説明

デニム製品及びその製造方法

【解決手段】インジゴ染料及び/又は硫化染料で染色された、又はインジゴ染料及びスレン染料で染色されたデニム製品であって、JIS L0856強試験に準拠した塩素漂白による色変化が、JIS L0801に準拠した変退色の判定で1−2級以上であることを特徴とするデニム製品。
【効果】従来のデニム生地に比べて色落ちしにくく、審美性に優れ、しかも洗濯によって他の衣類等を汚染することのないデニム製品を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デニム製品に関し、更に詳述すると、色落ちが防止され、使用時や洗濯時の他の製品等に対する汚染を低減したデニム製品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デニム生地において、インジゴ染め、硫化染めあるいはスレン染めは代表的な染色方法である。インジゴ染め、硫化染めあるいはスレン染めは、還元により水溶性となるので、この状態の染色液にセルロース繊維を浸漬すれば、水と共に染料はセルロース繊維内に移動する。その後、そのセルロース繊維を空気に曝せば、インジゴ染め、硫化染めあるいはスレン染めは空気中の酸素により酸化され、セルロース繊維中に水に溶け難い色素を再生する。
【0003】
セルロース繊維とインジゴ染料、硫化染料あるいはスレン染料との結合力は、分子間力及び水素結合力といわれており、セルロース繊維の非結晶領域にこれらの力で固定されていると考えられる。また、一部はセルロース繊維表面に付着しているものもある。よって、インジゴ染色デニム、硫化染色デニム、スレン染色デニムは、水洗いや洗濯を行うことで簡単に染料が脱落する。このようなインジゴ染色、硫化染色、スレン染色の特長を利用し、湯洗い加工、ストーンウォッシュ加工、ブリーチ加工、バイオウォッシュ加工、ブラスト加工や、これらの加工を組み合わせて実施することで、デニム生地を個性的に加工したものが生産されている。
【0004】
しかし、上記の様々な洗い加工では、染料を落としたい部位の染料の除去は容易であるが、ベース生地の染料までも脱落して生地全体が退色するため、濃淡の差が不鮮明になるという問題があった。また、溶け出した染料により、例えば生地の白の緯糸が汚染されてメリハリの無い製品となり、また、ポケット地の白布も汚染されてしまうという問題があった。更に、製品の消費段階(着用、洗濯、保存など)においては、購入した製品の色相を長く保つことが望まれているにもかかわらず、洗濯により染料が脱落する結果、色相が変化し、審美性を損なうという問題があった。特に、濃色のデニムの色相を洗濯しても、脱落せず、長く濃色の色を保持することは永年の課題であった。また、デニム製品を他の衣類等と一緒に洗濯すると、デニム製品から脱落した染料が他の衣類等に付着して汚染する問題があり、洗濯により汚染しないデニム製品が求められてきた。
【0005】
これらの対策として、洗い加工方法の改良や、インジゴ染料あるいは硫化染料の固着処理が提案されてきた。
例えば、ストーンウォッシュ加工において、ジーンズ製品を研磨材と共に回転容器に入れて、水及び温水のない状態で回転させることにより、製品表面の染料を適度に脱落させて中古風に仕上げる方法が提案されている(特許文献1:特開平11−286868号公報)。
また、インジゴデニム生地をのり抜き剤が添加された水溶液でパジングのり抜き後、メラミン樹脂、ウレア樹脂、グリオキサール樹脂及びポリウレタン樹脂の群から選択される少なくとも1種以上の樹脂と触媒からなる水溶液で処理し、次いで、脱水、乾燥及びキュアリング処理し、更にバイオ酵素によるバイオストーン処理する方法がある(特許文献2:特開2000−328432号公報)。
更に、インジゴ染料で染色されたセルロース繊維材料を、アルカリ剤の存在下で、ある特定のジアリルアミン由来の構成単位からなるカチオンポリマー化合物を含む水溶液を用いて処理することにより、洗濯による色落ち防止効果を狙った処理方法が提案されている(特許文献3:特許第4074936号公報)。
その他にも、摩擦堅牢度が、乾燥(タテ)が4.0級以上、湿潤(タテ)が1.5級以上であるデニム生地が提案されている(特許文献4:特開2007−182648号公報)。
【0006】
しかし、特許文献1に記載の方法は、水及び温水を使用しないため、ベースの染料は落ち難い特長はあるが、水及び温水を使用しないことで、衝撃が強く、ジーンズや装置の傷みが激しく、水及び温水を使用する通常の加工方法で、ベース染料の色落ち防止が求められている。また、製品を洗濯すると、ベース生地の染料の脱落は大きく、洗濯による色落ち防止や汚染防止には効果がない。
特許文献2の方法は、加工後の効果はあっても、工程が長く煩雑である。また、洗濯したときの染料の脱落を防止する効果が充分でない欠点がある。
特許文献3の方法は、初期洗濯の色落ち効果はあるが、洗い加工のような強い処理を行ったり、洗濯を繰り返すと効果が充分ではない欠点がある。
特許文献4に記載の処理方法では、摩擦堅牢性が高くなることで、洗濯での汚染防止効果が期待できる。しかし、実施例には湿潤摩擦堅牢度1.5級の結果が示されているものの、それ以上、例えば2級以上の効果発現方法は記載がない。
【0007】
そのため、インジゴ染め、硫化染めやスレン染めされたデニム生地やデニム製品には、ストーンウォッシュ加工、ブリーチ加工のような強い処理を行ったときの色落ちや、製品の洗濯を繰り返したときに生じる色落ちの問題が依然として残っていた。
【0008】
【特許文献1】特開平11−286868号公報
【特許文献2】特開2000−328432号公報
【特許文献3】特許第4074936号公報
【特許文献4】特開2007−182648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、色落ちしにくく、しかも洗濯によるデニム製品からの汚染が抑制され、湿摩擦堅牢度が向上したデニム製品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、インジゴ染料及び/又は硫化染料、あるいは、インジゴ染料及びスレン染料で染色されたデニム製品であって、JIS L0856強試験に準拠した塩素漂白による色変化が、JIS L0801に準拠した変退色の判定で1−2級以上、特に2級以上(インジゴ染色又はインジゴ染色及びスレン染色のとき)であって、好ましくはJIS L0849に準拠した湿摩擦堅牢度が、JIS L0801に準拠した変退色の判定で1−2級以上であるデニム製品が、色落ちしにくく、審美性等に優れ、しかも洗濯によるデニム製品からの汚染が防止され、実用的にも高い価値を有するものであることを見出すと共に、所定の条件下で上記特性を有するデニム製品が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0011】
従って、本発明は、下記のデニム製品及びその製造方法を提供する。
請求項1:
インジゴ染料及び/又は硫化染料で染色された、又はインジゴ染料及びスレン染料で染色されたデニム製品であって、JIS L0856強試験に準拠した塩素漂白による色変化が、JIS L0801に準拠した変退色の判定で1−2級以上であることを特徴とするデニム製品。
