説明

デプシペプチドおよびその治療的使用

一般構造(VII)または(VIII)の化合物またはそのアイソスターもしくは医薬的に許容される塩であって、式中、R1、R2(X=−CONR6−の場合)、R3およびR7は同一であっても異なっていてもよく、それぞれアミノ酸側鎖部分を表し;R2(X=−CHZ−の場合)、R4およびR6は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、炭素数1〜6のアルキル、炭素数2〜6のアルケニルまたは炭素数2〜6のアルキニルを表し;Kは炭素原子の直鎖または分岐鎖を表し、1〜10個の原子を有しており;Lはヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の活性部位において亜鉛をキレート化し得る部分、またはこのような部分にin vivoで(例えば、加水分解または還元により)変換され得る部分を表し;Mは炭素またはその他の原子の直鎖または分岐鎖であって、1〜10個の原子を有し、in vivoでの開裂により構造(VII)を生ずることが出来;そして、Zは単結合または二重結合により大員環に結合するヘテロ原子であって、Zに結合する他の基はいずれもHまたは保護基、である化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の阻害剤として作用し、故に治療的有用性を示すデプシペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
HDACはアセチル化されたリジン残基の加水分解を触媒する亜鉛金属酵素である。ヒストンにおいて、これはリジンをプロトン化状態に戻し、真核生物の転写制御において広範に見られるメカニズムであり、それによりDNAがヌクレオソーム内に密にパッケージングされる。さらに、可逆的リジンアセチル化は非ヒストンタンパク質にとって重要な調節過程である。従って、HDACを調節し得る化合物は治療において重要な可能性を有する。
【0003】
天然物であるFK228(構造I)およびスピルコスタチンA(構造II)はHDAC阻害剤としての可能性を有することが報告されているデプシペプチドである。デプシペプチドという語は、エステル結合およびペプチド結合の両方を鎖上に有するオリゴペプチドまたはポリペプチドのクラスを表す。
【0004】
FK228は4つのモノマー単位を環をまたぐ架橋とともに含んだ環状デプシペプチドである。この化合物は、Romidepsin(登録商標)の商品名のもとで臨床実験において治療薬として試験され、多くの疾患に対して有用な効果をもたらすことが示されている。
【0005】
スピルコスタチンAはFK228と構造的に関連のある環状デプシペプチドである:これは、トリペプチドと、スタチン単位と、環をまたぐ架橋とを含む環状デプシペプチドである。
【化1】

【化2】

【0006】
しかし、FK228およびスピルコスタチンAはともに天然物であるため、治療薬としての使用への最適化を行いにくい。
【0007】
これらの化合物の類似体が国際公開第2006/129105号において開示されている(主張されている優先日よりも後に公開);さらにこのような化合物が英国特許出願第0623388.6号からの優先権を主張する未公開PCT出願において開示されている。これらはFK228およびスピルコスタチンAに対して改善されたHDAC阻害特性を示すか、またはこれらを医薬としてより有用なものにする他の薬物様特性を有する場合がある。これらの化合物は構造III、IV、VおよびVIに示す一般構造を有し、ここでR1、R2、R3およびR4は同一であっても異なっていてもよく、アミノ酸側鎖部分を表し、各R6は同一であっても異なっていてもよく、水素または炭素数1〜6のアルキル、炭素数2〜6のアルケニルまたは炭素数2〜6のアルキニルを表し、Pr1およびPr2は同一であっても異なっていてもよく、水素またはチオール保護基を表す。
【0008】
理論に拘束されるものではないが、R1が=CH−CH3、R2が−CH(CH32、R3が−CH(CH32、R4およびR6がともに−H、ならびにPr1およびPr2がともに−Hである構造IVが細胞内部で構造Iからジスルフィド結合の還元により形成され、こうして形成された4−チオ−ブチル−1−エンは該化合物の作用機序における重要な部分であると考えられる。そのため、以前には、この基を欠く化合物は治療薬として有用性が低いであろうと示唆されていた。
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【0009】
この概念は、全く異なる環状構造を有する環状デプシペプチドHDAC阻害剤であるFR−901375が、FK228およびスピルコスタチンAに見られるものと同一の、環を横切るジスルフィド含有架橋を有するという観察によって支持される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、構造I〜VIの類似体と;当業者に明白であろう様式でこれらと関連している構造の類似体であって、「架橋」構造が他のデプシペプチドのものとは異なっており、驚くべきことにHDAC酵素の効果的な阻害剤であることが見出され、人の疾患の治療法としてより大きな可能性を有し得ることを示す特性を有する類似体と;を提供する。これらの化合物は以下、架橋変種デプシペプチド(Bridge Variant Depsipeptide;BVD)と称する化合物のクラスのメンバーとして表す。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このBVDのクラスは構造VIIおよびVIII:
【化7】

