説明

デニム地

【課題】 しっとり感、ヌメリ感があり、軽く、ソフトで反発性のある風合いで、保温性、吸湿性、吸水性がある、着用快適性優れた秋冬用デニム地を提供する。
【解決手段】 本発明のデニム地は、綿糸で構成された経糸と、繊維断面の異形度M値が1.3〜5.0であるポリエステルフィラメント糸を40重量%〜80重量%と、天然蛋白質を添加混合したビスコースレーヨン系繊維とポリアクリル系繊維の混紡糸を15重量%〜60重量%と、またはポリウレタン系弾性繊維を1重量%〜7重量%とを含む合撚糸が、全体の30重量%以上打ち込まれた緯糸とを用いたデニム地であって、前記緯糸が織物の裏面に少なくとも40%以上露出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デニム、ジーンズ地に関わるもので、 詳しくはしっとり感、ヌメリ感があり、軽く、ソフトで反発性のある風合いで、保温性、吸湿性、吸水性がある、着用快適性に優れたデニム地に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のデニム地は、経糸に綿のインディゴ染色した糸染めの紡績糸を用い、緯糸に綿の染色しない白糸を交織したものが主流である。織物組織としては通常、2/1や3/1の綾組織であり、表は経糸の綿の染色糸が67〜75%と多く出ており、裏面(肌面)は緯糸の綿の白糸が67〜75%の表面積を有する。いずれにしても、これらの物は綿100%であるため、夏は肌触りがよく、吸湿性もあり快適な素材である。一方、秋冬用途に用いると、風合いが硬くゴワゴワした風合いで、また、冷たく保温性に乏しい。更に吸水特性も低い傾向があり、風合い、機能性を兼備する秋冬用デニムとして完成した商品は見あたらないのが現状である。
【0003】
そこで秋冬用デニムに要求される風合い特性と保温性等の機能性について、当該業界において考えられる対応策を以下の(1)〜(3)の公知文献、情報等から記す。
【0004】
(1) しっとり感、ヌメリ感、軽く、ソフトで反発性のある風合いを得る方法
i) 使用する素材として、ウールやカシミヤを使うとしっとり感、ヌメリ感が得られる。しかし、これらの素材は、摩耗強度、引き裂き強力等の物性が弱く、デニム地に適用できない。ポリエステルやナイロン等の短繊維の紡績糸をそのままデニム地に用いると、軽く、ソフトになる。しかし、これらの素材は、反発性に乏しく腰がない風合いとなる。また、ポリエステル等のフィラメント糸(長繊維)をデニム地として100%用いると、反発性はあるが、硬くて、しっとり感、ヌメリ感が得られない。
【0005】
ii) 更に、後加工としてしっとり感を付与するには布帛に例えばスクワラン等の保湿成分を後加工によって付与したものが用いられている(例えば、特許文献1、2、3参照)。後加工によるものは、洗濯耐久性に劣る問題がある。その解決策として多量のバインダーを使用することが一般的である。しかし、バインダーの硬さにより、ソフトな風合いは得られない。
【0006】
iii) また、緯糸にポリエステル等のフィラメント糸(長繊維)と紡績糸を複合して用いたデニム地が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
この文献には、経糸に綿、緯糸にポリエステルフィラメント、ポリウレタン糸の芯糸にアクリル繊維を被覆した多層式コアヤーンを用いて織物にし、その後にプリントの段階で硫酸等で綿サイドを溶解する、オパール加工用の生地が提案されている。しかしながら、この生地の素材しては、酸に溶解するレーヨン等のセルロース系繊維を混用することはできない。このため、しっとり感やヌメリ感のある風合いはできない。また、オパール加工をすると、透け感がある織物となる。このため、秋冬用途には不向きである。
【0007】
(2) 保温性を得る方法
i) 透湿膜を生地に接着して保温性を得る方法等がある。しかし、この方法では、保温性は高まるものの、モサモサ、ガワガワした風合いで、とても着用快適性が良い生地が得られない。すなわち、汎用性商品として適さない。
【0008】
ii)また、ポリエステルフィラメント等の中空糸を用いて、保温性を得る方法が開発されている(例えば、特許文献5〜7参照)。特許文献5には、井型断面中空糸を用いる方法が、特許文献6には、3つ以上の中空部を持つポリエステル中空捲縮フィラメントを用いて強度の高い軽量デニムを提案したものが、特許文献7には、中空フィラメントと他糸を混繊加工してふくらみ、肌との滑りがよいデニムを提案したものが開示されている。
【0009】
これらのいずれの文献に記載の方法を用いても、中空糸に共通する問題がある。すなわち、中空糸を用いると、保温性は高まる。しかし、仮撚りや撚糸加工、製織或いは起毛などの工程で、又は着用中に、圧力や張力を受けて中空部が潰れたり、割れたりして嵩高性が失われ、保温性が発揮できなくなるという問題がある。
【0010】
また、中空繊維は紡糸で割れやすい。このため、細い繊維が得られにくく、しっとり感、ヌメリ感に乏しいものである。この問題に対して、芯成分にポリエステル、鞘成分にナイロンポリマーで芯鞘複合繊維をつくり、これを紡績糸の段階で、あるいは製織した後に芯成分のポリエステルを加熱アルカリ溶液で溶出して、高中空率のナイロン紡績糸を持つ布帛を提案している(例えば、特許文献8参照)。この方法によれば、上記文献に記載の中空糸に生ずる中空部の潰れは改善できる。しかし、この溶出加工に用いるアルカリ溶液により、レーヨンやアクリルの保温素材は脆化してしまい、複合することができない。また、経糸の綿のインディゴ染料がアルカリで溶解して白糸のナイロンを汚染して品位が乏しくなる。更には溶出後はナイロンが残ることから、ナイロン特有のパサパサした風合いでしっとり感、ヌメリ感に乏しくなる等の多くの問題がある。
