説明

デバイス及びこの製造方法

【課題】形状等のバリエーション展開を容易にし、また、簡易なプロセスで製造することができるデバイス及びこのようなデバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】1又は複数の線状素子1及びこの線状素子1を被覆する絶縁材2を備え、上記各線状素子1が、少なくとも表面が導電性を有する線状芯材5、この線状芯材5を被覆する1又は複数の機能性層4、及びこの機能性層4を被覆する導電層3を備えるデバイスである。上記機能性層がpn接合若しくはpin接合からなるシリコン層、又は有機系電子受容体及び有機系電子供与体からなる有機層であり、光電変換装置として用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1又は複数の線状素子を備えるデバイス及びこのデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素を発生しないクリーンで安全なエネルギー源として、太陽光発電が注目されている。かかる太陽光発電に用いられる装置として、現在シリコン系の太陽電池が実用化されており、各国政府の戦略も手伝って広く普及してきている。シリコン系以外に最近では化合物半導体を活用したCIGS系、CdTe系などの薄膜系太陽電池が新たな市場を築き始めている。また、色素増感太陽電池、有機半導体を活用した有機薄膜太陽電池も試作段階にある。これらの太陽電池(光電変換装置)においては、発電量の時間変動が生じるため、これを平準化する蓄電デバイスも求められている。各家庭レベルにおいては、電気自動車用の蓄電池にその役割を担わせる試みもなされている。そこで、短時間で充放電が可能なキャパシタの開発も活発になされており、容量の大きなリチウムイオンキャパシタなどが注目されている。
【0003】
また、電子部品分野でもキャパシタは注目されており、近年の電子機器の小型軽量化に伴い、電子部品サイズもセンチオーダーからミリオーダーの微少なものとなり、更に微細化を進めて基板に内蔵する試みもなされている。しかし、部品が微細になると高価な半導体プロセスを適用するプロセスが必要となり、また、小片化した部品のハンドリングがしにくくなったり、部品の性能変更に半導体プロセスの変更が伴うといった要因のため、基板内蔵キャパシタの適応は制限がある。
【0004】
一方、発光装置に目を転じると、白熱電球が蛍光灯に置き換わり、更に低消費電力のLEDに置き換わる流れが進行している。LEDの光は直進性が高く、拡散機能を付与して白熱電球の特性に合わせようとする試みがなされる一方で、点発光でなく面発光への取り組みもなされている。その代表格がエレクトロ・ルミネッセンス照明である。エレクトロ・ルミネッセンス照明は上記太陽電池と技術共通点が多いことから平行して開発が進められており、試作段階にある。
【0005】
上述した太陽電池、キャパシタ及びエレクトロ・ルミネッセンス照明等のデバイスは、いずれも平面状の導電体表面に、半導体や誘電体などの機能膜が成膜され、更にこの機能膜の表面に対向電極を設けた平板状層構造を有する(特開2011−035101号公報、特開2011−035205号公報、及び特開2011−034711号公報参照)。従って、これら従来のデバイスの形状には制限がある。また、例えば上記シリコン系太陽電池や、エレクトロ・ルミネッセンス照明は、いずれも大面積の基板に各層を成膜し、貼り合せて製造するため、この製造プロセスにかかる生産設備及びエネルギー負担の解決が必要とされている。さらには、キャパシタにおいては上述のように微細部品の生産プロセスに半導体プロセスを一部適応する制約から、バリエーション展開が難しく、広く応用される段階には至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−035101号公報
【特許文献2】特開2011−035205号公報
【特許文献3】特開2011−034711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、形状等のバリエーション展開を容易にし、また、簡易なプロセスで製造することができるデバイス及びこのようなデバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、
1又は複数の線状素子及びこの線状素子を被覆する絶縁材を備え、
上記各線状素子が、少なくとも表面が導電性を有する線状芯材、この線状芯材を被覆する1又は複数の機能性層、及びこの機能性層を被覆する導電層を備えるデバイスである。
【0009】
当該デバイスによれば、諸機能を発現する素子が線状であるため、デバイスを様々な形状に設計することができ、バリエーション展開を容易にする。また、材料の選定等により曲面形状や柔軟性を有するデバイスとすることもできる。さらに、当該デバイスによれば、線状芯材を中心とした層構造を有する線状素子を用いることで、各素子の表面積が大きく、エネルギー変換等における効率が高い。加えて、この線状素子は層構造の形成が容易であり、また、各素子が線状であることで取扱性に優れるため、当該デバイスは容易に製造することができる。
【0010】
上記機能性層がpn接合若しくはpin接合からなるシリコン層、又は有機系電子受容体及び有機系電子供与体からなる有機層であり、光電変換装置として用いられることが好ましい。当該デバイスは、シリコン系又は有機系光電変換装置として好適に用いることができる。
【0011】
上記線状素子に近接配置される1又は複数の導光体をさらに備えるとよい。当該デバイスは、上記導光体から線状素子に光を照射することができるため、例えば表面から離れた部分に配置される線状素子にも光があたり、光電変換能を高めることができる。
【0012】
当該デバイスは、板状、棒状又はフィルム状の形状を有するとよい。当該デバイスはこのような形状を有することで、設置場所や用途等に応じたデバイスとしてバリエーションの幅を広げることができる。
【0013】
本発明のデバイスの製造方法は、
少なくとも表面が導電性を有する線状芯材に機能性層及び導電層をこの順に被覆させ、線状素子を得る工程、及び
この線状素子を絶縁材で被覆し、板状、棒状又はフィルム状に形成する工程
を有する。当該デバイスの製造方法によれば、線状芯材を中心とした層構造を有する線状素子を容易に得ることができ、効率よくさまざまな形状のデバイスを製造することができる。
【0014】
また、当該デバイスにおいては、上記機能性層が少なくとも2種の半導体層からなり、発光装置として用いられることも好ましい。当該発光装置によれば、線状の発光素子を用い、さらにこの素子が線状芯材を中心とした層構造を有しているため、膜厚バラツキが小さく、輝度のバラツキを低減することができる。
【0015】
さらには、当該デバイスは、上記機能性層が誘電体層であり、キャパシタとして用いられることも好ましい。当該デバイスによれば、このようにキャパシタとしても好適に機能することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明のデバイスは、備える素子が線状芯材を中心とした層構造を有する線状形状であることで、形状等のバリエーション展開を容易にし、例えば曲面状や柔軟性を有するデバイス等とすることもできる。本発明のデバイスは、具体的には太陽電池等の光電変換装置、キャパシタ、エレクトロ・ルミネッセンス照明等の発光装置などとして好適に用いることができる。また、本発明のデバイスの製造方法によれば、このようなデバイスを簡単なプロセスで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のデバイスの一例を示す模式図である。
【図2】シリコン系線状素子の製造方法の一例に用いられるプラズマCVD装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のデバイス及びこの製造方法の実施の形態を詳説する。
本発明のデバイスは、
1又は複数の線状素子及びこの線状素子を被覆する絶縁材を備え、
上記各線状素子が、少なくとも表面が導電性を有する線状芯材、この線状芯材を被覆する1又は複数の機能性層、及びこの機能性層を被覆する導電層を備えるデバイスである。
【0019】
当該デバイスによれば、諸機能を発現する素子が線状であるため、デバイスを様々な形状(板状、棒状、フィルム状等)に設計することができ、バリエーション展開を容易にする。また、材料の選定等により曲面形状や柔軟性を有するデバイスとすることもできる。さらに、当該デバイスによれば、略同心状の層構造を有する線状素子を有することで、各素子の表面積が大きく、エネルギー変換等における効率が高い。加えて、この線状素子は層構造の形成が容易であり、また、各素子が線状であることで取扱性に優れるため、当該デバイスは容易に製造することができる。
【0020】
なお、上記線状素子は、柔軟性を有することが好ましい。柔軟な線状素子を用いることで、この光電変換部の形状を自由に設計することができるため、設置場所の制限がより少なくなる。
【0021】
本発明のデバイスの一例としては、例えば、図1に示すような、線状素子1及び線状素子1を被覆する絶縁材2を備える線状のデバイスを挙げることができる。線状素子1は、少なくとも表面が導電性を有する線状芯材5、線状芯材5を被覆する機能性層4、及び機能性層4を被覆する導電層3を備える。
以下、当該デバイスとして、具体的に(1)光電変換装置、(2)発光装置(エレクトロ・ルミネッセンス照明)及び(3)キャパシタを例に挙げ説明する。
【0022】
(1)光電変換装置
上記光電変換装置は、1又は複数の線状素子と、この線状素子を被覆する絶縁材とを備える。
【0023】
上記線状素子は、少なくとも表面が導電性を有する線状芯材、この線状芯材を被覆する1又は複数の機能性層、及びこの機能性層を被覆する導電層を備える。上記線状素子としては、上記機能性層がpn接合又はpin接合からなるシリコン層であるシリコン系線状素子や、上記機能層が有機系電子受容体及び有機系電子供与体からなる有機層である有機薄膜系線状素子を用いることができる。当該光電変換装置は、上記シリコン系線状素子を用いた場合はシリコン系太陽電池として、有機薄膜系線状素子を用いた場合は有機系太陽電池として好適に用いることができる。なお、これらの線状素子は、各素子でデバイスとしての機能が完結していることから、要求性能に応じて配置、配線して構成することができ、設計自由度を高めることなどができる。
【0024】
(1−1)シリコン系線状素子
シリコン系線状素子は、線状芯材、この線状芯材を被覆するシリコン層(機能性層)、及びこの機能性層を被覆する導電層を備える。
【0025】
(線状芯材)
