説明

デトラッシュシステム及びこのデトラッシュシステムを用いた製紙原料の離解方法

【課題】デトラッシャーでより無駄なく製紙原料を離解することができるデトラッシュシステム及びデトラッシュシステムを用いた製紙原料の離解方法を提供する。
【解決手段】古紙を溶解して製紙原料Mを生成し、この製紙原料Mを次のステップへと送るためのパルパー用配管31(32)が接続されたパルパー装置102と、このパルパー装置102にデトラッシャー用配管40で接続され、このデトラッシャー用配管40を介して製紙原料Mが送られるようになっており、送られてきた製紙原料Mをさらに離解するためのデトラッシャー106とを備えたデトラッシュシステムにおいて、デトラッシャー106で離解された製紙原料Mを再びデトラッシャー106へと循環させる循環経路90を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルパーでの製紙原料の離解工程中に異物を除去するためのデトラッシュシステム及びこのデトラッシュシステムを用いた製紙原料の離解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パルパーを用いて行われる製紙原料の離解工程では、パルパー内に投入された古紙が製紙原料と異物とに離解され、選別された製紙原料が次のステップへと送られる。一方、古紙の中に含まれていた異物は、パルパー内に徐々に堆積し、そのままではパルパーの処理能力を低下させることになる。
【0003】
この異物を除去するシステムとしてデトラッシュシステムがある。図8は、従来のデトラッシュシステム100を示す概要図である。
このデトラッシュシステム100は、パルパー装置102と、ジャンクトラップ104と、デトラッシャー106と、スクリーンドラム108とを備えている。
【0004】
投入された古紙は、パルパー装置102内で溶解される。このパルパー装置102内では、図示しないスクリーン装置によって異物が取り除かれ、製紙原料Mが選別される。製紙原料Mは、その一部が配管110を通って次のステップへと送られる。
【0005】
また、製紙原料Mは、配管114を通ってジャンクトラップ104へと送られる。このジャンクトラップ104では、製紙原料Mから金属類S(例えばホチキス等)が除去される。その後、製紙原料Mは、配管116を通ってデトラッシャー106へと送られる。このデトラッシャー106では、図示しないスクリーン装置によって製紙原料Mがさらに離解されると共に、この製紙原料Mから異物Tが選別される。選別された異物T及び未離解の製紙原料は、配管118を通ってスクリーンドラム108へと送られる。スクリーンドラム108では、異物T及び未離解の製紙原料が洗浄されて装置外へと排出される一方、洗浄等によって離解した製紙原料Mが再びパルパー装置102へと戻される。また、デトラッシャー106で離解した製紙原料Mは、配管120を通って配管110内の製紙原料Mと合流し、次のステップへと送られる。
【0006】
このような流れによって、製紙原料Mは、原則として次のステップへと送り続けられると共に、製紙原料Mに含まれていた金属類S及び異物Tはシステム外へと排出されることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
デトラッシャー106で選別された異物T及び未離解の製紙原料は、上述の通り、配管118を通ってスクリーンドラム108へと移動する。しかしながら、未離解の製紙原料をそのままスクリーンドラム108から排出するのは無駄が多い。
【0008】
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、デトラッシャーでより無駄なく製紙原料を離解することができるデトラッシュシステム及びこのデトラッシュシステムを用いた製紙原料の離解方法を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述課題を解決するために、本発明は、古紙を溶解して製紙原料を生成し、この製紙原料を次のステップへと送るためのパルパー用配管が接続されたパルパー装置と、このパルパー装置にデトラッシャー用配管で接続され、このデトラッシャー用配管を介して前記製紙原料が送られるようになっており、送られてきた前記製紙原料をさらに離解するためのデトラッシャーと、このデトラッシャーにスクリーンドラム用配管で接続され、このスクリーンドラム用配管を介して前記デトラッシャーで未離解の製紙原料または異物が送られるようになっており、送られてきた未離解の製紙原料または異物を洗浄して前記異物を排出するためのスクリーンドラムとを備えたデトラッシュシステムにおいて、前記デトラッシャーで離解された製紙原料を再び前記デトラッシャーへと循環させる循環経路を設けたことを特徴とする。