【0011】
(3)吸水性を得る方法
綿デニムの吸水性を高いレベルで実現することは難しい。即ち、従来の綿100%を用い、織り上がった生機を糊抜き精練(連続精練)すると、織物の中の綿花の油脂がなかなか脱落しない。このため、十分な吸水性は得られない。更にその後にワッシャーなどでバッチ洗浄、また、研磨石を入れて物理的に洗浄するストンワッシャーや染料の分解剤を入れるケミカルワッシャーと呼ばれる洗浄を行う。しかし、このように洗浄を強化しても高いレベルの吸水性は得られない。洗浄により通常の綿のシャツなどの薄地に対しては吸水性の向上が図れるが、太い糸が高密度に織り込まれている厚地のデニムでは十分に洗浄が行われない。吸水性を高いレベルに実現させるには前記の精練や洗いを何回も繰り返せば解決できると思われるが、非効率であり、また、高コストから適用できないのが、実状である。
【0012】
このように、これら従来の技術では、秋冬用途としてのデニム地で質感の高い風合いと機能性(保温性、吸水性)を有することは困難であった。
【特許文献1】特開平2−300301号公報
【特許文献2】特開2002−88649号公報
【特許文献3】特開平10−131047号公報
【特許文献4】特開2007−107167号公報
【特許文献5】特開平9−143833号公報
【特許文献6】特開2006−176913号公報
【特許文献7】特開2007−270358号公報
【特許文献8】特開2004−316003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
すなわち、本発明では、上記課題を解決し、しっとり感、ヌメリ感があり、軽く、ソフトで反発性のある風合いで、保温性、吸湿性、吸水性がある、着用快適性優れた秋冬用デニム地を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、以下のようなデニム地を開発した。まず、特開2001−3223号公報、特開2001−192928号公報で開示されている天然蛋白質を添加混合したビスコースレーヨンに着目し、これにポリアクリル系繊維を混紡した糸を緯糸に使用することで、しっとり感、ヌメリ感、軽さ、ソフト風合いと保温性を創出した。また、緯糸に異形断面ポリエステルフィラメントを合撚することで、反発性のある風合いと異形による体積排除効果を高めて空気をたっぷり含ませて、軽さを付与した。更に、異形断面の毛細管現象による吸水性を得ることを可能とし、ワンウオッシュ加工で色あせのない商品が得られた。なお、吸・放湿性については経糸に綿を用いて解決した。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0015】
本発明のデニム地は、綿糸で構成される経糸と、繊維断面の異形度M値が1.3〜5.0であるポリエステルフィラメント糸を40重量%〜80重量%と、天然蛋白質を添加混合したビスコースレーヨン系繊維とポリアクリル系繊維の混紡糸を15重量%〜60重量%と、またはポリウレタン系弾性繊維を1重量%〜7重量%とを含む合撚糸が、全体の30重量%以上打ち込まれた緯糸とを用いたデニム地であって、前記緯糸が織物の裏面に少なくとも40%以上露出している。
【0016】
前記デニム地は、下記(1)〜(6)の要件を同時に満足する。
(1)緯糸方向の曲げ剛性 B値:0.10〜0.50g・cm/cm
(2)緯糸方向の曲げヒステリシス幅 2HB値:0.15〜0.45g・cm/cm
(3)緯糸方向の表面粗さ SDM値:2.0〜6.5μm
(4)保温率:8〜25%
(5)吸・放湿度 △MR値:2.8%以上
(6)吸水速度:600秒以下
【0017】
前記ポリエステルフィラメント糸の繊維断面がX断面であるとよい。
【0018】
前記ビスコースレーヨン系繊維は、牛乳に含まれる天然蛋白質を繊維重量比400mg/100g以上含有するとよい。
【0019】
前記ポリアクリル系繊維は、単繊維繊度が1.5デシテックス以下であるとよい。
【0020】
前記混紡糸は、前記ビスコースレーヨン系繊維と前記ポリアクリル系繊維の混紡率が20重量%〜80重量%であるとよい。
【0021】
前記合撚糸は、合撚時に、前記ポリウレタン系弾性繊維が2.0〜4.5倍で延伸されて合撚されているとよい。
【0022】
前記合撚糸は、合撚数が100〜1000回/mであるとよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明のデニム地は、風合いと機能性とをそれぞれ受け持つ構成糸を緯糸として用いる。これにより、しっとり感、ヌメリ感があり、軽く、ソフトで反発性のある風合いで、保温性、吸湿性、吸水性がある、着用快適性優れた秋冬用デニム地を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明のデニム地では、風合いと機能性とをそれぞれ受け持つ構成糸を緯糸として用いる。
【0025】
[緯糸]
本発明で用いる緯糸は、繊維断面の異形度M値が1.3〜5.0であるポリエステルフィラメント糸を40重量%〜80重量%と、天然蛋白質を添加混合したビスコースレーヨン系繊維とポリアクリル系繊維の混紡糸を15重量%〜60重量%と、および/またはポリウレタン系弾性繊維を1重量%〜7重量%とを含む合撚糸が、全体の30重量%以上打ち込まれた緯糸である。
【0026】
[合撚糸]
(ポリエステルフィラメント糸)
本発明で使用できるポリエステルフィラメント糸としては、アルコール成分と酸成分とから重合させた高分子繊維を指し、具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、或いはスルフォイソフタル酸やイソフタル酸、ポリエチレングリコール等を共重合させた共重合ポリエステルを含むものである。
【0027】