【化8】

によって定義され、
式中:
【化9】

または、
【化10】

であり;
1、R2、R3、R4およびR6は上記の意味を有し;
Kは、一部は単結合であってよく一部は2重結合であってよくまた一部は3重結合であってよい結合により連結された、1〜10個の原子を有する炭素原子の直鎖または分岐鎖を表し、ここで構造VIIは構造IV(ここで、R1は=CH−CH3、R2は−CH(CH32、R3は−CH(CH32、および、R4、R6、Pr1、Pr2は全て−H)または構造VI(ここで、R1は−CH(CH32、R2は−H、R3は−CH3、および、R4、R6、Pr1、Pr2は全て−H)を形成せず、ならびに構造VIIIは構造IまたはIIを形成せず;
Lは、HDACの活性部位において亜鉛をキレート化し得る部分、またはHDACの活性部位においてin vivoで(加水分解または還元等により)亜鉛をキレート化し得る部分になり得る部分であり、SおよびSPr1を有し、ここでPr1は上記の意味を有し、ここで構造VIIIは構造I(FK228)または構造II(スピルコスタチンA)を形成せず、または構造VIIは構造IV(FK228の還元型であって、ここでR1は=CH−CH3、R2はCH(CH32、R3はCH(CH32、R4およびR6はH、Xは−C(O)NR6−、Kは−CH=CHCH2CH2−、Lは−SH、ならびにR7は−CH2SH)を形成せず、または構造VIIは構造VI(スピルコスタチンAの還元型であって、ここでR1は−CH(CH32、R2はH、R3はCH3、R4およびR6はH、Xは−CHZ−、Zは−OH、Kは−CH=CHCH2CH2−、LはSH、ならびにR7は−CH2SH)を形成せず;
7はアミノ酸基側鎖、−X基または−W−X基を表し、ここでWは、一部は単結合であってよく一部は2重結合であってよくまた一部は3重結合であってよい結合により連結された、1〜10個の原子を有する炭素原子の直鎖または分岐鎖であり、Xは−H、−NH2、N−R6、N−(R62−OH、−O−R6、−ハロゲン、S−Pr2のうちの1つであり、ここでR6、SおよびPr2は上記の定義と同一の意味を有し、ここで構造VIIは構造IV(FK228の還元型であって、ここでR1は=CH−CH3、R2はCH(CH32、R3はCH(CH32、R4およびR6はH、Xは−C(O)NR6−、Kは−CH=CHCH2CH2−、Lは−SH、ならびにR7は−CH2SH)を形成せず、または構造VIIは構造VI(スピルコスタチンAの還元型であって、ここでR1は−CH(CH32、R2はH、R3はCH3、R4およびR6はH、Xは−CHZ−、Zは−OH、Kは−CH=CHCH2CH2−、LはSH、ならびにR7は−CH2SH)を形成せず;そして、
Mは、一部は単結合であってよく一部は2重結合であってよくまた一部は3重結合であってよい結合により連結され、1〜10個の原子を有する、炭素または他の原子の直鎖または分岐鎖を表し、ここでM内部の任意の結合のin vivoでの開裂は構造VIIを生じ、ここで構造VIIIは構造IまたはIIを形成せず、構造VIIIのin vivoでの開裂で形成された構造VIIは構造I(FK228)または構造II(スピルコスタチンA)を形成しない。
【0012】
Zは−Q−Pr3または−Q(Pr3)Pr4を有する種であり、ここでQはヘテロ原子であり、該ヘテロ原子は前記デプシペプチドの大員環に直接隣接し、例えば=O、−OPr3、−N(Pr3)Pr4、−SPr3であり、ここでPr3およびPr4は同一であっても異なっていてもよく、チオール保護基、水素またはヘテロ原子保護基のいずれかを表し、その例としてはエーテル、エステル、アミド、チオエーテルまたはチオエステルを含み得る。
【0013】
本発明はさらに、HDACの阻害剤として用いる薬剤の製造における、上に定義されたBVDまたはその医薬的に許容される塩の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
構造VIIおよびVIIIの化合物の合成は、典型的には、−CO−CR−NH−が大員環の部分を形成し、Rが側鎖部分であるアミノ酸を用いて行われる。R1、R2、(X=−CONR6−である構造VIIおよびVIIIにおいて)R3、およびR7がこのように導入され得る。R2(X=−CHZ−である構造VIIおよびVIIIにおいて)およびR4はこのようなアミノ酸に由来しないことも可能であるが、やはりそのような部分であり得る。
【0015】
本明細書に用いられる「アミノ酸側鎖部分」という語は、天然および非天然のアミノ酸に存在し得る任意の側鎖のことを表す。非天然のアミノ酸に由来するアミノ酸側鎖部分の例を、由来するアミノ酸を括弧内に示しながら挙げると、−(CH22−C(O)−O−C(CH33(tert−ブトキシ−カルボニルメチルアナリン)、−(CH24−NH−C(O)−O−C(CH33(Nε−(tert−ブトキシカルボニル)−リジン)、−(CH23−NH−C(O)NH2(シトルリン)、−CH2−CH2OH(ホモセリン)および−(CH22−CH2NH2(オルニチン)が挙げられる。
【0016】
炭素数1〜6のアルキル基または部分は直鎖または分岐鎖であってよい。典型的には、炭素数1〜4のアルキル基または部分であり、例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、sec−ブチルおよびt−ブチルである。好ましい例としては、メチル、i−プロピルおよびt−ブチルが挙げられる。
【0017】
炭素数2〜6のアルケニル基または部分は直鎖または分岐鎖であってよい。典型的には、これは炭素数2〜4のアルケニル基または部分である。アルケニル基は1または2不飽和であることが好ましく、より好ましくは1不飽和である。例としてはビニル、アリル、1−プロペニル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニルおよび3−ブテニルが挙げられる。
【0018】
炭素数2〜6のアルキニル基または部分は直鎖または分岐鎖であってよい。典型的には、炭素数2〜4のアルキニル基または部分である。
【0019】
チオール保護基は典型的には:
(a)チオエーテルを形成してチオール基を保護する保護基であって、例えば、炭素数1〜6のアルコキシ(メトキシ等)、炭素数1〜6のアシルオキシ(アセトキシ等)、ヒドロキシおよびニトロ、ピコリル、ピコリル−N−オキシド、アントリルメチル、ジフェニルメチル、フェニル、t−ブチル、アダマンチル、炭素数1〜6のアシルオキシメチル(例えばピバロイルオキシメチル、第3級ブトキシカルボニルオキシメチル)によって所望により置換されていてもよいベンジル基;
(b)モノチオ、ジチオまたはアミノチオアセタールを形成してチオール基を保護する保護基であって、例えば炭素数1〜6のアルコキシメチル(メトキシメチル、イソブトキシメチル等)、テトラヒドロピラニル、ベンジルチオメチル、フェニルチオメチル、チアゾリジン、アセトアミドメチル、ベンズアミドメチル;
(c)チオエステルを形成してチオール基を保護する保護基であって、例えば第3級ブトキシカルボニル(BOC)、アセチルおよびその誘導体、ベンゾイルおよびその誘導体;または
(d)カルバミン酸チオエステルを形成してチオール基を保護する保護基であって、例えばカルバモイル、フェニルカルバモイル、炭素数1〜6のアルキルカルバモイル(メチルカルバモイルおよびエチルカルバモイル等)
である。
【0020】
典型的には、Pr1およびPr2は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素;またはチオエーテル、モノチオ、ジチオもしくはアミノチオアセタール、チオエステル、またはカルバミン酸チオエステルを形成してチオール基を保護する保護基;を表す。
【0021】
典型的には、Pr3およびPr4は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素;あるいはチオエーテル、モノチオ、ジチオもしくはアミノチオアセタール、チオエステルまたはカルバミン酸チオエステルを形成してチオール基を保護する保護基;あるいはエーテル、エステル、アセタール、ホスフェートまたはサルフェートを形成してヒドロキシル基を保護する保護基;あるいはアミノまたはアミドを形成してアミン基を保護する保護基を表す。
【0022】
基Lの具体的な性質は、それが所定の機能性を有する限り決定的に重要ではなく、各種の適切な基が当業者に明らかであろう。その様な基としては、SまたはSPr1(ここでPr1はHまたはチオール保護基である)のみではなく、−C(O)OH、−C(O)OPr5(ここでPr5はエステルを形成し得る保護基である)、−C(O)NHOH、−C(O)NHOPr6(ここでPr6はヒドロキサム酸保護基である)、−C(O)NH2、−C(O)NHR8(ここでR8はアルキル、アルケニル、アリールまたはヘテロアリール基である)、または−C(O)N(R8)R9(ここでR8およびR9は同一であっても異なっていてもよく、アルキル、アルケニル、アリールまたはヘテロアリール基である)も挙げられる。
【0023】
一実施形態において、アミノ酸側鎖部分は天然アミノ酸由来のものである。天然アミノ酸由来のアミノ酸側鎖部分の例を、由来元のアミノ酸を括弧内に示しながら挙げると、−H(グリシン)、−CH3(アラニン)、−CH(CH32(バリン)、−CH2CH(CH32(ロイシン)、−CH(CH3)CH2CH3(イソロイシン)、−(CH24NH2(リジン)、−(CH23NHC(=NH)NH2(アルギニン)、−CH2−(5−1H−イミダゾリル)(ヒスチジン)、−CH2CONH2(アスパラギン)、−CH2CH2CONH2(グルタミン)、−CH2COOH(アスパラギン酸)、−CH2CH2COOH(グルタミン酸)、−CH2−フェニル(フェニルアラニン)、−CH2(4−OH−フェニル)(チロシン)、−CH2−(3−1H−インドリル)(トリプトファン)、−CH2SH(システイン)、−CH2CH2SCH3(メチオイン)、−CH2OH(セリン)、および−CH(OH)CH3(スレオニン)が挙げられる。
【0024】
一実施形態において、各アミノ酸側鎖は天然アミノ酸に存在するアミノ酸側鎖部分であるか、または−(CH22−C(O)−O−C(CH33(tert−ブトキシ−カルボニルメチルアナリン)、−(CH24−NH−C(O)−O−C(CH33(Nε−(tertブトキシカルボニル)−リジン)、−(CH23−NH−C(O)NH2(シトルリン)、−CH2−CH2OH(ホモセリン)または−(CH22−CH2NH2(オルニチン)である。
【0025】
本発明の好ましい一実施形態において、R1は−CH(CH32、R2は−H、R3は−CH(CH32、R4は−H、R6は−H、R7は−CH3、Xは−CH(Z)−、Zは−OH、Kは−CH=CHCH2CH2−、およびLは−S−C(O)CH3であり、実施例において化合物10として示される。
【0026】
本発明の好ましい他の一実施形態において、R1は−CH(CH32、R2は−H、R3は−CH(CH32、R4は−H、R6は−H、R7は−CH3、Xは−CH(Z)−、Zは−OH、Kは−CH=CHCH2CH2−、およびLは−SHであり、実施例において化合物9として示される。
【0027】
本発明の好ましい他の1実施形態において、R1は−CH(CH32、R2は−H、R3は−CH3、R4は−H、R6は−H、R7は−CH2Ph、Xは−CONR6−、Kは−CH=CHCH2CH2−、およびLは−S−C(O)CH3であり、実施例において化合物17として示される。
【0028】
本発明の好ましい他の一実施形態において、R1は−CH(CH32、R2は−H、R3は−CH3、R4は−H、R6は−H、R7は−CH2Ph、Xは−CONR6−、Kは−CH=CHCH2CH2−、およびLは−SHであり、実施例において化合物16として示される。
【0029】
本明細書に用いられる医薬的に許容される塩とは、医薬的に許容される酸または塩基との塩である。医薬的に許容される酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、二リン酸、臭化水素酸または硝酸等の無機酸;およびクエン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、酒石酸、安息香酸、酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸またはp−トルエンスルホン酸等の有機酸;の両者が挙げられる。医薬的に許容される塩基としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウムまたはカリウム)およびアルカリ土類金属(例えば、カルシウムまたはマグネシウム)の水酸化物、ならびにアルキルアミン、アラルキルアミンまたは複素環式アミン等の有機塩基が挙げられる。
【0030】
本明細書に用いられる「アイソスター」の語は、ある原子または原子団が、他の概して類似した原子または原子団と交換されることによって生じた化合物を表す。構造VIIまたはVIIIの化合物においてアイソステリックな基を有する部分は、好ましくは−NR6−CHR1−CO−(または−NR6−CHR1−CH(OR8)−)、−NR6−CHR2−CO−O−(または−CHR2−CO−−O−)および−NR6−CO−CHR3−NR6−CO−である。構造VIIまたはVIIIの化合物においてアイソステリックな基を有する部分は、より好ましくは、−NR6−CHR1−CO−(または−NR6−CHR1−CH(OR8)−)および−NR6−CHR2−CO−O−(または−CHR2−CO−O−)である。このようなアイソスターの例としては、構造VIIまたはVIIIの化合物であって、−NH−部分が−CH2−、−O−または−S−に置換され、−CO−部分が−S−または−(=NH)−に置換され、および−O−部分が−S−、CH2−または−NH−によって置換されたものが挙げられる。
【0031】
誤解を避けるために述べると、本発明は、in vivoで反応して本発明の化合物またはそのアイソスターもしくはその医薬的に許容される塩を生ずるプロドラッグをも包含する。
【0032】
BVDは従来の経路、例えば次のスキームを用いて調製することが出来る:
【化11】

ここで、基R1〜R7、L、K、MおよびZは上記定義の通りである。
【0033】
スキーム1、工程(a)において、側鎖R1を有するアミノ酸が側鎖R2を有するエステルエノラートと縮合し、次いで還元されてスタチン単位を生成する。工程(b)において、該スタチンが側鎖R7を有するアミノ酸と縮合してトリペプチドアイソスターを生成する。工程(c)において、該トリペプチドアイソスターが側鎖R3を有するアミノ酸と結合してテトラペプチドアイソスターを提供する。工程(d)において、該ペプチドのN末端が脱保護され、遊離アミンがD−ヒドロキシ酸誘導体と結合し、該D−ヒドロキシ酸誘導体においてはR5は一時的保護基であって、その除去によりR5がHである化合物を産生することが出来、LGは(例えば)Yurek−George, A.; Habens, F.; Brimmell, M.; Packham, G.; Ganesan, A. J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 1030−1031で報告されているようなキラル補助基の形態の脱離基であるか、またはLGはアルコールであって、これにより標準的なアミドカップリングを可能にする遊離酸を生成する。工程(e)において、エステル基が加水分解され、その後工程(f)において環化が起こる。亜鉛結合基Lのさらなる化学変換、例えば−SHのSPr2への変換を行い、亜鉛結合基を保護してもよい。
【化12】