【0010】
また、前記循環経路には、離解された前記製紙原料を前記循環経路を通して循環させるためのポンプを設けていてもよい。
【0011】
さらに、前記循環経路と前記パルパー用配管とを接続し、前記デトラッシャーから前記未離解の製紙原料または異物を前記スクリーンドラムへ送る際に、前記パルパー用配管を流れる前記製紙原料を前記デトラッシャーへと供給可能に構成することもできる。
【0012】
また、前記パルパー用配管を流れる前記製紙原料を、電磁開閉弁を用いて前記循環経路へ供給可能に構成することもできる。
【0013】
他方、古紙を溶解して製紙原料を生成し、この製紙原料を次のステップへと送るためのパルパー用配管が接続されたパルパー装置と、このパルパー装置にデトラッシャー用配管で接続され、このデトラッシャー用配管を介して前記製紙原料が送られるようになっており、送られてきた前記製紙原料をさらに離解するためのデトラッシャーと、このデトラッシャーにスクリーンドラム用配管で接続され、このスクリーンドラム用配管を介して前記デトラッシャーで未離解の製紙原料または異物が送られるようになっており、送られてきた未離解の製紙原料または異物を洗浄して前記異物を排出するためのスクリーンドラムとを備えたデトラッシュシステムを用いた製紙原料の離解方法において、前記デトラッシャーで離解された製紙原料を前記デトラッシャーへと循環させ、さらに製紙原料の離解を行う離解工程を有することを特徴とする。
【0014】
また、前記デトラッシャーから前記未離解の製紙原料または異物を前記スクリーンドラムへ送る際に、前記パルパー用配管を流れる前記製紙原料を前記デトラッシャーへと供給する第1リジェクト工程を有していてもよい。
【0015】
さらに、前記デトラッシャーに洗浄水を供給して、前記デトラッシャーから前記未離解の製紙原料または異物を前記スクリーンドラムへ送る第2リジェクト工程を有し、前記第1リジェクト工程を行った後に前記第2リジェクト工程を行うようにすることもできる。
この場合、前記第2リジェクト工程は、前記第1リジェクト工程を少なくとも2回行った後に行うようにすることもできる。
【0016】
さらにまた、前記第2リジェクト工程を行った後に、前記デトラッシャー106内の異物を排除するブロー工程を行うようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るデトラッシュシステムでは、前記デトラッシャーで離解された製紙原料を再び前記デトラッシャーへと循環させる循環経路を設けているので、製紙原料を循環させてデトラッシャー内部で離解することができる。そのため、循環する回数分だけ製紙原料がデトラッシャーを通過することになり、製紙原料の離解が促進される。また、デトラッシャー内に滞在して離解される時間が長くなるので、製紙原料の離解が促進されることになる。これにより、デトラッシャーでより無駄なく製紙原料を離解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係るデトラッシュシステムであって、システムの停止した工程を示す概要図である。
【図2】デトラッシュシステムの準備工程を示す概要図である。
【図3】デトラッシュシステムの先送り工程を示す概要図である。
【図4】デトラッシュシステムの離解工程を示す概要図である。
【図5】デトラッシュシステムの第1リジェクト工程を示す概要図である。
【図6】デトラッシュシステムの第2リジェクト工程を示す概要図である。
【図7】デトラッシュシステムのブロー工程を示す概要図である。
【図8】従来のデトラッシュシステムを示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係るデトラッシュシステムについて、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で、従来と同じ構成については従来と同じ符号を用いて説明する。
【0020】
デトラッシュシステム1は、図1(および各工程を表した図2〜図7)に示すように、
パルパー装置102と、図1でパルパー装置102の右側に位置するデトラッシャー106と、図1でパルパー装置102の上側に位置するスクリーンドラム108とを備えている。
なお、このデトラッシュシステム1では、金属類を除去するための第1ジャンクトラップ104aがスクリーンドラム108とパルパー装置102との間に配置されている。この第1ジャンクトラップ104aは、電磁開閉弁11を介して開閉されるようになっている。また、パルパー装置102には、第2ジャンクトラップ104bが設けられている。この第2ジャンクトラップ104bは、電磁開閉弁21を介して開閉されるようになっている。
【0021】