請求項2:
JIS L0856強試験に準拠した塩素漂白による色変化が、JIS L0801に準拠した変退色の判定で2級以上である請求項1記載のデニム製品。
請求項3:
JIS L0849に準拠した湿摩擦堅牢度(たて方向)が、JIS L0801に準拠した変退色の判定で1−2級以上である請求項1又は2記載のデニム製品。
請求項4:
インジゴ染料及び/又は硫化染料で染色された、又はインジゴ染料及びスレン染料で染色されたデニム生地を、窒素原子、カルボキシル基、エポキシ基、オルガノオキシ基及び水酸基のいずれかを含む化合物を含有する架橋処理剤で架橋処理することにより得られた請求項1又は2記載のデニム製品。
請求項5:
インジゴ染料及び/又は硫化染料、又はインジゴ染料及びスレン染料で染色されたデニム生地を、窒素原子、カルボキシル基、エポキシ基、オルガノオキシ基及び水酸基のいずれかを含む化合物を含有する架橋処理剤で架橋処理すると共に、シリコーン系化合物、イソシアネート系化合物、ウレタン系化合物、アルコール系化合物、アミン化合物、カルボン酸系化合物及びエポキシ系化合物の少なくとも1種を含む耐湿摩擦性向上剤で処理することにより得られた請求項3記載のデニム製品。
請求項6:
窒素原子、カルボキシル基、エポキシ基、オルガノオキシ基及び水酸基のいずれかを含む化合物が、尿素誘導体、メラミン誘導体、環状尿素化合物、ポリカルボン酸化合物、エポキシ化合物又はオルガノオキシ基もしくは水酸基含有シリコーン化合物である請求項4又は5記載のデニム製品。
請求項7:
インジゴ染料及び/又は硫化染料、又はインジゴ染料及びスレン染料で染色されたデニム生地に対し、窒素原子、カルボキシル基、エポキシ基、オルガノオキシ基及び水酸基のいずれかを含む化合物を含有する架橋処理液を付着させた後、熱処理することを特徴とするデニム製品の製造方法。
請求項8:
窒素原子、カルボキシル基、エポキシ基、オルガノオキシ基及び水酸基のいずれかを含む化合物が、尿素誘導体、メラミン誘導体、環状尿素化合物、ポリカルボン酸化合物、エポキシ化合物又はオルガノオキシ基もしくは水酸基含有シリコーン化合物である請求項7記載のデニム製品の製造方法。
請求項9:
更に、シリコーン系化合物、イソシアネート系化合物、ウレタン系化合物、アルコール系化合物、アミン化合物、カルボン酸系化合物及びエポキシ系化合物の少なくとも1種を含む耐湿摩擦性向上剤を付着させ、熱処理する請求項7又は8記載のデニム製品の製造方法。
請求項10:
耐湿摩擦性向上剤が、ポリエーテル変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン及びメルカプト変性シリコーンから選ばれるシリコーン系化合物と、イソシアヌレート型、アダクト型、ビュレット型又はアロファネート型の末端イソシアネート基含有イソシアネート化合物又はブロックイソシアネート化合物とを含む請求項9記載のデニム製品の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来のデニム生地に比べて色落ちしにくく、審美性に優れ、しかも洗濯によって他の衣類等を汚染することのないデニム製品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のデニム製品は、インジゴ染料又は硫化染料、あるいは、インジゴ染料及びスレン染料で染色されたデニム製品であって、JIS L0856強試験に準拠した塩素漂白による色変化が、JIS L0801に準拠した変退色の判定で1−2級以上、特に2級以上(インジゴ染色又はインジゴ染色及びスレン染色のとき)であり、好ましくはJIS L0849に準拠した湿摩擦堅牢度(たて方向)が、JIS L0801に準拠した変退色の判定で1−2級以上であることを特徴とする。
【0014】
デニム生地
ここで、本発明の製品に用いられるデニム生地としては、綿(短繊維綿、中繊維綿、長繊維綿、超長綿、超・超長綿など)、麻(リネン麻、ラミー麻、マニラ麻、サイザル麻、ジュート麻、ケナフ、ヘンプ等各種のものを含む)、竹、こうぞ、みつまた、バナナ、被嚢類等の植物性及び動物性の天然セルロース繊維でも、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨンといったレーヨン繊維、ビスアセテート、トリアセテートといったアセテート繊維等の再生ないし半合成セルロース繊維などのセルロース系繊維を単独で又はこれらとポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリウレタン繊維、ポリエチレン繊維、ポリオレフィン繊維、ポリイミド繊維、ポリ乳酸繊維等の他の繊維とを混紡、交織等して製織された生地が挙げられ、典型的には、経糸としてインジゴ染料及び/又は硫化染料、あるいは、インジゴ染料及びスレン染料で染色した綿糸と、緯糸として未晒し又は晒し綿糸を用いて、平織、斜文織(綾織)等に製織した生地を用いることができる。また、未染色の糸を用いた織布をインジゴ染料、硫化染料、スレン染料で染色したものも使用することができる。この場合、染色条件は特に制限されず、常法に従って染色することができる。
【0015】
架橋処理
(1)架橋剤
染色された生地の一部分に対して、セルロースの水酸基と反応し、繊維間に架橋結合を発生させる架橋剤を用いて処理する。本発明で用いられる架橋剤としては、セルロースの水酸基と反応し、架橋を生成するものであればいずれのものでもよい。このような化合物としては、窒素原子、カルボキシル基、エポキシ基、オルガノオキシ基及び水酸基のいずれかを含む化合物が挙げられ、具体的には、尿素・ホルムアルデヒド化合物(尿素・ホルムアルデヒド樹脂、尿素誘導体)、メラミン・ホルムアルデヒド化合物(メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、メラミン誘導体)、環状尿素化合物(環状尿素型樹脂、エチレン尿素誘導体、ブチレン尿素誘導体)、アルキルカーバメート化合物(アルキルカーバメート樹脂)、アセタール化合物(アセタール樹脂)、エポキシ化合物(エポキシ樹脂)、オルガノオキシ基又は水酸基含有シリコーン化合物(シリコーン樹脂、シリコーンゾル)、カルボン酸化合物、ポリカルボン酸化合物、スルフォン化合物、第4級アンモニウム塩、1,3−ジクロロ−2−プロパノール誘導体、N−メチロールアクリルアミド等の化合物が挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらのなかでも、尿素誘導体、メラミン誘導体、環状尿素化合物、エポキシ化合物、オルガノオキシ基又は水酸基含有シリコーン化合物、ポリカルボン酸化合物が、効果、物性、反応性、経済性などの点で好ましい。
【0016】
尿素誘導体としては、尿素やモノメチロール尿素、ジメチロール尿素などの公知のものを使用することができる。
【0017】
