドロホルミラート)の水素化は、例えば刊行物米国特許第5059710号明細書、米国特許第4401384号明細書、英国特許第2142010号明細書、米国特許第2809220号明細書、ドイツ連邦共和国特許第19842370号明細書A1およびドイツ連邦共和国特許出願公開第10062448号明細書A1中に開示されている。
【0012】
この方法は、デセナールをデカノールへと水素化するために条件付きでのみ適している。それというのも、存在する水によってデセナールの少なくとも一部分は、1つ以上のC5アルデヒドへ再び分解されるからである。
【0013】
不飽和アルデヒドを飽和アルコールへと水素化することは、飽和アルデヒドの水素化と比較して明らかに複雑である。それというのも、この場合には、カルボニル基だけでなく、オレフィン系二重結合も水素化されなければならないからである。
【0014】
飽和またはα,β−不飽和アルデヒドを相応する飽和アルデヒドへと水素化するための上位概念に記載の方法は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第102007041380号明細書A1中に開示されている。この場合、水素化触媒として、促進剤としての活性成分の銅およびニッケルならびにクロムと共に付加的に酸化バリウムを含有する担持触媒が使用される。
【0015】
デセナールをデカノールへと、ドイツ連邦共和国特許出願公開第102007041380号明細書A1中に記載された、酸化バリウムを有する触媒で長時間試験において水素化する場合には、1000時間に亘る運転時間後に水素化搬出物中にデセナールが存在することが判明した。
【0016】
デカノール混合物中のデセナールは、この後加工において不利である。例えば、デセナールの反応によるデカノール混合物からの可塑剤の製造において、高められた色価を有する生成物が生じる可能性があり、従ってこの色価の減少のために高められた後加工費用が必要とされる。
【0017】
この理由から、できるだけデセナールを含まないデカノール混合物を提供することが望ましい。しかし、デセナールおよびデカノールは、類似の沸騰位置を有するので、未反応のデセナールをデカノール混合物から物理的に分離することは、不経済である。
【0018】
従って、本発明は、長い運転時間後であってもデセナールを高い収率でデカノールへと水素化する、冒頭に記載された上位概念の方法を記載するという課題に基づくものである。殊に、水素化搬出物中での未反応のデセナールの含量は、1500ppm未満、特に1000ppm未満、殊に有利に600ppm未満であるはずである。
【0019】
この課題は、水素化を二段階で行ない、すなわち第1の工程で自体公知の方法で、銅、ニッケルおよび場合によりクロムおよび/または酸化バリウムを含有する触媒で行ない、それに続いて第2の工程で、銅不含、クロム不含およびニッケル不含でなければならない別の触媒で行なうことによって解決される。
【0020】
それと共に、本発明の対象は、第1の水素化が液相中で固体の第1の触媒で行なわれ、この場合第1の触媒は、銅およびニッケルを含有し、第1の水素化に続いて第2の水素化で液相中で固体の第2の触媒で行なわれる、少なくとも1つのデセナールの水素化による少なくとも1つのデカノールの製造法である。
【0021】
本発明による方法は、1つの触媒だけを使用する方法と比較して次の利点を有する:同じ全触媒容量の場合には、比較可能な収率の際にオレフィン系化合物の僅かな含量を有する生成物が得られる。これは、水素化搬出物中でオレフィン系化合物の限界値を維持しながら僅かな比触媒容量を必要とするという結果を生じる。僅かな触媒費用および触媒交換の僅かな頻度およびそれに関連した費用のために、僅かな比水素化費用がもたらされる。その上、生産の中断時間は、触媒の交換によって減少される。
【0022】
本発明による方法のための原料は、デセナール(α,β−不飽和C10アルデヒド)である。殊に、C5アルデヒドのアルドール化によって製造されたα,β−不飽和C10アルデヒド、例えばn−ペンタナールからの2−プロピルヘプト−2−エナールおよび3−メチルブタナールからの2−メチル−2−イソプロピルヘキセ−2−エナール、または少なくとも2つの異なるC5アルデヒドの縮合によって得られる異性体デセナールの混合物、例えばn−ペンタナールと2−メチルブタナールとの交差アルドール化からのメチル−2−プロピル−ヘキサナールが使用される。殊に好ましくは、85質量%を上廻る2−プロピルヘプテ−2−エナールの含量を有するデセナール混合物は、本発明による方法により水素化される。
【0023】
このような混合物をC5アルデヒドから製造するための方法は、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第102009001594号明細書A1中に記載されている。
【0024】