本発明で使用できるポリエステルフィラメント糸は、繊維断面の異形度M値が1.3〜5.0である。ここで言う異形度M値(繊維の半径比)とは、次の式で定義されるものである。
異形度M値=R1/R2
但し、R1:単繊維の横断面の外接円の半径(μm)、R2:単繊維の横断面の内接円の半径(μm)である。
【0028】
M値の値が大きい程、繊維の異形度が大きいことを表す。このような異形度を有する繊維は、例えば、三角断面、四角断面(X断面、十字断面)、五角〜八角(星型断面)等のように突起を有する断面形状である。また、ポリエステルフィラメント糸は、長繊維である。
【0029】
本発明では、M値が1.3〜5.0のものが風合い、吸水性、前記絡合性等から好ましい。具体的な形状としては、該特性から4つ〜3つの突起を持つ四角断面糸、三角断面糸が好ましく、中でも四角断面が糸/糸間の体積排除が大きくなり、糸/糸間に隙間が生じ、膨らみが大きくなることから特に好ましい。具体的にはX断面糸、十字断面糸が最も好ましい。
【0030】
なお、M値が1.3に満たない、いわゆる丸断面に近いものは風合いに膨らみ感に欠け、吸水性能が低下するので、好ましくない。また、M値が5.0を越えるものは断面がシャープになりすぎて着用中で摩擦などにより生地表面の糸が潰れたり、割れたりして「てかり」等が発生するので、品質の点から好ましくない。
【0031】
本発明で使用するポリエステルフィラメント糸は、合撚糸中に、40重量%〜80重量%、好ましくは50〜60重量%含めばよい。ポリエステルフィラメント糸がこの範囲で含まれていれば、反発性のある風合い、膨らみ感、吸水性の性能および紡績糸との合撚での絡合性が良好で高品質な織物が得られる。具体的には220〜440デシテックスのフィラメント糸である。この範囲以外の比率になると本発明の効果が発揮されないので、好ましくない。
【0032】
(混紡糸)
本発明で使用できる混紡糸は、天然蛋白質を添加混合したビスコースレーヨン系繊維とポリアクリル系繊維とで構成される。
【0033】
天然蛋白質を添加混合したビスコースレーヨン繊維は、しっとり感、ヌメリ感、吸湿性、特に、保湿性を付与する目的で使用する。本発明でいうビスコースレーヨン系繊維とはビスコース法で紡糸した再生繊維であり、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン(キュプラ)、鹸化アセテートを指す短繊維と長繊維である。本発明はソフトな風合いの点から特にビスコースレーヨンの短繊維(原綿)が好ましい。これに添加混合する天然蛋白質としては、牛乳に含まれるミルク由来タンパク成分(天然アミノ酸)である、チロシン、トリプトファン、バリン、フェニルアラニン、プリロン、ロイシン、アラニン、イソロイシン、セリン、トレオニン、リジン、グリシン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アルギニン、グルタミン酸、シスチン、メチオニン等が挙げられる。
【0034】
上記天然アミノ酸の総含有量は、ビスコースレーヨン系繊維重量に対して、400mg/100g以上のものが好ましく、更には700mg/100g〜10000mg/100gのものが好ましい。ビスコースレーヨン系繊維の単繊維繊度としては、細繊度の方がソフトでしなやかな風合いを有し好ましいが、物性面、製糸面から0.7〜3.0デシテックスのものが好ましい。
なお、
【0035】
ポリアクリル系繊維は、デニム地に、ヌメリ感、ソフト風合い、特に保温性を与えるために用いる。ポリアクリル系繊維の単繊維繊度としては細繊度のものが好ましく、1.5デシテックス以下のものであり、更に好ましくは0.5デシテックス以上1.0デシテックス以下が最も好ましい。なお、本発明でいうポリアクリル系繊維とはポリアクリルニトリルから作られるレギュラータイプのポリアクリル系繊維以外に、アクリル組成をベースに他の化合物を共重合したり、また、添加したものをいい、抗ピリングタイプや吸水性タイプなどに改質したポリアクリル繊維を含む。
【0036】
天然蛋白質を添加混合したビスコースレーヨン系繊維とポリアクリル系繊維との混紡率については特に限定する事はないが、風合いの内容、吸・放湿性、保温性から混紡率が20重量%〜80重量%の紡績糸が好ましい。また、具体的な該混紡糸の使用番手としては毛番:110〜27番相当であり、75〜30番手のものがかかる性能が発揮されるので、特に好ましい。
【0037】
紡績方法は特に限定する事はなく、通常のリング紡績、牽切紡績等が適用できる。
【0038】
本発明で使用する混紡糸は、合撚糸中に、15重量%〜60重量%に含有させることが、風合いおよび保温性等の機能性の点から好ましい。
【0039】
(ポリウレタン系弾性繊維)
本発明で使用する合撚糸には、ポリウレタン系弾性繊維を含んでいてもよい。ポリウレタン系弾性繊維を合撚糸に含ませることで、ストレッチ性が発現し、着用時にフィット感があるので、秋冬用途として好ましい。
【0040】
ポリウレタン系弾性繊維は、合撚糸中に1重量%〜7重量%を含ませると織物の伸長性と伸長回復性の点から好ましい。また、ポリウレタン系弾性繊維は、合撚時に2.0〜4.5倍で延伸されて合撚すると、合撚糸の芯部に配置されて外観品位を向上させることおよびストレッチ・パワーを上げることから好ましいことである。
【0041】
(合撚)
上記ポリエステルフィラメント糸と、混紡糸と、また必要に応じてポリウレタン系弾性繊維とを、公知の方法により合撚する。合撚糸の合撚数が100〜1000回/mであることが、ソフト風合いと保温性、品位から好ましい条件である。合撚数が100回/m未満であると、保温性は上がるが、織物の表面の凹凸が大きく品位が劣る。一方、1000回/mを越えると、糸の締まりが強くなり、風合いが硬く、保温性も乏しくなり、好ましくない。合撚糸の繊度としては特に限定するものではないが、例えば長繊維換算で総繊度が300〜850デシテックスであり、生地の平均的な厚さでの商品は400〜700デシテックスである。