メラミン誘導体としては、メチロール基、アルコキシメチル基、アルコキシエチル基などを含むものが好ましく、その一例として、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−又はヘキサ−メチロールメラミンや、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−又はヘキサ−メチル化メチロールメラミン、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−又はヘキサ−エチル化メチロールメラミン、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−又はヘキサ−メチル化エチロールメラミン等が挙げられる。これらの中で、ホルマリンの低減のためには、アルコキシメチル基、アルコキシエチル基を含むものやメラミンとジメトキシエタナールとの反応物などの使用が効果的である。
【0018】
環状尿素型樹脂としては、具体的にはジメチロールエチレン尿素、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素及びそのグリコール変性物、ジメチロールトリアゾン、ジメチロールウロン、ジメチロールグリオキザールモノウレイン、ジメチロールプロピレン尿素、これらのメチロール基の一部又は全部をメトキシ化、エトキシ化したもの等があげられる。これらの中では、エチレン尿素タイプが反応性や価格の点で好ましく、ホルマリン低減のためには、メチロール基の一部又は全部をメトキシ化、エトキシ化したもの、あるいは、ノンホル型と呼ばれるジメチルジヒドロキシエチレン尿素などの使用が有効である。
【0019】
オルガノオキシ基又は水酸基含有シリコーン化合物としては、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、プロピルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジプロポキシシラン、ジプロピルジブトキシシラン、ジフェニルジヒドロキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリメチルブトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリエチルプロポキシシラン、トリエチルブトキシシラン、トリプロピルメトキシシラン、トリプロピルエトキシシラン、トリプロピルプロポキシシラン、トリプロピルブトキシシラン、トリフェニルヒドロキシシラン等及びこれらの(部分)加水分解縮合物が挙げられ、上記オルガノオキシ基又は水酸基含有シラン化合物を1種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。これらのなかでも特に架橋構造を形成する上でメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のトリオルガノキシシラン、テトラオルガノキシシランが好ましく用いられるが、一官能性や二官能性のシラン化合物もセルロース系繊維と反応させることができるため、本発明においては一乃至四官能性のシラン化合物のいずれも使用することができる。
【0020】
ポリカルボン酸化合物としては、分子中に少なくとも2個のカルボキシル基を有するものが好ましい。具体的には、分子中に2個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸が使用できる。例えば飽和脂肪族ジカルボン酸、不飽和脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸等を使用することができる。飽和脂肪族ジカルボン酸としては、具体的にはシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、プロピルマロン酸、ブチルマロン酸、ヘプチルマロン酸、ジプロピルマロン酸、リンゴ酸、酒石酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、イミノジ酢酸、チオジプロピオン酸、チオマレイン酸等を使用することができる。不飽和脂肪族ジカルボン酸としては、具体的にはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ヘキサジエン二酸(ムコン酸)、ドデカジエン二酸等を使用することができる。
【0021】
芳香族ジカルボン酸としては、具体的にはフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ホモフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、メチルフタル酸、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドリンデンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、カルボキシメチル安息香酸、トリフルオロメチルフタル酸、アゾキシベンゼンジカルボン酸、ヒドラゾベンゼンジカルボン酸、スルホイソフタル酸、ジフェニルスルフォンジカルボン酸、ピリジンジカルボン酸、ケリダム酸、ピラジンジカルボン酸等を使用することができる。脂環式ジカルボン酸としては、具体的にはヘット酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロプロパンジカルボン酸、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ピペリジン−2,3−ジカルボン酸(ヘキサヒドロキノリン酸)、ピペリジン−2,6−ジカルボン酸(ヘキサヒドロジピコリン酸)、ピペリジン−3,4−ジカルボン酸(ヘキサヒドロシンコメロン酸)等を使用することができる。
【0022】
少なくとも3個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸の使用も好ましく、脂肪族トリカルボン酸、脂肪族テトラカルボン酸、脂肪族ペンタカルボン酸、脂肪族ヘキサカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸、カルボン酸ポリマー等を使用することができる。脂肪族トリカルボン酸としては、具体的には、トリカルバリル酸、アコニチン酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、クエン酸、1,2,3−ブタントリカルボン酸等を使用することができる。
【0023】
脂肪族テトラカルボン酸としては、具体的には、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、テトラヒドロフランテトラカルボン酸、メチルテトラヒドロフタル酸とマレイン酸のエン付加物、エチレンジアミン四酢酸、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ジフタル酸、エポキシ化コハク酸二量化物等を使用することができる。
【0024】
