説明

デフェラシロックス分散性錠剤

【課題】繰り返しの輸血を必要とする患者において使用するための鉄キレート化剤として有効な、活性成分として4−[3,5−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−[1,2,4]トリアゾール−1−イル]安息香酸(化合物I)または薬学的に許容されるその塩を含有する、成人および小児への投与が簡便であり、薬理学的活性一日投与量を供給できる経口投与形の提供。
【解決手段】錠剤の総重量の5から40重量%の量で化合物1を含む、分散性錠剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4−[3,5−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−[1,2,4]トリアゾール−1−イル]安息香酸または薬学的に許容されるその塩(以後化合物Iと呼ぶ)を含む、分散性錠剤(dispersible tablet)、例えば薬学的分散性錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物Iは経口で活性な鉄キレート化剤であり、輸血依存性貧血、特に、サラセミアメジャー、サラセミアインターメディエートおよび鎌状赤血球貧血における鉄過重の処置に適用されており、鉄関連病的状態および致死率を減少する。化合物Iは、また、ヘモクロマトーシスの処置に使用できる。
【0003】
臨床的サラセミア(メジャーおよびインターメディア)は、ヘモグロビンの生産不全により特徴付けられ、赤血球細胞の生産減少および破壊増進に至る遺伝的疾患である。
【0004】
鎌状赤血球貧血はヘモグロビン−ベータ遺伝子の変異によりもたらされ、異常ヘモグロビンSの生産を起こす。正常赤血球細胞は120日後に死に、鎌状細胞(ヘモグロビンSを伴う赤血球細胞)はより速く(10から20日)破壊され、貧血を起こす。この貧血は、その名前が一般に知られている疾患−鎌状赤血球貧血−をもたらすものである。
【0005】
鉄過重疾患の最も一般的な形であるヘモクロマトーシスは、体に多すぎる鉄を吸着し、貯蔵することをもたらす遺伝性疾患である。余分の鉄は臓器に累積し、それらを障害する。処置しないと、この疾患はこれらの臓器を衰えさせ得る。
【0006】
かなりの回数の輸血を受けている鎌状赤血球貧血またはサラセミアの患者およびヘモクロマトーシスの患者は、体内から鉄を除去するための治療、いわゆるキレート療法を必要とする。
【0007】
化合物Iは以下の式を有する:
【化1】

遊離酸形の化合物I、その塩およびその結晶形は国際特許公報WO97/49395に記載されており、出典明示により本明細書に包含させる(1997年12月31日公開)。
【0008】
典型的に、サラセミアの治療のために処方される化合物Iの一日量は高く、例えば成人または小児に5から40mg/体重kg/日である。小児において、投与量は好ましくは5から30mg/体重kg/日である。高投与量容量のために、当該錠剤サイズは慣用の錠剤の製剤は適合しない。したがって、成人および小児への投与が簡便であり、化合物Iの薬理学的活性一日投与量を提供する、経口投与形の必要性がある。
【発明の概要】
【0009】
本発明者らは、今回、分散性錠剤の形の化合物Iの製剤が、高薬剤充填で経口投与形を可能にし、例えば、小児および高齢者への投与が簡便であり、安定であることを、驚くべきことに発見した。
“分散性錠剤”は、投与前に、水性相、例えば水に分散させる錠剤を意味する。
【0010】
したがって、本発明は、活性成分として化合物Iを含む、高薬物負荷された分散性錠剤を提供し、活性成分は、分散性錠剤の総重量に基づいて約5%から40%、例えば少なくとも約10、15、20または25%、好ましくは25重量%を超える量で存在する。特に、化合物Iの量は、分散性錠剤の総重量に基づいて25から40%、例えば28から32重量%で変化し得る。