上記線状芯材は、少なくとも表面が導電性を有する。この線状芯材としては、シリコン層との接着性が良好であり、かつ、抵抗が10−6Ωm以下であるものが好ましく、例えば、ステンレス細線、チタン細線、チタン合金(Pdを微量含むASTM GRADE7など)細線、ニッケル合金(ハステロイC−276など)細線、白金細線、炭素線、アルミニウム線、銅線等を挙げることができる。また、ガラスファイバなど絶縁物上に導体を被覆成膜して10−6Ωm以下となるように予め加工した細線であってもよい。これらの中でも、ステンレス細線、チタン細線、アルミニウム細線が入手性の観点からも好ましく、特にSUS304、SUS316、アルミニウムの細線が好ましい。
【0026】
線状芯材の外径としては特に制限ないが、被覆されるシリコン層の面積を広くする目的から細いほうが好ましく0.1mm以下、好ましくは0.05mm以下の細線が好ましい。なお、この線状芯材の外径の下限としては、耐久性等を考慮すると、例えば10μmとすることができる。
【0027】
また、線状芯材表面はサンドブラスト法などにより凹凸加工がされていていることが好ましい。表面に凹凸加工が施されていることで、シリコン層との密着性が向上すると共に、表面積増大により発電効率が向上する。
【0028】
(シリコン層)
上記シリコン層は、線状芯材を被覆する。また、シリコン層は、pn接合又はpin接合からなる。
【0029】
このシリコン層の形成は、シリコン系ガスを用いたCVDで行われることが一般的であり、例えば、モノシランガスを通気した管内で加熱した線状芯材上に堆積成長させることができる。上記モノシランガス(SiH)は、半導体グレードとなる99.9999%以上の高純度品質のガスを用い、必要に応じてPH、B、GeH、Hなどのガスを添加して使用することができる。SiHにBを添加すればp型シリコン膜が、SiHにPHを添加すればn型シリコン膜が得られ、p型n型の順に積層したり、間にi型層(SiH単独もしくはSiHにGeHを添加)を挟んでp型i型n型の順に積層して電極細線上に被覆成膜される。これら添加ガスの純度も99.9999%以上の高純度品質であることが好ましい。
【0030】
また、シリコン層は、特許第3981528号公報に記載されたシクロペンタシラン類の塗布膜を焼成したものであってもよく、ボラヘキサプリズマン添加によりp型に、ホスホシクロペンタシラン添加によりn型シリコン膜を得ることができる。
【0031】
シリコン層の厚みとしては、特に限定されないが、密着性等の点から線状芯材の外径より薄いことが望ましく、通常は10Åから10,000Åである。この厚みが10,000Åを越えると素子を曲げた際に膜が剥がれ落ちるおそれがあり好ましくない。また、シリコン層はp型とn型との2層積層(pn接合)、又はp型、i型及びn型の3層積層(pin接合)であるが、3層積層の場合、i型層はp型層及びn型層より厚い方が好ましい。
【0032】
(導電層)
上記導電層としては、導電性を有する材料から形成され、透明である材料から形成されるものが好ましい。この導電層を形成する材料としては、ITO、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウムと酸化亜鉛との混合物(IZO)、酸化亜鉛にアルミナドープしたAZOや酸化亜鉛などが挙げられ、FTO及び酸化亜鉛がコスト、成膜プロセスが簡易であることから好ましい。
【0033】
導電層の成膜方法としては、スパッタリングなど真空プロセスでの形成の他、大気圧CVDでも可能である。特にZnOではペースト塗布、焼成でも可能である他、特表2010−502558号公報に記載された大気圧CVDや、Jpn.J.Appl.Phys.24(1985)pp.1607−1610に記載されたMOCVDでの成膜も可能であり、シリコン層の成膜に連続した被覆も容易である。
【0034】
導電層の厚みとしては、特に限定されないが、0.1μm以上10μm以下が好ましく、0.2μm以上4μm以下がさらに好ましい。厚みが上記範囲外の場合、剥離しやすくなるおそれがある。
【0035】
また、この導電層の抵抗率としては特に限定されないが、例えば10−2Ω・cm以下が好ましい。
【0036】
(シリコン系線状素子の製造方法)
上記シリコン系線状素子は、例えば以下の方法で好適に製造することができる。
【0037】
(線状芯材へのシリコン層の被覆)
上記線状芯材は、アルカリ電解脱脂、硝酸洗浄、純粋洗浄の前洗浄処理を行い、予め表面を清浄にしておく。また、表面は平滑でなくてもよく、サンドブラスト処理などで凹凸を付与してもよい。
【0038】
被覆する方法はモノシランガスを通気して熱CVDやプラズマCVD、MATERIAL STAGE,5巻,12号,pp14〜20(2006)に示された大気圧プラズマCVDにて被覆する方法や、特開2008−143782号公報に示されたようにシクロペンタシラン化合物などの塗布型シリコン化合物を塗布、焼成する方法から選ぶことができる。一般的なプラズマCVD法を用いたPIN膜を例に説明する。
【0039】
図2に示すプラズマCVD装置内に、所定の長さに切断した線状芯材100を治具101に固定する。治具101は、線状芯材100を並べて固定するための溝が施された固定具であり、ヒーターからの熱を線状芯材100に伝熱する機能も備えている。また、図2のプラズマCVD装置は、ヒーター102、原料ガス導入管103、原料ガスノズル104、排気管105、RF電極106、真空チャンバー107を備えている。このような構造により低温プラズマ108が形成される。なお、線状芯材100の抵抗値が適当であれば、線状芯材100に直接通電して線状芯材100そのものをヒーターとして加熱してもよい。
【0040】
まず、プラズマCVD装置の真空チャンバー内を1×10−6Torrにパージした後、上記治具101の両端及び裏面から伝熱ヒータで加熱して線状芯材100を所定温度に保つと共に、上記原料ガス導入管103から原料ガス導入する。これにより、加熱した線状芯材100表面にシリコン膜が堆積する。具体的には、原料ガスとしてBガスが1%混合されたSiHガスを圧力:0.2Torr、流量:約25sccmで導入し、電力:10Wの条件で低温プラズマ108を線状芯材100に接触させると、その外周面に膜厚約300Åのp型アモルファスシリコンが成膜する。次いで、導入する原料ガスを100%SiHガスに切り換えて同様に操作することで先のp型アモルファスシリコン上に約0.5μmのi型アモルファスシリコン堆積される。次に、原料ガスをPHが0.1%混合されたSiH:H=50:1のガスに切り換え、圧力0.07Torrに調節して導入し、電力50Wの条件で低温プラズマ108を接触させるとi型アモルファスシリコン層上に膜厚約200Åのn型微結晶シリコン層が成膜できる。
【0041】
(導電層の被覆)
導電層形成は、各種CVD法により、シリコン層の成膜に引き続き、同じ装置で原料ガス種、条件変更で行うことができる。例えば、酸化亜鉛の場合、細線の温度を300℃とし、ジエチル亜鉛とエタノールガスとを導入したMOCVD法(Jpn.J.Appl.Phys.24(1985)pp.1607−1610)、線状芯材100の温度を約550℃とし、6700Paの環境下にZn(acac)の昇華ガス、酸素を25sccm、225sccm導入して成膜するミストCVD法で成膜が可能である。
【0042】
このようにシリコン層と導電層との被覆成膜方法は、連続して行える方法を選択する方が装置が複雑にならずにコスト面でも有利である。
【0043】
その他、塗布法においては奥野製薬社製;ナノディスパーITO(SP2)や、住友大阪セメント社製;ITOナノペーストなどITOナノ粒子ペーストを用いてシリコン膜上に塗布して焼成して成膜することも可能である。
【0044】
上記プロセスを経てシリコン系線状素子が完成する。上記プロセスにおいて留意すべき点としては、各種層形成のプロセス温度と、各膜種の膨張係数との関係がある。高温ほど熱膨張率差の影響を受けやすく、層材料間の差が大きければ層間で剥がれが生じたり、層間に接合欠陥が生じるため、後の工程ほど低温で処理することが好ましい。
【0045】
(1−2)有機薄膜系線状素子
有機薄膜系線状素子は、線状芯材、この線状芯材を被覆する有機系電子受容体及び有機系電子供与体(有機層)、並びにこの機能性層を被覆する導電層を備える。上記線状芯材及び導電層は、上述したシリコン系線状素子に備わるものと同様のものを用いることができる。
【0046】
なお、有機系電子受容体及び有機系電子供与体は層構造になっていても、いなくてもよい。また、有機層が層構造となっている場合、有機系電子受容体層と有機系電子供与体層との積層順は問わない。
【0047】
この有機薄膜系線状素子における有機層(機能性層)の厚みとしては、特に限定されないが、例えば5nm以上1μm以下とすることができる。
【0048】
なお、この機能性層の隣接面(表面又は裏面)には、正孔輸送層を設けることもできる。この正孔輸送層としては、PEDOT・PSS(Poly(3,4−ethylenedioxythiophene)poly(styrenesulfonate))膜等を用いることができる。
【0049】
(有機系電子受容体)
有機系電子受容体を形成する電子受容材料としては、電子受容体としての機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、湿式塗工法により成膜可能なものであることが好ましい。
【0050】
電子受容性材料としては、例えば、ポリフェニレンビニレン、ポリフルオレン、これらの誘導体、これらの共重合体等の高分子材料、カーボンナノチューブ(CNT)、フェニルC61−ブチリック酸メチルエスタ(PCBM)等のフラーレン誘導体、シアノ(CN)基又はトリフルオロメチル(CF)基含有ポリマー、及びこれらの(CF)基置換ポリマー等を用いることができる。これらのうち、フラーレン誘導体としては特開2009−23982号公報、特開2009−196965号公報、特開2009−260045号公報、特開2010−135665号公報、J.Am.Chem.Soc.,130巻,15429ページ(2009)に記載されたフラーレン誘導体も好適に用いることができる。これらの中でも、PCBM、ビス(ジメチルフェニルシリルメチル)60フラーレン(SIMEF)が特に好ましい。
【0051】
(有機系電子供与体)
有機系電子供与体を形成する電子供与性材料としては、電子供与体としての機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、湿式塗工法により成膜可能なものであることが好ましい。中でも電子供与性の導電性高分子材料であることが好ましい。導電性高分子は、いわゆるπ共役高分子であり、ヘテロ原子を含む炭素−炭素二重結合又は三重結合が、単結合と交互に連なったπ共役系から成り立っており、半導体的性質を示すものである。また、導電性高分子材料は、導電性高分子材料を溶媒に溶解又は分散させた塗工液を用いることで湿式塗工法により容易に成膜可能であることから、大面積の有機薄膜太陽電池を高価な設備を必要とせず低コストで製造できるという利点がある。