脂肪族ペンタカルボン酸としては、具体的には、ジエチレントリアミン五酢酸等を使用することができる。脂肪族ヘキサカルボン酸としては、具体的には、トリエチレンテトラミン六酢酸等を使用することができる。芳香族ポリカルボン酸としては、具体的には、トリメリット酸、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸等を使用することができる。
【0025】
カルボン酸ポリマーも使用でき、具体的には、アクリル酸重合物、クロトン酸重合物、マレイン酸重合物、イタコン酸(又は無水イタコン酸)重合物、アクリル酸・メタアクリル酸共重合物、アクリル酸・(無水)マレイン酸共重合物、メタアクリル酸・(無水)マレイン酸共重合物、アクリル酸・イタコン酸共重合物、アクリル酸・3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸共重合物、(無水)マレイン酸・α−メチルスチレン共重合物、(無水)マレイン酸・スチレン共重合物(スチレンと無水マレイン酸よりディールス・アルダー反応とエン反応によって生じたテトラカルボン酸を含む)、(無水)マレイン酸・アクリル酸アルキル共重合物、アクリル酸・3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸・アクリル酸アルキル共重合物、メタアクリル酸・(無水)マレイン酸・メタアクリル酸アルキル共重合物、(無水)マレイン酸・アクリル酸アルキル・メタアクリル酸アルキル共重合物、(無水)マレイン酸・アクリル酸アルキル・スチレン共重合物、アクリル酸・(無水)マレイン酸・アクリル酸アルキル・スチレン共重合物、メタアクリル酸・(無水)マレイン酸・アクリル酸2−エチルヘキシル・メタアクリル酸メチル・メタアクリル酸2−ヒドロキシエチル・スチレン共重合物等を使用することができる。これらのポリカルボン酸のうち、トリカルボン酸、テトラカルボン酸等で水溶性のポリカルボン酸が均一に処理しやすく、作業もしやすいため好ましい。
【0026】
エポキシ化合物としては、分子中に2個以上の反応性官能基を有するものが好ましく、グリシジルエーテル基又はクロルヒドリン基であることが好ましい。具体的には、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル,ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等のエチレングリコール系や、プロピレングリコールジグリシジルエーテル,ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等のプロピレングリコール系の分子中に2個の官能基を有するものが挙げられるが、グリセロールグリシジルエーテル等の3個以上の官能基を持つエポキシ系架橋剤でも問題なく使用することが可能である。また、エポキシ変性シリコーンとして、セルロースの水酸基と直接反応するエポキシ基を持つシリコーン誘導体も使用することができる。エポキシ基にはグリシジルタイプのものと脂環式タイプのものとがあるがいずれのタイプでも構わない。これらは単独でも混合系で使用しても構わない。
【0027】
これらの架橋剤のなかでも、メラミン誘導体、エチレン尿素型の環状尿素重合体(樹脂)、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のトリオルガノキシシラン、テトラオルガノキシシラン、3個以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸、セルロースの水酸基と直接反応するエポキシ基を持つ化合物を好適に用いることができる。
【0028】
これらの架橋剤は、水等に溶解又は分散させた架橋処理液として用いることが好ましく、処理液中の架橋剤の濃度は0.5〜80質量%、特に0.5〜50質量%であることが好ましい。
【0029】
また、生地に対する架橋剤の付着量は、処理前のデニム生地の質量に対して、0.3質量%以上が色落ち防止効果を発揮するために好ましく、25質量%を超えると、色落ち防止効果は更に良好となるが、架橋セルロースの破断強度や引裂強力の低下が顕著になるので、25質量%以下の使用が好ましいが、生地の規格(経、緯糸の種類と数)により架橋セルロースの物性(引張強度や引裂強力など)を高めることができる場合は、架橋量を上げて使用することもできる。例えば、中繊維綿からなる綿糸に変えて、長繊維綿、超長綿あるいは超・超長綿を含む綿糸を一部あるいは全部使用すると引張強度や引裂強力の向上に効果がある。また、当該デニム製品の用途次第では、破断強度や引裂強力の要望範囲が変わるので、品質の許容範囲で実際の架橋量は変化することになる。より好ましくは、0.5〜20質量%であり、特に好ましくは0.5〜18質量%である。なお、架橋量とは、架橋処理前のデニム生地の質量に対する、架橋処理前後の質量増加の割合を言い、下記式で表される。
架橋量[%]={(架橋処理後のデニム生地質量―架橋処理前のデニム生地質量)/架橋処理前のデニム生地質量}×100
【0030】
(2)架橋触媒
本発明の架橋処理には、上記架橋剤とセルロースの反応性を高め、架橋処理を迅速に行うために触媒を添加することができる。この触媒としては、通常、セルロース系繊維の樹脂加工に用いられる触媒であれば特に限定されず、尿素誘導体、メラミン誘導体、環状尿素化合物、エポキシ化合物、シリコーン化合物、アルキルカーバメート樹脂、ポリカルボン酸化合物などは、例えば、ホウ弗化アンモニウム、ホウ弗化ナトリウム、ホウ弗化カリウム、ホウ弗化亜鉛等のホウ弗化化合物、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム等の中性金属塩触媒、燐酸、塩酸、硫酸、亜硫酸、次亜硫酸、ホウ酸、次亜リン酸ナトリウム等の無機酸などが挙げられる。これらの触媒には、必要に応じて助触媒としてクエン酸、酒石酸、林檎酸、マレイン酸等の有機酸などを併用することもできる。
【0031】
これらの架橋触媒の使用量は、上記架橋剤に対して0.01〜400質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜300質量%である。架橋触媒の使用量が少なすぎると、反応収率が低下して架橋量が少なく効果が不足したりする場合があり、多すぎると、セルロース系繊維の酸分解などにより繊維の強度を低下したり、変色の原因になる場合がある。
【0032】
なお、ポリカルボン酸を用いる場合は、予めpH調整剤を添加してポリカルボン酸(水)溶液のpHを調整しておくのが望ましい。pH領域は、通常1〜6、好ましくは2〜5の範囲内とするのがよい。該液のpHが上記範囲より高くなると、色落ち防止効果が発現され難くなる傾向となり、一方該液のpHが上記範囲より低くなると、セルロースの加水分解により繊維強度の低下が大きくなる傾向となるので、好ましくない。pH調整剤としては、通常アルカリ又はその塩が用いられる。pH調整剤の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等が挙げられる。また上記pH調整剤のナトリウムに代わり、カリウム、アンモニウム等や、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の揮発性低級アミンの塩も使用できる。これらは1種単独で又は2種以上混合して用いられる。これらpH調整剤の使用量は、上記エステル及びポリカルボン酸の溶解量や種類により異なり一概には言えないが、処理液中に通常0.1〜10質量%程度配合するのがよい。