パルパー装置102は、供給された古紙を溶解液で溶解し、図示しないスクリーン装置を用いて製紙原料を選別するためのものである。このパルパー装置102には、溶解・選別後の製紙原料を排出するための排出口102aが設けられている。この排出口102aにはパルパー用配管32が接続されており、このパルパー用配管32の下流側の端部は、第1ポンプ30に接続されている。また、パルパー用配管32には、手動開閉弁33が設けられており、この手動開閉弁33を操作することによって、製紙原料の流れが調整できるようになっている。
【0022】
また、上述した第1ポンプ30には、製紙原料を次のステップへ送るためのパルパー用配管31が接続されている。また、パルパー用配管31には、手動開閉弁34が設けられており、この手動開閉弁34を操作することによって、製紙原料の流れが調整できるようになっている。
これにより、パルパー装置102内で溶解した製紙原料は、第1ポンプ30を作動させて手動開閉弁33、34を開くことによって、次のステップへと送ることができるようになっている。
【0023】
デトラッシャー106は、製紙原料中の未離解片をさらに解繊すると共に、この製紙原料から異物を選別するためのものである。
このデトラッシャー106とパルパー装置102とは、デトラッシャー用配管40によって接続されている。このデトラッシャー用配管40には、手動開閉弁41、電磁開閉弁42がペアで設けられている。これにより、パルパー装置108内の製紙原料は、手動開閉弁41、電磁開閉弁42を操作することによって、パルパー装置102からデトラッシャー106へと送ることができるようになっている。
【0024】
また、デトラッシャー用配管40には、電磁開閉弁42とデトラッシャー106との間に給水配管43が接続されている。この給水配管43には、手動開閉弁44、電磁開閉弁45がペアで設けられている。これにより、デトラッシャー用配管40には、手動開閉弁44、電磁開閉弁45を操作することによって、洗浄水を供給できるようになっている。
【0025】
さらに、デトラッシャー106にも、このデトラッシャー106の内部に洗浄水を供給するための給水配管46が接続されており、ペアで設けられた手動開閉弁47、電磁開閉弁48を操作することによって、デトラッシャー106の内部に洗浄水を供給することができるようになっている。
【0026】
スクリーンドラム108は、デトラッシャー106から送られる異物を洗浄して装置外へ排出するためのものである。
このスクリーンドラム108とデトラッシャー106とは、配管50によって接続されている。この配管50には、電磁開閉弁51が設けられている。これにより、デトラッシャー106で選別された異物は、電磁開閉弁51を開くことによって、デトラッシャー106からスクリーンドラム108へと送ることができるようになっている。
【0027】
また、配管50には、電磁開閉弁51とスクリーンドラム108との間に給水配管52が接続されている。この給水配管52は、手動開閉弁53、電磁開閉弁54がペアで設けられている。これにより、配管50には、手動開閉弁53、電磁開閉弁54を操作することによって、洗浄水を供給できるようになっている。
【0028】
さらに、スクリーンドラム108にも、このスクリーンドラム108の内部に洗浄水を供給するための給水配管55が接続されており、ペアで設けられた手動開閉弁56、電磁開閉弁57を操作することによって、スクリーンドラム108の内部に洗浄水を供給することができるようになっている。
【0029】
一方、デトラッシャー106の下流側には第2ポンプ60が設けられており、デトラッシャー106と第2ポンプ60とは、配管61によって接続されている。この配管61には、第2ポンプ60を作動させることにより、デトラッシャー106でさらに離解された製紙原料が流れるようになる。
【0030】
また、第2ポンプ60の流出側には、パルパー用配管31まで延在する配管62が接続されている。この配管62には、ペアの手動開閉弁63、電磁開閉弁64、及び、電磁開閉弁66、手動開閉弁65が設けられている。
これにより、デトラッシャー106内でさらに選別された製紙原料は、第2ポンプ60を作動させて手動開閉弁63、65、電磁開閉弁64、66を開くことによって、デトラッシャー106から配管61、62、31を通って次のステップへと送ることができるようになっている。
【0031】
また、配管62には、電磁開閉弁64と電磁開閉弁66との間からデトラッシャー用配管40まで延在する第1循環用配管70が接続されている。この第1循環用配管70には、電磁開閉弁71が設けられている。
これにより、デトラッシャー106出口から、配管61、配管62、第1循環用配管70、デトラッシャー用配管40を経由して、再びデトラッシャー106入口に戻る第1循環経路90(循環経路、図4参照)が構成されることになる。
