説明

デッキプレートパネル及びそれを用いた床構造

【課題】工業化住宅等の規格化されて設計された梁架構のグリッドの大きさに応じたバリエーションに対応し、任意の寸法で規格化し製作したとしても、建築現場への運搬時、現場搬入時、躯体の梁への設置時または設置後において変形が生じにくく、現場作業の負担が少なく簡易に梁に固定することができるプレハブ化したデッキプレートパネル及びそれを用いた床構造を提供する。
【解決手段】方形のデッキプレート部と、デッキプレート部を建築物の躯体の梁に固定するための接続部材と、を有し、接続部材は、デッキプレート部の短辺に略連続して固着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨造の床やコンクリートスラブの型枠などに用いるプレハブ化したデッキプレートパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の床等にコンクリートスラブを設ける際、コンクリート施工前の仮設床、及びコンクリート打設時の捨て型枠としてデッキプレートが用いられている。デッキプレートの1枚1枚は、平面視、板面状であり、梁行き方向の梁に支持される辺(短辺)の長さ(幅w)は、通常300〜600mm、梁間(スパン)方向の梁と平行な辺(長辺)の長さ(長さl)は、通常1〜6mの規格が流通している。
【0003】
デッキプレートは、一般に、鉛直荷重を受け持つ能力を向上させるために、短辺方向の切断面を凸凹(波形)状にして補強したもの、片側がフラット面で他方の側にリブを形成したものがあるが、軽量の薄い鋼板である。デッキプレートは、短辺(幅w)は凸凹の断面になっているので長辺(長さl)方向の曲げ等による変形を抑えられる。このため、仮設床として使用する際、コンクリート打設の際に支持すべき自重や積載荷重を支えるための支保工の設置を省略することができる。また、捨て型枠として鉄筋コンクリートスラブの一部として残り、スラブ自身の構造強度の向上にも寄与する。
【0004】
デッキプレートは、1枚ずつ直接に梁のフランジ等に載せた後に溶接等で固定される。このとき隣接するデッキプレート同士の長辺は、互いに嵌合させて一体的な板面を形成する。ここで、デッキプレートは、軽量化するために板の厚さが1mm〜2mmとかなり薄いので、ボルトとナットによる締結によってデッキプレートを梁に固定すると、デッキプレートの端部においてせん断破壊が生じる恐れがある。このため、デッキプレートを梁に固定する方法は、鉄筋コンクリート造では現場で梁の型枠に釘打ち等で行われており、鉄骨造では、溶接により固定される。つまり、従来、鉄骨梁に対するデッキプレートの固定には、建築現場での溶接作業が必要であった。
【0005】
ところで、部品をプレファブリケーション化した工業化住宅にデッキプレートを使用して床スラブを構成する場合、建築現場の作業を簡単にする観点から複数のデッキプレートの長辺同士を予め工場等で複数嵌合して一体的な板面状に形成した複合体デッキプレートを建築現場に運搬、搬入することが考えられる。このようにデッキプレートを複数連結した複合体デッキプレートは、1枚1枚のデッキプレートの長辺同士を嵌め合わせた継目部を軸に回動するのでデッキプレート面全体に撓みによる変形が起こりやすく、複合体デッキプレートの短辺方向の長さ(幅W)を制限する必要があった。すなわち、従来のデッキプレートを用いて予め工場等で複合体デッキプレートとした場合でも複合体の幅Wを任意に設定することができないので、工業化住宅の梁架構のグリッド(梁で囲まれた領域)の様々な大きさに応じた複合体デッキプレートのサイズ(幅W×長さL)のバリエーションを設定することができなかった。
【0006】
また、デッキプレートを用いて複合体デッキプレートとするに当たり、品質を確保する観点から建築現場の溶接作業をできる限り避けたい。なぜなら、建築現場での溶接作業は、作業を行う職人の能力に頼るところが大きく、デッキプレートをそのまま鉄骨梁に現場作業で溶接すると梁の母材の強度低下を招く恐れがある等できあがりの品質にばらつきが生じてしまうからである。
【0007】
この点、例えば、特許文献1には、梁材10、10の接続箇所においてH型鋼の梁10のフランジ、及びデッキプレート14を受けるためのデッキ受け12それぞれに孔が設けられ、梁材10、10同士を連結する接続板16、18を介してボルト20を互いの孔に挿通してナットで共締めすることによりデッキ受け12を梁10に確実に固定し、梁10から延出するデッキ受け12の先端部12aにデッキプレート14を載置して固定する梁構造が開示されている。なお、デッキ受け12は梁材10の全長に設けずに、梁材10、10同士の接続箇所においてのみデッキ受け12を介在させてデッキプレート14を固定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−280601号公報
【0009】
しかしながら、特許文献1で開示された方法では、デッキプレート14とデッキ受け12の固定に関しては、溶接やボルト締めで行う等任意な方法で行うものであり、いまだ建築現場作業負担が大きいものと考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、工業化住宅等の規格化されて設計された梁架構のグリッドの大きさに応じたバリエーションに対応し、任意の寸法で規格化し製作したとしても、建築現場への運搬時、現場搬入時、躯体の梁への設置時または設置後において変形が生じにくいプレハブ化したデッキプレートパネル及びそれを用いた床構造を提供することを目的とする。また、現場作業の負担が少なく簡易に梁に固定することができる、デッキプレートパネル及びそれを用いた床構造を提供することを目的とする。
【0011】
