説明

デバイスネット機器

【課題】 外来ノイズの機器内への侵入を効果的に防止して機器動作やデータ伝送等への悪影響を最小限に抑えることができるようにする。
【解決手段】 デバイスネット機器1とパソコンなどの本体とを信号線5を介して接続するために機器シャーシ3に固定されるIEC準拠の金属製コネクタ4に、信号線5とシャーシ3間をAC結合するコンデンサ13を実装してなるノイズ対策基板10を取り付けることによって、外来ノイズがデバイスネット機器1の内部ケーブル6へ侵入することを抑制するように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば流量を遠隔制御するためにネットワークシステムに接続して用いられるマスフローコントローラ等のように、パソコン等の本体に接続されて該本体から信号線を経て伝送されるデータ信号により所定通りに制御動作すべく構成されているデバイスネット機器に関し、特に、機器の耐ノイズ(EMC)対策技術に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のデバイスネット機器においては、ネットワークシステム全体の危険ラインに対する保護及び機器個々の誤動作防止を図るための通信規格に適合させることから、機器側に1MΩ以上のインピーダンスを介在させる必要がある。その一例を図5に基いて説明すると、ICやトランジスタなどの電子デバイス、抵抗器やコンデンサ等の電子部品、その他の部品類を搭載・固定したプリント基板2がシャーシ3の内部に組込み設置されているデバイスネット機器1は、前記シャーシ3に締付け固定されたデバイスネット規格のコネクタ4(Micro−style M12/5ピンコネクタで、IEC60947−5−2に準拠する。以下、IEC準拠コネクタと略称するものも含む)及び該コネクタ4の一端側に接合された信号線5を介してパソコン等の本体(図示省略する)に接続されている。そして、コネクタ4の他端側とプリント基板2とをケーブル6を介して接続し、かつ、シャーシ3とシールド(ドレイン)線間に1MΩ以上のインピーダンス7を介在することにより、上述した通信規格に適合するネットワークシステムが構築されている。
【0003】
上記のように構築されるネットワークシステムにおいては、本体とデバイスネット機器1とを接続する信号線5を被覆する電磁シールド8をシャーシ3に直接繋ぐことができないために、外来ノイズNが信号線5の非シールド部分を通して直接、機器1のシャーシ3内に侵入して機器1の誤動作の原因になったり、データ伝送、転送におけるデータの誤りを引き起こしたりするという問題がある。
【0004】
このような問題を回避するためのEMC(耐ノイズ)対策として、従来では、図5中に記したように、プリント基板2上に、例えば導通ランド及びコンデンサからなるノイズ対策回路9を形成する手段が採用されていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したような従来のEMC対策では、コネクタ4からプリント基板2までのケーブル6がシャーシ3内に長く配線されるために、そのケーブル6を経てシャーシ3内に取り込まれた外来ノイズ成分Nが機器1内部で漏れ出して電子デバイスや電子部品に干渉し、機器動作やデータ伝送等に悪影響を及ぼすといったように、確実十分なEMC対策効果を発揮させることができないという問題があった。
【0006】
本発明は上述の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、外来ノイズの機器内への侵入を効果的に防止して機器動作やデータ伝送等への悪影響を最小限に抑えることができるデバイスネット機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るデバイスネット機器は、電子デバイス、電子部品を搭載の基板を内蔵するシャーシに固定したコネクタを介して本体に接続されるデバイスネット機器であって、前記コネクタの直近位置もしくはコネクタ内部に、信号線と前記シャーシ間をAC結合させるノイズ対策部品を設けていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
上記のような特徴構成を有する本発明によれば、既述した通信規格への適合性の関係から機器シャーシに直接シールドすることができない状態の信号線が拾う外来ノイズ成分を、コネクタの直近位置もしくはコネクタ内部に設けられ信号線とシャーシ間をAC結合するノイズ対策部品を経てシャーシに逃がすことが可能である。つまり、外来ノイズ成分が機器内の長い配線部に侵入する以前の段階で確実十分なEMC対策効果を発揮させることができる。したがって、機器内の配線部長さの長短に関係なく、外来ノイズ成分が機器内部に取り込まれ、かつ、機器内の配線部から漏れ出して電子デバイスや電子部品に干渉し、機器動作やデータ伝送等に及ぼす悪影響を最小限に抑制することができるという効果を奏する。
【0009】
本発明に係るデバイスネット機器において、前記ノイズ対策部品はコネクタ内部に直接内蔵してもよいが、請求項2に記載のように、前記ノイズ対策部品を実装して別途作製されたノイズ対策基板を前記コネクタに取り付けることにより、そのノイズ対策部品をコネクタの直近位置に設けることが好ましい。この場合は、既存のコネクタを使用している機器にEMC対策を講じるに際して、コネクタ交換という余分なコストをかけることなく、既存のコネクタにノイズ対策基板を取り付けるだけで、上述したとおりの優れたEMC対策効果を簡単に付与することができる。
【0010】
また、本発明において、前記ノイズ対策部品は、コネクタの機器側内端面に密着させて設けることが最も望ましいが、少なくともコネクタの機器側内端面から20mm未満の距離範囲内に設けることにより、所定のEMC対策効果を発揮させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係るデバイスネット機器の概略縦断面図であり、このデバイスネット機器1は、ICやトランジスタなどの電子デバイス、抵抗器やコンデンサ等の電子部品、その他の部品類を搭載・固定したプリント基板2がシャーシ3の内部に組込み設置されているとともに、前記シャーシ3に締付け固定されたIEC準拠の金属製コネクタ4及びこのコネクタ4の一端側に接合された信号線5を介してパソコン等の本体(図示省略する)に接続され、かつ、コネクタ4の他端側とプリント基板2とがシャーシ3内部に配線されたケーブル6を介して接続されており、これによって、デバイスネット機器1を遠隔制御可能なネットワークシステムが構築されている。
