説明

デッキボードの移動機構

【課題】デッキボードの移動作業を容易にするとともに荷室の見栄えを向上させる。
【解決手段】本発明は、車両1の荷室3に設置されるデッキボード7の移動機構であって、荷室3を上下2段に分割する上方位置と上方位置より下方となる下方位置との間を移動可能なデッキボード7と、デッキボード7の車両前方側における車幅方向両側から突出する案内軸71と、荷室3の車幅方向両側を構成する側壁3Dに設けられ、上方位置に対応した上段固定位置51と下方位置に対応した下段固定位置52との間で案内軸71を案内する案内溝5と、案内溝5に現れて案内軸71の逆行を規制する規制位置と側壁3Dの内部に隠れて案内軸71の正規方向への移動を許容する許容位置との間で出没可能な弁部材10とを備えた構成としたところに特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の荷室に設置されるデッキボードの移動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の移動機構として、下記特許文献1に記載の移動機構が知られている。この移動機構は、デッキボードの前端両側に一対の案内軸を設けるとともに、荷室の車幅方向両側に前記案内軸を案内可能な案内溝を設けたものである。案内溝には、ヒンジ部によってガイドレバーが回動可能に設けられており、このガイドレバーによって案内軸が案内溝において逆行することを規制している。
【特許文献1】特開2002−370677公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のガイドレバーによると、ヒンジ部が案内溝に位置しており、常に荷室側に露出しているため、見栄えがよくない。また、ガイドレバーが常に荷室側に露出していると、荷室内に載置された荷物がガイドレバーと干渉しやすくなる。このような干渉を回避するためには、デッキボードを移動させる際に荷物を一旦荷室の外に出すなどの必要があり、デッキボードの移動作業が面倒になる。
【0004】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、デッキボードの移動作業を容易にするとともに荷室の見栄えを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、車両の荷室に設置されるデッキボードの移動機構であって、荷室を上下2段に分割する上方位置と上方位置より下方となる下方位置との間を移動可能なデッキボードと、デッキボードの車両前方側における車幅方向両側から突出する案内軸と、荷室の車幅方向両側を構成する側壁に設けられ、上方位置に対応した上段固定位置と下方位置に対応した下段固定位置との間で案内軸を案内する案内溝と、案内溝に現れて案内軸の逆行を規制する規制位置と側壁の内部に隠れて案内軸の正規方向への移動を許容する許容位置との間で出没可能な弁部材とを備えた構成としたところに特徴を有する。
【0006】
このような構成によると、案内軸が案内溝によって上段固定位置へ案内されることによりデッキボードを上方位置に移動させることができ、案内軸が案内溝によって下段固定位置へ案内されることによりデッキボードを下方位置に移動させることができる。このとき、案内軸が正規方向へ移動すると、弁部材が側壁の内部に隠れて案内軸の移動を許容するものの、案内軸が逆行しようとすると、弁部材が案内溝に現れて案内軸の逆行を規制する。つまり、案内軸が移動するときには弁部材が側壁の内部に隠れているから、弁部材と荷室内に載置された荷物とが干渉しない。よって、荷室に荷物を載置したままデッキボードを移動でき、移動作業を容易にすることができる。また、デッキボードの移動中に弁部材が荷室側に露出しないから、荷室の見栄えを向上させることができる。
【0007】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
弁部材は、ヒンジ部によって回動可能に支持され、ヒンジ部は、側壁の内部に配置されている構成としてもよい。
このような構成によると、ヒンジ部が荷室に露出しないから、荷室の見栄えを向上させることができる。
【0008】
案内溝は、下段固定位置から上段固定位置へ向かう途中に設定された途中位置と上段固定位置とを水平方向に接続する水平溝を備え、弁部材は、規制位置にて水平溝の下面の一部を構成する乗上面を備え、乗上面は、水平溝の下面のうち途中位置側の面と面一をなしている構成としてもよい。
このような構成によると、案内軸が途中位置から水平溝を通って上段固定位置へ向かう際に、弁部材が規制位置にて案内軸の逆行を規制する。また、案内軸を水平溝の下面から乗上面に円滑に移行させることができる。