なお、従来の1枚のデッキプレート(単体)、複数のデッキプレートをつなげたデッキプレート(複合体)とは異なり、縦と横のどちらの方向に対しても任意の寸法で規格化して製作し、建物の架構体に簡便に設置することが可能なプレハブ化したデッキプレートを、上記のように、「デッキプレートパネル」と呼ぶことにする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明におけるデッキプレートパネルは、方形のデッキプレート部と、デッキプレート部を建築物の躯体の梁に固定するための接続部材と、を有し、接続部材は、デッキプレート部の短辺に略連続して固着していることを特徴とする。ここで、デッキプレート部は、一枚のデッキプレートを使用する単体デッキプレート又はデッキプレートを複数連結して一体化した複合体デッキプレートで構成する。
【0013】
ここで、接続部材の固着とは、デッキプレートの外周辺に接続部材を予め工場等において溶接等で一体化しておくことであるが、これに限らず、複数のビスやリベットを用いるなどの形態も考えられる。また、略連続して固着するとは、接続部材をデッキプレート部の一辺に沿って辺全体に設ける場合に限らず、辺全体のうち要部にのみ設ける場合を含んでいる。ここで、要部とは、デッキプレートの面内変形を抑制するのに効果的な部分をさす。例えば、接続部材は、デッキプレート部の外周短辺のうち、曲げ応力の負担が大きな短辺中央部に連続して固着し、デッキプレート部の短辺隅部は、省略することも含まれる。この場合接続部材の設置範囲は、曲げモーメントの値に応じて適宜決定すればよい。また、複合体デッキプレートの隣接するデッキプレートの継ぎ目を繋ぐように短尺の接続部材を連続して固着することでもよい。
【0014】
上記構成によれば、デッキプレート部の短辺側の接続部材を梁に固定することで、接続部材がパネル面内変形の補強材として働き、デッキプレート部の短辺側に生じる曲げ応力に対する剛性を上げ、デッキプレート部の短辺側の曲げ応力によるたわみを防ぎ、デッキプレートパネル全体の面剛性を向上させることができる。また、デッキプレート部の短辺方向が補強されるので、デッキプレートパネルのサイズ(短辺(幅W)と、長辺(長さL)との組合せをいう。)を任意に設定することができる。また、デッキプレートそのものの建築現場への運搬時、現場搬入時、躯体の梁への設置時または設置後における変形を防ぐことが可能になり、現場の作業負担を軽減できる。
【0015】
また、要部のみに接続部材を固着した場合は、固着される接続部材の量が減るため、デッキプレートパネルの軽量化を図りつつ、デッキプレートパネルを任意の寸法に設定することが可能になる。
【0016】
また、本発明におけるデッキプレートパネルは、接続部材が、前記デッキプレート部の長辺に固着しているようにしても良い。このようにすることで、デッキプレート部の長辺側の接続部材を梁に固定することが可能になり、デッキプレート部の短辺側に生じる曲げ応力に対する剛性のみならず、地震時などにコンクリートスラブ内に生じるせん断応力に対する剛性をも上げることが可能になる。
【0017】
ここで、長辺に固着しているとは、デッキプレート部の辺全体に連続して長尺の接続部材を設ける場合だけでなく、短尺の接続部材を連続して固着することでもよいし、短尺の接続部材をデッキプレート部の長辺の両端や中央にのみ適宜設ける形態でもよい。
【0018】
また、本発明におけるデッキプレートパネルは、サイズ(幅W、長さLの組合せ)が、建築物の設計に用いる基準寸法である設計モデュール寸法に基づいたサイズであるようにしても良い。このようにすることで、工業化住宅の設計モデュール寸法を使って複数の部品として規格化し、個別の工業化住宅(邸)として設計された躯体の架構に応じて邸別に必要な大きさのデッキプレートパネルのサイズと数量を拾い出して製造して現場に運搬し、取り付け施工を行うことが可能になる。ここで、設計モデュール寸法に基づいたサイズとは、単位寸法の整数倍または、整数分の一を含むものである。
【0019】
また、本発明におけるデッキプレートパネルの接続部材は、断面視、水平な板材を折り曲げた形状であり、少なくとも1つの水平部と、折り曲げられた部分である少なくとも1つの折曲部と、を有し、当該水平面部において、デッキプレート部に固着しているようにしても良い。例えば、接続部材は、その断面形状が、L型、Z型、またはT型等に加工されているものである。また接続部材は、パネル辺に沿って略連続する長尺物を用いるのが好ましい。
【0020】
このように、接続部材を折れ曲がった形状の部分を設けることにより、接続部材自身の曲げなどによる変形に対する強度が大きくなる。また、この接続部材をデッキプレートパネルのデッキプレート部の外周辺に略連続的に固着させることにより、デッキプレートパネル全体の面内強度がより高まって、運搬時、現場搬入時または設置時において変形する可能性がより小さくなる。
【0021】
また、本発明におけるデッキプレートパネルは、前記接続部材の水平部または折曲部に、ボルトを挿し通すための孔であるボルト貫通孔を穿つようにしても良い。
例えば、接続部材の水平部に、梁に設けられた孔を貫通させたボルトを挿し通すための孔であるボルト貫通孔を設け、デッキプレート部と接続部材の水平部とを貫くように穿たれるようにする。このボルト貫通孔は、建物躯体である軸組梁の梁孔(設計モデュール寸法に基づいて等間隔で穿たれている)に一致させて穿たれている。
このようにした場合は、接続部材と梁とをボルトとナットにより締結するのみでデッキプレートパネルが梁に固定される。よって、現場作業の負担が少なく、簡易にデッキプレートパネルを梁に固定することができる。
【0022】
例えば、接続部材の折曲部を垂直に形成してボルトを挿し通すボルト貫通孔が穿ち、梁を跨いで隣接するデッキプレートパネルの垂直面部同士をボルト・ナットで締結して連結しても良い。このようにすることで、デッキプレートパネルが一体化して確実に固定された床構造を得ることが可能になる。
【0023】
例えば、接続部材が、断面視、第1の水平部、垂直部、及び第2の水平部の3つの面を有し、垂直部は、第1の水平部と第2の水平部と接続しており、第1の水平部は、デッキプレート部に固着するようにしても良い。このようにすることにより、梁に対してデッキプレート部に所定の段差を設けることができる。すなわち、接続部材の第1の水平部を梁の上フランジ面に重ねて固定すると、デッキプレート部は、同接続部材の垂直部の長さに相当する段差をもって、第2の水平部に固着される。これにより、躯体の階高(柱長さ、上下の層間の高さ)を変更することなく、コンクリートスラブの厚さを厚くして強度を上げる等の設計変更が可能になり、設計自由度が増す。