【0012】
前記IEC準拠の金属製コネクタ4は、図2に示すように、金属シェル4A内部に5本のコネクタピン4Bが樹脂モールドにより保持されているとともに、前記金属シェル4Aの外周雌ねじ部4Cに前記機器シャーシ3に対する締付け固定用のナット4Dが螺嵌されている。この金属製コネクタ4には、その金属シェル4Aの機器側内端面4aに後述するノイズ対策部品を密着させて信号線5と前記シャーシ3間をAC結合させるノイズ対策基板10が取り付けられている。
【0013】
前記ノイズ対策基板10は前記コネクタ4とは別途に作製されるものであって、その表面中央部には、図3に明示するように、前記コネクタ4のコネクタピン4Bが挿通する十字状の孔11が形成され、この十字条孔11の各孔端部周辺に各コネクタピン4Bに接触し導通状態となるコネクタピン接続部12が形成されているとともに、基板10の外周辺寄り箇所にノイズ対策部品の一例となるコンデンサ13が前記コネクタピン接続部12に導通する状態でハンダ付けにより付設(実装)されている。なお、基板10の表面には、1MΩ以上のインピーダンス7が付設されている。また、斜線挿入部分は導通領域である。
【0014】
一方、前記ノイズ対策基板10の裏面には、図4に明示するように、前記コネクタ4における金属シェル4Aの機器側内端面4aに対応する環状の接続部14が形成されており、この環状接続部14を金属シェル4Aの機器側内端面4aに密着させた状態で該ノイズ対策基板10を複数のスルーホール15を通して前記コネクタ4の金属シェル4Aにハンダ付けすることにより、前記コンデンサ13を介して前記信号線5と前記シャーシ3間がAC結合されている。
【0015】
上記のように構成されたデバイスネット機器1においては、通信規格への適合性の関係から機器シャーシ3に直接シールドすることができない状態におかれる信号線5を通して入力してくる外来ノイズ成分をコネクタ4に取り付けたノイズ対策基板10に実装のコンデンサ13を経てシャーシ3に逃がすことが可能で、外来ノイズ成分が機器1内の長い配線部、すなわち、ケーブル6に侵入する以前の段階で確実十分なEMC対策効果を発揮させることができる。したがって、機器1内のケーブル6の配線長さの長短に関係なく、外来ノイズ成分が機器1内部に取り込まれて電子デバイスや電子部品等に干渉し、その結果として機器動作やデータ伝送等に及ぼす悪影響を最小限に抑制することができる。
【0016】
因みに、本発明者らは、(a)ノイズ対策が施されていない機器、(b)プリント基板上にノイズ対策回路を形成した従来の機器、及び、(c)上記実施の形態で説明したように、コネクタにノイズ対策基板を取り付けた本発明の機器それぞれのEMC対策効果を確認するためのEMC試験を行った。この試験条件は、10V/m、80MHz〜1000MHzであり、供試機器であるマスフローコントローラの流量出力によって、効果を確認した。
【0017】
上記試験の結果は、図6の(a),(b),(c)に示す通りであり、これら結果からも明らかなように、本発明の機器では、外来ノイズ成分が機器内部の電子デバイスや電子部品になんら干渉することがなく、所定どおりの流量出力が得られることを確認できた。また、試験の結果は、図示していないが、ノイズ対策部品をコネクタの機器側内端面から20mm未満の距離範囲内に設ければ、プリント基板上にノイズ対策回路を形成した従来の機器よりも高いEMC対策効果が得られることも確認できた。
【0018】
なお、上記実施の形態では、コンデンサ13をコネクタ4とは別途に作製したノイズ対策基板10に実装し、この基板10をコネクタ4に取り付けることにより、既存のコネクタをそのまま使用しつつ所定のEMC対策が可能としたものについて説明したが、コンデンサ13をコネクタ4に直接内蔵してノイズ対策コネクタを作製し、このノイズ対策コネクタを用いて本体とデバイスネット機器1とを接続した場合も同様なEMC対策効果が得られる。
【0019】
また、ノイズ対策部品としては、コンデンサ以外に、コイルやEMIフィルタなどを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るデバイスネット機器の概略縦断面図である。
【図2】コネクタの拡大側面図である。
【図3】ノイズ対策基板の拡大表面図である。
【図4】ノイズ対策基板の拡大裏面図である。
【図5】従来のデバイスネット機器及び該機器に対するEMC対策状態を示す要部の縦断面図である。
【図6】(a),(b),(c)は試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0021】
1 デバイスネット機器
2 プリント基板
3 シャーシ
4 IEC準拠の金属製コネクタ
5 信号線
10 ノイズ対策基板
13 コンデンサ(ノイズ対策部品)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子デバイス、電子部品を搭載の基板を内蔵するシャーシに固定したコネクタを介して本体に接続されるデバイスネット機器であって、
前記コネクタの直近位置もしくはコネクタ内部に、信号線と前記シャーシ間をAC結合させるノイズ対策部品を設けていることを特徴とするデバイスネット機器。
【請求項2】
前記ノイズ対策部品は、該部品を実装して別途作製されたノイズ対策基板を前記コネクタに取り付けることにより、コネクタの直近位置に設けられている請求項1に記載のデバイスネット機器。
【請求項3】
前記ノイズ対策部品は、前記コネクタの機器側内端面から20mm未満の距離範囲内に設けられている請求項1または2に記載のデバイスネット機器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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