【0009】
案内溝は、途中位置から上段固定位置へ向かう任意の位置と下段固定位置を斜め方向に接続する傾斜溝を備え、弁部材は、傾斜溝を移動する案内軸と接触することにより許容位置に押し込まれる押込面を備えている構成としてもよい。
このような構成によると、案内軸が下段固定位置から傾斜溝を通って途中位置へ向かう際に、傾斜溝を移動する案内軸が押込面に接触することにより弁部材を許容位置に押し込むことができる。
【0010】
水平溝の下面のうち上段固定位置側の面と規制位置にある乗上面との間には、案内軸を落とし込み可能な上下溝が形成されており、弁部材は、規制位置にて乗上面に乗り上げた案内軸とともに移動して上下溝を塞ぐことにより案内軸を途中位置から上段固定位置へ案内する構成としてもよい。
このような構成によると、案内軸が上段固定位置から水平溝を通って下段固定位置へ向かう際に、上下溝にて案内軸を自重によって落とし込むことができる。また、案内軸が途中位置から水平溝を通って上段固定位置へ向かう際に、乗上面に乗り上げた案内軸とともに弁部材が移動して上下溝を塞ぐから、上下溝にて案内軸が落ちることを防ぎつつ案内軸を乗上面から上段固定位置へ案内することができる。
【0011】
規制位置にある乗上面は、押込面を境界面として水平溝の下面のうち上段固定位置側の面と段差をなして接続され、その段差は、乗上面側が高い形状とされている構成としてもよい。
このような構成によると、案内軸が段差で押込面に接触することにより弁部材を規制位置から許容位置へ移動させることができる。
【0012】
押込面は、上段固定位置側に突出するオーバーハング状に形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、乗上面に案内軸が乗り上げた際に、押込面で荷重を受けることができるから、ヒンジ部にかかる負荷を軽減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、デッキボードの移動作業を容易にすることができるとともに荷室の見栄えを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図12の図面を参照しながら説明する。図1および図2は、ミニバンやステーションワゴンなど後部ドア(図示せず)を有する車両1を斜め後方から見た斜視図である。車両1のリアシート2の車両後方には、荷室3が形成されている。さらに荷室3の車両後方には、後部ドアを開放することにより後部開口4が形成されるようになっており、この後部開口4を通じて荷室3に荷物が搬入される。
【0015】
荷室3は、図1に示す上方位置に配置されたデッキボード7によって上下2段に分割可能とされている。このとき、デッキボード7の上面は、後部開口4の下端部とほぼ同じ高さに設定されており、デッキボード7の上面に載置された荷物を取り出しやすくなっている。一方、大きな荷物を積載したいときには、デッキボード7を図2に示す下方位置に配置することにより荷室3に広いラゲージスペースを得ることができるようになっている。なお、以下の説明では荷室3を上下2段に分割した状態における下方側を収容空間3Aという。
【0016】
リアシート2は分割可倒式シートであって、着座者(図示せず)の背中や腰を受けるシートバック2A、着座者の頭部を受けるヘッドレスト2Bなどを備えている。また、リアシート2には、シートバック2Aの傾きを自在に調整するためのリクライニング装置(図示せず)が設けられ、大量の荷物を積載するときにはシートバック2Aを車両前方に倒すことにより荷室3のラゲージスペースを拡張することができるようになっている。このときデッキボード7の上面は、車両前方に倒れたシートバック2Aの背面とほぼ面一となるように設定されている。
【0017】
収容空間3Aは、図1、図2に示すように、下面側を構成するフロア3B、車両前方側を構成する前壁3C、車幅方向両側を構成する両側壁3Dなどを備えている。側壁3Dの車両前方側には、図3に示すように、溝状をなす案内溝5が設けられている。案内溝5は両側壁3Dにそれぞれ1個ずつ設けられ、互いに対称となるように配置されている。なお、フロア3Bは平坦面とされており、ボディの一部分として構成されていたり、合成樹脂材料または木質系材料からなる板材によって形成されている。
【0018】