【0042】
本発明で用いられる緯糸には、上記合撚糸が全体の30重量%以上打ち込まれている必要がある。全体の30重量%以上打ち込まれていれば、本発明のデニム地に上記効果を与えることができる。上記合撚糸を80〜100重量%含まれた緯糸を使うことが最も好ましい。一方、意匠性や表面外観の点からナイロン、化繊、天然繊維の他繊維を少量用いても構わない。
【0043】
[経糸]
本発明のデニム地に使用する経糸は、緯糸として上記合撚糸を用いることを前提に、特に限定するものではないが、綿糸を主体に用いることが吸・放湿性や外観上の点から好ましい。最も好ましいのは綿のインディゴ染色糸(綿番:5〜10番手)である。なお、タテのストレッチ性を発現させるには、綿とポリウレタン系弾性繊維とを用いてもよい。
【0044】
本発明のデニム地においては、本発明の効果を最大限に発揮させるために、緯糸が織物の裏面に少なくとも40%以上に露出された組織の織物である。ここで、露出率とは織物裏面の1完全組織における緯糸の表面に占める比率をいう。露出率が40%以上であれば、織物の裏面、即ち肌面のしっとり感のある高質な風合いと高い吸水性(吸汗性)が得られるので、好ましい。織物の組織は綾織、平織、繻子織等、組織に限定することなく適用できるが、織物全体の形態保持性も含めて綾織が特に好ましい。具体的には2/1綾(裏面の緯糸露出率:67%)や3/1綾(裏面の緯糸露出率:75%)が好ましい。
【0045】
上述したように経糸と緯糸で織物に製織した後、仕上げを行う。仕上げ方法については特に限定するものではないが、通常行う方法は織り上がりの生機を拡布状に連続で糊抜き精練加工を行い、乾熱でセット(130〜190℃)する。その後に40℃で10分ワッシャーで洗浄し(ワンウォッシャー加工)、乾燥して仕上げる。又は該精練の後に起毛加工し、該洗浄して仕上げする方法も含む。なお、起毛加工の方法は特に限定するものではないが、起毛の毛羽がソフトになることから針布起毛が好ましい。起毛回数は生地が薄く、軽量感がある、4〜8回程度のものが特に好ましい。なお、バフ起毛の場合は毛羽が短く、また、チクチク感があり、好ましくない。
【0046】
上記したように、精練、洗浄し仕上げた織物、或いはこれに精練、起毛加工し、洗浄し仕上げた織物について織物の評価を行う。本発明のデニム地は、下記のような評価方法に基づき評価され、所定の値を有する。
【0047】
(1)緯糸方向の曲げ剛性 B値
評価機器:KES−FB2純曲げ試験機(カトーテック(株)製)を用い、織物裏面の緯糸方向に曲げた時の織物の曲げ剛性B値を測定する。値が小さいほど、剛性は低く、ソフトな風合いである。本発明のB値は、0.10〜0.50g・cm/cmの範囲である。この範囲であれば、風合い上、好ましい。この範囲より小さい場合は風合いがクタクタになり、また、この範囲より大きい場合は硬すぎるので好ましくない。
【0048】
(2)緯糸方向の曲げヒステリシス幅 2HB値
上記B値と同一の評価機器を用いて、同様に織物裏面の緯糸方向に曲げた時の織物の曲げヒステリシス幅2HB値を測定する。値が小さいほど、織物に歪みがなく、腰のある反発性の高い風合いである。本発明の2HB値は、0.15〜0.45g・cm/cmの範囲であり、風合い上、好ましい範囲である。この範囲より大きい場合は風合いに腰がなくなる。一方、この範囲より小さい場合は、ハリが強すぎて硬すぎる方向になるので好ましくない。
【0049】
(3)緯糸方向の表面粗さ SDM値
評価機器:KES−FB4表面試験機(カトーテック(株)製)を用い、織物裏面の緯糸方向の表面粗さSDM値を測定する。値が小さいほど、織物に凹凸が少ない。本発明のSDM値は2.0〜6.5μmの範囲であり、凹凸が少なく、しっとり感、ヌメリ感、滑り感が適度に保たれている好ましい範囲である。SDM値が2.0に満たない場合は凹凸が殆どなくなり表面が滑りすぎて好ましくない。一方、SDM値が6.5を越えるものは凹凸がありすぎてゴワゴワしたタッチとなり、好ましくない。
【0050】
(4)保温率
評価機器:KES−7保温性試験機(カトーテック(株)製)を用い、織物の裏面を30℃のヒーターに10分間接触させて、その時のヒーターの消費電力(ワット)を測定し、保温率を下記式より求める。測定環境は20℃、湿度65%である。

保温率α(%)=(W0−W/W0)×100
但し、W0:織物をヒーターに接触させない時のヒーターの消費電力(ワット)、W:織物をヒーターに接触させた時のヒーターの消費電力(ワット)である。
【0051】
保温率の値が大きいほど、織物の保温性が高い。本発明の保温率は8〜25%の範囲であり、保温性が高いレベルであり、暖かみがあり、且つ適度の通気性がある好ましい範囲である。保温率の値がこの範囲からはずれる場合は寒くなる。一方、保温率の値がこれ以上の高いレベルを得ることは困難である。
【0052】
(5)吸・放湿度 △MR値
織物サンプルを絶乾させた後に、30℃、湿度90%と20℃、湿度65%のそれぞれのデシケーターに入れて、24時間後の織物の重量(湿度吸収量)を測定し、△MR値を下記式より求める。
ΔMR=MR2−MR1 MR1=(W1−W3)/W3×100%
MR2=(W2−W3)/W3×100%
ここで W1:20℃×65%RHにおける試験片の質量(g)
W2:30℃×90%RHにおける試験片の質量(g)
W3:絶乾状態における試験片の質量(g)
△MR値が大きいほど、織物の湿度の吸収と放湿との差が大きく、蒸れにくい。本発明の△MR値は2.8%以上であり、例えばポリエステル100%は0.1〜0.2%、ナイロン:1.5〜2%に比べてはるかに蒸れにくく、着用快適性に優れるレベルである。