【0032】
また、配管61と配管62とは、第2循環用配管75で接続されている。この第2循環用配管75には、手動開閉弁67、電磁開閉弁68がペアで設けられている。
これにより、第2ポンプ60出口から、配管62、第2循環用配管80、配管61を経由して、再び第2ポンプ60入口に戻る第2循環経路95(図2参照)が構成されることになる。
【0033】
また、デトラッシャー106には、デトラッシャー106内で堆積した異物をブローするためのブロー配管80が接続されている。このブロー配管80には、電磁開閉弁81が設けられている。これにより、電磁開閉弁81を操作することで、デトラッシャー106に堆積した異物をデトラッシュシステム1の外部へ排出できるようになっている。
【0034】
さらに、第1循環路70には、電磁開閉弁71と配管62との間から延在する排出用配管85が接続されている。この排出用配管85には、手動開閉弁86、電磁開閉弁87がペアで設けられている。これにより、手動開閉弁86、電磁開閉弁87を操作することで、第1循環用配管70内を流れる洗浄水又は製紙原料をデトラッシュシステム1の外部へ排出できるようになっている。
【0035】
なお、第1ポンプ30、第2ポンプ60、電磁開閉弁42、51、54、64、66、68、81、87は、図示しない制御装置と電気的に接続されており、この制御装置からの信号に基づいて、ポンプの作動/停止動作、電磁開閉弁の開/閉動作が制御されるようになっている。
【0036】
次に、本発明のデトラッシュシステム1の作用について、図1〜図7を用いて説明する。
本発明のデトラッシュシステム1では、以下で説明する7つの工程(停止工程、準備工程、先送り工程、離解工程、第1リジェクト工程、第2リジェクト工程、ブロー工程)を有している。
【0037】
なお、図1〜図7において、太い実線で配管が示されているのは、その配管内を製紙原料が流れている状態を示し、太い点線で配管が示されているのは、その配管内を洗浄水が流れている状態を示す。また、細い実線で配管が示されているのは、その配管内にいずれも流れていない状態を示す。
【0038】
また、パルパー装置102内で選別された製紙原料は、第1ポンプ30によって吸い上げられ、パルパー用配管32、31を経由して、デトラッシュシステムの次の工程へと送られている。この動作は、以下の各工程の全てで連続的に行われている。すなわち、デトラッシュシステム1の動作中であっても、製紙原料は常に連続して次の工程へと送られるようになっている。
【0039】
(1)停止工程(図1)
この停止工程では、デトラッシュシステム1は停止している。すなわち、電磁開閉弁42を閉じることによって、製紙原料はパルパー用配管32にのみ送られ、デトラッシャー106には送られないようにしている。
【0040】
(2)準備工程(図2)
この準備工程では、デトラッシャー106へ製紙原料を送るための準備を行う。より詳細には、給水配管43、46,52、55の電磁開閉弁45、48、54、57及び手動開閉弁44、47、53、56を開くことにより、デトラッシャー用配管40、配管50、61及びデトラッシャー106、スクリーンドラム108の内部に洗浄水を供給し、これらの内部の洗浄を行う。このとき、電磁開閉弁42は閉じたままであり、これらのデトラッシャー用配管40、配管50、61に製紙原料は送られないようにしている。
また、第2ポンプ60を作動させると共に、電磁開閉弁68及び手動開閉弁67を開く(第2循環経路95を開く)ようにする。これにより、第2ポンプ60を保護すると共に、内部の洗浄を行っている。
【0041】
(3)先送り工程(図3)
この先送り工程では、デトラッシャー用配管40の電磁開閉弁42を開き、パルパー装置102内の製紙原料を、デトラッシャー106へ送り込ませる。このとき、給水配管43の電磁開閉弁45を閉じてデトラッシャー用配管40への洗浄水の供給を停止させると共に、配管50の電磁開閉弁51を閉じて、洗浄水がデトラッシャー106へ入り込まないようにしている。
このとき、電磁開閉弁64、87を開き、電磁開閉弁66,68、71を閉じ、第2ポンプ60を作動させる。これにより、パルパー装置102内の製紙原料は、デトラッシャー用配管40を通ってデトラッシャー106内へと供給され、このデトラッシャー106でさらに異物が取り除かれる。そして、異物が取り除かれた製紙原料は、第2ポンプ60によって吸い出され、配管61、配管62、第1循環用配管70、および排出用配管85を通って次のステップへ送られる。
【0042】
(4)離解工程(図4)