デッキボード7は、図4に示すように、一枚板状をなし、その上面後端部には、デッキボード7の開閉操作や移動操作などに使用される操作部72が設けられている。デッキボード7の車両前方側における車幅方向両端部には、一対の案内軸71がそれぞれ外方に突出して設けられている。両案内軸71は同軸状に配置され、両案内溝5の内部にそれぞれ収容可能とされている。案内溝5は、上方位置に対応した上段固定位置51(図5の案内軸71の位置)と下方位置に対応した下段固定位置52(図7の案内軸71の位置)との間で案内軸71を案内可能である。なお、案内溝5の詳細な構造については後述する。
【0019】
上方位置にあるデッキボード7は、図5に示すように、収容空間3Aのフロア3Bから所定の高さだけ上方に配置され、水平姿勢に保持されている。後壁3Eには、上方位置におけるデッキボード7の後端部を支持する後方支持部6が前方に突出して形成されている。したがって、上方位置にあるデッキボード7は、案内溝5と後方支持部6とによって前後2箇所で支持される。そして、デッキボード7を図6に示すように傾けながら案内軸71を下段固定位置へ移動させると、図7に示すように、下方位置にあるデッキボード7がフロア3Bによって全面で支持される。
【0020】
次に、案内溝5の詳細な構造について図8ないし図12の図面を参照しながら説明する。案内溝5は、図8に示すように、水平方向に形成された水平溝5A、斜め方向(車両後方へ向かうと上方へ向かう方向)に形成された傾斜溝5Bなどを備えて構成されている。水平溝5Aは、上段固定位置51と、上段固定位置51の車両後方側に設定された途中位置53とを水平方向に接続している。また、傾斜溝5Bは、下段固定位置52と、水平溝5Aの中間付近とを斜め方向に接続している。
【0021】
傾斜溝5Bにおける水平溝5Aと接続部分には、水平溝5Aに近づくにつれて開口が広くなる接続部5Cが形成されている。接続部5Cの車両前方側は、上下方向に切り立った垂直面54によって構成されている。一方、接続部5Cの車両後方側は、傾斜溝5Bの車両後方側を構成する傾斜面55と連続して斜め方向に形成されている。接続部5Cには、略方形をなす弁部材10の一部が傾斜面55から現れている。
【0022】
弁部材10は、ヒンジ部11によって側壁3Dに回動可能に支持されている。ヒンジ部11は、弁部材10の前端下部付近を軸支しており、傾斜面55よりも車両後方側となる側壁3Dの内部に固定されている。このためヒンジ部11は、側壁3Dの内部に隠れて傾斜溝5Bには露出しないため、荷室3の見栄えを向上させることができる。また、弁部材10は、常には規制位置(図8における弁部材10の位置)に位置するように付勢部材(図示せず)によって付勢されている。規制位置とは、弁部材10が傾斜面55から接続部5Cに現れて案内軸71の逆行を規制する位置をいう。
【0023】
弁部材10は、規制位置にて上下方向に延びる押込面12を備えている。この押込面12は、下段固定位置52から傾斜溝5Bを通って斜め後方へ移動する案内軸71と接触することにより弁部材10を許容位置(図11における弁部材10の位置)へ移動させる。許容位置とは、弁部材10が傾斜面55を構成する側壁3Dの内部に隠れて案内軸71の正規方向への移動を許容する位置をいう。つまり、弁部材10は、規制位置と許容位置との間を移動することで傾斜面55に対して出没可能に設けられている。
【0024】
規制位置では、図8に示すように、接続部5Cの垂直面54と弁部材10の押込面12との間に上下方向に延びる上下溝5Dが形成されるようになっている。この上下溝5Dは、案内軸71の直径よりも大きめに幅寸法を有している。したがって、案内軸71は、図9に示すように、上段固定位置51から水平溝5Aを通って上下溝5Dの上部入口部分に至ると、自重によって上下溝5Dを落下し、傾斜溝5Bを通って下段固定位置52に至る。
【0025】
弁部材10は、規制位置にあるときに、水平溝5Aの下面のうち途中位置53側の面と面一をなして接続された乗上面13を備えている。これにより、案内軸71は、途中位置53から水平溝5Aを通って乗上面13へと円滑に案内される。
【0026】
弁部材10は、図12に示すように、規制位置よりも車両前方側に傾いた前傾位置(図12における弁部材10の位置)に回動可能である。乗上面13の車両前方側には、上方に突出した乗上突部14が形成されている。このため、乗上面13に乗り上げた案内軸71が車両前方側へ移動すると、案内軸71が乗上突部14に接触することにより弁部材10が案内軸71とともに車両前方側へ回動し、前傾位置へと至る。
【0027】
前傾位置では、図12に示すように、乗上突部14が、水平溝5Aの下面のうち上段固定位置51側の面とほぼ面一をなして接続される。これにより、上下溝5Dが塞がれた状態となり、案内軸71は、乗上面13から乗上突部14、水平溝5Aを通って上段固定位置51へ円滑に案内される。なお、上段固定位置51は、下方に一段低く形成されて案内軸71が嵌り込むようになっており、案内軸71が不用意に上段固定位置51から外れないようにされている。