【0011】
本発明は、錠剤の総重量に基づいて5%から40重量%の量で存在する鉄−キレート化する薬理学的に有効量の化合物Iまたは薬学的に許容されるその塩を含む、分散性錠剤に関する。
【0012】
本発明の一つの態様において、錠剤の総重量に基づいて5%から40重量%の量で存在する化合物Iまたは薬学的に許容されるその塩を含む、分散性錠剤を提供する。
【0013】
化合物Iは遊離酸形または薬学的に許容されるその塩であり得、好ましくは遊離酸形である。活性部分は、遊離酸形の化合物Iに対応する。本明細書の内容において、化合物Iに関する言及は、違う指示がなく、適当であり、予期される限り、その遊離酸形または薬学的に許容されるその塩または、水和物または溶媒和物を含む任意の結晶形の化合物Iを含むと理解されるべきである。
【0014】
本発明はまた:
(a)化合物Iまたは薬学的に許容されるその塩、および
(b)分散性錠剤の製造に適した少なくとも一つの薬学的に許容される賦形剤を含み、ここで、化合物Iまたは薬学的に許容されるその塩が、分散性錠剤の総重量に基づいて活性部分の含量の重量パーセントとして計算して、分散性錠剤の総重量に基づいて約5%から40%、例えば少なくとも約10、15、20または25%、好ましくは25重量%を超える量で存在する、分散性錠剤を提供する。特に、活性成分としての化合物Iの量は、分散性錠剤の総重量に基づいて25から40%、例えば28から32重量%で変化し得る。
【0015】
本発明の好ましい実施態様において、本発明は、化合物Iが遊離酸形(化合物I遊離酸形)である、分散性錠剤を提供する。
本発明の最も好ましい態様において、遊離酸形の化合物Iは結晶形である。
【0016】
1個またはそれ以上の薬学的に許容される賦形剤、例えば慣用的に使用される、例えば(1.1)少なくとも一つの増量剤、例えば、ラクトース、エチルセルロース、微結晶性セルロース、(1.2)少なくとも一つの崩壊剤、例えば架橋ポリビニルピロリジノン、例えばCrospovidone(登録商標)、(1.3)少なくとも一つの結合剤、例えばポリビニルピリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、(1.4)少なくとも一つの界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、(1.5)少なくとも一つの流動促進剤、例えばコロイド状二酸化ケイ素、(1.6)、少なくとも一つの滑剤、例えばステアリン酸マグネシウムが分散性錠剤中に存在し得る。
【0017】
これらのおよび他の薬学的に許容される賦形剤および本明細書に記載の方法を対象とした広範囲な文献、特にHandbook of Pharmaceutical Excipients, Third Edition, Arthur H. Kibbe編, American Pharmaceutical Association, Washington, USA and Pharmaceutical Press, London;およびLexikon der Hilfsstoffe fuer Pharmazie, Kosmetik and angrenzende Gebiete, H.P. Fiedler編, 4th Edition, Edito Cantor, Aulendorfおよびこれらの先の版を参照でき、これらは出典明示により本明細書に包含させる。
【0018】
本発明にしたがう増量剤(1.1)は、ラクトース、とりわけラクトース一水和物、好ましくはラクトース一水和物(200メッシュ)および噴霧乾燥ラクトース、微結晶性セルロース、とりわけPH102、PH101である。
【0019】