本発明による方法において、第1の水素化段階には、水素化活性金属の銅、クロムおよびニッケルならびに酸化バリウムを有する担持触媒を使用することができる。このような触媒は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第102007041380号明細書A1中に記載されている。担持触媒は、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、二酸化珪素またはこれらの混合酸化物であることができる。好ましい担体は、90〜200m2/gのBET表面積を有する酸化アルミニウム、特にγ−酸化アルミニウムである。本発明による方法の第1の水素化段階に使用可能な(第1の)触媒は、銅1〜20質量%、クロム0.2〜6質量%、ニッケル1〜20質量%、それぞれ金属として計算した、およびバリウム0,1〜2質量%、酸化バリウムとして計算した、である。
【0025】
1つの好ましい実施態様において、担持触媒は、本発明による方法の第1の水素化段階のために単に銅およびニッケルを水素化活性金属として含有し、すなわちクロムを含んでいない。好ましい担体として、90〜200m2/gのBET表面積を有する酸化アルミニウム、特にγ−酸化アルミニウムが使用される。記載された触媒は、一般に銅1〜20質量%およびニッケル1〜20質量%、それぞれ金属として計算した、を含有し、殊に銅6〜12質量%およびニッケル3〜8質量%を含有する。
【0026】
意外なことに、本発明による二段階の水素化の場合には、第1の触媒は、むしろ酸化バリウム不含であってよく、この場合には、アセタールの言うに値する形成を生じることはないことが判明する。
【0027】
従って、本発明による方法において、第1の水素化段階の使用すべき触媒は、殊に担体上の水素化活性金属としての銅およびニッケルからなる触媒であり、すなわちクロムおよび/または酸化バリウムは、添加されていない。
【0028】
本発明による方法の第2の水素化段階には、有利に水素化活性金属としてパラジウムまたはルテニウムを有する触媒が使用される。
【0029】
本発明による方法の第二段階のための水素化触媒として、通常ルテニウム0.1〜10質量%を有する公知のルテニウム担持触媒を使用することができる。例えば、その製造がドイツ連邦共和国特許出願公開第10054347号明細書A1およびドイツ連邦共和国特許出願公開第10232868号明細書A1中に記載されている触媒を使用することができる。
【0030】
本発明による方法において、有利には、担体としての大きな表面積の酸化アルミニウム上のRu0.5〜3質量%を有するルテニウム担持触媒が使用される。
【0031】
パラジウム触媒は、特に好ましい。それというのも、価値の高いパラジウムは、使用された触媒から比較的良好にリサイクルさせることができるからである。
【0032】
適当なパラジウム触媒として、パラジウム0.1〜3質量%を有するPd含有担持触媒を使用することができる。本発明による方法において、有利には、担体としての大きな表面積の酸化アルミニウム上のPd0.5〜1.5質量%を有する担持触媒が使用される。好ましくは、80〜180m2/gのBET表面積および0.5〜0.7cm3/gの細孔容積を有するγ−酸化アルミニウムが使用される。
【0033】
触媒は、有利には、低い流動抵抗をもたらす形状、例えば細粒、ペレットまたは成形体、例えばタブレット、円筒体、球体、棒状押出物または環状体の形状で使用される。前記触媒は、この触媒が水素化反応器中で還元されない限り、好ましくはこの触媒の使用前に水素流中で、例えば140〜250℃に加熱することによって活性化される。例えば、触媒を水素で液相の存在下に還元する方法は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19933348号明細書A1中に記載されている。
【0034】
全触媒容量に対する第1の触媒の容量割合は、特に70〜98%であり、殊に第1の触媒の容量は、第2の触媒の容量の少なくとも3倍の大きさである。殊に有利には、全触媒容量に対する第1の触媒の容量割合は、80〜95%、殊に有利に90〜95%である。
【0035】
本発明による方法の殊に好ましい実施態様において、第1の水素化段階で担体上の単に銅およびニッケルからなる触媒が、すなわちクロムおよび/または酸化バリウムを含まずに使用され、第2の水素化段階では、Pd含有担持触媒が使用される。前記の触媒の組合せによって、特に良好に水素化の結果が本発明による方法で達成され、すなわちデセナールの割合は、特に著しく減少させることができ、同時に触媒の良好なリサイクル可能性において、このことは、全体的に特に経済的なプロセスを生じる。
【0036】
本発明による方法において、デセナール混合物を相応する飽和C10アルコールへ水素化することは、異なる反応器中または床中に配置された2つの触媒で実施される。場合によっては、2つの水素化段階は、順次に1つの反応器中で行なうことができる。これは、異なる触媒が1つの反応器中で種々の床中に配置されていることを意味する。最も簡単な実施態様において、本発明による方法は、2つの床を有する反応器中で実施され、この場合一方の床は、第1の触媒によって形成され、別の床は、第2の触媒によって形成される。