【0028】
続いて、デッキボード7の移動に伴う案内軸71の動作について説明する。
まず、案内軸71は、デッキボード7が図5に示す上方位置にあるときには、図8に示すように、上段固定位置51に位置している。ここから、デッキボード7の操作部72を上方に持ち上げて後方へ引っ張ると、案内軸71は、図9に示すように、水平溝5Aを通って上下溝5Dの上端入口部分に至る。この後、案内軸71は、上下溝5Dを通って下方に落下し、図6に示すように、傾斜溝5Bを通って下段固定位置52に至る。そして、操作部72を放すと、デッキボード7は、図7に示すように、フロア3Bに全面で支持された状態となって下方位置に至る。
【0029】
次に、デッキボード7の操作部72を持ち上げて後方へ引っ張ると、案内軸71は、図10に示すように、傾斜溝5Bの傾斜面55に沿って斜め後方へ向かう。案内軸71が弁部材10の押込面12に接触すると、弁部材10は、案内軸71からの押圧力を受けて車両後方側へ回動し、図11に示すように、側壁3Dの内部に完全に隠れた状態となって許容位置に至る。案内軸71は、傾斜面55および押込面12に沿って斜め後方へ移動することが許容され、水平溝5Aを通って途中位置53へ至る。これと併行して、弁部材10は付勢部材(図示せず)によって規制位置へ復帰する。
【0030】
ここから、デッキボード7の操作部72を車両前方側へ押すと、案内軸71は、水平溝5Aを通って乗上面13に円滑に移行し、乗上突部14と接触する。弁部材10は、案内軸71とともに車両前方側へ回動し、前傾位置に至る。すると、上下溝5Dが塞がれるとともに乗上突部14と水平溝5Aの下面とが接続された状態となり、案内軸71が乗上突部14、水平溝5Aを通って上段固定位置51へと至る。これと併行して、弁部材10は付勢部材(図示せず)によって規制位置へ復帰する。そして、操作部72を放すと、デッキボード7は、図5に示すように、案内溝5の上段固定位置51と後方支持部6とによって前後2箇所で支持された状態となって上方位置に至る。
【0031】
以上のように本実施形態では、案内軸71が押込面12に接触することにより弁部材10を許容位置へ回動させ、弁部材10を傾斜面55から側壁3Dの内部に完全に隠れた状態にすることができる。したがって、荷室3の見栄えを向上させることができる。また、弁部材10が荷室3の荷物と干渉することがないから、荷室3に荷物を載置したままデッキボード7の移動操作が可能である。
【0032】
規制位置では水平溝5Aの下面と乗上面13が面一で接続されるから、案内軸71を途中位置53から乗上面13へ円滑に移行させることができる。また、乗上面13に乗り上げた案内軸71が乗上突部14に接触して弁部材10を前傾位置へ回動させ、上下溝5Dを塞ぐことができるから、上下溝5Dで落下させることなく案内軸71を乗上面13から上段固定位置51へ移動させることができる。
【0033】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図13ないし図17の図面を参照しながら説明する。本実施形態は、実施形態1の案内溝5および弁部材10の構造を一部変更したものであって、実施形態1と同じ構造、作用、および効果についてはその説明を省略する。また、実施形態1と同じ構造については同一の符号を用いるものとする。
【0034】
本実施形態の案内溝25は、図13に示すように、実施形態1と同様に、水平方向に形成された水平溝25A、斜め方向に形成された傾斜溝25Bなどを備えて構成されている。傾斜溝25Bにおいて水平溝25Aとの接続部分は、実施形態1の接続部5Cとは異なり、傾斜溝25Bとほぼ同一幅で形成されている。また、弁部材20の押込面22は、傾斜溝25Bの車両前方側を構成する前側傾斜面56と接触している。前側傾斜面56より上方では、押込面22が上段固定位置51側を向いて配置されている。つまり、規制位置にある乗上面23は、押込面22を境界面として水平溝25Aの下面のうち上段固定位置51側の面と段差をなして接続され、その段差は、乗上面23側が高い形状とされている。なお、本実施形態の乗上面23には、実施形態1の乗上突部14が設けられておらず、フラットに形成されている。
【0035】
続いて、デッキボード7の移動に伴う案内軸71の動作について説明する。