本発明にしたがう適当な崩壊剤(1.2)は、メイズ澱粉、CMC−Ca、CMC−Na、微結晶性セルロース、架橋PVP、例えば既知であり、商品名Crospovidone(登録商標)、Polyplasdone(登録商標)として市販され、ISP社から市販のもの、またはKollidon(登録商標)XL、アルギン酸、アルギン酸ナトリウムおよびグアールガムを含むが、これらに限定されない。好ましくは、架橋PVP、例えばCrospovidone(登録商標)を使用する。
【0020】
結合剤(1.3)は、澱粉、例えばジャガイモ、小麦またはコーン澱粉、微結晶性セルロース、例えばAvicel(登録商標)、Filtrak(登録商標)、Heweten(登録商標)またはPharmacel(登録商標);ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース−タイプ2910USP、ヒプロメロースおよびポリビニルピロリドン、例えばBASFのPovidone(登録商標)K30を含むが、これらに限定されない。好ましくは、ポリビニルピロリドンを、最も好ましくはPVP K.30を使用する。
【0021】
本発明による適当な界面活性剤(1.4)が使用され得る:ラウリル硫酸ナトリウム、ベタイン、4級アンモニウム塩、ポリソルベート、ソルビタンエステル(erters)およびポロキサマー。好ましくは、界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウムである。
【0022】
流動促進剤(1.5)として、1個またはそれ以上の以下のものを使用し得る:シリカ;コロイド状シリカ、例えばコロイド状シリカ無水物、例えばAerosil(登録商標)200、三ケイ酸マグネシウム、粉末セルロース、澱粉およびタルク。好ましくは、コロイド状二酸化ケイ素を使用する。
【0023】
滑剤(1.6)として、1個またはそれ以上の以下のものを使用し得る、ステアリン酸Mg、ステアリン酸Alまたはステアリン酸Ca、PEG4000−8000、タルク、安息香酸ナトリウム、例えば200から800ダルトンの分子量を有するグリセリルモノ脂肪酸、例えばグリセリルモノステアレート(例えばDanisco, UK)、グリセリルジベヘネート(例えばCompritolATO888TM, Gattefosse France)、グリセリルパルミト−ステアリックエステル(例えばPrecirolTM, Gattefosse France)、ポリオキシエチレングリコール(PEG, BASF)、水素化綿実油(Lubitrab, Edward Mendell Co Inc)、ヒマシ油(Cutina HR, Henkel)。好ましくは、ステアリン酸マグネシウムを使用する。
【0024】
これらの薬学的に許容される賦形剤の1個またはそれ以上を、慣用の実験により分散性錠剤の特に望ましい特性を考慮して、選択し、使用し得る。
【0025】
本発明にしたがい、増量剤(1.1)の用量は、分散性錠剤の総重量に基づいて約35から55%、特に40から50重量%の範囲内で変化し得る。
崩壊剤(1.2)の用量は、分散性錠剤の総重量に基づいて5から40%、例えば10から35重量%の範囲内で変化し得る。
【0026】
結合剤(1.3)の用量は、分散性錠剤の総重量に基づいて1から10%、好ましくは1.5から5重量%で変化し得る。
界面活性剤(1.4)の用量は、0.1から2%、好ましくは0.2から1%で変化し得る。
流動促進剤(1.5)の用量は、分散性錠剤の総重量に基づいて0.1から5%、特に0.1から2.5%、例えば0.1から0.5重量%の範囲内で変化し得る。
【0027】
滑剤(1.6)の用量は、分散性錠剤の総重量に基づいて1重量%より少なく、好ましくは0.5%より少なく、最も好ましくは0.4%より少なく、よりさらに好ましくは滑剤の用量は0.01%から0.4%の範囲内である。非常に好ましくは滑剤の用量は、分散性錠剤の総重量に基づいて0.02%を超え、0.4重量%より少ない。
【0028】
任意の提供した賦形剤が、1つの機能以上で、例えば増量剤、崩壊剤、結合剤、流動促進剤、および/または滑剤として働き得ることは認められよう。