【0034】
スキーム2、工程(a)において、側鎖R2を有するアミノ酸エステルが側鎖R1を有する第2のアミノ酸と縮合し、ジペプチドを生成する。工程(b)において、該ジペプチドが側鎖R7を有する第3のアミノ酸と結合してトリペプチドを生成する。工程(c)において、該トリペプチドがアミノ酸と結合して保護されたテトラペプチドを提供する。工程(d)において、該ペプチドのN末端が脱保護され、遊離アミンがβ−ヒドロキシ酸誘導体と結合し、ここでR5は一時的保護基であって、除去されてR5がHの化合物を産生することが出来、LGは(例えば)Yurek−George, A.; Habens, F.; Brimmell, M.; Packham, G.; Ganesan, A. J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 1030−1031で報告されているようなキラル補助基の形態の脱離基であるか、またはLGはアルコールであって、そのため標準的なアミドカップリングを可能にする遊離酸を生成する。工程(e)において、エステル基が加水分解され、その後工程(f)において環化が起こる。亜鉛結合基Lのさらなる化学変換、例えば−SHのSPr2への変換を行い、亜鉛結合基を保護してもよい。
【0035】
6が水素以外である本発明の化合物を、R6が水素である本発明の対応する化合物または中間体をアルキル化することにより、または適切に置換された出発原料を用いることにより、得ることが出来る。
【0036】
式VIIIの化合物を、R7およびLが結合し、基Mを形成する場合に調製することが出来る。
【0037】
当業者が理解するであろう通り、R1、R2、R3、R4、R6、R7、L、KおよびZのうち1つが−OH、−SH、−NH2または−COOH等の官能基を有する場合、その基は導入後の1または複数の反応工程において保護されることが好ましい場合がある。この場合、問題の基はその導入後に別の工程において保護されてもよく、またはその導入時に既に保護されていてもよい。その際に用いることが出来る適切な保護基は当業者の理解するところであろう。
【0038】
このようにして得られたBVD類似体を適切な酸または塩基を用いた処理により塩化してよい。上記のいずれかの方法により得られたラセミ混合物を、標準的な手法、例えばキラルクロマトグラフィーカラム上での溶出により分離してよい。
【0039】
本発明の好ましい化合物は、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)が示すものと同等以上のHDAC阻害活性を有する。従って、さらなる実施形態において、本発明は、SAHAが示すものと同等以上のHDAC阻害活性を有する化合物を選択する方法を提供し、該方法は:
(i)式(X)の化合物を式(XI)の化合物と反応させるか、
【化13】

[式中、R1、R2およびR6は上記定義の通りであり、R8は炭素数1〜4のアルキルまたは炭素数2〜4のアルケニルであり、Yはアミノ保護基である];
または、(i)式(XII)の化合物を(XIII)の化合物と反応させ、
【化14】

[式中、R1、R2およびR6は上記定義の通りであり、R8は炭素数1〜4のアルキルまたは炭素数2〜4のアルケニルであり、Yはアミノ保護基である];
(ii)このようにして得られた中間体を脱保護し、式(XIV)の化合物と反応させ、
【化15】

[式中、R6およびR7は上記定義の通りであり、Y’はアミノ保護基である];
(iii)このようにして得られた中間体を脱保護し、式(XV)の化合物と反応させ、
【化16】

[式中、R3およびR6は上記定義の通りであり、Y’’はアミノ保護基である];
(iv)このようにして得られた中間体を脱保護し、式(XVI)の化合物と反応させ、
【化17】