まず、案内軸71は、デッキボード7が上方位置にあるときには、上段固定位置51に位置している。ここから、デッキボード7の操作部72を上方に持ち上げて後方へ引っ張ると、案内軸71は、図13に示すように、水平溝25Aを通って押込面22に突き当たる。ここから、図14に示すように、付勢部材(図示せず)の付勢力に抗して弁部材20を車両後方側に回動させると、案内軸71は、傾斜溝25Bに落ち込み、傾斜溝25Bを通って下段固定位置52に至る。そして、操作部72を放すと、デッキボード7は、フロア3Bに全面で支持された状態となって下方位置に至る。
【0036】
次に、デッキボード7の操作部72を持ち上げて後方へ引っ張ると、案内軸71は、傾斜溝25Bに沿って斜め後方へ向かう。そして、図15に示すように、案内軸71が弁部材20の押込面22に接触すると、弁部材20は、案内軸71からの押圧力を受けて車両後方側へ回動し、図16に示すように、側壁3Dの内部に完全に隠れた状態となって許容位置に至る。許容位置では、案内軸71は、傾斜溝25Bに沿って斜め後方へ移動することが許容され、水平溝25Aを通って途中位置53へ至る。これと併行して、弁部材20は付勢部材によって規制位置へ復帰する。
【0037】
ここから、デッキボード7の操作部72を車両前方側へ押すと、案内軸71は、水平溝25Aを通って乗上面23に円滑に移行し、段差を通過して上段固定位置51へと至る。そして、操作部72を放すと、デッキボード7は、案内溝25の上段固定位置51と後方支持部6とによって前後2箇所で支持された状態となって上方位置に至る。
【0038】
以上のように本実施形態では、水平溝25Aと傾斜溝25Bを規制位置にある弁部材20によって完全に仕切るようにしたから、水平溝25Aと傾斜溝25Bとの間で案内軸71が逆行することを確実に防ぐことができる。また、上方位置から下方位置へ移動させる際に、付勢部材の付勢力に抗して案内軸71で押込面22を押し込むことができるから、適度な節度感をもってデッキボード7を確実に移動させることができる。
【0039】
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態3を図18の図面に基づいて説明する。本実施形態は、実施形態2の押込面22および前側傾斜面56の構造を一部変更したものであって、実施形態2と同じ構造、作用、および効果についてはその説明を省略する。また、実施形態2と同じ構造については同一の符号を用いるものとする。
【0040】
本実施形態の弁部材30は、押込面32が車両前方側に突出するオーバーハング状に形成されている。これに伴い、押込面32と面接触する前側傾斜面57は、斜め方向に形成されている。このようにすると、乗上面33に案内軸71が乗り上げたときに、デッキボード7の荷重がヒンジ部31に集中せず、押込面32に分散することになる。したがって、上方位置にあるデッキボード7にたくさんの荷物を安定して積載することができる。
【0041】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)本実施形態では付勢部材によって弁部材が規制位置に位置するようにされているものの、本発明によると、必ずしも付勢部材を用いなくてもよく、ヒンジ部の位置を変更するなどして弁部材の自重によって規制位置に位置するようにしてもよい。
【0042】
(2)本実施形態ではデッキボード7の車両前方側を上段固定位置51によって支持しているものの、本発明によると、デッキボード7の車両前方側を支持する前方支持部を前壁3Cに設けてもよい。
【0043】
(3)本実施形態では弁部材をヒンジ部によって回動可能に支持しているものの、本発明によると、弁部材を車両前後方向に往復移動可能に設けてもよい。要するに、弁部材が側壁3Dの内部に隠れるものであればよく、弁部材の移動方向は問わない。
【0044】
(4)本実施形態では乗上面が水平溝の下面と面一に形成されているものの、本発明によると、乗上面と水平溝の下面を面一に形成しなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施形態1においてデッキボードが上方位置にあるときの荷室を斜め後方から見た斜視図
【図2】実施形態1においてデッキボードが下方位置にあるときの荷室を斜め後方から見た斜視図
【図3】図2における案内溝の拡大図
【図4】実施形態1におけるデッキボードの斜視図
【図5】実施形態1において上方位置にあるデッキボードを側方から見た断面図
【図6】実施形態1において上方位置から下方位置へ向かうデッキボードを側方から見た断面図
【図7】実施形態1において下方位置にあるデッキボードを側方から見た断面図
【図8】実施形態1において案内軸が上段固定位置にある状態を簡易に示した案内溝の側面図