【0052】
上記電子供与性材料としては、例えば、ベンゾポルフィリン(BP)、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリシラン、ポリカルバゾール、ポリビニルカルバゾール、ポルフィリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、これらの誘導体、これらの共重合体、又は、フタロシアニン含有ポリマー、カルバゾール含有ポリマー、有機金属ポリマー等の高分子材料が用いられる。
【0053】
これらの中でも、チオフェン−フルオレン共重合体、ポリアルキルチオフェン、フェニレンエチニレン−フェニレンビニレン共重合体、フェニレンエチニレン−チオフェン共重合体、フェニレンエチニレン−フルオレン共重合体、フルオレン−フェニレンビニレン共重合体、チオフェン−フェニレンビニレン共重合体等が好ましく用いられる。これらの電子供与性材料は、多くの電子受容性材料に対して、最低非占有分子軌道(LUMO)のエネルギー準位差が適切なヘテロ接合を形成することが可能である。
【0054】
なお、有機薄膜系の線状素子としては、上記とは逆の層構造とすることもできる。すなわち、ガラスファイバ等の透明な絶縁性の線状芯材と、この線状芯材を被覆する透明導電層と、この透明導電層を被覆する機能性層(有機層)と、この機能性層を被覆する第二の導電層とを有する線状素子である。この場合、線状素子の内部にガラスファイバ経由の入射光で発電する、内部照射素子として好適に用いることができる。
【0055】
(有機薄膜系線状素子の製造方法)
上記有機薄膜系線状素子は、例えば以下の方法で好適に製造することができる。
【0056】
(線状芯材への有機層の被覆)
線状芯材は、アルカリ電解脱脂、硝酸洗浄、純粋洗浄等の前洗浄処理を行い、予め表面を清浄にしておく。また、線状芯材表面は平滑でなくてもよく、サンドブラスト処理などで凹凸を付与してもよい。さらには、特開2010−186913号公報に記載されているように、励起子の失活防止層が予め細線上に形成されたものであっても良い。
【0057】
この線状芯材を有機系電子受容体及び有機系電子供与体の各材料を含む塗布溶液にディップコートにて成膜して乾燥し、有機層を形成する。なお、上記有機系電子受容体と有機系電子供与体との積層順序は問わない。さらには、予め両材料を混合した塗布液で一括して混合膜を成膜してもよい。
【0058】
2層構造とする場合は、平面ヘテロ型接合、混合膜構造とする場合は、バルクヘテロ型接合を形成する。電子受容体材料及び電子供与体材料の組み合わせによっては、バルクヘテロ型接合の方が優れた発電能力を発現することがある。例えば、J.Am.Chem.Soc.,131巻,16048ページ(2009)に記載のベンゾポルフィリンと、SIMEFとの組合せがそれである。
【0059】
この機能層の表面には、正孔輸送層としてPEDOT・PSS(Poly(3,4−ethylenedioxythiophene)poly(styrenesulfonate))膜を同じくディップコートにて成膜する。
【0060】
(導電層の被覆)
上記機能性層の表面に導電層を被覆する。この際、機能性層が有機物で耐熱性が低いため、各種CVD法での成膜は困難であり、塗布法にて行うことが好ましい。塗布法においては奥野製薬社製;ナノディスパーITO(SP2)や、住友大阪セメント社製;ITOナノペーストなどのITOナノ粒子ペーストを用い、機能性層上に塗布して成膜することができる。
【0061】
上記プロセスを経て有機薄膜系線状素子が完成する。上記プロセスにおいて留意すべき点としては、シリコン系線状素子の製造方法と同様、各種層形成のプロセス温度と、各膜種の膨張係数との関係がある。同様の理由から、後の工程ほど低温で処理することが好ましい。
【0062】
(1−3)集合体
上記光電変換装置としては、複数の上記線状素子が並列及び/又は直列に配線され、各線状素子が絶縁材で被覆された集合体を好適に用いることができる。なお、1の線状素子が絶縁材で被覆されたものも光電変換装置として機能する。
【0063】
上記集合体の形状としては、素子が線状であることを利用し、複数の線状素子が並行に配置され、例えば2枚のフィルム状の絶縁材でラミネートされたシート状又は板状や、複数の線状素子が絶縁材を介して束ねられた円柱等の柱形状(棒状)とすることが好適である。これらの集合体は、絶縁材として樹脂等を用いることで柔軟性を有していてもよいし、絶縁材としてガラス等を用いることで、柔軟性を有していなくてもよい。
【0064】
この集合体において、各線状素子は絶縁材によりそれぞれ被覆され、絶縁されている。この絶縁材は、各線状素子を外部環境から保護する保護バリアとしても機能する。この絶縁材は透明であることが好ましい。透明な絶縁材を用いることで、各線状素子の発電能を最大限利用することができ、光電変換効率を高めることができる。また、この絶縁材は導光部から導光された光をモジュール内に誘導・拡散する光拡散機能を有することが好ましい。
【0065】
さらに、集合体が柱形状(棒状)であり、かつ、透明な絶縁材を用いることが好ましい。この場合、光が絶縁材を介して各線状素子に効率的に照射され、光電変換効率を高めることができる。また、各線状素子が密に配設されるため、照射効率が高い。一方、この集合体がフィルム状であることも、デバイスに柔軟性を付与することができる点から好ましく、板状であることも形状を安定させることができる点から好ましい。
【0066】
(絶縁材)
上記絶縁材としては、上記機能を発揮するために、透湿性が低く、透明で光劣化しにくいものが好ましい。このような材料としては、鉛フリー低融点ガラス等のガラスや、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂などの包装用材料が挙げられる。屋外用途など耐久性の高い要求には鉛フリー低融点ガラス等のガラスが好ましいが、室内用途などでは有機系の包装材料も用いることができる。鉛フリー低融点ガラス材料としては、ガラスフリットを分散させたペースト材料や、このペーストをPETなどのフィルム基材に塗工したシートが挙げられる。
【0067】
上記線状素子をこれらシートに挟んで整列、成形し、焼成又は熱ラミネートすることで集合体を形成することができる。
【0068】
また、絶縁材としてのラミネートフィルムは、防湿性に優れた包装材料用途の物が好ましく、三フッ化塩化エチレン樹脂(PCTFE)を原料に用いたサンエー化研製テクニフィルムや、特開2010−251117号公報、特許第4475084号公報に記載された透明封止材料などが挙げられる他、これら材料とPVC、PP、PE、EVOH等を積層させたフィルム材料も好適に用いることができる。更には、水分補足性を有する特開2010−45015号公報、特開2010−45016号公報、特許第440371号公報に示された材料を透明性が損なわれない範囲で組み合わせて用いてもよい。
【0069】
(光拡散体)
また、この集合体において、線状素子に近接配置される1又は複数の導光体をさらに備えるとよい。この光拡散体は、外から導いた光を集合体内で出射し、機能性層に光を照射する。光拡散体は、例えば、線状素子に平行して配置されることができ、線状素子に垂直に光入射させると同時に線状素子の長さ方向に光を直進導光する機能を有することが好ましい。この光拡散体はファイバ状で用いられてもよいし、上記絶縁材と兼用されていてもよい。
【0070】
例えば、集合体内に各線状素子と並行方向に設けられる複数の光ファイバを光拡散体として配置することが好ましい。この光ファイバは、例えば集合体が柱状の場合、底面に接続される後述する導光部からの光をモジュール内部まで効率的に導くことができる。
【0071】
上記光拡散体としては、例えば石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、無アルカリガラスを紡糸したガラスファイバや、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の低極性樹脂を紡糸したガラスファイバや、その他、光を進行させる方向に向かって屈折率が傾斜変化させてなるもの、屈折率、透明性が大きく異なる粒子、フィラーの混入濃度が長さ方向に傾斜変化させてなるものが挙げられる。このような光拡散体は、例えば、チョップドストランド(ガラス短繊維)を配合した高屈折率透明樹脂組成物をシート状に押し出し成形することでチョップドストランドが一方向に配向させたシート状の光拡散体として得ることができる。そして、このシート(グリーンシート)の配向方向に合わせて線状素子を並べてラミネート固定することで光拡散体を備えた線状素子の集合体を得ることができる。
【0072】
(集合体の製造方法)
この集合体は、複数の線状素子を絶縁材としてのシートで挟み(被覆し)、シート状又は筒状などの形状に熱ラミネートなどの方法で成形することで製造することができる。なお、この集合体が例えば線状の光拡散体を有する場合は、複数の線状素子及び光拡散体を平面に並行に配置し、上記同様、シートで挟み熱ラミネートすることなどによって製造することができる。
【0073】
(1−4)モジュール
上記光電変換装置としては、一又は複数の上記集合体をモジュールとして用いることもできる。上記モジュールが複数の集合体を用いる場合には、複数の集合体が並列及び/又は直列に配線されたモジュールとして好適に用いることができる。
【0074】
上記モジュールの形状としては、上記線状素子の集合体が柱形状の集合体である場合、複数の線状素子が並行に配置され、例えば2枚のフィルム状の絶縁材でラミネートされたシート状モジュールや、複数の線状素子の集合体を絶縁材を介して束ねて円柱等とした柱形状モジュールが好適である。これらの絶縁材としては、上述した絶縁材を挙げることができる。
【0075】
さらに、モジュールが柱形状(棒状)であり、かつ、光拡散体としての機能を兼ねる透明な絶縁材を用いることが好ましい。この場合、後述するユニットの導光部としての光ファイバの一端を、このモジュールの底面と接続することで、導光された光が各線状素子に効率的に照射され、光電変換効率を高めることができる。また、各線状素子が密に配設されるため、照射効率が高い。なお、導光部としての光ファイバの一端は、上記モジュール内部に組み込まれていてもよい。この光拡散体としては、線状素子に平行して配置され、光を線状素子に垂直に入射させると同時に線状素子の長さ方向に光を直進導光する機能を有することが好ましく、屈折率の傾斜分布を有する材料が好適に用いられる。