【0053】
(6)吸水速度
吸水速度は、JIS L 1097(ビューレット法)に基づき評価する。織物裏面に水滴を滴下し、吸水した時点の時間を測定する。時間が短いほど、吸水性が高い。本発明の吸水速度は600秒以下であり、汗をかいたときにも汗の吸収が速く、着用快適性に優れている。吸水速度は、600秒以下、好ましくは300秒以下、さらに好ましくは100秒以下である。なお、吸水速度が600秒を越えるものは吸水が遅く、好ましくない。ここで、上記ビューレット法は、生地が水滴を吸水する時間をそのまま評価する方法である。吸水速度が600秒以下と通常の夏場に比べて遅い理由は、夏場に比べて本冬場ではジーンズの下にインナーウェアー等重ね着するので、ジーンズ生地は吸水性が遅く、少し撥水するものでも重ね着の着用圧力により、物理的に生地に吸水されてしまうので、夏場に比べて吸水速度を遅い範囲に設定したものである。
【0054】
以上のように、本発明によれば従来技術では得られなかった、しっとり感、ヌメリ感があり、軽く、ソフトで反発性のある風合いで、保温性、吸湿性、吸水性がある、着用快適性優れた秋冬用デニム地を提供することができる。
【実施例】
【0055】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0056】
[測定方法]
本実施例における特性の測定・評価は、以下に記載の方法を用いた。
【0057】
(1)緯糸方向の曲げ剛性 B値は明細書中に記載の方法で評価した。
(2)緯糸方向の曲げヒステリシス幅 2HB値は明細書中に記載の方法で評価した。
(3)緯糸方向の表面粗さ SDM値は明細書中に記載の方法で評価した。
(4)保温率は明細書中に記載の方法で評価した。
(5)吸・放湿度 △MR値は明細書中に記載の方法で評価した。
(6)吸水速度はは明細書中に記載の方法で評価した。
(7)織物裏面の緯糸の露出率は明細書中に記載の方法で評価し、織物を分解して経糸および緯糸の織物密度と繊度から求めた。
(8)織物の軽さは目付(g/m2)で表した。値が小さいほど、軽い。
(9)織物のストレツチ性は伸長率:JIS L 1096の8.14.1項、A法の「織物の伸長率」で従って、また、伸長回復率は同8.14.2項、A法の「織物の伸長回復率」に従って、織物の緯糸方向を測定し評価した。値が高いほど、ストレッチ性、回復性があり、良好である。
(10)織物の着用中の摩擦などによって、てかる程度を評価する「てかり」はJIS L 10849の学振形法(標準法)に従って、5段階評価する。5級:てかりがなく、優良、4級:良好、3級:普通、2級:ややあり、不良、1級:多くあり、不良。
【0058】
(実施例1)
(1)緯糸の製造方法
i)ポリエチレンテレフタレートのポリマーチップを3点口金から紡糸し、延伸して異形度が2.2のX断面ポリエステルフィラメント原糸:165デシテックス、72フィラメントを製糸し、これを2本用いた(トータル繊度330デシテックス)。
【0059】
ii)特開2001―3223号公報に記載されている改質ビスコースレーヨンで、牛乳に含まれるアミノ酸のチロシン、トリプトファン、バリン、フェニルアラニン、プリロン、ロイシンを繊維重量比1598mg/100g、アラニン、イソロイシン、セリン、トレオニン、リジンを992mg/100g、グリシン、ヒスチジンを174mg/100g、アスパラギン酸、アルギニン、グルタミン酸、シスチン、メチオニンを1305mg/100gの天然蛋白質を、総量繊維重量比4069mg/100g含有したビスコースレーヨンステープル1.4デシテックス、38mmを40重量%と、アクリル繊維ステープル0.7デシテックス、38mmを60重量%とをカードミックスで混綿し、リング紡績し、毛番手の52番(長繊維換算で190デシテックス)の単糸の混紡された紡績糸を得た。
【0060】
iii)次いで該ポリエステルフィラメント糸と該紡績糸を550回/mの撚りをかけて合撚した。合撚糸の混率は該ポリエステルフィラメント糸63重量%、該紡績糸37重量%(該ビスコースレーヨン:14.8重量%と該ポリアクリル:22.2重量%)であった。
【0061】
(2)製織
iv)次に経糸にネービー色にインディゴ染色した綿の8番単糸(長繊維換算で730デシテックス)に糊付けし、これに上記の合撚糸:520デシテックスを緯糸として打ち込み、織物にした。
【0062】
v)織物の組織は3/1の綾組織であり、また、生機幅:181cm、経糸密度:72本/吋、緯糸密度:55本/吋であった。この生機の全体の混率は綿65重量%、該ポリエステル22重量%、該レーヨン5重量%、該アクリル8重量%であった。また、織物の裏面の緯糸の露出率は75%であった。
【0063】
(3)仕上げ加工
vi)次いでこの織物を拡布状に連続で糊抜き精練加工を行い、乾熱でセット:180℃でセットし、更に40℃で10分ワッシャーで洗いを行い(ワンウォッシャー加工)、仕上げした。生機幅:172cm、経糸密度:75本/吋、緯糸密度:56本/吋であった。
【0064】
(4)製品評価
vii)この仕上げた織物について製品評価を行い、結果を表1に記載する。
【0065】
(比較例1)
緯糸に綿の10番単糸を用いたほかを除いて、実施例1に従って綿の経糸に緯糸として打ち込み、製織し、糊抜き精練、ワンウォッシャー加工し、仕上げた(綿100%織物)評価結果を表1に併記する。
【0066】
(実施例2)
(1)緯糸の製造方法
i)実施例1のX断面ポリエステルフィラメント原糸を低温仮撚りして、異形度:1.9の165デシテックス、72フィラメントの加工糸とし、これをこれを2本用いた(トータル繊度330デシテックス)。
【0067】