【0033】
(3)架橋助剤
また、架橋剤には、必要に応じて、セルロースと架橋剤との反応を円滑に進めるための助剤を添加することができる。助剤は、架橋剤とセルロースの反応を促進させたり、架橋生成反応においても反応を均一に進めるといった反応溶媒としての作用、更にはセルロースを膨潤させる作用等を有するものである。
【0034】
上記助剤としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテルアルコール類、ジメチルホルムアミド、モルホリン、2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の含窒素溶媒類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、γ−ブチロラクトン等のエステル類などが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0035】
架橋助剤の使用量は、架橋剤に対して1〜400質量%が好ましく、より好ましくは5〜300質量%である。少なすぎると反応を円滑にする効果がない場合があり、多すぎるとセルロースの脆化を招いたり、架橋処理後に生地から助剤を除去することが煩雑になる場合がある。
【0036】
(4)その他の成分
本発明の架橋処理には、上述の成分の他に、必要に応じて、風合い調整用の柔軟剤や、遊離ホルマリン濃度低減のためのホルマリンキャッチャー、浸透剤としての界面活性剤等を添加することもできる。メラミン誘導体や環状尿素型樹脂などホルマリンを発生するおそれのあるものはホルマリンキャッチャー剤との併用が、架橋セルロースが硬くなることで引裂強力や引張強度が低下する場合は柔軟剤の併用が、架橋剤溶液の生地への浸透性が低い場合は、浸透剤の併用が好ましい。
【0037】
(5)架橋処理方法
デニム生地を架橋処理する方法として、通常のパッド・ドライ法、浸漬法、含浸法、印捺法、インクジェット印刷法、レーザープリンター印刷法、塗布法、噴霧法等の公知の方法を採用することができるので、適宜効率的な方法、品質上好ましい方法を採用すればよい。例えば生地全体に処理する場合は、パッド・ドライ法が効率的で好ましい。製品全域に処理する場合は、浸漬法や噴霧法で処理すると手軽に実施できる。
【0038】
架橋処理液を生地に付着させた後、熱処理する。熱処理は、70〜220℃、特に80〜200℃で0.5〜180分間、特に1〜120分間行うことが好ましい。上記条件を下回ると、反応収率が低下し架橋量が少なくなり効果が低下する場合があり、上回ると、セルロース繊維や架橋セルロース繊維が脆化する場合がある。
【0039】
耐湿摩擦性向上処理
(1)耐湿摩擦性向上剤
次に、得られた生地を耐湿摩擦性向上処理する。本発明者らが検討した結果、上記方法により架橋処理された生地に対し、種々の耐湿摩擦性向上剤を付与することで、湿摩擦堅牢度向上に一層の効果があることがわかった。
耐湿摩擦性向上剤としては、接着剤(バインダー)、フィックス剤、柔軟剤、固定化剤などを単独あるいは併用して用いることができるが、繊維が本来有している風合いを維持できるよう、風合い硬化しない柔軟な剤や、処理した時に色合いの変化が少ないもの、洗濯耐久性の高いもの、退色堅牢性が高いものを1種単独であるいは2種以上を併用して使用することが好ましい。
【0040】
更に、インジゴ染料、硫化染料、スレン染料で染色されたデニム生地については、通常、湿摩擦堅牢度は乾摩擦堅牢度より性能が低く、湿度が高い状態、湿った状態、ぬれた状態、あるいは洗濯の最中に当該デニム生地から他の衣類や資材にインジゴ染料、硫化染料、スレン染料が移染することなどから、湿摩擦堅牢度の向上が特に要望されている。本発明においては、湿摩擦堅牢度が向上すれば、乾摩擦堅牢度も処理前と同等ないし同等以上に性能は向上するものであるが、耐湿摩擦性向上剤あるいはその他の薬剤として60℃以下の温度で融解したり粘着性を生じるもの、綿の吸水性より高いものなどを使用すると乾摩擦堅牢度が低下することがあり、耐湿摩擦性向上剤の選択にあたっては湿摩擦堅牢度向上と共に乾摩擦堅牢度の性能低下を招かない処理の選択が好ましい。
【0041】
本発明に使用できる接着剤(バインダー)としては、セルロース系繊維への接着が高いもの、接着後に表面硬化せず、繊維の風合いを維持できる剤の使用が好ましく、例えば、アクリル系水性エマルジョン、ビニルアルコール系水性エマルジョン、酢酸ビニル系水性エマルジョン、エチレン酢酸ビニル系水性エマルジョン、エチレンビニルアルコール系水性エマルジョン、ウレタン系水性エマルジョン、スチレン−ブタジエン系合成ラテックス等が挙げられる。洗濯耐久性を高める方法としては、例えば、使用する接着剤自体をセルロースや架橋剤、耐湿摩擦性向上剤と直接反応させる方法、あるいは、架橋剤や他の耐湿摩擦性向上剤と相溶性の高い剤を使用することができる。
【0042】
本発明に使用できるフィックス剤としては、カチオン系のフィックス剤やカチオン系のポリマーを使用することができる。天然系ポリマーとしては、例えば、カチオン化デンプン、キトサン系などが使用でき、合成系ポリマーとしては、例えば、ポリジアルキルアミノエチルアクリレートやポリジアルキルアミノエチルメタクリレートの4級塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン4級塩、ジシアンジアミドとホルマリンとの縮合物、アルキレンジアミンとエピクロルヒドリンとの縮合物、カチオン変性ポリビニルアルコールなどを使用することができる。カチオン系のフィックス剤、カチオン系の高分子を接着剤としてそのまま用いてもよい。
【0043】
本発明に使用できる柔軟剤としては、繊維相互の摩擦を低減し、洗濯耐久性の高いもの、インジゴ染料、硫化染料、スレン染料に対して非溶出性の剤が好ましく、例えばシリコーン系化合物が使用できる。シリコーン系化合物としては、架橋剤として挙げたものも使用できるが、より好ましい例として具体的には、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、アルキル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フェノール変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン等の変性シリコーン、及びこれらの複合変性シリコーン、並びにその他の有機変性シリコーン等が挙げられる。洗濯耐久性を高める方法としては、使用する柔軟剤自体をセルロースや架橋剤、耐湿摩擦性向上剤と直接反応させる方法、あるいは、架橋剤や他の耐湿摩擦性向上剤と相溶性の高い剤を使用する方法などがあり、メチルハイドロジェンシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、シランカップリング剤を含むものを使用するとよい。