【0029】
本発明の一つの態様において、滑剤は分散性錠剤の総重量に基づいて1重量%より少なく、好ましくは0.4%より少なく存在する。
本発明はまた滑剤がステアリン酸マグネシウムである、分散性錠剤に関する。
【0030】
本発明の好ましい態様において、分散性錠剤は以下の薬学的に許容される賦形剤を含む:分散性錠剤の総重量に基づいて約40%から50重量%の合計量の一つまたはそれ以上の増量剤、分散性錠剤の総重量に基づいて約1.5%から5重量%の合計量の一つまたはそれ以上の結合剤、分散性錠剤の総重量に基づいて約10%から35重量%の合計量の一つまたはそれ以上の崩壊剤、分散性錠剤の総重量に基づいて約0.1%から0.5重量%の合計量の一つまたはそれ以上の流動促進剤、および/または分散性錠剤の総重量に基づいて約0.01%から0.4重量%の合計量の一つまたはそれ以上の滑剤。
【0031】
本発明の好ましい態様において、分散性錠剤は以下の薬学的に許容される賦形剤を含む:分散性錠剤の総重量に基づいて約40%から50重量%の合計量の一つまたはそれ以上の増量剤、分散性錠剤の総重量に基づいて約1.5%から5重量%の合計量の一つまたはそれ以上の結合剤、分散性錠剤の総重量に基づいて約10%から35重量%の合計量の一つまたはそれ以上の崩壊剤、分散性錠剤の総重量に基づいて約0,2%から1重量%の合計量の一つまたはそれ以上の界面活性剤、分散性錠剤の総重量に基づいて約0.1%から0.5重量%の合計量の一つまたはそれ以上の流動促進剤、および/または分散性錠剤の総重量に基づいて約0.01%から0.4重量%の合計量の一つまたはそれ以上の滑剤。
【0032】
各々の薬学的に許容される賦形剤の絶対量および他の薬学的に許容される賦形剤に対する用量は、同様に、分散性錠剤の所望の特性に依存し、また慣用の実験により選択し得る。
【0033】
本発明者らは化合物Iを含む分散性錠剤の製造における困難に遭遇しており、それは、活性成分の低密度のため、低い流動性をもたらすその静電気特性、および付着傾向のためであり得る。
【0034】
本発明によれば、患者投与が簡便であり、5分以下、好ましくは3分以下で分散する、分散性錠剤の形の薬学的に許容される経口固体投与形が、圧縮法による錠剤の製造により得られる得ることが、予期せずに判明した。より具体的に、本発明の分散性錠剤は、造粒、好ましくは湿式造粒、続く、好ましくは噴霧滑沢化条件での圧縮法により製造し得る。
【0035】
一般に、湿式造粒は流動性および付着傾向を改善するために使用し得るが、湿式造粒は医薬組成物が分散性錠剤を意図する場合は好ましくない。実際、湿式造粒は、活性成分粒子の粘着を増加させ、最終錠剤の崩壊時間を増加させ、これは、患者のコンプライアンスにまたは分散性錠剤に関して分散時間が3分以内であることを要求する欧州薬局方に一致しない。さらに、本発明者らは、湿式造粒でさえ、活性成分が粘着性であり、打錠機での取り扱いが困難であるという問題に遭遇している。本発明者らは、例えば滑剤を錠剤の組成物に添加することにより、分散時間を、例えば許容値を超えて、例えば5分を超えて伸ばすことなく粘着性が解決され得ることを、驚くべきことに発見した。
【0036】
本発明の分散性錠剤は、例えば水性媒体中、例えば水中、5分または5分より短い分散時間を有する。本発明の分散性錠剤は、高薬物負荷にもかかわらず、例えば、水性媒体中、例えば水中、5分以内に、好ましくは3分以内に分散し、例えば小児または高齢者への投与が簡便である。これは良好な患者コンプライアンスを導く。
【0037】
他の実施態様において、本発明は、活性成分として100mgから800mgの、例えば100mgから約600mgの化合物Iを含む分散性錠剤を提供する。最も好ましくは、本発明にしたがう分散性錠剤は、活性成分として125mg、250mgまたは500mgの化合物Iを含む、分散性錠剤である。
【0038】