【0024】
次に、本発明における床構造は、上記の本発明におけるデッキプレートパネルを用いた床構造であって、ボルト貫通孔が穿たれた水平部または折曲部が梁に固着され、ボルト貫通孔と梁に穿たれた梁孔とにボルトを挿し通し、当該ボルトとナットによる締結により、デッキプレートパネルと梁とが固定されていることを特徴とする。このため、本発明における床構造であれば、デッキプレートパネルを、せん断破壊することなく、ボルトとナットによる締結により梁に固定することが可能である。
【0025】
また、本発明における床構造は、梁で囲まれた領域に一枚のデッキプレートパネルを配置することでこの領域における床を構成するようにしても良い。このようにすることで、梁に囲まれた領域に複数のデッキプレートパネルを並べ、接続する作業などが必要なくなり、建築現場での工程数を減らすことが可能になる。
【0026】
また、本発明における床構造は、梁で囲まれた領域に複数のデッキプレートパネルを配置することで領域における床を構成するようにしても良い。このようにすることで、一定の大きさ以上のデッキプレートパネルを搬入できないような都市部等の狭隘な敷地が建築現場であっても、本発明におけるデッキプレートパネルにより床構造を形成することが可能になる。
【発明の効果】
【0027】
本発明により、せん断破壊することなく、ボルトとナットによる締結により、梁に固定することができ、かつ、任意の寸法で製作したとしても、運搬時、現場搬入時、設置時または設置後において変形が生じにくいデッキプレートパネル及びそれを用いた床構造を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るデッキプレートパネル100の斜視図であり、デッキプレート部110を単体デッキプレート110Sで構成したものある。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るデッキプレートパネル100を配置する前の建物の軸組構造の柱梁架構を説明する平面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るデッキプレートパネル100を図2の柱梁架構に敷設した床構造の平面図である。
【図4】図3のAで示した部分の拡大平面図である。
【図5】図4のX−Xの断面を示す断面図であり、本発明の第1の実施形態に係るデッキプレートパネル100の梁200(上フランジ202)への固定部分の断面を示す断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るデッキプレート部110を複合体デッキプレートMで構成した斜視図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係るデッキプレート部110の複合体デッキプレート110Mの嵌合部115における断面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係るデッキプレートパネル100の梁200(下フランジ203)への固定部分の断面を示す断面図である。
【図9】図1のBで示した部分の拡大平面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係るデッキプレートパネル100の梁200(上フランジ202)への固定部分の断面を示す断面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係るデッキプレートパネル100の梁200(上フランジ202)への固定部分の断面を示す断面図である。
【図12】本発明の第4の実施形態に係るデッキプレートパネル100の梁200(ウェブ204)への固定部分の断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0030】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るデッキプレートパネル100の斜視図である。図2は、鉄骨軸組ラーメン構造の建物における柱梁架構の一例を示す図である。本実施形態に係るデッキプレートパネルは、図2に示すような軸組の柱梁架構において、梁200が囲む領域に配置され、床構造を形成する。図3は、図2に示した軸組に、本実施形態に係るデッキプレートパネル100を配置することで形成される床構造の平面図である。図4は、図3のAで示した部分の拡大平面図である。また、図5は、図4のX−Xの断面を示す断面図である。
【0031】
本実施形態に係るデッキプレートパネル100は、図1に示すように、方形のデッキプレート部110と、梁200に固定するための接続部材120と、を有している。接続部材120は、デッキプレート部110の短辺に配置されており、デッキプレート部110と接続部材120とは、この短辺において固着している。固着する方法としては、デッキプレート部110を構成するデッキプレート110aの材料をせん断破壊させないような方法を用いる。例えば、工場等でデッキプレート部110と接続部材120とを、溶接により固着するようにすると良い。
【0032】
デッキプレート部110は、例えば、図1に示すように、鉄骨造の躯体の所定の階層における梁で囲まれた領域の大きさに応じて、短辺と長辺の長さが決定される。
【0033】
また、デッキプレート部110は、グリッドの梁行側の梁に設置する短辺(デッキプレートパネルの幅W)方向に切断した断面形状が凸凹である。このようにデッキプレート部110の断面を凸凹形状にすることで、デッキプレート部110の辺のうち、長辺(デッキプレートパネルの長さL)に対しては、曲げによる変形を抑えることが可能になるので、より薄い鋼材で製作してもデッキプレート部110の面内強度を向上させることができ、軽量化することが可能になる。
【0034】