【0076】
(モジュールの製造方法)
このモジュールは、複数の線状素子等からなる集合体をシート状又は筒状などの形状に熱ラミネートなどの方法で成形することで製造することができる。モジュールを構成する線状素子の数、配線方式、形状は線状素子の特性に応じて、用途毎に適宜調整することができる。
【0077】
例えば、発電電圧が0.7Vの線状素子で140V、約2kWの発電モジュールを作成する場合には、線状素子200ヶを直列配線した線状素子の集合体を15ヶ並列に配線し、合計で線状素子3,000ヶで構成することができる。このモジュールの具体的製造手順としては以下のとおりである。200ヶの線状素子を上記グリーンシート上に並行に、かつ電気的に直列に接続して並べ、もう一枚のグリーンシートでサンドイッチする。この際、各線状素子間に石英ファイバ等(光拡散体)をさらに配置することもできる。このサンドイッチ状の構造体を線状素子の軸方向を中心として円柱状にすることで円柱状の集合体を得る。この円柱状の集合体を加圧圧縮しながら加熱成形する。このようにして出来上がったロッド状の集合体を15ヶ並列に配線すれば所望の光電変換装置(モジュール)となる。このとき、線状素子の間は透明な光拡散体で隔てられており、これが絶縁材かつ外部との隔壁材として機能する。更には光拡散体の光制御機能によって線状素子に効率的に光が届き、ロッド内の200ヶの線状素子それぞれが受光して発電することができるため、優れた発電効率を有する。
【0078】
また、同線状素子で約3V、約200Wの発電装置を携帯機器用に用いる場合には、直列に接続した線状素子4ヶを1セットとしてこれを71ヶ並列接続すればよい。これを平面に並べてEVAフィルム圧着してシート状のモジュールとすることで巻き取れる光電変換部を得ることができる。
【0079】
なお、有機薄膜系線状素子を用いる場合は、耐熱性がシリコン系と比して劣るため、有機ラミネートフィルムを用いた成形が好ましい。
【0080】
(ユニット)
このモジュール(光電変換装置)は、導光部を介して、採光部と接続したユニットとして用いることもできる。このユニットは、上記光電変換装置に加え、採光部及びこの採光部から採り入れられる光を光電変換装置へ導く導光部を備えるため、光電変換装置に直接光を照射する必要がない。従って、光電変換装置を採光部から離れた任意の場所(例えば、屋内、壁内、地下等)に設置することができるため、設置場所の制限が解消される。また、採光部も光電変換部と切り離されているため、軽量化され、設置場所の多様性が広がる。
【0081】
(採光部)
上記採光部は、太陽光等の光を採り入れ、必要に応じて集光し、この光を導光部へ導光するものである。この採光部としては、公知の例えば採光シート、採光板等を用いることができるが、様々な形状を採ることができる採光シートを用いることが好ましい。採光シートを用いることで、例えば湾曲した屋根に沿って、採光部を設置することができるなど、採光部の設置場所の多様性が高まる。また、比較的軽量で、かつ、柔軟性を有する採光シートを用いることで、設置、取りはずし、移動等を容易に行うことも可能となる。
【0082】
上記採光シートとしては、例えば、特開2005−019587号公報に記載の特定構造の入射光制御板と導光板を組み合わせたもの、特開平10−039118号公報及び特開平10−039770号公報に記載のマイクロレンズを有するシート、特許第4155361号公報に記載の発砲層を有するシート、特開2009−139418号公報及び特開2009−229581号公報に記載の特定形状に加工された層を有するシートなどが挙げられ、いずれも好適に用いることができる。
【0083】
なお、この採光シート等採光部は固定式でもよいが、移動式とすることもできる。移動式の採光部とすることで、設置場所の自由度をさらに高めることができる。
【0084】
(導光部)
上記導光部は、上記採光部から採り入れられた光を光電変換装置へ導くものである。上記導光部としては、透明性を有し、光を光電変換部へ導くことができるものであれば特に限定されず、柔軟性の無い導光板や、導光棒等を用いることもできるが、柔軟性を有するものを用いることが好ましく、光ファイバを用いることがさらに好ましい。
【0085】
導光部として柔軟なもの、より好ましくは光ファイバを用いることで、採光部と光電変換部との相対位置を自由に変更することができる。従って、この場合、採光部及び光電変換部の設置場所の選択性を広げることができる。
【0086】
上記光ファイバとしては、光通信に用いられるコア及びクラッドの二重構造からなる光ファイバ素線の他、石英ガラスやパイレックス(登録商標)、無アルカリガラスを紡糸したファイバ、PMMAなど透明樹脂からなるファイバなども用いることができる。
【0087】
この導光部の長さとしては、例えば0.1m以上300m以下であり、0.2m以上100m以下が好ましい。導光部の長さが上記下限未満の場合は、採光部及び光電変換部の設置場所及びこれらの相対的な位置の変更が制限されやすくなる。逆に、導光部の長さが上記上限を超えると、導光部の取扱性が低下したり、光の損失量が多くなるなどの不都合が生じる。
【0088】
導光部の光透過率(589.6nm)としては、1m当り40%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは95%以上である。導光部の光透過率を高めることで、光の損失量を低減し、効率的な太陽光発電を行うことができる。
【0089】
なお、上記導光部と採光部との接続部位及び/又は上記導光部と光電変換装置との接続部位には、特定波長の光を除去するフィルター等の機構を配置してもよい。光電変換に適さない波長の光成分(例えば紫外線や赤外線等)を除去することで、光電変換部における変換効率の向上や、劣化の抑制を図ることができる。
【0090】
(2)発光装置(エレクトロ・ルミネッセンス照明)
上記発光装置は、1又は複数の線状素子と、この線状素子を被覆する絶縁材とを備える。上記線状素子は、少なくとも表面が導電性を有する線状芯材、この線状芯材を被覆する1又は複数の機能性層、及びこの機能性層を被覆する導電層を備える。発光装置において、上記機能層は、少なくとも2種の半導体層からなる。発光装置における線状素子の機能層以外の部分は、上述した光電変換装置の線状素子のものと同様である。
【0091】
発光装置に用いられる線状素子の具体的層構造としては、例えば以下のような構造が挙げられる。
(i)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(ii)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(iii)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
(v)陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
なお、陽極又は陰極が線状芯材又は導電層であり、その他の層が機能層である。当該発光装置における線状素子においては、上記いずれの層構成であっても良い。ここでは、一般的な(ii)の構成について詳述する。
【0092】
(電子輸送層)
上記電子輸送層は、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
【0093】
この電子輸送層に用いられる材料(以下、電子輸送材料とも言う)の例としては、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。更に、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引性基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。更に、これらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0094】
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えばトリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq3)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。
【0095】
その他、メタルフリー又はメタルフタロシアニン、さらには、それらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。または、発光層の材料として下記に例示するジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
【0096】
この電子輸送層は、上記化合物を例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の公知の薄膜形成法により製膜して形成することができる。
【0097】
電子輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5nm〜200nmである。電子輸送層は、上記材料の1種又は2種以上からなる一層構造であってもよい。
【0098】
(発光層)
上記発光層は、電子輸送層及び正孔輸送層から注入されてくる電子及び正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であっても良い。
【0099】
発光層に使用される材料(以下、発光材料とも言う)は、蛍光又はリン光を発する有機化合物又は錯体であることが好ましく、有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができる。このような発光材料は、主に有機化合物であり、所望の色調により、例えば、Macromol.Synth.,125巻,17〜25頁に記載の化合物等を用いることができるが、燐光性化合物が好ましい。
【0100】
上記発光材料として用いられる上記化合物は、発光性能の他に、正孔輸送機能や電子輸送機能を併せ持っていても良く、正孔輸送材料や電子輸送材料の殆どが、発光材料としても使用できる。
【0101】
その他の発光材料として、p−ポリフェニレンビニレンやポリフルオレンのような高分子材料でも良く、さらに上記発光材料を高分子鎖に導入した、又は前記発光材料を高分子の主鎖とした高分子材料を使用しても良い。
【0102】
上記発光層は、これらの発光材料一種又は二種以上からなる一層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0103】
発光層としての膜厚は、特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲で選ばれる。