したがって、本発明は、分散性錠剤、例えば125mg、250mgまたは500mgの化合物I遊離酸形と同等な量の化合物Iを含む、分散性錠剤を提供する。最も好ましくは、本発明にしたがう分散性錠剤に使用するための遊離酸形の化合物Iは結晶形、特に、その製造法が出典明示により本明細書に包含させるWO97/49395の実施例5に記載されている結晶形である。
【0039】
本発明にしたがい、分散性錠剤の製造法は、内相を造粒し、それを一つまたはそれ以上の薬学的に許容される賦形剤と共に(一緒に)混合し、得られた混合物を噴霧滑沢化条件で圧縮することを含む。
【0040】
内相は化合物Iを含む。好ましくは、内相は化合物Iと一つまたはそれ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む。好ましくは、内相の薬学的に許容される賦形剤は、一つまたはそれ以上の増量剤、一つまたはそれ以上の崩壊剤、一つまたはそれ以上の結合剤および一つまたはそれ以上の界面活性剤である。好ましくは内相中の一つまたはそれ以上の増量剤の用量は、分散性錠剤の総重量に基づいて約5から35重量%、より好ましくは10から30%および最も好ましくは15から25%である。本発明にしたがう増量剤は、好ましくはラクトース一水和物である。崩壊剤は好ましくはCrospovidone XLである。内相に存在する崩壊剤の量は、好ましくは分散性錠剤の総重量に基づいて5から30%、より好ましくは7から25重量%の範囲である。化合物Iおよび一つまたはそれ以上の増量剤および一つまたはそれ以上の崩壊剤を、一つまたはそれ以上の界面活性剤、水および一つまたはそれ以上の結合剤を含む、湿性溶液と共に混合する。好ましい結合剤はPVP K.30である。混合物を、例えば、湿式高剪断造粒機を使用した造粒に付し、湿性顆粒を形成する。次いで、湿性顆粒を、例えば流動床乾燥機を使用して乾燥し、例えば振動造粒機を使用して調整する。
【0041】
外相は一つまたはそれ以上の薬学的に許容される賦形剤を含み、例えばフリー・フォール・ミキサーを使用して内相と混合する。好ましくは、一つまたはそれ以上の増量剤および一つまたはそれ以上の流動促進剤を添加する。最も好ましくは、微結晶性セルロースおよびラクトースを増量剤として添加する。よりさらに好ましくは、微結晶性セルロースを分散性錠剤の総重量に基づいて5から20重量%の範囲で添加し、ラクトースを分散性錠剤の総重量に基づいて5から20重量%の範囲で添加する。本発明にしたがう外相は、また、一つまたはそれ以上の流動促進剤、最も好ましくはコロイド状二酸化ケイ素を含み得る。好ましい実施態様において、外相における流動促進剤の量は、錠剤の総重量に基づいて約0.1から5%、好ましくは0.1から2.5%、最も好ましくは0.1から0.5重量%の範囲である。
【0042】
本発明の一つの態様において、一つまたはそれ以上の滑剤を、内相および外相の混合物に包含させる代わりに、圧縮前に打錠機のパンチに付着させ得る。本発明によれば、一つまたはそれ以上の滑剤を、打錠機の圧縮ツール、例えば杵および/または臼の物質接触表面に圧縮前に噴霧し得る。好ましくは、一つまたはそれ以上の滑剤打錠機の圧縮ツール、例えば杵および/または臼の物質接触表面に圧縮前に噴霧する。
【0043】
本発明の一つの実施態様において、分散性錠剤の製造工程は
(a)
(i)化合物Iと薬学的に許容される薬学的に許容される賦形剤を混合し、
(ii)(i)で得た混合物を湿式造粒する
ことを含む、内相の形成;
(b)
(iii)さらに薬学的に許容される賦形剤を(ii)で得た内相に添加して混合する
ことを含む、外相の形成;
(c)
(iv)ステップ(iii)で得た混合物を、噴霧滑沢化条件下圧縮する
ことによる、分散性錠剤の形成
を含む。
【0044】
さらなる態様において、本発明は:
(i)化合物Iと薬学的に許容される賦形剤、例えば一つまたはそれ以上の増量剤、例えばラクトース、および一つまたはそれ以上の崩壊剤、例えばCrospovidone XLを、高剪断ミキサー中で混合し;
(ii)一つまたはそれ以上の界面活性剤および一つまたはそれ以上の結合剤の溶液を添加し、混合物を、例えば、高剪断ミキサー中の濡らし/練りに付し、例えば、回転羽根を使用して湿式造粒し、例えば、流動床ドライヤーで乾燥させ、次いで、振動造粒機を使用して調整し、そして;
(iii)一つまたはそれ以上の増量剤、例えば微結晶性セルロースまたはラクトース、一つまたはそれ以上の流動促進剤、例えばコロイド状二酸化ケイ素のような薬学的に許容される賦形剤、例えば篩った賦形剤を添加し、例えばフリー・フォール・ミキサー中で混合し;
(iv)ステップ(iii)で得た混合物を、例えば、慣用の錠剤圧縮により、好ましくは回転機械で、滑剤を圧縮ツールの物質接触表面に噴霧して、打錠する
ことを含む、方法を提供する。
【0045】
使用し得る方法は、慣用であるか、または当業者に既知であるか、または、例えばL. Lachman et al. The Theory and Practice of Industrial Pharmacy, 3rd Ed, 1986, H. Sucker et al, Pharmazeutische Technologie, Thieme, 1991, Hagers Handbuch der pharmazeutischen Praxis, 4th Ed. (Springer Verlag, 1971)and Remington's Pharmaceutical Sciences, 13th Ed., (Mack Publ., Co., 1970)またはその後の版に記載のこのような方法に基づき得る。
【0046】
“内相”は、活性成分化合物Iと一つまたはそれ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む、顆粒相(ステップ(i)および(ii))を意味する。
“外相”は、内装(顆粒)に添加した一つまたはそれ以上の薬学的に許容される賦形剤(ステップ(iii))を意味する。
“分散性錠剤の総重量”なる用語は、内相と外相である錠剤の重量を意味する。
【0047】
物理的および化学的安定性は、慣用の方法で、例えば室温、すなわち25℃で、および/または40℃で貯蔵後、例えば分散性錠剤をそれ自体、溶解、破砕性、崩壊時間、化合物I分解生成物に関するアッセイ、外観および/または顕微鏡法で試験し得る。
【0048】
分散性錠剤は形が変化し得、例えば、円形、卵形、楕円形、円筒形または任意の他の適当な形である。一つの態様において、本発明にしたがう分散性錠剤は、その中の化合物Iの用量を考慮して、小量の、分散性錠剤の総重量に基づいて例えば約0.01%から0.4重量%ステアリン酸マグネシウムを含み、したがって欧州薬局方に適合する崩壊時間を可能にする。
【0049】
本発明の好ましい実施態様において、上記のような圧縮法により得た分散性錠剤は円形または卵形である。分散性錠剤の端は面取りされているか、丸められている。最も好ましくは、分散性錠剤は、面取りされた端を有する円形である。本発明にしたがう分散性錠剤は、割線を入れられ、浮き彫りされ、または彫り込まれる。
【0050】
本発明にしたがう分散性錠剤は、好ましくは円形で、面取りされた端が平である。125mg分散性錠剤は、10から20mmの間の、最も好ましくは10から15mmの間の直径を有する。125mg分散性錠剤の好ましい直径は12mmである。その厚さは2.5から4.5mmの範囲、好ましくは3.2から3.9mmの間である。250mg分散性錠剤は、12から20mmの範囲、好ましくは14から18mmの間の直径を有し、最も好ましい直径は15mmである。その厚さは3.5から5.5mmの範囲、最も好ましくは4から5mmの間である。500mg分散性錠剤は15から30mmの範囲、好ましくは15から25mmの間の直径を有し、最も好ましい直径は20mmである。その厚さは4.5から6.5mmの範囲、最も好ましくは5から6mmの間である。