また、デッキプレート部110の凸凹形状は、例えば、山の部分111と谷の部分112とを有する波形とし、隣接する山の部分111を接触させて谷の部分112を下方のリブを突出させた加工をし、その上面をフラットに構成することができる。なお、デッキプレート部110が、波形状であるとき、谷の部分112の下面において、接続部材120を固着するようにすると良い。
【0035】
デッキプレート部110は、一枚の鋼板製のデッキプレート110aにより構成するようにしても良い(デッキプレート単体で構成するデッキプレート部110を「単体デッキプレート110S」と呼ぶ。)が、図6に示すように、複数の公知のデッキプレート110aを接続して一体的にした複合体として構成しても良い(デッキプレート複数で構成するデッキプレート部110を「複合体デッキプレート110M」と呼ぶ。)。デッキプレート110aは、幅w、長さlの寸法が規格化された市販のデッキプレートを使用することができる。なお、市販のデッキプレートとして、例えば、幅wが300〜600mm程度、長さlが1000〜6000mmのものがあり、これらを選択して使用すると良い。市販のデッキプレートは、2つのデッキプレート110aを接続するために、例えば、図7に示すような嵌合部115を有している。そこで、複数の市販のデッキプレートを、図6に示すように、この嵌合部115を用いて接続することで複合体デッキプレート110Mとし、デッキプレートパネル100のデッキプレート部110を形成するようにすると良い。また、デッキプレートパネル100の寸法を、配置する領域の寸法に合わせるために、図6に示すように、調整用デッキプレート110bを用いるようにしても良い。
【0036】
また、デッキプレート部110を形成するデッキプレート110aは、図1、5に示すように、凸凹(波)形状の山の部分111が短辺の端部でつぶされ、側面視、閉じたエンドクローズド部113を有するエンドクローズド型デッキプレートを用いると良い。デッキプレート部110にエンクローズド部113を設けることで、上部に硬化前の流動するコンクリートを流し込んだときに、コンクリートが、凸凹(波)形状の端部の部分に入り込み、下階に落下することを防ぐことが可能になる。
【0037】
接続部材120は、図5に示すように、断面視、折り曲げられた形状をしており、水平部121と垂直部122との2つの片を有するL型形状である。デッキプレート部110は、この水平部121に固着されている。垂直部122は、デッキプレート部110の端部を廻りこんで上方に立ち上がっている。以下、この形状の接続部材120を、L型接続部材120と呼ぶことにする。
【0038】
図5に示すように、デッキプレートパネル100を梁200に固定するために、デッキプレート部110には、ボルトを挿し通す孔であるボルト貫通孔114が穿たれており、接続部材120の水平部121にも、ボルトを挿し通すための孔であるボルト貫通孔123が穿たれている。つまり、デッキプレートパネル100には、図5に示すように、デッキプレート部110の端部と、接続部材120とが固着する部分である水平部121とを貫くように、ボルト貫通孔が形成されている。
【0039】
凸凹形状のデッキプレートを使用する際は、ボルト貫通孔114は、谷の部分112に穿つと良い。また、山の部分111に穿つ場合には、ボルト貫通孔114を穿つ位置において、山の部分111をつぶすようにすると良い。例えば、デッキプレート部110としてエンクローズド型デッキプレート110aを使用する際は、図5の点線に示すように、山の部分111がつぶれているので、山の部分111にボルト貫通孔114を穿つことが可能である。
【0040】
ここで、躯体の梁200には、図2に示すように、等間隔で複数の梁孔201が穿たれている。例えば、梁200としては、図5に示すような上下の2つのフランジ202、203をウェブ204で結ぶ形状をしたH形鋼が使用され、フランジ202に梁孔201を穿たれている。
【0041】
通常、建築物の設計には、基準寸法(モデュール)が用いられるが、梁孔201は、梁200に柱等を接合するために使用されるものであり、工業化住宅に採用されている設計モデュール寸法を単位として、基準点から等間隔で設けられている。例えば、図3、図4に示すように、基準点(中点P)を跨いで一対の梁孔201が所定の間隔Iで設けられている。
【0042】
そこで、梁孔201に対応させるべく、デッキプレート部110のボルト貫通孔114、接続部材120のボルト貫通孔123にも、躯体の梁200と同様に工業化住宅に採用されている設計モデュール寸法を単位として、基準点から等間隔で設ける。このとき、デッキプレート部110についても梁孔201と同様に基準点(中点P)を跨いで一対のボルト貫通孔114が所定の間隔Iで設けられる。すなわち、梁孔201と、デッキプレート部110のボルト貫通孔114及び接続部材120のボルト貫通孔123は、共通の設計モデュール寸法を使用して等間隔に穿たれている。設計モデュール寸法を単位とする基準寸法は、例えば、305mmを最小値とし、その整数倍に設定されている。
【0043】
デッキプレートパネル100を梁200に固定する際は、薄鋼板のデッキプレート(例えば、板厚1mm〜2mm)で形成されたデッキプレート部110の端部を梁に直接、ボルト・ナットで締結して固定することはせずに、予め工場等でデッキプレート部110の端部に沿って溶接した長尺で板厚の大きい接続部材120(例えば、板厚3.2mm)を介して、ボルト・ナットで締結している。例えば、図5に示すように、デッキプレート部110と接続部材120とが固着された部分である水平部121が梁200の上部に来るように、デッキプレートパネル100を梁200のフランジ202の上面に置き、梁孔201に接続部材のボルト貫通孔123の位置を合せる。次にボルト300をデッキプレートパネル100の上側から梁200のフランジ202の下側に向けてボルト300に挿し通し、ナット400で締めつける。
【0044】
接続部材120の板厚は、ボルトとナットの締結によってせん断されない程度の厚さにする。このようにすることで、デッキプレート部110がせん断破壊されることはなくなる。また、現場溶接により梁200にダメージを与えることを防ぐことも可能になる。