【0104】
上記発光層は、上記化合物を例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の薄膜化法により製膜して形成することができる。
【0105】
また、上記発光層は、特開昭57−51781号公報に記載されているように、樹脂などの結着材と共に上記発光材料を溶剤に溶かして溶液とした後、これをスピンコート法などにより薄膜化して形成することもできる。このようにして形成された発光層の膜厚についても、特に制限はなく、状況に応じて適宜選択することができるが、通常は5nm〜5μmの範囲である。
【0106】
上記発光層を構成する材料が2種以上であるとき、主成分をホスト、その他の成分をドーパントという。以下、ホスト(ホスト化合物)及びドーパント(ドーパント化合物)について、それぞれ説明する。
【0107】
上記ホスト化合物としては、特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報、特許460028号公報、同4590825号公報等で表される公知のホスト化合物を用いることができ、これらを複数種併用して用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、高効率化することができる。これらの公知のホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、かつ、発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。
【0108】
更には、発光層のホスト化合物は、有機化合物又は錯体であることが好ましく、好ましくは蛍光極大波長が415nm以下である化合物がよい。ホスト化合物の極大波長を415nm以下にすることによりドーパントの発光において、特にBGR発光が可能となる。つまり蛍光極大波長を415nm以下にすることにより、通常のπ共役蛍光又は燐光材料において、π−π吸収を420nm以下に有するエネルギー移動型のドーパント発光が可能である。また、415nm以下の蛍光を有することから非常にワイドエネルギーギャップ(イオン化ポテンシャル−電子親和力、HOMO−LUMO)であるので、キャリアトラップ型にも有利に働く。
【0109】
上記ドーパントは、蛍光を発光する蛍光性ドーパントと、リン光を発光するリン光性ドーパントとを挙げることができる。
【0110】
上記蛍光性ドーパントとしては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、希土類錯体系蛍光体、その他公知の蛍光性化合物等が挙げられる。
【0111】
上記リン光性ドーパントとしては、例えば、特開2001−247859号公報に挙げられるイリジウム錯体、国際公開第00/70,655号パンフレット16〜18ページに挙げられるような式で表される、例えば、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム等やオスミウム錯体、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金錯体のような白金錯体もドーパントとして挙げられる。ドーパントとしてこのようなリン光性化合物を用いることにより、内部量子効率の高い発光有機EL素子を実現できる。リン光性化合物としては、好ましくは元素周期表で8属、9属、10属に属するいずれか1種の金属を含有する錯体系化合物であり、更に好ましくは、イリジウム化合物、オスミウム化合物、または白金化合物(白金錯体系化合物)、希土類錯体であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
【0112】
これらの化合物は、例えば、Inorg.Chem.40巻、1704〜1711に記載の方法等により合成できる。
【0113】
この他にも、例えば、J.Am.Chem.Soc.123巻4304〜4312頁(2001年)、国際公開第00/70655号パンフレット、同第02/15645号パンフレット、特開2001−247859号公報、同2001−345183号公報、同2002−117978号公報、同2002−170684号公報、同2002−203678号公報、同2002−235076号公報、同2002−302671号公報、同2002−324679号公報、同2002−332291号公報、同2002−332292号公報、同2002−338588号公報、同2006-131796号公報、同2003-221484号公報等に記載の一般式であげられるイリジウム錯体、あるいは、具体的例として挙げられるイリジウム錯体、特開2002−8860号公報記載の式(IV)で表されるイリジウム錯体等が挙げられる。
【0114】
当該デバイス(エレクトロ・ルミネッセンス照明)では、ドーパントとして、リン光性化合物を用いる事が好ましく、溶液中のリン光量子収率が25℃において0.001以上であることが好ましく、更に好ましくは0.01以上であり、特に好ましくは0.1以上である。なお、リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398ページ(1992年版、丸善)に記載の方法で測定することが出来る。
【0115】
また、主成分であるホスト化合物に対するドーパントの混合比は好ましくは質量で0.1質量%〜15質量%である。
【0116】
(正孔輸送層)
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する材料からなる層である。この正孔輸送層には、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も含まれる。正孔輸送層は単層又は複数層設けることができる。
【0117】
正孔輸送層を形成する材料(正孔輸送材料)としては、有機物、無機物のいずれであってもよく、他に、例えばトリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
【0118】
正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第三級アミン化合物を用いることが好ましい。芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには、米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
【0119】
さらに、正孔輸送材料としては、特開2001−126875号公報に記載のように、これらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、p型−Si,p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料として使用することができる。
【0120】
また、正孔輸送材料は415nm以下に蛍光極大波長を有することが好ましい。すなわち、正孔輸送材料は、正孔輸送能を有しつつかつ、発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高Tgである化合物が好ましい。
【0121】
この正孔輸送層は、上記正孔輸送材料を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。
【0122】
正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5〜5000nm程度である。また、この正孔輸送層は、上記材料の一種又は二種以上からなる一層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。
【0123】
(線状素子の製造方法)
上記線状素子は、例えば上記線状芯材に、電子輸送層、発光層、正孔輸送層及び導電層(透明電極)をこの順に順次被覆成膜することにより製造することができる。
【0124】
電子輸送層、発光層及び正孔輸送層の各有機化合物薄膜の成膜方法としては、蒸着法、ウェットプロセス(ディップコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法)等があるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが生成しにくい等の点から、真空蒸着法、ディップコート法、インクジェット法、印刷法が特に好ましい。さらに層ごとに異なる成膜法を適用してもよい。
【0125】
成膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は、使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50℃〜450℃、真空度10−6Pa〜10−2Pa、蒸着速度0.01nm/秒〜50nm/秒、基板温度−50℃〜300℃であり、膜厚は0.1nm〜5μm、好ましくは5nm〜200nmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
【0126】
これらの機能層を形成後、その上に導電層(透明電極)を形成するが、機能膜が有機物で耐熱性が低く、各種CVD法での成膜は困難であるため、ウェットプロセスにて行うことが好ましい。ウェットプロセスにおいては奥野製薬社製;ナノディスパーITO(SP2)や、住友大阪セメント社製;ITOナノペーストなどITOナノ粒子ペーストを用いて機能膜上に塗布して成膜することが可能である。
【0127】
このようにして得られた線状素子に、直流電圧を印加する場合には、透明電極を陽極+、細線を陰極−の極性として電圧2〜40V程度を印加すると、発光が観測できる。また交流電圧を印加してもよい。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
【0128】
(発光装置(モジュール)の製造方法)
上記発光装置は、機能性層の種類を選ぶことにより、赤、青、緑の三原色に発光させることができ、例えば赤に対応する線状素子のみを束ねれば赤色の照明装置となり、赤、青、緑の3色を混合して束ねれば白色の発光装置が構成できる。1つの単位発光ユニットは細い線状素子であることからこれらは様々な形状に並べたり、束ねたりすることで様々な形状の照明装置を作成することができる。この発光装置(モジュール)において、線状素子同士を隔て、互いを接着し、各々の素子が発する光を透過する絶縁材が各線状素子に被覆されている。
【0129】
上記絶縁材としては、光電変換装置において上述のラミネート材料が好適に用いることができる。また、予め線状素子の導電層(透明電極)の外層に、絶縁材として透明絶縁膜を形成しておいても良い。