【0051】
約125mgの化合物Iを活性部分として含む本発明の分散性錠剤は、約50から120N、好ましくは60から100Nの硬度を有し得る。約250mgの化合物Iを含む本発明の分散性錠剤は、70から150N、好ましくは90から130Nの硬度を有し得る。約500mgの化合物Iを含む本発明の分散性錠剤は、80から190N、好ましくは110から160Nの硬度を有し得る。
【0052】
好ましくは、崩壊時間は崩壊時間測定装置を使用して測定して、多くて5分、最も好ましくは、崩壊時間は3分未満である。
【0053】
“崩壊時間”は、崩壊時間装置中で、分散性錠剤が室温で水中に崩壊するのに必要な時間を意味する。
本発明の分散性錠剤は水相、好ましくは水に崩壊可能である。
【0054】
本発明の分散性錠剤は、個別の外観を与え、即座に認識可能にするように、着色し得および/または印を付け得る。色素の使用は、外観を向上させるためならびに分散性錠剤を同定するために働き得る。医薬における使用に適した色素は、典型的にカルチノイド、酸化鉄またはクロロフィルを含む。本発明の分散性錠剤は、略号の刻印を使用して印を付け得る。
【0055】
本発明の分散性錠剤は、輸血依存性貧血、特にサラセミアメジャー、サラセミアインターメディエートおよび鎌状赤血球貧血における鉄過重の処置に、および、ヘモクロマトーシスの処置に有用である。
【0056】
本発明の分散性錠剤の活性および特徴は、標準臨床試験および/または動物試験により指示され得る。
【0057】
本発明の分散性錠剤は、製造工程中および、慣用の包装、例えば密封アルミニウムブリスターパックまたは3重ブリスターパックで、例えば2年、または3年でさえ貯蔵の間安定である。約5%、例えば2または3%またはそれより少ない活性成分としての化合物Iが、慣用の試験で測定してこの期間中に分解し得る。例えば、1%より少ない活性成分としての化合物Iが、HDPE充填ボトル中、1年間に分解する。
【0058】
年齢、個々の状態、投与の形態および問題の臨床像に依存して、有効な一日投与量、例えば350から2800mgの化合物Iを、体重70kgの患者に投与する。
【0059】
本発明はまた、分散性錠剤の形の化合物Iの、このような処置を必要とする哺乳類、好ましくはヒト対象への投与法にも関する。本発明は、とりわけから5から40mg/体重kgの活性成分としての化合物Iの一日量を患者に投与する、このような方法に関する。任意の特定の患者のための具体的な投与量レベルは、年齢、体重、一般的健康、一つまたはそれ以上の活性成分との薬剤組み合わせ、疾患のタイプおよび重症度を含む種々の因子に依存する。
【0060】
本発明は、さらに、本発明の分散性錠剤と、化合物Iの一つまたはそれ以上の分散性錠剤を経口で投与することを指示した印刷された指示書を含む、医薬包装を提供する。
以下の非限定的実施例は本発明を説明する。
【実施例】
【0061】
実施例1:3分を超える崩壊時間の分散性錠剤製剤(125mg、250mgおよび500mg分散性錠剤)
【表1】

【0062】
実施例2:3分以下の崩壊時間の分散性錠剤製剤(125mg、250mgおよび500mg分散性錠剤)
【表2】

本発明の化合物I遊離酸の分散性錠剤は、相Iと相II成分の混合物の湿式造粒により内装を形成し、相III成分が外相を形成し、そして滑剤(相IV)を直接打錠機のパンチ上に噴霧することにより製造する。*0.1%w/wのステアリン酸マグネシウムは、1000ppmと同等である。
【0063】
実施例3:実施例2の125mg分散性錠剤の特性
【表3】

【0064】
実施例4:実施例2の250mg分散性錠剤の特性
【表4】

【0065】
実施例5:実施例2の500mg分散性錠剤の特性
【表5】

【0066】
実施例6:ステアリン酸マグネシウムアッセイ
【表6】