【図9】実施形態1において案内軸が上下溝の上部入口部分にある状態を簡易に示した案内溝の側面図
【図10】実施形態1において傾斜溝に沿って途中位置へ向かう案内軸が押込面に接触した状態を簡易に示した側面図
【図11】実施形態1において案内軸からの押圧力を受けて弁部材が側壁の内部に隠れた状態を簡易に示した側面図
【図12】実施形態1において案内軸が乗上突部に接触して弁部材が前傾位置へ回動した状態を簡易に示した側面図
【図13】実施形態2において案内軸が段差において押込面に突き当たった状態を簡易に示した側面図
【図14】実施形態2において案内軸からの押圧力を受けて弁部材が許容位置へ向けて移動する様子を簡易に示した側面図
【図15】実施形態2において傾斜溝に沿って途中位置へ向かう案内軸が押込面に接触した状態を簡易に示した側面図
【図16】実施形態2において案内軸からの押圧力を受けて弁部材が側壁の内部に隠れた状態を簡易に示した側面図
【図17】実施形態2において案内軸が乗上面の乗り上げた状態を簡易に示した側面図
【図18】実施形態3において押込面が前側傾斜面に面接触している状態を簡易に示した側面図
【符号の説明】
【0046】
1…車両
3…荷室
3D…側壁
5…案内溝
5A…水平溝
5B…傾斜溝
5D…上下溝
7…デッキボード
10…弁部材
11…ヒンジ部
12…押込面
13…乗上面
20…弁部材
21…ヒンジ部
22…押込面
23…乗上面
25…案内溝
25A…水平溝
25B…傾斜溝
30…弁部材
31…ヒンジ部
32…押込面
33…乗上面
35…案内溝
35A…水平溝
35B…傾斜溝
51…上段固定位置
52…下段固定位置
53…途中位置
71…案内軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の荷室に設置されるデッキボードの移動機構であって、
前記荷室を上下2段に分割する上方位置と前記上方位置より下方となる下方位置との間を移動可能なデッキボードと、
前記デッキボードの車両前方側における車幅方向両側から突出する案内軸と、
前記荷室の車幅方向両側を構成する側壁に設けられ、前記上方位置に対応した上段固定位置と前記下方位置に対応した下段固定位置との間で前記案内軸を案内する案内溝と、
前記案内溝に現れて前記案内軸の逆行を規制する規制位置と前記側壁の内部に隠れて前記案内軸の正規方向への移動を許容する許容位置との間で出没可能な弁部材とを備えたことを特徴とするデッキボードの移動機構。
【請求項2】
前記弁部材は、ヒンジ部によって回動可能に支持され、前記ヒンジ部は、前記側壁の内部に配置されている請求項1に記載のデッキボードの移動機構。
【請求項3】
前記案内溝は、前記下段固定位置から前記上段固定位置へ向かう途中に設定された途中位置と前記上段固定位置とを水平方向に接続する水平溝を備え、前記弁部材は、前記規制位置にて前記水平溝の下面の一部を構成する乗上面を備え、前記乗上面は、前記水平溝の下面のうち前記途中位置側の面と面一をなしている請求項1または請求項2に記載のデッキボードの移動機構。
【請求項4】
前記案内溝は、前記途中位置から前記上段固定位置へ向かう任意の位置と前記下段固定位置を斜め方向に接続する傾斜溝を備え、前記弁部材は、前記傾斜溝を移動する前記案内軸と接触することにより前記許容位置に押し込まれる押込面を備えている請求項3に記載のデッキボードの移動機構。
【請求項5】
前記水平溝の下面のうち前記上段固定位置側の面と前記規制位置にある前記乗上面との間には、前記案内軸を落とし込み可能な上下溝が形成されており、前記弁部材は、前記規制位置にて前記乗上面に乗り上げた前記案内軸とともに移動して前記上下溝を塞ぐことにより前記案内軸を前記途中位置から前記上段固定位置へ案内する請求項3または請求項4に記載のデッキボードの移動機構。
【請求項6】
前記規制位置にある前記乗上面は、前記押込面を境界面として前記水平溝の下面のうち前記上段固定位置側の面と段差をなして接続され、その段差は、前記乗上面側が高い形状とされている請求項4に記載のデッキボードの移動機構。
【請求項7】
前記押込面は、前記上段固定位置側に突出するオーバーハング状に形成されている請求項6に記載のデッキボードの移動機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−991(P2010−991A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163683(P2008−163683)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】