【0045】
また、図8に示すように、デッキプレートパネル100の水平部121を、梁200の下のフランジ203の上部に配置し、デッキプレートパネル100を、この下のフランジ203にボルトとナットにより締結して固定するようにしても良い。なお、図8において、建物内部の梁200である場合は、梁200のウェブ204を中心にして左側に設置される接続部材120が必要であるが、その場合の図表現は省略している(以下、図10、図11も同じ。)。また、図8において、実線は、端部がつぶされたエンクローズ型のデッキプレート110aを示しており、二点鎖線は、端部がつぶされていない通常のデッキプレート110aを示している(以下、図10、図11、図12において同じ。)。
【0046】
なお、梁200としては、断面形状が、上述したH型のみでなく、Cチャネル型、ボックス型なども使用されている。梁200としてCチャネル型、ボックス型などを使用する際も、上記と同様に、梁200に梁孔を設け、接続部材110の水平部110若しくは垂直部120にボルト貫通孔を穿ち、この梁孔とボルト貫通孔を貫くようにボルトを挿し通し、ナットで締め付けるようにし、梁200にデッキプレートパネル100を固定するようにすると良い。
【0047】
また、上記とは異なる実施形態として、接続部材120の水平部121にデッキプレート部110が固着されていない部分として第2の水平部が存在するようにし、この第2の水平部にボルト貫通孔を穿つようにしても良い。つまり、接続部材120にのみボルト貫通孔123を穿つようにしても良い。このようにした場合は、デッキプレート部110に貫通孔を穿つ必要はなくなり、デッキプレートパネル100の製作工程を単純化できる。
【0048】
(接続部材120による補強効果)
上述したように、従来のデッキプレートは、薄い鋼板であるため、変形しやすい。一方、本実施形態に係るデッキプレートパネル100は、接続部材120が固着されているデッキプレート部110の短辺の少なくとも一辺において、接続部材120がその辺全体に略連続して固着されているので、この接続部材120が補強材として働き、デッキプレート部110の厚さが通常のデッキプレートと同様の薄板であったとしても、本実施形態に係るデッキプレートパネル110は、曲げによるデッキプレート部110の面内変形を抑制し、より大きな強度を有するようになる。よって、本実施形態に係るデッキプレートパネルであれば、幅W、長さLのどちらの方向の寸法も長くすることが可能になり、任意の大きさのパネルを製作可能である。このため、本実施形態に係るデッキプレートパネル100であれば、サイズを梁に囲まれた領域のサイズに合わせたとしても、運搬時、現場搬入時、設置時または設置後におけるデッキプレートパネルの面内の変形を抑制し、その形状を保持させることができる。
【0049】
また、本実施形態に係るデッキプレートパネル100の接続部材120は、上述したように、デッキプレート部110の一辺の一端から他端全体にわたる長尺な鋼材であり、断面視L型形状、板厚はデッキプレート部110より厚いものとしているため、接続部材自身が曲げなどによる変形に対する強度が大きい。したがって、このような接続部材120を設けたデッキプレートパネル100は、運搬時、現場搬入時、設置時または設置後において変形する可能性がより低減される。
【0050】
なお、上記において、接続部材120がその辺全体に略連続して固着されているとは、接続部材120を、デッキプレート部110の一辺の一端から他端全体にわたって設けられている場合に加え、デッキプレート部110のうち、梁200と接続する要部にのみ設けられている場合も含んでいる。ここで、要部とは、面内変形を抑制するに効果的な部分をさす。このようにした場合は、固着される接続部材120の量が減るため、デッキプレートパネル100のより軽量化を図りつつ、デッキプレート部110のせん断破壊を防ぐことが可能になる。例えば、接続部材120は、デッキプレート部110の外周短辺のうち、曲げ応力の負担が大きな短辺中央部に連続して固着され、デッキプレート部110の短辺隅部は省略される形態でもよい。この場合は、接続部材の設置範囲は、曲げモーメントの値に応じて適宜決定すればよい。また、図6の接続部材120(二点鎖線で表示)のようにデッキプレート部110を構成する複合体デッキプレート110Mの隣接するデッキプレート110aと、110aまたは110bとの継ぎ目を繋ぐように短尺の接続部材120を連続して固着することでもよい。接続部材120には、ボルト貫通孔123が穿たれており、このボルト貫通孔123は、建物躯体である軸組梁の梁孔201(設計モデュール寸法に基づいて等間隔で穿たれている)に一致させている。
【0051】
また、デッキプレートパネル100は、接続部材120が、デッキプレート部110の長辺に略連続して固着しているようにして、外周の辺すべてに略連続して固着しているようにしても良い。このようにすることで、曲げ応力に対する剛性を上げるだけでなく、せん断応力に対する剛性も上げることが可能になる。
【0052】
さらに、長辺に固着する形態としては、デッキプレート部110の辺全体に連続して長尺の接続部材を設ける場合だけでなく、短尺の接続部材120を連続して固着することでもよいし、短尺の接続部材120をデッキプレート部110の長辺の両端や中央にのみ適宜設ける形態でもよい。また、接続部材120には、ボルト貫通孔123が穿たれており、このボルト貫通孔123は、建物躯体である軸組梁の梁孔201に一致させている。
【0053】
また、デッキプレート部110の外周辺すべてに接続部材120を固着するとデッキプレート部110の単体デッキプレート110Sまたは複合体デッキプレート110Mの面内変形防止、強度の点でより好ましく、躯体の梁で構成される領域ごとにしっかりと固定することができる。また、梁200(フランジ202の上面)とデッキプレートパネル100のデッキプレート部110の隙間が接続部材120により目止めされて面着されるのでスラブコンクリートを流し込んだときの下階への落下を防止できる。
【0054】
(隣接する2つのデッキプレートパネル100の間での接続)