ii)実施例1に記載のビスコースレーヨンステープル1.4デシテックス、38mmを60重量%とアクリルステープル0.7デシテックス、38mmを40重量%とを混紡し、毛番手の52番(長繊維換算で190デシテックス)の単糸の混紡された紡績糸を得た。
【0068】
iii)次いで該ポリエステルフィラメント糸と該紡績糸とこれに44デシテックスのポリウレタン系弾性繊維“ライクラ”(東レデュポン社製)を3.5倍に延伸させながら、600回/mの撚りをかけて合撚した。合撚糸の混率は該ポリエステルフィラメント糸61重量%、該紡績糸35重量%(該ビスコースレーヨン:14重量%とポリアクリル:21重量%)、該ポリウレタン4重量%であった。
【0069】
(2)製織
iv)次に経糸に黒色にインディゴ染色した綿の8番単糸(長繊維換算で730デシテックス)に糊付けし、これに上記の合撚糸:520デシテックスを緯糸として打ち込み、織物にした。
【0070】
v)織物の組織は2/1の綾組織であり、また、生機幅:181cm、経糸密度:72本/吋、緯糸密度:56本/吋であった。この生機の全体の混率は綿65重量%、該ボリエステル22重量%、該レーヨン8重量%、該アクリル5重量%であった。また、織物の裏面の緯糸の露出率は67%であった。
【0071】
(3)仕上げ加工
vi)次いでこの織物を拡布状に連続で糊抜き精練加工を行い、140℃でセットし、更に40℃で10分ワッシャーで洗いを行った(ワンウォッシャー加工)。次いで針布起毛機で6回起毛して、乾熱180℃でセットし、仕上げした。生機幅:150cm、経糸密度:84本/吋、緯糸密度:57本/吋であった。
【0072】
(4)製品評価
vii)この仕上げた織物について製品評価を行い、結果を表1に併記する。
【表1】

【0073】
表1から明らかなように、緯糸に、本発明の緯糸を用いた、実施例1、実施例2のデニム地は、しっとり感、ヌメリ感があり、軽く、ソフトで反発性のある風合いで、保温性、吸水性がある、ことがわかる。
【0074】
なお、実施例1、実施例2ともに、吸・放湿性は比較例1には及ばなかったが、蒸れ感がなく、問題ないレベルであった。また、実施例2のデニム地は、実施例1のデニム地に比べ、保温性、吸水性が更に高く、また、ストレッチ性、ストレッチ回復性があり、体にフィットする素晴らしい織物であることがわかる。
【0075】
一方、比較例1のデニム地は、吸・放湿性は優れているが、風合いはゴワゴワして硬く、また、保温性、吸水性に乏しく、秋冬用デニム地としては不向きな平凡な織物であった。
【0076】
(実施例3)、(実施例4)、(比較例2)、(比較例3)
緯糸に実施例1のX断面ポリエステルフィラメント原糸と紡績糸(脱脂粉乳添加紡糸ビスコースレーヨンとアクリル混紡糸)との混率を変えた織物を製造し、仕上げた。
【0077】
即ち、緯糸のポリエステルフィラメント糸/混紡糸の混合率は、実施例3:74重量%/26重量%、実施例4:45重量%/55重量%、比較例2:29重量%/71重量%、比較例3:88重量%/12重量%である。
【0078】
(実施例3)
(1)緯糸の製造方法
i)実施例1のポリエステルフィラメント原糸:165デシテックス、72フィラメントと110デシテックス、24フィラメントを製糸し、165デシテックスは1本、110デシテックスは2本用いた(トータル繊度385デシテックス)。
【0079】
ii)脱脂粉乳添加したビスコースレーヨンとアクリルの混紡し、毛番手の72番(長繊維換算で138デシテックス)の単糸の紡績糸を得た。
【0080】
iii)次いで該ポリエステルフィラメント糸と該紡績糸を550回/mの撚りをかけて合撚した。合撚糸の混率は該ポリエステルフィラメント糸74重量%、該紡績糸26重量%であった。
【0081】
(2)製織
iv)次に経糸にネービー色にインディゴ染色した綿の8番単糸(長繊維換算で730デシテックス)に糊付けし、これに上記の合撚糸:523デシテックスを緯糸として打ち込み、織物にした。
【0082】
v)織物の組織は3/1の綾組織であり、また、生機幅:181cm、経糸密度:72本/吋、緯糸密度:55本/吋であった。この生機の緯糸の混率は該ポリエステルフィラメント糸74重量%、該紡績糸26重量%であり、織物全体の混率は綿65重量%、該ポリエステル26重量%、該レーヨン3.8重量%、該アクリル5.2重量%であった。また、織物の裏面の緯糸の露出率は75%であった。
【0083】
(3)仕上げ加工
vi)次いでこの織物を拡布状に連続で糊抜き精練加工を行い、乾熱でセット:180℃でセットし、更に40℃で10分ワッシャーで洗いを行い(ワンウォッシャー加工)、仕上げした。生機幅:172cm、経糸密度:75本/吋、緯糸密度:56本/吋であった。
【0084】
(4)製品評価
vii)この仕上げた織物について製品評価を行い、結果を表2に記載する。
【0085】
(実施例4)
(1)緯糸の製造方法
i)ポリエステルフィラメント原糸:110デシテックス、24フィラメントを製糸し、2本用いた(トータル繊度220デシテックス)。
【0086】
ii)脱脂粉乳添加したビスコースレーヨンとアクリルを混紡し、毛番手の36番(長繊維換算で275デシテックス)の単糸の紡績糸を得た。
【0087】
iii)次いで該ポリエステルフィラメント糸と該紡績糸を550回/mの撚りをかけて合撚した。合撚糸の混率は該ポリエステルフィラメント糸45重量%、該紡績糸55重量%であった。
【0088】
(2)製織
iv)次に経糸にネービー色にインディゴ染色した綿の8番単糸(長繊維換算で730デシテックス)に糊付けし、これに上記の合撚糸:495デシテックスを緯糸として打ち込み、織物にした。
【0089】
v)織物の組織は3/1の綾組織であり、また、生機幅:181cm、経糸密度:72本/吋、緯糸密度:55本/吋であった。この生機の緯糸の混率は該ポリエステルフィラメント糸45重量%、該紡績糸55重量%であった。また、織物全体の混率は綿65重量%、該ポリエステル16重量%、該レーヨン5重量%、該アクリル14重量%であった。また、織物の裏面の緯糸の露出率は75%であった。