[式中、R4、R5、KおよびLは上記定義の通りであり、R5は水素またはヒドロキシ保護基であり、LGは脱離基である];
(v)このようにして得られた中間体上のβ−ヒドロキシ基を所望によっては脱保護してR5保護基を除去してそれをHに置換し;
(vi)このようにして得られた中間体を加水分解および環化し;
(vii)所望によっては亜鉛結合基を修飾し、この修飾は例えば保護基Pr1またはPr2を付加することによるものであり;
(viii)所望によってはR1、R2、R3およびR7上に存在する任意の保護基を除去してそれらをHに置換し;そして
(ix)このようにして得られた化合物をスクリーニングしてそのHDAC阻害剤としての活性を測定すること;
によって、式VIIまたはVIIIの化合物を調製することを含む。
【0040】
典型的には、工程(vi)において、エステル基の加水分解は環化よりも前に実施される。
【0041】
保護基Y,Y’およびY’’についてはその正体としては各種のものを用いてよく、好ましい正体はそれぞれの場合において存在する具体的な基の性質によって決まるであろうということは当業者の理解するであろう。
【0042】
基Y,Y’およびY’’は、例えばt−ブトキシカルボニル(Boc)または9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)であってよい。典型的には、それらはFmocである。
【0043】
脱離基LGの適切な正体は当業者の理解するところであろう。これは、例えば、Yurek−George, A. et al (J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 1030−1031)に説明されている、N原子を介して結合したチアゾリジンチオン基等のキラル補助基であってよい。あるいは、−OH基であってもよい。
【0044】
基R8は典型的には炭素数1〜4のアルキルまたは炭素数1〜4のアルケニル基である。より典型的には、メチルまたはアリルである。
【0045】
各種のアッセイがHDAC阻害の試験に適しており、それらアッセイを、工程(viii)で得られた化合物の活性を公知のHDAC阻害剤SAHAの活性と比較して測定するのに用いることが出来るということは、当業者の理解するところであろう。従って、HDACに対する被験化合物のIC50を、例えばin vitroアッセイにおいて測定し、同一のアッセイ条件下におけるSAHAのIC50と比較することが出来る。被験化合物がSAHA以下のIC50値を有する場合、それはSAHAが示す活性と同等以上のHDAC阻害活性を有すると理解されるべきである。
【0046】
好ましい一実施形態において、本発明は上に定義されたようにSAHAが示す活性と同等以上のHDAC阻害活性を有する化合物を選択するための方法を提供し、ここで工程(ix)において、前記スクリーニング工程はin vitro HDACアッセイである。典型的には、前記アッセイは、被験化合物およびSAHAを、各種濃度で、希釈したHela核抽出物と接触させ、Hela核抽出物に対する該被験化合物のIC50とSAHAのそれとを測定することを含む。Hela核抽出物に対して測定されたIC50値が、同一のアッセイ条件下におけるSAHAのIC50以下である被験化合物は、SAHAが示す値と同等以上の阻害活性を有すると理解されるべきである。典型的には、前記アッセイはHDAC蛍光活性アッセイキット(Biomol,UK)を用いて行われ、被験化合物は分析前に還元される。
【0047】
他の一実施形態において、本発明はSAHAが示すものと同等以上のヒト癌細胞増殖阻害活性を有する化合物を選択するための方法を提供し、該方法は、構造VIIまたはVIIIの化合物を上記定義の工程(i)〜(viii)により調製し、その後(ix)このようにして得られた化合物をスクリーニングして、そのヒト癌細胞増殖阻害剤としての活性を測定することを含む。
【0048】
各種のアッセイがヒト癌細胞増殖阻害の試験に適しており、それらアッセイを、工程(viii)で得られた化合物の活性をSAHAの活性と比較して測定するのに用いることが出来るということは、当業者の理解するところであろう。従って、ヒト癌細胞増殖に対する被験化合物のIC50を、例えばin vitroアッセイにおいて測定し、同一のアッセイ条件下におけるSAHAのIC50と比較することが出来る。被験化合物がSAHA以下のIC50値を有する場合、それはSAHAが示すものと同等以上の阻害活性を有すると理解されるべきである。典型的には、この実施形態において、工程(ix)は、被験化合物およびSAHAを、各種濃度で、MCF7乳癌、HUT78 T細胞白血病、A2780卵巣癌、PC3またはLNCAP前立腺癌細胞株と接触させ、該細胞株に対する被験化合物のIC50とSAHAのそれとを測定することを含んだin vitroアッセイを含む。これら細胞株のいずれかに対して測定されたIC50値が、同一のアッセイ条件下におけるSAHAのIC50以下である被験化合物は、SAHAと同等以上の阻害活性を有すると理解されるべきである。典型的には、この実施形態において、前記アッセイはCyQuant(登録商標)アッセイシステム(Molecular Probes, Inc. USA)を用いて行われる。
【0049】
他の好ましい一実施形態において、本発明はSAHAが示すものと同等以上の抗炎症活性を有する化合物を選択するための方法を提供し、該方法は、構造VIIまたはVIIIの化合物を上記定義の工程(i)〜(viii)により調製し、その後(ix)このようにして得られた化合物をスクリーニングして、その抗炎症活性を測定することを含む。
【0050】
各種のアッセイが化合物の抗炎症活性の評価に適していることは、当業者の理解するところであろう。SAHAと比較した被験化合物の抗炎症活性は、例えば、化合物が末梢血単核球(PBMC)からのTNFαの産生を阻害する活性を、SAHAとの比較において測定することで決定してよい。従って、被験化合物がPBMCからのTNFαの産生を阻害する能力を、例えばアッセイにおいて測定し、同一の条件下でのSAHAの活性と比較することが出来る。被験化合物が同一アッセイ条件下でSAHA以上のTNFα産生に対するin vitro阻害活性を有する場合、それはSAHAが示す活性と同等以上の抗炎症活性を有すると理解されるべきである。典型的には、工程(viii)はQuantikine(登録商標)ヒト−αアッセイキット(R&D systems、Abingdon UK)を用いて行われる。
【0051】
この実施形態の他の態様において、SAHAと比較した被験化合物の抗炎症活性は、化合物がBalb/cマウスの炎症を抑制する活性を、SAHAとの比較において測定することで決定してよい。被験化合物が同一アッセイ条件下でSAHA以上のin vivo抑制活性を有する場合、それはSAHAが示す活性と同等以上の抗炎症活性を有すると理解されるべきである。典型的には、この実施形態において、工程(viii)は、被験化合物およびSAHAが、化学物質負荷により誘導されたBalb/cマウスの炎症を抑制するin vivoでの活性を評価することにより行われる。典型的には、前記化学物質負荷はマウスへのオキサラゾン(oxalazone)またはアセトンの局所投与を伴う。この実施形態において、調査対象の化合物は化学物質負荷の前または後に適用してよい。
【0052】
他の好ましい一実施形態において、本発明は、SAHAが示すものと同等以上の、MCF7細胞における優勢なG2/M期停止または細胞死を誘導する活性を有する化合物を選択するための方法を提供し、該方法は、構造VIIまたはVIIIの化合物を上記定義の工程(i)〜(viii)により調製し、その後(ix)このようにして得られた化合物をスクリーニングして、MCF7細胞において優勢なG2/M期停止または細胞死を誘導する活性をSAHAとの比較において測定することを含む。
【0053】
本発明の化合物はHDACの阻害剤であると認められる。本発明の化合物は従って治療上有用である。
【0054】
本発明の医薬組成物は構造VIIまたはVIIIの化合物と、医薬的に許容される希釈剤または担体とを含む。このような医薬組成物は典型的には85重量%以下の本発明の化合物を有する。より典型的には、それは50重量%以下の本発明の化合物を有する。好ましい医薬組成物は無菌であり、かつ発熱物質を含まない。さらに、本発明により提供される医薬組成物は、典型的には、実質的に純粋な光学異性体である本発明の化合物を含む。好ましくは、該医薬組成物は構造VIIもしくはVIIIの化合物またはそのアイソスターの、医薬的に許容される塩を含む。
【0055】
本発明の化合物およびそれらを含む組成物は、各種の剤形で投与してよい。一実施形態において、本発明の化合物を含む医薬組成物は、経口、経腸、非経口、鼻腔内、もしくは経皮投与、または吸入もしくは坐剤による投与に適した形式に製剤してよい。投与の典型的な経路は、非経口、鼻腔内もしくは経皮投与、または吸入による投与である。
【0056】
本発明の化合物は経口的に、例えば錠剤、トローチ剤、ロゼンジ、水性または油性懸濁剤、分散(dispersible)粉末剤または顆粒剤として、投与することが出来る。本発明の好ましい医薬組成物は経口投与に適した組成物、例えば錠剤およびカプセル剤である。
【0057】
本発明の化合物は非経口的に投与してよく、それは皮下でも、静脈内でも、筋肉内でも、胸骨内でも、経皮でも、または輸液法によるものでもよい。該化合物は坐剤として投与してもよい。
【0058】
本発明の化合物は吸入により投与してもよい。吸入療法の利点は、経口経路で摂取される多くの薬物と比べ、血液供給に富む領域に直接送達されることである。従って、肺胞は莫大な表面積と豊富な血液供給とを有し初回通過代謝が回避されるために吸収が非常に速い。さらなる利点は肺系統の疾患の治療であり、吸入によって薬物が治療を要する細胞の近傍まで送達される。
【0059】
本発明はこのような医薬組成物を含む吸入装置も提供する。典型的には該装置は、薬物を吸入器から押し出すための医薬的に許容される化学的噴射剤(chemical propellant)を有する定量吸入器(MDI)である。
【0060】
本発明の化合物は鼻腔内投与により投与してもよい。鼻腔の高度に透過性の組織は薬物に対して非常に受容性があり、薬物を速やかにかつ効率的に吸収するが、この吸収は錠剤型の薬物より速やかで効率的である。経鼻的なドラッグデリバリーは注射よりも苦痛が少なく、侵襲的でもないため、患者の不安が少ない。この方法によれば吸収が非常に速く、通常は初回通過代謝が回避され、そのため患者間でのばらつきが減少する。さらに、本発明はこのような医薬組成物を含む鼻腔内装置(intranasal device)も提供する。
【0061】
本発明の化合物は経皮投与により投与してもよい。本発明は従って本発明の化合物を含む経皮パッチも提供する。
【0062】
本発明の化合物は舌下投与により投与してもよい。本発明は従って本発明の化合物を含む舌下錠も提供する。
【0063】
本発明の化合物は、抗菌剤;あるいは、患者内に、または患者上もしくは患者内に生息する共生もしくは寄生生物内に、存在する可能性があって該化合物を分解し得るプロテアーゼ酵素の阻害剤;等の、患者の正常な代謝以外の過程によって前記物質が分解されるのを減ずる薬剤とともに製剤されてもよい。
【0064】
経口投与のための分散液(liquid dispersion)はシロップ剤、乳剤および懸濁剤であってよい。
【0065】
懸濁剤および乳剤は担体として、例えば、天然ゴム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルアルコールを含んでいてもよい。筋肉内注入用の懸濁剤または溶液は、前記活性化合物とともに医薬的に許容される担体、例えば滅菌水;オリーブ油;オレイン酸エチル;プロピレングリコール等のグリコール類;および所望により、適した量の塩酸リドカイン;を含んでいてよい。
【0066】
注射または吸入のための溶液は、担体として、例えば滅菌水を含んでいてよく、または好ましくは該溶液は無菌、水性、等張食塩液の形態であってよい。
【0067】
本発明の化合物はHDACに媒介される疾患の治療または予防において治療上、有用である。従って、本発明は、HDACの活性に実質的に影響される疾患の治療または予防における使用のための薬物の製造における、構造VIIもしくはVIIIの化合物またはその医薬的に許容される塩の使用を提供する。さらに、HDACに媒介される疾患に罹った、または罹りやすい患者を治療する方法も提供され、該方法は前記患者に有効量の構造VIIもしくはVIIIの化合物、そのアイソスター、またはその医薬的に許容される塩を投与することを含む。
【0068】
一実施形態において、本発明の化合物は、HDACの他の公知の阻害剤、例えばSAHAと組み合わせて用いてよい。この実施形態において、この組み合わせ製品は、該薬物のそれぞれを同時に、別々に、または順次用いるためにそれらを含むように製剤されてよい。
【0069】
本発明は従って、HDACの他の公知の阻害剤、例えばSAHAとの共投与に使用するための薬物の製造における、構造VIIもしくはVIIIの化合物、またはそのアイソスターもしくは医薬的に許容される塩の使用を提供する。
【0070】
本発明の化合物は癌の治療および予防の両者において用いることが出来、また単独療法において、または併用療法において用いることが出来る。併用療法において用いられる場合、本発明の化合物は典型的にはシスプラチン類等の小化合物、代謝拮抗剤、DNAトポイソメラーゼ阻害剤、放射線、抗体を用いた療法(例えば、ハーセプチンおよびリツキシマブ)、抗癌ワクチン注射、遺伝子治療、細胞治療、ホルモン治療、放射線治療またはサイトカイン療法とともに用いられる。
【0071】
本発明の一実施形態において、本発明の化合物は、癌の治療において他の化学療法薬または抗腫瘍薬と組み合わせて用いられる。このような他の化学療法薬または抗腫瘍薬の例としては、ミトキサントロン;ビンクリスチンおよびビンブラスチン等のビンカ・アルカロイド;ダウノルビシンおよびドキソルビシン等のアントラサイクリン系抗生物質;クロラムブシルおよびメルファラン等のアルキル化剤;パクリタキセル等のタキサン類;メトトレキサートおよびトムデックス等の抗葉酸剤;エトポシド等のエピポドフィロトキシン類;イリノテカンおよびその活性代謝物SN38などのカンプトテシン類;ならびに国際公開第02/085400号に開示されているDNAメチル化阻害剤等のDNAメチル化阻害剤が挙げられる。
【0072】
本発明によると、従って、本発明の化合物と他の化学療法薬または抗腫瘍薬とを含む製品が、癌の緩和において同時に、別々にまたは順次用いるための組み合わせ製剤として提供される。さらに本発明によって提供されるのは、他の化学療法薬または抗腫瘍薬との共投与による癌の緩和において用いるための薬物の製造における、上記定義のFK228類似体またはそのアイソスターもしくはその医薬的に許容される塩の使用である。本発明の化合物と前記の他の薬剤はどのような順序で投与されてもよい。これら両者の場合において、本発明の化合物と他の薬剤とは一緒に、または、別々の場合には医師が決定した任意の順序で、投与してよい。
【0073】
HDACはいくつかの異なる疾患の病理および/または症候に寄与しているとされており、HDACの阻害による患者内のHDAC活性減少を、これらの病状に治療的に対処するために用いることが出来る。本発明のHDAC阻害剤を用いて治療することが出来る各種疾患の例が本明細書に記載されており、構造VIIまたはVIIIにより記載された本発明の化合物の使用が本明細書に含まれる。なお、HDACが各種経路において果たす生物学的役割がより完全に理解されるようになるとともに、本明細書に開示されたもの以外のさらなる疾患も、本発明の化合物の用途として将来同定されることがあり得る、ということが注記される。
【0074】
本発明のHDAC阻害剤を治療に用いることが出来る適応症の一群として、望ましくない、または制御されない細胞増殖を伴うものが挙げられる。このような適応症の例としては、良性腫瘍;原発腫瘍および腫瘍転移等の各種癌;再狭窄(冠動脈、頸動脈および脳の病変等);内皮細胞の異常刺激(アテローム性動脈硬化症);手術による生体組織に対する傷害;異常な創傷治癒;異常血管形成;組織の線維化を引き起こす疾患;反復動作疾患(repetitive motion disorder);高度には血管新生していない組織の疾患;ならびに臓器移植と関連した増殖反応が挙げられる。HDAC阻害剤のより具体的な適応症の例としては、前立腺癌、肺癌、急性白血病、多発性骨髄腫、膀胱癌、腎癌、乳癌、大腸癌、神経芽細胞腫および黒色腫が挙げられるがこれらに限定されない。
【0075】