【0037】
本発明による方法においては、少なくとも2つの反応器を用いての方法の実施が優先され、この場合第2の反応器は、1つまたは2つの床を有することができる。
【0038】
特に、本発明による方法は、少なくとも2つの連続的に接続された反応器中で実施され、この場合第1の反応器は、第1の触媒を含み、第2の反応器は、第2の触媒を含み、およびこの場合第1の水素化は、第1の反応器中で行なわれ、第2の水素化は、第2の反応器中で行なわれる。
【0039】
本発明による方法のそれぞれの反応帯域には、異なる処理変法を選択することができる。この処理変法は、断熱式に、または実質的に等温で、すなわち10℃未満の温度上昇で、単段または多段で実施することができる。多段で実施される場合、全ての反応器、好ましくは管型反応器は、断熱式にまたは実質的に等温で、ならびに1つ以上は断熱式に、かつ別の反応器は、実質的に等温で運転することができる。
【0040】
本発明による方法の2つの反応帯域は、好ましくは連続的、および有利に細流相で、または液相中で三相反応器中で向流で実施され、この場合水素は、自体公知の方法で液状のアルデヒド中で微細に分配される。均一な液体分配、改善された反応熱導出および高い空時収量のために、反応器は、好ましくは、空の反応器の断面積1m2および1時間当たり15〜120m3、殊に25〜80m3の高い液体負荷で運転される。反応器が等温でかつ真っ直ぐな通路で運転される場合、比触媒負荷(LHSV=liquid hourly space velocity)値は、0.1〜10h-1であってよい。
【0041】
本発明による方法の1つの特殊な実施態様は、第1の触媒を有する第1の反応器がループ運転形式(外部返送)で運転され、かつ第2の触媒だけ、または上部の反応帯域中に第1の触媒および下部の反応帯域中に第2の触媒を含む第2の反応器が真っ直ぐな通路で運転されることを示す。
【0042】
場合によっては、水素化は、連続的に接続された反応器中で実施されてもよい。この場合、第1の触媒の一部分を有する第1の反応器は、特にループ運転形式(外部返送)で運転され、第1の触媒の残りを有する第2の反応器および第2の触媒を有する第3の反応器は、真っ直ぐな通路で運転される。この場合、第1の水素化は、第1の反応器中および第2の反応器中で行なわれ、第2の水素化は、第3の反応器中で行なわれる。
【0043】
副反応の最小化、ひいては収率の向上のために、反応器供給流中のアルデヒドの濃度を制限することは、好ましい。
【0044】
殊に、第1の反応器の流入管中のデセナールの割合は、1〜35質量%、有利に5〜25質量%である。望ましい濃度範囲は、ループ運転形式で運転される反応器の場合、循環比(返送される水素化搬出物と出発物質との量比)によって調節することができる。
【0045】
本発明による方法の2つ以上の段階は、0.5〜10MPa、殊に0.5〜4MPa、特に1〜2.5MPaの範囲内の圧力範囲で実施される。水素化温度は、120〜220℃の間、殊に140〜190℃の間にある。個々の段階は、同じ圧力または異なる圧力で運転される。温度は、個々の段階で同じかまたは異なる。
【0046】
水素化のために使用される水素は、不活性ガス、例えばメタンまたは窒素を含有することができる。好ましくは、水素は、98%より大きい、殊に99%より大きい純度で使用される。
【0047】
それぞれの反応器は、新しい水素を用いて運転されてよい。しかし、反応器の排ガスは、全部または一部分が別の反応器の使用水素であってよいことも可能である。一部分が反応器の使用水素であってよい場合には、液状水素化物(出発物質/生成物)および水素は、同じ順序または反対の順序で反応器に貫流することができる。
【0048】
水素化生成物は、蒸留により後処理される。これは常圧または有利に減圧で行なわれる。特に、水素化混合物は、3つの留分に分離され、すなわち前留出物と、デカノール留分(飽和C10アルコール)と、高沸点物留分(デカノールよりも高温で沸騰する物質)とに分離される。前留出物がなおC10アルデヒドを含有する場合には、この前留出物は、一部が水素化に返送されうる。
【0049】
10アルコールは、既述したように、特に可塑剤または洗剤の製造に使用される。
【0050】
次の実施例は本発明を説明するものであるが、明細書および特許請求の範囲からもたらされる適用の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0051】
例1(本発明によらない)
第1の触媒を用いての水素化(Al23担体上のCu/Cr/Ni)
2−プロピルヘプテナール約88質量%および4−メチル−2−プロピル−ヘキセナール約3.2質量%を有する、n−ペンタナールおよび2−メチルブタナールの連続的アルドール化からの反応搬出物を、循環路装置中で180℃および25バール(絶対圧力)で銅6質量%、ニッケル3.1質量%およびクロム0.6質量%を有する、Al23担体(棒状押出物:直径1.5mm、長さ3〜5mm)上のCu/Cr/Ni触媒105.3gで液相で連続的に水素化した。40 l/hの循環量で0.66h-1のLHSV値に相応して、毎時出発物質0.10 lを通過させた。排ガス量は、60Nl/hであった。出発物質の分析値および生成物の分析値は、質量%で第1表中に示されている。