この離解工程では、デトラッシャー106で解繊された製紙原料を、さらにデトラッシャー106へと循環して送り込むことで、より細かく解繊された製紙原料を作り出す。この工程では、上述の先送り工程の状態から、デトラッシャー用配管40の電磁開閉弁42を閉じて、パルパー装置102からの製紙原料の供給を停止させる。また、電磁開閉弁87を閉じると共に、電磁開閉弁71を開くようにする。これにより、デトラッシャー106内の製紙原料は、第2ポンプ60によって吸い出され、配管61、配管62、第1循環用配管70を通って再びデトラッシャー用配管40に入り込み、再びデトラッシャー106へと送り込まれる。すなわち、製紙原料は、第1循環経路90内を循環するようになり、循環した回数だけ製紙原料が図示しないスクリーン装置によって解繊されることになる。
【0043】
(5)第1リジェクト工程(図5)
この工程では、デトラッシャー106で選別した異物をスクリーンドラム108へと送り、スクリーンドラム108で洗浄した異物を排出する。このとき、従来では、異物を送り出すために水などを供給していたが、水を供給すると製紙原料の濃度(パルプ濃度)が低下してしまい、離解効果が悪くなっていた。そのため、この工程では、電磁開閉弁66、71を開き、デトラッシャー106の入口にパルパー用配管31内で流れる製紙原料を供給している。
【0044】
なお、本工程では、第2ポンプ60を、保護するために動作させて、第2循環経路95内で製紙原料を循環させている。
【0045】
このデトラッシュシステム1の通常運転では、この第1リジェクト工程を行った後に、再び先送り工程に戻って運転を行う。このようにして、先送り工程→離解工程→第1リジェクト工程を繰り返すことで、異物をスクリーンドラム108で排出しながら、より解繊された製紙原料を次のステップへと送り出すようにしている。
【0046】
(6)第2リジェクト工程(図6)
この工程では、デトラッシャー106内に残った比較的大きな異物を洗浄する。この工程は、第1リジェクト工程において製紙原料を高濃度で処理したことによって必要となったものである。すなわち、次の工程(詳細は後述するブロー工程)で異物を排出する際に、そのまま排出したのでは異物に付着した高濃度の製紙原料も一緒に排出されてしまい、ロスが大きくなる。そのため、ブロー工程の前に異物を洗浄して、できるだけ製紙原料を回収しようとするものである。
この工程は、例えば、先送り工程→離解工程→第1リジェクト工程を1セットとして、所定セット数だけ回数を重ねた後に行われる。この回数は、図示しない制御装置でカウントしており、この制御装置からの信号に基づいて工程が切り替えられるようになっている。
なお、当然に、先送り工程→離解工程→第1リジェクト工程を1回行った後に、第2リジェクト工程を行うようにすることもできる。
【0047】
この工程では、電磁開閉弁66を閉じ、パルパー用配管31から入り込む製紙材料を遮断する。そして、給水配管43、46、52、55の電磁開閉弁45、48、54、57を開き、洗浄水を供給する。この洗浄水を供給することによって、第1リジェクト工程でスクリーンドラム108へ送ることができなかった比較的大きな異物、あるいは未離解状態の製紙原料をスクリーンドラム108へ送り、これらがデトラッシャー106内に堆積しないようにしている。
【0048】
また、リジェクト工程を上述した第1リジェクト工程とこの第2リジェクト工程に分け、先送り工程→離解工程→第1リジェクト工程をメインに行い、この第2リジェクト工程を所定回数のうちの1回だけしか行なわないようにすることで、パルパー濃度を必要以上に低下させずに解繊することができ、上述した離解効果を高めることができる。
【0049】
(7)ブロー工程(図7)
この工程では、第2リジェクト工程でもデトラッシャー106から排出できなかった大きな異物を、デトラッシャー106から排出するものであり、第2リジェクト工程の後に行われる。これにより、デトラッシャー106内の異物は、内部に堆積することなくシステム外へと排出されることになる。
【0050】
デトラッシュシステム1では、上述した工程の流れが通常の進行であるが、種々の特殊モードも備えている。
例えば、離解工程から第1リジェクト工程へと移行する際に、第1ポンプ30が作動していない場合には、離解工程から第1リジェクト工程には移行せず、第2リジェクト工程へと移行するようにしている。この場合、第1リジェクト工程で電磁開閉弁66を開いたとしても、デトラッシャー106には製紙原料が供給されないためである。
なお、第1ポンプ30は、通常は常に作動して製紙原料を次のステップへと送り出しているが、製紙原料を供給する次のステップで供給過剰になった場合などには、第1ポンプ30の運転を停止するようにしている。
また、電磁開閉弁42が故障して閉じることができない場合には、離解工程を行うことができないので、準備工程から第2リジェクト工程へ移行するようにしている。