接続部材120の垂直部122にも、図5に示すように、ボルト貫通孔124を穿つようにしても良い。このボルト貫通孔124を用いると、図5に示すように、梁を跨いで隣接する2つのデッキプレートパネル100同士を、ボルト310とナット410により締結して固定することが可能になる。つまり、この隣接する2つのデッキプレートパネル100の接続部材120に穿たれた垂直部のボルト貫通孔124の両方を貫くようにボルト310を挿し通し、このボルト310とナット410により締結することで、当該隣接する2つのデッキプレートパネル100を接続することが可能になる。これにより、デッキプレートパネル100がより確実に固定されている床構造を得ることが可能になる。
【0055】
なお、垂直部122のボルト貫通孔124を穿つ間隔は、上記梁孔の所定の間隔Iと同じ間隔でも良いし、1つ飛ばしにするなど所定の間隔Iの倍数にする等と異なる間隔にしても良いが、梁に対する所定の設置位置が確保されるように孔同士が一致するようにする。また、垂直部122に穿たれるボルト貫通孔124は、水平部121に穿たれるボルト貫通孔123と同様に、固定度を上げるために2つのボルト貫通孔を一対としているが、これに限られるものではない。
【0056】
また、図5に示すように、隣接する2つのデッキプレートパネル100を接続する際、この2つのデッキプレートパネル100の垂直部122の間に、接続板500を挿入し、ボルト300を、この接続板500にも挿し通し、この接続板500を介して、隣接する2つのデッキプレートパネル100を接続するようにしても良い。このようにすることで、ボルトとナットによる締結によって、接続部材120が変形することを防ぐことができるようになる。
【0057】
(デッキプレートパネル100を用いた床構造)
本発明に係るデッキプレートパネル100を適用する鉄骨軸組ラーメン構造の建物に適用する場合について説明する。鉄骨軸組ラーメン構造の建物は、図2に示すように、柱600に対して梁200を剛に接合することで、軸組を構成する。4本の柱600により囲まれた部分は、通常、グリッドと呼ばれる。グリッドの内側にも、図2に示すように、複数の梁200が架けられ、グリッドは、細分化される。この細分化された部分、つまり、4本の梁200により囲まれた部分の1つ1つのことを、以下では、小グリッドと呼ぶことにする。
【0058】
本発明の一実施形態に係る床構造では、図3に示すように、この小グリッドに1つのデッキプレートパネル100が配置される。上述したように、本実施形態に係るデッキプレートパネル100は、接続部材120により補強されているため、小グリッドの大きさに合わせた大きさにしたとしても、運搬時、現場搬入時、設置時または設置後に変形することがない。よって、通常のデッキプレートと異なり、本実施形態に係るデッキプレートパネル100であれば、図1に示すように、小グリッドごとに1つのデッキプレートパネル100だけを配置することが可能になる。よって、小グリッドに配置する際に、通常のデッキプレートを使用する際に必要なデッキプレートを建築現場で何枚も接続するといった作業が必要なくなる。よって、本実施形態に係るデッキプレートパネル100を用いることにより、建築現場での工程数を減らすことが可能になる。
【0059】
通常、上述したように、建築物の設計には、基準寸法(モデュール)が用いられる。このため、梁で囲まれた小グリッドの各辺の寸法は、この基準寸法に基づいた寸法を有している。そこで、本実施形態に係るデッキプレートパネル100の幅(W)と長さ(L)の組み合わせとしては、この基準寸法に基づいた規格により、複数種類のものが用意されるようにすると良い。例えば、デッキプレートパネル100の規格として、表1に示すような種類を用意すると良い。このように、基準寸法に基づいた規格により、複数種類の大きさのデッキプレートパネル100を工業化製品として設計することにより、個別の住宅の設計に応じて、必要な大きさのパネルを選択して製造することが可能になる。
【0060】
【表1】

【0061】
表1では、丸印により建物の設計や工場製造のために、予め規格化して用意するサイズを示している。例えば、表1では、305mm×5の列(L)においては、305mm×5の行(W)と305mm×6の行(W)に丸印が記載されているが、これにより、長さ(L)が305mm×5=1525mmであり、幅(W)が305mm×5=1525mmであるデッキプレートパネルと、長さ(L)が305mm×5=1525mmであり、幅(W)が305mm×6=1830mmであるデッキプレートパネルと、が用意されることを示している。
【0062】
なお、一の小グリッドに2以上の上記規格のデッキプレートパネル100を配置(分割配置)するようにしても良い。例えば、梁行き3660mm、梁間1830mmの小グリッドに対しては、幅(W)が305mm×6=1830mm、長さ(L)が305mm×6=1830mmであるデッキプレートパネル100を2つ配置する。このようにすることで、一定の大きさ以上のデッキプレートパネル100を搬入できないような建築現場であっても、本実施形態に係るデッキプレートパネル100により床構造を形成することが可能になる。
【0063】
一の小グリッドに1つのデッキプレートパネル100を配置する際には、デッキプレート部110の外周の辺すべてに接続部材120を固着させると良い。また、小グリッドに複数のデッキプレートパネル100を配置(分割配置)する際には、デッキプレートパネル100のデッキプレート部110の梁200に接する辺にのみ、接続部材120を固着させると良い。このとき、デッキプレート部110が凸凹(波)形状をしている場合は、上述したように、デッキプレート部110の短辺、つまり、凸凹(波)形状により曲げに弱い、変形を抑えられていない方向(弱軸)の辺に接続部材120を固着させるようにすると良い。パネルの各方向に対しても、曲げによるたわみ変形を抑えることが可能になり、デッキプレートパネル100の運搬時、現場搬入時、設置時または設置後における変形を防ぐことが可能になる。
【0064】