【0130】
透明絶縁膜材としては、特開2010−45015号公報、2010−45016号公報、特許−440371号公報に示された水分補足性を有する材料や、特開2010−251117号公報、特許−4475084号公報に示された透明封止材料などが好適に用いることができる。更には、これらを透明性が損なわれない範囲で組み合わせて用いても良い。
【0131】
なお、上記光電変換装置と、発光装置とを組み合わせて積層することで、発電する照明装置といった自律装置を構成することも可能である。
【0132】
(3)キャパシタ
上記キャパシタは、1又は複数の線状素子と、この線状素子を被覆する絶縁材とを備える。上記線状素子は、少なくとも表面が導電性を有する線状芯材、この線状芯材を被覆する1又は複数の機能性層、及びこの機能性層を被覆する導電層を備える。上記キャパシタにおいて、上記機能層は誘電体層である。
【0133】
上記キャパシタは、基板内蔵キャパシタとして好適に用いることができる。このキャパシタに備わる線状素子は、従来の平面積層型の素子と比して、キャパシタ容積当たりの誘電体面積が大きく、電極材の占める体積割合を大きくすることができる。また、当該キャパシタは、形状、容量設定も自由度が高く、変更も容易であるなど、使用形態のバリエーションが広い。
【0134】
(線状芯材)
上記線状芯材は、少なくとも表面が導電性を有するものであれば特に限定されず、上記光電変換装置において上述したものを用いることができる。具体的には、導電率の高いアルミ、銅、金の細線などが好ましい。
【0135】
上記線状芯材表面は微細な凹凸形状を有することが好ましい。凹凸形状を有することで実効表面積が大きくなりキャパシタ容量が大きくなったり、誘電体の密着が向上する。
【0136】
上記線状芯材の径は特に限定されないが、細いほうが基板内蔵キャパシタとしての設置自由度が高まるために好ましく、直径として0.1mm以下が好ましく、0.05mm以下がさらに好ましい。
【0137】
(誘電体層)
誘電体層を形成する誘電体材料は公知のものを用いることができ、特開2005−133041号公報、同2005−336267号公報に示された有機シアノ樹脂組成物や、無機の高誘電粒子を分散させた塗布材料、特開2005−247660号公報、同2005−255464号公報、同2005−075715号公報などに示されたナノ粒子を含むゾルゲル塗布材料等を挙げることができる。この誘電材料は求められるキャパシタの容量に応じて誘電材料の比誘電率から選定することができる。本発明では線状芯材を用いることから単位ユニットのキャパシタの実効面積は非常に小さいため、比誘電率の高い無機粒子を用いた材料が好ましい。
【0138】
具体的には無機粒子の誘電率は30以上であり、好ましくは50以上、さらに好ましくは70以上である。このような無機粒子としては、金属酸化物からなるものが好ましく用いられ、特にチタン系金属酸化物が好ましい。ここで、「チタン系金属酸化物」とはチタン元素と酸素元素とを必須元素として含む化合物をいい、具体的には二酸化チタン系、チタン酸バリウム系、チタン酸鉛系、チタン酸ストロンチウム系、チタン酸ビスマス系、チタン酸マグネシウム系、チタン酸ネオジウム系、チタン酸カルシウム系等の金属酸化物が挙げられる。なお、上記「二酸化チタン系」の金属酸化物とは、二酸化チタンのみを含む系、又は二酸化チタンに他の少量の添加物を含む系で、主成分である二酸化チタンの結晶構造が保持されているものであり、他の系の金属酸化物についても同様である。本発明においては、二酸化チタン系(ルチル構造のもの)又はチタン酸バリウム系の金属酸化物からなる無機粒子が特に好ましく用いられる。また、塗布媒体への分散性を向上させるために、上記材料からなる粒子の表面をシリカ、アルミナ等で変性した粒子も好適に用いられる。この無機粒子の平均粒子径は1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましく、0.2μm以下であることがさらに好ましい。平均粒子径が1μmを超えると、塗布媒体に対する無機粒子の分散性が不足して十分な貯蔵安定性が得られない場合がある。平均粒子径の下限は特に限定されないが、通常は0.02μm以上である。
【0139】
(導電層:対向電極)
上記導電層(対向電極)に用いられる材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されず、上記光電変換装置にて上述した材料等を適宜用いることができる。これらの中でも、導電率の高いアルミニウム、銅、金、銀が好ましく、材料コスト、耐マイグレーション性、プロセス簡易性などから銅、アルミが特に好ましい。なお、この導電層に用いられる材料は、線状芯材の材料と同一でも異なっていてもよい。
【0140】
上記導電層は蒸着、スパッタ、メッキ、塗布など公知の形成方法で成膜することができる。
【0141】
(絶縁材)
上記絶縁材は線状素子(単位キャパシタ)を独立した素子とする被覆材であると同時に、所望の基板内蔵キャパシタ形状に成型する材料であり、外気遮断、マイグレーション防止の隔壁層の役割も果たす。
【0142】
上記絶縁材としては、導電層(対向電極)上に形成された酸化皮膜や、その他公知の絶縁材を挙げることができる。好適な絶縁材としては、ハンダリフロープロセスに耐える耐熱性を有する材料が挙げられ、具体的にはプリント基板材料に用いられるエポキシ樹脂、ポリイミド、フェノール樹脂材などの有機材料が好ましく、これらを組み合わせて用いても良い。
【0143】
(キャパシタの製造方法)
上記線状素子は、線状芯材に誘電体層及び導電層をこの順に被覆させ形成する。さらに、この線状素子を絶縁材で被覆し、板状、棒状又はフィルム状等に形成することで、キャパシタが得られる。なお、誘電体層及び導電層は、容量を増すため、繰り返し積層してもよい。以下、製造手順の好ましい一例を詳説する。
【0144】
(1)線状芯材への誘電体層の被覆
線状芯材は、アルカリ電解脱脂、硝酸洗浄、純粋洗浄の前洗浄処理を行い、予め表面を清浄にしておく。また、表面は予めサンドブラスト処理などで微細な凹凸を付与したものが好ましい。誘電体層は、上述した誘電体材料をディップコート、スプレーコート、電着コートなどの湿式塗布にて成膜、誘電体(ナノ)粒子を熔射、又は特開2007−046155号公報、同2008−141121号公報で提案されているエアロゾルCVD法などにより乾式成膜することで成膜する。
【0145】
誘電体層の膜厚は例えば0.01μmから5μmであり、好ましくは0.1μmから2μmである。0.01μm以下では塗膜の欠陥が原因となるリーク電流が大きくなり、キャパシタとして必要なリーク電流<10−6A/cm及び密着性:ピール強度>0.1kg/cmの特性が満たせなくなるおそれがある。
【0146】
(2)導電層の被覆
導電層は誘電体層上に形成され、蒸着、スパッタ、メッキ、塗布など公知の形成方法で成膜する。この導電層の膜厚は特に限定されないが、例えば0.01μmから5μmであり、好ましくは0.1μmから2μmである。
【0147】
(3)絶縁材による被膜・成形
上記プロセスを経て得られた線状素子(単位キャパシタ)は細い線状であり、単独でもキャパシタとして機能するが、所望の容量特性のキャパシタとするため、これら細線素子を束ねて成形し、キャパシタとする。
【0148】
この束ねる材料として、上記絶縁材を用い、例えば、線状素子をポリイミドワニスにディップして表面にポリイミドワニスを付着させたものを、10本PTFEシート状に並べて焼成することで10本分の容量を持つポリイミド被覆された薄い板状の基板内蔵キャパシタとなる。各線状素子同士の配線、接続は求められる性能に応じて直列又は並列に配線され、配線は線状素子に接続した配線基板で行っても良い。
【0149】
また、別の製造方法の例として、基板内蔵時に、線状素子(単位キャパシタ)をプレプレグ(例えば部分硬化のガラスエポキシシートなど)に挟んで積層して圧着硬化する方法が挙げられる。この場合、プレプレグ材が線状素子の絶縁材としての役割も兼ねることとなり効率的である。
【0150】
当該キャパシタは、単位キャパシタ(線状素子)が細い線状であるために、基板内蔵キャパシタとして好適である。当該キャパシタは、基板内での配置の自由度が高く、所望の本数ほど配列して配線すれば、積層したものと同様のキャパシタが労せず得ることができ、容量の自由度も高い。
なお、本発明のデバイスは上記実施形態に限定されるものではない。例えば、線状素子の中心となる線状芯材は、細線(細長い円柱)形状でなくとも、その他の角柱状や、帯状形状を有していてもよい。線状芯材が帯状形状の場合、例えば、厚みが1μm以上0.1mm以下であることが好ましく、5μm以上0.05mm以下であることがさらに好ましく、幅が0.2mm以上50mm以下であることが好ましく、0.3mm以上2mm以下であることが好ましい。また、本発明のデバイスの用途は、光電変換装置(太陽電池)、発光装置及びキャパシタに限定されるものではない。
【実施例】
【0151】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0152】
本発明のデバイスとして光電変換装置、発光装置及び基板内蔵キャパシタをそれぞれ製造した。
【0153】
(光電変換装置)
[実施例1]シリコン系線状素子(1)を備えるガラス板状の光電変換装置A
図2に記載のプラズマCVD装置を用い、シリコン系線状素子を成形した。外径0.02mmのSUS304ワイヤー30cmをアルカリ電解脱脂、アセトン洗浄により前処理して乾燥させた。このワイヤー(図2中100)を図2に示すプラズマCVD装置内の治具101(ワイヤー両端5cmを挟んで固定)に1mm間隔を空けて100本固定して配置した。チャンバー107を圧力130Pa、SiHガス10sccm、BF/Hガス(希釈度2%)を100sccm、Hガスを800sccmとなるように脱気置換した。ヒーター102を加熱し、ワイヤー温度を300℃、RF電極106(13.56MHz)の出力値が2,000Wとなるように設定して製膜を開始し、ワイヤー上に50nm厚のp型シリコン層を形成した。次いで、チャンバー107を圧力300Pa、SiHガス400sccm、Hガスを2,000sccmとなるように脱気置換した。ヒーター102を加熱し、ワイヤー温度を300℃、RF電極106(13.56MHz)の出力値が1000Wとなるように設定して製膜を開始し、ワイヤー上に1,000nm厚のi型シリコン層を形成した。次いで、チャンバー107を圧力100Pa、SiHガス20sccm、PH/Hガス(希釈度2%)を50sccm、Hガスを100sccmとなるように脱気置換した。ヒーター102を加熱し、ワイヤー温度を300℃、RF電極106(13.56MHz)の出力値が100Wとなるように設定して製膜を開始し、ワイヤー上に30nm厚のn型シリコン層を形成した。