【0044】
本発明に使用できる固定化剤としては、セルロースの水酸基や、色落ち防止を目的としてセルロースと架橋した部位と反応するもの、耐湿摩擦性向上剤として用いた接着剤、フィックス剤、柔軟剤と反応するものを用いることができる。耐湿摩擦性向上剤として反応性の剤を用いる場合は、反応基の種類に応じた触媒を使用することができる。例えば反応基がイソシアネート基の場合は、公知の錫系やアミン系触媒を使用することができる。
【0045】
好ましい固定化剤としては、反応性や保存安定性の点でアルコール系化合物、メラミン系及び尿素系化合物、アミン化合物、ウレタン系化合物、イソシアネート化合物、カルボン酸系化合物、エポキシ系化合物などが挙げられる。アニオン系又は非イオン系のものを用いる場合は、カチオン化剤を併用すると反応を円滑に進めることができる。この場合、カルボン酸系化合物、エポキシ系化合物としては、架橋剤として挙げたものと同じものでも違うものでもよいが、固定化剤として用いられるものは、比較的低温で反応するもの、反応性の高いものが経済上、生地の風合い上、他の湿摩擦処理剤の選択範囲を広げる(耐熱性の低いもの、生地に柔らかい風合いを与える処理剤を広く使用できる)上で好ましい。
【0046】
耐湿摩擦性向上剤としては、柔軟剤としてシリコーン系化合物に加え、イソシアネート基と反応する水酸基を含有する化合物、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルの部分けん化物、グリコールアセタール、ペンタエリストールビスアセタールなどのアセタール樹脂等のアルコール系化合物;メラミン、尿素、N−オクタデシル−N,N−エチレン尿素などのエチレン尿素化合物等のメラミン系や尿素系化合物;ブタンジアミンやエチレンジアミン等のアミン化合物;脂肪族、脂環族又は芳香族イソシアネート化合物と、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカプロラクトン系、ポリカーボネート系、ポリアクリル系などのポリオール化合物とから得られるウレタン系化合物;脂肪族、脂環族又は芳香族イソシアネート化合物を用い、構造的には線状、イソシアヌレート型、アダクト型、ビュレット型、アロファネート型などであって、末端にはイソシアネート基あるいはブロック剤でブロックされたイソシアネート基を持つイソシアネート化合物;3個以上のカルボキシル基を有するカルボン酸系化合物;グリシジル型又は脂環式型のエポキシ系化合物から選ばれる固定化剤を併用すると、繊維が本来有している風合いを維持しつつ、洗濯耐久性が高く、良好な耐湿摩擦堅牢度を得るので特に好ましい。上記固定化剤は水溶性か水に分散又は乳化しやすいものが操作上もしくは均一な品質を与える上で好ましい。更に、接着剤やカチオン化剤を併用すると効果が高くなる。この場合、ポリエーテル変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン及びメルカプト変性シリコーンから選ばれるシリコーン系化合物と、上記したイソシアヌレート型、アダクト型、ビュレット型又はアロファネート型の末端イソシアネート基含有イソシアネート化合物又はブロックイソシアネート化合物を含む耐湿摩擦性向上剤を用いることが好ましい。
【0047】
これらの耐湿摩擦性向上助剤のデニム生地(架橋処理後)に対する付着量は、固形分で0.1〜40質量%が好ましく、より好ましくは0.3〜30質量%である。付着量が少なすぎると湿摩擦向上効果が乏しい場合があり、多すぎると効果は変わらず薬剤の使用量が多くなったり、乾摩擦堅牢度が低下する場合がある。
【0048】
(2)処理方法
上記耐湿摩擦性向上助剤を濃度0.1〜20g/L、特に0.2〜10g/Lの割合で水等の溶媒に溶解又は分散させ、浴比1:5〜1:160で、5〜80℃で1〜180分間処理することが好ましい。続いて、そのまま、あるいは、水洗を実施した後、脱水機を用いて脱水することが好ましい。操作は、一度だけでなく何回も繰り返して行うこともできる。
【0049】
最後に、40〜200℃で1〜600分間熱処理し、生地を乾燥させることが好ましい。
【0050】
ここで、本発明により色落ちが防止される理由の詳細は不明であるが、セルロース系繊維間が架橋剤で結合され、インジゴ染料や硫化染料あるいはスレン染料が溶出する空隙が小さくなること、洗濯時のフィブリル化が抑制される結果、インジゴ染料や硫化染料、スレン染料の溶出増大を防いでいること、及び耐湿摩擦性向上剤との併用により効果的に繊維間の摩擦が低減できること、インジゴ染料や硫化染料あるいはスレン染料の溶出抑制効果が増加することなどが関係している可能性がある。
洗い加工として、塩素ブリーチすると生地の表面に付着したインジゴ染料、硫化染料、スレン染料を除去する効果で処理後の色落ちが少なくなることは公知であったが、塩素ブリーチの処理中に、ベース生地や製品全体のインジゴ染料、硫化染料やスレン染料が脱落することで生地全体が退色し、その結果、塩素ブリーチ処理を行い、色落ち防止効果の高い濃色デニムはできなかった。本発明では、ブリーチ処理しても、ベース生地や製品全体の退色を抑えつつ、架橋部位より表面に残存するインジゴ染料、硫化染料、スレン染料を除去することができるので、色落ち防止効果や摩擦堅牢度が一層高い、濃色デニムを得ることができる。
【0051】
具体的には、本発明のデニム製品は、JIS L0856強試験に準拠した塩素漂白による色変化が、JIS L0801に準拠した変退色の判定で1−2級以上、特に2級以上(インジゴ染色又はインジゴ染色及びスレン染色のとき)であって、色落ち防止に対してこれまでにない高い効果がある。
【0052】
また、本発明のデニム製品は、JIS L0849(摩擦試験機II型)に準拠した湿摩擦堅牢度が1−2級以上、特に2級以上、とりわけ2−3級以上であり、実衣料(下着、中着、上着等)と同程度の湿摩擦堅牢度であり、製品使用時や、洗濯による汚染を抑制する効果もこれまでになく高い。
【0053】
本発明のデニム製品としては、上述した処理をして得られるデニム生地自体も含まれ、パンツ、シャツ等のデニム衣類、デニムバッグ、カーテン、シート等のデニムインテリア等が挙げられる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例において、部は質量部を表す。
【0055】
[加工液の調製]
下記方法により加工液A1〜A4、B1,B2を調製した。
加工液A1
水82部にメチル化トリメチロールメラミン(固形分濃度50質量%)8部、グリコール変性ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素(固形分濃度60質量%、構造式(1))5部、尿素1部、触媒として塩化マグネシウム水溶液(固形分濃度20質量%)を4部投入して30分混合を続け、加工液A1を調製した。
【化1】

n=1〜2