【0090】
(3)仕上げ加工
vi)次いでこの織物を拡布状に連続で糊抜き精練加工を行い、乾熱でセット:180℃でセットし、更に40℃で10分ワッシャーで洗いを行い(ワンウォッシャー加工)、仕上げした。生機幅:172cm、経糸密度:75本/吋、緯糸密度:56本/吋であった。
【0091】
(4)製品評価
vii)この仕上げた織物について製品評価を行い、結果を表2に併記する。
【0092】
(比較例2)
(1)緯糸の製造方法
i)ポリエステルフィラメント原糸:165デシテックス、72フィラメントを製糸し、1本用いた(トータル繊度165デシテックス)。
【0093】
ii)脱脂粉乳添加したビスコースレーヨンとアクリルを混紡し、毛番手の25番(長繊維換算で396デシテックス)の単糸の紡績糸を得た。
【0094】
iii)次いで該ポリエステルフィラメント糸と該紡績糸を550回/mの撚りをかけて合撚した。合撚糸の混率は該ポリエステルフィラメント糸29重量%、該紡績糸71重量%であった。
【0095】
(2)製織
iv)次に経糸にネービー色にインディゴ染色した綿の8番単糸(長繊維換算で730デシテックス)に糊付けし、これに上記の合撚糸:561デシテックスを緯糸として打ち込み、織物にした。
【0096】
v)織物の組織は3/1の綾組織であり、また、生機幅:181cm、経糸密度:72本/吋、緯糸密度:53本/吋であった。この生機の緯糸の混率は該ポリエステルフィラメント糸29重量%、該紡績糸71重量%であった。また、織物全体の混率は綿65重量%、該ポリエステル10重量%、該レーヨン5重量%、該アクリル20重量%であった。また、織物の裏面の緯糸の露出率は75%であった。
【0097】
(3)仕上げ加工
vi)次いでこの織物を拡布状に連続で糊抜き精練加工を行い、乾熱でセット:180℃でセットし、更に40℃で10分ワッシャーで洗いを行い(ワンウォッシャー加工)、仕上げした。生機幅:172cm、経糸密度:75本/吋、緯糸密度:54本/吋であった。
【0098】
(4)製品評価
vii)この仕上げた織物について製品評価を行い、結果を表2に併記する。
【0099】
(比較例3)
(1)緯糸の製造方法
i)ポリエステルフィラメント原糸:165デシテックス、72フィラメントを製糸し、3本用いた(トータル繊度495デシテックス)。
【0100】
ii)脱脂粉乳添加したビスコースレーヨンとアクリルを混紡し、毛番手の72番(長繊維換算で138デシテックス)の単糸の紡績糸を得た。
【0101】
iii)次いで該ポリエステルフィラメント糸:3本(A)に550回/mの撚りをかけた。また、該ポリエステルフィラメント糸:3本に該混紡糸1本と550回/mの撚りをかけ合撚した(B)。Aはポリエステルフィラメント糸100重量%で、Bの合撚糸の混率は該ポリエステルフィラメント糸78重量%、該紡績糸22重量%であった。
【0102】
(2)製織
iv)次に経糸にネービー色にインディゴ染色した綿の8番単糸(長繊維換算で730デシテックス)に糊付けし、これに上記のAのポリエステル:495デシテックスとB合撚糸:638デシテックスをそれぞれ1本交互に緯糸として打ち込み、織物にした。
【0103】
v)織物の組織は3/1の綾組織であり、また、生機幅:181cm、経糸密度:72本/吋、緯糸密度:52本/吋であった。この生機の緯糸の混率はポリエステル:88重量%、紡績糸:12重量%であった。織物全体の混率は綿65重量%、該ポリエステル31重量%、該レーヨン0.6重量%、該アクリル3.4重量%であった。また、織物の裏面の緯糸の露出率は75%であった。
【0104】
(3)仕上げ加工
vi)次いでこの織物を拡布状に連続で糊抜き精練加工を行い、乾熱でセット:180℃でセットし、更に40℃で10分ワッシャーで洗いを行い(ワンウォッシャー加工)、仕上げした。生機幅:172cm、経糸密度:75本/吋、緯糸密度:53本/吋であった。
【0105】
(4)製品評価
vii)この仕上げた織物について製品評価を行い、結果を表2に併記する。
【表2】

【0106】
表2から、ポリエステルフィラメント糸と混紡糸との混合率が本発明の範囲にある合撚糸を用いた、実施例3、4のデニム地は、本発明の要件(1)〜(6)を満たし、しっとり感、ヌメリ感があり、軽く、ソフトで反発性のある風合いで、保温性、吸水性があることがわかる。一方、ポリエステルフィラメント糸の混合率が本発明の範囲より小さい比較例2のデニム地は、曲げ剛性 B値、曲げヒステリシス幅 2HB値、表面粗さ SDM値が本発明の要件より小さく、風合いが硬く、また、反発性がなく劣るものであった。また、ポリエステルフィラメント糸の混合率が本発明の範囲より大きい、比較例2のデニム地は、表面粗さ SDM値が本発明の要件より大きく、表面がザラツいており、また、保温性、吸・放湿性が劣り、秋冬用デニム地としては不向きな平凡な織物であった。
【0107】
(実施例5)、(実施例6)、(比較例4)、(比較例5))、(比較例6)、(比較例7)
緯糸にポリエステルフィラメント原糸の断面形状と異形度およびアクリルの単繊維繊度および緯糸の露出率を変えたほかを除いて実施例1に従って、以下の実施例5、6、比較例4〜7のデニム地を製造し、仕上げた。
【0108】
(実施例5)
X断面糸の異形度を変えたポリエステルフィラメント糸を用いた以外は、実施例1と同様にしてデニム地を作製した。具体的には、断面形状:X断面ポリエステルフィラメント糸、異形度:3.5、アクリルの単繊維繊度:0.7デシテックス、緯糸の露出率:75%である。なお、原糸は165デシテックス、72フィラメントを製糸し、これを2本用いた(トータル繊度330デシテックス)。