【0154】
このように、pin層(シリコン層)を被覆したワイヤーにJpn.J.Appl.Phys.24(1985)pp.1607−1610に記載の条件で、図2の装置に導入するガス種を変更する方法で酸化亜鉛(導電層)をさらに1μm積層被覆してシリコン系線状素子(1)を得た。シリコン系線状素子(1)の両端5cmは何も被覆されておらずSUS304がむき出しの状態であり、中央部の20cmはSUS304(0.02mmφ)/p型シリコン50nm/i型シリコン1,000nm/n型シリコン30nm/酸化亜鉛1μmが積層された細線である。
【0155】
酸化鉛70質量%、酸化ホウ素10質量%、酸化ケイ素20質量%の組成を有するPbO−B−SiO系の混合物(軟化点500℃)100質量部、結着樹脂としてブチルメタクリレート/2−エチルヘキシルメタクリレート/ヒドロキシプロピルメタクリレート共重合体(質量比30/60/10、重量平均分子量150,000)5質量部、ジグリセリンオレート3質量部、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル8.7質量部、エチル−3−エトキシプロピオネート13.1質量部を分散機を用いて混錬することにより、粘度が3,400cp(B形粘度計測定、30rpm)の組成物を調製した。この組成物を、予め離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)よりなる支持フィルム(幅300mm,長さ200mm,厚さ38μm)の中央部上に幅200mmのアプリケーターを用いて塗布し、形成された塗膜を80℃で5分間乾燥することにより溶媒を除去し、厚さ20μmのガラス絶縁材を支持フィルム上に形成し、ガラス絶縁材フィルムを得た。
【0156】
次いで、このガラス絶縁材フィルム上に、上記シリコン系線状素子(1)と、光拡散体として直径20μmの石英ファイバ各々2000本とを交互に隙間なく、該シリコン系線状素子(1)及び石英ファイバの各端部がガラス絶縁材フィルムの端に合わせるように平面状に並べ、その上にもう一枚のガラス絶縁材フィルムを重ねて圧着ラミネートした。圧着条件としては、加熱ロールの表面温度を90℃、ロール圧を2kg/cm、加熱ロールの移動速度を0.6m/分とした。なお、圧着時に各シリコン系線状素子(1)の両端部にSUS304線を架け渡して2000本のシリコン系線状素子(1)を並列に接続した。次に、ラミネートした圧着物を焼成炉にて500℃で1時間焼成し、ガラス板状の光電変換装置Aを得た。
【0157】
[実施例2]シリコン系線状素子(1)を備えるガラス棒状の光電変換装置B
シリコン系線状素子(1)をガラス絶縁材で圧着ラミネートするまでは実施例1と同様に作成を行った。ラミネートした圧着物をシリコン系線状素子(1)の軸と平行に棒状に巻きあげて棒状に成型し、その状態で500℃で1時間焼成し、ガラス棒状の光電変換装置Bを得た。
【0158】
[実施例3]シリコン系線状素子(2)を備えるフィルム状の光電変換装置C
シリコン系線状素子(1)の膜厚構成をSUS304(0.02mmφ)/p型シリコン30nm/i型シリコン600nm/n型シリコン20nm/酸化亜鉛0.5μmとした以外は実施例1と同様に作成を行い、シリコン系線状素子(2)を得た。このシリコン系線状素子(2)と、光拡散体として直径20μmの石英ファイバ各々2000本とを、サンエー化研製テクニフィルムVA760上(幅300mm、長さ200mm、厚さ215μm)に交互に隙間なく平面状に並べた。この上に、もう一枚のテクニフィルムVA760で挟んで圧着条件;加熱ロールの表面温度=100℃、ロール圧=3kg/cm、加熱ロールの移動速度=0.3m/分で圧着成型し、フィルム状の光電変換装置Cを得た。なお、各シリコン系線状素子(2)の配線は、予めテクニフィルム上に配置した銅線(各線状素子の端から2cmと7cmとの位置に配置)を同時に圧着することで並列に配線した。
【0159】
[実施例4]有機系線状素子(1)を備えるフィルム状の光電変換装置D
外径0.05mmのアルミニウム・シリコン(組成比;アルミニウム99質量%:シリコン1質量%)ボンディング・ワイヤー(巴工業株式会社製、ALW−29S)30cmを10質量%水酸化ナトリウム水溶液で5分脱脂、水−アセトン洗浄により前処理して乾燥させた。この上に、導電性高分子であるポリ(エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS、スタルクヴィテック社製、品名Baytron PH)をディップコートした後、120℃で大気中10分間加熱乾燥し40nm成膜した。次に1,4:8,11:15,18:22,25−テトラエタノ−29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィリンのクロロホルム/クロロベンゼンの1:1混合溶液(0.25質量%濃度)にディップし、その後引き上げて180℃で20分加熱した。次いで、1,4:8,11:15,18:22,25−テトラエタノ−29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィリンとビス(ジメチルフェニルシリルメチル)60フラーレンとを質量比で3:7の割合となるように混合した溶液(クロロホルム/クロロベンゼンの1:1混合溶液(1.0質量%濃度))ディップして、その後、引き上げ、180℃で20分加熱することで機能性層を70nm被覆した。次に、この被覆線に奥野製薬社製;ナノディスパーITO(SP2)をスプレー塗布、180℃乾燥を行って300nmのITO膜(導電層)を成膜して有機系線状素子(1)を得た。有機系線状素子(1)は片端5cmをアルミがむき出しになるまで表面を削り取り、残り25cm部分はアルミニウム0.05mmφ/PEDOT:PSS層40nm/機能性層70nm/ITO膜0.3μmが積層された細線とした。
【0160】
実施例3と同様にこの有機系線状素子(1)と光拡散体として石英ファイバとを各々2000本、サンエー化研製 テクニフィルムVA760(幅300mm、長さ200mm、厚さ215μm)でサンドイッチして圧着し、フィルム状の光電変換装置Dを得た。
【0161】
[実施例5]有機系線状素子(2)を備える棒状の光電変換装置E
石英ファイバにFTOを100nm被覆し、その表面にPEDOT・PSS、次いで1,4:8,11:15,18:22,25−テトラエタノ−29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィリンとビス(ジメチルフェニルシリルメチル)60フラーレンを質量比で3:7の割合で実施例4と同様に成膜した。次いで、アルミニウムを100nm蒸着して被覆し、有機系線状素子(2)を得た。有機系線状素子(2)は片端5cmをFTOがむき出しになるまで表面を削り取り残り25cm部分は石英(0.05mmφ)/PEDOT:PSS層40nm/有機層70nm/アルミニウム300nmが積層された細線とした。
【0162】
有機系線状素子(2)1,000本の中央をアルミ細線で縛って束ね、これにテクネフィルムを巻いて、被覆し直径5mmの棒状とした。縛ったアルミ細線は、この後抜き取った。この棒状体を内径5mmのSUS304の筒に嵌め込んだ。むき出しにされた1,000本のFTO端は、筒の端を塞ぐSUS304板とともに半田で結線して、固定した。このことで、FTO線はSUS筒の外壁と結線した状態とした。
【0163】
石英ファイバ1000本は、導光部としての光ファイバに接続した。この光ファイバは、採光部としての採光シート((株)光エネルギー研究所製:SOH−02)の集光面(20cmx20cm)に接続し、採光部を備えた棒状の光電変換装置Eを得た。
【0164】
[評価]
各光電変換装置の導線を各々クリップで計測装置電極に接続し、ソーラーシミュレーター(ウシオ電機 Mi ni USS−40 照度100mW/cm)より発する擬似太陽光を光電変換装置に照射した。なお、光電変換装置Eにおいては、採光シートに対して照射した。この計測値から、色素増感太陽電池の開放電圧(VOC)、及び変換効率(η)の初期値を求めた。照射面積は、装置又は採光シートの大きさに合わせで変更し、発電部分に光が行き渡るようにした。
【0165】
次に、このサンプルを80℃湿度80%の高温恒湿槽内で2週間保管し、再度、開放電圧(VOC)、及び変換効率(η)の特性を測定して初期値からの変動率を評価した。保管中、光照射を継続しサンプルは高温恒湿下で発電を継続している状態とした。初期値からの変動率が20%以下であれば一時的(例えば5年以内の寿命)の用途であれば十分、また、10%を下回れば発電目的とした、例えば10年以内の寿命が目指せると考えられる。
【0166】
【表1】

【0167】
上記表1に示されるように、実施例1〜5の光電変換装置(デバイス)は、太陽電池として十分に機能することが示された。なお、実施例2は、実施例1と比して変換効率が非常に大きな値となった。実施例2の棒状の光電変換装置によれば、石英ファイバが導光体として働き、光が直接あたらない内部の線状素子(1)へも光届き、線状素子(1)を複数層積層した効果が発現したものと考えられる。また、実施例2の光電変換装置において、光の照射方向を棒側面、棒端面の2方向で比べたが、大差はなく、上記表1には棒側面照射のデータを示した。
【0168】
(発光装置:エレクトロ・ルミネッセンス照明)
[実施例6]
外径0.05mmのアルミニウム・シリコン(1%)ボンディング・ワイヤー(巴工業株式会社製、ALW−29S)30cmをアルカリ電解脱脂、アセトン洗浄により前処理して乾燥させた。実施例1と同様にCVD装置内に100本のワイヤーを固定し、フッ化リチウムを0.5nmの厚みで蒸着することによってフッ化リチウム膜よりなる電子輸送層をワイヤー上に形成した。次いで、この真空装置内を1×10−3Pa以下にまで減圧し、1,3,5−トリ(フェニル−2−ベンゾイミダゾリル)ベンゼン(TPBI)を30nmの厚みで蒸着することにより、TPBI膜よりなる正孔阻止層を形成した。治具101の片方の止め具を外し、他端は被覆ワイヤー100本を治具101で保持した状態とし、発光層形成液にディップコートして窒素雰囲気下において180℃で10分間乾燥することにより厚さ70nmの発光層を形成した。発光層形成液は下記式(1)で表されるトリフェニルアミン化合物1.0gと、下記式(2)で表されるイリジウム化合物37.4mgとをクロロベンゼンに溶解し、固形分の合計の濃度が3質量%の溶液を用いた。
【0169】
【化1】

【0170】