一実施形態において、望ましくない制御されない細胞増殖と関連した疾患を治療するための方法が提供される。該方法は制御されない細胞増殖に罹患している患者に治療的有効量の本発明のHDAC阻害剤を投与し、この制御されない細胞増殖を減少させることを含む。用いるべき阻害剤の具体的投与量は、病状の重篤度、投与経路、および主治医により決定されうる関連要因に依存するであろう。一般に、許容される有効な1日量は、制御されない細胞増殖を有効に減速させるか、または無くすのに十分な量である。
【0076】
本発明のHDAC阻害剤は、他の薬剤と併せて用いて、望ましくない制御されない細胞増殖を阻害してもよい。本発明のHDAC阻害剤と合わせて用いてよい他の抗細胞増殖剤の例としては、レチノイド酸およびその誘導体、2−メトキシエストラジオール、アンギオスタチン(登録商標)タンパク質、エンドスタチン(登録商標)タンパク質、スラミン、スクアラミン、メタロプロテイナーゼ−1組織阻害剤、メタロプロテイナーゼ−2組織阻害剤、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤−1、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤−2、軟骨由来阻害剤、パクリタキセル、血小板第4因子、硫酸プロタミン(クルペイン)、硫酸化キチン誘導体(ズワイガニ殻から調製)、硫酸化多糖類ペプチドグリカン複合体(sp−pg)、スタウロスポリン、マトリックス代謝のモジュレーター、例えばプロリン類似体((1−アゼチジン−2−カルボン酸(LACA)、シスヒドロキシプロリン、d,l−3,4−デヒドロプロリン、チアプロリン)、β−アミノプロピオニトリルフマレート、4−プロピル−5−(4−ピリジニル)−2(3H)−オキサゾロン;メトトレキサート、ミトキサントロン、ヘパリン、インターフェロン、2マクログロブリン−血清、chimp−3、キモスタチン、β−シクロデキストリンテトラデカサルフェート、エポネマイシン;フマギリン、金チオリンゴ酸ナトリウム、d−ペニシラミン(CDPT)、β−1−抗コラゲナーゼ−血清、α2−抗プラスミン、ビサントレン、ロベンザリット2ナトリウム、n−(2−カルボキシフェニル−4−クロロアントロニル酸2ナトリウム、すなわち「CCA」、サリドマイド;アンゴスタチックステロイド(angostatic steroid)、カルボキシアミノイミダゾール;BB94等のメタロプロテイナーゼ阻害剤が挙げられるがこれらに限定されない。用いてもよい他の抗血管新生剤の他の例としては、抗体、好ましくは以下の血管新生促進因子(βFGF、αFGF、FGF−5、VEGFアイソフォーム、VEGF−C、HGF/SFおよびAng−1/Ang−2)に対するモノクローナル抗体が挙げられる。Ferrara N. and Alitalo, K. ”Clinical application of angiogenic growth factors and their inhibitors” (1999) Nature Medicine 5:1359−1364。
【0077】
一般に、良性腫瘍の細胞は分化した特徴を保持しており、完全に制御されない様式では分裂しない。良性腫瘍は通常局所的であり、かつ非転移性である。本発明のHDAC阻害剤を用いて治療出来る良性腫瘍の具体的な種類の例としては、血管腫、肝細胞腺腫、海綿状血管腫、限局性結節性過形成、聴神経腫、神経繊維腫、胆管腺腫、胆管嚢胞腺腫(bile duct cystanoma)、線維腫、脂肪腫、平滑筋腫、中皮腫、奇形腫、粘液腫、結節性再生性過形成、トラコーマおよび化膿性肉芽腫が挙げられる。
【0078】
悪性腫瘍の場合においては、細胞は未分化となり、生体の成長抑制シグナルに対して反応せず、制御されない様式で増殖する。悪性腫瘍は浸潤性であり、離れた部位に広がり得る(転移)。悪性腫瘍は一般に2つのカテゴリーに分かれる:原発性および二次性である。原発性腫瘍はそれが見出される組織から直接生ずる。二次性腫瘍、すなわち転移腫瘍は、生体の他の場所で発生し、今や離れた器官へと広がった腫瘍である。転移の一般的な経路は隣接する組織への直接的な増殖、脈管系またはリンパ系を介した拡散、および組織表面や体内の空間(腹水、脳脊髄液等)に沿った拡散である。
【0079】
原発性・二次性を問わず、本発明のHDAC阻害剤を用いて治療し得るガンまたは悪性腫瘍の具体的な種類としては、白血病;乳癌;皮膚癌;骨癌;前立腺癌;肝癌;肺癌;脳腫瘍;喉頭、胆嚢、膵臓、直腸、副甲状腺、甲状腺、副腎、神経組織、頭頸部、大腸、胃、気管支、腎臓の癌;基底細胞癌;潰瘍性および乳頭状の両者の扁平上皮癌;転移性皮膚癌;骨肉腫;ユーイング肉腫、細網肉種;骨髄腫;巨細胞腫;小細胞肺癌;胆石;島細胞腫;原発性脳腫瘍;急性および慢性リンパ細胞腫および顆粒細胞腫;毛様細胞腫(hairy−cell tumor);腺腫;過形成;髄様癌;褐色細胞腫;粘膜神経腫;腸神経節細胞腫;過形成角膜神経腫瘍;マルファン症候群様体質腫瘍(marfanoid habitus tumor);ウィルムス腫;セミノーマ;卵巣腫瘍;平滑筋腫(leiomyomater tumor);子宮頸部形成異常および非浸潤性癌(in situ carcinoma);神経芽腫;網膜芽細胞腫;軟部肉腫;悪性カルチノイド;局所性皮膚病変;菌状息肉腫;横紋筋肉腫;カポジ肉腫;骨原性肉腫および他の肉腫;悪性高カルシウム血症;腎細胞腫瘍;真性赤血球増加症;腺癌;多形性膠芽腫;白血病;リンパ腫;悪性黒色腫;類表皮癌;ならびに他の癌および肉腫;が挙げられるがこれらに限定されない。
【0080】
本発明のHDAC阻害剤は手術中の生体組織の損傷による異常な細胞増殖を治療するのに用いてもよい。この損傷は関節手術、腸手術およびケロイド瘢痕化等、各種の外科的処置の結果生じ得る。線維性組織を生成する疾患の例としては気腫が挙げられる。本発明を用いて治療し得る反復動作疾患の例としては手根管症候群が挙げられる。本発明を用いて治療し得る細胞増殖性疾患の例としては骨腫瘍が挙げられる。
【0081】
本発明のHDAC阻害剤を用いて治療し得る、臓器移植に付随した増殖反応の例としては、潜在的な臓器拒絶反応または関連する合併症の原因となる増殖反応が挙げられる。具体的には、これらの増殖反応は心臓、肺、肝臓、腎臓および他の生体器官または器官系の移植の際に起こりうる。
【0082】
本発明を用いて治療し得る異常血管形成の例としては、関節リウマチ;虚血再灌流と関連した脳浮腫および損傷;皮質虚血;卵巣過形成および血管過多(多嚢胞性卵巣症候群);子宮内膜症;乾癬;糖尿病性網膜症、ならびに未熟児網膜症(水晶体後線維増殖症)等の他の眼の脈管形成疾患;黄斑変性;角膜移植拒絶;血管新生緑内障(neuroscular glaucoma)およびOster−Webber症候群に付随するものが挙げられる。
【0083】
本発明により治療され得る、制御されない血管新生に付随した疾患の例としては、網膜/脈絡膜血管新生および角膜血管新生が挙げられるが、これらに限定されない。網膜/脈絡膜血管新生の例としては、ベスト病、近視、視神経乳頭小窩、シュタルガルト病(Stargart’s disease)、パジェット病、静脈閉塞、動脈閉塞、鎌状赤血球貧血、サルコイド、梅毒、弾性線維性仮黄色腫(pseudoxanthoma elasticum)頚動脈閉塞性疾患(carotid apo structive disease)、慢性ブドウ膜炎/硝子体炎(vitritis)、マイコバクテリア感染、ライム病、全身性エリテマトーデス、未熟児網膜症、イールズ病、糖尿病性網膜症、黄斑変性、ベーチェット病、網膜炎または脈絡膜炎(chroiditis)を引き起こす感染、推定眼ヒストプラスマ症、扁平部炎、慢性網膜剥離、過粘稠度症候群、トキソプラスマ症、外傷およびレーザー後合併症(trauma and post−laser complication)、ルベシス(rubesis)に関連する疾患(隅角の血管新生)、ならびに線維血管組織または線維組織の異常増殖によって生ずる、すべての形態の増殖性硝子体網膜症を含む疾患が挙げられるが、これらに限定されない。角膜血管新生の例としては、流行性角結膜炎、ビタミンA欠乏症、コンタクトレンズの過度の使用(overwear)、アトピー性角膜炎、上輪部角膜炎、翼状片乾燥角膜炎(pterygium keratitis sicca)、シェーグレン、酒さ性ざ瘡、フリクテン症(phylectenulosis)、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、角膜移植拒絶、モーレン潰瘍、テリエン辺縁変性、辺縁性表皮剥離(marginal keratolysis)、多発性動脈炎、Wegenerサルコイドーシス、強膜炎、ペリフィゴイド(periphigoid)放射状角膜切開、血管新生緑内障および水晶体後線維増殖、梅毒、マイコバクテリア感染、脂質変性、化学的熱傷、細菌性潰瘍、真菌性潰瘍、単純ヘルペス感染、帯状ヘルペス感染、原虫感染ならびにカポジ肉腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
制御されない血管新生と関連した慢性炎症性疾患も本発明のHDAC阻害剤を用いて治療され得る。慢性炎症は、炎症細胞の流入を維持するために毛細血管の芽(sprout)が連続的に形成されることに依存している。炎症細胞の流入および存在により肉芽腫が産生され、そのため慢性炎症状態が維持される。HDAC阻害剤を単独で、または他の抗炎症剤と併せて用い、血管新生を阻害することで、肉芽腫の形成を防止し、従って疾患を軽減することが出来る。慢性炎症性疾患の例としては、クローン病および潰瘍性大腸炎等の炎症性腸疾患、乾癬、サルコイドーシス、ならびに関節リウマチが挙げられるがこれらに限定されない。
【0085】
クローン病および潰瘍性大腸炎等の炎症性腸疾患は、消化管の各種部位における慢性炎症および血管新生を特徴とする。例えば、クローン病は最も一般的には回腸末端部および大腸を冒す慢性貫壁性(transmural)炎症性疾患として発生するが、口から肛門までの消化管のいずれの部位および肛門周囲領域においても発生し得る。クローン病患者は一般に、腹痛を伴う慢性下痢、発熱、食欲不振、体重減少および腹部膨満を有する。潰瘍性大腸炎も慢性、非特異的、炎症性の、結腸粘膜で生ずる潰瘍性疾患であり、血性下痢の存在を特徴とする。これらの炎症性腸疾患は一般に、炎症細胞の筒に囲まれた新たな毛細血管の芽を伴う、消化管全体にわたる慢性肉芽腫性炎により引き起こされる。これら阻害剤による血管新生の阻害により、この芽の形成が阻害され、肉芽腫の形成が防止される。炎症性腸疾患は皮膚病変等の腸管外症状も示す。このような病変は炎症および血管新生を特徴とし、消化管以外の多くの部位で生じ得る。本発明のHDAC阻害剤による血管新生の阻害によって炎症細胞の流入を減少させ、病変の形成を防止することが出来る。
【0086】
他の慢性炎症性疾患であるサルコイドーシスは、多臓器肉芽腫性疾患として特徴付けられる。この疾患の肉芽腫は生体内のいずれの部位にも形成され得る。従って、症状は該肉芽腫の部位、および該疾患が活動性であるかによって異なる。該肉芽腫は、炎症細胞の恒常的な供給を提供する新生毛細血管芽(angiogenic capillary sprout)により生成される。本発明によるHDAC阻害剤を用いて血管新生を阻害することにより、このような肉芽腫形成を阻害することが出来る。同じく慢性で再発性の炎症性疾患である乾癬は、各種サイズの丘疹および斑により特徴付けられる。これらの阻害剤を単独で、または他の抗炎症剤と併せて用いる治療により、特徴的病変を維持するのに必要な新生血管の形成を防止し、患者に症状の緩和を提供する。
【0087】
関節リウマチ(RA)も慢性炎症性疾患であり、末梢関節の非特異的炎症によって特徴付けられる。関節の滑膜表層の血管に血管新生が起こるとされている。新生血管網が形成されることに加え、内皮細胞がパンヌス増殖および軟骨破壊をもたらす因子および活性酸素種を放出する。血管新生に関与する因子は関節リウマチの慢性的炎症状態に活発に寄与し、その維持を補助する場合がある。本発明によるHDAC阻害剤を単独で、または他の抗RA剤と併せて用いる治療により、慢性炎症を維持するのに必要な新生血管網の形成が防止され得る。
【0088】
本発明の化合物はさらに、肥大、高血圧、心筋梗塞、再灌流障害、虚血性心疾患、狭心症、不整脈、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症および脳卒中等の心臓/脈管系疾患の治療において用いることが出来る。前記化合物はさらに、脳卒中、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症およびアルツハイマー病を含む急性および慢性神経系疾患等の神経変性疾患/CNS疾患の治療に用いることが出来る。
【0089】
本発明の化合物は抗微生物剤、例えば抗菌剤としても用いることが出来る。本発明は従って細菌感染の治療における使用のための化合物も提供する。本発明の化合物はウイルス、細菌、真菌および寄生虫感染に対する抗感染症化合物として用いることが出来る。感染の例としては原生動物寄生感染(マラリア原虫、クリプトスポリジウムパルバム、トキソプラズマ原虫、サルコシスティス・ニューロナおよびアイメリア属sp.等)が挙げられる。
【0090】
本発明の化合物は特に望ましくないまたは制御されない細胞増殖の治療に、好ましくは良性腫瘍/過形成および悪性腫瘍の治療に、より好ましくは悪性腫瘍の治療に、最も好ましくはCCL,乳癌およびT細胞リンパ腫の治療に適している。
【0091】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の化合物は、癌、心臓肥大、慢性心不全、炎症状態、循環器疾患、異常血色素症、サラセミア、鎌状赤血球病、CNS障害、自己免疫疾患、糖尿病、骨粗しょう症、MDS、良性前立腺肥大、口腔白板症、遺伝に関連した代謝障害、感染、Rubens−Taybi、脆弱X症候群、もしくはα−1アンチトリプシン欠乏症を緩和するために、または創傷治癒を促進するために、または毛包を保護するために、または免疫抑制剤として、用いられる。
【0092】
典型的には、前記炎症状態は皮膚炎症状態(乾癬、座瘡、湿疹等)、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、関節リウマチ(RA)、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病または大腸炎である。
【0093】
典型的には、前記癌は慢性リンパ球性白血病、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、中皮腫、またはT細胞リンパ腫である。
【0094】
典型的には、前記循環器疾患は高血圧、心筋梗塞(MI)、虚血性心疾患(IHD)(再灌流)、狭心症、不整脈、高コレステロール血症、高脂血症、アテローム性動脈硬化症、脳卒中、心筋炎、うっ血性心不全、原発性および続発性、すなわち拡張型(うっ血性)心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症、末梢血管疾患、頻脈、高血圧または血栓症である。
【0095】
典型的には、前記の遺伝に関連した代謝障害は嚢胞性線維症(CF)、ペルオキシソーム欠損症または副腎白質ジストロフィである。
【0096】
典型的には、本発明の化合物は臓器移植後の免疫抑制剤として用いられる。
【0097】
典型的には、前記感染はウイルス、細菌、真菌または寄生虫感染、特にS.aureus、P.acne、CandidaまたはAspergillusによる感染である。
【0098】
典型的には、前記CNS障害はハンチントン病、アルツハイマー病、多発性硬化症または筋萎縮性側索硬化症である。
【0099】
本実施形態において、本発明の化合物は癌、心肥大、慢性心不全、炎症状態、循環器疾患、異常血色素症、サラセミア、鎌状赤血球病、CNS障害、自己免疫疾患、糖尿病または骨粗しょう症を緩和するために用いてよく、または免疫抑制剤として用いられる。
【0100】
本発明の化合物は慢性リンパ球性白血病、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、中皮腫、T細胞リンパ腫、心肥大、慢性心不全または皮膚炎症状態、特に乾癬、座瘡または湿疹を緩和するために用いてもよい。
【0101】
本発明の化合物は動物の治療に、好ましくは哺乳動物の治療に、より好ましくはヒトの治療に用いることが出来る。
【0102】
本発明の化合物は、適宜、このような症状の発生を減少させるために予防的に用いてよい。
【0103】
治療的有効量の本発明の化合物が患者に投与される。典型的な投与量は体重1kgあたり約0.001〜50mgであり、具体的な化合物の活性;治療を受ける患者の年齢、体重および症状;疾患の種類および程度;ならびに投与の頻度および経路による。
【実施例】
【0104】
以下の実施例により本発明を例証する。化合物を以下に示す一般スキーム3および4により調製した。それらの構造をNMRを含む各種手法により確認した(詳細は示さない)。
【化18】