【0056】
加工液A2
水81部にメチル化トリメチロールメラミン(固形分濃度50質量%)14部、尿素1部、触媒として塩化マグネシウム水溶液(固形分濃度20質量%)を4部投入して30分混合を続け、加工液A2を調製した。
【0057】
加工液A3
酢酸でpH3.5に調整した水56部を50℃で温調した後、メチルトリエトキシシラン10部を加えたところ二層になったが、引き続き45分間混合することで、加水分解により層分離は解消された。次に、メチル化トリメチロールメラミン(固形分濃度50質量%)14部、尿素1部、触媒として塩化マグネシウム水溶液(固形分濃度20質量%)を4部投入して1時間混合を続け、最後に濃度調整のため水を15部加え、加工液A3を調製した。
【0058】
加工液A4
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸(和光純薬工業(株)製)を9部、触媒として次亜リン酸ナトリウム・1水和物(関東化学(株)製)を10部、触媒及びpH調整のために1N水酸化ナトリウム15部を準備した。それらに水を66部加えて混合し、それぞれ溶解させ、加工液A4を調製した。
【0059】
加工液B1
40℃の水500部に、柔軟剤としてシリコーン1(KF101、信越化学工業(株)製)を0.6部、シリコーン2(X−22−160AS、信越化学工業(株)製)を0.3部、接着剤1(スミカフレックス400HQ、住友化学(株)製)を2部、カチオン化剤(ユニセンスKCA100L、センカ(株)製)を0.4部、固定化剤1(コロネートHXLV、日本ポリウレタン工業(株)製)を1.0部投入し、更に40℃の水を加えて全量を1000部として、1分間よく混合し、加工液B1を調製した。
【0060】
加工液B2
40℃の水500部に、柔軟剤としてシリコーン3(BY16−839、東レ・ダウコウニング(株)製)を0.6部、シリコーン2(X−22−160AS、信越化学工業(株)製)を0.2部、接着剤2(スミカフレックス950HQ、住友化学(株)製)を1.5部、カチオン化剤(ユニセンスKCA101L、センカ(株)製)を0.2部、固定化剤2(デュラネートWT30−100、旭化成ケミカルズ(株)製)を1.0部投入し、更に40℃の水を加えて全量を1000部として、1分間よく混合し、加工液B2を調製した。
【0061】
[実施例1〜4]
架橋反応処理
上記で作成した加工液A1〜A4を付与する生地として、綿100質量%デニム生地[インジゴ染料で染色された経糸(綿100質量%、9番手単糸、67本/インチ)と、緯糸(綿100質量%、9番手単糸、52本/インチ)を用いて、3/1右綾組織で製織されたデニム生地]を準備した。
次いで、上記加工液A1〜A4を夫々パッダーで生地に付与し、マングルで絞った後、ピンテンターを用いて160℃で4分熱処理して反応させた。なお、マングルで絞った後の加工液の付着量は、付着前の生地の質量に対して半分(50質量%)の量であった。
【0062】
耐湿摩擦性向上処理
架橋反応処理を終えたデニム生地を裁断、縫製しデニムパンツを作成し、浴比1:60の割合で加工液B1又はB2が入った洗濯機に投入し、40℃で15分間洗った(洗濯機の回転数は145rpm、3秒正回転−2秒停止−3秒逆回転の繰り返し)。具体的には、加工液A1と加工液B1、加工液A2と加工液B2、加工液A3と加工液B1、加工液A4と加工液B2の組み合わせで実施した。加工液は、調製したものを直ちに使用した。
続いて、脱水したデニムパンツを、浴比1:80の割合で水が入った洗濯機に投入し、40℃で15分間洗い(洗濯機の回転数は145rpm、3秒正回転−2秒停止−3秒逆回転の繰り返し)、次いで脱水した。最後にタンブル乾燥機で120℃、10分間熱処理し、乾燥させ、製品としての最終仕上げを終えた。
架橋反応処理と耐湿摩擦性向上処理を終えたデニムパンツについて、以下の方法で評価試験を行った。また、比較として、加工液A1〜A4の代わりに水を用いた以外は、架橋反応処理と耐湿摩擦性向上処理を行ったデニムパンツ(比較例1)を同様に評価した。
【0063】
■摩擦堅牢度試験
摩擦堅牢度試験は、JIS L0849(摩擦試験機II型)に準拠して行った。
摩擦用白布としては、JIS L0803指定の綿を使用し、当該摩擦用白綿布の着色の判定は、JIS L0801のa(視感法)、b(計器法)に準拠して実施した。等級が大きいほど摩擦堅牢度が高いことを表す。結果を表2に示す。
【0064】
■色落ち防止評価
色落ち試験としては、JIS L0856塩素漂白に対する染色堅牢度試験方法の強試験に準拠して行った。
色落ちの判定は、JIS L0801のa(視感法)に準拠して実施した。任意の4箇所を測定し、それらの平均値を結果として用いた。
色落ち防止の効果を数値化するために、次の式で効果を数値化した。
[色落ち防止評価等級]=
[架橋セルロース箇所の変退色等級]−[未架橋セルロース箇所の変退色等級]
なお、変退色等級のうち、1−2級、2−3級、3−4級、4−5級は、夫々、1.5、2.5、3.5、4.5として計算した。1級、2級、3級、4級、5級は、夫々1.0、2.0、3.0、4.0、5.0として計算した。
いずれも等級が大きいほど色落ち防止効果が高いことを表す。結果を表1に示す。
【0065】
【表1】

※1 架橋反応処理を終えたデニムパンツを用いて色落ちの程度を計測し、未架橋セルロ
ース箇所としては、比較例1の架橋反応処理を終えたデニムパンツの任意の箇所を
用いた。
ΔE*abは、JIS Z8722により測定し、JIS Z8730により求めた、色落ち試験前と試験後の当該生地の色差を表す。
【0066】
【表2】

※2 等級が1級に達しないことを示す。
架橋セルロース箇所の変退色については、インジゴ染料で染色されたデニム製品については、2級以上であり、色落ち防止評価としては、好ましくは0.5級以上であれば効果がある。色落ち防止評価としては、1.0級以上の差があれば更に好ましい。
【0067】
[実施例5〜7]
架橋反応処理
上記で作成した加工液A2を付与する生地として、以下の3種類の綿100質量%デニム生地を用意した。
P1:
インジゴ染料で染色された後に、スレン染料(黄色)で染色された経糸(綿100質量%、9番手単糸、67本/インチ)と、緯糸(綿100質量%、9番手単糸、52本/インチ)を用いて、3/1右綾組織で製織されたデニム生地。
P2:
インジゴ染料で染色された後に、硫化染料(黒色)で染色された経糸(綿100質量%、9番手単糸、67本/インチ)と、緯糸(綿100質量%、9番手単糸、52本/インチ)を用いて、3/1右綾組織で製織されたデニム生地。
P3:
硫化染料で染色された経糸(綿100質量%、9番手単糸、67本/インチ)と、緯糸(綿100質量%、9番手単糸、52本/インチ)を用いて、3/1右綾組織で製織されたデニム生地。
次いで、上記加工液A2を夫々パッダーで生地に付与し、マングルで絞った後、ピンテンターを用いて160℃で4分熱処理して反応させた。なお、マングルで絞った後の加工液の付着量は、付着前の生地の質量に対して半分(50質量%)の量であった。
【0068】
耐湿摩擦性向上処理