この発光層の表面に、導電性高分子であるポリ(エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS、スタルクヴィテック社製、品名Baytron PH)をディップコートした後、180℃で大気中10分間加熱乾燥し65nmの正孔輸送層を成膜した。次に、この被覆線に奥野製薬社製;ナノディスパーITO(SP2)をスプレー塗布し、180℃で大気中10分間乾燥を行って300nmのITO膜(導電層)を成膜して、線状素子としての単位発光ユニット(1)を得た。
【0171】
単位発光ユニット(1)は片端5cmがアルミ細線むき出しで、中央20cm部分はアルミ(0.05mmφ)/フッ化リチウム0.5nm/TPBI30nm/発光層70nm/PEDOT:PSS層65nm/ITO膜300nm、残り5cmの他端がアルミ(0.05mmφ)/発光層70nm/PEDOT:PSS層65nm/ITO膜300nmで積層された細線であった。
【0172】
実施例3と同様にこの単位発光ユニット(1)を1,000本と石英ファイバとをサンエー化研製 テクニフィルムVA760で挟み込んで圧着し、フィルム状の発光装置(1)を得た。なお、各単位発光ユニットの配線は、予めテクニフィルム上に配置した銅線(単位発光ユニットの両端2cmに配置)を同時に圧着することで並列に配線した。
【0173】
発光装置(1)について、ITO膜を陽極とし、アルミニウム細線を陰極として発光層を発光させたところ、イリジウム錯体に由来する波長515nm付近の発光が得られた。その最高発光輝度は40,000Cd/m及び発光効率は27Cd/Aであった。同サイズの平板状有機EL照明と比較すると、発光装置(1)の方が面内の輝度バラツキが小さかった。この輝度ムラは各機能層の膜厚バラツキの要因が大きいと考えられる。得られた発光装置(1)は細線の集合体であるため、平面で成膜した場合に比べて膜厚バラツキを平均化する効果が発現したためと推察される。
【0174】
(基板内蔵キャパシタ)
[実施例7]
幅0.1mm厚み0.02mmのチタンリボン(30cm)100本の片端3cmをクリップに挟んで固定して陽極とし、表面技術、52巻1号、88ページの実験に準じて陽極酸化処理による皮膜形成を行った。1.5M HSO−0.3M HPO−0.3M H系電解浴中、3.0Adm−2の直流定電流電解で200Vまで昇圧し、その後、200Vに保持する方法で浴温度30℃、全電解時間は10分で一次陽極酸化を行った。得られた陽極酸化皮膜材はチタン光沢が失われ表面全体が濃い灰色皮膜(膜厚0.5μm)であった。この酸化皮膜材を0.3M−NHHFと0.3M−Hとの混合浴中で、一次酸化と同様に二次陽極酸化した。この時の最終浴電圧は150V、全電解時間は2分、浴温度は30℃であった。得られた皮膜を550℃下0.5L/hrでエアーフローしながらクリーンオーブンにてワイヤーを10分焼成して厚み0.022mmの被覆ワイヤーを得た。なお、クリップで挟んだ部分は酸化膜は形成しておらず、チタンのままであった。
【0175】
このクリップ固定したワイヤー上に無電解ニッケル0.2μm、電解銅メッキ5μmを形成した。まず、硫酸ニッケル(25g)、次亜リン酸ナトリウム(20g)、酢酸ナトリウム(10g)、及びクエン酸ナトリウム(10g)を蒸留水500ccにこの順に溶解させながら攪拌混合し、蒸留水を加えて全体を1リットルとし、さらに硫酸と、次亜リン酸ナトリウムとでpHを5に調整した無電解ニッケル液を得た。この無電解ニッケル液に酸化チタンを形成したワイヤーを90℃で2分浸してニッケルシード層を形成した。次に硫酸銅70g、硫酸190g、及び塩化ナトリウム90mgを蒸留水に溶解して1リットルとした電解メッキ液を用いて電解銅メッキを行い、ニッケルシード層上に5μmの銅層を形成した。このワイヤーの端3cmをマスキングテープでマスキングした。先のクリップで固定したままのワイヤーを、ポリイミドワニス(新日本理化株式会社製 リカコートSN−20)にディップコートし、窒素中300℃で10分焼成することでポリイミドで絶縁被覆された単位キャパシタ(1)を得た。この焼成時にマスキングテープは焼失した。
【0176】
単位キャパシタ(1)はテープマスキングした3cm部分がチタン細線(幅0.1mm厚み0.02mm)/酸化チタン(0.5μm)/ニッケル(0.2μm)/銅(5μm)、中央24cmがポリイミド被覆されてチタン細線(幅0.1mm厚み0.02mm)/酸化チタン(0.5μm)/ニッケル(0.2μm)/銅(5μm)/ポリイミド(1μm)の積層構成で、残り3cmがクリップで固定されていたためチタン細線のままになっていた。なお、チタン細線が線状芯材、酸化チタンが機能性層(誘電体層)、ニッケル及び銅が導電層、ポリイミドが絶縁材となっている。
【0177】
この単位キャパシタ(1)の電気特性をJIS K6481に準拠してLCRメーターにて計測したところ、1kHz、5V印加の条件で誘電率は75であった。
【0178】
[実施例7]
外径0.05mmのアルミニウム・シリコン(1%)ボンディング・ワイヤー(巴工業株式会社製、ALW−29S)30cm、100本の片端3cmをクリップに挟んで固定して10%水酸化ナトリウム水溶液で5分脱脂、純水で洗浄し、次いで純水中で20分煮沸処理した。陰極としてカーボン電極、電解液に10%アジピン酸アンモニア水溶液を用い、液温40℃でエア撹拌しながら、両極間に300Vの電圧を30分間印加して陽極酸化処理を行った。断面を観察すると、表面に2μmの酸化アルミニウム層が形成されていた。次に、酸化アルミニウム被覆したワイヤー上に実施例6と同様にニッケル、銅メッキ及びポリイミド被覆を行って単位キャパシタ(2)を得た。
【0179】
単位キャパシタ(2)はテープマスキングした3cm部分がアルミ細線(0.05mm径)/酸化アルミニウム(2μm)/ニッケル(0.2μm)/銅(5μm)、中央24cmがポリイミド被覆されてアルミ細線(0.05mm径)/酸化アルミニウム(2μm)/ニッケル(0.2μm)/銅(5μm)/ポリイミド(1μm)の積層構成で、残り3cmがクリップで固定されていたためアルミ細線のままになっていた。なお、アルミ細線が線状芯材、酸化アルミニウムが機能性層(誘電体層)、ニッケル及び銅が導電層、ポリイミドが絶縁材となっている。
【0180】
この単位キャパシタ(2)の電気特性をJIS K6481に準拠してLCRメーターにて計測したところ、1kHz、5V印加の条件で誘電率は6であった。
【0181】
[実施例8]
外径0.03mmの銅ワイヤー30cm、100本の片端3cmをクリップに挟んで固定して10%水酸化ナトリウム水溶液で5分脱脂、純水で洗浄し乾燥した。チタン酸バリウム粒子(平均粒子径=0.05μm、商品名BT−005、堺化学工業(株)製)100部、ジ−i−プロポキシビス(アセチルアセトナート)チタン1部及びi−プロパノール300部をホモミキサーで混合した後、さらに超音波ホモジナイザーで処理して、固形分濃度25%の凝集体のないチタン酸バリウム分散体を得て、これに銅ワイヤーをディップコートして窒素下250℃オーブンにて30分焼成して3μmの被覆膜を形成した。次に、被覆したワイヤー上に実施例6と同様にニッケル、銅メッキ及びポリイミド被覆を行って単位キャパシタ(3)を得た。
【0182】
単位キャパシタ(3)はテープマスキングした3cm部分が銅線(0.03mm径)/チタン酸バリウム(3μm)/ニッケル(0.2μm)/銅(5μm)、中央24cmがポリイミド被覆されて銅線(0.03mm径)/チタン酸バリウム(3μm)/ニッケル(0.2μm)/銅(5μm)/ポリイミド(1μm)の積層構成で、残り3cmがクリップで固定されていた銅線のままになっていた。なお、銅線が線状芯材、チタン酸バリウムが機能性層(誘電体層)、ニッケル及び銅が導電層、ポリイミドが絶縁材となっている。
【0183】
この単位キャパシタ(3)の電気特性をJIS K6481に準拠してLCRメーターにて計測したところ、1kHz、5V印加の条件で誘電率は500であった。
【0184】
これら単位キャパシタ(1)〜(3)は、厚みが50μm弱と薄く、フレキシブルであるため、プリント基板、絶縁シートの積層成型時にこのキャパシタを挟んで圧着配線することで容易に基板内蔵が可能であり、また、単位キャパシタの長さ、接続数で所望の容量に合わせた配置設計が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0185】
本発明のデバイスは、光電変換装置、発光装置、キャパシタ等として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0186】
1 線状素子
2 絶縁材
3 導電層
4 機能性層
5 線状芯材
100 線状芯材
101 治具
102 ヒーター
103 原料ガス導入管
104 原料ガスノズル
105 排気管
106 RF電極
107 真空チャンバー
108 低温プラズマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数の線状素子及びこの線状素子を被覆する絶縁材を備え、
上記各線状素子が、少なくとも表面が導電性を有する線状芯材、この線状芯材を被覆する1又は複数の機能性層、及びこの機能性層を被覆する導電層を備えるデバイス。
【請求項2】
上記機能性層がpn接合若しくはpin接合からなるシリコン層、又は有機系電子受容体及び有機系電子供与体からなる有機層であり、
光電変換装置として用いられる請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
上記線状素子に近接配置される1又は複数の導光体をさらに備える請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
板状、棒状又はフィルム状の形状を有する請求項1、請求項2又は請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
少なくとも表面が導電性を有する線状芯材に機能性層及び導電層をこの順に被覆させ、線状素子を得る工程、及び
この線状素子を絶縁材で被覆し、板状、棒状又はフィルム状に形成する工程
を有するデバイスの製造方法。
【請求項6】
上記機能性層が少なくとも2種の半導体層からなり、発光装置として用いられる請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
上記機能性層が誘電体層であり、キャパシタとして用いられる請求項1に記載のデバイス。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−186233(P2012−186233A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47029(P2011−47029)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】