【0109】
実施例5のデニム地は、特に保温率:14.8%、吸水速度:14秒の優れた特徴を示す織物であった。また、他の緯糸方向の曲げ剛性 B値、緯糸方向の曲げヒステリシス幅 2HB値、緯糸方向の表面粗さ SDM値、吸・放湿度についても、本発明の要件(1)〜(6)を満たすことを確認した。また、てかりは5級であり、問題はない。
【0110】
(比較例4)
実施例5の異形度を変えたポリエステルフィラメント糸を用いた以外は実施例5と同様にしてデニム地を作製した。具体的には、断面形状:X断面ポリエステルフィラメント糸、異形度:5.4、アクリルの単繊維繊度:0.7デシテックス、緯糸の露出率:75%である。
【0111】
異形度が高いポリエステルフィラメント糸を用いた比較例4のデニム地は、本発明の要件(1)〜(6)を満たすが、てかりが2級であり、品質的に劣るものであった。
【0112】
(実施例6)
実施例5に対して、断面糸の形状を変えたポリエステルフィラメント糸を用いて、デニム地を作製した。具体的には、断面形状:Y断面(三角断面)ポリエステルフィラメント糸、異形度:3.5、アクリルの単繊維繊度:0.7デシテックス、緯糸の露出率:75%である。なお、原糸は165デシテックス、72フィラメントを製糸し、これを2本用いた(トータル繊度330デシテックス)。
【0113】
実施例6は特に緯糸方向の曲げ剛性 B値:0.15g・cm/cm、緯糸方向の曲げヒステリシス幅 2HB値:0.21g・cm/cmで風合いはよりソフトで、反発性が高い織物であった。また、他の緯糸方向の表面粗さ SDM値、保温率、吸・放湿度、吸水速度についても本発明の要件(1)〜(6)を満たすことを確認した。
【0114】
(比較例5)
実施例5、6の断面形状と異形度を変えた以外は、実施例5と同様にしてデニム地を作製した。具体的には、断面形状:丸断面ポリエステルフィラメント糸、異形度:1.1、アクリルの単繊維繊度:0.7デシテックス、緯糸の露出率:75%である。
【0115】
比較例5のデニム地は、ポリエステルフィラメント糸が丸断面糸であり、異形度が本発明の範囲より小さい例であり、保温率:7.4%、吸水速度:721秒と、特性が劣るものであった。
【0116】
(比較例6)
実施例5のポリアクリル系繊維の単繊維繊度を変えた以外は、実施例5と同様にしてデニム地を作製した。具体的には、断面形状:X断面ポリエステルフィラメント糸、異形度:3.5、アクリルの単繊維繊度:1.6デシテックス、緯糸の露出率:75%である。
【0117】
比較例6のデニム地は、ポリアクリル系繊維の単繊維繊度を本発明の範囲より太くした比較例であり、緯糸方向の表面粗さ SDM値:7.4μmであり、滑らか感に欠けるデニム地であった。
【0118】
(比較例7)
実施例5の緯糸の露出率を変えた以外は、実施例5と同様にしてデニム地を作製した。具体的には、断面形状:X断面ポリエステルフィラメント糸、異形度:3.5、アクリルの単繊維繊度:0.7デシテックス、緯糸の露出率:25%である。なお、緯糸の露出率は3/1の綾組織から、1/3の綾組織に変えて行った。
【0119】
比較例7のデニム地は、緯糸の露出率が本発明の範囲より小さく、保温率:7.6%、吸水速度:1321秒と特性の劣るデニム地であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
綿糸で構成される経糸と、
繊維断面の異形度M値が1.3〜5.0であるポリエステルフィラメント糸を40重量%〜80重量%と、天然蛋白質を添加混合したビスコースレーヨン系繊維とポリアクリル系繊維の混紡糸を15重量%〜60重量%と、またはポリウレタン系弾性繊維を1重量%〜7重量%とを含む合撚糸が、全体の30重量%以上打ち込まれた緯糸と
を用いたデニム地であって、
前記緯糸が織物の裏面に少なくとも40%以上露出している、デニム地。
【請求項2】
前記デニム地は、下記(1)〜(6)の要件を同時に満足する、請求項1に記載のデニム地。
(1)緯糸方向の曲げ剛性 B値:0.10〜0.50g・cm/cm
(2)緯糸方向の曲げヒステリシス幅 2HB値:0.15〜0.45g・cm/cm
(3)緯糸方向の表面粗さ SDM値:2.0〜6.5μm
(4)保温率:8〜25%
(5)吸・放湿度 △MR値:2.8%以上
(6)吸水速度:600秒以下
【請求項3】
前記ポリエステルフィラメント糸の繊維断面がX断面である、請求項1または2に記載のデニム地。
【請求項4】
前記ビスコースレーヨン系繊維は、牛乳に含まれる天然蛋白質を繊維重量比400mg/100g以上含有する、請求項1または2に記載のデニム地。
【請求項5】
前記ポリアクリル系繊維は、単繊維繊度が1.5デシテックス以下である、請求項1または2に記載のデニム地
【請求項6】
前記混紡糸は、前記ビスコースレーヨン系繊維と前記ポリアクリル系繊維の混紡率が20重量%〜80重量%である、請求項1または2に記載のデニム地。
【請求項7】
前記合撚糸は、合撚時に、前記ポリウレタン系弾性繊維が2.0〜4.5倍で延伸されて合撚されている、請求項1または2に記載のデニム地。
【請求項8】
前記合撚糸は、合撚数が100〜1000回/mである、請求項1〜7のいずれかに記載のデニム地。


【公開番号】特開2010−37683(P2010−37683A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202282(P2008−202282)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【出願人】(508237889)カイハラ産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】