これらの制御は、上述した図示しない制御装置によって行われる。
【0051】
本発明の実施の形態に係るデトラッシュシステムによれば、デトラッシャー106で離解された製紙原料を再びデトラッシャー106へと循環させるために、デトラッシャー106出口から、配管61、配管62、第1循環用配管70、デトラッシャー用配管40を経由して再びデトラッシャー106入口に戻る第1循環経路90を設けているので、製紙原料を第1循環経路90内で循環させることによって、製紙原料の離解を促進することができる。これにより、異物または未離解の製紙原料としてスクリーンドラム108へ送る量が少なくなり、より効率よく製紙原料を精製することができる。
【0052】
また、第1循環経路90の経路の途中には、離解された製紙原料を第1循環経路90内で循環させるための第2ポンプ60が設けられているので、第2ポンプ60が製紙原料を循環させるための動力として使用されることによって、循環をスムーズに行うことができ、離解工程を円滑に行うことができるようになる。
【0053】
さらに、第1循環経路90とパルパー用配管31とを接続することにより、製紙原料を第1循環経路90を利用して簡単にデトラッシャー106へ供給する経路を確保することができる。
また、デトラッシャー106から未離解の製紙原料または異物をスクリーンドラム108へ送る際に、パルパー用配管31を流れる製紙原料をデトラッシャー106へと供給することにより、従来のように水等を供給してスクリーンドラム108へ送る場合と比較して、デトラッシャー106内のパルパー濃度を低下させることがなくなる。そのため、デトラッシャー106内での離解効果を悪くすることがない。
【0054】
特に、パルパー用配管31を流れる製紙原料を、電磁開閉弁66を用いて第1循環経路90へ供給しているので、離解工程から第1リジェクト工程への切り替えを容易に行うことができる。
【0055】
他方、本発明の実施の形態に係る製紙原料の離解方法によれば、デトラッシャー106で離解された製紙原料をデトラッシャー106へと循環させ、さらに製紙原料の離解を行う離解工程を有することにより、製紙原料を何回もデトラッシャーで離解することができる。そのため、製紙原料の離解を促進することができる。これにより、異物または未離解の製紙原料としてスクリーンドラム108へ送る量が少なくなり、より効率よく製紙原料を精製することができる。
【0056】
また、デトラッシャー106から未離解の製紙原料または異物をスクリーンドラム108へ送る際に、パルパー用配管31を流れる製紙原料をデトラッシャー106へと供給する第1リジェクト工程を有することにより、従来のように水等を供給してスクリーンドラム108へ送る場合と比較して、デトラッシャー106内のパルパー濃度を低下させることがなくなる。そのため、デトラッシャー106内での離解効果を悪くすることがない。
【0057】
さらに、デトラッシャー106に洗浄水を供給して、デトラッシャー106から未離解の製紙原料または異物をスクリーンドラム108へ送る第2リジェクト工程を有し、第1リジェクト工程を2回以上行った後に第2リジェクト工程を行うことにより、第1リジェクト工程でスクリーンドラム108へ送れなかった異物及び未離解の製紙原料をスクリーンドラム108へ送ることができる。また、リジェクト工程を第1リジェクト工程と第2リジェクト工程を分け、第2リジェクト工程を行う頻度を少なくすることで、第1リジェクト工程での離解効果が悪くならないようにしている。
【0058】
さらには、第2リジェクト工程の後に、ブロー工程を行うことにより、第2リジェクト工程でも送れなかった異物等をデトラッシャー106外へ排出することができる。これにより、デトラッシャー106の内部に異物が堆積することがなくなるので、デトラッシャー106内で異物が離解動作の妨げとならず、離解効率を低下させることがない。また、デトラッシャー106に異物による負荷が作用しないので、デトラッシャー106内部の部品の摩耗を低減し、部品寿命を長くすることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 デトラッシュシステム
11 電磁開閉弁
21 電磁開閉弁
30 第1ポンプ
31、32 パルパー用配管
40 デトラッシャー用配管
50、61、62 配管
33、34 手動開閉弁
41、53、63、65、67、86 手動開閉弁
42、51、54、64、66、68、81、87 電磁開閉弁
43、46、52、55 給水配管
60 第2ポンプ(ポンプ)
70 第1循環用配管
75 第2循環用配管
80 ブロー配管
85 排出用配管
90 第1循環経路(循環経路)
95 第2循環経路
100 デトラッシュシステム
102 パルパー装置
102a 排出口