L.P.:実験室相、Pilot:パイロット相(実験室相の2倍のサイズのバッチ)、FSP:(製造サイズのバッチ)、P.T.:予備試験、0.1%w/wのステアリン酸マグネシウムは1000ppmと同等である。
RSD:相対標準偏差
【0067】
実施例7:実施例2の250mg分散性錠剤の特性
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤の総重量に基づいて5から40重量%存在する式
【化1】

の化合物Iまたは薬学的に許容されるその塩を含む、分散性錠剤。
【請求項2】
(a)化合物Iまたは薬学的に許容されるその塩、および(b)錠剤の製造に適した少なくとも一つの薬学的に許容される賦形剤を含み、ここで化合物Iまたは薬学的に許容されるその塩が錠剤の総重量に基づいて5から40重量%の量で存在する、分散性錠剤。
【請求項3】
錠剤の総重量に基づいて5から40重量%の量で存在する鉄−キレート化する薬理学的に有効量の化合物Iまたは薬学的に許容されるその塩を含む、分散性錠剤。
【請求項4】
化合物Iが遊離酸形である、請求項1、2または3のいずれかに記載の分散性錠剤。
【請求項5】
化合物Iが結晶形である、請求項1から4のいずれかに記載の分散性錠剤。
【請求項6】
滑剤が錠剤の総重量に基づいて1重量%より少なく存在する、請求項1から5のいずれかに記載の分散性錠剤。
【請求項7】
滑剤が錠剤の総重量に基づいて0.4重量%より少なく存在する、請求項6記載の分散性錠剤。
【請求項8】
錠剤の崩壊時間が5分以下である、請求項1から7のいずれかに記載の分散性錠剤。
【請求項9】
錠剤の崩壊時間が3分以下である、請求項1から8のいずれかに記載の分散性錠剤。
【請求項10】
薬学的に許容される賦形剤が:
(i)錠剤の総重量に基づいて35から55重量%の合計量の少なくとも一つの増量剤、
(ii)錠剤の総重量に基づいて10から35重量%の合計量の少なくとも一つの崩壊剤、
(iii)錠剤の総重量に基づいて1.5から5重量%の合計量の少なくとも一つの結合剤、
(iv)錠剤の総重量に基づいて0.2から1重量%の合計量の少なくとも一つの界面活性剤、
(v)錠剤の総重量に基づいて0.1から0.5重量%の合計量の少なくとも一つの流動促進剤、および/または
(vi)錠剤の総重量に基づいて0.4重量%より少ない合計量の少なくとも一つの滑剤
を含む、請求項2から9のいずれかに記載の分散性錠剤。
【請求項11】
滑剤がステアリン酸マグネシウムである、請求項6から10のいずれかに記載の分散性錠剤。
【請求項12】
化合物Iを、その遊離酸形で100mgから600mgの量で含む、請求項1から11のいずれかに記載の分散性錠剤。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の分散性錠剤の製造法であり、
(i)化合物Iまたは薬学的に許容されるその塩と少なくとも一つの薬学的に許容される賦形剤を混合し;
(ii)(i)で得た混合物を湿式造粒し;
(iii)(ii)で得た顆粒を少なくとも一つの薬学的に許容される賦形剤と混合して混合物を形成し;そして
(iv)滑剤を打錠機の圧縮ツールの物質接触表面に噴霧し、そして(iii)で得た混合物を圧縮して錠剤を形成する
ことを含む、方法。

【公開番号】特開2010−31022(P2010−31022A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222652(P2009−222652)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【分割の表示】特願2004−544211(P2004−544211)の分割
【原出願日】平成15年10月14日(2003.10.14)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】