【0105】
(3S,4R)−4−[(R)−2−(3−9H−フルオレン−9−イル−プロピオニルアミノ)−プロピオニルアミノ]−3−ヒドロキシ−5−メチル−ヘキサン酸アリルエステル(3)の調製


【化19】

0℃、アルゴン雰囲気下のCH2Cl2(5mL)中の2の溶液(316mg、1.05mmol、Doi, T,; Iijima, Y.; Shin−ya, K.; Ganesan, A,; Takahashi, T.; Tet. Lett. 2006, 47, 1177−1080の手順によって調製)にTFA(2mL、40% v/v)を加え、該反応混合物を2時間5分間おいた。その後、溶媒を真空下で除去し、高真空下に2時間置いた。次に、0℃において、CH2Cl2(20mL)中のPyBop(608mg、1.17mmol)およびFmoc−D−Ala−OH(359.6mg、1.16mmol)の溶液にジイソプロピルエチルアミン(0.71mL、4.1mmol)をアルゴン雰囲気下、4分間撹拌しながら加えた。次にこの溶液を、CH3CN(20mL)中の2の脱保護アミンに加え、該溶液を一晩16時間撹拌した。その後真空下で溶媒を除去した。シリカ上でカラムクロマトグラフィーにより精製し(溶離液 3:7−1:1 EtOAc/ヘキサン)、3を白色固体として生成した(330mg、0.67mmol、64%):Rf 0.40 EtOAc/ヘキサン(6:4);IR(薄膜)3315(b)、2962(m)、1712(s)、1660(s)、1529(s)cm-1
【0106】
(3S,4R)−4−{(R)−2−[(R)−2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−3−メチル−ブチリルアミノ]−プロピオニルアミノ}−3−ヒドロキシ−5−メチル−ヘキサン酸アリルエステル(4)の調製
【化20】

CH3CN/CH2Cl2(15:10mL)中の溶液3(162.1mg、0.33mmol)にジエチルアミン(2.5mL、10% v/v)をアルゴン雰囲気下で加えた。1時間15分後、溶媒を真空下で除去し、これをヘキサン(3×15ml)で反復し、その後この粗材料を高真空下に4時間45分間置いた。次いで、0℃において、CH2Cl2(20mL)中のFmoc−D−Val−OH(124.6mg、0.37mmol)およびPyBop(191.1mg、0.37mmol)にジイソプロピルエチルアミン(0.2mL、1.1mmol)を滴下した。2分間の撹拌後、この溶液をCH3CN(20mL)中の3の粗アミンに加えた。真空下で溶媒を除去し、生じた固体をカラムクロマトグラフィーによりシリカ上で精製し(溶離液 6:4−7:3−8:2 EtOAc/ヘキサン)、4を白色固体として生成した(165.5mg、0.28mmol、84%):Rf 0.44 EtOAc/ヘキサン(6:4);IR(薄膜)3293(b)、2963(m)、1702(m)、1642(s)、1535(m)cm-1
【0107】
(E)−(S)−3−ヒドロキシ−7−トリスルファニルヘプト−4−エン酸(6)の調製
【化21】

THF/H2O(39mL、3:1)中の5の撹拌溶液(934mg、1.66mmol、Yurek−George, A.; Habens, F.; Brimmell, M.; Packham, G.; Ganesan, A. J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 1030−1031の手順によって調製)に水酸化リチウム(196.1mg、8.19mmol)を加え、50分間撹拌下に置いた。その後1M HClを、pHが2になるまで加え、EtOAc(20mL)を加えて層を分離した。水層をEtOAc(20mL)で抽出し、有機層を合わせ、乾燥(MgSO4)し、真空下で濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(溶離液 3:7−1:1−1:0 EtOAc/ヘキサン)による精製を行い、産物6を白色固体として生成した(600mg、1.43mmol、86%):Rf 0.52 EtOAc+2滴のAcOH;[α]D27−4.15(c0.975、CH2Cl2)。
【0108】
(3S,4R)−3−ヒドロキシ−4−{(R)−2−[(R)−2−((E)−(S)−3−ヒドロキシ−7−トリチルスルファニル−ヘプタ−4−エノイルアミノ)−3−メチル−ブチリルアミノ]−プロピオニルアミノ}−5−メチル−ヘキサン酸アリルエステル(7)の調製
【化22】

CH3CN/CH2Cl2(10:8mL)中の溶液4(165.5mg、0.28mmol)にジエチルアミン(1.8mL、10% v/v)をアルゴン雰囲気下で撹拌しながら加えた。1時間30分後、溶媒を真空下で除去し、これをヘキサン(3×15ml)で反復し、その後この粗材料を高真空下に1時間置いた。次いで、0℃において、CH2Cl2(10mL)中のβ−ヒドロキシ酸6(128.4mg、0.31mmol)およびPyBop(160mg、0.31mmol)にジイソプロピルエチルアミン(0.13mL、0.75mmol)を滴下した。5分間の撹拌後、この溶液をCH3CN(10mL)中の4の粗脱保護アミンに加えた。カラムクロマトグラフィーによりシリカ上で精製を行い(溶離液 8:2−9:1−1:0 EtOAc/ヘキサン)、7を白色固体として生成した(152.2mg、0.20mmol、70%):Rf 0.12 EtOAc/ヘキサン(8:2);IR(薄膜)3269(b)、2964(w)、2930(w)、1728(m)、1622(s)、1536(m)cm-1
【0109】
(3S,4R)−3−ヒドロキシ−4−{(R)−2−[(R)−2−((E)−(S)−3−ヒドロキシ−7−トリチルスルファニル−ヘプタ−4−エノイルアミノ)−3−メチル−ブチリルアミノ]−プロピオニルアミノ}−5−メチル−ヘキサン酸(8)の調製
【化23】