また、一の小グリッドに複数のデッキプレートパネル100を配置(分割配置)する際には、接続部材120が固着していない辺においては、隣接するデッキプレートパネル100と接続するための嵌合部115を設けるようにすると良い。例えば、嵌合部115としては、図7に示すような嵌合部115を用いると良い。このようにすることで、容易に、この2つのデッキプレートパネル100の嵌合部115を嵌め合わせて端部同士を隙間なく接続して一体化することが可能になる。よって、このような嵌合部115を設けることで、デッキプレートパネル100の上部に流し込まれたコンクリートがデッキプレートパネルの下階等に落下することを防ぐことが可能になる。
【0065】
(デッキプレートパネル100の角部分における加工例)
図4は、図3のAで示した部分の拡大平面図である。図4では、デッキプレート部110の裏側に存在する接続部材120の水平部121を、点線によって示している。デッキプレートパネル100の角部分に柱600が存在しない場合は、図4のCの部分に示すように、2つの辺にそれぞれに固着された2つの接続部材120が連続するように加工すると良い。これにより、グリッド隅部におけるデッキプレートパネル100の角部分の補強をすることができ、変形を防ぐことが可能になる。
【0066】
一方、デッキプレートパネル100の角部分に柱600が存在する場合は、図9に示すように、デッキプレートパネル100の角部分の形状を、柱600の外形(柱型)に合わせ、デッキプレート部110の角の一部を欠き込ませ凹んだ形状にする必要がある。図9は、図3のBで示した部分の拡大平面図である。図9では、デッキプレート部110の裏側に存在する接続部材120の水平面部分121を、点線によって示している。このとき、この部分での強度不足を補うために、図9において点線で示した繋ぎ部材700を用いて、2つの辺のそれぞれに固着された2つの接続部材120を繋げると良い。繋ぎ部材700としては、柱の外形に合わせた形をした、図9に示すような鋼板や、L型の鉄筋などを用いる。これにより、デッキプレートパネル100の角部分が凹んだ形状であるときも、角部分での変形を防ぐことが可能になる。
【0067】
(仮組鉄筋)
コンクリートは引っ張りの外力による変形に弱い。このため、通常、コンクリートスラブによる床を形成する際には、デッキプレートなどの型枠の上に鉄筋をメッシュ状に配してから、コンクリートを流し込む。そこで、本実施形態に係るデッキプレートパネル100は、鉄筋をメッシュ状に仮組した仮組鉄筋を備えるようにしても良い。つまり、例えば、工場において、デッキプレートパネル100に仮組鉄筋を固定した状態に加工するようにすると良い。例えば、デッキプレート部110を構成する単体デッキプレート110Sまたは複合体デッキプレート110Mの表面には、コンクリートのかぶり厚さを確保する、鉄筋受け持ち部材(図示なし)を予め固定して置く。このようにすることで、建築現場において、新たに、コンクリートスラブのための鉄筋をメッシュ状に配する工程を行う必要がなくなる。つまり、建築現場での工程が減り、建築現場での施工を簡略化することが可能になる。また、建築現場における鉄筋の設置による品質のばらつきをなくすことが可能になる。
【0068】
(第2の実施形態)
接続部材120の形状としては、上述したL型接続部材の他にもいろいろと考えられる。例えば、図10は、本発明の第2の実施形態に係るデッキプレートパネル100の断面を示す断面図である。なお、図10において、梁のウェブを中心にして左側の接続部材は省略している(以下、図11、図12も同じ。)。第2の実施形態に係るデッキプレートパネル100の接続部材130は、図5に示したようなL型接続部材120の垂直部122の片を、図10に示すように、さらに折り曲げるようにした片、第2の水平部133を有している。つまり、第2の実施形態に係るデッキプレートパネル100の接続部材130は、図10に示すように、2箇所で折り曲げられた形状をしており、第1の水平部131と、垂直部132と、第2の水平部133と、からなる片を有している。そして、第1の水平部131において、デッキプレート部110と固着している。この形状の接続部材130は、図10に示すように、断面形状がZ型形状であるので、以下では、この形状の接続部材130をZ型接続部材130と呼ぶことにする。
【0069】
このZ型接続部材130を使用する際は、例えば、図10に示すように、第2の水平部133にボルト貫通孔134を穿つようにすると良い。このようにすることで、図10に示すように、接続部材130を曲げ材として、第2の水平部133を梁200のフランジ202に重ね、フランジ202の上部に配置された第2の水平部133に穿たれたボルト貫通孔134と、フランジ202に穿たれた梁孔201と、にボルト300を挿入し、ナット400で締めることにより、デッキプレートパネル100を梁200に固定することが可能になる。
【0070】
このとき、垂直部132の長さが異なる複数の種類の接続部材130を用意するようにすると良い。デッキプレートパネル100の上部にコンクリートを流し込むことで生成されるコンクリートスラブによる床を形成することができるが、このように複数の接続部材130を用意することで、コンクリートスラブによる床の厚さの設定を変更することが可能になり、設計の自由度が増すことになる。例えば、コンクリートスラブによる床を配置する高さを下げることが可能になり、配管のための空間を確保することなどが可能になる。
【0071】
(第3の実施形態)
また、図11は、本発明の第3の実施形態に係るデッキプレートパネル100の断面を示す断面図である。第3の実施形態に係るデッキプレートパネル100の接続部材140は、図11に示すように、平面形状にしており、デッキプレート部110が固着した第1の水平部141と、デッキプレート部110が固着していない第2の水平部142と、の2つの片を有している。そして、第2の水平部142にボルト貫通孔143が穿たれている。このような形状の接続部材140は、断面形状が水平形状であるので、I型接続部材140と呼ぶことにする。
【0072】