【0052】
【表1】

【0053】
第1表から確認することができるように、2つの不飽和C10アルデヒドの2−プロピルヘプテナールおよび4−メチル−2−プロピル−ヘキセナールは、Cu/Cr/Ni標準触媒で高い選択性で価値のある生成物の2−プロピルヘプタノールおよび4−メチル−2−プロピル−ヘキサノールへと反応された。
【0054】
出発物質中に存在する、未反応のC5アルデヒド(n−ペンタナールおよび2−メチルブタナール)は、実際に完全に相応するC5アルコールへと反応した。
【0055】
不飽和C10アルデヒドの2−プロピルヘプテナールの残留含量は、500時間後の水素化の開始時の0.35質量%から試験時間の3000時間後の約0.85質量%へ上昇した。
【0056】
Cu/Cr/Ni触媒での水素化の生成物スペクトルにおいて、2−プロピルヘプテナール水素化の中間生成物、飽和C10アルデヒドの2−プロピルヘプタナール、が検出された。
【0057】
例2(本発明によらない)
第1の触媒を用いての水素化(Al23担体上のCu/Ni)
2−プロピルヘプテナール約86.5質量%および4−メチル−2−プロピル−ヘキセナール3.3質量%を有する、n−ペンタナールおよび2−メチルブタナールの連続的アルドール化からの反応搬出物を、循環路装置中で180℃および25バール(絶対圧力)で銅9.5質量%およびニッケル6.1質量%を有する、Al23担体(例1と同じ担体)上のCu/Ni触媒109.8g(150mlに相当する)で液相で連続的に水素化した。40 l/hの循環量で0.66h-1のLHSV値に相応して、毎時出発物質0.10 lを通過させた。排ガス量は、60Nl/hであった。出発物質の分析値および生成物の分析値は、質量%で第2表中に示されている。
【0058】
【表2】

【0059】
不飽和C10アルデヒドの2−プロピルヘプテナールの残留含量は、選択された反応条件下で500時間後の0.19質量%から3000時間の試験時間後の約0.65質量%へ上昇した。この結果は、例1中の水素化の結果と比較可能である。
【0060】
Cu/Cr/Ni触媒(例1)とは異なり、明らかにより高いCu−およびNi含量を有するCu/Ni触媒で2−プロピルヘプテナール水素化の中間生成物、飽和C10アルデヒドの2−プロピルヘプタナールは、実際に完全に価値のある生成物2−プロピルヘプタノールへ反応される。
【0061】
例3(本発明による)
Cu/Cr/Ni触媒とRu触媒との組合せを用いての水素化
次の例において、本発明による水素化の結果は、示される。触媒の代わりに、触媒床は、2つの触媒の組合せから構成されていた。触媒の全容量は、例1と同様に150mlであった。
【0062】
触媒床の主要割合は、例1でも使用されたCu/Cr/Ni触媒120mlで表わされる。この触媒は、反応器の流入側に置かれた。
【0063】
Cu/Cr/Ni触媒(棒状押出物:直径1.5mm、長さ3〜5mm)には、ルテニウム担持触媒(触媒容量30mlを有する担体としてのγ−酸化アルミニウム上のRu1.5質量%)が続いた。
【0064】
水素化のために、例1と同じ組成の出発物質を使用した。
【0065】
40 l/hの循環量で180℃、25バールおよび0.10 l/hの出発物質通過量での水素化の反応条件は、例1中の水素化の条件と比較可能であった。
【0066】
本発明による触媒の組合せに対する水素化の結果は、第3表中に表わされている。
【0067】
【表3】

【0068】
第3表中の結果は、本発明による触媒の組合せの存在下での2−プロピルヘプテナール水素化の収率が例1中の標準触媒で達成可能な収率と比較可能であることを示す。反応搬出物の本発明による分析後に、望ましい価値のある生成物2−プロピルヘプタノール(2−PH−ol)の含量は、2つの場合に85〜86質量%である。
【0069】
不飽和C10アルデヒドの2−プロピルヘプテナールの上昇する含量を有する例1中の触媒を用いての標準運転形式とは異なり、反応搬出物中の2−プロピルヘプテナール含量は、触媒の組合せを使用した場合に明らかに減少された。
【0070】
約3000時間の試験時間後、700ppmに相当する、約0.07質量%の2−プロピルヘプテナールの僅かな含量が算出された。本発明の結果によれば、2−プロピルヘプテナールは、特に2−プロピルヘプタナールへ反応された。
【0071】
例4(本発明による)
Cu/Ni触媒とPd触媒との組合せを用いての水素化
次の例においては、本発明による水素化の結果は、第1の触媒としてのCu/Ni触媒と後方に接続されたパラジウム触媒とから構成された、第2の触媒の組合せを使用して表わされる。例2と同様に、触媒の全容量は、150mlであった。