架橋反応処理を終えたデニム生地を裁断、縫製しデニムパンツを作成し、浴比1:60の割合で加工液B2が入った洗濯機に投入し、40℃で15分間洗った(洗濯機の回転数は145rpm、3秒正回転−2秒停止−3秒逆回転の繰り返し)。加工液は、調製したものを直ちに使用した。
続いて、脱水したデニムパンツを、浴比1:80の割合で水が入った洗濯機に投入し、40℃で15分間洗い(洗濯機の回転数は145rpm、3秒正回転−2秒停止−3秒逆回転の繰り返し)、次いで脱水した。最後にタンブル乾燥機で120℃、10分間熱処理し、乾燥させ、製品としての最終仕上げを終えた。
架橋反応処理と耐湿摩擦性向上処理を終えたデニムパンツについて、実施例1〜4と同様の方法で評価試験を行った。また、比較として、加工液A2の代わりに水を用いた以外は、架橋反応処理と耐湿摩擦性向上処理を行ったデニムパンツ(比較例2〜4)を同様に評価した。結果を表3に示す。
【0069】
【表3】

※3 架橋反応処理を終えたデニムパンツを用いて色落ちの程度を計測し、未架橋セルロ
ース箇所としては、比較例2〜4の架橋反応処理を終えたデニムパンツの任意の箇
所を用いた。
ΔE*abは、JIS Z8722により測定し、JIS Z8730により求めた、色落ち試験前と試験後の当該生地の色差を表す。
【0070】
【表4】

【0071】
架橋セルロース箇所の変退色については、インジゴ染料及びスレン染料で染色されたデニム製品については、2級以上であり、色落ち防止評価としては、好ましくは0.5級以上であれば効果がある。色落ち防止評価としては、1.0級以上の差があれば更に好ましい。インジゴ染料及び硫化染料あるいは硫化染料で染色されたデニム製品の変退色については、1−2級以上であり、色落ち防止評価としては、好ましくは0.5級以上であれば効果がある。色落ち防止評価としては、1.0級以上の差があれば更に好ましい。
【0072】
[実施例8]
実施例1〜4で用いたものと同様のデニム生地からなるパンツ4枚を準備し、そのうちの2枚は製品全体(パンツ全体)を実施例2(加工液A2)の方法で架橋処理を施し、1枚を着用試験用、もう1枚を色落ち防止評価に使用した。別の2枚については比較用(比較例5)として、比較例1の方法で処理を施し、1枚を着用試験用、もう1枚を色落ち防止評価に使用した。着用試験用については、それぞれ合計45日間着用し、この間25回家庭洗濯(JIS103法、洗濯時間は1回あたり5分)を実施した。結果としては、架橋処理を実施したパンツは、架橋処理を実施していないパンツに比べ、色落ち防止効果、寸法安定効果、毛羽抑制効果のいずれも極めて良好な結果を得た。寸法安定効果及び毛羽抑制効果の測定方法は下記の通りである。結果を表5に示す。
【0073】
■寸法安定効果
下記の寸法変化率より寸法安定効果を評価した。
寸法変化率は下記式により求めることができる。なお、寸法としては、股下長さ及び裾の折幅の左右の値を測定し、その平均値を用いた。
寸法変化率(%)={着用試験前後の寸法差(cm)/着用試験前の寸法(cm)}
×100
■毛羽抑制効果
着用試験前後の生地表面、裏面の毛羽立ちを目視で評価し、毛羽立ち認めず、毛羽立ちが目立たない、毛羽立ちが目立つの三段階で評価した。
【0074】
【表5】

※4 色落ち防止評価の未架橋セルロース箇所として、比較例5の任意の箇所を用いた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インジゴ染料及び/又は硫化染料で染色された、又はインジゴ染料及びスレン染料で染色されたデニム製品であって、JIS L0856強試験に準拠した塩素漂白による色変化が、JIS L0801に準拠した変退色の判定で1−2級以上であることを特徴とするデニム製品。
【請求項2】
JIS L0856強試験に準拠した塩素漂白による色変化が、JIS L0801に準拠した変退色の判定で2級以上である請求項1記載のデニム製品。
【請求項3】
JIS L0849に準拠した湿摩擦堅牢度(たて方向)が、JIS L0801に準拠した変退色の判定で1−2級以上である請求項1又は2記載のデニム製品。
【請求項4】
インジゴ染料及び/又は硫化染料で染色された、又はインジゴ染料及びスレン染料で染色されたデニム生地を、窒素原子、カルボキシル基、エポキシ基、オルガノオキシ基及び水酸基のいずれかを含む化合物を含有する架橋処理剤で架橋処理することにより得られた請求項1又は2記載のデニム製品。
【請求項5】
インジゴ染料及び/又は硫化染料、又はインジゴ染料及びスレン染料で染色されたデニム生地を、窒素原子、カルボキシル基、エポキシ基、オルガノオキシ基及び水酸基のいずれかを含む化合物を含有する架橋処理剤で架橋処理すると共に、シリコーン系化合物、イソシアネート系化合物、ウレタン系化合物、アルコール系化合物、アミン化合物、カルボン酸系化合物及びエポキシ系化合物の少なくとも1種を含む耐湿摩擦性向上剤で処理することにより得られた請求項3記載のデニム製品。
【請求項6】
窒素原子、カルボキシル基、エポキシ基、オルガノオキシ基及び水酸基のいずれかを含む化合物が、尿素誘導体、メラミン誘導体、環状尿素化合物、ポリカルボン酸化合物、エポキシ化合物又はオルガノオキシ基もしくは水酸基含有シリコーン化合物である請求項4又は5記載のデニム製品。
【請求項7】
インジゴ染料及び/又は硫化染料、又はインジゴ染料及びスレン染料で染色されたデニム生地に対し、窒素原子、カルボキシル基、エポキシ基、オルガノオキシ基及び水酸基のいずれかを含む化合物を含有する架橋処理液を付着させた後、熱処理することを特徴とするデニム製品の製造方法。
【請求項8】
窒素原子、カルボキシル基、エポキシ基、オルガノオキシ基及び水酸基のいずれかを含む化合物が、尿素誘導体、メラミン誘導体、環状尿素化合物、ポリカルボン酸化合物、エポキシ化合物又はオルガノオキシ基もしくは水酸基含有シリコーン化合物である請求項7記載のデニム製品の製造方法。
【請求項9】
更に、シリコーン系化合物、イソシアネート系化合物、ウレタン系化合物、アルコール系化合物、アミン化合物、カルボン酸系化合物及びエポキシ系化合物の少なくとも1種を含む耐湿摩擦性向上剤を付着させ、熱処理する請求項7又は8記載のデニム製品の製造方法。
【請求項10】
耐湿摩擦性向上剤が、ポリエーテル変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン及びメルカプト変性シリコーンから選ばれるシリコーン系化合物と、イソシアヌレート型、アダクト型、ビュレット型又はアロファネート型の末端イソシアネート基含有イソシアネート化合物又はブロックイソシアネート化合物とを含む請求項9記載のデニム製品の製造方法。

【公開番号】特開2010−144277(P2010−144277A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322098(P2008−322098)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000004374)日清紡ホールディングス株式会社 (370)
【Fターム(参考)】