104 ジャンクトラップ
104a 第1ジャンクトラップ
104b 第2ジャンクトラップ
106 デトラッシャー
108 スクリーンドラム
110、114、116、118、120 配管
M 製紙原料
S 金属類
T 異物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
古紙を溶解して製紙原料を生成し、この製紙原料を次のステップへと送るためのパルパー用配管が接続されたパルパー装置と、
このパルパー装置にデトラッシャー用配管で接続され、このデトラッシャー用配管を介して前記製紙原料が送られるようになっており、送られてきた前記製紙原料をさらに離解するためのデトラッシャーと、
このデトラッシャーにスクリーンドラム用配管で接続され、このスクリーンドラム用配管を介して前記デトラッシャーで未離解の製紙原料または異物が送られるようになっており、送られてきた未離解の製紙原料または異物を洗浄して前記異物を排出するためのスクリーンドラムと、
を備えたデトラッシュシステムにおいて、
前記デトラッシャーで離解された製紙原料を再び前記デトラッシャーへと循環させる循環経路を設けたことを特徴とするデトラッシュシステム。
【請求項2】
前記循環経路には、離解された前記製紙原料を前記循環経路を通して循環させるためのポンプが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のデトラッシュシステム。
【請求項3】
前記循環経路と前記パルパー用配管とを接続し、前記デトラッシャーから前記未離解の製紙原料または異物を前記スクリーンドラムへ送る際に、前記パルパー用配管を流れる前記製紙原料を前記デトラッシャーへと供給可能に構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のデトラッシュシステム。
【請求項4】
前記パルパー用配管を流れる前記製紙原料を、電磁開閉弁を用いて前記循環経路へ供給可能に構成したことを特徴とする請求項3に記載のデトラッシュシステム。
【請求項5】
古紙を溶解して製紙原料を生成し、この製紙原料を次のステップへと送るためのパルパー用配管が接続されたパルパー装置と、
このパルパー装置にデトラッシャー用配管で接続され、このデトラッシャー用配管を介して前記製紙原料が送られるようになっており、送られてきた前記製紙原料をさらに離解するためのデトラッシャーと、
このデトラッシャーにスクリーンドラム用配管で接続され、このスクリーンドラム用配管を介して前記デトラッシャーで未離解の製紙原料または異物が送られるようになっており、送られてきた未離解の製紙原料または異物を洗浄して前記異物を排出するためのスクリーンドラムと、
を備えたデトラッシュシステムを用いた製紙原料の離解方法において、
前記デトラッシャーで離解された製紙原料を前記デトラッシャーへと循環させ、さらに製紙原料の離解を行う離解工程を有することを特徴とする製紙原料の離解方法。
【請求項6】
前記デトラッシャーから前記未離解の製紙原料または異物を前記スクリーンドラムへ送る際に、前記パルパー用配管を流れる前記製紙原料を前記デトラッシャーへと供給する第1リジェクト工程を有することを特徴とする請求項5に記載の製紙原料の離解方法。
【請求項7】
前記デトラッシャーに洗浄水を供給して、前記デトラッシャーから前記未離解の製紙原料または異物を前記スクリーンドラムへ送る第2リジェクト工程を有し、前記第1リジェクト工程を行った後に前記第2リジェクト工程を行うことを特徴とする請求項6に記載の製紙原料の離解方法。
【請求項8】
前記第2リジェクト工程は、前記第1リジェクト工程を少なくとも2回行った後に行うことを特徴とする請求項7に記載の製紙原料の離解方法。
【請求項9】
前記第2リジェクト工程を行った後に、前記デトラッシャー内の異物を排除するブロー工程を行うことを特徴とする請求項7および請求項8に記載の製紙原料の離解方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−38208(P2011−38208A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186355(P2009−186355)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(506408818)フォイト パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (52)
【氏名又は名称原語表記】VOITH PATENT GmbH
【住所又は居所原語表記】St. Poeltener Str. 43, D−89522 Heidenheim, Germany
【Fターム(参考)】