アルゴン雰囲気下の無水メタノール(6mL)中の7(152.2mg、0.2mmol)、Pd(PPh34(23.2mg、0.02mmol)の溶液にモルホリン(35μL、0.40mmol)を加え、2時間撹拌下に置いた。反応混合物を真空下で濃縮し、カラムクロマトグラフィーによりシリカ上で精製を行い(溶離液 0:1−5:95−10:90−10:90+0.5% AcOH MeOH/CH2Cl2)、黄色固体8を生成した(137mg、0.18mmol、100%):Rf 0.19 MeOH/CH2Cl2(1:9+0.5% AcOH);IR(薄膜)3271(b)、2962(m)、2926(m)、1624(s)、1536(m)cm-1
【0110】
(3S,7R,10R,13R,14S)−14−ヒドロキシ−7,13−ジイソプロピル−10−メチル−3−((E)−4−トリチルスルファニル−ブタ−1−エニル)−1,2−ジオキサ−6,9,12−トリアザ−シクロヘキサデカン−5,8,11,16−テトラオン(9)の調製
【化24】

CH2Cl2/THF(33mL、2:1)中のMNBA(73.5mg、0.21mmol)およびDMAP(51.9mg、0.42mmol)の溶液に、DMF3滴を加えたCH2Cl2/THF(134.5mL、2:1)中の酸8(129mg、0.18mmol)の溶液を4時間にかけて滴下した。さらに16時間後、反応混合物を真空下で濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィーによりシリカ上で精製を行い(溶離液 1:0−98:2−96:4−94:6−92.8 CH2Cl2/MeOH)、9を白色固体として生成した(24.7mg、0.035mmol、17%):Rf 0.43 CH2Cl2/MeOH(90:10);IR(薄膜)3293(b)、2963(m)、1732(m)、1660(s)、1536(m)cm-1
【0111】
(3S,7R,10R,13R,14S)−14−ヒドロキシ−7,13−ジイソプロピル−3−((E)−4−メルカプト−ブタ−1−エニル)−10−メチル−1,2−ジオキサ−6,9,12−トリアザ−シクロヘキサデカン−5,8,11,16−テトラオン(10)の調製
【化25】

CH2Cl2(1mL)中の9の溶液(8mg、0.011mmol)にトリエチルシラン(7μL、0.44mmol)を加え、TFA(0.2mL、20% v/v)を滴下した。1.5時間の撹拌後、反応物を真空下で濃縮し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(溶離液 1:0−99:1−98:2−97:3−96.4 CH2Cl2/MeOH)による精製を行い、産物10を白色固体として生成した(0.47mg、0.001mmol、9%):Rf 0.44 MeOH/CH2Cl2(1:9);MS(ES+)584.2(100%、[M+Na]+)。
【0112】
チオ酢酸 S−[(E)−4−((3S,7R,10R,13R,14S)−14−ヒドロキシ−7,13−ジイソプロピル−10−メチル−5,8,11,16−テトラオキソ−1,2−ジオキサ−6,9,12−トリアザ−シクロヘキサデカ−3−イル)−ブタ−3−エニル]エステル(11)の調製
【化26】

CH2Cl2(1.4mL)中の9の溶液(24.7mg、0.035mmol)にトリエチルシラン(28μL、0.175mmol)を加え、次いでTFA(0.35mL、25% v/v)を滴下した。1時間の撹拌後、反応混合物を真空下で濃縮し、高真空下に2時間置いて粗チオール10を生成した。0℃においてCH2Cl2(0.45mL)中のチオール10の溶液にジイソプロピルエチルアミン(30μL、0.172mmol)を加え、次いでCH2Cl2(0.1mL)中の塩化アセチル(2.43μL、0.034mmol)を加えた。2時間10分間の撹拌後、1M HCl(1mL)を加え、次いでEtOAc(10mL)を加えて層を分離し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層を乾燥(MgSO4)し、真空下で濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(溶離液 1:0−98:2−96:4−94:6−92.8 CH2Cl2/MeOH)による精製を行い、産物11を白色固体として生成した(7.3mg、0.014mmol、41%):Rf 0.47 MeOH/CH2Cl2(1:9)。
【化27】

【0113】
((R)−2−{(R)−2−[(R)−2−((E)−(R)−3−ヒドロキシ−7−トリチルスルファニル−ヘプタ−4−エノイルアミノ)−プロピオニルアミノ]−3−フェニル−プロピオニルアミノ}−3−メチル−ブチリルアミノ)−酢酸メチルエステル(13)の調製


【化28】

CH3CN(7mL)中のテトラペプチド12の溶液(159mg、0.391mmol、GLBiochem Ltd, Shanghai 200241, Chinaより購入)に、CH2Cl2(3mL)中に溶解した5の溶液(242mg、0.43mmol)を加え、次いでDMAP(4.78mg、0.0391mmol)を加えた。反応混合液を一晩撹拌した;この粗材料を次に真空下で濃縮し、残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーによりシリカゲル上で精製し(溶離液 1% MeOH/CH2Cl2)、13を白色固体として生成した(190mg、0.236mmol、60%):Rf 0.28 MeOH/CH2Cl2(5:95)。
【0114】
((R)−2−{(R)−2−[(R)−2−((E)−(R)−3−ヒドロキシ−7−トリチルスルファニル−ヘプタ−4−エノイルアミノ)−プロピオニルアミノ]−3−フェニル−プロピオニルアミノ}−3−メチル−ブチリルアミノ)−酢酸(14)の調製
【化29】

THF(4mL)中の13の溶液(190mg、0.236mmol)に、H2O(1mL)中のLiOH(8.48mg、0.354mmol)の溶液を0℃で加えた。1時間の撹拌の後、CHCl3(60mL)を該溶液に加え、次いで1M HCl(10mL)を加えた。層を分離し、水層をCHCl3(2×10mL)で洗浄した。有機層を合わせ、食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、真空下で濃縮した。この粗材料を次いでフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶離液 2% MEOH/CH2Cl2)で精製し、14を淡黄色固体として生成した(80mg、0.1mmol、43%):Rf 0.21 AcOH/MeOH/CH2Cl2/(1:4:95)。
【0115】
(6R,9R,12R,16S)−9−ベンジル−6−イソプロピル−12−メチル−16−((E)−4−トリチルスルファニル−ブタ−1−エニル)−1−オキサ−4,7,10,13−テトラアザ−シクロヘキサデカン−2,5,8,11,14−ペンタオン(15)の調製
【化30】

CH2Cl2(26mL)中の2−メチル−6−ニトロ安息香酸無水物(MNBA)(43.7mg、0.127mmol)およびDMAP(29.9mg、0.245mmol)の溶液に、CH2Cl2(88mL)中に溶解した酸14(80mg、0.10mmol)およびDMF(5mL)の溶液を3時間かけて滴下し、反応物を一晩撹拌した。最後に該反応混合物を真空下で濃縮し、残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶離液 1−3% MeOH/CH2Cl2)によりシリカゲル上で精製し、15を白色固体として生成した(26.5mg、0.034mmol、34%):Rf 0.35 MeOH/CH2Cl2(5:95)。
【0116】
(6R,9R,12R,16S)−9−ベンジル−6−イソプロピル−16−((E)−4−メルカプト−ブタ−1−エニル)−12−メチル−1−オキサ−4,7,10,13−テトラアザ−シクロヘキサデカン−2,5,8,11,14−ペンタオン(16)の調製
【化31】

CH2Cl2(500□L)中の15の撹拌溶液(9mg、0.012mmol)に、Et3SiH(3.83μL、0.024mmol)およびTFA(60μL)を添加した。15分間の撹拌後、溶媒を真空下で除去し、残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶離液 2−7% MeOH/CH2Cl2)によりシリカゲル上で精製し、チオール16を白色固体として生成した(2.3mg、0.0043mmol、36%):Rf 0.58 MeOH/CH2Cl2(1:9);LRMS(ES+) m/z 555.4(100%、[M+Na]+)。
【0117】
チオ酢酸S−[(E)−4−((6R,9R,12R,16S)−9−ベンジル−6−イソプロピル−12−メチル−2,5,8,11,14−ペンタオキソ−1−オキサ−4,7,10,13−テトラアザ−シクロヘキサデカ−16−イル)−ブタ−3−エニル]エステル(17)の調製
【化32】

CH2Cl2(0.8mL)中の15の撹拌溶液(15mg、19μmol)に、Et3SiH(16μL、0.1mmol)およびTFA(0.2mL)を添加した。室温にて30分間、不活性雰囲気下で撹拌した後、反応混合物を濃縮し、残渣を高真空により乾燥した。さらなる精製無しに、粗チオール16を次の工程に用いた。0℃において、CH2Cl2(0.3mL)中のチオール16の撹拌溶液に、DIPEA(17μL、0.1mmol)およびAcCl(2μL、28□mol)を加えた。30分後、反応混合物を室温まで加温し、さらに1.5時間撹拌し、その後1M HCl(1mL)の添加によりこれをクエンチした。EtOAc(5mL)を加えて該溶液を希釈し、相を分離し、水相をEtOAc(2×1mL)で抽出した。有機相を合わせたものを飽和NaCl水溶液(2mL)で洗浄し、乾燥(MgSO4)し、濾過し、真空下で濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶離液 1−10% IPA/CH2Cl2)により精製し、化合物17(5mg、8μmol、45%)をオフホワイトの固体として生成した。
【0118】
アッセイ
in vitro HDACアッセイを、HDAC蛍光活性アッセイキット(Biomol,UK)を用い、製造者の説明書に従って行った。化合物は分析に先立って還元した;1mMの化合物をDMSO中の30mM DTTで一晩、室温で還元し、光から保護した。次に、96ウェルプレートでの反応を準備した。各反応用に、10μlの化合物(アッセイバッファー中、5×所要濃度)を15mlの希釈した(アッセイバッファー中に30倍)Hela核抽出物と混合した。段階希釈を各化合物に対して準備した。Hela抽出物のみおよびアッセイバッファーのみを含んだ反応も準備した。25μlの希釈Fluor de Lys(登録商標)基質(アッセイバッファー中に100倍)を各反応液に添加し、これを37℃で1時間インキュベートした。反応を50μlのFluor de Lys(登録商標)現像剤(アッセイバッファー中に20倍希釈、および100倍希釈TSA)の添加により停止した。次いで反応液を室温で10分間インキュベートし、蛍光を、CytoFluor II 蛍光マルチウェルプレートリーダーおよびCytoFluor IIソフトウェアを励起360nM、発光460nMに設定したフィルターとともに用いて測定した。in vitroでのHDAC活性の阻害を、二重の試料の平均値について、HeLa抽出物のみの反応物に対する百分率として決定した。IC50値をGraphPad Prismソフトウェアを用いて算出した。結果を次の表に示す。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般構造VIIまたはVIIIの化合物またはそのアイソスターもしくは医薬的に許容される塩
【化1】