I型接続部材140を使用する際は、図11に示すように、第2の水平部142を梁200のフランジ202に重ね、フランジ202の上部にある第2の水平部142に穿たれたボルト貫通孔143と、フランジ202に穿たれた梁孔201と、にボルト300を挿入し、ナット400を締めることにより、デッキプレートパネル100を梁200に固定することが可能になる。
【0073】
(第4の実施形態)
また、図12は、本発明の第4の実施形態に係るデッキプレートパネル100の断面を示す断面図である。第4の実施形態に係るデッキプレートパネル100の接続部材150は、図12に示すように、水平部151と、第1の垂直部152と、第2の垂直部153と、からなる片を有している。そして、水平部151において、デッキプレート部110と固着している。この形状の接続部材150は、断面形状がT型であるので、以下では、この形状の接続部材150をT型接続部材150と呼ぶことにする。
【0074】
T型接続部材150を有したデッキプレート100を梁200に固定する際は、例えば、接続部材150の第1の垂直部にボルト貫通孔154を穿ち、梁200のウェブ204に梁孔205を穿つ。そして、この梁孔205の位置に、ボルト貫通孔154を配置し、ボルト貫通孔154と梁孔205を貫くようにボルト320を挿し通し、ナット420で締めつけると良い。
【0075】
また、梁200の両側にデッキプレートパネル100を固定する際は、図12に示すように、両方のデッキプレートパネルの接続部材150に穿たれたボルト貫通孔と梁孔205とを貫くようにボルト320を挿し通し、ナットで締め付けると良い。
【0076】
また、図12に示すように、補強材155により、水平部151と第2の垂直部153とを繋げるようにすると良い。このようにすることにより、水平部151がデッキプレート部110による荷重により変形することを防ぐことが可能になる。
【0077】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範囲な趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更が可能である。
【符号の説明】
【0078】
100 デッキプレートパネル
110 デッキプレート部
110a デッキプレート
110b 調整用デッキプレート、
w デッキプレートの幅、
l デッキプレートの長さ
110S 単体デッキプレート、
110M 複合体デッキプレート、
W デッキプレートパネルまたはデッキプレート部(単体デッキプレート、複合体デッキプレート)の幅
L デッキプレートパネルまたはデッキプレート部(単体デッキプレート、複合体デッキプレート)の長さ
111 デッキプレート110aの山の部分
112 デッキプレート110aの谷の部分
113 デッキプレート110aのエンクローズド部分
114 デッキプレート110aのボルト貫通孔
115 嵌合部
120 L型接続部材
121 L型接続部材の水平部
122 L型接続部材の垂直部
123 L型接続部材の水平部に穿たれたボルト貫通孔
124 L型接続部材の垂直部に穿たれたボルト貫通孔
130 Z型接続部材
131 Z型接続部材の第1の水平部
132 Z型接続部材の垂直部
133 Z型接続部材の第2の水平部
134 Z型接続部材の第2の水平部に穿たれたボルト貫通孔
140 I型接続部材
141 I型接続部材の第1の水平部
142 I型接続部材の第2の水平部
143 I型接続部材の第2の水平部に穿たれたボルト貫通孔
150 T型接続部材
151 T型接続部材の水平部
152 T型接続部材の第1の垂直部
153 T型接続部材の第2の垂直部
154 T型接続部材の第1の垂直部に穿たれたボルト貫通孔
155 補強材
200 梁
201 梁孔
202 上のフランジ
203 下のフランジ
204 ウェブ
205 梁孔
300 ボルト
310 ボルト
320 ボルト
400 ナット
410 ナット
420 ナット
500 接続板
600 柱
700 繋ぎ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方形のデッキプレート部と、
前記デッキプレート部を建築物の躯体の梁に固定するための接続部材と、を有し、
前記接続部材は、
前記デッキプレート部の短辺に略連続して固着していることを特徴とするデッキプレートパネル。
【請求項2】
前記接続部材は、
前記デッキプレート部の長辺に固着していることを特徴とする請求項1に記載のデッキプレートパネル。
【請求項3】
サイズが、建築物の設計に用いる基準寸法であるモデュールに基づいたサイズであることを特徴とする請求項1または2に記載のデッキプレートパネル。
【請求項4】
前記接続部材は、
断面視、水平な板材を折り曲げた形状であり、
少なくとも1つの水平部と、
折り曲げられた部分である少なくとも1つの折曲部と、を有し、
当該水平部において、前記デッキプレート部に固着していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のデッキプレートパネル。
【請求項5】
前記水平部または折曲部に、ボルトを挿し通すための孔であるボルト貫通孔が穿たれていることを特徴とする請求項4に記載のデッキプレートパネル。
【請求項6】
請求項5に記載のデッキプレートパネルを用いた床構造であって、
前記ボルト貫通孔が穿たれた水平部または折曲部が前記梁に固着され、前記ボルト貫通孔と前記梁に穿たれた孔とにボルトを挿し通し、当該ボルトとナットによる締結により、前記デッキプレートパネルと前記梁とが固定されていることを特徴とする床構造。
【請求項7】
前記梁で囲まれた領域に一枚の前記デッキプレートパネルを配置することで当該領域における床を構成することを特徴とする請求項6に記載の床構造。
【請求項8】
前記梁で囲まれた領域に複数の前記デッキプレートパネルを配置することで当該領域における床を構成することを特徴とする請求項6に記載の床構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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