【0072】
例3と同じ容量比を維持して、反応器を、流入側から同じ幾何学的形状(押出物:直径1.5mm、長さ2〜4mm)のCu/Ni触媒120mlおよびパラジウム触媒30ml(Pd0.5質量%)で充填した。
【0073】
水素化のために、例2と同じ組成の出発物質を使用した。水素化は、前記例と同じ反応条件、すなわち180℃、25バールおよびC9アルデヒド100ml/hの通過量で行なわれた。
【0074】
第2の本発明による触媒の組合せに対する水素化の結果は、第4表中に表わされている。
【0075】
【表4】

【0076】
第4表から確認することができるように、Cu/Ni触媒とPd触媒との組合せの存在下での不飽和C10アルデヒドの水素化において、例2におけるCu/Ni触媒系を使用した場合と比較可能な収率が達成された。
【0077】
1つの触媒を有する例2と比較して、生成物搬出物中のC10アルデヒドの2−プロピルヘプテナールの残留含量は、後接続されたPd触媒によって明らかに減少された。約3000時間の試験時間後に、約400ppmの2−プロピルヘプテナール含量が算出された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのデカノールを、少なくとも1つのデセナールの水素化によって製造し、その際、第1の水素化は、液相中で固体の第1の触媒で行なわれ、この場合第1の触媒は、銅およびニッケルを含有する、少なくとも1つのデセナールの水素化によって少なくとも1つのデカノールを製造する方法において、第1の水素化には、固体の第2の触媒で液相中での第2の水素化が続き、この場合第2の触媒は、銅、クロムおよびニッケルを含まないことを特徴とする、少なくとも1つのデセナールの水素化によって少なくとも1つのデカノールを製造する方法。
【請求項2】
第2の触媒は、パラジウムを含有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第2の触媒は、ルテニウムを含有する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
全触媒容量に対する第1の触媒の容量割合は、70〜98%である、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
第1の触媒の容量は、第2の触媒の容量の少なくとも3倍の大きさである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、少なくとも2つの連続的に接続された反応器中で実施され、この場合第1の反応器は、第1の触媒を含み、第2の反応器は、第2の触媒を含み、およびこの場合第1の水素化は、第1の反応器中で行なわれ、第2の水素化は、第2の反応器中で行なわれる、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、3つの連続的に接続された反応器中で実施され、この場合第1の反応器は、第1の触媒の一部分を含み、ループ運転形式で運転され、この場合第2の反応器は、第1の触媒の残分を含み、この場合第3の反応器は、第2の触媒を含み、この場合第1の水素化は、第1の反応器中および第2の反応器中で行なわれ、およびこの場合第2の水素化は、第3の反応器中で行なわれる、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、2つの床を有する反応器中で実施され、この場合一方の床は、第1の触媒によって形成され、別の床は、第2の触媒によって形成される、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
第1の触媒は、酸化バリウム不含である、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
第1の触媒は、クロム不含である、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2013−507409(P2013−507409A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533537(P2012−533537)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061827
【国際公開番号】WO2011/045102
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(398054432)エボニック オクセノ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (63)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Oxeno GmbH
【住所又は居所原語表記】Paul−Baumann−Strasse 1, D−45764 Marl, Germany
【Fターム(参考)】