式中、
【化2】

であり;
1、R2(X=−CONR6−の場合)、R3およびR7は同一であっても異なっていてもよく、それぞれアミノ酸側鎖部分を表し;
2(X=−CHZ−の場合)、R4およびR6は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、炭素数1〜6のアルキル、炭素数2〜6のアルケニルまたは炭素数2〜6のアルキニルを表し;
Kは炭素原子の直鎖または分岐鎖を表し、1〜10個の原子を有しており;
Lはヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の活性部位において亜鉛をキレート化し得る部分、またはこのような部分にin vivoで(加水分解または還元等により)変換され得る部分を表し;
Mは炭素またはその他の原子の直鎖または分岐鎖であって、1〜10個の原子を有し、in vivoでの開裂により構造VIIを生ずることが出来;そして
Zは単結合または二重結合により大員環に結合するヘテロ原子であって、Zに結合する他の基はいずれもHまたは保護基であり;
ただし、前記化合物は、FK228(構造VIIIにおいて、R1が=CH−CH3、R2がCH(CH32、R3がCH(CH32、R4およびR6がH、Xが−C(O)NR6−、Kが−CH=CHCH2CH2S−、およびMが−CH2S−で、MおよびKがジスルフィド結合を形成する構造);FK228の還元型(構造VIIにおいて、R1が=CH−CH3、R2がCH(CH32、R3がCH(CH32、R4およびR6がH、XがC(O)NR6、Kが−CH=CHCH2CH2−、Lが−SH、ならびにR7が−CH2SHである構造);スピルコスタチンA(構造VIIIにおいて、R1が−CH(CH32、R2がH、R3がCH3、R4およびR6がH、Xが−CHZ−、Zが−OH、Kが−CH=CHCH2CH2S−、Mが−CH2S−で、MおよびKがジスルフィド結合を形成する構造);およびスピルコスタチンAの還元型(構造VIIにおいて、式中、R1が−CH(CH32、R2がH、R3がCH3、R4およびR6がH、Xが−CHZ−、Zが−OH、Kが−CH=CHCH2CH2−、LがSH、ならびにR7が−CH2SHである構造)のいずれでもない。
【請求項2】
請求項1記載の化合物であって、Xが−CO−NR6−である化合物。
【請求項3】
請求項1記載の化合物であって、Xが−CHZ−である化合物。
【請求項4】
上記いずれかの請求項に記載の化合物であって、Zは=O、−OPr3、−N(Pr3)Pr4または−SPr3であり、Pr3およびPr4は同一であっても異なっていてもよく、Zがエーテル、エステル、アミド、チオエーテルまたはチオエステルとなるようにPr3およびPr4はそれぞれHまたはヘテロ原子保護基を表す化合物。
【請求項5】
上記いずれかの請求項に記載の化合物であって、R1は−(炭素数1〜4のアルキル)−A’、またはR3は−炭素数2〜4のアルキルもしくは−(炭素数1〜4のアルキル)−A’’であり、A’またはA’’は炭素数6〜10のアリール基または5〜10員環ヘテロアリール基である化合物。
【請求項6】
請求項5記載の化合物であって、A’はフェニルでありかつA’’がフェニル、インドリルまたはt−ブトキシカルボニルインドリルである化合物。
【請求項7】
上記いずれかの請求項に記載の化合物であって、各アミノ酸側鎖は−H、−炭素数1〜6のアルキル、−炭素数2〜6のアルケニル、−L−O−C(O)−R’、−L−C(O)−O−R’’、−L−A、−L−NR’’R’’、−L−Het−C(O)−Het−R’’およびL−Het−R’’から選択され、式中、Lは炭素数1〜6のアルキレン基であり、Aはフェニルまたは5〜6員環ヘテロアリール基であり、各R’は同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜4のアルキルを表し、各R’’は同一であっても異なっていてもよく、Hまたは炭素数1〜6のアルキルを表し、各Hetは同一であっても異なっていてもよく、−O−、−N(R’’’)−および−S−から選択されるヘテロ原子スペーサーであり、各R’’’は同一であっても異なっていてもよく、Hまたは炭素数1〜4のアルキルを表す、化合物。
【請求項8】
Aがフェニルである請求項7記載の化合物。
【請求項9】
−Het−が−O−または−NR’’’である、請求項7または請求項8記載の化合物。
【請求項10】
1が−Hおよび−炭素数1〜6のアルキルより選択される、請求項7〜9のいずれかに記載の化合物。
【請求項11】
2が−Hおよび−炭素数1〜4のアルキルより選択される、請求項7〜10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
3が−H、−炭素数1〜6のアルキル、−L−C(O)−O−R’’、−L−A、−L−NR’’R’’、および−L−N(R’’)−C(O)−O−R’’より選択される、請求項7〜11のいずれかに記載の化合物。
【請求項13】
4が−Hおよび−炭素数1〜4のアルキルより選択される、請求項7〜12のいずれかに記載の化合物。
【請求項14】
6が−Hである、請求項7〜13のいずれかに記載の化合物。
【請求項15】
請求項7〜14のいずれかに記載の化合物であって、ここでPr1およびPr2は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ−H;および炭素数1〜6のアルコキシ、炭素数1〜6のアシルオキシ、ヒドロキシ、ニトロ、ピコリル、ピコリル−N−オキシド、アントリルメチル、ジフェニルメチル、フェニル、t−ブチル、アダマンチル、炭素数1〜6のアシルオキシメチル、炭素数1〜6のアルコキシメチル、テトラヒドロピラニル、ベンジルチオメチル、フェニルチオメチル、チアゾリジニル、アセトアミドメチル、ベンズアミドメチル、t−ブトキシカルボニル、アセチル、ベンゾイル、カルバモイル、フェニルカルバモイルおよび炭素数1〜6のアルキルカルバモイルによって所望により置換されていてもよいベンジル基から選択される保護基;より選択される、化合物。
【請求項16】
Pr1およびPr2がそれぞれ−Hである、請求項15記載の化合物。
【請求項17】
請求項1〜6のいずれかに記載の化合物であって、ここで各アミノ酸側鎖が天然アミノ酸中に存在するものであるか、または−(CH22−C(O)−O−C(CH33、−(CH24−NH−C(O)−O−C(CH33、−(CH23−NH−C(O)NH2、−CH2−CH2OHもしくは−(CH22−CH2NH2である化合物。
【請求項18】
式9、10、11、15、16または17で表される、請求項1記載の化合物:
【化3】

【請求項19】
ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)により媒介される症状の治療または予防に使用される、上記いずれかの請求項に記載の化合物。
【請求項20】
前記症状が癌、心肥大、慢性心不全、炎症状態、循環器疾患、異常血色素症、サラセミア、鎌状赤血球病、CNS障害、自己免疫疾患、糖尿病、骨粗しょう症、MDS、良性前立腺肥大、子宮内膜症、口腔白板症、遺伝に関連した代謝障害、感染、Rubens−Taybi、脆弱X症候群、またはα−1アンチトリプシン欠乏症である、請求項19記載の化合物。
【請求項21】
前記症状が慢性リンパ球性白血病、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、中皮腫、T細胞リンパ腫、心肥大、慢性心不全、皮膚炎症状態(特に乾癬、座瘡または湿疹)、筋骨格炎症状態(特に関節リウマチ、若年性関節リウマチ、強直性脊椎炎または変形性関節症)、または消化管の炎症状態(特に炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎または過敏性腸症候群)である、請求項19または請求項20に記載の使用。
【請求項22】
創傷治癒を促進するため、毛包を保護するため、または免疫抑制剤として用いられる、請求項1〜19のいずれかに記載の化合物。
【請求項23】
請求項1〜19のいずれかに記載の化合物、および医薬的に許容される担体または希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項24】
経口、経腸、非経口、鼻腔内、もしくは経皮投与、または吸入もしくは坐剤による投与に適した形態である、請求項23記載の組成物。
【請求項25】
顆粒剤または錠剤、例えば舌下錠、カプセル剤、トローチ剤、ロゼンジ、水性もしくは油性懸濁剤、または分散可能な粉末剤の形態である、請求項24記載の組成物。
【請求項26】
HDACに媒介される症状の治療または予防において用いる薬物の製造における、請求項1〜18のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項27】
症状が請求項20〜22のいずれかに規定されたものである、請求項26記載の使用
【請求項28】
(a)請求項1〜18のいずれかに記載の化合物と;(b)HDACにより媒介される症状の治療または予防において、同時に、別々に、または順次使用される他のHDAC阻害剤と;を含む製品。
【請求項29】
(a)請求項1〜18のいずれかに記載の化合物と;(b)癌の治療または予防において、同時に、別々に、または順次使用される他の化学療法薬または抗腫瘍薬と;を含む製品。
【請求項30】
スベロイルアニリドヒドロキサム酸が示すものと少なくとも同等のHDAC阻害活性を有する化合物を選択する方法であって、請求項1〜18のいずれかに記載の化合物を本明細書中に規定された方法により調製することと、前記化合物をスクリーニングしてHDAC阻害剤としてのその活性を測定することとを含む方法。

【公表番号】特表2010−510300(P2010−510300A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537696(P2009−537696)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際出願番号】PCT/GB2007/004472
【国際公開番号】WO2008/062201
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(509143893)カルス セラピューティクス リミテッド (2)
【Fターム(参考)】